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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ドナー修復鋳型多重ゲノム編集
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/90 20060101AFI20230302BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20230302BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230302BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230302BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230302BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230302BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230302BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20230302BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20230302BHJP
   A61P 31/00 20060101ALN20230302BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20230302BHJP
   A61P 37/04 20060101ALN20230302BHJP
   A61K 35/12 20150101ALN20230302BHJP
   A61K 38/46 20060101ALN20230302BHJP
   A61K 48/00 20060101ALN20230302BHJP
   A61K 35/76 20150101ALN20230302BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALN20230302BHJP
   A61P 35/02 20060101ALN20230302BHJP
   A61K 35/17 20150101ALN20230302BHJP
   A61K 35/28 20150101ALN20230302BHJP
   A61K 35/51 20150101ALN20230302BHJP
   A61K 35/26 20150101ALN20230302BHJP
   A61K 35/13 20150101ALN20230302BHJP
【FI】
C12N15/90 100Z
C12N15/09 100
C12N15/12 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N5/10
C12N5/0783
A61P35/00
A61P31/00
A61P29/00
A61P37/04
A61K35/12
A61K38/46
A61K48/00
A61K35/76
A61K31/7088
A61P35/02
A61K35/17
A61K35/28
A61K35/51
A61K35/26
A61K35/13
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019564394
(86)(22)【出願日】2018-02-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 US2018018370
(87)【国際公開番号】W WO2018152325
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】62/459,203
(32)【優先日】2017-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521438515
【氏名又は名称】2セブンティ バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】リ, ベクスン
(72)【発明者】
【氏名】アストラカーン, アレクサンダー
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/176690(WO,A2)
【文献】特表2016-520308(JP,A)
【文献】国際公開第2016/164356(WO,A1)
【文献】特表2015-525065(JP,A)
【文献】Molecular Therapy-Nucleic Acids,2016年,Vol.5, e352,pp.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’から3’へ、
(a)第1の標的部位のDNA配列5’に対して相同である5’相同アーム
(b)第2の標的部位のDNA配列5’に対して相同である5’相同アーム
(c)入遺伝子
(d)第2の標的部位のDNA配列3’に対して相同である3’相同アーム、および
(e)第1の標的部位のDNA配列3’に対して相同である3’相同アーム、
を含む、DNAドナー修復鋳型。
【請求項2】
前記第1の標的部位および/または前記第2の標的部位までの前記5’および3’相同アームの長さが独立して、約100塩基対~約500塩基対から選択される、請求項1記載のDNAドナー修復鋳型。
【請求項3】
前記第1の標的部位および前記第2の標的部位が、異なる遺伝子中にある、請求項1または2に記載のDNAドナー修復鋳型。
【請求項4】
前記第1の標的部位または前記第2の標的部位が、TCRα遺伝子中または免疫系チェックポイント遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のDNAドナー修復鋳型。
【請求項5】
前記第1の標的部位が、TCRα遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位であり、前記第2の標的部位が、免疫系チェックポイント遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位である、請求項1~のいずれか一項に記載のDNAドナー修復鋳型。
【請求項6】
前記第1の標的部位が、第1の免疫系チェックポイント遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位であり、前記第2の標的部位が、第2の免疫系チェックポイント遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位である、請求項1~のいずれか一項に記載のDNAドナー修復鋳型。
【請求項7】
前記免疫系チェックポイント遺伝子、または第1の免疫系チェックポイント遺伝子および第2の免疫系チェックポイント遺伝子がそれぞれ独立して、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、リンパ球活性化遺伝子3タンパク質(LAG-3)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメインタンパク質3(TIM-3)、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)、バンドTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、T細胞免疫グロブリンおよび免疫受容体チロシン系阻害性モチーフドメイン(TIGIT)、T細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA)、ならびにキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)遺伝子からなる群から選択される、請求項のいずれか一項に記載のDNAドナー修復鋳型。
【請求項8】
任意で、組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)またはレトロウイルスである、請求項1~のいずれか一項に記載のDNAドナー修復鋳型を含む、ウイルスベクター。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のDNAドナー修復鋳型、または請求項に記載のウイルスベクターを含む、細胞。
【請求項10】
前記第1の標的部位が、TCRα遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位であり、前記第2の標的部位が、免疫系チェックポイント遺伝子中または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位である、請求項1~3のいずれか一項に記載のDNAドナー修復鋳型。
【請求項11】
前記第1の標的部位が、第1の免疫系チェックポイント遺伝子中または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位であり、前記第2の標的部位が、第2の免疫系チェックポイント遺伝子中または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位である、請求項1~3のいずれか一項に記載のDNAドナー修復鋳型。
【請求項12】
免疫抑制シグナル伝達成分をコードする前記遺伝子が独立して、インターロイキン受容体10アルファ、形質転換成長因子β受容体I(TGFβRI)、形質転換成長因子β受容体II(TGFβRII)、アリール炭化水素受容体(AHR)、血清およびグルココルチコイド制御キナーゼ1(SGK1)、結節性硬化症複合体2(TSC2)、フォンヒッペル・リンダウ腫瘍抑制因子(VHL)、アデノシンA2a受容体(A2AR)、ならびにCbl癌原遺伝子B(CBLB)からなる群から選択される、請求項10または11に記載のDNAドナー修復鋳型。
【請求項13】
前記導入遺伝子が、操作された抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のDNAドナー修復鋳型。
【請求項14】
前記導入遺伝子が、CARをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項13に記載のDNAドナー修復鋳型。
【請求項15】
前記rAAVが、AAV2由来の1つ以上のITRを有する、請求項8に記載のウイルスベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119(e)条の下、2017年2月15日出願の米国仮特許出願第62/459,203号の利益を主張し、その全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表に関する声明
本出願に関連する配列表は、印刷複写物の代わりにテキスト形式で提供され、これにより参照によって本明細書に組み込まれる。配列表を含有するテキストファイルの名称は、BLBD_084_01WO_ST25.txtである。テキストファイルは30KBであり、2018年2月15日に作成されたものであり、本明細書の出願と同時にEFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0003】
技術分野
本開示は、ゲノム編集における使用のための改善されたドナー修復鋳型組成物に関する。より具体的には、本開示は、ゲノム内の複数の部位を同時に標的とするように設計された単一ドナー修復鋳型に関する。
【背景技術】
【0004】
複数の遺伝子座を効率的かつ同時に編集する能力は、依然として理解が難しいものである。更に、DNA修復鋳型およびゲノム編集ヌクレアーゼ(ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼ系、およびメガTALヌクレアーゼなど)を使用して、複数の標的遺伝子座で相同性指向性修復を推進する能力は、特に困難であることが証明されている。
【0005】
アデノ随伴ウイルス(AAV)DNA修復鋳型は、低い免疫原性を有し、かつ相同性指向性組換えを推進する上で効率的であるため、それらは多くの場合、単一ゲノム遺伝子座の編集のために選択されるが、既存の設計は、複数の遺伝子座を同時に標的とするには好適ではない。複数の遺伝子座を標的とする問題に対する一般的な解決策は、依然として複数のヌクレアーゼおよび複数のDNAドナー修復鋳型を使用することである。この解決策は非効果的であり、かつ臨床用途のための複合ゲノム編集細胞系療法の製造には好適ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
改善された免疫エフェクター細胞組成物、および多重ゲノム編集組成物を使用してそれらを製造する方法が、本明細書において企図される。
【0007】
様々な実施形態において、第1の標的部位に対する第1の相同アーム対と、第2の標的部位に対する第2の相同アーム対と、1つ以上の導入遺伝子とを含む、DNAドナー修復鋳型が提供される。
【0008】
特定の実施形態において、第1の相同アーム対は、第1の標的部位のDNA配列5’に対して相同である5’相同アームと、第1の標的部位のDNA配列3’に対して相同である3’相同アームとを含む。
【0009】
特定の実施形態において、第2の相同アーム対は、第2の標的部位のDNA配列5’に対して相同である5’相同アームと、第2の標的部位のDNA配列3’に対して相同である3’相同アームとを含む。
【0010】
特定の実施形態において、第1の標的部位および/または第2の標的部位までの5’および3’相同アームの長さは独立して、約100塩基対~約2500塩基対から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態において、第1の標的部位および/または第2の標的部位までの5’および3’相同アームの長さは独立して、約100塩基対~約1500塩基対から選択される。
【0012】
追加の実施形態において、第1の標的部位および/または第2の標的部位までの5’および3’相同アームの長さは独立して、約100塩基対~約1000塩基対から選択される。
【0013】
特定の実施形態において、第1の標的部位および/または第2の標的部位までの5’および3’相同アームの長さは独立して、約100塩基対~約500塩基対から選択される。
【0014】
更なる実施形態において、第1の標的部位および/または第2の標的部位までの5’および3’相同アームの長さは、約500塩基対である。
【0015】
いくつかの実施形態において、第1の標的部位および/または第2の標的部位までの5’および3’相同アームの長さは、約300塩基対である。
【0016】
追加の実施形態において、第1の標的部位および/または第2の標的部位までの5’および3’相同アームの長さは、約100塩基対である。
【0017】
特定の実施形態において、第1の標的部位の5’相同アームは、第2の標的部位の5’相同アームの5’に位置する。
【0018】
特定の実施形態において、第1の標的部位の3’相同アームは、第2の標的部位の3’相同アームの5’に位置する。
【0019】
いくつかの実施形態において、第1の標的部位の3’相同アームは、第2の標的部位の3’相同アームの3’に位置する。
【0020】
更なる実施形態において、第1の標的部位の5’相同アームおよび3’相同アームは、第1の導入遺伝子に隣接し、第2の標的部位の5’相同アームおよび3’相同アームは、第2の導入遺伝子に隣接する。
【0021】
更なる実施形態において、第1の標的部位および第2の標的部位は、異なる遺伝子中にある。
【0022】
特定の実施形態において、第1の標的部位または第2の標的部位は、TCRα遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、第1の標的部位または第2の標的部位は、免疫系チェックポイント遺伝子中または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位を含む。
【0024】
特定の実施形態において、第1の標的部位は、TCRα遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位であり、第2の標的部位は、免疫系チェックポイント遺伝子中または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位である。
【0025】
特定の実施形態において、第1の標的部位は、第1の免疫系チェックポイント遺伝子中または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位であり、第2の標的部位は、第2の免疫系チェックポイント遺伝子中または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位である。
【0026】
更なる実施形態において、免疫系チェックポイント遺伝子は独立して、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、リンパ球活性化遺伝子3タンパク質(LAG-3)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメインタンパク質3(TIM-3)、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)、バンドTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、T細胞免疫グロブリンおよび免疫受容体チロシン系阻害性モチーフドメイン(TIGIT)、T細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA)、ならびにキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)遺伝子からなる群から選択される。
【0027】
特定の実施形態において、免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子は独立して、インターロイキン受容体10アルファ、形質転換成長因子β受容体I(TGFβRI)、形質転換成長因子β受容体II(TGFβRII)、アリール炭化水素受容体(AHR)、血清およびグルココルチコイド制御キナーゼ1(SGK1)、結節性硬化症複合体2(TSC2)、フォンヒッペル・リンダウ腫瘍抑制因子(VHL)、アデノシンA2a受容体(A2AR)、ならびにCbl癌原遺伝子B(CBLB)からなる群から選択される。
【0028】
特定の実施形態において、操作されたヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ、メガTAL、TALEN、ZFN、およびCRISPR/Casヌクレアーゼからなる群から選択される。
【0029】
更なる実施形態において、操作されたヌクレアーゼは、I-AabMI、I-AaeMI、I-AniI、I-ApaMI、I-CapIII、I-CapIV、I-CkaMI、I-CpaMI、I-CpaMII、I-CpaMIII、I-CpaMIV、I-CpaMV、I-CpaV、I-CraMI、I-EjeMI、I-GpeMI、I-GpiI、I-GzeMI、I-GzeMII、I-GzeMIII、I-HjeMI、I-LtrII、I-LtrI、I-LtrWI、I-MpeMI、I-MveMI、I-NcrII、I-Ncrl、I-NcrMI、I-OheMI、I-OnuI、I-OsoMI、I-OsoMII、I-OsoMIII、I-OsoMIV、I-PanMI、I-PanMII、I-PanMIII、I-PnoMI、I-ScuMI、I-SmaMI、I-SscMI、およびI-Vdi141Iからなる群から選択されるLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ(LHE)から操作されたメガヌクレアーゼである。
【0030】
いくつかの実施形態において、操作されたヌクレアーゼは、I-CpaMI、I-HjeMI、I-OnuI、I-PanMI、およびSmaMIからなる群から選択されるLHEから操作されたメガヌクレアーゼである。
【0031】
特定の実施形態において、操作されたヌクレアーゼは、I-OnuI LHEである。
【0032】
追加の実施形態において、操作されたヌクレアーゼは、I-SmaMI LHEである。
【0033】
特定の実施形態において、操作されたヌクレアーゼは、TALE DNA結合ドメインおよび操作されたメガヌクレアーゼを含むメガTALである。
【0034】
更なる実施形態において、TALE結合ドメインは、約9.5個のTALE反復単位~約15.5個のTALE反復単位を含む。
【0035】
特定の実施形態において、TALE結合ドメインは、約9.5個のTALE反復単位、約10.5個のTALE反復単位、約11.5個のTALE反復単位、約12.5個のTALE反復単位、約13.5個のTALE反復単位、約14.5個のTALE反復単位、または約15.5個のTALE反復単位を含む。
【0036】
追加の実施形態において、1つ以上の導入遺伝子は、免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、または操作された抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0037】
特定の実施形態において、1つ以上の導入遺伝子は、免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、または操作された抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結したRNAポリメラーゼIIプロモーターを更に含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、1つ以上の導入遺伝子は、1つ以上のCARをコードする。
【0039】
特定の実施形態において、1つ以上のCARは、抗BCMA CARおよび抗CD19 CARからなる群から選択される。
【0040】
更なる実施形態において、RNAポリメラーゼIIプロモーターは、短いEF1αプロモーター、長いEF1αプロモーター、ヒトROSA26遺伝子座、ユビキチンC(UBC)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター、β-アクチンプロモーターおよび骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、負の制御領域欠失、dl587revプライマー結合部位置換(MND)プロモーターからなる群から選択される。
【0041】
更なる実施形態において、ポリヌクレオチドは、1つ以上の免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、または操作された抗原受容体に操作可能に連結した、それらの間に散在した、かつ/またはそれらに隣接する、1つ以上の自己切断ウイルスペプチドを更にコードする。
【0042】
追加の実施形態において、自己切断ウイルスペプチドは、2Aペプチドである。
【0043】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、異種ポリアデニル化シグナルを更に含む。
【0044】
特定の実施形態において、1つ以上の免疫抑制シグナルダンパーは、免疫抑制因子に対抗する酵素機能;免疫抑制因子に結合するエキソドメイン(任意で、エキソドメインは抗体もしくはその抗原結合断片である);免疫抑制因子に結合するエキソドメインおよび膜貫通ドメイン;または免疫抑制因子に結合するエキソドメイン、膜貫通ドメイン、および免疫抑制シグナルを伝達することができない修飾エンドドメインを含む。
【0045】
特定の実施形態において、1つ以上の免疫能エンハンサーは独立して、二重特異性T細胞エンゲージャー分子(BiTE)、免疫増強因子、およびフリップ受容体からなる群から選択される。
【0046】
いくつかの実施形態において、1つ以上の免疫能エンハンサーは独立して、サイトカイン、ケモカイン、細胞毒、サイトカイン受容体、およびそれらのバリアントからなる群から選択される。
【0047】
特定の実施形態において、1つ以上の操作された抗原受容体は独立して、操作されたTCR、CAR、DARIC、またはゼータカインからなる群から選択される。
【0048】
追加の実施形態において、1つ以上の操作された抗原受容体は、CARである。
【0049】
特定の実施形態において、1つ以上のCARは、抗BCMA CARおよび抗CD19 CARからなる群から選択される。
【0050】
様々な実施形態において、本明細書において企図されるDNAドナー修復鋳型を含むウイルスベクターが提供される。
【0051】
更なる実施形態において、ウイルスベクターは、組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)またはレトロウイルスである。
【0052】
特定の実施形態において、rAAVは、AAV2由来の1つ以上のITRを有する。
【0053】
特定の実施形態において、rAAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、およびAAV10からなる群から選択される血清型を有する。
【0054】
いくつかの実施形態において、rAAVは、AAV6血清型を有する。
【0055】
いくつかの実施形態において、レトロウイルスは、レンチウイルスである。
【0056】
追加の実施形態において、レンチウイルスは、インテグラーゼ欠損レンチウイルスである。
【0057】
様々な実施形態において、本明細書において企図されるDNAドナー修復鋳型および/またはウイルスベクターを含む細胞が提供される。
【0058】
特定の実施形態において、1つ以上の導入遺伝子は、相同性指向性修復によって第1の標的部位および第2の標的部位に挿入されている。
【0059】
いくつかの実施形態において、細胞は、造血細胞である。
【0060】
特定の実施形態において、細胞は、免疫エフェクター細胞である。
【0061】
特定の実施形態において、細胞は、CD3+、CD4+、CD8+、またはそれらの組み合わせである。
【0062】
追加の実施形態において、細胞は、T細胞である。
【0063】
更なる実施形態において、細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である。
【0064】
特定の実施形態において、細胞の供給源は、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、または腫瘍である。
【0065】
様々な実施形態において、本明細書において企図されるDNAドナー修復鋳型、ウイルスベクター、または細胞を含む組成物が提供される。
【0066】
様々な実施形態において、生理学的に許容される賦形剤と、本明細書において企図されるDNAドナー修復鋳型、ウイルスベクター、または細胞とを含む組成物が提供される。
【0067】
様々な実施形態において、癌、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、および免疫不全、またはそれらに関連する病態の少なくとも1つの症状を治療、予防、または寛解する方法が提供され、該方法は、有効量の本明細書において企図される組成物を対象に投与することと、任意で、第1の標的部位にDSBを、および第2の標的部位にDSBを導入するように設計された、1つ以上の操作されたヌクレアーゼをコードする、有効量の1つ以上のポリヌクレオチドを対象に投与することとを含む。
【0068】
様々な実施形態において、固形癌を治療する方法が提供され、該方法は、有効量の本明細書において企図される組成物を対象に投与することと、任意で、第1の標的部位および第2の標的部位にDSBを導入するように設計された、1つ以上の操作されたヌクレアーゼをコードする、有効量の1つ以上のポリヌクレオチドを対象に投与することとを含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、固形癌は、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、膀胱癌、脳癌、肉腫、頭頸部癌、骨癌、甲状腺癌、腎臓癌、または皮膚癌を含む。
【0070】
様々な実施形態において、血液学的悪性腫瘍を治療する方法が提供され、該方法は、有効量の本明細書において企図される組成物を対象に投与することと、任意で、第1の標的部位および第2の標的部位にDSBを導入するように設計された、1つ以上の操作されたヌクレアーゼをコードする、有効量の1つ以上のポリヌクレオチドを対象に投与することとを含む。
【0071】
特定の実施形態において、血液学的悪性腫瘍は、白血病、リンパ腫、または多発性骨髄腫である。
[本発明1001]
DNAドナー修復鋳型であって、
(a)第1の標的部位に対する第1の相同アーム対と、
(b)第2の標的部位に対する第2の相同アーム対と、
(c)1つ以上の導入遺伝子と、を含む、DNAドナー修復鋳型。
[本発明1002]
前記第1の相同アーム対が、前記第1の標的部位のDNA配列5’に対して相同である5’相同アームと、前記第1の標的部位のDNA配列3’に対して相同である3’相同アームと、を含む、本発明1001のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1003]
前記第2の相同アーム対が、前記第2の標的部位のDNA配列5’に対して相同である5’相同アームと、前記第2の標的部位のDNA配列3’に対して相同である3’相同アームと、を含む、本発明1001または本発明1002のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1004]
前記第1の標的部位および/または前記第2の標的部位までの前記5’および3’相同アームの長さが独立して、約100塩基対~約2500塩基対から選択される、本発明1001~1003のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1005]
前記第1の標的部位および/または前記第2の標的部位までの前記5’および3’相同アームの長さが独立して、約100塩基対~約1500塩基対から選択される、本発明1001~1004のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1006]
前記第1の標的部位および/または前記第2の標的部位までの前記5’および3’相同アームの長さが独立して、約100塩基対~約1000塩基対から選択される、本発明1001~1005のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1007]
前記第1の標的部位および/または前記第2の標的部位までの前記5’および3’相同アームの長さが独立して、約100塩基対~約500塩基対から選択される、本発明1001~1006のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1008]
前記第1の標的部位および/または前記第2の標的部位までの前記5’および3’相同アームの長さが、約500塩基対である、本発明1001~1007のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1009]
前記第1の標的部位および/または前記第2の標的部位までの前記5’および3’相同アームの長さが、約300塩基対である、本発明1001~1008のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1010]
前記第1の標的部位および/または前記第2の標的部位までの前記5’および3’相同アームの長さが、約100塩基対である、本発明1001~1009のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1011]
前記第1の標的部位の前記5’相同アームが、前記第2の標的部位の前記5’相同アームの5’に位置する、本発明1001~1010のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1012]
前記第1の標的部位の前記3’相同アームが、前記第2の標的部位の前記3’相同アームの5’に位置する、本発明1001~1011のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1013]
前記第1の標的部位の前記3’相同アームが、前記第2の標的部位の前記3’相同アームの3’に位置する、本発明1001~1011のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1014]
前記第1の標的部位の前記5’相同アームおよび前記3’相同アームが、第1の導入遺伝子に隣接し、前記第2の標的部位の前記5’相同アームおよび前記3’相同アームが、第2の導入遺伝子に隣接する、本発明1001~1011のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1015]
前記第1の標的部位および前記第2の標的部位が、異なる遺伝子中にある、本発明1001~1014のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1016]
前記第1の標的部位または前記第2の標的部位が、TCRα遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位を含む、本発明1001~1015のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1017]
前記第1の標的部位または前記第2の標的部位が、免疫系チェックポイント遺伝子中または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位を含む、本発明1001~1015のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1018]
前記第1の標的部位が、TCRα遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位であり、前記第2の標的部位が、免疫系チェックポイント遺伝子中または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位である、本発明1001~1015のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1019]
前記第1の標的部位が、第1の免疫系チェックポイント遺伝子中または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位であり、前記第2の標的部位が、第2の免疫系チェックポイント遺伝子中または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位である、本発明1001~1015のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1020]
前記免疫系チェックポイント遺伝子が独立して、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、リンパ球活性化遺伝子3タンパク質(LAG-3)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメインタンパク質3(TIM-3)、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)、バンドTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、T細胞免疫グロブリンおよび免疫受容体チロシン系阻害性モチーフドメイン(TIGIT)、T細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA)、ならびにキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)遺伝子からなる群から選択される、本発明1017~1019のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1021]
免疫抑制シグナル伝達成分をコードする前記遺伝子が独立して、インターロイキン受容体10アルファ、形質転換成長因子β受容体I(TGFβRI)、形質転換成長因子β受容体II(TGFβRII)、アリール炭化水素受容体(AHR)、血清およびグルココルチコイド制御キナーゼ1(SGK1)、結節性硬化症複合体2(TSC2)、フォンヒッペル・リンダウ腫瘍抑制因子(VHL)、アデノシンA2a受容体(A2AR)、ならびにCbl癌原遺伝子B(CBLB)からなる群から選択される、本発明1017~1019のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1022]
前記操作されたヌクレアーゼが、メガヌクレアーゼ、メガTAL、TALEN、ZFN、およびCRISPR/Casヌクレアーゼからなる群から選択される、本発明1016~1021のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1023]
前記操作されたヌクレアーゼが、I-AabMI、I-AaeMI、I-AniI、I-ApaMI、I-CapIII、I-CapIV、I-CkaMI、I-CpaMI、I-CpaMII、I-CpaMIII、I-CpaMIV、I-CpaMV、I-CpaV、I-CraMI、I-EjeMI、I-GpeMI、I-GpiI、I-GzeMI、I-GzeMII、I-GzeMIII、I-HjeMI、I-LtrII、I-LtrI、I-LtrWI、I-MpeMI、I-MveMI、I-NcrII、I-Ncrl、I-NcrMI、I-OheMI、I-OnuI、I-OsoMI、I-OsoMII、I-OsoMIII、I-OsoMIV、I-PanMI、I-PanMII、I-PanMIII、I-PnoMI、I-ScuMI、I-SmaMI、I-SscMI、およびI-Vdi141Iからなる群から選択されるLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ(LHE)から操作されたメガヌクレアーゼである、本発明1016~1022のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1024]
前記操作されたヌクレアーゼが、I-CpaMI、I-HjeMI、I-OnuI、I-PanMI、およびSmaMIからなる群から選択されるLHEから操作されたメガヌクレアーゼである、本発明1016~1023のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1025]
前記操作されたヌクレアーゼが、I-OnuI LHEである、本発明1016~1024のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1026]
前記操作されたヌクレアーゼが、I-SmaMI LHEである、本発明1016~1024のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1027]
前記操作されたヌクレアーゼが、TALE DNA結合ドメインおよび本発明1022~1026のいずれかの操作されたメガヌクレアーゼを含むメガTALである、本発明1016~1022のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1028]
前記TALE結合ドメインが、約9.5個のTALE反復単位~約15.5個のTALE反復単位を含む、本発明1027のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1029]
前記TALE結合ドメインが、約9.5個のTALE反復単位、約10.5個のTALE反復単位、約11.5個のTALE反復単位、約12.5個のTALE反復単位、約13.5個のTALE反復単位、約14.5個のTALE反復単位、または約15.5個のTALE反復単位を含む、本発明1027のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1030]
前記1つ以上の導入遺伝子が、免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、または操作された抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを含む、本発明1001~1029のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1031]
前記1つ以上の導入遺伝子が、前記免疫能エンハンサー、前記免疫抑制シグナルダンパー、または前記操作された抗原受容体をコードする前記ポリヌクレオチドに操作可能に連結したRNAポリメラーゼIIプロモーターを更に含む、本発明1001~1030のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1032]
前記1つ以上の導入遺伝子が、1つ以上のCARをコードする、本発明1030または本発明1031のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1033]
前記1つ以上のCARが、抗BCMA CARおよび抗CD19 CARからなる群から選択される、本発明1032のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1034]
前記RNAポリメラーゼIIプロモーターが、短いEF1αプロモーター、長いEF1αプロモーター、ヒトROSA26遺伝子座、ユビキチンC(UBC)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター、β-アクチンプロモーターおよび骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、負の制御領域欠失、dl587revプライマー結合部位置換(MND)プロモーターからなる群から選択される、本発明1031のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1035]
前記ポリヌクレオチドが、1つ以上の免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、または操作された抗原受容体に操作可能に連結した、それらの間に散在した、かつ/またはそれらに隣接する、1つ以上の自己切断ウイルスペプチドを更にコードする、本発明1030のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1036]
前記自己切断ウイルスペプチドが、2Aペプチドである、本発明1035のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1037]
前記ポリヌクレオチドが、異種ポリアデニル化シグナルを更に含む、本発明1030~1036のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1038]
前記1つ以上の免疫抑制シグナルダンパーが、免疫抑制因子に対抗する酵素機能;免疫抑制因子に結合するエキソドメイン(任意で、前記エキソドメインが、抗体もしくはその抗原結合断片である);免疫抑制因子に結合するエキソドメインおよび膜貫通ドメイン;または免疫抑制因子に結合するエキソドメイン、膜貫通ドメイン、および免疫抑制シグナルを伝達することができない修飾エンドドメインを含む、本発明1030~1037のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1039]
前記1つ以上の免疫能エンハンサーが独立して、二重特異性T細胞エンゲージャー分子(BiTE)、免疫増強因子、およびフリップ受容体からなる群から選択される、本発明1030~1037のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1040]
前記1つ以上の免疫能エンハンサーが独立して、サイトカイン、ケモカイン、細胞毒、サイトカイン受容体、およびそれらのバリアントからなる群から選択される、本発明1030~1037のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1041]
前記1つ以上の操作された抗原受容体が独立して、操作されたTCR、CAR、DARIC、またはゼータカインからなる群から選択される、本発明1030~1035のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1042]
前記1つ以上の操作された抗原受容体が、CARである、本発明1041のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1043]
前記1つ以上のCARが、抗BCMA CARおよび抗CD19 CARからなる群から選択される、本発明1042のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1044]
本発明1001~1043のいずれかのDNAドナー修復鋳型を含む、ウイルスベクター。
[本発明1045]
前記ウイルスベクターが、組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)またはレトロウイルスである、本発明1044のウイルスベクター。
[本発明1046]
前記rAAVが、AAV2由来の1つ以上のITRを有する、本発明1045のウイルスベクター。
[本発明1047]
前記rAAVが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、およびAAV10からなる群から選択される血清型を有する、本発明1045または本発明1046のウイルスベクター。
[本発明1048]
前記rAAVが、AAV6血清型を有する、本発明1045のウイルスベクター。
[本発明1049]
前記レトロウイルスが、レンチウイルスである、本発明1045のウイルスベクター。
[本発明1050]
前記レンチウイルスが、インテグラーゼ欠損レンチウイルスである、本発明1049のウイルスベクター。
[本発明1051]
本発明1001~1043のいずれかのDNAドナー修復鋳型、または本発明1044~1050のいずれかのウイルスベクターを含む、細胞。
[本発明1052]
前記1つ以上の導入遺伝子が、相同性指向性修復によって前記第1の標的部位および前記第2の標的部位に挿入されている、本発明1051の細胞。
[本発明1053]
前記細胞が、造血細胞である、本発明1051または本発明1052の細胞。
[本発明1054]
前記細胞が、免疫エフェクター細胞である、本発明1051~1053のいずれかの細胞。
[本発明1055]
前記細胞が、CD3 、CD4 、CD8 、またはそれらの組み合わせである、本発明1051~1054のいずれかの細胞。
[本発明1056]
前記細胞が、T細胞である、本発明1051~1055のいずれかの細胞。
[本発明1057]
前記細胞が、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である、本発明1051~1056のいずれかの細胞。
[本発明1058]
前記細胞の供給源が、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、または腫瘍である、本発明1051~1057のいずれかの細胞。
[本発明1059]
本発明1001~1043のいずれかのDNAドナー修復鋳型、本発明1044~1050のいずれかのウイルスベクター、または本発明1051~1058のいずれかの細胞を含む、組成物。
[本発明1060]
生理学的に許容される賦形剤と、本発明1001~1043のいずれかのDNAドナー修復鋳型、本発明1044~1050のいずれかのウイルスベクター、または本発明1051~1058のいずれかの細胞と、を含む、組成物。
[本発明1061]
癌、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、および免疫不全、またはそれらに関連する病態の少なくとも1つの症状を治療、予防、または寛解する方法であって、有効量の本発明1059または本発明1060の組成物を対象に投与することと、任意で、前記第1の標的部位にDSBを、および前記第2の標的部位にDSBを導入するように設計された、1つ以上の操作されたヌクレアーゼをコードする、有効量の1つ以上のポリヌクレオチドを前記対象に投与することと、を含む、方法。
[本発明1062]
固形癌を治療する方法であって、有効量の本発明1059または本発明1060の組成物を前記対象に投与することと、任意で、前記第1の標的部位および前記第2の標的部位にDSBを導入するように設計された、1つ以上の操作されたヌクレアーゼをコードする、有効量の1つ以上のポリヌクレオチドを前記対象に投与することと、を含む、方法。
[本発明1063]
前記固形癌が、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、膀胱癌、脳癌、肉腫、頭頸部癌、骨癌、甲状腺癌、腎臓癌、または皮膚癌を含む、本発明1062の方法。
[本発明1064]
血液学的悪性腫瘍を治療する方法であって、有効量の本発明1059または本発明1060の組成物を前記対象に投与することと、任意で、前記第1の標的部位および前記第2の標的部位にDSBを導入するように設計された、1つ以上の操作されたヌクレアーゼをコードする、有効量の1つ以上のポリヌクレオチドを前記対象に投与することと、を含む、方法。
[本発明1065]
前記血液学的悪性腫瘍が、白血病、リンパ腫、または多発性骨髄腫である、本発明1064の方法。
[本発明1066]
前記第1の標的部位または前記第2の標的部位が、TCRα遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位を含む、本発明1001~1015のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1067]
前記第1の標的部位または前記第2の標的部位が、BCL11A遺伝子座、KLF1遺伝子座、SOX6遺伝子座、GATA1遺伝子座、およびLSD1遺伝子座を含むがこれらに限定されない、γ-グロビン遺伝子発現およびHbFの抑圧に寄与する遺伝子、β-グロビン遺伝子座のサラセミア対立遺伝子、またはβ-グロビン遺伝子座の鎌状化対立遺伝子中の操作されたヌクレアーゼ切断部位を含む、本発明1001~1015のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1068]
前記操作されたヌクレアーゼが、メガヌクレアーゼ、メガTAL、TALEN、ZFN、およびCRISPR/Casヌクレアーゼからなる群から選択される、本発明1067のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1069]
前記操作されたヌクレアーゼが、I-AabMI、I-AaeMI、I-AniI、I-ApaMI、I-CapIII、I-CapIV、I-CkaMI、I-CpaMI、I-CpaMII、I-CpaMIII、I-CpaMIV、I-CpaMV、I-CpaV、I-CraMI、I-EjeMI、I-GpeMI、I-GpiI、I-GzeMI、I-GzeMII、I-GzeMIII、I-HjeMI、I-LtrII、I-LtrI、I-LtrWI、I-MpeMI、I-MveMI、I-NcrII、I-Ncrl、I-NcrMI、I-OheMI、I-OnuI、I-OsoMI、I-OsoMII、I-OsoMIII、I-OsoMIV、I-PanMI、I-PanMII、I-PanMIII、I-PnoMI、I-ScuMI、I-SmaMI、I-SscMI、およびI-Vdi141Iからなる群から選択されるLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ(LHE)から操作されたメガヌクレアーゼである、本発明1067または1068のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1070]
前記操作されたヌクレアーゼが、I-CpaMI、I-HjeMI、I-OnuI、I-PanMI、およびSmaMIからなる群から選択されるLHEから操作されたメガヌクレアーゼである、本発明1067~1069のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1071]
前記操作されたヌクレアーゼが、I-OnuI LHEである、本発明1067~1070のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1072]
