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特許7236465ウラン濃縮度が最大20重量%のUF6用改良型輸送・処理容器(30W型)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ウラン濃縮度が最大20重量%のUF6用改良型輸送・処理容器(30W型)
(51)【国際特許分類】
   G21F 5/005 20060101AFI20230302BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
G21F5/005
G21F9/36 501G
G21F9/36 501H
G21F9/36 501J
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020562753
(86)(22)【出願日】2019-05-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 US2019031027
(87)【国際公開番号】W WO2019217360
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】62/667,690
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】スタッカー、デヴィッド、エル
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-084871(JP,A)
【文献】実開昭62-187604(JP,U)
【文献】特開2000-338296(JP,A)
【文献】特開2001-051093(JP,A)
【文献】特表2004-525377(JP,A)
【文献】特開2014-228355(JP,A)
【文献】特開2016-217938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 5/005
G21F 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
235Uが最大20重量%まで濃縮されたUFをUの量で最大1,500kg貯蔵するためのUF輸送・処理容器であって、
外部表面/基材と、
内部表面/基材と、
当該外部表面/基材と当該内部表面/基材との間に位置する一体型熱交換器であって、
金属と、
熱輸送流体を通過させる空隙流路と
より成る一体型熱交換器と
から構成されるシェルと、
当該シェルによって形成される内部チェンバと、
当該内部チェンバ内に位置し、当該容器の長手方向に延びて、当該内部チェンバ内にUFを貯蔵するための複数の個別の区画を形成するように構成された仕切りと
を具備するUF輸送・処理容器。
【請求項2】
前記容器は円筒形である、請求項1の容器。
【請求項3】
前記外部表面/基材および前記内部表面/基材が、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル合金、チタン合金、アルミニウム合金、フェライト合金およびそれらの組み合わせまたは合金の中から選択される金属で形成されている、請求項1の容器。
【請求項4】
前記金属が、前記外部表面/基材から前記内部表面/基材まで中実である、請求項3の容器。
【請求項5】
前記シェルの一部が、前記外部表面/基材と前記内部表面/基材との間に形成され、随意的に前記一体型熱交換器の各側に位置する吸収体層を含む、請求項4の容器。
【請求項6】
前記吸収体層が、前記金属に、随意的に10B同位体または前記金属と適合性のある他のかかる中性子吸収材を濃縮したBCをドーピングしたものである、請求項5の容器。
【請求項7】
前記外部表面/基材および前記内部表面/基材がドーピングされていない、請求項1の容器。
【請求項8】
前記仕切りが、ハブ/スポーク構成および/または前記シェルの形状に対応する幾何学形状の入れ子式構成から選択される、請求項1の容器。
【請求項9】
前記ハブおよび前記スポークは、金属および金属合金から選択される材料で構成されている、請求項8の容器。
【請求項10】
