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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】心臓情報動的表示システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/343 20210101AFI20230302BHJP
   A61B 5/367 20210101ALI20230302BHJP
【FI】
A61B5/343
A61B5/367
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2021139733
(22)【出願日】2021-08-30
(62)【分割の表示】P 2018557371の分割
【原出願日】2017-05-03
(65)【公開番号】P2021183199
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】62/331,364
(32)【優先日】2016-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/413,104
(32)【優先日】2016-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513228661
【氏名又は名称】アクタス メディカル インク
【氏名又は名称原語表記】Acutus Medical,Inc.
【住所又は居所原語表記】2210 Faraday Ave,Suite 100 Carlsbad CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェルシュ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】チョウ デリック レン-ユ
(72)【発明者】
【氏名】ザン ハイゼ
(72)【発明者】
【氏名】マリアッパン レオ
(72)【発明者】
【氏名】ズ ミン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン スティーブン アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】シ シンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ビアッティ グレイドン アーネスト
(72)【発明者】
【氏名】アンゲル ナサン
(72)【発明者】
【氏名】タン ウェイヨ
(72)【発明者】
【氏名】シャルフ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】フラハティ ジェイ クリストファ
(72)【発明者】
【氏名】ファラハトピシェ アハマド
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/148470(WO,A1)
【文献】特表2015-528352(JP,A)
【文献】特開2005-131367(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0298690(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気活動データと壁位置データとを含む心臓活動データを多数の心周期にわたって記録するように構成された1つ以上のセンサと、
心臓情報コンソールと、
を備え、
前記心臓情報コンソールが、信号プロセッサと、ユーザインタフェースモジュールと、を備え、
前記信号プロセッサが、
前記電気活動データを処理して、前記多数の心周期の時期を表す別個の時間セグメントを決定し、
前記壁位置データを、それぞれのデータセットが前記別個の時間セグメントの1つにおける心臓表面の少なくとも一部分を表す一組の点を含む、複数のデータセットにセグメント化し、
前記複数のデータセットに基づいて、前記別個の時間セグメントごとに解剖学的モデルを作成する、ように構成されており、
前記ユーザインタフェースモジュールが、少なくとも1つの心臓房室の拍動解剖学的モデルを一連の前記作成された解剖学的モデルとして表示するように構成されており
前記信号プロセッサが、前記電気活動データを処理して前記心周期の固有の時期である時間指標を決定し、連続するそれぞれの前記時間指標間のデータを、所定数の時間セグメントにセグメント化するように構成されている、
ことを特徴とする心臓情報動的表示システム。
【請求項2】
前記1つ以上のセンサが、少なくとも1つの生体電位電極と、少なくとも1つの超音波変換器と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項3】
前記1つ以上のセンサが、複数の生体電位電極である及び前記少なくとも1つの超音波変換器が複数の超音波変換器であることを特徴とする請求項2に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項4】
複数の生体電位電極と複数の超音波変換器とを含む3次元アレイをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項5】
前記1つ以上のセンサが、心臓電気活動データ及び前記壁位置データを交互配置されたパターンで記録するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項6】
前記別個の時間セグメントが、時間セグメントの周期的なセットであることを特徴とする請求項1に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項7】
前記心周期の前記固有の時期である前記時間指標が、前記心周期のV波の上昇又は下降であることを特徴とする請求項1に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項8】
前記信号プロセッサが、前記壁位置データを集合させ、前記集合された壁位置データを多数のビンにセグメント化するように構成され
各前記ビンは、前記別個の時間セグメントの1つからの解剖学的データを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項9】
前記信号プロセッサが、前記ビンの総数を、前記記録された多数の心周期の時間セグメントの平均数に等しくなるように設定するように構成されていることを特徴とする請求項に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項10】
前記別個の時間セグメントの数が前記ビンの数よりも多い又は少数の場合には、前記信号プロセッサが、この差を考慮するように前記記録された心臓活動データを調整するように構成されていることを特徴とする請求項に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項11】
前記別個の時間セグメントの数が前記ビンの数よりも多い場合には、前記信号プロセッサが、追加の別個の時間セグメントをスキップするように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項12】
前記信号プロセッサが、前記追加の別個の時間セグメントを前記心周期の終りから除去するように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項13】
前記信号プロセッサが、アルゴリズムを適用して、スキップする前記追加の別個の時間セグメントを決定するように構成され、前記アルゴリズムは、前記追加の別個の時間セグメントの数に基づくパターンを適用することを特徴とする請求項11に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項14】
前記信号プロセッサが、1つ以上の前記追加の別個の時間セグメントを、異なるビンに割り当てるように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項15】
前記別個の時間セグメントの数が前記ビンの数よりも少数の場合には、前記信号プロセッサが、前記別個の時間セグメントを複数の前記ビンの一部に分配するように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項16】
前記信号プロセッサが、前記別個の時間セグメントを前記ビンに1対1に分配するように構成されていることを特徴とする請求項15に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項17】
前記信号プロセッサが、前記別個の時間セグメントを、割り当て先のビンの中の心臓活動データと同様の特性を有するビンに割り当てるように構成されていることを特徴とする請求項15に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項18】
前記信号プロセッサが、ビンごとに、前記ビンに含まれる前記壁位置データを使用して、表された心周期の関連する前記別個の時間セグメントに対する少なくとも1つの心臓房室の前記解剖学的モデルを作成するように構成されていることを特徴とする請求項に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項19】
前記信号プロセッサが、単一の別個の時間セグメントを表す単一のビンからの心臓活動データから解剖学的基礎モデルを作成するように構成されていることを特徴とする請求項に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項20】
前記信号プロセッサが、共形メッシュを使用して前記基礎モデルに基づいて、残りのビンを表す解剖学的モデルを作成するように構成されていることを特徴とする請求項19に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項21】
前記信号プロセッサが、基礎モデルのそれぞれの頂点を、その垂直軸に沿って内側及び外側に投影し、後続のビンの中の前記心臓活動データを一致させ、及び/又は後続のビンの中の前記心臓活動データを少なくとも近似するように、それぞれの頂点を前記投影に沿って調整し、それぞれのビンの中の前記心臓活動データを表す解剖学的モデルを基礎モデルに基づいて作成するように構成されていることを特徴とする請求項20に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項22】
前記信号プロセッサが、1つ以上の平滑化フィルタを使用して、作成された前記解剖学的モデルを改良するように構成されていることを特徴とする請求項21に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項23】
前記信号プロセッサが、低域フィルタを使用して、それぞれの解剖学的モデルのそれぞれの頂点の位置を、固定された位置及び/又は座標の頂点から、それぞれの作成された前記解剖学的モデルのそれぞれの頂点までの距離に基づいて調整するように構成されていることを特徴とする請求項22に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項24】
前記心臓情報コンソールが、前記電気活動データを前記拍動解剖学的モデルに重ね合わせるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項25】
前記電気活動データが、表面電荷データ及び/又は双極子密度データを含むことを特徴とする請求項24に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項26】
前記心臓情報コンソールが、前記拍動解剖学的モデルに重ね合わされた、前記少なくとも1つの心臓房室のサイズ、形状、及び/又は運動のうちの1つ以上を含む、前記電気活動データに関する1つ以上のメトリックを決定するように構成されていることを特徴とする請求項24に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項27】
前記心臓情報コンソールが、駆出率、一回拍出量、房室体積、房室寸法、局部壁変位、及び/又は速度のうちの1つ以上を測定及び/又は表示するように構成されていることを特徴とする請求項24に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項28】
前記心臓情報コンソールが、心房室及び/又は他の房室の体積を時間の関数として計算及び表示するように構成されていることを特徴とする請求項24に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項29】
前記心臓情報コンソールが、それぞれの頂点における心臓壁の変位及び/又は、前記心臓壁の移動速度のうちの1つ以上を含む機能特性を、収縮性の表現を示すカラーマップとして表示するように構成されていることを特徴とする請求項24に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項30】
前記心臓情報コンソールが、臨床事象前後の前記心臓壁の変位及び/又は速度の差及び/又は変化を、前記臨床事象が原因で機能が変化した特性の領域を示す変化後カラーマップとして表示するように構成されていることを特徴とする請求項29に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項31】
前記心臓情報コンソールが、組織応力又は歪み、血液速度、及び/又は局部壁収縮性のうちの1つ以上を含む1つ以上の表面動力学的特性を測定及び/又は表示するように構成されていることを特徴とする請求項24に記載の心臓情報動的表示システム。
【請求項32】
前記心臓情報コンソールが、タンポナーデ、脳卒中、安定した血流力学的条件からの逸脱、駆出率の低下、一回拍出量の低下、壁運動の低下、房室体積の望ましくない低下、房室体積の望ましくない増大、及びこれらの組合せからなるグループから選択された望ましくない条件を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の心臓情報動的表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、不整脈又は心臓の他の異常の診断及び治療に役立つシステム及び方法に関し、具体的には、このような不整脈又は心臓の他の異常の診断及び治療に関連した心臓活動(cardiac activity)を表示する際に有用なシステム、装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本出願は、米国特許法119条(e)の下で、2016年10月26日に出願された「CARDIAC MAPPING SYSTEM WITH EFFICIENCY ALGORITHM」という名称の米国特許仮出願第62/413,104号、及び2016年5月3日に出願された「CARDIAC MAPPING SYSTEM WITH
EFFICIENCY ALGORITHM」という名称の米国特許仮出願第62/331,364号の優先権を主張するものである。これらの文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0003】
本出願は、2015年9月25日に出願された「Method and Device
for Determining and Presenting Surface Charge and Dipole Densities on Cardiac Walls」という名称の米国特許出願第14/865,435号の優先権を主張するものではないが、この出願に関係している可能性がある。この米国特許出願は、2014年11月19日に出願された「Method and Device for Determining and Presenting Surface Charge and Dipole Densities on Cardiac Walls」という名称の米国特許第9,167,982号の継続出願であり、この特許は、2014年12月23日に発行された「Method and Device for Determining and Presenting Surface Charge and Dipole Densities on Cardiac Walls」という名称の米国特許第8,918,158号(以後’158号特許)の継続出願であり、この特許は、2014年4月15日に発行された「Method and Device for Determining and Presenting Surface Charge and Dipole Densities on Cardiac Walls」という名称の米国特許第8,700,119号(以後’119号特許)の継続出願であり、この特許は、2013年4月9日に発行された「Method and Device for
Determining and Presenting Surface Charge and Dipole Densities on Cardiac Walls」という名称の米国特許第8,417,313号(以後’313号特許)の継続出願であり、この特許は、国際公開第2008/014629号として公開された、2007年8月3日出願の「Method and Device for Determining
and Presenting Surface Charge and Dipole Densities on Cardiac Walls」という名称のPCT出願第CH2007/000380号の米国特許法371条の国内段階出願であったものであり、この出願は、2006年8月3日に出願されたスイス特許出願第1251/06号の優先権を主張した。これらの文献はそれぞれ参照により本明細書に組み込まれている。
【0004】
本出願は、2015年10月19日に出願された「Device and Method for the Geometric Determination of Ele
ctrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」という名称の米国特許出願第14/886,449号の優先権を主張するものではないが、この出願に関係している可能性がある。この米国特許出願は、2013年7月19日に出願された「Device and Method for the Geometric Determination of Electrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」という名称の米国特許第9,192,318号の継続出願であり、この特許は、米国特許出願公開第2010/0298690号(以後’690号公開)として公開された、2013年8月20日発行の「Device and Method for the Geometric Determination of Electrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」という名称の米国特許第8,512,255号の継続出願であり、この特許は、国際公開第2009/090547号として公開された、2009年1月16日出願の「A Device and Method
for the Geometric Determination of Electrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」という名称の特許協力条約出願PCT/IB09/00071号の米国特許法371条の国内段階出願であったものであり、この出願は、2008年1月17日に出願されたスイス特許出願第00068/08号の優先権を主張した。これらの文献はそれぞれ参照により本明細書に組み込まれている。
【0005】
本出願は、2013年9月6日に出願された「Device and Method for the Geometric Determination of Electrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」という名称の米国特許出願第14/003671号の優先権を主張するものではないが、この出願に関係している可能性がある。この米国特許出願は、国際公開第2012/122517号(以後’517号公開)として公開された、「Device and Method for the Geometric Determination of Electrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」という名称の特許協力条約出願PCT/US2012/028593号の米国特許法371条の国内段階出願であり、この出願は、米国特許仮出願第61/451,357号の優先権を主張した。これらの文献はそれぞれ参照により本明細書に組み込まれている。
【0006】
本出願は、2013年12月2日に出願された「Catheter System and Methods of Medical Uses of Same,Including Diagnostic and Treatment Uses for the Heart」という名称の米国意匠出願第29/475,273号の優先権を主張するものではないが、この出願に関係している可能性があり、この米国意匠出願は、2013年8月30日に出願された「Catheter System and Methods of Medical Uses of Same,Including Diagnostic and Treatment Uses for the Heart」という名称の特許協力条約出願PCT/US2013/057579号の米国特許法371条の国内段階出願であり、この出願は、2012年8月31日に出願された「System and Method for Diagnosing and Treating Heart Tissue」という名称の米国特許仮出願第61/695,535号の優先権を主張している。この文献は参照により本明細書に組み込まれている。
【0007】
本出願は、2014年2月7日に出願された「Expandable Catheter Assembly with Flexible Printed Circuit
Board(PCB)Electrical Pathways」という名称の特許協
力条約出願PCT/US2014/15261号の優先権を主張するものではないが、この出願に関係している可能性がある。このPCT出願は、2013年2月8日出願された「Expandable Catheter Assembly with Flexible Printed Circuit Board(PCB)Electrical
Pathways」という名称の米国特許仮出願第61/762,363号の優先権を主張している。この文献は参照により本明細書に組み込まれている。
【0008】
本出願は、2015年1月14日に出願された「Gas-Elimination Patient Access Device」という名称の特許協力条約出願PCT/US2015/11312号の優先権を主張するものではないが、この出願に関係している可能性がある。このPCT出願は、2014年1月17日に出願された「Gas-Elimination Patient Access Device」という名称の米国特許仮出願第61/928,704号の優先権を主張している。この文献は参照により本明細書に組み込まれている。
【0009】
本出願は、2015年3月24日に出願された「Cardiac Analysis User Interface System and Method」という名称の特許協力条約出願PCT/US2015/22187号の優先権を主張するものではないが、この出願に関係している可能性がある。このPCT出願は、2014年3月28日に出願された「Cardiac Analysis User Interface System and Method」という名称の米国特許仮出願第61/970,027号の優先権を主張している。この文献は参照により本明細書に組み込まれている。
【0010】
本出願は、2014年9月10日に出願された「Devices and Methods for Determination of Electrical Dipole Densities on a Cardiac Surface」という名称の特許協力条約出願PCT/US2014/54942号の優先権を主張するものではないが、この出願に関係している可能性がある。このPCT出願は、2013年9月13日に出願された「Devices and Methods for Determination of Electrical Dipole Densities on a Cardiac Surface」という名称の米国特許仮出願第61/877,617号の優先権を主張している。この文献は参照により本明細書に組み込まれている。
【0011】
本出願は、2015年5月13日に出願された「Localization System and Method Useful in the Acquisition and Analysis of Cardiac Information」という名称の米国特許仮出願第62/161,213号の優先権を主張するものではないが、この仮出願に関係している可能性がある。この文献は参照により本明細書に組み込まれている。
【0012】
本出願は、2015年5月12日に出願された「Cardiac Virtualization Test Tank and Testing System and Method」という名称の米国特許仮出願第62/160,501号の優先権を主張するものではないが、この仮出願に関係している可能性がある。この文献は参照により本明細書に組み込まれている。
【0013】
本出願は、2015年5月12日に出願された「Ultrasound Sequencing System and Method」という名称の米国特許仮出願第62/160,529号の優先権を主張するものではないが、この仮出願に関係している可能性がある。この文献は参照により本明細書に組み込まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
心臓信号(例えば電荷密度、双極子密度、電圧など)の大きさは心臓内表面(endocardial surface)を横切って変動する。これらの信号の大きさはいくつかの因子に依存し、このような因子には、局所(local)組織特性(例えば健康対病気/瘢痕/線維増多/病変)及び局部活動化(regional activation)特性(例えば局所細胞の活動化前の活動化された組織の「電気質量(electrical mass)」)が含まれる。一般的なプラクティスは、心臓内表面を横切って全ての信号に常に単一のしきい値を割り当てることである。単一のしきい値の使用によって、低振幅の活動化が見逃されたり、又は高振幅の活動化が優勢になったり/飽和したりすることがあり、それらはマップの解釈の混乱につながり得る。活動化の適切な検出の失敗は、治療を届ける関心の部位(region)の不正確な識別、又はアブレーションの効能の不完全な特性評価(characterization)(ブロックの過剰又は不足)につながり得る。
【0015】
心房細動の連続的かつ全体的なマッピングは、時間的及び空間的に変動し得る途方もなく大量の活動化パターンを生み出す。不整脈の動因、機構及び支持基質の包括的な描写を提供するのに、マップデータの限られた離散的サンプリングでは不十分であることがある。「より大きな絵」を完成させるための記憶及び継ぎ合せのために、臨床医が心房細動を長時間精査することは困難な作業となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の概念の一態様によれば、心臓情報動的表示システム(cardiac information dynamic display system)は、心臓活動を表す電位データのセットを複数の時間間隔において記録するように構成された1つ以上の電極と、心臓情報コンソール(cardiac information console)とを備え、心臓情報コンソールは信号プロセッサを備え、信号プロセッサは、前記複数の時間間隔における心臓活動データのセットを、記録された電位データのセットを使用して計算するように構成されており、心臓活動データは、1つ以上の心臓房室(cardiac chamber)の表面位置に関連しており、心臓情報コンソールはさらに、一連の画像を表示するように構成されたユーザインタフェースモジュールを備え、それぞれの画像は、心臓活動の図形表現(graphical representation)を含み、信号プロセッサは、1つ以上の位置特定軸(localization axis)を所望の方向に向けるように、及び/又は位置特定座標系を生理的向きの方へ回転させるように構成された自動化された配向システム(automated orientation system)(以後、自動配向システム)を含む。
【0017】
