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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】賦形シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20230302BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B29C59/04 Z
A61F13/15 352
A61F13/15 355B
A61F13/15 390
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020552609
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2019041790
(87)【国際公開番号】W WO2020085460
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2018200202
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】100114502
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 俊則
(72)【発明者】
【氏名】大和 誠明
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199543(WO,A1)
【文献】特開平06-255006(JP,A)
【文献】特開2016-087423(JP,A)
【文献】国際公開第2014/084066(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108481986(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/04
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に複数の凹部を有する第1のロールと、外周面に複数の凸部を有する第2のロールとを備え、前記第1及び第2のロールが互いに隣接して配置され同期しながら回転し、前記凹部と前記凸部とが隙間を設けて噛み合うように構成された賦形シートの製造装置を用いる、賦形シートの製造方法であって、
連続体の第1のシートを、回転している前記第1のロールの前記外周面に沿わせて搬送する第1の工程と、
前記第1のシート及び連続体の第2のシートが、前記第1のロールと前記第2のロールとの間を通過し、前記凹部と前記凸部との間に挟まれるように、前記第2のシートを前記第1のシートに重ね前記第1のシートとともに搬送する第2の工程と、
前記第1のロールと前記第2のロールとの間を通過した前記第1及び第2のシートを、互いに接合する第3の工程と、
を備え、
前記第2の工程において、前記第1のシートの張力を前記第2のシートの張力よりも小さくすることを特徴とする、賦形シートの製造方法。
【請求項2】
前記第3の工程において、前記第1のシートの、前記凸部によって前記凹部に押し込まれた部分が前記凹部に留まっている状態で、前記第1のロールに隣接して配置された接合装置を用いて、前記第1及び第2のシートを互いに接合することを特徴とする、請求項1に記載の賦形シートの製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程において、前記凹部と前記凸部とが隙間を設けて噛み合う領域で前記第2のシートが前記第1のシートに重なり始めるように、前記第2のシートを前記第1のシートに重ねることを特徴とする、請求項1又は2に記載の賦形シートの製造方法。
【請求項4】
前記第1及び第2のシートが、非伸縮性の不織布シートであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の賦形シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、賦形シートの製造方法に関し、詳しくは、互いに接合された2枚のシートの少なくとも一方のシートに隆起部が形成された賦形シートを製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに接合された2枚のシートの少なくとも一方のシートに隆起部が形成された賦形シートは、例えば、隆起部が肌に接するように、紙おむつ等の使い捨て着用物品に用いられる。このような賦形シートは、次のように製造される。
【0003】