前記金属が、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル合金、チタン合金、アルミニウム合金、フェライト合金およびそれらの組み合わせまたは合金の中から選択される、請求項9の容器。
【請求項11】
前記金属が、前記ハブおよび前記スポークのそれぞれの外壁から内壁まで中実である、請求項10の容器。
【請求項12】
前記外壁と前記内壁との間に吸収体層が形成されている、請求項11の容器。
【請求項13】
前記吸収体層が、当該金属に、随意的に10B同位体または当該金属と適合性のある他のかかる中性子吸収材を濃縮したBCをドーピングしたものである、請求項12の容器。
【請求項14】
前記スポークの中に前記外壁から前記内壁まで延びる空隙または流路が形成されている、請求項11の容器。
【請求項15】
前記シェルおよび/または前記仕切りが積層造形法を用いて形成される、請求項1の容器の製造方法。
【請求項16】
前記積層造形法が3次元印刷を含む、請求項15の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)の下で、参照により本願に組み込まれる「IMPROVED UF TRANSPORT AND PROCESS CONTAINER(30W)FOR ENRICHMENTS UP TO 20% BY WEIGHT」と題する2018年5月7日出願の米国仮特許出願第62/667,690号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、235U濃縮度が最大20重量%のUF用改良型輸送・処理容器(30W型)および当該容器を製造する方法(例えば積層造形法)に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、原子燃料業界向けのUF輸送・処理容器(30B型)は、235U濃縮度の上限が5重量%のUを1,500kg収容する。そのような輸送・処理容器は、235U濃縮度が最大20重量%のUFには適していない。本願の表1は、現在認可されているUF容器の特性を示す。現在、235U濃縮度が20重量%のUFの輸送が認可されている最大の容器は5A/B型円筒容器であり、これは235U濃縮度が最大100重量%のUFの輸送能力がある。ただし、5A/B型円筒容器の許容容量は、UFで24.95kg、すなわちUで約16.9kgである。このような非常に少ない量では、円筒容器の交換頻度が高くなり、非常に小さな円筒容器群への設備投資が多額になり、配送を支援するオーバーパック、オートクレーブおよびUF中継施設が全般的に不足することなどから、商業ベースによる継続的な処理は困難である。表1の残りすべての円筒容器を濃縮度20重量%に対応させるには、再認可が必要である。それに加え、30B型より小型の円筒容器は高ニッケル合金で作られているため、小型の容器群を展開させるには多額のコストを必要とする。
【0004】
したがって、当技術分野では、235U濃縮度20重量%のUFを収容する新規な輸送・処理容器を設計および開発する必要性がある。そのような新しい容器は、現在業界で用いられている30B型円筒容器内に収納できれば、既存のUF輸送インフラ(外部インターフェース寸法、オーバーパック、索具、吊り上げ装置、既存の円筒容器試験・設計データなど)を最大限に活用できるため、好ましい。さらに、この新しい容器を、重量、静的強度、動的強度、耐火性、耐落下性の観点から現用30B型円筒容器に可能な限り近くなるように設計すれば、大規模な試験の必要性が最小限に抑えられるか不要になるだけでなく、235U濃縮度最大20重量%のUFを、30B型円筒容器(235U濃縮度が重量比で5%以下に限定されている)に現在許可されているウラニウムで1,500kgに近いかそれに等しい量貯蔵できるため、好ましい。さらに、運用および安全性に関連する潜在的なおよび/または予想される問題に対処するために、数十年にわたる30B型円筒容器の経験から学んだ運用上の教訓が新設計に取り入れられる。30W型円筒容器の設計の改良点として、曲げや折れによる損傷の可能性を最小限に抑えるように弁および排出プラグのねじ接続部を凹所内へ引っ込ませることや、一体型熱交換器を組み込んで、生成物の抽出と回収にそれぞれ必要な外部からの加熱と冷却の必要性をなくしたり、かかる加熱と冷却の効果を向上させたりすることが挙げられる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、235Uが最大20重量%まで濃縮されたUFをUの量で最大1,500kg貯蔵する新規なUF輸送・処理容器を提供する。
