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特許7236520微細構造ファイバおよびスーパーコンティニューム光源
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】微細構造ファイバおよびスーパーコンティニューム光源
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/365 20060101AFI20230302BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20230302BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
G02F1/365
G02B6/036
G02B6/02 411
G02B6/02 376B
G02B6/02 451
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021180455
(22)【出願日】2021-11-04
(62)【分割の表示】P 2020018673の分割
【原出願日】2015-03-25
(65)【公開番号】P2022010036
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】PA201470146
(32)【優先日】2014-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】506179491
【氏名又は名称】エヌケイティー フォトニクス アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】NKT PHOTONICS A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】リングソー、イェンス クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブセン、クリスティアン
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-177817(JP,A)
【文献】特表2004-522195(JP,A)
【文献】特開2011-027866(JP,A)
【文献】特表2008-501130(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0194812(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101788695(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02-6/036
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スーパーコンティニューム光生成の光源(100)であって、前記光源は、微細構造光ファイバ(20)と、励起波長にて励起放射を生成するとともに、その入力端で前記微細構造光ファイバに前記励起放射を入射するように構成されている励起レーザ光源と、を備えており、前記微細構造光ファイバは、長さと、前記長さに沿った長手方向軸線とを有するとともに、コア領域(22)と、該コア領域を包囲しているクラッド領域(24)とを備えており、前記クラッド領域が、クラッド背景材料と、該クラッド背景材料内の複数のクラッド特徴部(21,26)とを有しており、該クラッド特徴部が前記コア領域の周りに配置されており、前記クラッド領域が、前記微細構造光ファイバの少なくともある長さ部分において、第1の特性径(d)を有するクラッド特徴部の内側リングを含む内側クラッド領域(27)と、平均径(d)を有する外側クラッド特徴部の3つの外側リングを含む外側クラッド領域(28)とを有しており、前記内側クラッド領域が前記コア領域に隣接しているとともに前記外側クラッド領域が前記内側クラッド領域に隣接しており、クラッド特徴部の各リングが、該リングの隣り合う特徴部を隔離しているクラッド背景材料のブリッジを有しており、前記内側リングのブリッジが平均最小幅(w)を有し、各ブリッジの最小幅が、リングの2つの隣り合う特徴部の間の最短距離であり、前記3つの外側リングのブリッジの平均最小幅(w)が前記内側リングのブリッジの平均最小幅(w)より少なくとも10%大きく、前記内側リングが、前記コア領域に最も近いクラッド特徴部のリングを含み、前記コア領域が少なくとも2μmの径を有し、前記微細構造光ファイバは、前記励起放射が前記微細構造光ファイバに入射すると、500nm未満の短波長の光を含むスーパーコンティニューム放射を提供するように構成されている、スーパーコンティニューム光生成の光源。
【請求項2】
前記コア領域に最も近い前記内側リングのブリッジの平均最小幅(wが1.2μm以下であ、請求項1に記載のスーパーコンティニューム光生成の光源。
【請求項3】
前記コア領域に最も近い前記内側リングのブリッジが略等しい最小幅(w)を有する、請求項1又は2に記載のスーパーコンティニューム光生成の光源。
【請求項4】
前記外側クラッド領域における前記3つの外側リングのブリッジの平均最小幅(w)が、1μmより大き、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスーパーコンティニューム光生成の光源。
【請求項5】
前記第1の特性径(d)が前記外側クラッド特徴部の平均径(d)よりも少なくとも10%大き、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスーパーコンティニューム光生成の光源。
【請求項6】
前記コア領域がコア背景材料を有しており、該コア背景材料にはドーパント材がドープされているため、ドープされていないコア背景材料と比較して前記コア領域の屈折率が低、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のスーパーコンティニューム光生成の光源。
【請求項7】
前記内側クラッド領域の内側クラッド特徴部が第1ピッチ(Λ)にて配置され、前記外側クラッド領域の外側クラッド特徴部が第2ピッチ(Λ)にて配置され、前記内側クラッド領域の内側クラッド特徴部が第1の相対的クラッド特徴部寸法(d/Λ)を有し、前記外側クラッド領域の外側クラッド特徴部が第2の相対的クラッド特徴部寸法(d/Λ)を有し、前記第1の相対的クラッド特徴部寸法と第2の相対的クラッド特徴部寸法との間の差(d/Λ-d/Λが0.1よりも大き、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のスーパーコンティニューム光生成の光源。
【請求項8】
前記第1の特性径が1.5μmよりも大きく、前記第1の特性径(d)と前記外側クラッド特徴部の平均径(d)との間の差が0.3μmよりも大き、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のスーパーコンティニューム光生成の光源。
【請求項9】
前記内側クラッド領域の内側クラッド特徴部が第1ピッチ(Λ1)にて配置され、前記外側クラッド領域の外側クラッド特徴部が第2ピッチ(Λ2)にて配置され、前記第2ピッチが第1ピッチよりも大き、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のスーパーコンティニューム光生成の光源。
【請求項10】
前記クラッド特徴部の屈折率が前記クラッド背景材料の屈折率より低、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のスーパーコンティニューム光生成の光源。
【請求項11】
前記微細構造光ファイバが860nm~1400nmのゼロ分散波長を有し、該ゼロ分散波長において前記微細構造光ファイバがシングルモードであ、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のスーパーコンティニューム光生成の光源。
【請求項12】
前記励起放射が、1000nm~1100nmである励起波長を有する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のスーパーコンティニューム光生成の光源。
【請求項13】
前記微細構造光ファイバがカスケード光ファイバであり、励起レーザが前記カスケード光ファイバの第1微細構造光ファイバの入力端に励起放射を入射するように構成され、前記カスケード光ファイバは、
a.前記長さ部分を含む前記微細構造光ファイバの形態である前記第1微細構造光ファイバと、
b.第2光ファイバであって、該第2光ファイバの長手方向軸線に沿って光を伝送可能な第2コア領域と、該第2コア領域を包囲している第2クラッド領域とを有している第2光ファイバと、を備え、
前記第1微細構造光ファイバのモードフィールド径が、前記第2光ファイバのモードフィールド径よりも大きく、前記第1微細構造光ファイバが、前記第2光ファイバに光学的に接続されている、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のスーパーコンティニューム光生成の光源。
【請求項14】
前記微細構造光ファイバは、第1および第2ファイバ部分を有するカスケード光ファイバであり、
a.前記第1ファイバ部分は、シングルモード光ファイバを有し、前記シングルモード光ファイバは、該シングルモード光ファイバの長手方向軸線に沿って光を伝送可能であるコア領域と、小さいクラッド特徴部を有するクラッド領域とを有し、
b.前記第2ファイバ部分は、該第2ファイバ部分の長手方向軸線に沿って光を伝送可能であるコア領域と、大きなクラッド特徴部を有するクラッド領域とを有している、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のスーパーコンティニューム光生成の光源。
【請求項15】
スーパーコンティニューム光が、実質的に前記微細構造光ファイバの基本モードのみに限定して生成される、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のスーパーコンティニューム光生成の光源。
【請求項16】
