(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】空気調和機の室内ユニット
(51)【国際特許分類】
F24F 13/10 20060101AFI20230302BHJP
F24F 1/0011 20190101ALI20230302BHJP
F24F 1/0029 20190101ALI20230302BHJP
【FI】
F24F13/10 E
F24F1/0011
F24F1/0029
(21)【出願番号】P 2021519452
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2020019068
(87)【国際公開番号】W WO2020230808
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2019090759
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小見山 嘉浩
(72)【発明者】
【氏名】岡田 成浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠
(72)【発明者】
【氏名】シネム マ
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-141945(JP,U)
【文献】実開昭54-178444(JP,U)
【文献】実開昭52-024760(JP,U)
【文献】特開2010-243081(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03006837(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/10
F24F 1/0011
F24F 1/0029
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に吸込口を有し、底面に開口を有して、設置場所の上方に設置可能な筐体と、
前記筐体の内部に設けられて前記吸込口に対面する熱交換器と、
前記筐体の上下方向へ延びる回転軸の周方向に放射状に配列される複数のブレードを有し、かつ前記筐体の底面視で前記熱交換器に囲まれ、前記吸込口から空気を吸い込み、前記熱交換器で熱交換された空気を前記開口から前記筐体の下方へ向けて吹き出させる軸流ファンと、
前記開口から吹き出す空気を案内する筒状の送風ガイドと、
前記送風ガイドの突出位置を変更する駆動力を発生させる複数の駆動機構と、
前記複数の駆動機構を制御して前記送風ガイドの突出位置を調整する制御部と、を備え、
前記送風ガイドは、前記筐体に設けられ
、前記ブレードの後縁より下方へ突出する位置を調整可能で
あり、かつ可撓性を有して前記軸流ファンの前記回転軸の延長線に対して交差する方向へ屈曲可能であって、
前記制御部は、前記複数の駆動機構を制御して前記送風ガイドを屈曲させて、前記ブレードの後縁より下方への前記送風ガイドの突出量を、前記軸流ファンの回転方向において異ならせることが可能な空気調和機の室内ユニット。
【請求項2】
前記送風ガイドは、前記軸流ファンの外径より大きい内径を有する請求項1に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項3】
前記制御部は、空気調和機の停止時には前記送風ガイドを前記ブレードの後縁に最も近い位置に移動させるよう前記駆動機構を動作させる請求項
1または2に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項4】
前記送風ガイドの先端に設けられるファンガードを備える請求項1から
3のいずれか1項に記載の空気調和機の室内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和機の室内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
天井裏空間の空気を調和して室内に供給する空気調和装置の室内機が知られている。この種の室外機は、ケーシングと、軸流ファンであるプロペラファンと、熱交換器と、を備えている。
【0003】
