(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】会合性で交換可能なオリゴマーおよびこれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 161/00 20060101AFI20230302BHJP
C10M 157/10 20060101ALI20230302BHJP
C10M 145/14 20060101ALN20230302BHJP
C10M 139/00 20060101ALN20230302BHJP
C10M 155/04 20060101ALN20230302BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20230302BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20230302BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20230302BHJP
【FI】
C10M161/00
C10M157/10
C10M145/14
C10M139/00 A
C10M155/04
C10N30:02
C10N40:25
C10N40:04
(21)【出願番号】P 2020565419
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 FR2019051189
(87)【国際公開番号】W WO2019224492
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-04-13
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505036674
【氏名又は名称】トータルエナジーズ マーケティング サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】デクロワ・グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ブリアン・ファニ
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-507228(JP,A)
【文献】特表2017-508055(JP,A)
【文献】特表2018-506620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
C09K3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
数平均モル質量が600g/mol以上10000g/mol未満であるポリジオールオリゴマーA1であって、
- 少なくとも2つのモノマーM1、および、
- 少なくとも1つのモノマーM2、または、
- 少なくとも1つのモノマーM3、または、
- 少なくとも1つのモノマーM2および少なくとも1つのモノマーM3、
に対応する繰り返し単位を含み、1つ以上のモノマーM3に対応する繰り返し単位を2mol%未満含むポリジオールオリゴマーA1と、
少なくとも2つのボロン酸エステル基を含む化合物A2と、
を混合することに起因する組成物であって、
前記モノマーM1は一般式(I)に対応し、
【化1】
式中、
- R
1は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群から選択され;
- xは、1~1
8の範囲の整数であり;
- yは、0または1に等しい整数であり;
- X
1およびX
2は、同一でも異なっていてもよく、水素、テトラヒドロピラニル、メチルオキシメチル、tert-ブチル、ベンジル、トリメチルシリル、およびt-ブチルジメチルシリルからなる群から選択され;または
- X
1およびX
2は、酸素原子と共に、下記式の架橋を形成し、
【化2】
式中、
- 星(*)は、酸素原子への結合を表し、
- R’
2およびR’’
2は、同一でも異なっていてもよく、水素およびC
1-C
11アルキルからなる群から選択さ
れ;または
- X
1およびX
2は、酸素原子と共に、下記式を有するボロン酸エステルを形成し、
【化3】
式中、
- 星(*)は、酸素原子への結合を表し、
- R’’’
2は、C
6-C
30アリール、C
7-C
30アラルキル、およびC
2-C
30アルキルからなる群から選択さ
れ;
前記モノマーM2は一般式(II)に対応し、
【化4】
式中、
- R
2は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群から選択され;
- R
3は、-C(O)-O-R’
3、-O-R’
3、-S-R’
3、および-C(O)-N(H)-R’
3からなる群から選択され、ここで、R’
3はC
1-C
30アルキル基であり、
前記モノマーM3は一般式(X)に対応し、
【化5】
式中、
- Z
1、Z
2、およびZ
3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、C
1-C
12アルキル、および-OZ’基または-C(O)-O-Z’基から選択される基を表し、ここで、Z’はC
1-C
12アルキルである、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、前記オリゴマーA1の数平均モル質量は600g/mol~9500g/molの範囲である、組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物において、前記オリゴマーA1は、一般式(X)の1つ以上のモノマーM3に対応する繰り返し単位を1.5mol%未満含む、組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物において、前記モノマーM3はスチレンである、組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物において、前記オリゴマーA1の側鎖の平均長さは、炭素原子8~20
個の範囲である、組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物において、前記オリゴマーA1は、式(I)の前記モノマーM1に対応する繰り返し単位のモル百分率が、2%~70
%の範囲である、組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物において、化合物A2は、式(III)の化合物である、組成物。
【化6】
式中、
- w1およびw2は、同一でも異なっていてもよく、0から1の範囲で選択される整数であり;
- R
4、R
5、R
6、およびR
7は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、1~30個の炭素原子を含む炭化水素系基であって、任意でヒドロキシ基、-OJ基または-C(O)-O-J基から選択される1つ以上の基で置換された炭化水素系基から選択される基を表し、ここで、Jは、1~24個の炭素原子を含む炭化水素系基であり;
- Lは、C
6-C
18アリール、C
7
-C
24
アラルキル、およびC
2-C
24炭化水素系鎖からなる群から選択される二価結合基である、組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物において、化合物A2は、
式(IV)の少なくとも2つのモノマーM4であって、
【化7】
式中、
- tは、0または1に等しい整数であり;
- uは、0または1に等しい整数であり;
- MおよびR
8は、同一または異なる二価の結合基であり、C
6-C
18アリール、C
7-C
24アラルキル、およびC
2-C
24アルキルからなる群から選択さ
れ、
- Xは、-O-C(O)-、-C(O)-O-、-C(O)-N(H)-、-N(H)-C(O)-、-S-、-N(H)-、-N(R’
4)-、および-O-からなる群から選択される基であり、ここで、R’
4は、1~15個の炭素原子を含む炭化水素系鎖であり;
- R
9は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群から選択され;
- R
10およびR
11は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、および1~30個の炭素原子を含む炭化水素系基であって、任意でヒドロキシ基、-OJ基または-C(O)-O-J基から選択される1つ以上の基で置換された炭化水素系基から選択される基を表し、ここで、Jは、1~24個の炭素原子を含む炭化水素系基である、モノマーM4;
任意で、一般式(V)の少なくとも1つのモノマーM5であって、
【化8】
式中、
- R
12は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群から選択され、
- R
13は、-C(O)-O-R’
13、-O-R’
13、-S-R’
13、および-C(O)-N(H)-R’
13からなる群から選択され、ここで、R’
13は、C
1-C
30アルキル基である、モノマーM5、および、
任意で、一般式(X)の少なくとも1つのモノマーM3であって、
【化9】
式中、
- Z
1、Z
2およびZ
3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、C
1-C
12アルキル、および-OZ’基または-C(O)-O-Z’基から選択される基を表し、ここで、Z’はC
1-C
12アルキルである、モノマーM3
に対応する繰り返し単位を含むオリゴマーである、組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物において、前記オリゴマー化合物A2の数平均モル質量は、600g/mol~10000g/mol未
満の範囲である、組成物。
【請求項10】
少なくとも、
- 潤滑油と;
- 請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物と
を混合することに起因する潤滑剤組成物。
【請求項11】
乗り物の燃料消費量を低減するための、請求項10に記載の潤滑剤組成物の使用。
【請求項12】
機械部分の摩擦によるエネルギー損失を低減する方法であって、前記機械部分を、請求項10に記載の潤滑剤組成物と接触させる少なくとも1つのステップを含む方法。
【請求項13】
乗り物の燃料消費量を低減する方法であって、前記乗り物のエンジンの機械部分を、請求項10に記載の潤滑剤組成物と接触させる少なくとも1つのステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオール基で官能化され、かつ、任意で少なくとも1つのスチレンモノマーに対応する繰り返し単位を含む少なくとも1種のオリゴマーA1と、少なくとも2つのボロン酸エステル基を含む少なくとも1種の化合物A2とを混合することに起因する組成物に関する。そのような組成物は、使用する化合物A1およびA2の割合に応じて大きく異なるレオロジー特性を有する。また、本発明は、少なくとも1種の潤滑油と上記組成物とを混合することに起因する組成物、および機械部分を潤滑するための当該組成物の使用に関する。本発明は交換可能な会合性ポリマーの分野および潤滑剤の分野に属する。本発明に係る潤滑剤組成物は、良好な省燃費性だけでなく、力学的劣化に対して良好な耐性を有する。
【背景技術】
【0002】
高モル質量ポリマーは、様々な分野(例えば、石油産業および製紙業、水処理、鉱業、化粧品および繊維工業など)で、および一般に増粘溶液(thickened solutions)を使用するすべての産業技術で、溶液の粘度を増加させるために広く使用される。
【0003】
潤滑剤組成物(より具体的には、エンジン潤滑剤組成物)は、当該組成物に特定の性質を与える様々な種類の添加剤を含むことができるとして知られている。京都議定書の制定後、新たな環境保護基準に従い、自動車業界は汚染物質の排出量および燃料消費量の少ない乗り物を製造しなければならなくなった。その結果、こうした乗り物のエンジンはより厳格な技術的制約を受けるようになり、特に、エンジンはより高温においてより高速で回転し、燃料消費がより少なくなければならない。自動車のエンジン潤滑油の性質は汚染物質の排出および燃費に影響を与える。これらの新たなニーズを満たすために、省エネルギーまたは「低燃費」自動車エンジン用潤滑剤が開発されてきた。
【0004】
国際公開第2015/110642号(特許文献1)、国際公開第2015/110643号(特許文献2)および国際公開第2016/113229号(特許文献3)は、ジオール基で官能化された少なくとも1種のモノマーの共重合に起因する少なくとも1種のコポリマーA1と、少なくとも2つのボロン酸エステル基を含む少なくとも1種の化合物A2とを混合することに起因する組成物を開示している。これらの化合物は、会合することにより、任意でゲルを形成し、化学結合を熱可逆的に交換することが可能である。これらの添加剤は、温度が上昇する場合に、これらを含む溶液の粘度の低下を抑制するという利点を有する。これらのポリマー組成物は、使用する化合物A1およびA2の割合を応じて大きく異なるレオロジー特性を有する。また、これらの組成物は、2つのコポリマーの会合をより良好に制御できるようにするジオール化合物を含むことができる。
【0005】
特に、これらのポリマー組成物は、潤滑油に添加して機械部分を潤滑してもよい。これらのコポリマーにより、先行技術の潤滑剤組成物と比較すると、より良好に粘度が制御された潤滑剤組成物を調製することが可能になる。特に、これらのコポリマーは、基油に導入される場合、温度が上昇する際における混合物の粘度の低下を抑制する傾向がある。これらの潤滑剤組成物中にジオール化合物が存在することにより、その粘度をより良好に調整することが可能となる。
【0006】
潤滑剤組成物は、可動部品の表面(特に金属面)の間に適用される組成物である。潤滑剤組成物により、接触した状態で相対的に移動する2つの部品間の摩擦および摩耗を抑制することができる。また、潤滑剤組成物は、この摩擦によって生じる熱エネルギーの一部を消散させるように作用する。潤滑剤組成物は、それらが適用される部品の表面間に保護膜を形成する。
【0007】
一般に、機械部分の潤滑に用いられる組成物は、基油および添加剤からなる。基油(特に、石油または合成由来の基油)は、温度が変化する場合に粘度変動を示す。
【0008】
具体的には、基油の温度が上昇すると粘度が低下し、基油の温度が低下すると粘度が上昇する。ここで、流体潤滑状態(regime)において、保護膜の厚さはその粘度に比例し、これにより温度にも依存する。潤滑剤を使用する条件および期間にかかわらず保護膜の厚さが実質的に一定となる場合、組成物は良好な潤滑剤特性を有する。
【0009】
内燃機関において、潤滑剤組成物は外的または内的温度変化にさらされることがある。外的温度変化は、例えば夏と冬の温度変動といった、外気の温度の変動によるものである。内的温度変化はエンジンの運転に起因するものである。エンジンの温度は、(特に寒い気候では)長時間使用された時よりも始動時に低くなる。したがって、保護膜の厚さは、これらの異なる状況において異なり得る。
【0010】
したがって、良好な潤滑剤特性を有し、かつ、粘度に対する温度変動の影響が小さい潤滑剤組成物を提供する必要がある。
【0011】
潤滑剤組成物の粘度を向上させる添加剤を加える手法が知られている。こうした添加剤の作用は、潤滑剤組成物のレオロジー挙動を調整することである。これらの添加剤により、潤滑剤組成物が使用される温度範囲において、粘度の安定性をさらに向上させることが可能である。例えば、これらの添加剤は、温度が上昇する場合に潤滑剤組成物の粘度の低下を抑え、同時に、冷間時の粘度の増大を抑える。
【0012】
粘度向上剤添加剤(または粘度指数向上剤添加剤)は、冷間時における粘度に対する影響を抑制し、かつ温間時における膜の最小厚さを保証することにより、良好な潤滑を保証する。現在使用される粘度向上剤添加剤としては、オレフィンコポリマー(OCP)およびポリアルキルメタクリレート(PMA)などのポリマーが挙げられる。これらのポリマーは高いモル質量を有する。一般に、これらのポリマーは、その分子量が高いほど、粘度の制御に対して大きく寄与する。
【0013】
一方、高モル質量ポリマーの短所は、性質および構造が同一でサイズが小さいポリマーと比較すると、永久剪断強さに劣るという点である。
【0014】
ここで、潤滑剤組成物は、特に、摩擦面の間隔が極めて小さく、部品に加えられる圧力が高い内燃機関において、高い剪断応力にさらされる。高モル質量ポリマーに対するこうした剪断応力は、高分子鎖において開裂を引き起こす。このようにして分解されたポリマーは増粘特性が低下し、粘度が不可逆的に低下する。よって、このような低い永久剪断強さは、潤滑剤組成物の潤滑特性の劣化を引き起こす。
【0015】
さらに、より良好な酸化安定性(特に、フリーラジカルによる酸化に対するより良好な耐性)を有する組成物を開発することが求められている。
【0016】
特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載される組成物は、熱可逆的な会合を形成する能力の結果として、極めて有利な特性を有する。しかし、特定条件(特に高温条件)下では、これらのコポリマーの会合性挙動が減少したことが分かった。詳細には、それらを含む潤滑剤組成物の粘度指数の低下および(エンジンで観察されるような連続的な温度昇降のシークエンスとして定義できる)サイクルに対する耐性が劣ることにより、経時的に潤滑特性が失われることが観察された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】国際公開第2015/110642号
【文献】国際公開第2015/110643号
