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特許7236532負極活物質、並びに、それを用いる電気化学装置及び電子装置
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  • 特許-負極活物質、並びに、それを用いる電気化学装置及び電子装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】負極活物質、並びに、それを用いる電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20230302BHJP
   C01B 32/20 20170101ALI20230302BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230302BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20230302BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230302BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20230302BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20230302BHJP
【FI】
H01M4/587
C01B32/20
H01M4/13
H01M4/133
H01M4/36 Z
H01M4/66 A
H01M10/0566
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021512518
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 CN2020084168
(87)【国際公開番号】W WO2021203408
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100201938
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 静可
(72)【発明者】
【氏名】唐佳
(72)【発明者】
【氏名】何麗紅
(72)【発明者】
【氏名】馮鵬洋
(72)【発明者】
【氏名】謝遠森
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-186955(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221895(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/179813(WO,A1)
【文献】特開2012-133981(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121585(WO,A1)
【文献】特開2011-009051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/36 - 60
H01M 4/13 - 1399
H01M 10/0566
H01M 4/66
C01B 32/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質であって、動的粒子画像解析装置により測定する際、前記負極活物質の粒子累積体積分布が10%であると、
前記負極活物質の幅長比AR10が0.4≦AR10≦0.55を満たし、
前記負極活物質の球形度S10が0.48≦S10≦0.60を満たし、
前記負極活物質の粒子累積体積分布が50%であると、前記負極活物質が要件
(a)前記負極活物質の幅長比AR50が0.6≦AR50≦0.75を満たすこと、及び、(b)前記負極活物質の球形度S50が0.68≦S50≦0.82を満たすこと、の少なくとも一つを満たし、
前記負極活物質の粒子累積体積分布が90%であると、前記負極活物質が要件(c)前記負極活物質の幅長比AR90が0.82≦AR90≦0.90を満たすこと、及び、(d)前記負極活物質の球形度S90が0.85≦S90≦0.95を満たすこと、の少なくとも一つを満たす、負極活物質。
【請求項2】
前記負極活物質の圧縮密度が1.90g/cm3超である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記負極活物質は、一次粒子及び二次粒子を含み、前記負極活物質の合計粒子数に基づいて、前記一次粒子の数が20%~55%である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項4】
電気化学装置であって、正極、負極、セパレータ及び電解液を含み、前記負極が負極集電体及び負極活物質層を含み、前記負極活物質層が請求項1~のいずれか1項に記載の負極活物質を含む、電気化学装置。
【請求項5】
前記負極は、要件
(e)前記負極活物質層の重量が0.095mg/mm2~0.105mg/mm2であること、
(f)X線回折パターンで測定して得られる、前記負極活物質層の(004)面のピーク面積C004と(110)面のピーク面積C110の比であるC004/C110は、10~20の範囲内にあること、及び、
(g)前記負極活物質層が20%~45%の空隙率を有すること、
の少なくとも一つを満たす、請求項に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記負極集電体と前記負極活物質層との間には、さらにコート層を含み、前記コート層の厚さと前記負極活物質層の厚さとの比は1:50~1:120の範囲内にある、請求項に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記負極活物質層と前記負極集電体との間の粘着力は18N/m超であり、前記粘着力は、型番33652のInstron測定装置で、長さ15~20mmの極片を取り、3M両面テープで前記極片を鋼板に固定し、前記テープを前記負極活物質層の表面に貼り付け、前記テープの一方側を等幅のペーパーテープに接続し、前記ペーパーテープを上に折り、スライド速度50mm/minで40mmスライドして、180°での前記負極活物質層と前記負極集電体との間の粘着力を測定することで、得られたものである、
請求項に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記電気化学装置は、以下の関係を満たす、請求項4に記載の電気化学装置。
Y≦0.417X+A
ここで、Xは、前記電気化学装置の充電状態であり、1<X≦1.5であり、
前記電気化学装置の充電状態が1であると、前記電気化学装置の厚さがAmmであり、
前記電気化学装置の充電状態がXであると、前記電気化学装置の厚さがYmmであり、
前記充電状態は、SOC状態である
【請求項9】
請求項4~8のいずれか1項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エネルギー貯蔵分野に関し、具体的には、負極活物質、並びに、それを用いる電気化学装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)は、環境にやさしく、作動電圧が高く、比容量が大きく、サイクル寿命が長いなどの利点を備えるため、広く使用されており、現在、世界で最も発展の可能性のある新型グリーンな化学電源となっている。小型のリチウムイオン電池は、通常、携帯型電子通信機器(例えば、カムコーダー、携帯電話、またはノートパソコンなど)の電源、特に高性能携帯型機器を駆動するための電源として使用されている。電気自動車(EV)及び大規模なエネルギー貯蔵システム(ESS)に適用するために、高出力特性を備える中型及び大型のリチウムイオン電池が開発される。リチウムイオン電池の汎用に伴い、そのレート特性、動力学性能及び変形の問題が既に重要な開発方向となっている。これらの性能は、全て負極におけるリチウム析出現象に関連する。負極におけるリチウム析出現象をどのように改善するかは、もう早急に解決を要する重要な技術的課題となっている。負極中の活物質を改良することは、上述課題を解決するための研究方向の一つである。
【0003】
この実情に鑑み、改良された負極活物質、並びに、それを用いる電気化学装置及び電子装置を提供することは確実に必要である。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、負極活物質、並びに、それを用いる電気化学装置及び電子装置を提供することにより、少なくともある程度で関連分野における少なくとも一つの問題を解決する。
【0005】
本出願の一態様によれば、本出願は、動的粒子画像解析装置により測定する際、前記負極活物質の粒子累積体積分布が10%であると、前記負極活物質の幅長比(width-length ratio)AR10が0.4≦AR10≦0.55を満たし、前記負極活物質の球形度S10が0.48≦S10≦0.60を満たす負極活物質を提供する。
【0006】
ある実施例において、前記負極活物質の幅長比AR10が0.42≦AR10≦0.52を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の幅長比AR10が0.45≦AR10≦0.50を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の幅長比AR10は0.4、0.42、0.45、0.48、0.50、0.52、0.55、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0007】