内視鏡検査、外科的顕微鏡検査、共焦点顕微鏡検査、光コヒーレンストモグラフィー(OTC)、マルチモード照射、自己蛍光、蛍光寿命イメージング測定(FLIM)、全反射照明蛍光(TIRF)顕微鏡検査、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ブロードバンド分光法、ナノフォトニクス、フローサイトメトリー、工業検査、リングダウン分光法、分析分光法、分子イメージング、光遺伝学、ディスプレイ、拡散成分特性評価、太陽電池特性評価、量子ドット特性評価、プラズモニクス、分散型フーリエ変換分光法および原子トラップ用途のうちの少なくとも1つにおける使用に適した照射光源であって、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のスーパーコンティニューム光生成の光源を有している照射光源。
【請求項17】
前記照射光源が、前記スーパーコンティニューム光生成の光源によって生成されたスーパーコンティニュームビームをフィルタリングするように構成されている光学フィルタ、及び、光パルスの時間的伸長を行う分散パルス伸長要素のうちの少なくとも1つを備えている、請求項16に記載の照射光源。
【請求項18】
前記スーパーコンティニューム光生成の光源が、生成されたスーパーコンティニューム光のためのファイバ出力端を有し、該ファイバ出力端が、生成されたスーパーコンティニューム光を照射位置に送るためにデリバリファイバに光学的に接続されている、請求項16又は17に記載の照射光源。
【請求項19】
前記スーパーコンティニューム光生成の光源が、生成されたスーパーコンティニューム光のためのファイバ出力端を有し、該ファイバ出力端が、生成されたスーパーコンティニューム光を照射位置に送るためにデリバリファイバに光学的に接続されており、前記デリバリファイバが少なくとも部分的にプローブおよびセンサの少なくとも一方に組み込まれており、前記照射光源が眼科手術で使用するように構成されており、前記デリバリファイバが、手術前および手術中の少なくとも一方において眼球または眼球の内部に照射を行うために少なくとも部分的にプローブに組み込まれている、請求項16乃至18のいずれか一項に記載の照射光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造光ファイバおよびスーパーコンティニューム光源に関する。
【背景技術】
【0002】
微細構造光ファイバは当該技術分野において広く知られており、複数のクラッド特徴部を有しているクラッドによって包囲されたコアを有している。複数のクラッド特徴部は、背景材料内において概して規則的な配列構造に配置されている。これらの特徴部は、空気、気体もしくは液体によって満たされている間隙であってもよく、または、背景材料よりも屈折率の低い固体材料であってもよい。微細構造光ファイバは、「ホーリーファイバ」および「フォトニック結晶ファイバ」とも呼ばれている。例えば、クラッドの実効屈折率がコアの屈折率より低くなるようにクラッドを構成することによって、全反射の一般原理の偏角によって光がコア内を伝送されるように構成できる。
【0003】
微細構造ファイバは石英ガラスから形成してもよい。石英ガラスに他の材料を添加することによって、石英ガラスの屈折率を変更することや、光や感度の増幅等の効果をもたらすことが可能である。
【0004】
クラッド特徴部/孔の中心から中心までの間隔はピッチ(Λ)と称される。微細構造ファイバは、コアの寸法と、クラッド特徴部の間隔もしくはピッチ(Λ)に対するクラッド特徴部の寸法の割合とによって特徴づけられる。クラッド特徴部の寸法およびピッチを調節することによって、ファイバのゼロ分散波長(ZDW)を調節できる。このようにして、微細構造光ファイバのZDWを、一般的に石英ガラスである背景材料のZDWよりも短い波長にすることができる。これによって、所定の波長の励起レーザによって励起された光パルスからスーパーコンティニュームを発生できるようにZDWを調節できる。
【0005】
光パルスが高非線形ファイバ内を伝搬される際には、光パルスの時間発展およびスペクトル発展が多数の非線形効果およびファイバの分散特性の影響を受ける。パルスが十分に強力である場合、パルススペクトルが広がりスーパーコンティニューム光になる。
【0006】
特許文献1には、400nm未満の波長に至るスーパーコンティニュームを生成するように構成された光ファイバが記載されている。7頁29行目から8頁1行目には、特許文献1の微細構造光ファイバ20は、コア径が約4.7μmであり、ピッチΛが約3.7μm、比率d/Λが約0.77であると記載されている。8頁14~22行には、ファイバ20はマルチモードファイバであり、スーパーコンティニュームは最大2550nmの波長に達することが記載されている。励起波長は1064nmである。8頁14行目に記載されているように、ファイバ20は励起波長においてマルチモードである。
【0007】
非特許文献1には、コアの非常に小さい微細構造光ファイバにおいては、相対的に大きい気孔をコアの近傍に配置するとともに小さい気孔をコアから離して配置することによって、ファイバがゼロ分散波長においてシングルモード状態を保ちながらゼロ分散波長を700nm未満とさせることが可能であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2009/098519号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Jacobsenら、「Journal of Optics A: Pure Appl.OPT 6」、2004年、p.604-607、「Very low zero-dispersion wavelength predicted for single-mode modified-total-internal-reflection crystal fibre」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上記の微細構造ファイバおよびスーパーコンティニューム光源をより向上させた微細構造ファイバおよびスーパーコンティニューム光源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題は、適切な励起レーザによって励起された場合に青色波長まで広がるシングルモードスーパーコンティニュームを安定して発生させるために適しており、同時に、スーパーコンティニューム生成に要する高ピークパワー光に起因する劣化に対する耐性の高い光ファイバを提供することである。
【0012】
本発明の一実施形態の課題は、光がファイバの入力端に入射したときに安定した出力をもたらすように構成されている微細構造ファイバを提供することである。
本発明の一実施形態の課題は、スーパーコンティニューム放射光源からの光スペクトルが青色波長まで広がるスーパーコンティニューム放射光源を提供することである。
【0013】
本発明の一実施形態の課題は、比較的大きいコアを有しながらもシングルモードファイバとして機能し続けることができる微細構造光ファイバを提供することである。
本発明の一実施形態の課題は、例えば約400nm~約1700nmのスペクトルにおいて例えば約100nmを超える比較的広い帯域幅の光を伝送可能である微細構造光ファイバを提供することである。
【0014】
本発明の一実施形態の課題は、スーパーコンティニューム放射光源からの光スペクトルが、実質的にファイバの基本モードのみに限定して生成されるスーパーコンティニューム放射光源を提供することである。
【0015】
本発明の一実施形態においては、内視鏡検査、外科的顕微鏡検査、共焦点顕微鏡検査、光コヒーレンストモグラフィー(OTC)、マルチモード照射、自己蛍光、蛍光寿命イメージング測定(FLIM)、分子イメージング、光遺伝学、ディスプレイ、拡散成分特性評価、太陽電池特性評価、量子ドット特性評価、プラズモニクス、分散型フーリエ変換分光法および原子トラップ用途のうちの少なくとも1つにおける使用に適したスーパーコンティニューム光源を提供することを目的とする。
【0016】
上記および他の課題は、特許請求の範囲および以下に記載される本発明およびその実施形態によって達成される。
本発明およびその実施形態は、以下の説明によって当業者に明白となる他の利点を多く備えている。
【0017】
別途明記しない限り、「実質的に」および「略」という用語は、通常の製品差異および公差を含むことを意味する。
別途明記しない限り、コアの寸法、特徴部の径、ブリッジ幅等の光ファイバの構造的詳細は、全てファイバの断面図を基準とする。本発明の微細構造光ファイバは、長さと、長さに沿った長手方向軸線とを有し、光ファイバの長手方向軸線に沿って光を伝送可能であるコア領域を有している。微細構造光ファイバは、コア領域を包囲しているクラッド領域をさらに有している。クラッド領域は、クラッド背景材料と、クラッド背景材料内の複数のクラッド特徴部とを有している。クラッド特徴部は、コア領域の周りに配置されている。
【0018】
ファイバの少なくともダブルクラッド長さ部分において、クラッドは、内側クラッド特徴部の少なくとも1つの内側リングを含む内側クラッド領域と、外側クラッド特徴部の少なくとも3つの外側クラッドリングを含む外側クラッド領域とを有している。内側クラッド領域はコア領域に隣接しており、外側クラッド領域は内側クラッド領域に隣接している。内側クラッド特徴部は、第1の特性径(d)を有している。外側クラッド領域は、特性径(d)を有する複数の外側クラッド特徴部を有している。コア領域は略円形であり、少なくとも約2μmの直径を有している。一般的に、スーパーコンティニューム生成に必要な高ピークパワー光に起因する劣化に対する耐性は、小さいコアよりも大きいコアの方が高い。実用においては、2μm未満のコアはスーパーコンティニューム生成には適していないことがわかっている。
【0019】
内側および外側のクラッド領域のそれぞれにおいて、改良された新しい構成にて特徴部を配置することによって、コアを比較的大きくしながらもシングルモードを維持することや、比較的安定した出力にて青色波長まで広がるスーパーコンティニューム光の生成に適していること等の好適な特性を光ファイバにおいて組み合わせることができる。さらに、得られたファイバは、コアの径が2μm以上の場合であってもシングルモードを維持できるため、高ピークパワー光に対する光ファイバの耐劣化性が高いという利点も備えている。このため、スーパーコンティニュームを生成する高パワー光源において非常に好適にこの光ファイバを用いることができる。
【0020】
クラッド特徴部の各リングがクラッド背景材料のブリッジを有し、このブリッジによってリングの隣り合う特徴部が互いから隔離されている。換言すると、「リング」は交互に配置されている特徴部およびブリッジから構成されている。各ブリッジの最小幅は、リングの2つの隣り合う特徴部の間の最短距離である。
【0021】