本発明の概念の別の態様によれば、心臓情報動的表示システムは、心臓活動を表す電位データのセットを複数の時間間隔において記録するように構成された1つ以上の電極と、心臓情報コンソールとを備え、心臓情報コンソールは信号プロセッサを備え、信号プロセッサは、前記複数の時間間隔における心臓活動データのセットを、記録された電位データのセットを使用して計算するように構成されており、心臓活動データは、1つ以上の心臓房室の表面位置に関連しており、心臓情報コンソールはさらに、一連の画像を表示するように構成されたユーザインタフェースモジュールを備え、それぞれの画像は、心臓活動の図形表現を含み、信号プロセッサは、打切りSVD計算(truncated SVD computation)を直接に実行して心臓活動データのセットを計算する心臓情報アルゴリズムを含む。
【0018】
本発明の概念の別の態様によれば、心臓情報動的表示システムは、心臓活動を表す電位
データのセットを複数の時間間隔において記録するように構成された1つ以上の電極と、心臓情報コンソールとを備え、心臓情報コンソールは信号プロセッサを備え、信号プロセッサは、前記複数の時間間隔における心臓活動データのセットを、記録された電位データのセットを使用して計算するように構成されており、心臓活動データは、1つ以上の心臓房室の表面位置に関連しており、心臓情報コンソールはさらに、一連の画像を表示するように構成されたユーザインタフェースモジュールを備え、それぞれの画像は、心臓活動の図形表現を含み、信号プロセッサは、十分な機能性に関して前記1つ以上の電極を評価するように構成された無機能電極検出アルゴリズム(non-functional electrode detection algorithm)を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、信号プロセッサがさらに、無機能電極検出アルゴリズムによって識別された電極から測定された電圧を、心臓活動データのセットの計算に含めないように構成されている。
【0020】
本発明の概念の別の態様によれば、心臓情報動的表示システムは、心臓活動を表す電位データのセットを複数の時間間隔において記録するように構成された1つ以上の電極と、心臓情報コンソールとを備え、心臓情報コンソールは信号プロセッサを備え、信号プロセッサは、前記複数の時間間隔における心臓活動データのセットを、記録された電位データのセットを使用して計算するように構成されており、心臓活動データは、1つ以上の心臓房室の表面位置に関連しており、心臓情報コンソールはさらに、一連の画像を表示するように構成されたユーザインタフェースモジュールを備え、それぞれの画像は、心臓活動の図形表現を含み、コンソールは、アナログ-デジタル変換器と、ある条件下で前記アナログ-デジタル変換器を自動的にオフにするように構成されたサブシステムとを含む。
【0021】
本発明の概念の別の態様によれば、心臓情報動的表示システムは、心臓活動を表す電位データのセットを複数の時間間隔において記録するように構成された1つ以上の電極と、心臓情報コンソールとを備え、心臓情報コンソールは信号プロセッサを備え、信号プロセッサは、前記複数の時間間隔における心臓活動データのセットを、記録された電位データのセットを使用して計算するように構成されており、心臓活動データは、1つ以上の心臓房室の表面位置に関連しており、心臓情報コンソールはさらに、一連の画像を表示するように構成されたユーザインタフェースモジュールを備え、それぞれの画像は、心臓活動の図形表現を含み、信号プロセッサは、心室遠距離場信号(venticular far
field signal)の影響を低減させるように構成されたアルゴリズムを含む。
【0022】
本発明の概念の別の態様によれば、心臓情報動的表示システムは、心臓活動を表す電位データのセットを複数の時間間隔において記録するように構成された1つ以上の電極と、心臓情報コンソールとを備え、心臓情報コンソールは信号プロセッサを備え、信号プロセッサは、前記複数の時間間隔における心臓活動データのセットを、記録された電位データのセットを使用して計算するように構成されており、心臓活動データは、1つ以上の心臓房室の表面位置に関連しており、心臓情報コンソールはさらに、一連の画像を表示するように構成されたユーザインタフェースモジュールを備え、それぞれの画像は、心臓活動の図形表現を含み、信号プロセッサは、電圧測定値を位置に相関させるように構成された位置合せハンドリングサブシステム(registration handling subsystem)を含む。
【0023】
本発明の概念の別の態様によれば、心臓情報動的表示システムは、心臓活動を表す電位データのセットを複数の時間間隔において記録するように構成された1つ以上の電極と、心臓情報コンソールとを備え、心臓情報コンソールは信号プロセッサを備え、信号プロセッサは、前記複数の時間間隔における心臓活動データのセットを、記録された電位データ
のセットを使用して計算するように構成されており、心臓活動データは、1つ以上の心臓房室の表面位置に関連しており、心臓情報コンソールはさらに、一連の画像を表示するように構成されたユーザインタフェースモジュールを備え、それぞれの画像は、心臓活動の図形表現を含み、信号プロセッサは、改良された場推定アルゴリズム(field estimation algorithm)を含む。
【0024】
本発明の概念の別の態様によれば、心臓情報動的表示システムは、心臓活動を表す電位データのセットを複数の時間間隔において記録するように構成された1つ以上の電極と、心臓情報コンソールとを備え、心臓情報コンソールは信号プロセッサを備え、信号プロセッサは、前記複数の時間間隔における心臓活動データのセットを、記録された電位データのセットを使用して計算するように構成されており、心臓活動データは、1つ以上の心臓房室の表面位置に関連しており、心臓情報コンソールはさらに、一連の画像を表示するように構成されたユーザインタフェースモジュールを備え、それぞれの画像は、心臓活動の図形表現を含み、信号プロセッサは、順行列(forward matrix)及び逆解法(inverse solution)と、行列に対する距離影響を低減させるように構成された前スケーリング部分及び逆解法の出力を調整するように構成された後スケーリング部分を含むスケーリング(scaling)アルゴリズムとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の概念の態様に係る、心臓情報処理システムの実施形態のブロック図である。
図1-1】本発明の概念の態様に係る、SVD計算を実行する方法を示す2つの流れ図である。
図2】本発明の概念の態様に係る、患者の正面図及び背面図並びに相対的な電極配置を示す図である。
図3】本発明の概念の態様に係る、無機能電極を識別する流れ図である。
図4】本発明の概念の態様に係る、V波除去を実行する流れ図である。
図4-1】本発明の概念の態様に係る、V波除去プロットの例を示す図である。
図4-2】本発明の概念の態様に係る、V波除去プロットの例を示す図である。
図4-3】本発明の概念の態様に係る、V波除去プロットの例を示す図である。
図5】本発明の概念の態様に係る、位置特定を実行するアルゴリズムの流れ図である。
図6】本発明の概念の態様に係る、ターゲットフレームまでの積分経路の3D表示である。
図7】本発明の概念の態様に係る、ターゲットフレームまでの積分経路の3D表示である。
図8】本発明の概念の態様に係る、スケーリングアルゴリズムの流れ図である。
図9】本発明の概念の態様に係る、多数のバスケット(basket)位置をマップする流れ図である。
図10】本発明の概念の態様に係る、心臓活動の計算に使用するために無機能電極を再分類するステップの流れ図である。
図11A】V波除去(V-Wave Removal:VWR)の例を示す図である。
図11B】V波除去(V-Wave Removal:VWR)の例を示す図である。
図12】本発明の概念の態様に係る、心臓活動化データのビュー(view)の表示の実施形態を示す図である。
図13】本発明の概念の態様に係る、伝搬履歴マップ(propagation history map)に適用されたメジアンフィルタのいくつかの例を示す図である。
図14】本発明の概念の態様に係る、誤検出活動化注釈(false positive activation annotation)の除去の例示的な一実施態様を示す図である。
図15】本発明の概念の態様に係る、投げ縄(lasso)型カテーテルを示す図である。
図16】本発明の概念の態様に係る、カテーテルを表す曲線に点を当てはめる方法を示す流れ図である。
図17A】本発明の概念の態様に係る、1つ以上のチャネルに対するペースブランキング(pace blanking)法の例を示す図である。
図17B】本発明の概念の態様に係る、1つ以上のチャネルに対するペースブランキング(pace blanking)法の例を示す図である。
図17C】本発明の概念の態様に係る、1つ以上のチャネルに対するペースブランキング(pace blanking)法の例を示す図である。
図18A】本発明の概念の態様に係る、ボクセルを使用する例を示す図である。
図18B】本発明の概念の態様に係る、ボクセルを使用する例を示す図である。
図19】本発明の概念の態様に係る、心臓の拍動解剖学的モデルを生成する方法の実施形態の流れ図である。
図20】本発明の概念の態様に係る、心臓の動的モデルを表示する方法の実施形態の流れ図である。
図21】本発明の概念の態様に係る、心臓のモデルを編集する方法の実施形態の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、様々な例示的な実施形態を、添付図面を参照してより完全に説明する。添付図面には、いくつかの例示的な実施形態が示されている。しかしながら、本発明の概念は、多くの異なる形態で実施することができるのであり、本発明の概念が、本明細書に記載された例示的な実施形態だけに限定されると解釈すべきではない。
【0027】
本明細書では、様々な要素を説明するために第1、第2などの用語が使用されているが、これらの要素は、これらの用語によって限定されるものではないことが理解される。これらの用語は、1つの要素を別の要素から区別するために使用されているのであり、要素の必要な順序を暗示するものではない。例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、同様に第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。本明細書で使用されるとき、用語「及び/又は」は、列挙された関連アイテムのうちの1つ以上のアイテムの任意の組合せ及び全ての組合せを含む。また、列挙された関連アイテムの「組合せ」は、列挙された全てのアイテムを含む必要はないが、列挙された全てのアイテムを含み得る。
【0028】
1つの要素が、別の要素「上にある」、「に取り付けられている」、「に接続されている」、若しくは「に結合されている」と記載されているとき、その要素は、直接にその別の要素「上にあり」、「に接続されており」、若しくは「に結合されている」ことができ、又は介在要素が存在し得ることが理解される。反対に、1つの要素が、別の要素「上に直接にある」、「に直接に接続されている」、又は「に直接に結合されている」と記載されているとき、介在要素は存在しない。要素間の関係を記述するために使用されている他の語(例えば「間に」と「直接に間に」、「隣接する」と「直接に隣接する」など)も同様に解釈すべきである。
【0029】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記述することだけが目的であり、それらの用語が、本発明を限定することは意図されていない。文脈からそうではないことが明らかでない限り、本明細書で使用されるとき、単数形の「a」、「an」、及び「the
」は、複数形も含むことが意図されている。本明細書で使用されるとき、用語「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、及び/又は「含む(including)」は、明示された特徴、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、他の1つ以上の特徴、ステップ、操作、要素、構成要素、及び/又はこれらのグループの存在又は追加を排除しないことも理解される。
【0030】
例えば図に示されている1つの要素及び/又は特徴の別の要素及び/又は特徴に対する関係を記述するために、「の下方(beneath)」、「よりも下(below)」、「下部(lower)」、「よりも上(above)」、「上部(upper)」などの空間に関する相対的な用語が使用されることがある。空間に関するこれらの相対的な用語は、図に示された向きに加えて、装置の使用及び/又は操作の異なる向きを包含することが意図されていることが理解される。例えば、図に示された装置が裏返された場合、別の要素又は特徴の「下方に」及び/又は「下に」にあると記載された要素は、その別の要素又は特徴「よりも上」になることになる。これとは異なる向き(例えば90度回転させた向き又はその他の向き)に装置が配置されることもあり、その場合、本明細書で使用される空間に関する相対的な用語はそれに応じて解釈される。
【0031】
位置特定は、座標系を確立し、電子信号などの1つ以上の信号を使用して、その系内の1つ以上の物体の位置を決定するプロセスを示す。いくつかの実施形態では、位置特定プロセスが、1つ以上の源から生成された1つ以上の信号であって、空間及び/又は時間の関数として変化する1つ以上の信号と、生成された信号を1つの位置から測定するセンサ、検出器又は他の変換器とを含む。センサの位置は、位置特定がなされている物体上とすることができ、又は位置特定がなされている物体とは別の位置とすることができる。測定された信号の分析及び/又は測定された信号に対する計算を使用して、生成された信号の1つ以上の源に対するセンサ及び/又は物体の位置関係を決定することができる。センサと源の間の位置関係の数又は正確さを増大させるために、この位置特定法は、生成された2つ以上の信号を含むことができる。源、センサ及び/又は物体は同じ位置に配置することができ、又は同じ装置とすることができる。いくつかの実施形態では、時間及び/又は空間の関数としての変化が、生成された信号と測定環境との相互作用を含む。他の実施形態では、位置特定プロセスが、物体、センサ又は環境の固有又は既存の属性又は特性を測定する。例えば、物体又はセンサ上に置かれた加速度計からの信号を測定する。
【0032】
本明細書では、理想化された又は代表的な構造及び中間構造の図を参照して、例示的な様々な実施形態が説明される。そのため、例えば製造技法及び/又は製作公差の結果としてそれらの図の形状からの変動が予想される。したがって、例示的な実施形態が、本明細書に示された部位の特定の形状だけに限定されると解釈すべきではなく、例示的な実施形態は、例えば製造に起因する形状の偏差を含む。
【0033】
本明細書に、機能特徴、動作、及び/又はステップが記載されている限りにおいて、又は、記載されていなくても、機能特徴、動作、及び/又はステップが、本発明の概念の様々な実施形態に含まれると理解される限りにおいて、そのような機能特徴、動作、及び/又はステップは、機能ブロック、ユニット、モジュール、動作、及び/又は方法として実施することができる。また、そのような機能ブロック、ユニット、モジュール、動作、及び/又は方法が、コンピュータプログラムコードを含むのであれば、そのようなコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのコンピュータプロセッサによって実行可能なコンピュータ可読媒体、例えば非一時的メモリ及び媒体などに記憶することができる。
【0034】
次に図1を参照すると、本発明の概念の態様に係る心臓情報処理システム100の一実施形態のブロック図が示されている。心臓情報処理システム100は、患者の病気若しく
は障害、例えば不整脈の治療などのために心臓マッピング、診断、及び/又は治療を実行するように構成されたシステムとすることができ、又はそのようなシステムを含むことができる。それに加えて又はその代わりに、このシステムを、患者Pの心臓の異常又は病気を診断及び/又は治療する装置及び方法を教示及び/又は検証するように構成されたシステムとすることもできる。さらに、このシステムを使用して、心臓の表面を横切って伝搬している活動の波面の動的表示など、心臓活動の表示を生成することもできる。
【0035】
心臓情報処理システム100は、心臓情報処理システム100の様々な機能を協力して達成するように構成することができる、カテーテル10、心臓情報コンソール20及び患者インタフェースモジュール50を含む。心臓情報処理システム100は単一の電源(PWR)を含むことができ、心臓情報コンソール20と患者インタフェースモジュール50はPWRを共用することができる。単一の電源をこのように使用すると、患者インタフェースモジュール50の中へ漏れ電流が伝搬し、それによって位置特定、すなわち患者Pの体内の1つ以上の電極の位置を決定するプロセスに誤りが生じる可能性を大幅に減らすことができる。図1に示されているように、心臓情報コンソール20は、コンソール20の様々な構成要素を互いに電気的に又は操作可能に接続するバス21を含む。
【0036】
カテーテル10は、心臓房室(heart chamber:HC)に経皮的に送達することができる電極アレイ12を含む。この実施形態では、電極のアレイ12が、3次元(3D)空間において既知の空間構成を有する。例えば、拡張状態において、電極アレイ12の物理的関係は既知であることができ、又は高い信頼性で仮定することができる。診断カテーテル10はさらに、ハンドル14、及びハンドル14から延びる細長い可撓性のシャフト16を含む。シャフト16の遠位端には、半径方向に拡張可能及び/又はコンパクト化可能なアセンブリなどの電極アレイ12が取り付けられている。この実施形態では、電極アレイ12がバスケットアレイとして示されているが、他の実施形態では電極アレイ12が他の形態をとることもできる。いくつかの実施形態では、拡張可能な電極アレイ12を、本出願の出願人の2013年8月30日に出願された「System and Method for Diagnosing and Treating Heart
Tissue」という名称の国際PCT特許出願PCT/US2013/057579号及び2014年2月7日に出願された「EXPANDABLE CATHETER ASSEMBLY WITH FLEXIBLE PRINTED CIRCUIT BOARD」という名称の国際PCT特許出願PCT/US2014/015261号に関して記載されているように構築及び配列することができる。これらの文献の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。他の実施形態では、拡張可能な電極アレイ12が、バルーン、半径方向に展開可能なアーム、渦巻きアレイ、及び/又は拡張可能及びコンパクト化可能な他の構造体(例えば弾力によってバイアスされた(resiliently biased)構造体)を備えることができる。
【0037】
シャフト16及び拡張可能な電極アレイ12は、体(例えば動物の体又は人間の体、例えば患者Pの体)に挿入し、大腿静脈及び/又は他の血管などの体の脈管の中で前進させるように構築及び配列される。シャフト16及び電極アレイ12は、電極アレイ12がコンパクト化された状態にあるときなどに、誘導針(introducer)(図示せず)に挿入し、誘導針の管孔の中で滑らせるように前進させて、体腔、例えば心臓房室(HC)、例として右心房又は左心房などに挿入するように構築及び配列することができる。
【0038】
拡張可能な電極アレイ12は、多数のスプライン(spline)(例えば図1に示されたバスケット形に弾力によってバイアスされた多数のスプライン)を備えることができ、それぞれのスプラインは、複数の生体電位(bio-potential)電極12a及び/又は複数の超音波(US)変換器12bを有する。図1には、3つのスプラインが示されているが、バスケットアレイは3つのスプラインだけに限定されず、4つ以上又は
2つ以下のスプラインをバスケットアレイに含めることもできる。心臓の表面の点又は心臓房室HC内の位置において決定された、例えば測定又は感知された電圧などの生体電位(又は電圧)を記録するように、それぞれの電極12aを構成することができる。解剖学的構造のデジタルモデルを作成する際に使用する反射ターゲットまでの距離、例えば心臓房室(HC)の表面の点までの距離を決定するために超音波信号を送信し、超音波反射を受信するように、それぞれのUS変換器12bを構成することができる。
【0039】
非限定的な例として、この実施形態では、それぞれのスプライン上に、3つの電極12a及び3つのUS変換器12bが示されている。しかしながら、他の実施形態では、バスケットアレイが、4つ以上若しくは2つ以下の電極及び/又は4つ以上若しくは2つ以下のUS変換器を含むことができる。さらに、電極12aと変換器12bは対で配列することができる。ここでは、1つの電極12aと1つの変換器12bが対をなしており、1つのスプラインに多数の電極-変換器対が存在する。しかしながら、本発明の概念は、この特定の電極-変換器配列だけに限定されない。他の実施形態では、全ての電極12a及び変換器12bを対で配列する必要は必ずしもなく、一部を対で配列し、残りを対で配列しないこともできる。さらに、いくつかの実施形態では、全てのスプラインが、電極12a及び変換器12bの同じ配列を有していなければならないわけではない。さらに、いくつかの実施形態では、一部のスプライン上に電極12aを配列し、別のスプライン上に変換器12bを配列することもできる。
【0040】
カテーテル10は、対応するそれぞれのコネクタ18a及び20aを介してカテーテル10を心臓情報コンソール20に電気的、光学的及び/又は電気光学的に接続するように構成されたケーブル18などのケーブル又は他の導線を備えることができる。いくつかの実施形態では、ケーブル18が、ステアリングケーブルなどのケーブル、機械的リンク、液圧管、空気管、及びこれらのうちの1つ以上の組合せからなるグループから選択された機構を備える。
【0041】
心臓情報コンソール20の1つ以上の構成要素を患者Pから電気的に分離する(例えばショック又は望まれていない他の電気エネルギーの患者Pへの望まれていない送達を防ぐ)ように、患者インタフェースモジュール50を構成することができる。患者インタフェースモジュール50を、心臓情報コンソール20と一体とすることができ、及び/又は、図示されているように、患者インタフェースモジュール50が、別個の分離した構成要素(例えば別個のハウジング)を構成することもできる。心臓情報コンソール20は、1つ以上のコネクタ20bを備え、コネクタ20bはそれぞれ、ジャック、プラグ、端子、ポート、又は特注若しくは標準の他の電気、光学及び/若しくは機械コネクタを構成する。いくつかの実施形態では、10キロヘルツから20メガヘルツなどのRF周波数にわたって望ましい入力インピーダンスを維持するように、コネクタ20bが終端される。いくつかの実施形態では、ケーブルシールドをフィルタで終端することによってこの終端を達成することができる。いくつかの実施形態では、この終端フィルタが、1つの周波数範囲において、例えば位置特定周波数における漏れを最小化するために高い入力インピーダンスを提供することができ、異なる周波数範囲において、例えば超音波周波数における信号完全性(signal integrity)を最大にするために低い入力インピーダンスを提供することができる。同様に、患者インタフェースモジュール50も、1つ以上のコネクタ50bを含む。少なくとも1本のケーブル52が、コネクタ20b及び50bを介して患者インタフェースモジュール50を心臓情報コンソール20に接続する。
【0042】
この実施形態では、患者インタフェースモジュール50が、分離された位置特定駆動システム54、一組のパッチ電極56、及び1つ以上の基準電極58を含む。分離された位置特定駆動システム54は、システムの残りの部分から位置特定信号を分離して、性能低下に帰着する電流漏れ、例えば信号損失を防ぐ。いくつかの実施形態では、システムの残
りの部分から位置特定信号を分離することが、位置特定周波数における100キロオーム超の範囲のインピーダンス、例えば約500キロオームのインピーダンスを含む。位置特定駆動システム54を分離することによって、位置特定位置のドリフトを最小化し、軸間の高度な分離を維持することができる。位置特定駆動システム54は、電流、電圧、磁気、音響又は他のタイプのエネルギー様式(energy modality)の駆動システムとして動作することができる。一組のパッチ電極56及び/又は1つ以上の基準電極58は、導電性電極、磁気コイル、音響変換器、及び/又は位置特定駆動システム54によって使用されるエネルギー様式に基づく他のタイプの変換器若しくはセンサからなることができる。さらに、分離された位置特定駆動システム54は、全ての軸上での同時出力を維持し、例えばそれぞれの軸電極対上に位置特定信号が存在し、同時に、それぞれの電極位置における有効サンプリングレートも増大させる。いくつかの実施形態では、位置特定サンプリングレートが、約625kHzのサンプリングレートなど、10kHzから20MHzの間のレートを含む。
【0043】
この実施形態では、一組のパッチ電極56が、3つのパッチ電極対、すなわち肋骨の両側に置かれた2つのパッチ電極を有する「X」対(X1、X2)、下背部に置かれた1つのパッチ電極(Y1)及び上胸部に置かれた1つのパッチ電極(Y2)を有する「Y」対、並びに上背部に置かれた1つのパッチ電極(Z1)及び下腹部に置かれた1つのパッチ電極(Z2)を有する「Z」対を含む。パッチ電極56のこれらの対は、直交する及び/又は直交しない数組の軸上に配置することができる。図1の実施形態には、患者P上の電極の配置が示されており、背部の電極は破線で示されている(図2も参照されたい)。
【0044】
図2は、本発明の概念の態様に係る、患者Pの正面図及び背面図並びに相対的な電極配置を示す図である。この図は、上で論じた好ましいパッチ電極配置を示している。図2では、例えば、X電極X1及びX2がそれぞれパッチ電極1及び2として示されており、Z電極Z1及びZ2がそれぞれパッチ電極3及び4として示されており、Y電極Y1及びY2がそれぞれパッチ電極5及び6として示されている。したがって、パッチ1及び2は肋骨に配置されており、体内でX軸を形成し、パッチ3及び4は(それぞれ)下背部及び上胸部に置かれており、Z軸を形成し、パッチ5及び6はそれぞれ上背部及び下腹部(胴)に置かれており、Y軸を形成する。これらの3つの軸は同様の長さを有し、体の「自然」軸(すなわち頭部から足指、胸部から背部、及び体側から体側)とは整列していない。
【0045】
下背部/臀部に基準パッチ電極58を置くことができる。それに加えて又はその代わりに、下背部/臀部の血管及び/又は下背部/臀部の近くの血管などの体の脈管内に基準カテーテルを配置することもできる。
【0046】
電極56の配置は、パッチ電極56の対1つにつき1軸、すなわち3軸からなる座標系を定義する。いくつかの実施形態では、例えば図2に示されているように、これらの軸が、体の自然軸と直交しない。すなわち、頭部-足指、胸部-背部及び体側-体側(すなわち肋骨-肋骨)と直交しない。これらの電極は、心臓内に位置する原点などの原点において軸が交わるように配置することができる。例えば、交わる3軸の原点を心房の体積の中心に置くことができる。(例えば位置特定がなされている1つ以上の位置において正電圧から負電圧への交差を防ぐために、)例えばその結果生じる電気的ゼロ位(electrical zero)が心臓外にあるように基準電極58を配置することによって、心臓の外側に置かれた「電気的ゼロ位」を提供するように、システム100を構成することができる。
【0047】
上で説明したように、パッチ対は、示差的に動作することができる。すなわち、対のどちらのパッチ56も基準電極として動作せず、両方のパッチがシステム100によって駆動されて、2つのパッチ間に電場を発生させる。その代わりに又はそれに加えて、パッチ
電極56がシングルエンドモード(single ended mode)で動作するように、1つ以上のパッチ電極56が基準電極58の役目を果たすこともできる。任意のパッチ電極56対の一方のパッチ電極56が、そのパッチ対の基準電極58の役目を果たし、シングルエンドパッチ対を形成することができる。1つ以上のパッチ対を、独立してシングルエンドパッチ対となるように構成することができる。1つ以上のパッチ対が、1つのパッチを、シングルエンド基準として共用すること、又は2つ以上のパッチ対の基準パッチを電気的に接続することができる。
【0048】
