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特許7236438ケーブルカーキャビンの支持要素用の隅結合
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  • 特許-ケーブルカーキャビンの支持要素用の隅結合 図1
  • 特許-ケーブルカーキャビンの支持要素用の隅結合 図2
  • 特許-ケーブルカーキャビンの支持要素用の隅結合 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ケーブルカーキャビンの支持要素用の隅結合
(51)【国際特許分類】
   B61B 12/02 20060101AFI20230302BHJP
   F16B 11/00 20060101ALI20230302BHJP
   F16B 7/20 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B61B12/02 C
F16B11/00 C
F16B7/20 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020513679
(86)(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2018073892
(87)【国際公開番号】W WO2019048494
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】01108/17
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】521463229
【氏名又は名称】ロープトランス アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フックス、クリストフ
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特表昭60-501301(JP,A)
【文献】特開2006-021756(JP,A)
【文献】特開2002-057477(JP,A)
【文献】特開2016-183538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/00-15/00
F16B 7/00- 7/22
F16B 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルカーキャビンの支持要素間の隅結合であって、前記隅結合は、中空端(2)を有する細長い骨組部材である支持要素(1)を有し、また前記隅結合は、形状接合で前記支持要素(1)の前記中空端(2)に挿入され得る短(4)を有する曲がった接続要素(3)を有し、
前記中空端(2)の内形及び前記短(4)の外形が、角張った形状であり、前記接続要素(3)が中空形状であり、前記接続要素(3)の前記短(4)が、3つの外面(9、9’、9’’)を有するU形状(7、8、7’)であり、前記短管(4)及び前記中空端(2)の少なくとも2つの対向する面(9及び10、9’及び10’)が、前記中空端(2)の口部から長手方向に前記中空端(2)の内面(10、10’)と前記短(4)の外面(9、9’)との間に隙間(14、14’)を残すように形状接合で設けられ、また前記隙間(14、14’)内に接着物質が設けられることを特徴とする、隅結合。
【請求項2】
前記中空端(2)又は前記短(4)の少なくとも1つの面が、少なくとも1つの隙間(14、14’、14’’)に通じているとともに接着物質を導き入れるために使用される穴を有することを特徴とする、請求項1に記載の隅結合。
【請求項3】
前記短(4)の前記外形及び前記中空端(2)の前記内形が四角形状に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の隅結合。
【請求項4】
前記接続要素(3)が一方の末端に前記短(4)を有し、他方の末端に支持要素又は接続部材(5)を形成し、且つ/又は複数の末端に短を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の隅結合。
【請求項5】
前記中空端(2)の前記内面(10、10’、10’’)及び前記短(4)の前記外面(9、9’、9’’)が接着面を形成し、前記接着面が少なくとも50,000mmの表面積を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の隅結合。
【請求項6】
前記U形状の短(4)の前記3つの外面(9、9’、9’’)が接着面として使用されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の隅結合。
【請求項7】
