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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】高性能超伝導体テープの品質制御
(51)【国際特許分類】
   H01B 12/06 20060101AFI20230302BHJP
   C30B 29/22 20060101ALI20230302BHJP
   C04B 35/45 20060101ALI20230302BHJP
   C04B 35/488 20060101ALI20230302BHJP
   C04B 35/495 20060101ALI20230302BHJP
   C04B 35/50 20060101ALI20230302BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
H01B12/06
C30B29/22 501Z
C04B35/45 040
C04B35/488
C04B35/495
C04B35/50
C23C26/00 C
【請求項の数】 2
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021130587
(22)【出願日】2021-08-10
(62)【分割の表示】P 2019531568の分割
【原出願日】2017-08-29
(65)【公開番号】P2021184389
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】62/381,369
(32)【優先日】2016-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510194415
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ヒューストン システム
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ゴラン マジキチ
(72)【発明者】
【氏名】ベンカット セルバマニカム
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522534(JP,A)
【文献】樋川一好、他6名,直線状BaHfO3ナノロッドを導入したGdBa2Cu3Oy薄膜における超伝導特性及び微細構造観察,低温工学,日本,低温工学・超電導学会,2014年03月25日,49巻3号,99-104,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsj/49/3/49_99/_pdf/-char/en,原出願刊行物等提出書 資料1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 12/06
C30B 29/22
C04B 35/45
C04B 35/488
C04B 35/495
C04B 35/50
C23C 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導体テープであって、
基板と、
前記基板を覆うバッファ層と、
前記バッファ層を覆うRE-Ba-Cu-O超伝導体フィルムと
を備え、前記超伝導体フィルムは、11.74オングストロームよりも高いc軸格子定数を有するものとして定義され、
前記超伝導体フィルムは、BaMOを備え、式中、M=Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、またはCeであり、これは、前記超伝導体フィルムの(001)ピークの軸から60°~90°である軸に沿って伸長されるBaMOの(101)ピークを有
前記超伝導体フィルムは、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Ce、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される5~30モル%のドーパントを備える、超伝導体テープ。
【請求項2】
前記超伝導体フィルムは、長さが10メートルを上回る、請求項1に記載の超伝導体テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2016年8月30日に出願された米国仮特許出願第62/381,369号に対する優先権を主張するものであり、該米国仮特許出願は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(政府支援)
アメリカ海軍研究局助成N00014-14-1-0182。
【0003】
本明細書に開示される実施形態は、超伝導体テープの分野にある。より具体的には、本明細書に開示される実施形態は、特に、明確に整合されたナノコラム欠陥、したがって、高リフトファクターを達成し、例えば、高磁場内でテープの優れた臨界電流性能をもたらし得る、超伝導体テープおよび同一物を製造、測定、監視、および制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
エネルギー生成、伝送、変換、貯蔵、および使用に関する迫り来る問題を解決するために、いくつかの材料系が、開発されている。超伝導体は、おそらく、広範囲のエネルギー問題にわたる解決策を提供する独特なシステムであろう。超伝導体は、発電機、送電ケーブル、モータ、変圧器、およびエネルギー貯蔵における高い効率を可能にする。さらに、超伝導体は、エネルギーのみならず、医学、素粒子物理学、通信、および輸送に及ぶ用途を可能にする。超伝導テープは、十分に発達しており、多結晶基板上にエピタキシャル単結晶様薄フィルムを作成するための新規のアプローチによって可能にされている。本技法では、MgO等の岩塩結晶構造を伴う材料の薄フィルムが、可撓性多結晶基板にわたってイオンビーム補助堆積によって堆積される。
【0005】
本技法によって処理される超伝導フィルムは、単結晶基板上に成長させられたエピタキシャルフィルムにおいて達成されるものに匹敵する臨界電流密度を呈する。本技法を使用して、いくつかの機関は、超伝導複合テープのパイロット規模の製造を実証した。現在、単結晶様エピタキシャルフィルムが、多結晶基板ベースを使用して1キロメートルの長さにわたって製造され得ることは、非常に注目に値する。
【0006】
しかしながら、今日の超伝導体テープには、ある欠点が存在する。現在の超伝導体の搬送能力は、磁場内で急速に縮小し、これは、発電機コイルが数テスラの磁場に晒されるであろう風力発電機等の用途におけるそれらの使用に関して問題を提起する。加えて、高温超伝導体(HTS)における超伝導性は、それらのCu-O平面内に局所化されるため、HTS材料は、強力な異方性挙動を呈する。本異方性は、磁場が異なる角度においてフィルム表面に整合されるときの臨界電流測定値において明白である(図1A)。図1Aに示されるように、標準HTSテープの臨界電流は、磁場がフィルム表面から離れるように移動されるにつれて急速に降下し、磁場がテープに垂直に配向されると、低い値に到達し、これは、これらのテープを用いて構築されるコイルにおける限界値である。