図10は、賦形シート101の製造方法の説明図である。図10に示すように、原反ロール102'から繰り出した第1のシート102を、外周面に互いに噛み合う凹凸が形成されている一対の賦形ロール111,112の間に挟み、第1のシート102を賦形する。次いで、一方の賦形ロール111の外周面の凹凸に噛み込んでいる第1のシート102に、原反ロール103'から繰り出した第2のシート103を重ね、両シート102,103を、一方の賦形ロール111とアンビルロール114との間に挟み加熱して、両シート102,103を互いに接合する。これにより、第1のシート102に隆起部105が形成された賦形シート101を製造する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図11は、他の賦形シート250の製造方法の説明図である。図11に示すように、外周面に不図示の複数の凹部が形成されたメインロール212のまわりに、外周面に複数の凸部232,242を有する第1及び第2の賦形ロール230,240と、第1及び第2の接合ロール216,218とが配置されている賦形シートの製造装置210を用いる。まず、第1のシート252を、メインロール212の外周に沿わせて搬送し、第1の賦形ロール230の凸部232で、第1のシート252をメインロール212の凹部に押し込むことにより、第1のシート252を賦形する。次いで、第1のシート252に第2のシート254を重ね、メインロール212と第1の接合ロール216との間に挟み加熱して、両シート252,254を互いに接合する。次いで、第2の賦形ロール240の凸部242で、第2のシート254をメインロール212の凹部に押し込むことにより、第2のシート254を賦形する。次いで、両シート252,254を、メインロール212と第2の接合ロール218との間に挟み加熱して、両シート252,254の接合を強化する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4090420号公報
【文献】国際公開第2016/199543号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように互いに噛み合う凹凸で賦形する場合には、第1のシート102の張力を小さくする。
【0007】
しかしながら、第1のシート102の張力を小さくすると、第1のシート102は、一方の賦形ロール111の凹部に押し込まれた部分が、他方の賦形ロール112の凸部に引っ掛かり、凹部から外れることがある。第1のシート102が凹部から外れると、第1及び第2のシート102,103を所定の箇所で接合できないという問題が生じる。
【0008】
特許文献2のように第1及び第2のシート252,524の両方を賦形すると、第1のシート252を賦形する第1の賦形ロール230とは別に、第2のシート254を賦形する第2の賦形ロール240が必要となり、装置の構成が複雑になる。
【0009】
かかる実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、第1及び第2のシートが互いに接合された賦形シートを製造する際に第1のシートの張力を小さくしても、第1のシートを確実に賦形することができ、装置の構成が複雑化することなく第1及び第2のシートの両方を賦形することができる賦形シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した賦形シートの製造方法を提供する。
【0011】
賦形シートの製造方法は、外周面に複数の凹部を有する第1のロールと、外周面に複数の凸部を有する第2のロールとを備え、前記第1及び第2のロールが互いに隣接して配置され同期しながら回転し、前記凹部と前記凸部とが隙間を設けて噛み合うように構成された賦形シートの製造装置を用いる。賦形シートの製造方法は、(i)連続体の第1のシートを、回転している前記第1のロールの前記外周面に沿わせて搬送する第1の工程と、(ii)前記第1のシート及び連続体の第2のシートが、前記第1のロールと前記第2のロールとの間を通過し、前記凹部と前記凸部との間に挟まれるように、前記第2のシートを前記第1のシートに重ね前記第1のシートとともに搬送する第2の工程と、(iii)前記第1のロールと前記第2のロールとの間を通過した前記第1及び第2のシートを、互いに接合する第3の工程と、を備える。前記第2の工程において、前記第1のシートの張力を前記第2のシートの張力よりも小さくする。
【0012】
上記方法によれば、第1のシートは、凹部に押し込まれた部分が第2のシートで覆われ、凸部には接しないため、第1のシートの張力を第2のシートの張力よりも小さくしても、第1のシートの凹部に押し込まれた部分が凸部に引っ掛かって凹部から外れることがない。したがって、第1のシートの張力を小さくしても、第1のシートを確実に賦形することできる。
【0013】
第2のシートは、第1のロールと第2のロールとの間を通過したとき、凸部によって凹部に押し込まれた部分の一部又は全部が凹部に留まっている場合には、賦形される。この場合、第1及び第2のシートの両方を同時に賦形することができるが、第1のシートを賦形するロールとは別に、第2のシートを賦形するロールを準備する必要がない。したがって、賦形シートの製造装置の構成が複雑化することなく、第1及び第2のシートの両方を賦形することができる。