前記操作されたヌクレアーゼが、I-SmaMI LHEである、本発明1067~1070のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1073]
前記操作されたヌクレアーゼが、TALE DNA結合ドメインおよび本発明1068~1072のいずれかの操作されたメガヌクレアーゼを含むメガTALである、本発明1067~1072のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1074]
前記TALE結合ドメインが、約9.5個のTALE反復単位~約15.5個のTALE反復単位を含む、本発明1073のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1075]
前記TALE結合ドメインが、約9.5個のTALE反復単位、約10.5個のTALE反復単位、約11.5個のTALE反復単位、約12.5個のTALE反復単位、約13.5個のTALE反復単位、約14.5個のTALE反復単位、または約15.5個のTALE反復単位を含む、本発明1073のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1076]
前記1つ以上の導入遺伝子が、β-グロビン、δ-グロビン、γ-グロビン、β-グロビン A-T87Q 、β-グロビン A-T87Q/K120E/K95E 、またはβ-グロビン A-T87Q/G16D/E22A をコードするポリヌクレオチドを含む、本発明1067~1075のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1077]
前記1つ以上の導入遺伝子が、前記グロビンまたは抗鎌状化グロビンをコードする前記ポリヌクレオチドに操作可能に連結したRNAポリメラーゼIIプロモーターを更に含む、本発明1067~1076のいずれかのDNAドナー修復鋳型。
[本発明1078]
前記RNAポリメラーゼIIプロモーターが、ヒトβ-グロビンLCRおよびプロモーター、短いEF1αプロモーター、長いEF1αプロモーター、ヒトROSA26遺伝子座、ユビキチンC(UBC)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター、β-アクチンプロモーターおよび骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、負の制御領域欠失、dl587revプライマー結合部位置換(MND)プロモーターからなる群から選択される、本発明1077のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1079]
前記ポリヌクレオチドが、1つ以上のグロビンまたは抗鎌状化グロビンに操作可能に連結した、それらの間に散在した、かつ/またはそれらに隣接する、1つ以上の自己切断ウイルスペプチドを更にコードする、本発明1078のDNAドナー修復鋳型。
[本発明1080]
本発明1067~1079のいずれかのDNAドナー修復鋳型を含む、ウイルスベクター。
[本発明1081]
前記ウイルスベクターが、組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)またはレトロウイルスである、本発明1080のウイルスベクター。
[本発明1082]
前記rAAVが、AAV2由来の1つ以上のITRを有する、本発明1081のウイルスベクター。
[本発明1083]
前記rAAVが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、およびAAV10からなる群から選択される血清型を有する、本発明1081または本発明1082のウイルスベクター。
[本発明1084]
前記レトロウイルスが、レンチウイルスである、本発明1081のウイルスベクター。
[本発明1085]
前記レンチウイルスが、インテグラーゼ欠損レンチウイルスである、本発明1081のウイルスベクター。
[本発明1086]
本発明1067~1079のいずれかのDNAドナー修復鋳型、または本発明1080~1085のいずれかのウイルスベクターを含む、細胞。
[本発明1087]
前記1つ以上の導入遺伝子が、相同性指向性修復によって前記第1の標的部位および前記第2の標的部位に挿入されている、本発明1086の細胞。
[本発明1088]
前記細胞が、造血細胞である、本発明1086または本発明1087の細胞。
[本発明1089]
前記細胞が、CD34 細胞である、本発明1086~1088のいずれかの細胞。
[本発明1090]
前記細胞が、CD133 細胞である、本発明1086~1089のいずれかの細胞。
[本発明1091]
本発明1067~1079のいずれかのDNAドナー修復鋳型、本発明1080~1085のいずれかのウイルスベクター、または本発明1086~1090のいずれかの細胞を含む、組成物。
[本発明1092]
生理学的に許容される賦形剤と、本発明1067~1079のいずれかのDNAドナー修復鋳型、本発明1080~1085のいずれかのウイルスベクター、または本発明1086~1090のいずれかの細胞と、を含む、組成物。
[本発明1093]
対象におけるヘモグロビン異常症を治療する方法であって、本発明1086~1090のいずれかの細胞または本発明1091または本発明1092の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
[本発明1094]
対象におけるヘモグロビン異常症の少なくとも1つの症状を寛解する方法であって、本発明1086~1090のいずれかの細胞または本発明1091または本発明1092の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
[本発明1095]
対象におけるサラセミアを治療する方法であって、有効量の本発明1086~1090のいずれかの細胞または本発明1091または本発明1092の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
[本発明1096]
前記サラセミアが、β-サラセミアである、本発明1095の方法。
[本発明1097]
対象における鎌状赤血球症を治療する方法であって、有効量の本発明1086~1090のいずれかの細胞または本発明1091または本発明1092の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
[本発明1098]
対象におけるβ-サラセミアを治療する方法であって、有効量の本発明1086~1090のいずれかの細胞または本発明1091または本発明1092の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】複数のAAVドナー修復鋳型を使用して、複数の標的遺伝子座で相同性指向性修復を推進するための一般的かつ非効果的な戦略を示す。
図2】単一AAVドナー修復鋳型を使用して、複数の標的遺伝子座で相同性指向性修復を効率的に推進するための代表的な本発明の戦略を示す。
図3A】PD-1遺伝子およびTCRα定常領域を同時に標的とする単一AAVドナー修復鋳型の代表的な設計を示す。
図3B】PD-1およびTCRαメガTAL、ならびにPD-1遺伝子およびTCRα定常領域を同時に標的とする単一AAVドナー修復鋳型を使用して、GFPをコードするポリヌクレオチド配列を導入する、相同性指向性修復実験の結果を示す。
図4】CD3発現の欠如によって測定される、TCRα定常領域のノックアウト効率を示す。TCRαメガTALは、単独でまたはPD-1メガTALとともに、80%超のノックアウト効率を示した(レーン3および4)。
図5】PD-1メガTALで治療しなかった細胞(レーン1、3、および5)と比較した、24時間のPMA/イオノマイシン刺激後の、PD-1メガTALで治療した細胞(レーン2および4)におけるPD-1発現の減少を示す。
図6A】PD-1遺伝子およびTCRα定常領域を同時に標的とする単一AAVドナー修復鋳型の代表的な設計を示す。
図6B】PD-1およびTCRαメガTAL、ならびにPD-1遺伝子およびTCRα定常領域を同時に標的とする単一AAVドナー修復鋳型を使用して、BCMA CARをコードするポリヌクレオチド配列を導入する、相同性指向性修復実験の結果を示す。
図7】二重AAVドナーの代表的な実施形態を示す。二重AAVドナーには、単一挿入断片または2つの異なる挿入断片を使用することができる。挿入断片および相同アームの位置および配向は、用途に応じて様々な組み合わせを有することができる。異なる相同アームの数を増加させて、複数の遺伝子座を単一AAVドナーで標的とすることができる。
【0073】
配列識別子の簡潔な説明
配列番号1は、AAVドナー修復鋳型のポリヌクレオチド配列を明記する。
配列番号2は、AAVドナー修復鋳型のポリヌクレオチド配列を明記する。
配列番号3~13は、様々なリンカーのアミノ酸配列を明記する。
配列番号14~38は、プロテアーゼ切断部位および自己切断ポリペプチド切断部位のアミノ酸配列を明記する。
【発明を実施するための形態】
【0074】
A.概要
本明細書において企図される様々な実施形態は一般に、改善されたゲノム編集組成物、およびそれらを使用して改善された免疫エフェクター細胞組成物を製造する方法に部分的に関する。改善されたゲノム編集組成物および方法は、単一DNAドナー修復鋳型を使用したゲノム内の複数の標的部位の編集を可能にし、それにより治療細胞集団における多重ゲノム編集を大いに単純化し、その効率を増加させる。複数のゲノム編集を有する治療細胞は、ヘモグロビン異常症、癌、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、および免疫不全を含むがこれらに限定されない、多数の病態の治療または予防における使用のために企図される。
【0075】
様々な実施形態において、1つ以上の標的部位のゲノム編集を可能にするDNAドナー修復鋳型が提供される。
【0076】
様々な実施形態において、1つ以上の標的部位のゲノム編集を可能にするDNAドナー修復鋳型を含むベクターが提供される。
【0077】
様々な実施形態において、1つ以上の操作されたヌクレアーゼと、1つ以上の標的部位のゲノム編集を可能にするDNAドナー修復鋳型とを含む細胞が提供される。特定の実施形態において、細胞は、造血幹細胞、造血前駆細胞、CD34細胞、免疫エフェクター細胞、およびT細胞を非限定的に含む、造血細胞である。
【0078】
特定の実施形態において、本明細書において企図される多重ゲノム編集に好適な標的部位には、γ-グロビン遺伝子発現、ヘモグロビン異常症、サラセミア、および鎌状赤血球症の抑圧に寄与する1つ以上の遺伝子座が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
複数のゲノム編集を有するゲノム編集された造血幹細胞、造血前駆細胞、またはCD34細胞は、BCL11A遺伝子座、KLF1遺伝子座、SOX6遺伝子座、GATA1遺伝子座、およびLSD1遺伝子座を含むがこれらに限定されない、γ-グロビン遺伝子発現およびHbFの抑圧に寄与する遺伝子、β-グロビン遺伝子座のサラセミア対立遺伝子、またはβ-グロビン遺伝子座の鎌状化対立遺伝子中の1つ以上の編集を含み得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、ゲノム編集を通してグロビン遺伝子発現を正確に破壊または修飾するように設計された、操作されたヌクレアーゼは、治療ヘモグロビン発現の生成を強化し、かつヘモグロビン異常症の少なくとも1つの症状を治療、予防、または寛解し得ることが企図される。
【0080】
特定の実施形態において、本明細書において企図される多重ゲノム編集に好適な標的部位には、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達に寄与する1つ以上の遺伝子座、免疫系チェックポイント遺伝子、および免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
複数のゲノム編集を有するゲノム編集されたT細胞は、TCRアルファ(TCRα)遺伝子座およびTCRベータ(TCRβ)遺伝子座を含むがこれらに限定されない、TCRシグナル伝達に寄与する遺伝子中の1つ以上の編集を含み得る。
【0082】
複数のゲノム編集を有するゲノム編集されたT細胞は、免疫系チェックポイント遺伝子をコードする遺伝子中または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子中の1つ以上の編集を含んでも、それらを更に含んでもよい。免疫系チェックポイント遺伝子および免疫抑制シグナル伝達成分の機能を低減する編集を含むT細胞は、T細胞疲弊に対してより耐性があり、かつ腫瘍環境においてT細胞耐久性および持続性が増加している。
【0083】
免疫系チェックポイント遺伝子の例示的な例には、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、リンパ球活性化遺伝子3タンパク質(LAG-3)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメインタンパク質3(TIM-3)、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)、バンドTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、T細胞免疫グロブリンおよび免疫受容体チロシン系阻害性モチーフドメイン(TIGIT)、T細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA)、ならびにキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子の例示的な例には、インターロイキン10受容体アルファ(IL-10Rα)、形質転換成長因子ベータ受容体1(TGFβR1)、形質転換成長因子ベータ受容体2(TGFβR2)、アイリル(ayrl)炭化水素受容体(AHR)、血清/グルココルチコイド制御キナーゼ1(SGK1)、結節性硬化症複合体2(TSC2)、アデノシンA2A受容体(A2AR)、フォンヒッペル・リンダウ腫瘍抑制因子(VHL)、およびCbl癌原遺伝子B(CBLB)が含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
いかなる特定の理論によっても拘束されることを望むものではないが、1つ以上のTCRシグナル伝達成分の機能を破壊する1つ以上のゲノム編集を含むT細胞は、機能的な内在性TCR発現を実質的に欠如し、それにより潜在的な移植片拒絶を低減するため、かつそれらは、アクセサリーシグナル伝達成分を取り除いて、操作された抗原受容体T細胞の有効性を強化するため、それらは、より安全かつより効果的な養子細胞療法を提供することが企図される。加えて、免疫系チェックポイント遺伝子中または免疫抑制シグナル伝達成分中の1つ以上のゲノム編集を含むT細胞は、T細胞疲弊に対する感受性が低減した、T細胞耐久性が増加した、かつ腫瘍環境におけるT細胞持続性が増加した養子細胞療法を提供する。
【0086】
様々な実施形態において、細胞は、複数の標的部位でDSBを誘導する複数の操作されたヌクレアーゼと、相同性指向性修復(HDR)を通して複数の標的部位に挿入される1つ以上の導入遺伝子をコードするDNAドナー修復鋳型とを含む。
【0087】
特定の実施形態において企図されるDNAドナー修復鋳型における使用に好適な導入遺伝子の例示的な例には、グロビン遺伝子および抗鎌状化グロビン遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
特定の実施形態において企図されるDNAドナー修復鋳型における使用に好適な導入遺伝子の例示的な例には、免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、または操作された抗原受容体が含まれるが、これらに限定されない。いかなる特定の理論によっても拘束されることを望むものではないが、TCRシグナル伝達、免疫系チェックポイント、および/または免疫抑制シグナル伝達に寄与する遺伝子をコードする複数の標的部位の破壊、ならびに免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、または操作された抗原受容体をコードする1つ以上の導入遺伝子の遺伝子座への導入は、遺伝子破壊編集のみ、または免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、もしくは操作された抗原受容体の発現のみを含む養子細胞療法と比較して、結果として得られる養子細胞に、優れた安全性、有効性、耐久性、および/または持続性プロファイルを吹き込むことが企図される。
【0089】
様々な実施形態において、1つ以上の操作されたヌクレアーゼをコードする1つ以上のポリヌクレオチド、および1つ以上の標的部位のゲノム編集を可能にするDNAドナー鋳型を導入することによって、複数の標的部位で細胞のゲノムを編集する方法が提供される。
【0090】
様々な実施形態において、ヘモグロビン異常症、癌、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、および免疫不全、またはそれらに関連する病態の少なくとも1つの症状を、本明細書において企図されるゲノム編集された細胞療法で治療、予防、または寛解する方法が提供される。
【0091】
別段それとは反対に具体的に示されない限り、特定の実施形態の実施は、当該技術分野の範囲内の化学、生化学、有機化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、遺伝学、免疫学、および細胞生物学の従来の方法を用い、それらの多くは、例示目的で後述されている。そのような技術は、文献において十分に説明されている。例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989)、Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,updated July2008)、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience、Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I&II(IRL Press,Oxford,1985)、Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992)、Transcription and Translation(B.Hames&S.Higgins,Eds.,1984)、Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)、Harlow and Lane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998)Current Protocols in Immunology Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991)、Annual Review of Immunology、およびAdvances in Immunologyなどの学術誌における研究書を参照されたい。
【0092】
B.定義
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。特定の実施形態の実施または試験において、本明細書に記載の方法および材料に類似または相当する任意の方法および材料を使用することができるが、組成物、方法、および材料の好ましい実施形態が本明細書に記載される。本発明の目的では、以下の用語が以下に定義される。
【0093】
「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その」は、本明細書において、その冠詞の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つまたは1つ以上)の文法的目的語を指すために使用される。例として、「1つの要素」は、1つの要素または1つ以上の要素を意味する。
【0094】
選択肢(例えば、「または」)の使用は、その選択肢の一方、両方、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味することが理解されたい。
【0095】
「および/または」という用語は、その選択肢の一方または両方を意味することが理解されたい。
【0096】
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、基準となる含量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さに対して、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%だけ変動する含量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さを指す。一実施形態において、「約」または「およそ」という用語は、基準となる含量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さについて、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%の含量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さの範囲を指す。
【0097】
一実施形態において、範囲、例えば、1~5、約1~5、または約1~約5は、その範囲によって包含される各数値を指す。例えば、非限定的かつ単に例示的な一実施形態において、「1~5」という範囲は、1、2、3、4、5;または1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、もしくは5.0;または1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、もしくは5.0という表現に相当する。
【0098】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、基準となる含量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さと比較して、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上である含量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さを指す。一実施形態において、「実質的に同じ」は、基準となる含量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さとおよそ同じである、ある効果、例えば、ある生理学的効果をもたらす、含量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さを指す。
【0099】
本明細書を通して、別段文脈が必要としない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含む(comprising)」という単語は、任意の他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群の排除ではなく、述べられたステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群の包含を暗示することが理解される。「からなる」によって、「からなる」という語句の後に続くものを含み、かつこれらに限定されることが意味される。したがって、「からなる」という語句は、列挙される要素が必要とされるかまたは必須であること、およびいかなる他の要素も存在し得ないことを示す。「から本質的になる」によって、この語句の後に列挙されるあらゆる要素を含み、かつそれらの列挙される要素について本開示に明記される活性または作用と干渉しないかまたはそれらに寄与しない他の要素に限定されることが意味される。したがって、「から本質的になる」という語句は、列挙される要素が必要とされるかまたは必須であること、しかし列挙される要素の活性または作用に実質的に影響を与えるいかなる他の要素も存在しないことを示す。
【0100】
本明細書を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「特定の実施形態」、「追加の実施形態」、「様々な実施形態」、もしくは「更なる実施形態」、またはそれらの複数形もしくは組み合わせに対する言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通した様々な場所での上述の語句の出現は、必ずしも全て同じ実施形態を指すものではない。更に、1つ以上の実施形態において、特定の特徴、構造、または特性は、任意の好適な様式で組み合わせてもよい。一実施形態におけるある特徴の明確な記述は、特定の実施形態において、その特徴を除外するための基礎として機能することもまた理解される。
【0101】
「単離された細胞」は、インビボ組織または器官から得られ、かつ細胞外マトリックスを実質的に含まない、天然に存在しない細胞、例えば、自然界に存在しない細胞、修飾された細胞、操作された細胞などを指す。一実施形態において、単離された細胞は、細胞内に天然に存在しない1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む。
【0102】
「幹細胞」という用語は、(1)長期的な自己再生、または元の細胞の少なくとも1つの同一の複製物を生成する能力、(2)単細胞レベルで、複数のおよびいくつかの例では1つのみの特殊化細胞型への分化、ならびに(3)組織のインビボ機能再生をすることができる未分化細胞である細胞を指す。幹細胞は、それらの発生的な潜在性に従って、全能性、多能性、複能性、および少能性/単能性として細分類される。「自己再生」は、改変されていない娘細胞を生成する特有の能力、および特殊化細胞型(効力)を産生する特有の能力を指す。自己再生は、2つの方法で達成され得る。非対称性細胞分裂は、親細胞と同一である1つの娘細胞と、親細胞とは異なり前駆細胞または分化細胞である1つの娘細胞とを産生する。対称性細胞分裂は、2つの同一の娘細胞を産生する。
【0103】
本明細書で使用される場合、「前駆体」または「前駆細胞」という用語は、細胞が自己再生する能力およびより成熟した細胞へと分化する能力を有することを指す。多くの前駆細胞は単一の系譜に沿って分化するが、非常に広範な増殖能を有し得る。
【0104】
本明細書で使用される場合、「初代細胞」という用語は、ある組織から単離されており、かつインビトロまたはエクスビボでの成長のために確立されている細胞を指すことが当該技術分野において既知である。対応する細胞は、万一存在する場合でも受けている集団倍加は非常に少なく、したがって、連続細胞株と比較して、それらが由来する組織の主要な機能成分をより代表するものであるため、インビボ状態のより代表的なモデルとなっている。様々な組織から試料を得るための方法および初代細胞株を確立するための方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Jones and Wise,Methods Mol Biol.1997を参照されたい)。特定の実施形態において、細胞は、初代細胞である。本明細書において企図される方法における使用のための初代細胞は、臍帯血、胎盤血、動員末梢血、および骨髄に由来する。
【0105】
本明細書で使用される場合、「細胞集団」という用語は、本明細書の他の箇所に記載のように、任意の数および/または組み合わせの同種または異種細胞型で構成され得る複数の細胞を指す。細胞集団は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%の編集される標的細胞型を含み得る。
【0106】
「造血幹細胞」または「HSC」という用語は、骨髄系譜(例えば、単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)、ならびにリンパ系譜(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)、ならびに他の当該技術分野において既知のもの(Fei,Rらの米国特許第5,635,387号、McGlaveらの米国特許第5,460,964号、Simmons,Pらの米国特許第5,677,136号、Tsukamotoらの米国特許第5,750,397号、Schwartzらの米国特許第5,759,793号、DiGuistoらの米国特許第5,681,599号、Tsukamotoらの米国特許第5,716,827号を参照されたい)を含む、ある生物の全ての血液細胞型をもたらす複能性幹細胞を指す。致死的な放射線を浴びた動物またはヒトに移植された場合、造血幹細胞および前駆細胞は、赤血球、好中球-マクロファージ、巨核球、およびリンパ造血細胞プールを再配置させることができる。
【0107】
本明細書で使用される場合、「CD34+細胞」という用語は、その細胞表面上にCD34タンパク質を発現する細胞を指す。本明細書で使用される場合、「CD34」は、多くの場合細胞間接着因子として機能する細胞表面糖タンパク質(例えば、シアロムチンタンパク質)を指す。「CD34」は、造血幹細胞および前駆細胞両方の細胞表面マーカーである。「CD34+」は、造血幹細胞および前駆細胞両方の細胞表面マーカーである。本明細書において企図される特定の実施形態における使用に好適な造血細胞には、CD34+細胞が含まれるが、これに限定されない。本明細書において企図される特定の実施形態における使用に好適な造血細胞には、CD34CD38LoCD90CD45RA細胞、CD34、CD59、Thy1/CD90、CD38Lo/-、C-キット/CD117、およびLin(-)細胞、ならびにCD34、CD133細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
「免疫エフェクター細胞」は、1つ以上のエフェクター機能(例えば、細胞傷害性細胞殺滅活性、サイトカインの分泌、ADCCおよび/またはCDCの誘導)を有する、免疫系の任意の細胞である。特定の実施形態において企図される例示的な免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球、具体的には細胞傷害性T細胞(CTL、CD8T細胞)、TIL、およびヘルパーT細胞(HTL、CD4T細胞)である。一実施形態において、免疫エフェクター細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞を含む。一実施形態において、免疫エフェクター細胞は、ナチュラルキラーT(NKT)細胞を含む。
【0109】
「T細胞」または「Tリンパ球」という用語は、当該技術分野において認識されており、胸腺細胞、ナイーブTリンパ球、未熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、休止Tリンパ球、または活性化Tリンパ球を含むことが意図される。T細胞は、Tヘルパー(Th)細胞、例えば、Tヘルパー1(Th1)細胞またはTヘルパー2(Th2)細胞であり得る。T細胞は、ヘルパーT細胞(HTL、CD4T細胞)CD4T細胞、細胞傷害性T細胞(CTL、CD8T細胞)、腫瘍浸潤細胞傷害性T細胞(TIL、CD8T細胞)、CD4CD8T細胞、CD4CD8T細胞、またはT細胞の任意の他のサブセットであり得る。一実施形態において、T細胞は、NKT細胞である。特定の実施形態における使用に好適な他の例示的なT細胞集団は、ナイーブT細胞およびメモリーT細胞を含む。
【0110】
特定の実施形態において、「強力なT細胞」および「幼若T細胞」は互換的に使用され、T細胞が増殖および同時に分化の減少が可能であるT細胞表現型を指す。特定の実施形態において、幼若T細胞は、「ナイーブT細胞」という表現型を有する。特定の実施形態において、幼若T細胞は、以下の生物学的マーカー、CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122、CD127、CD197、およびCD38のうちの1つ以上または全てを含む。一実施形態において、幼若T細胞は、1つ以上の以下の生物学的マーカー、CD62L、CD127、CD197、およびCD38のうちの1つ以上または全てを含む。一実施形態において、幼若T細胞は、CD57、CD244、CD160、PD-1、CTLA4、TIM3、およびLAG3の発現を欠如する。
【0111】
本明細書で使用される場合、「増殖」という用語は、対称性細胞分裂であるか非対称細胞分裂性であるかに関わらず、細胞分裂の増加を指す。特定の実施形態において、「増殖」は、造血細胞の対称性または非対称細胞分裂を指す。「増殖の増加」は、未治療の試料中の細胞と比較して、治療した試料中の細胞数の増加が存在するときに生じる。
【0112】
本明細書で使用される場合、「分化」という用語は、細胞の効力もしくは増殖を減少させるか、または細胞をより発生的に制限された状態へと移動させる方法を指す。特定の実施形態において、分化T細胞は、免疫エフェクター細胞機能を獲得する。
【0113】
本明細書で使用される場合、「T細胞製造」もしくは「T細胞を製造する方法」という用語、または同等の用語は、T細胞の治療組成物を生成するプロセスを指し、これらの製造方法は、以下のステップ、収集、刺激、活性化、ゲノム編集、および拡大のうちの1つ以上または全てを含み得る。
【0114】
「エクスビボ」という用語は一般に、好ましくは天然条件の改変を最小にして、生物の外部の人工環境において生組織内または生組織上で行われる実験または測定などの、生物の外部で起こる活性を指す。特定の実施形態において、「エクスビボ」手順は、生物から取得し、通常無菌条件下で、典型的には数時間~最大約24時間(しかし状況に応じて最大48または72時間を含む)実験室装置内で培養または修飾した、生細胞または生組織に関与する。特定の実施形態において、そのような組織または細胞は、回収および凍結され、エクスビボ治療のために後に解凍されてもよい。生細胞または生組織を使用した、数日間よりも長く継続する組織培養実験または手順は、典型的には「インビトロ」であると見なされるが、特定の実施形態において、この用語は、エクスビボと互換的に使用され得る。
【0115】
「インビボ」という用語は一般に、細胞自己再生および細胞増殖または拡大などの生物の内部で起こる活性を指す。一実施形態において、「インビボ拡大」という用語は、細胞集団の数がインビボで増加する能力を指す。一実施形態において、細胞は、インビボで操作または修飾される。
【0116】
「刺激」という用語は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)がその同族リガンドと結合し、それによりTCR/CD3複合体を介したシグナル伝達を含むがこれに限定されない、シグナル伝達事象を媒介することによって誘導される一次応答を指す。
【0117】
「刺激分子」は、同族刺激リガンドと特異的に結合するT細胞上の分子を指す。
【0118】
本明細書で使用される場合、「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、およびB細胞など)上に存在するときに、T細胞上の同族結合パートナー(本明細書において「刺激分子」と称される)と特異的に結合することができ、それにより活性化、免疫応答の開始、および増殖を含むがこれらに限定されない、T細胞による一次応答を媒介するリガンドを意味する。刺激リガンドには、CD3リガンド、例えば、抗CD3抗体、およびCD2リガンド、例えば、抗CD2抗体、およびペプチド、例えば、CMV、HPV、EBVペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0119】
「活性化」という用語は、検出可能な細胞増殖を誘導するのに十分に刺激されているT細胞の状態を指す。特定の実施形態において、活性化はまた、サイトカイン産生の誘導および検出可能なエフェクター機能にも関連し得る。「活性化T細胞」という用語は、他のものの中でも特に、増殖しているT細胞を指す。TCR単独を通して生成されるシグナルは、T細胞の完全な活性化には不十分であり、1つ以上の二次シグナルまたは共刺激シグナルもまた必要とされる。したがって、T細胞活性化は、TCR/CD3複合体を通した一次刺激シグナルと、1つ以上の二次共刺激シグナルとを含む。共刺激は、CD3/TCR複合体またはCD2を通した刺激などの一次活性化シグナルを受けたT細胞による増殖および/またはサイトカイン産生によって証明することができる。
【0120】
「共刺激シグナル」は、TCR/CD3連結などの一次シグナルと組み合わせて、T細胞増殖、サイトカイン産生、および/または特定の分子(例えば、CD28)の上方制御もしくは下方制御をもたらすシグナルを指す。
【0121】
「共刺激リガンド」は、共刺激分子に結合する分子を指す。共刺激リガンドは、可溶性であっても、表面上に提供されてもよい。「共刺激分子」は、共刺激リガンド(例えば、抗CD28抗体)と特異的に結合するT細胞上の同族結合パートナーを指す。
【0122】
「抗原(Ag)」は、動物に注射または吸収される組成物(腫瘍特異的タンパク質を含む組成物など)を含む、動物における抗体の産生またはT細胞応答を刺激することができる化合物、組成物、または物質、例えば、脂質、炭水化物、多糖類、糖タンパク質、ペプチド、または核酸を指す。抗原は、開示される抗原などの異種抗原によって誘導されるものを含む、特定の液性免疫または細胞性免疫の生成物と反応する。「標的抗原」または「対象となる標的抗原」は、本明細書において企図される操作された抗原受容体の結合ドメインが結合するように設計されている抗原である。一実施形態において、抗原は、クラスI MHC-ペプチド複合体またはクラスII MHC-ペプチド複合体などのMHC-ペプチド複合体である。
【0123】
「エピトープ」または「抗原決定基」は、結合剤が結合する抗原の領域を指す。
【0124】
本明細書で使用される場合、「単離されたポリヌクレオチド」は、天然に存在する状態でそれに隣接する配列から精製されているポリヌクレオチド、例えば、その断片に通常隣接している配列から除去されているDNA断片を指す。「単離されたポリヌクレオチド」はまた、天然に存在せず、かつ人工的に作製された相補的DNA(cDNA)、組換えDNA、または他のポリヌクレオチドも指す。
【0125】
本明細書で使用される場合、「単離されたタンパク質」、「単離されたペプチド」、または「単離されたポリペプチド」などは、細胞環境から、および細胞の他の成分との会合からの、ペプチド分子またはポリペプチド分子のインビトロ合成、単離、および/または精製を指す(すなわち、それはインビボの物質と有意に会合していない)。
【0126】
「強化する」または「促進する」または「増加させる」または「拡大する」または「増強する」は一般に、本明細書において企図される組成物が、ビヒクルまたは対照のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、より大きな応答(すなわち、生理学的応答)を産生するか、誘発するか、または引き起こす能力を指す。測定可能な応答は、当該技術分野における理解および本明細書における記載から明らかである他のものの中でも特に、触媒活性、結合親和性、結合部位特異性、結合部位選択性、持続性、細胞溶解活性の増加、および/または炎症性サイトカインの増加を含み得る。「増加した」または「強化された」量は、典型的には「統計学的に有意な」量であり、ビヒクルまたは対照によって産生される応答の1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30倍、またはそれ以上(例えば、500、1000倍)(全ての整数、およびそれらの間でかつ1超の小数点、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)の増加を含み得る。
【0127】
「減少させる」または「減らす」または「和らげる」または「低減する」または「軽減する」または「切除する」または「阻害する」または「減衰させる」は一般に、本明細書において企図される組成物が、ビヒクルまたは対照のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、より少ない応答(すなわち、生理学的応答)を産生するか、誘発するか、または引き起こす能力を指す。測定可能な応答は、標的外結合親和性、標的外切断特異性、およびT細胞疲弊などの減少を含み得る。「減少させる」または「低減した」量は、典型的には「統計学的に有意な」量であり、ビヒクルまたは対照によって産生される応答(基準応答)の1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30倍、またはそれ以上(例えば、500、1000倍)(全ての整数、およびそれらの間でかつ1超の小数点、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)の減少を含み得る。
【0128】
「維持する」、または「保存する」、または「維持」、または「変化がない」、または「実質的な変化がない」、または「実質的な減少がない」は一般に、本明細書において企図される組成物が、ビヒクルまたは対照のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、実質的に類似または同等の応答(すなわち、下流効果)を産生するか、誘発するか、または引き起こす能力を指す。同等の応答は、基準応答と有意には異ならないか、または測定可能なほどには異ならない応答である。
【0129】
本明細書で使用される場合、「特異的結合親和性」または「特異的に結合する」または「特異的に結合した」または「特異的結合」または「特異的に標的とする」という用語は、バックグラウンド結合よりも大きな結合親和性での1つの分子の別の分子への結合、例えば、DNAに結合するポリペプチドのDNA結合ドメインを説明する。結合ドメインは、それが例えば、約10-1以上の親和性またはK(すなわち、1/Mの単位を有する特定の結合相互作用の平衡会合定数)で標的部位に結合するか、またはそれと会合する場合に、標的部位に「特異的に結合する」。特定の実施形態において、結合ドメインは、約10-1、10-1、10-1、10-1、1010-1、1011-1、1012-1、または1013-1以上のKで標的部位に結合する。「高親和性」結合ドメインは、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも1010-1、少なくとも1011-1、少なくとも1012-1、少なくとも1013-1、またはそれ以上のKを有する結合ドメインを指す。
【0130】
あるいは、親和性は、Mの単位(例えば、10-5M~10-13M、またはそれ以下)を有する特定の結合相互作用の平衡解離定数(K)として定義することができる。特定の実施形態において企図されるDNA標的部位に対する1つ以上のDNA結合ドメインを含むヌクレアーゼバリアントの親和性は、従来の技術、例えば、酵母細胞表面提示を使用して、または標識リガンドを使用した結合会合アッセイもしくは置換アッセイによって容易に決定することができる。
【0131】
一実施形態において、特異的結合の親和性は、バックグラウンド結合よりも約2倍大きいか、バックグラウンド結合よりも約5倍大きいか、バックグラウンド結合よりも約10倍大きいか、バックグラウンド結合よりも約20倍大きいか、バックグラウンド結合よりも約50倍大きいか、バックグラウンド結合よりも約100倍大きいか、またはバックグラウンド結合よりも約1000倍またはそれ以上大きい。
【0132】
「選択的に結合する」または「選択的に結合した」または「選択的結合」または「選択的に標的とする」という用語は、複数の標的外分子の存在下での、1つの分子の標的分子への優先的な結合(標的内結合)を説明する。特定の実施形態において、HEまたはメガTALは、HEまたはメガTALが標的外DNA標的結合部位に結合するよりも、約5、10、15、20、25、50、100、または1000倍頻繁に標的内DNA結合部位に選択的に結合する。
【0133】
「標的内」は、標的部位配列を指す。
【0134】
「標的外」は、標的部位配列と類似しているが、同一ではない配列を指す。
【0135】
「標的部位」または「標的配列」は、結合および/または切断に十分な条件が存在することを条件として、結合分子が結合および/または切断する核酸の一部分を定義する染色体または染色体外の核酸配列である。標的部位または標的配列の一本の鎖のみに言及するポリヌクレオチド配列または配列番号に言及する場合、ヌクレアーゼバリアントによって結合および/または切断される標的部位または標的配列は二本鎖であり、かつ基準配列およびその成分を含むことが理解される。
【0136】
「組換え」は、非相同末端結合および相同組換えによるドナー捕獲を含むがこれらに限定されない、2つのポリヌクレオチド間で遺伝情報が交換されるプロセスを指す。本開示の目的では、「相同組換え(HR)」は、例えば、相同性指向性修復(HDR)機構を介した細胞内の二本鎖切断の修復中に起こるそのような交換の特殊化形態を指す。このプロセスは、ヌクレオチド配列相同性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経験した分子)を修復するための鋳型として「ドナー」分子を使用し、かつそれはドナーから標的への遺伝情報の転移をもたらすために「非クロスオーバー遺伝子変換」または「ショートトラクト遺伝子変換」として多様に知られている。いかなる特定の理論によっても拘束されることを望むものではないが、そのような転移は、切断された標的とドナーとの間に形成されるヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ補正、および/またはドナーを使用して標的の一部となる遺伝情報を再合成する「合成依存的鎖アニーリング」、および/または関連プロセスに関与し得る。そのような特殊化HRは多くの場合、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全部が標的ポリヌクレオチドに組み込まれるような標的分子の配列の改変をもたらす。
【0137】
「NHEJ」または「非相同末端結合」は、ドナー修復鋳型または相同配列の不在下での二本鎖切断の解決を指す。NHEJは、切断部位における挿入および欠失をもたらし得る。NHEJは、各々が異なる変異結果を有するいくつかの下位経路によって媒介される。古典的NHEJ経路(cNHEJ)は、KU/DNA-PKcs/Lig4/XRCC4複合体を必要とし、最小のプロセシングによって末端を再びともに連結し、多くの場合切断の正確な修復をもたらす。代替的なNHEJ経路(altNHEJ)もまたdsDNA切断を解決する上で活性であるが、これらの経路はより著しく変異原性であり、多くの場合挿入および欠失によって特徴付けられる切断の不正確な修復をもたらす。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、例えば、エキソヌクレアーゼ、例えば、Trex2などの末端プロセシング酵素によるdsDNA切断の修飾が、修復をaltNHEJ経路の方に偏らせることが企図される。
【0138】
「切断」は、DNA分子の共有結合骨格の切断を指す。切断は、リン酸ジエステル結合の酵素加水分解または化学加水分解を含むがこれらに限定されない、様々な方法によって開始され得る。一本鎖切断および二本鎖切断の両方が可能である。二本鎖切断は、2つの異なる一本鎖切断事象の結果として生じ得る。DNA切断は、平滑末端またはねじれ型末端のいずれかの生成をもたらし得る。特定の実施形態において、本明細書において企図されるポリペプチドおよびヌクレアーゼバリアント、例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアント、メガTALなどが、標的二本鎖DNA切断に使用される。エンドヌクレアーゼ切断認識部位は、いずれのDNA鎖上にあってもよい。
【0139】
「外因性」分子は、通常は細胞内に存在しないが、1つ以上の遺伝学的方法、生化学的方法、または他の方法によって細胞に導入される分子である。例示的な外因性分子には、小有機分子、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖類、上記の分子の任意の修飾誘導体、または上記の分子のうちの1つ以上を含む任意の複合体が含まれるが、これらに限定されない。外因性分子を細胞に導入するための方法は当業者にとって既知であり、それらには脂質媒介性転移(すなわち、中性およびカチオン性脂質を含むリポソーム)、電気穿孔、直接注入、細胞融合、微粒子銃、バイオポリマーナノ粒子、リン酸カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン媒介性転移、ならびにウイルスベクター媒介性転移が含まれるが、これらに限定されない。
【0140】
「内在性」分子は、特定の環境条件下、特定の発生段階で特定の細胞内に通常存在する分子である。追加の内在性分子は、タンパク質を含み得る。
【0141】
「遺伝子」は、遺伝子産物をコードするDNA領域、およびそのような制御配列がコード配列および/または転写配列に隣接しているかに関わらず、遺伝子産物の産生を制御する全てのDNA領域を指す。遺伝子には、プロモーター配列、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界領域、ターミネーター、ポリアデニル化配列、転写後応答エレメント、翻訳制御配列(リボソーム結合部位および配列内リボソーム進入部位など)、複製開始点、マトリックス結合領域、ならびに遺伝子座制御領域が含まれるが、これらに限定されない。
【0142】
「遺伝子発現」は、ある遺伝子中に含有される情報の遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接的な転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA、もしくは任意の他の種類のRNA)またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であり得る。遺伝子産物はまた、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、および編集などのプロセスによって修飾されるRNA、ならびに例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリスチル化、およびグリコシル化によって修飾されるタンパク質も含み得る。
【0143】
本明細書で使用される場合、「遺伝子操作された」または「遺伝子組換えの」という用語は、DNAまたはRNAの形態の追加の遺伝子材料の、細胞内の全遺伝子材料への染色体付加または染色体外付加を指す。遺伝子組換えは、細胞のゲノム内の特定の部位を標的としても、標的としなくてもよい。一実施形態において、遺伝子組換えは、部位特異的である。一実施形態において、遺伝子組換えは、部位特異的ではない。
【0144】
本明細書で使用される場合、「ゲノム編集」という用語は、細胞のゲノム内の標的部位における遺伝子材料の置換、欠失、および/または導入を指し、これらは、遺伝子または遺伝子産物の発現を回復、補正、破壊、および/または修飾する。特定の実施形態において企図されるゲノム編集は、1つ以上のヌクレアーゼバリアントを細胞に導入して、任意でドナー修復鋳型の存在下で、細胞のゲノム内の標的部位またはその近位でDNA損傷を生成することを含む。
【0145】
本明細書で使用される場合、「遺伝子療法」という用語は、追加の遺伝子材料の、細胞内の全遺伝子材料への導入を指し、これは、遺伝子もしくは遺伝子産物の発現を回復、補正、もしくは修飾するか、または治療ポリペプチドを発現させることを目的とする。特定の実施形態において、遺伝子もしくは遺伝子産物の発現を回復、補正、破壊、もしくは修飾するか、または治療ポリペプチドを発現させることを目的とするゲノム編集による、遺伝子材料の細胞のゲノムへの導入は、遺伝子療法と見なされる。
【0146】
本明細書で使用される場合、「個体」および「対象」という用語は多くの場合、互換的に使用され、本明細書の他の箇所で企図されるヌクレアーゼバリアント、ゲノム編集組成物、遺伝子療法ベクター、ゲノム編集ベクター、ゲノム編集された細胞、および方法で治療することができる免疫不全の症状を呈する任意の動物を指す。好適な対象(例えば、患者)には、実験室動物(マウス、ラット、ウサギ、もしくはモルモット)、家畜、および飼育動物またはペット(ネコもしくはイヌなど)が含まれる。非ヒト霊長類、および好ましくはヒト対象が含まれる。典型的な対象は、免疫不全を有するか、免疫不全と診断されているか、または免疫不全を有するリスクがあるヒト患者を含む。
【0147】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、本明細書の他の箇所で企図されるヌクレアーゼバリアント、ゲノム編集組成物、遺伝子療法ベクター、ゲノム編集ベクター、ゲノム編集された細胞、および方法で治療することができる免疫不全と診断されている対象を指す。
【0148】
本明細書で使用される場合、「自己」は、ドナーおよびレシピエントが同じ対象である細胞を指す。
