(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】切削プレート、ならびに切削プレートの未焼結体を製造するための方法および圧縮モールド
(51)【国際特許分類】
B30B 7/04 20060101AFI20230302BHJP
B30B 11/00 20060101ALI20230302BHJP
C22C 1/051 20230101ALI20230302BHJP
B22F 3/035 20060101ALI20230302BHJP
B23C 5/20 20060101ALN20230302BHJP
B23B 51/00 20060101ALN20230302BHJP
【FI】
B30B7/04
B30B11/00 R
C22C1/051 H
B22F3/035 D
B23C5/20
B23B51/00 T
(21)【出願番号】P 2019563580
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2018061883
(87)【国際公開番号】W WO2018210634
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-03-08
(32)【優先日】2017-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506297474
【氏名又は名称】ヴァルター アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ダービト ボエンケ
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-143815(JP,A)
【文献】特表2014-528838(JP,A)
【文献】特開2001-355004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 7/04
B30B 11/00
C22C 1/051
B22F 3/035
B23C 5/20
B23B 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質金属成分と結合剤との粉末混合物を多軸プレスして未焼結体(10)を形成し、続いて、プレス後に、2つの略平行な主面(1a、1b)と、前記主面の周囲で前記主面の間に延在して前記主面を接続する周縁面(2、3a、3b)とを備える前記未焼結体を焼結することによって、硬質金属、特に、焼結炭化物から作られる切削プレートの製造方法であって、
前記主面が、切刃(6a、6b)が凹部(4a、b;5a、b)の底部
と縁面の少なくとも一部(3a、3b)との交点に形成されるように、前記縁面に少なくとも部分的に延在する前記凹部を含み、
前記粉末混合物が、前記縁面を形成するために少なくとも第1の方向に沿って移動可能な側部パンチ
(21、22)と、前記粉末混合物を固めるために前記第1の方向に略垂直に移動可能な少なくとも1つのヘッディングパンチとによって画定されたキャビティを備える圧縮モールドに供給されて、切削プレート未焼結体を形成し、
前記主面に垂直に、前記主面の方に移動可能であるヘッディングツールが使用される、切削プレートの製造方法において、
前記ヘッディングツールが2つの部分を備え、その一方が主パンチ(23a、b)であり、他方が独立して移動可能な形成パンチ(24a、b)であり、
第1のプレスステップにおいて、前記形成パンチ(24a、b)が前記粉末混合物の方へ移動して、前記縁面(3)に隣接し、前記未焼結体の最小の最終厚さの領域になるように指定された領域を含む、前記未焼結体の予備圧縮部分を形成し、
第2のステップにおいて、前記主パンチ(23a、b)および前記形成パンチ(24a、b)がどちらも、それらの最終位置の方へ移動して、前記凹部(4a、b
;5a、b)を含む前記平行な主面(1a、1b)がその最終寸法である前記未焼結体を提供する
ことを特徴とする、切削プレートの製造方法。
【請求項2】
前記側部パンチが、前記粉末混合物を供給する前に閉じられる
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
予備プレスおよび最終圧縮が、対向して配置された前記未焼結体の2つの主面の方へ同時に移動する2つの同一のヘッディングツールによって実行され、前記ヘッディングツールのそれぞれが、少なくとも主パンチと形成パンチとを備える
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記主パンチおよび前記形成パンチによる前記最終寸法へ
のプレスが、前記
主パンチ
および前記形成パンチの前記位置の制御の下で行われ、前記形成パンチから前記主パンチへの移行領域において、同程度の圧密および/または表面圧を提供する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記未焼結体の両側に対向して配置された少なくとも2つの凹部の一部が、任意の凹部の外側の前記主面間で測定された最大切削プレート厚さ(D)の20%未満、好ましくは10%未満、特に6%未満に対応する前記凹部の底部間の最小厚さまでプレスされる
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
多軸プレスによって板状の未焼結体を製造するための圧縮ツールであって、
前記未焼結体が、2つの略平行な主面(1a、1b)と、前記主面(1a、1b)を接続する周縁面(3、3a、3b)とを有し、前記未焼結体(10)が硬質金属と結合剤との粉末混合物からなり、
前記圧縮ツールが、前記粉末混合物を受けるためのキャビティ(30)を画定し、互いの方へ移動可能な少なくとも2つの側部パンチを含み、前記側部パンチの前面が、前記未焼結体の前記
周縁面の少なくとも一部を形成するように設けられており、
前記側部パンチの1つがダイの固定側壁と置き換え可能な圧縮ツールにおいて、