【0007】
実践的な超伝導体のためのピニング改良方略が、磁場内性能を改良するために過去10年にわたって積極的に開発されてきた。最も探求されたアプローチは、側方寸法において超伝導コヒーレンス長さに匹敵する欠陥を超伝導体の中に導入することであった。2G HTSテープでは、そのような欠陥は、酸素空孔、貫通転位、双晶面、不純物原子、放射線照射誘発コラム欠陥、および種々の組成および構造のナノ構造化含有物を含む。
【0008】
最近では、ピニングを改良するために、研究者らは、BaMO(M=Zr、Sn、Hf、Nb、Ce、Ta等)を伴う超伝導フィルムを化学的にドープすることに基づくコラム欠陥形成に関するアプローチを開発した。BZOおよびBaSnO(BSO)含有物は、超伝導体フィルム成長中の自己集合プロセスによって、直径が約5nmのナノサイズのコラムを形成し、ピニング強度を有意に改良する。図1Bは、殆どがフィルム平面に垂直に配向される、豊富な自己集合BaZrO(BZO)ナノコラム欠陥を伴う、MOCVDによって成長させられた(Gd,Y)BaCu(Gd-YBCO)超伝導フィルムの断面微細構造を表示する。そのような微細構造を伴うフィルムは、図1Aに示されるように、77Kにおける磁場内で、特に、BZOナノコラムの方向に沿った配向において2倍の改良された性能を呈し、より低い異方性をもたらす。
【0009】
さらに、研究は、より高いレベルのZr添加が低温における磁場内でのより好ましい性質につながることを実証した。特に、低温における印加磁場内のテープの臨界電流の、ゼロ磁場内の77Kにおけるテープの臨界電流に対する比である、「リフトファクター(lift factor)」は、より高いレベルのZr含有量を伴うテープにおいて増加されることが見出された。また、最近では、高臨界電流密度が、77Kでさえも、高レベルのZr添加を伴うRE-Ba-Cu-O(REBCO、RE=希土類)において達成され得ることが見出された。本達成は、磁場内の低温におけるリフトファクターを77Kにおける高臨界電流と組み合わせ、着目磁場内で低温において非常に高い臨界電流に到達する可能性を多くの用途に開いた。しかしながら、それ以降、高レベルのZr添加を伴うREBCOテープは、必ずしも、磁場内でより低い温度において高リフトファクターにつながるわけではないことが発見されている。本質的に、高レベルのZr添加を伴うREBCOテープに関して、磁場内のより低い温度におけるリフトファクターは、一貫性がないことが見出されている。故に、当分野においては、磁場内でより低い温度において実質的に高い臨界電流を一貫して達成し得る超伝導テープの必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態は、基板と、基板を覆うバッファ層と、バッファ層を覆う超伝導体フィルムとを備える、超伝導体テープを対象とする。超伝導体フィルムは、11.74オングストロームよりも高いc軸格子定数を有するものとして定義される。
【0011】
ある実施形態では、超伝導体フィルム(または一般的にテープ)は、長さが10メートルを上回る。
【0012】
ある実施形態では、超伝導体フィルムは、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Ce、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される5~30モル%のドーパントを備える。
【0013】
ある実施形態では、超伝導体フィルムは、BaMOを備え、式中、M=Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、またはCeであり、これは、超伝導体フィルムの(001)ピークの軸から60°~90°である軸に沿って伸長されるBaMOの(101)ピークを有する。
【0014】
実施形態はまた、基板と、基板を覆うバッファ層と、バッファ層を覆う超伝導体フィルムとを備える、超伝導体テープを対象とする。超伝導体フィルムは、BaMOを備え、式中、M=Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、またはCeであり、これは、超伝導体フィルムの(001)ピークの軸から60°~90°である軸に沿って伸長されるBaMOの(101)ピークを有する。
【0015】
ある実施形態では、BaMOの(101)ピークは、X線回折によって測定される。
【0016】
ある実施形態では、超伝導体フィルム(または一般的にテープ)は、長さが10メートルを上回る。
【0017】
ある実施形態では、超伝導体フィルムは、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Ce、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される5~30モル%のドーパントを備える。
【0018】
ある実施形態では、超伝導体フィルムは、11.74オングストロームよりも高いc軸格子定数を有するものとして定義される。
【0019】
実施形態はさらに、基板と、基板を覆うバッファ層と、バッファ層を覆う超伝導体フィルムとを備える、超伝導体テープを対象とする。超伝導体フィルムは、BaMOを備え、式中、M=Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、またはCeであり、これは、銅のkアルファ線放射を使用するX線回折によって測定されるとき、30°よりも高い2シータ角に位置するBaMOの(101)ピークを有する。
【0020】
ある実施形態では、超伝導体フィルムは、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Ce、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される5~30モル%のドーパントを備える。
【0021】
ある実施形態では、超伝導体フィルムは、11.74オングストロームよりも高いc軸格子定数を有するものとして定義される。
【0022】
実施形態はまたさらに、基板と、基板を覆うバッファ層と、バッファ層を覆う超伝導体フィルムとを備える、超伝導体テープを対象とする。超伝導体フィルムは、BaMOを備え、式中、M=Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、またはCeであり、これは、銅のkアルファ線放射を使用するX線回折によって測定されるとき、超伝導体相の(103)ピークから2.6°未満の2シータ角に位置するBaMOの(101)ピークを有する。
