(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】極低温流体移送システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
F17C 5/02 20060101AFI20230302BHJP
F17C 13/02 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
F17C5/02 Z
F17C13/02 301Z
(21)【出願番号】P 2020546449
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(86)【国際出願番号】 US2019020908
(87)【国際公開番号】W WO2019173445
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-08-31
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519209819
【氏名又は名称】チャート・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】グスタフソン,エリック
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0027136(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0148754(US,A1)
【文献】特開平08-200596(JP,A)
【文献】特開2014-114955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 5/02
F17C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.分配タンクヘッドスペースを有する分配タンクであって、極低温液体の備蓄の上方に前記分配タンクヘッドスペースを位置させるような形で前記極低温液体の備蓄を保存するように構成される、分配タンクと、
b.受け取りタンクヘッドスペースを有する受け取りタンクと、
c.入口および出口を有する圧縮機と、
d.前記受け取りタンクヘッドスペースおよび前記圧縮機入口に流体連通される圧縮機入口ラインと、
e.前記圧縮機出口および前記分配タン
クヘッドスペースに流体連通される圧縮機出口ラインと、
f.前記分配タンクおよび前記受け取りタンクに流体連通される液体移送ラインであって、前記受け取りタン
クヘッドスペースから前記分配タン
クヘッドスペースに蒸気を移送して前記分配タンクと前記受け取りタンクとの間に圧力差を生じさせるように前記圧縮機が起動されると、前記分配タンクから前記受け取りタンクに極低温液体を移送するように構成される、液体移送ラインと、
g.前記分配タンクおよび前記受け取りタンクの圧力を均一化するために、前記分配タンクヘッドスペースおよび前記受け取りタンクヘッドスペースに選択的に流体連通される圧縮機バイパスラインと、
を備える極低温流体移送システム。
【請求項2】
前記受け取りタン
クヘッドスペースに流体連通される入口および前記圧縮機の前記入口に流体連通される出口を有する熱交換機をさらに備え、前記熱交換機は、前記受け取りタン
クヘッドスペースからの蒸気が、前記圧縮機の前記入口まで移動する前に前記熱交換機の中で温められるように構成される、請求項1に記載の移送システム。
【請求項3】
前記熱交換機は、周囲空気熱交換機である、請求項2に記載の移送システム。
【請求項4】
a.分配タンクヘッドスペースを有する分配タンクであって、極低温液体の備蓄の上方に前記分配タンクヘッドスペースを位置させるような形で前記極低温液体の備蓄を保存するように構成される、分配タンクと、
b.受け取りタンクヘッドスペースを有する受け取りタンクと、
c.入口および出口を有する圧縮機と、
d.前記受け取りタンクヘッドスペースおよび前記圧縮機入口に流体連通される圧縮機入口ラインと、
e.前記圧縮機出口および前記分配タンクヘッドスペースに流体連通される圧縮機出口ラインと、
f.前記分配タンクおよび前記受け取りタンクに流体連通される液体移送ラインであって、前記受け取りタンクヘッドスペースから前記分配タンクヘッドスペースに蒸気を移送して前記分配タンクと前記受け取りタンクとの間に圧力差を生じさせるように前記圧縮機が起動されると、前記分配タンクから前記受け取りタンクに極低温液体を移送するように構成される、液体移送ラインと、
g.