【文献】国際公開第2016/113229号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、出願人は、先行技術のコポリマーと比較して、向上した特性を有する新規のコポリマーを調製することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この課題は、会合可能で、任意でゲルを形成し、かつ交換可能な新規のレオロジー添加剤によって達成される。本発明の添加剤は、当該添加剤が分散される媒体を増粘するという効果を有し、高温(例えば150℃まで)においてもこの効果を維持する。これらの添加剤は、先行技術の添加剤と比較すると、温度が上昇する際に化学的な分解に対する耐性を示す。それらを含む潤滑剤組成物は、経時的に、より良好なサイクル性能の安定性およびより良好な潤滑特性の再現性を示す。
【0020】
この特徴は、2種類の特定の化合物、すなわち、ジオール基および任意でスチレン基を有するオリゴマーと、ボロン酸エステル基を含む化合物とを組み合わせて使用することに起因する。
【0021】
本発明の組成物により、エンジンの始動フェーズ(冷間時)に良好な潤滑特性を有し、かつ、エンジンがその使用温度で運転しているとき(温間時)に良好な潤滑特性を有する潤滑剤組成物を提供することができる。これらの潤滑剤組成物により、これらが使用される乗り物の燃料消費量を低減することが可能である。これらの組成物により、先行技術の組成物と比較すると、力学的劣化に対してより良好な耐性が得られる。
【0022】
本発明は、少なくとも、
数平均モル質量が600g/mol以上10000g/mol未満であるポリジオールオリゴマーA1であって、
- 少なくとも2つのモノマーM1、および、
- 少なくとも1つのモノマーM2、または、
- 少なくとも1つのモノマーM3、または、
- 少なくとも1つのモノマーM2および少なくとも1つのモノマーM3、
に対応する繰り返し単位を含み、1つ以上のモノマーM3に対応する繰り返し単位を2mol%未満含むポリジオールオリゴマーA1と、
少なくとも2つのボロン酸エステル基を含む化合物A2と、
を混合することに起因する組成物であって、
前記モノマーM1は一般式(I)に対応し、
【化1】
式中、
- R
1は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群から選択され;
- xは、1~18(好ましくは2~18)の範囲の整数であり;
- yは、0または1に等しい整数であり;
- X
1およびX
2は、同一でも異なっていてもよく、水素、テトラヒドロピラニル、メチルオキシメチル、tert-ブチル、ベンジル、トリメチルシリル、およびt-ブチルジメチルシリルからなる群から選択され;または
- X
1およびX
2は、酸素原子と共に、下記式の架橋を形成し、
【化2】
式中、
- 星(*)は、酸素原子への結合を表し、
- R’
2およびR’’
2は、同一でも異なっていてもよく、水素およびC
1-C
11アルキルからなる群から選択され(好ましくはメチルであり);または
- X
1およびX
2は、酸素原子と共に、下記式を有するボロン酸エステルを形成し、
【化3】
式中、
- 星(*)は、酸素原子への結合を表し、
- R’’’
2は、C
6-C
30アリール、C
7-C
30アラルキル、およびC
2-C
30アルキルからなる群から選択され(好ましくはC
6-C
18アリールであり);
前記モノマーM2は一般式(II)に対応し、
【化4】
式中、
- R
2は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群から選択され;
- R
3は、-C(O)-O-R’
3、-O-R’
3、-S-R’
3、および-C(O)-N(H)-R’
3からなる群から選択され、ここで、R’
3はC
1-C
30アルキル基であり、
前記モノマーM3は一般式(X)に対応し、
【化5】
式中、
- Z
1、Z
2、およびZ
3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、C
1-C
12アルキル、および-OZ’基または-C(O)-O-Z’基から選択される基を表し、ここで、Z’はC
1-C
12アルキルである、組成物に関する。
【0023】
好ましい実施形態によれば、前記オリゴマーA1の数平均モル質量は600g/mol~9500g/molの範囲である。
【0024】
好ましい実施形態によれば、前記オリゴマーA1は、一般式(X)の1つ以上のモノマーM3に対応する繰り返し単位を1.5mol%未満含む。
【0025】
好ましい実施形態によれば、前記モノマーM3はスチレンである。
【0026】
好ましい実施形態によれば、前記オリゴマーA1の側鎖の平均長さは、炭素原子8~20個(好ましくは炭素原子9~18個)の範囲である。
【0027】
好ましい実施形態によれば、前記オリゴマーA1は、前記コポリマーにおける式(I)の前記モノマーM1に対応する繰り返し単位のモル百分率が、2%~70%(好ましくは4%~50%)の範囲である。
【0028】
好ましい実施形態によれば、前記オリゴマーA1の数平均重合度は、3~100(好ましくは3~50)の範囲である。
【0029】
好ましい実施形態によれば、前記オリゴマーA1の多分散指数(Ip)は、1.05~4.0(好ましくは1.10~3.8)の範囲である。
【0030】
第1の好適な実施形態によれば、化合物A2は、式(III)の化合物である。
【化6】
式中、
- w1およびw2は、同一でも異なっていてもよく、0から1の範囲で選択される整数であり;
- R
4、R
5、R
6、およびR
7は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、1~30個の炭素原子(好ましくは4~18個の炭素原子、さらに優先的には6~14個の炭素原子)を含む炭化水素系基であって、任意でヒドロキシ基、-OJ基または-C(O)-O-J基から選択される1つ以上の基で置換された炭化水素系基から選択される基を表し、ここで、Jは、1~24個の炭素原子を含む炭化水素系基であり;
- Lは、C
6-C
18アリール、C
7-C
24アラルキル、およびC
2-C
24炭化水素系鎖からなる群から選択される二価結合基である。
【0031】
他の好ましい実施形態によれば、化合物A2は、
式(IV)の少なくとも2つのモノマーM4であって、
【化7】
式中、
- tは、0または1に等しい整数であり;
- uは、0または1に等しい整数であり;
- MおよびR
8は、同一または異なる二価の結合基であり、C
6-C
18アリール、C
7-C
24アラルキル、およびC
2-C
24アルキルからなる群から選択され(好ましくはC
6-C
18アリールであり)、
- Xは、-O-C(O)-、-C(O)-O-、-C(O)-N(H)-、-N(H)-C(O)-、-S-、-N(H)-、-N(R’
4)-、および-O-からなる群から選択される基であり、ここで、R’
4は、1~15個の炭素原子を含む炭化水素系鎖であり;
- R
9は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群から選択され;
- R
10およびR
11は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、および1~30個の炭素原子(好ましくは4~18個の炭素原子、さらに優先的には6~14個の炭素原子)を含む炭化水素系基であって、任意でヒドロキシ基、-OJ基または-C(O)-O-J基から選択される1つ以上の基で置換された炭化水素系基から選択される基を表し、ここで、Jは、1~24個の炭素原子を含む炭化水素系基である、モノマーM4;
任意で、一般式(V)の少なくとも1つのモノマーM5であって、
【化8】
式中、
- R
12は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群から選択され、
- R
13は、-C(O)-O-R’
13、-O-R’
13、-S-R’
13、および-C(O)-N(H)-R’
13からなる群から選択され、ここで、R’
13は、C
1-C
30アルキル基である、モノマーM5、および、
任意で、一般式(X)の少なくとも1つのモノマーM3であって、
【化9】
式中、
- Z
1、Z
2およびZ
3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、C
1-C
12アルキル、および-OZ’基または-C(O)-O-Z’基から選択される基を表し、ここで、Z’はC
1-C
12アルキルである、モノマーM3
の共重合に起因するオリゴマーである。
【0032】
好ましい実施形態によれば、前記オリゴマーA2の数平均モル質量は、600g/mol~10000g/mol未満(好ましくは600~9500g/mol、さらに好適には600~5000g/mol)の範囲である。
【0033】
好ましい実施形態によれば、前記オリゴマーA2において、以下の2つの条件のうち、少なくとも一方が満たされる:
- 式(IV)において、u=1であり、R9はHであり、R8は、C6-C18アリールもしくはC7-C24アラルキルを表し、かつ、式(IV)のモノマーM4の二重結合がアリール基に直接結合され;または、
- コポリマーA2は、式(X)の少なくとも1つのモノマーM3を含む。
【0034】
有利には、A2が式(X)のモノマーM3を含む場合、前記モノマーM3はスチレンである。
【0035】
有利には、ボロン酸エステルオリゴマーA2は、前記コポリマーにおける式(IV)および/または式(X)のスチレンモノマー(有利にはスチレン)のモル百分率が、2mol%~50mol%(優先的には3mol%~40mol%、より好ましくは5mol%~35mol%)の範囲である。
【0036】
有利な実施形態によれば、オリゴマーA2において、式(IV)のモノマーにおけるR10、M、X、および(R8)u(ここで、uは0または1に等しい)のシークエンスにより構成される鎖は、総炭素原子数が8~38個(好ましくは10~26個)の範囲である。
【0037】
有利な実施形態によれば、オリゴマーA2の側鎖の平均長さは、炭素原子8個以上(好ましくは炭素原子11~16個の範囲)である。
【0038】
有利な実施形態によれば、オリゴマーA2は、当該オリゴマーにおける式(IV)のモノマーM4のモル百分率が、4%~50%(好ましくは4%~30%)の範囲である。
【0039】
有利な実施形態によれば、オリゴマーA2の数平均重合度は、2~100(好ましくは2~50)の範囲である。
【0040】
有利な実施形態によれば、オリゴマーA2の多分散指数(Ip)は、1.04~3.54(好ましくは1.10~3.10)の範囲である。
【0041】
好ましい実施形態によれば、オリゴマーA1の含有率は、前記組成物の総重量に対して0.1重量%~50重量%の範囲である。
【0042】
好ましい実施形態によれば、化合物A2の含有率は、前記組成物の総重量に対して0.1重量%~50重量%の範囲である。
【0043】
好ましい実施形態によれば、オリゴマーA1と化合物A2との質量比(A1/A2の比)は、0.002~500(好ましくは0.05~20、さらに好ましくは0.1~10)の範囲である。
【0044】
好ましい実施形態によれば、オリゴマーA1は、少なくとも、
- チオカルボニルチオ系連鎖移動剤の存在下で、可逆的付加開裂連鎖移動により制御されるラジカル重合の工程
を含むプロセスによって得られたものである。
【0045】
より好ましい実施形態によれば、オリゴマーA1は、前記重合後、少なくとも、
- チオカルボニルチオ残基をチオールに分解するアミノリシスの工程に続いて、
- アクリレートに対してマイケル付加を行い、チオールをチオエーテルに変換する工程
を含むプロセスによって得られたものである。
【0046】
好ましい実施形態によれば、前記組成物は、多価アルコールから選択される少なくとも1種の外因性化合物A4をさらに含む。
【0047】
好ましい実施形態によれば、化合物A2のボロン酸エステル基に対する外因性化合物A4のモル百分率は、0.025%~5000%(好ましくは0.1%~1000%、より好ましくは0.5%~500%、さらに好ましくは1%~150%)の範囲である。
【0048】
他の好ましい実施形態によれば、前記組成物は、式(XI)に対応する化合物から選択される少なくとも1種の外因性化合物A5をさらに含む。
【化10】
式中、
- Qは、1~30個の炭素原子を含み、任意でヒドロキシ基、-OJ基または-C(O)-O-J基から選択される1つ以上の基で置換された炭化水素系基から選択される基を表し、ここで、Jは、1~24個の炭素原子を含む炭化水素系基であり;
- G
4およびG
5は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、1~24個の炭素原子を含む炭化水素系鎖、ヒドロキシ基、-OJ基または-C(O)-O-J基から選択される基を表し、ここで、Jは、1~24個の炭素原子を含む炭化水素系基であり;
- gは、0または1である。
【0049】
好ましい実施形態によれば、オリゴマーA1のジオール基に対する外因性化合物A5のモル百分率は、0.025%~5000%(好ましくは0.1%~1000%、より好ましくは0.5%~500%、さらに好ましくは1%~150%)の範囲である。
【0050】
また、本発明は、少なくとも、
- 潤滑油と;
- 上記で定義し下記説明で詳述する組成物と
を混合することに起因する潤滑剤組成物に関する。
【0051】
好ましい実施形態によれば、前記潤滑油は、API分類におけるグループIの油、グループIIの油、グループIIIの油、グループIVの油、グループVの油、およびそれらの混合物から選択される。
【0052】
好ましい実施形態によれば、前記潤滑剤組成物は、また、酸化防止剤、清浄剤、耐摩耗剤、極圧添加剤、粘度指数向上ポリマー、流動点向上剤、消泡剤、防蝕剤、増粘剤、分散剤、摩擦調整剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される機能性添加剤との混合にも起因する。
【0053】
また、本発明は、潤滑剤組成物の粘度を調整する方法であって、少なくとも、
- 上記で定義し下記説明で詳述する組成物を準備することと、
- 前記組成物と潤滑油を混合することと、
を含む方法に関する。
【0054】
また、本発明は、上記で定義し下記で詳述する潤滑剤組成物の使用であって、乗り物の燃料消費量を低減するための使用に関する。
【0055】
また、本発明は、上記で定義し下記で詳述する潤滑剤組成物の使用であって、潤滑剤の力学的耐久性を向上させるための使用に関する。
【0056】
また、本発明は、機械部分の摩擦によるエネルギー損失を低減する方法であって、前記機械部分を、上記で定義し下記で詳述する潤滑剤組成物と接触させる少なくとも1つのステップを含む方法に関する。
【0057】
また、本発明は、乗り物の燃料消費量を低減する方法であって、前記乗り物のエンジンの機械部分を、上記で定義し下記で詳述する潤滑剤組成物と接触させる少なくとも1つのステップを含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】ランダムコポリマー(P1)、グラジエントコポリマー(P2)およびブロックコポリマー(P3)を模式的に示す図であり、各円はモノマー単位を表す。モノマー間の化学構造の差は、異なる色(薄い灰色/黒)で表されている。
【
図2】ジオールの存在下における、2つのポリジオールオリゴマー(A1-1およびA1-2)と2つのボロン酸ジエステルオリゴマー(A2-1およびA2-2)との間のボロン酸エステル結合の交換反応を模式的に示す図である。
【
図3】テトラヒドロフラン(THF)中の本発明に係る組成物の架橋を模式的に示す図である。
【
図4】外部刺激(この例では温度)に応じた本発明の組成物の挙動を模式的に示す図である。ジオール基(官能基A)を有するオリゴマー(2)は、ボロン酸エステル基(官能基B)を有するオリゴマー(1)と、エステル交換反応によって可逆的に会合することができる。エステル交換反応の間に交換されるボロン酸エステル基(官能基B)の有機基はジオールであり、黒色の三日月で表されている。ジオール化合物が放出され、ボロン酸エステル型の化学結合(3)が形成される。
【
図5】組成物AおよびFに加えられた剪断速度に対して測定された40℃における粘性率(dynamic viscosity)の変動曲線を示すグラフである。黒丸マーカの曲線は組成物Aに対応する。黒四角マーカの曲線は組成物Fに対応する。グラフのx軸は剪断速度の値(s
-1)を表し、y軸は、測定された粘性率の値(mPa・s)を表す。
【
図6】組成物A、BおよびFに加えられた剪断速度に対して測定された100℃における粘性率の変動曲線を示すグラフである。黒丸マーカの曲線は組成物Aに対応する。黒四角マーカの曲線は組成物Fに対応する。グラフのx軸は剪断速度の値(s
-1)を表し、y軸は、測定された粘性率の値(mPa・s)を表す。
【
図7】組成物A、BおよびFに加えられた剪断速度に対して測定された150℃における粘性率の変動曲線を示すグラフである。黒丸マーカの曲線は組成物Aに対応する。黒四角マーカの曲線は組成物Fに対応する。グラフのx軸は剪断速度の値(s
-1)を表し、y軸は、測定された粘性率の値(mPa・s)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
1つ以上の構成について使用される「実質的に~からなる」という表現は、明示的に挙げられた構成要素またはステップに加えて、本発明の特性および構成を著しく変化させない構成要素またはステップが、本発明の方法または材料に含まれていてもよいということを意味する。
【0060】
「XからY」という表現は、特に明示されない限り境界値を含む。よって、この表現は、対象とする範囲に、XおよびY、ならびにXからYまでの範囲のすべての値が含まれることを意味する。