【0023】
ある実施形態では、超伝導体フィルムは、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Ce、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される5~30モル%のドーパントを備える。
【0024】
ある実施形態では、超伝導体フィルムは、11.74オングストロームよりも高いc軸格子定数を有するものとして定義される。
【0025】
実施形態はまたさらに、超伝導体テープ内の超伝導体フィルムのc軸格子パラメータを測定する方法を対象とする。本方法は、基板と、基板を覆うバッファ層と、バッファ層にわたって堆積される超伝導体フィルムとを備える、超伝導体テープを提供するステップを含む。本方法はまた、バッファ層にわたる超伝導体フィルムの堆積中、リアルタイムでインラインX線回折を介して超伝導体フィルムのc軸格子パラメータを測定するステップを含む。
【0026】
ある実施形態では、測定するステップは、超伝導体フィルムの堆積に続けて実施される。
【0027】
ある実施形態では、超伝導体フィルム(または一般的にテープ)は、長さが10メートルを上回る。
【0028】
ある実施形態では、超伝導体フィルムは、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Ce、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される5~30モル%のドーパントを備える。
【0029】
ある実施形態では、c軸格子パラメータは、11.74オングストロームよりも高いc軸格子定数である。
【0030】
ある実施形態では、超伝導体フィルムは、BaMOを備え、式中、M=Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、またはCeであり、これは、超伝導体フィルムの(001)ピークの軸から60°~90°である軸に沿って伸長されるBaMOの(101)ピークを有する。
本明細書は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
超伝導体テープであって、
基板と、
上記基板を覆うバッファ層と、
上記バッファ層を覆う超伝導体フィルムと
を備え、上記超伝導体フィルムは、11.74オングストロームよりも高いc軸格子定数を有するものとして定義される、
超伝導体テープ。
(項目2)
上記超伝導体フィルムは、長さが10メートルを上回る、項目1に記載の超伝導体テープ。
(項目3)
上記超伝導体フィルムは、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Ce、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される5~30モル%のドーパントを備える、上記の項目のうちのいずれかに記載の超伝導体テープ。
(項目4)
上記超伝導体フィルムは、BaMOを備え、式中、M=Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、またはCeであり、これは、上記超伝導体フィルムの(001)ピークの軸から60°~90°である軸に沿って伸長されるBaMOの(101)ピークを有する、上記の項目のうちのいずれかに記載の超伝導体テープ。
(項目5)
超伝導体テープであって、
基板と、
上記基板を覆うバッファ層と、
上記バッファ層を覆う超伝導体フィルムと
を備え、上記超伝導体フィルムは、BaMOを備え、式中、M=Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、またはCeであり、これは、上記超伝導体フィルムの(001)ピークの軸から60°~90°である軸に沿って伸長されるBaMOの(101)ピークを有する、
超伝導体テープ。
(項目6)
上記BaMOの(101)ピークは、X線回折によって測定される、項目5に記載の超伝導体テープ。
(項目7)
上記超伝導体フィルムは、長さが10メートルを上回る、上記の項目のうちのいずれかに記載の超伝導体テープ。
(項目8)
上記超伝導体フィルムは、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Ce、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される5~30モル%のドーパントを備える、上記の項目のうちのいずれかに記載の超伝導体テープ。
(項目9)
上記超伝導体フィルムは、11.74オングストロームよりも高いc軸格子定数を有するものとして定義される、上記の項目のうちのいずれかに記載の超伝導体テープ。
(項目10)
超伝導体テープであって、
基板と、
上記基板を覆うバッファ層と、
上記バッファ層を覆う超伝導体フィルムと
を備え、上記超伝導体フィルムは、BaMOを備え、式中、M=Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、またはCeであり、これは、銅のkアルファ線放射を使用するX線回折によって測定されるとき、30°よりも高い2シータ角に位置するBaMOの(101)ピークを有する、
超伝導体テープ。
(項目11)
上記超伝導体フィルムは、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Ce、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される5~30モル%のドーパントを備える、項目10に記載の超伝導体テープ。
(項目12)
上記超伝導体フィルムは、11.74オングストロームよりも高いc軸格子定数を有するものとして定義される、上記の項目のうちのいずれかに記載の超伝導体テープ。
(項目13)
超伝導体テープであって、
基板と、
上記基板を覆うバッファ層と、
上記バッファ層を覆う超伝導体フィルムと
を備え、上記超伝導体フィルムは、BaMOを備え、式中、M=Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、またはCeであり、これは、銅のkアルファ線放射を使用するX線回折によって測定されるとき、超伝導体相の(103)ピークから2.6°未満の2シータ角に位置するBaMOの(101)ピークを有する、
超伝導体テープ。
(項目14)
上記超伝導体フィルムは、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Ce、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される5~30モル%のドーパントを備える、項目13に記載の超伝導体テープ。
(項目15)