U形状の短(4)のU脚(7、7’)の間に位置する穴(15)が、U底(8)内に接着物質を導くために設けられていることを特徴とする、請求項6に記載の隅結合。
【請求項8】
前記中空端(2)が内側の長手面(11)を有し、その長手領域にそれぞれ窪み(12、12’)が延び、前記窪みは、前記短(4)の縁が前記窪み(12、12’)内にあることで前記短(4)が中心を合わせて前記中空端(2)内に配置されるように寸法決めされていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の隅結合。
【請求項9】
前記窪み(12、12’)が前記中空端(2)の前記内面(10、10’)から離れており、前記U形状の短(4)がU脚(7、7’)を有し、前記U脚(7、7’)の末端が前記中空端(2)の前記窪み(12、12’)内にあるようになっていることを特徴とする、請求項8に記載の隅結合。
【請求項10】
請求項1に記載の隅結合を有するケーブルカーキャビン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念によるケーブルカーキャビンの支持要素用の隅結合、特に極寒又は極暑下で使用されるケーブルカーキャビン用の隅結合に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば瑞国特許第626842号明細書で記載されているようなケーブルカーキャビンは、ウィンタースポーツ分野における極度の寒さから太陽光照射下の高熱までの極端な天候条件に耐えなければならない。ケーブルカーキャビンの支持要素は、多くの場合キャビンの外面にあり、それ故に特にこれらの条件に曝されている。さらにキャビンは高い疲労負荷のもとに置かれている。同時にキャビンはキャビンの支持フレームを形成し、従って少なくとも30年の寿命のような高い安全要求のもとに置かれている。
【0003】
ケーブルカーキャビンの支持要素を確実に結合させるために、隅を介して支持要素を相互に結合させるとともに安定した支持フレームに配慮しているという隅結合部材が知られている。一般に、曲げて形成された隅結合部材はその末端でそれぞれ支持要素に押し込められ、次にこの支持要素とねじ留めされる、リベット留めされる又は溶接される。
【0004】
さらに欧州特許第1619099A2号明細書から、互いに対して曲げられた短管を有し、各々の短管が形状接合で支持要素の末端に押し込められる、隅結合部品が知られている。短の外径は円錐状に形成されており、押し込みの後に短を支持要素内に確実に保持する圧着結合が短と支持要素との間に生じるように支持要素の内径と合致する。ねじ又はリベットのような追加の固定要素は必要とされない。
【0005】
さらに欧州特許1619099A2号明細書から、短が円筒形であり、その外径が支持要素の内径よりも僅かに小さく、その支持要素に短が嵌め込まれることが知られている。この異なる形態において短は、僅かに小さな直径の末端部分の後にさらに小さな直径のくびれを有する。そのくびれの領域は支持要素と短の組み付け後に弾性接着剤で充填され得る。接着剤を入れるために支持要素又は短は開口を有する場合があり、その開口を通じて支持要素の内径とくびれの外径との間の中間空間に接着剤が注入される。続いて開口部をねじで閉じる。そのような結合を作り出すことは数多くの作業工程を必要とし、それ故に高価であり、費用が嵩む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】瑞国特許626842明細書
【文献】欧州特許1619099A2明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の課題は、容易に且つ迅速に作製可能であり、極端な条件に耐えるとともにケーブルカーキャビンの確実な構築を保証する、ケーブルカーキャビン用の隅結合を作り出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は本発明によれば請求項1による隅結合及び請求項13によるケーブルカーキャビンにより解決される。本発明の有利な形態及び様々な実施形態は従属請求項から明らかになる。
【0009】
本発明によるケーブルカーキャビンの支持要素間の隅結合は、例えば細長い骨組部材の形の少なくとも1つの支持要素と短を有する曲がった接続要素とを有する。支持要素は少なくとも末端で中空端を有する管状に形成されている。接続要素の短は形状接合で支持要素の中空端に挿入され得る。中空端及び短は従って形状接合式の差込結合を成す。本発明によれば中空端の内形と短の外形は角張って形成されている。少なくとも2つの対向する短及び中空端の面は、形状接合で中空端の内面と短の外面との間に隙間が残るように設けられている。好ましくは3つの対向する短及び中空端の面がそのような隙間を形成する。中空端の内面と短の外面は、形状接合の全ての側面で互いに接触している必要はない。隙間では、対向する中空端及び短の側面の間に接着物質が設けられている。従って中空端の内面及び短の外面は隅結合の接着面を形成し、支持要素と接続要素を少なくとも対向する周囲側面で互いに対して固く接着する。好ましくは、対向する中空端及び短の内面若しくは外面にある2つの隙間が設けられている。