前記キャビティの対向する2つの残りの側部上に、共通の軸に沿って互いの方へ移動可能で、主面によって規定された平面に垂直である、2つのヘッディングツールが設けられており、前記ヘッディングツールのそれぞれが、少なくとも2つの部分、すなわち、主パンチおよび独立して移動可能な形成パンチからなり、その断面が少なくとも1つの側部パンチの前記前面まで延び、
前記形成パンチ
の前面が、前記未焼結体の凹部、特に、シンニングを形成するために、前記主パンチ
の前面を越えて前記キャビティの方へ移動可能である
ことを特徴とする、圧縮ツール。
【請求項7】
前記形成パンチが、そのプレス面に向けての平面図において、前記主パンチの前記前面の1/3未満、好ましくは1/5未満に相当する前面を有する
ことを特徴とする、請求項6に記載の圧縮ツール。
【請求項8】
各ヘッディングツールが、対向して配設された縁面に配置される2つの形成パンチを備える
ことを特徴とする、請求項6または7に記載の圧縮ツール。
【請求項9】
前記主パンチおよび前記形成パンチのそれぞれに対して、前記
主パンチ
および前記形成パンチの個々の軸方向位置を判定および制御するための独立した手段、ならびに/または、プレス力および特定の表面圧を判定するための手段が、それぞれ設けられる
ことを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の圧縮ツール。
【請求項10】
互いに対向するヘッディングツールが
、対向する形成パンチの前記前面が、共通軸に沿って見たときに、少なくとも部分的に重なり合っているように配置される
ことを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載の圧縮ツール。
【請求項11】
前記キャビティの閉状態における前記形成パンチの前記前面が、1mm未満、好ましくは0.3mm未満の最小距離を有する
ことを特徴とする、請求項6から10のいずれか一項に記載の圧縮ツール。
【請求項12】
穴あけまたはミーリングのための切削プレート
の製造方法であって、
前記切削プレートが、請求項6から10のいずれか一項に記載の圧縮ツールによって、かつ、未焼結体を形成する請求項1から5のいずれか一項に記載の方法によって、さらに、プレス後に、2つの略平行な主面(1a、1b)と、前記主面の周囲で前記主面の間に延在して前記主面を接続する周縁面(2、3a、3b)とを備える前
記未焼結体を焼結することによって、硬質金属と結合剤との粉末混合物から製造され、前記主面(1a、1b)が、切刃(6a、6b)が凹部の底部
と縁面の少なくとも一部(3a、3b)との交点に形成されるように、前記縁面に少なくとも部分的に延在する前記凹部(4、5)を含む、切削プレートにおいて、
少なくとも1つの凹部の最大深さが、2つの平行な主面間の距離として定義され
る切削プレート厚さの半分の80%より大きい
ことを特徴とする、切削プレート
の製造方法。
【請求項13】
前記プレートの厚さ(D)が、重心を通って、前記主面によって規定され
た平面に平行に測定された前記プレートの最大径の1/2より小さく、好ましくは1/3より小さい
ことを特徴とする、請求項12に記載の切削プレート
の製造方法。
【請求項14】
前記切削プレートが、対向して配置された縁面の前記主面への移行部に切刃を備える両側プレートである
ことを特徴とする、請求項12または13に記載の切削プレート
の製造方法。
【請求項15】
前記粉末混合物を未焼結体にプレスすることによってのみ生成される、チップ破断および/またはチップ形成のための突出部および/または窪み部が、その底部において前記凹部に設けられる
ことを特徴とする、請求項12から14のいずれか一項に記載の切削プレート
の製造方法。
【請求項16】
特に、シンニング(4)の領域における、対向する主面上の凹部の前記底部間の最小距離(d)の、最大プレート厚さ(D)と比較したときの比率が、1/10より小さい、好ましくは1/20より小さい、特に、1/25より小さい
ことを特徴とする、請求項15に記載の切削プレート
の製造方法。
【請求項17】
少なくとも1つの凹部(4a、4b)またはシンニング(5a、5b)の前記底部が、チップ破断および/またはチップ形成のための突出部および/または窪み部(111、112、114、115)を備え、
凹部(4a、4b、104、5a、5b、105)
の底部内の個々の突出部または窪み部が、ノブ(114)および/もしくはディンプルの形状、ならびに/または、溝(112)および/またはリブ(111)の形状を有する
ことを特徴とする、請求項12から16のいずれか一項に記載の切削プレート
の製造方法。
【請求項18】
任意の凹部の前記底部における個々の突出部および/または窪み部が、少なくとも一方向において寸法が2mmを超えない
ことを特徴とする、請求項15に記載の切削プレート
の製造方法。
【請求項19】
前記切削プレートが、前記主面間の、前記主面に平行な中間平面において、前記重心および前記プレート
の先端における終端の中心を通って延在する中心軸のまわりの180°回転に対して対称である
ことを特徴とする、請求項
13から16のいずれか一項に記載の切削プレート
の製造方法。
【請求項20】
前記切削プレートの最薄領域が、前記終端の領域である
ことを特徴とする、
請求項19に記載の切削プレート
の製造方法。
【請求項21】
両側の少なくとも1つの凹部がシンニングの形態であり、
前記主面の両側の前記シンニングが、前記凹部の最低点が前記縁面の同じ位置に接近しているように配置される
ことを特徴とする、請求項12から20のいずれか一項に記載の切削プレート
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質金属成分と結合剤との粉末混合物を多軸プレスして未焼結体を形成し、続いて、プレス後に、2つの略平行な主面と、主面の周囲で主面の間に延在して主面を接続する周縁面とを備える未焼結体を焼結することによって、硬質金属、特に、焼結炭化物から作られる切削プレートを製造する方法に関し、主面は、切刃が凹部の底部と前記縁面の少なくとも一部との交点に形成されるように、縁面に少なくとも部分的に延在する前記凹部を含み、粉末混合物は、前記縁面を形成するために少なくとも第1の方向に沿って移動可能な側部パンチと、粉末混合物を固めるために第1の方向に略垂直に移動可能な少なくとも1つのヘッディングパンチとによって画定されたキャビティを備える圧縮モールドに供給されて、切削プレート未焼結体を形成する。