前記受け取りタンクヘッドスペースからの蒸気が、前記圧縮機の前記入口まで移動する前に前記熱交換機の中で温められるように構成される熱交換機と、
を備え、
前記熱交換機は、互いに熱交換関係にある第1の通路および第2の通路を有し、前記第2の通路は、前記受け取りタン
クヘッドスペースに流体連通される入口、および前記圧縮機の前記入口に流体連通される出口を有し、前記第1の通路は、前記圧縮機の前記出口に流体連通される入口、および前記分配タン
クヘッドスペースに流体連通される出口を有し、前記熱交換機は、前記圧縮機内で圧縮によって温められる蒸気が前記熱交換機の前記第1の通路を通って移動して、前記熱交換機の前記第2の通路を通って流れる蒸気を加熱するように構成される、
極低温液体の移送システム。
【請求項5】
前記分配タンク内の液体レベルを感知するように構成されるセンサをさらに備え、前記センサは、前記分配タンク内の液体レベルが所定のレベル未満まで低下すると前記圧縮機を停止させるように構成される制御装置と通信している、請求項1に記載の移送システム。
【請求項6】
前記受け取りタンク内の液体レベルを感知するように構成されるセンサをさらに備え、前記センサは、前記受け取りタンク内の液体レベルが所定のレベルを超えると前記圧縮機を停止させるように構成される制御装置と通信している、請求項1に記載の移送システム。
【請求項7】
前記分配タンクおよび前記受け取りタンクの圧力を均一化するために、前記分配タン
クヘッドスペースおよび前記受け取りタン
クヘッドスペースに選択的に流体連通される圧縮機バイパスラインをさらに備える、請求項
4に記載の移送システム。
【請求項8】
a.分配タンクヘッドスペースを有する分配タンクであって、極低温液体の備蓄の上方に前記分配タンクヘッドスペースを位置させるような形で前記極低温液体の備蓄を保存するように構成される、分配タンクと、
b.受け取りタンクヘッドスペースを有する受け取りタンクと、
c.入口および出口を有する圧縮機と、
d.前記受け取りタンクヘッドスペースおよび前記圧縮機入口に流体連通される圧縮機入口ラインと、
e.前記圧縮機出口および前記分配タンクヘッドスペースに流体連通される圧縮機出口ラインと、
f.前記分配タンクおよび前記受け取りタンクに流体連通される液体移送ラインであって、前記受け取りタンクヘッドスペースから前記分配タンクヘッドスペースに蒸気を移送して前記分配タンクと前記受け取りタンクとの間に圧力差を生じさせるように前記圧縮機が起動されると、前記分配タンクから前記受け取りタンクに極低温液体を移送するように構成される、液体移送ラインと、
g.システム全体の圧力が所定のレベルを超えないようにするために、前記受け取りタンクの前記蒸気が前記分配タンクの液体スペースの中まで流れることを選択的に可能にする均一化ライン
と、
を備える、
極低温液体の移送システム。
【請求項9】
a.分配タンクヘッドスペースを有する分配タンクであって、極低温液体の備蓄の上方に前記分配タンクヘッドスペースを位置させるような形で前記極低温液体の備蓄を保存するように構成される、分配タンクと、
b.受け取りタンクヘッドスペースを有する受け取りタンクと、
c.入口および出口を有する圧縮機と、
d.前記受け取りタンクヘッドスペースおよび前記圧縮機入口に流体連通される圧縮機入口ラインと、
e.圧縮機出口ラインであって、前記圧縮機出口および前記分配タン
クヘッドスペースに流体連通され、その結果、前記圧縮機が起動されると、前記受け取りタン
クヘッドスペースからの蒸気が前記分配タン
クヘッドスペースまで流れ、それにより前記分配タンクと前記受け取りタンクとの間に圧力差を生じさせる、圧縮機出口ラインと、
f.前記分配タンクおよび前記受け取りタンクに流体連通され、前記分配タンクと前記受け取りタンクとの間の圧力差により前記分配タンクから前記受け取りタンクに極低温液体を移送するように構成される、液体移送ラインと
、
g.前記分配タンクおよび前記受け取りタンクの圧力を均一化するために、前記分配タンクヘッドスペースおよび前記受け取りタンクヘッドスペースに選択的に流体連通される圧縮機バイパスラインと、
を備える、極低温流体移送システム。
【請求項10】
前記受け取りタン
クヘッドスペースに流体連通される入口および前記圧縮機の前記入口に流体連通される出口を有する熱交換機をさらに備え、前記熱交換機は、前記受け取りタン
クヘッドスペースからの蒸気が、前記圧縮機の前記入口まで移動する前に前記熱交換機の中で温められるように構成される、請求項9に記載の移送システム。
【請求項11】
前記熱交換機は、周囲空気熱交換機である、請求項10に記載の移送システム。