ケーシングは、側面に設けられた吸込口と、底面に設けられた吹出口と、を有している。ファンは、ケーシング内に配置され、吸込口から吹出口に向かう空気流れを生じさせる。熱交換器は、ケーシング内、かつファンと吸込口との間に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の室内機は、丸形のコーン状の複数の羽根を有する吹出口、いわゆるアネモスタットを備えていたり、長尺の筒状の送風ガイドを備えていたりする。これらアネモスタットや送風ガイドは、筐体に固定されていた。そのため、従来の室内機は、軸流ファンから吹き出す空気の風向を様々に変化させることができず、予め定められた方向へのみ吹き出すことしかできなかった。
【0006】
そこで、本発明は、軸流ファンから吹き出る空気の風向を簡易な構造で様々に変化させることが可能な空気調和機の室内ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る空気調和機の室内ユニットは、側面に吸込口を有し、底面に開口を有して、設置場所の上方に設置可能な筐体と、前記筐体の内部に設けられて前記吸込口に対面する熱交換器と、前記筐体の上下方向へ延びる回転軸の周方向に放射状に配列される複数のブレードを有し、かつ底面視で前記熱交換器に囲まれ、前記吸込口から空気を吸い込み、前記熱交換器で熱交換された空気を前記開口から前記筐体の下方へ向けて吹き出させる軸流ファンと、前記開口から吹き出す空気を案内する筒状の送風ガイドと、前記送風ガイドの突出位置を変更する駆動力を発生させる駆動機構と、前記駆動機構を制御して前記送風ガイドの突出位置を調整する制御部と、を備え、前記送風ガイドは、前記筐体に設けられ、前記ブレードの後縁より下方へ突出する位置を調整可能であり、かつ可撓性を有して前記軸流ファンの前記回転軸の延長線に対して交差する方向へ屈曲可能であって、前記制御部は、前記駆動機構を制御して前記送風ガイドを屈曲させて、前記ブレードの後縁より下方への前記送風ガイドの突出量を、前記軸流ファンの回転方向において異ならせることが可能である。
【0008】
本発明の実施形態に係る室内ユニットの前記送風ガイドは、前記軸流ファンの外径より大きい内径を有することが好ましい。
【0011】
本発明の実施形態に係る室内ユニットの前記制御部は、空気調和機の停止時には前記送風ガイドを前記ブレードの後縁に最も近い位置に移動させるよう前記駆動機構を動作させることが好ましい。
【0012】
本発明の実施形態に係る室内ユニットは、前記送風ガイドの先端に設けられるファンガードを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軸流ファンから吹き出る空気の風向を簡易な構造で様々に変化させることが可能な空気調和機の室内ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る室内ユニットが設けられた設置場所を示す図。
【
図2】本発明の実施形態に係る室内ユニットの概略的な縦断面図。
【
図3】
図2のIII-III線における本発明の実施形態に係る室内ユニットの概略的な横断面図。
【
図4A】本発明の実施形態に係る室内ユニットの概略的な縦断面図。
【
図4B】本発明の実施形態に係る室内ユニットの概略的な縦断面図。
【
図5】本発明の実施形態に係る室内ユニットの概略的な縦断面図。
【
図6】本発明の実施形態に係る室内ユニットの第二例の概略的な縦断面図。
【
図7】本発明の実施形態に係る室内ユニットの第二例の概略的な縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る空気調和機の室内ユニットの実施形態について
図1から
図7を参照して説明する。なお、複数の図面中、同一または相当する構成には同一の符号を付している。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る室内ユニットが設けられた設置場所を示す図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る空気調和機は、室外に設置される室外ユニット(図示略)と、室内に設置される室内ユニット1と、を備えている。室外ユニットと室内ユニット1とは、冷媒を循環させる冷媒配管RPを介して接続されている。空気調和機の冷凍サイクルは、室外ユニットと室内ユニット1との間で冷媒を循環させる。
【0018】