本明細書において、「内側リング」および「内側クラッドリング」という用語は、内側クラッド領域内の特徴部およびブリッジからなるリングであり、「外側リング」および「外側クラッドリング」という用語は、外側クラッド領域内の特徴部およびブリッジからなるリングである。「内側ブリッジ」は内側リングのブリッジを指し、「外側ブリッジ」は外側リングのブリッジを指す。
【0022】
本願においては、「クラッド特徴部のリング」はコア領域からの距離が概して略等しい複数のクラッド特徴部を指す。クラッド特徴部の最も内側のリングは、コア領域に最も近いクラッド特徴部から構成されている。コア領域から数えて次のクラッド特徴部のリングは、最も内側のリングのクラッド特徴部に最も近いクラッド特徴部から構成されている。一般的に、リングは円形ではなく、例えば六角形等の、クラッド特徴部の形状に合う形状を有している。本願においては、「クラッド特徴部のリング」は、前述したように、リングの全ての特徴部を含んだ完全なリングを指す。内側クラッド特徴部のリングにおいては、リング内の全てのクラッド特徴部の寸法が略同じである。
【0023】
本願において、「特性径」という用語はクラッド特徴部の寸法を指す。クラッド特徴部が円形である場合、特性径はクラッド特徴部の円の直径である。クラッド特徴部が円形でない場合は、特性径は、クラッド特徴部の最大範囲と最小範囲との平均であってもよいし、または、計算または測定されたクラッド特徴部の面積に一致する面積を有する円の直径であってもよい。
【0024】
外側クラッド領域は、平均径dを有する特性径を有している複数の外側クラッド特徴部を含んでいる。一実施形態においては、略全ての外側クラッド特徴部の特性径が概して平均径dである。しかしながら、外側クラッド領域は、特性径が互いに異なる外側クラッド特徴部を含んでいてもよい。
【0025】
少なくとも1つの内側リングのブリッジが平均最小幅(w)を有し、少なくとも1つの外側クラッドリングのブリッジが平均最小幅(w)を有し、少なくとも1つの外側リングのブリッジの平均最小幅(w)が少なくとも1つの内側リングのブリッジの平均最小幅(w)よりも少なくとも約10%大きい。
【0026】
少なくとも1つの外側リングのブリッジよりも幅の狭いブリッジを内側リングに設けることによって、主に内側クラッド領域が分散特性をもたらし、主に外側クラッド領域が閉じ込め特性をもたらすように、分散特性と閉じ込め特性とが少なくとも部分的に切り離される。したがって、分散特性および閉じ込め特性の最適化をより自由に行うことが可能である。
【0027】
内側および外側のリングの相対的なブリッジ幅を選択することによって、可視域の波長を含む選択された波長に対して少なくとも第1高次モードを除去できる。このような状態は、高次モードが内側クラッド領域によって少なくとも部分的に閉じ込められるが、同時に、外側クラッド領域が所望の波長において高次モードを閉じ込めないように内側および外側のリングを構成することによって可能となる。
【0028】
好ましくは、少なくとも1つの内側リングのブリッジが略等しい最小幅(w)を有し、少なくとも1つの外側リングのブリッジの平均最小幅(w)が、少なくとも1つの内側クラッドリングのブリッジの最小幅(w)よりも好適には少なくとも約20%、例えば少なくとも約50%大きい。
【0029】
好適には、少なくとも3つの外側リングのブリッジの平均最小幅(w)は、少なくとも1つの内側クラッドリングのブリッジの最小幅(w)よりも少なくとも約10%大きく、例えば少なくとも約20%、例えば少なくとも約50%大きい。
【0030】
高次モード除去の確実性を高くするためには、少なくとも3つの外側リングのブリッジの平均最小幅(w)が、少なくとも1つの内側クラッドリングのブリッジの最小幅(w)よりも約15%~約150%大きいことが概して好ましい。
【0031】
外側リングのブリッジの最小幅は同じであっても異なっていてもよいが、外側ブリッジの最小幅が略等しくなるように、外側クラッド領域において特徴部が均一に分散されていることが好ましい場合が多い。
【0032】
一実施形態においては、少なくとも3つの外側リングのそれぞれのブリッジの最小幅(w)が略等しく、好適には、少なくとも3つの外側リングの全てのブリッジの最小幅(w)が略等しい。
【0033】
原則として、少なくとも1つの内側クラッドリングのブリッジの最小幅(w)は、機械的に可能な最も小さい幅であってもよい。例えば、少なくとも1つの内側クラッドリングのブリッジの最小幅(w)が約0.3μmであっても機能できる。
【0034】
最小幅(w)が小さくなるにつれて、空気層および外側クラッド領域に包囲されたシリカ素線にファイバが原理上近づくようになる。このシリカ素線において、空気層の厚さは内側クラッド領域の軸方向の厚さである。別に記載しない限り、内側クラッド領域の軸方向の厚さは、コア領域から、内側クラッド領域と外側クラッド領域との境界までによって決定される。この境界は、内側クラッドを包囲する線であり、内側クラッド特徴部への最短距離が、少なくとも1つの内側クラッドリングのブリッジの最小幅(w)に等しい。
【0035】
好ましくは、少なくとも1つの内側クラッドリングのブリッジの最少幅(w)は約1.2μm以下であり、例えば約1μm以下、例えば約0.8μm以下、例えば約0.6μm以下、例えば約0.4μm~約1.2μmである。
【0036】
一実施形態において、少なくとも1つの内側クラッドリングのブリッジの最小幅(w)は、基本コアモードのゼロ分散波長ZDWよりも小さい。コアが2つのゼロ分散波長(コアZDW)を有している場合、少なくとも1つの内側クラッドリングのブリッジの最小幅(w)が最も小さいZDWよりも小さいことが好ましい。
【0037】
一実施形態において、少なくとも3つの外側リングのブリッジの平均最小幅(w)は、基本コアモードのゼロ分散波長ZDWよりも大きい。
平均最小幅(w)の実際の寸法は、原理上、少なくとも1つの内側クラッドリングのブリッジの最小幅(w)よりも約10%以上大きい程度から、クラッドが基本モードを閉じ込めなくなる程度までの範囲とすることができる。
【0038】
好ましくは、少なくとも3つの外側リングのブリッジの平均最少幅(w)が、約1μmより大きく、例えば少なくとも約1.2μm、例えば少なくとも約1.5μm、例えば少なくとも約2μmである。
【0039】
光ファイバのダブルクラッド長さ部分は、少なくとも第1高次モード(LP11)をコアから出すことができる長さを有していることが好ましい。
第1高次モード(LP11)は、少なくとも可視光を含む所望の波長範囲、例えば400nm~1700nmの範囲内において少なくとも約100nm、例えば少なくとも約500nmを含む波長範囲においてコアから出されることが好ましい。
【0040】
好適には、ダブルクラッド長さ部分は少なくとも約10cmであり、例えば少なくとも約25cm、例えば少なくとも約50cmである。
好ましくは、ダブルクラッド長さ部分はファイバの略全長にわたって延びている。
【0041】
「ファイバの略全長」という表現は、ファイバの各端部の数ミリの部分は含まれる場合と含まれない場合があることを意味する。例えば特徴部が固形でない場合、特徴部の汚染を避けるためにシリカ材料で特徴部をつぶすもしくは「閉じる」ことが多い。
【0042】
一実施形態においては、複数の外側クラッド特徴部の特性径が第1の特性径(d)よりも小さく、第1の特性径(d)は外側クラッド特徴部の平均径(d)よりも少なくとも約10%大きい。
【0043】
「第1の特性径(d)は少なくとも10%大きい」という表現は、通常の数学的意味に解釈され、すなわち、「d>1.1・d」である。
微細構造ファイバのクラッドが、内側クラッド特徴部を有する内側クラッド領域と、外側クラッド特徴部を有する外側クラッドとを有し、外側クラッド特徴部の平均寸法よりも内側クラッド特徴部の方が大きい場合、この微細構造光ファイバは、微細構造ファイバに適切な励起光が入射されたときに安定したスーパーコンティニュームを好適に提供できる。内側クラッド特徴部を相対的に大きくすることによって、例えば450nm、400nmさらには400nm未満等の短波長の光が生成されやすくなることが分かっている。また、外側クラッド特徴部を相対的に小さくすることによって、微細構造ファイバをシングルモードファイバとして機能させやすくなる。さらに、本発明の微細構造ファイバに適切な励起光を入射した際に、ファイバがより安定してスーパーコンティニューム放射を提供できることが分かった。また、微細構造ファイバに対して十分に強力な励起放射を入射することによってスーパーコンティニュームを生成するためにファイバを用いる場合、得られるスーパーコンティニューム放射は、寸法が略同一であるクラッド特徴部を含むクラッドを有する微細構造ファイバによって得られるスーパーコンティニュームスペクトルと比較して、波長に応じたスペクトルがより平坦である。
【0044】
第1の特性径(d)が平均径(d)よりも少なくとも10%大きくなるように第1の特性径(d)および平均径(d)を選択することによって、内側クラッド領域の実効屈折率が外側クラッド領域の実効屈折率よりも小さい光ファイバを提供できる。内側クラッド領域の実効屈折率を求めるための方法のひとつとして、内側クラッド領域の実効屈折率が、内側クラッド領域の構造が無限に繰り返されるクラッド領域の実効屈折率と少なくとも実質的に同じであるとみなしてもよい。
【0045】
外側クラッド領域が外側クラッド特徴部の少なくとも3つの外側クラッドリングを有している場合、微細構造光ファイバからの漏れ損失が最小限に抑えられる。
コア領域の径が少なくとも約2μmである場合、前述したように、スーパーコンティニューム生成に必要なパワーおよび/または一般的な高パワーに光ファイバが確実に耐えることができる。
【0046】
劣化に対するさらに高い耐久性が必要とされる場合は、水素および/または重水素をファイバにロードしてもよい。これについては、米国特許出願公開第2011/0116283号明細書、米国特許第8145023号明細書または同時係属のデンマーク特許出願第PA201470800号明細書に記載されている。
【0047】
本発明による微細構造光ファイバの一実施形態においては、微細構造光ファイバが2000μmを超える波長の光を伝送可能であるように外側クラッド領域の外径および外側クラッド特徴部の平均径(d)の大きさが設定されている。したがって、閉じ込めが不十分であるために比較的大きい波長の光がファイバから漏れ出ることが確実に抑制される。比較的大きい波長の光が閉じ込められるため、このようなファイバは、スペクトルが500nm未満、450nm未満または400nm未満等の小さい波長に到達するスーパーコンティニュームの生成に適している。これは、スーパーコンティニュームスペクトルの大きい波長および小さい波長の群速度が合うことに少なくとも部分的に起因している。第1の特性径の大きさも、比較的波長の大きい光の閉じ込めを助けるように設定されることが好ましい。