【請求項12】
a.分配タンクヘッドスペースを有する分配タンクであって、極低温液体の備蓄の上方に前記分配タンクヘッドスペースを位置させるような形で前記極低温液体の備蓄を保存するように構成される、分配タンクと、
b.受け取りタンクヘッドスペースを有する受け取りタンクと、
c.入口および出口を有する圧縮機と、
d.前記受け取りタンクヘッドスペースおよび前記圧縮機入口に流体連通される圧縮機入口ラインと、
e.前記圧縮機出口および前記分配タンクヘッドスペースに流体連通される圧縮機出口ラインであり、前記圧縮機が起動されると、前記受け取りタンクヘッドスペースからの蒸気が前記分配タンクヘッドスペースに流れて、前記分配タンクと前記受け取りタンクとの間に圧力差を生じさせるようになっている、前記圧縮機出口ラインと、
f.前記分配タンクおよび前記受け取りタンクに流体連通される液体移送ラインであって、前記分配タンクと前記受け取りタンクとの間の圧力差により前記分配タンクから前記受け取りタンクへ極低温液体を移送するように構成される、前記液体移送ラインと、
g.前記受け取りタンクヘッドスペースからの蒸気が、前記圧縮機の前記入口まで移動する前に熱交換機の中で温められるように構成される熱交換機であって、前記熱交換機は、互いに熱交換関係にある第1の通路および第2の通路を有し、前記第2の通路は、前記受け取りタン
クヘッドスペースに流体連通される入口、および前記圧縮機の前記入口に流体連通される出口を有し、前記第1の通路は、前記圧縮機の前記出口に流体連通される入口、および前記分配タン
クヘッドスペースに流体連通される出口を有し、前記熱交換機は、前記圧縮機内で圧縮によって温められる蒸気が前記熱交換機の前記第1の通路を通って移動して、前記熱交換機の前記第2の通路を通って流れる蒸気を加熱するように構成される、
極低温液体の移送システム。
【請求項13】
前記分配タンク内の液体レベルを感知するように構成されるセンサをさらに備え、前記センサは、前記分配タンク内の液体レベルが所定のレベル未満まで低下すると前記圧縮機を停止させるように構成される制御装置と通信している、請求項9に記載の移送システム。
【請求項14】
前記受け取りタンク内の液体レベルを感知するように構成されるセンサをさらに備え、前記センサは、前記受け取りタンク内の液体レベルが所定のレベルを超えると前記圧縮機を停止させるように構成される制御装置と通信している、請求項9に記載の移送システム。
【請求項15】
前記分配タンクおよび前記受け取りタンクの圧力を均一化するために、前記分配タン
クヘッドスペースおよび前記受け取りタン
クヘッドスペースに選択的に流体連通される圧縮機バイパスラインをさらに備える、請求項
12に記載の移送システム。
【請求項16】
a.分配タンクヘッドスペースを有する分配タンクであって、極低温液体の備蓄の上方に前記分配タンクヘッドスペースを位置させるような形で前記極低温液体の備蓄を保存するように構成される、分配タンクと、
b.受け取りタンクヘッドスペースを有する受け取りタンクと、
c.入口および出口を有する圧縮機と、
d.前記受け取りタンクヘッドスペースおよび前記圧縮機入口に流体連通される圧縮機入口ラインと、
e.前記圧縮機出口および前記分配タンクヘッドスペースに流体連通される圧縮機出口ラインであり、前記圧縮機が起動されると、前記受け取りタンクヘッドスペースからの蒸気が前記分配タンクヘッドスペースに流れて、前記分配タンクと前記受け取りタンクとの間に圧力差を生じさせるようになっている、前記圧縮機出口ラインと、
f.前記分配タンクおよび前記受け取りタンクに流体連通される液体移送ラインであって、前記分配タンクと前記受け取りタンクとの間の圧力差により前記分配タンクから前記受け取りタンクへ極低温液体を移送するように構成される、前記液体移送ラインと、
g.システム全体の圧力が所定のレベルを超えないようにするために、前記受け取りタンクの前記蒸気が前記分配タンクの液体スペースの中まで流れることを可能にする均一化ライン
と
を備える、
極低温流体移送システム。
【請求項17】
前記受け取りタンクヘッドスペースに流体連通される入口および前記圧縮機の前記入口に流体連通される出口を有する熱交換機をさらに備え、前記熱交換機は、前記受け取りタンクヘッドスペースからの蒸気が、前記圧縮機の前記入口まで移動する前に前記熱交換機の中で温められるように構成される、請求項8に記載の極低温液体の移送システム。
【請求項18】
前記分配タンクおよび前記受け取りタンクの圧力を均一化するために、前記分配タンクヘッドスペースおよび前記受け取りタンクヘッドスペースに選択的に流体連通される圧縮機バイパスラインを更に備える、請求項8に記載の極低温液体の移送システム。