室内ユニット1は、室内、つまり設置場所の空気を調和する。設置場所は、床FL、壁WA、および天井SEに囲まれている。室内ユニット1は、設置場所の構造物、具体的には天井SEや梁(図示省略)に吊り下げられている。設置場所の天井SEには、床面方向に延びる金属棒状の吊り下げ部材HBが設けられている。室内ユニット1は、吊り下げ部材HBを介して天井SEに吊り下げられている。つまり、室内ユニット1は、天井SEよりも低い位置に設けられている。
【0019】
このように、室内ユニット1は、筐体5が天井SEに埋め込まれることなく、天井SEから離間し、室内に剥き出しの状態で配置される剥き出し式の天井吊下げ式の室内機である。
【0020】
設置場所の天井SEには、吊り下げタイプの照明装置、いわゆるペンダントライトPLが設置されている。
【0021】
なお、室内ユニット1は、筐体5が天井SEに埋め込まれて天井裏の空気を調和し室内へ吹き出すことが可能な天井埋込式のユニットであってもよい。換言すると、室内ユニット1は、天井吊下げ式、および天井埋込式を含む天井設置可能な天井設置式のユニットである。
【0022】
図1に加えて、
図2および
図3に示すように、本実施形態に係る室内ユニット1は、円形の天面および円形の底面を有する円柱形または円盤形の筐体5と、筐体5の内部に設けられて筐体5の底面視で環状に配置される熱交換器6と、筐体5のほぼ中心において、上下方向へ延びる回転軸7を有するファンモーター8と、回転軸7の周方向に放射状に配列される複数のブレード9を有し、かつ筐体5の底面視で熱交換器6に囲まれる軸流ファン10、いわゆるプロペラファンと、筐体5から吹き出す空気を案内する筒状の送風ガイド12と、熱交換器6の下方に設けられて熱交換器6の表面で生じる結露水を受けるドレンパン13と、軸流ファン10を保護するファンガード15と、を備えている。
【0023】
図2に示すように筐体5は、天面を塞ぐ上面板21を備えている。上面板21は、天井SEに埋め込み固定された吊り下げ部材HBに固定される。
【0024】
筐体5の外周面、つまり筐体5の側面には、室内ユニット1の周囲から空気Kを吸い込む吸込口22を有する側面板23が設けられている。吸込口22は複数あって筐体5の外周面の全周に渡って実質的に均等に並んでいる。それぞれの吸込口22は、湾曲した矩形の窓状に開口されている。つまり、側面板23は吸込口22の枠体である。
【0025】
筐体5の底面には、空気Kを下向きに吹き出す下面開口25を有して、実質的に円形の下面板26が設けられている。下面板26の中央にある下面開口25は、筐体5の底面の中央部に位置する。下面開口25を画定する下面板26の内周側の縁部は、軸流ファン10のベルマウスに連なっている。
【0026】
筐体5の上面板21および筐体5の下面板26のそれぞれは、側面板23に締結部材、例えばねじ(図示省略)によって固定されて一体化されている。
【0027】
筐体5の天面と側面との境界部分、および筐体5の底面と側面との境界部分は、角のない、円弧形を有している。つまり、室内ユニット1は、角Rを有する円柱形、または角Rを有する円盤形の筐体5を備えている。
【0028】
なお、筐体5は、多角柱形、または多角盤形であっても良い。例えば、筐体5の天面および底面の形状は、五角形以上の多角形状であっても良い。軸流ファン10による送風効率向上の観点から、筐体5は、正多角柱形、または正多角盤形であればなお良い。
【0029】
室内ユニット1は、軸流ファン10の回転によって室内の空気Kを筐体5の側面の吸込口22から吸い込んで、筐体5の底面の下面開口25から吹き出させる。吊下げ型として部屋に設置すれば、室内ユニット1は、天井SEの近くに沿って流れる空気Kを、床FLに向けて流すことができる。室内ユニット1から床FLに到達した空気Kは、壁WAに沿って流れて再び天井SEの近くに戻り、室内ユニット1によって循環される。そのため、室内ユニット1は、室内の空気Kを効率よく循環させることができる。室内ユニット1は、空調対象である設置場所の中央部に設けられることが好ましい。
【0030】
なお、筐体5の天面、つまり上面板21を天井SEに近接させて設置場所に室内ユニット1を設置しても良い。例えば、天井SEが低く、室内ユニット1を天井SEから吊り下げると居住性を阻害してしまう場合には、室内ユニット1を天井SEに近接させて設置することが好適である。
【0031】