【0002】
次に、未焼結体は、当該技術分野において知られている標準的な方法に従って焼結されてもよい。
【背景技術】
【0003】
多軸プレスによって板状の未焼結体を製造するための対応する圧縮モールドであって、未焼結体が、2つの略平行な主面と主面を接続する周縁面とによって形成され、硬質金属と結合剤との粉末混合物からなる、圧縮モールドは、粉末混合物を受けるためのキャビティを画定し、少なくとも1つの第1の方向に沿って互いの方へ移動可能な少なくとも2つの側部パンチを含み、前記側部パンチの互いに対向する前面が、未焼結体の縁面の少なくとも一部を形成するように設けられており、あるいは、側部パンチの1つは、ダイの固定側壁によって置き換えられてもよく、少なくとも1つのヘッディングツールは、切削プレートの主面を形成するために、側部パンチの(第1の)移動方向に垂直な方向に沿った粉末混合物の圧縮のための少なくとも1つのパンチを含む。
【0004】
未焼結体の焼結後に得られ、上記の方法および対応する圧縮モールドを使用して作製される切削プレートは、穴あけまたはミーリングのために設計される。切削プレートは、炭化タングステンなどの硬質金属とコバルトなどの結合金属との上記粉末混合物の未焼結体から、対応する圧縮ツールによって製造され、圧縮後、未焼結体は、2つの略平行な主面と、主面を接続する周縁面とを備え、主面は、切刃が凹部の底部と前記縁面の少なくとも一部との交点に形成されるように、縁面に少なくとも部分的に延在する前記凹部を含む。
【0005】
本発明で使用される用語「硬質金属」は、周期表の族IVb~VIbの元素の炭化物、酸化物、および窒化物を指し、工具鋼などの鉄ベース合金または他の鋼材料を含まない。この分野で最も一般的で、最も使用されている硬質金属は、WCである。
【0006】
結合剤を含む焼結材料は多くの場合、「硬質金属」とも呼ばれ、これは、上で定義された硬質金属が主要な成分であり、結合剤の量が通常、20%より小さく、多くの場合、10%より小さいためであるが、さらに、最終的な焼結材料の硬さおよび靭性の特性に対する実質的な影響を有してもよいことに留意してもよい。
【0007】
典型的な結合材は、コバルトであるが、鉄またはニッケルまたはその両方によって、部分的にまたは完全に、置換または補完されてもよい。
【0008】
先行技術によると、一軸圧縮のための典型的な圧縮ツールは、ダイと、少なくとも1つの上側パンチ(ヘッディングツール)および相対する下側パンチ(ヘッディングツール)とからなる。場合によっては、下側パンチが固定されて、ダイおよび上側パンチが移動可能であってもよい。別の方法によると、ダイが固定されて、上側パンチおよび下側パンチが移動する。さらに、上側パンチおよび/または下側パンチの移動方向に垂直に移動可能である1つまたは複数の側部パンチが設けられてもよい。このようなツールは、いわゆる多軸圧縮ツールである。一般に、圧縮モールドおよび、特に、圧縮モールドの可動部材は、個別のパンチごとに、前記可動部材の移動のそれぞれの軸に沿って見たとき、アンダーカットが避けられるように配置および形成される(EP2741911B1およびDE102015107585A1参照)。
【0009】
未焼結体は、固められた後、圧縮ツールから排出され、通常は、1300~1500℃の温度で少なくとも60分間焼結される。
【0010】
焼結時、未焼結体の体積は30%~50%収縮し、それに応じて、長さ寸法は、焼結体を未焼結体と比較すると小さくなる。通常、未焼結体は、本明細書で「主面」と呼ばれる少なくとも2つの略平行な表面を有し、その表面は、1つの次元、すなわち、平行な主面によって規定された平面に垂直な次元における切削プレートの最大厚さを定義している。主面の周囲は、多角形もしくは円形、またはその両方の組合せ、すなわち、対応する円形本体および/または多角形本体の縁面を形成する直線部および曲線部であってもよい。一般に、周面は、主面に略垂直に延在するが、主面に対して90°の角度とは異なる変化する角度で構成されてもよく、または、わずかに角度が付けられてもよい。
【0011】
局所アスペクト比は、上側主面または下側主面、より正確には、厚さ寸法に垂直である、主面によって規定された平面上へ投影した表面積の平方根に対する未焼結体の局所的厚さとして定義されてもよい。
【0012】
それにもかかわらず、少なくとも、主面全体(凹部を含む)にわたってほとんど変化のないかなり小さい局所アスペクト比を有するいくつかの種類の切削プレートのために、プレスおよび焼結プロセスは、粉末混合物の特定の組成および固める際に加えられる圧力にも依存する収縮の量がキャビティを設計するときに考慮されるように、最近数十年にわたって開発されてきた。そして、最終的に焼結された切削プレートは、さらなる処理なしで、適切かつ望ましい寸法を有することができる。それにもかかわらず、多くの場合、特定の幾何学的形状のために切刃、さらに、すくい面は、特に研削による、いくつかの最終的な処理および機械加工を必要とする。
【0013】
しかしながら、場合によっては、特定の切削プレートまたは切削プレートの幾何学的形状のために、研削ディスクは適切にアクセスできず、切刃、すくい面、および逃げ面の設計の自由度を制限する。
【0014】
上記種類の切削プレートについては、焼結後に望ましい寸法を有することができる未焼結体を形成するために粉末混合物を適切にプレスすることは、難しい作業である。縁面との交点で切刃を形成する凹部は、このような凹部の外側の切削プレートの厚さと比較して、かなり深い。厚さ、すなわち、2つの平行な主面によって規定された平面に垂直に測定される、両側の点間の距離は、前記凹部の外側の主面間の厚さと比較したとき、10倍以上変化することがある。よって、このような切削プレートについては、上で定義された局所アスペクト比は、その中に凹部を含む主面上で激しく変化している。これは、少なくとも部分的には、少なくとも、作業中、加工物に係合するときに、ドリル先端またはエンドミルもしくはフライスなどのミーリングツールの対応する前端における、終端などの切削プレートの最も前方に突出した位置になることがある位置での、縁面の幅の望ましい減少のためである。