【0014】
好ましくは、前記第3の工程において、前記第1のシートの、前記凸部によって前記凹部に押し込まれた部分が前記凹部に留まっている状態で、前記第1のロールに隣接して配置された接合装置を用いて、前記第1及び第2のシートを互いに接合する。
【0015】
この場合、第1のシートは、凸部によって凹部に押し込まれた部分の周囲の所定箇所で第2のシートと確実に接合することができ、賦形シートの形状が安定する。
【0016】
好ましくは、前記第2の工程において、前記凹部と前記凸部とが隙間を設けて噛み合う領域で前記第2のシートが前記第1のシートに重なり始めるように、前記第2のシートを前記第1のシートに重ねる。
【0017】
この場合、凹部と凸部とが隙間を設けて噛み合う領域よりも搬送方向上流側において、第1及び第2のシートが互いに接していないため、第1及び第2のシートの張力を、それぞれ、独立して調整することが容易である。
【0018】
好ましくは、前記第1及び第2のシートが、非伸縮性の不織布シートである。
【0019】
この場合、使い捨て着用物品に好適な賦形シートを製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1及び第2のシートが互いに接合された賦形シートを製造する際に第1のシートの張力を小さくしても、第1のシートを確実に賦形することでき、装置の構成が複雑化することなく第1及び第2のシートの両方を賦形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は賦形シート製造装置の略図である。(実施例1)
図2図2は賦形シート製造装置の要部拡大断面図である。(実施例1)
図3図3は賦形の過程の説明図である。(実施例1)
図4図4は接合パターンを示す平面図である。(実施例1)
図5図5は接合パターンを示す平面図である。(実施例1)
図6図6は接合パターンを示す平面図である。(実施例1)
図7図7は接合パターンを示す平面図である。(実施例1)
図8図8は賦形シートの写真である。(実施例1の試作例)
図9図9は賦形シートの断面図である。(実施例1)
図10図10は賦形シートの製造方法の説明図である。(従来例1)
図11図11は賦形シートの製造方法の説明図である。(従来例2)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
<実施例1> 実施例1の賦形シートの製造方法について、図1図9を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、実施例1の賦形シートの製造方法で用いる賦形シートの製造装置10の略図である。図2は、賦形シートの製造装置10の要部拡大断面図である。図1及び図2に示すように、賦形シートの製造装置10は、互いに隣接して配置された第1及び第2のロール12,14と、第1のロール12に隣接して配置された接合装置16とを備えている。
【0025】
第1のロール12は、円筒状の外周面12sに、外周面12sから径方向内側に後退した複数の凹部12b(図2参照)を有している。第2のロール14は、円筒状の外周面14sに、外周面14sから径方向外側に突出した複数の凸部14aを有している。第1及び第2のロール12,14は、矢印12r,14rで示すように互いに逆方向に同期しながら回転し、第1のロール12の凹部12bと第2のロール14の凸部14aとは、図2に示すように、噛み合い領域13において、隙間を設けて、すなわち、互いに接することなく、噛み合うように構成されている。凹部12b及び凸部14aは、複数個所で同時に噛み合うように、第1及び第2のロール12,14の外周面12s,14sに、それぞれ互いに間隔を設けて2次元配置されることが好ましい。
【0026】
図1に示すように、第1のロール12の外周面12sに連続体の第1のシート2が巻き掛けられ、さらに、第1のシート2の上に連続体の第2のシート4が巻き掛けられ、第1及び第2のシート2,4は、第1のロール12の回転に伴って、矢印3,5で示す方向に搬送される。詳しくは後述するが、第1及び第2のシート2,4が第1のロール12と第2のロール14との間を通過するときに、少なくとも第1のシート2が賦形され、次いで、第1のロール12と接合装置16との間を通過するときに、第1及び第2のシート2,4は互いに接合される。完成した賦形シート6は、矢印7で示すように第1のロール12から分離され、後工程へと搬送され、例えば、紙おむつ等の使い捨て着用物品に用いられる。
【0027】
なお、少なくとも第1のロール12の凹部12b内が加熱されてもよく、これにより、より確実に賦形が行われる。例えば、第1のロール12の内部にヒーターを設け、凹部12bのまわりを加熱する。加熱は、第1及び第2のロール12,14の両方になされてもよい。