上記超伝導体フィルムは、11.74オングストロームよりも高いc軸格子定数を有するものとして定義される、上記の項目のうちのいずれかに記載の超伝導体テープ。
(項目16)
超伝導体テープ内の超伝導体フィルムのc軸格子パラメータを測定する方法であって、上記方法は、
超伝導体テープを提供するステップであって、上記超伝導体テープは、
基板と、
上記基板を覆うバッファ層と、
上記バッファ層にわたって堆積される超伝導体フィルムと
を備える、ステップと、
上記バッファ層にわたる上記超伝導体フィルムの堆積中、リアルタイムでインラインX線回折を介して上記超伝導体フィルムのc軸格子パラメータを測定するステップと
を含む、方法。
(項目17)
上記測定するステップは、上記超伝導体フィルムの堆積に続けて実施される、項目16に記載の方法。
(項目18)
上記超伝導体フィルムは、長さが10メートルを上回る、上記の方法項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目19)
上記超伝導体フィルムは、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Ce、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される5~30モル%のドーパントを備える、上記の方法項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目20)
上記c軸格子パラメータは、11.74オングストロームよりも高いc軸格子定数である、上記の方法項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目21)
上記超伝導体フィルムは、BaMOを備え、式中、M=Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、またはCeであり、これは、上記超伝導体フィルムの(001)ピークの軸から60°~90°である軸に沿って伸長されるBaMOの(101)ピークを有する、上記の方法項目のうちのいずれかに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0031】
前述の概要および以下の詳細な説明は、添付される図面と併せて熟読されると、より深く理解されるであろう。例証の目的のみのために、図面では、ある実施形態が示される。しかしながら、本明細書に開示される発明的概念は、図に示される精密な配列および手段に限定されないことを理解されたい。
【0032】
図1A図1Aは、自己集合BaZrO(BZO)ナノコラムの有無別のMOCVDベースのHTSテープの臨界電流における異方性を図示するプロットである。
図1B図1Bは、自己集合BZOの豊富なナノコラム欠陥を示す、MOCVDによって合成されるZrドープ超伝導フィルムの断面微細構造を図示する図である。
図2A図2Aは、テープ平面に垂直な明確に整合されない不連続BZOナノコラムを示す、30K、2.5TでのIにおける低リフトファクターを伴うZr添加(Gd,Y)BCOテープの断面TEM分析を図示する図である。
図2B図2Bは、強力に整合された連続BZOナノコラムを呈する、30K、2.5TでのIにおける高リフトファクターを伴うZr添加(Gd,Y)BCOテープの断面TEM分析を図示する図である。
図3A図3Aは、銅のKアルファ線(Cu K-α)放射を使用するX線回折によって測定されるような、増加するレベルの(Ba+Zr)/Cu含有量とともにいくつかのZrドープ(Gd,Y)BCOテープのREBCO相の(007)ピークを図示する、プロットである。
図3B図3Bは、図3Aのプロットにおいて参照されるREBCOテープの(Ba+Zr)/Cu組成を図示する表である。
図4図4は、X線回折によって測定されるような、増加するレベルの(Ba+Zr)/Cu含有量とともにいくつかのZrドープ(Gd,Y)BCOテープのc軸格子パラメータを図示する、プロットである。
図5図5は、X線回折によって測定されるような、増加する値のc軸格子パラメータとともにいくつかのZrドープ(Gd,Y)BCOテープの30Kでの臨界電流におけるリフトファクターの依存性を図示する、プロットである。
図6図6は、Cu K-α放射を使用するX線回折によって測定されるような、増加するレベルの(Ba+Zr)/Cu含有量とともにいくつかのZrドープ(Gd,Y)BCOテープのBZOの(101)ピークを図示する、プロットである。
図7図7は、Cu K-α放射を使用するX線回折によって測定されるような、増加するレベルの(Ba+Zr)/Cu含有量とともにいくつかのZrドープ(Gd,Y)BCOテープのREBCO相のBZO(101)ピークおよび(103)ピークのピーク場所間の角距離を図示する、プロットである。
図8図8は、Cu K-α放射を使用するX線回折によって測定されるような、増加するレベルの(Ba+Zr)/Cu含有量とともにいくつかのZrドープ(Gd,Y)BCOテープのREBCO相のBZO(101)ピークおよび(103)ピークのピーク場所間の変化する角距離を伴う、30K、3Tでの臨界電流におけるリフトファクターを図示する、プロットである。
図9A図9Aは、30K、3Tでの臨界電流において高リフトファクターを呈する、強力に整合された長いBZOナノコラムを伴うZr添加(Gd,Y)BCOテープからの2次元(2D)X線回折(XRD)データを図示する、プロットである。
図9B図9Bは、30K、3Tでの臨界電流において低リフトファクターを呈する、明確に整合されない短いBZOナノコラムを伴うZr添加(Gd,Y)BCOテープからの2次元(2D)XRDデータを図示する、プロットである。
図10図10は、超伝導体テープが加工されている際のc軸格子パラメータを測定するためのインラインX線回折ユニットを図示する、概略図の斜視図である。
図11図11は、Cu K-α放射を使用するインラインXRDツールを使用する、シータ-2シータ走査からの異なる(Ba+Zr)/Cu含有量を伴うREBCOテープの(007)ピークの偏移を図示する、プロットである。
図12図12は、Cu K-α放射を使用するX線回折によって測定されるような、異なる(Ba+Zr)/Cu含有量を伴うREBCOフィルムのc軸格子定数とフィルムのREピークの強度との間の相関を図示する、プロットである。
図13図13は、ある実施形態による、超伝導体テープ内の超伝導体フィルムのc軸格子パラメータを測定する方法の実施形態を図示するフローチャートである。
図14図14は、ある実施形態による、超薄フィルム高温超伝導テープの微細構造を図示する斜視概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