【0048】
本発明による微細構造光ファイバの一実施形態においては、第1の特性径(d)が外側クラッド特徴部の平均径(d)よりも少なくとも15%大きく、例えば外側クラッド特徴部の平均径(d)よりも少なくとも20%大きく、例えば外側クラッド特徴部の平均径(d)よりも少なくとも25%大きく、例えば外側クラッド特徴部の平均径(d)よりも少なくとも30%大きく、例えば外側クラッド特徴部の平均径(d)よりも少なくとも35%大きい。内側クラッド特徴部が外側クラッド特徴部よりも相対的に大きい場合、微細構造ファイバは小さい波長においてシングルモードである。さらに、励起光が入力端に入射される際に、微細構造光ファイバの出力端の安定性が向上する。また、内側クラッド特徴部が大きい場合には、励起光が入力端に入射される際にスペクトルの短波長において光が生成されやすくなる。
【0049】
本発明の微細構造光ファイバの一実施形態において、微細構造ファイバは非線形ファイバ、スーパーコンティニュームを生成するファイバまたはパッシブデリバリファイバである。
【0050】
製造を簡単にするために、光ファイバは非テーパ状であることが好ましい。
本発明による微細構造光ファイバの一実施形態において、コア領域は略円形であり、約2μm~約6μm、好ましくは約2.5μm~約5μm、好ましくは約3μm~約4μmの径を有している。このようなコア径を有している微細構造光ファイバは、ファイバの入力端に励起光を入射することによってスーパーコンティニュームを生成する用途に適している。
【0051】
本発明による微細構造光ファイバの一実施形態において、微細構造ファイバのコア領域は略円形であり、約10μmより大きく、好適には約12μmより大きく、好適には約15μmより大きく、好適には約20μmより大きく、好適には約30μmより大きい径を有している。このようなコア径を有している微細構造光ファイバは、光の特性を大幅に変えることなく光を伝送または誘導するデリバリファイバとして用いることができるラージモードエリアファイバである。さらに、上記のように大きいモードエリアを有する微細構造ファイバは、シングルモードにおいて100nmを超えるやや広い帯域幅にて光を伝送するよう構成されている。例えば、微細構造光ファイバは、約400nm~約1700nmの波長範囲の光を伝送することができる。さらに、上記の寸法を有している微細構造ファイバは光の原子トラップに適している。
【0052】
好ましくは、コア領域の径はファイバの略全長にわたって略同じである。
本発明による微細構造光ファイバの一実施形態において、コア領域はコア背景材料を有しており、コア背景材料にはドーパント材がドープされているため、ドープされていないコア背景材料と比較してコア領域の屈折率が低い。このようなドーパント材の例としては、蛍石およびホウ素が挙げられる。屈折率を低下させる要素をコア領域が含んでいる場合、微細構造光ファイバはより小さい波長においてシングルモードファイバになる。コア背景材料は、例えば石英ガラス等の、クラッド背景材料と略同じ材料であってもよい。しかしながら、この実施形態においては、ドープされていないコア背景材料の屈折率よりもコア領域の屈折率が低い。
【0053】
一実施形態において、コア領域は例えばデンマーク特許出願第PA201400545号明細書に記載されているように微細構造を備えていてもよい。
本発明の微細構造光ファイバの一実施形態において、内側クラッド領域は、内側クラッド特徴部の内側リングを1つ、2つまたは3つ有している。このような数量のクラッド特徴部の内側リングを有していることによって、ファイバに適切な励起光が入射された場合に、生成されたスーパーコンティニュームスペクトルが、450nm、400nmさらには400nm未満の短波長を含むという効果がもたらされる。
【0054】
複数の内側リングを有している実施形態においては、内側リングのブリッジの最小幅が略同一であることが好ましい。
好ましくは、内側クラッド領域は内側クラッド特徴部のリングを1つのみ有している。比較的狭いブリッジ、例えば前述の最小幅(w)のブリッジを有している内側リングを1つのみ有している内側クラッド領域は、ファイバに適切な励起光が入射された場合に、生成されたスーパーコンティニュームスペクトルが450nm、400nmさらには400nm未満の短波長を含むという効果をもたらし、同時に、内側クラッド領域はコアに光を閉じ込めるためには薄すぎる(コアから外側クラッド領域まで軸方向に測定した場合)。外側クラッド領域が、コアの基本モードを閉じ込めるために機能し、同時に、高次コアモードの除去を可能としている。
【0055】
一実施形態において、コアから外側クラッド領域まで軸方向に測定される内側クラッド領域の厚さは、好適にはコア径の約80%未満であり、例えばコア径の約70%以下であり、例えばコア径の約60%以下であり、例えばコア径の約50%以下である。内側クラッド領域が比較的薄く、例えばコア径の80%以下の厚さ、もしくはより好適にはコア径の50%以下の厚さを有しているクラッド領域を備えた光ファイバは、400nm未満まで広がる青色シングルモード光を得るためのスーパーコンティニューム生成に非常に適している。内側クラッド領域を狭めることによって、光の可視域において少なくとも第1高次モードをほとんど完全に除去することができる。
【0056】
本発明の微細構造光ファイバの一実施形態において、内側クラッド領域の内側クラッド特徴部は第1ピッチ(Λ)にて配置され、外側クラッド領域の外側クラッド特徴部は第2ピッチ(Λ)にて配置されている。内側クラッド領域の内側クラッド特徴部は、第1の相対的クラッド特徴部寸法(d/Λ)を有し、外側クラッド領域の外側クラッド特徴部は、第2の相対的クラッド特徴部寸法(d/Λ)を有している。第1の相対的クラッド特徴部寸法と第2の相対的クラッド特徴部寸法との間の差(d/Λ-d/Λ)は約0.1よりも大きく、好適には約0.15よりも大きく、好適には約0.2よりも大きく、好適には約0.25よりも大きく、好適には約0.3よりも大きい。本願において、「ピッチ(Λ)」という用語は、隣り合うクラッド特徴部の間の間隔を指し、例えば、2つの隣り合うクラッド特徴部の中心の間の距離を指す。「相対的クラッド特徴部寸法(d/Λ)」という用語は、クラッド特徴部が空気で満たされた間隙である場合は「空気充填比率」を指す。第1の相対的クラッド特徴部寸法と第2の相対的クラッド特徴部寸法との間の差の絶対値が上記のとおりである場合、内側クラッド領域内のより大きい特徴部と外側クラッド領域内のより小さい特徴部とによってもたらされる効果のバランスが適切な状態になる。光ファイバにシングルモード特性をもたらすためには、第1の相対的クラッド特徴部寸法と第2の相対的クラッド特徴部寸法との間の差(d/Λ-d/Λ)が可能な限り大きいことが好ましいが、この差が大きくなりすぎると光ファイバ内に光を十分に閉じ込められなくなり、光が失われてしまう。差を上記の数値に設定することによって適切なバランスがもたらされる。
【0057】
本発明による微細構造光ファイバの一実施形態において、第1の特性径(d)と外側クラッド特徴部の平均径(d)との間の差は約0.3μmよりも大きく、好適には約0.4μmよりも大きく、好適には約0.5μmよりも大きく、好適には約0.6μmよりも大きい。これによって、内側クラッド領域内のより大きい特徴部と外側クラッド領域内のより小さい特徴部とによってもたらされる効果のバランスが適切な状態になる。
【0058】
本発明による微細構造光ファイバの一実施形態において、第1の特性径は約1.5μmよりも大きく、例えば約1.8μmよりも大きく、例えば約2.0μmよりも大きく、例えば約2.2μmよりも大きく、例えば約2.4μmよりも大きく、例えば約2.6μmよりも大きく、例えば約2.8μmよりも大きい。このような第1の特性径を有する第1クラッド特徴部を有している微細構造光ファイバは、例えば400nm未満または450nm未満の非常に短い波長を有するスーパーコンティニュームスペクトルを生成することができるファイバであり、さらに、少なくともスペクトルの非常に大きな部分(例えば800nm以上)においてシングルモードファイバとして機能する微細構造光ファイバである。
【0059】
本発明による微細構造光ファイバの一実施形態において、外側クラッド特徴部の平均径(d)は約1.1μm~1.8μmであり、例えば約1.15μm~約1.7μm、例えば約1.2μm~約1.5μm、例えば約1.3μmである。しかしながら、第1の特性径が外側クラッド特徴部の平均径よりも少なくとも約10%大きいという全体的な限定事項は維持する必要がある。したがって、上記の第1の特性径および外側クラッド特徴部の平均径は組み合わせられない場合もある。上記の外側クラッド特徴部の平均径を有している微細構造光ファイバは、波長スペクトルの広い光を非常に好適に閉じ込めることができる。
【0060】
本発明の微細構造光ファイバの一実施形態において、第1ピッチ(Λ)および第2ピッチ(Λ)はそれぞれ約2.5μm~約3.5μmである。第1ピッチおよび第2ピッチをこのような数値にすることによって、2μm以上や3μm以上等の比較的小さいコア領域が形成され、その結果、例えば450nm未満、400nm未満さらには約350nm未満の非常に短い波長を含むスーパーコンティニュームスペクトルを得ることができる。
【0061】
一実施形態において、内側クラッド領域の少なくとも1つの内側リングの特徴部は楕円形であり、大きい方の径と、直交する小さい方の径との間のアスペクト比は約1:1.2~約1:3であり、好適には、約1:1.5~約1:2.5である。好適には、内側クラッド領域の少なくとも1つの内側リングの特徴部は、小さい方の径が光ファイバの長手方向軸線を基準として径方向に延びるように配向されている。小さい方の径が光ファイバの長手方向軸線を基準として径方向に延びるように内側リングの特徴部を配置することによって、内側クラッド領域の厚さが比較的薄くなり、好適にはコア径の80%以下、例えば約50%以下になる。同時に、内側リングは1つのみであることが好ましい。
【0062】
一実施形態において、内側クラッド領域の実効屈折率は外側クラッド領域の実効屈折率よりも低い。この実施形態においては、内側クラッド領域の特徴部が、外側クラッド特徴部の平均径よりも大きい特性径を有していることが好ましい。
【0063】
一実施形態において、内側クラッド領域の実効屈折率は、外側クラッド領域の実効屈折率以上である。この実施形態においては、内側クラッド領域の特徴部が、外側クラッド特徴部の平均径よりも小さい特性径を有していることが好ましい。好適には、少なくとも3つの外側リングの特徴部を含む外側クラッド特徴部の平均径は、内側クラッド特徴部の特性径よりも少なくとも約10%大きく、例えば少なくとも約20%、例えば少なくとも約50%大きい。