【請求項19】
前記分配タンク内の液体レベルを感知するように構成されるセンサをさらに備え、前記センサは、前記分配タンク内の液体レベルが所定のレベル未満まで低下すると前記圧縮機を停止させるように構成される制御装置と通信している、請求項8に記載の極低温液体の移送システム。
【請求項20】
前記受け取りタンク内の液体レベルを感知するように構成されるセンサをさらに備え、前記センサは、前記受け取りタンク内の液体レベルが所定のレベルを超えると前記圧縮機を停止させるように構成される制御装置と通信している、請求項8に記載の極低温液体の移送システム。
【請求項21】
システム全体の圧力が所定のレベルを超えないようにするために、前記受け取りタンクの前記蒸気が前記分配タンクの液体スペースの中まで流れることを選択的に可能にする均一化ラインをさらに備える、請求項4に記載の極低温液体の移送システム。
【請求項22】
前記分配タンク内の液体レベルを感知するように構成されるセンサをさらに備え、前記センサは、前記分配タンク内の液体レベルが所定のレベル未満まで低下すると前記圧縮機を停止させるように構成される制御装置と通信している、請求項4に記載の極低温液体の移送システム。
【請求項23】
前記受け取りタンク内の液体レベルを感知するように構成されるセンサをさらに備え、前記センサは、前記受け取りタンク内の液体レベルが所定のレベルを超えると前記圧縮機を停止させるように構成される制御装置と通信している、請求項4に記載の極低温液体の移送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
[0001]本出願は、2018年3月6日に出願された米国仮特許出願第62/639,311号の利益および優先権を主張するものであり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本開示は、概して、極低温流体移送システムに関し、より詳細には、圧縮機を組み込む、無損失または準無損失の閉ループ極低温流体移送システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0001]極低温流体は通常は圧力容器の中に保存されるものであり、したがって、容器が加熱されると、容器の中にある、温められて一部蒸発した極低温流体が、製品の損失なしに、容器を加圧する。しかし、極低温流体のすべてまたは一部を1つの圧力容器から別の圧力容器に移送することが所望されるような状況および用途が存在する。この例には、大型の極低温タンクから可搬の極低温シリンダに対して充填を行うこと、燃料補給所の大型のタンクから車両設置式の液化天然ガス(LNG)燃料タンクに対して充填を行うこと、または第1のシリンダの修理を実施するために流体を第1のシリンダから第2のシリンダに移送すること、が含まれる。
【0004】
[0002]様々な従来技術の方法が、極低温流体を1つの容器から別の容器に移送するために広く使用されている。移送される流体が比較的安価である場合(液体窒素など)、移送は、通常、「通気充填(vent fill)」方法によって実施され、単一のホースで分配タンクの液相を受け取りタンクに接続する。受け取りタンクの通気口が大気に対して開いている場合、分配タンクのヘッドスペース内の蒸気圧力が液相を分配タンクから「押し出す」ことで、液体が分配タンクから受け取りタンクに移送され得る。しかし、この移送には本質的な損失が生じる。その理由は、受け取りタンクが、分配タンクの圧力より低い圧力を維持するために蒸気を放出しなければならないからである。充填を達成するのを可能にする最低量の蒸気を自動で放出することによりこれらの移送損失を最小するための自動システムが設計されている。このようなシステムの例として、ジョージア州、ボールグラウンドのChart Industries,Inc.から入手可能であるLo-Loss Liquid Cylinder Filling Systemがある。しかし、このようなシステムおよび方法は、物理法則で許容される最小値となるように損失を最小にすることしかできず、それでも通常は約5%の損失を被る。
【0005】
[0003]より高価な流体(液体アルゴンまたはLNGなど)は、低損失または無損失の移送を実施するためのより高機能な(および高価な)解決策を必要とする。最も単純な解決策は、分配タンクにより、通気なしで受け取りタンクに対して充填を行うのに十分なヘッド圧力を発生させて維持することである。これは、当業者によく知られている標準的な圧力発生回路を用いて行われ得るが、これには、限定しないが、1つまたは複数の熱交換機を使用してタンクの液体側から液体を蒸発させて、得られた蒸気をタンクのヘッドスペースまで誘導するような圧力発生回路が含まれる。