【0015】
激しく変化する局所アスペクト比を有する切削プレートを提供するために、パンチの前面の形状を適合させることは、すでに試みられた。しかしながら、これは、適切な解決策ではないことがあり、それは、凹部の内側および凹部の外側それぞれでの粉末材料の圧縮の程度が大きく異なる結果になることがあるためである。圧縮の程度が実質的に異なると、プレートの異なる範囲での異なる収縮度合のために、焼結時の最終形状に歪みが生じることがあり、局所的な圧密の不足のために、クラック発生またはポアの危険性が増加することがある。したがって、小さい局所アスペクト比を有する対応する凹部、特に、いわゆる「シンニング」は、これまで、好ましくは研削によって製造されてきた。しかしながら、これは、それぞれの回転する研削ディスクによって得ることができるプロファイルに対する凹部および対応するシンニングの形状の選択肢を必然的に減少させる。研削は、取扱いおよび製造における余分なステップも意味する。
【0016】
さらに、研削ディスクによって、凹部の底に付加的な溝または隆起またはディンプルなどの任意のさらなる構造を生成することはできない。そのような付加構造は、チップを作業場所から簡単に除去できるように、作業中に発生するチップをばらばらにして成形するために、チップブレーカの働きをする可能性がある。
【発明の概要】
【0017】
よって、本発明の目的は、請求項に記載の種類の切削プレートを製造するための方法および装置を提供することであり、それにより、プレスおよび焼結のみによって、精度が高く、研削を必要としないそれぞれの切削プレートの製造が可能となる。切刃に隣接するかなり深い凹部を有するこのような切削プレートをプレスする場合、ポアまたはクラックなどの他の欠点なしに、小さい突出部および/または窪み部を含むことができるプレス用パンチの前面の反転構造に対応する任意の望ましい形状を、それぞれの凹部に与えることが可能でなければならない。
【0018】
それぞれの切削プレートの製造方法に関して、上記の問題の解決策は、請求項1に記載の方法によって提供される。
【0019】
特に、本方法では、主面に垂直に、主面の方に、より正確には、モールドキャビティに充填される粉末混合物の対応する表面の方に移動可能であるヘッディングツールが使用され、そのヘッディングツールは、本明細書では、それぞれ形成パンチおよび主パンチと呼ばれる、少なくとも2つの独立して移動可能なパンチからなる。本発明によると、平行な主面は、主パンチの対応する平坦な前面または表面部分によって形成される。よって、プレスするためのパンチの移動は、凹部を形成する任意の他の前面部分と比較すると窪んでいて、よって、特定の最終的な軸方向位置までの、互いの方への2つの主パンチの移動によって製造される切削プレートの最大厚さを決定する、パンチの平坦な前面部分にも垂直である。
【0020】
ヘッディングツールは2つの部分を備え、その一方は上記の主パンチであり、他方は独立して移動可能な形成パンチであり、第1のプレスステップにおいて、形成パンチは、粉末混合物の方へ移動して、縁面に隣接する未焼結体の予備圧縮部分を形成する。予備圧縮部分は、切削プレートの最小の最終厚さのために提供される部分に対応する。
【0021】
第2のステップにおいて、主パンチおよび形成パンチは通常、それらの最終位置の方へ移動して、平行な主面およびその中に形成された凹部を含む、すべての表面がその最終寸法である未焼結体を提供する。
【0022】
予備プレスの量の適切な選択によって、粉末混合物の一部は、切削プレートのより厚い部分を形成する領域の方へ移され、そのため、主パンチおよび形成パンチの最終的な共通のプレス操作によって、未焼結体の最終寸法が、主パンチおよび形成パンチからの、特に移行領域における略同じ特定の面荷重(圧力)で生成される。
【0023】
次に、未焼結体の異なる部分、特に、より小さい局所アスペクト比からより大きい局所アスペクト比への任意の移行領域は、同程度の圧縮を受け、それにより、一般的な形状の歪みおよび/またはクラックが回避され、焼結時の収縮量の正確な予測が可能となる。2つの平行な移動可能であるパンチ、すなわち、主パンチおよび形成パンチにより、オペレータは、主パンチおよび形成パンチの両方による最終的な共通プレスに対する形成パンチによる予備プレスの量の調整が可能になり、たとえば、そのような移行領域における歪みのない均一な収縮が提供され、切削プレートは正確な最終形状になる。
【0024】
1つの実施形態において、予備プレスおよび最終圧縮は、対向して配置された未焼結体の2つの主面の方へ同時に移動する2つの同一のヘッディングツールによって実行され、前記ヘッディングツールのそれぞれは、少なくとも主パンチと形成パンチとを備える。
【0025】
1つの実施形態において、主パンチおよび形成パンチによる最終寸法へのプレスは、パンチの位置の制御の下で、かつ/または、パンチに作用する力を制御することによって、行われ、形成パンチから主パンチへの移行領域において、同程度の圧密および/または表面圧を提供する。
【0026】
単なる「パンチ」ではなく「ヘッディングツール」という用語が本明細書では使用されているが、それは、各ヘッディングツールは、これらの部材を適切に識別するために、(少なくとも)2つのパンチ、すなわち、いわゆる主パンチと、いわゆる形成パンチとを備えるためである。
【0027】
凹部の底部上の任意の突出部および窪み部の反転形状は、任意のチップ破断および/または案内手段、すなわち、任意に選択された構造の、任意の凹部の底部へのプレスを可能とするために、形成パンチの前面に(および、任意選択的に、主パンチのいくつかの部分内にも)高い精度で機械加工されてもよい。
【0028】
特定のチップ破断構造を生成しなくても、少なくとも凹部およびシンニングのさらなる研削が必要ないような高い精度で、凹部を、よって、縁面との交点に切刃を製造することが可能である。さらに、切刃に隣接する縁面を研削する選択肢があってもいいが、それはアクセスが容易であるためである。
【0029】