筐体5の内側、かつ上面板21の下面には、ファンモーター8の取付基部28が設けられている。取付基部28は、例えば、上面板21から離れるほど、換言すると、下方にゆくほど窄まる錐台形状を有している。取付基部28は、側面視において円錐の中心側へ向かって窪んで湾曲する側面28aを有している。取付基部28の突出側の端面、つまり径の小さい方の底面は、筐体5のほぼ中央に位置している。取付基部28の小さい方の底面の下面には、ファンモーター8が固定されている。
【0032】
熱交換器6は、固定部材31を介して筐体5の上面板21に固定されている。熱交換器6は、
図3の通り筐体5の底面視で環状に配置されている。熱交換器6は、
図2に示すように筐体5の縦断面視で上下方向に長い長方形状を有している。熱交換器6の外周面は、吸込口22に対面している。熱交換器6の内周面は、ファンモーター8の取付基部28の湾曲する側面28aに対面している。軸流ファン10のブレード9の回転軌跡が描く円と熱交換器6を結ぶ最短距離は、軸流ファン10の全周にわたって実質的に同一に設定されている。このような軸流ファン10と熱交換器6との配置の関係は、軸流ファン10による送風を熱交換器6全体に渡って均一化させる。
【0033】
熱交換器6は、整列する多数のアルミ製のフィンと、多数のフィンを貫通する冷媒パイプと、を備えている。熱交換器6は、平板状の熱交換器を環状に曲げた成形品である。環状に曲げられた熱交換器6の両端部間の隙間は、
図3に示すように熱交換前後間の空気の流通を遮断するための閉塞板32で塞がれている。
【0034】
軸流ファン10は、ファンモーター8によって回転駆動される。回転する軸流ファン10は、筐体5の周囲の空気Kを吸込口22から吸い込み、熱交換器6で熱交換された空気Kを下面開口25から筐体5の下方へ向けて吹き出させる。
【0035】
筐体5の底面視において、環状な熱交換器6の中心、軸流ファン10の回転中心、および円形の下面開口25の中心は、一致している。軸流ファン10の直径Dは、下面開口25の直径よりもわずかに小さい。
【0036】
軸流ファン10は、回転軸7に固定されるハブ35と、ハブ35に一体化された複数のブレード9と、を備えている。回転軸7は、
図1のように室内ユニット1を設置した状態で、鉛直方向に延びる。ブレード9の後縁9aは、筐体5の下面開口25から突出しない。筐体5の上下方向において、ブレード9の後縁9aの最下端の位置は、筐体5の下面開口25の位置に実質的に一致している。つまり、下面開口25を有する筐体5の下面板26の下面の高さ位置は、ブレード9の後縁9aの最下端の高さ位置に実質的に一致している。
【0037】
軸流ファン10の回転駆動によって、吸込口22から吸い込まれて筐体5の中心に向かう空気Kの流れは、取付基部28の湾曲する側面28aによって、筐体5の下方へ円滑に導かれて下面開口25へ向かう。取付基部28は、軸流ファン10の送風特性を向上させつつ、ファンモーター8を支持する構造的強度を向上させる。
【0038】
筐体5の下面開口25の周囲に設けられた筒状の送風ガイド12は、筐体5の下面開口25から吹き出す空気を案内する。送風ガイド12の内面の形状は、軸流ファン10のブレード9の回転軌跡と同じく円形である。送風ガイド12は、軸流ファン10の外径より大きい内径を有している。送風ガイド12の下端側の開口は、室内ユニット1全体の吹出口37である。
【0039】
吹出口37は、室内ユニット1の底面視で円形状を有している。吹出口37には、ファンガード15が設けられている。すなわち、ファンガード15は、送風ガイド12の先端、つまり室内ユニット1の据付状態で送風ガイド12の下端部に固定されている。
【0040】
送風ガイド12は、筐体5に設けられ、かつ軸流ファン10のブレード9の後縁9aより下方へ突出する位置を調整可能である。つまり、送風ガイド12は、筐体5の下面板26に設けられて下方へ開放する凹部38に収容された収納位置と、筐体5の下方へ向かって突出した突出位置との間を往復移動することが可能である。筐体5の下面板26の下面の高さ位置がブレード9の後縁9aの最下端の高さ位置に実質的に一致しているので、送風ガイド12の突出位置は、ブレード9の後縁9aの最下端、または筐体5の下面板26の下面を基準位置として、基準位置よりも下方の範囲にある。
【0041】
ドレンパン13は、水受部を有する断熱材である。ドレンパン13は、筐体5の下面板26上に載置されて一体化されている。このようなドレンパン13の支持構造は、ドレンパン13を別部材で保持する場合に比べて室内ユニット1の部品点数を低減させ、製造コストを低減させることができる。