【0064】
一実施形態においては、内側クラッド特徴部の特性径は、少なくとも3つの外側リングの特徴部を含む外側クラッド特徴部の平均径の約半分以下である。
この実施形態または他の実施形態においては、内側クラッド領域の特徴部は第1ピッチ(Λ)にて配置され、外側クラッド領域の特徴部は第2ピッチ(Λ)にて配置されている。第2ピッチは第1ピッチよりも大きく、例えば第1ピッチよりも少なくとも約10%大きく、好適には少なくとも約25%大きく、より好適には少なくとも約50%大きい。
【0065】
好ましくは、高次モードを十分に取り除くために、第2ピッチ(Λ)は少なくとも約2.5μmである。
好適には、内側クラッド領域の径方向の厚さは、コア径に対して約80%以下、例えばコア径に対して約60%以下である。
【0066】
一実施形態においては、第2ピッチは第1ピッチの少なくとも約2倍である。
本発明による微細構造光ファイバの一実施形態においては、約1400nm以上、好適には約1200nm以上、好適には約1100nm以上、好適には約1050nm以上、好適には1030nm以上における高次コアモードの実効屈折率よりもクラッド領域の最も高い実効屈折率が高くなるように内側および外側のクラッド領域のクラッド特徴部の寸法が設定されている。クラッド領域の最も高い実効屈折率が、特定の波長範囲における高次コアモードの実効屈折率よりも高い場合、このような高次コアモードはその特定の波長範囲において微細構造光ファイバ内を伝送されない。このため、基本コアモードのみが伝送されることになり、その特定の波長範囲においてファイバがシングルモードとなる。
【0067】
本発明による微細構造光ファイバの一実施形態において、クラッド特徴部は空気、気体または液体で満たされた間隙であり、もしくは、基材よりも屈折率の低いガラス、例えば蛍石をドープした石英ガラスである。
【0068】
本発明による微細構造光ファイバの一実施形態においては、光がファイバに入射するときに波長が約400nm~約2300nmである光の基本モードに対するファイバの伝送損失は1dB/m未満である。外側クラッドリングの数および外側クラッド特徴部の寸法は、伝送損失をこのように低くするように光の基本モードの閉じ込めを十分に行うために選択されている。
【0069】
本発明による微細構造光ファイバの一実施形態においては、微細構造ファイバのコア領域が第1屈折率を有し、内側クラッド領域が第2屈折率を有し、コア領域と、全体としてのクラッド領域の最高屈折率との間のΔ値が約0.03より小さく、例えば約0.025より小さい。Δ値は、光ファイバがシングルモードファイバである程度の目安となる。Δ値が小さい場合、光ファイバがシングルモードである程度が高い。
【0070】
数値形式においては、Δ値はΔ=(n-neff,ci)/nであり、nはコアの屈折率であり、neff,ciはクラッドの実効屈折率である。
コアの屈折率は基材の屈折率から求められるため、測定が概して容易である。クラッドの実効屈折率は、計算によって求められる数値である。当業者であれば、クラッドの実効屈折率を基本的な空間充填法によって計算できる。Δ値は、クラッドおよびコアの基材と、コアの寸法、クラッドの気孔の径および気孔の間隔もしくはピッチ(Λ)との組み合わせによって直接的および一義的に求めることが可能である。
【0071】
本発明による微細構造光ファイバの一実施形態においては、約350nmを超える波長、例えば約500nmを超える波長、例えば約600nmを超える波長、例えば約700nmを超える波長、例えば約800nmを超える波長、例えば約900nmを超える波長、例えば約1000nmを超える波長、例えば約1100nmを超える波長、例えば約1200nmを超える波長に対してファイバがシングルモードファイバである。
【0072】
本発明による微細構造光ファイバの一実施形態において、外側クラッド領域は外側クラッド特徴部の少なくとも4つの外側クラッドリングを有し、例えば外側クラッド特徴部の少なくとも5つの外側クラッドリング、例えば外側クラッド特徴部の少なくとも6つの外側クラッドリング、例えば外側クラッド特徴部の7つの外側クラッドリングを有している。外側クラッド特徴部の外側クラッドリングの数が増加すると漏れ損失が減るため、光ファイバ内に光を閉じ込めやすくなる。
【0073】
一実施形態において、約400nm~約2400nmの波長範囲において少なくとも約100nm、例えば少なくとも約500nmに広がる波長における少なくとも第1高次コアモードの実効屈折率よりも外側クラッド領域の実効屈折率が高い。
【0074】
一実施形態において、クラッド特徴部の屈折率は、クラッド背景材料の屈折率よりも低い。好適には、クラッド特徴部は、空気、他の気体または混合気体で満たされていてもよい非固形状の間隙である。
【0075】
少なくとも約400nm~約1700nmまで広がる所望のスーパーコンティニューム生成を行うためには、光ファイバのゼロ分散波長が約860nm~約1400nmであることが好ましい。好適には、光ファイバのゼロ分散波長は約900nm~約1200nmであり、少なくともゼロ分散波長においてファイバがシングルモードであり、好適には、少なくともゼロ分散波長に対して+200nm~-200nmの波長範囲、より好適には、約400nm~約1700nmの全範囲においてシングルモードである。
【0076】
一実施形態において、本発明は以下を備えているカスケード光ファイバに関する。
a.本発明による上記の第1微細構造光ファイバ。
b.第2光ファイバの長手方向軸線に沿って光を伝送可能な第2コア領域と、第2コア領域を包囲している第2クラッド領域とを有している第2光ファイバ。
【0077】
この実施形態においては、第1微細構造光ファイバのモードフィールド径が、第2微細構造光ファイバのモードフィールド径よりも大きい。第1微細構造光ファイバは、好ましくは接合によって、第2光ファイバに光学的に接続されている。第2光ファイバも、本発明による微細構造光ファイバ、すなわち、寸法の異なるクラッド特徴部を有するファイバであってもよい。もしくは、全てのクラッド特徴部の寸法が略同じであるクラッドを有する微細構造光ファイバであってもよい。
【0078】
このようなカスケード光ファイバは、本発明による微細構造光ファイバの効果と第2光ファイバの効果とを組み合わせることができるという利点を備えている。一実施形態においては、第1微細構造光ファイバは入力ファイバとして用いることができ、この入力ファイバから出力される光が、確実にシングルモード光として第2光ファイバに入る。この場合、第2光ファイバがマルチモードファイバであっても、第1光ファイバから第2光ファイバに入力される光がシングルモード光であるため、第2光ファイバから出力される光は実質的にシングルモード光である。
【0079】
第2光ファイバは、ロバストパッシブ(robust passive)であってもよい。もしくは、第2光ファイバは、分散を防止するように構成されたファイバであってもよい。この場合は、第2光ファイバを光出力用に構成されたファイバとすることが好ましい。
【0080】
本願においては「モードフィールド径」という用語は、光場の強度が最大値の1/eまで低減された基本モードの径を指す。この径は、光度がピーク光度のe-2まで下がる径方向位置の径に一致している。これは、光度密度が光場の強度の2乗に比例するためである。
【0081】
モードフィールド径はファイバの開口数およびカットオフ波長によって決まり、ファイバコアの径と相関関係にある。一般的に、モードフィールド径は、ファイバコアの物理的な径の寸法と同程度である。
【0082】
一実施形態においては、第1微細構造光ファイバのダブルクラッド長さ部分がファイバの略全長にわたって延び、第2光ファイバが少なくともシングルクラッド長さ部分を有し、好適には、第2光ファイバはその全長にわたってシングルクラッドファイバである。
【0083】
一実施形態において、本発明は、以下に記載される第1ファイバ部分および第2ファイバ部分を有する第2カスケード光ファイバに関する。
a.第1ファイバ部分はシングルモード光ファイバを有し、シングルモード光ファイバは、シングルモード光ファイバの長手方向軸線に沿って光を伝送可能である第3コア領域と、小さいクラッド特徴部を有する第3クラッド領域とを有している。
【0084】
b.第2ファイバ部分は、第2ファイバ部分の長手方向軸線に沿って光を伝送可能である第4コア領域と、大きなクラッド特徴部を有する第4クラッド領域とを有している。
この第2カスケード光ファイバにおいては、第1ファイバ部分および第2ファイバ部分のモードフィールド径が略同じであり、第1ファイバ部分および第2ファイバ部分は、第1ファイバ部分から第2ファイバ部分および/または第2ファイバ部分から第1ファイバ部分に光を伝送可能であるように、例えば互いに接合されることによって光学的に接続されている。
【0085】
この実施形態においては、第1ファイバ部分が、寸法の略等しいクラッド特徴部を有する完全なクラッドを備えている。さらに、第2ファイバ部分も、寸法の略等しいクラッド特徴部を有する完全なクラッドを備えている。しかしながら、第2ファイバ部分のクラッド特徴部の寸法は、第1ファイバ部分のクラッド特徴部の寸法よりも大きい。好ましくは、第2ファイバ部分は、青色波長(500nm未満、450nm未満さらには400nm未満)まで広がるスーパーコンティニュームスペクトルを生成するように構成されているいわゆる青色ファイバである。
【0086】
一実施形態において、本発明はスーパーコンティニューム光生成の光源に関する。この光源は、本発明による微細構造光ファイバと、励起レーザ光源とを有している。励起レーザ光源は、励起波長にて励起放射を生成するとともに、微細構造光ファイバの入力端に励起放射を入射するように構成されている。微細構造光ファイバは、微細構造ファイバに励起放射が入射したときにスーパーコンティニューム放射を発生させるように構成されている。
【0087】
このスーパーコンティニューム放射光源は本発明による微細構造光ファイバの複合クラッドを備えているため、ファイバの長手方向に直交する断面の全体においてクラッド特徴部の寸法が略等しいクラッドを有する微細構造光ファイバを使用する光源と比較して、より平坦かつ安定したスーパーコンティニュームスペクトルを生成することができる。「平坦なスペクトル」という表現は、波長に応じたスペクトルのパワー変化が小さい状態を指す。安定したスペクトルとは、大幅に変動することがなく、ずれることのないスペクトルを意味している。安定したスペクトルは時間に応じた変化がほとんど発生しない。
【0088】