【0061】
定義:
用語「オリゴマー」は、限られた数の繰り返し単位からなる高分子を意味する。これらの繰り返し単位は全て同一であってもよいし、異なる繰り返し単位がオリゴマーに含まれていてもよい。一般に、オリゴマーは、2~100個の繰り返し単位を含み、数平均モル質量は600g/mol以上10000g/mol以下である。
【0062】
用語「コポリマー」は、複数種類の繰り返し単位(またはモノマー単位)から構成されるシークエンスを有する直鎖状または分岐鎖状のオリゴマーまたは高分子であって、これらの繰り返し単位のうち、少なくとも2つの単位が互いに異なる化学構造を有するものを意味する。
【0063】
用語「モノマー単位」または「モノマー」は、それ自体または同じタイプの他の分子と組み合わせることによりオリゴマーまたは高分子に変換することができる分子を意味する。モノマーとは、繰り返しによりオリゴマーまたは高分子を形成する最小の構成単位を指す。
【0064】
用語「ランダムオリゴマーまたはコポリマー」は、モノマー単位のシークエンス分布が既知の統計的法則に従っている高分子を意味する。例えば、コポリマーまたはオリゴマーは、マルコフ的分布となるモノマー単位により構成される場合、ランダムであるといえる。模式的なランダムコポリマー(P1)を
図1に示す。ポリマー鎖中のモノマー単位の分布は、モノマーの重合性官能基の反応性およびモノマーの相対濃度に依存する。
【0065】
用語「ブロックコポリマーまたはオリゴマー」は、1つ以上のブロックを含む高分子または1つ以上のブロックからなる高分子を意味する。用語「ブロック」は、複数の同一または異なるモノマー単位を含むコポリマーの一部であって、隣接部分から当該部分を区別可能とする少なくとも1つの構成上または構造上の特徴を有する部分を意味する。模式的なブロックコポリマー(P3)を
図1に示す。
【0066】
「グラジエントコポリマーまたはオリゴマー」は、異なる構造を有する少なくとも2種のモノマー単位の高分子であって、前記高分子のモノマー組成が、鎖に沿って徐々に変化、つまり、ポリマー鎖において1種のモノマー単位が豊富となる一端から、他のコモノマーが豊富となる他端へと徐々に変化する、高分子を示す。模式的なグラジエントポリマー(P2)を
図1に示す。
【0067】
本発明のポリジオールオリゴマーは、ランダムオリゴマー、またはグラジエントオリゴマー、またはブロックオリゴマーであってもよい。
【0068】
本発明のポリ(ボロン酸エステル)オリゴマーは、ランダムオリゴマー、またはグラジエントオリゴマー、またはブロックオリゴマーであってもよい。
【0069】
用語「共重合」は、異なる化学構造の少なくとも2種のモノマー単位の混合物をオリゴマーまたはコポリマーに変換することができるプロセスを意味する。
【0070】
本特許出願の以降の記載において、「B」はホウ素原子を表す。
【0071】
用語「Ci-Cjアルキル」は、i~j個の炭素原子を含む直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素系鎖を意味する。例えば、用語「C1-C10アルキル」は、1~10個の炭素原子を含む直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素系鎖を意味する。
【0072】
用語「Cx-Cyアリール」は、x~y個の炭素原子を含む芳香族炭化水素系化合物に由来する官能基を意味する。この官能基は、単環式または多環式であってもよい。例として挙げると、C6-C18アリールは、フェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレンおよびテトラセンであってもよい。
【0073】
用語「Cx-Cyアルケニル」は、少なくとも1つの不飽和(好ましくは炭素-炭素二重結合)を有し、かつ、x~y個の炭素原子を含む直鎖状または分岐鎖状の炭化水素系鎖を意味する。
【0074】
用語「Cx-Cyアラルキル」は、少なくとも1つの直鎖状または分岐鎖状アルキル鎖で置換された芳香族(好ましくは単環式)炭化水素系化合物であって、芳香族環および置換基における炭素原子の総数がx~y個の範囲である化合物を意味する。例として挙げると、C7-C18アラルキルは、ベンジル、トリル、およびキシリルからなる群から選択されてもよい。
【0075】
用語「基Yで置換されたCx-Cyアリール基」は、x~y個の炭素原子を含む芳香族(好ましくは単環式)炭化水素系化合物であって、芳香族環の炭素原子のうちの少なくとも1個が基Yで置換された化合物を意味する。
【0076】
用語「ハル」または「ハロゲン」は、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子を意味する。
【0077】
本明細書において、コポリマーまたはオリゴマーが「モノマーMiに対応する繰り返し単位を含む」と示されている場合、前記コポリマーまたはオリゴマーは、モノマーMi(iは、以下に示す様々なモノマーを特定する添え字である)と他のコモノマーとの共重合に直接起因するものだけでなく、モノマーMi以外のモノマーを共重合した後、モノマーMiの共重合により得られる構造単位と同一の構造単位を含むように化学的に変化させるステップを行うことにより得ることができるということを意味する。例えば、酸官能性を有するモノマー(アクリル酸またはメタクリル酸など)は、まず、他のモノマーとの共重合によりコポリマーを形成し、その後、任意の反応により(例えば、アルカノールとのエステル化反応またはアルキルアミンとのアミド化反応により)全てまたは一部の酸性官能基を変化させてもよい。これにより、アルキルアクリレートまたはアルキルアクリルアミドモノマーに対応する繰り返し単位を含むコポリマーが得られる。
【0078】
用語「コポリマー/オリゴマーが直接または間接的に起因する」とは、コポリマー/オリゴマーを調製する方法が、共重合以外の1つ以上のステップ(脱保護ステップなど)を含んでいてもよいことを意味する。特に、ジオールオリゴマーの場合、共重合の後に、任意で、ジオール基を脱保護するステップを行ってもよい。
【0079】
本明細書を通じて、以下の表現が優劣なく等価に使用される:「オリゴマーは共重合に直接または間接的に起因する」および「オリゴマーは共重合に起因する」。
【0080】
本発明に係る添加剤組成物:
本発明の1つの主題は、交換可能な会合性化合物の組成物であって、前記組成物は、少なくとも、
- 後述するポリジオールオリゴマーA1(特に下記のいずれかのプロセスにより得ることができる)と、
- 後述する少なくとも2つのボロン酸エステル基を含む化合物A2と、
を混合することに起因する組成物である。
【0081】
この添加剤組成物により、当該組成物が添加された媒体のレオロジー挙動を制御および調整することが可能となる。前記媒体は、疎水性媒体(特に、溶剤、鉱油、天然油、または合成油などの無極性媒体)であってもよい。
【0082】
[ポリジオールオリゴマーA1]
ポリジオールオリゴマーA1は、少なくとも2つのジオール基および任意で1つ以上の酸素系、窒素系、または硫黄系官能基(例えば、カルボン酸、エステル、エーテル、アミン、アミド、チオール、チオエーテル、チオエステルなどの官能基)を含む炭化水素系高分子である。
【0083】
ポリジオールオリゴマーA1の数平均モル質量は、10000g/mol未満である。有利には、ポリジオールオリゴマーA1の数平均モル質量は、9500g/mol未満である。
【0084】
好ましくは、ポリジオールオリゴマーA1の数平均モル質量は、600g/mol~10000g/mol未満、有利には600~9500g/molの範囲である。
【0085】
数平均モル質量は、ポリ(メチルメタクリレート)換算を利用したサイズ排除クロマトグラフィー測定により得られる。ポリ(メチルメタクリレート)換算を利用したサイズ排除クロマトグラフィー測定法は、公表文献(Fontanille, M.; Gnanou, Y., Chimie et physico-chimie des polymeres [Chemistry and physical chemistry of polymers] 2nd ed.; Dunod: 2010; page 546)に記載されている。
【0086】
オリゴマーA1は、一般式(I)のモノマーM1に対応する繰り返し単位を含む。
【0087】
オリゴマーA1は、一般式(II)のモノマーM2に対応する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0088】
オリゴマーA1は、一般式(X)のモノマーM3に対応する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0089】
有利には、オリゴマーA1は、芳香族性の繰り返し単位を含まない。「オリゴマーA1は、芳香族性の繰り返し単位を含まない」という表現は、オリゴマーA1が、芳香族性の繰り返し単位を2mol%未満含み、特に、スチレンに対応する繰り返し単位を2mol未満%含むことを意味する。有利には、この定義は、芳香族性の繰り返し単位を1.5mol未満%含むオリゴマーA1、特に、スチレンに対応する繰り返し単位を1.5mol未満%含むオリゴマーA1に対応する。
【0090】
有利には、オリゴマーA1は、少なくとも、一般式(I)のモノマーM1に対応する非芳香族性の繰り返し単位と、一般式(II)のモノマーM2に対応する非芳香族性の繰り返し単位とを含む。また、有利には、ポリジオールオリゴマーA1の数平均モル質量は10000g/mol未満であり、有利には9500g/mol未満である。好ましくは、A1の数平均モル質量は600g/mol~10000g/mol未満、有利には600~9500g/molの範囲である。
【0091】
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリジオールオリゴマーA1は、ジオール基を有する少なくとも2つの非芳香族性の第1のモノマーM1と、モノマーM1の構造とは異なる化学構造の少なくとも1つの非芳香族性の第2のモノマーM2との共重合に直接または間接的に起因する。
【0092】
好ましい実施形態によれば、ポリジオールオリゴマーA1は、実質的に、ジオール基を有する少なくとも2つのモノマーM1に対応する繰り返し単位と、モノマーM1の構造とは異なる化学構造の1つ以上のモノマーM2に対応する繰り返し単位とからなる。
【0093】
[モノマーM1]
モノマーM1は、一般式(I)を有する。
【化11】
式中、
- R
1は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群(好ましくは-Hおよび-CH
3からなる群)から選択され;
- xは、1~18の範囲の整数であり(好ましくは2~18、より好ましくは3~8の範囲の整数であり、さらに好ましくはxは4であり);
- yは、0または1に等しい整数であり(好ましくはyは0であり);
- X
1およびX
2は、同一でも異なっていてもよく、水素、テトラヒドロピラニル、メチルオキシメチル、tert-ブチル、ベンジル、トリメチルシリル、およびt-ブチルジメチルシリルからなる群から選択され;または
- X
1およびX
2は、酸素原子と共に、下記式の架橋を形成し、
【化12】
式中、
- 星(*)は、酸素原子への結合を表し、
- R’
2およびR’’
2は、同一でも異なっていてもよく、水素およびC
1-C
11アルキル基からなる群から選択され;または
- X
1およびX
2は、酸素原子と共に、下記式を有するボロン酸エステルを形成し、
【化13】
式中、
- 星(*)は、酸素原子への結合を表し、
- R’’’
2は、C
6-C
30アリール、C
7-C
30アラルキル、およびC
2-C
30アルキルからなる群から選択される(好ましくはC
6-C
18アリール、より好ましくはフェニルである)。
【0094】
好ましくは、R’2およびR’’2がC1-C11アルキル基である場合、炭化水素系鎖は直鎖である。好ましくは、C1-C11アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、およびn-ウンデシルからなる群から選択される。より好ましくは、C1-C11アルキル基はメチルである。
【0095】
好ましくは、R’’’2がC2-C30アルキル基である場合、炭化水素系鎖は直鎖である。
【0096】
式(I)のモノマーの中でも、式(I-A)に対応するモノマーが特に好適である。
【化14】
式中、
- R
1は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群(好ましくは-Hおよび-CH
3からなる群)から選択され;
- xは、1~18の範囲の整数であり(好ましくは2~18、より好ましくは3~8の範囲の整数であり、さらに好ましくはxは4であり);
- yは、0または1に等しい整数である(好ましくはyは0である)。
【0097】
式(I)のモノマーの中でも、式(I-B)に対応するモノマーが特に好適である。
【化15】
式中、
- R
1は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群(好ましくは-Hおよび-CH
3からなる群)から選択され;
- xは、1~18の範囲の整数であり(好ましくは2~18、より好ましくは3~8の範囲の整数であり、さらに好ましくはxは4であり);
- yは、0または1に等しい整数であり(好ましくはyは0であり);
- Y
1およびY
2は、同一でも異なっていてもよく、テトラヒドロピラニル、メチルオキシメチル、tert-ブチル、ベンジル、トリメチルシリル、およびt-ブチルジメチルシリルからなる群から選択され;または
- Y
1およびY
2は、酸素原子と共に、下記式の架橋を形成し、
【化16】
式中、
- 星(*)は、酸素原子への結合を表し、
- R’
2およびR’’
2は、同一でも異なっていてもよく、水素およびC
1-C
11アルキル基からなる群から選択され;または
- Y
1およびY
2は、酸素原子と共に、下記式を有するボロン酸エステルを形成し、
【化17】
式中、
- 星(*)は、酸素原子への結合を表し、
- R’’’
2は、C
6-C
30アリール、C
7-C
30アラルキル、およびC
2-C
30アルキルからなる群から選択される(好ましくはC
6-C
18アリール、より好ましくはフェニルである)。
【0098】
好ましくは、R’2およびR’’2がC1-C11アルキル基である場合、炭化水素系鎖は直鎖である。好ましくは、C1-C11アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、およびn-ウンデシルからなる群から選択される。より好ましくは、C1-C11アルキル基はメチルである。
【0099】
好ましくは、R’’’2がC2-C30アルキル基である場合、炭化水素系鎖は直鎖である。
【0100】
ポリジオールオリゴマー(A1)の合成は、保護された形態のモノマー(I-B)と他のコモノマーとを共重合した後に、モノマー(I-B)のジオール基を脱保護することを含んでいてもよい。
【0101】
[モノマーM1の製造]
一般式(I)のモノマーM1は、特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載される方法に従って得られる。
【0102】
モノマーM1の合成の例は、特許文献1、特許文献2および特許文献3の実施例に記載されている。
【0103】
[モノマーM2]
モノマーM2は一般式(II)を有する。
【化18】
式中、
- R
2は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群(好ましくは-Hおよび-CH
3からなる群)から選択され;
- R
3は、-C(O)-O-R’
3、-O-R’
3、-S-R’
3、および-C(O)-N(H)-R’
3からなる群から選択され、ここで、R’
3はC
1-C
30アルキル基である。
【0104】
式(II)のモノマーの中でも、式(II-A)に対応するモノマーが特に好適である。
【化19】
式中、
- R
2は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群(好ましくは-Hおよび-CH
3からなる群)から選択され;
- R’’
3は、C
1-C
8アルキル基である。
【0105】
また、式(II)のモノマーの中でも、式(II-B)に対応するモノマーが特に好適である。
【化20】
式中、
- R
2は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群(好ましくは-Hおよび-CH
3からなる群)から選択され;
- R’’’
3は、C
9-C
30アルキル基である。
【0106】
[モノマーM2の製造]
式(II)、(II-A)および(II-B)のモノマーは当業者にとって周知である。これらのモノマーは、Sigma-Aldrich(登録商標)およびTCI(登録商標)により販売されている。
【0107】
[モノマーM3]
モノマーM3は一般式(X)を有する。
【化21】
式中、
- Z
1、Z
2およびZ
3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、C
1-C
12アルキル、および-OZ’基または-C(O)-O-Z’基から選択される基を表し、ここで、Z’はC
1-C
12アルキルである。
【0108】
用語「C1-C12アルキル基」は、1~12個の炭素原子を含む直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素系鎖を意味する。好ましくは、炭化水素系鎖は直鎖状である。好ましくは、炭化水素系鎖は1~6個の炭素原子を含む。
【0109】