ある実施例において、前記負極活物質の球形度S10が0.50≦S10≦0.55を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の球形度S10は0.48、0.50、0.52、0.55、0.58、0.60、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0008】
本出願の実施例によれば、前記負極活物質の粒子累積体積分布が50%であると、前記負極活物質が要件
(a)前記負極活物質の幅長比AR50が0.6≦AR50≦0.75を満たすこと、及び、
(b)前記負極活物質の球形度S50が0.68≦S50≦0.82を満たすことの少なくとも一つを満たす。
【0009】
ある実施例において、前記負極活物質の幅長比AR50が0.62≦AR50≦0.72を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の幅長比AR50が0.65≦AR50≦0.70を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の幅長比AR50は0.6、0.62、0.65、0.68、0.70、0.72、0.75、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0010】
ある実施例において、前記負極活物質の球形度S50が0.70≦S50≦0.80を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の球形度S50が0.72≦S50≦0.75を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の球形度S50は0.68、0.70、0.72、0.75、0.78、0.80、0.82、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0011】
本出願の実施例によれば、前記負極活物質の粒子累積体積分布が90%であると、前記負極活物質が要件
(c)前記負極活物質の幅長比AR90が0.82≦AR90≦0.90を満たすこと、及び、
(d)前記負極活物質の球形度S90が0.85≦S90≦0.95を満たすことの少なくとも一つを満たす。
【0012】
ある実施例において、前記負極活物質の幅長比AR90が0.85≦AR90≦0.88を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の幅長比AR90は0.82、0.85、0.88、0.90、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0013】
ある実施例において、前記負極活物質の球形度S90が0.88≦S90≦0.90を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の球形度S90は0.85、0.88、0.90、0.92、0.95、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0014】
本出願の実施例によれば、前記負極活物質の圧縮密度が1.90g/cm超である。ある実施例において、前記負極活物質の圧縮密度が1.95g/cm超である。ある実施例において、前記負極活物質の圧縮密度が2.0g/cm超である。
【0015】
本出願の実施例によれば、前記負極活物質は、一次粒子及び二次粒子を含み、前記負極活物質の合計粒子数に基づいて、前記一次粒子の数が20%~55%である。ある実施例において、前記負極活物質の合計粒子数に基づいて、前記一次粒子の数が25%~50である。ある実施例において、前記負極活物質の合計粒子数に基づいて、前記一次粒子の数が30%~40%である。ある実施例において、前記負極活物質の合計粒子数に基づいて、前記一次粒子の数が30%~35%である。ある実施例において、前記負極活物質の合計粒子数に基づいて、前記一次粒子の数が25%、30%、35%、40%、45%、50%、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0016】
本出願の別の態様によれば、本出願は正極、負極、セパレータ及び電解液を含む電気化学装置であって、前記負極が負極集電体及び負極活物質層を含み、前記負極活物質層が本出願に記載の負極活物質を含む電気化学装置を提供する。
【0017】
本出願の実施例によれば、前記負極は、要件
(e)前記負極活物質層の重量が0.095mg/mm~0.105mg/mmであること、
(f)X線回折パターンで測定して得られる、前記負極活物質層の(004)面のピーク面積C004と(110)面のピーク面積C110の比であるC004/C110は、10~20の範囲内にあること、及び、
(g)前記負極活物質層が20%~45%の空隙(pores)率を有することの少なくとも一つを満たす。
【0018】
ある実施例において、前記負極活物質層の重量は、0.095mg/mm~0.105mg/mmである。ある実施例において、前記負極活物質層の重量は、0.095mg/mm、0.097mg/mm、0.099mg/mm、0.101mg/mm、0.103mg/mm、0.105mg/mm、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0019】
ある実施例において、X線回折パターンで測定して得られる、前記負極活物質層のC004/C110は、12~18の範囲内にある。ある実施例において、X線回折パターンで測定して得られる、前記負極活物質層のC004/C110は、14~16の範囲内にある。ある実施例において、X線回折パターンで測定して得られる、前記負極活物質層のC004/C110は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0020】
ある実施例において、前記負極活物質層は、25%~40%の空隙率を有する。ある実施例において、前記負極活物質層は、30%~35%の空隙率を有する。ある実施例において、前記負極活物質層の空隙率は、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0021】
本出願の実施例によれば、前記負極集電体と前記負極活物質層との間には、さらにコート層を含み、前記コート層の厚さと前記負極活物質層の厚さとの比は、1:50~1:120の範囲内にある。ある実施例において、前記コート層の厚さと前記負極活物質層の厚さとの比は1:60~1:100の範囲内にある。ある実施例において、前記コート層の厚さと前記負極活物質層の厚さとの比は1:80~1:90の範囲内にある。ある実施例において、前記コート層の厚さと前記負極活物質層の厚さとの比は、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、1:100、1:110、1:120、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0022】
本出願の実施例によれば、前記負極活物質層と前記負極集電体との間の粘着力は、18N/m超である。ある実施例において、前記負極活物質層と前記負極集電体との間の粘着力は、20N/m超である。ある実施例において、前記負極活物質層と前記負極集電体との間の粘着力は、25N/m超である。
【0023】
本出願の実施例によれば、前記電気化学装置は関係式Y≦0.417X+Aを満たす。ここで、Xは、前記電気化学装置の充電状態(SOC,State Of Charge)であり、1<X≦1.5である。前記電気化学装置の充電状態が1であると、前記電気化学装置の厚さがAmmであり、前記電気化学装置の充電状態がXであると、前記電気化学装置の厚さがYmmである。ある実施例において、Xは、1.1、1.2、1.3、1.4、または1.5である。
【0024】
本出願の別の態様によれば、本出願は、本出願に記載の電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0025】
本出願の別の態様及び利点は、部分的に以下の内容に説明し、例示し、または本出願の実施例を通じて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下では、本出願の実施例を説明するために、本出願の実施例または先行技術を説明するための必要な図面を概要的に説明する。明らかなことに、以下に説明される図面は、本出願の実施例の一部にすぎない。当業者であれば、創造的な労働なしに、依然として、これらの図面に例示される構造から、他の実施例の図面を得ることができる。
図1図1は、本出願の実施例に係る負極活物質の異なる粒子累積体積分布での幅長比を示す。
図2図2は、本出願の実施例に係る負極活物質の異なる粒子累積体積分布での球形度を示す。
図3図3は、負極構造のX、Y及びZ方向の模式図を示す。
図4図4は、本出願の実施例に係る負極材料の走査電子顕微鏡(SEM)による画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本出願の実施例に対して詳細に説明する。本出願の明細書では、同じまたは類似の要素、及び同じまたは類似の機能を備える要素は、類似の符号で示される。ここに説明される図面と関連する実施例は、例示的で図式的なものであり、本出願に対する基本的な理解を提供するために使用されるものである。本出願の実施例は、本出願を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0028】
発明を実施するための形態及び請求の範囲において、「少なくとも一つ」という用語によって接続される項のリストとは、リストされる項の任意の組み合わせを意味する。例えば、項A及び項Bがリストされる場合、「A及びBの少なくとも一つ」とは、Aのみ、Bのみ、またはA及びBを意味する。別の実施例において、項A、項B、及び項Cがリストされる場合、「A、B及びCの少なくとも一つ」とは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びB(Cを除く)、A及びC(Bを除く)、B及びC(Aを除く)、または、A、B及びCの全体を意味する。項Aは、単一の要素または複数の要素を含んでもよい。項Bは、単一の要素または複数の要素を含んでもよい。項Cは、単一の要素または複数の要素を含んでもよい。