よって、形成パンチは、少なくとも最も深い凹部、特に、シンニング、または、切削プレート未焼結体の最小厚さを定義する他の領域を形成およびプレスするために設けられる。キャビティの閉状態における形成パンチの前面は、1mm未満、好ましくは0.5mm未満の最小距離を有してもよい。一般に、最小距離は0.1mmより大きいであろうが、対向する形成パンチの前面は、互いに接触さえしてもよく、たとえば、プレートを通る小さい穴を作製してもよい。これは、任意の凹部の外側の主面間で測定された最大切削プレート厚さ(D)の20%未満、好ましくは10%未満、特に6%未満の最小厚さに対応する。
【0030】
対応するツール、すなわち、プレート形状の未焼結体を製造するための圧縮モールドに関して、上記問題の解決策は、請求項6に記載の特徴によって提供され、それに従って、粉末混合物を受けるキャビティの両側に2つのヘッディングツールが設けられ、これらの場所が主面を表しており、ヘッディングツールのそれぞれは、2つの部分、すなわち、主パンチおよび独立して移動可能な形成パンチからなり、その断面は縁面を形成する少なくとも一方側のパンチの前面まで延び、形成パンチの前面は、凹部、特に、未焼結体のシンニングを形成するために、主パンチの前面を越えてキャビティの方へ独立して移動可能である。
【0031】
上記の方法によって製造される対応する切削プレートおよび圧縮モールドについて、本発明の基礎をなす問題の解決策は、請求項11に記載の切削プレートを提供することによって実現され、その解決策は、切削プレートの主面の少なくとも1つの少なくとも1つの凹部の最大深さが切削プレート厚さの半分の80%より大きいという事実によって特徴づけられ、厚さは、平行な主面によって規定され、これらの平面に垂直に測定される平面間の距離として定義される。
【0032】
本発明の1つの実施形態において、対応する製造方法は、粉末混合物がキャビティに充填される前に側部パンチが閉じられるという事実によって特徴づけられる。次に、側部パンチは、縁面の少なくとも大部分、特に、そして、好ましくは、隣接する凹部の底部との交点で切刃を形成する縁面の部分を形成する。
【0033】
別の実施形態において、本発明による方法は、予備プレスおよび最終プレスが2つの同様に形成されたヘッディングツールによって行われることで特徴づけられ、各ヘッディングツールは、2つのパンチを備え、両側から同時に未焼結体または粉末混合物の方へ接近する。
【0034】
これは、特に、穴あけのための切削プレートに必要とされるような、互いに略同一である主面の形成を保証し、切削プレートは、主面と平行な中間平面に沿って切削プレートの重心を通って延在し、さらに、切削プレートの両側の切刃に接続する終端として形成される切削プレートの先端を通って延在する軸を中心とした180°回転時に対称である。
【0035】
このような終端は、切刃の背後の逃げ面の交点および/または接続部に形成される(短い)頂上であり、逃げ面は、縁面の一部を形成しており、上面図では、主面上に通常100°~160°の角度を含む。穴あけ時、このような終端は、材料に押し込まれる、穴あけツールの最も前方に突出した点であり、したがって、ドリルまたは切削プレートの先端部をあまり弱めることなく、このような終端をできるだけ短く維持することが望ましい。終端の近くの厚さ切削プレートを減少させる(それによって、終端の長さを減少させる)このような窪み部は、「シンニング」とも呼ばれる。
【0036】
したがって、このような終端の長さは、対応するシンニングの深さに依存する。シンニングによって形成された凹部が深いほど、終端はより短くなり、本事例においては、終端は通常、重心および終端を通って延在する、上で定義された切削プレート軸に垂直な主面にわたって測定したときに、今度は、切削プレートの最大寸法によって定義される穴あけ直径の3%より短い。
【0037】
独立して移動可能な形成パンチを考慮して、本発明の1つの実施形態では、主パンチおよび形成パンチの軸方向位置、ならびに/または、主パンチおよび形成パンチに供給される圧縮力の特定の制御が提供され、それにより、主パンチおよび形成パンチの共通の移動による最終寸法へのプレスが、同様の特定の表面圧および同程度の圧密によって行われる。
【0038】
別の選択事項は、個々のパンチによって及ぼされる圧力または力の決定であろう。
【0039】
主パンチおよび形成パンチの「共通の移動」は、必ずしも、両方のパンチが正確に同じストローク距離だけ移動することを意味するというわけではない。むしろ、共通の移動中のストロークの量は、予備プレスの量または未焼結体に作用する圧縮力を含む、さまざまなパラメータに基づいて制御されてもよく、それは、パンチの一方が他方のわずかに前に、前方へのプレス移動を止めてもよいことを意味する可能性がある。
【0040】
すでに述べたように、1つの実施形態において、たとえば、凹部の底面間の最小厚さを生成するために、未焼結体が圧縮され、その最小厚さは、切削プレート厚さの1/5未満に相当する。
【0041】
圧縮モールドに関して、本発明の1つの実施形態において、形成パンチの断面は、その前面の立面視で、主パンチの対応する断面の1/3未満、好ましくは1/5未満である。
【0042】
一般に、形成パンチの断面は、2つの平行な主面のそれぞれに形成される凹部の幅および形状に対応する。
【0043】
特に、対向する形成パンチの断面の重なりは、それぞれの主パンチの前面を越えたそれらの前方突出量とともに、終端の長さ、または、言い換えると、対向して配置された凹部の底面間の最小距離を決定している。よって、形成パンチにより生成された凹部は、切削プレートの先端に設けられる、いわゆる「シンニング」を画定している。
【0044】
閉状態において、対向する形成パンチ間の最小距離は、1mmほどの小ささ、特にさらに0.3mm未満でさえあってもよい。
【0045】
よって、対応する切削プレートは、シンニングを画定する少なくとも1つの凹部を有し、その最大深さは、今度は、2つの平行な主面間の距離として定義される、最大切削プレート厚さの半分の80%より大きい。
【0046】
主面内の任意の凹部は、このような凹部が対向する主面上の対応する凹部からオフセットして配置される限り、切削プレートの最大厚さの半分よりさらに深くてもよいことに留意してもよい。