好適には、本発明の光源にて使用される微細構造光ファイバは、光の青色波長(例えば450nm、400nmまたは400nm未満)まで広がるスーパーコンティニュームスペクトルを生成するように構成されている。
【0089】
本発明による光源の一実施形態においては、スーパーコンティニューム光が、実質的にファイバの基本モードのみに限定して発生する。
好ましくは、微細構造光ファイバにおいて少なくとも入力端および好適にはファイバの大部分、例えば略全長にわたる部分が、励起波長においてシングルモードである。
【0090】
一実施形態においては、スーパーコンティニューム光生成の光源の微細構造光ファイバがカスケード光ファイバであり、励起レーザは第1微細構造光ファイバの入力端に励起放射を入射するように構成されている。
【0091】
本発明によるスーパーコンティニューム光生成の光源の一実施形態においては、励起波長が約1000nm~約1100nmであり、好適には約1030nm~約1070nm、例えば約1030nmまたは約1064nmである。これらの波長において様々な励起光源が存在しているため、上記の数値は実用的である。
【0092】
一実施形態において、スーパーコンティニューム光生成の光源は、スペクトルフィルタリング装置を有し、この装置はスーパーコンティニューム光源の出力を、フィルタリングされたSC出力にフィルタリングするように構成されている。フィルタリングされたSC出力は、中心波長がλ1であり出力帯域幅BW1を有している。中心波長λ1および出力帯域幅BW1の少なくとも一方が同調可能である。好ましくは、出力帯域幅BW1は、約5nm未満の単位で段階的に同調可能である。スペクトルフィルタリング装置は例えばAOTFを有している。
【0093】
一実施形態において、本発明は、本発明によるスーパーコンティニューム光生成の光源を内視鏡検査および外科的顕微鏡検査の用途に使用することに関する。
内視鏡検査および外科的顕微鏡検査等の用途においては、特定の種類の組織を区別するために、明るい光と、実際の色に忠実かつ円滑な照明とが必要である。このような光は、最小侵襲手術後の傷の治りを良くするために細い光導波路を介して伝送されることが望ましい。
【0094】
本発明においては、「スーパーコンティニューム」という用語はスペクトル的に広い信号を指す。スーパーコンティニュームは、スペクトルの下方境界である「青色端」と、スペクトルの上方境界である「赤色端」とを有している。シリカ光ファイバにおいて、青色端は300~600nmの範囲内の波長であり、例えば350~550nmの範囲内である。赤色端は、1300~2400nmの範囲内の波長であり、例えば1600~2400nmの範囲内である。スーパーコンティニュームのスペクトル幅は、赤色端の波長と青色端の波長との差としてもよい。スペクトル幅は100nmより大きくてもよく、例えば150nmより大きく、例えば300nmより大きく、例えば500nmより大きく、例えば750nmより大きく、例えば1000nmより大きく、例えば1500nmより大きく、例えば2000nmより大きく、例えば2500nmより大きく、例えば3000nmより大きい。
【0095】
微細構造光ファイバにおいては、コア領域は、クラッド特徴部によって直接的に包囲されている領域として定義されてもよい。コアは、クラッド特徴部の構造が欠落している部分、例えばクラッド特徴部がない部分として理解することができる。
【0096】
本発明はさらに、内視鏡検査、外科的顕微鏡検査、共焦点顕微鏡検査、光コヒーレンストモグラフィー(OTC)、マルチモード照射、自己蛍光、蛍光寿命イメージング測定(FLIM)、分子イメージング、光遺伝学、ディスプレイ、拡散成分特性評価、太陽電池特性評価、量子ドット特性評価、プラズモニクス、分散型フーリエ変換分光法および原子トラップ用途から選択される手法の実施における使用に適した照射方法に関する。
【0097】
この方法は、上記のようなスーパーコンティニューム光生成の光源を提供することと、微細構造光ファイバの入力端に励起放射を入射することと、微細構造光ファイバ内においてスーパーコンティニュームを生成することと、手法を実施する対象に向かってスーパーコンティニュームの少なくとも一部を放射することと、からなる。
【0098】
本発明のスーパーコンティニューム光生成の光源は安定性が高いため、このスーパーコンティニューム光生成の光源は、複数の波長が同時に使用されるか、例えば交互等に切り替えて順に使用される照射手法に非常に適している。スーパーコンティニューム光生成の光源の好適な使用は、内視鏡検査、外科的顕微鏡検査、共焦点顕微鏡検査、光コヒーレンストモグラフィー(OTC)、マルチモード照射、自己蛍光、蛍光寿命イメージング測定(FLIM)、分子イメージング、光遺伝学、ディスプレイ、拡散成分特性評価、太陽電池特性評価、量子ドット特性評価、プラズモニクス、分散型フーリエ変換分光法および原子トラップ用途のうちの少なくとも1つの手法において照射および検出のために使用することを含む。
【0099】
一実施形態において、本発明のスーパーコンティニューム光生成の光源は、米国特許出願公開第2014/0232988号明細書に記載されているように、例えば1つまたは複数のモニタリング工程を含む1つまたは複数のセッションにわたって患者の眼球の1つまたは複数のパラメータをモニタリングするために好適に用いることができる。
【0100】
一実施形態において、本発明のスーパーコンティニューム光生成の光源は、米国特許出願公開第2014/0333978号明細書に記載されているように、眼球をスキャンするために好適に用いることができる。
【0101】
本発明は、内視鏡検査、外科的顕微鏡検査、共焦点顕微鏡検査、光コヒーレンストモグラフィー(OTC)、マルチモード照射、自己蛍光、蛍光寿命イメージング測定(FLIM)、全反射照明蛍光(TIRF)顕微鏡検査、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ブロードバンド分光法、ナノフォトニクス、フローサイトメトリー、工業検査、リングダウン分光法、分析分光法、分子イメージング、光遺伝学、ディスプレイ、拡散成分特性評価、太陽電池特性評価、量子ドット特性評価、プラズモニクス、分散型フーリエ変換分光法および原子トラップ用途のうちの少なくとも1つにおける使用に適した照射光源にさらに関する。この照射光源は、上記のスーパーコンティニューム光生成の光源を有している。
【0102】
好ましくは、本発明の照射光源は1つまたは複数の光学フィルタを有している。光学フィルタは、スーパーコンティニューム光生成の光源によって生成されたスーパーコンティニュームビームをフィルタリングするように構成されている。光学フィルタは、照射光源の出力を1つまたは複数の波長および/または波長範囲に同調するように同調できることが好ましい。一実施形態においては、照射光源の出力は2つの区別された波長または波長範囲を有し、例えばグリッドパターンの生成またはパラメータのモニタリング/検出のための第1波長(単一の波長または必要に応じて波長範囲等)と、手術用照射を提供するための第2波長範囲とを有している。
【0103】
一実施形態においては、照射光源が、例えば米国特許出願公開第2014/0066723号明細書に記載されているように光パルスの時間的伸長を行う分散パルス伸長要素を有している。分散パルス伸長要素は、デリバリファイバ等の光ファイバであるか、光ファイバの一部を形成している。一実施形態においては、分散パルス伸長要素はスーパーコンティニューム生成の光源に組み込まれている。
【0104】
好ましくは、スーパーコンティニューム光生成の光源は、生成されたスーパーコンティニューム光を出力するためのファイバ出力端を有している。ファイバ出力端は、生成されたスーパーコンティニューム光を照射位置に送るためにデリバリファイバに光学的に接続されている。デリバリファイバは、着脱式コネクタを用いてスーパーコンティニューム光生成の光源のファイバ出力端に接続されて、必要に応じてデリバリファイバを交換できるようになっていることが好ましい。好適には、デリバリファイバは、少なくとも部分的にプローブおよび/またはセンサに組み込まれることによって、プローブおよび/またはセンサに光学的に接続されている。
【0105】
一実施形態において、照射光源は、外科用顕微鏡等の顕微鏡、蛍光寿命イメージング(FLIM)および全反射照明蛍光(TIRF)顕微鏡検査法に基づく光学蛍光顕微鏡等の光学蛍光顕微鏡の一部を形成している。
【0106】
好ましくは、例えば米国特許出願公開第2014/0066723号明細書に記載されているように、眼科手術等の目に照射する手法において用いるように照射光源が構成されている。好ましくは、手術前および手術中の少なくとも一方において眼球または眼球の内部に照射を行うためにデリバリファイバが少なくとも部分的にプローブに組み込まれていることによって、デリバリファイバがプローブに光学的に接続されている。好適には、プローブの外径は約125μm以下である。一実施形態においては、例えば米国特許出願公開第2014/0293225号明細書または米国特許出願公開第2015/0080718号明細書に記載されているように、眼球のOTCに用いるように照射光源が構成されている。
【0107】
一実施形態においては、プローブが、米国特許出願公開第2014/0200566号明細書または米国特許出願公開第2014/0180264号明細書に記載されているようなマルチスポット発生器を有しており、このマルチスポット発生器は、デリバリファイバから出力ビームを少なくとも部分的に受け取るために光学的に接続されている。一実施形態においては、マルチスポット発生器がマルチコア光ファイバを有している。
【0108】
一実施形態において、プローブは、例えば米国特許第8496331号明細書に記載されているように光パターンを生成する回折光学要素を有している。
好ましくは、照射光源のスーパーコンティニューム光生成の光源は、450nm未満の波長を含むスーパーコンティニュームを生成するように構成されている。
【0109】
一実施形態において、照射光源は誘導放出制御を行うように構成されている。
本発明は、例えば計測用の工業用検査装置をさらに含み、この装置は上記の照射光源を有している。
【0110】
本発明は、上記の照射光源を有している分光器をさらに含む。好適には、この分光器はリングダウン分光器(例えばガス検知用分光器)、分析用分光器(例えばハイパースペクトル分光法または果物等の農作物分析において用いる分光器)、飛行時間分光器および/または分散フーリエ変換分光器である。
【0111】
範囲および好適な範囲を有している上記の発明および発明の実施形態の全ての特徴は、これらの特徴を組み合わせない特定の理由が存在する場合を除いて、本発明の範囲内において様々に組み合わせ可能である。