【0010】
好ましくは少なくとも1つの中空端又は短の面は、少なくとも1つの隙間に通じているとともに接着物質を導き入れる役割をする、穴を有する。その少なくとも1つの穴を通じて接着物質を隙間に容易に入れることができる、好ましくは注入することができる。好ましくは単一の穴が設けられている。その穴を介して隙間が対称に接着物質で充填される。接着物質は支持要素内への接続要素の確実な固定をもたらし、その固定は、適切な接着物質を選択することでカーブルカーキャビンに関する所定の要求に整合し得る。
【0011】
の外面での少なくとも1つの穴の代わりに、中空端の末端領域から短と中空端との間の隙間に到達可能であってもよく、その隙間を接着物質で充填することができる。
【0012】
本発明による隅結合の実施形態によれば短の外形及び中空端の内形は四角に形成されている。好ましくは中空端及び短の断面は台形状に形成されている。有利には台形の少なくとも3つの側に接着面が設けられている。そのような中空端及び短の輪郭は支持要素と接続要素との間の優れた位置決めを与え、回転止めとしての役割をし得る。
【0013】
接続要素は一方の末端に短を有する。他方の末端では接続要素は支持要素として形成されてもよい。代わりにその他方の末端は同様に、別の支持要素を接続するための短を形成し得る。接続要素は3つ又は4つの末端も有し得る。その際、それらの末端はそれぞれ、支持要素として又は短として設けられてもよい。
【0014】
接続要素は短と短に対向する末端との間に、例えば0~135°、好ましくは30°~90°の角度を有する。さらに支持要素の中空端及び接続要素の短は、短が中空端に挿入されている時、有利には50mmの、好ましくは少なくとも100mmの長さにわたり重なり合う。接着面を形成する中空端の内面及び短の外面は、例えば少なくとも10’000mm、好ましくは、少なくとも20’000mmの面を成す。これらの寸法決めをもって、支持要素と接続要素との確実な固定が与えられている。
【0015】
隅結合の好ましい実施形態では接続要素及び支持要素が中空状に形成されている。従ってケーブルカーキャビンの支持構造を通じて導電線を誘導することができる。
【0016】
有利には短はU形状に形成され、従って1つの側面で開いている。その開いた側面を通じて、例えばケーブル又は他の導線を入れるために接続要素の内部に容易に到達し得る。有利には、穴を通じて隙間に接着物質を入れるための導入穴が、U形の短(4)のU脚(7、7’)の間に配置されているU底に与えられている。従ってこの実施形態では、中空端の開口端と中空端・短間の導入穴とを通じて接着物質を入れることができるので、中空端の外側に穴を設ける必要はない。
【0017】
本発明による隅結合の有利な実施例において、その中空端は内部の長手面を有し、その外側の長手領域にそれぞれ窪みが通っている。窪みは、短の縁が窪み内にあることになり、短が中心を合わせて中空端内に配置されているように寸法決めされている。従って対向する中空端の内面と短の外面との間に2つの対称な隙間が残る。好ましくは内側の長手面の窪みは、接着面を成す中空端の隣接する内面に対して離れている。U形の短のU脚の外面はこの実施形態において接続要素の接着面を成しており、U脚の末端は中空端の窪み内にあることになる。窪み内でのより良い滑りと心合わせとを可能にするために、U脚の末端を斜めに切ってもよい。
【0018】
ケーブルを容易にU脚の間へ入れることができ、短と共に中空端に挿入することができる。これは最初の組立ての際に可能であるばかりでなく、稼働中のケーブルカーでの整備作業時のようにいつでも行うことができる。U脚の末端は窪みに沿って支持要素に挿入される。その際、短のU底は、窪みを有する面の向かいにある中空端の面に隣接している。挿入状態において接続要素の短は中心を合わせて支持要素の中空端内に据えられているので、対向する側面では接続要素と支持要素との間に隙間が残る。ここで支持要素と接続要素とを互いに対して固く結合するために、例えば注入により接着剤を隙間に入れることができる。
【0019】
本発明はさらに、上述の隅結合を用いたケーブルカーキャビンを含む。
【0020】
本発明を以下に図に基づいて示す。それらの図は単に説明のために用いられ、限定するものと解釈されるべきではない。図面で開示される本発明の特徴は、本発明の開示内容に属するものとみなされるべきである。図面において以下を示す:
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による隅結合の3次元の、部分的に透明な図である。