心臓情報コンソール20によって実行される処理によって、第1の向き、例えば電極56の配置に基づく非生理的向きから第2の向きに軸を変換すること、例えば回転させることができる。第2の向きは、標準的な左-後-上(Left-Posterior-Superior:LPS)解剖学的向きを含むことができ、すなわち、「x」軸の向きが患者の右から左、「y」軸の向きが患者の前から後、「z」軸の向きが患者の尾(caudal)から頭(cranial)である。パッチ電極56の配置及びそれにより定義される非標準軸は、通常の生理的向きの軸を与えるパッチ電極配置と比較したときに、例えば非標準的向きの電極56間の好ましい組織特性のために改良された空間分解能を提供するように選択することができる。例えば、電極56の非標準配置は、その結果として、肺の低インピーダンス体積の位置特定場(localization field)に対する負の影響を低減させることができる。さらに、等しい長さ又は少なくとも同様の長さを有する経路に沿って患者の体を貫く軸を生み出すように、電極56の配置を選択することができる。同様の長さの軸は、体内の単位距離当たりで同様のエネルギー密度を有し、このような軸に沿ってより均一な空間分解能を生じる。非標準軸を標準的な向きに変換することにより、より簡単な表示環境をユーザに提供することができる。所望の回転が達成された後、それぞれの軸を必要に応じてスケーリングすること、すなわちより長くすること又はより短くすることができる。この回転及びスケーリングは、電極アレイ12の予め決められた、例えば予想される又は既知の形状及び相対的寸法を、パッチ電極の確立された座標系における、この電極アレイの形状及び相対的寸法に対応する測定値と比較することに基づいて実行される。例えば、比較的に不正確な表現、例えば較正されていない表現をより正確な表現に変換するように回転及びスケーリングを実行することができる。電極アレイ12の表現の成形及びスケーリングは、軸の向き及び相対的サイズを、よりいっそう正確になるように調整、整列及び/又は他の手法で改善することができる。
【0049】
電気的基準電極58は、患者「アナログ接地」基準として機能するパッチ電極及び/若しくは電気的基準カテーテルとすることができ、又は、少なくとも、そのようなパッチ電極及び/若しくは電気的基準カテーテルを含むことができる。皮膚表面にパッチ電極58を置くことができ、パッチ電極58は、除細動用の電流の帰線の働きをすることができる(すなわち2次的目的を提供することができる)。電気的基準カテーテルは、コモンモード除去(common mode rejection)を強化するために使用される単極基準電極を含むことができる。この単極基準電極又は基準カテーテル上の他の電極を使用して、心臓信号の生理的、機械的、電気的及び/又は計算アーチファクトを測定、追跡、補正及び/又は較正することができる。いくつかの実施形態では、これらのアーチファクトが、呼吸、心臓運動、及び/又はフィルタなどの適用された信号処理によって誘起されたアーチファクトに起因し得る。電気的基準カテーテルの別の形態を、全ての内部カテーテル電極の低ノイズ「アナログ接地」の働きをすることができる内部アナログ基準電極とすることができる。これらのそれぞれのタイプの基準電極は、下背部の近くの内部血管内(カテーテル)及び/又は下背部(パッチ)など、比較的に同様の位置に置くことができる。いくつかの実施形態では、システム100が、固定機構(例えばユーザが起動させる固定機構)を含む基準カテーテル58を備え、この固定機構は、基準カテーテル58の1つ以上の電極の変位(例えば偶発的な移動又は他の意図しない移動)を低減させるように構築及び配置することができる。この固定機構は、渦巻き形エキスパンダ(expan
der)、球形エキスパンダ、円周エキスパンダ、軸方向作動エキスパンダ、回転方向作動エキスパンダ、及びこれらのうちの2つ以上のエキスパンダの組合せからなるグループから選択された機構を構成することができる。
【0050】
図1には、心臓情報コンソール20の受信器構成要素の態様が示されている。心臓情報コンソール20は、コネクタ20aに接続された除細動(DFIB)保護モジュール22を含み、DFIB保護モジュール22は、カテーテル10から心臓情報を受信するように構成されている。DFIB保護モジュール22は、正確なクランピング電圧及び最小の静電容量を有するように構成されている。機能上、DFIB保護モジュール22は、(例えば標準的な除細動装置を使用した)患者の除細動の間など患者に高エネルギーを加えている間、コンソール20の回路を保護するように構成されたサージ保護装置の働きをする。
【0051】
DFIB保護モジュール22は、3つの信号経路、すなわち生体電位(BIO)信号経路30、位置特定(LOC)信号経路40及び超音波(US)信号経路60に結合されている。一般に、BIO信号経路30は、ノイズをフィルタ除去し、測定された生体電位データを維持し、さらに、他のシステムでは実施されないことだが、アブレーションの間、生体電位信号が読み取られる(例えば成功裏に記録される)ことを可能にする。一般に、LOC信号経路40は高電圧入力を許し、一方で、受信した位置特定データからノイズをフィルタ除去する。一般に、US信号経路60は、心臓房室HCの2D又は3Dデジタルモデルを作成するために、超音波変換器12bを使用して、解剖学的構造の物理構造から距離データを取得する。この距離データはメモリに記憶することができる。
【0052】
BIO信号経路30は、DFIB保護モジュール22に結合されたRFフィルタ31を含む。この実施形態では、RFフィルタ31が、高い入力インピーダンスを有する低域フィルタとして動作する。この実施形態で高入力インピーダンスが好ましいのは、高入力インピーダンスが、源、例えばカテーテル10からの電圧の損失を最小化し、それによって例えばRFアブレーションの間、受信信号をより良好に維持するためである。RFフィルタ31は、カテーテル10上の電極12aからの生体電位信号がRFフィルタ31を通過することを許すように、例えば500Hzよりも低い周波数、例えば0.5Hzから500Hzの範囲の周波数を通過させるように構成されている。しかしながら、RFアブレーションで使用される高電圧信号などの高周波は生体電位信号経路30から除去される。いくつかの実施形態では、RFフィルタ31が、10kHzから50kHzの間のコーナ周波数を含むことができる。
【0053】
BIO増幅器32は、RFフィルタを通過した信号を増幅する低ノイズシングルエンド入力増幅器を構成することができる。BIOフィルタ33(例えば低域フィルタ)は、増幅された信号からノイズを除去する。BIOフィルタ33は、約3kHzのフィルタを構成することができる。システム100が、心臓のペーシング(pacing)に適応する(例えば心臓のペーシング中の重大な信号損失及び/又は劣化を回避する)ように構成されているときなど、いくつかの実施形態では、BIOフィルタ33が約7.5kHzのフィルタを構成する。
【0054】
BIOフィルタ33は、生体電位データからコモンモード電力線信号を除去するために使用される差動増幅器段を含むことができる。この差動増幅器は、生体電位信号からDCオフセット及び/又は低周波数アーチファクトを除去するベースライン復元(baseline restore)機能を実施することができる。いくつかの実施形態では、このベースライン復元機能が、1つ以上のフィルタ段を含むことができるプログラム可能なフィルタを含む。いくつかの実施形態では、このフィルタが、状態依存フィルタを含むことができる。この状態依存フィルタの特性は、パラメータ(例えば電圧)のしきい値及び/又は他のレベルに基づくことができ、フィルタレートはフィルタの状態に基づいて変動す
る。ベースライン復元機能の構成要素は、ベースライン復元電圧のディザリング(dithering)及び/又はパルス幅変調などのノイズ低減技法を含むことができる。ベースライン復元機能はさらに、測定、フィードバック及び/又は特性評価によって1つ以上の段のフィルタ応答を決定することができる。ベースライン復元機能はさらに、信号の生理的信号形態(physiological signal morphology)を表す部分を決定し、及び/又はその部分をフィルタ応答のアーチファクトと区別し、元の形態又は元の形態の一部を計算によって復元することができる。いくつかの実施形態では、この元の形態の復元が、フィルタ応答の減算を直接に含むことができ、並びに/又は例えば静的な、時間依存する及び/若しくは空間依存する重み付け、乗算、フィルタリング、反転及びこれらの組合せによるフィルタ応答の追加の信号処理の後に、フィルタ応答の減算を含むことができる。いくつかの実施形態では、このベースライン復元機能を、BIOフィルタ33若しくはBIOプロセッサ36で、又はその両方で実施することができる。
【0055】
LOC信号経路40は、DFIB保護モジュール22に結合された高電圧緩衝器41を含む。この実施形態では、高電圧緩衝器41が、治療手技で使用されるRFアブレーション電圧などの比較的に高い電圧に適応するように構成されている。例えば、この高電圧緩衝器は、±100Vの電源レール(power-supply rail)を有することができる。いくつかの実施形態では、それぞれの高電圧緩衝器41が、位置特定周波数において、100キロオームから10メガオームのインピーダンスなどの高い入力インピーダンスを有する。いくつかの実施形態では、全体並列電気的等価(total parallel electrical equivalent)として見た全ての高電圧緩衝器41も、位置特定周波数において、100キロオームから10メガオームのインピーダンスなどの高い入力インピーダンスを有する。いくつかの実施形態では、高電圧緩衝器41が、例えば100キロヘルツから10メガヘルツの間の周波数、例えば約2メガヘルツの周波数の高周波数範囲にわたって良好な性能を維持する帯域幅を有する。高電圧緩衝器41が±100V電源を有するときなど、いくつかの実施形態では、高電圧緩衝器41が、受動RFフィルタ入力段を含まない。高電圧緩衝器41には高周波帯域フィルタ42を結合することができ、高周波帯域フィルタ42は、位置特定で使用する約20kHzから80kHzの通過帯域周波数範囲を有することができる。いくつかの実施形態では、フィルタ42が低ノイズであり、ユニティ利得(unity gain)、例えば1又は約1の利得を有する。
【0056】
US信号経路60は、US分離マルチプレクサであるMUX61、Tx/Rxスイッチを有するUSトランスフォーマであるUSトランスフォーマ62、US発生及び検出モジュール63、並びにUS信号プロセッサ66を含む。US分離MUX61は、DFIB保護モジュール22に接続されており、US変換器12bを、例えば所定の順序又はパターンでオン/オフにする目的に使用される。US分離MUX61を、開いているときにUSシステムとUS信号経路の残りの要素とを分離して、(変換器及びUS信号経路60を通る)グラウンドへのインピーダンスをLOC及びBIO経路の入力からデカップリングする一組の高入力インピーダンススイッチとすることができる。US分離MUX61はさらに、1つの送信/受信回路を、カテーテル10上の1つ以上の多数の変換器12bに対して多重化する。USトランスフォーマ62は、US分離MUX61とUS発生及び検出モジュール63との間の両方向で動作する。USトランスフォーマ62は、US変換器12bによる超音波の送受信の間、モジュール63内のUS送受信回路によって生成された電流から患者を分離する。変換器12bの動作モードに基づいて、モジュール63の送信電子回路及び/又は受信電子回路を、例えば送信/受信スイッチを使用することにより選択的に関与させるように、USトランスフォーマ62を構成することができる。すなわち、送信モードでは、US信号生成を起動し、Tx増幅器の出力をUSトランスフォーマ62に接続する(データプロセッサ26内の)USプロセッサ66から、モジュール63が制
御信号を受信する。USトランスフォーマ62は、この信号を、US変換器12bを選択的に起動させるUS分離MUX61に結合する。受信モードでは、US分離MUX61が、1つ以上の変換器12bから反射信号を受信し、この反射信号はUSトランスフォーマ62に渡される。USトランスフォーマ62は、信号を、US発生及び検出モジュール63の受信電子回路に結合し、US発生及び検出モジュール63は、反射データ信号を、ユーザインタフェースシステム27及びディスプレイ27aによる処理及び使用のためにUSプロセッサ66に転送する。いくつかの実施形態では、超音波の送受信が、関連変換器12bの1つ以上を例えば所定の順序又はパターンで起動することを可能にするように、プロセッサ66が、MUX61及びUSトランスフォーマ62に指令する。USプロセッサ66は、例として、単一の第1の反射の検出、多数のターゲットからの多数の反射の検出及び識別、ドップラー法及び/又は後続のパルスによる速度情報の決定、反射信号の振幅、周波数及び/又は位相特性による組織密度情報の決定、並びにこれらのうちの1つ以上の組合せを含むことができる。
【0057】
BIO信号経路30のBIOフィルタ33及びLOC信号経路40の高周波フィルタ42にはアナログ-デジタル変換器(ADC)24が結合されている。ADC24によって、電極12a毎に1つの、時間変動する一組の個々のアナログ生体電位電圧信号が受信される。これらの生体電位信号は、BIO信号経路30を介して、強化された(enhanced)コモンモード除去のために単極電極を基準として示差的に生成され、フィルタリングされ、個々のチャネル毎に利得較正されたものである。ADCによってさらに、それぞれのパッチ電極56のそれぞれの軸に対する、時間変動する一組の個々のアナログ位置特定電圧信号が、LOC信号経路40を介して受信される。これらのアナログ位置特定電圧信号は、電極12aに対して単一の時刻に測定された48個(この実施形態の場合)の位置特定電圧の集合として、ADC24に出力される。ADC24は、ノイズシェーピング及びフィルタリングを可能にするために高い過サンプリングを有し、この過サンプリングは、例えば約625kHzの過サンプリングレートを有する。いくつかの実施形態では、システム100のナイキスト周波数で又はナイキスト周波数よりも高い周波数でサンプリングが実行される。ADC24は、BIO信号とLOC信号を結合すること又はBIO信号とLOC信号を別々に維持することができる多チャネル回路である。多チャネル回路としての一実施形態では、ADC24を、合計80個のチャネルについて、48個の位置特定電極12a及び(例えばアブレーション又は他のプロセス用の)32個の補助電極に適応するように構成することができる。他の実施形態では、80個よりも多くの又は80個よりも少数のチャネルを提供することができる。図1では、例えば、心臓情報コンソール20のほぼ全ての要素を、例えばUIシステム27を除いて、チャネル毎に2重にすることができる。例えば、心臓情報コンソール20は、チャネル毎に別個のADCを含むことができ、又は1つの80チャネルADCを含むことができる。この実施形態では、BIO信号経路30及びLOC信号経路40からの信号情報が、ADC24の様々なチャネルに入力され、ADC24の様々なチャネルから出力される。ADC24のチャネルからの出力は、BIO信号処理モジュール34又はLOC信号処理モジュール44に結合され、BIO信号処理モジュール34及びLOC信号処理モジュール44は、対応するそれぞれの信号を、後に説明する後続の処理のために前処理する。それぞれの場合に、この前処理は、後に論じる対応するそれぞれの専用プロセッサによる処理に備えてこの受信信号を準備する。いくつかの実施形態では、BIO信号処理モジュール34及びLOC信号処理モジュール44の全体又は一部を、ファームウェアで実施することができる。
【0058】
生体電位信号処理モジュール34は、利得及びオフセット調整、並びに/又は非分散(non-dispersive)低域フィルタ及び中間周波数帯を有するデジタルRFフィルタリングを提供することができる。中間周波数帯は、アブレーション及び位置特定信号を排除することができる。生体電位信号処理モジュール34はさらにデジタル生体電位フィルタリングを含むことができ、このデジタル生体電位フィルタリングは出力サンプル
レートを最適化することができる。
【0059】
さらに、生体電位信号処理モジュール34は、「ペースブランキング」も含むことができる。ペースブランキングは、例えば医師が心臓を「ペースしている」ときの時間枠の間の受信情報のブランキングである。例として心臓内、食道内又は経皮ペーシングリードの挿入又は貼付によって、一時的な心臓ペーシングを実施することができる。一時的心臓ペーシングの目的は、心臓調律及び/若しくは血行をインタラクティブに検査すること、並びに/又は心臓調律及び/又は血行を改善させることである。上記のことを達成するため、能動的及び受動的なペーシングトリガ及び入力アルゴリズム的トリガ判定を、例えばシステム100によって実行することができる。アルゴリズム的トリガ判定は、チャネルのサブセット、エッジ検出及び/又はパルス幅検出を使用して、患者のペーシングが起こったかどうかを判定することができる。任意選択で、検出されなかったチャネルを含む全てのチャネル又はチャネルのサブセットにペースブランキングを適用することができる。
【0060】
ペースブランキング
図17A~17Cは、1つ以上のチャネルに対するペースブランキング法の実施形態の非限定的な例を示す。いくつかの理由から、この1つ以上のチャネルをグループ分けすることができる。この理由には、限定はされないが、表面ECGなどの機能の類似性、システムアーキテクチャに従って物理システムボードを共用しているチャネルなどの位置の類似性、又は便宜上の理由が含まれる。これらの図では、破線ボックス内のブロック(図17A。「×Nチャネル」と標識されている)が個々のチャネルに対して動作し、残りのブロック(図17A~C)は、チャネルのグループに対して動作する。
【0061】
入来データは、チャネル固有の利得及びオフセットに対して最適に補正される。例えば計算の複雑さを低下させるため及び/又は出力データレート要件を満たすために、入力データを、入力のところでフィルタリング又はデシメーションにかけることもできる。このデータストリームは次いで、2つの経路、すなわち遅延経路とホールド経路に分割され、出力データスイッチのところで集合する。
【0062】
遅延経路は、データ幅及びペーシングパルスに対する検出のために処理されるデータの窓のための処理時間と同等の期間又は等しい期間だけ、例えば0.1~100ミリ秒、例えば0.5~10ミリ秒、例えば4ミリ秒だけ遅延する。
【0063】
ホールド経路はフィルタ及びデータラッチを含む。ホールドフィルタは、1~40Hzの通過帯域範囲を有する帯域フィルタなどのように、信号の低周波数ベースライン及びより高い周波数成分又は電力線周波数の変動を排除する周波数応答を有するように構成されている。ホールドフィルタはさらに、出力データスイッチの出力信号の不連続な遷移を平滑化するために、あるデータ期間、例えば1マイクロ秒から1秒の間、例えば10~500マイクロ秒、例えば100マイクロ秒の期間にわたる平均算出を含むことができる。ホールド経路のデータラッチは、指定された期間の間、又は制御入力によって放出が指令されるまで、その入力の値を保持するように構成されている。
【0064】
出力データスイッチは、ブランキング制御論理によって決定された構成に基づいて、遅延経路からの結果として生じる信号とホールド経路の結果として生じる信号との間でその出力を切り換えるように構成されている。出力データスイッチがホールド経路信号を出力したとき、その信号はブランキングされたとみなされる。出力データスイッチが遅延経路信号を出力したとき、その信号はブランキングされていないとみなされる。
【0065】
ブランキング制御論理は、ペース検出経路の最終段であり、この段は、入力データを使用して、入力データの現在の窓内にペーシングパルスが存在するのか又はしないのかを判
定する。入力データを含むグループのチャネル毎に、ペーシングパルスを検出するために使用するサブセットから、チャネルを個別に含め又は排除する。それぞれのチャネルに対するイネーブル信号が外部入力から受信され、このイネーブル信号を使用して、サブセットからそれぞれのチャネルを含め又は排除する。この外部入力は、システム100が自動的に決定し、又はユーザが手動で構成することができる。サブセットに含まれるチャネル毎に、処理アルゴリズムを使用して信号を処理する。この処理アルゴリズムは、限定はされないが、フィルタ、微分、積分、ダウンサンプリング、アップサンプリング、絶対値、平均計算、中央値などの統計計算などのうちの1つ以上を含むことができる。
【0066】
サブセットのそれぞれのチャネルは一緒に加算ノードに送られ、加算ノードは、サブセットの全てのチャネルからの情報を組み合わせて代表的出力とするアルゴリズムを操作する。加算ノードによって使用されるアルゴリズムは、限定はされないが、和、平均、差、インタリーブなどのうちの1つ以上を含むことができる。
【0067】
加算ノードの代表的出力はペーシングパルス検出アルゴリズムに渡される。このペーシングパルス検出アルゴリズムは、限定はされないが、勾配検出器(slope detector)、期間測定、振幅検出器、しきい値、微分、絶対値、平均、フィルタなどのうちの1つ以上を含むことができる。ペーシングパルスを検出するためのこの判定基準のシーケンスは、それぞれの判定基準のステータスに基づいて論理ツリー又は判断ツリーの中に配置することができる。ペースブランキングを許すように1つ以上の判定基準をイネーブルし、ペースブランキングを許さないように1つ以上の判定基準をイネーブルし、又はこれらの組合せを実施することができる。ペーシングパルス検出アルゴリズムの結果は、出力データスイッチの出力を制御するブランキング制御論理に渡される。
【0068】
ブランキング制御論理は、ペーシングパルス検出のステータスをチャネルのグループ間でやりとりするための通信機能を含む。出力ステータスは、現在のチャネルグループについて検出されたペーシングパルスが存在するのか又はしないのかを、他の全てのグループに報告する。入力ステータスは、1つ以上の他のチャネルグループのステータスを受信する。ペーシングパルス検出の結果を含む受信したステータスをブランキング制御論理に組み込むように、ペーシングパルス検出の結果を無効にするように、及び/又は受信ステータスを無視するように、ブランキング制御論理を構成することができる。
【0069】
さらに、生体電位信号処理モジュール34は、超音波信号及び/又は他の不要な信号、例えばアーチファクトを生体電位データから除去する専用フィルタも含むことができる。いくつかの実施形態では、これを実行するため、フィルタリング、エッジ検出、しきい値検出及び/又はタイミング相関を使用することができる。
【0070】
位置特定信号処理モジュール44は、後に論じるように、個別チャネル/周波数利得較正、調整された復調位相を有するIQ復調、(多重化のない)同期及び連続復調、狭帯域Rフィルタリング、並びに/又は時間フィルタリング(例えばインタリービング、ブランキングなど)を提供することができる。位置特定信号処理モジュールはさらに、出力サンプルレート及び/又は周波数応答を最適化するデジタル位置特定フィルタリングを含むことができる。
【0071】
この実施形態では、BIO信号経路30、LOC信号経路40及びUS信号経路60に対するアルゴリズム的計算が心臓情報コンソール20内で実行される。これらのアルゴリズム的計算は、限定はされないが、多数のチャネルを一度に処理すること、チャネル間の伝搬遅延を測定すること、位置の集合に対する補正を計算及び適用することを含む、x、y、zデータを電極位置の空間分布に変換すること、個々の超音波距離を電極位置と組み合わせて、検出された心臓内表面点を計算すること、並びに表面点から表面メッシュを構
築することを含む。心臓情報コンソール20によって処理されるチャネルの数は、1から500チャネルの間、例えば24から256チャネルの間、例えば48、80又は96チャネルとすることができる。
【0072】
複数のタイプの処理回路(例えばマイクロプロセッサ)及びメモリ回路のうちの1つ以上のタイプの回路を含むことができるデータプロセッサ26は、BIO信号処理モジュール34、位置特定信号処理モジュール44及びUS TX/RX MUX61からの前処理された信号の処理を実行するのに必要なコンピュータ命令を実行する。心臓情報処理システム100の機能を実行するのに必要な計算並びにデータの記憶及び読出しを実行するように、データプロセッサ26を構成することができる。
【0073】
この実施形態では、データプロセッサ26が、生体電位(BIO)プロセッサ36、位置特定(LOC)プロセッサ46及び超音波(US)プロセッサ66を含む。生体電位プロセッサ36は、例えば電極12aからの記録、測定又は感知された生体電位の処理を実行することができる。LOCプロセッサ46は、位置特定信号の処理を実行することができる。USプロセッサ66は、例えば変換器12bからの反射されたUS信号の画像処理を実行することができる。
【0074】
様々な計算を実行するように生体電位プロセッサ36を構成することができる。例えば、BIOプロセッサ36は、強化されたコモンモード除去フィルタを含むことができ、このフィルタは、歪みを最小化するために双方向とすることができ、このフィルタにコモンモード信号を供給することができる。BIOプロセッサ36はさらに、最適化された超音波阻止フィルタを含むことができ、BIOプロセッサ36を、選択可能な帯域幅フィルタリング用に構成することができる。BIO信号プロセッサ34及び/又はBIOプロセッサ36によって、信号経路30上のデータに対する処理ステップを実行することができる。
【0075】
様々な計算を実行するように位置特定プロセッサ46を構成することができる。後により詳細に論じるが、LOCプロセッサ46は、軸に対する補正を、電極アレイ12の既知の形状に基づいて電子的に実施(計算)し、1本又は数本の軸のスケーリング又はスキュー(skew)に対する補正を、電極アレイ12の既知の形状に基づいて実施し、測定された電極位置を可能な既知の構成と整列させる「フィッティング(fitting)」を実行することができる。1つ以上の制約(例えば物理的制約、例えば単一のスプライン上の2つの電極12a間の距離、2つの異なるスプライン上の2つの電極12a間の距離、2つの電極12a間の最大距離、2つの電極12a間の最小距離、並びに/又はスプラインの最小及び/若しくは最大曲率など)によって、このフィッティングを最適化することができる。
【0076】
US変換器12bを介したUS信号の生成及びUS変換器12bによって受信されたUS信号反射の処理に関連した様々な計算を実行するようにUSプロセッサ66を構成することができる。US信号経路60と対話して、US信号を選択的にUS変換器12bに送信し、US変換器12bから受信するように、USプロセッサ66を構成することができる。USプロセッサ66の制御の下で、それぞれのUS変換器12bを送信モード又は受信モードに置くことができる。電極アレイ12がその中に配された心臓房室(HC)の2D及び/又は3D画像を、US経路60を介してUS変換器12bから受信された反射US信号を使用して構築するように、USプロセッサ66を構成することができる。
【0077】
心臓情報コンソール20はさらに、位置特定信号発生器28及び位置特定駆動電流監視回路29を含む位置特定駆動回路を含むことができる。この位置特定駆動回路は、高周波位置特定駆動信号(例えば10kHz~1MHz、例えば10kHz~100kHz)を
提供する。これらの高周波数の駆動信号を使用した位置特定は、位置特定データに対する、例えば血球変形による細胞応答の影響を低減させ、及び/又はより大きな駆動電流が、例えばより良好な信号対雑音比を達成することを可能にする。信号発生器28は、超低位相ノイズのタイミングで、駆動信号、例えば正弦波の高分解能デジタル合成を生み出す。駆動電流監視回路は、患者Pのインピーダンスを測定するために監視される高電圧広帯域電流源を提供する。
【0078】
心臓情報コンソールはさらに、記録、測定、感知及び/又は計算された様々なタイプの情報及びデータ、並びに心臓情報コンソール20から使用可能な機能を実施するプログラムコードを記憶する少なくとも1つのデータ記憶装置25を含むことができる。
【0079】
心臓情報コンソール20はさらに、位置特定、生体電位及びUS処理の結果を出力するように構成されたユーザインタフェース(UI)システム27を含むことができる。UIシステム27は、このような結果を、2D、3D又は2Dと3Dの組合せで図形によってレンダリングする少なくとも1つのディスプレイ27aを含むことができる。いくつかの実施形態では、ディスプレイ27aが、ビュー方向、ズームレベル、パン位置及び物体特性、例えば色、透明度、明るさ、輝度などの独立して構成可能なビュー/カメラ特性を有する、3D結果の2つの同時ビューを含むことができる。UIシステム27は、タッチスクリーン、キーボード及び/又はマウスなどの1つ以上のユーザ入力構成要素を含むことができる。
【0080】
自動配向