【0006】
本発明は一局面において、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル合金、チタン合金、アルミニウム合金、フェライト合金およびそれらの組み合わせまたは合金の中から選択される金属材料で形成された円筒体を含むUF輸送・処理容器を提供する。当該円筒容器の内層の材料は、随意的に10B同位体または中性子毒として作用する他の適切で適合性のある材料を濃縮したBCをドーピングすると、235Uの濃縮度が最大20重量%のUFを輸送するための容器が提供される。BCのような中性子吸収材をドーピングした材料の外部および内部の露出面にドーピングしていない合金の被覆を施すと、腐食や当該吸収材が剥がれてUFや外部環境へ流出するのを防ぐことができる。
【0007】
好ましい一実施態様において、当該円筒容器は、外壁と内壁とを有するシェルを含む。当該金属材料は、当該外壁から当該内壁まで中実であるが、その一部に、吸収体層(例えば金属/BC基材)および一体型熱交換器(例えば金属に熱輸送流体の空隙流路が形成されたもの)が含まれる。当該シェルの内部チェンバは、UFを収容/貯蔵するための複数の区画を形成する「ハブ/スポーク」構成であり、この複数の区画は内部に吸収体が存在することから、中性子の観点における区画のサイズの最小化に役立つ。当該ハブと当該スポークの壁は、当該円筒容器の長手方向に延びている。これらの壁は、その金属材料で構成された中実の壁であり、その一部は吸収体層(例えば金属/BC基材)である。当該スポークの壁には、チェンバ間のUFのガス圧および液位を均一にし、軽量化を図るために、貫通孔(例えば開口部)が形成されている。30W型円筒容器の内部構造の他の実施態様には入れ子式の円筒体や多角形のものが含まれる(それらに限定されない)が、それらはいずれも、干渉する吸収構造が介在しなくても円筒容器全体で収容可能な高濃縮度のUFの質量を減らして、30W型円筒容器の中性子および臨界に関する様相を、チェンバ間における中性子の増倍や反射を最小限に抑えられる、吸収体を介在させた、入れ子式で安全な幾何学的形状のチェンバに類似したものになるようにする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0009】
図1】本発明の或る特定の実施態様に基づく30W型円筒容器の概略平面図である。
【0010】
図2】本発明の或る特定の実施態様に基づく、図1に略示した円筒壁1の詳細図である。
【0011】
図3】本発明の或る特定の実施態様に基づく、図1に略示したハブ壁9の詳細図である。
【0012】
図4】本発明の或る特定の実施態様に基づく、図1に略示したスポーク11のうちの1つの詳細図である。
【0013】
図5】本発明の或る特定の実施態様に基づく、図1に略示した30W型円筒容器の概略立面図である。
【0014】
図6】本発明の或る特定の実施態様に基づく、図1、5に略示した30W型円筒容器の詳細図である。
【0015】
図7】本発明の或る特定の実施態様に基づく、図2に略示した一体型熱交換器17の詳細展開図である。
【0016】
図8】本発明の或る特定の実施態様に基づく、図2、7に略示した一体型熱交換器17の詳細側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、235U濃縮度が最大20重量%のUF用改良型輸送・処理容器(30W型)および当該容器を製造する方法(例えば積層造形法)に関する。本発明は、新規な設計および材料により、減速材の排除によるクレジットの適用が不要になるように、235U濃縮度が最大20重量%のUF用改良型輸送・処理容器(30W型)を提供するが、当該容器には、既存のUF輸送インフラ(外部インターフェース寸法、索具、吊り上げ装置、オーバーパック、既存の円筒容器の機械的および落下試験・設計データなど)を最大限に活用するため、現在業界で用いられている30B型円筒容器内にきちんと納まらなければならないという制約がある。