【0047】
切削プレート厚さは通常、主面および重心と平行に延在する線に沿って測定される縁面の対向する部分の間の最大距離として定義されてもよい、切削プレートの最大幅または径の半分より小さい。
【0048】
1つの実施形態において、切削プレートは、対向して配置された縁面の主面への移行部に切刃を備える両側プレートである。次に、このような切削プレートは、主面に垂直に、プレートの重心を通って延在する軸を中心にした180°回転に対して対称でなければならない。
【0049】
切削プレートは、2つの主面間のプレートを通って延在する中央クランプ穴を有してもよい。そのような穴の軸は、主面に垂直に延在してもよく、または、そのような垂直な延伸から逸脱して、60°などの50°までの主面との角度を含んでもよい。あるいは、主面に垂直に、重心および終端によって形成されるプレートの先端を通って延在する平面の両側に対称的に配置される2つの平行なクランプ穴が設けられてもよい。
【0050】
1つの実施形態において、凹部またはシンニングの底部は、形成パンチによって、かつ、任意選択的にさらに主パンチ(の一部)によって、粉末混合物を固めることによって生成される、チップ破断および/またはチップ形成のための突出部および/または窪み部を備え、前記パンチの前面に、対応する金型構造が設けられる。
【0051】
任意の凹部の底部における個々の突出部および/または窪み部は、少なくとも一方向において2mmを超える寸法にすべきではない。
【0052】
1つの実施形態において、凹部の底部内の個々の突出部または窪み部は、ノブおよび/またはディンプルの形状を有してもよい。
【0053】
あるいは、または、それに加えて、凹部の底部における個々の突出部または窪み部の一部またはすべては、溝および/またはリブの形状を有してもよい。
【0054】
すでに述べたように、シンニング凹部の最大深さは、切削プレートの半分の厚さの少なくとも80%または90%でさえあり、好ましい実施形態では、最大深さは、最大で、任意のシンニングの領域における切削プレート厚さの半分の95または96%でさえあってもよい。シンニング以外の他の凹部の最大深さは、対応する凹部が対向する主面上で互いに対してオフセットされている領域において、プレート厚さの半分の100%を超えさえしてもよい。
【0055】
1つの実施形態において、終端の領域または終端のすぐ近くの領域は、切削プレートの最薄部分である。
【0056】
切刃に隣接する縁面の一部である、切削プレートの逃げ面も構成されてもよく、特に、切刃に沿って延在する狭いランド部の背後に、1つまたは複数の窪んだ領域を備えてもよい。
【0057】
縁面および、特に、逃げ面を形成する部分が、側部パンチによって少なくとも部分的に形成されるので、さらに、逃げ面の任意の構造または窪み部が、側部パンチによって形成されてもよい。
【0058】
別の実施形態において、取付穴は、主面の平面に対してある角度をなして、特に、50°~90°、好ましくは50~80°、特に、主面平面に対して60°で、一方の主面から他方の主面まで切削プレートを通って延在する。
【0059】
一般に、副切刃は、対向して配置された2つの側縁面の、主面のそれぞれ1つへの移行部によって提供され、その副切刃は、終端を通って延在する、上で定義された対称軸に略平行である。それによって、隣接する主切刃とともに切削コーナを形成し、このような切削プレートを備えるツールによってあけられる穴の半径を定義する。あるいは、主切刃から隣接する副切刃への連続的な丸い移行部が形成されてもよい。
【0060】
切削プレートおよびそれらの製造のための対応する方法および装置のさらなる特徴および利点は、好ましい実施形態および関連する図の以下の説明から、より明確になり得る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1A】対称軸を有するドリルプレートとして設計された、本発明による切削プレートの側平面図である。
【
図1B】対称軸を有するドリルプレートとして設計された、本発明による切削プレートの正面図である。
【
図2】このようなキャビティで形成される切削プレートの主面と平行な部分を有するキャビティを定義する圧縮ツールの、
図3の線II-IIに沿った断面図である。
【
図3】
図2の線III-IIIに対応する断面図である。
【
図4】
図2に類似しているが切削プレートのない圧縮ツールの断面図である。
【
図5】本発明による切削プレートの別の実施形態を示す図である。
【
図6】本発明による両側切削プレートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1Aにおいて、主面1a、1bのうちの1つに対する切削プレート10の平面図が示されている。平面図において、切削プレートは、重心、および主面1a、1bに平行な中間平面40における切削プレートの先端の終端7を通って延在し、一点鎖線として示されている対称軸50を有する多角形本体として現れている。
【0063】
図1Bで見ることができるように、切削プレートは、全体的に平面状で平行な2つの主面1a、1bを有し、これらの主面はどちらも、縁面部3a、3bに隣接する、凹部4a、bと、シンニング5a、bとをそれぞれ備えている。頂面および底面1a、1bに接続し、切削プレートを取り囲み、縁面部3a、3bを含む全縁面が、参照番号3によって示されている。凹部4aは、チップ溝4aの底部と縁面部3aとの間の交点によって形成および画定される切刃6aに沿って延在するチップ溝として形成される。同様のチップ溝4bが切削プレートの反対側1b上に設けられ、このチップ溝4bの底部は縁面3bとの交点で切刃6bを形成する。縁面部3a、3bは逃げ面を効果的に形成しており、したがって、これらの縁面部は、主面1a、1bに対して厳密に垂直には延在していないが、たとえば、切刃6a、6bの背後に十分な逃げ角を提供するために、わずかに角度が付けられている。
【0064】