有利には、Z1、Z2およびZ3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、および-OZ’基または-C(O)-O-Z’基から選択される基を表し、ここで、Z’はC1-C6アルキルである。
【0110】
より好ましくは、Z1、Z2およびZ3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、C1-C4アルキル、および-OZ’基または-C(O)-O-Z’基から選択される基を表し、ここで、Z’はC1-C4アルキルである。
【0111】
好適なモノマーM3の中でも、スチレン、パラ-tert-ブチルスチレン、パラ-メトキシスチレン、パラ-アセトキシスチレン、および2,4,6-トリメチルスチレンが挙げられる。
【0112】
好ましい実施形態によれば、M3はスチレンである。
【0113】
[モノマーM3の製造]
式(X)の特定のモノマー(スチレン、パラ-tert-ブチルスチレン、パラ-メトキシスチレン、パラ-アセトキシスチレン、および2,4,6-トリメチルスチレンなど)は、当業者にとって周知である。これらのモノマーは、特に、Sigma-Aldrich(登録商標)により販売されている。当業者にとって周知の合成方法により、これらの市販のモノマーから他のモノマーを調製できる。
【0114】
[他のモノマー]
モノマーM1、M2およびM3に対応する上記繰り返し単位に加えて、本発明のオリゴマーA1は、他のコモノマーに由来する他の繰り返し単位を含んでいてもよく、その割合は、コポリマーA1を構成する繰り返し単位の総重量に対して、20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0115】
[ポリジオールオリゴマーA1の生成方法]
当業者は、その技術常識に基づいて、ポリジオールオリゴマーA1を合成することができる。
【0116】
共重合は、フリーラジカル発生化合物を用いる塊状(バルク)重合、または有機溶媒中でフリーラジカル発生化合物を用いる溶液重合により開始してもよい。例えば、本発明のオリゴマーは、既知のラジカル共重合プロセス(特に、可逆的付加開裂連鎖移動反応(RAFT)制御ラジカル重合として知られる方法および原子移動ラジカル重合(ATRP)として知られる方法などの制御ラジカル共重合)によって得られる。本発明のコポリマーを調製するために、従来のラジカル重合およびテロメリゼーションを利用してもよい(Moad, G.; Solomon, D.H., The Chemistry of Radical Polymerization. 2nd ed.; Elsevier Ltd: 2006; page 639; Matyaszewski, K.; Davis, T.P. Handbook of Radical Polymerization; Wiley-Interscience: Hoboken, 2002; page 936)。
【0117】
オリゴマー鎖長を制御できるようにするために、当業者に知られる方法(例えば、連鎖移動剤(特に、メルカプタン類)の使用;反応性に応じたモノマー比率の制御;モノマーの導入速度(kinetics of introduction);反応温度など)を用いてもよい。このような方法は、特に米国特許第5942642号、米国特許第5691284号および米国特許第4009195号に記載されている。
【0118】
ポリジオールオリゴマーA1は、有利なことに、少なくとも、
i)前述の一般式(I)の2つの第1のモノマーM1;
ii)任意で、前述の一般式(II)の少なくとも1つの第2のモノマーM2;
iii)任意で、前述の一般式(X)の少なくとも1つの第3のモノマーM3;
iv)少なくとも1種のフリーラジカル源
を接触させる少なくとも1つの重合ステップ(a)を含む調製方法に従って準備される。
【0119】
一実施形態において、前記方法は、v)少なくとも1種の連鎖移動剤を含んでいてもよい。
【0120】
用語「フリーラジカル源」は、外殻に1個以上の不対電子を有する化学種を発生させる化合物を意味する。当業者は、それ自体は既知の任意のフリーラジカル源であって、重合プロセス(特に、制御ラジカル重合プロセス)に適したものを用いることができる。好適なフリーラジカル源の中でも、例えば、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリルなどのジアゾ化合物、過硫酸塩または過酸化水素などの過酸化物、Fe2+の酸化、過硫酸塩/メタ重亜硫酸ナトリウムの混合物、またはアスコルビン酸/過酸化水素などの酸化還元系、あるいは、光化学的に、またはイオン化放射線(例えば紫外線)により、またはベータ線またはガンマ線により開裂することができる化合物が挙げられる。
【0121】
用語「連鎖移動剤」は、成長種(炭素系ラジカルを末端に有するポリマー鎖)とドーマント種(連鎖移動剤を末端に有するポリマー鎖)との間の可逆的移動反応によって高分子鎖を均一に成長させることを目的とする化合物を意味する。この可逆的移動プロセスにより、このようにして準備されるコポリマーの分子量を制御することが可能となる。好ましくは、本発明の方法において、連鎖移動剤はチオカルボニルチオ基-S-C(=S)-を含む。連鎖移動剤の例としては、ジチオエステル、トリチオカルボネート、キサンテートおよびジチオカルバメートが挙げられる。好ましい連鎖移動剤は、クミルジチオベンゾエートまたは2-シアノ-2-プロピルベンゾジチオエートである。
【0122】
用語「連鎖移動剤」は、また、モノマー分子の付加により形成される高分子鎖の成長を制限し新たな鎖を開始させることにより、最終的な分子量を抑え、さらには制御できるようにすることを目的とする化合物を意味する。このような種類の連鎖移動剤はテロメリゼーションにおいて用いられる。好ましい連鎖移動剤はシステアミンである。
【0123】
一実施形態において、ポリジオールオリゴマーを調製する方法は、
― 上記で定義される少なくとも1つの重合ステップ(a)であって、モノマーM1およびM2が選択され、X1およびX2は水素であるステップを含む。
【0124】
一実施形態によれば(RAFT連鎖移動剤を用いてラジカル重合が行われた場合)、ジオール基を含むオリゴマーを直接合成した後、前記方法は、アミノリシスによりRAFT鎖端を除去し、その後、マイケル付加を行うステップを含む。
【0125】
一般式(I)、(I-A)、(I-B)、(II-A)、(II-B)、および(X)について説明した好ましい事項および定義は、上記方法にも適用される。
【0126】
[ポリジオールオリゴマーA1の特性]
ポリジオールオリゴマーA1は直鎖状である。オリゴマーA1は、重合性官能基の骨格(特にメタクリレート基および任意でスチレン基またはスチレン系基の骨格)と、任意でジオール基で置換された炭化水素系側鎖の混合とを有する。
【0127】
ポリジオールオリゴマーA1は、温度、圧力および剪断速度などの外部刺激に対して感受性があるという利点を有する。この感受性は特性の変化により反映される。刺激に反応して、オリゴマー鎖の空間的な立体配座が変化する。
【0128】
有利には、ポリジオールオリゴマーA1の側鎖の平均長さは、炭素原子8~20個の範囲、好ましくは9~18個の範囲である。用語「側鎖の平均長さ」は、コポリマーの組成に含まれる式(I)のモノマーM1および式(II)のモノマーM2の側鎖の平均長さを意味する。任意のスチレンモノマーに由来する側鎖は、当該側鎖の平均長さを計算する際に考慮されていない。ポリジオールオリゴマーを構成するモノマーの種類および比率を適切に選択することによってこの平均長さを得る方法は、当業者に知られている。この平均鎖長の選択により、オリゴマーが溶解される温度にかかわらず、疎水性媒体に可溶なオリゴマーを得ることができる。よって、ポリジオールオリゴマーA1は、疎水性媒体に対して混和性を有する。用語「疎水性媒体」は、水に対する親和性が小さいまたは親和性を有しない媒体(つまり、水または水性媒体と混和しない媒体)を意味する。
【0129】
有利には、ポリジオールオリゴマーA1は、前記コポリマーにおける式(I)のモノマーM1に対応する繰り返し単位のモル百分率が、2%~70%(好ましくは4%~50%)の範囲である。
【0130】
オリゴマー中の繰り返し単位のモル百分率は、オリゴマーの合成に用いられたモノマーの量の調整に直接起因する。
【0131】
有利には、ポリジオールオリゴマーA1の数平均重合度は、3~100の範囲、好ましくは3~50の範囲である。重合度は、既知の方式で、制御ラジカル重合法、テロメリゼーション法を用いて、または、本発明のコポリマーが従来のラジカル重合により調製されている場合にはフリーラジカル源の量を調整することにより制御される。
【0132】
有利には、ポリジオールオリゴマーA1の多分散指数(Ip)は、1.05~4.0の範囲、好ましくは1.10~3.8の範囲である。多分散指数は、ポリ(メチルメタクリレート)換算を利用したサイズ排除クロマトグラフィー測定により得られる。
【0133】
[化合物A2]
[ボロン酸ジエステル化合物A2]
一実施形態において、2つのボロン酸エステル基を含む化合物A2は一般式(III)を有する。
【化22】
式中、
- w1およびw2は、同一でも異なっていてもよく、0または1に等しい整数であり;
- R
4、R
5、R
6、およびR
7は、同一でも異なっていてもよく、水素、および1~30個の炭素原子(好ましくは4~18個の炭素原子、さらに優先的には6~14個の炭素原子)を含む炭化水素系基であって、任意でヒドロキシ基、および-OJ基または-C(O)-O-J基から選択される1つ以上の基で置換された炭化水素系基からなる群から選択され、ここで、Jは、1~24個の炭素原子を含む炭化水素系基であり(好ましくは、Jは、4~18個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子を含み);
- Lは、C
6-C
18アリール、C
7-C
24アラルキル、およびC
2-C
24炭化水素系鎖からなる群から選択される二価結合基である。
好ましくは、前記炭化水素系鎖は直鎖状アルキル基である。好ましくは、前記炭化水素系鎖は6~16個の炭素原子を含む。好ましくは、LはC
6-C
18アリールである。
【0134】
本発明の一実施形態において、化合物A2は上記の一般式(III)の化合物であり、
式中、
- w1およびw2は、同一でも異なっていてもよく、0または1に等しい整数であり;
- R4およびR6は同一であり、水素原子であり;
- R5およびR7は同一であり、1~24個の炭素原子(好ましくは4~18個の炭素原子、好ましくは6~16個の炭素原子)を含む炭化水素系基(好ましくは直鎖状アルキル)であり;
- Lは二価結合基であり、C6-C18アリール(好ましくはフェニル)である。
【0135】
上記の式(III)のボロン酸ジエステル化合物A2は、特許文献1または特許文献2に記載される方法に従って得られる。
【0136】
[ポリ(ボロン酸エステル)オリゴマー化合物A2]
他の実施形態において、少なくとも2つのボロン酸エステル基を含む化合物A2は、後述する式(IV)の少なくとも2つのモノマーM4と、
- 後述する式(V)の少なくとも1つのモノマーM5、および/または
- 上記で定義した式(X)の少なくとも1つのモノマーM3
との共重合に起因するポリ(ボロン酸エステル)オリゴマーである。
【0137】
本特許出願の以降の記載において、表現「ボロン酸エステルオリゴマーまたはコポリマー」および「ポリ(ボロン酸エステル)オリゴマーまたはコポリマー」は等価であり、同一のコポリマーを示す。
【0138】
有利には、ポリ(ボロン酸エステル)コポリマーの数平均モル質量は、600g/mol~10000g/molの範囲である。
【0139】
好ましくは、ボロン酸エステルオリゴマーA2の数平均モル質量は、600g/mol~10000g/mol未満、有利には600g/mol~9500g/mol、さらに好適には600g/mol~5000g/molの範囲である。
【0140】
数平均モル質量は、ポリ(メチルメタクリレート)換算を利用したサイズ排除クロマトグラフィー測定により得られる。ポリ(メチルメタクリレート)換算を利用したサイズ排除クロマトグラフィー測定法は、公表文献(Fontanille, M.; Gnanou, Y., Chimie et physico-chimie des polymeres [Chemistry and physical chemistry of polymers] 2nd ed.; Dunod: 2010; page 546)に記載されている。
【0141】
[式(IV)のモノマーM4]
ボロン酸エステルオリゴマー化合物A2のモノマーM4は、一般式(IV)を有し、
【化23】
式中、
- tは、0または1に等しい整数であり;
- uは、0または1に等しい整数であり;
- MおよびR
8は、同一または異なる二価結合基であり、C
6-C
18アリール、C
7-C
24アラルキル、およびC
2-C
24アルキルからなる群から選択され(好ましくはC
6-C
18アリールであり)、
- Xは、-O-C(O)-、-C(O)-O-、-C(O)-N(H)-、-N(H)-C(O)-、-S-、-N(H)-、-N(R’
4)-、および-O-からなる群から選択される基であり、ここで、R’
4は、1~15個の炭素原子を含む炭化水素系鎖であり;好ましくは、炭化水素系鎖R’
4は直鎖状アルキル基であり;好ましくは、R’
4は1~8個の炭素原子を含み;
- R
9は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群(好ましくは-Hおよび-CH
3からなる群)から選択され;
- R
10およびR
11は、同一でも異なっていてもよく、水素、および1~30個の炭素原子(好ましくは4~18個の炭素原子、さらに優先的には6~14個の炭素原子)を含む炭化水素系基であって、任意でヒドロキシ基、および-OJ基または-C(O)-O-J基から選択される1つ以上の基で置換された炭化水素系基からなる群から選択され、ここで、Jは、1~24個の炭素原子を含む炭化水素系基である(好ましくは、炭化水素系鎖Jは4~18個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子を含む)。
【0142】
一実施形態において、モノマーM4は一般式(IV)を有し、
式中、
- tは、0または1に等しい整数であり;
- uは、0または1に等しい整数であり;
- MおよびR8は、異なる二価結合基であり、Mは、C6-C18アリール(好ましくはフェニル)であり、R8は、C7-C24アラルキル(好ましくはベンジル)であり;
- Xは、-O-C(O)-、-C(O)-O-、-C(O)-N(H)-、および-O-からなる群から選択される基であり(好ましくは-C(O)-O-または-O-C(O)-であり);
- R9は、-Hおよび-CH3からなる群から選択され(好ましくは-Hであり);
- R10およびR11は異なり、R10およびR11の一方の基がHであり、R10およびR11の他方の基が炭化水素系鎖(好適には、1~24個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子を含む直鎖状アルキル基)である。
【0143】
一実施形態において、モノマーM4はスチレンモノマーである。この場合、式(IV)において、u=1であり、R9はHであり、R8はC6-C18アリールもしくはC7-C24アラルキルを表し、かつ、式(IV)のモノマーM4の二重結合がアリール基に直接結合される。
【0144】
[式(IV)のモノマーM4の合成]
上記の式(IV)のモノマーM4は、特許文献1または特許文献2に記載される方法に従って得られる。
【0145】
[一般式(V)のモノマーM5]
ボロン酸エステルコポリマー化合物A2のモノマーM5は一般式(V)を有する。
【化24】
式中、
- R
12は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群(好ましくは-Hおよび-CH
3からなる群)から選択され;
- R
13は、-C(O)-O-R’
13、-O-R’
13、-S-R’
13、および-C(O)-N(H)-R’
13からなる群から選択され、ここで、R’
13はC
1-C
25アルキル基である。
【0146】
好ましくは、R’13は直鎖状である。
【0147】
式(V)のモノマーの中でも、式(V-A)に対応するモノマーが特に好適である。
【化25】
式中、
- R
2は、-H、-CH
3、および-CH
2-CH
3からなる群(好ましくは-Hおよび-CH
3からなる群)から選択され;
- R’
13は、C
1-C
25アルキル基(好ましくは直鎖状C
1-C
25アルキル、さらに好ましくは直鎖状C
5-C
15アルキル)である。
【0148】
[モノマーM5の製造]
式(V)および(V-A)のモノマーは、当業者に周知である。これらのモノマーは、Sigma-Aldrich(登録商標)およびTCI(登録商標)により販売されている。
【0149】
[ポリ(ボロン酸エステル)オリゴマー化合物A2の合成]
当業者は、その技術常識に基づいて、ボロン酸エステルオリゴマーまたはコポリマーを合成することができる。共重合は、フリーラジカル発生化合物を用いる塊状(バルク)重合、または有機溶媒中でフリーラジカル発生化合物を用いる溶液重合により開始してもよい。例えば、ボロン酸エステルオリゴマーまたはコポリマーは、既知のラジカル共重合プロセス(特に、可逆的付加開裂連鎖移動反応(RAFT)制御ラジカル重合として知られる方法および原子移動ラジカル重合(ATRP)として知られる方法などの制御ラジカル共重合)によって得られる。本発明のコポリマーまたはオリゴマーを調製するために、従来のラジカル重合およびテロメリゼーションを利用してもよい(Moad, G.; Solomon, D.H., The Chemistry of Radical Polymerization. 2nd ed.; Elsevier Ltd: 2006; page 639; Matyaszewski, K.; Davis, T.P. Handbook of Radical Polymerization; Wiley-Interscience: Hoboken, 2002; page 936)。