この30W型円筒容器は、重量、静的強度、動的強度、耐火性、耐落下性の点で現用技術の30B型円筒容器に可能な限り近くなるよう特別に設計することで、大規模な試験の必要性を最小限に抑えるかまたは不要にするだけでなく、235U濃縮度が最大20重量%のUFを、235Uの重量比が5%以下に限定された30B型円筒容器で現在認可されている1,500kgのUに近いかまたは等しい量貯蔵できるようにする。
【0018】
新しい容器(30W型)の構造材は、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル合金、チタン合金、アルミニウム合金、フェライト合金およびそれらの組み合わせまたは合金を含む様々な公知の材料の中から選択することができる。或る特定の実施態様における好ましい構造材はアルミニウム合金またはステンレス鋼合金である。これらの材料は、当該技術分野で公知で現用の炭素鋼構造材よりも高い耐食性を有する。さらに、これらの材料は共にBCドーピングの実績があるが、随意的に、中性子毒として作用する10B同位体を濃縮して、235U濃縮度を最大20重量%まで引き上げるのを可能にすると共に、容器内で安全に輸送できるUFの質量を実質的に増加させるようにしてもよい。10B同位体は、天然濃縮度(19.8原子%)から完全な濃縮度(100%)までの範囲でBCに含有させることができる。BCをドーピングした材料は、随意的に、10B同位体または合金基材と適合性のある他の同様の中性子吸収材を濃縮したものでもよい。
【0019】
本発明に基づく容器(30W型)は、以下に列挙する必要性から、積層造形法を用いて製造することが想定される。
(1)臨界安全性のために耐食性のあるエキゾチックな中性子吸収母材を必要とする。
(2)溶接部に関する定期検査を不要にするためにすべてのシーム溶接部をなくす。
(3)円筒容器内のUF生成物を昇華・脱昇華するために各円筒容器に一体型熱交換器を組み込む。
(4)現用技術の30B型円筒容器から得られた運用上の教訓に基づいて設計を変更する(非限定的に、弁および排出プラグ接続部を凹所に引っ込ませることも含む)。また、積層造形法により、これらの設計目標の達成に必要とされる複雑な形状が可能となる。
【0020】
この容器は、外壁および内部チェンバを有する円筒形シェルを含む。当該シェルは、各々が金属または金属合金により構成された内側および外側シェル表面/基材と、一体型熱交換器と、当該一体型熱交換器の両側において当該シェル表面間に介在する、中性子吸収材をドーピングした一層または複数層の金属合金から成る複数層の複合体であり、介在する当該一層または複数層の金属合金は、中性子の外部反射の影響と、複数の円筒容器をまとめて輸送または貯蔵する際の当該円筒容器の間の中性子輸送の影響を最小限に抑える効果がある。30W型容器の内部の設計の特徴はまた、円筒容器に固定吸収材を組み込むことにより、内部チェンバの中性子の観点からのサイズを30W型円筒容器内に最大濃縮度の核物質を保持するうえで幾何学的に安全なサイズに減少させる効果がある。すべての実施態様において、30W型円筒容器は、現用技術の30B型円筒容器に関連する業界の既存のインフラとの互換性を保持するように、28インチの公称外径を有している。内部チェンバは、前述した複数層のシェル複合体により必然的に、現用技術の30B型円筒容器に比べて小さい内径を有することになる。円筒容器の内部チェンバの好ましい実施態様には、「ハブ/スポーク」構成(例えば馬車の車輪の構造)が含まれる。設計のこれらの内部の特徴により、最大20重量%の235Uの安全輸送に必要な追加の固定吸収体が提供され、また、円筒容器の壁およびドーム状の蓋の静的および動的強度が増加し、円筒容器内を加熱または除熱することにより、収容されたUFをそれぞれ昇華および脱昇華させるための伝熱フィン機能が提供される。
【0021】