【0042】
ドレンパン13は、熱交換器6の真下に配置されている。熱交換器6が蒸発器として機能する冷房運転時には、熱交換器6を通過する空気Kに含まれる水分、つまり室内の湿気が熱交換器6の表面で結露し、結露水として熱交換器6に付着し、熱交換器6から滴り落ちる。ドレンパン13は、この熱交換器6から落ちる結露水を受ける。
【0043】
ドレンパン13は、縦断面視で略U字形状または略C字形状を有している。筐体5の底面視で環状のドレンパン13は、軸流ファン10の周囲を囲んでいる。ドレンパン13は、熱交換器6の真下から下面開口25の縁部に拡がっている。つまり、ドレンパン13は、軸流ファン10の外縁に近接する下面開口25の縁部まで拡がっている。軸流ファン10の外縁と下面開口25の縁部との隙間は狭く、そのため、ドレンパン13は、この隙間を通じる結露水の落下、滴下を防ぐことができる。ドレンパン13に貯留される結露水は、筐体5内に設けられるドレンポンプ(図示省略)によって揚水され、排水管(図示省略)を通じて室内ユニット1の外部に排水される。上述した送風ガイド12を収納する凹部38は、このドレンパン13内に埋め込まれる形で設けられている。
【0044】
ファンガード15は、軸流ファン10に人や物が触れないように安全のために設けられている。ファンガード15は、多角形を密に並べた格子や、軸流ファン10の回転方向、つまり周方向へ均等に並ぶ格子である。具体的には、ファンガード15は、正三角形、正方形、正五角形などの正多角形の小開口を整然と整列させる格子や、扇形状の小開口を整然と整列させる格子である。ファンガード15は軸流ファン10の通風抵抗になるため、格子はできるだけ細いことが望ましい。
【0045】
空気調和機を冷房運転する場合には、室外ユニットの圧縮機は、高温高圧のガス冷媒を吐出して、室外側の熱交換器、つまり凝縮器へ送る。室外側の熱交換器は、その内部を流れる冷媒と室外の空気とを熱交換し、冷媒を凝縮させる。凝縮された液冷媒は、冷媒配管RPを通じて室内ユニット1に送られる。室内ユニット1は、冷媒配管RPから流れ込む液状の冷媒を、図示しない電動膨張弁で膨張させ、低温の気液混合冷媒を熱交換器6、つまり蒸発器へ送る。熱交換器6は、その内部を流れる低温の冷媒と室内の空気とを熱交換し、冷媒をガス化させる。この際に、室内は室内ユニット1から吹き出る低温の空気Kによって冷房される。
【0046】
空気調和機を暖房運転する場合には、室外ユニットの圧縮機は、高温高圧のガス冷媒を吐出して、室内ユニット1の熱交換器6、つまり凝縮器へ送る。熱交換器6は、その内部を流れる冷媒と室内の空気Kとを熱交換し、冷媒を凝縮させる。この際、室内は室内ユニット1から吹き出る高温の空気Kによって暖房される。
【0047】
室内ユニット1で調和された空気は、軸流ファン10によって筐体5の下面開口25および送風ガイド12を経て送風ガイド12下端の吹出口37から室内へ吹き出す。このとき、軸流ファン10によって流動する空気の流れは、軸流ファン10の回転中心線に沿う方向の速度ベクトルと、軸流ファン10の回転中心線に交差する方向の速度ベクトルと、を有している。軸流ファン10の回転中心線に沿う方向の速度ベクトルは、室内ユニット1の下方へ向かう速度ベクトルであり、以下「下向き速度ベクトル」と呼ぶ。軸流ファン10の回転中心線に交差する方向の速度ベクトルは、軸流ファン10の径方向外側に向かって放射状に拡がる速度ベクトルであり、以下「水平方向速度ベクトル」と呼ぶ。
【0048】
図4Aに示すように、送風ガイド12が凹部38に納まる収納位置にある場合には、軸流ファン10が生じさせた下向き速度ベクトルは、室内ユニット1から吹き出る空気を室内ユニット1の下向きに吹き出させ、軸流ファン10が生じさせた水平方向ベクトルは、室内ユニット1から吹き出る空気を軸流ファン10の径方向外側へ放射状に拡散させる。したがって、送風ガイド12が筐体5の凹部38に納まる収納位置にある場合には、室内ユニット1は、同図の破線矢印で示すようにその下方、かつその径方向外側へ大きく拡がる送風域へ送風する。
【0049】
そして、