【0150】
ボロン酸エステルコポリマーまたはオリゴマーは、少なくとも、
i)上記で定義した一般式(IV)の2つの第1のモノマーM4;
ii)任意で、上記で定義した一般式(V)の少なくとも1つのモノマーM5;
iii)任意で、上記で定義した一般式(X)の少なくとも1つのモノマーM3;
iv)少なくとも1種のフリーラジカル源
を接触させる少なくとも1つの重合ステップ(a)を含む方法に従って準備される。
【0151】
一実施形態において、前記方法は、v)少なくとも1種の連鎖移動剤を含んでいてもよい。
【0152】
一般式(IV)、(V)および(X)について説明した好ましい事項および定義は、上記方法にも適用される。
【0153】
ラジカル源および連鎖移動剤は、ポリジオールオリゴマーの合成について説明したものである。ラジカル源および連鎖移動剤について説明した好ましい事項は、この方法にも適用される。
【0154】
[ポリ(ボロン酸エステル)オリゴマー化合物A2の特性]
有利には、一般式(IV)のモノマーM4のR10、M、(R8)u(ここで、uは0または1に等しい整数である)、およびXのシークエンスにより構成される鎖は、炭素原子の総数が8~38個、好ましくは10~26個の範囲である。
【0155】
有利には、ボロン酸エステルコポリマーまたはオリゴマーの側鎖の平均長さは、炭素原子8個よりも長く、好ましくは11~16個の範囲である。この鎖長により、ボロン酸エステルコポリマーまたはオリゴマーを疎水性媒体に溶解させることが可能である。用語「側鎖の平均長さ」は、コポリマーまたはオリゴマーを構成する各モノマーの側鎖の平均長さを意味する。スチレンモノマーに由来する側鎖は、当該側鎖の平均長さを計算する際に考慮されていない。ボロン酸エステルコポリマーまたはオリゴマーを構成するモノマーの種類および比率を適切に選択することによってこの平均長さを得る方法は、当業者に知られている。
【0156】
有利には、ボロン酸エステルオリゴマーA2は、前記コポリマーまたはオリゴマーにおける式(IV)のモノマーM4のモル百分率が4%~50%(好ましくは4%~30%)の範囲である。
【0157】
有利には、ボロン酸エステルオリゴマーA2は、前記コポリマーまたはオリゴマーにおける式(IV)のモノマーM4のモル百分率が4%~50%(好ましくは4%~30%)の範囲であり、前記コポリマーまたはオリゴマーにおける式(V)のモノマーM5のモル百分率が50%~96%(好ましくは70%~96%)の範囲である。
【0158】
有利には、ボロン酸エステルオリゴマーA2は、前記オリゴマーにおける式(X)のモノマーM3のモル百分率が、2mol%~50mol%(優先的には3mol%~40mol%、より好ましくは5mol%~35mol%)の範囲である。
【0159】
有利には、ボロン酸エステルオリゴマーの数平均重合度は2~100(好ましくは2~50)の範囲である。
【0160】
有利には、ボロン酸エステルオリゴマーの多分散指数(Ip)は、1.04~3.54(好ましくは1.10~3.10)の範囲である。これらの値は、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、ポリ(メチルメタクリレート)換算を利用したサイズ排除クロマトグラフィーにより得られる。
【0161】
化合物A2(特にボロン酸エステルオリゴマー)は、エステル交換反応により、疎水性媒体(特に無極性媒体)中で、ジオール基を有する化合物と反応可能であるという特性を有する。このエステル交換反応は、下記のスキーム1により表すことができる。
【化26】
よって、エステル交換反応の間、原料ボロン酸エステルの構造とは異なる化学構造のボロン酸エステルが、以下に示すような炭化水素系基の交換により形成される。
【化27】
【0162】
[外因性化合物A4]
一実施形態によれば、添加剤組成物は、少なくとも、
- ポリジオールオリゴマーA1と、
- 少なくとも2つのボロン酸エステル基を含む化合物A2(少なくとも2つのボロン酸エステル基を含むオリゴマーA2であってもよい)であって、少なくとも1つのエステル交換反応により前記ポリジオールオリゴマーA1と会合可能な化合物A2と、
- 外因性ポリオール化合物A4と、
を混合することに起因する。
【0163】
有利には、本発明の本実施形態によれば、添加剤組成物において、化合物A2のボロン酸エステル基に対する外因性化合物A4のモル百分率は、0.025%~5000%、好ましくは0.1%~1000%、より好ましくは0.5%~500%、さらに好ましくは1%~150%の範囲である。
【0164】
外因性化合物A4は、多価アルコール(特に1,2-ジオール、1,3-ジオール)およびグリセリン誘導体から選択される。本発明において、用語「外因性化合物」は、少なくとも1種のポリジオールオリゴマーA1および少なくとも1種の化合物A2(特にポリ(ボロン酸エステル)オリゴマー)の混合に起因する添加剤組成物に添加される化合物を意味する。
【0165】
化合物A4は、少なくとも1つのジオール基を含み、潤滑剤組成物における使用に適合する有機化合物から選択される。好ましくは、化合物A4は、2~30個の炭素原子を含む炭化水素系化合物から選択される。
【0166】
好ましくは、この外因性化合物A4は、潤滑剤添加剤(例えば、潤滑剤組成物中で摩擦調整剤、増粘剤、分散剤または清浄剤として作用するとして知られる化合物)から選択される。
【0167】
外因性化合物A4は、特に、1,2-ジオールおよび1,3-ジオール、ならびにグリセリン誘導体から選択してもよい。
【0168】
好ましい実施形態によれば、外因性化合物A4は一般式(VI)を有していてもよい。
【化28】
式中、
w3は、0または1に等しい整数であり、
R
14およびR
15は、同一でも異なっていてもよく、水素、および1~24個の炭素原子(好ましくは4~18個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子)を含む炭化水素系鎖からなる群から選択される(好ましくは、炭化水素系鎖は直鎖状アルキル基である)。好ましくは、炭化水素系鎖は、4~18個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子を含む。
【0169】
一実施形態において、外因性化合物A4は一般式(VI)を有し、
式中、
- w3は、0または1に等しい整数であり;
- R14およびR15は、同一でも異なっていてもよく、-T、-CH2-O-T、および-CH2-O-C(O)-Tからなる群から選択され、Tは、水素、および1~24個の炭素原子(好ましくは4~18個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子)を含む炭化水素系鎖(好ましくは直鎖状アルキル鎖)からなる群から選択される。
【0170】
一実施形態において、外因性化合物A4は一般式(VI)を有し、
式中、
- w3は、0または1に等しい整数であり;
- R14およびR15は異なり、R14およびR15の一方の基がHであり、R14およびR15の他方の基が炭化水素系鎖(好適には、1~24個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子を含む直鎖状アルキル基)である。
【0171】
他の好ましい実施形態において、外因性化合物は、糖類および糖誘導体から選択される。
【0172】
当業者は、その技術常識に基づいて、糖類および糖誘導体の中から潤滑油に適合するものを選択することができる。
【0173】
式(VI)の化合物は、以下のサプライヤーから市販されている:Sigma-Aldrich(登録商標)、Alfa Aesar(登録商標)およびTCI(登録商標)。
【0174】
[外因性化合物A5]
一実施形態によれば、添加剤組成物は、少なくとも、
- ポリジオールオリゴマーA1と、
- 少なくとも2つのボロン酸エステル基を含む化合物A2(特に、少なくとも2つのボロン酸エステル基を含むコポリマー、有利にはオリゴマーA2)であって、少なくとも1つのエステル交換反応により前記ポリジオールオリゴマーA1と会合可能な化合物A2と、
- 式(XI)に対応する化合物から選択される外因性化合物A5と
を混合することに起因し、
【化29】
式中、
- Qは、1~30個の炭素原子を含み、任意でヒドロキシ基、-OJ基または-C(O)-O-J基から選択される1つ以上の基で置換された炭化水素系基から選択される基を表し、ここで、Jは、1~24個の炭素原子を含む炭化水素系基であり;
- G
4およびG
5は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、1~24個の炭素原子を含む炭化水素系鎖、ヒドロキシ基、-OJ基または-C(O)-O-J基から選択される基を表し、ここで、Jは、1~24個の炭素原子を含む炭化水素系基であり;
- gは、0または1である。
【0175】
有利には、外因性化合物A5は式(XIIA)に対応する。
【化30】
式中、
- G
1、G
2、G
3、G
4およびG
5は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、1~24個の炭素原子を含む炭化水素系鎖、ヒドロキシ基、-OJ基または-C(O)-O-J基から選択される基を表し、ここで、Jは、1~24個の炭素原子を含む炭化水素系基であり;
- gは、0または1である。
【0176】
好ましい実施形態によれば、オリゴマーA1のジオール基に対する外因性化合物A5のモル百分率は、0.025%~5000%、好ましくは0.1%~1000%、より好ましくは0.5%~500%、さらに好ましくは1%~150%の範囲である。
【0177】
好ましい実施形態によれば、外因性化合物A5は、式(XIIB)に対応する化合物から選択される。
【化31】
【0178】
より好ましい実施形態によれば、外因性化合物A5は、式(XIIB)に対応する化合物から選択され、ここで、g=0であり、G4=Hであり、G5はC1-C24アルキルを表す。
【0179】
エステル交換反応により、外因性化合物A5は、式(XIII)のジオールフラグメントA6をin-situで放出する。
【化32】
【0180】
[本発明の新規な添加剤組成物の特徴]
本発明の添加剤組成物は、上記で定義される少なくとも1種のポリジオールオリゴマーA1、上記で定義される少なくとも1種の化合物A2、および任意で、上記に定義される少なくとも1種の外因性化合物A4またはA5を混合することに起因する組成物であって、温度に応じて、ならびに使用する化合物A1、A2および任意の化合物A4、A5の比率に応じて大きく異なるレオロジー特性を有する。
【0181】
上記で定義されるポリジオールオリゴマーA1および化合物A2は、会合性であり、かつ化学結合を交換するという利点を有し、特に、疎水性媒体(特に無極性疎水性媒体)において会合性であり、かつ化学結合を交換するという利点を有する。
【0182】
特定の条件下では、上記で定義されるポリジオールオリゴマーA1および化合物A2は架橋されてもよい。
【0183】
また、ポリジオールオリゴマーA1および化合物A2は交換可能であるという利点を有する。
【0184】
用語「会合性」は、ボロン酸エステル型の共有結合性の化学結合が、ポリジオールオリゴマーA1と、少なくとも2つのボロン酸エステル基を含む化合物A2との間に形成されることを意味する。ポリジオールA1および化合物A2の官能性に応じて、および混合物の組成に応じて、ポリジオールA1と化合物A2との間に共有結合が形成されることにより、任意で、三次元ポリマーネットワークを形成することが可能となる。
【0185】
用語「化学結合」は、ボロン酸エステル型の共有結合性の化学結合を意味する。
【0186】
用語「交換可能」は、化合物が、化学官能基の総数または性質を変化させることなく、当該化合物間で化学結合を交換できるということを意味する。化学交換反応(エステル交換反応)を下記反応スキーム2に示す。
【化33】
ここで、
- Rは、化合物A2の化学基であり、
- 斜線の入った丸は、化合物A2の化学構造の残部を表し、
- 交差罫線の入った長方形は、ポリジオールオリゴマーA1の化学構造の残部を表す。
【0187】
化合物A2のボロン酸エステル結合(任意で、化合物A2のボロン酸エステルと外因性化合物A4との間のエステル交換反応により形成されたボロン酸エステル結合)、およびポリジオールオリゴマーA1と化合物A2との会合により形成されたボロン酸エステル結合は、in-situで放出された化合物A3により生じたジオール基、および、任意で外因性化合物A4および/またはA5により生じたジオール基と交換することにより、ボロン酸エステル基およびジオール基の総数に影響を与えることなく、新規なボロン酸エステルおよび新規なジオール基を形成することができる。当該他の化学結合交換プロセスは、ジオールの存在下でボロン酸エステル基を連続的に交換することによるメタセシス反応により行なわれる。
図2には他の化学結合交換プロセスが示されており、同図では、オリゴマーA2-1と会合していたポリジオールオリゴマーA1-1が、ボロン酸エステルオリゴマーA2-2と2つのボロン酸エステル結合を交換したことがわかる。オリゴマーA2-2と会合していたポリジオールオリゴマーA1-2は、ボロン酸エステルオリゴマーA2-1と2つのボロン酸エステル結合を交換し、当該組成物中のボロン酸エステル結合の総数は変わらず、4となる。その後、オリゴマーA1-1はオリゴマーA2-2と会合する。次に、オリゴマーA1-2はオリゴマーA2-1と会合する。オリゴマーA2-1はポリマーA2-2と交換された。
【0188】
用語「架橋された」とは、コポリマーまたはオリゴマーの高分子鎖の間に架橋を形成することにより得られたネットワーク状のコポリマーまたはオリゴマーをいう。互いに結合したこれらの鎖は、その大部分が三次元空間において分散している。架橋されたコポリマーまたはオリゴマーは三次元ネットワークを形成する。実際上、コポリマーまたはオリゴマーネットワークの形成は、溶解度試験により確認される。同じ化学的性質の非架橋コポリマーを溶解するとして知られる溶剤にコポリマーネットワークを投入することにより、コポリマーネットワークが形成されていることを確認することができる。コポリマーが溶解されずに膨潤する場合、当業者は、ネットワークが形成されているということを把握できる。
図3には、この溶解度試験が示されている。
【0189】
用語「架橋可能」とは、架橋可能なコポリマーまたはオリゴマーであることをいう。
【0190】
用語「可逆的に架橋された」は、可逆的化学反応によって架橋が形成される架橋コポリマーまたはオリゴマーを指す。可逆的化学反応は、一方向または他方向に進めることができ、高分子ネットワークの構造に変化を生じさせる。コポリマーまたはオリゴマーは、当初の非架橋状態から架橋状態(三次元コポリマーネットワーク)へと、および架橋状態から当初の非架橋状態へと移行することができる。本発明において、コポリマーまたはオリゴマー鎖の間に形成される架橋は不安定である。これらの架橋は、可逆的化学反応によって形成または交換されてもよい。本発明において、この可逆的化学反応は、オリゴマー(コポリマーA1)のジオール基と、架橋剤(化合物A2)のボロン酸エステル基との間におけるエステル交換反応である。形成される架橋はボロン酸エステル型の結合である。これらのボロン酸エステル結合は、共有結合であり、エステル交換反応の可逆性により不安定な結合である。
【0191】
ポリジオールオリゴマーA1と化合物A2との間に形成することができるボロン酸エステル結合の量は、当業者がポリジオールオリゴマーA1、化合物A2および混合物の組成を適切に選択することにより調整される。
【0192】
また、オリゴマーA1の構造に応じて化合物A2の構造を選択する方法は、当業者に知られている。好ましくは、少なくとも1つのモノマーM1を含むオリゴマーA1においてy=1であるとき、好ましくは、一般式(III)の化合物A2または式(IV)の少なくとも1つのモノマーM4を含むコポリマーもしくはオリゴマーA2が選択され、ここで、w1=1、w2=1、t=1である。
【0193】
ポリジオールオリゴマーA1および化合物A2(特に、ポリ(ボロン酸エステル)オリゴマー)の会合度を制御することにより、当該組成物の粘度およびレオロジー挙動を調整する。外因性化合物A4および/またはA5が存在する場合、これらの外因性化合物により、所望の用途に応じて組成物の粘度を調整することが可能となる。
【0194】
本発明の好ましい実施形態において、外因性化合物A4は、ポリジオールオリゴマーA1と化合物A2(特に、ポリ(ボロン酸エステル)オリゴマー)との間のエステル交換反応によりin-situで放出されたジオール化合物A3と同じ化学的性質を有する。本実施形態によれば、前記組成物中に存在する遊離ジオールの総量は、in-situで放出されたジオール化合物の量よりも厳密に大きい。用語「遊離ジオール」は、エステル交換反応によりボロン酸エステル型の化学結合を形成することが可能なジオール基を意味する。本特許出願において、用語「遊離ジオールの総量」は、エステル交換反応によりボロン酸エステル型の化学結合を形成することが可能なジオール基の総数を意味する。
【0195】
本実施形態によれば、遊離ジオールの総量は、常に、外因性ジオール化合物A4のモル数およびポリジオールオリゴマーA1のジオール基の(モルで表した)数の合計と等しい。換言すれば、添加剤組成物において、
- “i”モルの外因性ジオール化合物A4と、
- “j”モルのポリジオールオリゴマーA1と