図2図1による隅結合の断面である。
図3】本発明による隅結合を用いたケーブルカーキャビンのフレームである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明に従ってケーブルカーキャビンの支持要素間に使用されるような隅結合を示す。隅結合は、中空端2を有する支持要素1と短4を有する曲がった接続要素3とを含む。接続要素3は短4の向かいにあるその末端に、ケーブルカーキャビンの屋根フレーム16と結合され得る接続部材5を有する。短4及び接続部材5は角度領域6を介して互いに対して結合されている。角度領域6は、支持要素1及び接続要素3の隅結合の角度を定める。本発明による隅結合の他の異なる態様では、接続部材5の代わりに支持要素骨組部材又は別の短4が接続要素3に設けられてもよい。短4の面には接着物質を入れるための穴15が設けられている。
【0023】
図2には、接続要素3の短4が嵌め込まれた支持要素1の中空端2の断面が示されている。短4は形状接合で中空端2に挿入され得る。これから、中空端2の内形及び短4の外形が角張って、つまり等辺台形の四角状に形成されていることが明らかになる。基本的に他の角張った成形も可能である。
【0024】
さらに、接続要素3がU形状に形成されており、そのU脚7及び7’とU底8との間で中空であることがわかる。U底8に対向する側面で短4は開いている。それを通じて接続要素3の内部空間に到達可能である。U脚7及び7’は、2つの対向する外面9及び9’を形成し、U底8は、面9及び9’と繋がっている外面9’’を形成する。U底8は接着物質を導き入れるための穴15を有する(図2では示されていない)。
【0025】
中空端2は、台形の脚を形成する2つの対向する内面10及び10’を有する。長手方向に通っている中空端2の基面11は、その外側の長手領域にそれぞれ窪み12及び12’を有し、それらの窪みは実質的に基面11内の溝として形成されている。窪み12及び12’は、隣接する内面10及び10’から離れて配置されている。基面11の向かい側には、基面11に対して実質的に平行に走っている内面10’’を有する面13が通っているので、内面10、10’及び10’’並びに基面11は、周囲で閉じた中空端2を形成する。しかしながらその末端では中空端2が開いているので、接続要素3を押し込むことができる。
【0026】
3の外面9、9’及び9’’は、形状接合で中空端2の内面10、10’若しくは10’’と短4の外面9、9’若しくは9’’との間にそれぞれ支持要素1の末端から到達可能な隙間14、14’若しくは14’’が残るように設けられている。隙間内には、支持要素1及び接続要素3を互いに対して強く結合する接着物質が設けられている。外面9、9’及び9’’並びに内面10、10’、10’’は従って隅結合の接着面を成す。接着物質として例えば1成分又は2成分の接着剤が使用され得る。接着物質は穴15を通じて入れることができ、両側で内面10、10’、10’’と外面9、9’、9’’との間の隙間14、14’、14’’に分配される。
【0027】
U脚7及び7’はそれらの末端で窪み12及び12’に突き当たっている。U底8は中空端2の対向面13の近くにあることになる。窪み12及び12’並びにこれらの窪みの向かい側に配置される面13は、中空端2の内部に短4用の誘導部を形成する。短4はその誘導部を通じて、隙間14及び14’が少なくともほぼ同じ幅であるように中心を合わせて中空端2内に据えられる。
【0028】
接続部材5の長手軸と短4の長手軸との間の角度はこの実施形態において約60°になる。しかしながら基本的に他の角度が設定されてもよい。接着面は短4の全長にわたり且つ内面10、10’及び10’’の幅にわたり延びている。
【0029】
図3では、8つの隅で本発明による隅結合が使用される、ケーブルカーキャビンのフレームが示されている。支持要素1は接続要素3を介して屋根フレーム16と結合される。同様に底フレーム17は支持要素1と結合される。
【0030】
本発明による隅結合により、ケーブルカーキャビンのフレームの支持要素を互いに対して又はキャビンの他の要素と迅速に固定することができる。相互に嵌合する支持要素と接続要素の成形によって支持要素と接続要素の互いに対する確実な整列が確保され、それらの要素の互いに対する回転が抑止される。接着物質を隙間に迅速に且つ効率良く入れることができる。隅結合の3つの側面での接着により確実な固定が可能になることが示された。
【符号の説明】
【0031】
1 支持要素
2 中空端
3 接続要素
4 短
5 接続部材
6 角度領域
7、7’ U脚
8 U底
9、9’、9’’ 外面
10、10’、10’’ 内面
11 基面
12、12’ 窪み
13 面
14、14’、14’’ 隙間
15 穴
16 屋根フレーム
17 底フレーム
図1
図2
図3