上で説明したとおり、システム100は、(左心房又は心臓の他の房室などの心臓内体積内に配置された)電極12a上で測定された電圧、これらの電極12aの測定された位置、及び心臓表面の電子モデルの組合せを使用して、マップを作成することができる。システム100は、電極12aの位置を決定するために使用される位置特定システムを含むことができる。さらに、超音波変換器12bからの信号を位置特定情報と組み合わせて使用して、心臓表面を推定する(例えば心臓表面の電子モデルを作成する)ことができる。システム100は、3本の位置特定軸、すなわち図1に示されたX軸(X1-X2)、Y軸(Y1-Y2)及びZ軸(Z1-Z2)を生成するように名目上互いに直角に配置されたパッチ電極56の多数のセット(例えば3つのセット)を含むことができる。パッチ電極56のセットはそれぞれ、体を横切って配置された一対の皮膚電極を含む。点線で輪郭が示されたパッチ電極56は患者の背部に配置されている。パッチ電極56間の分布インピーダンスを通ってパッチ電極56の対間を流れて、空間内(例えばパッチ電極56間の患者の組織内)に可変の電圧分布を生み出す電流(例えばAC電流)を供給するように、システム100を構成することができる。この電圧は、システム100によって適用された波形(例えば振幅変調波形、位相変調波形、周波数掃引波形及び/又はチャープ(chirp))の形態に基づいて時間とともに変動し得る。結果として生じる時間変動する信号は、問合せ復調信号とパッチ電極56に適用された源との間の固定された位相関係で同期して復調される(同相及び直角位相)。この復調は、パッチによって生成された3セットの信号測定値(例えば測定された電圧)と3本の軸に沿ったそれらの位置との間の1対1の対応に帰着する。この構成は、空間内の電極12aの位置を特定することを可能にする。
【0081】
この位置特定座標系は、標準的な(通常の)生理的向きとは異なる向きをとることができる。言い換えると、位置特定座標系の向きは前-後、頭-尾、及び左-右とは異なる。いくつかの実施形態では、システム100が、1本以上の位置特定軸を所望の方向に基づいて配向する位置特定座標系の自動化された配向(以後、自動配向)を実行するように構成されている。この自動配向は、電極から測定された位置特定電圧を、パッチ電極56(例えば体表のECG電極及び/又はシステム100の他の電極)に対する既知の向き及び
患者の体表のパッチ電極56の実際の(ユーザが配置した)向きに関する情報と比較することによって達成される。その代わりに又はそれに加えて、標準的な生理的向きと一致するように位置特定座標系を回転させる自動配向を実行するように、システム100を構成することもできる。標準的な生理的向きと一致するように位置特定座標系を(例えば伝達関数(transfer function)を介して)決定論的に配向することができることは、測定される電圧が、体表又は体内の基準パッチ又は電極の場所(位置)の関数として変動し得る差動駆動位置特定システムが使用されるときに特に有用である。
【0082】
1本以上の位置特定軸を以下のステップに従って所望の方向に配向するように、システム100を構成することができる。
【0083】
第1のステップでは、位置特定軸に対して既知の向きに配置された2つ以上の電極間の電圧の変化の方向を使用して、パッチ電極56のそれぞれの対によって定義される位置特定軸の所望の方向を確立することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、心臓に対する体表の固定された様々な位置にECGリードを配置する。この配置は、心臓房室に対して既知の向きの電極の集合を与え、この配置を使用して、位置特定軸の方向を確立することができる。いくつかの実施形態では、位置特定X軸が体の左-右方向に延び、心臓房室の左に2つのECGリード(例えばV5及びV6)を置く。次いで、これらのECGリードからの電圧を、心臓体積内から又は心臓体積の近くからの電極(例えば電極12a)の電圧と比較して、X軸の方向を確立する。
【0085】
Y軸を形成する患者の下背部の1つのパッチ電極56の近くに(例えば図1に示されたY1の近くに)基準電極58を置くことができる。基準電極58のこの配置は、Y軸の原点を下背部に置く。基準電極58における電圧をゼロボルトに設定することができ(例えば基準電極58が接地され)、心臓の近くに配置された電極(例えば電極12a及び/又は他の電極)から測定された電圧との比較から、この位置特定軸の向きを確立することができる。
【0086】
第2のステップで、システム100は、右手の法則を満たす座標系を利用することができる。この利用は、位置特定座標系の軸の向きを確立するための追加の制約を提供する。パッチ電極56間を流れる電流が、パッチ電極56の向きの方向を示し、この方向が、位置特定軸の方向を確立する。この電流の方向は、電圧の変化(例えば傾き(gradient))の方向を使用して確立することもできる。名目上直角の方向に電流を注入する3軸系では、電圧分布の主成分が、パッチの方向向きを示し又は近似する。いくつかの実施形態では、この右手条件を、心臓房室内の3軸からの電流の推定される方向とともに使用して、Z軸の方向を固定する。
【0087】
位置特定軸(例えばパッチ電極56の対によって定義される軸)の所望の向きを確立した後、システム100は、パッチ電極56の名目上の位置の知識に基づいて、生理的向きへの位置特定座標系の回転を実行することができる。いくつかの実施形態では、Y-Z平面を約45°だけ回転させて、生理的向き(例えば自然の生理的座標系)と整列させる。
【0088】
スピードが増した双極子密度アルゴリズム
心臓情報の表面分布(例えば表面電荷密度及び/又は双極子密度)を得るため、システム100は、電極12aから測定された情報を心房の心臓内表面にマップすることができる。このマッピングは、逆問題(inverse problem)として実行することができ、測定点の数(アレイ12上の48個の電極12aからの約48個の点)は、解(例えば心房表面の3000超の点を含む解)がそれに基づくことが望ましい点の数よりもはるかに少ない。逆問題は、不良設定問題(ill-posed problem)であ
り、解を求める特別な手法を必要とする。いくつかの実施形態では、システム100が、以下の目的関数(objective function)によるチコノフ正則化(Tikhonov regularization)[1]を使用してこの逆問題を解く。
【数1】
【0089】
上式で、
【数2】
はデータフィッティング項(data fitting term)、
【数3】
は正則化項、λは正則化パラメータ、sは表面の源、φは、測定された電位、Aは、m≪nであるm×n行列である。
【0090】
特異値分解(Singular Value Decomposition:SVD)に関して、行列Aの特異値分解は、
A=UΣV (2)
であり、上式で、U∈Rm×m、V∈Rn×nは特異ベクトル行列、Σ∈Rm×nは、下降特異値としての対角元を有する対角行列である。線形系の最小2乗法による解法のための擬似逆行列(pseudo-inverse)の計算にSVDを使用することができる。
【0091】
最小ノルム推定(MinimumNormEstimate:MNE)に関して、式1によって定義された逆問題の正則化された解が
【数4】
となるように行列AのSVDを使用するよう、システム100を構成することができる。上式で、V=V(:,1:m)、Σ=Σ(:,1:m)は、V及びΣからの最初のm個の列を含む。
【0092】
初期の設計では、システム100が、通常、約3000ミリ秒(3秒)を要する式3のMNEを実施した。
【0093】
本明細書において後に説明するように、心臓の電気活動の連続マッピングは、逆問題の解を見つける方法の以下のEP固有の改良によって達成可能である。
【0094】
いくつかの実施形態では、システム100が、(上記の完全なSVD計算の代わりに)打切りSVD計算及び/又はCPUに合わせて最適化された記憶割当てアルゴリズムを使用することなどによって、より効率的に動作する(例えば逆問題の解をほぼリアルタイムで又はリアルタイムで、本明細書では「リアルタイム」で計算する)ように構成される。
【0095】
システム100は、チャート1に示された関数CalculateTikhonovInverseDoubleを含むC++コードを含んだ逆解法アルゴリズムを含むことができる。SVD計算は、Intel Math Kernel C++ Library(MKL)を用いて実行される。このライブラリは、特にIntelベースのCPUに関して非常に効率的な高速ライブラリである。システム100が生体電位を測定する時間枠毎に、MKLを使用して行列Am×nの全ての特異値を計算する。このアルゴリズムでは後に、式3の解を見つけるために特異値の数を打ち切ることができる。式3の解を計算するこのアルゴリズムのC++関数のインタフェースを以下に示す。
D11Export CEDeviceError FastCall
CalculateTikhonovInverseDouble

double targetMatrix,
int numberOfRows,
int numberOfColumns,
int numberOfSingularValue,
double lambda,
ACMMatrix2D<double> & tikhonovInverse,
bool enablePrePostScaling
【0096】
初期の設計では、システム100が、SVD計算を実行する方法を、図1-1(a)に示されているように実施した。ステップ152で、行列
【数5】
に対して完全なSVDを実行する。
【0097】
ステップ154で、下式に従って、実行した計算の結果を結合し、さらに打ち切る。
【数6】
【0098】
ステップ156で、
【数7】
として表される転置(transpose)を計算する。
【0099】
ステップ158で、再び、ステップ156の結果に対する別の完全なSVD計算を下式に従って実行する。
【数8】
【0100】
次いで、ステップ160で、
【数9】
として表される転置を見つける。
【0101】
ステップ160の結果から、打切りチコノフを計算する。
【0102】
図1-1の左側に示された実施態様、すなわち図1-1(a)として示された実施態様は計算的に不経済であり、性能改善の余地がある。式3は、m個の特異値だけを必要とするため、Aの全ての特異値を計算する必要はなく、図1-1(b)に示されているように、単一のステップ164で、(MKLを使用することによって)Aの打切りSVDを直接に見つけることができる。したがって、図1-1(b)の方法は、図1-1(a)の方法よりもかなり効率的であり、例えば図1-1(a)の方法よりも計算的に集中的でない。
【0103】
図1-1(b)の実施態様は、以前の実施態様におけるいくつかの数学的計算を不要にし、このことはプロセッサ性能をよりいっそう強化する。この改良は、転置及び追加のSVD計算(図1-1(a)の流れ図のステップ158)の安全な排除を含む。言い換えると、この新規の実施態様を用いると、転置及びSVD計算を2度実行する必要がなくなる。要するに、図1-1(a)に示された流れ図を、特異値を直接に計算する図1-1(b)に示された単一のステップに縮小することができる。
【0104】
下記のコードセグメント(code segment)は、上で論じた図1-1(b)のステップ164を実行する手法を表す。
info=LAPACKE_dgesvd(
LAPACK_ROW_MAJOR,
‘S’,‘S’,
n,n,
inputMatrix->GetMatrix( ),
lda,S,U,ldu,V,ldvt,superb);
この上記の改良されたSVD実施態様では、式3に必要な特異値だけを直接に計算する。
【0105】
上で説明したとおり、初期の設計は、逆解計算時間が約3000ミリ秒になる式3のMNEを実施した。いくつかの実施形態では、システム100が、チャート4に示されているものなどの改良された記憶割当てを有するアルゴリズムを含む。実験によれば、以前のアルゴリズムでは記憶割当てが関数時間全体の70%を占めるが、SVDは約30%を占めることが分かった。SVD計算のための行列のサイズのため、効率的かつ(GPUを使用せず)逐次的に計算を実行すること、及びACMMatrix2Dクラスを使用することにより高コストの記憶割当てを排除することが可能である。連続マッピング(例えばリアルタイムで示される双極子密度及び/又は表面電荷情報の変化)に関して、システム100は、チャート5に示されているようなMKL記憶割当て(すなわちIntel CPUに対して最適化されたmkl_malloc)を使用することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、システム100が、上で説明した改良を含み、同じ正確さで約40倍高速な性能を達成する(例えば逆解法の計算時間は約70ミリ秒など100ミリ秒未満である)。
【0107】
ACMMatrix2D C++クラスを使用したSVD計算A=UΣVのための改良された記憶割当てを提供するコードの例を下に示す。
if(U!=NULL) delete U;
U=new ACMMatrix2D<double>( );
U->SetSize(OnMainMemory,m, m, true);

if(V!=NULL) delete V;
V=new ACMMatrix2D<double>( );
V->SetSize(OnMainMemory,n, n, true);

if(S!=NULL) delete S;
S=new ACMMatrix2D<double>( );
S->SetSize(OnMainMemory, 1, minDim, true);
【0108】
下記のコードは、SVD計算のための効率的な記憶割当てのための改良された方法を提供する。
void mkl_malloc(size_t alloc_size,int alignment);
【0109】
例として、以下の参照文献は、このような問題を数学的に解く上記の手法に関係した情報を提供し得る。
1.A.N.チコノフ(Tikhonov)及びV.Y.アルセニン(Arsenin)、「Solutions of Ill-Posed Problems」、Math.Comput.、vol.32、pp.1320-1322、1978
2.Intel、「Intel(登録商標) Math Kernel Library Reference Manual」、2007
【0110】
多数のバスケット位置を用いたマッピング
いくつかの実施形態は、単一の電極アレイ12(本明細書では「バスケット」とも呼ぶ)位置を使用して、逆マッピングにおける伝達行列(transfer matrix)を計算する。このことは、マッピングセグメントの長さ及びマッピングの正確さを制限し得る。他の実施形態では、全てのバスケット位置を使用して、逆マッピングにおける伝達行列を計算することができる。伝達行列に対する全てのバスケット位置の使用は、正確さの最小限の向上しか実現することができない位置のサブセットのマッピング作業の流れを減速させることになるかなり大きな計算コストを導入し得る。別の実施形態では、正確さの大幅な向上を実現することができる位置のサブセットを、例えばバスケットの位置の相対的変化に基づいてアルゴリズム的に決定することができる。
【0111】
多数のバスケット位置について、バスケットの以前の基準位置に対して現在のバスケット位置を監視し、所望のしきい値を超えてバスケットが位置を変化させた場合には、図9に示されているように、計算におけるバスケットの位置を、バスケットの現在の位置に基づいて更新する。一実施形態では、バスケットの基準位置を、直前の時間サンプルにおける位置とすることができる。別の実施形態では、基準位置を、位置変化がしきい値を超えたときに動的に更新された以前のある間隔における位置とすることができる。別の実施形態では、基準位置を、決められたある時点における位置とし、計算全体にわたって基準位置を静的に保持することができる。このアルゴリズムはマッピングの正確さを提供し、同時に処理パワーを節約する。処理パワーの節約はより速い計算に相関する。1~5秒の記録の間に、(一般に記録の間、臨床医が動かないように保持しようとしている)バスケットの位置に関連した3~4mm(又はそれ以上)の不確かさが存在し得る。一実施形態では、入力マッピングセグメントに対して、このアルゴリズムが、1つの位置、例えば最初の位置を基準位置として使用し、次いでその位置の変化を検査する(例えば基準位置を調
整すべきかどうかを判定する)。例えば、位置が1mm変化したことが検出された場合、このことを、計算に対する位置の更新のきっかけとすることができる。マッピングセグメントの終りまでこのプロセスを繰り返す。心臓内電位図(EGM)及び時刻をバスケット位置と整列させて、逆解法において正確なマッピングが計算されるようにする。別の実施形態では、最初の位置を、初期基準位置として使用することができる。計算における位置更新のきっかけとなる位置の変化が検出されたときに、基準位置を更新する。別の実施形態では、基準位置を連続的に更新することができる。例えば、新たな位置を取得し、その位置を基準位置と比較したときに、次の測定のために、基準位置を、その新たに取得された位置に更新することができる。
【0112】
無機能電極の検出
システム100は、電圧のセットを記録する目的で電極12a(例えばバスケット又は他のアレイ構成内の少なくとも24個の電極及び/又は約48個の電極)の位置において測定した電圧を利用して、心臓内表面の表面電荷密度及び/又は双極子密度を計算する。信頼できない電圧測定値は、位置特定及び/又は生体電位記録を含む任意の計算に有害な影響を与え、その結果、不十分に位置特定された及び/又は異常な心臓情報推定値を与え得る。この理由から、システム100は、その電極からの電圧測定値が異常であると疑われる電極12a(「無機能」電極)を識別する自動化された手順を含むことができる。
【0113】
システム100は、無機能電極12aを識別する以下で説明するアルゴリズム、アルゴリズムNFEを含むことができる。NFEアルゴリズムは、測定時における真の電極環境を正確に反映していない可能性がある測定位置特定電位を識別する3つの別個の戦略を使用する。この手順は、解剖学的構造記録のそれぞれのフレーム(例えば約25から100ミリ秒の間の時間増分を表すフレームなどのビデオフレーム又は他の解剖学的画像)が、そのフレームに関連したデータ収集中に無機能と判定された電極12aのリストに関連づけられるように、解剖学的再構成(anatomic reconstruction)中に実行することができる。信頼できない記録を決定的に重要な計算から排除することができるように、位置特定又は生体電位記録を含む後続の計算は、それぞれのフレームに関連づけられた、無機能電極12aの記憶されたリストにアクセスすることができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、システム100が、無機能電極を識別するNFEアルゴリズムを含み、このアルゴリズムは、(少なくとも)デジタル心臓モデルの作成及び/又は再作成(本明細書では「作成」)のために実施されるデータ記録中に動作する。連続データと、超音波データと交互配置されたデータの両方を処理するように、NFEアルゴリズムを構成することができる。測定された電圧を空間座標に関連づける前にそれらの電圧を評価するように、NFEアルゴリズムを構成することができる。信頼できない電圧が測定される電極12aのリストを含む、それぞれのフレームとは別個の無機能電極12aのリストを作成するように、NFEアルゴリズムを構成することができる。
【0115】
次に図3を参照すると、無機能電極12aを検出するNFEアルゴリズムのステップのシーケンスを含む方法300の詳細が示されている。
【0116】
第1のステップ302で、例えば少なくとも1つの心臓房室のI/Qデータを含む解剖学的構造ファイルをロードする。第2のステップ304で、システム100は、そのI/Qデータから、I/Qの大きさ及び位相を計算する。第3のステップ306で、I/Qの大きさデータを電位データに変換する。ステップ308で、異常な位相を有する解剖学的構造からのノードを識別する。ステップ310で、それぞれの軸を、電位データを考慮して最高電圧範囲によってスケーリングする。ステップ312で、平均に対して異常な半径を有するノードを識別する。ステップ314で、電圧データの共分散を計算する。ステップ316で、共分散固有ベクトルの基底にデータを回転させる。ステップ318で、回転
させたデータに対する最良適合3軸楕円体(best fit tri-axial ellipsoid)を計算する。ステップ320で、楕円体表面に対する異常点を識別する。これからNFEを識別することができる。
【0117】
より詳細に説明すると、NFEアルゴリズムは、それぞれサイズN×チャネル数(numCH)×3の整数の配列(array)であるIdata及びQdataなどの様々な入力を含み、第1の次元はサンプルの数を含み、第2の次元はチャネルの数を含み、第3の次元は、3つの位置特定軸周波数を含む。I/Qデータ(電極12aにおいて測定された複素電圧)は、記録されたファイル又はリアルタイムストリーミングデータを起源とすることができる。別の入力は、システム100のハードウェアのADCカウント対電圧変換利得を定義するフロート(float)を含むgain_rawdataToVoltsとすることができる。gain_rawdataToVoltの典型値は0.52074e-6とすることができる。別の入力は、整数配列であるrefnodes_auxとすることができる。この配列の内容は、運動補正に使用することができる補助カテーテルの電極の指標(index)を指定する。
【0118】
無機能電極NFEアルゴリズムは、1つ以上の出力を含むことができる。NFEアルゴリズムの出力は、信頼できない電圧が測定される無機能電極12aのリストを含む、それぞれのフレームに固有の配列とすることができる。いくつかの実施形態では、識別された無機能電極のリストをユーザに知らせる。いくつかの実施形態では、ユーザが、除去する電極12aを手動で選択することができる。その際、選択する電極は、識別された無機能電極のリストの部分であっても、又はそうでなくてもよい。いくつかの実施形態では、識別された無機能電極の除去をユーザが受け入れることをシステム100が許可する-オプトイン(opt-in)条件。いくつかの実施形態では、識別された無機能電極のサブセットの除去をユーザが受け入れることをシステム100が許可する-部分オプトイン条件。このサブセットはユーザ入力によって決定される。いくつかの実施形態では、識別された無機能電極12aのうち除去するサブセットを、システム100が推薦する。このサブセットは、無機能と識別された電極12aを識別するアルゴリズムによって、連続する持続及び/又はある時間の間の機能のデューティサイクルなどの一組の時間的条件を用いて決定される。いくつかの実施形態では、無機能電極12aのリストが、システム100によって、表示から若しくは後続の計算から、又はこの両方の組合せから自動的に除外される。いくつかの実施形態では、無機能電極12aのリストが、システム100によって、装置の位置、向き及び/又は形状フィッティングの計算から自動的に除外される。
【0119】
いくつかの実施形態では、それぞれのフレーム内の信頼できない電極電圧測定値の識別が、後に個別に説明する1つ、2つ又は3つの別個の手順によって実施される。
【0120】
I/Q位相の異常に基づく異常値の識別
それぞれの電極12aを、3本のそれぞれの位置特定軸の位置特定電位に関係した大きさ及び位相(すなわち位置特定電圧測定値の実数及び虚数成分が張る複素平面における角度)に関連づけることができる。手技(例えば臨床的手技又は臨床的手技の一部分)の始めに、全ての機能電極12aが設定された値(例えば0及び/又はπから離れた値)に近い位相を示すように、位置特定位相を設定(例えば調整)することができる。それぞれの電極12aの位相値から、平均及び標準偏差を計算することができる。しきい値よりも大きな位相、例えば定数に標準偏差を乗じた積よりも大きく平均から外れた位相を示す電極12aを無機能電極と識別し、現在のフレームに関連した無機能電極リストにロードする。
【0121】
平均に対する電位に基づく異常値の識別
いくつかの実施形態では、選択された値と整合した位相を示す電極12aのサブセット
の電圧をゼロ平均に調整し、それぞれの位置特定軸に沿った最大範囲を計算する。それぞれの位置特定軸上の電極12aの電位をその軸上の最大範囲に対してスケーリングし、(ゼロになる平均(vanishing mean)に対する)スケーリングされた点の半径を計算する。しきい値よりも大きな半径、例えば指定された定数に平均半径を乗じた積よりも大きな半径を示す点を異常な点と識別し、現在のフレームに関連した無機能電極リストにロードする。
【0122】
最良適合楕円体表面から外れた点の識別
残った電極12aの電圧を再びゼロ平均に調整する。データ配列の共分散を式
ij=Pikkj
によって計算する。上式で、繰り返された添字は、直上で説明したどちらかのステップ又は両方のステップで識別された無機能電極12aの排除後に残った電極12aの数についての総和を意味する。
【0123】
共分散行列の固有ベクトルを、特異値分解
C=USV
によって計算する。上式で、正方配列Uの列が所望の固有ベクトルである。
【0124】
電圧データを固有ベクトル
=Ukl
の基底に変換する。上式で、Pは、特定の電極12aに関連した3-D電位である。
【0125】
直交基底に対した表されたスケーリング後の電圧を用いて、データを、下記の基底ベクトルと整列した半長軸(semi-major axis)を有する一般化された3軸楕円体に当てはめる。
【数10】
上式で、a、b及びcはそれぞれ、3つの座標方向に沿った半長軸である。このフィットは、explicit LLS法によって、又は特異値分解(SVD)を使用した擬似逆行列の計算によって実行することができる。
【0126】
定義された半長軸を用いて、特定の電極kに関連した3つの電位のそれぞれのセットに誤差
【数11】
を割り当てることができる。
【0127】
この平均誤差を計算し、しきい値よりも大きな誤差、例えば指定された定数に平均誤差を乗じた積よりも大きな誤差を示す点を無機能電極と識別し、現在のフレームに関連した無機能電極リストにロードする。
【0128】
上記の3つのステップのうちの1つ以上(例えば全て)のステップによって識別された
無機能電極12aの連結(concatenation)は、(例えば位置特定のための)場推定又は心臓情報(例えば双極子密度及び/又は表面電荷密度)計算に含めるには信頼性を欠くとみなされる電圧を示す、現在のフレームに関連した無機能電極12aのリストを含む。
【0129】
再帰的識別
無機能電極又は(位置特定電位に関する)「不良」電極の識別、及び局所場推定/スケール行列の計算の後、(無機能電極と識別された電極を含む)全ての電極12aの位置特定、及び標準的なバスケット定義(例えば電極12aのアレイの幾何学的構造)との整列が、対応する「標準」位置からの電極離隔距離の後続の評価を可能にする。実際、無機能電極と識別された電極12aがそれにも関わらず、対応する「標準」位置の近くにあることがあり得る。例えば場推定値の計算及び/又は補助電極の位置特定に最大数の電極を提供するために、このような「良」電極12aを、無機能電極12aのリストから除去することができる。
【0130】
図10は、心臓活動を計算する際に使用するために、無機能電極又は「不良」電極を再分類するステップの一例を示す流れ図である。ステップ1は、カテーテル10などの多電極カテーテルを使用して位置特定及び生体電位データを記録することを含む。ステップ2は、無機能電極又は「不良」電極に対するデータを、良/不良を判定する上で論じた判定基準(第1の基準)を使用してフィルタリングする。いくつかの実施形態では、第1の判定基準が、電極を不良と識別する方へバイアスされている。次いで、ステップ3が、「不良」電極を再び「良」電極と再分類することができるかどうかを判定する第2の判定基準を使用して、識別された無機能電極又は「不良」電極をフィルタリングする。いくつかの実施形態では、第2の判定基準が、電極を良電極と識別する方へバイアスされている。無機能電極又は「不良」電極の一部が「良」電極と再分類された場合には、「良」電極の最終セットからのデータを使用して心臓活動データを計算する。一実施形態では、識別された無機能電極をフィルタリングして再び「良」電極に再分類するステップ3は、a)識別された無機能電極の試験サブセット(1つ以上)を「良」分類に置換し、b)バスケット位置の誤差に対する試験サブセット内の電極の寄与を求め、c)試験サブセットに含まれる電極の全ての順列/組合せ(又は順列/組合せのサブセット)についてステップ(a)及び(b)を繰り返すことによって実行することができる。この繰返しは、例えば再帰的方法によって実行することができる。「良」分類に戻される電極の最後のセットは、比較法、例えば全体の誤差寄与がしきい値よりも小さくなる最大の試験サブセット、又は試験した全てのサブセットの中で誤差寄与が最も小さい試験サブセットによって決定することができる。バスケット位置の誤差に対する試験サブセット内の電極の寄与の決定は例えば、試験サブセット内の電極を含む場合と含まない場合のバスケット位置の変化を、平行移動、回転、一般アフィン変換(general affine transformation)、又は両方のバスケット位置(例えば電極12aのアレイの位置)内のマッチング電極間の対での距離の和、平均及び/若しくはRMSとして定量化することによって実行することができる。誤差を求めるバスケット位置は、位置特定された未処理の電極位置、又はSVDフィットなどの幾何学的フィットからの電極位置とすることができる。
【0131】