【0112】
本発明の詳細を、好適な実施形態に関連して、以下の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0113】
図1a】既知の微細構造ファイバの断面を示す顕微鏡写真。
図1b図1aに示すファイバの断面を示す概略図。
図1c図1aの微細構造ファイバにおいてクラッド特徴部の第1リングが示されている概略図。
図1d図1aの微細構造ファイバにおいてクラッド特徴部の第2リングが示されている概略図。
図1e図1aの微細構造ファイバにおいてクラッド特徴部の第3リングが示されている概略図。
図2a】本発明による微細構造光ファイバの一実施形態の断面を示す顕微鏡写真。
図2b図2aに示す微細構造ファイバの断面を示す概略図。
図3a】本発明による微細構造光ファイバの一実施形態の断面を示す顕微鏡写真。
図3b図3aに示す微細構造ファイバの断面を示す概略図。
図3c】微細構造ファイバの一実施形態の断面を示す概略図。
図4】寸法の等しいクラッド特徴部を有するクラッドを備えた標準的な微細構造光ファイバに異なるパワーレベルにて励起波長の励起光を入射することによって得られるスーパーコンティニュームスペクトルのパワースペクトル密度を示すグラフ。
図5】本発明による微細構造光ファイバに異なるパワーレベルにて励起波長の励起光を入射することによって得られるスーパーコンティニュームスペクトルのパワースペクトル密度を示すグラフ。
図6a】所定の励起パワーレベルにおける、標準的な微細構造光ファイバおよび本発明による微細構造ファイバのパワースペクトル密度を示すグラフ。
図6b】別の励起パワーレベルにおける、標準的な微細構造光ファイバおよび本発明による微細構造ファイバのパワースペクトル密度を示すグラフ。
図7】本発明によるスーパーコンティニューム放射光源の概略図。
図8】本発明によるカスケードファイバ50の一実施形態を示す図。
図9】楕円形の内側クラッド特徴部を有する、本発明による微細構造光ファイバの一実施形態を示す概略図。
図10】内側クラッドピッチが外側クラッドピッチよりも小さい、本発明による微細構造光ファイバの一実施形態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0114】
図面は概略図であり、図示を明瞭にするために単純化されている場合もある。全図において、同一または類似の部分には同じ符号が付されている。
図1aは、既知の微細構造ファイバの断面10を示す顕微鏡写真である。この断面10は、ファイバの長手方向軸線に対して直交する断面である。このファイバは微細構造ファイバであり、コア領域12およびクラッド領域14を有している。クラッド領域14はコア領域12を包囲している。コア部分もしくはコア領域12は、コア12を直接的に包囲するように配置されているクラッド特徴部11に内接されている。
【0115】
クラッド領域14はクラッド特徴部11を有している。特徴部はファイバの長手方向に延びる略円形の孔もしくは間隙として形成されている。クラッド特徴部11はクラッド背景材料または基材内において分散されている。図示されているクラッド特徴部11は規則的配列に配置されている。図1a~1eに示す微細構造光ファイバ10は、クラッド特徴部を有する単一のクラッドを備えている。各クラッド特徴部の寸法は略同じである。
【0116】
図1bは、図1aに示すファイバの断面を示す概略図である。図1bは、コア領域12を有する既知の微細構造ファイバの断面10を示す。コア領域12は、規則的な配列に配置されたクラッド特徴部11を有するクラッド14に包囲されている。
【0117】
図1c~1eは、図1aの微細構造ファイバの断面の概略図であり、クラッド特徴部の第1、第2および第3リングをそれぞれ示している。図1cにおいて、点線の六角形14-Iはクラッド特徴部の最も内側のリングを示している。クラッド特徴部の間のブリッジには「W」が付されている。クラッド特徴部の最も内側のリングもしくは第1リングは、6個のクラッド特徴部を含んでいる。図1dにおいて、点線の六角形14-IIはクラッド特徴部の次のリングもしくは第2リングを示している。クラッド特徴部の次のリングもしくは第2リングは、12個のクラッド特徴部を含んでいる。図1eにおいて、点線の六角形14-IIIはクラッド特徴部の次のリングもしくは第3リングを示している。クラッド特徴部の第3リングは、18個のクラッド特徴部を含んでいる。
【0118】
図1cに示されるように、クラッド特徴部の第1リングもしくは最も内側のリング14-Iは、コア領域に最も近いクラッド特徴部からなる。クラッド特徴部の次のリング、もしくはコア領域から数えて2番目の第2リング14-IIは、最も内側のリング14-Iのクラッド特徴部に最も近いクラッド特徴部等を含んでいる。一般的に、リングは円形ではなく、例えば六角形等の、クラッド特徴部の形状に合う形状を有している。図1a~1eに示す微細構造ファイバ10の断面は、クラッド特徴部の完全なリングを7個有し、さらに、クラッド特徴部の第7リングの近傍に位置する3×6個の追加クラッド特徴部を有している。
【0119】
本願においては、「クラッド特徴部のリング」はコア領域からの距離が概して略等しい複数のクラッド特徴部を指す。
図2aは、本発明による微細構造光ファイバ20の一実施形態の断面を示す顕微鏡写真である。図2bは、図2aに示す微細構造ファイバ20の断面を示す概略図である。
【0120】
図2aおよび図2bに示すファイバ20は、コア領域もしくはコア22と、コア領域を包囲するクラッド領域24とを有している。図2aおよび図2bに示されるように、クラッド領域24は、クラッド背景材料と、クラッド背景材料内の複数のクラッド特徴部21,26とを有している。
【0121】
クラッド領域は、内側クラッド領域27および外側クラッド領域28を有している。内側クラッド領域27は、内側クラッド特徴部26の2つの内側リングを含んでいる。外側クラッド領域28は、外側クラッド特徴部21の5つの完全な外側クラッドリングを含み、さらに、外側クラッド特徴部の最も外側のリングの近傍に位置するとともにリングを形成していない追加の外側クラッド特徴部を含んでいる。内側クラッド領域27の特徴部26間の背景材料のブリッジの幅はwであり、外側クラッド領域28の特徴部21間の背景材料のブリッジの幅はwである。図に示すようにwはwよりも大幅に大きく、これによって前述した効果がもたらされている。
【0122】
内側クラッド領域27はコア領域22に隣接しており、外側クラッド領域28は内側クラッド領域に隣接している。内側クラッド特徴部は第1の特性径(d)を有し、外側クラッド領域28は、第1の特性径(d)より小さい特性径を有する複数の外側クラッド特徴部21を有している。第1の特性径(d)は、外側クラッド特徴部21の平均径(d)より少なくとも約10%大きい。
【0123】
図2aおよび図2bにおいては、クラッド特徴部21,26のうちの少数のみに符号が付されているが、内側クラッド領域において最も内側の2つのリングの18個の特徴部の全てが内側クラッド特徴部である。図2aおよび2bの残りのクラッド特徴部は外側クラッド特徴部である。
【0124】
図3aは、本発明による微細構造光ファイバ30の一実施形態の断面を示す顕微鏡写真である。図3bは、図3aに示す微細構造ファイバの30の断面を示す概略図である。
図3aおよび図3bに示すファイバ30は、コア領域もしくはコア32と、コア領域を包囲するクラッド領域34とを有している。図3aおよび図3bに示されるように、クラッド領域34は、クラッド背景材料と、クラッド背景材料内の複数のクラッド特徴部31,36とを有している。
【0125】
クラッド領域は、内側クラッド領域37および外側クラッド領域38を有している。内側クラッド領域37は、内側クラッド特徴部36の単一の内側リングを含んでいる。外側クラッド領域38は、外側クラッド特徴部31の6つの完全な外側クラッドリングを含み、さらに、外側クラッド特徴部の最も外側のリングの近傍に位置するとともにリングを形成していない追加の外側クラッド特徴部を含んでいる。
【0126】
内側クラッド領域37の特徴部36間の背景材料のブリッジの幅はwであり、外側クラッド領域38の特徴部31間の背景材料のブリッジの幅はwである。図に示すようにwはwよりも大幅に大きく、これによって前述した効果がもたらされている。
【0127】
内側クラッド領域37はコア領域32に隣接しており、外側クラッド領域38は内側クラッド領域37に隣接している。内側クラッド特徴部36は第1の特性径(d)を有し、外側クラッド領域38は、第1の特性径(d)より小さい特性径を有する複数の外側クラッド特徴部31を有している。第1の特性径(d)は、外側クラッド特徴部31の平均径(d)より少なくとも約10%大きい。
【0128】
図3aおよび図3bにおいては、クラッド特徴部31,36のうちの少数のみに符号が付されているが、内側クラッド領域において最も内側のリングの6個の特徴部の全てが内側クラッド特徴部である。図3aおよび図3bの残りのクラッド特徴部は外側クラッド特徴部である。
【0129】
図3cは、微細構造ファイバ40の一実施形態の断面を示す概略図である。図3cに示すように、ファイバ40はコア領域もしくはコア42と、コア領域を包囲するクラッド領域44とを有している。さらに、図3cに示されるように、クラッド領域44は、クラッド背景材料と、クラッド背景材料内の複数のクラッド特徴部41,46とを有している。
【0130】
クラッド領域は、内側クラッド領域47および外側クラッド領域48を有している。内側クラッド領域47は、内側クラッド特徴部46の3つの内側リングを含んでいる。外側クラッド領域48は、外側クラッド特徴部41の5つの完全な外側クラッドリングを含み、さらに、外側クラッド特徴部の最も外側のリングの近傍に位置するとともにリングを形成していない追加の外側クラッド特徴部を含んでいる。
【0131】
内側クラッド領域47はコア領域42に隣接しており、外側クラッド領域48は内側クラッド領域に隣接している。内側クラッド特徴部は第1の特性径(d)を有し、外側クラッド領域48は、第1の特性径(d)よりも小さい特性径を有する複数の外側クラッド特徴部41を有している。第1の特性径(d)は、外側クラッド特徴部41の平均径(d)よりも少なくとも約10%大きい。
【0132】
図3cにおいては、クラッド特徴部41,46のうちの少数のみに符号が付されているが、内側クラッド領域47において最も内側の3つのリングの36個の特徴部の全てが内側クラッド特徴部である。図3cの残りのクラッド特徴部は外側クラッド特徴部である。
【0133】