【0149】
本明細書で使用される場合、「同種異系間」は、ドナー種およびレシピエント種が同じであるが、細胞は遺伝子的に異なる細胞を指す。
【0150】
本明細書で使用される場合、「同系間」は、ドナー種およびレシピエント種が同じであり、ドナーおよびレシピエントが異なる個体であり、かつドナー細胞およびレシピエント細胞が遺伝子的に同一である細胞を指す。
【0151】
本明細書で使用される場合、「異種間」は、ドナー種およびレシピエント種が異なる細胞を指す。
【0152】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療すること」は、ある疾患または病態の症状または病理に対する任意の有益なまたは所望される効果を含み、治療される疾患または病態(例えば、ヘモグロビン異常症、癌、GVHD、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、および免疫不全)の1つ以上の測定可能なマーカーの最小の低減さえも含み得る。治療は、任意で疾患または病態の進行を遅延させることを伴い得る。「治療」は、必ずしも疾患もしくは病態またはそれに関連する症状の完全な根絶または治癒を示すものではない。
【0153】
本明細書で使用される場合、「予防する」および「予防」、「予防される」、「予防すること」などの類似の用語は、疾患または病態(例えば、ヘモグロビン異常症、癌、GVHD、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、および免疫不全)の発生または再発の可能性を予防、阻害、または低減するためのアプローチを示す。それはまた、疾患もしくは病態の発症もしくは再発を遅延させること、または疾患もしくは病態の症状の発生もしくは再発を遅延させることも指す。本明細書で使用される場合、「予防」および類似の用語はまた、疾患または病態の発症または再発前に、疾患または病態の強度、効果、症状、および/または負荷を低減することも含む。
【0154】
本明細書で使用される場合、「の少なくとも1つの症状を寛解させる」という用語は、対象が治療されている疾患または病態(例えば、ヘモグロビン異常症、癌、GVHD、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、および免疫不全)の少なくとも1つの症状を減少させることを指す。特定の実施形態において、治療されているヘモグロビン異常症またはヘモグロビン異常症の病態は、β-サラセミアであり、寛解される1つ以上の症状には、脱力感、疲労、蒼白外見、黄疸、顔面骨奇形、緩慢成長、腹部膨満、暗色尿、(輸血の不在下での)鉄欠乏症、頻繁な輸血の必要性が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、治療されているヘモグロビン異常症またはヘモグロビン異常症の病態は、鎌状赤血球症(SCD)であり、寛解される1つ以上の症状には、貧血;腹部、胸部、骨、または関節における疼痛などの疼痛の原因不明のエピソード;手または足の腫脹;腹部膨満;発熱;頻繁な感染;蒼白皮膚または爪床;黄疸;成長遅延;視覚障害;脳卒中の兆候または症状;(輸血の不在下での)鉄欠乏症、頻繁な輸血の必要性が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、治療されている疾患または病態は、癌であり、寛解される1つ以上の症状には、脱力感、疲労、息切れ、易皮下出血性および易出血性、頻繁な感染、リンパ節腫大、(腹部器官腫大による)腹部膨隆または有痛腹部、骨痛および関節痛、骨折、予定外体重減少、食欲不振、寝汗、持続性微熱、ならびに(腎機能障害による)排尿減少が含まれるが、これらに限定されない。
【0155】
本明細書で使用される場合、「量」という用語は、有益なまたは所望される予防結果または治療結果(臨床結果を含む)を達成するのに十分な、「有効である量」または「有効量」のDNAドナー修復鋳型、ヌクレアーゼバリアント、ゲノム編集組成物、またはゲノム編集された細胞を指す。
【0156】
「予防有効量」という用語は、所望される予防結果を達成するのに十分な、DNAドナー修復鋳型、ヌクレアーゼバリアント、ゲノム編集組成物、またはゲノム編集された細胞の量を指す。典型的ではあるが必ずしもそうでなくてもよいが、予防用量は、疾患前または疾患初期に対象において使用されるため、予防有効量は、治療有効量未満である。
【0157】
「治療有効量」のDNAドナー修復鋳型、ヌクレアーゼバリアント、ゲノム編集組成物、またはゲノム編集された細胞は、個体の病状、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望される応答を誘発する能力などの因子に応じて変動し得る。治療有効量はまた、治療的に有益な効果がいかなる有毒または有害な効果にも勝るような量である。「治療有効量」という用語は、対象(例えば、患者)を「治療する」のに有効な量を含む。治療量が示される場合、投与されるべき正確な量の、特定の実施形態において企図される組成物は、本明細書を鑑みて、かつ年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の程度、および患者(対象)の病態における個々の差を考慮して、医師により決定され得る。
【0158】
本明細書で使用される場合、「ヘモグロビン異常症」または「ヘモグロビン異常症の病態」という用語は、ヘモグロビンの構造の改変および/または合成から生じる異常なヘモグロビン分子の存在を伴う多様な群の遺伝性血液障害を指す。
【0159】
「免疫不全」は、免疫系からの応答を惹起する疾患を指す。特定の実施形態において、「免疫不全」という用語は、癌、移植片対宿主病、自己免疫疾患、または免疫不全を指す。一実施形態において、免疫不全は、感染性疾患を包含する。
【0160】
本明細書で使用される場合、「癌」という用語は一般に、異常な細胞が制御されずに分裂し、かつ近くの組織に浸潤し得る、あるクラスの疾患または病態に関連する。
【0161】
本明細書で使用される場合、「悪性」という用語は、腫瘍細胞群が、制御されない成長(すなわち、正常な限度を超えた分裂)、浸潤(すなわち、隣接している組織への侵入およびそれらの破壊)、ならびに転移(すなわち、リンパまたは血液を介した体内の他の位置への伝播)のうちの1つ以上を示す癌を指す。
【0162】
本明細書で使用される場合、「転移する」という用語は、身体の一部分から別の部分への癌の伝播を指す。伝播した細胞によって形成される腫瘍は、「転移性腫瘍」または「転移」と呼ばれる。転移性腫瘍は、元の(原発)腫瘍内の細胞と同様の細胞を含有する。
【0163】
本明細書で使用される場合、「良性」または「非悪性」という用語は、より大きく成長する可能性があるが、身体の他の部分には伝播しない腫瘍を指す。良性腫瘍は自己限定的であり、典型的には浸潤または転移しない。
【0164】
「癌細胞」または「腫瘍細胞」は、癌性腫瘍または組織の個々の細胞を指す。腫瘍は一般に、異常な細胞成長によって形成される腫脹または病変を指し、これらは、良性、前悪性、または悪性であり得る。ほとんどの癌は腫瘍を形成するが、いくつかの癌、例えば、白血病は必ずしも腫瘍を形成しない。腫瘍を形成する癌について、癌(細胞)および腫瘍(細胞)は互換的に使用される。ある個体における腫瘍の量は、その腫瘍の数、体積、または重量として測定することができる「腫瘍負荷」である。
【0165】
「移植片対宿主病」または「GVHD」は、細胞、組織、または固形臓器移植後に生じ得る合併症を指す。GVHDは幹細胞または骨髄移植後に生じる可能性があり、移植されたドナー細胞が移植レシピエントの身体を攻撃する。ヒトにおける急性GVHDは移植後60日以内に起こり、細胞溶解性リンパ球の作用によって皮膚、肝臓、および腸に対する損傷をもたらす。慢性GVHDはより後に生じ、主に皮膚を冒す全身性自己免疫疾患であり、B細胞のポリクローナル活性化ならびにIgおよび自己抗体の過剰産生をもたらす。実質器官移植の移植片対宿主病(SOT-GVHD)は、2つの形態で生じる。より一般的な種類は抗体媒介性であり、血液型A、B、またはABを有するレシピエントにおいて、血液型Oを有するドナーからの抗体がレシピエントの赤血球を攻撃し、軽度の一過的な溶血性貧血をもたらす。SOT-GVHDの第2の形態は、高い死亡率を有する細胞型に関連するものであり、ドナー由来のT細胞が、(ほとんどの場合、皮膚、肝臓、胃腸管、および骨髄における)免疫学的に異なる宿主組織に対する免疫学的攻撃を産生し、これらの器官において合併症をもたらす。
【0166】
「移植片対白血病」または「GVL」は、ドナーの移植された組織(骨髄または末梢血など)に存在する免疫細胞による、人の白血病細胞に対する免疫応答を指す。
【0167】
「自己免疫疾患」は、身体がそれ自体の組織のいくつかの構成物に対する免疫原性(すなわち、免疫系)応答を産生する疾患を指す。換言すると、免疫系は、体内のいくつかの組織または系を「自己」として認識するその能力を失い、それが異質であるかの如くそれを標的とし、攻撃してしまう。自己免疫疾患の例示的な例には、関節炎、炎症性腸疾患、橋本甲状腺炎、グレーブス病、ループス、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、溶血性貧血、抗免疫甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、セリアック病、クローン病、大腸炎、糖尿病、強皮症、および乾癬などが含まれるが、これらに限定されない。
【0168】
「免疫不全」は、疾患または化学物質の投与によって免疫系が損なわれている患者の状態を意味する。この病態により、系は、異物に対する防御に必要とされる血液細胞の数および種類を欠損してしまう。免疫不全病態または疾患は、当該技術分野において既知であり、それらには、例えば、AIDS(後天性免疫不全症候群)、SCID(重症複合免疫不全症)、選択的IgA欠損症、分類不能免疫不全症、X連鎖無ガンマグロブリン血症、慢性肉芽腫症、高IgM症候群、ウィスコット・オルドリッチ症候群(WAS)、および糖尿病が含まれる。
【0169】
「感染性疾患」は、人から人へと、または生物から生物へと伝染し得、かつ微生物因子またはウイルス因子(例えば、感冒)によって引き起こされる疾患を指す。感染性疾患は、当該技術分野において既知であり、それらには、例えば、肝炎、性行為感染症(例えば、クラミジア、淋病)、結核、HIV/AIDS、ジフテリア、B型肝炎、C型肝炎、コレラ、およびインフルエンザが含まれる。
【0170】
C.ドナー修復鋳型
本明細書において企図されるドナー修復鋳型は、単一ドナー分子および1つ以上の操作されたヌクレアーゼを使用した多重ゲノム編集に好適である。本明細書において企図されるドナー修復鋳型は、扱いにくく、かつ多くの場合編集の繰り返しならびに編集される各遺伝子座について別個のドナー鋳型および対応する操作されたヌクレアーゼを必要とする既存の方法と比較して、飛躍的な改善を提供する。特定の実施形態において、複数の操作されたヌクレアーゼを使用して、DSBを複数の標的部位に導入し、DSBは、複数の標的部位を標的とする単一DNAドナー修復鋳型の存在下で、相同性指向性修復(HDR)機構を通して標的部位の各々において修復される。
【0171】
特定の実施形態において、DNAドナー修復鋳型を使用して、1つ以上の配列をゲノム内の複数の部位に挿入する。特定の好ましい実施形態において、ドナー修復鋳型を使用して、ゲノム内の複数の標的部位配列を修復または修飾する。
【0172】
様々な実施形態において、造血細胞(例えば、HSC、CD34細胞、T細胞など)に、ドナー修復鋳型を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス、IDLVなど)、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、またはワクシニアウイルスベクターを形質導入することによって、ドナー修復鋳型が導入される。
【0173】
特定の実施形態において、造血細胞(例えば、HSC、CD34細胞、T細胞など)に、ドナー修復鋳型を含む一本鎖DNA、二本鎖DNA、プラスミド、またはミニサークルDNAを導入することによって、ドナー修復鋳型が導入される。
【0174】
様々な実施形態において、DNAドナー修復鋳型は、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームを含む。
【0175】
様々な実施形態において、DNAドナー修復鋳型は、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アーム対を含み、各相同アーム対は、1つ以上の導入遺伝子に隣接する。
【0176】
いくつかの実施形態において、DNAドナー修復鋳型は、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アーム対を含み、各相同アーム対は、異なる導入遺伝子に隣接する。
【0177】
様々な実施形態において、DNAドナー修復鋳型は、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アーム対を含み、各相同アーム対は、1つ以上の導入遺伝子に隣接し、相同アーム対の少なくとも2つが、同じ導入遺伝子に隣接する。
【0178】
「相同アーム対」は、2本の相同アームの群を指す。特定の実施形態において、相同アーム対は、5’相同アームおよび3’相同アームを含む。「5’相同アーム」は、標的部位(例えば、二本鎖切断部位)のDNA配列5’と同一、またはほぼ同一、または相同であるポリヌクレオチド配列を指す。「3’相同アーム」は、標的部位のDNA配列3’と同一、またはほぼ同一、または相同であるポリヌクレオチド配列を指す。特定の実施形態において、相同アーム対は、標的部位の再切断を最小化するための標的部位の変異を有する、二本鎖切断の標的部位を含むポリヌクレオチド配列を含む相同アームを含む。特定の実施形態において、相同アーム対における相同アームのいずれか一方または両方は独立して、標的部位から約100塩基対、約200塩基対、約300塩基対、約400塩基対、約500塩基対、約600塩基対、約700塩基対、約800塩基対、約900塩基対、約1000塩基対、約1100塩基対、約1200塩基対、約1300塩基対、約1400塩基対、約1500塩基対、約1600塩基対、約1700塩基対、約1800塩基対、約1900塩基対、約2000塩基対、約2100塩基対、約2200塩基対、約2300塩基対、約2400塩基対、約2500塩基対、約2600塩基対、約2700塩基対、約2800塩基対、約2900塩基対、または約3000塩基対(標的部位からの全ての介在する距離を含む)に位置する。
【0179】
特定の実施形態において、企図される相同アームの好適な長さの例示的な例は、独立して選択することができ、それらには、約100塩基対、約200塩基対、約300塩基対、約400塩基対、約500塩基対、約600塩基対、約700塩基対、約800塩基対、約900塩基対、約1000塩基対、約1100塩基対、約1200塩基対、約1300塩基対、約1400塩基対、約1500塩基対、約1600塩基対、約1700塩基対、約1800塩基対、約1900塩基対、約2000塩基対、約2100塩基対、約2200塩基対、約2300塩基対、約2400塩基対、約2500塩基対、約2600塩基対、約2700塩基対、約2800塩基対、約2900塩基対、または約3000塩基対、またはそれよりも長い相同アーム(全ての介在する長さの相同アームを含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【0180】
好適な相同アーム長さの追加の例示的な例には、約100塩基対~約600塩基対、約100塩基対~約500塩基対、約100塩基対~約400塩基対、約100塩基対~約300塩基対、約100塩基対~約200塩基対、約200塩基対~約600塩基対、約200塩基対~約500塩基対、約200塩基対~約400塩基対、約200塩基対~約300塩基対、約300塩基対~約600塩基対、約300塩基対~約500塩基対、約100塩基対~約3000塩基対、約200塩基対~約3000塩基対、約300塩基対~約3000塩基対、約400塩基対~約3000塩基対、約500塩基対~約3000塩基対、約500塩基対~約2500塩基対、約500塩基対~約2000塩基対、約750塩基対~約2000塩基対、約750塩基対~約1500塩基対、または約1000塩基対~約1500塩基対(全ての介在する長さの相同アームを含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【0181】
特定の実施形態において、DNAドナー修復鋳型に存在する5’および3’相同アームの長さは独立して、約100塩基対、約200塩基対、約300塩基対、約400塩基対、約500塩基対、または約600塩基対から選択される。一実施形態において、5’相同アームは約300塩基対であり、3’相同アームは約300塩基対である。一実施形態において、DNAドナー修復鋳型における複数の5’相同アームの各々は約300塩基対であり、DNAドナー修復鋳型における複数の3’相同アームの各々は約300塩基対である。
【0182】
特定の実施形態において、DNAドナー修復鋳型は、複数の相同アーム対と、1つ以上の導入遺伝子とを含む。
【0183】
特定の実施形態において、DNAドナー修復鋳型は、複数の相同アーム対と、導入遺伝子とを含む。特定の実施形態において、相同アーム対の各々は、標的部位のDNA配列5’に対して相同である5’相同アームと、標的部位のDNA配列3’に対して相同である3’相同アームとを含み、相同アーム対の各々は、異なる標的部位に関連している。特定の実施形態において、DNAドナー修復鋳型は、第1の標的部位のDNA配列5’に対して相同である5’相同アームを含む第1の相同アーム対、および第1の標的部位のDNA配列3’に対して相同である3’相同アームを含む第1の相同アーム対と、第2の標的部位のDNA配列5’に対して相同である5’相同アーム、および第2の標的部位のDNA配列3’に対して相同である3’相同アームとを含み、第1の標的部位は、第2の標的部位と同一ではない。
【0184】
特定の実施形態において、相同アーム対の各々は同じ導入遺伝子配列に隣接し、各5’相同アームは導入遺伝子に対して5’に位置し、各3’相同アームは導入遺伝子に対して3’に位置する。特定の実施形態において、DNAドナー修復鋳型は、第1の標的部位のDNA配列5’に対して相同であり、かつ第2の標的部位のDNA配列5’に対して相同である5’相同アームの5’に位置する5’相同アーム(両方の5’相同アームは導入遺伝子に対して5’に位置する)と、第1の標的部位に対するDNA配列3’対して相同であり、かつ第2の標的部位に対するDNA配列3’に対して相同である3’相同アームの3’に位置する3’相同アーム(両方の3’相同アームは導入遺伝子の3’に位置する)とを含む。
【0185】
特定の実施形態において、相同アーム対の各々は同じ導入遺伝子配列に隣接し、各5’相同アームは導入遺伝子に対して5’に位置し、各3’相同アームは導入遺伝子に対して3’に位置する。特定の実施形態において、DNAドナー修復鋳型は、第1の標的部位のDNA配列5’に対して相同であり、かつ第2の標的部位のDNA配列5’に対して相同である5’相同アームに対して5’に位置する5’相同アーム(両方の5’相同アームは導入遺伝子に対して5’に位置する)と、第1の標的部位に対するDNA配列3’に対して相同であり、かつ第2の標的部位に対するDNA配列3’に対して相同である3’相同アームの5’に位置する3’相同アーム(両方の3’相同アームは導入遺伝子に対して3’に位置する)とを含む。
【0186】
特定の実施形態において、相同アーム対の各々は異なる導入遺伝子配列に隣接し、第1の相同アーム対は第1の導入遺伝子に隣接し、第2の相同アーム対は第2の導入遺伝子に隣接する。特定の実施形態において、DNAドナー修復鋳型は、第1の標的部位に対するDNA配列5’に対して相同であり、かつ第1の導入遺伝子に対して5’に位置する5’相同アーム、および第1の標的部位に対するDNA配列3’に対して相同であり、かつ第1の導入遺伝子の3’に位置する3’相同アームを含む第1の相同アーム対と、第2の標的部位に対するDNA配列5’に対して相同であり、かつ第2の導入遺伝子に対して5’に位置する5’相同アーム、および第2の標的部位に対するDNA配列3’に対して相同であり、かつ第2の導入遺伝子に対して3’に位置する3’相同アームを含む第2の相同アーム対とを含む。
【0187】
好ましい実施形態において、DNAドナー修復鋳型は、ヘモグロビン異常症を治療もしくは予防するための、またはヘモグロビン異常症のうち少なくとも1つの症状を寛解させるための、細胞系遺伝子療法の有効性を増加させる1つ以上の導入遺伝子をコードする。特定の実施形態において、DNAドナー修復鋳型は、β-グロビンポリペプチド、抗鎌状化β-グロビンポリペプチド(例えば、βA-T87Q、βA-K120E、βA-K95E、もしくはそれらの組み合わせ)、またはγ-グロビンポリペプチドを含むがこれらに限定されない、グロビンポリペプチドをコードする1つ以上の導入遺伝子を含む。
【0188】
好ましい実施形態において、DNAドナー修復鋳型は、養子細胞療法の安全性、有効性、耐久性、および/または持続性を増加させる1つ以上の導入遺伝子をコードする。特定の実施形態において、DNAドナー修復鋳型は、免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、または操作された抗原受容体をコードする1つ以上の導入遺伝子を含む。特定の実施形態において、DNAドナー鋳型は、TCRシグナル伝達、免疫系チェックポイント、および/または免疫抑制シグナル伝達に寄与する遺伝子をコードする複数の遺伝子座に(HDRを介して)1つ以上の導入遺伝子を挿入するように設計される。
【0189】
ドナー修復鋳型は、本明細書の他の箇所で企図されるプロモーターおよび/またはエンハンサー、非翻訳領域(UTR)、コザック配列、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、複数のクローニング部位、配列内リボソーム進入部位(IRES)、リコンビナーゼ認識部位(例えば、LoxP、FRT、およびAtt部位)、終結コドン、転写終結シグナル、ならびに自己切断ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、エピトープタグなどの1つ以上のポリヌクレオチドを更に含み得る。
【0190】
1.免疫能エンハンサー
特定の実施形態において、本明細書において企図されるゲノム編集された免疫エフェクター細胞は、免疫能エンハンサーをコードするドナー修復鋳型の存在下で、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子にDSBを導入することによって、より強力なものとなる。本明細書で使用される場合、「免疫能エンハンサー」という用語は、T細胞活性化および/または機能を刺激および/または増強する天然に存在しない分子、免疫増強因子、ならびに腫瘍微小環境からの免疫抑制シグナルをT細胞内で免疫賦活シグナルに変換する天然に存在しないポリペプチドを指す。
【0191】
特定の実施形態において、DNAドナー鋳型は、免疫能エンハンサーを1つの遺伝子座に、および別の免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、または操作された抗原受容体をコードする1つ以上の導入遺伝子を1つ以上の異なる遺伝子座に挿入するように設計される。
【0192】
特定の実施形態において、免疫能エンハンサーは、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)分子;サイトカイン、ケモカイン、細胞毒、および/またはサイトカイン受容体を含むがこれらに限定されない、免疫増強因子;ならびにフリップ受容体からなる群から選択される。
【0193】
いくつかの実施形態において、免疫能エンハンサー、免疫増強因子、またはフリップ受容体は、タンパク質不安定化ドメインを含む融合ポリペプチドである。
【0194】
a.二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)分子
特定の実施形態において、本明細書において企図されるゲノム編集された免疫エフェクター細胞は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)分子をコードするドナー修復鋳型の存在下で、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子にDSBを導入することによって、より強力なものとなる。BiTE分子は、本明細書の他の箇所で企図される標的抗原、リンカー、またはスペーサーに結合する第1の結合ドメインと、免疫エフェクター細胞上の刺激分子または共刺激分子に結合する第2の結合ドメインとを含む、二分分子である。第1および第2の結合ドメインは独立して、リガンド、受容体、抗体またはそれらの抗原結合断片、レクチン、および炭水化物から選択され得る。
【0195】
特定の実施形態において、第1および第2の結合ドメインは、抗原結合ドメインである。
【0196】
特定の実施形態において、第1および第2の結合ドメインは、抗体またはそれらの抗原結合断片である。一実施形態において、第1および第2の結合ドメインは、単鎖可変断片(scFv)である。
【0197】
特定の実施形態において、第1の結合ドメインによって認識および結合され得る標的抗原の例示的な例には、アルファ葉酸受容体、栄養膜糖タンパク質(TPBG);αvβ6インテグリン;B細胞成熟抗原(BCMA);B7-H3;B7-H6;CD276;CD16;CD19;CD20;CD22;CD30;CD33;CD44;CD44v6;CD44v7/8;CD70;CD79a;CD79b;CD123;CD138;CD171;癌胎児抗原(CEA)ポリペプチド;コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4);上皮成長因子受容体(EGFR);erb-b2受容体チロシンキナーゼ2(ERBB2);EGFR遺伝子増幅およびバリアントIII(EGFRvIII);上皮細胞接着分子(EPCAM);エフリンA2(EphA2);線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP);胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR);bDGalpNAc(1-4)[aNeu5Ac(2-8)aNeu5Ac(2-3)]bDGalp(1-4)bDGlcp(1-1)Cer(GD2);aNeu5Ac(2-8)aNeu5Ac(2-3)bDGalp(1-4)bDGlcp(1-1)Cer(GD3);グリピカン-3(GPC3);ヒト白血球抗原A1 MAGEファミリーメンバーA1(HLA-A1MAGEA1);ヒト白血球抗原A2 MAGEファミリーメンバーA1(HLA-A2MAGEA1);ヒト白血球抗原A3 MAGEファミリーメンバーA1(HLA-A3MAGEA1);MAGEA1;ヒト白血球抗原A1ニューヨーク食道扁平上皮癌1(HLA-A1NY-ESO-1);ヒト白血球抗原A2ニューヨーク食道扁平上皮癌1(HLA-A2NY-ESO-1);ヒト白血球抗原A3ニューヨーク食道扁平上皮癌1(HLA-A3NY-ESO-1);インターロイキン受容体11アルファ(IL-11Rα);インターロイキン13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Rα2);ラムダ軽鎖;ルイス-Y;カッパ軽鎖;メソテリン;ムチン1、細胞表面関連(MUC1);ムチン16、細胞表面関連(MUC16)、神経細胞接着分子(NCAM)、ナチュラルキラーグループ2D(NKG2D)リガンド、NY-ESO-1、黒色腫における優先発現抗原(PRAME)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、滑膜肉腫X(SSX)、サバイビン、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、腫瘍内皮細胞マーカー1(TEM1)、腫瘍内皮細胞マーカー5(TEM5)、腫瘍内皮細胞マーカー7(TEM7)、腫瘍内皮細胞マーカー8(TEM8)、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、およびウィルムス腫瘍1(WT-1)が含まれるが、これらに限定されない。
【0198】
標的抗原の他の例示的な実施形態には、MHC-ペプチド複合体が含まれ、任意で、ペプチドは、FRα、TPBG、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CD276、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、ERBB2、EGFRvIII、EPCAM、EphA2、FAP、胎児AchR、GD2、GD3、GPC3、HLA-A1MAGEA1、HLA-A2MAGEA1、HLA-A3MAGEA1、MAGEA1、HLA-A1NY-ESO-1、HLA-A2NY-ESO-1、HLA-A3NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ軽鎖、ルイス-Y、カッパ軽鎖、メソテリン、MUC1、MUC16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM1、TEM5、TEM7、TEM8、VEGFR2、およびWT-1からプロセシングされる。
【0199】
特定の実施形態において、第2の結合ドメインによって認識および結合され得る免疫エフェクター細胞上の刺激分子または共刺激分子の例示的な例には、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD28、CD40、CD80、CD86、CD134、CD137、およびCD278が含まれるが、これらに限定されない。
【0200】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、BiTEをコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位のうちの少なくとも1つに挿入される。
【0201】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、BiTEをコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位の2つ以上に挿入される。
【0202】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、BiTEをコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位の各々に挿入される。
【0203】
b.免疫増強因子
特定の実施形態において、本明細書において企図されるゲノム編集された免疫エフェクター細胞は、免疫増強因子をコードするドナー修復鋳型の存在下で、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子にDSBを導入することによって、より強力なものとなる。免疫増強因子は、免疫エフェクター細胞内の免疫応答を増強する特定のサイトカイン、ケモカイン、細胞毒、およびサイトカイン受容体を指す。
【0204】
特定の実施形態において、ドナー修復鋳型は、IL-2、インスリン、IFN-γ、IL-7、IL-21、IL-10、IL-12、IL-15、およびTNF-αからなる群から選択されるサイトカインをコードする。
【0205】
特定の実施形態において、ドナー修復鋳型は、MIP-1α、MIP-1β、MCP-1、MCP-3、およびRANTESからなる群から選択されるケモカインをコードする。
【0206】
特定の実施形態において、ドナー修復鋳型は、パーフォリン、グランザイムA、およびグランザイムBからなる群から選択される細胞毒をコードする。
【0207】
特定の実施形態において、ドナー修復鋳型は、IL-2受容体、IL-7受容体、IL-12受容体、IL-15受容体、およびIL-21受容体からなる群から選択されるサイトカイン受容体をコードする。
【0208】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、免疫増強因子をコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位のうちの少なくとも1つに挿入される。
【0209】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、免疫増強因子をコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位の2つ以上に挿入される。
【0210】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、免疫増強因子をコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位の各々に挿入される。
【0211】
c.フリップ受容体
特定の実施形態において、本明細書において企図されるゲノム編集された免疫エフェクター細胞は、腫瘍微小環境によって誘発される免疫抑制因子によって免疫抑制シグナルを正の免疫賦活シグナルに「フリッピング」または「反転」させることによって、疲弊に対してより耐性なものとなる。一実施形態において、T細胞は、フリップ受容体をコードするドナー修復鋳型の存在下で、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子にDSBを導入することによって操作される。本明細書で使用される場合、「フリップ受容体」という用語は、腫瘍微小環境からの免疫抑制シグナルをT細胞内で免疫賦活シグナルに変換する、天然に存在しないポリペプチドを指す。好ましい実施形態において、フリップ受容体は、免疫賦活シグナルをT細胞に伝達する、免疫抑制因子、膜貫通ドメイン、およびエンドドメインに結合するエキソドメインを含むポリペプチドを指す。
【0212】
一実施形態において、ドナー修復鋳型は、免疫増強サイトカイン受容体の免疫抑制サイトカイン、膜貫通ドメイン、およびエンドドメインに結合するエキソドメインまたは細胞外結合ドメインを含むフリップ受容体を含む。
【0213】
特定の実施形態において、フリップ受容体は、免疫抑制サイトカインに結合するエキソドメインを含み、IL-4受容体、IL-6受容体、IL-8受容体、IL-10受容体、IL-13受容体、またはTGFβ受容体;CD4、CD8α、CD27、CD28、CD134、CD137、CD3ポリペプチド、IL-2受容体、IL-7受容体、IL-12受容体、IL-15受容体、またはIL-21受容体から単離される膜貫通;およびIL-2受容体、IL-7受容体、IL-12受容体、IL-15受容体、またはIL-21受容体から単離されるエンドドメインの細胞外サイトカイン結合ドメインである。
【0214】
特定の実施形態において、フリップ受容体は、免疫抑制サイトカインに結合するエキソドメインを含み、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-13、またはTGFβ;CD4、CD8α、CD27、CD28、CD134、CD137、CD3ポリペプチド、IL-2受容体、IL-7受容体、IL-12受容体、IL-15受容体、またはIL-21受容体から単離される膜貫通;およびIL-2受容体、IL-7受容体、IL-12受容体、IL-15受容体、またはIL-21受容体から単離されるエンドドメインに結合する抗体またはその抗原結合断片である。
【0215】
一実施形態において、ドナー修復鋳型は、免疫抑制因子、膜貫通ドメイン、ならびに1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインに結合するエキソドメインを含むフリップ受容体を含む。
【0216】
特定の実施形態において企図されるフリップ受容体の特定の実施形態における使用に好適なエキソドメインの例示的な例には、ITIMおよび/またはITSMを含む受容体の細胞外リガンド結合ドメインが含まれるが、これに限定されない。
【0217】
特定の実施形態において企図されるフリップ受容体の特定の実施形態における使用に好適なエキソドメインの更なる例示的な例には、PD-1、LAG-3、TIM-3、CTLA-4、BTLA、CEACAM1、TIGIT、TGFβRII、IL4R、IL6R、CXCR1、CXCR2、IL10R、IL13Rα2、TRAILR1、RCAS1R、およびFASの細胞外リガンド結合ドメインが含まれるが、これらに限定されない。
【0218】
一実施形態において、エキソドメインは、PD-1、LAG-3、TIM-3、CTLA-4、IL10R、TIGIT、およびTGFβRIIからなる群から選択される受容体の細胞外リガンド結合ドメインを含む。
【0219】
一実施形態において、ドナー修復鋳型は、免疫抑制サイトカイン、膜貫通ドメイン、ならびに1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインに結合するエキソドメインを含むフリップ受容体を含む。
【0220】
特定の実施形態において企図されるフリップ受容体の特定の実施形態における使用に好適な膜貫通ドメインの更なる例示的な例には、以下のタンパク質、T細胞受容体、CDδ、CD3ε、CDγ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、またはCD154のPD-1、LAG-3、TIM-3、CTLA-4、IL10R、TIGIT、およびTGFβRIIアルファ鎖またはベータ鎖の膜貫通ドメインが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、TCRシグナル伝達複合体、例えば、CD3と会合する膜貫通ドメインを選択して、免疫賦活シグナルを増加させることが好ましくあり得る。
【0221】
様々な実施形態において、フリップ受容体は、免疫賦活シグナルを誘発するエンドドメインを含む。本明細書で使用される場合、「エンドドメイン」という用語は、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)、共刺激シグナル伝達ドメイン、一次シグナル伝達ドメイン、またはT細胞内の免疫賦活シグナルの誘発に関連する別の細胞内ドメインを含むがこれらに限定されない、免疫賦活性モチーフまたはドメインを指す。
【0222】
特定の実施形態において企図されるフリップ受容体の特定の実施形態における使用に好適なエンドドメインの例示的な例には、ITAMモチーフを含むドメインが含まれるが、これらに限定されない。
【0223】
特定の実施形態において企図されるフリップ受容体の特定の実施形態における使用に好適なエンドドメインの追加の例示的な例には、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、またはZAP70から単離される共刺激シグナル伝達ドメインが含まれるが、これらに限定されない。
【0224】
特定の実施形態において企図されるフリップ受容体の特定の実施形態における使用に好適なエンドドメインの追加の例示的な例には、IL-2受容体、IL-7受容体、IL-12受容体、IL-15受容体、またはIL-21受容体から単離されるエンドドメインが含まれるが、これらに限定されない。
【0225】
特定の実施形態において企図されるフリップ受容体の特定の実施形態における使用に好適なエンドドメインの更なる例示的な例には、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dから単離される一次シグナル伝達ドメインが含まれるが、これらに限定されない。
【0226】
特定の実施形態において、フリップ受容体は、PD-1、LAG-3、TIM-3、CTLA-4、IL10R、TIGIT、またはTGFβRII由来の細胞外ドメイン;CD3ポリペプチド、CD4、CD8α、CD28、CD134、CD137、PD-1、LAG-3、TIM-3、CTLA-4、IL10R、およびTGFβRII由来の膜貫通ドメイン;ならびにCD28、CD134、CD137、CD278、および/またはCD3ζ由来のエンドドメインを含むエキソドメインを含む。
【0227】
特定の実施形態において、フリップ受容体は、PD-1、LAG-3、TIM-3、CTLA-4、IL10R、TIGIT、またはTGFβRII由来の細胞外ドメイン;CD3ポリペプチド、CD4、CD8α、CD28、CD134、またはCD137由来の膜貫通ドメイン;ならびにCD28、CD134、CD137、CD278、および/またはCD3ζ由来のエンドドメインを含むエキソドメインを含む。
【0228】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、フリップ受容体をコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位のうちの少なくとも1つに挿入される。
【0229】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、フリップ受容体をコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位の2つ以上に挿入される。
【0230】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、フリップ受容体をコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位の各々に挿入される。
【0231】
i.PD-1フリップ受容体
PD-1は、T細胞上で発現され、腫瘍微小環境に存在する免疫抑制因子による免疫抑制に供される。PD-L1およびPD-L2の発現は、いくつかのヒト悪性腫瘍の予後と相関する。PD-L1/PD-1シグナル伝達経路は、T細胞疲弊の1つの重要な制御経路である。PD-L1は、癌細胞内および間質細胞内で大量に発現され、モノクローナル抗体を使用したPD-L1/PD-1の遮断は、T細胞抗腫瘍機能を強化する。PD-L2はまたPD-1にも結合し、T細胞機能を負に制御する。
【0232】
一実施形態において、DSBは、相同組換えによってDSBにおける1つ以上の遺伝子に挿入されるPD-1フリップ受容体をコードする導入遺伝子に隣接する1つ以上の相同アーム対を含むドナー修復鋳型の存在下で、操作されたヌクレアーゼによって、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子中に導入される。
【0233】
特定の実施形態において企図されるPD-1フリップ受容体は、ヒトPD-1受容体の細胞外リガンド結合ドメイン、PD-1、CD3ポリペプチド、CD4、CD8α、CD28、CD134、またはCD137由来の膜貫通ドメイン、ならびにCD28、CD134、CD137、CD278、および/またはCD3ζ由来のエンドドメインを含む。
【0234】
ii.LAG-3フリップ受容体
リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)は、T細胞機能に対して異なる生物学的効果を有する細胞表面分子である。LAG-3シグナル伝達は、自己免疫応答のCD4制御性T細胞抑制に関連する。加えて、LAG-3発現はCD8T細胞の抗原刺激時に増加し、腫瘍微小環境におけるT細胞疲弊に関連する。LAG-3のインビボ抗体遮断は、抗原特異的CD8T細胞の蓄積およびエフェクター機能の増加に関連する。1つのグループは、特定の抗腫瘍ワクチン接種と併用した抗LAG-3抗体の投与が、腫瘍における活性化CD8T細胞の有意な増加、および腫瘍実質部の破壊をもたらすことを示した。Grosso et al.(2007).J Clin Invest.117(11):3383-3392。
【0235】
一実施形態において、DSBは、相同組換えによってDSBにおける1つ以上の遺伝子に挿入されるLAG-3フリップ受容体をコードする導入遺伝子に隣接する1つ以上の相同アーム対を含むドナー修復鋳型の存在下で、操作されたヌクレアーゼによって、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子中に導入される。
【0236】
特定の実施形態において企図されるLAG-3フリップ受容体は、ヒトLAG-3受容体の細胞外リガンド結合ドメイン、LAG-3、CD3ポリペプチド、CD4、CD8α、CD28、CD134、またはCD137由来の膜貫通ドメイン、ならびにCD28、CD134、CD137、CD278、および/またはCD3ζ由来のエンドドメインを含む。
【0237】
iii.TIM-3フリップ受容体
T細胞免疫グロブリン-3(TIM-3)は負の制御分子として確立されており、免疫寛容における役割を果たす。TIM-3発現は、癌における、および慢性感染中の疲弊したT細胞を特定する。TIM-3を発現するCD4およびCD8T細胞は、サイトカインの産生量が低減しているか、または抗原に応答した増殖がより少ない。TIM-3発現の増加は、T細胞増殖の減少、ならびにIL-2、TNF、およびIFN-γの産生の低減と関連する。TIM-3シグナル伝達経路の遮断は増殖を回復させ、抗原特異的T細胞内のサイトカイン産生を強化する。
【0238】
TIM-3は同時発現され、癌胎児抗原細胞接着分子1(CEACAM1)(活性化T細胞上で発現され、T細胞阻害に関与する別の周知の分子である)を有するヘテロ二量体を形成する。CEACAM1の存在は、TIM-3に阻害機能を賦与する。CEACAM1は、各分子の高度に関連した膜遠位のN末端ドメインを通してシスにおけるヘテロ二量体相互作用を形成することによって、TIM-3の成熟および細胞表面発現を促進する。CEACAM1およびTIM-3はまた、それらのN末端ドメインを通してトランスにおいても結合する。
【0239】
一実施形態において、DSBは、相同組換えによってDSBにおける1つ以上の遺伝子に挿入されるTIM-3フリップ受容体をコードする導入遺伝子に隣接する1つ以上の相同アーム対を含むドナー修復鋳型の存在下で、操作されたヌクレアーゼによって、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子中に導入される。
【0240】
特定の実施形態において企図されるTIM-3フリップ受容体は、ヒトTIM-3受容体の細胞外リガンド結合ドメイン、TIM-3、CD3ポリペプチド、CD4、CD8α、CD28、CD134、またはCD137由来の膜貫通ドメイン、ならびにCD28、CD134、CD137、CD278、および/またはCD3ζ由来のエンドドメインを含む。
【0241】
iv.CTLA-4フリップ受容体
CTLA4は主にT細胞上で発現され、初期のT細胞活性化の振幅を制御する。CTLA4は、T細胞共刺激受容体CD28の活性に対抗する。TCRが最初に同族抗原に結合しない限り、CD28はT細胞活性化には影響を与えない。抗原認識が生じると、CD28シグナル伝達はTCRシグナル伝達を強度に増幅して、T細胞を活性化する。CD28およびCTLA4は、同一のリガンド、CD80(B7.1としても知られる)およびCD86(B7.2としても知られる)を共有する。CTLA4は、両方のリガンドに対してずっと高い全体的な親和性を有し、CD80およびCD86に結合する上でCD28を打ち負かすこと、ならびに阻害シグナルをT細胞に積極的に送達することによって、T細胞の活性化を減衰させる。CTLA4はまた、CD80およびCD86のCD28結合からの隔離、ならびにCD80およびCD86の抗原提示細胞(APC)表面からの積極的な除去を通して、シグナル伝達非依存的T細胞阻害も与える。
【0242】
一実施形態において、DSBは、相同組換えによってDSBにおける1つ以上の遺伝子に挿入されるCTLA-4フリップ受容体をコードする導入遺伝子に隣接する1つ以上の相同アーム対を含むドナー修復鋳型の存在下で、操作されたヌクレアーゼによって、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子中に導入される。
【0243】
特定の実施形態において企図されるCTLA-4フリップ受容体は、ヒトCTLA-4受容体の細胞外リガンド結合ドメイン、CTLA-4、CD3ポリペプチド、CD4、CD8α、CD28、CD134、またはCD137由来の膜貫通ドメイン、ならびにCD28、CD134、CD137、CD278、および/またはCD3ζ由来のエンドドメインを含む。
【0244】
v.TIGITフリップ受容体
T細胞免疫グロブリンおよび免疫受容体チロシン系阻害モチーフ[ITIM]ドメイン(TIGIT)は、複数の固形腫瘍型にわたって一貫して高度に発現されるものとして特定されたT細胞共阻害受容体である。TIGITは、抗腫瘍および他のCD8T細胞依存的慢性免疫応答を制限する。TIGITは、ヒトおよびマウスの腫瘍浸潤性T細胞上で高度に発現される。TIGITの遺伝子破壊または抗体遮断は、インビトロおよびインビボでのNK細胞殺傷およびCD4T細胞抗原刺激を強化することが示されており、実験的自己免疫性脳炎などのCD4T細胞依存的自己免疫疾患の重症度を増悪させる可能性がある(Goding et al.,2013、Joller et al.,2011、Levin et al.,2011、Lozano et al.,2012、Stanietsky et al.,2009、Stanietsky et al.,2013、Stengel et al.,2012、Yu et al.,2009)。逆に、TIGIT-Fc融合タンパク質またはアゴニスト抗TIGIT抗体の投与は、インビトロでのT細胞活性化およびインビボでCD4T細胞依存的遅延型過敏反応を抑制した(Yu et al.,2009)。TIGITは、その対抗共刺激受容体CD226をCD155への結合について打ち負かすことによって、その免疫抑制効果を発揮する可能性が高い。
【0245】
癌および慢性ウイルス感染の両方のモデルにおいて、TIGITおよびPD-L1の抗体同時遮断は、CD8T細胞エフェクター機能を相乗的かつ特異的に強化し、それぞれ有意な腫瘍およびウイルスの排除をもたらした。
【0246】
一実施形態において、DSBは、相同組換えによってDSBにおける1つ以上の遺伝子に挿入されるTIGITフリップ受容体をコードする導入遺伝子に隣接する1つ以上の相同アーム対を含むドナー修復鋳型の存在下で、操作されたヌクレアーゼによって、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子中に導入される。
【0247】
特定の実施形態において企図されるTIGITフリップ受容体は、ヒトTIGIT受容体の細胞外リガンド結合ドメイン、TIGIT、CD3ポリペプチド、CD4、CD8α、CD28、CD134、またはCD137由来の膜貫通ドメイン、ならびにCD28、CD134、CD137、CD278、および/またはCD3ζ由来のエンドドメインを含む。
【0248】
vi.TGFβRIIフリップ受容体
形質転換成長因子β(TGFβ)は、免疫系の多くのアームを極性化し得る、腫瘍細胞および免疫細胞によって産生される免疫抑制サイトカインである。腫瘍細胞および腫瘍浸潤性リンパ球による、TGFβを含む免疫抑制サイトカインの過剰産生は、免疫抑制腫瘍微小環境に寄与する。TGFβは頻繁に、腫瘍転移および浸潤、免疫細胞の機能の阻害、ならびに癌を有する患者における不良な予後に関連する。腫瘍特異的CTL内のTGFβRIIを通したTGFβシグナル伝達は、腫瘍におけるそれらの機能および頻度を減衰させ、モノクローナル抗体によるCD8T細胞上でのTGFβシグナル伝達の遮断は、より急速な腫瘍サーベイランスおよび腫瘍部位におけるより多くのCTLの存在をもたらす。
【0249】
一実施形態において、DSBは、相同組換えによってDSBにおける1つ以上の遺伝子に挿入されるTGFβRIIフリップ受容体をコードする導入遺伝子に隣接する1つ以上の相同アーム対を含むドナー修復鋳型の存在下で、操作されたヌクレアーゼによって、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子中に導入される。
【0250】
特定の実施形態において企図されるTGFβRIIフリップ受容体は、ヒトTGFβRII受容体の細胞外リガンド結合ドメイン、TGFβRII、CD3ポリペプチド、CD4、CD8α、CD28、CD134、またはCD137由来の膜貫通ドメイン、ならびにCD28、CD134、CD137、CD278、および/またはCD3ζ由来のエンドドメインを含む。
【0251】
2.免疫抑制シグナルダンパー
既存の養子細胞療法を悩ませる1つの制限または問題は、腫瘍微小環境によって媒介される疲弊による免疫エフェクター細胞の反応性低下である。疲弊したT細胞は、ナイーブT細胞、エフェクターT細胞、またはメモリーT細胞とは顕著に異なる特有の分子シグネチャーを有する。それらは、サイトカイン発現およびエフェクター機能が減少したT細胞として定義される。