ADCカードのオン/オフ
いくつかの実施形態では、例えばシステムの効率を向上させるため、又はデータストリームをリセットして、緩衝器、フィルタ若しくはメモリなどのデータリポジトリ(data repository)を空にするためにある条件下でADC24をオフにするサブシステムを、システム100が備える。例えば、ADC24をオフにして負荷を減らし、それによってプロセッサ26又はシステム100の他の構成要素へのデータスループットの量を減らすように、システム100を構成することができる。いくつかの実施形態では、双極子密度及び/又は表面電荷密度を電圧データから決定するために逆解を計算すると
きにADC24をオフにするように、システム100が構成される。いくつかの実施形態では、電極12a及び/又は超音波変換器12bからデータを収集する(例えば能動的に収集する)モードなどの取得モードを出るときには常にADC24をオフにするように、システム100が構成される。自動的に若しくはユーザ入力に基づいて、又はこれらの組合せによってADC24をオフにするように、システム100を構成することができる。いくつかの実施形態では、リセット機能として、ADC24をオフにし、ある時間の後にADC24を自動的にオンにするように、システム100が構成される。このリセットは、時間に基づく(定期的な)自動リセット、入力の検出に基づく(トリガされた)自動リセット、又はユーザ入力に基づく手動リセットとすることができる。いくつかの実施形態では、オフ状態からオンになるとき又はオン状態からオフになるときなどのADC24の過渡的状態変化に起因するアーチファクトを最小化するために適切なシーケンスで使用禁止になるように、フィルタリング、緩衝、ブランキングアルゴリズム、インタリービングなどのADC24に対して並列又は直列のプロセスを構成することができる。いくつかの実施形態では、ADC24がリセットされた後に、アーチファクトを最小化するために使用禁止にされたプロセスを、ADC24がリセットされる前の動作状態に自動的に戻すことができる。
【0132】
V波除去(VWR)
【0133】
関心の心房信号に重なる可能性がある心室遠距離場信号(V波)を、(例えば心房粗動及び/又は心房細動などの不整脈を評価するために)少なくとも部分的に除去するように、システム100を構成することができる。例えば、システム100は、心室活動化に起因する心臓内電位図(EGM)の成分を識別及び除去するように構成されたアルゴリズム、VWRアルゴリズムを含むことができる。VWRアルゴリズムは、電極12aからの記録及びユーザの入力を分析するプロセスを使用することができる。心房活動は十分に保持しつつ、かなりの量の心室遠距離場信号(V波)をEGMから減算することができる。
【0134】
VWRアルゴリズムは、(例えば最低限)少なくともある信号フィルタリング後の記録されたデータに対して動作することができる。VWRアルゴリズムは、V波に対応するEGM上の適切なセグメントをユーザが選択したと仮定することができる。VWRアルゴリズムは、記録を通してV波は一貫していると仮定することができる。
【0135】
図4を参照すると、V波除去(VWR)アルゴリズムのために必要な方法400のステップの全体のシーケンスを詳細に説明するブロック図が示されている。
【0136】
VWRアルゴリズムは1つ以上の入力を含むことができる。VWRアルゴリズムの入力は、心房活動成分と心室成分の両方を含むEGMなど、データ記録のEGMを含むことができる。VWRアルゴリズムの入力は、開始及び終了サンプル番号を含むことができ、この開始及び終了サンプル番号は、1つの心室セグメントを表すことができ、EGM中のV波のユーザが選択した心室例を定義することができる。
【0137】
VWRアルゴリズムは、1つ以上の出力を含むことができる。VWRアルゴリズムの出力は、入力されたEGM中の推定されるV成分を含むことができる。VWRアルゴリズムの出力は、V波が減算されたEGMを含むことができる。
【0138】
V波除去(VWR)アルゴリズムは、フィルタ又は擬似フィルタ(本明細書では「フィルタ」)として構成することができ、及び/又はフィルタを含むことができる。開始及び終了サンプル点を、このフィルタの入力パラメータとすることができる。このフィルタを使用して、EGM中の心室成分を除去することができる。
【0139】
いくつかの実施形態では、VWRアルゴリズムが3つのステップを含む。1)V波セグメントの自動識別、ステップ402及び404、2)V波テンプレート(例えばチャネル固有のV波テンプレート)の作成、ステップ406及び408、並びに3)EGMからのV波の減算及び境界の平滑化、ステップ410。
【0140】
例えば、図4を参照すると、第1のステップ402で、システム(例えばプロセッサ10)は、フィデューシャル時間点(fiducial time point)及びセグメント間隔としてピークを自動的に選択する。ステップ404で、システムは、サンプルVセグメントと選択されたVセグメントとの間の相互相関値(cross-correlation value)(「cc値」)を計算し、cc<0.9であるVセグメントを除外する。ステップ406で、全てのVセグメントを平均してVテンプレートを作成する。ステップ408で、システムは、時間遅れに従ってVテンプレートを整列させ、時間シフトを調整する。ステップ410で、システムは、Vテンプレートの境界を平滑化して、滑らかなトランザクションを生成し、急変を回避する。
【0141】
心臓内電位図(EGM)用のテンプレートベースのいくつかのV波除去アルゴリズムでは、心室信号に匹敵する振幅を有する大きな心房信号の結果、一部の心房信号が心室セグメントとして検出され得る。このことは、マッピングしたい心房信号の除去又は改変につながり得る。EGMとECGの同時記録を使用することによって、表面ECGチャネルからピーク検出により心室タイミングを識別することができる。通常、ECGでは、心臓内EGMに比べて、心室信号に対する心房信号の振幅の割合がより小さくなるため、ECGチャネルは、心室タイミングを選択するための2次基準として好ましいことがある。次いで、ECGチャネルから検出されたピークを、EGMからのタイミングを維持する(例えばタイミング差≦50ミリ秒)ためのタイミング基準として使用する。次いで、心室活動に関連したタイミングは保持され、心房活動に関連したタイミングは次いで、さらなる心室テンプレート作成及び減算から除かれる。
【0142】
図11A及び11Bは、V波除去(VWR)の2つの例を示す。それぞれの図で、一番上のトレースは、大きな心房信号を示すECGリードから収集されたものであり、真ん中のトレースは、システム100の電位図であり、一番下のトレースは、V波が除去された電位図である。これらの例では、V波及び続く高域フィルタアーチファクトが、除去対象として選択されている。
【0143】
V波セグメントの識別
EGMからV波信号を除去するための最初のステップは、V波成分を含むセグメントを識別することである。生体電位チャネル上で測定されたV波(例えば電極12a上での電圧測定値)は一貫した波形及び振幅を有するため、時間点毎に全てのチャネルを平均することによって、BCT電圧(電極12aのアレイの幾何学的中心における推定電圧)を計算することができる。次いで、BCT中のピークを、V波のフィデューシャル時間点として使用することができる。
【0144】
次いで、ユーザが指定したV波サンプルを使用して、V波セグメントを見つけることができる。V波サンプル中のピークをフィデューシャル時間点と整列させることができる。フィデューシャル点におけるV波サンプルとセグメントとの間の最大相互相関を計算することができる。次いで、最大相互相関から生成された時間遅れに従って、この初期整列を調整することができる。次いで、EGM中の整列したセグメントをV波セグメントとして記録することができる。
【0145】
チャネル固有のV波テンプレートの作成
48個のそれぞれのチャネルでVセグメントを識別した後、チャネル内でVセグメント
を整列させ、それらのセグメントの平均をとることによって、チャネル固有のV波テンプレートを作成することができる。図4-1のプロット「A」は、単一のチャネルのV波テンプレートの例を示す。
【0146】
図4-1のプロット「B」は、V波を除去した後のEGMの一例を示す。心室遠距離場信号は最大で80%低減している。心房活動及びベースラインは維持されている。
【0147】
V波の減算及び境界の平滑化
チャネル固有のV波テンプレートを作成した後、V波テンプレートからのデータをEGM中のV波セグメントから減算する。しかしながら、V波テンプレートの始点及び終点では、Vセグメントからの信号の「急変」が起こり得る。この現象の例については図4-2を参照されたい。ハニング窓(Hanning window)を使用して、例えば図4-3に示されているように境界を滑らかにすることができる。
【0148】
V波のブランキング又はゼロイング
他の実施形態では、同時に起こる心房信号の損失を受け入れつつ一切の心室寄与を信号から除去するような態様の、EGM中のV波のブランキング又はゼロイング(zeroing)を、V波の減算の代わりに使用することができる。いくつかの実施形態では、V波データを含む信号のセグメントを、手動で選択すること(例えばオンスクリーン「キャリパ(caliper)」を使用して実施された選択)、及び/又はテンプレートベースの検出法を使用して選択する(例えば、システム100が、信号テンプレートを使用してV波を自動的に検出する)ことができる。セグメントのブランキング又は「ゼロイング」は、セグメント中の全ての値を設定値(例えばゼロ)に設定することによって、及び/又はセグメント持続時間を横切る補間(例えば選択された時間セグメントの直前のデータ値と直後のデータ値の直線補間)によって実施することができる。セグメントの開始及び終了サンプルにおける境界又はセグメントの開始及び終了サンプル付近の境界の平滑化を使用して、他のフィルタとの相互作用に起因する遷移アーチファクトを最小化することができる。
【0149】
ベースラインオフセットが低減するV波のブランキング又はゼロイング
いくつかの実施形態では、EGM中のV波のブランキング又はゼロイングを、(例えば高域フィルタ(HPF)などのフィルタにかける前の)未処理の信号を使用して実行する。上で説明したとおり、HPFにかけた後にV波ゼロイングを実行すると、HPF処理にバランスを欠く大きな信号(例えばV波)が含まれることによって、心房ベースラインのオフセット及び/又は形態状のアーチファクト(morphology-like artifact)が生じ得る。
【0150】
あるいは、HPFにかける前にV波ゼロイングを実行すると、HPFにかけて処理する前にバランスを欠く大きな信号(例えばV波)が除去されることによって、心房ベースラインのオフセットを防ぐことができる。いくつかの実施形態では、HPFにかける前のV波ゼロイングの補間が、低周波成分(例えば呼吸又はドリフト)の勾配及び曲率を適合させる。
【0151】
伝搬履歴マップのための活動化検出
図12は、心臓活動化データのビューの表示の実施形態である。右側ビューには、第1の視点から見た、様々な活動化バンドが示された心臓が示されている。最も外側のバンドは、活動化されたノードのバンドである。以降のバンドは、最近に活動化された状態を表している。活動化ステータスは、EGMの上に被せられた、水平時間軸を有するスライド窓によって示された時間に関係する。スライド窓の幅は、「伝搬履歴」と呼ばれる50ミリ秒の窓幅を反映したものである。左側ビューには、同じ心臓の異なる視野が示されてい
る。このビューは、活動化波が心臓の周囲に沿って伝搬したことを示している。画像を回転させる、画像にラベルを追加するなど、心臓の3D画像を操作するための様々なユーザ対話装置をディスプレイに提供することができる。
【0152】
様々な実施形態において、心臓情報動的表示システムは、心臓を横切って伝搬している動的活動化波の表示、再生、巻戻し、早送り、休止及び/又は再生スピードの制御をユーザが実行することを可能にするビデオ表示制御ツールを含むことができる。
【0153】
伝搬履歴マップを作成するのに活動化時間の自動注釈は不可欠である。しかしながら、仮想EGM中のノイズは、伝搬履歴マップにアーチファクトを導入し得る。このようなアーチファクトは、視覚的なノイズを生じさせるだけでなく、活動化検出の正確さを低下させる。
【0154】
伝搬履歴マップ用のメジアンフィルタ
伝搬履歴マップにメジアンフィルタを適用することができる。心臓解剖学的構造内のノード毎に、伝搬履歴値を、そのノード及びそのノードの近隣ノードの元の伝搬履歴値の中央値に更新する。これらの近隣ノードは、更新されているノードからある距離内にあるノードと定義される。この距離を大きくするにつれて、より多くのノイズが除去されるが、伝搬履歴の局所的な詳細が少なくなる。さらなるフィルタリングのために、伝搬履歴マップにメジアンフィルタを数回にわたって適用することができる。
【0155】
メジアンフィルタを使用して伝搬履歴を後処理する1つの理論的根拠は、伝搬履歴マップを一連の画像と考えることができることである。伝搬履歴中のノイズは、画像処理においてそう呼ばれている「ごま塩ノイズ(salt and pepper noise)」に最もよく似ている。画像中の歪んだ境界などの他のアーチファクトを生じさせることなしに、従来の低域フィルタ(ぼかしフィルタ)を用いてごま塩ノイズを除去することは難しい。メジアンフィルタは、鮮明な境界を維持しつつごま塩ノイズを除去することができる(図13を参照されたい)。
【0156】
図13は、伝搬履歴マップに適用されたメジアンフィルタのいくつかの例を示す。A)伝搬履歴マップの未処理フレーム。B)A)に比べて多くのアーチファクトが低減されるように、A)の伝搬履歴にメジアンフィルタを適用した。C)B)の画像に第2のメジアンフィルタを適用した。A)及びC)に比べてアーチファクトの数が減っている。
【0157】
誤検出活動化の除去
伝搬履歴マップを作成するのに活動化時間の自動注釈は不可欠である。しかしながら、仮想EGM中のノイズは偽の活動化を導入し得る。このようなアーチファクトは、伝搬履歴マップの不正確な解釈につながり得る。
【0158】
いくつかの実施形態では、アルゴリズムを使用して、潜在的な活動化を取り囲む時間窓内の電位図の振幅を検査することにより、真の活動化に起因するノイズを検出する。その電位図が振幅しきい値の検査に合格した場合、その潜在的な活動化を真の活動化と呼ぶ。この潜在的活動化を取り囲む時間窓のサイズは、厳密な振幅しきい値の働きをするだけでなく、最小勾配しきい値の働きもする。時間窓が大きいほど、(ゆっくりと脱分極する組織において見られるものなどの)より低勾配の活動化を示すことができ、一方、活動化を取り囲む時間窓が小さいほど、より速く脱分極される組織部位が見つかる。
【0159】
図14は、誤検出活動化注釈の除去の例示的な一実施態様を示す。A)初めに検出された活動化。緑で示されている。B)A)において丸で囲まれた活動化からの誤検出除去の例。時間窓内の電位図の振幅を検査する。この活動化は振幅しきい値を満たしていないた
め、C)で除去される。C)誤検出除去後の自動的に検出された活動化。A)の低振幅/勾配の活動化が除去されている。
【0160】
位置合せハンドリング
いくつかの実施形態では、電場測定値(電圧測定値)を位置と相関させるため、及び位置特定された心臓内装置とUI上に表示された再構成された心臓表面との間の座標位置合せを手技の全体にわたって維持するための位置合せハンドリングサブシステム(例えばアルゴリズム)であって、電力の喪失、システムハードウェア若しくはソフトウェアの再始動、位置特定源出力の変動、及び/又は体内の位置特定場分布の変動などの意図的に変化する条件と意図せずに変化する条件の両方に適応する位置合せハンドリングサブシステム(例えばアルゴリズム)を、システム100が備える。システム100の位置特定サブシステムは、心臓情報の取得及び分析において重要な役割、例えばアブレーションカテーテルを誘導する役割、並びに/又はマッピング及び他の感知カテーテルのための正確な位置情報を提供する役割を果たす。位置特定の最終ステップは、電極又は他のカテーテル構成要素の位置特定電圧の読みから、その電極又は他のカテーテル構成要素の座標を計算することである。入力及び出力は以下のように定義される。
カテーテル構成要素座標(X,Y,Z)=F(カテーテル位置特定電圧(V、V、V))
上式で、Fは、電圧空間から座標空間へマップする関数である。
【0161】
電圧空間と座標空間の間のマッピング関数F(位置合せ)は、以下の因子によって定義される。
1.位置特定サブシステム。これは例えば、2015年5月13日に出願した本出願の出願人のLocalization System and Method Useful in the Acquisition and Analysis of Cardiac Informationという名称の同時係属の米国特許仮出願第62,161,213号に記載されている。この文献の内容は、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれている。
2.患者
【0162】
関数Fは、異なる条件(例えば基準電極58の異なる位置、異なる患者解剖学的構造など)の下では異なるため、関数Fを、システム100の静的部分とすることはできない。その結果、関数Fは、患者の治療及び潜在的に手技後に実施される分析を容易にするように動的に決定され、適切に保存されなければならない。
【0163】
いくつかの実施形態では、電圧-位置マッピング関数Fが以下のように構成される。
1.関数Fは、電圧を座標に変換するための情報を含み、この情報は、限定はされないが、以下のものを含む。
a.使用中のカテーテル(例えばタイプ又はモデル)、システム入力チャネルのリスト、及び排除されたチャネル(例えば本明細書で説明した無機能電極12aを含むチャネル)のリスト
b.電圧と座標の間のスケーリング変換
c.システム入力チャネルのリスト、排除されたチャネルのリスト及び元の若しくは初期の電圧を含む一組のシステム入力チャネル(例えば電極、パッチなど)から測定又は計算された任意選択の位置又は座標基準
2.位置合せデータ用のリポジトリ
a.位置合せデータの1次コピーが、対応する解剖学的3Dモードとともに保存される。
b.位置合せデータの2次コピーが、それぞれの記録とともに保存され、これは以下のものを含む。
i.1次コピーの内容
ii.カテーテルのための排除された異なるチャネル及び位置基準情報など、1次コピーが作成された後の更新
3.位置合せ探索経路
後分析(post-analysis)のため、又はアブレーションカテーテルをリアルタイムで誘導するための計算に位置合せデータが必要なときには、心臓情報アルゴリズム(例えば本明細書で説明した双極子密度及び/又は表面電荷密度アルゴリズム)が、以下の経路をたどって適切な位置合せを探索する。
2次コピー
対応する2次コピーが見つからない場合には、1次コピーを探索する
1次コピーが見つからない場合には、ユーザに対して警告メッセージを表示し、デフォルトの構成を使用する
4.独立した位置合せ構成の整列
不適切な解剖学的構造が分析記録に割り当てられたときなど、独立した1次構成と独立した2次構成とが整合していないときには、心臓情報アルゴリズムが位置合せ補正を実行して、2次構成を1次構成と整列させ、又は1次構成を2次構成と整列させて、その結果生じる両構成の座標系が統一され、それらを同じ座標空間で使用することができるようにする。
5.位置合せの変化の検出及び補正
電力の喪失、システムハードウェア若しくはソフトウェアの再始動、位置特定源出力の変動、及び/又は体内の位置特定場分布の変動などの変化する条件下で、位置合せハンドリングサブシステムは、この変化を検出し、ユーザに知らせ、以前の設定を自動的に再ロードし、補正を自動的に実行して変化前の構成と一貫した状態にし、又はこれらの任意の組合せを実行する。いくつかの実施形態では、この自動補正が、体内の電極及び/若しくはセンサ(例えば心臓内電極)並びに/又は体表若しくは体表付近の電極及び/若しくはセンサ(例えば位置特定源パッチ若しくはECG電極)からの測定を含む。
【0164】
位置又は座標基準
位置合せの構成要素として、測定された一組の入力を使用して、位置特定システムの時間変動する望ましくない変化を安定させ、低減させ、又は排除することができる。これらの変化は、呼吸又は心臓運動に起因する周期的な変化、(特に低入力インピーダンスを有する)装置の位置特定場内への導入、位置特定場内からの除去、及び/若しくは位置特定場内での操作に起因する離散的な変化、並びに/又は生理的若しくは臨床的現象に関係したゆっくりと変動する変化(例えば患者の発汗、食塩水の注入、体表パッチ若しくは電極の電解ゲル(electrogel)、ヒドロゲル及び/又は接着剤層と皮膚との相互作用)を含み得る。これらの測定された入力は、
1.時間変動する変化を減算を使用して相殺してコモンモード信号成分を排除するために直接に使用することができ、
2.重み付け(又は線形モデル)とともに使用することができ、重みは、
a.場理論(field theory)又は主成分分析などからの分析モデル、
b.動的アルゴリズムを訓練するために使用されたデータセットからの経験的導出、
c.フィルタリング、
d.a、b及び/又はcの組合せ
によって決定され、
3.高階関数(higher-order function)に基づくモデル、おそらくは非線形モデルとともに使用することができ、
4.アフィン変換又は幾何学的最小化フィッティング法(geometric minimization fitting method)などの幾何学的変換とともに使用することができる。
これらの入力は、全体が体内の電極からなることができ、又は全体が体表のパッチ及び
電極からなることができ、又はこれらの組合せからなることができる。
【0165】
測定されたこれらの入力が定量的モデルから又は予想される出力から逸脱したときに、ユーザメッセージ又はUIへの警告の発行を引き起こすために、しきい値を使用することができる。
【0166】
いくつかの実施形態では、システム100が、座標系内の「関心のエリア」(例えばドリフト及び/又は他の運動アーチファクトを補償しようとしている、例えば心臓房室の近く及び/又は心臓房室内のエリア)の近くの固定された位置に置かれた装置(例えば少なくとも1つの電極を備える装置)を含む物理的位置基準を含む。冠状静脈洞内に置かれたときなどに関心のエリアに対して移動する可能性が低くなるような態様で、この装置を、解剖学的構造の一部分に置くことができる。次いで、この装置の位置は関心のエリアに対して動かないと(例えば位置特定プロセッサ46が)仮定し、装置の一切の運動は運動アーチファクトに起因すると判定する。これらの運動アーチファクトは、関心のエリア内の他の全ての装置に対して集められた位置データ(例えば位置特定データ)から除かれる。移動アーチファクトは、呼吸、心臓運動、位置特定パッチへの汗の吸収、手技中のパッチの接着力の低下、手技中に送達された食塩水、体の伝導性の変動、1つ以上の導電及び/又は絶縁材料(例えば追加のカテーテル)の患者への導入、低インピーダンス接地源に接続された1つ以上の装置の患者への導入、及びこれらのうちの1つ以上の組合せによって生じ得る。
【0167】
その代わりに又はそれに加えて、システム100は、本明細書では「仮想位置」基準とも呼ぶ「仮想座標」基準を含むことができる。後に説明するように、仮想位置基準を提供することを「学習する」ように(又は仮想位置基準を提供するように「訓練」されるように)、システム100を構成することができる。患者の体表に置かれた外部電極(例えば本明細書で説明した表面パッチX1、X2、Y1、Y2、Z1、Z2、及び/若しくは58、並びに/又は皮膚に配置された他の同様のパッチ)によって記録された「アーチファクト較正信号」を使用して、位置特定システムに対する生理的及び/又は環境的影響(例えば呼吸の影響又は他の運動アーチファクトが生み出す影響)を、体の表面から測定することができる。このアーチファクト較正信号は、1つ以上の外部電極に及び/又は1つ以上の外部電極間に駆動信号(例えば位置特定信号発生器28によって供給される駆動信号)が供給されている間に記録することができる。患者の体内の物理的位置基準が必要とされず、その代わりに、外部電極によって測定された信号を使用して仮想位置基準が計算されるような態様でこれらの影響を認知するように、システム100を(例えば較正又は「訓練」手順の一部として)訓練することができる。システム100を訓練するために、物理的訓練装置(例えば装置10、システム100のアブレーションカテーテル、及び/又は電極を含む任意のカテーテル)を、患者の体内の関心のエリアの近くに置き、動かないように保持し、物理的訓練装置の位置を、システム100を使用して本明細書で説明したとおりに特定する。通常は物理的訓練装置の運動に相関する位置特定信号を、位置特定システムの1つ以上のアーチファクトに起因すると(例えば位置特定プロセッサ46が)仮定する(これはすなわち、物理的訓練装置が動かないように保持されているためである)。この位置特定の間に、外部電極は同時にアーチファクト較正信号を記録する。次いで、記録された位置特定信号を、同時に記録されたアーチファクト較正信号と相関させ、数学的に処理して、位置特定システムと外部電極によって記録されたアーチファクト較正信号との間の代表的関係を確立する。この代表的関係は、位置特定場内の全ての装置に適用される変換を構成することができる(例えばこの変換が仮想位置基準となる)。この数学的処理は、フィッティング法、一連の重み付き係数、線形系、機械学習、適応フィッティング、及び/若しくはフィルタリング法、主成分、フィルタリング(例えば低域及び/又は高域フィルタリング)、他の数学的方法、並びに/又はこれらのうちの1つ以上の組合せを含むことができる。
【0168】
訓練後、物理的訓練装置を除去する(又は、例えばシステム100のカテーテル10を物理的訓練装置として使用した場合には物理的訓練装置を別目的に利用する)ことができ、システム100は、この変換を使用して、場内の装置の位置を効果的に(例えば運動アーチファクト並びに他の生理的及び/若しくは環境的影響を考慮することにより向上した正確さで)特定することができる。いくつかの実施形態では、この訓練を手動で及び/又は自動的に繰り返して、変換を確認及び/又は更新することができる。例えば、システム100は、患者の体内に置かれた電極又は装置がユーザによって動かされているかどうかを判定するための診断を(例えば1つ以上のアルゴリズムを使用して)定期的に実行することができ、動かされていない場合には、上で説明したシステム100の訓練を(例えばバックグラウンドで)始めることができる。訓練が完了した後、新たに生成されたその数学的変換を以前の変換と比較することができる。変換が異なる場合には、新たに計算されたその変換を用いて変換を更新することができる。いくつかの実施形態では、より長期にわたってデータを処理するために、緩衝器を使用して履歴データを記憶する(例えば、累積的訓練に基づいて時間の経過とともに変換を調整することができる)。
【0169】
手動位置合せ
位置特定システムの時間変動する望ましくない変化を安定させ、低減させ、又は排除するためのモデル化及び自動化された補償は、静的成分又は一定の成分を有する残留オフセット/誤差に帰着し得る。座標軸毎に一定値(すなわち定ベクトル)を割り当てることによって、残留又はバルク補償全体の任意の一定の成分を適用することができる。この定ベクトルは、手動位置合せ目的のユーザとユーザインタフェース及びシステムディスプレイとの対話によって決定することができる。システムディスプレイは、心臓房室表面、モデル及び/又は点のセットなどの座標系内の位置が安定した又は位置が固定された物体に対する、位置特定された装置の1つ以上のビューを示すことができる。
【0170】
ユーザとマウス、キーボード及び/又はタッチスクリーンなどの入力装置との対話によって、固定された物体に対する位置特定された装置の変位を可能にするモードを開始することができる。このモードの開始を、作業の流れの中で、キー押し、ボタン押し及び/又は他のコマンドと統合することができ、又は、このモードからの別個の入口及び出口を有する別個の窓若しくはインタフェースとすることもできる。
【0171】
固定された物体に対する位置特定された装置の変位は、記録されたデータ上で実行することができ、又は、体内での装置の適用された又は与えられた運動によって支配されて位置特定された装置が移動し続けるような態様で、この変位を、ライブのストリーミングデータに適用することができる。ユーザによって与えられた変位は、上で説明したマッピング関数Fに基づく計算された座標位置及び位置合せの他の任意の成分と合計される。
【0172】
いくつかの実施形態では、この変位が、ディスプレイの視覚的エンジンだけに適用され、ユーザは、マッピング関数F又は他の位置特定エンジン計算に適用される前にこの変位を確認しなければならない。マッピング関数Fへのこの適用は一時的とすることができ、又はこの適用を永続的に若しくは変更されるまで保持することができる。
【0173】