REBCOフィルムの強ドープが、低温での臨界電流(I)における高リフトファクターを達成するために必要であるが、十分な条件ではない。本発明者らは、REBCOフィルムのc軸に沿ったBaMO(M=Zr、Sn、Hf、Nb、Ce、Ta等)ナノコラムの強力な整合が、高リフトファクターを達成することに対する重要な条件であることを発見した。例えば、図2Aおよび2Bは、77K、0Tにおいて3.08MA/cmの同一のJを伴うが、30K、2.5T(B||c)において3.85および6.93の臨界電流における異なるリフトファクターを伴う2つのテープの断面微細構造を示す。図2Aのテープは、低リフトファクターを有し、これは、明確に整合されず、バッファ層からフィルム表面まで連続的ではないBZOナノコラムから成る。一方、図2Bのテープは、高リフトファクターを有し、バッファ層からフィルム表面まで連続的な強力に整合されたBZOナノコラムから成る。本発明者らは、図2A-2Bに示される微細構造差が、30K、3TにおけるドープGdYBCOテープの臨界電流において大きい散乱を引き起こす原因であることを発見した。故に、Zrドープとともに、REBCOフィルムのc軸に沿ったBZOナノコラムの強力な整合が、高リフトファクターを一貫して達成するために重要である。本明細書に説明される実施形態は、主として、BZOフィルムに言及するが、実施形態は、任意のBaMO(M=Zr、Sn、Hf、Nb、Ce、Ta等)フィルムに等しく適用されることを理解されたい。
【0034】
しかしながら、REBCOテープにおけるそのようなナノコラムの整合の微細構造検査は、破壊的技法であり、数平方マイクロメートルの非常に狭い面積に追いやられる。したがって、REBCOテープのより広い面積を検査し、高度に整合されたナノコラム欠陥が存在するかどうかを検証するために使用され得る非破壊的方法を提供することが、望ましい。加えて、微細構造分析からのフィードバックが、監視、ひいては、本プロセスの制御のためにリアルタイムで使用され、明確に整合されたナノコラム欠陥、したがって、高磁場内での優れた臨界電流性能を達成し得るように、そのような方法がREBCOテープの処理においてインラインで実装され得る場合、大きな価値が存在する。超伝導体製造中にリアルタイムでBaMO(M=Zr、Sn、Hf、Nb、Ce、Ta等)ナノコラム整合を検出/測定することによって、製造プロセスは、要求される整合度を一貫して取得するように修正されることができる。製造プロセスの修正の実施例は、堆積温度を低下させること、および/または酸素分圧を増加させること、および/または前駆体中のバリウム含有量を増加させること、および/または前駆体中の銅含有量を減少させることである。本発明のこれらおよび他の利点が、下記の本明細書の発明の詳細な説明からより完全に明白となるであろう。
【0035】
本発明の図および説明は、本実施形態の明確な理解に関連する要素を例証するために簡略化される一方、明確にする目的のために、典型的な超伝導体テープまたは超伝導体テープを加工、測定、監視、または制御するための典型的な方法において見出される他の要素を排除している場合がある。当業者は、他の要素が、本実施形態を実装するために望ましい、および/または要求され得ることを認識するであろう。しかしながら、そのような要素は当技術分野で周知であるため、かつそれらは本実施形態のより深い理解を促進しないため、そのような要素の議論は、本明細書では提供されない。また、本明細書とともに含まれる図面は、本発明の本好ましい構造の図式的表現のみを提供し、本実施形態の範囲内に該当する構造は、図面に示されるものとは異なる構造を含み得ることを理解されたい。ここで、同様の構造が同様の参照記号を提供される図面が、参照されるであろう。
【0036】
少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本明細書に記載される概念は、それらの用途において、以下の説明に記載される、または図面に図示される構造の詳細または構成要素配列に限定されないことを理解されたい。また、本明細書に採用される語句および専門用語は、単に、説明目的のためであり、限定的と見なされるべきではないことを理解されたい。
【0037】
さらに、説明される特徴のうちのいずれか1つは、別個に、または他の特徴と組み合わせて、使用され得ることを理解されたい。本明細書に説明されるデバイス、システム、方法、特徴、および利点の他の実施形態は、本明細書の図面および詳細な説明を検討することに応じて、当業者に明白である、または明白となるであろう。全てのそのような付加的デバイス、システム、方法、特徴、および利点は、付随の請求項によって保護されることが意図される。
【0038】
本開示の目的のために、用語「フィルム」および「層」は、同義的に使用され得る。
【0039】
本願の実施形態は、随意に、品質制御ツールとしてテープの処理中にリアルタイムでさえも実装され得る、REBCOテープの(Ba+Zr)/Cu含有量を迅速に認定するための非破壊的方法を対象とする。加えて、本願の実施形態は、臨界電流性能におけるリフトファクターの大きさを決定する、BaMOのナノコラム欠陥の配向を認定するための非破壊的方法を提供する。したがって、本願の実施形態の少なくとも1つの目的は、REBCOテープの長尺において磁場内で均一に高い臨界電流を一貫して達成することである。別の目的は、磁場内で均一に高い臨界電流を可能にするように、テープ加工中(または加工後)にREBCOテープの品質を原位置で監視するための品質制御(QC)ツールを開発することである。さらに、本願の実施形態の重要な側面は、ナノコラム欠陥の整合の品質を決定し、ひいては、高磁場内のREBCOテープの性能を予測するために使用され得る、非破壊的迅速インライン品質制御方法の開発である。
【0040】
ある実施形態では、超伝導体テープのX線回折(XRD)に基づく非破壊的方法は、磁場内のテープの臨界電流が依存するBa、Cu、およびドーパントの臨界組成比を決定することが可能である。別の実施形態では、超伝導体テープの超伝導体フィルム中のナノコラム欠陥の配向度を非破壊的に決定し得るXRD方法が、開示される。さらに別の実施形態では、超伝導体堆積装置内のインラインモードにおけるX線回折ユニットは、Ba、Cu、およびドーパントの組成比に関するリアルタイム情報を取得することができる。
【0041】