【0252】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるゲノム編集された免疫エフェクター細胞は、免疫抑制因子によるシグナル伝達を減少または減衰させることによって、疲弊に対してより耐性なものとなる。一実施形態において、T細胞は、免疫抑制シグナルダンパーをコードするドナー修復鋳型の存在下で、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子にDSBを導入することによって操作される。
【0253】
特定の実施形態において、DNAドナー鋳型は、免疫抑制シグナルダンパーを1つの遺伝子座に、および免疫能エンハンサー、別の免疫抑制シグナルダンパー、または操作された抗原受容体をコードする1つ以上の導入遺伝子を1つ以上の異なる遺伝子座に挿入するように設計される。
【0254】
本明細書で使用される場合、「免疫抑制シグナルダンパー」という用語は、腫瘍微小環境からT細胞への免疫抑制シグナルの伝達を減少させる、天然に存在しないポリペプチドを指す。一実施形態において、免疫抑制シグナルダンパーは、免疫抑制因子に結合する抗体またはその抗原結合断片である。好ましい実施形態において、免疫抑制シグナルダンパーは、ダンパーが免疫抑制因子に結合するエキソドメイン、および任意で膜貫通ドメイン、および任意で修飾エンドドメイン(例えば、細胞内シグナル伝達ドメイン)を含むために、特定の免疫抑制因子またはシグナル伝達経路に対して抑制、減衰、またはドミナントネガティブ効果を誘発するポリペプチドを指す。
【0255】
特定の実施形態において、エキソドメインは、免疫抑制因子を認識し、それに結合する細胞外結合ドメインである。
【0256】
特定の実施形態において、修飾されたエンドドメインは、免疫抑制シグナルを減少または阻害するように変異されている。好適な変異戦略には、アミノ酸置換、付加、または欠失が含まれるが、これらに限定されない。好適な変異には、シグナル伝達ドメインを除去するためのエンドドメイン切断、シグナル伝達モチーフ活性に重要な残基を除去するための細胞内ドメインの変異、および受容体循環を遮断するためのエンドドメインの変異が更に含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、存在する場合、エンドドメインは、免疫抑制シグナルを伝達しないか、またはシグナル伝達が実質的に低減している。
【0257】
したがって、いくつかの実施形態において、免疫抑制シグナルダンパーは、腫瘍微小環境由来の1つ以上の免疫抑制因子のシンクとして作用し、T細胞内の対応する免疫抑制シグナル伝達経路を阻害する。
【0258】
1つの免疫抑制シグナルは、トリプトファン異化反応によって媒介される。癌細胞内のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)によるトリプトファン異化反応は、腫瘍微小環境においてT細胞に対する免疫抑制効果を有することが示されているキヌレニンの産生をもたらす。例えば、Platten et al.(2012)Cancer Res.72(21):5435-40を参照されたい。
【0259】
一実施形態において、ドナー修復鋳型は、キヌレニナーゼ活性を有する酵素を含む。
【0260】
特定の実施形態における使用に好適なキヌレニナーゼ活性を有する酵素の例示的な例には、L-キヌレニンヒドロラーゼが含まれるが、これに限定されない。
【0261】
一実施形態において、ドナー修復鋳型は、免疫抑制因子によって媒介される免疫抑制シグナル伝達を減少または遮断する免疫抑制シグナルダンパーをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む。
【0262】
特定の実施形態において企図される免疫抑制シグナルダンパーによって標的とされる免疫抑制因子の例示的な例には、プログラム死リガンド1(PD-L1)、プログラム死リガンド2(PD-L2)、形質転換成長因子β(TGFβ)、マクロファージコロニー刺激因子1(M-CSF1)、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、SiSo細胞上で発現される受容体結合癌抗原リガンド(RCAS1)、Fasリガンド(FasL)、CD47、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-10(IL-10)、およびインターロイキン-13(IL-13)が含まれるが、これらに限定されない。
【0263】
様々な実施形態において、免疫抑制シグナルダンパーは、免疫抑制因子に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0264】
様々な実施形態において、免疫抑制シグナルダンパーは、免疫抑制因子に結合するエキソドメインを含む。
【0265】
特定の実施形態において、免疫抑制シグナルダンパーは、免疫抑制因子に結合するエキソドメインと、膜貫通ドメインとを含む。
【0266】
別の実施形態において、免疫抑制シグナルダンパーは、免疫抑制因子に結合するエキソドメインと、膜貫通ドメインと、免疫抑制シグナルを伝達しないか、またはそれを伝達する能力が実質的に低減した修飾エンドドメインとを含む。
【0267】
本明細書で使用される場合、「エキソドメイン」という用語は、抗原結合ドメインを指す。一実施形態において、エキソドメインは、免疫抑制シグナルを腫瘍微小環境からT細胞に伝達する免疫抑制受容体の細胞外リガンド結合ドメインである。特定の実施形態において、エキソドメインは、免疫受容体チロシン阻害モチーフ(ITIM)および/または免疫受容体チロシンスイッチモチーフ(ITSM)を含む受容体の細胞外リガンド結合ドメインを指す。
【0268】
免疫抑制シグナルダンパーの特定の実施形態における使用に好適なエキソドメインの例示的な例には、以下のポリペプチド、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、リンパ球活性化遺伝子3タンパク質(LAG-3)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメインタンパク質3(TIM-3)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、バンドTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、T細胞免疫グロブリンおよび免疫受容体チロシン系阻害モチーフドメイン(TIGIT)、形質転換成長因子β受容体II(TGFβRII)、マクロファージジコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)、インターロイキン4受容体(IL4R)、インターロイキン6受容体(IL6R)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体1(CXCR1)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体2(CXCR2)、インターロイキン10受容体サブユニットアルファ(IL10R)、インターロイキン13受容体サブユニットアルファ2(IL13Rα2)、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAILR1)、SiSo細胞上で発現される受容体結合癌抗原(RCAS1R)、ならびにFas細胞表面死受容体(FAS)の抗体もしくはそれらの抗原結合断片、またはそれらから単離される細胞外リガンド結合ドメインが含まれるが、これらに限定されない。
【0269】
一実施形態において、エキソドメインは、PD-1、LAG-3、TIM-3、CTLA-4、IL10R、TIGIT、CSF1R、およびTGFβRIIからなる群から選択される受容体の細胞外リガンド結合ドメインを含む。
【0270】
特定の実施形態において、いくつかの膜貫通ドメインを使用することができる。特定の実施形態において企図される免疫抑制シグナルダンパーの特定の実施形態における使用に好適な膜貫通ドメインの例示的な例には、以下のタンパク質、T細胞受容体のアルファ鎖またはベータ鎖、CDδ、CD3ε、CDγ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、およびPD-1の膜貫通ドメインが含まれるが、これらに限定されない。
【0271】
特定の実施形態において、本明細書において企図される養子細胞療法は、腫瘍微小環境からのTGFβRIIを通した免疫抑制TGFβシグナルの伝達を阻害または遮断する免疫抑制シグナルダンパーを含む。一実施形態において、免疫抑制シグナルダンパーは、TGFβRII細胞外リガンド結合を含むエキソドメインと、TGFβRII膜貫通ドメインと、切断型非機能性TGFβRIIエンドドメインとを含む。別の実施形態において、免疫抑制シグナルダンパーは、TGFβRII細胞外リガンド結合を含むエキソドメインと、TGFβRII膜貫通ドメインと、切断型非機能性TGFβRIIエンドドメインとを含み、エンドドメインを欠如する。
【0272】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、免疫抑制シグナルダンパーをコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位のうちの少なくとも1つに挿入される。
【0273】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、免疫抑制シグナルダンパーをコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位の2つ以上に挿入される。
【0274】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、免疫抑制シグナルダンパーをコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位の各々に挿入される。
【0275】
3.操作された抗原受容体
特定の実施形態において、本明細書において企図されるゲノム編集された免疫エフェクター細胞は、操作された抗原受容体を含む。一実施形態において、T細胞は、操作された抗原受容体をコードするドナー修復鋳型の存在下で、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子にDSBを導入することによって操作される。
【0276】
特定の実施形態において、DNAドナー鋳型は、操作された抗原受容体を1つの遺伝子座に、および免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、または別の操作された抗原受容体をコードする1つ以上の導入遺伝子を1つ以上の異なる遺伝子座に挿入するように設計される。
【0277】
特定の実施形態において、操作された抗原受容体は、操作されたT細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、DARIC受容体もしくはその成分、またはキメラサイトカイン受容体受容体である。
【0278】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、操作された抗原受容体をコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位のうちの少なくとも1つに挿入される。
【0279】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、操作された抗原受容体をコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位の2つ以上に挿入される。
【0280】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、操作された抗原受容体をコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位の各々に挿入される。
【0281】
a.操作されたTCR
特定の実施形態において、本明細書において企図されるゲノム編集された免疫エフェクター細胞は、操作されたTCRを含む。一実施形態において、T細胞は、操作されたTCRをコードするドナー修復鋳型の存在下で、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子にDSBを導入することによって操作される。
【0282】
一実施形態において、本明細書において企図される操作されたT細胞は、TCRα対立遺伝子に挿入される操作されたTCRを含み、免疫抑制シグナルダンパー、フリップ受容体、キメラ抗原受容体(CAR)、DARIC受容体もしくはその成分、またはキメラサイトカイン受容体受容体のうちの1つ以上は、別のTCRシグナル伝達成分、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子中のDSBに挿入される。
【0283】
天然に存在するT細胞受容体は、2つのサブユニットであるアルファ鎖サブユニットおよびベータ鎖サブユニットを含み、これらの各々は、各T細胞のゲノム内で組換え事象によって産生される特有のタンパク質である。TCRのライブラリは、特定の標的抗原に対するそれらの選択性についてスクリーニングすることができる。この様式において、標的抗原に対する高い結合活性および反応性を有する天然のTCRを選択し、クローニングし、その後養子免疫療法に使用されるT細胞集団に導入することができる。
【0284】
一実施形態において、T細胞は、1つ以上のTCRα対立遺伝子中のDSBにTCRのサブユニットをコードするポリヌクレオチドを含むドナー修復鋳型を導入することによって修飾され、TCRサブユニットは、T細胞に、標的抗原を発現する腫瘍細胞に対する特異性を与えるTCRを形成する能力を有する。特定の実施形態において、サブユニットが、TCRを形成し、トランスフェクト時にT細胞に標的細胞に戻る能力を与える能力を保持し、免疫学的に関連するサイトカインシグナル伝達に関与する限り、サブユニットは、天然に存在するサブユニットと比較して、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、挿入、または修飾を有する。操作されたTCRはまた、好ましくは高い結合活性を有する関連する腫瘍関連ペプチドを提示する標的細胞にも結合し、任意でインビボで関連するペプチドを提示する標的細胞の効率的な殺滅を媒介する。
【0285】
操作されたTCRをコードする核酸は、好ましくはT細胞の(天然に存在する)染色体内のそれらの天然の文脈から単離されており、本明細書の他の箇所に記載の好適なベクターに組み込むことができる。それらを含む核酸およびベクターの両方は、細胞内、特定の実施形態において好ましくはT細胞内に転移させることができる。その後、修飾されたT細胞は、形質導入された核酸(複数可)によってコードされるTCRの1つ以上の鎖を発現することができる。好ましい実施形態において、操作されたTCRは外因性TCRであるが、これはそれが通常特定のTCRを発現しないT細胞に導入されているためである。操作されたTCRの本質的な態様は、それが主要組織適合複合体(MHC)または類似の免疫学的成分によって提示される腫瘍抗原に対して高い結合活性を有することである。操作されたTCRとは対照的に、CARは、MHC非依存的様式で標的抗原に結合するように操作されている。
【0286】
TCRは、結合した追加のポリペプチドが、アルファ鎖またはベータ鎖が機能性T細胞受容体を形成する能力およびMHC非依存的抗原認識と干渉しない限り、追加のポリペプチドがTCRの本発明のアルファ鎖またはベータ鎖のアミノ末端部分またはカルボキシル末端部分に結合した状態で発現され得る。
【0287】
特定の実施形態において企図される操作されたTCRによって認識される抗原には、血液癌および固形腫瘍の両方の抗原を含む癌抗原が含まれるが、これらに限定されない。例示的な抗原には、FRα、TPBG、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CD276、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、ERBB2、EGFRvIII、EPCAM、EphA2、FAP、胎児AchR、GD2、GD3、GPC3、HLA-A1+MAGEA1、HLA-A2+MAGEA1、HLA-A3+MAGEA1、MAGEA1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ軽鎖、ルイス-Y、カッパ軽鎖、メソテリン、MUC1、MUC16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM1、TEM5、TEM7、TEM8、VEGFR2、およびWT-1が含まれるが、これらに限定されない。
【0288】
一実施形態において、ドナー修復鋳型は、RNAポリメラーゼIIプロモーターまたは第1の自己切断ウイルスペプチドをコードするポリヌクレオチドと、1つの修飾された、かつ/または非機能性のTCRα対立遺伝子に組み込まれた、操作されたTCRのアルファ鎖および/またはベータ鎖をコードするポリヌクレオチドとを含む。
【0289】
一実施形態において、ドナー修復鋳型は、RNAポリメラーゼIIプロモーターまたは第1の自己切断ウイルスペプチドをコードするポリヌクレオチドと、1つの修飾された、かつ/または非機能性のTCRα対立遺伝子に組み込まれた、操作されたTCRのアルファ鎖およびベータ鎖をコードするポリヌクレオチドとを含む。
【0290】
特定の実施形態において、ドナー修復鋳型は、5’~3’へ、TCRα対立遺伝子に対して相同である5’相同アームと、第1の自己切断ウイルスペプチドをコードするポリヌクレオチドと、操作されたTCRのアルファ鎖をコードするポリヌクレオチドと、第2の自己切断ウイルスペプチをコードするポリヌクレオチドと、操作されたTCRのベータ鎖をコードするポリヌクレオチドと、TCRα対立遺伝子に対して相同である3’相同アームとを含む。そのような場合、他のTCRα対立遺伝子は機能性であっても、機能性が減少していても、DSBおよびNHEJによる修復によって非機能性になっていてもよい。一実施形態において、他のTCRα対立遺伝子は、本明細書において企図される操作されたヌクレアーゼによって修飾されており、機能性が減少していても、非機能性になっていてもよい。
【0291】
特定の実施形態において、両方のTCRα対立遺伝子が修飾されており、機能性が減少しているか、または非機能性である。
【0292】
b.キメラ抗原受容体(CAR)
特定の実施形態において、本明細書において企図される操作された免疫エフェクター細胞は、細胞傷害性を腫瘍細胞に対して再指向する1つ以上のキメラ抗原受容体(CAR)を含む。CARは、標的抗原(例えば、腫瘍抗原)に対する抗体系特異性をT細胞受容体活性化細胞内ドメインと組み合わせて、特異的な抗腫瘍細胞性免疫活性を呈するキメラタンパク質を生成する分子である。本明細書で使用される場合、「キメラ」という用語は、異なる起源由来の異なるタンパク質またはDNAの部分からなることを説明する。一実施形態において、T細胞は、CARをコードするドナー修復鋳型の存在下で、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子にDSBを導入することによって操作される。
【0293】
一実施形態において、本明細書において企図される操作されたT細胞は、TCRα対立遺伝子に挿入されるCARを含み、免疫抑制シグナルダンパー、フリップ受容体、操作されたT細胞受容体(TCR)のアルファ鎖および/もしくはベータ鎖、キメラ抗原受容体(CAR)、DARIC受容体もしくはその成分、またはキメラサイトカイン受容体受容体のうちの1つ以上は、TCRシグナル伝達成分、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子中のDSBに挿入される。
【0294】
様々な実施形態において、ゲノム編集されたT細胞は、2つ以上の遺伝子座で1つ以上のCARを発現する。CARは、同一であっても異なってもよい。一実施形態において、CARをコードする導入遺伝子に隣接する様々なゲノム位置に対して相同である相同アーム対を含むDNAドナー修復鋳型のために、同じCARが様々なゲノム位置に挿入される。
【0295】
特定の実施形態において、DNAドナー鋳型は、CARを1つの遺伝子座に、および免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、または別の操作された抗原受容体をコードする1つ以上の導入遺伝子を1つ以上の異なる遺伝子座に挿入するように設計される。
【0296】
様々な実施形態において、CARは、特異的な標的抗原に結合する細胞外ドメイン(結合ドメインまたは抗原特異的結合ドメインとも称される)と、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。CARの主要な特性は、免疫エフェクター細胞特異性を再指向するそれらの能力であり、それによりモノクローナル抗体、可溶性リガンド、または細胞特異的共受容体の細胞特異的標的能力を活用して、増殖、サイトカイン産生、食作用、または主要組織適合性(MHC)非依存的様式で標的抗原発現細胞の細胞死を媒介し得る分子の産生を引き起こす。
【0297】
特定の実施形態において、CARは、腫瘍細胞上で発現される標的ポリペプチド、例えば、標的抗原に特異的に結合する細胞外結合ドメインを含む。本明細書で使用される場合、「結合ドメイン」、「細胞外ドメイン」、「細胞外結合ドメイン」、「抗原結合ドメイン」、「抗原特異的結合ドメイン」、および「細胞外抗原特異的結合ドメイン」という用語は互換的に使用され、キメラ受容体、例えば、CARまたはDARICに、対象となる標的抗原に特異的に結合する能力を提供する。結合ドメインは、任意のタンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、または生体分子(例えば、細胞表面受容体あるいは腫瘍タンパク質、脂質、多糖類、もしくは他の細胞表面標的分子またはそれらの成分)を特異的に認識しそれに結合する能力を持つペプチドを含み得る。結合ドメインは、任意の天然に存在する、合成、半合成、または組換え産生された、対象となる生体分子の結合パートナーを含む。
【0298】
特定の実施形態において、細胞外結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0299】
「抗体」は、ペプチド、脂質、多糖類、または抗原決定基を含有する核酸(免疫細胞によって認識されるものなど)などの標的抗原のエピトープを特異的に認識しそれに結合する、少なくとも軽鎖または重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドである結合剤を指す。抗体は、抗原結合断片、例えば、ラクダIg(ラクダ抗体もしくはそのVHH断片)、Ig NAR、DARPins、FN3断片、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、F(ab)’3断片、Fv、一本鎖Fv抗体(「scFv」)、bis-scFv、(scFv)2、ミニボディ、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、および単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)、またはそれらの他の抗体断片を含む。この用語はまた、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロ共役抗体(二重特異性抗体など)、およびそれらの抗原結合断片などの遺伝子操作された形態も含む。Pierce Catalog and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,IL)、Kuby,J.,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman&Co.,New York,1997もまた参照されたい。
【0300】
好ましい一実施形態において、結合ドメインは、scFvである。
【0301】
好ましい別の実施形態において、結合ドメインは、ラクダ抗体である。
【0302】
特定の実施形態において、CARは、FRα、TPBG、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CD276、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、ERBB2、EGFRvIII、EPCAM、EphA2、FAP、胎児AchR、GD2、GD3、GPC3、HLA-A1+MAGEA1、HLA-A2+MAGEA1、HLA-A3+MAGEA1、MAGEA1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ軽鎖、ルイス-Y、カッパ軽鎖、メソテリン、MUC1、MUC16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM1、TEM5、TEM7、TEM8、VEGFR2、およびWT-1からなる群から選択される抗原に結合する細胞外ドメインを含む。
【0303】
特定の実施形態において、CARは、細胞外結合ドメイン、例えば、抗原に結合する抗体またはその抗原結合断片を含み、抗原は、クラスI MHC-ペプチド複合体またはクラスII MHC-ペプチド複合体などのMHC-ペプチド複合体である。
【0304】
特定の実施形態において、CARは、様々なドメイン間にリンカー残基を含む。「可変領域連結配列」は、重鎖可変領域を軽鎖可変領域に接続し、2つの下位結合ドメインの相互作用に適合するスペーサー機能を提供することで、結果として得られるポリペプチドが、同じ軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む抗体と同じ標的分子に対する特異的結合親和性を保持するようになる、アミノ酸配列である。特定の実施形態において、CARは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上のリンカーを含む。特定の実施形態において、リンカーの長さは、約1~約25アミノ酸長、約5~約20アミノ酸長、もしくは約10~約20アミノ酸長、または任意の介在するアミノ酸長である。いくつかの実施形態において、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25アミノ酸長、またはそれ以上であり得る。
【0305】
特定の実施形態において、CARの結合ドメインの後には1つ以上の「スペーサードメイン」が続き、これは、抗原結合ドメインをエフェクター細胞表面から離すように移動させて、適切な細胞間接触、抗原結合、および活性化を可能にする領域を指す(Patel et al.,Gene Therapy,1999;6:412-419)。スペーサードメインは、天然、合成、半合成、または組み換え供給源のいずれかに由来し得る。特定の実施形態において、スペーサードメインは、1つ以上の重鎖定常領域、例えば、CH2およびCH3を含むがこれらに限定されない、免疫グロブリンの一部分である。スペーサードメインは、天然に存在する免疫グロブリンのヒンジ領域または改変された免疫グロブリンのヒンジ領域のアミノ酸配列を含み得る。
【0306】
一実施形態において、スペーサードメインは、IgG1、IgG4、またはIgDのCH2およびCH3を含む。
【0307】
一実施形態において、CARの結合ドメインは、1つ以上の「ヒンジドメイン」に連結され、これは、抗原結合ドメインをエフェクター細胞表面から離すように位置付けて、適切な細胞間接触、抗原結合、および活性化を可能にする上で役割を果たす。CARは一般に、結合ドメインと膜貫通ドメイン(TM)との間に1つ以上のヒンジドメインを含む。ヒンジドメインは、天然、合成、半合成、または組み換え供給源のいずれかに由来し得る。ヒンジドメインは、天然に存在する免疫グロブリンのヒンジ領域または改変された免疫グロブリンのヒンジ領域のアミノ酸配列を含み得る。
【0308】
本明細書に記載のCARにおける使用に好適な例示的なヒンジドメインには、CD8αなどの1型膜タンパク質およびCD4の細胞外領域由来のヒンジ領域(これらの分子由来の野生型ヒンジ領域であっても、改変されていてもよい)が含まれる。別の実施形態において、ヒンジドメインは、CD8αヒンジ領域を含む。
【0309】
一実施形態において、ヒンジは、PD-1ヒンジまたはCD152ヒンジである。
【0310】
「膜貫通ドメイン」は、細胞外結合部分および細胞内シグナル伝達ドメインを融合し、CARを免疫エフェクター細胞の細胞膜に固定するCARの部分である。TMドメインは、天然、合成、半合成、または組み換え供給源のいずれかに由来し得る。
【0311】
例示的なTMドメインは、T細胞受容体のアルファ鎖またはベータ鎖、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、およびPD-1に由来し得る(すなわち、その少なくとも膜貫通領域(複数可)を含む)。
【0312】
一実施形態において、CARは、CD8α由来のTMドメインを含む。別の実施形態において、本明細書において企図されるCARは、CD8α由来のTMドメインと、CARのTMドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを連結する、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸長の短いオリゴポリペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーとを含む。グリシン-セリンリンカーは、特に好適なリンカーを提供する。
【0313】
特定の実施形態において、CARは、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、CARが標的抗原に有効に結合しているというメッセージを免疫エフェクター細胞の内部に伝達して、エフェクター細胞機能、例えば、活性化、サイトカイン産生、増殖、および細胞傷害活性(CARに結合した標的細胞への細胞傷害性因子の放出を含む)、または細胞外CARドメインへの抗原結合によって誘発される他の細胞性応答を誘発することに関与する、CARの部分を指す。
【0314】
「エフェクター機能」という用語は、細胞の特殊化機能を指す。例えば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性もしくは補助またはサイトカインの分泌を含む活性であり得る。したがって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達し、特殊化機能を実行するように細胞を指向するタンパク質の部分を指す。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体が用いられ得るが、多くの場合ドメイン全体を使用することは必要ではない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が使用される程度まで、そのような切断部分は、それがエフェクター機能シグナルを伝達する限り、ドメイン全体の代わりに使用することができる。細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインのいかなる切断部分も含むことが意図される。
【0315】
TCR単独を通して生成されるシグナルは、T細胞の完全な活性化には不十分であり、二次シグナルまたは共刺激シグナルもまた必要とされることが既知である。したがって、T細胞活性化は、2つの異なるクラスの細胞内シグナル伝達ドメイン、つまりTCR(例えば、TCR/CD3複合体)を通して抗原依存的一次活性化を開始する一次シグナル伝達ドメイン、および抗原非依存的様式で作用して、二次シグナルまたは共刺激シグナルを提供する共刺激シグナル伝達ドメインによって媒介されると言うことができる。好ましい実施形態において、CARは、1つ以上の「共刺激シグナル伝達ドメイン」および「一次シグナル伝達ドメイン」を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0316】
一次シグナル伝達ドメインは、刺激性の方法または阻害性の方法のいずれかでTCR複合体の一次活性化を制御する。刺激性の様式で作用する一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン系活性化モチーフまたはITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含有し得る。
【0317】
特定の実施形態において企図されるCARにおける使用に好適な一次シグナル伝達ドメインを含有するITAMの例示的な例には、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66d由来のものが含まれる。特定の好ましい実施形態において、CARは、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインと、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインとを含む。細胞内一次シグナル伝達および共刺激シグナル伝達ドメインは、膜貫通ドメインのカルボキシル末端にタンデムの任意の順序で連結され得る。
【0318】
特定の実施形態において、CARは、CAR受容体を発現するT細胞の有効性および拡大を強化するための1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。本明細書で使用される場合、「共刺激シグナル伝達ドメイン」または「共刺激ドメイン」という用語は、共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを指す。
【0319】
特定の実施形態において企図されるCARにおける使用に好適なそのような共刺激分子の例示的な例には、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、およびZAP70が含まれる。一実施形態において、CARは、CD28、CD137、およびCD134からなる群から選択される1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインと、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインとを含む。
【0320】
様々な実施形態において、CARは、BCMA、CD19、CSPG4、PSCA、ROR1、およびTAG72からなる群から選択される抗原に結合する細胞外ドメインと、CD4、CD8α、CD154、およびPD-1からなる群から選択されるポリペプチドから単離される膜貫通ドメインと、CD28、CD134、およびCD137からなる群から選択されるポリペプチドから単離される1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインと、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dからなる群から選択されるポリペプチドから単離されるシグナル伝達ドメインとを含む。
【0321】
c.DARIC受容体
特定の実施形態において、操作された免疫エフェクター細胞は、1つ以上のDARIC受容体を含む。本明細書で使用される場合、「DARIC」または「DARIC受容体」という用語は、多鎖の操作された抗原受容体を指す。一実施形態において、T細胞は、DARICの1つ以上の成分をコードするドナー修復鋳型の存在下で、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子にDSBを導入することによって操作される。
【0322】
一実施形態において、操作されたT細胞は、TCRα対立遺伝子に挿入されていないDARICを含み、免疫抑制シグナルダンパー、フリップ受容体、操作されたT細胞受容体(TCR)のアルファ鎖および/もしくはベータ鎖、キメラ抗原受容体(CAR)、またはDARIC受容体もしくはその成分のうちの1つ以上は、1つ以上のTCRα対立遺伝子中のDSBに挿入される。
【0323】
特定の実施形態において、DNAドナー鋳型は、DARICを1つの遺伝子座に、および免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、または別の操作された抗原受容体をコードする1つ以上の導入遺伝子を1つ以上の異なる遺伝子座に挿入するように設計される。
【0324】
DARIC構造および成分の例示的な例は、PCT公開第WO2015/017214号および米国特許公開第2015/0266973号に開示されており、これらの各々は、その全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0325】
一実施形態において、ドナー修復鋳型は、以下のDARIC成分、つまり第1の多量体化ドメイン、第1の膜貫通ドメイン、ならびに1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインを含むシグナル伝達ポリペプチドと、結合ドメイン、第2の多量体化ドメイン、および任意で第2の膜貫通ドメインを含む結合ポリペプチドとを含む。機能性DARICは、細胞表面上でDARIC受容体複合体の形成を促進する架橋因子を含み、この架橋因子は、シグナル伝達ポリペプチドおよび結合ポリペプチドの多量体化ドメインに関連し、それらの間に配置される。
【0326】
特定の実施形態において、第1および第2の多量体化ドメインは、ラパマイシンまたはそのラパログ、クーママイシンまたはその誘導体、ジベレリンまたはその誘導体、アブシジン酸(ABA)またはその誘導体、メトトレキサートまたはその誘導体、シクロスポリンAまたはその誘導体、FKCsAまたはその誘導体、FKBP(SLF)のトリメトプリム(Tmp)合成リガンドまたはその誘導体、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される架橋因子に関連する。
【0327】
ラパマイシン類似体(ラパログ)の例示的な例には、米国特許第6,649,595号に開示されるものが含まれ、それらのラパログ構造は、それらの全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。特定の実施形態において、架橋因子は、ラパマイシンと比較して、免疫抑制効果が実質的に低減したラパログである。「実質的に低減した免疫抑制効果」は、臨床的にまたはヒト免疫抑制活性の適切なインビトロ(例えば、T細胞増殖の阻害)もしくはインビボ代替物中のいずれかで測定して、等モル量のラパマイシンについて観察または期待される免疫抑制効果の少なくとも0.1~0.005倍を有するラパログを指す。一実施形態において、「実質的に低減した免疫抑制効果」は、そのようなインビトロアッセイで、同じアッセイでラパマイシンについて観察されるEC50値よりも少なくとも10~250倍大きいEC50値を有するラパログを指す。
【0328】
ラパログの他の例示的な例には、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、およびゾタロリムスが含まれるが、これらに限定されない。
【0329】
特定の実施形態において、多量体化ドメインは、ラパマイシンまたはそのラパログである架橋因子と会合する。例えば、第1および第2の多量体化ドメインは、FKBPおよびFRBから選択される対である。FRBドメインは、FKBPタンパク質およびラパマイシンまたはそのラパログとともに三分子複合体を形成することができるポリペプチド領域(タンパク質「ドメイン」)である。FRBドメインは、ヒトおよび他の種由来のmTORタンパク質(文献においてFRAP、RAPT1、またはRAFTとも称される)を含むいくつかの天然に存在するタンパク質、Tor1およびTor2を含む酵母タンパク質、ならびにカンジダFRAP相同体に存在する。ヌクレオチド配列、クローニング、およびこれらのタンパク質の他の態様に関する情報は、当該技術分野において既に既知である。例えば、ヒトmTORのタンパク質配列受入番号は、GenBank受入番号L34075.1である(Brown et al.,Nature369:756,1994)。
【0330】
本明細書において企図される特定の実施形態における使用に好適なFRBドメインは一般に、少なくとも約85~約100個のアミノ酸残基を含有する。特定の実施形態において、本開示の融合タンパク質における使用のためのFRBアミノ酸配列は、GenBank受入番号L34075.1のアミノ酸配列に基づいて、93アミノ酸配列のIle-2021からLys-2113まで、およびT2098Lの変異を含む。特定の実施形態において企図されるDARICにおける使用のためのFRBドメインは、ラパマイシンまたはそのラパログに結合したFKBPタンパク質の複合体に結合することができる。特定の実施形態において、FRBドメインのペプチド配列は、(a)ヒトmTORの少なくとも示される93アミノ酸領域または相同タンパク質の対応する領域に及ぶ、天然に存在するペプチド配列、(b)天然に存在するペプチドの最大約10アミノ酸、または約1~約5アミノ酸もしくは約1~約3アミノ酸、またはいくつかの実施形態において1アミノ酸のみが欠失、挿入、または置換されている、天然に存在するFRBのバリアント、あるいは(c)天然に存在するFRBドメインをコードするDNA分子に選択的にハイブリダイズすることができる核酸分子によって、または天然に存在するFRBドメインをコードするDNA分子に選択的にハイブリダイズすることができるが、遺伝コードの縮退のためである、DNA配列によってコードされるペプチドを含む。
【0331】
FKBP(FK506結合タンパク質)は、FK506、FK520、およびラパマイシンなどのマクロライドのサイトゾル受容体であり、種系統にわたって高度に保存されている。FKBPは、ラパマイシンまたはそのラパログに結合し、FRB含有タンパク質または融合タンパク質とともに三分子複合体を更に形成することができる、タンパク質またはタンパク質ドメインである。FKBPドメインはまた、「ラパマイシン結合ドメイン」とも称される。ヌクレオチド配列、クローニング、および様々なFKBP種の他の態様に関する情報は、当該技術分野において既知である(例えば、Staendart et al.,Nature346:671,1990(ヒトFKBP12)、Kay,Biochem.J.314:361,1996を参照されたい)。他の哺乳動物種、酵母、および他の生物における相同FKBPタンパク質もまた当該技術分野において既知であり、本明細書に開示される融合タンパク質に使用することができる。特定の実施形態において企図されるFKBPドメインは、ラパマイシンまたはそのラパログに結合し、(直接的であるか間接的であるかに関わらず、そのような結合を検出するための任意の手段によって決定され得る)FRB含有タンパク質との三分子複合体に関与することができる。
【0332】
特定の実施形態において企図されるDARICにおける使用に好適なFKBPドメインの例示的な例には、好ましくはヒトFKBP12タンパク質(GenBank受入番号AAA58476.1)から単離された天然に存在するFKBPペプチド配列、あるいはそれから、別のヒトFKBPから、マウスもしくは他の哺乳動物FKBPから、または何らかの他の動物、酵母、もしくは真菌FKBPから単離されたペプチド配列;天然に存在するペプチドの最大約10アミノ酸、または約1~約5アミノ酸もしくは約1~約3アミノ酸、またはいくつかの実施形態において1アミノ酸のみが欠失、挿入、または置換されている、天然に存在するFKBP配列のバリアント;あるいは天然に存在するFKBPをコードするDNA分子に選択的にハイブリダイズすることができる核酸分子によって、または天然に存在するFKBPをコードするDNA分子に選択的にハイブリダイズすることができるが、遺伝コードの縮退のためである、DNA配列によってコードされるペプチド配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0333】
特定の実施形態において企図されるDARICにおける使用に好適な多量体化ドメイン対の他の例示的な例には、FKBPおよびFRB、FKBPおよびカルシニューリン、FKBPおよびシクロフィリン、FKBPおよび細菌DHFR、カルシニューリンおよびシクロフィリン、PYL1およびABI1、もしくはGIB1およびGAI、またはそれらのバリアントが含まれるが、これらに限定されない。
【0334】
更に他の実施形態において、抗架橋因子は、架橋因子によるシグナル伝達ポリペプチドと結合ポリペプチドとの会合を遮断する。例えば、シクロスポリンまたはFK506を抗架橋因子として使用して、ラパマイシンを滴定除去し、したがって1つの多量体化ドメインのみが結合しているためにシグナル伝達を停止させることができる。特定の実施形態において、抗架橋因子(例えば、シクロスポリン、FK506)は、免疫抑制剤である。例えば、免疫抑制抗架橋因子を使用して、特定の実施形態において企図されるDARIC成分の機能を遮断または最小化し、かつ臨床設定において望まれないまたは病理学的な炎症応答を同時に阻害または遮断することができる。
【0335】
一実施形態において、第1の多量体化ドメインはFRB T2098Lを含み、第2の多量体化ドメインはFKBP12を含み、架橋因子はラパログAP21967である。
【0336】
別の実施形態において、第1の多量体化ドメインはFRBを含み、第2の多量体化ドメインはFKBP12を含み、架橋因子はラパマイシン、テムシロリムス、またはエベロリムスである。
【0337】
特定の実施形態において、シグナル伝達ポリペプチド、第1の膜貫通ドメイン、および結合ポリペプチドは、第2の膜貫通ドメインまたはGPIアンカーを含む。第1および第2の膜貫通ドメインの例示的な例は、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、およびPD-1からなる群から独立して選択されるポリペプチドから単離される。
【0338】
一実施形態において、シグナル伝達ポリペプチドは、1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0339】
特定の実施形態において企図されるDARICシグナル伝達成分における使用に好適な一次シグナル伝達ドメインの例示的な例には、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66d由来のものが含まれる。特定の好ましい実施形態において、DARICシグナル伝達成分は、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインと、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインとを含む。細胞内一次シグナル伝達および共刺激シグナル伝達ドメインは、膜貫通ドメインのカルボキシル末端にタンデムの任意の順序で連結され得る。
【0340】
特定の実施形態において企図されるDARICシグナル伝達成分における使用に好適なそのような共刺激分子の例示的な例には、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、およびZAP70が含まれる。一実施形態において、DARICシグナル伝達成分は、CD28、CD137、およびCD134からなる群から選択される1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインと、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインとを含む。
【0341】
特定の実施形態において、DARIC結合成分は、結合ドメインを含む。一実施形態において、結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片である。
【0342】
抗体またはその抗原結合断片は、ペプチド、脂質、多糖類、または抗原決定基を含有する核酸(免疫細胞によって認識されるものなど)などの標的抗原のエピトープを特異的に認識しそれに結合する、少なくとも軽鎖または重鎖免疫グロブリン可変領域を含む。抗体は、抗原結合断片、例えば、ラクダIg(ラクダ抗体もしくはそのVHH断片)、Ig NAR、DARPins、FN3断片、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、F(ab)’3断片、Fv、一本鎖Fv抗体(「scFv」)、bis-scFv、(scFv)2、ミニボディ、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、および単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)、またはそれらの他の抗体断片を含む。この用語はまた、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロ共役抗体(二重特異性抗体など)、およびそれらの抗原結合断片などの遺伝子操作された形態も含む。Pierce Catalog and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,IL)、Kuby,J.,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman&Co.,New York,1997もまた参照されたい。
【0343】
好ましい一実施形態において、結合ドメインは、scFvである。
【0344】
好ましい別の実施形態において、結合ドメインは、ラクダ抗体である。
【0345】
特定の実施形態において、DARIC結合成分は、FRα、TPBG、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CD276、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、ERBB2、EGFRvIII、EPCAM、EphA2、FAP、胎児AchR、GD2、GD3、GPC3、HLA-A1MAGEA1、HLA-A2MAGEA1、HLA-A3MAGEA1、MAGEA1、HLA-A1NY-ESO-1、HLA-A2NY-ESO-1、HLA-A3NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ軽鎖、ルイス-Y、カッパ軽鎖、メソテリン、MUC1、MUC16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM1、TEM5、TEM7、TEM8、VEGFR2、およびWT-1からなる群から選択される抗原に結合する細胞外ドメインを含む。
【0346】
一実施形態において、DARIC結合成分は、細胞外ドメイン、例えば、クラスI MHC-ペプチド複合体またはクラスII MHC-ペプチド複合体などのMHC-ペプチド複合体に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0347】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるDARIC成分は、2つのタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ドメイン、領域、またはモチーフを接続するリンカーまたはスペーサーを含む。特定の実施形態において、リンカーは、約2~約35個のアミノ酸、または約4~約20個のアミノ酸、または約8~約15個のアミノ酸、または約15~約25個のアミノ酸を含む。他の実施形態において、スペーサーは、抗体CHCHドメインまたはヒンジドメインなどの特定の構造を有し得る。一実施形態において、スペーサーは、IgG1、IgG4、またはIgDのCHおよびCHドメインを含む。
【0348】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるDARIC成分は、1つ以上の「ヒンジドメイン」を含み、これは、ドメインを位置付けて、適切な細胞間接触、抗原結合、および活性化を可能にする上で役割を果たす。DARICは、結合ドメインと多量体化ドメインおよび/もしくは膜貫通ドメイン(TM)との間、または多量体化ドメインと膜貫通ドメインとの間に、1つ以上のヒンジドメインを含み得る。ヒンジドメインは、天然、合成、半合成、または組み換え供給源のいずれかに由来し得る。ヒンジドメインは、天然に存在する免疫グロブリンのヒンジ領域または改変された免疫グロブリンのヒンジ領域のアミノ酸配列を含み得る。特定の実施形態において、ヒンジは、CD8αヒンジまたはCD4ヒンジである。
【0349】
一実施形態において、DARICは、シグナル伝達ポリペプチドを含むは、FRB T2098Lの第1の多量体化ドメインと、CD8膜貫通ドメインと、4-1BB共刺激ドメインと、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインとを含み、結合ポリペプチドは、CD19に結合するscFvと、FKBP12の第2の多量体化ドメインと、CD4膜貫通ドメインとを含み、架橋因子は、ラパログAP21967である。
【0350】