【0006】
[0004]しかし、分配タンクが大型の保存タンクである場合には、大容量の高圧タンクを構成することがコスト的に不可能である可能性がある。また、一般に、受け取りタンク(しばしば、可搬のシリンダである)が大型の保存タンクより高い動作圧力を有することが分かっている。このような状況では、極低温液体ポンプが、分配タンクから受け取りタンクに液体を移送するのに使用され得るが、このポンプは非常に高価である可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0005]以下で説明されて特許請求されるデバイスおよびシステムで個別にまたはまとめて具現化され得る本発明の主題には複数の態様が存在する。これらの態様は、単独で、または本明細書で説明される主題の他の態様との組合せで、採用され得、まとめた形のこれらの態様の説明は、これらの態様の個別の使用を排除することも、個別で、もしくは本明細書に添付の特許請求の範囲に記載される異なる組合せでこれらの態様を特許請求するのを排除することも意図されていない。
【0008】
[0006]一態様では、極低温流体移送システムが、分配タンクヘッドスペースを有する分配タンクを有し、ここでは、分配タンクは、備蓄された極低温液体の上方に分配タンクヘッドスペースを位置させるような形で極低温液体の備蓄を保存するように構成される。受け取りタンクが、受け取りタンクヘッドスペースを有する。圧縮機が、入口および出口を有する。圧縮機入口ラインが、受け取りタンクヘッドスペースおよび圧縮機入口に流体連通される。圧縮機出口ラインが、圧縮機出口および分配タンクのヘッドスペースに流体連通される。液体移送ラインが、分配タンクおよび受け取りタンクに流体連通され、受け取りタンクのヘッドスペースから分配タンクのヘッドスペースに蒸気を移送して分配タンクと受け取りタンクとの間に圧力差を生じさせるように圧縮機が起動されると分配タンクから受け取りタンクに極低温液体を移送するように構成される。
【0009】
[0007]別の態様では、極低温流体移送システムが、分配タンクヘッドスペースを有する分配タンクを有し、分配タンクは、備蓄された極低温液体の上方に分配タンクヘッドスペースを位置させるような形で極低温液体の備蓄を保存するように構成される。受け取りタンクが、受け取りタンクヘッドスペースを有する。圧縮機が、入口および出口を有する。圧縮機入口ラインが、受け取りタンクヘッドスペースおよび圧縮機入口に流体連通される。圧縮機出口ラインが、圧縮機出口および分配タンクのヘッドスペースに流体連通され、その結果、圧縮機が起動されると、受け取りタンクのヘッドスペースからの蒸気が分配タンクのヘッドスペースまで流れ、それにより分配タンクと受け取り側タンクとの間に圧力差を生じさせる。液体移送ラインが、分配タンクおよび受け取りタンクに流体連通され、分配タンクと受け取りタンクとの間の圧力差により分配タンクから受け取りタンクに極低温液体を移送するように構成される。
【0010】
[0008]別の態様では、分配タンクから受け取りタンクに極低温液体を移送するための方法が、分配タンクと受け取りタンクとの間に圧力差が生じるように、受け取りタンクのヘッドスペースから蒸気を引き出して、蒸気を分配タンクのヘッドスペースに供給するステップを含む。圧力差により分配タンクから受け取りタンクまで極低温液体が移動させられるように、分配タンクの液体側が受け取り側タンクに流体連通される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】[0009]本開示の極低温流体移送システムの第1の実施形態を示す概略図である。
【
図2】[0010]本開示の極低温流体移送システムの第2の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0011]本開示の実施形態は、流体移送システムおよび方法を提供し、流体移送システムおよび方法は、圧縮機を利用して受け取りタンクから分配タンクまで蒸気を移動させ、それにより受け取りタンクの圧力を低下させかつ分配タンクの圧力を増大させ、極低温液体が別個の接続ラインを通って自由に流れることができるようにする。
【0013】
[0012]