これに対して、先行技術として公知の現用30B型円筒容器の円筒内の中空チェンバは、改良型30W型容器のようなハブ/スポーク構成ではない。ハブ/スポーク構成は、30W型円筒容器に30B型円筒容器よりも大きな機械的強度と安定性を与える。
【0022】
図1は、本発明の或る特定の実施態様に基づく30W型円筒容器の平面図である。図1に示すように、円筒容器の円筒壁1は、外側シェル3と内側シェル5とを有する。外側シェル3は、円筒体の外面を形成する。内側シェル5は、構造的に内部チェンバ7を形成する。内部チェンバ7内には、円筒状のハブ壁9と複数のスポーク11が配置されている。ハブ壁9は、外側シェル23と内側シェル25とを含み、スポーク11はそれぞれ、外面31と内面33とを含む。各スポーク11は、ハブ壁9の外側シェル23から円筒壁1の内側シェル5まで半径方向に延びる。ハブ壁9とスポーク11は、(図6に示すように)円筒体の長手方向に延びて、内部チェンバ7内に個別の区画13を形成する構成である。ハブ壁9は、内側(例えば円筒体の中央部)に空洞または空間10を形成する。複数の区画13(図示しないが例えばUFを含む)は、互いに液圧的に分離されていない。例えば、ハブ壁9および/またはスポーク11は、内部チェンバ7内の区画13のうちの1つが隣接する区画13と連通するように、貫通孔41を有する材料(図6に示す)で構成することができる。例えば、スポーク11の外面31および内面33に形成された貫通孔41を介して、UFガスを、区画13のうちの1つから別の区画へ連通させることができる。
【0023】
図2は、図1の円筒壁1の詳細平面図である。円筒壁1の典型的な構成材料は金属である。前述したように、当該金属は、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル合金、チタン合金、アルミニウム合金およびフェライト合金の中から選択することができる。図1、2に示すように、円筒壁1は、いずれも金属製の外側シェル3および内側シェル5を含む。金属製外側シェル3は、円筒壁1の外面を形成する。金属製内側シェル5は、円筒壁1の内面を形成する。例えばアルミニウム合金のような金属は、外側シェル3から内側シェル5まで中実であるが、その一部に、吸収体層15(例えばAl合金/BC基材)および一体型熱交換器17(例えば図7に示すような空隙流路35を有するアルミニウム合金)が組み込まれている。図2に示すように、熱交換器17は、吸収体層15の間に介在させてもよい。熱交換器17の空隙流路35は、様々な形状を取り得る。或る特定の実施態様の螺旋状熱交換器の空隙は四角形である。特定の理論の制約を受けるものではないが、金属製の円筒壁1の製造に用いることが可能な積層造形法のプロセス(例えば三次元印刷)では、四角形を形成するのは容易であると考えられる。空隙流路35が運ぶ、例えば蒸気、冷水、温水、フレオンおよび、合理的な圧力下で加熱または冷却が可能であり、円筒体の構成材料にも適合する他の同様の流体は、30W型円筒容器へのまたは30W型円筒容器からの熱伝達に使用される。
【0024】
外側シェル3は、一体型熱交換器17の保護層として機能する。内側シェル5は、円筒容器内部チェンバ7の区画13に貯蔵されるUFの圧力バウンダリとして機能する。
【0025】
図3は、図1のハブ壁9の詳細平面図である。ハブ壁9の典型的な構成材料は金属である。前述したように、当該金属は、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル合金、チタン合金、アルミニウム合金およびフェライト合金の中から選択することができる。図3に示すように、ハブ壁9は、外側シェル23と内側シェル25との間に配置された金属層19および吸収体層21を含む。図3に示すように、ハブ壁9は、例えばAl合金のような金属が外側シェル23(例えば一方の端部)から内側シェル25(例えば対向する他方の端部)まで中実であり、この一部に吸収体層21(例えばAl合金/BC基材)が介在している。
【0026】