一実施形態において、DARICは、シグナル伝達ポリペプチドを含むは、FRBの第1の多量体化ドメインと、CD8膜貫通ドメインと、4-1BB共刺激ドメインと、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインとを含み、結合ポリペプチドは、CD19に結合するscFvと、FKBP12の第2の多量体化ドメインと、CD4膜貫通ドメインとを含み、架橋因子は、ラパマイシン、テムシロリムス、またはエベロリムスである。
【0351】
d.ゼータカイン
特定の実施形態において、本明細書において企図される操作された免疫エフェクター細胞は、1つ以上のキメラサイトカイン受容体を含む。一実施形態において、T細胞は、ゼータカインをコードするドナー修復鋳型の存在下で、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする1つ以上の遺伝子にDSBを導入することによって操作される。
【0352】
一実施形態において、本明細書において企図される操作されたT細胞は、TCRα対立遺伝子に挿入されていないキメラサイトカイン受容体を含み、免疫抑制シグナルダンパー、フリップ受容体、操作されたT細胞受容体(TCR)のアルファ鎖および/もしくはベータ鎖、キメラ抗原受容体(CAR)、DARIC受容体もしくはその成分、またはキメラサイトカイン受容体受容体のうちの1つ以上は、1つ以上のTCRα対立遺伝子中のDSBに挿入される。
【0353】
特定の実施形態において、DNAドナー鋳型は、ゼータカインを1つの遺伝子座に、および免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、または別の操作された抗原受容体をコードする1つ以上の導入遺伝子を1つ以上の異なる遺伝子座に挿入するように設計される。
【0354】
様々な実施形態において、ゲノム編集されたT細胞は、細胞傷害性を腫瘍細胞に対して再指向するキメラサイトカイン受容体を発現する。ゼータカインは、細胞外ドメインを細胞表面に繋ぎ止めることができる支持領域に連結した可溶性受容体リガンドを含む細胞外ドメインと、膜貫通領域と、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、キメラ膜貫通免疫受容体である。Tリンパ球の表面上で発現される場合、ゼータカインは、可溶性受容体リガンドが特異的である受容体を発現する細胞に対してT細胞活性を指向する。ゼータカインキメラ免疫受容体は、T細胞の抗原特異性を再指向し、特にヒト悪性腫瘍によって利用される自己分泌/パラ分泌サイトカイン系を介した様々な癌の治療に対する用途を有する。
【0355】
特定の実施形態において、キメラサイトカイン受容体は、免疫抑制サイトカインまたはそのサイトカイン受容体結合バリアントと、リンカーと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。
【0356】
特定の実施形態において、サイトカインまたはそのサイトカイン受容体結合バリアントは、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-10(IL-10)、およびインターロイキン-13(IL-13)からなる群から選択される。
【0357】
特定の実施形態において、リンカーは、CHCHドメインまたはヒンジドメインなどを含む。一実施形態において、リンカーは、IgG1、IgG4、またはIgDのCHおよびCHドメインを含む。一実施形態において、リンカーは、CD8αまたはCD4ヒンジドメインを含む。
【0358】
特定の実施形態において、膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ鎖またはベータ鎖、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、およびPD-1からなる群から選択される。
【0359】
特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメインおよび/または共刺激ドメインを含有するITAMからなる群から選択される。
【0360】
特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dからなる群から選択される。
【0361】
特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、およびZAP70からなる群から選択される。
【0362】
一実施形態において、キメラサイトカイン受容体は、CD28、CD137、およびCD134からなる群から選択される1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインと、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインとを含む。
【0363】
4.グロビン遺伝子
特定の実施形態において、本明細書において企図されるゲノム編集された造血細胞は、グロビン遺伝子またはその抗鎌状化バリアントを含む。一実施形態において、造血細胞細胞は、グロビン遺伝子またはその抗鎌状化バリアントをコードするドナー修復鋳型の存在下で、BCL11A遺伝子座、KLF1遺伝子座、SOX6遺伝子座、GATA1遺伝子座、およびLSD1遺伝子座を含むがこれらに限定されない、γ-グロビン遺伝子発現およびHbFの抑圧に寄与する遺伝子、β-グロビン遺伝子座のサラセミア対立遺伝子、またはβ-グロビン遺伝子座の鎌状化対立遺伝子をコードする1つ以上の遺伝子にDSBを導入することによって操作される。
【0364】
特定の実施形態において、グロビンまたはその抗鎌状化バリアントには、β-グロビン、δ-グロビン、γ-グロビン、β-グロビンA-T87Q、β-グロビンA-T87Q/K120E/K95E、またはβ-グロビンA-T87Q/G16D/E22Aが含まれるが、これらに限定されない。
【0365】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、グロビンまたはその抗鎌状化バリアントをコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位のうちの少なくとも1つに挿入される。
【0366】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の標的部位でDSBを誘導するために、複数の操作されたヌクレアーゼが使用され、グロビンまたはその抗鎌状化バリアントをコードし、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アームによって隣接される導入遺伝子を含むDNAドナー修復鋳型が細胞に導入され、相同組換えによって標的部位の2つ以上に挿入される。
【0367】
D.ヌクレアーゼ
特定の実施形態において企図される免疫エフェクター細胞組成物は、複数の遺伝子座を標的とする操作されたヌクレアーゼで達成される多重ゲノム編集によって生成される。特定の実施形態において、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子を含むがこれらに限定されない、複数のゲノム標的部位でDSBを誘導するために、操作されたヌクレアーゼが免疫エフェクター細胞に導入される。
【0368】
免疫系チェックポイント遺伝子の例示的な例には、PD-1、LAG-3、TIM-3、CTLA-4、BTLA、TIGIT、VISTA、およびKIRが含まれるが、これらに限定されない。
【0369】
免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子の例示的な例には、IL-10Rα、TGFβR1、TGFβR2、AHR、SGK1、TSC2、VHL、A2AR、およびCBLBが含まれるが、これらに限定されない。
【0370】
特定の実施形態において企図される造血細胞組成物は、複数の遺伝子を標的とする操作されたヌクレアーゼで達成される多重ゲノム編集によって生成される。特定の実施形態において、γ-グロビン遺伝子発現およびHbFの抑圧に寄与するポリペプチドをコードする遺伝子を含むがこれらに限定されない、複数のゲノム標的部位でDSBを誘導するために、操作されたヌクレアーゼが造血細胞に導入される。
【0371】
γ-グロビン遺伝子発現およびHbFを抑圧するポリペプチドの例示的な例には、BCL11A、KLF1、SOX6、GATA1、およびLSD1が含まれるが、これらに限定されない。
【0372】
特定の実施形態において企図される操作されたヌクレアーゼは、標的配列内で一本鎖DNAニックまたは二本鎖DNA切断(DSB)を生成する。更に、DSBは、標的DNAにおいて、一本鎖ミック(ニッカーゼ)を生成する2つのヌクレアーゼの使用によって達成することができる。各ニッカーゼは、DNAの一本鎖を切断し、2つ以上のニッカーゼの使用は、標的DNA配列内で二本鎖切断(例えば、ねじれ型二本鎖切断)をもたらし得る。好ましい実施形態において、ヌクレアーゼが、ドナー修復鋳型と組み合わせて使用され、これは、DSBでの相同組換えを介して、DNA切断部位の標的配列に導入される。
【0373】
ゲノム編集に好適な、本明細書の特定の実施形態において企図される操作されたヌクレアーゼは、1つ以上のDNA結合ドメインと、1つ以上のDNA切断ドメイン(例えば、1つ以上のエンドヌクレアーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼドメイン)と、任意で、本明細書において企図される1つ以上のリンカーとを含む。「操作されたヌクレアーゼ」は、1つ以上のDNA結合ドメインおよび1つ以上のDNA切断ドメインを含むヌクレアーゼを指し、ヌクレアーゼは、DNA切断標的配列に隣接しているDNA結合標的配列に結合するように設計および/または修飾されている。操作されたヌクレアーゼは、天然に存在するヌクレアーゼから、または以前に操作されたヌクレアーゼから設計および/または修飾することができる。特定の実施形態において企図される操作されたヌクレアーゼは、1つ以上の追加の機能性ドメイン、例えば、5-3’エキソヌクレアーゼ、5-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、または鋳型非依存的DNAポリメラーゼ活性を呈する末端プロセシング酵素の末端プロセシング酵素ドメインを更に含み得る。
【0374】
標的配列に結合しそれを切断するように操作され得るヌクレアーゼの例示的な例には、ホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)、メガTAL、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、およびクラスター化して規則的な配置の短い回文反復配列(CRISPR)/Casヌクレアーゼ系が含まれるが、これらに限定されない。
【0375】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるヌクレアーゼは、1つ以上の異種DNA結合および切断ドメイン(例えば、ZFN、TALEN、メガTAL)を含む(Boissel et al.,2014、Christian et al.,2010)。他の実施形態において、天然に存在するヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、選択された標的部位に結合するように改変されてもよい(例えば、同族結合部位とは異なる部位に結合するように操作されているメガヌクレアーゼ)。例えば、メガヌクレアーゼは、それらの同族結合部位とは異なる標的部位に結合するように設計されている(Boissel et al.,2014)。特定の実施形態において、ヌクレアーゼは、核酸配列がある標的部位(例えば、CRISPR/Cas)を標的とすることを必要とする。
【0376】
1.ホーミングエンドヌクレアーゼ/メガヌクレアーゼ
様々な実施形態において、複数のホーミングエンドヌクレアーゼまたはメガヌクレアーゼが細胞に導入され、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子を含むがこれらに限定されない、複数のゲノム標的部位に結合するように、かつそれらに一本鎖ニックまたは二本鎖切断(DSB)を導入するように操作される。「ホーミングエンドヌクレアーゼ」および「メガヌクレアーゼ」は互換的に使用され、12~45塩基対の切断部位を認識し、かつ一般に配列および構造モチーフに基づいて5つのファミリー、LAGLIDADG、GIY-YIG、HNH、His-Cysボックス、およびPD-(D/E)XKにグループ化される、天然に存在するヌクレアーゼまたは操作されたメガヌクレアーゼを指す。
【0377】
操作されたHEは、天然には存在せず、組換えDNA技術またはランダム変異原性によって得ることができる。操作されたHEは、天然に存在するHEまたは以前に操作されたHEにおいて、1つ以上のアミノ酸改変を作製すること、例えば、1つ以上のアミノ酸を変異、置換、付加、または欠失させることによって得ることができる。特定の実施形態において、操作されたHEは、DNA認識界面に対する1つ以上のアミノ酸改変を含む。
【0378】
特定の実施形態において企図される操作されたHEは、1つ以上のリンカーおよび/または追加の機能性ドメイン、例えば、5-3’エキソヌクレアーゼ、5-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、または鋳型非依存的DNAポリメラーゼ活性を呈する末端プロセシング酵素の末端プロセシング酵素ドメインを更に含み得る。特定の実施形態において、操作されたHEは、5-3’エキソヌクレアーゼ、5-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、または鋳型非依存的DNAポリメラーゼ活性を呈する末端プロセシング酵素とともにT細胞に導入される。HEおよび3’プロセシング酵素は、例えば、異なるベクターもしくは別々のmRNA中で別個に、または例えば、融合タンパク質として一緒に、またはウイルス自己切断ペプチドもしくはIRESエレメントによって分離された多シストロン性構築物中に導入されてもよい。
【0379】
「DNA認識界面」は、核酸標的塩基と相互作用するHEアミノ酸残基および隣接しているそれらの残基を指す。各HEについて、DNA認識界面は、側鎖対側鎖接触および側鎖対DNA接触の広範なネットワークを含み、これらのほとんどは、特定の核酸標的配列を認識するために必然的に特有である。したがって、特定の核酸配列に対応するDNA認識界面のアミノ酸配列は有意に変動し、これはあらゆる天然のHEまたは操作されたHEの特徴である。非限定的な例として、特定の実施形態において企図される操作されたHEは、天然のHE(または以前に操作されたHE)のDNA認識界面に局在化した1つ以上のアミノ酸残基が変動する、HEバリアントのライブラリを構築することによって導出することができる。ライブラリは、切断アッセイを使用して、予想される各TCRα遺伝子座標的部位に対する標的切断活性についてスクリーニングすることができる(例えば、Jarjour et al.,2009.Nuc.Acids Res.37(20):6871-6880を参照されたい)。
【0380】
LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ(LHE)は、最もよく研究されたメガヌクレアーゼのファミリーであり、主に古細菌中ならびに緑藻および真菌における細胞小器官DNA中でコードされ、最も高い全体的なDNA認識特異性を示す。LHEは、1つのタンパク質鎖当たり1つまたは2つのLAGLIDADG触媒モチーフを含み、それぞれホモ二量体または単鎖単量体として機能する。LAGLIDADGタンパク質の構造研究は、αββαββαの折り畳みを特徴とする高度に保存されたコア構造(Stoddard2005)を特定しており、LAGLIDADGモチーフは、この折り畳みの第1のヘリックスに属する。LHE’の高度に効率的かつ特異的な切断は、タンパク質足場となって、新規の高度に特異的なエンドヌクレアーゼを導出する。しかしながら、非天然または非標準の標的部位に結合しそれを切断するようなLHEの操作は、適切なLHE足場の選択、標的遺伝子座の試験、推定標的部位の選択、ならびに標的部位における塩基対位置の最大3分の2でLHEを広範に改変して、そのDNA接触点および切断特異性を改変することを必要とする。
【0381】
操作されたLHEが設計され得るLHEの例示的な例には、I-AabMI、I-AaeMI、I-AniI、I-ApaMI、I-CapIII、I-CapIV、I-CkaMI、I-CpaMI、I-CpaMII、I-CpaMIII、I-CpaMIV、I-CpaMV、I-CpaV、I-CraMI、I-EjeMI、I-GpeMI、I-GpiI、I-GzeMI、I-GzeMII、I-GzeMIII、I-HjeMI、I-LtrII、I-LtrI、I-LtrWI、I-MpeMI、I-MveMI、I-NcrII、I-Ncrl、I-NcrMI、I-OheMI、I-OnuI、I-OsoMI、I-OsoMII、I-OsoMIII、I-OsoMIV、I-PanMI、I-PanMII、I-PanMIII、I-PnoMI、I-ScuMI、I-SmaMI、I-SscMI、およびI-Vdi141Iが含まれるが、これらに限定されない。
【0382】
操作されたLHEが設計され得るLHEの他の例示的な例には、I-CreIおよびI-SceIが含まれるが、これらに限定されない。
【0383】
一実施形態において、操作されたLHEは、I-CpaMI、I-HjeMI、I-OnuI、I-PanMI、およびSmaMIからなる群から選択される。
【0384】
一実施形態において、操作されたLHEは、I-OnuIである。
【0385】
一実施形態において、ヒトTCRα遺伝子を標的とする操作されたI-OnuI LHEが、天然のI-OnuIから生成された。好ましい実施形態において、ヒトTCRα遺伝子を標的とする操作されたI-OnuI LHEが、以前に操作されたI-OnuIから生成された。
【0386】
特定の実施形態において、操作されたI-OnuI LHEは、DNA認識界面において1つ以上のアミノ酸置換を含む。特定の実施形態において、I-OnuI LHEは、I-OnuIまたはI-OnuIの操作されたバリアントのDNA認識界面と少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を含む(Taekuchi et al.2011.Proc Natl Acad Sci U.S.A.2011Aug9;108(32):13077-13082)。
【0387】
一実施形態において、I-OnuI LHEは、I-OnuIのDNA認識界面と少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を含む(Taekuchi et al.2011.Proc Natl Acad Sci U.S.A.2011Aug9;108(32):13077-13082)。
【0388】
特定の実施形態において、操作されたI-OnuI LHEは、DNA認識界面において、特にI-OnuIの24~50位、68~82位、180~203位、および223~240位に位置しているサブドメインにおいて、1つ以上のアミノ酸置換または修飾を含む。
【0389】
一実施形態において、操作されたI-OnuI LHEは、I-OnuI配列全体のどこに位置してもよい追加の位置に1つ以上のアミノ酸置換または修飾を含む。置換および/または修飾され得る残基には、核酸標的に接触するアミノ酸、または直接もしくは水分子を介して核酸骨格もしくはヌクレオチド塩基と相互作用するアミノ酸が含まれるが、これらに限定されない。非限定的な一例において、本明細書において企図される操作されたI-OnuI LHEは、I-OnuIの19位、24位、26位、28位、30位、32位、34位、35位、36位、37位、38位、40位、42位、44位、46位、48位、68位、70位、72位、75位、76位、77位、78位、80位、82位、168位、180位、182位、184位、186位、188位、189位、190位、191位、192位、193位、195位、197位、199位、201位、203位、223位、225位、227位、229位、231位、232位、234位、236位、238位、240位からなる位置群から選択される少なくとも1つの位置に、1つ以上、好ましくは少なくとも5つ、好ましくは少なくとも10個、好ましくは少なくとも15個、より好ましくは少なくとも20個、更により好ましくは少なくとも25個の置換および/または修飾を含む。
【0390】
2.メガTAL
様々な実施形態において、複数のメガTALが細胞に導入され、γ-グロビン遺伝子発現を抑制するポリペプチド、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子を含むがこれらに限定されない、複数のゲノム標的部位に結合するように、かつそれらにDSBを導入するように操作される。「メガTAL」は、操作されたTALE DNA結合ドメインを含む操作されたヌクレアーゼ、および操作されたメガヌクレアーゼを指し、任意で、1つ以上のリンカーおよび/または追加の機能性ドメイン、例えば、5-3’エキソヌクレアーゼ、5-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、または鋳型非依存的DNAポリメラーゼ活性を呈する末端プロセシング酵素の末端プロセシング酵素ドメインを含む。特定の実施形態において、メガTALは、5-3’エキソヌクレアーゼ、5-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、または鋳型非依存的DNAポリメラーゼ活性を呈する末端プロセシング酵素とともにT細胞に導入されてもよい。メガTALおよび3’プロセシング酵素は、例えば、異なるベクターもしくは別々のmRNA中で別個に、または例えば、融合タンパク質として一緒に、またはウイルス自己切断ペプチドもしくはIRESエレメントによって分離された多シストロン性構築物中に導入されてもよい。
【0391】
「TALE DNA結合ドメイン」は、植物転写活性化因子を模倣して、植物トランスクリプトームを操作する転写活性化因子様エフェクター(TALEまたはTALエフェクター)のDNA結合部分である(例えば、Kay et al.,2007.Science318:648-651を参照されたい)。特定の実施形態において企図されるTALE DNA結合ドメインは、新規にまたは天然に存在するTALE、例えば、Xanthomonas campestris pv.vesicatoria、Xanthomonas gardneri、Xanthomonas translucens、Xanthomonas axonopodis、Xanthomonas perforans、Xanthomonas alfalfa、Xanthomonas citri、Xanthomonas euvesicatoria、およびXanthomonas oryzae由来のAvrBs3、ならびにRalstonia solanacearum由来のbrg11およびhpx17から操作される。DNA結合ドメインを導出および設計するためのTALEタンパク質の例示的な例は、米国特許第9,017,967号およびその中に引用される参考文献に開示されており、これらの全ては、それらの全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0392】
特定の実施形態において、メガTALは、TALE DNA結合ドメインのその対応する標的DNA配列への結合に関与する1つ以上の反復単位を含む、TALE DNA結合ドメインを含む。単一の「反復単位」(「反復配列」とも称される)は、典型的には33~35アミノ酸長である。各TALE DNA結合ドメイン反復単位は、典型的には反復配列の12位および/または13位で反復可変二残基(RVD)を構成する1つまたは2つのDNA結合残基を含む。これらのTALE DNA結合ドメインのDNA認識の天然(標準)のコードは、HD配列の12位および13位がシトシン(C)への結合をもたらし、NGがTに結合し、NIがAに結合し、NNがGまたはAに結合し、NGがTに結合するように決定されている。特定の実施形態において、非標準(非定型)のRVDが企図される。
【0393】
特定の実施形態において企図される特定のメガTALにおける使用に好適な非標準のRVDの例示的な例には、グアニン(G)の認識のためのHH、KH、NH、NK、NQ、RH、RN、SS、NN、SN、KN;アデニン(A)の認識のためのNI、KI、RI、HI、SI;チミン(T)の認識のためのNG、HG、KG、RG;シトシン(C)の認識のためのRD、SD、HD、ND、KD、YG;AまたはGの認識のためのNV、HN;およびAまたはTまたはGまたはCの認識のためのH、HA、KA、N、NA、NC、NS、RA、Sが含まれるが、これらに限定されず、()は、13位のアミノ酸が不在であることを意味する。特定の実施形態において企図される特定のメガTALにおける使用に好適なRVDの追加の例示的な例には、米国特許第8,614,092号に開示されるものが更に含まれ、その全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0394】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるメガTALは、3~30個の反復単位を含むTALE DNA結合ドメインを含む。特定の実施形態において、メガTALは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個のTALE DNA結合ドメイン反復単位を含む。好ましい実施形態において、本明細書において企図されるメガTALは、5~16個の反復単位、より好ましくは7~15個の反復単位、より好ましくは9~12個のpatentsarenotobviouss反復単位、およびより好ましくは9、10、または11個の反復単位を含むTALE DNA結合ドメインを含む。
【0395】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるメガTALは、3~30個の反復単位と、一組のTALE反復単位のC末端に位置する20個のアミノ酸を含む追加の単一切断型TALE反復単位、すなわち、追加のC末端半TALE DNA結合ドメイン反復単位(本明細書の他の箇所で以下に開示されるCキャップのアミノ酸-20~-1)とを含む、TALE DNA結合ドメインを含む。したがって、特定の実施形態において、本明細書において企図されるメガTALは、3.5~30.5個の反復単位を含むTALE DNA結合ドメインを含む。特定の実施形態において、メガTALは、3.5、4.5、5.5、6.5、7.5、8.5、9.5、10.5、11.5、12.5、13.5、14.5、15.5、16.5、17.5、18.5、19.5、20.5、21.5、22.5、23.5、24.5、25.5、26.5、27.5、28.5、29.5、または30.5個のTALE DNA結合ドメイン反復単位を含む。好ましい実施形態において、本明細書において企図されるメガTALは、5.5~13.5個の反復単位、より好ましくは7.5~12.5個の反復単位、より好ましくは9.5~11.5個の反復単位、およびより好ましくは9.5、10.5、または11.5個の反復単位を含むTALE DNA結合ドメインを含む。
【0396】
特定の実施形態において、メガTALは、「N末端ドメイン(NTD)」ポリペプチドと、1つ以上のTALE反復ドメイン/単位と、「C末端ドメイン(CTD)」ポリペプチドと、操作されたメガヌクレアーゼとを含む。
【0397】
本明細書で使用される場合、「N末端ドメイン(NTD)」ポリペプチドという用語は、天然に存在するTALE DNA結合ドメインのN末端部分または断片に隣接する配列を指す。存在する場合、NTD配列は、TALE DNA結合ドメイン反復単位がDNAに結合する能力を保持する限り、任意の長さのものであり得る。特定の実施形態において、NTDポリペプチドは、TALE DNA結合ドメインに対してN末端に、少なくとも120個~少なくとも140個、またはそれ以上のアミノ酸を含む(0は最もN末端の反復単位のアミノ酸1である)。特定の実施形態において、NTDポリペプチドは、TALE DNA結合ドメインに対してN末端に、少なくとも約120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、または少なくとも140個のアミノ酸を含む。一実施形態において、本明細書において企図されるメガTALは、XanthomonasのTALEタンパク質の少なくともアミノ酸約+1~+122から少なくとも約+1~+137のNTDポリペプチドを含む(0は最もN末端の反復単位のアミノ酸1である)。特定の実施形態において、NTDポリペプチドは、XanthomonasのTALEタンパク質のTALE DNA結合ドメインに対してN末端に、少なくとも約122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、または137個のアミノ酸を含む。一実施形態において、本明細書において企図されるメガTALは、RalstoniaのTALEタンパク質の少なくともアミノ酸+1~+121のNTDポリペプチドを含む(0は最もN末端の反復単位のアミノ酸1である)。特定の実施形態において、NTDポリペプチドは、RalstoniaのTALEタンパク質のTALE DNA結合ドメインに対してN末端に、少なくとも約121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、または137個のアミノ酸を含む。
【0398】
本明細書で使用される場合、「C末端ドメイン(CTD)」ポリペプチドという用語は、天然に存在するTALE DNA結合ドメインのC末端部分または断片に隣接する配列を指す。存在する場合、CTD配列は、TALE DNA結合ドメイン反復単位がDNAに結合する能力を保持する限り、任意の長さのものであり得る。特定の実施形態において、CTDポリペプチドは、TALE DNA結合ドメインの最後の完全反復配列に対してC末端に、少なくとも20~少なくとも85個、またはそれ以上のアミノ酸を含む(最初の20個のアミノ酸は、最後のC末端完全反復単位に対してC末端にある半反復単位である)。特定の実施形態において、CTDポリペプチドは、TALE DNA結合ドメインの最後の完全反復配列に対してC末端に、少なくとも約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、443、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、または少なくとも85個のアミノ酸を含む。一実施形態において、本明細書において企図されるメガTALは、XanthomonasのTALEタンパク質の少なくともアミノ酸約-20~-1のCTDポリペプチドを含む(-20は、最後のC末端完全反復単位に対してC末端にある半反復単位のアミノ酸1である)。特定の実施形態において、CTDポリペプチドは、XanthomonasのTALEタンパク質のTALE DNA結合ドメインの最後の完全反復配列に対してC末端に、少なくとも約20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個のアミノ酸を含む。一実施形態において、本明細書において企図されるメガTALは、RalstoniaのTALEタンパク質の少なくともアミノ酸約-20~-1のCTDポリペプチドを含む(-20は、最後のC末端完全反復単位に対してC末端にある半反復単位のアミノ酸1である)。特定の実施形態において、CTDポリペプチドは、RalstoniaのTALEタンパク質のTALE DNA結合ドメインの最後の完全反復配列に対してC末端に、少なくとも約20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個のアミノ酸を含む。
【0399】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるメガTALは、標的配列に結合するように操作されたTALE DNA結合ドメインを含む融合ポリペプチドと、標的配列に結合しそれを切断するように操作されたメガヌクレアーゼと、任意で、本明細書の他の箇所で企図される1つ以上のリンカーポリペプチドで任意で互いに結合したNTDおよび/またはCTDポリペプチドとを含む。いかなる特定の理論によっても拘束されることを望むものではないが、TALE DNA結合ドメインならびに任意でNTDおよび/またはCTDポリペプチドを含むメガTALが、リンカーポリペプチド(これは操作されたメガヌクレアーゼに更に融合されている)に融合されることが企図される。したがって、TALE DNA結合ドメインは、メガヌクレアーゼのDNA結合ドメインによって結合される標的配列から約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個以内のヌクレオチドだけ離れたDNA標的配列に結合する。このように、本明細書において企図されるメガTALは、ゲノム編集の特異性および効率を増加させる。
【0400】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるメガTALは、1つ以上のTALE DNA結合反復単位と、I-AabMI、I-AaeMI、I-AniI、I-ApaMI、I-CapIII、I-CapIV、I-CkaMI、I-CpaMI、I-CpaMII、I-CpaMIII、I-CpaMIV、I-CpaMV、I-CpaV、I-CraMI、I-CreI、I-SceI、I-EjeMI、I-GpeMI、I-GpiI、I-GzeMI、I-GzeMII、I-GzeMIII、I-HjeMI、I-LtrII、I-LtrI、I-LtrWI、I-MpeMI、I-MveMI、I-NcrII、I-Ncrl、I-NcrMI、I-OheMI、I-OnuI、I-OsoMI、I-OsoMII、I-OsoMIII、I-OsoMIV、I-PanMI、I-PanMII、I-PanMIII、I-PnoMI、I-ScuMI、I-SmaMI、I-SscMI、およびI-Vdi141I、または好ましくはI-CpaMI、I-HjeMI、I-OnuI、I-PanMI、およびSmaMI、またはより好ましくはI-OnuIからなる群から選択される操作されたLHEとを含む。
【0401】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるメガTALは、NTDと、1つ以上のTALE DNA結合反復単位と、CTDと、I-AabMI、I-AaeMI、I-AniI、I-ApaMI、I-CapIII、I-CapIV、I-CkaMI、I-CpaMI、I-CpaMII、I-CpaMIII、I-CpaMIV、I-CpaMV、I-CpaV、I-CraMI、I-CreI、I-SceI、I-EjeMI、I-GpeMI、I-GpiI、I-GzeMI、I-GzeMII、I-GzeMIII、I-HjeMI、I-LtrII、I-LtrI、I-LtrWI、I-MpeMI、I-MveMI、I-NcrII、I-Ncrl、I-NcrMI、I-OheMI、I-OnuI、I-OsoMI、I-OsoMII、I-OsoMIII、I-OsoMIV、I-PanMI、I-PanMII、I-PanMIII、I-PnoMI、I-ScuMI、I-SmaMI、I-SscMI、およびI-Vdi141I、または好ましくはI-CpaMI、I-HjeMI、I-OnuI、I-PanMI、およびSmaMI、またはより好ましくはI-OnuIからなる群から選択される操作されたLHEとを含む。
【0402】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるメガTALは、NTDと、約9.5~約11.5個のTALE DNA結合反復単位と、I-AabMI、I-AaeMI、I-AniI、I-ApaMI、I-CapIII、I-CapIV、I-CkaMI、I-CpaMI、I-CpaMII、I-CpaMIII、I-CpaMIV、I-CpaMV、I-CpaV、I-CraMI、I-CreI、I-SceI、I-EjeMI、I-GpeMI、I-GpiI、I-GzeMI、I-GzeMII、I-GzeMIII、I-HjeMI、I-LtrII、I-LtrI、I-LtrWI、I-MpeMI、I-MveMI、I-NcrII、I-Ncrl、I-NcrMI、I-OheMI、I-OnuI、I-OsoMI、I-OsoMII、I-OsoMIII、I-OsoMIV、I-PanMI、I-PanMII、I-PanMIII、I-PnoMI、I-ScuMI、I-SmaMI、I-SscMI、およびI-Vdi141I、または好ましくはI-CpaMI、I-HjeMI、I-OnuI、I-PanMI、およびSmaMI、またはより好ましくはI-OnuIからなる群から選択される操作されたI-OnuI LHEとを含む。
【0403】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるメガTALは、約122アミノ酸~137アミノ酸のNTDと、約9.5、約10.5、または約11.5個の結合反復単位と、約20アミノ酸~約85アミノ酸のCTDと、I-AabMI、I-AaeMI、I-AniI、I-ApaMI、I-CapIII、I-CapIV、I-CkaMI、I-CpaMI、I-CpaMII、I-CpaMIII、I-CpaMIV、I-CpaMV、I-CpaV、I-CraMI、I-CreI、I-SceI、I-EjeMI、I-GpeMI、I-GpiI、I-GzeMI、I-GzeMII、I-GzeMIII、I-HjeMI、I-LtrII、I-LtrI、I-LtrWI、I-MpeMI、I-MveMI、I-NcrII、I-Ncrl、I-NcrMI、I-OheMI、I-OnuI、I-OsoMI、I-OsoMII、I-OsoMIII、I-OsoMIV、I-PanMI、I-PanMII、I-PanMIII、I-PnoMI、I-ScuMI、I-SmaMI、I-SscMI、およびI-Vdi141I、または好ましくはI-CpaMI、I-HjeMI、I-OnuI、I-PanMI、およびSmaMI、またはより好ましくはI-OnuIからなる群から選択される操作されたI-OnuI LHEとを含む。
【0404】
3.Talen
様々な実施形態において、複数の転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)が細胞に導入され、γ-グロビン遺伝子発現を抑制するポリペプチド、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子を含むがこれらに限定されない、複数のゲノム標的部位に結合するように、かつそれらに一本鎖ニックまたは二本鎖切断(DSB)を導入するように操作される。「TALEN」は、本明細書の他の箇所で企図される操作されたTALE DNA結合ドメインおよびエンドヌクレアーゼドメイン(またはそのエンドヌクレアーゼ半ドメイン)を含む操作されたヌクレアーゼ、ならびに操作されたヌクレアーゼを指し、任意で、1つ以上のリンカーおよび/または追加の機能性ドメイン、例えば、5-3’エキソヌクレアーゼ、5-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、または鋳型非依存的DNAポリメラーゼ活性を呈する末端プロセシング酵素の末端プロセシング酵素ドメインを含む。特定の実施形態において、TALENは、5-3’エキソヌクレアーゼ、5-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、または鋳型非依存的DNAポリメラーゼ活性を呈する末端プロセシング酵素とともにT細胞に導入されてもよい。TALENおよび3’プロセシング酵素は、例えば、異なるベクターもしくは別々のmRNA中で別個に、または例えば、融合タンパク質として一緒に、またはウイルス自己切断ペプチドもしくはIRESエレメントによって分離された多シストロン性構築物中に導入されてもよい。
【0405】
一実施形態において、標的とされる二本鎖切断は、2つのTALENによって達成され、エンドヌクレアーゼ半ドメインを含む各々を使用して、触媒活性切断ドメインを再構成することができる。別の実施形態において、標的とされる二本鎖切断は、TALE DNA結合ドメインおよび2つのエンドヌクレアーゼ半ドメインを含む単一ポリペプチドを使用して達成される。
【0406】
特定の実施形態において企図されるTALENは、NTDと、約3~30個の反復単位(例えば、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の反復単位)を含むTALE DNA結合ドメインと、エンドヌクレアーゼドメインまたは半ドメインとを含む。
【0407】
特定の実施形態において企図されるTALENは、NTDと、約3~30個の反復単位(例えば、約3.5、4.5、5.5、6.5、7.5、8.5、9.5、10.5、11.5、12.5、13.5、14.5、15.5、16.5、17.5、18.5、19.5、20.5、21.5、22.5、23.5、24.5、25.5、26.5、27.5、28.5、29.5、または30.5個の反復単位)を含むTALE DNA結合ドメインと、CTDと、エンドヌクレアーゼドメインまたは半ドメインとを含む。
【0408】
特定の実施形態において企図されるTALENは、本明細書の他の箇所で開示される約121アミノ酸~約137アミノ酸のNTDと、約9.5~約11.5個の反復単位(すなわち、約9.5、約10.5、または約11.5個の反復単位)を含むTALE DNA結合ドメインと、約20アミノ酸~約85アミノ酸のCTDと、エンドヌクレアーゼドメインまたは半ドメインとを含む。
【0409】
特定の実施形態において、TALENは、種類制限エンドヌクレアーゼのエンドヌクレアーゼドメインを含む。制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は多くの種に存在し、(認識部位で)DNAに配列特異的に結合し、結合部位またはその近くでDNAを切断することができる。特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から除去されており、分離可能な結合ドメインおよびエンドヌクレアーゼドメインを有する部位でDNAを切断する。一実施形態において、TALENは、少なくとも1つのIIS型制限酵素由来のエンドヌクレアーゼドメイン(またはエンドヌクレアーゼ半ドメイン)と、本明細書の他の箇所で企図される1つ以上のTALE DNA結合ドメインとを含む。
【0410】
特定の実施形態において企図されるTALENにおける使用に好適なIIS型制限エンドヌクレアーゼドメインの例示的な例には、「rebase.neb.com/cgi-bin/sublist?S」に開示される少なくとも1633個のIIS型制限エンドヌクレアーゼのエンドヌクレアーゼドメインが含まれる。
【0411】
特定の実施形態において企図されるTALENにおける使用に好適なIIS型制限エンドヌクレアーゼドメインの追加の例示的な例には、Aar I、Ace III、Aci I、Alo I、Alw26 I、Bae I、Bbr7 I、Bbv I、Bbv II、BbvC I、Bcc I、Bce83 I、BceA I、Bcef I、Bcg I、BciV I、Bfi I、Bin I、Bmg I、Bpu10 I、BsaX I、Bsb I、BscA I、BscG I、BseR I、BseY I、Bsi I、Bsm I、BsmA I、BsmF I、Bsp24 I、BspG I、BspM I、BspNC I、Bsr I、BsrB I、BsrD I、BstF5 I、Btr I、Bts I、Cdi I、CjeP I、Drd II、EarI、Eci I、Eco31 I、Eco57 I、Eco57M I、Esp3 I、Fau I、Fin I、Fok I、Gdi II、Gsu I、Hga I、Hin4 II、Hph I、Ksp632 I、Mbo II、Mly I、Mme I、Mnl I、Pfl1108、I Ple I、Ppi I、Psr I、RleA I、Sap I、SfaN I、Sim I、SspD5 I、Sth132 I、Sts I、TspDT I、TspGW I、Tth111 II、UbaP I、Bsa I、およびBsmB Iからなる群から選択されるエンドヌクレアーゼのものが含まれる。
【0412】
一実施形態において、本明細書において企図されるTALENは、Fok IのIIS型制限エンドヌクレアーゼのエンドヌクレアーゼドメインを含む。
【0413】
一実施形態において、本明細書において企図されるTALENは、切断特異性を強化するために、TALE DNA結合ドメインと、少なくとも1つのIIS型制限エンドヌクレアーゼ由来のエンドヌクレアーゼ半ドメインとを含み、任意で、エンドヌクレアーゼ半ドメインは、ホモ二量体化を最小化または予防する1つ以上のアミノ酸置換または修飾を含む。
【0414】
特定の実施形態において企図される特定の実施形態における使用に好適な切断半ドメインの例示的な例には、米国特許公開第2005/0064474号、同第2006/0188987号、同第2008/0131962号、同第2009/0311787号、同第2009/0305346号、同第2011/0014616号、および同第2011/0201055号に開示されるものが含まれ、これらの各々は、その全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0415】
4.ジンクフィンガーヌクレアーゼ
様々な実施形態において、複数のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)が細胞に導入され、γ-グロビン遺伝子発現を抑制するポリペプチド、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子を含むがこれらに限定されない、複数のゲノム標的部位に結合するように、かつそれらに一本鎖ニックまたは二本鎖切断(DSB)を導入するように操作される。「ZFN」は、1つ以上のジンクフィンガーDNA結合ドメインおよびエンドヌクレアーゼドメイン(またはそのエンドヌクレアーゼ半ドメイン)を含む操作されたヌクレアーゼを指し、任意で、1つ以上のリンカーおよび/または追加の機能性ドメイン、例えば、5-3’エキソヌクレアーゼ、5-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、または鋳型非依存的DNAポリメラーゼ活性を呈する末端プロセシング酵素の末端プロセシング酵素ドメインを含む。特定の実施形態において、ZFNは、5-3’エキソヌクレアーゼ、5-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、または鋳型非依存的DNAポリメラーゼ活性を呈する末端プロセシング酵素とともにT細胞に導入されてもよい。ZFNおよび3’プロセシング酵素は、例えば、異なるベクターもしくは別々のmRNA中で別個に、または例えば、融合タンパク質として一緒に、またはウイルス自己切断ペプチドもしくはIRESエレメントによって分離された多シストロン性構築物中に導入されてもよい。
【0416】
一実施形態において、標的とされる二本鎖切断は、2つのZFNを使用して達成され、エンドヌクレアーゼ半ドメインを含む各々を使用して、触媒活性切断ドメインを再構成することができる。別の実施形態において、標的とされる二本鎖切断は、1つ以上のジンクフィンガーDNA結合ドメインおよび2つのエンドヌクレアーゼ半ドメインを含む単一ポリペプチドによって達成される。
【0417】
一実施形態において、ZNFは、本明細書の他の箇所で企図されるTALE DNA結合ドメインと、ジンクフィンガーDNA結合ドメインと、本明細書の他の箇所で企図されるエンドヌクレアーゼドメイン(またはエンドヌクレアーゼ半ドメイン)とを含む。
【0418】
一実施形態において、ZNFは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインと、本明細書の他の箇所で企図されるメガヌクレアーゼとを含む。
【0419】
特定の実施形態において、ZFNは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、またはそれ以上のジンクフィンガーモチーフを有するジンクフィンガーDNA結合ドメインと、エンドヌクレアーゼドメイン(またはエンドヌクレアーゼ半ドメイン)とを含む。典型的には、単一のジンクフィンガーモチーフは、約30アミノ酸長である。ジンクフィンガーモチーフは、標準のCジンクフィンガーモチーフと、非標準のジンクフィンガーモチーフ(例えば、CHジンクフィンガーおよびCジンクフィンガーなど)の両方を含む。
【0420】
ジンクフィンガー結合ドメインは、任意のDNA配列に結合するように操作されてもよい。所与の3塩基対のDNA標的配列の、候補ジンクフィンガーDNA結合ドメインが特定されており、対応する複合DNA標的配列を標的とする多フィンガーペプチドに複数のドメインを連結するためのモジュラー組み立て戦略が考案されている。当該技術分野において既知である他の好適な方法、例えば、ファージ提示、ランダム変異原性、コンビナトリアルライブラリ、コンピュータ/合理的設計、親和性選択、PCR、cDNAまたはゲノムライブラリからのクローニング、および合成構築などを使用して、ジンクフィンガーDNA結合ドメインをコードする核酸を設計および構築することもできる。(例えば、米国特許第5,786,538号、Wu et al.,PNAS92:344-348(1995)、Jamieson et al.,Biochemistry33:5689-5695(1994)、Rebar&Pabo,Science263:671-673(1994)、Choo&Klug,PNAS91:11163-11167(1994)、Choo&Klug,PNAS91:11168-11172(1994)、Desjarlais&Berg,PNAS90:2256-2260(1993)、Desjarlais&Berg,PNAS89:7345-7349(1992)、Pomerantz et al.,Science267:93-96(1995)、Pomerantz et al.,PNAS92:9752-9756(1995)、Liu et al.,PNAS94:5525-5530(1997)、Griesman&Pabo,Science275:657-661(1997)、Desjarlais&Berg,PNAS91:11-99-11103(1994)を参照されたい)。
【0421】
個々のジンクフィンガーモチーフは、3つまたは4つのヌクレオチド配列に結合する。ジンクフィンガー結合ドメインが結合するように操作される配列(例えば、標的配列)の長さは、操作されたジンクフィンガー結合ドメインにおけるジンクフィンガーモチーフの数を決定する。例えば、ジンクフィンガーモチーフが重複するサブサイトに結合しないZFNの場合、6ヌクレオチドの標的配列は、2フィンガー結合ドメインによって結合され、9ヌクレオチドの標的配列は、3フィンガー結合ドメインによって結合されるなどである。特定の実施形態において、標的部位における個々のジンクフィンガーモチーフのDNA結合部位は、近接している必要はないが、多フィンガー結合ドメインにおけるジンクフィンガーモチーフ間のリンカー配列の長さおよび性質に応じて1つまたは複数のヌクレオチドによって分離されてもよい。
【0422】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるZNFは、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、またはそれ以上のジンクフィンガーモチーフを含むジンクフィンガーDNA結合ドメインと、少なくとも1つのIIS型制限酵素由来のエンドヌクレアーゼドメインまたは半ドメインと、本明細書の他の箇所で企図される1つ以上のTALE DNA結合ドメインとを含む。
【0423】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるZNFは、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、またはそれ以上のジンクフィンガーモチーフを含むジンクフィンガーDNA結合ドメインと、Aar I、Ace III、Aci I、Alo I、Alw26 I、Bae I、Bbr7 I、Bbv I、Bbv II、BbvC I、Bcc I、Bce83 I、BceA I、Bcef I、Bcg I、BciV I、Bfi I、Bin I、Bmg I、Bpu10 I、BsaX I、Bsb I、BscA I、BscG I、BseR I、BseY I、Bsi I、Bsm I、BsmA I、BsmF I、Bsp24 I、BspG I、BspM I、BspNC I、Bsr I、BsrB I、BsrD I、BstF5 I、Btr I、Bts I、Cdi I、CjeP I、Drd II、EarI、Eci I、Eco31 I、Eco57 I、Eco57M I、Esp3 I、Fau I、Fin I、Fok I、Gdi II、Gsu I、Hga I、Hin4 II、Hph I、Ksp632 I、Mbo II、Mly I、Mme I、Mnl I、Pfl1108、I Ple I、Ppi I、Psr I、RleA I、Sap I、SfaN I、Sim I、SspD5 I、Sth132 I、Sts I、TspDT I、TspGW I、Tth111 II、UbaP I、Bsa I、およびBsmB Iからなる群から選択される少なくとも1つのIIS型制限酵素由来のエンドヌクレアーゼドメインまたは半ドメインとを含む。