【0029】
本明細書に使用されているように、負極活物質の「幅長比」とは、負極活物質粒子の長径に対する短径の比を指す。負極活物質の幅長比は、動的粒子画像解析(例えば、SYMPATEC QICPIC動的粒子画像解析装置)により得られる。負極活物質粒子の「短径」とは、粒子の投影像に接する平行線間の最小値を指す。負極活物質の粒子の「長径」とは、粒子の投影像に接する平行線間の最大値を指す。負極活物質の幅長比が小さい場合、負極活物質粒子は細長い形状を呈する。負極活物質の幅長比が1に近いほど、負極活物質粒子の短径と長径が近くなり、即ち、負極活物質粒子が円形に近くなることを表す。
【0030】
本明細書に使用されているように、「AR」とは、負極活物質の粒子累積体積分布がn%である時の負極活物質粒子の幅長比を指す。「AR10」は、図1における「AR10」が示すように、負極活物質の粒子累積体積分布が10%である時の負極活物質粒子の幅長比を表す。「AR50」は、図1における「AR50」が示すように、負極活物質の粒子累積体積分布が50%である時の負極活物質粒子の幅長比を表す。「AR90」は、図1における「AR90」が示すように、負極活物質の粒子累積体積分布が90%である時の負極活物質粒子の幅長比を表す。
【0031】
本明細書に使用されているように、負極活物質の「球形度」とは、負極活物質粒子の実際の投影の周長に対する負極活物質粒子と同じ体積を有する球体の投影の周長の比を指す。負極活物質粒子の球形度が1に近いほど、負極活物質粒子が球形に近くなることを示す。負極活物質粒子の球形度が1である場合、負極活物質粒子が真球形である。負極活物質の球形度は、動的粒子画像解析(例えば、SYMPATEC QICPIC動的粒子画像解析装置)により得られる。
【0032】
本明細書に使用されているように、「S」とは、負極活物質の粒子累積体積分布がn%である時の負極活物質粒子の球形度を指す。「S10」は、図2における「S10」が示すように、負極活物質の粒子累積体積分布が10%である時の負極活物質粒子の球形度を表す。「S50」は、図2における「S50」が示すように、負極活物質の粒子累積体積分布が50%である時の負極活物質粒子の球形度を表す。「S90」は、図2における「S90」が示すように、負極活物質の粒子累積体積分布が90%である時の負極活物質粒子の球形度を表す。
【0033】
電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池。以下は、リチウムイオン電池を例とする。)の汎用に伴い、その急速充電能力は、電気化学装置の性能を評価するための重要な指標となる。レート特性は、リチウムイオン電池の急速充電能力を反映しうる。リチウムイオン電池のサイクル中で、負極の表面にリチウムが析出する現象が現れる可能性があり、これにより、リチウムイオン電池のレート特性が大幅に低下する。特に低温では、負極活物質の動力学性能が低下し、負極の電気化学的分極が増大し、リチウム析出現象がさらに発生しやすくなる。析出したリチウム金属は、セパレータを貫通して正極と負極との短絡を引き起こすリチウムデンドライトを形成する可能性がある。また、リチウムイオン電池のサイクル中での変形もリチウム析出現象の発生を引き起こす。そこで、負極のリチウム析出現象をどのように改善するかは、既に開発方向の一つになる。
【0034】
本出願は、負極活物質の形状及びその分布を調整することにより、電気化学装置のサイクル中でのリチウム析出現象を改善し、電気化学装置のレート特性及び動力学性能を高めると共に、電気化学装置の変形問題を改善することができる。具体的には、本出願は、動的粒子画像解析装置により測定する際、前記負極活物質の粒子累積体積分布が10%であると、前記負極活物質の幅長比AR10が0.4≦AR10≦0.55を満たし、前記負極活物質の球形度S10が0.48≦S10≦0.60を満たす負極活物質を提供する。
ある実施例において、前記負極活物質の幅長比AR10が0.42≦AR10≦0.52を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の幅長比AR10が0.45≦AR10≦0.50を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の幅長比AR10は0.4、0.42、0.45、0.48、0.50、0.52、0.55、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0035】
ある実施例において、前記負極活物質の球形度S10は0.50≦S10≦0.55を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の球形度S10は0.48、0.50、0.52、0.55、0.58、0.60、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0036】
負極活物質(例えば、黒鉛)の粒子は、通常、一定の範囲の空隙率で異なる配向で、負極の集電体の表面に一層ずつ積み重ねて、負極活物質層を形成する。負極活物質粒子がランダムな状態で積み重ねるため、細長すぎる負極活物質粒子(例えば,AR10<0.3)は、粒子間の空隙を減少し、電解液の浸透に対して不利である。球形に近い負極活物質粒子(例えば,S10>0.9)は、リチウムイオンの伝導経路を延長し、リチウムイオンの挿入と脱離の阻力を増大する。負極活物質の調製において、分級により負極活物質の幅長比を制御できる。そして、負極活物質の球形度を制御するように、トリミングにより負極活物質の表面部分の角を取り除く。負極活物質が0.4≦AR10≦0.55及び0.48≦S10≦0.60を満たすと、一部の負極活物質粒子が細長くて角があり、負極活物質の空隙に充填でき、リチウムイオンの挿入と脱離による負極活物質の膨張を抑えることに寄与し、これにより、サイクル中でのリチウムイオン電池の変形問題及びリチウム析出現象を改善する。
【0037】
本出願の実施例によれば、前記負極活物質の粒子累積体積分布が50%であると、前記負極活物質の幅長比AR50が0.6≦AR50≦0.75を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の幅長比AR50が0.62≦AR50≦0.72を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の幅長比AR50が0.65≦AR50≦0.70を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の幅長比AR50は0.6、0.62、0.65、0.68、0.70、0.72、0.75、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0038】
本出願の実施例によれば、前記負極活物質の粒子累積体積分布が50%であると、前記負極活物質の球形度S50は0.68≦S50≦0.82を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の球形度S50は0.70≦S50≦0.80を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の球形度S50は0.72≦S50≦0.75を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の球形度S50は0.68、0.70、0.72、0.75、0.78、0.80、0.82、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0039】
本出願の実施例によれば、前記負極活物質の粒子累積体積分布が90%であると、前記負極活物質の幅長比AR90が0.82≦AR90≦0.90を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の幅長比AR90が0.85≦AR90≦0.88を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の幅長比AR90は0.82、0.85、0.88、0.90、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0040】
本出願の実施例によれば、前記負極活物質の粒子累積体積分布が90%であると、前記負極活物質の球形度S90が0.85≦S90≦0.95を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の球形度S90が0.88≦S90≦0.90を満たす。ある実施例において、前記負極活物質の球形度S90は0.85、0.88、0.90、0.92、0.95、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0041】
異なる外観形態の負極活物質粒子を組み合わせて使用し、負極活物質に上記のAR10、AR50、AR90、S10、S50及びS90を満たさせると、負極活物質全体は、円やかであるが、ある程度の角がある外観を呈する。全体で円やかである外観形態により、負極活物質粒子によって形成される積み重ね層の間には、適量の空隙を有し、リチウムイオンの伝導経路を短縮し、リチウムイオンの挿入と脱離を速めて、リチウムイオンの空隙内の順調な移動を確保する。角の存在により、負極活物質粒子の間の摩擦力を増大し、リチウムイオンの挿入と脱離において負極活物質粒子が受ける応力を各方向に均一に解放させて、負極活物質層の膨張を抑えることができるので、サイクル中でのリチウムイオン電池の膨張問題を改善する。
