(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】超伝導バンプ接合の電気的特性評価
(51)【国際特許分類】
H10N 60/80 20230101AFI20230302BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20230302BHJP
H01L 25/065 20230101ALI20230302BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20230302BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20230302BHJP
H10N 60/00 20230101ALI20230302BHJP
H10N 60/12 20230101ALI20230302BHJP
H01L 25/16 20230101ALI20230302BHJP
【FI】
H10N60/80
H01L25/08 B
H01L21/60 311S
H10N60/00
H10N60/12
H01L21/92 604T
H01L25/16 Z
(21)【出願番号】P 2021538719
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 US2019064526
(87)【国際公開番号】W WO2020146062
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-06-30
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】グラニンガー、アウレリウス エル.
(72)【発明者】
【氏名】ストランド、ジョエル ディ.
(72)【発明者】
【氏名】スタウティモア、ミカ ジョン アトマン
(72)【発明者】
【氏名】キーン、ザカリー カイル
(72)【発明者】
【氏名】ハートマン、ジェフリー デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ハックリー、ジャスティン シー.
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0173936(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/00
H10N 60/80
H10N 60/12
H01L 25/065
H01L 25/07
H01L 25/18
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンプ接合超伝導試験構造であって、
第1の超伝導集積回路(IC)である第1のチップと、
複数のバンプ接合によって前記第1のチップにガルバニック接続された第2の超伝導ICである第2のチップと、
前記複数のバンプ接合のうちの1つのバンプ接合に対するガルバニック接続であって、前記第1のチップと前記第2のチップとの間の前記1つのバンプ接合を介して磁束バイアス電流を供給するように構成された前記ガルバニック接続と、
前記複数のバンプ接合のうちの少なくとも2つを電気的に含むループを含むDC_SQUIDと、を備え
、
前記ガルバニック接続および前記1つのバンプ接合は、前記磁束バイアス電流が流れる前記DC_SQUIDのループの唯一の部分が前記1つのバンプ接合であるように構成されている、バンプ接合超伝導試験構造。
【請求項2】
前記DC_SQUIDは、並列に配置された2つのジョセフソン接合を含む、請求項1に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
【請求項3】
前記2つのジョセフソン接
合はともに前記第2のチップに製造され、前記第1のチップ内で一方側のみ互いに接続されている、請求項2に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
【請求項4】
前記第1のチップを介して前記DC_SQUIDに接続された試験配線をさらに備え、前記試験配線は、前記バンプ接合超伝導試験構造が低温空間にあるときに前記低温空間の外側から前記DC_SQUIDに試験信号を供給し、前記低温空間の外側で前記DC_SQUIDからの結果信号を受信するように構成されている、請求項1に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
【請求項5】
前記磁束バイアス電流により前記DC_SQUIDの臨界電流が変調される、請求項
1に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
【請求項6】
前記DC_SQUIDに対するガルバニック接続であって、前記DC_SQUIDに臨界バイアス電流を供給するように構成されたガルバニック接続をさらに備える請求項1に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