凹部4a、4bは、切刃6a、6bの径方向外側部に隣接するチップ溝を形成している。凹部5a、5bは、切刃6a、6bの径方向内側部に隣接するシンニングとして形成される、すなわち、凹部5a、5bは、切削プレートの先端の頂上として形成される終端7の長さを短くするために、両側1a、1bから互いに接近しており、頂上は逃げ面3a、3bの交点によって形成される。
図1Bから分かるように、切削プレート10は、切削プレートの重心および終端7の中心を通って、すなわち、それぞれ、主面1aおよび1bによって規定された平面間の中間の仮想平面である中間平面40内で延在する軸50を中心にした180°回転に対して対称である。
【0065】
切削プレート10は、主面1a、1bに対して90°に等しい角度または90°から離れた角度で、特に、
図1Bの破線で示されるような約60°などの50~80°の角度で延在する軸を有する中央クランプ穴8を有してもよい。しかしながら、中央クランプ穴8がなくても、切削プレート10は、対応するツールシャフトの前端に設けられたスロットの壁によって固定されてもよい。
【0066】
圧縮ツール20は、
図2~4に関連して示されて、説明される。
【0067】
図2は、
図3の線II-IIに沿った断面による、対応する未焼結体10をプレスするための圧縮ツール20のキャビティの断面である。
図2は、
図1Aに対応する、プレス後の切削プレート10の側平面図も示す。
【0068】
図3は、ツールのキャビティに受けられた切削プレートを含む、
図2の切断線III-IIIに従う断面である。
【0069】
図4は、
図2に類似の圧縮ツールの断面であるが、切削プレートはその中に配置されておらず、それにより、下側ヘッディングの主パンチおよび形成パンチの前面を見ることができる。
【0070】
示されるキャビティ30は、ダイ25の内面のスロットに挿入されたダイインサート25aと、矢印Aに沿って移動可能な2つの側部パンチ21、22と、主パンチ23aおよび形成パンチ24aからなる上側ヘッディングと、主パンチ23bおよび形成パンチ24bからなる下側ヘッディングとによって形成される。キャビティ30の充填前に、2つの側部パンチ21、22が閉じられる、すなわち、2つの側部パンチ21、22は、2つの側部パンチ21、22がそれらの対向して配置された面21a、22aによって互いにかつ/またはダイインサート25aに当接するまで、互いの方へ移動する。
【0071】
図3に示されるように、次に、上側および下側形成パンチ24a、bは、(
図2に示される)矢印Aに垂直な矢印Bに沿って移動し、組み合わされたパンチ23a、b、24a、bの周囲が、側部パンチ21、22とダイインサート25aとの間に形成されたキャビティ空間に嵌合する。
【0072】
次に、キャビティ30には、WCなどの硬質金属成分と、コバルトなどの結合剤との粉末混合物が充填される。その後すぐに、上側ツールヘッドは、形成パンチが、任意選択的に主パンチも、粉末混合物の上面とわずかに接触するまで、キャビティ30の方へ下向きに移動する。粉末混合物に接触する前、形成パンチ24aは、主パンチ23aの前面と同一平面上にあってもよく、または、主パンチ23aの前面を越えて部分的に突出していてもよい。次のステップにおいて、両方の形成パンチ24a、24bは、一定量の予備圧縮が、側部パンチ21、22の一方または両方の前面に隣接する、2つの形成パンチ24a、24bの間で得られるまで、
図3で見ることができる矢印Bに沿って互いの方へ移動するが、それは、形成パンチが、
図1Bで見ることができるシンニング5a、bを形成するように設計および提供されており、縁面3a、3bまで延在するためである。このような予備プレスの量、すなわち、予備プレスステップで到達する形成パンチ24a、bの最終位置、および、任意選択的にまたは代わりに、そのために必要な対応するプレス力は、実験および/またはシミュレーションによって決定する必要があるが、それは、そのような予備プレスの量が、粉末混合物の組成、さらに、切削プレートの最薄部と最厚部との比率によって決まるためである。
【0073】
次のステップにおいて、主パンチ23a、23bも、粉末混合物を圧縮するために、矢印Bで定義された軸に沿って互いの方へ移動する。最終的な圧縮量に到達する前に、パンチの両方の対、すなわち、主パンチ23aおよび形成パンチ24a、ならびに、下側主パンチ23bおよび下側形成パンチ24bは、望ましい位置および圧密に到達するまで、対向して配置されたツールの方へ同時に移動する。任意選択的に、パンチ23a、bおよび24a、bに作用する力も、類似の圧力が、凹部4a、4bおよびシンニング5a、5bを含む、上側表面1aおよび下側表面1bの全体に沿って未焼結体に作用するように考慮かつ適合されてもよい。
【0074】
典型的な圧縮サイクルは1~10秒かかり、その後、上側ヘッディングおよび側部パンチは取り外されてもよく、その結果、たとえば、下側ツール23b、24bを上方に移動させることによって、未焼結体をキャビティから取り出すことができる。
【0075】
前面11上にわずかに突出し、切削プレートの両側にチップ溝4a、4bを形成する主パンチ23a、23bの部分14は、
図4で見ることができる。深いチップ溝4のために、部分形成14は、形成パンチ24a、bの前面上にも設けられてもよい。
【0076】
図1Aは、チップ溝4aとシンニング5aとの間の境界線4cを示すように見えるが、一般的に、それぞれの凹部4a、5aの間は単なるなめらかな移行部であってもよい。ツイストドリルの標準的な定義によると、シンニングは、今度は、チップ溝の軸方向の長さによって定義される、切削部の長さにわたってチップ溝の影響を受けない、中心コア内の任意の除去された部分または窪み部に対応する。
図1Bにおいて、対応する円Kは、切削プレートの最大厚さに対応する直径を有する破線によって示されている。よって、破線の円Kによって定義された円筒内の除去された材料は、シンニング5a、5bと認定されてもよい。
【0077】
さらに、形成パンチ24a、24bの断面は、
図1Aの上部の線4cを含む凹部5a、5bの周囲まで、破線の円Kを越えて延在してもよく、一方それとは対称的に平面状の主パンチ23a、23bの前面11から延在する突出部14は、チップ溝4a、4bの生成のために設けられてもよく、再び、線4cによって区切られてもよい。