【0042】
本出願の実施例によれば、前記負極活物質の圧縮密度が1.90g/cm超である。ある実施例において、前記負極活物質の圧縮密度が1.95g/cm超である。ある実施例において、前記負極活物質の圧縮密度が2.0g/cm超である。比較的に大きい圧縮密度により、外観形態で角を有する負極活物質粒子を互いに噛み合わせることができるので、集電体に平行な方向に積層し配列することを呈し、積層構造の間の空隙を減少する。球形に近い外観形態を呈する粒子の間には、リチウムイオンの順調な移動を確保するように、依然として十分の空隙を保留する。
【0043】
本出願の実施例によれば、前記負極活物質は、一次粒子(例えば、図4に実線で囲む粒子)及び二次粒子(例えば、図4に破線で囲む粒子)を含む。
本出願の実施例によれば、前記負極活物質の合計粒子数に基づいて、前記一次粒子の数が20%~55%である。ある実施例において、前記負極活物質の合計粒子数に基づいて、前記一次粒子の数が25%~50%である。ある実施例において、前記負極活物質の合計粒子数に基づいて、前記一次粒子の数が30%~40%である。ある実施例において、前記負極活物質の合計粒子数に基づいて、前記一次粒子の数が30%~35%である。ある実施例において、前記負極活物質の合計粒子数に基づいて、前記一次粒子の数が25%、30%、35%、40%、45%、50%、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。負極活物質が上記の範囲内の量の一次粒子を含むと、負極活物質粒子の異方性が増大し、これにより、サイクル中でのリチウムイオン電池の膨張問題を効果的に改善し、リチウムイオン電池の変形を抑えることができる。これと共に、上記の範囲内の量の一次粒子を含むことは、負極活物質のエネルギー密度を高めることに寄与する。
【0044】
本出願は、さらに、正極、負極、セパレータ及び電解液を含む電気化学装置を提供する。以下では、本出願に用いられる正極、負極、セパレータ及び電解液を説明する。
【0045】
負極
本出願の電気化学装置に用いられる負極は、負極集電体及び負極活物質層を含み、前記負極活物質層は本出願に記載の負極活物質を含む。
【0046】
本出願の実施例によれば、前記負極活物質層は、前記負極集電体上に設置されている。ある実施例において、前記負極活物質層は、前記負極集電体の両側に設置されている。ある実施例において、前記負極集電体は片面に負極活物質層を有する領域を含む。
【0047】
本出願の実施例によれば、前記負極活物質層の重量は0.095g/cm~0.105g/cmである。ある実施例において、前記負極活物質層の重量は0.095g/cm~0.101g/cmである。ある実施例において、前記負極活物質層の重量は0.095g/cm、0.097g/cm、0.099g/cm、0.101g/cm、0.103g/cm、0.105g/cm、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。負極活物質層の重量が前記範囲内にあると、電解液の負極活物質層への浸透に寄与するので、リチウムイオンの伝導を速める。
【0048】
本出願の実施例によれば、X線回折パターンで測定して得られる、前記負極活物質層の(004)面のピーク面積C004と(110)面のピーク面積C110の比であるC004/C110は10~20の範囲内にある。ある実施例において、X線回折パターンで測定して得られる、前記負極活物質層のC004/C110は、12~18の範囲内にある。ある実施例において、X線回折パターンで測定して得られる、前記負極活物質層のC004/C110は、14~16の範囲内にある。ある実施例において、X線回折パターンで測定して得られる、前記負極活物質層のC004/C110は10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。負極活物質層のC004/C110値は、負極活物質層の配向性を反映できる。C004/C110値が大きすぎても小さすぎても、負極活物質層の異方性が大きいことを示す。C004/C110値が比較的に大きい、即ち、(004)面のピーク面積C004が比較的に大きい場合、一定の圧縮密度で、負極活物質粒子は、集電体と平行するように集電体に配列される傾向がある。C004/C110値が比較的に小さい、即ち、(110)面のピーク面積C110が比較的に大きい場合、一定の圧縮密度で、負極活物質粒子は、集電体と垂直するように集電体に配列される傾向がある。負極活物質層のC004/C110が上記範囲内にある場合、一部の負極活物質粒子は集電体と平行するように集電体に配列され、他の一部の負極活物質粒子は集電体と垂直するように集電体に配列されることにより、負極活物質層が各方向において適当な異方性があり、リサイク中でのリチウムイオン電池の膨張及び変形問題を改善することに寄与する。本出願の実施例によれば、前記負極活物質層は、20%~45%の空隙率を有する。ある実施例において、前記負極活物質層は、25%~40%の空隙率を有する。ある実施例において、前記負極活物質層は、30%~35%の空隙率を有する。ある実施例において、前記負極活物質層の空隙率は20%、25%、30%、35%、40%、45%、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。負極活物質層の空隙率が上記の範囲にあると、電解液の負極活物質層への浸透に寄与し、リチウムイオンの伝導経路を短縮し、リチウムイオンの挿入と脱離を速めると共に、適量の固体電解質界面(SEI)膜の形成に寄与し、リチウムイオンの損失を減少する。
【0049】
負極活物質層の空隙率は、負極の調製におけるロールプレスの圧力を制御することで達成できる。ロールプレスの圧力を制御することで、負極活物質層の厚さの連続の変化を達成できるので、負極活物質層の空隙率を制御できる。負極活物質層の空隙率は、「GB/T24586-2009鉄鉱石見かけ密度、真密度、空隙率の測定」により測定して得られる。
【0050】
本出願の実施例によれば、前記負極集電体と前記負極活物質層との間には、さらにコート層を含み、前記コート層の厚さと前記負極活物質層の厚さとの比は1:50~1:120の範囲にある。ある実施例において、前記コート層の厚さと前記負極活物質層の厚さとの比は1:60~1:100の範囲にある。ある実施例において、前記コート層の厚さと前記負極活物質層の厚さとの比は1:80~1:90の範囲にある。ある実施例において、前記コート層の厚さと前記負極活物質層の厚さとの比は1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、1:100、1:110、1:120、または上記の任意の二つの数値からなる範囲内である。
【0051】
本出願の実施例によれば、前記コート層は導電層を含む。ある実施態様において、前記導電層の導電材は、化学変化を引き起こさない限り、任意の導電材を含んでもよい。導電材の非限定的な例としては、炭素による材料(例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンなど)、金属による材料(例えば、金属粉末、金属繊維など、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀など)、導電性ポリマー(例えば、ポリフェニレン誘導体)、及びそれらの混合物を含む。
【0052】
本出願の実施例によれば、前記負極活物質層と前記負極集電体との間の粘着力は18N/m超である。ある実施例において、前記負極活物質層と前記負極集電体との間の粘着力は20N/m超である。ある実施例において、前記負極活物質層と前記負極集電体との間の粘着力は25N/m超である。負極活物質層と負極集電体との間の粘着力が上記の範囲にあると、負極の調製におけるロールプレスまたは裁断工程で発生される膜剥がれやバリ発生を回避することができるので、安全上の問題を回避することができると共に、電池の内抵抗が許容できる範囲にあることも確保でき、電気化学装置の動力学性能を確保できる。
【0053】
負極活物質層と負極集電体との間の粘着は、負極の調製におけるロールプレス工程を制御することで達成できる。具体的に、負極活物質層と負極集電体との間の粘着は、Instron(型番33652)測定装置で測定できる。長さ15~20mmの極片を取り、3M両面テープで鋼板に固定し、テープを負極活物質層の表面に貼り付け、当該テープの一方側を等幅のペーパーテープに接続し、引張機のリミットブロックを適切な位置に調整し、ペーパーテープを上に折り、スライド速度50mm/minで40mmスライドして、180°(即ち、反方向に延伸を行う)での負極活物質層と負極集電体との間の粘着力を測定する。
【0054】
本出願の実施例によれば、前記電気化学装置は関係式Y≦0.417X+Aを満たす。ここで、Xは、前記電気化学装置の充電状態であり、1<X≦1.5である。前記電気化学装置の充電状態が1であると、前記電気化学装置の厚さがAmmであり、前記電気化学装置の充電状態がXであると、前記電気化学装置の厚さがYmmである。ある実施例において、Xは、1.1、1.2、1.3、1.4または1.5である。X、Y及びAが上記の関係式を満たすと、電気化学装置は過充電状態での厚さ変化が小さく、即ち、電気化学装置はほとんど変形しない。
【0055】
本出願で使用される前記負極集電体は、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、発泡ニッケル、発泡銅、導電性金属で覆われたポリマー基板、及びそれらの組み合わせから選ばれることができる。
【0056】