【請求項7】
前記DC_SQUIDに対する前記ガルバニック接続は、前記DC_SQUIDの両端間の電圧の測定値を提供するようにさらに構成されている、請求項
6に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
【請求項8】
前記DC_SQUIDは、直列に配置された前記複数のバンプ接合のうちの3つ以上を電気的に含み、前記複数のバンプ接合の交互の直列対がそれぞれ前記第1のチップ内および前記第2のチップ内のガルバニック接続によって互いに接続されている、請求項1に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
【請求項9】
前記複数のバンプ接合に対する少なくとも3つのガルバニック接続をさらに備え、前記ガルバニック接続は、前記第1のチップと前記第2のチップとの間の前記
1つのバンプ接
合を介し
て第1の磁束バイアス電流を供給するとともに、前記複数のバンプ接合を介して第2の磁束バイアス電流を供給するように構成されている、請求項
8に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
【請求項10】
超伝導バンプ接合電気的特性評価の方法であって、
DC_SQUIDにおけるバンプ接合を介して磁束バイアス電流を印加すること、
前記磁束バイアス電流を調整し前記DC_SQUIDの両端間の電圧を測定することにより
、前記DC_SQUIDの変調された臨界電流を観測すること、
前記変調された臨界電流の観測に基づいて前記バンプ接合の超伝導を検証すること、
を備える方法。
【請求項11】
前記バンプ接合を通る前記磁束バイアス電流の調整に先立ち、前記DC_SQUIDを通るバイアス電流を印加することにより前記DC_SQUIDに臨界的にバイアスをかけることをさらに備える請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記磁束バイアス電流と前記観測された変調臨界電流の周期とに基づいて、前記バンプ接合のインダクタンスを計算することをさらに備える請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記観測された変調臨界電流の周期が、前記調整された磁束バイアス電流に応じた前記DC_SQUIDの両端間の測定電圧の周期である、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記バンプ接合のインダクタンスが、インダクタンス式L=Φ/I=h/2eIに従って計算され、ここで、Iは、前記調整された磁束バイアス電流に応じた前記DC_SQUIDの両端間の測定電圧の単一周期を誘導する磁束バイアス電流の量である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して超伝導回路に関し、特に、超伝導バンプ接合の電気的特性評価に関する。本出願は、2019年1月7日に出願された米国特許出願番号第16/241661号の優先権を主張し、その全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
C4(Controlled Collapse Chip Connection)としても知られる「フリップチップ」の製造は、第1のチップを製造するために使用されるウェハプロセスの最終付近において第1のチップの上側のチップパッド上に配置される「バンプ接合」と呼ばれるはんだボールで、集積回路(IC)チップなどの半導体デバイスを外部回路に相互接続するための製造方法である。第1のチップを外部回路(例えば、回路基盤もしくは第2のチップ、またはウェハ)に実装するために、第1のチップはその製造中に最初は上側であったものが下向きになるように裏返された後、そのパッドが外部回路の対応するパッドと整列するように位置合わせされる。その後、はんだがリフローされて、相互接続が完了する。フリップチップ製造は、チップが上向きで実装されてチップパッドを外部回路に相互接続するためにワイヤが使用されるワイヤボンディングとは対照的である。フリップチッププロセスは、伝統的なCMOSデバイスの製造に使用されているが、現在では典型的には約4ケルビン以下の温度の寒冷空間で動作する超伝導回路デバイスの構築にも使用されている。
【発明の概要】
【0003】
一実施例は、バンプ接合超伝導試験構造を含む。前記試験構造は、第1の超伝導集積回路(IC)チップである第1のチップと、複数のバンプ接合によって前記第1のチップにガルバニックに接続された第2の超伝導ICチップである第2のチップと、前記複数のバンプ接合のうちの少なくとも2つを電気的に含むループを有するDC_SQUIDとを含む。
【0004】
別の実施例は、超伝導バンプ接合の電気的特性評価の方法を含む。この方法は、磁束バイアス電流をDC_SQUIDのバンプ接合を介して印加することを含む。次に、前記DC_SQUIDの両端間の電圧を測定することにより前記DC_SQUIDの変調臨界電流が観測され得る。