図4Bに示すように、送風ガイド12が筐体5の凹部38から最も突出する位置の途中まで突出している場合には、軸流ファン10が生じさせた下向き速度ベクトルは室内ユニット1から吹き出る空気を室内ユニット1の下向きに吹き出させ、軸流ファン10が生じさせた水平方向ベクトルは、送風ガイド12に邪魔されて制限され、室内ユニット1の下方へ向きを変える。つまり、送風ガイド12は、室内ユニット1から吹き出る空気が軸流ファン10の径方向外側へ放射状に拡散することを抑制する。その結果、軸流ファン10の径方向外側へ放射状に拡散する空気の流れが弱く、室内ユニット1の下向きに吹き出る空気の流れが強くなる。したがって、送風ガイド12が筐体5の凹部38から突出している場合には、室内ユニット1は、その下方の少し狭い送風域へ送風する。
【0050】
さらに、
図2に示すように、送風ガイド12が筐体5の凹部38から最も突出している場合には、軸流ファン10が生じさせた水平方向ベクトルは、送風ガイド12に邪魔されてより強く制限され、室内ユニット1の下方へより強く向きを変える。そうすると、軸流ファン10の径方向外側へ放射状に拡散する空気の流れは殆ど無くなり、室内ユニット1の下向きに吹き出る空気の流れが最も強まる。したがって、送風ガイド12が筐体5の凹部38から突出している場合には、室内ユニット1は、その真下のより狭い送風域へ調和された空気を集中して送風する。さらに、この場合、送風ガイド12の先端に設けられているファンガード15が軸流ファン10のブレード9から最も離れるため、ファンガード15の通風抵抗が少なくなり、より強い風を真下方向に吹かせることができる。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る室内ユニット1は、軸流ファン10のブレード9の後縁9aより下方へ突出する位置を調整可能な送風ガイド12を備えている。そのため、室内ユニット1は、送風ガイド12の突出位置を調整することで、室内ユニット1から吹き出る空気の流れの向きを容易に変更することができる。室内ユニット1は、送風ガイド12の突出位置の調整を段階的に行うことで、段階的な風向の調整が可能であり、送風ガイド12の突出位置の調整を連続的に行うことで、連続的な風向の調整が可能である。
【0052】
続いて、本実施形態に係る室内ユニット1の送風ガイド12の突出量を制御するための機構の一例を説明する。
【0053】
図5は、本発明の実施形態に係る室内ユニットの下面板において対向する2箇所に設けられた駆動機構を通る位置で切断した縦断面図である。
【0054】
図5に示すように、本実施形態に係る室内ユニット1は、送風ガイド12の突出位置を変更する駆動力を発生させる駆動機構41と、駆動機構41を制御して送風ガイド12の突出位置を調整する送風ガイド制御部42と、を備えている。
【0055】
駆動機構41は筐体5に設けられる滑車55と、一端が滑車55に巻き掛けられ、他端が送風ガイド12の後端に固定された柔軟性のある金属製の索(ワイヤー)56と、滑車55の軸に直結されて索56を巻き取ったり送り出したりする電動機53と、を備えている。滑車55、索56、および電動機53は、下面板26の下面開口25を間に挟んで対向する2つの位置に設けられている。それぞれの電動機53は、完全に同期して回転するように送風ガイド制御部42により制御される。滑車55は定滑車である。送風ガイド12の後端とは、凹部38の奥側に位置する送風ガイド12の端であって、室内ユニット1の設置状態における送風ガイド12の上端である。
【0056】
本実施形態に係る駆動機構41では、送風ガイド12は、2本の索56によって吊り下げられている。電動機53による索56の巻き取り量や送り出し量、つまり滑車55から垂れ下がる索56の長さを調整することで、
図5に示すように送風ガイド12の自重で送風ガイド12を下方へ突出させたり、
図2に示されるように送風ガイド12を引き上げて送風ガイド12の突出量を減少させたりすることができる。また、送風ガイド12が蛇腹のように伸縮自在な構造を有する場合には、駆動機構41は、送風ガイド12の自由端にあたる吹出口37の重量や、蛇腹の復元力を利用して送風ガイド12を伸ばしたり縮めたりすることができる。
【0057】
滑車55は、送風ガイド12を円滑に上下動させることができるよう複数あって、適宜の箇所に設けられていてもよい。また、定滑車である滑車55と動滑車とを適宜に組み合わせても良い。
【0058】