【0424】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるZNFは、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、またはそれ以上のジンクフィンガーモチーフを含むジンクフィンガーDNA結合ドメインと、Fok IのIIS型制限エンドヌクレアーゼ由来のエンドヌクレアーゼドメインまたは半ドメインとを含む。
【0425】
一実施形態において、本明細書において企図されるZFNは、切断特異性を強化するために、ジンクフィンガーDNA結合ドメインと、少なくとも1つのIIS型制限エンドヌクレアーゼ由来のエンドヌクレアーゼ半ドメインとを含み、任意で、エンドヌクレアーゼ半ドメインは、ホモ二量体化を最小化または予防する1つ以上のアミノ酸置換または修飾を含む。
【0426】
5.CRISPR/Casヌクレアーゼ系
様々な実施形態において、CRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文反復配列)/Cas(CRISPR関連)ヌクレアーゼ系が細胞に導入され、γ-グロビン遺伝子発現を抑制するポリペプチド、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子を含むがこれらに限定されない、複数のゲノム標的部位に結合するように、かつそれらに一本鎖ニックまたは二本鎖切断(DSB)を導入するように操作される。CRISPR/Casヌクレアーゼ系は、哺乳動物のゲノム操作に使用することができる細菌系に基づいた、最近操作されたヌクレアーゼ系である。例えば、これらの各々は、その全体が、参照によって本明細書に組み込まれる、Jinek et al.(2012)Science337:816-821、Cong et al.(2013)Science339:819-823、Mali et al.(2013)Science339:823-826、Qi et al.(2013)Cell152:1173-1183、Jinek et al.(2013),eLife2:e00471、David Segal(2013)eLife2:e00563、Ran et al.(2013)Nature Protocols8(11):2281-2308、Zetsche et al.(2015)Cell163(3):759-771を参照されたい。
【0427】
一実施形態において、CRISPR/Casヌクレアーゼ系は、Casヌクレアーゼと、Casヌクレアーゼを標的部位に動員する1つ以上のRNA、例えば、トランス活性化cRNA(tracrRNA)およびCRISPR RNA(crRNA)、またはシングルガイドRNA(sgRNA)とを含む。crRNAおよびtracrRNAは、本明細書で「シングルガイドRNA」または「sgRNA」と称されるポリヌクレオチド配列内に操作され得る。
【0428】
一実施形態において、Casヌクレアーゼは、二本鎖DNAエンドヌクレアーゼまたはニッカーゼもしくは触媒活性を失活させたCasとして操作され、crRNAおよびtracrRNA、またはsgRNAとともに標的複合体を形成して、γ-グロビン遺伝子発現、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)、免疫系チェックポイント、または免疫抑制シグナル伝達成分を抑制するポリペプチドをコードする遺伝子中に位置するプロトスペーサー標的配列を、部位特異的にDNA認識および部位特異的に切断する。プロトスペーサーモチーフは、Cas/RNA複合体を動員する上で役割を果たす短いプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に接している。Casポリペプチドは、Casポリペプチドに特異的なPAMモチーフを認識する。したがって、CRISPR/Cas系を使用して、特定のCasポリペプチドに特異的な特定の3’PAM配列に隣接した二本鎖ポリヌクレオチド配列の一方または両方の鎖を標的としそれ(ら)を切断することができる。PAMは、生物情報学を使用して、または実験的アプローチを使用して特定することができる。その全体が、本明細書に参照によって組み込まれる、Esvelt et al.,2013,Nature Methods.10(11):1116-1121。
【0429】
一実施形態において、Casヌクレアーゼは、1つ以上の異種DNA結合ドメイン、例えば、TALEDNA結合ドメインまたはジンクフィンガーDNA結合ドメインを含む。TALEまたはジンクフィンガーDNA結合ドメインへのCasヌクレアーゼの融合は、DNA切断効率および特異性を増加させる。特定の実施形態において、Casヌクレアーゼは任意で、1つ以上のリンカーおよび/または追加の機能性ドメイン、例えば、5-3’エキソヌクレアーゼ、5-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、または鋳型非依存的DNAポリメラーゼ活性を呈する末端プロセシング酵素の末端プロセシング酵素ドメインを含む。特定の実施形態において、Casヌクレアーゼは、5-3’エキソヌクレアーゼ、5-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、または鋳型非依存的DNAポリメラーゼ活性を呈する末端プロセシング酵素とともにT細胞に導入されてもよい。Casヌクレアーゼおよび3’プロセシング酵素は、例えば、異なるベクターもしくは別々のmRNA中で別個に、または例えば、融合タンパク質として一緒に、またはウイルス自己切断ペプチドもしくはIRESエレメントによって分離された多シストロン性構築物中に導入されてもよい。
【0430】
様々な実施形態において、Casヌクレアーゼは、Cas9またはCpf1である。
【0431】
特定の実施形態において企図される特定の実施形態における使用に好適なCas9ポリペプチドの例示的な例は、Enterococcus faecium、Enterococcus italicus、Listeria innocua、Listeria monocytogenes、Listeria seeligeri、Listeria ivanovii、Streptococcus agalactiae、Streptococcus anginosus、Streptococcus bovis、Streptococcus dysgalactiae、Streptococcus equinus、Streptococcus gallolyticus、Streptococcus macacae、Streptococcus mutans、Streptococcus プソイドporcinus、Streptococcus pyogenes、Streptococcus thermophilus、Streptococcus gordonii、Streptococcus infantarius、Streptococcus macedonicus、Streptococcus mitis、Streptococcus pasteurianus、Streptococcus suis、Streptococcus vestibularis、Streptococcus sanguinis、Streptococcus downei、Neisseria bacilliformis、Neisseria cinerea、Neisseria flavescens、Neisseria lactamica、Neisseria meningitidis、Neisseria subflava、Lactobacillus brevis、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus casei、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus ruminis、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus sanfranciscensis、Corynebacterium accolens、Corynebacterium diphtheriae、Corynebacterium matruchotii、Campylobacter jejuni、Clostridium perfringens、Treponema vincentii、Treponema phagedenis、およびTreponema denticolaを含むがこれらに限定されない、細菌種から得ることができる。
【0432】
特定の実施形態において企図される特定の実施形態における使用に好適なCpf1ポリペプチドの例示的な例は、特に、Francisella菌種、Acidaminococcus菌種、Prevotella菌種、Lachnospiraceae菌種を含むがこれらに限定されない、細菌種から得ることができる。
【0433】
Cas9オルソログの保存領域は、中央HNHエンドヌクレアーゼドメインと、分断されたRuvC/RNase Hドメインとを含む。Cpf1オルソログは、RuvC/RNase Hドメインを持つが、識別可能なHNHドメインは持たない。HNHドメインおよびRuvC様ドメインは各々、二本鎖DNA標的配列の1本の鎖の切断を担う。Cas9ヌクレアーゼポリペプチドのHNHドメインは、tracrRNA:crRNAまたはsgRNAに対して相補的なDNA鎖を切断する。Cas9ヌクレアーゼのRuvC様ドメインは、tracrRNA:crRNAまたはsgRNAに対して非相補的なDNA鎖を切断する。Cpf1は、二量体として機能することが予想され、Cpf1の各RuvC様ドメインは、標的部位の相補鎖または非相補鎖のいずれかを切断する。特定の実施形態において、Cas9ヌクレアーゼバリアント(例えば、Cas9ニッカーゼ)は、HNHまたはRuvC様エンドヌクレアーゼドメインに、バリアントドメインのヌクレアーゼ活性を減少または消失させる1つ以上のアミノ酸付加、欠失、変異、または置換を含むことが企図される。
【0434】
このドメインのヌクレアーゼ活性を減少または消失させるCas9 HNH変異の例示的な例には、S.pyogenes(D10A)、S.thermophilis(D9A)、T.denticola(D13A)、およびN.meningitidis(D16A)が含まれるが、これらに限定されない。
【0435】
このドメインのヌクレアーゼ活性を減少または消失させるCas9 RuvC様ドメイン変異の例示的な例には、S.pyogenes(D839A、H840A、またはN863A)、S.thermophilis(D598A、H599A、またはN622A)、T.denticola(D878A、H879A、またはN902A)、およびN.meningitidis(D587A、H588A、またはN611A)が含まれるが、これらに限定されない。
【0436】
E.ポリペプチド
免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、操作された抗原受容体、および操作されたヌクレアーゼを含むがこれらに限定されない、様々なポリペプチドが本明細書において企図される。別段それとは反対に明記されない限り、「ポリペプチド」、「ポリペプチド断片」、「ペプチド」、および「タンパク質」は互換的に、かつ従来の意味に従って(すなわち、アミノ酸の配列として)使用される。一実施形態において、「ポリペプチド」には、融合ポリペプチドおよび他のバリアントが含まれる。ポリペプチドは、様々な周知の組換え技術および/または合成技術のいずれかを使用して調製することができる。ポリペプチドは、特定の長さに限定されず、例えば、それらは、完全長タンパク質配列、完全長タンパク質の断片、または融合タンパク質を含んでもよく、かつポリペプチドの翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、およびリン酸化など、ならびに当該技術分野において既知である他の修飾(天然に存在するものおよび天然に存在しないものの両方)を含んでもよい。
【0437】
特定の実施形態において企図されるポリペプチドの例示的な例には、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアント、メガTAL、グロビン、抗鎌状化グロビン、BiTE、サイトカイン、ケモカイン、細胞毒、およびサイトカイン受容体、フリップ受容体、免疫抑制シグナルダンパー、CAR、DARIC、TCR、およびゼータカインが含まれるが、これらに限定されない。
【0438】
ポリペプチドには、「ポリペプチドバリアント」が含まれる。ポリペプチドバリアントは、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入において天然に存在するポリペプチドとは異なり得る。そのようなバリアントは、天然に存在するものであっても、例えば、上記のポリペプチド配列の1つ以上のアミノ酸を修飾することによって合成的に生成されるものであってもよい。例えば、特定の実施形態において、1つ以上の置換、欠失、付加、および/または挿入をポリペプチドに導入することによって、ポリペプチドの生物学的特性を改善することが望ましくあり得る。特定の実施形態において、ポリペプチドには、本明細書において企図される基準配列のいずれかと少なくとも約65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%,85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸同一性を有するポリペプチドが含まれ、典型的にはバリアントは、基準配列の少なくとも1つの生物学的活性を維持する。
【0439】
ポリペプチドバリアントには、生物学的に活性な「ポリペプチド断片」が含まれる。生物学的に活性なポリペプチド断片の例示的な例には、DNA結合ドメインおよびヌクレアーゼドメインなどが含まれる。本明細書で使用される場合、「生物学的に活性な断片」または「最小の生物学的に活性な断片」は、天然に存在するポリペプチド活性の少なくとも100%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、または少なくとも5%を保持するポリペプチド断片を指す。好ましい実施形態において、生物学的活性は、標的配列に対する結合親和性および/または切断活性である。特定の実施形態において、ポリペプチド断片は、少なくとも5~約1700アミノ酸長のアミノ酸鎖を含み得る。特定の実施形態において、断片は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、またはそれ以上のアミノ酸長であることが理解される。特定の実施形態において、ポリペプチドは、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントの生物学的に活性な断片を含む。特定の実施形態において、本明細書に明記されるポリペプチドは、「X」として表わされる1つ以上のアミノ酸を含み得る。「X」は、アミノ酸配列番号に存在する場合、任意のアミノ酸を指す。1つ以上の「X」残基が、本明細書において企図される特定の配列番号に明記されるアミノ酸配列のN末端およびC末端に存在し得る。「X」アミノ酸が存在しない場合、配列番号に明記される残りのアミノ酸配列は、生物学的に活性な断片と見なされ得る。
【0440】
上述のように、ポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失、切断、および挿入を含む様々な方法で改変されてもよい。そのような操作のための方法は一般に、当該技術分野において既知である。例えば、基準ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、DNAの変異によって調製することができる。変異原性およびヌクレオチド配列改変のための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Kunkel(1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.82:488-492)、Kunkel et al.,(1987,Methods in Enzymol,154:367-382)、米国特許第4,873,192号、Watson,J.D.et al.,(Molecular Biology of the Gene,Fourth Edition,Benjamin/Cummings,Menlo Park,Calif.,1987)、およびそれらの中に引用される参考文献を参照されたい。対象となるタンパク質の生物学的活性に影響を与えない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Dayhoff et al.,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルに見出すことができる。
【0441】
特定の実施形態において、バリアントは、1つ以上の保存的置換を含有する。「保存的置換」は、ポリペプチドの二次構造および疎水性親水性指標性質が実質的に変化しないことをペプチド化学分野の当業者が期待するような、あるアミノ酸が類似の特性を有する別のアミノ酸に置換されるようなものである。修飾は、特定の実施形態において企図されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構造内で行うことができ、ポリペプチドには、望ましい特性を有するバリアントまたは誘導体ポリペプチドをコードする少なくとも約1つの機能性分子を有し、依然としてそれを得るポリペプチドが含まれる。ポリペプチドのアミノ酸配列を改変して、等価のまたは改善さえされたバリアントポリペプチドを作成することが所望される場合、当業者は、例えば、表1に従って、例えば、コーディングDNA配列のコドンのうちの1つ以上を変更することができる。
【表1】
【0442】
生物学的活性を消失させずに、どのアミノ酸残基を置換、挿入、または欠失させることができるかを決定する上でのガイダンスは、DNASTAR、DNA Strider、Geneious、Mac Vector、またはVector NTIソフトウェアなどの当該技術分野において周知であるコンピュータプログラムを使用して見出すことができる。好ましくは、本明細書に開示されるタンパク質バリアントにおけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち、同様に荷電したアミノ酸または無電荷のアミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、それらの側鎖において関連する、あるファミリーのアミノ酸のうちの1つの置換を伴う。天然に存在するアミノ酸は一般に、4つのファミリー、つまり酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および無電荷極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)のアミノ酸に分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは合わせて、芳香族アミノ酸として分類されることがある。ペプチドまたはタンパク質において、アミノ酸の好適な保存的置換は当業者にとって既知であり、一般に結果として得られる分子の生物学的活性を改変することなく行うことができる。当業者であれば、一般に、ポリペプチドの非必須領域内の単一のアミノ酸置換は生物学的活性を実質的に改変しないことを認識する(例えば、Watson et al.Molecular Biology of the Gene,4th Edition,1987,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224を参照されたい)。
【0443】
一実施形態において、2つ以上のポリペプチドの発現が所望される場合、それらをコードするポリヌクレオチド配列は、本明細書の他の箇所で開示されるIRES配列によって分離されてもよい。
【0444】
特定の実施形態において企図されるポリペプチドには、融合ポリペプチドが含まれる。特定の実施形態において、融合ポリペプチドおよび融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。融合ポリペプチドおよび融合タンパク質は、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10個のポリペプチドセグメントを有するポリペプチドを指す。
【0445】
別の実施形態において、本明細書の他の箇所で開示される1つ以上の自己切断ポリペプチド配列を含む融合タンパク質として、2つ以上のポリペプチドが発現されてもよい。
【0446】
一実施形態において、本明細書において企図される融合タンパク質は、1つ以上のDNA結合ドメインおよび1つ以上のヌクレアーゼ、ならびに1つ以上のリンカー、ならびに/または自己切断ポリペプチドを含む。
【0447】
一実施形態において、本明細書において企図される融合タンパク質は、ヌクレアーゼバリアントと、リンカーまたは自己切断ペプチドと、5’-3’エキソヌクレアーゼ、5’-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、および3’-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)を含むがこれらに限定されない、末端プロセシング酵素とを含む。
【0448】
融合ポリペプチドは、シグナルペプチド、細胞膜透過性ペプチドドメイン(CPP)、DNA結合ドメイン、ヌクレアーゼドメインなどを含むがこれらに限定されない、1つ以上のポリペプチドドメインまたはセグメントと、エピトープタグ(例えば、マルトース結合タンパク質(「MBP」)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、HIS6、MYC、FLAG、V5、VSV-G、およびHA)と、ポリペプチドリンカーと、ポリペプチド切断シグナルとを含み得る。融合ポリペプチドは、典型的にはC末端対N末端で連結されるが、それらはまた、C末端対C末端、N末端対N末端、またはN末端対C末端で連結されてもよい。特定の実施形態において、融合タンパク質のポリペプチドは、任意の順序であり得る。融合ポリペプチドまたは融合タンパク質はまた、融合ポリペプチドの所望される活性が保存される限り、保存的修飾バリアント、多形性バリアント、対立遺伝子、変異体、下位配列、および種間相同体も含むことができる。融合ポリペプチドは、化学合成法によってまたは2つの部分間の化学結合によって産生されても、一般に他の標準的技術を使用して調製されてもよい。融合ポリペプチドを含む連結されたDNA配列は、本明細書の他の箇所で開示される好適な転写または翻訳制御エレメントに操作可能に連結される。
【0449】
融合ポリペプチドは任意で、ポリペプチド中の1つ以上のポリペプチドまたはドメインを連結するために使用することができるリンカーを含んでもよい。ペプチドリンカー配列を用いて、ポリペプチドドメインがそれらの所望される機能を発揮することを可能にするための、各ポリペプチドのその適切な二次構造または三次構造への折り畳みを確実にするのに十分な距離だけ、2つ以上のポリペプチド成分を分離することができる。そのようなペプチドリンカー配列は、当該技術分野において標準的な技術を使用して融合ポリペプチドに組み込まれる。好適なペプチドリンカー配列は、以下の因子、(1)それらが可動性の拡張立体構造をとる能力、(2)それらが第1および第2のポリペプチド上で機能性エピトープと相互作用し得る二次構造をとることができないこと、(3)ポリペプチド機能性エピトープと反応し得る疎水性残基または荷電残基の欠如に基づいて選択することができる。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly、Asn、およびSer残基を含有する。ThrおよびAlaなどの他の中性に近いアミノ酸もまた、リンカー配列内で使用することができる。リンカーとして有用に用いることができるアミノ酸配列には、Maratea et al.,Gene40:39-46,1985、Murphy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA83:8258-8262,1986、米国特許第4,935,233号、および米国特許第4,751,180号に開示されるものが含まれる。特定の融合ポリペプチドセグメントが、機能性ドメインの分離および立体障害の予防に使用することができる非必須N末端アミノ酸領域を含有する場合、リンカー配列は必要とされない。好ましいリンカーは、典型的には組換え融合タンパク質の一部として合成される可動性のアミノ酸下位配列である。リンカーポリペプチドは、1~200アミノ酸長、1~100アミノ酸長、または1~50アミノ酸長(それらの間の全ての整数値を含む)であり得る。
【0450】
例示的なリンカーには、以下のアミノ酸配列、グリシン重合体(G);グリシン-セリン重合体(G1-51-5(式中、nは少なくとも1、2、3、4、または5の整数である);グリシン-アラニン重合体-アラニン-セリン重合体;GGG(配列番号3);DGGGS(配列番号4);TGEKP(配列番号5)(例えば、Liu et al.,PNAS5525-5530(1997)を参照されたい);GGRR(配列番号6)(Pomerantz et al.1995(上記));(GGGGS)(式中、n=1、2、3、4、または5である)(配列番号7)(Kim et al.,PNAS93,1156-1160(1996.);EGKSSGSGSESKVD(配列番号8)(Chaudhary et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:1066-1070);KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号9)(Bird et al.,1988,Science242:423-426)、GGRRGGGS(配列番号10);LRQRDGERP(配列番号11);LRQKDGGGSERP(配列番号12);LRQKD(GGGS)ERP(配列番号13)が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、可動性リンカーは、DNA結合部位およびペプチド自体の両方をモデリングすることができるコンピュータプログラム(Desjarlais&Berg,PNAS90:2256-2260(1993)、PNAS91:11099-11103(1994)を使用して、またはファージ提示法によって合理的に設計することができる。
【0451】
融合ポリペプチドは、本明細書に記載のポリペプチドドメインの各々の間、または内在性読み取り枠とドナー修復鋳型によってコードされるポリペプチドとの間に、ポリペプチド切断シグナルを更に含んでもよい。加えて、任意のリンカーペプチド配列に、ポリペプチド切断部位を入れてもよい。例示的なポリペプチド切断シグナルには、プロテアーゼ切断部位、ヌクレアーゼ切断部位(例えば、希少な制限酵素認識部位、自己切断リボザイム認識部位)、および自己切断ウイルスオリゴペプチドなどのポリペプチド切断認識部位が含まれる(deFelipe and Ryan,2004.Traffic,5(8);616-26を参照されたい)。
【0452】
好適なプロテアーゼ切断部位および自己切断ペプチドは、当業者にとって既知である(例えば、Ryan et al.,1997.J.Gener.Virol.78,699-722、Scymczak et al.(2004)Nature Biotech.5,589-594を参照されたい)。例示的なプロテアーゼ切断部位には、ポティウイルスNIaプロテアーゼ(例えば、タバコエッチウイルスプロテアーゼ)、ポティウイルスHCプロテアーゼ、ポティウイルスP1(P35)プロテアーゼ、ビオウイルスNIaプロテアーゼ、ビオウイルスRNA-2-コードプロテアーゼ、アフトウイルスLプロテアーゼ、エンテロウイルス2Aプロテアーゼ、ライノウイルス2Aプロテアーゼ、ピコルナ3Cプロテアーゼ、コモウイルス24Kプロテアーゼ、ネポウイルス24Kプロテアーゼ、RTSV(イネツングロ球状ウイルス)3C様プロテアーゼ、PYVF(パースニップ黄斑ウイルス)3C様プロテアーゼ、ヘパリン、トロンビン、因子Xa、およびエンテロキナーゼの切断部位が含まれるが、これらに限定されない。その高い切断厳密性のために、一実施形態において、TEV(タバコエッチウイルス)プロテアーゼ切断部位、例えば、EXXYXQ(G/S)(配列番号14)、例えば、ENLYFQG(配列番号15)およびENLYFQS(配列番号16)(式中、Xは任意のアミノ酸を表す)(TEVによる切断はQとGとの間またはQとSとの間に生じる)が好ましい。
【0453】
特定の実施形態において、自己切断ポリペプチド部位は、2Aまたは2A様部位、配列、またはドメインを含む(Donnelly et al.,2001.J.Gen.Virol.82:1027-1041)。特定の実施形態において、ウイルス2Aペプチドは、アフトウイルス2Aペプチド、ポティウイルス2Aペプチド、またはカルジオウイルス2Aペプチドである。
【0454】
一実施形態において、ウイルス2Aペプチドは、口蹄疫ウイルス(FMDV)(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)(E2A)ペプチド、トセアアシグナ(Thosea asigna)ウイルス(TaV)(T2A)ペプチド、ブタテッショウウイルス1(PTV-1)(P2A)ペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルス2Aペプチドからなる群から選択される。
【0455】
2A部位の例示的な例を、表2に提供する。
【表2】
【0456】
F.ポリヌクレオチド
特定の実施形態において、DNAドナー修復鋳型ポリヌクレオチド、ならびに本明細書において企図される免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、操作された抗原受容体、および操作されたヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドが提供される。本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、およびDNA/RNAハイブリッドを指す。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であり、かつ組換え、合成、または単離されたもののいずれかであり得る。ポリヌクレオチドには、プレメッセンジャーRNA(プレmRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、RNA、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、ゲノムRNA(gRNA)、プラス鎖RNA(RNA(+))、マイナス鎖RNA(RNA(-))、tracrRNA、crRNA、シングルガイドRNA(sgRNA)、合成RNA、合成mRNA、ゲノムDNA(gDNA)、PCR増幅DNA、相補的DNA(cDNA)、合成DNA、または組換えDNAが含まれるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドは、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドであるか、またはいずれかの種類のヌクレオチドの修飾形態であるかに関わらず、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも5000、少なくとも10000、または少なくとも15000、またはそれ以上のヌクレオチド長(および全ての中間の長さ)のヌクレオチドの重合体形態を指す。この文脈において、「中間の長さ」は、引用される値間の任意の長さ(6、7、8、9など、101、102、103など、151、152、153など、201、202、203など)を意味することが容易に理解される。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドまたはバリアントは、基準配列と少なくともまたは約50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%,76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%,85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。
【0457】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、コドン最適化されてもよい。本明細書で使用される場合、「コドン最適化された」という用語は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド中のコドンを置換して、ポリペプチドの発現、安定性、および/または活性を増加させることを指す。コドン最適化に影響を与える因子には、(i)2つ以上の生物もしくは遺伝子間のコドンバイアス、または合成的に構築されたバイアス表の変動、(ii)ある生物、遺伝子、または一組の遺伝子におけるコドンバイアスの程度の変動、(iii)文脈を含むコドンの系統的変動、(iv)それらのデコーディングtRNAに従うコドンの変動、(v)トリプレット全体またはその1つの位置のいずれかの、GC%に従うコドンの変動、(vi)基準配列、例えば、天然に存在する配列に対する類似性の程度の変動、(vii)コドン出現頻度カットオフの変動、(viii)DNA配列から転写されたmRNAの構造的特性、(ix)コドン置換セットの設計が基づくべき、DNA配列の機能についての以前の知識、(x)各アミノ酸のコドンセットの系統的変動、および/あるいは(xi)偽翻訳開始部位の単離された除去のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0458】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」という用語は、リン酸化糖とのNグリコシド結合における複素環窒素性塩基を指す。ヌクレオチドは、中性塩基および当該技術分野において認識されている多様な修飾塩基を含むことが理解される。そのような塩基は一般に、ヌクレオチド糖部分の1’位に位置する。ヌクレオチドは一般に、塩基と、糖と、リン酸基とを含む。リボ核酸(RNA)において、糖はリボースであり、デオキシリボ核酸(DNA)において、糖はデオキシリボース、すなわち、リボース中に存在するヒドロキシル基を欠如する糖である。例示的な中性窒素性塩基には、プリン、アデノシン(A)およびグアニジン(G)、ならびにピリミジン、シチジン(C)、およびチミジン(T)(またはRNAの文脈ではウラシル(U))が含まれる。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1またはプリンのN-9に結合している。ヌクレオチドは通常、一リン酸、二リン酸、または三リン酸である。ヌクレオチドは、未修飾であっても、糖、リン酸、および/または塩基部分で修飾されていてもよい(互換的に、ヌクレオチド類似体、ヌクレオチド誘導体、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、および非標準ヌクレオチドとも称され、例えば、WO92/07065およびWO93/15187を参照されたい)。修飾核酸塩基の例は、Limbachら(1994,Nucleic Acids Res.22,2183-2196)によって要約されている。
【0459】
ヌクレオチドはまた、糖のC-5に結合したヒドロキシル基上でエステル化が生じている、ヌクレオシドのリン酸エステルとも見なすことができる。本明細書で使用される場合、「ヌクレオシド」という用語は、糖とのNグリコシド結合における複素環窒素性塩基を指す。ヌクレオシドは、天然の塩基を含むこと、および周知の修飾塩基を含むこともまた、当該技術分野において認識されている。そのような塩基は一般に、ヌクレオシド糖部分の1’位に位置する。ヌクレオシドは一般に、塩基と、糖基とを含む。ヌクレオシドは、未修飾であっても、糖および/または塩基部分で修飾されていてもよい(互換的に、ヌクレオシド類似体、ヌクレオシド誘導体、修飾ヌクレオシド、非天然ヌクレオシド、または非標準ヌクレオシドとも称される)。これもまた上述のように、修飾核酸塩基の例は、Limbachら(1994,Nucleic Acids Res.22,2183-2196)によって要約されている。
【0460】
様々な例示的な実施形態において、本明細書において企図されるポリヌクレオチドには、DNAドナー修復鋳型ポリヌクレオチド、ならびに本明細書において企図される免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、操作された抗原受容体、および操作されたヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ならびに本明細書において企図されるポリヌクレオチドを含む発現ベクター、ウイルスベクター、および転移プラスミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0461】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」などという用語は、基準ポリヌクレオチド配列と実質的な配列同一性を示すポリヌクレオチド、または本明細書で以下に定義される厳密な条件下で基準配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。これらの用語はまた、少なくとも1つのヌクレオチドの付加、欠失、置換、または修飾によって基準ポリヌクレオチドとは区別されるポリヌクレオチドも包含する。したがって、「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」という用語は、1つ以上のヌクレオチドが付加もしくは欠失されているか、またはヌクレオチドで修飾もしくは置換されているポリヌクレオチドを含む。この点について、変異、付加、欠失、および置換を含む特定の改変を基準ポリヌクレオチドに対して行うことができ、それによって改変されたポリヌクレオチドが基準ポリヌクレオチドの生物学的機能または活性を保持することは、当該技術分野においてよく理解されている。
【0462】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、厳密な条件下で標的核酸配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。「厳密な条件」下でハイブリダイズすることは、互いに少なくとも60%同一であるヌクレオチド配列がハイブリダイズされたままである、ハイブリダイゼーションプロトコルを説明する。一般に、厳密な条件は、定義されたイオン強度およびpHで特定の配列の熱融点(Tm)よりも約5℃低くあるように選択される。Tmは、標的配列に対して相補的であるプローブの50%が、平衡状態で標的配列にハイブリダイズする、(定義されたイオン強度、pH、および核酸濃度下での)温度である。標的配列は一般に過剰量で存在するため、Tmでは、プローブの50%が平衡状態で占有されている。
【0463】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」、または例えば、「と50%同一である配列」を含むという記述は、配列が、ヌクレオチド毎に基づいてまたはアミノ酸毎に基づいて、比較のウィンドウにわたって同一である程度を指す。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、2つの最適に整列した配列を比較のウィンドウにわたって比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、およびMet)が両方の配列内で生じて、マッチした位置数をもたらす位置数を決定し、マッチした位置数を比較のウィンドウ内の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で除し、結果に100を乗じて、配列同一性のパーセンテージをもたらすことによって計算することができる。本明細書に記載の基準配列のいずれかと少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチドおよびポリペプチドが含まれ、典型的にはポリペプチドバリアントは、基準ポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を維持する。
【0464】
2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列関係を説明するために使用される用語には、「基準配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、および「実質的同一性」が含まれる。「基準配列」の長さは、少なくとも12個の単量体単位であるが、頻繁に15~18個、および多くの場合少なくとも25個の単量体単位(ヌクレオチドおよびアミノ酸残基を含む)である。2つのポリヌクレオチドは各々、(1)2つのポリヌクレオチド間で類似している配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部分のみ)と、(2)2つのポリヌクレオチド間で異なる配列とを含み得るため、2つ(またはそれ以上)のポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には2つのポリヌクレオチドの配列を「比較ウィンドウ」にわたって比較して、配列類似性の局在領域を特定および比較することによって実行される。「比較ウィンドウ」は、少なくとも6つ、通常は約50~約100個、より通常は約100~約150個の近接位置の概念的なセグメントを指し、ここで、配列は、2つの配列を最適に整列させた後に、同じ数の近接位置の基準配列と比較される。比較ウィンドウは、2つの配列の最適な整列のために、(付加または欠失を含まない)基準配列と比較して、約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。比較ウィンドウを整列させるための配列の最適な整列は、アルゴリズム(GAP、BESTFIT、FASTA、およびWisconsin Genetics Software Package Release7.0内のTFASTA(Genetics Computer Group、575Science Drive Madison,WI,USA))のコンピュータ化実装によって、または検査および選択される様々な方法のいずれかによって生成される最適な整列(すなわち、比較ウィンドウにわたって最も高いパーセンテージの相同性をもたらすもの)によって実行することができる。例えば、Altschul et al.,1997,Nucl.Acids Res.25:3389によって開示される、BLASTファミリーのプログラムに対しても参照を行うことができる。配列分析の詳細な考察は、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons Inc.,1994-1998,Chapter15のUnit19.3に見出すことができる。
【0465】
様々な実施形態において、ポリヌクレオチドは、本明細書において企図されるポリペプチドをコードするmRNAを含む。特定の実施形態において、mRNAは、キャップと、1つ以上のヌクレオチドと、ポリアデニン鎖とを含む。
【0466】
本明細書で使用される場合、「5’キャップ」または「5’キャップ構造」または「5’キャップ部分」という用語は、mRNAの5’末端に組み込まれている化学修飾を指す。5’キャップは、核外輸送、mRNA安定性、および翻訳に関与する。
【0467】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるmRNAは、末端グアノシンキャップ残基とmRNA分子の5’末端転写センスヌクレオチドとの間に5’-ppp-5’-三リン酸結合を含む5’キャップを含む。その後、この5’-グアニル酸キャップはメチル化されて、N7-メチル-グアニル酸残基を生成することができる。
【0468】
本明細書において企図されるmRNAポリヌクレオチドの特定の実施形態における使用に好適な5’キャップの例示的な例には、非メチル化5’キャップ類似体、例えば、G(5’)ppp(5’)G、G(5’)ppp(5’)C、G(5’)ppp(5’)A;メチル化5’キャップ類似体、例えば、mG(5’)ppp(5’)G、mG(5’)ppp(5’)C、およびmG(5’)ppp(5’)A;

ジメチル化5’キャップ類似体、例えば、m2,7G(5’)ppp(5’)G、m2,7G(5’)ppp(5’)C、およびm2,7G(5’)ppp(5’)A;トリメチル化5’キャップ類似体、例えば、m2,2,7G(5’)ppp(5’)G、m2,2,7G(5’)ppp(5’)C、およびm2,2,7G(5’)ppp(5’)A;ジメチル化対称性5’キャップ類似体、例えば、mG(5’)pppm(5’)G、mG(5’)pppm(5’)C、およびmG(5’)pppm(5’)A;ならびに抗逆5’キャップ類似体、例えば、抗逆キャップ類似体(ARCA)キャップ、指定3’O-Me-mG(5’)ppp(5’)G、2’O-Me-mG(5’)ppp(5’)G、2’O-Me-mG(5’)ppp(5’)C、2’O-Me-mG(5’)ppp(5’)A、m2’d(5’)ppp(5’)G、m2’d(5’)ppp(5’)C、m2’d(5’)ppp(5’)A、3’O-Me-mG(5’)ppp(5’)C、3’O-Me-mG(5’)ppp(5’)A、m3’d(5’)ppp(5’)G、m3’d(5’)ppp(5’)C、m3’d(5’)ppp(5’)A、およびそれらの四リン酸誘導体)(例えば、Jemielity et al.,RNA,9:1108-1122(2003)を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。
【0469】
特定の実施形態において、mRNAは、三リン酸架橋を介して第1の転写ヌクレオチドの5’末端に連結し、mG(5’)ppp(5’)N(式中、Nは任意のヌクレオシドである)をもたらす7-グアニル酸メチル(「mG」)である、5’キャップを含む。
【0470】
いくつかの実施形態において、mRNAは、5’キャップを含み、このキャップは、Cap0構造(Cap0構造は、塩基1および2に結合したリボースの2’-O-メチル残基を欠如する)、Cap1構造(Cap1構造は、塩基2に2’-O-メチル残基を有する)、またはCap2構造(Cap2構造は、塩基2および3の両方に結合した2’-O-メチル残基を有する)である。
【0471】
一実施形態において、mRNAは、mG(5’)ppp(5’)Gキャップを含む。
【0472】
一実施形態において、mRNAは、ARCAキャップを含む。
【0473】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるmRNAは、1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。
【0474】
一実施形態において、mRNAは、プソイドウリジン、ピリジン-4-オンリボヌクレオシド、5-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオウリジン、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシウリジン、3-メチルウリジン、5-カルボキシメチル-ウリジン、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチルウリジン、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン、1-タウリノメチル-4-チオ-ウリジン、5-メチル-ウリジン、1-メチル-プソイドウリジン、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、5-アザ-シチジン、プソイドイソシチジン、3-メチル-シチジン、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、N4-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、1-メチル-プソイドイソシチジン、ピロロ-シチジン、ピロロ-プソイドイソシチジン、2-チオ-シチジン、2-チオ-5-メチル-シチジン、4-チオ-プソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-プソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドイソシチジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドイソシチジン、ゼブラリン、5-アザ-ゼブラリン、5-メチル-ゼブラリン、5-アザ-2-チオ-ゼブラリン、2-チオ-ゼブラリン、2-メトキシ-シチジン、2-メトキシ-5-メチル-シチジン、4-メトキシ-プソイドイソシチジン、4-メトキシ-1-メチル-プソイドイソシチジン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-8-アザ-アデニン、7-デアザ-2-アミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、1-メチルアデノシン、N6-メチルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6-ジメチルアデノシン、7-メチルアデニン、2-メチルチオ-アデニン、2-メトキシ-アデニン、イノシン、1-メチル-イノシン、ワイオシン、ワイブトシン、7-デアザ-グアノシン、7-デアザ-8-アザ-グアノシン、6-チオ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン、7-メチル-グアノシン、6-チオ-7-メチル-グアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシ-グアノシン、1-メチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、N2,N2-ジメチルグアノシン、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシン、1-メチル-6-チオ-グアノシン、N2-メチル-6-チオ-グアノシン、およびN2,N2-ジメチル-6-チオ-グアノシンからなる群から選択される1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。
【0475】
一実施形態において、mRNAは、プソイドウリジン、ピリジン-4-オンリボヌクレオシド、5-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオウリジン、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシウリジン、3-メチルウリジン、5-カルボキシメチル-ウリジン、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチルウリジン、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン、1-タウリノメチル-4-チオ-ウリジン、5-メチル-ウリジン、1-メチル-プソイドウリジン、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、および4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジンからなる群から選択される1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。
【0476】
一実施形態において、mRNAは、5-アザ-シチジン、プソイドイソシチジン、3-メチル-シチジン、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、N4-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、1-メチル-プソイドイソシチジン、ピロロ-シチジン、ピロロ-プソイドイソシチジン、2-チオ-シチジン、2-チオ-5-メチル-シチジン、4-チオ-プソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-プソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドイソシチジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドイソシチジン、ゼブラリン、5-アザ-ゼブラリン、5-メチル-ゼブラリン、5-アザ-2-チオ-ゼブラリン、2-チオ-ゼブラリン、2-メトキシ-シチジン、2-メトキシ-5-メチル-シチジン、4-メトキシ-プソイドイソシチジン、および4-メトキシ-1-メチル-プソイドイソシチジンからなる群から選択される1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。