図4は、図1のスポーク11の詳細平面図である。スポーク11の典型的な構成材料は金属である。前述したように、当該金属は、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル合金、チタン合金、アルミニウム合金およびフェライト合金の中から選択することができる。スポーク11は、外面33と内面31との間に金属製の支柱/フィン27と吸収体層29とを含む。図4に示すように、支柱/フィン27は、例えばアルミニウム合金のような金属が外面31(例えば一方の端部)から内面33(例えば対向する他方の端部)まで中実であり、この一部に吸収体層29(例えばAl合金/BC基材)が介在している。
【0027】
図5は、図1に示す円筒体の立面図である。図5に示すように、ハブ壁9およびその中に形成された空間10は、円筒体の内部チェンバ7の中央に位置し、内部チェンバ7の残りの部分は、ハブ壁9の周辺(例えば周囲)の、例えばハブ壁の外側シェル23と円筒壁1の内側シェル5との間(例えば区画13を含む)に位置して、円筒体の長手方向に延びる。さらに、図の円筒壁1は円筒体の左端と右端にあり、円筒体の最上部には、内部チェンバ7への充填を可能にする充填弁43が配置されている。
【0028】
図6は、図1に示す円筒体の立面図である。図6に示すように、ハブ壁9によって形成された空間10は円筒体の中央部に位置し、ハブ壁9から半径方向に延びるスポーク11は円筒体の長手方向に延びる。図5において、スポーク11の各々は、貫通孔41を有する材料で形成されている。さらに、図の円筒壁1は円筒体の左端と右端にある。
【0029】
図7は、図2に示す一体型熱交換器17の詳細展開図であり、図面の左側と右側が同じ高さでつながる。一体型熱交換器は、入口37と、出口39と、入口37と出口39との間を延びる空隙流路35とを含む。熱を伝達する流体は、入口37から一体型熱交換器17に入り、空隙流路35を流れたあと、出口39から一体型熱交換器17を出る。図8は、図2に示す一体型熱交換器17の詳細側面断面図であり、中を通る空隙流路35を示している。
【0030】
或る特定の実施態様において、30W型円筒容器の外部パッケージは、現行の業界標準である30B型円筒容器と同一のインターフェースを有する。この設計上の制約により、オーバーパック、核物質取り扱い/貯蔵ラックの現行のインフラストラクチャの価値が最大になる。この30W型円筒容器の実施態様はまた、昇華を促進して生成物を抽出するべく円筒容器を加熱するための、または、濃縮生成物充填所において高温で液状のUFが充填されたとき、あるいは、プロセスから気体物質を排除する必要がある濃縮カスケードまたは他のUF処理の様々な段階で使用するUFガスを脱昇華するべく保冷機器および容器の冷却トラップとして使用して円筒容器を冷却するためのオートクレーブを別個に必要とせず、一体型熱交換器で代替させることを意図している。一体型熱交換器は、熱交換器壁と外部円筒壁構造体により、UF生成物から完全に隔離されている。一体型熱交換器は、冠水した蒸気オートクレーブで臨界が起こる可能性を排除するためだけでなく、昇華を促進して生成物を抽出するために円筒容器を加熱する工程や、保冷機器および容器において輸送のために生成物を固化する工程を加速するために組み込まれている。また、30W型円筒容器には、強度と剛性を高めるための構造部材と、固定吸収体と、UFと外部熱交換器との間で熱を双方向に伝導するための熱フィンとの組み合わせとして機能する内部構造が含まれている。これらの内部構造に組み込まれる固定吸収体は、パッケージおよびその内容物のkeff値を、最も制限的な事故条件下で必要な安全裕度を含めて要求値以下に維持するために必要な配置構成である。
【0031】
30W型円筒容器の機械的インターフェースを現用技術の30B型円筒容器のインターフェースだけに制限することにより、既存の30B型円筒容器の試験データを最大限に活用することができ、それにより、30W型円筒容器の配備コストと時間を最小限に抑えることができる。20重量%の235Uを含む核物質を、現在認可されているU量で1,500kgに近い量収容できるようにするには、設計の一部に中性子毒物を含む複合材料を使用する必要がある。現用の30B型円筒容器に近い量のUFを収容できることは、再転換施設へ送り込むプロセス材料の流れを一定に保つ上で非常に望ましいと考えられる。さらに、新規の特徴として、熱交換器を内蔵することでUFの昇華・脱昇華のためのオートクレーブを別個に設ける必要がなくなり、蒸気オートクレーブの使用による臨界安全性への悪影響発生の可能性を排除できる。