対話時の又は対話に近い時期の表面情報の取得されたデータセットによって、ユーザとシステムとの対話を視覚的に又は図形により誘導することができる。表面情報の取得されたデータセットは、表面と接触したセンサ若しくは電極によって、及び/又は非接触センサ若しくはセンサのセットによって提供することができる。この非接触センサ若しくはセンサのセットは、光学センサ、超音波変換器及び/又は他のレンジング(ranging)若しくは画像化様式とすることができる。取得された表面情報の同時の視覚的表示又は図形表示を使用して、整列によって2つの表面又は物体に適用する変位の決定を助けるこ
とができる。いくつかの実施形態では、画像化様式を超音波の表面反射とすることができる。一実施形態では、表面までの距離に等しい長さを有する一組の超音波ベクトルを表示することができる。次いで、ベクトルの終点を、心臓房室モデル、表面及び/又は点のセットなどの固定された物体と整列させることができる。別の実施形態では、新たな表面を部分的に又は完全に再構成することができ、その新たな表面を使用し、その新たな表面を、固定された物体若しくは心臓房室表面、モデル及び/又は点のセットと整列させることによって、適用する変位を決定することができる。
【0174】
自動化された又は支援された画像化媒介位置合せ
表面情報の取得されたデータセットと心臓房室モデル又は表面などの固定された物体との整列は、アルゴリズムに基づいて実行することができる。このアルゴリズムは、距離、角度及び/又は他の費用関数(cost function)若しくは幾何学的量の最小化を含むことができる。この最小化は、点、ベクトル、線、平面及び/又は他の幾何学的構造に対して実行することができる。このアルゴリズムは、分析的及び/又は反復的アルゴリズムとすることができる。このアルゴリズムはさらに、整列を改善するために表面情報の取得されたデータセットの位置、形状、スケーリング及び/又は他の幾何学的特性を変更するアフィン変換の計算を含むことができる。変更された幾何学的特性は、全てのアフィン変換を含むことができ、又は1つ以上のアフィン変換に限定することができる。いくつかの反復的実施形態では、反復を中止するための判定基準(出口条件)を使用する。この判定基準は、誤差、最小誤差、最大誤差、2乗平均誤差、根2乗平均誤差、集合誤差、全誤差、及び/又は費用関数の他の条件を含むことができる。いくつかの実施形態では、この最小化技法が、反復最近点(iterative closest point)アルゴリズムを使用することができる。一実施形態では、この整列アルゴリズムが、超音波レンジングなどの多方向非接触測定法によって新たに取得された一組の点を使用する。この一組の点を、固定された基準物体(例えば心臓房室表面、モデル又は一組の点)と最も良く適合するように変換することができる。この変換を平行移動だけに限定することができる。この新たに取得された点を最初に取得された一組の点と直接に比較することができる。あるいは、この新たに取得された点を使用して、代表的表面を計算し、最初に取得された一組の点と比較すること、若しくは最初に取得された点を使用して、代表的表面を計算し、新たに取得された一組の点と比較すること、又は新たに取得された点と最初に取得された点の両方を使用して、比較する2つの代表的表面を計算することもできる。
【0175】
場推定を用いた位置特定
いくつかの実施形態では、システム100が、改良された場推定(improved Field Estimation:IFE)アルゴリズムを含む。電気インピーダンス技法を使用した体腔又は房室内の装置又は装置の構成要素の位置特定は、房室内の全ての点における電場の正確で精密な理解を必要とする。装置の位置特定は、下記の方法を使用して実行することができ、又は2016年5月13日に出願された「Localization System and Method Useful in the Acquisition and Analysis of Cardiac Information」という名称の国際PCT特許出願PCT/US2016/032420号に記載された方法と部分的に若しくは完全に組み合わせて実行することができる。この文献は参照により本明細書に組み込まれている。場の不均質性の可能性を考えると、場の傾きの積分によって(相対的)位置を得るためには、任意の一対の点間の空間において、場の(相対的)方向及び大きさが分かっていなければならない。いくつかの実施形態では、システム100が、後に説明するカテーテル位置特定のための強化された場特性評価を含む。
【0176】
カテーテルの位置特定の第1のステップを、関心の心臓房室内の電場の特性評価とすることができる。コンソール20と協力して、球面(例えば直径約1インチの球面)上の空間的に別個の多数の位置(例えば48個の電極12aなどの電極12aの位置)において
多数のAC電場(例えば互いに垂直な又は互いにほぼ垂直な3つの方向に沿って配向された3つの場であって、周波数によって区別される3つの場)を検出するように、カテーテル10を構成することができる。それぞれの電極12aにおいて既知のそれぞれの周波数で得られた電圧サンプルを用い、最小2乗法及び/又は他の誤差最小化技法を使用して、アレイ12の既知の幾何学的構造に対する電場の方向、絶対値及び傾きを計算することができる。体腔又は房室内をアレイ12が移動しているときに、それぞれの電極12aにおける、アレイ12の幾何学的構造に対する電場の記録を得る。アレイ12の向きは演繹的には分からないため、任意に選択された原点に対するアレイ12の位置及び向きは、空間的に変動する場を、それぞれの電極12aと原点とを結ぶ経路に沿って積分することによって得ることができる。
【0177】
例として、以下の参照文献は、このような問題を数学的に解くための上記の手法に関係した情報を提供する可能性がある。
1.カブシュ(Kabsch)、ウルフガング(Wolfgang)(1976)、「A solution for the best rotation to relate two sets of vectors」、Acta Crystallographica 32:922(訂正が、カブシュ(Kabsch)、ウルフガング(Wolfgang)(1978)、「A discussion of the solution for the best rotation to relate two sets of vectors」、「Acta Crystallographica」、「A34」、827~828に出ている)。
【0178】
いくつかの実施形態では、IFEアルゴリズムが、解剖学的構造/幾何学的構造取得中に記録されたデータを処理する。いくつかの実施形態では、IFEアルゴリズムが、連続データと超音波データと交互配置されたデータの両方を処理することができる。いくつかの実施形態では、IFEアルゴリズムが、呼吸(機械的/インピーダンス)及び/又は心臓運動中に生じるものなどのコモンモード誤差源を、位置基準を利用して補正する。この位置基準を、操作されていないときにはアレイ12と同期して(コモンモードで)移動する別のカテーテルとすることができる。
【0179】
いくつかの実施形態では、IFEアルゴリズムが、位置基準としての内部補助装置を必要としない。いくつかの実施形態では、アレイ12の固定された形状を必要とすることなしにアレイ12の位置の計算を実行する。
【0180】
図5を参照すると、IFEアルゴリズムの方法の実施形態の詳細を示すブロック図が示されている。このブロック図は、超音波及び/又は表面再構成に関係したセクションを含み、フロー制御、場推定及び補助位置特定を説明する。
【0181】
IFEアルゴリズムは1つ以上の入力を含む。例えば、Idata及びQdataは、サイズN×チャネル数(numCH)×3の整数の配列である。第1の次元Nはサンプルの数、第2の次元はチャネルの数であり、第3の次元は、3つの位置特定軸周波数に対応する。I/Qデータは、記録されたファイル及び/又はリアルタイムストリーミングデータを起源とすることができる。IFEアルゴリズムは、入力gain_rawdataToVoltsを含むことができる。システムハードウェアのADC24のカウント対電圧転換利得を定義するフロートである。いくつかの実施形態では、gain_rawdataToVoltsが約0.52074e-6の値を含む。IFEアルゴリズムは、電極12aのサイズ数(例えば48)×3の配列である入力stdbskdataを含むことができる。これらの値は、アレイ12の電極12aの標準的な(例えば弾力によってバイアスされた)XYZ位置である。これらの値を使用して、フィッティング及び場計算を実行する。IFEアルゴリズムはさらに、整数配列である入力refnodes_auxを含
むことができる。refnodes_auxの内容は、運動補正に使用することができる補助カテーテル電極の指標を指定する。
【0182】
IFEアルゴリズムは、1つ以上の出力を含む。IFEアルゴリズムの出力は、システム100の接続された全て電極の座標、及び全てのアレイ12の重心位置に関連した(スケール行列の形態の)場推定値である。座標は、フロートのN×3配列として与えられ、スケール行列は、解剖学的構造/幾何学的構造記録のそれぞれのフレームに関連した9元配列である。
【0183】
いくつかの実施形態では、IFEアルゴリズムが以下のように構成される。
【0184】
場の特性評価及びバスケット重心の位置特定
原点フレームを識別する。この識別を、解剖学的構造/幾何学的構造構成データ記録の最初のフレームとすることができる。全ての重心及び補助位置ベクトルは、局所フレームからの変換後にこの基準フレームを基準にとる。原点フレーム内の基底ベクトルは、アレイ12上の電極12aの標準(例えばバイアスされた)位置測定によって定義される。
【0185】
それぞれの重心位置における場の特性評価(場の強度/向きの決定)
それぞれの重心位置における空間場の傾き(すなわち電位の変化に伴う位置の変化率)を計算する。局所基準フレーム内のそれぞれの座標次元(x,y,z)は、それぞれの源電位とともに変化し、スケールファクタ(scale factor)の3×3配列を生成する。この行列は、特定の重心に付随する標準アレイ12基準フレームにおける電圧から位置への変換である。
【数12】
【0186】
スケール行列は、標準アレイ12基準フレーム内の電極12aの対間の位置ベクトルを、同じ2つの電極間の3つの測定電圧の差の線形関数として表現することによって計算される。
【数13】
【0187】
上式で、下付き添字「i」及び「j」は、アレイ12上の電極12aの位置を表す。それぞれの添字は、本明細書で説明した無機能電極アルゴリズムによって使用不可能と識別された電極を除く全ての電極12a(例えば48個の電極)を対象とする。これを、電極12aの可能なそれぞれの対に対して実行する。
【数14】
【0188】
上式で、「del」は、3つのそれぞれの源電位に対する位置の微分を表し、dxは、(このケースでは)x座標差のベクトルを表す。理想的なケースでは、それぞれの座標軸上の3つの導関数項に対してNumChan式(この式でNumChanは電極12aの数に等しい)を得る。結果として生じる過剰決定系(overdetermined system)を最小2乗センス(least squares sense)で解いて、電極12aの3次元の既知の位置及び電位によって定義される「平均された」9つのスケールファクタを計算する。特異値分解を使用すると、A=USV及びそれぞれの座標軸に沿った導関数は下式によって与えられる。
∇x=VS-1dx
∇y=VS-1dy
∇z=VS-1dz
【0189】
行列Aは、3つの座標軸について同一であり、そのため、特異値分解は1度だけ実行すればよいことに留意されたい。同じ位置にあるかなりの数の電極が無視される場合(例えばアレイ12の隣接する2つ又は3つのスプラインからの全ての電極が排除される場合)を除き、ロバストなスケールファクタが得られる。
【0190】
一組の電圧値とスケール行列との行列乗算は、局所基準フレームの原点に対する物理空間内の位置を生成する。
【数15】
【0191】
この9元スケール行列の列は、対応するそれぞれの源電圧の傾きに沿って移動することによって得られたベクトルとして認識される(例えば最初の列はX源電圧の傾きに対する接線のベクトルである)。これらの場の線(field line)は、同次(homogeneous)であること又は直交する(orthogonal)ことに拘束されず、場の完全な記述には、空間内のそれぞれの点におけるスケール行列についての知識が必要となる。
【0192】
以下のステップを実行するようにシステム100を構成することができる。
【0193】
局所座標におけるそれぞれの重心に関連したアレイ12の電極12aの位置を、局所スケール行列を使用して再構成する。この場合も、局所座標は、標準アレイ12内の電極12aの位置(例えば弾力によってバイアスされた位置)によって定義される。ある外部基
準フレームに対するE場ベクトルの知識なしで、それぞれの局所基準フレームの向きは分からないことに留意されたい。
【0194】
電圧空間内の原点フレームまでの経路を識別する。この経路に沿って移動して、識別された原点までの経路に最も近い(電圧空間内の)重心位置を見つける。ターゲット及び原点を含むこの一組の重心が、原点までの積分の実際の区分的(piecewise)連続経路を構成する(図6を参照されたい)。
【0195】
積分経路上の隣接する重心間の距離(図6のセグメント1~4)を、原点に最も近い重心(例えばセグメント1については重心1)に関連したスケールファクタを使用して計算する。それぞれの距離は、(図6に示されているように)原点に近い方の重心の基準フレーム内において表現された位置ベクトルである。原点フレーム内のターゲット重心の位置は、積分経路上の隣接する重心間の距離のベクトル和であるが、これらの距離は最初に、一貫した基準フレーム、すなわち原点フレーム内において表現されなければならない。したがって、積分経路に沿ったそれぞれの距離間隔は原点フレーム内へ変換されなければならない。
【0196】
それぞれの重心と原点フレームの間の座標変換を決定するため、システム100は、積分経路に沿った隣接する重心のそれぞれの対間の変換のシーケンスを構築する。積分経路に沿ったこの一組の変換の積が、原点フレームまでの必要な変換である。
【0197】
図7を参照する。ターゲットフレームとフレーム1の間の離間距離である最も遠位の位置ベクトルを原点フレームまで変換するため、最初に、フレーム1とフレーム2の間の変換を見つける。
【0198】
この変換は、より近位のフレーム(この例ではフレーム2)のスケール行列を用いて再構成された、両方のフレーム内のアレイ12の比較によって得られる。システム100は、より遠位のフレーム(例えばフレーム1)内のアレイ12を、より近位のフレーム(フレーム2)に関連したスケール行列を使用して再構成する。次いで、システム100は、カブシュ(Kabsch)のアルゴリズムを使用して、2つのアレイ12(すなわちフレーム2に関連したアレイ12、及びフレーム2におけるスケール行列を用いて再構成されたフレーム1のアレイ12)を整列させる。結果として生じる変換は、より遠位のフレーム(1)からより近位のフレーム(2)に座標を移す。システム100は、隣接するアレイ12を上で説明したとおりに整列させることによって得られた変換のシーケンスを使用して、(重心間の)それぞれの距離間隔を原点フレームまで変換する。次いで、システム100は、次に遠い位置ベクトル(セグメント2。再び図6を参照されたい)に対してこの手順を繰り返す。この変換された一組の距離間隔のベクトル和が、原点基準フレーム内のターゲット重心の位置である。一意的に識別された原点までの経路及び隣接する重心間にKabschアルゴリズムを適用することによって得た関連する一組の座標変換を使用して、重心毎にこのプロセスを繰り返す。
【0199】
このようにして、システム100は、ターゲットフレーム毎に一組の変換を得る。これらの変換は、ターゲット重心に関連した局所スケールファクタを用いて得た位置ベクトルに適用されたときに、原点基準フレーム内の位置ベクトルを返す。
【数16】
上式で、例えば[T1,2]は、基準フレーム1から基準フレーム2への直交(すなわ
ち長さを維持した)変換を表し、以下同様である。
【0200】
図6を再び参照すると、正味の効果は、位置ベクトル1を原点フレーム内へ変換することである。同様に変換された位置ベクトル2~4と結合すると、その(ベクトル)和が、原点座標系内のターゲットフレームの位置になる。
【0201】
例えば電位励起軸(potential excitation axis)によって定義された大域座標(global coordinate)に対する原点フレーム(すなわち基準電極58の基準フレーム)の向きは、E場ベクトル(原点フレーム内のスケール行列の列)を原点フレーム内の基底ベクトルと比較することによって得られる。
【数17】
及びeが、原点フレーム内のE場ベクトル及び標準アレイ12定義内の座標軸から形成された単位基底ベクトルである場合、この変換の成分は下式によって与えられる。
【数18】
上式で、「i」及び「j」はベクトルの添字である(これらは、積分経路に沿った重心を識別する、ターゲット重心の位置特定のための変換における下付き添字1、2などとは無関係である)。内積を定義するため、これらのベクトルはともにユークリッド基準フレーム内で与えられなければならないことに留意されたい。
【0202】
原点フレーム内のE場ベクトルは(スケール行列の列として)既知であるが、実際には、E場ベクトルを、原点フレーム内のアレイ12の電圧の共分散の固有ベクトルとしてE場ベクトルを近似することができる。これらのベクトルは原点基準フレーム内で既知であり、上記の変換が当てはまる。この方法は、共分散行列の固有ベクトルが直交し、その後の直交化が不要であるという利点を有する。
【0203】
例えばAP基準フレームへの追加の変換も得られる。
【0204】
特性評価された場(例えばそれぞれの重心位置において既知の9元スケール行列)及びそれぞれの重心(ターゲットフレーム)から原点フレームまでの位置ベクトルの定義された変換により、特性評価された場の近くの任意の電極の位置は以下のように得られる(図7を参照されたい)。
【0205】
電圧空間内のターゲット電極の「近く」の重心のサブセットを識別する。重心の数が多いほど位置特定が正確になるというわけでは必ずしもない。これは例えば、電圧空間内の離隔距離が大きくなるとE場の特性評価の忠実度が低下する可能性が高くなる(すなわち、重心における場が電極位置における場を表さないことがある)からである。
【0206】
識別した重心毎に、平均バスケット位置(すなわちアレイ12の位置)からの電位オフセットに局所スケール行列を乗じて、局所座標における、その重心に対する位置ベクトルを得る。
【0207】
それぞれの場合にターゲットフレームからフレーム1までの変換によって拡大された、上で説明した原点フレームまでの変換のシーケンス(図6を参照されたい)は、ターゲットフレームから原点フレームまでの電極位置の変換を提供する。電極位置は、重心位置と
(基準原点フレーム内で表された)局所オフセットの和の平均である。
【数19】
【0208】
識別した全ての重心の上記の量の平均が、原点フレーム内の電極の推定される位置である。
【0209】
関心の体積内の場の不均質性は、場が正確に特性評価された体積からの距離が増すにつれて誤差が増大する位置推定値を与え得ることに留意されたい。
【0210】
パッチ又はAPフレームに対する変換も得ることができる。
【0211】
上で説明した強化された位置特定技法を生体内で使用したところ、静止環境(すなわち位置を安定に保つことができる環境)において約1mmの正確さが実証された。
【0212】
分解能及び空間的寸法が改善された場の特性評価
上で説明した場の特性評価及びバスケット重心の位置特定の方法では、位置特定場の推定が、既知の幾何学的構造を有する装置から測定した空間-時間的に(spatio-temporally)相関した一組の電位を利用する。その既知の幾何学的構造の重心における場の推定は、その既知の幾何学的構造の内部体積を代表する安定性及び正確さを提供する。位置特定場は、心臓内表面の近く又は静脈、弁及び付属器(appendage)などの結合した解剖学的構造の口(ostium)の近くなど、インピーダンスが変化する境界を横切って又はそのような境界の付近で変動し得る。既知の幾何学的構造の重心における場の推定は、場推定の十分な正確さが実現される空間的寸法を限定し得る。既知の幾何学的構造の重心の最も遠い位置と既知の幾何学的構造の装置の誘導可能体積(navigable volume)との間の間隔部位内の位置特定場は、測定装置の十分に代表的な体積によって特性評価するよりもむしろ、その部位を直接にサンプリングする電極のサブセットによってより良好に特性評価される。
【0213】
高分解能でこの間隔部位内の局所場の変動を推定するため、場サンプリングデータの空間的及び時間的相関を測定装置からデカップリングすることにより、場の推定を達成することもできる。いくつかの実施形態では、装置の電極対の全ての順列間の完全な距離行列など、(例えば電極アレイ12の)既知の幾何学的構造の幾何学的制約を、より細かなサンプリング分解能のために緩和することができる。
【0214】
一実施形態では、隣接する電極対間の既知の距離だけを使用することにより、局所場変動のこの推定を達成することができる。電極の個々の対を用いて、電極間の距離ベクトルの方向にだけ場変動をサンプリングする。不確かさ又は誤差は、サンプリングされたベクトルと場変動の方向との間の角度の関数として増大する。サンプリングされたデータの時間的相関を排除し、限られた体積の空間を通過する多数の電極対(したがってサンプリングされた多数のベクトル)に対する場サンプリングデータを時間を横切って集合することによって、方向依存性を低減させることができる。この限られた体積の空間は、座標系を一組の3次元ボクセルに分割することによって構築することができる。ある時間にわたって、離散的な電極対に対するサンプリングされた位置特定場電位を、一組のボクセルに「ビニングする」(例えば「ビン(bin)」に入れてグループ分けする)ことができる。いくつかの実施形態では、場の特性評価及びバスケット重心の位置特定として上で説明し
た方法などの単純化された一般的な位置特定方法を使用して、このビニングを決定することができる。ビンのサイズは、電極対からの統計学的に有意な一組の電位サンプルを囲むように決定することができる。ビンの中のサンプリングされた一組のベクトルが、局所場の推定値を定義する。この推定値は、サンプリングされたベクトルの空間及び電位の大きさ及び方向に空間場の傾きを関係づける一組の式にSVDを適用することによって決定することができる。一例が図18Aに示されている。
【0215】
別の実施形態では、位置特定場内の限られた体積の空間を通過する任意の個々の電極からのサンプリングされた電位を時間を横切って集合することができる。この場合も、この限られた体積の空間は、座標系を一組の3次元ボクセルに分割することによって構築することができる。ある時間にわたって、任意の個々の電極に対するサンプリングされた位置特定場電位を、一組のボクセルにビニングすることができる。いくつかの実施形態では、場の特性評価及びバスケット重心の位置特定として上で説明した方法などの単純化された一般的な位置特定法を使用して、このビニングを決定することができる。ビンのサイズは、統計学的に有意な一組の個々の電極電位サンプルを囲むように決定することができる。隣接するビン又は近くのビン間の電位の差並びにそれらの相対的な向き及び距離が、局所場の推定値を定義する。この推定値は、隣接するビン又は近くのビンの位置及び電位の差に空間場の傾きを関係づける過剰決定された一組の式にSVDを適用することによって決定することができる。一例が図18Bに示されている。
【0216】
測定された電位、例えば誘導された補助カテーテルによって測定された電位の位置特定は、その測定された電位に、それぞれのボクセルにおいて既知の傾き値を適用することによって達成される。
【0217】
補助装置の位置特定及び形状モデル化
心臓内場の推定は、房室を横切る位置特定場の変化を考慮に入れることにより、投げ縄カテーテル又は冠状静脈洞マッピングカテーテルなどの補助装置の位置の正確さを向上させる。この方法は、空間を横切る場の変化を、房室壁の近くに配置されたカテーテル及び静脈/付属器/弁の中に配置されたカテーテルの位置特定に、より小さな歪みで組み込むことを可能にする。(解剖学的構造の再構成中に)電極12aによってこの場の変化を捕捉、処理して、場の変化を積分する。
【0218】
いくつかの実施形態では、補助カテーテル、例えば図15に示された非直線的な名目上円形の「投げ縄」型カテーテルから、位置特定された電極位置を得ることができ、位置特定された電極位置を、様々な方法、例えば下記の方法によって形状モデル化(shape-modeling)することができる。
1.位置特定された電極データに3本のそれぞれの空間座標軸に沿って独立して当てはめられた3次スプライン
2.位置特定された電極データに3本のそれぞれの空間座標軸に沿って独立して当てはめられたより高次の(例えば4次又は5次)多項式
3.位置特定された電極データに当てはめられた演繹的に未知の半径及び向きの円。結果として生じた円を、回転対称軸に対する螺旋変形を許容するように変更することができる。
【0219】
いくつかの実施形態では、形状モデル化の計算方法を方法の組合せとすることができる。いくつかの実施形態では、位置特定された一組の電極位置に対する測定された変化又はユーザ定義の変化に基づいて、形状モデル化の方法を変更することができる。例えば、可変形状カテーテルが円形ループとして構成されているときには、ループを形状モデル化するのに適した方法が使用され、カテーテルが曲線として構成されているときには、曲線を形状モデル化するのに適した方法が使用され、カテーテルが線として構成されているとき
には、線を形状モデル化するのに適した方法が使用される。
【0220】
いくつかの実施形態では、形状モデル化が、電極間隔、電極半径、電極長、曲率半径などの補助カテーテルの物理的仕様を使用する。いくつかの実施形態では、形状モデル化が、使用可能な物理電極のサブセットの位置特定された電極位置を使用して計算される。いくつかの実施形態では、幾何学的及び/又は時間的判定基準に基づいて、電極位置を、「無効(invalid)」として形状モデル化計算から除外することができる。
【0221】
図16を参照すると、カテーテルを形状モデル化する点(例えば位置の2D又は3D座標)を選択する方法が示されている。ステップ1610で、患者の体内(例えば患者の心臓房室内)に置かれたカテーテル上に置かれた複数の電極の位置に相関する電気信号を(例えばシステム100の1つ以上の構成要素によって)記録する。それらの位置を一組の点として記憶する。いくつかの実施形態では、このカテーテルが、その長さの一部分に沿って複数の電極を備える可変形状補助カテーテルを構成する。このカテーテルは複数の電極を備えることができ、例えば少なくとも8つ、12個又は20個の電極を含むことができる。ステップ1620で、その一組の点の重心を計算する。ステップ1630で、その一組の点のそれぞれの点を、計算された重心及び/又はその近隣の点と比較する。いくつかの実施形態では、それぞれの点と重心の間の距離を、モデル化されている形状の予想される半径の2倍に等しいしきい値などのしきい値と比較する。いくつかの実施形態では、それぞれの点とその近隣の点の間の距離を、同じしきい値又は異なるしきい値と比較する。ステップ1640で、距離の比較がしきい値を超過した場合に、その点は無効であると判定し、その点を、その一組の点から除外する(ステップ1645a)。いくつかの実施形態では、実施した少なくとも1つの比較、少なくとも2つの比較、若しくは全ての比較が比較しきい値を超過した場合、又は少なくとも1つの比較がしきい値を超過した場合に、その点は無効であると判定される。
【0222】
その組の中の全ての点を比較した後、その組の中に、形状モデルを計算するのに十分な数の点が残っているかどうかを判定する(ステップ1650)。いくつかの実施形態では、形状モデル化を計算するのに必要な点(例えば電極)の最小数が、計算に使用する多項式の次数に基づく。いくつかの実施形態では、残った点が8つよりも多くなければならない。例えば10個又は12個よりも多くなければならない。必要な点の最小数が満たされていない場合、システムは、ステップ1660で、未処理の位置データを(例えば心臓房室の3D又は2D表示の上に重ねて)表示し、形状モデル化計算を実行しないことができる。必要な点の最小数が満たされている場合、システムは、ステップ1670で、形状モデル化計算を実行し、カテーテルの最良適合モデルを表示することができる。いくつかの実施形態では、形状モデル化の表示された出力が、物理カテーテル上の全ての電極の図形表現を、それらの電極がシステム100に接続されており、システム100によって位置特定されたのか、又はそうでないのかに関わらず示す。いくつかの実施形態では、システム100に接続されており、システム100によって位置特定された電極が、そうでない電極とは色、サイズ及び/又は形状の違いなどによって異なった態様で図形表示される。
【0223】
運動に対する補正