図3Aは、実施例にすぎないが、Cu K-α放射を使用するXRDによって測定されるような、増加するレベルの(Ba+Zr)/Cu含有量とともにいくつかのZrドープ(Gd,Y)BCOテープのREBCO相の(007)ピークを図示する、プロットである。言い換えると、図3Aは、Ba、Cu、およびZrの異なる組成を伴うZr添加REBCOテープのXRD分析からの(007)ピークを示す。図3Bは、実施例にすぎないが、図3Aのプロットにおいて参照されるREBCOテープの(Ba+Zr)/Cu組成を図示する表である。図3A-3Bに示されるように、(Ba+Zr)/Cu含有量が増加するにつれて、(007)ピーク場所は、2シータ値に偏移する、すなわち、c軸格子パラメータは、増加する。図4は、実施例にすぎないが、XRDによって測定されるような、増加するレベルの(Ba+Zr)/Cu含有量とともにいくつかのZrドープ(Gd,Y)BCOテープのc軸格子パラメータを図示する、プロットである。REBCOテープ中の(Ba+Zr)/Cuの増加する含有量とともに増加するc軸格子パラメータの前述の傾向は、図4に明確に示される。具体的には、REBCOテープ中の(Ba+Zr)/Cu含有量が0.53から0.84まで増加されるにつれて、c軸格子パラメータは、11.72Åから11.84Åまで増加する。c軸格子パラメータは、11.74Åを超えて急激に増加する。図5は、実施例にすぎないが、XRDによって測定されるような、増加する値のc軸格子パラメータとともにいくつかのZrドープ(Gd,Y)BCOテープの臨界電流におけるリフトファクターの依存性を図示する、プロットである。図5に示されるように、REBCOテープのc軸格子パラメータが増加するにつれて、30K、3T(磁場B||c軸)での臨界電流におけるリフトファクターもまた、増加する。したがって、XRDによるREBCOのc軸格子パラメータの測定値または(001)ピークの2シータ値における偏移は、テープの磁場内臨界電流性能の非常に良好なインジケータである。
【0042】
より高い値の(Ba+Zr)/Cuおよびより高いc軸格子パラメータが望ましいが、これは、REBCOテープにおいて良好な磁場内性能を達成することを確実にしない。図2Bに示されるように、BZOナノコラムが、REBCOフィルムの厚さを通して明確に整合されることもまた、不可欠である。強ドープフィルムにおけるa-b平面に沿って配向するBZOナノコラムの傾向が存在するため、C軸整合ナノコラムの阻止されない成長を確実にすることは、より困難である。温度、酸素分圧、およびフィルム中のバリウムおよび銅の組み込みにおけるわずかな変動は、明確に整合されたナノコラムの成長を乱し得る。加えて、ゼロ磁場内の77kにおける臨界電流が低減され得るため、REBCOの過剰な(Ba+Zr)/Cuおよび高すぎるc軸格子パラメータを伴わずに明確に整合されたナノコラム成長を達成することが、重要である。高磁場内でより低い温度において高臨界電流を達成するために、ゼロ磁場内で77Kにおいて高リフトファクターおよび良好な臨界電流を達成することが、重要である。
【0043】
図6は、実施例にすぎないが、Cu K-α放射を使用するXRDによって測定されるような、増加するレベルの(Ba+Zr)/Cu含有量とともにいくつかのZrドープ(Gd,Y)BCOテープのBZO相の(101)ピークを図示する、プロットである。図6に示されるように、(Ba+Zr)/Cu含有量が増加するにつれて、BZO相の(101)ピーク場所は、より高い2シータ値に偏移し、すなわち、その格子パラメータは、増加する。BZO相の(101)ピーク場所は、0.71を上回る(Ba+Zr)/Cu含有量に関して30°よりも高い値に偏移する。
【0044】
図7は、実施例にすぎないが、Cu K-α放射を使用するXRDによって測定されるような、増加するレベルの(Ba+Zr)/Cu含有量とともにいくつかのZrドープ(Gd,Y)BCOテープのREBCO相のBZO(101)ピークおよび(103)ピークのピーク場所間の角距離を図示する、プロットである。図7に示されるように、(Ba+Zr)/Cuが0.72を超えて増加するにつれて、REBCO相のBZO(101)ピークおよび(103)ピークのピーク場所間の距離は、2.6°を下回って減少する。言い換えると、(Ba+Zr)/Cu含有量がある閾値を超えて増加するにつれて、BZOおよびREBCO相の格子パラメータは、ともにより近接する。
【0045】
図8は、実施例にすぎないが、Cu K-α放射を使用するXRDによって測定されるような、増加するレベルの(Ba+Zr)/Cu含有量とともにいくつかのZrドープ(Gd,Y)BCOテープのREBCO相のBZO(101)ピークおよび(103)ピークのピーク場所間の変化する角距離を伴う、30K、3Tでの臨界電流におけるリフトファクターを図示する、プロットである。図8に示されるように、REBCO相のBZO(101)ピークおよび(103)ピークのピーク場所間の角距離が2.6°を下回って減少するにつれて、30K、3Tでの臨界電流におけるリフトファクターは、6およびそれよりも高い値まで増加する。BZOおよびREBCO相の格子パラメータがともにより近接するにつれて、BZOナノコラムは、より良好に整合された状態になり、臨界電流におけるより高いリフトファクターにつながる。
【0046】
図9Aは、実施例にすぎないが、30K、3Tでの臨界電流において高リフトファクターを呈する、強力に整合された長いBZOナノコラムを伴うZr添加(Gd,Y)BCOテープからの2D XRDデータを図示するプロットである。図9Aに示されるように、強力にc軸整合されたBZOナノコラムを伴うREBCOフィルムにおけるBZO(101)ピークは、REBCO相の(001)ピークにほぼ垂直な方向に縞状になる、または伸長することが見出される。一般に、BZO(101)ピークの伸長は、(001)REBCOピークの軸から60°~90°である方向に沿っている。REBCO(103)ピーク自体は、より小さい2シータ値に向かって、したがって、BZO(101)ピークにより近接して偏移される。これらの2つの特徴は、図9Bに図示されるように、30K、3Tでの臨界電流において低リフトファクターを呈する、明確に整合されていないBZOナノコラムを伴うZr添加(Gd,Y)BCOテープでは見られない。BZO(101)ピークは、一定の2シータ円弧に沿って伸長され、これは、(001)REBCOピークの軸から60°未満の角度において整合される。
【0047】
図10は、実施例にすぎないが、超伝導体テープが加工されている際のc軸格子パラメータを測定し得る、インラインX線回折(XRD)ユニット/ツールを図示する概略図の斜視図である。図10を参照すると、一実施形態では、XRDユニットが、これが生産されている際の超伝導体テープにおけるREBCO相のc軸格子パラメータにおけるいずれの偏移もリアルタイムで測定するように、超伝導体堆積ユニットと一直線に設置される。超伝導体フィルムのc軸格子パラメータがその堆積中に監視される場合、所望の閾値からのいずれの逸脱も、決定されることができ、本プロセスは、再調整されることができる。XRDユニットは、クロムアノードを使用するX線源および39~135度の2θ範囲にわたる回折X線ピークを瞬間的に測定し得るライン(線形)またはエリア(2D)X線検出器から成る。X線源および検出器は、REBCOの(007)ピークを検出するように位置付けられる。テープが超伝導体堆積ユニットから退出する際、これは、XRDユニットに進入する。(007)ピークの厳密な2θ位置は、テープの長さに沿った異なる場所において取得される。