本出願の実施例によれば、前記負極は、さらにバインダーを含み、前記バインダーは、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(エステル)化スチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、及びナイロンなどからなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0057】
正極
正極は、正極集電体及び前記正極集電体に設置された正極活物質を含む。正極活物質の具体的な種類は、特に限定されず、必要に応じて選択すればよい。
【0058】
ある実施態様において、正極活物質は、リチウム(Li)を吸蔵及び放出可能な正極材料を含む。リチウム(Li)を吸蔵及び放出可能な正極材料の例としては、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸バナジウムオキシドリチウム、リン酸鉄リチウム、チタン酸リチウム、及びリチウムリッチマンガン系材料を含んでもよい。
【0059】
具体的には、コバルト酸リチウムの化学式は、化学式1に示される通りであり得る。
(化学式1)
LiCoM12-c 化学式1
ここで、M1は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)及びシリコン(Si)からなる群より選ばれる少なくとも一種を表し、x、a、b及びcの値は、それぞれ、0.8≦x≦1.2、0.8≦a≦1、0≦b≦0.2、-0.1≦c≦0.2の範囲内にある。
【0060】
ニッケルコバルトマンガン酸リチウムまたはニッケルコバルトアルミン酸リチウムの化学式は、化学式2に示される通りであり得る。
(化学式2)
LiNiM22-f 化学式2
ここで、M2は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)及びシリコン(Si)からなる群より選ばれる少なくとも一種を表し、y、d、e及びfの値は、それぞれ、0.8≦y≦1.2、0.3≦d≦0.98、0.02≦e≦0.7、-0.1≦f≦0.2の範囲内にある。
【0061】
マンガン酸リチウムの化学式は、化学式3に示される通りであり得る。
(化学式3)
LiMn2-gM34-h 化学式3
ここで、M3は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びタングステン(W)からなる群より選ばれる少なくとも一種を表し、z、g及びh値は、それぞれ、0.8≦z≦1.2、0≦g<1.0及び-0.2≦h≦0.2の範囲内にある。
【0062】
ある実施例において、前記正極活物質層の重量は、前記負極活物質層の重量の1.5~15倍である。ある実施例において、前記正極活物質層の重量は、前記負極活物質層の重量の3~10倍である。ある実施例において、前記正極活物質層の重量は、前記負極活物質層の重量の5~8倍である。ある実施例において、前記正極活物質層の重量は、前記負極活物質層の重量の1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍または15倍である。
【0063】
ある実施例において、正極活物質層は、表面にコート層を有してもよく、或いはコート層を有する別の化合物と混合してもよい。前記コート層は、塗布元素の酸化物、塗布元素の水酸化物、塗布元素のオキシ水酸化物、塗布元素のオキシ炭酸塩(oxycarbonate)、及び塗布元素のヒドロキシ炭酸塩(hydroxycarbonate)からなる群より選ばれる少なくとも一種の塗布元素化合物を含んでもよい。コート層に使用される化合物は、アモルファスまたは結晶性であってもよい。コート層に含有される塗布元素は、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、F、または、それらの混合物を含んでもよい。正極活物質の性能に悪影響を及ぼさない限り、任意の方法でコート層を形成してもよい。例えば、前記方法は、スプレー、ディッピングなどの、当業者にとって公知の任意の塗布方法を含んでもよい。
【0064】
ある実施態様において、正極活物質層は、バインダーを含み、また、任意に正極導電材をさらに含む。
【0065】
バインダーは、正極活物質粒子同士の結合を高めるとともに、正極活物質と集電体の結合を高めることができる。バインダーの非限定的な例として、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(エステル)化スチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを含む。
【0066】
正極活物質層は正極導電材を含むことにより、電極に導電性を付与する。前記正極導電材は、化学変化を引き起こさない限り、任意の導電材を含んでもよい。正極導電材の非限定的な例として、炭素による材料(例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維など)、金属による材料(例えば、金属粉末、金属繊維など、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含む)、導電性ポリマー(例えば、ポリフェニレン誘導体)、及びそれらの混合物を含む。
【0067】
本出願に記載の電気化学装置に使用される正極集電体は、アルミニウム(Al)でありうるが、これに限定されない。
【0068】
電解液
本出願の実施例に使用される電解液は、先行技術で公知の電解液でありうる。
【0069】
本出願の実施例の電解液に使用される電解質は、例えば、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiSbF、LiSOF、LiN(FSOなどの無機リチウム塩;例えば、LiCFSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、環状1,3-ヘキサフルオロプロパンジスルホンイミドリチウム、環状1,2-テトラフルオロエタンジスルホンイミドリチウム、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSOのフッ素含有有機リチウム塩;例えば、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェートなどのジカルボン酸錯体含有リチウム塩を含むが、これらに限定されない。なお、上述電解質は、一種を単独で使用してもよく、二種または二種以上を同時に使用してもよい。ある実施例において、電解質はLiPFとLiBFの組み合わせを含む。ある実施例において、電解質はLiPFまたはLiBFなどの無機リチウム塩と、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO等のフッ素含有有機リチウム塩との組み合わせを含む。ある実施例において、電解質はLiPFを含む。
【0070】
ある実施例において、電解質の濃度は、0.8mol/L~3mol/Lの範囲内にあり、例えば、0.8mol/L~2.5mol/Lの範囲内にあり、0.8mol/L~2mol/Lの範囲内にあり、1mol/L~2mol/Lの範囲内にあり、また、例えば1mol/L、1.15mol/L、1.2mol/L、1.5mol/L、2mol/Lまたは2.5mol/Lである。
【0071】
本出願の実施例の電解液に使用される溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、リン含有有機溶剤、硫黄含有有機溶剤、芳香族フッ素含有溶剤を含むが、これらに限定されない。
【0072】
ある実施例において、環状カーボネートは、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate,PC)及びブチレンカーボネートを含むが、これらに限定されない。
【0073】
ある実施例において、環状カーボネートは、3~6個の炭素原子を有する。
【0074】
ある実施例において、鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate,DEC)、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、フッ素で置換された鎖状カーボネートとしての、例えば、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロメチル)カーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート、ビス(2-フルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、2-フルオロエチルメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルメチルカーボネート、及び2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネートを含むが、これらに限定されない。
【0075】
ある実施例において、環状カルボン酸エステルは、γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトンを含むが、これらに限定されない。ある実施例において、環状カルボン酸エステルの水素原子の一部はフッ素で置換されてもよい。
【0076】
ある実施例において、鎖状カルボン酸エステルは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、ピバリン酸メチル及びピバリン酸エチルを含むが、これらに限定されない。ある実施例において、鎖状カルボン酸エステルの水素原子の一部はフッ素で置換されてもよい。ある実施例において、フッ素で置換された鎖状カルボン酸エステルは、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸プロピル、トリフルオロ酢酸ブチル及びトリフルオロ酢酸2,2,2-トリフルオロエチルを含むが、これらに限定されない。