3D電気生理的マッピングシステム内でのカテーテルの位置及び運動の正確な追跡は、不整脈診断及びアブレーション治療戦略に不可欠である。本発明の概念のシステムは、高度な正確さを有し、運動に対して敏感に応答することができる。ノイズが多い環境の場合、心房壁細動は、手技中にカテーテルの「ジッタリング(jittering)」として視覚的に知覚される高周波運動を生成し得る。この「ジッタリング」運動は医師の注意を散漫にし、視覚疲労による不必要な疲れの原因となり得る。
【0224】
いくつかの実施形態では、システム10のアルゴリズムが、位置特定信号をフィルタに
通して、カテーテル移動の適切な応答性を維持しつつジッタリング運動を除去する。高周波ノイズ又は運動を除去するために、IQフィルタの帯域幅を狭くすることが必要となり得る。しかしながら、これが追加の遅延を導入し、応答時間を長くすることがある。この遅延とフィルタの周波数帯域とのバランスを最良にすることが重要である。CIC(カスケーデッドインテグレータコーム(cascaded integrator-comb))フィルタは、この目的に対する1つの選択肢である。IIR、平均値及びメジアンフィルタと比べると、CICフィルタは待ち時間に関してはより高性能であり、ジッタリング運動の低減に関しては同等である。加えて、CICフィルタは、埋込み(例えばFPGA)アプリケーションとPCアプリケーションの両方で高速に(例えば効率的に)動作する。このフィルタ自体は加算と減算だけを必要とする。乗算が必要になるのは、フィルタ利得を1にするために出力スケーリングが必要な場合だけである。
【0225】
CICフィルタの特性は3つのパラメータによって決定される。パラメータの異なる組合せで、このフィルタは、計算の複雑さを単純に保ちつつ異なる帯域幅及びノイズ減衰を与える。この3つのパラメータは、遅延差(DD)、段数(Nsect)及びダウンサンプリング数(Nds)である。
【0226】
スケーリングアルゴリズム
システム100は、逆解法を使用して、心臓房室表面、例えば心房表面の電荷密度分布及び/又は表面電荷密度分布などの心臓情報を計算することができる。房室(例えば心房)内の電極12aの位置と房室表面(例えば心房表面)の幾何学的構造は、逆解法の定式化(formulation)に必須の2つの入力である。アレイ12は、房室内の異なる位置に置くことができるため、房室表面から最も近い電極12aまでの距離は大幅に変動し得る。この変動は、逆解法の分解に影響を及ぼす。例えば、再構成された電荷密度の振幅は、空間的に電極12aから遠く離れたエリアよりも空間的に電極12aに近いエリアにおいてより優勢である傾向がある。
【0227】
システム100は、以下で説明するスケーリングアルゴリズムを含むことができる。このスケーリングアルゴリズムは、重み付き最小ノルム推定法(Weighted Minimum Norm estimate method)を使用して、順行列に対する距離の影響を軽減する(前スケーリング)。次いで、均一に分布した電荷源を使用して、逆解法からの出力をそれに応じて調整するために使用する後スケール値を計算する(後スケーリング)。この技法は、逆解法を使用する局所源の位置特定の正確さをかなり向上させる。
【0228】
スケーリングアルゴリズムは、(最低限、)適切な信号フィルタリング後の記録されたデータに対して動作することができる。いくつかの実施形態では、このアルゴリズムがさらに、上で説明したV波減算を実行する。これらの実施形態では、V波に対応するEGM上の適切なセグメントをユーザが選択したと、このアルゴリズムが仮定することができ、及び/又は記録を通してV波が一貫しているとこのアルゴリズムが仮定する。
【0229】
図8を参照すると、前スケーリング及び後スケーリングを含むスケーリングアルゴリズムの一連のステップの一実施形態を示すブロック図が示されている。
【0230】
システム100のスケーリングアルゴリズムは、1つ以上の入力を含むことができる。スケーリングアルゴリズムが、アレイ12の電極12aの位置に関係した入力を含むときなど、いくつかの実施形態では、スケーリングアルゴリズムの入力が、システム100の電荷密度アルゴリズムと同じか又は同様である。これらの入力は、房室表面の幾何学的構造(例えば心房表面の幾何学的構造)を定義する頂点及び/又は三角形であり得る。これらの入力は、アレイ12の電極12aから測定されたEGMを含むことができる。
【0231】
システム100のスケーリングアルゴリズムは、房室表面に関係した表面電荷密度、双極子密度及び/又は他の心臓情報を含む出力など、1つ以上の出力を提供することができる。
【0232】
いくつかの実施形態では、スケーリングアルゴリズムが2つの主要な構成要素を含む。第1に、チコノフ正則化法を改良するために重み付き最小ノルム推定が使用され、次いで、この最初のステップからの心臓情報(例えば電荷密度)を調整するのに使用する後スケール値を計算するために均一な源分布が使用される。
【0233】
順問題(心房表面の電荷密度に関して説明する)
【0234】
電荷密度sとカテーテル上の測定電位φとの間の線形関係は、下式によって記述される。
φ=As (4)
上式で、Aは、心房表面の電荷密度とそれぞれの電極12a上の電位との間の関係をコード化した測定行列であり、電極12aから心房表面までの距離に関係するだけでなく、心房の幾何学的構造にも関係する。既知の源s及び電極12aの位置を与えることによって、電極12a上で測定される電圧を式(4)によって予測することができる。
【0235】
電極12a上で測定された電圧を用いて、システム100は、心房表面の電荷密度(及び/又は双極子密度)を逆解法を使用して計算することができる。この線形系は劣決定される(under-determined)ため、正則化アルゴリズムを使用することができる。いくつかの実施形態では、スケーリングアルゴリズムが、正則化に重み付き最小ノルム推定を使用する。
【0236】
重み付き最小ノルム推定(WMNE)
スケーリングアルゴリズムは、重み付き最小ノルム推定(WMNE)を使用して、目的関数に重み付き行列を導入することにより、距離の影響を補償することができる。
【数20】
上式で、重み付き行列W∈Rn×nは、対角元をAの列ノルムとして有する対角行列である。
【数21】
【0237】
(5)の解は以下のとおりである。
【数22】
【0238】
G=(WW)-1=diag(1/∥A(:,i)∥),i=1,2,...,nと表すと、(6)を下式として書き直すことができる。
【数23】
特異値分解を使用してこの順行列をA=UΣVとして書き直し、これを(7)に代入して、WMNEの簡略化された解を得ることができる。
【数24】
【0239】
後スケーリング
重み付き最小ノルム推定正則化法を使用して電荷密度を計算した後、システム100は、電荷密度振幅を調整するための後スケール値を計算することができる。最初に、システム100は、均一な電荷分布を使用して、アレイ12の電極12a上の電圧を計算する。次いで、この均一な源に起因する電圧を使用して、較正電荷密度を計算することができる。この較正電荷密度を均一な電荷密度と比較することにより、後スケール値を計算することができる。最後に、この後スケール値を使用して心房表面の電荷密度を調整することができる。
【0240】
測定行列に予め重み付けして源の深さを補償し、再構成された源を後スケーリングして系の誤差を排除することにより、この前-後スケーリング技法は、電極12aから空間的に遠い源に対する感度を増大させる。本出願の出願人によるシミュレーション及び臨床研究はともにこれらの改良を実証した。
【0241】
アーチファクトが低減する改良された高域フィルタ
【0242】
心臓内電位図及び表面ECG信号などの生体電位信号は、ベースラインの広がり、呼吸及び低周波ドリフトとして現れるチャネル間の大きさの異なるDCオフセットなど、望ましくない一組の信号成分を含み得る。これらの信号成分はしばしば、心臓活動化形態のスペクトル内容に比べて比較的に低い、≦0.5Hzの周波数などの周波数からなる。高域フィルタ(HPF)は、低周波情報を信号から除去し又は信号の低周波情報を低減させるために使用される一般的な信号処理ツールである。しかしながら、従来の高域フィルタはさらに、3D電気生理学マップの正確さ及び分解能に影響を及ぼし得るアーチファクトを、EGM/ECG信号の形態に導入し得る。高域フィルタはしばしば、単一設計において高いストップバンド減衰、鮮明な遷移帯域及び低い信号歪みを同時に送達するという問題点を有する。
【0243】
いくつかの実施形態では、BIOフィルタ33、BIO信号処理34又はBIOプロセッサ36が、高いストップバンド減衰、鮮明な遷移帯域及び低い信号歪みを有する望まれていない上述の低周波信号成分を低減させる、改良された高域フィルタを備えることができる。低域フィルタを使用して、指定された周波数、例えば0.01~2.0Hzの範囲の周波数、例えば0.5Hzよりも高い周波数成分を除去する。次いで、この低域フィルタの出力を元の信号から減じる。この低域フィルタは、固有のカットオフ周波数を有し、異なるサンプリングレートで動作する2つの段を含むことができる。この2段構成は、標準的な高域フィルタに比べて歪みが小さいより大きな遷移帯域を可能にし、同時に、計算の複雑さを低く維持する。このことは、このフィルタを、ソフトウェア又はファームウェアで実施することを可能にする。このフィルタは、標準的な高域フィルタに比べて、生体電位信号の形態、信号振幅及びベースラインの平坦度を維持する。
【0244】
逆ベースの遠距離場源除去
人為的に配置した遠距離場源に対する場計算を実行することにより、3D電気生理学マップ内の関心の部位の外側の源からの遠距離場活動化を除外することができる。一例として、心房などの関心の心臓房室内の表面Aの活動化の測定値は、心室などの別の房室内の源からの寄与を含み得る。心房の活動化パターンをマップするときに、心室内の遠距離場源からの活動化が心房表面A上の源に不適切に割り当てられることが起こり得る。いくつかの実施形態では、以下のステップを実行することにより遠距離場源からの活動化を関心の房室のマップから除外するのを支援する方法(例えばアルゴリズム)を、システム100が含むことができる。
1.追加の源部位B(1つの点、一組の点又は表面)を生成し、関心の房室が心房であり遠距離場源が心室に由来するときの弁の位置など解剖学的に正確な相対的な向きを使用して、これを解剖学的表面Aに付加する。
2.この表面AとBの結合体に対して逆解法を実行する。
3.結果として生じたマップを表面Aだけに提示する。
i.測定された電位図に対して本来、コモンモードである遠距離場源は、表面Bの源に割り当てられるはずであり、関心の房室のマップ上の遠距離場アーチファクトを低減させる。
4.表面A上の源だけから順解法を実行して、例えば逆ベースのV波除去のために、遠距離場成分を含まない電位図を作成する。
【0245】
説明したこの方法は、フィルタベースの手法又はテンプレートベースの手法に起因するマップと電位図の両方のアーチファクト又は残差を減らすことができる。
【0246】
結合構造体を含む表面再構成
2016年5月12日に出願された、「ULTRASOUND SEQUENCING
SYSTEM AND METHOD」という名称の国際PCT特許出願PCT/US2016/032017号に記載された解剖学的房室又は表面の再構成は、結合した構造体(connected structure)(以後、結合構造体)又は隣接する構造体内の詳細を欠くことがある。一例として、左心房の再構成は、心房本体の表現を正確に生成することがあるが、連結した静脈構造体については、静脈口よりも先は鮮明度(definition)を欠くことがある。結合構造体の解剖学的鮮明度を向上させるために、システム100は、以下のうちの1つ以上を含む方法(アルゴリズム)を含むことができる。
【0247】
この方法は、表面点のクラウド(cloud)をデータ処理して、結合構造体内/結合構造体付近の表面点又は結合構造体を構成する表面点を含む部位を識別する1次表面(PCT/US2016/032017に従って再構成された表面)を生成することを含むことができる。いくつかの実施形態では、このデータ処理が、その部位内の表面点の空間分布を含むことができる。いくつかの実施形態では、このデータ処理が、1次表面に対するその部位内の表面点の空間分布を含むことができる。
【0248】
この方法はさらに、バスケットマッピングカテーテル及び/又は補助診断カテーテルなどの関心の房室内の装置によってサンプリングされた、房室の体積の全体にわたって分布した位置特定データのデータ処理を含むことができる。いくつかの実施形態では、この位置特定データが、表面再構成プロセス中に記録されたデータから提供される。いくつかの実施形態では、この位置特定データが、独立した取得中に記録されたデータから提供される。いくつかの実施形態では、上記の心臓内場の推定の説明で開示した1つ以上の方法によって場特性を近似することができる。いくつかの実施形態では、結合構造体内/結合構造体付近の表面点若しくは結合構造体を構成する表面点を含む部位及び/又はこのような表面点に隣接する部位を、結合構造体の解剖学的存在によって本来的に生じるそれらの部
位の位置特定場の差に基づいて識別する。いくつかの実施形態では、結合構造体の向きを記述する主方向ベクトル(principal direction vector)を、周囲の部位に対する推定される心臓内位置特定場の局所的な差、部位内若しくは部位付近の表面点の空間分布、部位内若しくは部位付近の表面点の主成分、1次表面の表面特性、部位内の表面点の1次表面に対する位置若しくは向き、サンプリングされた位置特定データからの一組の場推定値の位置若しくは向き、又はこれらの組合せによって決定することができる。
【0249】
この方法はさらに、周囲の部位に対する推定される心臓内位置特定場の局所的な差、部位内若しくは部位付近の表面点の空間分布、部位内若しくは部位付近の表面点の主成分、1次表面の表面特性、部位内の表面点の1次表面に対する位置若しくは向き、部位からの一組の場推定値の位置若しくは向き、関心の房室内の装置からのサンプリングされた一組の位置特定データの位置若しくは向き、(超音波変換器などの)一組のレンジングセンサからの距離データ、又はこれらの組合せに基づく考察によって、表面点を除外する処理ステップを含むことができる。
【0250】
この方法はさらに、結合構造体内の表面点、結合構造体付近の表面点及び/又は結合構造体を構成する表面点の識別された部位の1つ以上を含む代表的表面又は表面セグメントを再構成する処理ステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、この代表的表面を、他の表面データからの情報から独立して、表面点のこの識別された1つ以上の部位から再構成する。いくつかの実施形態では、代表的表面の処理ステップが、1次表面からの情報を含む。結合構造体毎にこのプロセスを繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、この代表的表面の再構成が、ボールピボット(ball-pivot)又はアルファシェイプ(alpha-shapes)アルゴリズムなどのメッシング(meshing)アルゴリズムを利用することができる。いくつかの実施形態では、この代表的表面の再構成が、反復フィッティング又は変形アルゴリズム、例えば、一般化された表面形状から開始し、その表面形状の1つ以上の部位を一組の点に対して変更し、距離誤差などの費用関数を推定し、しきい値などの終了判定基準に照らして費用関数を評価し、終了判定基準が満たされていない場合にその表面形状に対する次の変更を決定することを反復的に続けるアルゴリズム、を利用することができる。いくつかの実施形態では、この代表的表面の再構成が、球面調和展開(spherical harmonic expansion)などの空間級数基底関数(spatial series basis function)の分析セットを利用して、一組の点に対する最良適合表面を近似することができる。
【0251】
この方法はさらに、結合構造体の1つ以上の代表的表面及び/又は表面セグメントを、1次表面又は1次表面の一部分に結合(combine)又は併合(merge)する処理ステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、この表面の併合が、それぞれの結合構造体の代表的表面及び/又は表面セグメントの再構成と同時に実行される。いくつかの実施形態では、この表面の併合が、メッシュブレンディング(mesh blending)手順を使用して実行される。一実施形態では、この併合手順が、以下の1つ以上のステップを含むことができる。
1.アルファシェイプアルゴリズムなどのメッシュ生成アルゴリズムを使用して、識別された一組の結合構造体内の表面点、結合構造体付近の表面点及び/又は結合構造体を構成する表面点と1次表面の両方を包含する粗いメッシュを生成して、これらの2つの構造体を合併する。
2.主成分分析などのフィッティングアルゴリズムを使用して、識別された表面点に対する最良適合シェル(best-fit shell)を決定する。この最良適合シェルは、楕円体、円柱、球又は同様の幾何学的構造などの単純な形状を有することができる。
3.最良適合シェルとの交点において、粗いメッシュの三角形のサブセットを、結合構
造体の開口又は口として識別する。
4.この口よりも先の粗いメッシュの部分を保持し、この部分を、口に沿った三角形を介して1次表面に結合する。
5.口のところの三角形に垂直な表面をガイドとして使用して、内部の三角形を、この連続表面の垂直方向に基づいて除去する。
6.その結果生じた表面の穴(hole)を閉じる。
7.その結果生じた表面に平滑化若しくは再メッシュ化処理を実施し、又は平滑化処理と再メッシュ化処理の両方を実施する。
【0252】
次に図19を参照すると、心臓活動を記録し、「拍動」心臓解剖学的モデルを表示する、本発明の概念と整合した方法が示されている。方法1900は、電気活動データと壁位置データの両方を含む心臓活動データを多数の心周期にわたって記録すること、電気活動データを分析して、記録された心周期の時期(phase)の別個のセグメントを決定すること、別個の時期セグメント毎に壁位置データをセグメント化すること、別個の時期成分毎に心臓房室の解剖学的モデルを作成すること、及び記録された心臓活動データに基づいて拍動解剖学的モデルを表示することを含む。
【0253】
ステップ1910で、システム100の1つ以上の記録装置(例えばカテーテル10)を使用して記録されたデータなどの心臓活動データを、本明細書で説明したとおりに記録する。電極アレイ12は、1つ以上の電極12a及び/又は1つ以上の超音波変換器12bを備えることができる。心臓房室内の電極アレイ12の位置を決定し(すなわち患者の体内で生成された位置特定場に対するアレイ12の位置及び向きを決定し)、患者の心臓活動データを記録するように、システム100を構成することができる。1つ以上の超音波変換器12bを介して心臓壁位置データ(「解剖学的」データ)を、本明細書で説明したとおりに記録することができる。同時に(又は比較的に同時に、例えば交互配置されたパターンで)、1つ以上の電極12aを介して心臓電気活動データ(「生体電位」データ)を、やはり本明細書で説明したとおりに記録することができる。いくつかの実施形態では、ある時間の間(例えば多数の心周期にわたって)、データを記録し、完全なデータセットが記録された後に、それらデータを、次に説明するとおりに操作し、拍動解剖学的モデルを作成し、「記録された」ビデオとして表示する。その代わりに又はそれに加えて、データの第1のサブセットを記録及び操作(例えば分析)し、後続のデータの第2のサブセットを記録し、データの第1のサブセットとデータの第2のサブセットの両方に基づいて、拍動解剖学的モデルを生成及び表示することができる。この構成では、「ライブビュー」拍動解剖学的モデルを表示することができる(例えば実際の解剖学的運動と対応するビデオ表現との間に短い遅延を有するビュー)。
【0254】
ステップ1920で、記録した生体電位データを、例えば図1のコンソール20のプロセッサによって分析して、心周期の様々な時期(phase)(例えば心拍の時期)を表す期間又はセグメントを決定する。例えば、規則的な及び/又はほぼ規則的な心臓調律(例えば洞調律又は粗動)の記録された生体電位データを、心周期の時期を表す時間セグメントの周期的なセットにセグメント化することができる。いくつかの実施形態では、これらのセグメントが繰り返し、心周期によってほとんど変動しない。いくつかの実施形態では、この生体電位データを分析して、心周期の固有の時期(例えばV波の上昇又は下降)の鍵となる時間指標(time index)を決定し、識別された鍵となる連続するそれぞれの時間指標間のデータを、持続時間が可変で数が固定されたいくつかの時間セグメントにセグメント化する。あるいは、識別された鍵となる連続するそれぞれの時間指標間のデータを、持続時間が固定で数が可変のいくつかの時間セグメントにセグメント化する。
【0255】
ステップ1930で、ステップ1920で決定した時間セグメント毎に、記録した解剖
学的データを集合する。例えば、記録されたそれぞれの周期の共通の時間セグメント毎に、それぞれの時間セグメント中の心臓表面の少なくとも一部分を表す一組の点を含む記録された解剖学的データを集合して、共通の時間セグメント(例えば心周期の共通の時期)を表す多数の周期からの点を含む一組の解剖学的データを形成する。このプロセスは、時間セグメント毎、記録された周期毎に実行され、多数の「ビン」を含むデータセットなどのデータセットに編集される。記録された周期の時間セグメントの平均数に等しくなるようにビンの総数を設定することができる。いくつかの実施形態では、例えば持続時間が固定されたセグメントに生体電位データをセグメント化するときには、連続する周期が、ビンの数よりも多くの又はビンの数よりも少数のセグメントを含むことができ、この差を考慮するようにデータを調整することができる。例えば、1つの周期が、ビンの数よりも多くのセグメントを含む場合には、追加のセグメントをスキップする(例えば無視する)ことができる。追加のセグメントは、周期の「終り」から追加のセグメントを除去することによりスキップすることができ、及び/又はアルゴリズムを使用して、スキップするセグメントを決定することができる。例えば33個のセグメントを含む1つの周期に3つの追加のセグメントが存在する場合には、セグメント11、22及び33をスキップすることができる。それに加えて又はその代わりに、これとは異なるビン、例えばその周期の最後のビン又は最後の2つのビンに、追加の時間セグメントを「割り当てる」こともできる。いくつかの実施形態では、追加のセグメントが割り当てられたビンがディザ処理される。
【0256】
いくつかの実施形態では、1つの周期が、ビンの数よりも少数のセグメントを含む場合に、時間セグメントをビンのサブセットに分配することができる。この分配を均一にサンプリングすることができ(例えばより初期のビンにはより初期のセグメントが「割り当てられ」)、又は、セグメントを分析し、割り当て先のビンの中のデータ(例えば既に存在するデータ)と特性が同様であることに基づいて、セグメントをビンに割り当てることができる。
【0257】
ステップ1940で、ビン毎に、そのビンに含まれるデータを使用して、表された心周期の関連時間セグメントに対する心臓房室の解剖学的モデルを作成する。いくつかの実施形態では、本明細書で説明したとおりに、及び/又は2016年9月23日に出願した「Cardiac Analysis User Interface System and Method」という名称の本出願の出願人の同時係属の米国特許出願第15/128,563号を参照して解剖学的モデルを作成する。この文献の内容は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。いくつかの実施形態では、単一の時間セグメント、例えば収縮期又は拡張期を表す時間セグメントを表す、単一のビンから作成されたモデルを含む、「基礎モデル(foundational model)」を作成する。この基礎モデルに基づいて、例えば共形メッシュ(conformal mesh)を使用することによって、残りのビンを表す解剖学的モデルを作成することができる。基礎モデルのそれぞれの頂点を、その垂直軸に沿って内側及び外側に投影することができ、後続のビンの中のデータを一致させ、及び/又は後続のビンの中のデータを少なくとも近似するように、例えばそれぞれのビンの中のデータを表す解剖学的モデルを基礎モデルに基づいて作成するように、それぞれの頂点をその投影に沿って調整することができる。1つ以上の平滑化フィルタ使用して、作成した解剖学的モデルを改良する(例えば滑らかにする)ことができる。例えば、低域フィルタを使用して、それぞれの解剖学的モデルの全体にわたって、それぞれの解剖学的モデルのそれぞれの頂点の位置を、固定された位置(例えば座標の原点)からそれぞれの頂点までの距離に基づいて調整することができる。このようなフィルタリングは、例えばステップ1950で解剖学的モデルが動的モデル(本明細書では拍動心臓モデルとも呼ぶ)として表示されたときに、「より滑らか」でかつ/又はよりまとまりのある運動を生み出すことができる。
【0258】
ステップ1950で、心周期の時期をそれぞれが表す連続解剖学的モデルを動的モデル
として表示する。いくつかの実施形態では、本明細書で説明した記録された心臓活動データに基づいて計算されたデータなどの電気データ(例えば電圧データ、双極子密度データ及び/又は表面電荷データ)を、この動的モデルに重ね合わせる。重ね合わされた画像は、電気-機械的結合及び/又は遅延などの記録された解剖学的構造の1つ以上の特性をオペレータが視覚化することを可能にする。いくつかの実施形態では、システム100が、動的モデルを表すデータを処理して、電気活動並びに/又は解剖学的構造のサイズ、形状及び/若しくは運動に関する1つ以上のメトリック(metric)を決定する。例えば、システム100は、駆出率、一回拍出量、房室体積、房室寸法、局部壁変位、速度、又は機能若しくは剛性の損失の他の指標/表現などのうちの1つ、2つ又は3つ以上を測定及び/又は表示することができる。システム100は、房室体積(例えば心房体積)などのある種の生理的パラメータを、時間の関数として計算及び表示することができる。例えば、心房又は他の房室体積を、房室体積を時間に対して表すグラフに(例えば曲線として)提示することができる。それぞれの頂点又は部位における壁の変位又は速度などの機能特性を(時間窓を横切って瞬時に)、収縮性の表現(例えば指標)を示すマップ(例えばカラーマップ)として表示することができる。同様に、アブレーション手技などの臨床事象の前後の機能特性の差及び/又は変化を、その臨床事象が原因で機能が変化した部位を示すカラーマップとして表示することができる。それに加えて又はその代わりに、組織応力若しくは歪み、血液速度、局部壁収縮性又は機能若しくは剛性の損失の他の指標/表現などの1つ以上の表面動力学的特性を測定及び/又は表示することもできる。
【0259】
患者の心臓のサイズ、形状及び/又は運動に関係したメトリックを、例えば上で説明した動的モデルを作成することによって決定するように、システム100を構成することができる。システム100は、これらのメトリックの評価を、(例えばプロセッサ26又はコンソール20の他の構成要素の)安全アルゴリズムの一部として実行することができる。この安全アルゴリズムは、絶え間なく実行することができ、又は、少なくとも、心臓アブレーション装置(例えば心臓内アブレーションカテーテル又は心外膜アブレーション装置)を使用して実行される心臓手技などの手技が患者に対して実行されているときに実行することができる。心臓アブレーション装置は、コンソール20に接続することができ(例えばアブレーション装置にエネルギーを供給するようにコンソール20が構成されているとき)、又は、コンソール20に動作可能に接続されたエネルギー送達装置に(例えば心臓アブレーション装置へのエネルギー送達をコンソール20が制御することができるような態様で)接続することができる。安全でない条件又は他の望まれていない条件が検出されたとき、システム100は、(例えばユーザインタフェース27の可聴、視覚及び/若しくは触覚ユーザ出力構成要素を介して)ユーザに警告を発し、並びに/又は心臓アブレーション装置の動作を調整する(例えば停止させる、又は少なくとも低減させる)ことができる。例えば、(例えば心膜出血に起因する)タンポナーデ(tamponade)、脳卒中、安定した血流力学的条件からの逸脱、駆出率の低下、一回拍出量の低下、壁運動の低下、房室体積の望ましくない低下(例えば平均房室体積の望ましくない低下)、房室体積の望ましくない増大(例えば平均房室体積の望ましくない増大)、及びこれらの組合せからなるグループから選択された望ましくない条件を検出するように、システム100を構成することができる。この望ましくない条件は、大域心臓房室特性(すなわち房室全体)の条件、又は局部心臓房室特性(例えば房室壁の部分)の条件であり得る。いくつかの実施形態では、望ましくない条件が、タンポナーデにつながる出血と相関し得る心房充填の低下を示す心房体積の低下(例えば類似の心拍数における心房体積の低下)である。いくつかの実施形態では、(例えば後に説明するように)タンポナーデを検出し、ユーザに警告を発し、並びに/あるいは出血及び/又はタンポナーデを管理するための血液凝固薬又は他の治療(他の薬物若しくは介入的治療)を送達する(あるいはそのような送達を引き起こす)ように、システム100が構成される。