図1は、分配タンク10から受け取りタンク12に極低温液体6を移送することができる本開示の極低温流体移送システムの第1の実施形態を示す。分配タンク10が極低温液体の上方にあるヘッドスペース7を有し、対して受け取りタンク12がヘッドスペース8を有する。本明細書で使用される場合の「ヘッドスペース」という用語はタンク10または12内の蒸気スペースと同じものを意味する。
【0014】
[0013]液体移送ライン13が、分配タンク10の液体側すなわち液体スペースを、受け取りタンク12の液体側すなわち液体スペースに接続する。分配タンクの内部および受け取りタンクの内部の一部分が、タンク内の液体レベルに応じて、蒸気スペースまたは液体スペースのいずれかであってよいことを理解されたい。
【0015】
[0014]熱交換機入口ライン14が受け取り側タンク12のヘッドスペースを熱交換機17の入口に接続する。圧縮機入口ライン15bが熱交換機17の出口と圧縮機16の入口との間に延在し、対して圧縮機出口ライン15aが圧縮機16の出口と分配タンク10のヘッドスペースとの間に延在する。
【0016】
[0015]
図1の移送システムが如何にして動作するかは以下のように説明される。
[0016]タンク10および12が等しい圧力で開始され、少なくとも、分配タンク10が備蓄された極低温液体6を含んでおり、圧縮機16が電源を入れられる。圧縮機16が、ライン14を通して受け取りタンク12のヘッドスペース8から蒸気を引き入れて蒸気を熱交換機17の中で温めることにより、2つのタンク10および12の間に圧力差を生じさせる。矢印18によって示されるように、圧縮機16が、ライン15bを介して、温められた蒸気を受け取り、温められた蒸気をライン15aを介して分配タンク10のヘッドスペース7まで押し込む。タンク10および12の間で得られる圧力差が、矢印19によって示されるように、極低温液体6を分配タンク10から液体ライン13を介して受け取りタンク12まで流す。この移送は、圧縮機16の電源を切るかまたは分配タンク10からすべての液体が取り出されるまで、行われる。
【0017】
[0017]
図1のシステムが、任意選択で、フィードバック制御装置を装備することができ、その結果、圧縮機16の動作が自動化され得る。単に1つの例として、液体レベルセンサが分配タンク10のために提供されてよく、制御装置に接続されていてよく、この制御装置は、分配タンク10内の液体レベルが所定のレベル未満まで低下すると圧縮機16を停止させるように構成されている。別の例として、受け取りタンク12が、制御装置に接続される液体レベルセンサを装備することができ、ここでは、制御装置が、受け取りタンク内の液体レベルが所定のレベルを超えて上昇すると圧縮機16を停止させるように構成される。当技分野で既知の他の種類のセンサおよびフィードバック構成が別法として採用されてもよい。
【0018】
[0018]極低温蒸気を取り扱うことができる圧縮機16が使用される場合に
図1の熱交換機17が省略され得ることに留意されたい。しかし、低温の蒸気が温かい蒸気より高い密度を有することを理由として、このような実施形態では移送速度が低下する。さらに、
図1では周囲空気熱交換機が示されているが、当技術分野で既知の代替の種類の熱交換機が
図1のシステムで使用されてもよい。使用され得る熱交換機の種類の例には、限定しないが、電気熱交換機、シェル・チューブ熱交換機、および/またはフラットプレート熱交換機が含まれる。
【0019】
[0019]
図2は、極低温液体21を分配タンク20から受け取りタンク22に移送することができる本開示の極低温流体移送システムの代替的実施形態を示す。分配タンク20が極低温液体の上方にあるヘッドスペース27を有し、対して受け取りタンク22がヘッドスペース29を有する。
【0020】
[0020]液体移送ライン23が、分配タンク20の液体側すなわち液体スペースを、受け取りタンク22の液体側すなわち液体スペースに接続する。分配タンクの内部および受け取りタンクの内部の一部分が、タンク内の液体レベルに応じて、蒸気スペースまたは液体スペースのいずれかであってよいことを理解されたい。
【0021】
[0021]熱交換機入口ライン24bが受け取りタンク22のヘッドスペースを熱交換機通路30bの入口に接続する。圧縮機入口ライン25bが熱交換機28の通路30bの出口と圧縮機26の入口との間に延在する。圧縮機出口ライン25aが圧縮機の出口から熱交換機28の通路30aの入口まで延びる。熱交換機出口ライン24aが熱交換機通路30aの出口から分配タンク20のヘッドスペース27まで延びる。
【0022】
[0022]
図2のシステムが、