駆動機構41は、他の既知の種々の機構と駆動源とを備えていても良い。例えば、駆動機構41は、送風ガイド12に設けられるラックと、ラックに噛み合わされるピニオンと、ピニオンを回転駆動させる電動機53と、を備えていても良い。このような構成の駆動機構41は、電動機53の回転を送風ガイド12の上下移動に変換する。駆動機構41は、送風ガイド12に設けられるラックと、ラックに噛み合わされるウォームと、ウォームを回転駆動させる電動機53と、を備えているものであっても良い。さらに、送風ガイド12が、径寸法の異なる複数の筒をスライド可能に重ねたテレスコピック構造のように伸縮自在な構造を有する場合には、駆動機構41は、機械的な駆動力によって送風ガイド12を伸ばしたり縮めたりすることができる。
【0059】
送風ガイド制御部42は、室内制御部(図示省略)の一部である。室内制御部は、有線または無線の通信回線を通じてリモートコントローラ(図示省略)から受信する制御信号に基づいて、軸流ファン10を駆動する。また、送風ガイド制御部42は、電動機53を回転駆動させて送風ガイド12を所定の位置へ上下に移動させる。また、室内制御部は、リモートコントローラから受信する制御信号に基づいて、室外ユニットへ制御信号を送信する。制御信号には、運転、停止、冷房モード、暖房モード、設定温度、設定湿度等の指示や設定が含まれている。
【0060】
本実施形態に係る室内ユニット1は、軸流ファン10のブレード9の後縁9aより下方へ突出する位置を調整可能な送風ガイド12と、送風ガイド12の突出位置を変更する駆動力を発生させる駆動機構41と、駆動機構41を制御して送風ガイド12の突出位置を調整する送風ガイド制御部42と、を備えている。そのため、室内ユニット1は、送風ガイド12の突出位置を調整することで、室内ユニット1から吹き出る空気の流れの向きを容易に変更することができる。室内ユニット1は、送風ガイド12の突出位置の調整を段階的に行うことで、段階的な風向の調整が可能であり、送風ガイド12の突出位置の調整を連続的に行うことで、連続的な風向の調整が可能である。例えば、室内ユニット1の真下を急速に冷暖房したい場合は、
図2に示すように、送風ガイド12を凹部38から最も突出させて真下方向に強い風を吹かせる。下方の広い空間の全体を幅広く空調したい場合は、
図4Aに示すように、送風ガイド12を凹部38に納まる収納位置まで移動させて送風ガイド12をブレード9の後縁9aに最も近づけることで、所望の送風域を得ることができる。なお、空気調和機の停止状態においては、
図4Aに示されるように送風ガイド12を凹部38に納まる収納位置に移動させておくことが望ましい。これにより空気調和機の停止時には送風ガイド12が筐体から張り出さず、もしくは張り出し量が小さくなって、見栄えがよい。
【0061】
また、室内ユニット1は、天井に設置されるので、人が近づくことが難しいが、リモートコントローラを用いた遠隔操作によって送風ガイド12の位置、すなわち室内ユニット1の風向を容易に調整することができる。
【0062】
図6および
図7を用いて室内ユニット1の他の例を説明する。なお、第二例の室内ユニット1Aにおいて、第一例の室内ユニット1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0063】
本実施形態に係る第二例の室内ユニット1Aは、可撓性を有する送風ガイド12Aと、送風ガイド12Aの突出位置を変更する駆動力を発生させる駆動機構41Aと、駆動機構41Aを制御して送風ガイド12Aの突出位置を調整する送風ガイド制御部42Aと、を備えている。駆動機構41Aは、
図6および
図7に示すように、下面板26の下面開口25を間に挟んで対向する2つの位置に設けられている。駆動機構41Aは、単一の送風ガイド制御部42Aで制御される。
【0064】
送風ガイド12Aは、可撓性を有し、屈曲させることができる。送風ガイド12Aは、例えば蛇腹を有するフレキシブルホースのような構造を有している。送風ガイド12Aが屈曲すると、送風ガイド12Aの突出端にあたる吹出口37は、水平面に対して傾く。この吹出口37の傾きは、軸流ファン10のブレード9の後縁9aより下方への送風ガイド12Aの突出量を、軸流ファン10の回転方向において異ならせる。例えば
図7に示すように、送風ガイド12Aが
図7の左方向へ傾くと、