【0077】
ある実施例において、環状エーテルは、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、2-メチル-1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン及びジメトキシプロパンを含むが、これらに限定されない。
【0078】
ある実施例において、鎖状エーテルは、ジメトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシメタン、1,1-エトキシメトキシエタン及び1,2-エトキシメトキシエタンを含むが、これらに限定されない。
【0079】
ある実施例において、リン含有有機溶剤は、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸ジメチルエチル、リン酸メチルジエチル、リン酸エチレンメチル、リン酸エチレンエチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、リン酸トリ(2,2,2-トリフルオロエチル)及びリン酸トリ(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)を含むが、これらに限定されない。
【0080】
ある実施例において、硫黄含有有機溶剤は、スルホラン、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルメチルスルホン、メチルプロピルスルホン、ジメチルスルホキシド、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、エタンスルホン酸メチル、エタンスルホン酸エチル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル及び硫酸ジブチルを含むが、これらに限定されない。ある実施例において、硫黄含有有機溶剤の水素原子の一部はフッ素で置換されてもよい。
【0081】
ある実施例において、芳香族フッ素含有溶剤は、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン及びトリフルオロメチルベンゼンを含むが、これらに限定されない。
【0082】
ある実施例において、本出願の電解液に使用される溶媒は上述の一種または複種の溶媒を含む。ある実施例において、本出願の電解液に使用される溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、及びそれらの組み合わせを含む。ある実施例において、本出願の電解液に使用される溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酢酸n-プロピル、酢酸エチル、及びそれらの組み合わせ、からなる群より選ばれる有機溶媒を含む。ある実施例において、本出願の電解液に使用される溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、またはそれらの組み合わせを含む。
【0083】
本出願の実施例の電解液に使用される添加剤は、シアノ基2-3個を有する化合物、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート、硫黄-酸素二重結合を含む化合物、ジフルオロリン酸リチウムを含むが、これらに限定されない。
ある実施例において、シアノ基2-3個を有する化合物は、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(ADN)、エチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル(EDN)、1,3,5-ペンタントリカルボニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル(HTCN)、1,2,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2,3-トリ(2-シアノエトキシ)プロパン(TCEP)または1,2,4-トリ(2-シアノエトキシ)ブタンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0084】
ある実施例において、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネートは、具体的に、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、または1,2-ジメチルビニレンカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むが、これらに限定されない。
ある実施例において、硫黄-酸素二重結合を含む化合物は、エチレンスルファート、1,2-プロパンジオールスルファート、1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトンまたは3-フルオロ-1,3-プロパンスルトンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むが、これらに限定されない。
【0085】
セパレータ
ある実施態様において、正極と負極との間には、短絡を防止するために、セパレータが設けられている。本出願の実施例に使用されるセパレータの材料と形状は、特に制限はなく、先行技術で開示された任意の技術であってもよい。ある実施態様において、セパレータは、本出願の電解液に対して安定である材料からなるポリマーまたは無機物等を含む。
【0086】
例えば、セパレータは、基材層及び表面処理層を含んでもよい。基材層は、多孔質構造を有する、不織布、膜または複合膜であり、基材層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種である。具体的には、ポリプロピレン多孔膜、ポリエチレン多孔膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布、またはポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合膜を選択して使用してもよい。多孔質構造は、セパレータの耐熱性、耐酸化性、電解質浸透性を向上させることができ、セパレータと極片との間の接着性を高めることができる。
【0087】
基材層の少なくとも一つの表面に表面処理層が設置されており、表面処理層は、ポリマー層または無機物層であってもよく、ポリマーと無機物から形成された混合層であってもよい。
【0088】
無機物層は、無機粒子とバインダーを含み、無機粒子は、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び硫酸バリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種である。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン及びポリヘキサフルオロプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0089】
ポリマー層には、ポリマーを含み、ポリマーの材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0090】
電気化学装置
本出願は、正極、電解液、及び負極を含む電気化学装置であって、前記正極が正極活物質層及び正極集電体を含み、前記負極が負極活物質層及び負極集電体を含み、前記負極活物質層が本出願に記載の負極活物質を含む電気化学装置をさらに提供する。
【0091】
本出願の電気化学装置は、電気化学反応が起こる任意の装置を含み、その具体例として、すべての種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池、またはコンデンサが含まれる。特に、当該電気化学装置は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、またはリチウムイオンポリマー二次電池を含むリチウム二次電池である。
【0092】
電子装置
本出願は、本出願に記載の電気化学装置を含む電子装置をさらに提供する。
【0093】
本出願の電気化学装置の使用は、特に制限はなく、先行技術で公知の任意の電子装置に使用してもい。ある実施態様において、本出願の電気化学装置は、ノートパソコン、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニCD、トランシーバー、電子ノートブック、計算機、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、大型家庭用ストレージバッテリー及びリチウムイオンコンデンサーなどに使用されうるが、これらに限定されない。
【0094】
以下では、リチウムイオン電池を例として挙げ、具体的な実施例を参照してリチウムイオン電池の調製を説明し、当業者は、本出願に記載の調製方法が単なる例示であり、他のいかなる好適な調製方法が本出願の範囲内にあることを理解すべきである。
【0095】
実施例
以下では、本出願に記載のリチウムイオン電池の実施例及び比較例を説明し、性能評価を行う。
【0096】
一、リチウムイオン電池の調製
1、負極の調製
溶媒である脱イオン水に、負極活物質の材料である黒鉛、スチレンブタジエンゴム(SBRと略記する)及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCと略記する)を重量比95:2:3で十分に撹拌して混合し、均一な負極スラリーとした。このスラリーを、予め厚さが1.0μmであるアンダーコート層(例えば、カーボンブラック)を塗布した集電体である銅箔の両表面に塗布し、乾燥した後、冷間プレスして、負極活物質層が得られ、切片し、タブを熔接して、負極が得られた。負極活物質層の重量は、0.100mg/mmであり、負極活物質層の厚さは130μmである。負極活物質層の重量は、負極集電体のいずれかの表面上の負極活物質層の重量である。