通常の場所からの(007)ピークの逸脱の大きさを監視することによって、c軸格子パラメータにおける偏移が、決定されることができる。(007)REBCOピーク場所における偏移を連続的に監視することによって、REBCO c軸格子パラメータにおける偏移、したがって、フィルムの(Ba+Zr)/Cu組成が、テープ長にわたって決定されることができる。REBCOフィルム組成の本リアルタイムデータは、次いで、プロセスパラメータを調節するために使用されることができる。例えば、テープ温度、酸素分圧、および/またはバリウムおよび銅前駆体の供給が、(Ba+Zr)/Cuの一貫した組成、その結果、一貫した臨界電流性能を達成するように、リアルタイムで調節されることができる。これらのプロセスパラメータは、臨界電流における高リフトファクターおよびゼロ印加磁場内の77Kにおける良好な臨界電流を取得するように、(Ba+Zr)/Cu組成を最適な間隔において維持するために調節されることができる。別の実施形態では、XRDユニットは、同一の目的のために、REBCOの他の(001)ピークにおける偏移を監視することができる。
【0048】
図11は、実施例にすぎないが、図10に示されるインラインXRDユニット/ツールを使用するシータ-2シータ走査からの異なる(Ba+Zr)/Cu含有量を伴うREBCOテープの(007)ピークの偏移を図示する、プロットである。開示されるインラインXRDツールは、有意に異なる(Ba+Zr)/Cu含有量を伴うREBCOフィルムの(007)ピークにおける偏移を判別することができる。図11に示されるように、フィルムの(007)ピークの2θ場所は、より高いレベルの(Ba+Zr)/Cu含有量を伴うフィルムにおいてより低い値の2θ(より大きい格子パラメータ)に向かって偏移する。一実施形態では、(001)ピーク位置のわずかな変化が、REBCOフィルムにおける(Ba+Zr)/Cu組成のわずかな変化に関して検出され得るように、インラインXRDツールの2θ角分解能は、必要に応じて、線形検出器の単位長あたりのセンサの数等の線形検出器・テープ間距離およびX線光学系を修正することによって改良されることができる。
【0049】
別の実施形態では、図10に示されるX線源および線形検出器は、超伝導体テープのBMO(101)ピークの場所が、これが超伝導体堆積ユニットにおいて生産される際に監視されるように、位置付けられることができる。BMO(101)ピークの厳密な2θ位置は、テープの長さに沿った異なる場所において取得される。通常の場所からのBMO(101)ピークの逸脱の大きさを監視することによって、c軸格子パラメータにおける偏移が、決定されることができる。BMO(101)ピーク場所における偏移を連続的に監視することによって、フィルムの(Ba+Zr)/Cu組成が、図6に示されるデータのように、テープ長にわたって決定されることができる。REBCOフィルム組成の本リアルタイムデータは、次いで、一貫した組成、その結果、一貫した臨界電流性能を達成するように、テープ温度、酸素分圧、および/またはバリウムおよび銅前駆体の供給等のプロセスパラメータをリアルタイムで調節するために使用され得る。
【0050】
さらに別の実施形態では、図10に示されるX線源および線形検出器は、超伝導体テープのBMO(101)ピークおよびREBCO(103)ピークの場所が、テープが超伝導体堆積ユニットにおいて生産される際に監視されるように、位置付けられることができる。BMO(101)ピークおよびREBCO(103)ピークの厳密な2θ位置は、テープの長さに沿った異なる場所において取得されることができる。BMO(101)ピークおよびREBCO(103)ピークの2θ位置の差異の大きさを連続的に監視することによって、フィルムの(Ba+Zr)/Cu組成が、図7に示されるデータのように、テープ長にわたって決定されることができる。REBCOフィルム組成の本リアルタイムデータは、次いで、一貫した組成、その結果、一貫した臨界電流性能を達成するように、テープ温度、酸素分圧、および/またはバリウムおよび銅前駆体の供給等のプロセスパラメータをリアルタイムで調節するために使用されることができる。
【0051】
さらに別の実施形態では、図10に示される線形検出器は、エリア2次元(2D)検出器と置換される。この場合、BMO(101)ピークは、超伝導体テープが超伝導体堆積ユニットにおいて生産される際に連続的に、図9Aに図示されるように、その2θ円弧から離れて、REBCO(103)ピークに向かって傾斜し得る。図9Aに図示されるようなREBCO(001)ピークの軸からのBMO(101)ピークの傾斜の角度もまた、連続的に測定され得る。テープ温度、酸素分圧、および/またはバリウムおよび銅前駆体の供給等の製造プロセスパラメータは、次いで、REBCO(001)ピークの軸から60°~90°の角度内のBMO(101)ピークの傾斜を達成するように、リアルタイムで調節され得る。本方法によって、明確に整合されたBMOナノコラムの一貫した成長が、達成され得、その結果、一貫した臨界電流性能もまた、達成され得る。
【0052】
図12は、実施例にすぎないが、XRDによって測定されるような、異なる(Ba+Zr)/Cu含有量を伴うREBCOフィルムのc軸格子定数とフィルムのREピークの強度との間の相関を図示する、プロットである。(001)ピークの2シータピーク場所を監視することに加えて、インラインXRDツールはまた、テープの長さに沿ったREピークのピーク強度を監視するために利用されることができる。図12は、テープのREピーク強度とREBCOフィルムの異なるc軸格子定数との間の相関を示す。より高いc軸格子定数を伴うREBCOフィルムは、低減されたREピーク強度を示す。したがって、REBCOテープの処理においてインラインXRDを用いてREピーク強度を監視することによって、テープ中の(Ba+Zr)/Cu含有量の変化を決定することができる。
【0053】
図14は、実施例にすぎないが、ある実施形態による、超薄フィルム高温超伝導体テープの微細構造を図示する斜視概略断面図である。超伝導体テープ1400は、基板1410と、基板1410を覆うバッファ層1420と、バッファ層1420を覆う超伝導体フィルム1430とを備える。一実施形態では、図14の超伝導体フィルムは、約11.74オングストロームよりも高いc軸格子定数を有するものとして定義される。一実施形態では、超伝導体フィルム(または一般的にテープ)は、長さが10メートルを上回る。別の実施形態では、超伝導体フィルムは、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Ce、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される5~30モル%のドーパントを備える。なおも別の実施形態では、超伝導体フィルムは、BaMOを備え、式中、M=Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、またはCeであり、これは、REBCO超伝導体フィルムの(001)ピークの軸から60°~90°である軸に沿って伸長されるBaMOの(101)ピークを有する。