図7における吹出口37の右側の端における送風ガイド12Aの突出量よりも吹出口37の左側の端における送風ガイド12Aの突出量の方が小さくなる。この軸流ファン10の回転方向における送風ガイド12Aの突出量の違いは、吹出口37の左側の端において軸流ファン10から吹き出る空気の水平方向速度ベクトルの影響を残留させる一方で、吹出口37の右側の端において軸流ファン10から吹き出る空気の水平方向速度ベクトルの影響を抑制し、吹き出す空気の真下へ向かう直進性を補う。換言すると、軸流ファン10の回転方向における送風ガイド12Aの突出量の違いは、軸流ファン10から吹き出る空気の水平方向速度ベクトルの軸流ファン10の回転方向における分布を不均一にして、空気の吹き出し方向を偏向させる。
【0065】
駆動機構41Aは、送風ガイド12Aの突出位置を変更する駆動力を利用して送風ガイド12Aを屈曲させることもできる。例えば、送風ガイド12Aの周方向において180度毎に設けられる2つの駆動機構41Aは、一方の駆動機構41Aで送風ガイド12Aの突出量を増加させ、他方の駆動機構41Aで送風ガイド12Aの突出量を減少させることで、送風ガイド12Aを屈曲させて空気の吹き出し方向を偏向させる。送風ガイド12Aの周囲に90度毎に4つの駆動機構41Aを配置することで、室内ユニット1Aから4方へ向かう、より詳細な風向の調整を行うことができる。個々の駆動機構41Aには、第二例の駆動機構41と同様の機構を用いることができる。例えば、駆動機構41Aは、筐体5に設けられる滑車55と、滑車55に巻き掛けられる索56と、索56を巻き取ったり送り出したりする電動機(図示省略)と、を備えている。
【0066】
送風ガイド制御部42Aは、複数の駆動機構41Aの電動機53を個別に駆動させることで送風ガイド12Aを屈曲させる。つまり、送風ガイド制御部42Aは、複数の駆動機構41Aに同じ駆動力を生じさせることによって、送風ガイド12Aを単に伸縮させ、複数の駆動機構41Aに異なる駆動力を生じさせることによって、送風ガイド12Aを屈曲させて吹出口37を水平面に対して傾かせる。なお、駆動機構41Aの数が2つの場合には、送風ガイド12Aを
図7中の左右方向に傾けることができる。駆動機構41Aを下面板26の中心に対して90°毎に離れた4か所の位置に設ける場合には、送風ガイド制御部42Aにより4つの駆動機構41Aを適宜動作させることで、送風ガイド12Aを4方向に傾かせることができる。この場合には、空気の吹き出し方向を4方向に偏向させることができる。なお、駆動機構41Aを下面板26の中心に対して120°毎に離れた3か所に設ける場合には、送風ガイド制御部42Aによりこの3つの駆動機構41Aを適宜動作させることで、送風ガイド12Aを3方向に傾かせることができる。この場合には、空気の吹き出し方向を3方向に偏向させることができる。
【0067】
本実施形態に係る室内ユニット1Aは、軸流ファン10のブレード9の後縁9aより下方へ突出する位置を調整可能な送風ガイド12Aと、送風ガイド12Aの突出位置を変更する駆動力を発生させる駆動機構41Aと、駆動機構41Aを制御して送風ガイド12Aの突出位置を調整する送風ガイド制御部42Aと、を備えている。そのため、室内ユニット1Aは、送風ガイド12Aの突出位置を調整することで、室内ユニット1Aから吹き出る空気の流れの向きを容易に変更することができる。室内ユニット1Aは、送風ガイド12Aの突出位置の調整を段階的に行うことで、段階的な風向の調整が可能であり、送風ガイド12A突出位置の調整を連続的に行うことで、連続的な風向の調整が可能である。
【0068】
さらに、室内ユニット1Aは、可撓性を有する送風ガイド12Aによって、軸流ファン10の径方向外側へ向かって不均一に拡がる送風域を生じさせることができる。換言すると、室内ユニット1Aは、水平方向において対称形の送風域を生じさせる第一例の室内ユニット1と異なり、非対称形の送風域を生じさせることができる。
【0069】
したがって、本実施形態に係る室内ユニット1、1Aによれば、軸流ファン10から吹き出る空気の風向を簡易な構造で様々に変化させることができる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1、1A…室内ユニット、5…筐体、6…熱交換器、7…回転軸、8…ファンモーター、9…ブレード、9a…ブレードの後縁、10…軸流ファン、12、12A…送風ガイド、13…ドレンパン、15…ファンガード、21…上面板、22…吸込口、23…側面板、25…下面開口、26…下面板、28…取付基部、28a…側面、31…固定部材、32…閉塞板、35…ハブ、37…吹出口、38…凹部、41、41A…駆動機構、42、42A…送風ガイド制御部、53…電動機、55…滑車、56…索。