【0477】
一実施形態において、mRNAは、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-8-アザ-アデニン、7-デアザ-2-アミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、1-メチルアデノシン、N6-メチルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6-ジメチルアデノシン、7-メチルアデニン、2-メチルチオ-アデニン、および2-メトキシ-アデニンからなる群から選択される1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。
【0478】
一実施形態において、mRNAは、イノシン、1-メチル-イノシン、ワイオシン、ワイブトシン、7-デアザ-グアノシン、7-デアザ-8-アザ-グアノシン、6-チオ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン、7-メチル-グアノシン、6-チオ-7-メチル-グアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシ-グアノシン、1-メチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、N2,N2-ジメチルグアノシン、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシン、1-メチル-6-チオ-グアノシン、N2-メチル-6-チオ-グアノシン、およびN2,N2-ジメチル-6-チオ-グアノシンからなる群から選択される1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。
【0479】
一実施形態において、mRNAは、1つ以上のプソイドウリジン、1つ以上の5-メチル-シトシン、および/または1つ以上の5-メチル-シチジンを含む。
【0480】
一実施形態において、mRNAは、1つ以上のプソイドウリジンを含む。
【0481】
一実施形態において、mRNAは、1つ以上の5-メチル-シチジンを含む。
【0482】
一実施形態において、mRNAは、1つ以上の5-メチル-シトシンを含む。
【0483】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるmRNAは、mRNAのエキソヌクレアーゼ分解からの保護、mRNAの安定化、翻訳の促進を補助するためのポリアデニン鎖を含む。特定の実施形態において、mRNAは、3’ポリアデニン鎖構造を含む。
【0484】
特定の実施形態において、ポリアデニン鎖の長さは、少なくとも約10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450個、もしくは少なくとも約500個以上のアデニンヌクレオチド、または任意の介在する数のアデニンヌクレオチドである。特定の実施形態において、ポリアデニン鎖の長さは、少なくとも約125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、202、203、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、もしくは275個、またはそれ以上のアデニンヌクレオチドである。
【0485】
特定の実施形態において、ポリアデニン鎖の長さは、約10~約500個のアデニンヌクレオチド、約50~約500個のアデニンヌクレオチド、約100~約500個のアデニンヌクレオチド、約150~約500個のアデニンヌクレオチド、約200~約500個のアデニンヌクレオチド、約250~約500個のアデニンヌクレオチド、約300~約500個のアデニンヌクレオチド、約50~約450個のアデニンヌクレオチド、約50~約400個のアデニンヌクレオチド、約50~約350個のアデニンヌクレオチド、約100~約500個のアデニンヌクレオチド、約100~約450個のアデニンヌクレオチド、約100~約400個のアデニンヌクレオチド、約100~約350個のアデニンヌクレオチド、約100~約300個のアデニンヌクレオチド、約150~約500個のアデニンヌクレオチド、約150~約450個のアデニンヌクレオチド、約150~約400個のアデニンヌクレオチド、約150~約350個のアデニンヌクレオチド、約150~約300個のアデニンヌクレオチド、約150~約250個のアデニンヌクレオチド、約150~約200個のアデニンヌクレオチド、約200~約500個のアデニンヌクレオチド、約200~約450個のアデニンヌクレオチド、約200~約400個のアデニンヌクレオチド、約200~約350個のアデニンヌクレオチド、約200~約300個のアデニンヌクレオチド、約250~約500個のアデニンヌクレオチド、約250~約450個のアデニンヌクレオチド、約250~約400個のアデニンヌクレオチド、約250~約350個のアデニンヌクレオチド、もしくは約250~約300個のアデニンヌクレオチド、または任意の介在する範囲のアデニンヌクレオチドである。
【0486】
ポリヌクレオチドの配向を説明する用語には、5’(通常、遊離リン酸基を有するポリヌクレオチドの末端)および3’(通常、遊離ヒドロキシル(OH)基を有するポリヌクレオチドの末端)が含まれる。ポリヌクレオチド配列には、5’~3’の配向または3’~5’の配向に注釈を付けてもよい。DNAおよびmRNAの場合、5’~3’の鎖は、その配列がプレメッセンジャー(プレmRNA)の配列と同一である(DNAのチミン(T)の代わりの、RNAのウラシル(U)を除く)ため、「センス」、「プラス」、または「コーディング」鎖と指定される。DNAおよびmRNAの場合、RNAポリメラーゼによって転写される鎖である相補的な3’~5’の鎖は、「鋳型」、「アンチセンス」、「マイナス」、または「非コーディング」鎖と指定される。本明細書で使用される場合、「逆配向」という用語は、3’~5’の配向で記述された5’~3’の配列、または5’~3’の配向で記述された3’~5’の配列を指す。
【0487】
「相補的な」および「相補性」という用語は、塩基対合則によって関連付けられたポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指す。例えば、DNA配列5’AGTCATG3’の相補鎖は、3’TCAGTAC5’である。後者の配列は多くの場合、左側に5’末端および右側に3’末端、5’CATGACT3’で、逆相補鎖として記述される。逆相補鎖に等しい配列は、回文配列であると言われる。相補性は「部分的」であってもよく、その場合、核酸の塩基のいくつかのみが塩基対合則に従ってマッチしている。または、核酸間に「完全」または「全」相補性が存在してもよい。
【0488】
本明細書で使用される場合、「核酸カセット」または「発現カセット」という用語は、RNA、およびその後ポリペプチドを発現することができるベクターにおける遺伝子配列を指す。一実施形態において、核酸カセットは、対象となる遺伝子(複数可)、例えば、対象となるポリヌクレオチド(複数可)を含有する。別の実施形態において、核酸カセットは、1つ以上の発現制御配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル酸配列、および対象となる遺伝子(複数可)、例えば、対象となるポリヌクレオチド(複数可)を含有する。ベクターは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個、またはそれ以上の核酸カセットを含み得る。核酸カセットは、カセット内の核酸がRNAに転写され、かつ必要な場合にはタンパク質またはポリペプチドに翻訳され得るように、ベクター内において位置的および連続的に配向され、形質転換細胞の活性に必要とされる適切な翻訳後修飾を受け、適切な細胞内区画を標的とすることまたは細胞外区画への分泌によって、生物学的活性に適切な区画に転位置される。好ましくは、カセットは、ベクターへの迅速な挿入に適応した3’末端および5’末端を有し、例えば、それは、各末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有する。好ましい実施形態において、核酸カセットは、遺伝障害の治療、予防、または寛解に使用される治療遺伝子の配列を含有する。カセットを除去し、単一の単位としてプラスミドまたはウイルスベクターに挿入してもよい。
【0489】
ポリヌクレオチドは、対象となるポリヌクレオチド(複数可)を含む。本明細書で使用される場合、「対象となるポリヌクレオチド」という用語は、ポリペプチドもしくは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または本明細書において企図される阻害性ポリヌクレオチドの転写のための鋳型として機能するポリヌクレオチドを指す。
【0490】
更に、遺伝子コードの縮重の結果として、本明細書において企図されるポリペプチド、またはそのバリアントの断片をコードし得る多くのヌクレオチド配列が存在することが当業者によって理解される。これらのポリヌクレオチドのいくつかは、任意の天然遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小の相同性を有する。それにも関わらず、特定の実施形態において、コドン使用頻度の差のために変動するポリヌクレオチド、例えば、ヒトおよび/または霊長類のコドン選択のために最適化されるポリヌクレオチドが、特に企図される。一実施形態において、特定の対立遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが提供される。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加、および/または置換などの1つ以上の変異の結果として改変されている内在性ポリヌクレオチド配列である。
【0491】
特定の実施形態において、対象となるポリヌクレオチドは、ドナー修復鋳型を含む。
【0492】
特定の実施形態において、対象となるポリヌクレオチドは、siRNA、miRNA、shRNA、リボザイム、または別の阻害性RNAを含むがこれらに限定されない、阻害性ポリヌクレオチドを含む。
【0493】
一実施形態において、阻害性RNAを含むドナー修復鋳型は、例えば、本明細書の他の箇所に記載の、強度構成的pol III(例えば、ヒトもしくはマウスU6 snRNAプロモーター、ヒトおよびマウスH1 RNAプロモーター、またはヒトバリンtRNAプロモーター)、あるいは強度構成的pol IIプロモーターなどの1つ以上の制御配列を含む。
【0494】
コーディング配列自体の長さに関わらず、特定の実施形態において企図されるポリヌクレオチドは、本明細書の他の箇所に開示されるか、または当該技術分野において既知である、プロモーターおよび/もしくはエンハンサー、非翻訳領域(UTR)、コザック配列、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、複数のクローニング部位、配列内リボソーム進入部位(IRES)、リコンビナーゼ認識部位(例えば、LoxP、FRT、およびAtt部位)、終結コドン、転写終結シグナル、転写後応答エレメント、ならびに自己切断ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、エピトープタグなどの他のDNA配列と組み合わせてもよいため、それらの全長は著しく変動し得る。したがって、特定の実施形態において、ほぼあらゆる長さのポリヌクレオチド断片を用いることができ、全長は好ましくは、調製の容易さ、および意図される組換えDNAプロトコルにおける用途によって制限されることが企図される。
【0495】
当該技術分野において既知かつ利用可能である様々な確立した技術のいずれかを使用して、ポリヌクレオチドを調製、操作、発現、および/または送達することができる。所望されるポリペプチドを発現させるために、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、適切なベクターに挿入され得る。所望されるポリペプチドはまた、ポリペプチドをコードするmRNAを細胞に送達することによっても発現させることができる。
【0496】
ベクターの例示的な例には、プラスミド、自己複製配列、および転位エレメント、例えば、Sleeping Beauty、PiggyBacが含まれるが、これらに限定されない。
【0497】
ベクターの追加の例示的な例には、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工染色体(酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC)など)、バクテリオファージ(ラムダファージまたはM13ファージなど)、および動物ウイルスが非限定的に含まれる。
【0498】
ベクターとして有用なウイルスの例示的な例には、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、およびパポーバウイルス(例えば、SV40)が非限定的に含まれる。
【0499】
発現ベクターの例示的な例には、哺乳動物細胞内での発現のためのpClneoベクター(Proメガ);レンチウイルス媒介性遺伝子転移および哺乳動物細胞内での発現のための、pLenti4/V5-DEST(商標)、pLenti6/V5-DEST(商標)、およびpLenti6.2/V5-GW/lacZ(Invitrogen)が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドのコーティング配列をそのような発現ベクターに連結させて、哺乳動物細胞内でポリペプチドを発現させることができる。
【0500】
特定の実施形態において、ベクターは、エピソームベクターまたは染色体外で維持されているベクターである。本明細書で使用される場合、「エピソーム」という用語は、宿主の染色体DNA中に組み込まれずに、かつ宿主細胞の分裂によって徐々に喪失することなく複製することができるベクターを指し、該ベクターが染色体外またはエピソーム的に複製することもまた意味する。
【0501】
発現ベクターに存在する「発現制御配列」、「制御エレメント」、または「制御配列」は、ベクター複製起点の非翻訳領域、選択カセット、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(シャイン・ダルガーノ配列またはコザック配列)イントロン、転写後制御エレメント、ポリアデニル化配列、5’および3’非翻訳領域(宿主細胞性タンパク質と相互作用して、転写および翻訳を実行する)である。そのようなエレメントの強度および特異性は、変動し得る。利用されるベクター系および宿主に応じて、任意の数の好適な転写および翻訳エレメント(遍在性プロモーターおよび誘導性プロモーターを含む)を使用することができる。
【0502】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、発現ベクターおよびウイルスベクターを含むがこれらに限定されない、ベクターを含む。ベクターは、プロモーターおよび/またはエンハンサーなどの、1つ以上の外因性、内在性、または異種性制御配列を含み得る。「内在性制御配列」は、ゲノム内の所与の遺伝子と天然に連結しているものである。「外因性制御配列」は、遺伝子操作(すなわち、分子生物学的技術)によってある遺伝子に並置され、その遺伝子の転写が連結したエンハンサー/プロモーターによって指向されるものである。「異種性制御配列」は、遺伝子操作されている細胞とは異なる種に由来する外因性配列である。「合成」制御配列は、1つ以上の内在性配列および/もしくは外因性配列、ならびに/またはその特定の療法にとって最適なプロモーターおよび/もしくはエンハンサー活性を提供するインビトロもしくはインシリコで決定される配列のエレメントを含み得る。
【0503】
本明細書で使用され場合、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼが結合するポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)の認識部位を指す。RNAポリメラーゼは、プロモーターに操作可能に連結したポリヌクレオチドを開始および転写する。特定の実施形態において、哺乳動物細胞内で作動可能なプロモーターは、転写が開始される部位から約25~30塩基上流に位置するATリッチ領域、および/または転写開始点から70~80塩基上流に見出される別の配列、CNCAAT領域(式中、Nは任意のヌクレオチドであり得る)を含む。
【0504】
「エンハンサー」という用語は、転写の強化を提供することができる配列を含有し、かついくつかの例では別の制御配列に対してそれらの配向とは独立して機能することができる、DNAのセグメントを指す。エンハンサーは、プロモーターおよび/または他のエンハンサーエレメントと協同的または相加的に機能することができる。「プロモーター/エンハンサー」という用語は、プロモーター機能およびエンハンサー機能の両方を提供することができる配列を含有する、DNAのセグメントを指す。
【0505】
「操作可能に連結した」という用語は、記載の成分が、それらがそれらの意図される様式で機能することを許容する関係にある並立を指す。一実施形態において、この用語は、核酸発現制御配列(プロモーターおよび/またはエンハンサーなど)と第2のポリヌクレオチド配列(例えば、対象となるポリヌクレオチド)との間の機能性結合を指し、発現制御配列は、第2の配列に対応する核酸の転写を指向する。
【0506】
本明細書で使用される場合、「構成的発現制御配列」という用語は、操作可能に連結した配列の転写を頻繁にまたは連続的に可能にするプロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーを指す。構成的発現制御配列はそれぞれ、多様な細胞型および組織型における発現を可能にする「遍在性」プロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーであっても、制限された種類の細胞型および組織型における発現を可能にする「細胞特異的」、「細胞型特異的」、「細胞系譜特異的」、または「組織特異的」プロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーであってもよい。
【0507】
特定の実施形態における使用に好適な例示的な遍在性発現制御配列には、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、ウイルス性シミアンウイルス40(SV40)(例えば、初期もしくは後期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)LTRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーター、ワクシニアウイルス由来のH5、P7.5、およびP11プロモーター、短い伸長因子1-アルファ(EF1a-短)プロモーター、長い伸長因子1-アルファ(EF1a-長)プロモーター、初期増殖応答1(EGR1)、フェリチンH(FerH)、フェリチンL(FerL)、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)、真核生物翻訳開始因子4A1(EIF4A1)、熱ショック70kDaタンパク質5(HSPA5)、熱ショックタンパク質90kDaベータ、メンバー1(HSP90B1)、熱ショックタンパク質70kDa(HSP70)、β-キネシン(β-KIN)、ヒトROSA26遺伝子座(Irions et al.,Nature Biotechnology25,1477-1482(2007))、ユビキチンCプロモーター(UBC)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター、β-アクチンプロモーターおよび骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、負の制御領域欠失、dl587revプライマー結合部位置換(MND)プロモーター(Challita et al.,J Virol.69(2):748-55(1995))が含まれるが、これらに限定されない。
【0508】
特定の実施形態において、所望されるポリヌクレオチド配列の細胞型特異的、系譜特異的、または組織特異的発現を達成するために(例えば、あるサブセットの細胞型、細胞系譜、もしくは組織のみにおいて、または特定の発生段階中に、ポリペプチドをコードする特定の核酸を発現させるために)、細胞、細胞型、細胞系譜、または組織特異的発現制御配列を使用することが望ましくあり得る。
【0509】
本明細書で使用される場合、「条件的発現」は、誘導性発現;抑圧性発現;特定の生理学的状態、生物学的状態、または病状などを有する細胞または組織内での発現を含むがこれらに限定されない、任意の種類の条件的発現を指し得る。この定義は、細胞型または組織特異的発現を排除することは意図されない。特定の実施形態は、対象となるポリヌクレオチドの条件的発現を提供し、例えば、発現は、ポリヌクレオチドを発現させる処理または条件または対象となるポリヌクレオチドによってコードされるポリヌクレオチドの発現を増加もしくは減少させる処理または条件に細胞、組織、生物などを供することによって、制御される。
【0510】
誘導性プロモーター/系の例示的な例には、グルココルチコイドまたはエストロゲン受容体をコードする遺伝子のプロモーターなどのステロイド誘導性プロモーター(対応するホルモンでの処理によって誘導可能)、メタロチオニン(metallothionine)プロモーター(様々な重金属での処理によって誘導可能)、MX-1プロモーター(インターフェロンによって誘導可能)、「GeneSwitch」ミフェプリストン制御可能系(Sirin et al.,2003,Gene,323:67)、キュメート(cumate)誘導性遺伝子スイッチ(WO2002/088346)、テトラサイクリン依存的制御系などが含まれるが、これらに限定されない。
【0511】
条件的発現はまた、部位特異的DNAリコンビナーゼを使用することによっても達成することができる。特定の実施形態に従うと、ポリヌクレオチドは、部位特異的リコンビナーゼによって媒介される組換えのための少なくとも1つ(典型的には2つ)の部位(複数可)を含む。本明細書で使用される場合、「リコンビナーゼ」または「部位特異的リコンビナーゼ」という用語は、除去的または組み込み的タンパク質、酵素、補助因子、または1つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、またはそれ以上)の組換え部位に関与する組換え反応に関与する関連タンパク質を含み、それらは、野生型タンパク質(Landy,Current Opinion in Biotechnology3:699-707(1993)を参照されたい)、またはそれらの変異体、誘導体(例えば、組換えタンパク質配列またはそれらの断片を含有する融合タンパク質)、断片、およびバリアントであり得る。特定の実施形態における使用に好適なリコンビナーゼの例示的な例には、Cre、Int、IHF、Xis、Flp、Fis、Hin、Gin、ΦC31、Cin、Tn3リゾルバーゼ、TndX、XerC、XerD、TnpX、Hjc、Gin、SpCCE1、およびParAが含まれるが、これらに限定されない。
【0512】
ポリヌクレオチドは、多様な部位特異的リコンビナーゼのいずれかのための1つ以上の組換え部位を含み得る。部位特異的リコンビナーゼのための標的部位は、ベクター、例えば、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターの組み込みに必要とされる任意の部位(複数可)に加えての部位であることを理解されたい。本明細書で使用される場合、「組換え配列」、「組換え部位」、または「部位特異的組換え部位」という用語は、リコンビナーゼが認識および結合する特定の核酸配列を指す。
【0513】
例えば、Creリコンビナーゼの1つの組換え部位は、loxPであり、これは、8塩基対のコア配列に隣接する2つの13塩基対の逆方向反復配列(リコンビナーゼ結合部位として機能する)を含む、34塩基対配列である(Sauer,B.,Current Opinion in Biotechnology5:521-527(1994)の図1を参照されたい)。他の例示的なloxP部位には、lox511(Hoess et al.,1996、Bethke and Sauer,1997)、lox5171(Lee and Saito,1998)、lox2272(Lee and Saito,1998)、m2(Langer et al.,2002)、lox71(Albert et al.,1995)、およびlox66(Albert et al.,1995)が含まれるが、これらに限定されない。
【0514】
FLPリコンビナーゼのための好適な認識部位には、FRT(McLeod,et al.,1996)、F1,2,(Schlake and Bode,1994)、F4,(Schlake and Bode,1994)、FRT(LE)(Senecoff et al.,1988)、FRT(RE)(Senecoff et al.,1988)が含まれるが、これらに限定されない。
【0515】
認識配列の他の例は、attB、attP、attL、およびattR配列であり、これらは、リコンビナーゼ酵素λインテグラーゼ、例えば、phi-c31によって認識される。φC31 SSRは、ヘテロタイプ部位attB(34塩基対長)とattP(39塩基対長)との間のみの組換えを媒介する(Groth et al.,2000)。それぞれ細菌ゲノム上およびファージゲノム上のファージインテグラーゼの結合部位について名付けられた、attBおよびattPはともに、φC31ホモ二量体によって結合される可能性が高い不完全な逆方向反復配列を含有する(Groth et al.,2000)。産物部位attLおよびattRは、更なるφC31媒介性組換えに対しては効果的に不活性であり(Belteki et al.,2003)、反応を不可逆的なものにする。触媒挿入について、attP部位がゲノムattB部位に挿入されるよりも容易に、attBを持つDNAがゲノムattP部位に挿入されることが見出されている(Thyagarajan et al.,2001、Belteki et al.,2003)。したがって、典型的な戦略は、相同組換えによって、attPを持つ「ドッキング部位」を定義された遺伝子座に位置付け、これをその後、挿入のために、attBを持つ入って来る配列とパートナーにする。
【0516】
一実施形態において、本明細書において企図されるポリヌクレオチドは、一対のリコンビナーゼ認識部位に隣接したドナー修復鋳型ポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、修復鋳型ポリヌクレオチドには、LoxP部位、FRT部位、またはatt部位が隣接する。
【0517】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるポリヌクレオチドは、1つ以上のポリペプチドをコードする1つ以上の対象となるポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、複数のポリペプチドの各々の効率的な翻訳を達成するために、ポリヌクレオチド配列は、1つ以上のIRES配列、または自己切断ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列によって分離されてもよい。
【0518】
本明細書で使用される場合、「配列内リボソーム進入部位」または「IRES」は、シストロン(タンパク質コード領域)の開始コドン(ATGなど)への直接的な配列内リボソーム進入を促進し、それにより遺伝子のキャップ非依存的翻訳をもたらすエレメントを指す。例えば、Jackson et al.,1990.Trends Biochem Sci15(12):477-83)およびJackson and Kaminski.1995.RNA1(10):985-1000を参照されたい。当業者によって一般に用いられるIRESの例には、米国特許第6,692,736号に記載のものが含まれる。当該技術分野において既知である「IRES」の更なる例には、ピコルナウイルスから得ることができるIRES(Jackson et al.,1990)と、ウイルス性または細胞性mRNA源(例えば、免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)、血管内皮成長因子(VEGF)(Huez et al.1998.Mol.Cell.Biol.18(11):6178-6190)、線維芽細胞成長因子2(FGF-2)、およびインスリン様成長因子(IGFII)など)、翻訳開始因子eIF4Gならびに酵母転写因子TFIIDおよびHAP4、Novagenから市販されている脳心筋炎ウイルス(EMCV)(Duke et al.,1992.J.Virol66(3):1602-9)など)から得ることができるIRESと、VEGF IRES(Huez et al.,1998.Mol Cell Biol18(11):6178-90)とが含まれるが、これらに限定されない。IRESはまた、Picornaviridae種、Dicistroviridae種、およびFlaviviridae種のウイルスゲノム、ならびにHCV、フレンドマウス白血病ウイルス(FrMLV)、およびモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)においても報告されている。
【0519】
一実施形態において、本明細書において企図されるポリヌクレオチド中で使用されるIRESは、EMCV IRESである。
【0520】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、コンセンサスコザック配列を有し、かつ所望されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。本明細書で使用される場合、「コザック配列」という用語は、リボソームの小サブセットへのmRNAの初期結合を大いに促進し、翻訳を増加させる短いヌクレオチド配列を指す。コンセンサスコザック配列は、(GCC)RCCATGG(配列番号39)であり、式中、Rはプリン(AまたはG)である(Kozak,1986.Cell.44(2):283-92、およびKozak,1987.Nucleic Acids.15(20):8125-48)。
【0521】
異種核酸転写物の効率的な終結およびポリアデニル化を指向するエレメントは、異種遺伝子発現を増加させる。転写終結シグナルは一般に、ポリアデニル化シグナルの下流に見出される。特定の実施形態において、ベクターは、発現されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのポリアデニル化配列3’を含む。本明細書で使用される場合、「ポリA部位」、「ポリA配列」、「ポリアデニル酸部位」、または「ポリアデニル酸配列」という用語は、RNAポリメラーゼIIによる新生RNA転写物の終結およびポリアデニル化の両方を指向するDNA配列を表す。ポリアデニル化配列は、コーディング配列の3’末端へのポリアデニン鎖の付加によってmRNA安定性を促進するため、翻訳効率の増加に寄与することができる。ポリアデニン鎖を欠如する転写物は不安定であり、かつ急速に分解されるため、組換え転写物の効率的ポリアデニル化が望ましい。ベクターにおいて使用することができるポリアデニル酸シグナルの例示的な例には、理想的なポリアデニル酸配列(例えば、AATAAA、ATTAAA、AGTAAA)、ウシ成長ホルモンポリアデニル酸配列(BGHpA)、ウサギβ-グロビンポリアデニル酸配列(rβgpA)、または当該技術分野において既知である別の好適な異種性もしくは内在性ポリアデニル酸配列が含まれる。
【0522】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドを持つポリヌクレオチドまたは細胞は、誘導性自殺遺伝子を含む自殺遺伝子を利用して、直接的な毒性および/または制御されない増殖のリスクを低減する。特定の実施形態において、自殺遺伝子は、ポリヌクレオチドまたは細胞を持つ宿主に対して免疫原性ではない。使用することができる自殺遺伝子の特定の例は、カスパーゼ-9もしくはカスパーゼ-8、またはシトシンデアミナーゼである。カスパーゼ-9は、特定の二量体化学誘導因子(CID)を使用して活性化させることができる。
【0523】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、本明細書において企図される遺伝子組換え細胞をインビボでの負の選択に対して感染しやすい遺伝子セグメントを含む。「負の選択」は、個体のインビボ条件の変化の結果として消失し得る、注入された細胞を指す。負の選択可能表現型は、投与される薬剤、例えば、化合物に対する感受性を与える遺伝子の挿入から生じ得る。負の選択遺伝子は、当該技術分野において既知であり、それらには、ガンシクロビル感受性を与える単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-I TK)遺伝子;細胞性ヒポキサンチンホスフリボシル(phosphribosyl)トランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、細胞性アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)遺伝子、細菌性シトシンデアミナーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0524】
いくつかの実施形態において、遺伝子組換え細胞は、インビトロでの負の選択可能表現型の細胞の選択を可能にする正のマーカーを更に含むポリヌクレオチドを含む。正の選択可能マーカーは、宿主細胞への導入時に、その遺伝子を運搬する細胞の正の選択を可能にする優性の表現型を発現する遺伝子であり得る。この種類の遺伝子は、当該技術分野において既知であり、それらには、ハイグロマイシンBに対する耐性を与えるハイグロマイシン-Bホスホトランスフェラーゼ遺伝子(hph)、抗生物質G418に対する耐性をコードするTn5由来のアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neoまたはaph)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子、アデノシンデアミナーゼ遺伝子(ADA)、および多剤耐性(MDR)遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
【0525】
一実施形態において、負の選択可能エレメントの喪失が正の選択可能マーカーの喪失もまた必然的に伴うように、正の選択可能マーカーおよび負の選択可能エレメントが連結される。特定の実施形態において、一方の喪失が強制的に他方の喪失をもたらすように、正および負の選択可能マーカーが融合される。発現産物として、上記の所望される正および負の選択の特徴の両方を与えるポリペプチドをもたらす融合ポリヌクレオチドの例は、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼチミジンキナーゼ融合遺伝子(HyTK)である。この遺伝子の発現は、インビトロでの正の選択のためのハイグロマイシンB耐性、およびインビボでの負の選択のためのガンシクロビル感受性を与えるポリペプチドをもたらす。優性の正の選択可能マーカーと負の選択可能マーカーとの融合に由来する二機能性選択可能融合遺伝子の使用を記載する、PCT US91/08442およびPCT/US94/05601(S.D.Lupton)の刊行物もまた参照されたい。
【0526】
好ましい正の選択可能マーカーは、hph、nco、およびgptからなる群から選択される遺伝子に由来し、好ましい負の選択可能マーカーは、シトシンデアミナーゼ、HSV-I TK、VZV TK、HPRT、APRT、およびgptからなる群から選択される遺伝子に由来する。特定の実施形態において企図される例示的な二機能性選択可能融合遺伝子には、正の選択可能マーカーがhphまたはneoに由来し、かつ負の選択可能マーカーがシトシンデアミナーゼまたはTK遺伝子または選択可能マーカーに由来する遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
【0527】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、非ウイルス方法およびウイルス方法によって、造血細胞、例えば、T細胞に導入することができる。特定の実施形態において、1つ以上のポリヌクレオチドの送達は、同じ方法もしくは異なる方法によって提供されても、かつ/または同じベクターもしくは異なるベクターによって提供されてもよい。
【0528】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、別の核酸分子を転移させるか、またはそれを輸送することができる核酸分子を指す。転移した核酸は一般に、ベクター核酸分子に連結、例えば、それに挿入される。ベクターは、細胞内での自己複製を指向する配列を含んでも、宿主細胞DNAへの組み込みを可能にするのに十分な配列を含んでもよい。特定の実施形態において、非ウイルスベクターを使用して、本明細書において企図される1つ以上のポリヌクレオチドをT細胞に送達する。
【0529】
非ウイルスベクターの例示的な例には、プラスミド(例えば、DNAプラスミドまたはRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、および細菌性人工染色体が含まれるが、これらに限定されない。
【0530】
特定の実施形態において企図されるポリヌクレオチドの非ウイルス送達の例示的な方法には、電気穿孔、超音波穿孔、リポフェクション、微量注入、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ナノ粒子、ポリカチオンまたは脂質:核酸共役体、ネイキッドDNA、人工ビリオン、DEAE-デキストラン媒介転移、遺伝子銃、および熱ショックが含まれるが、これらに限定されない。
【0531】
特定の実施形態において企図される特定の実施形態における使用に好適なポリヌクレオチド送達系の例示的な例には、Amaxa Biosystems、Maxcyte Inc.、BTX Molecular Delivery Systems、およびCopernicus Therapeutics Incによって提供されるものが含まれるが、これらに限定されない。リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに好適なカチオン性脂質および中性脂質は、文献に記載されている。例えば、Liu et al.(2003)Gene Therapy.10:180-187、およびBalazs et al.(2011)Journal of Drug Delivery.2011:1-12を参照されたい。特定の実施形態において、抗体を標的とし、細菌に由来する非生存ナノ細胞系送達もまた企図される。
【0532】
特定の実施形態において企図されるポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは、後述のように、典型的には全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、もしくは頭蓋内注入)または局所投与による個々の患者への投与によって、インビボ送達することができる。あるいは、ベクターは、個々の患者から外植された細胞(例えば、動員末梢血、リンパ球、骨髄吸引液、組織生検など)または普遍的なドナー造血幹細胞などのエクスビボの細胞に送達し、その後細胞を患者に再移植してもよい。
【0533】
一実施形態において、DNAドナー修復鋳型をコードするウイルスベクターは、インビボでの細胞の形質導入のために生物に直接投与される。あるいは、ネイキッドDNAが投与されてもよい。投与は、ある分子を血液または組織細胞と最終的に接触した状態へと導入するのに通常使用される経路(注射、注入、局所投与、および電気穿孔を含むがこれらに限定されない)のいずれかによる。そのような核酸の好適な投与方法は、当業者にとって利用可能かつ周知であり、2つ以上の経路を使用して特定の組成物を投与してもよいが、特定の経路は多くの場合、別の経路よりも速効性かつ効果的な反応を提供する。
【0534】
本明細書において企図される特定の実施形態における使用に好適なウイルスベクター系の例示的な例には、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、およびワクシニアウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない。
【0535】
様々な実施形態において、細胞にポリヌクレオチドを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を形質導入することによって、DNAドナー修復鋳型をコードするポリヌクレオチドが造血細胞、例えば、T細胞に導入される。
【0536】
AAVは、小さな(約26nm)複製欠損の主にエピソームの無エンベロープ状ウイルスである。AAVは、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染することができ、そのゲノムを宿主細胞のゲノムに組み込むことができる。組換えAAV(rAAV)は、典型的には最低でも導入遺伝子およびその制御配列と、5および3’AAV逆方向終結反復配列(ITR)とからなる。ITR配列は、約145塩基対長である。特定の実施形態において、rAAVは、ITRと、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAV10から単離されたカプシド配列とを含む。
【0537】
いくつかの実施形態において、キメラrAAVが使用され、ITR配列が1つのAAV血清型から単離され、カプシド配列が異なるAAV血清型から単離される。例えば、AAV2由来のITR配列およびAAV6由来のカプシド配列を有するrAAVは、AAV2/AAV6と称される。特定の実施形態において、rAAVベクターは、AAV2由来のITRと、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAV10のいずれか1つ由来のカプシドタンパク質とを含み得る。好ましい実施形態において、rAAVは、AAV2由来のITR配列と、AAV6由来のカプシド配列とを含む。好ましい実施形態において、rAAVは、AAV2由来のITR配列と、AAV2由来のカプシド配列とを含む。
【0538】
いくつかの実施形態において、操作および選択方法をAAVカプシドに適用して、それらが対象となる細胞を形質導入する可能性をより高くすることができる。
【0539】
rAAVベクターの構築、それらの産生および精製は、例えば、米国特許第9,169,494号、同第9,169,492号、同第9,012,224号、同第8,889,641号、同第8,809,058号、および同第8,784,799号に開示されており、これらの各々は、その全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0540】
様々な実施形態において、電気穿孔によって、複数のヌクレアーゼバリアントをコードするポリヌクレオチドが造血細胞に導入され、細胞にドナー修復鋳型を含むレトロウイルス、例えば、レンチウイルスを形質導入することによって、本明細書において企図されるドナー修復鋳型が造血細胞に導入される。
【0541】
本明細書で使用される場合、「レトロウイルス」という用語は、そのゲノムRNAを線状二本鎖DNA複製物に逆転写し、その後そのゲノムDNAを宿主ゲノムに共有結合的に組み込むRNAウイルスを指す。特定の実施形態における使用に好適な例示的なレトロウイルスには、モロニーマウス白血病ウイルス(M-MuLV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプーマウイルス、フレンドマウス白血病ウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV))、ならびにレンチウイルスが含まれるが、これらに限定されない。
【0542】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルス」という用語は、複合レトロウイルスの群(または属)を指す。例示的なレンチウイルスには、HIV(ヒト免疫不全ウイルス(HIV1型およびHIV2型);ビスナ・マエディウイルス(VMV)ウイルス;ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV);ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV);ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシ免疫不全ウイルス(BIV);ならびにサル免疫不全ウイルス(SIV)が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、HIV系ベクター骨格(すなわち、HIVシス作用配列エレメント)が好ましい。
【0543】
様々な実施形態において、本明細書において企図されるレンチウイルスベクターは、1つ以上のLTRと、以下のアクセサリーエレメント、cPPT/FLAP、Psi(Ψ)パッケージングシグナル、輸送エレメント、ポリアデニル酸配列のうちの1つ以上または全てとを含み、任意で、本明細書の他の箇所に考察される、WPREまたはHPRE、インスレーターエレメント、選択可能マーカー、および細胞自殺遺伝子を含んでもよい。
【0544】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるレンチウイルスベクターは、組み込み的レンチウイルスまたは非組み込み的レンチウイルスまたは組み込み欠損レンチウイルスであってもよい。本明細書で使用される場合、「組み込み欠損レンチウイルス」または「IDLV」という用語は、ウイルスゲノムを宿主細胞のゲノムに組み込む能力を欠如するインテグラーゼを有するレンチウイルスを指す。組み込み不能ウイルスベクターは、特許出願第WO2006/010834号に記載されており、その全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0545】
インテグラーゼ活性を低減するのに好適なHIV-1 pol遺伝子中の例示的な変異には、H12N、H12C、H16C、H16V、S81 R、D41A、K42A、H51A、Q53C、D55V、D64E、D64V、E69A、K71A、E85A、E87A、D116N、D1161、D116A、N120G、N1201、N120E、E152G、E152A、D35E、K156E、K156A、E157A、K159E、K159A、K160A、R166A、D167A、E170A、H171A、K173A、K186Q、K186T、K188T、E198A、R199c、R199T、R199A、D202A、K211A、Q214L、Q216L、Q221 L、W235F、W235E、K236S、K236A、K246A、G247W、D253A、R262A、R263A、およびK264Hが含まれるが、これらに限定されない。
【0546】
一実施形態において、HIV-1インテグラーゼ欠損pol遺伝子は、D64V、D116I、D116A、E152G、またはE152A変異;D64V、D116I、およびE152G変異;またはD64V、D116A、およびE152A変異を含む。
【0547】
一実施形態において、HIV-1インテグラーゼ欠損pol遺伝子は、D64V変異を含む。
【0548】
「末端反復配列(LTR)」という用語は、レトロウイルスDNAの末端に位置する塩基対のドメインを指し、それらは、それらの天然配列の文脈において直列反復配列であり、U3、R、およびU5領域を含有する。
【0549】
本明細書で使用される場合、「FLAPエレメント」または「cPPT/FLAP」という用語は、その配列がレトロウイルス(例えば、HIV-1またはHIV-2)の中央ポリプリントラクト配列および中央終結配列(cPPTおよびCTS)を含む核酸を指す。好適なFLAPエレメントは、米国特許第6,682,907号およびZennou,et al.,2000,Cell,101:173に記載される。別の実施形態において、レンチウイルスベクターは、cPPTエレメントおよび/またはCTSエレメントに1つ以上の変異を有するFLAPエレメントを含有する。更に別の実施形態において、レンチウイルスベクターは、cPPTエレメントまたはCTSエレメントのいずれかを含む。更に別の実施形態において、レンチウイルスベクターは、cPPTエレメントまたはCTSエレメントを含まない。
【0550】
本明細書で使用される場合、「パッケージングシグナル」または「パッケージング配列」という用語は、ウイルスカプシドまたは粒子へのウイルスRNAの挿入に必要とされるレトロウイルスゲノム内に位置するPsi[Ψ]配列を指し、例えば、Clever et al.,1995.J.of Virology,Vol.69,No.4;pp.2101-2109を参照されたい。
【0551】
「輸送エレメント」という用語は、核から細胞の細胞質へのRNA転写物の輸送を制御するシス作用転写後制御エレメントを指す。RNA輸送エレメントの例には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)rev応答エレメント(RRE)(例えば、Cullen et al.,1991.J.Virol.65:1053、およびCullen et al.,1991.Cell58:423を参照されたい)、ならびにB型肝炎ウイルス転写後制御エレメント(HPRE)が含まれるが、これらに限定されない。
【0552】
特定の実施形態において、転写後制御エレメント、効率的なポリアデニル化部位、および任意で転写終結シグナルをベクターに組み込むことによって、ウイルスベクターにおける異種配列の発現を増加させる。様々な転写後制御エレメントは、タンパク質における異種核酸、例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御エレメント(WPRE、Zufferey et al.,1999,J.Virol.,73:2886)、B型肝炎ウイルス(HPRE)に存在する転写後制御エレメント(Huang et al.,Mol.Cell.Biol.,5:3864)、および同類のもの(Liu et al.,1995,Genes Dev.,9:1766)の発現を増加させることができる。
【0553】
レンチウイルスベクターは好ましくは、LTRの修飾の結果としていくらかの安全性強化を含有する。「自己不活型」(SIN)ベクターは、例えば、第1巡のウイルス複製を超えたウイルス転写を予防するために、U3領域として知られる右側(3’)のLTRエンハンサー-プロモーター領域が(例えば、欠失または置換により)修飾されている、複製欠損のベクターを指す。追加の安全性強化は、5’LTRのU3領域を異種プロモーターで置換して、ウイルス粒子の産生中のウイルスゲノムの転写を推進することによって提供される。使用することができる異種プロモーターの例には、例えば、ウイルス性シミアンウイルス40(SV40)(例えば、初期もしくは後期)、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、最初期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、ルイス肉腫ウイルス(RSV)、および単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーターが含まれる。
【0554】
本明細書で使用される場合、「偽型」または「偽型化」という用語は、そのウイルスエンベロープタンパク質が好ましい特性を持つ別のウイルスのエンベロープタンパク質で置換されているウイルスを指す。例えば、HIVは、水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV-G)エンベロープタンパク質で偽型化することができ、これにより、HIVがより広範な細胞に感染することが可能となるが、これは、(env遺伝子によってコードされる)HIVエンベロープタンパク質が通常、ウイルスの標的をCD4提示細胞にするためである。
【0555】