【0054】
別の実施形態では、図14の超伝導体フィルム1430は、BaMOを備え得、式中、M=Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、またはCeであり、これは、REBCO超伝導体フィルムの(001)ピークの軸から60°~90°である軸に沿って伸長されるBaMOの(101)ピークを有する。一実施形態では、BaMOの(101)ピークは、XRDによって測定される。別の実施形態では、超伝導体フィルム(または一般的にテープ)は、長さが10メートルを上回る。さらに別の実施形態では、超伝導体フィルムは、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Ce、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される5~30モル%のドーパントを備える。なおも別の実施形態では、超伝導体フィルムは、11.74オングストロームよりも高いc軸格子定数を有するものとして定義される。
【0055】
さらに別の実施形態では、図14の超伝導体フィルム1430は、BaMOを備え得、式中、M=Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、またはCeであり、これは、銅のkアルファ線放射を使用するX線回折によって測定されるとき、30°よりも高い2シータ角に位置するBaMOの(101)ピークを有する。ある実施形態では、超伝導体フィルムは、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Ce、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される5~30モル%のドーパントを備える。別の実施形態では、超伝導体フィルムは、11.74オングストロームよりも高いc軸格子定数を有するものとして定義される。
【0056】
なおも別の実施形態では、図14の超伝導体フィルム1430は、BaMOを備え得、式中、M=Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、またはCeであり、これは、銅のkアルファ線放射を使用するXRDによって測定されるとき、超伝導体相の(103)ピークから2.6°未満の2シータ角に位置するBaMOの(101)ピークを有する。ある実施形態では、超伝導体フィルムは、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Ce、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される5~30モル%のドーパントを備える。別の実施形態では、超伝導体フィルムは、11.74オングストロームよりも高いc軸格子定数を有するものとして定義される。
【0057】
実施例にすぎないが、図13は、超伝導体テープ内の超伝導体フィルムのc軸格子パラメータを測定する方法1300のフローチャートである。ある実施形態では、基板と、バッファ層と、超伝導体フィルムとを備える、超伝導体テープが、提供され得る(ブロック1302)。バッファ層は、基板を覆い、超伝導体フィルムは、バッファ層にわたって堆積される。超伝導体フィルムのc軸格子パラメータが、バッファ層にわたる超伝導体フィルムの堆積中、インラインX線回折を介してリアルタイムで測定される(ブロック1304)。一実施形態では、測定するステップ1304は、超伝導体フィルムの堆積に続けて実施される。ある実施形態では、超伝導体フィルム(または一般的にテープ)は、長さが10メートルを上回る。さらに別の実施形態では、超伝導体フィルムは、Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、Ce、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される5~30モル%のドーパントを備える。別の実施形態では、c軸格子パラメータは、11.74オングストロームよりも高いc軸格子定数である。ある実施形態では、超伝導体フィルムは、BaMOを備え、式中、M=Zr、Sn、Ta、Nb、Hf、またはCeであり、銅のkアルファ線放射を使用するXRDによって測定されるとき、これは、REBCO超伝導体フィルムの(001)ピークの軸から60°~90°である軸に沿って伸長されるBaMOの(101)ピークを有する、またはこれは、超伝導体相の(103)ピークから2.6°未満の2シータ角に位置するBaMOの(101)ピークを有する。
【0058】
図14および図13と関連して議論される超伝導フィルムは、それらの図と関連して上記に議論される特徴のうちの1つ以上のものを含み得ることを理解されたい。上記に説明される実施形態のうちのいずれかにおける特徴は、上記に説明される他の実施形態における特徴と組み合わせて採用され得、そのような組み合わせは、本発明の精神および範囲内と見なされる。さらに、方法1300および超伝導体テープの構造における実施形態が、種々の層を参照して上記に説明されているが、付加的層が、代替として、上記の実施形態のうちのいずれかに説明される方法1300および超伝導体テープの構造において実装され得る。さらに、本明細書に説明される実施形態のうちのいずれかにおける方法ステップは、任意の特定の順序で実施されることに制限されない。そのような代替物は、本発明の精神および範囲内と見なされ、したがって、上記に説明される構成および実施形態の利点を利用し得る。上記に具体的に言及される、考慮される修正および変形例は、本発明の精神および範囲内と見なされる。
【0059】
上記の説明は、例証的であり、制限的ではないことが意図されることを理解されたい。本資料は、任意の当業者が本明細書に説明される概念を作製および使用することを可能にするために提示され、特定の実施形態の文脈において提供され、その変形例は、当業者に容易に明白となるであろう(例えば、開示される実施形態のうちのいくつかは、相互と組み合わせて使用され得る)。多くの他の実施形態は、上記の説明を精査することに応じて当業者に明白となるであろう。本明細書の実施形態の範囲は、したがって、そのような請求項が享有する均等物の全範囲とともに、添付される請求項を参照して決定されるべきである。添付される請求項では、用語「including」および「in which」は、個別の用語「comprising」および「wherein」の平易な英語の均等物として使用される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14