図4に、寸法の等しいクラッド特徴部を有するクラッドを備えた標準的な微細構造光ファイバに励起波長の励起光を入射することによって得られるスーパーコンティニュームスペクトルのパワースペクトル密度の4つのグラフを示す。この微細構造光ファイバは例えば図1aおよび図1bに示すファイバ10である。図4の右上の挿入図は、図4のグラフの作成に用いたファイバの断面を示している。図4のグラフから、励起パワーが増加すると、発生するスーパーコンティニュームのパワースペクトル密度が増加することがわかる。図4に示される励起パワー値は、励起光源による推定励起効果と相関関係にある。この励起効果は、結合器における損失を含まない、光源による実際の励起効果である。
【0134】
図5に、本発明による微細構造光ファイバ30に励起波長1064nmの励起光を4つの異なるパワーレベルにて入射することによって得られるスーパーコンティニュームスペクトルのパワースペクトル密度のグラフを示す。図5の右上の挿入図は、図5のグラフの作成に用いたファイバ、すなわち微細構造光ファイバ30の断面を示している。図5のグラフから、励起パワーが増加すると、発生するスーパーコンティニュームのパワースペクトル密度が増加し、4つの励起パワーレベルの全てにおいてスーパーコンティニュームが1750nmまで広がることが明白である。しかしながら、この上限は測定に用いた光スペクトルアナライザ(OSA)の測定限界値であり、スペクトルは全て1750nmを超える波長まで広がる。より高い励起パワーにおいては、スペクトルは2000nmを優に上回る波長まで広がる。さらに、最も低い励起パワーすなわち3.5W以外の励起パワーの全てにおいて、スペクトルは400nm未満の波長まで広がり、これは16.5Wおよび23Wの励起パワーにおいて特に顕著である。
【0135】
図4および図5の励起パワーレベルは同じではないが同等である。図4および図5の出力パワースペクトル密度を比較すると、同等の励起パワーにおいて同等の大きさであることがわかる。さらに、本発明による光ファイバ30においては、パワースペクトル密度が標準的なファイバよりも安定しており、特に約400nm~約750nmの波長範囲において、また特に励起パワーが高い場合において安定していることがわかる。
【0136】
図6aおよび図6bに、2つの異なる励起パワーレベルにおける、標準的な微細構造光ファイバ10のパワースペクトル密度と、本発明による微細構造ファイバ30のパワースペクトル密度のグラフを示す。図6aおよび図6bは、スーパーコンティニュームスペクトルの一部、すなわち350~750nmの範囲のみのパワースペクトル密度を示す。図6aのグラフの励起パワーレベルは18.6Wである。図6bのグラフについては、標準的な微細構造光ファイバ10の励起パワーレベルは21.3Wであり、本発明による微細構造光ファイバ30の励起パワーレベルは20.8Wである。
【0137】
図6aから、410~750nmの波長範囲の任意の波長に対して、本発明による微細構造光ファイバ30のパワースペクトル密度が、標準的な微細構造光ファイバ10のパワースペクトル密度よりも大きいことが分かる。さらに、図6aには、少なくとも約450nm~約650nmの波長範囲においては、本発明による微細構造光ファイバ30のスペクトルが標準的な微細構造光ファイバ10よりも平坦であることが示されている。この現象は、励起パワーのより高い図6bのパワースペクトル密度グラフにさらに顕著に示されている。標準的な微細構造光ファイバ10に使用された励起パワーは、本発明による微細構造光ファイバ30に使用された励起パワーと異なっているが、これらは少なくとも同等である。図6bからわかるように、標準的な微細構造光ファイバ10のパワースペクトル密度は、波長に応じて大きく変動しており、特に475~575nmの波長範囲において大きく変動している。本発明による微細構造光ファイバ30は、この475~575nmの波長範囲において非常に平坦なスペクトルを有している。さらに、本発明による微細構造光ファイバ30の励起パワーレベルは、標準的な微細構造光ファイバ10の励起パワーレベルより低いにも関わらず(本発明による微細構造光ファイバ30は20.8Wであり、標準的な微細構造光ファイバは21.3Wである)、標準的な微細構造光ファイバ30のパワースペクトル密度は、標準的な微細構造光ファイバ10のパワースペクトル密度よりも高い。
【0138】
図7は、本発明によるスーパーコンティニューム放射の光源100の概略図である。スーパーコンティニューム光源100は、微細構造光ファイバ4および励起光源2を備えている。微細構造光ファイバは、入力端および出力端の2つの端部を有している。図7において、ファイバの入力端はエンドキャップ8を有している。ファイバ4の出力端は反対側のファイバ端部であり、エンドキャップを有していないファイバ端部である。図7においてはエンドキャップ8が光ファイバ4よりも大きく示されているが、このような構成に限定されるものではなく、エンドキャップの寸法は光ファイバ4の寸法に類似していてもよい。光ファイバ4の出力端は自由端であるように示されているが、出力端はエンドキャップを有していてもよく、別の装置に接合されていてもよい。
【0139】
励起光源2は、微細構造光ファイバ4のエンドキャップ8に光を送るように構成された出力部3を有している。光はエンドキャップ8を介して微細構造光ファイバに送られ、スーパーコンティニュームスペクトルが微細構造光ファイバ内にて生成されて微細構造光ファイバの反対側端部から矢印に示すように出力される。
【0140】
図8は、本発明によるカスケードファイバ50の一実施形態を示す図である。
カスケード光ファイバ50は2本の光ファイバ30,20を有している。光ファイバ30,20は、互いに接合されているか、他の手段によって互いに光学的に接続されている。少なくとも一方のファイバが、本発明による微細構造光ファイバである。他方のファイバもしくは第2ファイバは、第2ファイバの長手方向軸線に沿って光を伝送可能な第2コア領域と、第2コア領域を包囲している第2クラッド領域とを有する光ファイバである。
【0141】
ファイバ30および20の寸法は、微細構造光ファイバ30のモードフィールド径が微細構造光ファイバ20のモードフィールド径よりも大きくなるように選択されている。
図8に示す例においては、2本の光ファイバの両方が本発明による光ファイバであり、例えば、ファイバ30および20はそれぞれ図3aおよび図3bならびに図2aおよび図2bに示すファイバであり、もしくは、それぞれ図9および図10に示すファイバである。しかしながら、カスケード光ファイバの一方のファイバは、各クラッド特徴部の寸法が略同一であるクラッドを備えたマルチモードファイバおよび/または微細構造光ファイバ等であってもよい。矢印51はファイバ50への光の入力を示し、矢印52はファイバ50からの光の出力を示す。
【0142】
図9に示す微細構造光ファイバは、コア領域(もしくは単にコアと称する)62と、コアを包囲しているクラッド領域とを有している。クラッド領域は、クラッド背景材料と、クラッド背景材料内の複数のクラッド特徴部61,66とを有している。
【0143】
クラッド領域は、内側クラッド特徴部66の単一の内側リングを含む内側クラッド領域67と、外側クラッド特徴部61の3つ以上の外側クラッドリングを含む外側クラッド領域68とを有している。この図においては、図示を単純化するために外側クラッド特徴部61のリングは2つのみ示している。
【0144】
内側クラッド領域67の特徴部66間の背景材料のブリッジの幅はwであり、外側クラッド領域68の特徴部61間の背景材料のブリッジの幅はwである。図に示すようにwはwよりも大幅に大きく、これによって前述した効果がもたらされている。
【0145】
内側クラッド領域の内側リングの特徴部66は楕円形であり、大きい方の径dと、直交する小さい方の径dとを有している。前述したように、アスペクト比d:dは約1:1.2~約1:3であることが好ましい。
【0146】
内側クラッド領域67の楕円形特徴部66は小さい方の径dが光ファイバの長手方向軸線を基準として径方向に延びるように配向されている。このため、図示される実施形態において内側クラッド領域67の厚さは比較的小さく、コア径の約30%である。
【0147】
図10に示す微細構造光ファイバは、コア領域(もしくは単にコアと称する)72と、コアを包囲しているクラッド領域を有している。クラッド領域は、クラッド背景材料と、クラッド背景材料内の複数のクラッド特徴部71,76とを有している。
【0148】
クラッド領域は、内側クラッド特徴部76の単一の内側リングを含む内側クラッド領域77と、外側クラッド特徴部71の3つ以上の外側クラッドリングを含む外側クラッド領域78とを有している。この図においては、図示を単純化するために外側クラッド特徴部72のリングは2つのみ示している。
【0149】
内側クラッド領域77の内側クラッド特徴部76は第1ピッチ(Λ)にて配置され、外側クラッド78の外側クラッド特徴部71は第2ピッチ(Λ)にて配置されている。第2ピッチは第1ピッチよりも大幅に大きい。図示されている実施形態においては、第2ピッチ(Λ)は第1ピッチ(Λ)の約2倍である。
【0150】
内側クラッド領域67の特徴部66間の背景材料のブリッジの幅はwであり、外側クラッド領域68の特徴部61間の背景材料のブリッジの幅はwである。図に示すようにwはwよりも大幅に大きく、これによって前述した効果がもたらされている。
【0151】
内側クラッド領域77の単一の内側リングの特徴部76の特性径は、外側クラッド領域78の特徴部71の平均径よりも大幅に小さい。この実施形態においては、単一の内側リングの特徴部76の特性径は、外側クラッド領域78の特徴部71の平均径の約半分である。図示されるように、内側クラッド領域の軸方向の厚さは非常に小さいため、高次モードの除去を効果的に行うことができる。
【0152】
本発明のさらなる適用範囲は本明細書の詳細な説明から明らかである。しかしながら、本発明の好適な実施形態について記載する詳細な説明および特定の実施例は例示のみを目的とするものであり、本発明の趣旨および範囲において様々な変更が可能であることは、詳細な説明の記載から当業者に自明である。
【0153】
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。好適な実施形態は、従属請求項によって定義される。特許請求の範囲における符号は発明の範囲を限定するものではない。
いくつかの好適な実施形態について前述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲において定義される主題の範囲において他の態様にて実施可能である。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10