図1の単一路式熱交換機17の代わりに、通路30aおよび30bを有する二路式熱交換機28を装備し、通路30aおよび30bが互いに熱交換関係にある。二路式熱交換機28がシステム全体に加えられる熱の量を最小にする。
図1の熱交換機17のように、圧縮機の手前の段階で、受け取りタンク22のヘッドスペース29からの蒸気を温めるのに外部熱に依存するのではなく、二路式熱交換機28は、通路30b内の入ってくる低温の蒸気を温めるのに、熱交換機通路30aを通って流れる流体中に存在する圧縮熱を使用し、入熱を節約する。これは、入熱が懸案事項であるような事例において所望される可能性がある。
【0023】
[0023]熱交換機28を除くと、
図2の移送システムは
図1の移送システムと同様に動作する。より具体的には、タンク20および22が等しい圧力で開始され、少なくとも、分配タンク20が極低温液体21の備蓄を含んでおり、圧縮機26が電源を入れられる。圧縮機26が、ライン24bを通して受け取りタンク22のヘッドスペース29から蒸気を引き入れて蒸気を熱交換機28の通路30bの中で温め、次いでライン25bを介して蒸気を受け取ることにより、2つのタンクの間に圧力差を生じさせる。次いで、矢印32によって示されるように、圧縮機が、ライン25a、熱交換機通路30a、およびライン24aを通して、分配タンク20のヘッドスペース27まで、蒸気を押す。タンク20および22の間で得られる圧力差が、矢印34によって示されるように、極低温液体21を分配タンク20から液体ライン23を介して受け取りタンク22まで流す。この移送は、圧縮機26の電源を切るかまたは分配タンク20からすべての液体が取り出されるまで、行われる。
【0024】
[0024]
図1のシステムと同様に、
図2のシステムが、任意選択で、フィードバック制御装置を装備することができ、その結果、圧縮機26の動作が自動化され得る。単に1つの例として、液体レベルセンサが分配タンク20のために提供されてよく、制御装置に接続されていてよく、この制御装置は、分配タンク20内の液体レベルが所定のレベル未満まで低下すると圧縮機26を停止させるように構成されている。別の例として、受け取りタンク22が、制御装置に接続される液体レベルセンサを装備することができ、ここでは、制御装置は、受け取りタンク内の液体レベルが所定のレベルを超えて上昇すると圧縮機26を停止させるように構成される。当技分野で既知の他の種類のセンサおよびフィードバック構成が別法として採用されてもよい。
【0025】
[0025]本開示の移送システムの追加の実施形態が、使用者便益を向上させるのを可能にするために追加的にラインを配管することおよび追加的にバルブを設置することを含んでよい。
【0026】
[0026]1つの例は、圧縮機の周りにある、
図1において40および42のところにそれぞれ示されるバルブを装備するバイパスラインである。バルブ42を開けることによりタンク10および12の圧力が均一化され得る。バイパスラインが圧縮機および熱交換機の両方を迂回すること(
図1に示されるように)ができるか、またはバイパスラインが圧縮機のみを迂回することができる(つまり、ライン15aおよび15bの間を接続する)。
【0027】
[0027]別の例として、
図2を参照すると、バルブ54を装備する均一化ライン52が、バルブ54を開けている場合に、受け取りタンクの蒸気が分配タンクの液体スペースの中まで流れることを可能にして、システム全体の圧力が所定のレベルを超えて上昇しないようにする。
【0028】
[0028]バルブ42(
図1)および54(
図2)が、任意選択で、フィードバック制御システムを使用して自動化され得、ここでは、バルブが、分配タンクおよび/または受け取りタンクの圧力を感知する制御装置によって制御される。
【0029】
[0029]これらの修正形態および他の修正形態が、分配タンクと受け取り側タンクとの間を流れる蒸気に作用する圧縮機を利用する閉ループ移送システムである本開示の一般的な概念から逸れたりまたは本開示の一般的な概念を変えたりすることなく、可能である。
【0030】
[0030]単に1つの例として、本開示のシステムは、極低温移送トレーラから大型の極低温タンクに対して充填を行うのに使用され得る。このような用途の冷寒剤の例には、限定しないが、液体水素が含まれる。別の例として、本開示のシステムが、液体水素補給ステーションにおいて液体水素燃料タンクまたは液体水素燃料車両に対して充填を行うのに使用され得る。
【0031】
[0031]本開示の好適な実施形態を示して説明してきたが、以下の特許請求によりその範囲が定義される本開示の精神から逸脱することなく、本発明において変更形態および修正形態が作られ得ることが当業者には明らかであろう。