【0078】
図5は、いくつかの付加的な修正を含む本発明の別の実施形態を示す。
図5の参照番号は、それぞれの同等の特徴に対してちょうど100を加えることによって、前述の実施形態に対して変更されている。説明を容易にするために、切削プレート100の両側の、同一の特徴および要素に対して、同じ参照番号が使用されている。
【0079】
ここでも、切削プレート100は、2つの主面101(そのうちの1つのみ見ることができる)と、前記主面101からの窪み部または凹部104、105とを備え、凹部104はチップ溝またはチップフルートとして示され、機能し、一方、終端107に隣接する窪み部105はシンニングであり、それは、このシンニングの生成のために、その他の場合にチップ溝104のような凹部による影響を受けない切削プレート100のコアから材料を除去しなければならないためである。
【0080】
さらに、切刃106に隣接する逃げ面が比較的狭いランド103として形成され、続いて、逃げ窪み部113がそれぞれの切刃106に隣接するランド103に対して軸方向に後退している。
【0081】
このような切削プレートの製造のために、複数の側部パンチまたは単一の側部パンチの前面は、たとえば、逃げ面103を形成する切刃106に隣接するランド、ならびに、逃げ窪み部113の両方を形成するように成形されてもよい。終端107は、シンニング105が設けられない場合に切削プレートの全幅にわたって延在することがある対応する頂上よりもかなり短い。シンニング105は、それぞれの主面101から切刃106まで延在する、円弧状底部を有する溝112と、その間の隆起111とをさらに備え、そのため、切刃106は、シンニングおよび終端に隣接する波形を有する。
【0082】
また、切刃106の径方向外側部は、逃げ面103と交わるそれぞれのチップ溝104の湾曲した底部のために、わずかに湾曲している。よって、切刃106は、凹部、より正確には、チップ溝104およびシンニング105から、ランド103によって形成された逃げ面への移行部によって形成される。
【0083】
さらに、ノブ114およびリブ115のようなチップ破断構造は、チップ溝104の底部に設けられてもよく、さらに、シンニング105の底部を形成する溝112および隆起111は、チップフォーマおよびチップブレーカとして働く。
【0084】
図5に示される実施形態では、終端107の実際の長さは、切削プレート厚さDのわずか約3%~8%である。このようなシンニングがなければ、終端107の長さは、少なくとも平行な主面101の間の距離となるであろう。
【0085】
図6は、参照番号210によって示された両側切削プレートとして構成された、本発明の別の実施形態を示す。
【0086】
図6で使用されている参照番号の下2桁は、
図1~5の先の説明のために使用されたものと類似している、または、同じであり、先頭の数字2のみが接頭辞として使用されている。
【0087】
前述の実施形態と同様に、切削プレート210は、2つの平行な頂面および底面を有する本体からなり、頂面201aのみ
図6で見ることができ、一方、切削プレート210が180°回転すると、反対側は正確に同じ外観を有する。よって、
図6に示された図によってのみ切削プレート210を説明すれば十分である。両側切削プレート210は、それぞれ、対向して配置された縁面上に、より詳細には、切刃206aの内側端部から反対側の主面上の切刃206bへの移行部に、短い終端207aおよび207bを有する2つの先端を備える。シンニング205aおよび205cは、反対側の主面(可視でない)上のさらなるシンニングとともに、それぞれの縁面203b、203d(残りの縁面部は見ることができない)への移行部で、切刃206a、206b、206c、206dの内側部分を形成し、それぞれの切刃の内側端部を接続する終端207a、207bを残す。主面201aは、中央部分と2つの外側部分とからなり、わずかにへこんだ凹部211は、主面201aの平面状中心部分と平面状外側部分のそれぞれとの間に配置される。2つの取付穴208a、208bは、主面201aから反対側の主面(可視でない)まで延在し、取付穴の大部分は、わずかにへこんだ凹部211の底部を通って延在する。チップ溝204a、cは、主面201aの対角線上の両側で見ることができる。
【0088】
切削プレート210は、終端207a、207bを通って延在する水平軸、取付穴208a、208bの中心を通って延在する垂直軸のいずれかのまわりの180°の回転に関して対称であり、さらに、他の2本の対称軸が互いに交差する位置でプレートを通って延在する、主面201aに垂直な中心軸のまわりの180°の回転に関しても対称である。
【0089】
ドリルとして使用される対応する切削プレートホルダの前端のスロット内に挿入されるとき、先端すなわち終端207a、207bのうちの一方は無効状態であるが、同時に、他方の先端はスロットから前進方向に突出して、ドリルの先端として使用される。対応する先端207aの切刃206a、206bが使い古されたとき、切削プレートは、取り外して、向きを変え、切削プレートホルダのスロット内に再び取り付けてもよく、それにより、切削先端207bは前進方向に突出し、切刃206cおよび206dが有効な切刃になっている。
【0090】
切削プレートは、ツールホルダの前端のスロット内に取り付けられ、取付ねじは、スロットを限定するツールホルダの壁に設けられた穴に通され、取付穴208a、208bを通って、スロットの他方側を限定する切削プレートホルダの壁に設けられたねじ穴に延在する。
【0091】
本来の開示の目的のために、本明細書、図面、および特許請求の範囲から当業者によって収集されてもよい任意の特徴が、特定のさらなる特徴との関連においてだけ説明される場合にも、これが明確に排除され、または、技術的条件がこのような組合せを不可能もしくは無意味にしない限りは、個別に、ならびに、本明細書に開示された特徴または特徴のグループの他のものとの任意の組合せにおいて、組み合わされてもよいことに留意されたい。考えられてもよい特徴の任意の組合せの包括的で明確な議論は、ただ説明および特許請求の範囲の短さおよび読みやすさだけのために省かれる。