【0028】
図2に示すように、第1のロール12には、凹部12bの底に連通する吸引流路12c,12dと、外周面12sから径方向外側に突出するシール突起12xとが形成されている。第1のロール12の凹部12bは、吸引流路12c,12dを介して負圧源に接続される。これによって、第1のロール12の外周面12sに沿って配置された第1のシート2が吸着保持される。なお、吸引流路12c,12dやシール突起12xを無くしても構わない。
【0029】
第2のロール14の凸部14aは、例えば、先端14tが平らである角錐台状に形成されている。第2のロール14の凸部14aの形状は、角錐台状以外、例えば直方体状、円筒状などであっても構わない。
【0030】
図1には、超音波シール装置である接合装置16が、第1のロール12から退避している状態が図示されている。賦形シート6を製造するとき、第1及び第2のシート2,4は、接合装置16のホーン先端16aと第1のロール12のシール突起12xの平坦面12t(図2参照)との間に挟まれた部分が超音波接合される。接合装置16は、超音波接合以外で接合する装置、例えば、溶着装置や従来例1、2のような接合ロール等でも構わない。
【0031】
次に、賦形シートの製造装置10を用いて、賦形シート6を製造する方法について説明する。
【0032】
(1)まず、第1のシート2を、回転している第1のロール12の外周面12sに沿わせて搬送する。これは、第1の工程である。
【0033】
(2)次いで、第1及び第2のシート2,4が、第1のロール12と第2のロール14との間を通過し、第1のロール12の凹部12bと第2のロール14の凸部14aとの間に挟まれるように、第2のシート4を第1のシート2に重ね第1のシート2ともに搬送する。これは、第2の工程である。
【0034】
詳しくは後述するが、第2の工程において、第1のシート2の張力を第2のシート4の張力よりも小さくする。第1及び第2のシート2,4のうち少なくとも第1のシート2には、賦形可能なシートを用いる。第1及び第2のシート2,4は、非伸縮性の不織布であってもよいし、エアースルー不織布であってもよい。
【0035】
図1に示したように、凹部12bと凸部14aとが噛み合う領域である噛み合い領域13(図2参照)で第2のシート4が第1のシート2に重なり始めるようにすると、第1及び第2のシート2,4の張力を、それぞれ、独立して調整することが容易である。噛み合い領域13よりも搬送方向上流側において、第2のシート4を第2のロール14に巻き掛け、噛み合い領域13で第2のシート4が第1のシート2に重なり始めるようにしてもよい。
【0036】
もっとも、噛み合い領域13よりも搬送方向上流側において第2のシート4が第1のシート2に重なり始めても、賦形シート6を製造することができる場合がある。
【0037】
(3)次いで、第1のロール12と第2のロール14との間を通過した第1及び第2のシート2,4を、互いに接合する。これは、第3の工程である。
【0038】
好ましくは、第3の工程において、第1のシート2の、凸部14aによって凹部12bに押し込まれた部分が凹部12bに留まっている状態で、第1のロール12に隣接して配置された接合装置16を用いて、第1及び第2のシート2,4を互いに接合する。この場合、第1のシート2は、凸部14aによって凹部12bに押し込まれた部分の周囲の所定箇所で第2のシート4と確実に接合することができ、賦形シート6の形状が安定する。
【0039】
賦形の過程を概念的に示す説明図である図3を参照しながら、さらに説明する。
【0040】
図3(a)に示すように、第1のロール12の外周面12sに第1のシート2が巻き掛けられ、次いで、図3(b)に示すように、第1のシート2に第2のシート4が重ねられる。第1のロール12の凹部12bと第2のロール14の凸部14aとが噛み合う噛み合い領域13(図2参照)において、第1及び第2のシート2,4は、凹部12bに対向する部分2a,4aが、凹部12bに噛み合う凸部14aによって凹部12bに押し込まれる。これにより、第1及び第2のシート2,4には、凹部12bに押し込まれた部分2b,4bができる。
【0041】
このとき、第1及び第2のシート2,4は、弾性変形又は塑性変形する。凸部14aと噛み合っている凹部12bよりも搬送方向下流側(図3(b)において右側)では、第1及び第2のシート2,4は重なり合っているので相対移動が規制され、一方、凸部14aと噛み合っている凹部12bよりも搬送方向上流側(図3(b)において左側)において、第1及び第2のシート2,4は互いに全く又はほとんど拘束されない。そのため、第1及び第2のシート2,4は、凸部14aと噛み合っている凹部12bよりも搬送方向上流側が引き出されて、凹部12bに押し込まれる。
【0042】
第1のロール12が回転し、第1及び第2のシート2,4が搬送されると、凹部12bに噛み合う凸部14aは、凹部12bから次第に出て行き、凹部12bの周囲において第1及び第2のシート2,4は次第に重なり合う。