が存在する場合、任意の時点において、したがってポリジオールオリゴマーA1と化合物A2(特にポリ(ボロン酸エステル)オリゴマーA2)との間の会合度にかかわらず、遊離ジオールの総量=i+j*(A1オリゴマー鎖当たりのジオールの平均数(単位:モル))となる。
【0196】
A1とA2との間のエステル交換反応の場合において、in-situで放出されるジオールの量は、オリゴマーA1およびA2を結合するボロン酸エステル基の数と等しい。
【0197】
化合物A2のボロン酸エステル基のモル百分率に応じて、特にポリ(ボロン酸エステル)オリゴマーに応じて、添加剤組成物に添加する外因性化合物A4の化学構造および量を選択して添加剤組成物のレオロジー挙動を調整する方法は、当業者に知られている。
【0198】
有利には、組成物中のオリゴマーA1の含有量は、組成物の総重量に対して0.1重量%~50.0重量%、好ましくは最終組成物の総重量に対して0.25重量%~40重量%、より好ましく最終組成物の総重量に対して1重量%~40重量%の範囲である。
【0199】
有利には、組成物中の化合物A2の含有量は、組成物の総重量に対して0.1重量%~50.0重量%、好ましくは最終組成物の総重量に対して0.25重量%~40重量%、より好ましく最終組成物の総重量に対して1重量%~40重量%の範囲である。
【0200】
一実施形態において、組成物中のオリゴマーA1の含有量は、組成物の総重量に対して0.1重量%~50.0重量%の範囲であり、組成物中の化合物A2(特にボロン酸エステルオリゴマー)の含有量は、組成物の総重量に対して0.1重量%~50.0重量%の範囲である。
【0201】
優先的には、組成物におけるポリジオールオリゴマーA1と化合物A2との質量比(A1/A2の比)は、0.002~500、好ましくは0.05~20、さらに好ましくは0.1~10の範囲である。
【0202】
一実施形態において、本発明の組成物はストック組成物の形態である。用語「ストック組成物」は、当業者が、一定量の原液に所望の濃度を得るために必要な量の希釈液(溶剤など)を添加することにより娘溶液を作製することができる組成物を意味する。よって、娘組成物はストック組成物の希釈により得られる。
【0203】
疎水性媒体は、溶剤、鉱油、天然油または合成油であってもよい。
【0204】
一実施形態において、本発明の組成物は、熱可塑性ポリマー、エラストマー、熱可塑性エラストマー、熱硬化性ポリマー、顔料、染料、充填剤、可塑剤、繊維、酸化防止剤、潤滑油添加剤、相溶化剤、消泡剤、分散添加剤、接着促進剤、および安定剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0205】
[本発明の新規な添加剤組成物の調製方法]
本発明の新規な添加剤組成物は、当業者に周知の手段により調製される。例えば、当業者は、特に、
- 上記で定義されるポリジオールオリゴマーA1を含む溶液を所望量準備し;
- 上記で定義される化合物A2を含む溶液を所望量準備し;特に、上記で定義されるポリ(ボロン酸エステル)オリゴマーを含む溶液を所望量準備し;
- 任意で、上記で定義される外因性化合物A4および/またはA5を含む溶液を所望量準備し;
- これらの溶液を同時または逐次的に混合して、本発明の組成物を得るだけでよい。
【0206】
化合物を添加する順番は、添加剤組成物の調製方法の実施に影響しない。
【0207】
[本発明の新規な組成物の使用]
本発明の組成物は、温度に応じて粘度が変化するあらゆる媒体に用いることができる。本発明の組成物は、液体を増粘し、使用温度に応じて粘度を調整することを可能とする。本発明に係る添加剤組成物は、石油増進回収、製紙業、塗料、食品添加剤、および化粧品または医薬製剤などの様々な分野において用いることができる。
【0208】
前記添加剤組成物は、特に有利には、エンジンの潤滑剤添加剤として使用される。
【0209】
[本発明に係る潤滑剤組成物]
本発明の他の主題は、少なくとも、
- 潤滑油と、
- 上記で定義されるポリジオールオリゴマーA1と、
- 上記で定義される化合物A2であって、少なくとも2つのボロン酸エステル基を含み、少なくとも1つのエステル交換反応によって前記ポリジオールオリゴマーA1と会合可能な化合物A2と、
― 任意で、上記で定義される外因性化合物A4および/またはA5と、
を混合することに起因する潤滑剤組成物に関する。
【0210】
一般式(I)、(I-A)、(I-B)、(II-A)、(II-B)および(X)について説明した好ましい事項および定義は、本発明の潤滑剤組成物に用いられるポリジオールオリゴマーA1にも適用される。
【0211】
一般式(III)、(IV)、(V)および(X)について説明した好ましい事項および定義は、本発明の潤滑剤組成物に用いられるボロン酸エステル化合物A2にも適用される。
【0212】
本発明に係る潤滑剤組成物は、基油の挙動と比較して温度変化に対して粘度がより安定であるという利点を有する。有利なことに、この利点により潤滑剤組成物の粘度が制御され、温度変動に対する依存性が小さくなる。また、所与の使用温度において、潤滑剤組成物に添加するジオール化合物またはボロン酸エステルの量を変えることにより、潤滑剤組成物の粘度およびレオロジー挙動を調整することが可能である。よって、本発明の潤滑剤組成物は、熱安定性が向上し、酸化に対する安定性が向上し、粘度指数が向上し、経時的にサイクル耐性が向上し、より良好な性能品質の再現性を有する。より具体的には、力学的劣化に対する耐性がより良好である。
【0213】
[潤滑油]
用語「油」は、室温(25℃)および大気圧(760mmHg、すなわち105Pa)で液体の脂肪性物質を意味する。
【0214】
用語「潤滑油」は、2つの可動部品間の摩擦を低減して、これらの部品の動作を促進する油を意味する。潤滑油は、天然由来、鉱物由来または合成由来のものであってもよい。
【0215】
天然由来の潤滑油は、植物由来または動物由来の油(好ましくは、なたね油、ひまわり油、パーム油、ココナッツ核油などの植物由来の油)であってもよい。
【0216】
鉱物由来の潤滑油は、石油由来のものであり、原油の常圧蒸留および減圧蒸留から生じる石油留分から抽出される。蒸留後、溶剤抽出、脱歴、溶剤を用いた脱パラフィン処理、水素化処理、水素化分解、水素異性化、水素化仕上げなどの精製作業を行ってもよい。例として挙げると、オイルブライトストック溶剤(BSS)などのパラィフン系鉱物基油、ナフテン系鉱物基油、芳香族鉱油、粘度指数約100の水素化精製鉱物基油、粘度指数120~130の水素化分解鉱物基油、または粘度指数140~150の水素異性化鉱物基油である。
【0217】
合成由来の潤滑油(または合成基油)は、その名称が示すように、ある物質のそれ自体への付加もしくは重合、または、ある物質に対する他の物質の付加(石油化学、炭素化学および鉱物化学に由来する成分、例えば、オレフィン、芳香族化合物、アルコール、酸性物質、ハロゲン系化合物、リン系化合物、シリコン系化合物などのエステル化、アルキル化、フッ素化など)といった化学合成に由来する。例として挙げると、
- ポリ-α-オレフィン(PAO)、内部ポリオレフィン(IPO)、ポリブテンおよびポリイソブテン(PIB)、アルキルベンゼンおよびアルキル化ポリフェニルなどの合成炭化水素をベースとする合成油;
- 二酸エステルまたはネオポリオールエステルなどのエステルをベースとする合成油;
- モノアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、およびポリアルキレングリコールモノエーテルなどのポリグリコールをベースとする合成油;
- リン酸エステルをベースとする合成油;
- シリコーン油またはポリシロキサンなどのシリコン誘導体をベースとする合成油である。
【0218】
本発明の組成物に使用し得る潤滑油は、下記に要約されるような、APIガイドライン(Base Oil Interchangeability Guidelines of the American Petroleum Institute (API))に規定されるグループI~Vの任意の油(またはATIEL分類(Association Technique de l’Industrie Europeenne des Lubrifiants)に準じたその等価物)から選択してもよい。
【0219】
【0220】
本発明の組成物は、1種以上の潤滑油を含んでいてもよい。潤滑油または潤滑油混合物は、潤滑剤組成物の主成分である。よって、潤滑剤基油と称される。用語「主成分」は、潤滑油または潤滑油混合物が、組成物の総重量に対して少なくとも51重量%に相当することを意味する。
【0221】
好ましくは、潤滑油または潤滑油混合物は、組成物の総重量に対して少なくとも70重量%に相当する。
【0222】
本発明の一実施形態において、潤滑油は、API分類のグループI、グループII、グループIII、グループIV、およびグループVの油、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、潤滑油は、API分類のグループIII、グループIV、およびグループVの油、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、潤滑油はAPI分類のグループIIIの油である。
【0223】
潤滑油の動粘度(kinematic viscosity)は、ASTM D445に準じて測定したとき、100℃において2~150cStの範囲、好ましくは2~15cStの範囲である。
【0224】
[機能性添加剤]
一実施形態において、本発明の組成物は、清浄剤、耐摩耗剤、極圧添加剤、酸化防止剤、粘度指数向上ポリマー、流動点向上剤、消泡剤、増粘剤、防蝕剤、分散剤、摩擦調整剤およびそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の機能性添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0225】
本発明の組成物に加えられる機能性添加剤は、潤滑剤組成物の最終用途に応じて選択される。これらの添加剤は2つの異なる方法で導入し得る:
- 各添加剤を個別かつ逐次的に組成物に添加する、または
- 全ての添加剤を同時に組成物に添加する;この場合、添加剤は、添加剤パックとして知られるパック形式で一般に入手可能である。
【0226】
機能性添加剤または機能性添加剤の混合物は、存在する場合、組成物の総重量に対して0.1重量%~10重量%の範囲に相当する。
【0227】
清浄剤:
清浄剤は、酸化副生成物および燃焼副生成物を溶解することにより金属部品の表面における沈着物の形成を低減する。本発明に係る潤滑剤組成物に使用し得る清浄剤は、当業者に周知である。潤滑剤組成物の配合に一般に用いられる清浄剤は、典型的には、親油性の炭化水素系長鎖および親水性の頭部を含むアニオン性化合物である。会合するカチオンは、典型的に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の金属カチオンである。清浄剤は、カルボン酸、スルホン酸、サリチル酸およびナフテン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、ならびに石炭酸塩から優先的に選択される。アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、優先的に、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムまたはバリウムである。これらの金属塩は、略化学量論量または過剰量(化学量論量よりも多量)の前記金属を含んでいてもよい。後者の場合、これらの清浄剤は過塩基性清浄剤として知られている。清浄剤に過塩基性を付与する過剰な金属は、例えば、炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、酢酸塩、グルタメートなどの油不溶性金属塩の形態(優先的には炭酸塩)である。
【0228】
耐摩耗剤および極圧添加剤:
これらの添加剤は、摩擦面に吸着する保護膜を形成することにより摩擦面を保護する。耐摩耗剤および極圧添加剤は様々な種類のものが存在する。実例を挙げると、金属アルキルチオホスフェート(特に亜鉛アルキルチオホスフェート、より具体的には亜鉛ジアルキルジチオホスフェートまたはZnDTP)、アミンホスフェート、ポリスルフィド、特に硫黄系オレフィンおよび金属ジチオカルバメートなどのリン硫黄(phosphosulfur)添加剤である。
【0229】
酸化防止剤:
酸化防止剤は、組成物の劣化を遅らせる。組成物の劣化は、沈着物の形成、スラッジの存在、または組成物の粘度の上昇に反映されることがある。酸化防止剤はラジカル阻害剤またはヒドロペルオキシド破壊剤として作用する。酸化防止剤の中でも、フェノール型またはアミン型の酸化防止剤が一般的に使用される。
【0230】
防蝕剤:
防蝕剤は、金属の表面に酸素が到達することを防止する膜により表面を覆う。防蝕剤は、酸または特定の化学品を中和して、金属の腐食を防止する場合もある。例として挙げると、ジメルカプトチアジアゾール(DMTD)、ベンゾトリアゾールおよび亜リン酸エステル(遊離硫黄捕捉剤)などである。
【0231】
粘度指数向上ポリマー:
粘度指数向上ポリマーにより、組成物において、良好な耐寒性および高温での最小粘度が確保される。例として挙げると、ポリマーエステル、オレフィンコポリマー(OCP)またはポリメタクリレート(PMA)などである。
【0232】
流動点向上剤:
流動点向上剤は、パラフィン結晶の形成を遅らせることにより、組成物の低温時の挙動を向上させる。例えば、ポリアルキルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアルキルフェノール、ポリアルキルナフタレン、およびポリアルキルスチレンが挙げられる。
【0233】
消泡剤:
消泡剤は、清浄剤の効果に反する効果を有する。例を挙げると、ポリメチルシロキサンおよびポリアクリレートなどがある。
【0234】
増粘剤:
増粘剤は、とりわけ、産業上の潤滑に用いられる添加剤であり、エンジン潤滑剤組成物よりも高い粘度の潤滑剤を調製することを可能にする。例を挙げると、重量平均モル質量が10000~100000g/molのポリイソブテンなどである。
【0235】
分散剤:
分散剤は、懸濁の保持、および組成物の使用中に形成される酸化副生成物により構成される不溶性の固体不純物の除去を保証する。例として挙げると、スクシンイミド、PIB(ポリイソブテン)スクシンイミド、およびマンニッヒ塩基などである。
【0236】
摩擦調整剤:
摩擦調整剤は、組成物の摩擦係数を改善させる。例として挙げると、モリブデンジチオカルバメート、および少なくとも16個の炭素原子を有する少なくとも1つの炭化水素系鎖を含むアミンである。
【0237】
[潤滑剤組成物における化合物の含有量]
有利には、潤滑剤組成物中のオリゴマーA1の含有量は、潤滑剤組成物の総重量に対して0.25重量%~40重量%、好ましくは潤滑剤組成物の総重量に対して1重量%~40重量%の範囲である。
【0238】
有利には、化合物A2の含有量は、潤滑剤組成物の総重量に対して0.25重量%~40重量%、好ましくは潤滑剤組成物の総重量に対して1重量%~40重量%の範囲である。
【0239】
優先的には、ポリジオールオリゴマーA1と、化合物A2との質量比(A1/A2の比)は、0.002~500、好ましくは0.05~20、さらに好ましくは0.1~10の範囲である。
【0240】
一実施形態において、オリゴマーA1および化合物A2の質量の和は、潤滑剤組成物の総質量に対して0.2%~50%、有利には0.5%~40%の範囲であり、好ましくは潤滑剤組成物の総量に対して2%~40%の範囲であり、潤滑油の質量は、潤滑剤組成物の総質量に対して50%~99.8%の範囲である。
【0241】
エンジン用途の場合、有利には、オリゴマーA1および化合物A2の質量の和は、潤滑剤組成物の総質量に対して1%~35%に相当する。
【0242】
トランスミッション用途の場合、有利には、オリゴマーA1および化合物A2の質量の和は、潤滑剤組成物の総質量に対して1%~40%に相当する。
【0243】
一実施形態において、潤滑剤組成物中の外因性化合物A4のモル百分率は、化合物A2(特にポリ(ボロン酸エステル)オリゴマー)のボロン酸エステル基に対して、0.025%~5000%、好ましくは0.1%~1000%、より好ましくは0.5%~500%、さらに好ましくは1%~150%の範囲である。
【0244】
他の実施形態において、潤滑剤組成物中の外因性化合物A5のモル百分率は、化合物A1(特にポリジオールオリゴマー)のジオール基に対して、0.025%~5000%、好ましくは0.1%~1000%、より好ましくは0.5%~500%、さらに好ましくは1%~150%の範囲である。
【0245】
一実施形態において、本発明の潤滑剤組成物は、
- 潤滑剤組成物の総重量に対して0.25重量%~40重量%の、上記で定義される少なくとも1種のポリジオールオリゴマーA1;
- 潤滑剤組成物の総重量に対して0.25重量%~40重量%の、上記で定義される少なくとも1種の化合物A2;および
- 任意で、潤滑剤組成物の総重量に対して0.1重量%~10重量%の、上記で定義される少なくとも1種の外因性化合物A4、
- 任意で、潤滑剤組成物の総重量に対して0.1重量%~10重量%の、上記で定義される少なくとも1種の外因性化合物A5、および
- 潤滑剤組成物の総重量に対して20重量%~99.5重量%の、上記で定義される少なくとも1種の潤滑油
を混合することに起因して得られる。
【0246】
他の実施形態において、本発明の潤滑剤組成物は、
- 潤滑剤組成物の総重量に対して0.25重量%~40重量%の、上記で定義される少なくとも1種のポリジオールオリゴマーA1;
- 潤滑剤組成物の総重量に対して0.25重量%~40重量%の、上記で定義される少なくとも1種の化合物A2;および
- 任意で、潤滑剤組成物の総重量に対して0.1重量%~10重量%の、上記で定義される少なくとも1種の外因性化合物A4、および