【0097】
負極活物質の幅長比及び球形度は、以下のような方式で制御できる。負極活物質の調製において、調製された黒鉛をフィードシステムを通って、整形区で研磨し、粒子表面に角を作りさせることにより、粒子の幅長比及び球形度を制御した。研磨された粒子を自動分流分級区を通って分級し、所望の分布の粒子が得られた。
【0098】
負極活物質一次粒子とは、破砕して得られた一定の粒子粒度分布がある粒子を、黒鉛化してなるサンプルである。負極活物質二次粒子とは、破砕してから一定の割引のアスファルトと混合し、造粒装置により、一定の温度下で熱処理して、粒子と粒子との間がアスファルトで粘着してから、黒鉛化してなる二次粒子である。負極活物質における一次粒子の含有量は、一次粒子と二次粒子の混合割引を制御することで得られた。
【0099】
負極活物質粉末の圧縮密度の測定方法は、粉末1gを金型(直径13mm)に置いてから、その金型を自動粉圧測試設備(SUNS UTM7305)にセットし、当該設備により金型に一定の圧力を加えて、最終的に、粉末の5tの条件での粉末圧縮密度を測定した。
【0100】
2、正極の調製
適量の溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)に、コバルト酸リチウム(LiCoO)、アセチレンブラック、及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を96:2:2の重量比で十分に攪拌して混合し、均一な正極スラリーとする。このスラリーを正極集電体であるアルミニウム箔に塗布して、乾燥、冷間プレス、切片、裁断した後、正極が得られた。
【0101】
3、電解液の調製
含水量10ppm未満のアルゴンガス雰囲気のグローブボックスに、エチレンカーボネート(ECと略記する)、ジエチルカーボネート(DECと略記する)及びプロピレンカーボネート(PCと略記する)を3:4:3の質量比で均一に混合して、また十分に乾燥されたリチウム塩LiPF6を上記の非水溶媒に溶解し、フルオロエチレンカーボネート3wt%、1,3-プロパンスルトン2wt%、ブタンジニトリル2wt%を添加して、電解液とした。
【0102】
4、セパレータの調製
厚さ7μmのポリエチレン(PE)多孔質ポリマーフィルムをセパレータとした。
【0103】
5、リチウムイオン電池の調製
セパレータが正極と負極の間に介在して隔離の役割を果たすように、正極、セパレータ、負極を順に積層してから、巻き取って、ベアセルが得られた。タブを熔接した後、ベアセルをアルミニウム包材外装に置き、乾燥を行い、上述の調製された電解液を乾燥したベアセルに注入し、真空パッケージ、静置、化成、整形、容量測定などの工程を経って、ソフトパックリチウムイオン電池が得られた。
【0104】
二、測定方法
1、負極活物質の幅長比分布の測定方法
SYMPATEC QICPIC動的粒子画像解析装置を使用し、負極活物質の幅長比分布を測定する。
【0105】
2、負極活物質の球形度分布の測定方法
SYMPATEC QICPIC動的粒子画像解析装置を使用し、負極活物質の球形度分布を測定する。
【0106】
3、負極活物質層と負極集電体の間の粘着力の測定方法
負極活物質層と負極集電体との間の粘着は、Instron(型番33652)測定装置で測定する。長さ15~20mmの極片を取り、3M両面テープで鋼板に固定し、テープを負極活物質層の表面に貼り付け、当該テープの一方側を等幅のペーパーテープに接続し、引張機のリミットブロックを適切な位置に調整し、ペーパーテープを上に折り、スライド速度50mm/minで40mmスライドして、180°(即ち、反方向に延伸を行う)での負極活物質層と負極集電体との間の粘着力を測定する。
【0107】
4、負極活物質層のC004/C110の測定方法
中華人民共和国機械工業規格JB/T4220-2011「人造黒鉛の格子定数の測定方法」に従い、負極活物質層のX線回折パターンにおける(004)面回折線パターンと(110)面回折線パターンを測定した。試験条件は以下の通りである。X線は、CuKα輻射を採用し、CuKα輻射はフィルターまたはモノクロメーターによって除去する。X線管の作動電圧は(30-35)kVであり、作動電流は(15-20)mAである。カウンターの走査速度は1/4(°)/minである。(004)面回折線パターンを記録する際に、回折角2θの走査範囲は53°-57°である。(110)面回折線パターンを記録する際に、回折角2θの走査範囲は75°-79°である。(004)面回折線パターンから得られたピーク面積をC004とする。(110)面回折線パターンから得られたピーク面積をC110とする。負極活物質層のC004/C110の比を計算する。
【0108】
5、負極活物質層の空隙率の測定方法
サンプルである負極活物質層を完全なウェーハに調製する。各実施例または比較例において、30個のサンプルを測定し、各サンプルの体積は約0.35cmである。「GB/T24586-2009鉄鉱石見かけ密度、真密度、空隙率の測定」規格に従って、負極活物質層の空隙率を測定する。
【0109】
6、負極活物質層の浸透時間の測定方法
サンプルとして、長さ50mm、幅50mmの負極活物質層を取り、乾燥条件で電解液5mLをサンプルの表面に滴下し、計時を開始する。サンプルの表面の電解液が完全になくなった時、計時を停止する。その計時時間を負極活物質層の浸透時間とする。各実施例または比較例では、30個のサンプルを測定し、平均値を得る。
【0110】
7、リチウムイオン液相伝達インピーダンス(Rion)の測定方法
リチウムイオン電池をフランスBio-Logic社製のBio-Logic VMP3B電気化学ワークステーションに接続して測定する。ここで、周波数範囲は30mHz~50kHzであり、振幅は5mVである。データを収集し、複素インピーダンス平面図を使用してデータを分析し、リチウムイオン電池の液相伝達インピーダンス(Rion)が得られる。
【0111】
8、リチウムイオン電池の2C放電容量維持率の測定方法
リチウムイオン電池を25oCで5分静置した後、0.7Cの電流にて電圧4.45Vまで定電流充電し、また4.45Vの定電圧にて0.05Cまで充電し、5分間静置する。そして、0.5Cの電流にて電圧3.0Vまで定電流放電し、5分間静置する。上記の充放電プロセスを繰り返し、0.1Cで電圧3.0Vまで放電し、リチウムイオン電池の0.1C放電容量を記録し、そして2Cで電圧3.0Vまで放電し、リチウムイオン電池の2C放電容量を記録する。以下の式により、リチウムイオン電池の2C放電容量維持率を計算する。
2C放電容量維持率=2C放電容量/0.1C放電容量×100%。
【0112】
9、リチウムイオン電池の-20oCでの放電容量維持率の測定方法
リチウムイオン電池を25oCで5分静置する。リチウムイオン電池を0.7Cの電流にて電圧4.45Vまで定電流充電し、また4.45Vの定電圧にて0.05Cまで充電し、5分間静置する。そして、0.5Cの電流にて電圧3.0Vまで定電流放電し、リチウムイオン電池の25oCでの放電容量を測定する。オーブン温度を-20℃に調節し、上記の充放電プロセスを繰り返し、リチウムイオン電池の-20oCでの放電容量を測定する。以下の式により、リチウムイオン電池の-20oCでの放電容量維持率を計算する。
放電容量維持率=-20℃放電容量/25oC放電容量×100%。
【0113】
10、リチウムイオン電池の直流抵抗(DCR)の測定方法
25oCで、リチウムイオン電池を1.5Cの定電流にて4.45Vまで充電し、また4.45Vの定電圧にて0.05Cまで充電し、30分静置する。0.1Cにて10秒放電し、電圧値をU1として記録して、1Cにて360秒放電し、電圧値をU2として記録する。充放電のステップを5回繰り返す。「1C」は、リチウムイオン電池容量を1時間内で完全に放電完了の電流値である。
【0114】
以下の式により、リチウムイオン電池の25oCでの直流抵抗Rを計算する。
R=(U2-U1)/(1C-0.1C)
【0115】
作業温度が0oCである以外は、基本的に同じ方法で、リチウムイオン電池の0oCでの直流抵抗を測定する。
【0116】
本出願の前記DCRとは、別に断らない限り、リチウムイオン電池の10%充電状態(SOC)での直流抵抗を指す。
【0117】
11、リチウムイオン電池のリチウム析出現象の判断方法
リチウムイオン電池を25oCで5分静置する。実施例または比較例の設置によれば、リチウムイオン電池を0.7Cまたは2Cの電流にて4.45Vまで定電流充電し、また4.45Vの定電圧にて0.05Cまで充電し、5分静置する。そして、0.5Cの電流にて3.0Vまで定電流放電し、5分静置する。上述充放電プロセスを10回繰り返す。電池を満充電し、乾燥条件で分解し、負極の状態を写真を撮って記録する。
【0118】
以下の基準に従って、リチウムイオン電池のリチウム析出の程度を判定する。
分解された負極が全体として黄金色で、そのごく一部が灰色で観察され、且つ灰色の領域の面積が2%未満の場合、リチウム析出がないと判定する。
分解された負極の大部分が黄金色で、一部の位置に灰色が観察され、且つ灰色の領域の面積が2%~20%の場合、軽微なリチウム析出と判定する。
分解された負極の全体として灰色で、一部の位置に黄金色が観察され、且つ灰色の領域の面積が20%~60%の場合、リチウム析出と判定する。
分解された負極の全体として灰色で、且つ灰色の領域の面積が60%超の場合、重度なリチウム析出と判定する。
【0119】
12、リチウムイオン電池の電荷移動抵抗(Rct)の測定方法
上記のリチウムイオン電池の調製において、基準電極として銅糸を接続し、20μAの電流にて負極にリチウムを6時間メッキし、三電極リチウム電池が得られた。
【0120】