【0032】
前述のように、現用の30B型円筒容器は、構造材料として鋼材(ASTM-A516)を使用している。30W型円筒容器の好ましい実施態様は、アルミニウム合金材で作られ、重量を最小限に抑え、235U20重量%のUFの貯蔵を可能にするために必要な内部吸収体構造を組み込めるようにするための一体型の固定吸収体を備えている。また、より軽量なアルミ合金製の構造材を使用することで、現用の30B型円筒容器に似た強度および剛性が得られる。アルミニウム合金はUFとの適合性のあることが実証され、濃縮カスケードの構造材として広く使用されているが、アルミニウムが、それ以上の腐食を防ぐフッ化アルミニウム(AlF)の強固な付着層を形成することにより、UFシステムに通常存在するフッ素、HF、UFに対して不動態化するからである。また、アルミニウム合金は、熱伝導率が有意に高いだけでなく内部表面と外部表面の耐食性が優れているという点で、鋼をしのぐ大きな利点がある。
【0033】
30W型は、設計要件が複雑であり、曲げ、溶接、機械加工に限界があって、従来の吸収体担持材料では容易に製造できない。そのため、アルミニウム合金の表面に好ましい実施態様の複雑な形状を印刷する積層造形法が提案されており、当該形状の内側にアルミニウムとBCの複合材が施される。積層造形法を用いることで、従来の溶接や、円筒容器の供用期間中の関連する監視が不要になる。また、積層造形法により、熱フィンとしての性能を最適化するために内部構造の厚みに変化を持たせたり、内部構造物に貫通孔を設けたり、円筒容器内の特定の部分に組み込まれる吸収体の量を変えたりするのが可能となる。例えば、充填弁の領域にあるドーム状蓋の領域、一体型熱交換器およびスカート部をアルミニウム合金製とすることが考えられる。
【0034】
説明を容易にするために、前述の開示内容および対応する図では、円筒形の容器について説明・図示した。しかし、前述のように、本発明に基づく容器は特定の形状に限定されるものではない。また、30W型容器の内部構造は、先に説明・図示したハブ/スポーク構成に限定されるものではない。内部構造は例えば、円筒体や多角形の入れ子式が含まれる。前述したように、このような構成は、干渉する吸収構造体が介在しなければ円筒容器全体に収容可能な高濃縮度のUFの質量を減らして、30W型円筒容器の中性子および臨界に関する様相を、チェンバ間における中性子の増倍や反射が最小限に抑えられる、吸収体を介在させた入れ子式で安全な幾何学的形状のチェンバに類似したものになるようにする効果がある。
【0035】
本発明は、以下の新規の発明思想のうちの1つ以上を含む。
(i)235U濃縮度が最大20重量%のUFを貯蔵できるように、基本的な貯蔵円筒容器の構成材として吸収体担持構成材を使用する。
(ii)235U濃縮度が最大20重量%のUFを貯蔵できるように、円筒容器内に吸収体担持構成材を使用する。
(iii)冠水する可能性のある蒸気オートクレーブを不要にして臨界に関する問題を回避するために、一体型熱交換器を使用する。
(iv)UFの昇華/脱昇華速度を制御しやすくするために、一体型熱交換器と協働する熱フィンとして機能する複雑な形状の構造を円筒容器内に形成する。
(v)一体型熱交換器とフィンとして機能する内部構造との組み合わせにより、熱が一体型熱交換器から内部フィン構造を介して効率的に伝達されてUF生成物をより効果的に加熱し昇華させるようにして、円筒容器をUFの昇華で空にするとき容器内に残存するUFの量が最小になるようにする。
(vi)一体型熱交換器とフィンとして機能する内部構造との組み合わせにより、熱が一体型熱交換器から内部フィン構造を介して効率的に伝達されてUF生成物をより効果的に冷却し脱昇華させるようにして、充填後に液状のUFを固化させるに必要な時間を極力短縮する。
【0036】
本発明を、様々な具体的な実施態様に関して説明したが、添付の特許請求の思想および範囲内で変更を加えた上で本発明を実施できることは、当業者が理解するところである。

【表1】
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図8