【0043】
図1及び図3(b)に示すように、凹部12bと凸部14aとの間に挟まれる直前における第1のシート2の張力をT1とし、凹部12bと凸部14aとの間に挟まれる直前における第2のシート4の張力をT2とすると、T1<T2となるように、第1及び第2のシート2,4の張力を設定する。例えば、噛み合い領域13よりも搬送方向上流側に、公知の張力調整機構を設けて、T1<T2となるように張力T1,T2を調整する。
【0044】
T1=0であれば、噛み合い領域13を通過したとき、第1のシート2の凹部12bに押し込まれた部分2bは凹部12bに留まる。T1≠0であっても、T1が小さいと、例えば、T1≦0.05N/mmであると、第1のシート2と第1のロール12との間の摩擦に打ち勝って第1のシート2を搬送方向上流側に引き戻すことができない。この場合も、第1のシート2の凹部12bに押し込まれた部分2bは凹部12bに留まる。
【0045】
第2のシート4の張力T2は、第2のシート4の破断強度以下、例えば、0.1~2N/mmにする。第2のシート4の張力T2が第1及び第2のシート2,4間の摩擦力に打ち勝つと、凹部12bに噛み合っている凸部14aが、その後、凹部12bから出て行くとき、第2のシート4の凹部12bに押し込まれた部分4bは、凹部12bから次第に出る。
【0046】
第2のシート4は、凸部14aによって凹部12bに押し込まれるときに、凸部14aよりも搬送方向下流側の部分4xが引っ張られて塑性変形して伸びると、塑性変形した部分は、凸部14aが凹部12bから出ていっても伸びたままである。また、第2のシート4は、搬送方向と直交又は交差する方向に隣り合う複数の凹部12bに同時に押し込まれ、搬送方向と直交又は交差する方向に隣り合う凹部12bの間の部分が引っ張られて塑性変形して伸びると、塑性変形した部分は、凸部14aが凹部12bから出ていっても伸びたままである。
【0047】
このように第2のシート4が塑性変形して伸びると、第2のシート4は、噛み合い領域13を通過したとき、図3(d)に示すように、凸部14aが凹部12bから出ていっても、凹部12bに押し込まれた部分4b(図3(b)参照)の一部4c又は全部が凹部12bに留まり、凹部12bを覆っている部分4aに弛みが生じる。第2のシート4は、張力T2を大きくするほど、凹部12bに押し込まれるときに塑性変形しやすい。そのため、第2のシート4は、張力T2を大きくするほど、凹部12bを覆っている部分4aの弛みが大きくなる。第2のシート4は、非伸縮性の不織布シートであっても、例えば第1のロール12で加熱されると塑性変形が促進されるため、凹部12bを覆っている部分4aに弛みが形成される。
【0048】
第1及び第2のシート2,4が噛み合い領域13を通過したとき、図3(c)に示すように、第2のシート4の凹部12bに押し込まれた部分4b(図3(b)参照)が凹部12bから完全に出ている場合、第1のシート2のみが賦形される。図3(d)に示すように、第1及び第2のシート2,4が噛み合い領域13を通過したとき、第2のシート4の凹部12bに押し込まれた部分4bの一部4c又は全部が凹部12bに留まっている場合、第1及び第2のシート2,4の両方が賦形される。噛み合い領域13を通過するときに第2のシート4が塑性変形する場合、第1及び第2のシート2,4の両方が賦形される。
【0049】
第1のシート2は、凹部12bに押し込まれた部分2bが第2のシート4で覆われ、凸部14aには接しないため、第1のシート2の張力T1を第2のシート4の張力T2よりも小さくしても、第1のシート2の凹部12bに押し込まれた部分2bが凸部14aに引っ掛かって凹部12bから外れることがない。したがって、第1のシート2の張力T1を小さくしても、第1のシート2を確実に賦形することできる。
【0050】
第2のシート4は、第1のロール12と第2のロール14との間を通過したとき、凸部14aによって凹部12bに押し込まれた部分4bの一部又は全部が凹部12bに留まっている場合には、賦形される。この場合、第1及び第2のシート2,4の両方を同時に賦形することができるが、第1のシート2を賦形するロールとは別に、第2のシート4を賦形するロールを準備する必要がない。したがって、賦形シートの製造装置10の構成が複雑化することなく、第1及び第2のシート2,4の両方を賦形することができる。
【0051】
賦形シート6は、第1のシート2の、凸部14aによって凹部12bに押し込まれ凹部12bに留まった部分2c(図3(c)参照)に対応して、第1のシート2に隆起部が形成される。
【0052】
図9は、上記方法で製造された賦形シート6の断面図である。図9は、第1及び第2のシート2,4に張力を与えていない自然状態の賦形シート6の断面の一例を概念的に示している。図9に示すように、第1及び第2のシート2,4は、同じ側に隆起する隆起部2x,4xが形成されている。第1のシート2の隆起部2sは、第2のシート4の隆起部4xよりも大きく、第1及び第2のシート2,4の間に空間6xが形成されている。第1及び第2のシート2,4は、接合部8xにおいて互いに接合されている。