特定の実施形態において、レンチウイルスベクターは、既知の方法に従って産生される。例えば、Kutner et al.,BMC Biotechnol.2009;9:10.doi:10.1186/1472-6750-9-10、Kutner et al.Nat.Protoc.2009;4(4):495-505.doi:10.1038/nprot.2009.22を参照されたい。
【0556】
本明細書において企図されるある種の特定の実施形態に従うと、ウイルスベクター骨格配列のほとんどまたは全ては、レンチウイルス、例えば、HIV-1に由来する。しかしながら、レトロウイルス配列および/またはレンチウイルス配列の多くの異なる供給源を使用しても組み合わせてもよいこと、ならびにレンチウイルス配列の特定のものでは、転移ベクターが本明細書に記載の機能を実行する能力を損なうことなく、多数の置換および改変が受け入れられることを理解されたい。更に、様々なレンチウイルスベクターが当該技術分野において既知であり、Naldini et al.,(1996a、1996b、および1998)、Zufferey et al.,(1997)、Dull et al.,1998、米国特許第6,013,516号、ならびに同第5,994,136号を参照されたく、これらの多くは、本明細書において企図されるウイルスベクターまたは転移プラスミドの産生に適応することができる。
【0557】
様々な実施形態において、電気穿孔によって、複数のヌクレアーゼバリアントをコードするポリヌクレオチドが造血細胞に導入され、細胞にドナー修復鋳型を含むアデノウイルスを形質導入することによって、本明細書において企図されるドナー修復鋳型が造血細胞に導入される。
【0558】
アデノウイルス系ベクターは、多くの細胞型において非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターでは、高い力価および高レベルの発現が得られている。このベクターは、比較的単純なシステムにおいて大量に産生することができる。ほとんどのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAd E1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置換し、その後複製欠損のベクターがトランスにおいて欠失した遺伝子機能を供給するヒト293細胞内で増殖するように操作されている。Adベクターは、肝臓、腎臓、および筋肉内に見出されるものなどの非分裂分化細胞を含む複数の組織型をインビボで形質導入することができる。従来のAdベクターは、大きな運搬能力を有する。
【0559】
複製欠損である現在のアデノウイルスベクターの生成および増殖は、Ad5 DNA断片によってヒト胎児由来腎臓細胞から形質転換されており、E1タンパク質を構成的に発現する、293と指定される特有のヘルパー細胞株を利用することができる(Graham et al.,1977)。E3領域はアデノウイルスゲノムには不要であるため(Jones&Shenk,1978)、現在のアデノウイルスベクターは、293細胞の補助によって、E1、D3のいずれかの領域、またはそれら両方の領域において異質DNAを運搬する(Graham&Prevec,1991)。アデノウイルスベクターは、真核生物遺伝子発現(Levrero et al.,1991、Gomez-Foix et al.,1992)およびワクチン開発(Grunhaus&Horwitz,1992、Graham&Prevec,992)において使用されている。組換えアデノウイルスの異なる組織への投与に関する研究には、気管滴下注入(Rosenfeld et al.,1991、Rosenfeld et al.,1992)、筋肉注射(Ragot et al.,1993)、末梢静脈内注射(Herz&Gerard,1993)、および脳への定位接種(Le Gal La Salle et al.,1993)が含まれる。臨床治験におけるAdベクターの使用の例は、筋肉内注射による抗腫瘍免疫化のためのポリヌクレオチド療法を伴った(Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083-9(1998))。
【0560】
様々な実施形態において、電気穿孔によって、複数のヌクレアーゼバリアントをコードするポリヌクレオチドが造血細胞に導入され、細胞にドナー修復鋳型を含む単純ヘルペスウイルス、例えば、HSV-1、HSV-2を形質導入することによって、本明細書において企図されるドナー修復鋳型が造血細胞に導入される。
【0561】
成熟HSVビリオンは、152キロベースの線状二本鎖DNA分子からなるウイルスゲノムを有するエンベロープ状正二十面体カプシドからなる。一実施形態において、HSV系ウイルスベクターは、1つ以上の必須または非必須HSV遺伝子を欠損している。一実施形態において、HSV系ウイルスベクターは、複製欠損である。ほとんどの複製欠損HSVベクターは、1つ以上の中間初期、初期、または後期HSV遺伝子を除去して複製を予防する、欠失を含有する。例えば、HSVベクターは、ICP4、ICP22、ICP27、ICP47、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される最初期遺伝子を欠損し得る。HSVベクターの利点は、それが長期のDNA発現をもたらすことができる潜伏段階に入る能力、および最大25キロベースの外因性DNA挿入を受け入れることができるその大きなウイルスDNAゲノムである。HSV系ベクターは、例えば、米国特許第5,837,532号、同第5,846,782号、および同第5,804,413号、ならびに国際特許出願第WO91/02788号、同第WO96/04394号、同第WO98/15637号、および同第WO99/06583号に記載されており、これらの各々は、その全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0562】
G.ゲノム編集された細胞
特定の実施形態において企図される方法によって製造される、ゲノム編集された細胞は、改善された細胞療法組成物を提供する。
【0563】
様々な実施形態において、ゲノム編集された細胞は、造血幹細胞または前駆細胞、例えば、CD34細胞を含む。特定の実施形態において、ゲノム編集された造血幹細胞または前駆細胞は、BCL11A遺伝子座、KLF1遺伝子座、SOX6遺伝子座、GATA1遺伝子座、およびLSD1遺伝子座を含むがこれらに限定されない、γ-グロビン遺伝子発現およびHbFの抑圧に寄与する1つ、2つ、3つ、もしくはそれ以上の遺伝子、β-グロビン遺伝子座のサラセミア対立遺伝子、またはβ-グロビン遺伝子座の鎌状化対立遺伝子中の複数の編集を含む。
【0564】
特定の実施形態において、1つ以上の造血幹細胞または前駆細胞内の複数の標的部位を編集する方法は、複数の操作されたヌクレアーゼを細胞集団に導入することと、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アーム対を含むドナー修復鋳型を含むベクターを細胞集団に形質導入することであって、各相同アーム対が、1つ以上の導入遺伝子に隣接する、形質導入することとを含み、操作されたヌクレアーゼの発現は、ゲノム内の標的部位において二本鎖切断をもたらし、ドナー修復鋳型の相同アームは、二本鎖切断(DSB)部位における相同性指向性修復(HDR)による標的部位への1つ以上の導入遺伝子の組み込みを可能にする。
【0565】
特定の実施形態において、1つ以上の造血幹細胞または前駆細胞内の複数の標的部位を編集する方法は、複数の操作されたヌクレアーゼを細胞集団に導入することと、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アーム対を含むドナー修復鋳型を含むベクターを細胞集団に形質導入することであって、各相同アーム対が、異なる導入遺伝子に隣接する、形質導入することとを含み、操作されたヌクレアーゼの発現は、ゲノム内の標的部位において二本鎖切断をもたらし、ドナー修復鋳型の相同アームは、二本鎖切断(DSB)部位における相同性指向性修復(HDR)による標的部位への1つ以上の導入遺伝子の組み込みを可能にする。
【0566】
特定の実施形態において、1つ以上の造血幹細胞または前駆細胞内の複数の標的部位を編集する方法は、複数の操作されたヌクレアーゼを細胞集団に導入することと、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アーム対を含むドナー修復鋳型を含むベクターを細胞集団に形質導入することであって、各相同アーム対が、1つ以上の導入遺伝子に隣接し、相同アーム対のうちの少なくとも2つが、同じ導入遺伝子に隣接する、形質導入することとを含み、操作されたヌクレアーゼの発現は、ゲノム内の標的部位において二本鎖切断をもたらし、ドナー修復鋳型の相同アームは、二本鎖切断(DSB)部位における相同性指向性修復(HDR)による標的部位への1つ以上の導入遺伝子の組み込みを可能にする。
【0567】
様々な実施形態において、ゲノム編集された細胞は、複数のゲノム編集を含む免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞を含む。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本明細書において企図される方法によって製造される、多重ゲノム編集された免疫エフェクター細胞には、改善されたインビボでの安全性、有効性、および耐久性の増加を含む、優れた特性が吹き込まれると考えられる。
【0568】
特定の実施形態において、ゲノム編集された細胞は、TCRシグナル伝達成分(例えば、TCRα遺伝子の定常領域)をコードする遺伝子、免疫系チェックポイント遺伝子(PD-1、LAG-3、TIM-3、CTLA-4、BTLA、TIGIT、VISTA、およびKIR遺伝子を含むがこれらに限定されない)、または免疫抑制シグナル伝達成分(IL-10Rα、TGFβR1、TGFβR2、AHR、SGK1、TSC2、VHL、A2AR、およびCBLBを含むがこれらに限定されない)中の複数の編集を含む。
【0569】
特定の実施形態において、ゲノム編集された細胞は、TCRα遺伝子の定常領域、PD-1、LAG-3、TIM-3、CTLA-4、BTLA、TIGIT、VISTA、KIR遺伝子、IL-10Rα、TGFβR1、TGFβR2、AHR、SGK1、A2AR、TSC2、VHL、およびCBLBからなる群から選択される少なくとも2つのゲノム標的部位に挿入された、操作された抗原受容体を含む。
【0570】
特定の実施形態において、ゲノム編集された細胞は、TCRα遺伝子の定常領域、ならびにPD-1、LAG-3、TIM-3、CTLA-4、BTLA、TIGIT、VISTA、KIR遺伝子、IL-10Rα、TGFβR1、TGFβR2、AHR、SGK1、A2AR、TSC2、VHL、およびCBLBからなる群から選択される1つ以上の遺伝子に挿入された、操作された抗原受容体を含む。
【0571】
特定の実施形態において、1つ以上のT細胞内の複数の標的部位を編集する方法は、T細胞集団を活性化し、T細胞集団を増殖するように刺激することと、複数の操作されたヌクレアーゼをT細胞集団に導入することと、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アーム対を含むドナー修復鋳型を含むベクターをT細胞集団に形質導入することであって、各相同アーム対が、1つ以上の導入遺伝子に隣接する、形質導入することとを含み、操作されたヌクレアーゼの発現は、ゲノム内の標的部位において二本鎖切断をもたらし、ドナー修復鋳型の相同アームは、二本鎖切断(DSB)部位における相同性指向性修復(HDR)による標的部位への1つ以上の導入遺伝子の組み込みを可能にする。
【0572】
特定の実施形態において、1つ以上のT細胞内の複数の標的部位を編集する方法は、T細胞集団を活性化し、T細胞集団を増殖するように刺激することと、複数の操作されたヌクレアーゼをT細胞集団に導入することと、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アーム対を含むドナー修復鋳型を含むベクターをT細胞集団に形質導入することであって、各相同アーム対が、異なる導入遺伝子に隣接する、形質導入することとを含み、操作されたヌクレアーゼの発現は、ゲノム内の標的部位において二本鎖切断をもたらし、ドナー修復鋳型の相同アームは、二本鎖切断(DSB)部位における相同性指向性修復(HDR)による標的部位への1つ以上の導入遺伝子の組み込みを可能にする。
【0573】
特定の実施形態において、1つ以上のT細胞内の複数の標的部位を編集する方法は、T細胞集団を活性化し、T細胞集団を増殖するように刺激することと、複数の操作されたヌクレアーゼをT細胞集団に導入することと、ゲノム内の複数の標的部位に対応する複数の相同アーム対を含むドナー修復鋳型を含むベクターをT細胞集団に形質導入することであって、各相同アーム対が、1つ以上の導入遺伝子に隣接し、相同アーム対のうちの少なくとも2つが、同じ導入遺伝子に隣接する、形質導入することとを含み、操作されたヌクレアーゼの発現は、ゲノム内の標的部位において二本鎖切断をもたらし、ドナー修復鋳型の相同アームは、二本鎖切断(DSB)部位における相同性指向性修復(HDR)による標的部位への1つ以上の導入遺伝子の組み込みを可能にする。
【0574】
H.組成物および配合物
特定の実施形態において企図される組成物は、本明細書において企図される、1つ以上のポリペプチド、ポリヌクレオチド、それらを含むベクター、ならびにゲノム編集組成物およびゲノム編集された細胞組成物を含み得る。特定の実施形態において企図されるゲノム編集組成物および方法は、単一DNAドナー修復鋳型を使用して、細胞内または細胞集団内の複数の標的部位を編集するのに有用である。好ましい実施形態において、操作されたヌクレアーゼおよびDNAドナー修復鋳型を使用して、造血細胞(例えば、造血幹細胞もしくは前駆細胞)、CD34細胞、T細胞、または免疫エフェクター細胞のゲノム内に複数の編集を導入する。
【0575】
特定の実施形態において、本明細書において企図される組成物は、DNAドナー修復鋳型を含む。
【0576】
特定の実施形態において、本明細書において企図される組成物は、DNAドナー修復鋳型をコードするベクターを含む。
【0577】
様々な実施形態において、本明細書において企図される組成物は、操作されたヌクレアーゼおよび/またはDNAドナー修復鋳型を含む。ヌクレアーゼバリアントは、本明細書に開示されるポリヌクレオチド送達法、例えば、電気穿孔、脂質ナノ粒子、形質導入などを介して細胞に導入されるmRNAの形態であり得る。一実施形態において、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントまたはメガTALをコードするmRNAを含む組成物、およびDNAドナー修復鋳型が、本明細書に開示されるポリヌクレオチド送達法を介して細胞に導入される。ドナー修復鋳型の存在下での遺伝子編集酵素の発現を使用して、ゲノム編集された細胞内またはゲノム編集された細胞集団内の複数の標的部位に、HDRによってゲノム編集を導入することができる。特定の実施形態において、細胞集団は、遺伝子組換えの免疫エフェクター細胞を含む。
【0578】
組成物には、薬学的組成物が含まれるが、これらに限定されない。「薬学的組成物」は、単独または1つ以上の他の療法様式との組み合わせのいずれかでの細胞または動物への投与のために、薬学的に許容される溶液中または生理学的に許容される溶液中に配合された組成物を指す。所望される場合、組成物は、例えば、サイトカイン、成長因子、ホルモン、小分子、化学療法剤、プロドラッグ、薬物、抗体、または他の様々な薬学的に活性な薬剤などの他の薬剤とも組み合わせて投与されてもよいこともまた理解される。組成物中に同様に含まれ得る他の成分に対する制限は実質的に存在しないが、但し、追加の薬剤が組成物に悪影響を与えないことを条件とする。
【0579】
「薬学的に許容される」という語句は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なく、合理的な損益比と釣り合って、ヒトおよび動物の組織と接触した使用に好適である化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために本明細書で用いられる。
【0580】
「薬学的に許容される担体」という用語は、治療細胞が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。薬学的担体の例示的な例は、細胞培養培地、水、および油(ピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、およびゴマ油などの、石油、動物、植物、または合成起源の油を含む)などの無菌液であり得る。食塩水ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた、液体担体として、特に注射可能溶液に用いることができる。特定の実施形態において、好適な薬学的賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、およびエタノールなどが含まれる。いずれかの従来の培地または薬剤が活性成分と不適合である程度を除いて、治療組成物中でのその使用が企図される。補充のための活性成分もまた、組成物中に組み込まれてもよい。
【0581】
一実施形態において、薬学的に許容される担体を含む組成物は、対象への投与に好適である。特定の実施形態において、担体を含む組成物は、非経口投与、例えば、血管内(静脈内もしくは動脈内)、腹腔内、または筋肉内投与に好適である。特定の実施形態において、薬学的に許容される担体を含む組成物は、脳室内、脊髄内、またはくも膜下腔内投与に好適である。薬学的に許容される担体には、無菌水溶液、細胞培養培地、または分散液が含まれる。薬学的に活性な物質のためのそのような培地または薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。いずれかの従来の培地または薬剤が形質導入された細胞と不適合である程度を除いて、薬学的組成物中でのその使用が企図される。
【0582】
特定の実施形態において、本明細書において企図される組成物は、遺伝子組換えT細胞と、薬学的に許容される担体とを含む。本明細書において企図される細胞系組成物を含む組成物は、経腸もしくは非経口投与法によって別々に、または所望される治療目標をもたらす他の好適な化合物と組み合わせて投与することができる。
【0583】
薬学的に許容される担体は、それが治療されているヒト対象への投与に好適になるために、十分に高い純度かつ低毒性のものでなくてはならない。それは更に、組成物の安定性を維持または増加させるべきである。薬学的に許容される担体は、液体であっても固体であってもよく、計画される投与様式を念頭に置いて、組成物の他の成分と組み合わせたときに、所望される容積、稠度などを提供するように選択される。例えば、薬学的に許容される担体は、非限定的に、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、充填剤(例えば、ラクトースおよび他の糖類、結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、カルシウム、硫酸、エチルセルロース、ポリアクリル酸、リン酸水素カルシウムなど)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、硬化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど)、崩壊剤(例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど)、または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)であり得る。本明細書において企図される組成物のための他の好適な薬学的に許容される担体には、水、塩類溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0584】
そのような担体溶液はまた、緩衝液、希釈剤、および他の好適な添加剤も含有し得る。本明細書で使用される場合、「緩衝液」という用語は、pHを有意に変化させることなく、その化学構造が酸または塩基を中和する溶液または液体を指す。本明細書において企図される緩衝液の例には、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(PBS)、リンゲル溶液、5%のデキストロース水(D5W)、正常/生理食塩水(0.9%のNaCl)が含まれるが、これらに限定されない。
【0585】
薬学的に許容される担体は、組成物のpHを約7に維持するのに十分な量で存在し得る。あるいは、組成物は、約6.8~約7.4の範囲内、例えば、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、および7.4のpHを有する。更に別の実施形態において、組成物は、約7.4のpHを有する。
【0586】
本明細書において企図される組成物は、無毒性の薬学的に許容される培地を含み得る。組成物は、懸濁液であり得る。本明細書で使用される場合、「懸濁液」という用語は、細胞が固体支持体に結合しない非付着条件を指す。例えば、懸濁液として維持される細胞は、撹拌されてもかき混ぜられてもよく、かつ培養皿などの支持体に結合していない。
【0587】
特定の実施形態において、本明細書において企図される組成物は、懸濁液中に配合され、ゲノム編集された細胞は、静脈内注射(IV)用袋内などの許容される液体培地または溶液(例えば、食塩水または無血清培地)中に分散される。許容される希釈剤には、水、PlasmaLyte、リンゲル溶液、等張塩化ナトリウム(食塩)水、無血清細胞培養培地、および低温貯蔵に好適な培地(例えば、Cryostor(登録商標)培地)が含まれるが、これらに限定されない。
【0588】
特定の実施形態において、薬学的に許容される担体は、ヒトまたは動物起源の天然タンパク質を実質的に含まず、ゲノム編集された細胞集団を含む組成物の貯蔵に好適である。治療組成物は、ヒト患者への投与が意図されるため、ウシ血清アルブミン、ウマ血清、およびウシ胎仔血清などの細胞培養成分を実質的に含まない。
【0589】
いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的に許容される細胞培養培地中に配合される。そのような組成物は、ヒト対象への投与に好適である。特定の実施形態において、薬学的に許容される細胞培養培地は、無血清培地である。
【0590】
無血清培地は、血清含有培地と比較して、組成物の単純化およびより詳細な定義、混入物の程度の低減、感染病原体の可能性のある供給源の消失、ならびにより低い費用を含むいくつかの利点を有する。様々な実施形態において、無血清培地は、動物質を含まず、かつ任意でタンパク質を含まないものであってもよい。任意で、培地は、生物薬剤学的に許容される組換えタンパク質を含有してもよい。「動物質を含まない」培地は、成分が非動物源に由来する培地を指す。組換えタンパク質は、動物質を含まない培地中の天然動物タンパク質に取って代わり、栄養素は、合成源、植物源、または微生物源から得られる。対照的に、「タンパク質を含まない」培地は、タンパク質を実質的に含まないものと定義される。
【0591】
特定の組成物中で使用される無血清培地の例示的な例には、QBSF-60(Quality Biological,Inc.)、StemPro-34(Life Technologies)、およびX-VIVO10が含まれるが、これらに限定されない。
【0592】
好ましい実施形態において、ゲノム編集された細胞を含む組成物は、PlasmaLyte中で配合される。
【0593】
様々な実施形態において、ゲノム編集された細胞を含む組成物は、凍結保存培地中で配合される。例えば、凍結保存剤を有する凍結保存培地を使用して、解凍後に高い細胞生存率の結果を維持することができる。特定の組成物中で使用される凍結保存培地の例示的な例には、CryoStor CS10、CryoStor CS5、およびCryoStor CS2が含まれるが、これらに限定されない。
【0594】
一実施形態において、組成物は、50:50のPlasmaLyte A対CryoStor CS10を含む溶液中で配合される。
【0595】
特定の実施形態において、組成物は、マイコプラズマ、エンドトキシン、および微生物混入物を実質的に含まない。エンドトキシンに関して「実質的に含まない」は、生物製剤についてFDAによって許容される量(1日当たり5EU/kgの体重の全エンドトキシンであり、平均的な70kgの人では全用量の細胞当たり350EUである)よりも少ないエンドトキシンが、1用量の細胞当たりに存在することを意味する。特定の実施形態において、本明細書において企図されるレトロウイルスベクターによって形質導入された造血幹細胞または前駆細胞を含む組成物は、約0.5EU/mL~約5.0EU/mL、または約0.5EU/mL、1.0EU/mL、1.5EU/mL、2.0EU/mL、2.5EU/mL、3.0EU/mL、3.5EU/mL、4.0EU/mL、4.5EU/mL、もしくは5.0EU/mLを含有する。
【0596】
特定の実施形態において、1つ以上の再プログラムヌクレアーゼをコードする1つ以上のmRNA、および任意で末端プロセシング酵素を含むがこれらに限定されない、ポリヌクレオチドの送達に好適な組成物および配合物が企図される。
【0597】
エクスビボ送達のための例示的な配合物はまた、リン酸カルシウムなどの当該技術分野において既知である様々なトランスフェクション剤、電気穿孔、熱ショック、および様々なリポソーム配合物(すなわち、脂質媒介性トランスフェクション)の使用も含む。リポソームは、わずかな水性流体を封入する脂質二重層である。DNAは、(その電荷のために)カチオン性リポソームの外表面に自発的に会合し、それらのリポソームは、細胞膜と相互作用する。
【0598】
特定の実施形態において、薬学的に許容される担体溶液の配合物は、当業者にとって周知であり、例えば、経腸および非経口、例えば、血管内、静脈内、動脈内、骨内、脳室内、脳内、頭蓋内、脊髄内、くも膜下腔内、および髄内の投与および配合物を含む様々な治療レジメンにおいて、本明細書に記載の特定の組成物を使用するための好適な投薬および治療レジメンの開発もまた同様である。本明細書において企図される特定の実施形態は、薬学の技術分野において周知であるもの、および例えば、その全体が、参照によって本明細書に組み込まれる、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,volume I and volume II.22ndEdition.Edited by Loyd V.Allen Jr.Philadelphia,PA:Pharmaceutical Press;2012に記載のものなどの他の配合物を含み得ることが当業者によって理解される。
【0599】
I.ゲノム編集された細胞療法
本明細書において企図される組成物および方法によって製造されるゲノム編集された細胞は、ヘモグロビン異常症、癌、GVHD、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、または免疫不全のうちの少なくとも1つの症状の予防、治療、または寛解における使用のための改善された薬物製品を提供する。本明細書で使用される場合、「薬物製品」という用語は、本明細書において企図される組成物および方法を使用して産生される、遺伝子組換え細胞を指す。
【0600】
特定の実施形態において、薬物製品は、遺伝子編集された造血幹細胞もしくは前駆細胞、またはCD34細胞を含む。特定の実施形態において、ゲノム内の複数の編集を含む、有効量のゲノム編集された造血幹細胞もしくは前駆細胞、またはCD34細胞を対象に投与して、β-サラセミアおよび鎌状赤血球症を含むがこれらに限定されない、ヘモグロビン異常症の少なくとも1つの症状を予防、治療、または寛解する。
【0601】
特定の実施形態において、薬物製品は、遺伝子編集された免疫エフェクター細胞またはT細胞を含む。更に、特定の実施形態において企図されるゲノム編集されたT細胞は、T細胞疲弊に対して耐性があり、持続的な療法をもたらし得る腫瘍微小環境における耐久性および持続性の増加を示すため、それらは、より安全かつより効果的な養子細胞療法を提供する。
【0602】
特定の実施形態において、ゲノム内の複数の編集を含む、有効量のゲノム編集された免疫エフェクター細胞またはT細胞を対象に投与して、癌、GVHD、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、または免疫不全の少なくとも1つの症状を予防、治療、または寛解する。
【0603】
特定の実施形態において、ゲノム編集された細胞は、T細胞疲弊に対する耐性を増加させ、インビボでのT細胞耐久性を増加させ、かつ/またはインビボでのT細胞持続性を増加させる、遺伝子中の複数の標的部位に挿入された、1つ以上の免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、または操作された抗原受容体を含む。
【0604】
特定の実施形態において、ゲノム編集された細胞は、TCRα定常領域、免疫系チェックポイント遺伝子、および/または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子からなる群から選択される複数の標的部位に挿入された、CARを含む。
【0605】
特定の実施形態において、ゲノム編集された細胞は、TCRα定常領域に挿入されたCARと、1つ以上の免疫系チェックポイント遺伝子または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子に挿入された、免疫能エンハンサー、免疫抑制シグナルダンパー、または別の操作された抗原受容体をコードする1つ以上の導入遺伝子とを含む。
【0606】
特定の実施形態において、ゲノム編集された細胞は、TCRα定常領域、1つ以上の免疫系チェックポイント遺伝子、および/または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子に挿入された、CARまたはフリップ受容体を含む。
【0607】
特定の実施形態において、ゲノム編集された細胞は、TCRα定常領域、1つ以上の免疫系チェックポイント遺伝子、および/または免疫抑制シグナル伝達成分をコードする遺伝子に挿入された、1つ以上のフリップ受容体を含む。
【0608】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるゲノム編集された細胞は、固形腫瘍または癌の治療において使用される。
【0609】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるゲノム編集された細胞は、副腎癌、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、星細胞腫、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳/CNS癌、乳癌、気管支腫瘍、心臓腫瘍、子宮頸癌、胆管癌、軟骨肉腫、脊索腫、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、非浸潤性乳管癌(DCIS)、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、感覚神経芽腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼癌、卵管癌、線維性組織球腫、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌(gastric cancer)、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞性腫瘍、神経膠腫、膠芽腫、頭頸部癌、血管芽細胞腫、肝細胞癌、下咽頭癌、眼球内黒色腫、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、平滑筋肉腫、口唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、非小細胞肺癌、肺カルチノイド腫瘍、悪性中皮腫、髄様癌、髄芽腫、髄膜腫、黒色腫、ルケル細胞癌、正中管癌、口腔癌(mouth cancer)、粘液肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、鼻腔癌および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、乏突起神経膠腫、口腔癌(oral cancer)、口腔癌(oral cavity cancer)、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、膵島腫瘍、乳頭癌、傍神経節腫、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌(pharyngeal cancer)、褐色細胞腫、松果体腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽細胞腫、原発性腹膜癌、前立腺癌、直腸癌、網膜芽細胞腫、腎細胞癌、腎盂腎癌および尿管癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮脂腺癌、皮膚癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、小細胞肺癌、小腸癌、胃癌(stomach cancer)、汗腺癌、滑膜腫、精巣癌、咽頭癌(throat cancer)、胸腺癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、血管癌、外陰癌、およびウィルムス腫瘍を含むがこれらに限定されない、固形腫瘍または癌の治療において使用される。
【0610】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるゲノム編集された細胞は、肝臓癌、膵癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、脳癌、骨癌、甲状腺癌、腎臓癌、または皮膚癌を非限定的に含む、固形腫瘍または癌の治療において使用される。
【0611】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるゲノム編集された細胞は、膵癌、膀胱癌、および肺癌を含むがこれらに限定されない、様々な癌の治療において使用される。
【0612】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるゲノム編集された細胞は、液性癌または血液学的癌の治療において使用される。
【0613】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるゲノム編集された細胞は、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫を含むがこれらに限定されない、B細胞悪性腫瘍の治療において使用される。
【0614】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるゲノム編集された細胞は、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫:急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単核性、赤白血病、有毛細胞白血病(HCL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、および慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、および真性赤血球増加症、ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、菌状息肉症、未分化大細胞リンパ腫、セザリー症候群、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、多発性骨髄腫、顕性多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、形質細胞白血病、非分泌型骨髄腫、IgD骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、ならびに髄外性形質細胞腫を含むがこれらに限定されない、液性癌の治療において使用される。
【0615】
本明細書において企図されるゲノム編集法における使用に好ましい細胞には、自己/自家(「自己」)細胞、好ましくは造血細胞が含まれる。
【0616】
特定の実施形態において、治療有効量の本明細書において企図されるゲノム編集された細胞、またはそれらを含む組成物を、単独でまたは1つ以上の治療剤と組み合わせて、それを必要とする患者に投与することを含む方法が提供される。特定の実施形態において、細胞は、ヘモグロビン異常症、癌、GVHD、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、または免疫不全を発症するリスクにある患者の治療において使用される。したがって、特定の実施形態は、ヘモグロビン異常症、癌、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、または免疫不全の少なくとも1つの症状の治療または予防または寛解を含み、治療有効量の本明細書において企図されるゲノム編集された細胞を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0617】
一実施形態において、それを必要とする対象における、ヘモグロビン異常症、癌、GVHD、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、または免疫不全を治療する方法は、有効量、例えば、治療有効量の、本明細書において企図されるゲノム編集された細胞を含む組成物を投与することを含む。投与の量および頻度は、患者の病態、ならびに患者の疾患の種類および重症度などの因子によって決定されるが、適切な投薬量は、臨床治験によって決定され得る。
【0618】
例示的な一実施形態において、対象に提供される有効量のゲノム編集された細胞は、少なくとも2×10個の細胞/kg、少なくとも3×10個の細胞/kg、少なくとも4×10個の細胞/kg、少なくとも5×10個の細胞/kg、少なくとも6×10個の細胞/kg、少なくとも7×10個の細胞/kg、少なくとも8×10個の細胞/kg、少なくとも9×10個の細胞/kg、もしくは少なくとも10×10個の細胞/kg、またはそれ以上の細胞/kg(全ての介在する細胞用量を含む)である。
【0619】
別の例示的な実施形態において、対象に提供される有効量のゲノム編集された細胞は、約2×10個の細胞/kg、約3×10個の細胞/kg、約4×10個の細胞/kg、約5×10個の細胞/kg、約6×10個の細胞/kg、約7×10個の細胞/kg、約8×10個の細胞/kg、約9×10個の細胞/kg、もしくは約10×10個の細胞/kg、またはそれ以上の細胞/kg(全ての介在する細胞用量を含む)である。
【0620】
別の例示的な実施形態において、対象に提供される有効量のゲノム編集された細胞は、約2×10個の細胞/kg~約10×10個の細胞/kg、約3×10個の細胞/kg~約10×10個の細胞/kg、約4×10個の細胞/kg~約10×10個の細胞/kg、約5×10個の細胞/kg~約10×10個の細胞/kg、2×10個の細胞/kg~約6×10個の細胞/kg、2×10個の細胞/kg~約7×10個の細胞/kg、2×10個の細胞/kg~約8×10個の細胞/kg、3×10個の細胞/kg~約6×10個の細胞/kg、3×10個の細胞/kg~約7×10個の細胞/kg、3×10個の細胞/kg~約8×10個の細胞/kg、4×10個の細胞/kg~約6×10個の細胞/kg、4×10個の細胞/kg~約7×10個の細胞/kg、4×10個の細胞/kg~約8×10個の細胞/kg、5×10個の細胞/kg~約6×10個の細胞/kg、5×10個の細胞/kg~約7×10個の細胞/kg、5×10個の細胞/kg~約8×10個の細胞/kg、または6×10個の細胞/kg~約8×10個の細胞/kg(全ての介在する細胞用量を含む)である。
【0621】
当業者であれば、所望される療法をもたらすために、特定の実施形態において企図される組成物の複数回投与が必要とされることを認識する。例えば、組成物は、1週間、2週間、3週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、1年間、2年間、5年間、または10年間のスパンにわたって、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回、またはそれ以上投与されてもよい。
【0622】
特定の実施形態において、活性化T細胞を対象に投与し、その後再採血(またはアフェレーシスを実行する)し、そこからT細胞を活性化させ、これらの活性化かつ拡大されたT細胞を患者に再注入することが望ましくあり得る。このプロセスは、数週間毎に複数回実行してもよい。特定の実施形態において、T細胞は、10cc~400ccの採血から活性化することができる。特定の実施形態において、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、100cc、150cc、200cc、250cc、300cc、350cc、もしくは400cc、またはそれ以上の採血から活性化することができる。理論によって拘束されるものではないが、この複数回採血/複数回再注入プロトコルの使用は、特定のT細胞集団を選抜するように機能し得る。
【0623】
特定の実施形態において企図される組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸血、注入、または移植を含む、任意の従来の様式で実行することができる。好ましい実施形態において、組成物は、非経口投与される。本明細書で使用される場合、「非経口投与」および「非経口投与される」という語句は、通常注射による、経腸および局所投与以外の投与方法を指し、血管内、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、腫瘍内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、および胸骨内の注射および注入を非限定的に含む。一実施形態において、本明細書において企図される組成物は、腫瘍、リンパ節、または感染部位への直接注入によって対象に投与される。
【0624】
一実施形態において、ヘモグロビン異常症と診断された対象を治療する方法は、末梢血細胞または骨髄細胞を対象から取り出すことと、該細胞のゲノムを編集し、ゲノム編集された造血幹細胞集団または前駆細胞集団を生成することと、ゲノム編集された細胞集団を同じ対象に投与することとを含む。好ましい実施形態において、免疫エフェクター細胞は、CD34細胞を含む。
【0625】
一実施形態において、癌と診断された対象を治療する方法は、免疫エフェクター細胞を対象から取り出すことと、該免疫エフェクター細胞のゲノムを編集し、ゲノム編集された免疫エフェクター細胞集団を生成することと、ゲノム編集された免疫エフェクター細胞集団を同じ対象に投与することとを含む。好ましい実施形態において、免疫エフェクター細胞は、T細胞を含む。
【0626】
特定の実施形態において企図される細胞組成物を投与するための方法には、エクスビボでゲノム編集された細胞の再導入、または対象への導入時に成熟細胞へと分化する細胞のゲノム編集された前駆体の再導入をもたらすのに効果的である任意の方法が含まれる。1つの方法は、末梢血細胞または骨髄細胞をエクスビボでゲノム編集することと、形質導入された細胞を対象に戻すこととを含む。
【0627】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許出願、および発行特許は、個々の各刊行物、特許出願、または発行特許が参照によって組み込まれることが具体的かつ個々に示されているかのごとく、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0628】
上述の実施形態は、例示および例として、理解を明確にする目的である適度詳細に記載されているものの、本明細書において企図される教示を考慮すれば、当業者には、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱せずに、それらには特定の変更および修正がなされ得ることが容易に明らかになる。以下の実施例は、限定としてではなく、例示として提供される。当業者は、変更または修正しても、本質的に類似の結果をもたらすことができる、様々な重要ではないパラメータを容易に認識する。
【実施例
【0629】
実施例1
単一AAV HDR DNAドナー修復鋳型を使用した、
2つの異なる遺伝子座への導入遺伝子の標的組み込み
プロモーター、緑色蛍光タンパク質をコードする導入遺伝子、およびポリアデニル化シグナル(配列番号1)を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)プラスミドを設計および構築した。AAV ITRエレメントの組み込みをXmaI消化で確認した。導入遺伝子カセットには、ヒトプログラム死受容体1(PD-1)に対して相同性の領域、およびT細胞受容体アルファ(TCRα)遺伝子の定常領域が隣接した。PD-1相同アームは、PD-1エクソン1内のメガTAL切断部位に隣接する300塩基対の領域を含有した。TCRα相同アームは、TCRα遺伝子の定常領域内のメガTAL切断部位に隣接する300塩基対の領域を含有した。相同アームを直列で置き、TCRα相同アームが導入遺伝子カセットのすぐ5’および3’に置かれるようにした一方で、PD-1相同体アームはTCRα相同アームのすぐ5’および3’に位置した(図3A)。例示的な導入遺伝子発現カセットは、骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、負の制御領域欠失、蛍光ポリペプチド(例えば、青色蛍光タンパク質(BFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)など)をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結したd1587revプライマー結合部位置換(MND)プロモーターを含有した。発現カセットはまた、SV40後期ポリアデニル化シグナルも含有した。
【0630】
必要な複製、カプシド、およびアデノウイルスヘルパーエレメントを提供する1つ以上のプラスミドで、HEK293T細胞を一過性に同時トランスフェクトすることによって、組換えAAV(rAAV)を調製した。イオジキサノール系勾配での超遠心分離を使用して、同時トランスフェクトしたHEK293T細胞培養物からrAAVを精製した。
【0631】
CD3およびCD28で活性化させた初代ヒトT細胞内での、メガTAL誘導性相同組換えを評価し、IL-2を補充した完全培地中で培養した。3日後、T細胞を洗浄し、PD-1遺伝子のエクソン1を標的とするメガTAL、TCRα遺伝子の定常領域を標的とするメガTAL、または両方のメガTALを同時にコードするインビトロ転写mRNAで電気穿孔した。その後、MND-GFP導入遺伝子カセットをコードするDNAドナー修復鋳型を含む、精製した組換えAAV標的化ベクターを、T細胞に形質導入した。対照には、rAAV標的化ベクター単独で治療したT細胞が含まれた。複数の時点でフローサイトメトリーを使用して、蛍光タンパク質を発現するT細胞の出現頻度を測定し、組み込まれていないrAAV標的化ベクターの蛍光タンパク質の一過性発現を区別した。CD3発現について染色することによって、メガTAL媒介性TCRα破壊を検出した一方で、配列決定、およびポリクローナルT細胞活性化後のPD-1発現の喪失によって、PD-1遺伝子の破壊を検出した。
【0632】
メガTAL(複数可)およびrAAV標的化ベクターで治療したT細胞の40~70%において、長期的な導入遺伝子発現が観察された(図3B)。対照試料は、ゲノムへの最小のランダム組み込みと一貫して、可変的なレベルの一過性蛍光タンパク質発現、および非常に低いレベル(1%未満)の長期的な蛍光タンパク質発現をもたらした。TCRα遺伝子のメガTAL媒介性破壊は、70~90%の範囲であった(図4)一方で、PD-1遺伝子座のメガTAL媒介性破壊は、60%~80%の範囲であった(図5)。各遺伝子座における切断は独立しており、PD-1を標的とするメガTALと、TCRαを標的とするメガTALとを組み合わせても、いずれかのメガTALを単独で使用したPD-1標的部位またはTCRα標的部位での切断率には、実質的な影響がなかった。同じrAAV相同性鋳型では、PD-1遺伝子座またはTCRα遺伝子座のいずれでも、類似の相同組換え率が観察された。rAAV鋳型とともに、PD-1およびTCRαメガTALで併用治療した場合、60~70%の安定したGFP発現がもたらされ、GFP発現の可変性が増加した。GFP発現の可変性の増加は、2つの異なる遺伝子位置におけるより異種な導入遺伝子組み込みパターンを示している。数人の独立したドナーから単離したT細胞に対して実行した実験において、結果を確認した。
【0633】
実施例2
単一AAV HDR DNAドナー修復鋳型を使用した、2つの異なる遺伝子座へのBCMA特異的キメラ抗原受容体の標的組み込み
プロモーター、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする導入遺伝子、およびポリアデニル化シグナル(配列番号2)を含有するアデノ随伴ウイルス(AAV)プラスミドを設計、構築、および検証した。CAR発現カセットは、CD8α由来シグナルペプチドを含むCARに操作可能に連結したMNDプロモーターと、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とする一本鎖可変断片(scFV)と、CD8α由来のヒンジ領域および膜貫通ドメインと、細胞内4-1BB共刺激ドメインと、CD3ゼータシグナル伝達ドメインとを含有した。相同アームを直列で置き、TCRα相同アームが導入遺伝子カセットのすぐ5’および3’に置かれるようにした一方で、PD-1相同体アームはTCRα相同アームのすぐ5’および3’に位置した(図6A)。
【0634】
実施例1に記載のように、初代ヒトT細胞をCD3およびCD28で活性化した。抗BCMA CARをコードするAAVドナー修復鋳型を使用した、PD-1およびTCRα遺伝子のメガTAL誘導性相同性指向性修復を、PD-1遺伝子のエクソン1を標的とするメガTAL、TCRα遺伝子の定常領域を標的とするメガTAL、または両方のメガTALを同時にコードするインビトロ転写mRNAで電気穿孔した、活性化初代ヒトT細胞を使用して評価した。電気穿孔したT細胞に、抗BCMA CARをコードするDNAドナー修復鋳型を含む組換えAAV標的化ベクターを形質導入し、IL2の存在下、30℃で一晩培養し、その後37℃に移行させた。電気穿孔の7日(10日間の全培養)後にCAR染色を実行した。対照には、メガTAL治療またはAAV治療を単独で含有するT細胞が含まれた。PE共役BCMA-Fcで染色することによって、抗BCMA-CAR発現をフローサイトメトリーによって分析した。
【0635】
PD-1標的化メガTAL mRNA、および抗BCMA CARをコードするrAAV DNAドナー修復鋳型で治療したT細胞は、全細胞の20~30%においてCAR発現を示した一方で、TCRα標的化メガTAL、および抗BCMA CARをコードするrAAV DNAドナー修復鋳型で治療した細胞は、全細胞の30~50%においてCAR発現を示した。PD-1およびTCRαメガTALの両方で併用治療した場合、40~55%の細胞において抗BCMA CAR発現がもたらされた(図6B)。PD-1およびTCRα標的化メガTALの両方で治療した細胞では、CAR発現のより大きな変動が観察され、これは、2つの異なる遺伝子位置におけるより異種な導入遺伝子組み込みパターンを示している。未治療のT細胞と、AAVで治療したT細胞と、メガTAL/rAAV抗BCMA CARで治療したT細胞との間では、類似のT細胞拡大率および類似のT細胞表現型が観察された。
【0636】
一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を、本明細書および特許請求の範囲に開示される特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではないが、そのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲とともに全ての可能性のある実施形態を含むものと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によっては限定されない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
【配列表】
0007236398000001.app