その三電極リチウムイオン電池をフランスBio-Logic社製のBio-Logic VMP3B電気化学ワークステーションに接続して測定する。ここで、周波数範囲は30mHz~50kHzであり、振幅は5mVである。データを収集し、複素インピーダンス平面図を使用してデータを分析し、リチウムイオン電池の電荷移動抵抗(Rct)が得られた。
【0121】
13、負極のX/Y方向への膨張率の測定方法
電荷結合素子(CCD)を使用して、冷間プレスされた負極のX/Y方向への幅H1を測定する。リチウムイオン電池の調製ステップに従って、負極をリチウムイオン電池に制作し、そのリチウムイオン電池を25oCで5分静置した後、0.7Cの電流にて4.45Vまで定電流充電し、また4.45Vの定電圧にて0.05Cまで充電する。乾燥条件でリチウムイオン電池を分解し、分解された負極が得られた。電荷結合素子(CCD)を使用して、負極のX/Y方向への(図3に示すように)幅H2を測定する。以下の式により、負極のX/Y方向への膨張率を計算する。
X/Y方向への膨張率=(H2-H1)/H1×100%。
【0122】
14、負極のZ方向への膨張率の測定方法
一定の圧縮密度(1.78g/cc)処理を経た負極の厚さを測定し、T1とする。リチウムイオン電池の調製ステップに従って、負極をリチウムイオン電池に制作し、そのリチウムイオン電池を25oCで5分静置した後、0.7Cの電流にて3.95Vまで定電流充電する(即ち、50%SOC)。乾燥条件でリチウムイオン電池を分解し、分解された負極が得られた。少なくとも負極の14個箇所の厚さを記録し、平均値を求めて、T2とする。以下の式により、負極のZ方向への膨張率を計算する。
Z方向への膨張率=(T2-T1)/T1×100%。
【0123】
15、リチウムイオン電池のサイクル膨張率及びリサイクル変形率の測定方法
チウムイオン電池を45oCで5分静置した後、0.7Cの電流にて4.45Vまで定電流充電し、また4.45Vの定電圧にて0.05Cまで充電し、5分静置する。PPG測定方法でリチウムイオン電池の三つの異なる箇所の厚さを測定し、平均値を求めて、PPGとする。MMC測定方法でリチウムイオン電池の三つの異なる箇所の厚さを測定し、平均値を求めて、MMCとする。そして、リチウムイオン電池を0.5Cの電流にて3.0Vまで定電流放電し、5分間静置する。上記の充放電サイクルを500回繰り返し、その中では、1-200回目の充放電サイクルにおいて、50回ずつ電池の厚さを記録する。300-500回目の充放電サイクルにおいて、100回ずつ電池の厚さを記録する。毎回の測定において、リチウムイオン電池の三つの箇所の厚さを測定し、平均値を求めて、三つの箇所で測定されたMMC厚さの最大値をMax(MMC)とする。MMCとMMCの差は電池厚さ増加値とする。
以下の式により、リチウムイオン電池の45oCでのサイクル膨張率を計算する。
サイクル膨張率(45oC)=MMC-MMC/MMC×100%。
【0124】
以下の式により、リチウムイオン電池の45oCでのサイクル変形率を計算する。
サイクル変形率(45oC)=[PPG/Max(MMC)-1]×100%。
【0125】
前記PPG測定方法は、以下の通りである。PPGソフトパック電池厚さ測定器(Shenzhen Automate technology Co., Ltd.製)を使用し、リチウムイオン電池を厚さ測定器の下パネルに置き、測定において上カバーを等速で下がって、圧力センサによりリチウムイオン電池の厚さを測定し、PPG厚さとする。
【0126】
前記MMC測定方法は、以下の通りである。マイクロメータ測定装置(日本ミツトヨ製、型番:MDC-25SX)を使用し、リチウムイオン電池正極タブにおける厚さを測定し、サンプルごとに三つの異なる箇所を測定し、平均値を求めて、MMC厚さとする。
【0127】
作業温度が25oCである以外は、基本的に同じ方法で、リチウムイオン電池の25oCでのサイクル膨張率及びサイクル変形率を測定する。
【0128】
16.リチウムイオン電池の150%SOCでの変形率の測定方法
リチウムイオン電池を25℃で5分間静置した後、0.5Cの電流にて4.45Vまで定電流充電し、また4.45Vの定電圧にて0.025Cまで充電する(即ち、100%SOCであり、充電状態が1であるとも称する)。そして、0.1Cの電流にて1時間定電流充電し、30分間静置する。0.1Cの定電流充電を5回繰り返し、その中では、1回目、2回目、3回目、4回目及び5回目の充電は、それぞれ110%SOC(即ち、充電状態が1.1である)、120%SOC(即ち、充電状態が1.2である)、130%SOC(即ち、充電状態が1.3である)、140%SOC(即ち、充電状態が1.4である)及び150SOC%(即ち、充電状態が1.5である)まで到達し、毎回の充電時間は1時間であり、毎回の充電終了後、30分間静置する。5サイクルを経った後、PPG測定方法でリチウムイオン電池の150%SOCでの三つの異なる箇所の厚さを測定し、平均値を求めて、PPGとする。MMC測定方法でリチウムイオン電池の150%SOCでの三つの異なる箇所の厚さを測定し、最大値を求めて、Max(MMC)とする。以下の式により、リチウムイオン電池の150%SOCでの変形率を計算する。
150%SOC変形率=[PPG/Max(MMC)-1]×100%。
【0129】
三、測定結果
表1は、負極活物質の幅長比分布及び球形度分布がリチウムイオン電池の性能に対する影響を示す。結果から、負極活物質の幅長比分布及び球形度分布が要件0.4≦AR10≦0.55、0.48≦S10≦0.60、0.6≦AR50≦0.75、0.68≦S50≦0.82、0.82≦AR90≦0.90、0.85≦S90≦0.95を満たすと、異なる形状の負極活物質粒子を組み合わせて使用することにより、円やかな負極活物質の間に空隙が形成され、細長くて角がある負極活物質粒子がこれらの空隙に充填され、負極活物質全体は、円やかであるが、ある程度の角がある外観形態を呈させるため、リチウムイオン電池の高温サイクル膨張率及び直流抵抗(DCR)を大幅に低減させ、かつサイクル中でリチウムイオン電池にリチウム析出現象を発生させなく、即ち、リチウムイオン電池の性能を大幅に向上することが分かる。
【0130】
【表1】
【0131】
表2は、負極活物質層の配向がリチウムイオン電池の性能に及ぼす影響を示す。
【0132】
結果から、粒子幅長比及び球形度が小さくなり、負極活物質層のC004/C110値が増加するにつれて、負極活物質層のZ方向への膨張率を低減させ、電池の厚さの増加値が低減することが分かる。負極活物質の幅長比及び球形度分布が要件0.4≦AR10≦0.55、0.48≦S10≦0.60、0.6≦AR50≦0.75、0.68≦S50≦0.82、0.82≦AR90≦0.90、0.85≦S90≦0.95を満たしたうえで、負極活物質層のC004/C110値が10~20の範囲内にあると、リチウムイオンの挿入と脱離による応力を各方向に均一に解放させて、Z方向及びX/Y方向への膨張率がバランスを取れ、これにより、リチウムイオン電池の過充電変形率、厚さの増加値及びサイクル変形率を大幅に低減することができ、即ち、リチウムイオン電池の変形問題を大幅に改善することができる。
【0133】
【表2】
【0134】
表3は、負極活物質における一次粒子の割合、圧縮密度、負極活物質層の重量及びコート層がリチウムイオン電池の性能に及ぼす影響を示す。表3にリストされているパラメータ以外、実施例28-39のパラメータは、実施例10と同じである。
【0135】
【表3】
【0136】
結果から、負極活物質における一次粒子の割合が増加するにつれて、負極活物質の圧縮密度が増加することがわかる。負極活物質における一次粒子の割合が同じである場合、負極活物質層の重量を低減することにより、負極活物質層の厚さを低減することができ、これにより、リチウムイオンが粒子と粒子との間の空隙を通って集電体の近くに入る電荷移動抵抗(Rct)が減少するとともに、リチウムイオン電池のリチウム析出現象を改善することができる。また、コート層(即ち、導電層)を設置することにより、リチウムイオンの伝導速度を増大することができ、リチウムイオン電池の電荷移動抵抗(Rct)を低減することができ、これにより、リチウムの高レート挿入におけるリチウム析出現象を改善することができる。
【0137】
表4は、負極活物質層の空隙率がリチウムイオン電池の性能に及ぼす影響を示す。
【0138】
【表4】
【0139】
結果から、負極活物質層の空隙率が20%~45%の範囲内にあると、電解液の負極活物質層への浸透時間が大幅に短縮し、リチウムイオンの液相伝達インピーダンス(Rion)、リチウムイオン電池の電荷移動抵抗(Rct)及び直流抵抗(DCR)のいずれも大幅に低減することにより、リチウムイオン電池の2C放電レート及びリチウム析出現象を大幅に改善することができるので、リチウムイオン電池のレート特性を大幅に改善することができることがわかる。
【0140】
明細書全体では、「実施例」、「実施例の一部」、「一つの実施例」、「別の例」、「例」、「具体例」または「部分的例」による引用は、本出願の少なくとも一つの実施例または例は、当該実施例または例に記載の特定の特徴、構造、材料または特性を含むことを意味する。したがって、明細書全体の各箇所に記載のこと、例えば「ある実施態様において」、「ある実施例において」、「一つの実施例において」、「別の例において」、「一つの例において」、「特定の例において」または「例」は、必ずしも本出願の同じ実施例または例を引用するわけではない。また、本明細書の特定の特徴、構造、材料、または特性は、一つまたは複数の実施例または例において、任意の好適な形態で組み合わせることができる。
【0141】
例示的な実施例が開示及び説明されるが、当業者は、上述実施例が本出願を限定するものとして解釈されることができなく、かつ、本出願の技術思想、原理、及び範囲から逸脱しない場合に実施例を変更、置換及び変更することができること、を理解すべきである。
図1
図2
図3
図4