【0053】
次に、賦形シート6の接合パターンについて、図4図7を参照しながら説明する。図4図7において、矢印8は、第1及び第2のシート2,4が搬送される方向(以下、「流れ方向」という。)を示す。+記号は、第1のシート2に形成される第1のシート2の隆起部の中央付近を示す。第1及び第2のシート2,4が互いに接合された接合部は、第1のロール12のシール突起12xの平坦面12t(図2参照)に対応して形成される。
【0054】
図4(a)に示す接合パターンは、互いに反対側に湾曲している三日月型の複数の接合部30,31が、流れ方向に間隔を設けて交互に並んでいる。隆起部は、凹側同志が互いに対向する接合部30,31の間に形成される。接合部30,31が流れ方向に並ぶ複数の列は、接合部30,31の凹側同志が互いに対向する領域20を、その両隣の列において凸側同志が互いに対向している各一対22,24の接合部30,31で挟むように、ピッチがずれている。
【0055】
図4(b)に示す接合パターンは、一つの対角線が流れ方向と平行であり隙間無く並ぶ複数の仮想矩形の各頂点に、矩形の接合部32が配置されている。隆起部は、仮想矩形の内側に形成される。鎖線は、仮想矩形のうち1つを示している。
【0056】
図5(c)に示す接合パターンは、一つの対角線が流れ方向と平行であり隙間無く並ぶ複数の仮想矩形の各辺に、線状の接合部34が配置され、仮想矩形の三つの頂点に、それぞれ、略十字型の接合部36が配置され、仮想矩形の他の一つの頂点を取り囲むように、4つの円形の接合部35が配置されている。隆起部は、仮想矩形の内側に形成される。鎖線は、仮想矩形のうち1つを示している。
【0057】
図5(d)に示す接合パターンは、一つの対角線が流れ方向と平行であり隙間無く並ぶ複数の仮想矩形の各頂点を取り囲むように、それぞれ、4つの円形の接合部40が配置されている。隆起部は、仮想矩形の内側に形成される。鎖線は、仮想矩形のうち1つを示している。
【0058】
図6(e)に示す接合パターンは、一つの対角線が流れ方向と平行であり隙間無く並ぶ複数の仮想矩形の各頂点に、骨型の接合部42が配置されている。隆起部は、仮想矩形の内側に形成される。鎖線は、仮想矩形のうち1つを示している。
【0059】
図6(f)に示す接合パターンは、一つの対角線が流れ方向と平行であり隙間無く並ぶ複数の仮想矩形の各頂点及びそのまわりに、それぞれ、5つの円形の接合部40が配置されている。隆起部は、仮想矩形の内側に形成される。隆起部を取り囲む接合部40は、ダイヤモンド型に配置されている。鎖線は、仮想矩形のうち1つを示している。
【0060】
図7(g)に示す接合パターンは、互いに対向する一対の辺が流れ方向と平行であり隙間無く並ぶ複数の仮想六角形の各頂点に、円形の接合部46が配置されている。隆起部は、仮想六角形の内側に形成される。鎖線は、仮想六角形のうち1つを示している。
【0061】
図7(h)に示す接合パターンは、互いに対向する二対の辺が流れ方向と平行又は垂直である複数の仮想八角形の各頂点に、円形の接合部48が配置されている。仮想八角形は、互いに対向する辺が流れ方向と平行又は垂直である複数の仮想矩形ととともに、隙間なく並ぶ。隆起部は、仮想八角形の内部に形成される。鎖線は、仮想八角形のうち1つと、それに隣接する4つの仮想矩形とを示している。
【0062】
図8は、賦形シートの製造装置10を用いて試作した賦形シート6の写真である。第1及び第2のシート2,4に、流れ方向に対して垂直方向に伸縮性を有する不織布シートを用い、第1及び第2のシート2,4を、図4(b)に示した接合パターンで接合した。
【0063】
図8(a)は、第1のシート2側の写真である。図8(a)から、第1のシート2に隆起部が形成されていることが分かる。図8(b)は、第2のシート4側の写真である。図8(b)から第2のシート4は、わずかにくぼんでいることが分かる。
【0064】
<まとめ> 以上に説明したように、第1及び第2のシート2,4が互いに接合された賦形シート6を製造する際に第1のシート2の張力T1を小さくしても、第1のシート2を確実に賦形することでき、装置の構成が複雑化することなく第1及び第2のシート2,4の両方を賦形することができる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
2 第1のシート
2b 押し込まれた部分
4 第2のシート
4b 押し込まれた部分
6 賦形シート
10 賦形シートの製造装置
12 第1のロール
12b 凹部
12s 外周面
13 噛み合い領域
14 第2のロール
14a 凸部
14s 外周面
16 接合装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11