- 任意で、潤滑剤組成物の総重量に対して0.1重量%~10重量%の、上記で定義される少なくとも1種の外因性化合物A5、
- 潤滑剤組成物の総重量に対して0.5重量%~15重量%の、上記で定義される少なくとも1種の機能性添加剤、および
- 潤滑剤組成物の総重量に対して5重量%~99重量%の、上記で定義される少なくとも1種の潤滑油
を混合することに起因して得られる。
【0247】
本発明の他の主題は、少なくともエンジンを潤滑する組成物であって、前記組成物は、
- 70重量%~99重量%、有利には70重量%~97重量%の潤滑油、
- 1重量%~30重量%、有利には3重量%~30重量%の、上記で定義される少なくとも1種のオリゴマーA1と上記で定義される少なくとも1種のボロン酸エステル化合物A2との混合物;および
- 任意で、0.1重量%~10重量%の、上記で定義される少なくとも1種の外因性化合物A4;
- 任意で、0.1重量%~10重量%の、上記で定義される少なくとも1種の外因性化合物A5;
を混合することに起因する組成物を含み、特に、実質的に当該組成物からなり、前記組成物は、ASTM D445に準じて測定された100℃における動粘度が、3.8~26.1cStの範囲であり;重量比率は、前記組成物の総重量に対して表されている。
【0248】
上記で定義されるような、少なくともエンジンを潤滑する組成物において、上記で定義されるオリゴマーA1および化合物A2は、可逆的に会合および交換することが可能であり、特に外因性化合物A4および/またはA5の存在下で可逆的に会合および交換することが可能であるが、三次元ネットワークは形成しない。オリゴマーA1および化合物A2は架橋されない。
【0249】
一実施形態において、少なくともエンジンを潤滑する組成物は、清浄剤、耐摩耗剤、極圧添加剤、追加の酸化防止剤、防蝕剤、粘度指数向上ポリマー、流動点向上剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、摩擦調整剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の機能性添加剤をさらに含む。
【0250】
本発明の一実施形態において、少なくともエンジンを潤滑する組成物であって、前記組成物は、
- 55重量%~98.5重量%の潤滑油、および
- 1重量%~30重量%の、上記で定義される少なくとも1種のオリゴマーA1と上記で定義される少なくとも1種の化合物A2との混合物;および
- 任意で、0.1重量%~10重量%の、上記で定義される少なくとも1種の外因性化合物A4;
- 任意で、0.1重量%~10重量%の、上記で定義される少なくとも1種の外因性化合物A5;
- 0.5重量%~15重量%の、清浄剤、耐摩耗剤、極圧添加剤、追加の酸化防止剤、防蝕剤、粘度指数向上ポリマー、流動点向上剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、摩擦調整剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の機能性添加剤;
を混合することに起因する組成物を含み、特に、実質的に当該組成物からなり、前記組成物は、ASTM D445に準じて測定された100℃における動粘度が、3.8~26.1cStの範囲であり;重量比率は、前記組成物の総重量に対して表されている。
【0251】
潤滑油、オリゴマーA1、ボロン酸エステル化合物A2、ならびに外因性化合物A4およびA5についての定義および好ましい事項は、少なくともエンジンを潤滑する組成物にも適用される。
【0252】
本発明の他の主題は、少なくともトランスミッション(マニュアルまたはオートマチックギアボックスなど)を潤滑する組成物である。
【0253】
したがって、本発明の他の主題は、少なくともトランスミッションを潤滑する組成物であって、前記組成物は、
- 50重量%~95重量%の潤滑油、および
- 5重量%~40重量%の、上記で定義される少なくとも1種のオリゴマーA1と、上記で定義される少なくとも1種のボロン酸エステル化合物A2との混合物;および
- 任意で、0.1重量%~10重量%の、上記で定義される少なくとも1種の外因性化合物A4;
- 任意で、0.1重量%~10重量%の、上記で定義される少なくとも1種の外因性化合物A5;
を混合することに起因する組成物を含み、特に、実質的に当該組成物からなり、前記組成物は、ASTM D445に準じて測定された100℃における動粘度が、4.1~41cStの範囲であり、重量比率は、前記組成物の総重量に対して表されている。
【0254】
上記のような、少なくともトランスミッションを潤滑する組成物において、上記で定義されるオリゴマーA1およびボロン酸エステル化合物A2は、可逆的に会合および交換することが可能であり、特に外因性化合物A4および/またはA5の存在下で可逆的に会合および交換することが可能であるが、三次元ネットワークは形成しない。オリゴマーA1およびボロン酸エステル化合物A2は架橋されない。
【0255】
一実施形態において、少なくともトランスミッションを潤滑する組成物は、さらに、清浄剤、耐摩耗剤、極圧添加剤、追加の酸化防止剤、防蝕剤、粘度指数向上ポリマー、流動点向上剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、摩擦調整剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の機能性添加剤を含む。
【0256】
本発明の一実施形態において、少なくともトランスミッションを潤滑する組成物は、
- 50重量%~94.9重量%の潤滑油、および
- 5重量%~35重量%の、上記で定義される少なくとも1種のオリゴマーA1と上記で定義される少なくとも1種のボロン酸エステル化合物A2との混合物;および
- 任意で、0.1重量%~10重量%の、上記で定義される少なくとも1種の外因性化合物A4;
- 任意で、0.1重量%~10重量%の、上記で定義される少なくとも1種の外因性化合物A5;
- 0.1重量%~15重量%の、清浄剤、耐摩耗剤、極圧添加剤、追加の酸化防止剤、防蝕剤、粘度指数向上ポリマー、流動点向上剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、摩擦調整剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の機能性添加剤;
を混合することに起因する組成物を含み、特に、実質的に当該組成物からなり、前記組成物は、ASTM D445に準じて測定された100℃における動粘度が、4.1~41cStの範囲であり、重量比率は、前記組成物の総重量に対して表されている。
【0257】
潤滑油、オリゴマーA1、ボロン酸エステル化合物A2、ならびに外因性化合物A4および/またはA5についての定義および好ましい事項は、少なくともトランスミッションを潤滑する組成物にも適用される。
【0258】
[本発明の潤滑剤組成物の調製方法]
本発明の潤滑剤組成物は、当業者に周知の手段により調製される。例えば、当業者は、特に、
- 上記で定義されるポリジオールオリゴマーA1を含む溶液を所望量準備し;
― 上記で定義されるボロン酸エステル化合物A2を含む溶液を所望量準備し;
- 任意で、上記で定義される外因性化合物A4および/またはA5を含む溶液を所望量準備し;
- これらの溶液を同時または逐次的に潤滑剤基油中で混合して、本発明の組成物を得るだけでよい。
【0259】
化合物を添加する順番は、潤滑剤組成物の調製方法の実施に影響しない。
【0260】
[本発明に係る潤滑剤組成物の特性]
本発明の潤滑剤組成物は、会合により潤滑油の粘度を向上する特性を有する会合性ポリマーの混合に起因する。本発明に係る潤滑剤組成物は、これらの会合または架橋が可逆的であり、任意で、追加のジオール化合物の付加によって会合度または架橋度を制御し得るという利点を有する。また、これらの潤滑剤組成物は、熱安定性が向上し、粘度指数が向上し、酸化に対する安定性が向上し、経時的により良好なサイクル性能および性能品質の再現性を有し、さらに力学的劣化に対してより良好な耐性を有する。
【0261】
前記組成物の様々な成分の様々なパラメーターを調整して、用途に適した粘度の潤滑剤組成物を得る方法は、当業者に知られている。
【0262】
ポリジオールオリゴマーA1と化合物A2との間に形成することができるボロン酸エステル結合の量は、当業者がポリジオールオリゴマーA1、化合物A2、および任意で外因性化合物A4および/またはA5を適切に選択し、特に外因性化合物A4および/またはA5のモル百分率を適切に選択することにより調整される。
【0263】
また、オリゴマーA1の構造に応じて化合物A2の構造を選択する方法は、当業者に知られている。好ましくは、少なくとも1つのモノマーM1を含むオリゴマーA1においてy=1であるとき、好ましくは、一般式(III)の化合物A2または式(IV)の少なくとも1つのモノマーM4を含むオリゴマーA2が選択され、ここで、w1=1、w2=1、t=1である。
【0264】
また、特に、
- ポリジオールオリゴマーA1中のジオール基を有するモノマーM1のモル百分率、
- ボロン酸エステルオリゴマーA2中のボロン酸エステル基を有するモノマーM4のモル百分率、
- ポリジオールオリゴマーA1の側鎖の平均長さ、
- ボロン酸エステルオリゴマーA2の側鎖の平均長さ、
- ボロン酸エステルオリゴマーA2のモノマーM4の長さ、
- ポリジオールオリゴマーA1およびボロン酸エステルオリゴマーA2の平均重合度、
- ポリジオールオリゴマーA1の質量百分率、
- ボロン酸エステル化合物A2の質量百分率、
- 任意で、外因性化合物A4および/またはA5の量、
などを調整する方法は、当業者に知られている。
【0265】
[潤滑剤組成物の粘度の調整方法]
本発明の他の主題は潤滑剤組成物の粘度を調整する方法であって、前記方法は、少なくとも、
- 少なくとも1種の潤滑油と;少なくとも1種のポリジオールオリゴマーA1と;少なくとも2つのボロン酸エステル基を含む少なくとも1種の化合物A2であって、少なくとも1つのエステル交換反応により前記ポリジオールオリゴマーA1と会合可能な化合物A2と;を混合することに起因して得られる潤滑剤組成物を準備し、任意で前記潤滑剤組成物に少なくとも1種の外因性化合物A4および/またはA5を添加することを含む方法である。
【0266】
本発明において、用語「潤滑剤組成物の粘度を調整する」は、潤滑剤組成物の用途に応じて粘度を適応させることを意味する。そのような方法は、特許文献3に詳細に記載されている。
【0267】
[本発明に係る他の主題]
本発明の他の主題は、上記で定義される潤滑剤組成物の、機械部分を潤滑するための使用である。
【0268】
本明細書の以降の部分において、比率は、潤滑剤組成物の総重量に対する重量比で表されている。
【0269】
本発明の組成物は、エンジンにおいて通常見られる部品(ピストンシステム、リング、ジャケットなど)の表面を潤滑するために使用してもよい。
【0270】
本発明の組成物は、軽量の乗り物または重荷重用の乗り物だけでなく、船舶のエンジンまたはトランスミッションに使用してもよい。
【0271】
本発明の他の主題は、少なくとも1つの機械部分、特に少なくともエンジンまたは少なくともトランスミッションを潤滑する方法であって、前記機械部分を、上記で定義される少なくとも1つの潤滑剤組成物と接触させるステップを含む方法である。
【0272】
潤滑油、オリゴマーA1、ボロン酸エステル化合物A2、および該当する場合は外因性化合物A4および/またはA5についての定義および好ましい事項は、少なくとも1つの機械部分を潤滑する方法にも適用される。
【実施例】
【0273】
以下の実施例により、制限することなく本発明を説明する。
【0274】
[1.合成]
[1.1.ポリジオールオリゴマーの合成]
[1.1.1.モノマー]
- モノマーM1:ジオール基を有するメタクリレート(mono-Diol):
この合成は、国際公開第2018/096253号(実施例§1.1.1.)に記載されているプロトコルに準じて行われる。
- モノマーM2:ステアリルメタクリレート(StMA):
ステアリルメタクリレートはSigma-Aldrich(登録商標)およびTCI(登録商標)により販売される。
- モノマーM3:スチレン:
スチレンは、Sigma-Aldrich(登録商標)により販売される。
【0275】
[1.1.2.オリゴマーo-Diol-2の合成]
オリゴマーo-Diol-2の合成は以下の反応スキームに従って行われる。
【化34】
【0276】
トルエン(300mL)を、冷却器、温度計および窒素供給源に接続された1L反応器に投入する。窒素を用いたバブリングにより反応媒体を脱気し、温度が100℃に達するまで撹拌する。次に、ステアリルメタクリレート(StMA)、ジオール基を有するメタクリレート(mono-Diol)、スチレン、および2-メルカプトプロピオン酸エチルを含む溶液(溶液1)10mLと、トルエン中のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)溶液(溶液2)25mLとを反応器に投入する。ガスの発生が観察されると、溶液1および溶液2の残部を125分間にわたって添加する。下記の表1.1に添加量を示す。反応の進行をSEC分析により監視する。100℃で4時間の重合後、反応媒体を室温まで冷却する。200mLのメタノールによりポリマーを3回沈殿させる。減圧下、50℃未満の温度で揮発性物質を蒸発させる。その後、残溶媒を除去するために、生成物を真空下、40℃で72時間乾燥させる。96.3gの練状白色固体が得られ、収率は80%である。
【0277】
【0278】
特性評価:
得られたオリゴマーは、1H NMR(400MHz、CDCl3)により測定したところ、22mol%のジオール基を含む繰り返し単位と、77mol%のStMA繰り返し単位と、1mol%のスチレン繰り返し単位とを含む。
【0279】
前記オリゴマーは、40℃におけるポリ(メチルメタクリレート)換算を利用したTHF中のSECにより測定したところ、数平均モル質量が約3900g・mol-1であり、多分散指数が1.26である。
【0280】
[1.2.ボロン酸エステルオリゴマーの合成]
[1.2.1.モノマー]
- モノマーM4:ボロン酸エステル基を有するモノマー(mono-EB):
この合成は、特許文献3(実施例§2.1.)に記載されているプロトコルに準じて行われる。
【0281】
[1.2.2.オリゴマーo-EB-1の合成]
オリゴマーo-EB-1の合成は以下の反応スキームに従って行われる。
【化35】
【0282】
ステアリルメタクリレート、ボロン酸エステル基を有するモノマー(mono-EB)、イソプロパノール、AIBNおよびトルエン(溶液3)を、冷却器、温度計および窒素供給源に接続された500mL反応器に投入する。下記の表1.3に添加量を示す。窒素を用いたバブリングにより反応媒体を30分間脱気し、撹拌し、86℃まで昇温する。反応媒体が75℃のとき、およびガスの発生が観察されたとき、トルエン中のStMAおよびmono-EBの溶液(溶液4)を80分間にわたって滴下する。反応の進行をSEC分析により監視する。80℃で3時間の重合後、反応媒体を室温まで冷却する。300mLのメタノールによりポリマーを3回沈殿させる。減圧下、50℃未満の温度で揮発性物質を蒸発させる。その後、残溶媒を除去するために、生成物を真空下、40℃で72時間乾燥させる。115.6gの練状白色固体が得られ、収率は87%である。
【0283】
【0284】
特性評価:
得られたオリゴマーは、1H NMR(400MHz、CDCl3)により測定したところ、90mol%のボロン酸エステル基を含む繰り返し単位と、10mol%のStMA繰り返し単位とを含む。
【0285】
前記オリゴマーは、40℃におけるポリ(メチルメタクリレート)換算を利用したTHF中のSECにより測定したところ、数平均モル質量が約7100g・mol-1であり、多分散指数が1.74である。
【0286】
[1.3ボロン酸ジエステル分子Di-EBの合成]
分子Di-EBの合成は以下の反応スキームに従って行われる:
【化36】
【0287】
ディーン・スターク装置、冷却器および窒素供給源に接続された三つ口の丸底フラスコ(500mL)に、蒸留水38mL、トルエン200ml、および1-フェニレンジボロン酸38.2gを投入する。得られた混合物は、懸濁液中の固体となる。その後、93.1gの1,2-ドデカンジオールを加える。三つ口フラスコの壁を容易にすすぐことができるように、トルエンの残部200mLを加える。その後、固体が溶解するまで反応媒体を加熱する。前記媒体を窒素雰囲気下に置き、撹拌し、16時間還流する。反応媒体の温度を97℃(水/トルエン共沸混合物の沸点)から111℃(トルエンの沸点)まで上昇させる。共沸により蒸発させた水をディーン・スターク装置から定期的に除去する。還流温度およびディーン・スターク装置から除去された水の量を監視することにより、反応の進行を監視する。
【0288】
16時間後、反応媒体を室温まで冷却する。30℃未満の減圧下、揮発性物質を蒸発させる。得られた白色固体を、ロータリーエバポレーターを用いて2時間乾燥させる。108.1gの白色固形物が得られ、収率は94%である。
【0289】
特性評価:
1H NMR(400MHz、アセトン-D6とTCNB(2,3,4,5-テトラクロロニトロベンゼン)を使用)。
純度>99%
【0290】
[1.4.ポリジオールポリマーp-Diol(比較例)の合成]
ポリジオールポリマーp-Diolの合成は以下の反応スキームに従って行われる。
【化37】
【0291】
冷却器、窒素供給源および滴下漏斗(500mL)に接続された4L反応器に、アニソール734.4g、クミルジチオベンゾエート溶液36.2g、ラウリルメタクリレート45.3g、ステアリルメタクリレート45.2g、スチレン9.3g、mono-Diol2.7gを投入する。ラウリルメタクリレート181.2g、ステアリルメタクリレート180.9gおよびスチレン37.1gを滴下漏斗に投入する。