【0260】
いくつかの実施形態では、ユーザが、例えば図21を参照して後に説明するように、例
えばメッシング及び/又は平滑化技法を使用して、連続解剖学的モデルの1つ以上を改良することができる。
【0261】
次に図20を参照すると、心臓活動データを記録し、データの「スナップショット(snapshot)」に基づいて心臓(例えば心臓の房室)の解剖学的モデルを更新する、本発明の概念と整合した方法が示されている。方法2000は、心臓活動データを記録し、心臓の解剖学的モデルを作成すること、壁位置データを含む心臓活動データの「スナップショット」を記録すること、記録したデータをフィルタリングすること、データのスナップショットから、記録された解剖学的構造のサイズ及び形状の近似値を決定すること、並びに解剖学的構造の近似されたサイズ及び形状に基づいて解剖学的モデルを更新することを含む。
【0262】
ステップ2010で、システム100の1つ以上の記録装置(例えばカテーテル10)を使用して記録されたデータなどの心臓活動データを、本明細書で説明したとおりに記録し、心臓のベース解剖学的モデルを作成する。電極アレイ12は、1つ以上の電極12a及び/又は1つ以上の超音波変換器12bを備えることができる。システム100は、心臓房室内の電極アレイ12の位置を決定し(すなわち患者の体内で生成された位置特定場に対するアレイ12の位置及び向きを決定し)、患者の心臓活動データを記録するように構成される。1つ以上の超音波変換器12bを介して心臓壁位置データ(「解剖学的」データ)を、本明細書で説明したとおりに記録することができる。同時に(又は比較的に同時に、例えば交互配置されたパターンで)、1つ以上の電極12aを介して心臓電気活動データ(「生体電位」データ)を、やはり本明細書で説明したとおりに記録することができる。第1の時間の間、例えば少なくとも5秒、15秒若しくは30秒の間、又は1分未満若しくは5分未満の間、データの第1のセットを記録することができる。記録したデータの第1のセットを使用して、心臓(例えば記録したデータの供給元である心臓の房室)の静的解剖学的モデル、例えば収縮期、拡張期における房室の形状及び/又はこれらの2つの時期間の中間形状を表すモデルを作成する。この静的モデルを作成する方法は、本明細書、及び2016年9月23日に出願した「Cardiac Analysis User Interface System and Method」という名称の本出願の出願人の同時係属の米国特許出願第15/128,563号に記載されている。この文献の内容は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。いくつかの実施形態では、方法2000の前及び/又は最中に記録されたCT及び/又はMRIデータから、この解剖学的モデルを作成する。あるいは、この解剖学的モデルは、方法2000によって更新されるように構成された総称解剖学的モデルを構成することができる。いくつかの実施形態では、ユーザが、例えば図21を参照して後に説明するように、例えばメッシング及び/又は平滑化技法を使用して、静的解剖学的モデルを改良することができる。
【0263】
ステップ2020で、第2の時間の間、例えば第1の時間よりも短い時間の間、データの第2のセットを記録することができる。第2の時間が0.5秒よりも短い時間、例えば100ミリ秒未満又は30ミリ秒未満の時間を含むときなど、いくつかの実施形態では、記録したデータの第2のセットが、心臓房室の瞬間的な「スナップショット」を表す。記録された第2のデータセットは、96個未満のサンプル(すなわち96個未満の超音波測定値)を含むサンプリングなど、心臓房室のまばらな(sparse)サンプリングを含むことができる。記録された第2のデータセットは、例えば解剖学的構造のまばらなサンプリングから解剖学的構造のサイズ及び/又は形状を後に説明するようにして近似することを可能にするために、電極アレイ12から同時に及び/又はほぼ同時に多数の方向に測定された多数の超音波測定値を含むことができる。
【0264】
ステップ2030で、記録された第2のデータセットをフィルタリングし、及び/又は
他の手法で操作することができる。いくつかの実施形態では、(例えば超音波パルス又は「ピング(ping)」に反応した反射が検出されなかった場合に)1つ以上の超音波反射がデータセットから失われることがあり、それらの欠測データを次に説明するようにして「埋める」ように、システム100を構成することができる。いくつかの実施形態では、固定値、例えばデータセットに対して実行される後続の計算の負の影響を最小化するようにシステム100によって決定された固定値、例えば解剖学的構造の「中間」又は中立(収縮期でも拡張期でもない)位置を表す固定値を挿入することができる。いくつかの実施形態では、過去の平均値(historic average value)に基づく(例えば第1のデータセットからの平均値に基づく)固定値を挿入して、欠測データ点を置換することができる。いくつかの実施形態では、「最も最近の」有効なデータ点(例えば欠測データがある変換器から最も最近に記録された有効なデータ点)など、過去の単一の値に基づく固定値を挿入することができる。いくつかの実施形態では、フィッティングアルゴリズム、例えば補間アルゴリズム、例えば線形、スプライン、区分的連続及び/又は他の補間法を使用するアルゴリズムを使用して、欠測データを挿入することができる。いくつかの実施形態では、データセット内の有効なデータの1つ以上のサブセットに基づくアルゴリズムなどの適応及び/又は機械学習アルゴリズムによって決定された値に基づいて、欠測データを挿入することができる。
【0265】
ステップ2040で、記録された第2のデータセットによって表された解剖学的構造のサイズ及び/又は形状を決定する。いくつかの実施形態では、凸包(convex hull)などの「エンベロープ型」アルゴリズムを実施して、解剖学的構造のサイズ及び形状の粗い推定を、複雑な形状内の全ての測定超音波点をカプセル化することにより決定することができる。その代わりに又はそれに加えて、第1のデータセットから作成された静的モデルに応力/歪みモデルを適用することができ、第2のデータセットを使用して、応力/歪みモデルにプッシュ/プルアルゴリズムを適用して、例えば「瞬時」点の第2のデータセットに対する応力/歪みモデルの適合(conforming)「フィット」を見つけることができる。
【0266】
いくつかの実施形態では、頂点POriginal(x,y,z)のメッシュによってこの静的モデルを表すことができ、頂点POriginal(x,y,z)は、下式によってPInstant(x,y,z)に「更新する」ことができる。
Instant(x,y,z)=POriginal(x,y,z)+ΔP
上式で、ΔPは、記録された第2のデータセットを使用することによって推定され、POriginal(x,y,z)のそれぞれの頂点の変化は局所垂直方向に拘束される。ΔPは、関数の組合せ、すなわち重み付けパラメータλnを有する大域解剖学的構造フィット、局部解剖学的構造フィット、時間的平滑化及び空間的平滑化の組合せと定義することができる。
ΔP=λ(FGlobalFit)+λ(FRegionalFit)+λ(FSpatialSmoothing)+λ(FTemporalSmoothing
【0267】
例えば、大域フィット関数は、解剖学的構造上の最も近い位置までのそれぞれの超音波データ点の平均又はメジアン離間距離を使用して実施することがきる。局部フィッティングを使用して、それぞれの超音波点と解剖学的構造上の頂点との間の関係を構築することができる。この関係は、第2のデータセットの全ての超音波点と静的モデルの頂点との間の関数(例えば逆距離(inverse distances)又はガウス)を定義することによって構築することができる。測定値と解剖学的構造の間のこの関係を構築した後、解剖学的構造を変形させることができる。λ値は、解の異なる態様に重きを置き、又はそれ自体が頂点の関数であることができ、超音波測定値の信頼によって若しくは最も近い超音波測定値の距離によって設定することができる。
【0268】
いくつかの実施形態では、頂点POriginalのメッシュによってこの静的モデルを表すことができ、頂点POriginalは、下式によってPInstant(t)に「更新する」ことができる。
Instant(t)=POriginal+ΔP(t) (1)
【0269】
上式で、ΔPは、全ての瞬時超音波データ点(点の第2のデータセット)又は瞬時超音波データ点のサブセットを使用することによって推定される。式(1)の定式化は、静的メッシュが変形可能なメッシュになることを可能にし、この変形は、心臓壁位置の変化(したがって収縮性及び体積)に関係した超音波距離データの変化に起因する。いくつかの実施形態では、頂点よりも少ない超音波データ点が存在し、したがって、大部分の位置においてΔP(t)を推定する必要がある。
【0270】
未知のΔP(t)は、補間及び/若しくは補外法、エネルギー関数の最小化、並びに/又は応力歪み関係などのデータモデルを使用して推定することができる。補間及び/又は補外法は、逆距離重み付け、最近傍逆距離重み付け、基底関数補間、及び/又はクリギング(kriging)を含むことができる。基底関数補間実施態様は、(球面調和基底関数などの)基底関数を定義すること、及びこれらの関数を使用して未知のデータ点を推定することを含むことができる。エネルギー(費用関数)定式化を使用して、瞬時エネルギーを最小化するΔP(t)を決定することもできる。
【数25】
【0271】
上式では、重みwを有する異なるエネルギーEを定義することができ、重みwは、全エネルギーに対するこのエネルギー項の相対的な影響を示す。重み項wを、他の測定可能な量の関数とすることもできる。エネルギー項の例を、超音波距離データと解剖学的構造上の対応する頂点との間の誤差と定義することができるEdatafitとすることができる。別のエネルギー項を、元の解剖学的構造の空間的傾きからの偏差と定義することができるEOriginalShapeとして定義することができる。次いで、これらの項を有する全体エネルギーを以下のように定義することができる。
【数26】
【0272】
モデルベースの変形手法は、解剖学的構造の応力/歪みモデルを定義することを含むことができる。変形が分かれば、それぞれの位置における応力/歪みを推定することができる。次いで、応力/歪みを補間すること、又はそれぞれの頂点における応力及び歪みを決定するためにエネルギー関数を構築し、最小化することができる。次いで、推定される応力/歪みに対応するように、頂点の位置を更新することができる。全ての頂点及び時点に対してΔP(t)を計算した後、瞬時血液量、能動及び受動血液量排出、並びに/又は局部ベースの収縮性などのいくつかのメトリックを計算することができる。
【0273】
いくつかの実施形態では、補間ベースの変形可能なメッシュが、次に説明するように構成される。それぞれの瞬間に、心臓房室内の超音波変換器の座標を決定する。それぞれの瞬間に、超音波変換器の場所のMモード線及び超音波距離データUSposを定義するベクトルvecを、超音波変換器毎に決定する。Mモード超音波変換器と静止心臓解剖学的構造との交点を決定する。超音波ベクトル(vec)と解剖学的構造の交点に最も
近い頂点vertexを決定する。超音波距離データUSposとvertexとの間の距離distを計算する。dist及びvertexにおいて垂直な局所表面の投影としてΔP(n,t)を割り当てる。有効な超音波データに対する全てのΔP(n,t)を決定した後、残りの頂点に対する補間を、最近傍逆距離スケーリングを用いて決定する。全ての瞬間の更新された頂点位置を用いて、解剖学的構造の体積を計算する。
【0274】
ステップ2050で、図19のステップ1950を参照して上で説明したのと同様の方式で、第1のデータセットに基づいて動的解剖学的モデルを表示し、第2のデータセットによって動的解剖学的モデルを更新することができる。
【0275】
次に図21を参照すると、心臓の解剖学的モデルを作成及び編集する、本発明の概念と整合した方法が示されている。方法2100は、壁位置データを含む心臓活動データの第1のセットを記録すること、心臓活動データの第1のセットに基づいて、心臓(例えば心臓の房室)のベース解剖学的モデルを作成すること、追加の心臓壁位置データを収集し、ベース解剖学的モデルを更新すること、及びベース解剖学的モデルを、例えばグラフィカルユーザインタフェースを介して編集することを含む。
【0276】
ステップ2110で、システム100の1つ以上の記録装置(例えばカテーテル10)を使用して記録されたデータなどの心臓活動データの第1のセットを、本明細書で説明したとおりに記録する。電極アレイ12は、1つ以上の電極12a及び/又は1つ以上の超音波変換器12bを備えることができる。システム100は、心臓房室内の電極アレイ12の位置を決定し(すなわち患者の体内で生成された位置特定場に対するアレイ12の位置及び向きを決定し)、患者の心臓活動データを記録するように構成される。1つ以上の超音波変換器12bを介して心臓壁位置データ(「解剖学的」データ)を、本明細書で説明したとおりに記録することができる。同時に(又は比較的に同時に、例えば交互配置されたパターンで)、1つ以上の電極12aを介して心臓電気活動データ(「生体電位」データ)を、やはり本明細書で説明したとおりに記録することができる。本明細書で使用されるとき、解剖学的データは、システム100によって、例えば電極アレイ12又はシステム100の他のデータ収集装置によって収集されたデータであって、解剖学的モデルを作成するために使用される任意のデータを指すことができる。解剖学的データは、超音波によって測定された表面点(例えば表面位置)を含むデータ、位置特定法を使用して、例えば房室(例えば少なくとも収集された電極位置の凸包の体積を含む心臓房室)内の電極の位置を時間を追って追跡することによって決定された体積データ、位置特定システムとともに使用されるシステム100の接触感知カテーテルによって収集されたデータ点など、位置特定法を使用して収集された表面点を含むデータ、MRI及び/又はCTデータなど、(例えば外部視覚化装置を使用して)体外から測定されたデータ、並びにこれらのうちの1つ以上のデータの組合せからなるグループからのデータを含むことができる。
【0277】
ステップ2120で、(例えば3D表面を定義する一組の頂点及び多角形を含む)心臓のベース解剖学的モデルを、記録されたデータの第1のセットに基づいて作成する。後に説明するように、方法2100は、心臓(例えば記録したデータの供給元である心臓の房室)の静的解剖学的モデル、例えば収縮期、拡張期における房室の形状及び/又はこれらの2つの時期間の中間形状を表すモデルを作成及び編集するために使用される。この静的モデルを作成する方法は、本明細書、及び2016年9月23日に出願した「Cardiac Analysis User Interface System and Method」という名称の本出願の出願人の同時係属の米国特許出願第15/128,563号に記載されている。この文献の内容は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。さらに、本明細書で説明した動的モデルなどの房室の動的モデルを作成及び編集するために、方法2100を繰り返す(例えば心周期の連続する時期を表す連続静的解剖学的モデルに沿って繰り返す)ことができる。いくつかの実施形
態では、このベース解剖学的モデルが、MRI及び/又はCTなどの外部画像化源からシステム100にインポートされた解剖学的モデルを含む。
【0278】
いくつかの実施形態では、静的解剖学的モデルが、一組の点を収集している間又は収集した後にその一組の点の周囲に複雑な3D幾何学的構造を例えばアルファシェイプ法及び/又は「成長(growth)」法を使用することによって「構築する」方法を使用して作成されたモデルを含む。例えば、拡張期(すなわち心筋が弛緩し、房室に血液が充満することを許し、房室の大きさが最大になる心拍の時期)中の房室の静的モデルを、次に説明する成長法を使用して構築することができる。これらの実施形態では、データの第1のセットを記録するときに、一組の点が房室の中だけに存在するとみなし、収集された(異常値を除く)全ての点を含む凸包などのフィッティングアルゴリズムが、心拍の全ての時期の全体にわたって、その最大体積の時期(すなわち拡張期)にある房室を表すとみなすことができる。いくつかの実施形態では、同様の方法を使用することができ、心拍の特定の時期の間(例えば房室の体積が最小になる収縮期の間)に収集された点だけを含めるために、ゲーティング(gating)機構、例えば心臓電気活動データに基づくゲーティング機構を組み込むことができる。
【0279】
ステップ2130で、心臓活動データの第2のセット(「追加」データ)を記録する。この追加データに基づいてベース解剖学的モデルを更新することができる。ベース解剖学的モデルがMRI及び/又はCT画像を含むときなど、いくつかの実施形態では、追加データを使用して、インポートされたモデルを、システム100の座標系内の解剖学的構造に位置合せすることができる。それに加えて又はその代わりに、追加データを使用して、解剖学的モデルの1つのエリアを「埋め」、解剖学的モデルのそのエリアの分解能を増大させることもできる。例えば、システム100は、低データ密度のエリア(例えばまばらにサンプリングされたエリア)があることを(例えばユーザインタフェースを介して)ユーザに知らせることができる。ユーザは、例えば示されたエリアに「向かって」カテーテル10を誘導(例えば操縦)し、追加データを記録することによって、そのエリアに相関する追加データを収集することができる。収集した追加データを、データの第1のセットとともに編集して、改良されたベース解剖学的モデルを作成することができる。あるいは、この追加情報を使用してベース解剖学的モデルを更新することもできる。いくつかの実施形態では、例えばモデルの発行をユーザが疑っているときに、ユーザが、1つのエリアを再サンプリングすることができる。この追加データを使用して、ベース解剖学的モデルの正確さを確認すること、及び/又はベース解剖学的モデルを更新することができる。
【0280】
ステップ2140で、システム100は、ベース解剖学的モデルを、例えばグラフィカルユーザインタフェース及び1つ以上のユーザ入力装置、例えばマウス、キーボード、タッチスクリーンディスプレイを介して編集する、1つ以上の手動及び/又は自動ツールを提供することができる。後に説明するように、システム100に含まれる及び/又はシステム100によって可能にされる制御、プログラム及び/又はアルゴリズムを使用して、ユーザ「アクション」を実行する。いくつかの実施形態では、例えば肺静脈及び/又は左心耳を表すために、ベース解剖学的モデルに1つ以上の構造(例えば「解剖学的投影」)を追加することが有利となり得る。システム100は、ユーザが、「単純な」幾何学的投影(例えばまっすぐな経路若しくはほぼまっすぐな経路に沿って投影されたベース形状を有し、投影に沿ったベース形状の変化がほとんど若しくは全くない投影)を追加すること、及び/又はベース解剖学的モデルを変形させるためにユーザ定義のベクトルに沿って「応力」を追加することによって形成された投影などのより複雑な幾何学的投影を追加すること可能にする。これらの両方の投影については後に定義する。
【0281】
いくつかの実施形態では、ユーザが、ベース解剖学的モデルに追加する投影を、投影の交点、投影のベクトル(方向及び長さ)及び投影の形状を入力することにより定義する。
交点は、ベース解剖学的モデルの頂点を選択することによって選択することができる。ユーザは、スクリーン上の特定の位置でベース解剖学的モデルの向きを定めることによって(例えば所望のベクトルが「上」方向若しくはスクリーンの「内部」を向くようにモデルを回転させることによって)、又は所望のベクトルを「描く」ことによって(例えば第1の点及び第2の点を選択することにより3D空間に線を引くことによって)、又はベクトルを定義する他の任意の方法によって、投影のベクトルを定義することができる。ユーザは、例えば(ベクトルの長さを変化させるために)ベクトルの終点をベクトルの方向に沿って「ドラッグする」ことによって、又は(ベクトルの方向及び/若しくは長さを変化させるために)ベクトルの終点を空間内で自由に「ドラッグする」ことによって、ベクトルの長さ及び方向を調整することができる。ユーザは次いで、ベクトルに沿って投影するベース形状を、形を描くことによって、又はベース解剖学的モデルの一部分を強調することによって、又はベース解剖学的モデルの部分(例えば1つ以上の頂点及び/若しくは多角形)を選択することによって定義することができる。ユーザは、システム100によって提供される1つ以上の描画ツールを使用して、例えば円、楕円若しくは他の定義された形状又は自由な形状を描くことによって、ベース形状を定義することができる。この描かれた形状をベクトルに沿って投影して、投影内に入れられた解剖学的モデルの頂点を選択すること、及びそれらの頂点をベクトルに沿って投影して、ベースモデルに追加する最終的な投影を形成することができる。いくつかの実施形態では、この投影がユーザ定義の形状に従い(例えばシステムが、この投影を、取り囲まれた頂点だけに限定せず)、システムは、フィッティング関数(例えばフィレット(fillet))を実行して、ベースモデルと投影の間の遷移を近似する。いくつかの実施形態では、「絵筆に似た(paintbrush-like)」機能を使用してベースモデルの頂点を選択する(又は選択から外す)粗(gross)選択ツールを使用することによって、ユーザが投影のベースを定義することができる。それに加えて又はその代わりに、この粗選択ツールは、選択された一群の頂点に取り囲まれた頂点を自動的に選択する「投げ縄」タイプの編集機能を含むこともできる。それに加えて又はその代わりに、ユーザは、ベース解剖学的モデルの頂点及び/又は多角形を例えば細(fine)選択ツールを用いて個別に選択することによって、投影のベースを定義することもできる。
【0282】
いくつかの実施形態では、ベース解剖学的モデルの頂点の投影は、システムが、改良された解剖学的モデルを、単一の「メッシュ」(3D表面を定義する一組の多角形)として、解剖学的構造の残りのベースモデルを用いて投影が処理されるような態様で処理する(例えば改良する)ことを可能にする。処理は、限定はされないが、平滑化、再メッシング(remeshing)、細分、穴の閉鎖、分離された(isolated)又は浮いている(floating)三角形の識別及び除去などを含むことができる。それに加えて又はその代わりに、改良された解剖学的モデルを処理するときにユーザ定義の構造が変更されないような態様で、ベースモデルの残りの部分とは別に投影を処理することもできる。
【0283】
いくつかの実施形態では、システム100が、以下のアクションのうちの1つのアクションをユーザが実行することを可能にする:生成された投影を確認する(例えば改良されたモデルへの投影を保存する)アクション、生成された投影及び/又は投影を生成するのに使用した解剖学的点をクリアし、新たな投影を生成するアクション、モデル上の電気活動の表示に対する投影の「振舞い(behavior)」を定義する(例えば電気活動を表示しない解剖学的モデルの「穴」として投影を取り扱う)アクション、構造の長さ、断面のスケーリング、交点及び/又はベクトル方向などの投影の幾何学的パラメータを変更するアクション、以前に生成された構造を削除するアクション、解剖学的点を消去するアクション、投影及び/又は解剖学的モデルの他の部分のセクションを除去するアクション、マウスなどのユーザ入力装置を使用して頂点又は多角形を「プッシュ又はプルする」ことにより、それらの要素の領域を変更するアクション、及びこれらのうちの1つ以上のア
クションの組合せ。
【0284】
改良された解剖学的モデルを作成するステップのうちの1つ以上のステップを半自動的に及び/又は自動的に(本明細書では「自動的に」)実行することができる。いくつかの実施形態では、システム100によるベースモデルの自動変更をユーザが無効にすることができる。いくつかの実施形態では、投影の方向、形状、サイズ、長さ、断面積、位置及び/又は交点などの投影を定義するパラメータのうちの1つ以上のパラメータを、解剖学的データの第1のセットなどの1つ以上の入力に基づいて、システム100が自動的に定義することができる。いくつかの実施形態では、上で説明したとおり、ユーザが、解剖学的モデルを更新するための追加のデータ点を収集することができ、システム100は、例えばモデルに投影を追加することによって、解剖学的モデルを自動的に更新することができる。システム100は、この追加データに基づいて、モデルを、データの増分取得(incremental acquisition)に基づく(例えば、モデルの更新を保証するために、どれくらい速くデータが収集されるのか、及び/又はシステム100によってどれくらい速く追加データが決定されるのかに基づく)1ミリ秒から10秒に1回、例えば100ミリ秒又は500ミリ秒に1回の割合で更新することができる。システム100は、追加データが投影と相関しているかどうかを、データの1つ以上の特性に基づいて判定することができる。例えば、追加データだけが、ベース解剖学的モデルからの投影として最も良くモデル化された解剖学的構造のセグメントと主として相関する一組のデータを構成することができ、そのデータは、1つ以上の主成分を含む形状(例えば解剖学的構造を近似する形状)を表す。
【0285】
これらの1つ以上の主成分を抽出し、解剖学的モデルに追加する投影の1つ以上の特性を決定するように、システム100を構成することができる。例えば、データの主成分ベクトルを使用して、構造の1次軸を決定することができる。1次方向ベクトルとベース解剖学的モデルとの交点によって、投影の交点を決定することができる。追加データの断面、外側境界線又は他の尺度によって、投影の形状を決定することができる。投影のパラメータを決定する断面又は外側境界線の方法は、交点においてベースモデルに対して垂直な平面及び/又は追加データの方向ベクトルに対して垂直な平面を利用して、投影の形状を決定することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法が、交点からしきい値の範囲内にあるベースモデルの頂点のサブセットを利用して、投影を定義することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法が、ベースモデルの「外側」にあると判定された追加データのサブセットだけを利用することができる。いくつかの実施形態では、投影が、追加データ中の1つの点とベースモデルの最も近い頂点との間のベクトルと、そのベースモデル頂点からの法線ベクトルとの点乗積に基づくことができる。
【0286】
いくつかの実施形態では、以下で説明する境界法(bounding method)を使用してシステム100が投影を追加する。(例えばデータの第1のセット及び集められた任意の追加データからの)全ての解剖学的構造データ「点」のセットの境界となる凸包を使用して、境界面(bounding surface)を決定する。一組の解剖学的構造点の境界となるアルファシェイプを使用して境界面を決定する。データから内部頂点及び三角形を除く。ベース解剖学的モデルの内部にあると判定された点のサブセット、又はベース解剖学的モデルの表面からある距離以内にある点のサブセットなどのデータのサブセットを、生成する投影から除外することができる。境界面が交差するベース解剖学的モデルの頂点のサブセット(「パッチ」)をベース解剖学的モデルから除き、生成された構造をそれによって結合する穴及び/又は境界を生成する。ベース解剖学的モデル上に生成された穴の境界と生成された構造の縁をブレンドして、「水密(water-tight)」境界(例えば継目のない境界)を生み出すことができる。いくつかの実施形態では、改良された解剖学的モデルから、システム100が、改良された新たな解剖学的モデルを生成し、投影の追加によって生成される任意の潜在的な穴を埋める新たなアルファシ
ェイプを計算することができる。いくつかの実施形態では、追加データの取得及び/又は頂点若しくはデータ点の(例えばユーザによる)消去によって、自動化された解剖学的モデルを動的に変更又は更新することができる。
【0287】
以上では、最良の形態及び/又はその他の好ましい実施形態と考えられるものについて説明したが、それらの形態及び実施形態に様々な変更を加えることができること、様々な形態及び実施形態で本発明を実施することができること、並びに多数の用途にそれらを適用することができることが理解される。本明細書にはこれらのうちの一部だけが記載されている。以下の特許請求項は、それぞれの特許請求項の範囲に含まれる全ての変更及び変形を含め、字義通りに記載されたもの及びそれらの全ての等価物を請求することが意図されている。
図1
図1-1】
図2
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図4-2】
図4-3】
図5
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