【0292】
反応器、滴下漏斗およびmono-Diolの残部(50.3g)を、窒素雰囲気下に置く。反応媒体を撹拌しながらT=80℃まで加熱する。反応の進行をSEC分析により監視する。アニソール(3mL)中のAIBN(0.2660g)の溶液を、15分間にわたってゆっくり添加する。その後、mono-Diolの残部をシリンジポンプに投入し、滴下漏斗を用いて他のモノマーを約30時間にわたって投入する。
【0293】
アニソール3mL中にAIBNをそれぞれ0.1362g、0.1338g、および0.1450gを含む3種類の溶液を準備し、これらをt=4時間、t=25時間およびt=45時間の時点で約10分間にわたって添加する。48時間後、反応媒体を室温まで冷却し、150mLのTHFおよび25mLのn-ブチルアミンを添加する。反応媒体を室温で4時間保持し、その後、250mLのアクリル酸ブチルを添加する。室温で18時間撹拌を継続する。
【0294】
その後、生成物を2Lのメタノールにより沈殿させ、沈降による相分離後、上澄み液を廃棄する。沈殿したポリマーをTHFに溶解し、2Lのメタノールにより再度沈殿させる。この操作を3回繰り返す。ポリマーを最小量のTHFに溶解し、その後、グループIIIの基油1000gをポリマーに添加する。溶液の機械的撹拌下、窒素の吹込みにより残存溶媒を除去し、1355.6gのポリジオールp-Diolを得る。希釈度=ポリマー25.4%。
【0295】
特性評価:
このようにして得られた希釈ポリマーは、13C NMR(100MHz、CDCl3)により測定したところ、68mol%のStMA/ラウリルMA繰り返し単位と、25mol%のスチレン繰り返し単位と、7mol%のヘキサンジオールMA(mono-Diol)繰り返し単位とを含む。
【0296】
前記ポリマーは、40℃におけるポリ(メチルメタクリレート)換算を利用したTHF中のSECにより測定したところ、数平均モル質量が約40000g・mol-1であり、多分散指数が1.46である。
【0297】
[1.5.ポリ(ボロン酸エステル)ポリマーp-EB(比較例)の合成]
ポリ(ボロン酸エステル)ポリマーp-EBの合成は以下の反応スキームに従って行われる。
【化38】
【0298】
アニソール1L、クミルジチオベンゾエート溶液3.56g、ラウリルメタクリレート900g、およびmono-EB76gを、冷却器および窒素供給源に接続された2L反応器に投入する。反応媒体を窒素雰囲気下に置き、撹拌し、90℃まで昇温する。反応媒体を撹拌しながらT=90℃で加熱する。反応の進行をSEC分析により監視する。2時間30分の重合後、反応媒体を0℃まで冷却し、生成物を4Lのアセトンにより沈殿させ、沈降による相分離後、上澄み液を除去する。沈殿したポリマーをTHFに溶解し、その後、4Lのアセトンにより再度沈殿させる。この操作をもう一度繰り返す。ポリマーを最小量のTHFに溶解し、その後、グループIIIの基油900gをポリマーに添加する。溶液の機械的撹拌下、窒素の吹込みにより残存溶媒を除去し、1381.0gのポリ(ボロン酸エステル)p-EBを得る。希釈度=ポリマー39.2%。
【0299】
特性評価:
このようにして得られた希釈ポリマーは、13C NMR(100MHz、CDCl3)により測定したところ、94mol%のラウリルMA繰り返し単位と、6mol%のボロン酸エステル繰り返し単位とを含む。
【0300】
前記ポリマーは、40℃におけるポリ(メチルメタクリレート)換算を利用したTHF中のSECにより測定したところ、数平均モル質量が約45000g・mol-1であり、多分散指数が1.39である。
【0301】
[2.組成物の配合]
各オリゴマー/ポリマーを基油に溶解し、純粋なオリゴマー/ポリマーを10重量%含む溶液を得る。マグネチックスターラーで撹拌下、80℃で加熱しつつ前記基油にオリゴマー/ポリマーを溶解させた後、これらの溶液を、必要に応じて0.8μmミリポアフィルターでろ過する。これらの溶液は、下記調合物の調製用原液となる。
【0302】
[2.1.潤滑基油]
試験組成物に用いられる潤滑基油は、SK社より販売されるAPI分類グループIIIの油(製品名:Yubase 4+)である。
【0303】
前記基油は以下の特徴を有する:
- ASTM D445に準じて測定された40℃における動粘度が18.51cStであり;
- ASTM D445に準じて測定された100℃における動粘度が4.206cStであり;
- ASTM D2270に準じて測定された粘度指数が135であり;
- CEC L-40-93に準じて測定されたノアック揮発度(重量%)が13.4重量%であり;
- NF EN ISO 2592に準じて測定されたその引火点(摂氏)が234℃であり;
- NF T60-105に準じて測定された流動点(摂氏)が-18℃である。
【0304】
[2.2.(本発明に係る)組成物Aの調製]
10重量%のボロン酸エステルオリゴマーo-EB-1を含む原液8.00gと、10重量%のオリゴマーo-Diol-2を含む原液8.00gとをフラスコに投入し、マグネチックスターラーで5分間混合する。これにより、前記調合物は、5重量%のボロン酸エステルオリゴマーo-EB-1と、5重量%のオリゴマーo-Diol-2とを含む。
【0305】
[2.3.(本発明に係る)組成物Bの調製]
この調製における化合物の量は、調合物が5重量%のボロン酸ジエステル分子Di-EBと、10重量%のオリゴマーo-Diol-2とを含むように調整される。
【0306】
[2.4.組成物F(比較例)の調製]
10重量%のポリ(ボロン酸エステル)ポリマーp-EBを含む原液5.2gと、10重量%のポリジオールポリマーp-Diolを含む原液4.5gと、グループIIIの基油10.3gとをフラスコに投入し、マグネチックスターラーで5分間混合する。これにより、前記調合物は、2.6重量%のポリ(ボロン酸エステル)p-EBと、2.25重量%のポリジオールp-Diolとを含む。
【0307】
[3.レオロジーの調査]
[3.1.測定装置およびプロトコル]
- 剪断測定:
低剪断(10、100、1000、5000および10000s-1)の粘性率を、コーンプレート型(0.5°;40mm)のDHR-2レオメーター(TA Instruments社製)を用いて、安定状態において40℃、100℃および150℃で測定した。
【0308】
高剪断(40℃で1・106、2・106、3・106、4・106s-1;100℃および150℃で1・106、4・106、7・106、10・106s-1)の粘性率を、USV高剪断粘度計(PCS Instruments社製)を用いて測定した。
【0309】
力学的劣化試験:
CEC L-45-A-99に準じてKRL力学的劣化試験を60℃で20時間行い、KRL試験前後に動粘度を測定した。組成物A、FおよびグループIIIの基油の動粘度を、ASTM D445に準じて細管式粘度計(Herzog社製)を用いて40℃および100℃において測定した。
【0310】
動粘度測定:
組成物BおよびグループIIIの基油の動粘度を、ASTM D445に準じて細管式粘度計(Herzog社製)を用いて40℃および100℃において測定した。
【0311】
[3.2.結果]
剪断測定:
図5、
図6および
図7は、剪断速度に対して測定された、40℃、100℃および150℃における本発明にかかる組成物Aおよび組成物Fの粘性率の変動曲線を示す。
【0312】
剪断速度が低い場合(10000s-1以下)、調合物AおよびFのレオロジー挙動は同一である。高い剪断速度が加えられる場合、組成物Fは粘性率の顕著な低下を示し;この挙動は、高モル質量ポリマーの剪断強さが不良であることを示す。本発明に係るオリゴマーの組み合わせを含む組成物Aは、40℃および100℃、さらには150℃までの高温において、高い剪断速度での粘度の安定性を示す。このことから、本発明のオリゴマー混合物は、当該混合物が分散される媒体を増粘することが可能であり、高温における剪断下でこの機能を保持するという技術的効果が示される。
【0313】
力学的劣化:
組成物AおよびFの動粘度は、20時間にわたるKRL力学的劣化試験の前後に40℃および100℃で測定された。得られた結果を表2.1に示す。
【0314】
2.6重量%のポリ(ボロン酸エステル)p-EBおよび2.25重量%のポリジオールp-Diolを含む組成物Fは、40℃および100℃における剪断後、不可逆的な粘度低下を示す。本発明に係るオリゴマーo-Diol-2およびo-EB-1の組み合わせを含む組成物Aを用いる場合、顕著な粘度低下は見られない。前記組成物は、高温においてもその特性を保持している。これらの結果は、本発明に係る組成物Aは、高分子量ポリマーを含む組成物Fよりも、力学的劣化に対する耐性がより良好であることを示す。
【0315】
PSSI(永久剪断安定性指数)により特徴付けられる剪断安定性は、20時間のKRL剪断処理後における油中の組成物の40℃および100℃における動粘度(KV)から、以下の数式により計算された。
PSSI=[(初期KV-KRL後KV)/(初期KV-基油KV)]×100
【0316】
組成物Fの永久剪断安定性指数は40%を超える。このことから、特定の高モル質量ポリマー分子は機械的剪断応力下で破壊され、調査された調合物に不可逆的な粘度低下が生じることが示される。他方、組成物AのPSSIは、40℃においてわずか2%であり、100℃において1%である。このことから、本発明に係る調合物は剪断感応性の低い挙動を有し、力学的劣化に対する耐性を有することが示される。
【0317】
【0318】
動粘度測定:
組成物BおよびグループIIIの基油の動粘度を、40℃および100℃において測定した。得られた結果を表2.2に示す。
【0319】
5重量%のボロン酸ジエステル分子Di-EBと、10重量%のオリゴマーo-Diol-2とを含む組成物Bは、40℃および100℃において動粘度の上昇を示す。より具体的には、粘度の上昇は高温時において観察されることから、粘度指数が大きく改善されている。
【0320】
【表5】
なお、本発明は、実施の態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
少なくとも、
数平均モル質量が600g/mol以上10000g/mol未満であるポリジオールオリゴマーA1であって、
- 少なくとも2つのモノマーM1、および、
- 少なくとも1つのモノマーM2、または、
- 少なくとも1つのモノマーM3、または、
- 少なくとも1つのモノマーM2および少なくとも1つのモノマーM3、
に対応する繰り返し単位を含み、1つ以上のモノマーM3に対応する繰り返し単位を2mol%未満含むポリジオールオリゴマーA1と、
少なくとも2つのボロン酸エステル基を含む化合物A2と、
を混合することに起因する組成物であって、
前記モノマーM1は一般式(I)に対応し、
【化39】
式中、
- R
1
は、-H、-CH
3
、および-CH
2
-CH
3
からなる群から選択され;
- xは、1~18(好ましくは2~18)の範囲の整数であり;
- yは、0または1に等しい整数であり;
- X
1
およびX
2
は、同一でも異なっていてもよく、水素、テトラヒドロピラニル、メチルオキシメチル、tert-ブチル、ベンジル、トリメチルシリル、およびt-ブチルジメチルシリルからなる群から選択され;または
- X
1
およびX
2
は、酸素原子と共に、下記式の架橋を形成し、
【化40】
式中、
- 星(*)は、酸素原子への結合を表し、
- R’
2
およびR’’
2
は、同一でも異なっていてもよく、水素およびC
1
-C
11
アルキルからなる群から選択され(好ましくはメチルであり);または
- X
1
およびX
2
は、酸素原子と共に、下記式を有するボロン酸エステルを形成し、
【化41】
式中、
- 星(*)は、酸素原子への結合を表し、
- R’’’
2
は、C
6
-C
30
アリール、C
7
-C
30
アラルキル、およびC
2
-C
30
アルキルからなる群から選択され(好ましくはC
6
-C
18
アリールであり);
前記モノマーM2は一般式(II)に対応し、
【化42】
式中、
- R
2
は、-H、-CH
3
、および-CH
2
-CH
3
からなる群から選択され;
- R
3
は、-C(O)-O-R’
3
、-O-R’
3
、-S-R’
3
、および-C(O)-N(H)-R’
3
からなる群から選択され、ここで、R’
3
はC
1
-C
30
アルキル基であり、
前記モノマーM3は一般式(X)に対応し、
【化43】
式中、
- Z
1
、Z
2
、およびZ
3
は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、C
1
-C
12
アルキル、および-OZ’基または-C(O)-O-Z’基から選択される基を表し、ここで、Z’はC
1
-C
12
アルキルである、組成物。
〔態様2〕
態様1に記載の組成物において、前記オリゴマーA1の数平均モル質量は600g/mol~9500g/molの範囲である、組成物。
〔態様3〕
態様1または2に記載の組成物において、前記オリゴマーA1は、一般式(X)の1つ以上のモノマーM3に対応する繰り返し単位を1.5mol%未満含む、組成物。
〔態様4〕
態様1~3のいずれか一態様に記載の組成物において、前記モノマーM3はスチレンである、組成物。
〔態様5〕
態様1~4のいずれか一態様に記載の組成物において、前記オリゴマーA1の側鎖の平均長さは、炭素原子8~20個(好ましくは炭素原子9~18個)の範囲である、組成物。
〔態様6〕
態様1~5のいずれか一態様に記載の組成物において、前記オリゴマーA1は、式(I)の前記モノマーM1に対応する繰り返し単位のモル百分率が、2%~70%(好ましくは4%~50%)の範囲である、組成物。
〔態様7〕
態様1~6のいずれか一態様に記載の組成物において、化合物A2は、式(III)の化合物である、組成物。
【化44】
式中、
- w1およびw2は、同一でも異なっていてもよく、0から1の範囲で選択される整数であり;
- R
4
、R
5
、R
6
、およびR
7
は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、1~30個の炭素原子を含む炭化水素系基であって、任意でヒドロキシ基、-OJ基または-C(O)-O-J基から選択される1つ以上の基で置換された炭化水素系基から選択される基を表し、ここで、Jは、1~24個の炭素原子を含む炭化水素系基であり;
- Lは、C
6
-C
18
アリール、C
7
-C
24
アラルキル、およびC
2
-C
24
炭化水素系鎖からなる群から選択される二価結合基である、組成物。
〔態様8〕
態様1~6のいずれか一態様に記載の組成物において、化合物A2は、
式(IV)の少なくとも2つのモノマーM4であって、
【化45】
式中、
- tは、0または1に等しい整数であり;
- uは、0または1に等しい整数であり;
- MおよびR
8
は、同一または異なる二価の結合基であり、C
6
-C
18
アリール、C
7
-C
24
アラルキル、およびC
2
-C
24
アルキルからなる群から選択され(好ましくはC
6
-C
18
アリールであり)、
- Xは、-O-C(O)-、-C(O)-O-、-C(O)-N(H)-、-N(H)-C(O)-、-S-、-N(H)-、-N(R’
4
)-、および-O-からなる群から選択される基であり、ここで、R’
4
は、1~15個の炭素原子を含む炭化水素系鎖であり;
- R
9
は、-H、-CH
3
、および-CH
2
-CH
3
からなる群から選択され;
- R
10
およびR
11
は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、および1~30個の炭素原子を含む炭化水素系基であって、任意でヒドロキシ基、-OJ基または-C(O)-O-J基から選択される1つ以上の基で置換された炭化水素系基から選択される基を表し、ここで、Jは、1~24個の炭素原子を含む炭化水素系基である、モノマーM4;
任意で、一般式(V)の少なくとも1つのモノマーM5であって、
【化46】
式中、
- R
12
は、-H、-CH
3
、および-CH
2
-CH
3
からなる群から選択され、
- R
13
は、-C(O)-O-R’
13
、-O-R’
13
、-S-R’
13
、および-C(O)-N(H)-R’
13
からなる群から選択され、ここで、R’
13
は、C
1
-C
30
アルキル基である、モノマーM5、および、
任意で、一般式(X)の少なくとも1つのモノマーM3であって、
【化47】
式中、
- Z
1
、Z
2
およびZ
3
は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、C
1
-C
12
アルキル、および-OZ’基または-C(O)-O-Z’基から選択される基を表し、ここで、Z’はC
1
-C
12
アルキルである、モノマーM3
に対応する繰り返し単位を含むオリゴマーである、組成物。
〔態様9〕
態様8に記載の組成物において、前記オリゴマー化合物A2の数平均モル質量は、600g/mol~10000g/mol未満(好ましくは600~9500g/mol)の範囲である、組成物。
〔態様10〕
少なくとも、
- 潤滑油と;
- 態様1~9のいずれか一態様に記載の組成物と
を混合することに起因する潤滑剤組成物。
〔態様11〕
乗り物の燃料消費量を低減するための、態様10に記載の潤滑剤組成物の使用。
〔態様12〕
機械部分の摩擦によるエネルギー損失を低減する方法であって、前記機械部分を、態様10に記載の潤滑剤組成物と接触させる少なくとも1つのステップを含む方法。
〔態様13〕
乗り物の燃料消費量を低減する方法であって、前記乗り物のエンジンの機械部分を、態様10に記載の潤滑剤組成物と接触させる少なくとも1つのステップを含む方法。