【0005】
さらに別の実施例は、バンプ接合された2つの超伝導集積回路(IC)である2つのICと、前記2つのICの両方を通過する単一のループを有するDC_SQUIDとを含む装置を含む。この装置は、前記2つのICのうちの第1のICに正および負のバイアスおよび電圧測定端子を有し得るとともに、前記第1のICに正および負の磁束バイアス端子を有し得る。また、前記デバイスは、前記2つのICのうちの1つに前記DC_SQUIDの第1のジョセフソン接合(JJ)を有し得る。前記第1のJJは、前記第1のICと前記2つのICのうちの第2のICとを電気的に接続する第1のバンプ接合と第1のノードとの間に接続されている。また、前記デバイスは、前記2つのICのうちの1つに前記DC_SQUIDの第2のJJを有し得る。前記第2のJJは、前記第1のICと前記第2のICとを電気的に接続する第2のバンプ接合と前記第1のノードとの間に接続されている。前記DC_SQUIDループは、前記第1のJJ、前記第2のJJ、前記第1のバンプ接合、前記第2のバンプ接合、および前記第1のノードを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】例示的なバンプ接合超伝導検証およびインダクタンス測定試験構造のブロック図である。
【
図2】例示的なバンプ接合超伝導検証およびインダクタンス測定試験構造の回路図である。
【
図3】例示的なバンプ接合超伝導検証およびインダクタンス測定試験構造の断面図である。
【
図4】例示的なバンプ接合超伝導検証およびインダクタンス測定試験構造または方法で使用されるDC_SQUIDのI-V曲線のプロット例である。
【
図5】例示的なバンプ接合超伝導検証およびインダクタンス測定試験構造または方法で使用されるDC_SQUIDのI
c変調曲線のプロット例である。
【
図6】例示的なバンプ接合超伝導検証およびインダクタンス測定試験構造の回路図である。
【
図7】例示的なバンプ接合超伝導検証およびインダクタンス測定試験構造の回路図である。
【
図8】例示的なバンプ接合超伝導検証およびインダクタンス測定試験構造の回路図である。
【
図9】超伝導バンプ接合の電気的特性評価の例示的方法のフローチャートである。
【
図10】超伝導バンプ接合の電気的特性評価の別の例示的方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
完全にゼロであるDC抵抗は超伝導の顕著な特徴である。多くのコンピュータ用途にとっては十分に低い抵抗となり得るが他にとっては不十分となり得る単にマイクロオームまたはミリオームの抵抗を有するものとは対照的に、フリップチップ超伝導集積回路の製造プロセスで利用されるバンプ接合が実際に超伝導であるかどうかを確実に検証することが困難となる場合がある。また、本開示の以前には、個々のバンプ接合のインダクタンスを実験的に決定することができず、このため、バンプ接合が集積化されたより大きな超伝導システムについて、付随する寄生インダクタンスの影響を確認することができなかった。バンプ接合の適切な電気的特性評価は、例えば、製造されたデバイスが特定の製造基準を満たしているかどうか(すなわち、デバイスが試験に合格するのかそれとも不合格となるのか、その結果、デバイスを廃棄すべきなのかそれともリサイクルすべきなのか、および/または、将来製造されるフリップチップデバイスが特定の製造基準を確実に満たすようにするべくバンプ接合の電気的特性評価に基づいて製造プロセスの変更を行うべきかどうか)を決定する上で重要であり得る。
【0008】
バンプ接合の超伝導は、バンプ接合のシリアルアレイを製造し、電子試験装置を使用してチェーン(chain)の抵抗を温度に応じて測定することによって検証され得る。この試験方法は、非常に高い抵抗動作を示す低品質のバンプ接合の場合には十分である。しかしながら、この方法は、導電性は高いが依然として超伝導ではないバンプ接合(例えば、マイクロオームからミリオームの範囲のDC抵抗を持つもの)の場合には不十分であり、また、超伝導バンプ接合のインダクタンスを実験的に決定することはできない。さらに、熱の発生は、高価であり得るかまたは冷却に長い時間を要し得る極低温システムにおいて動作する超伝導回路において、試験方法でさえ望ましくない場合がある。
【0009】
本開示の構造および方法では、超伝導の検証およびインダクタンスの抽出の双方を可能とするべく超伝導バンプ接合がDC_SQUIDに埋め込まれ得る。超伝導は、DC_SQUIDのバンプ接合のうちの1つを介して磁束バイアス電流が駆動されている間に、DC_SQUID臨界電流の周期的な変調を観測することによって明確な方法で検証される。この臨界電流の変調動作は、DC_SQUIDループが磁束の量子化を維持しようとした結果である。ループ内に有限の抵抗がある場合、この現象を支配する物理学は崩壊する。本明細書に開示される試験構造および方法は、この挙動を活用し、測定を行うために使用される電子機器が十分に低いノイズフロアを持たない場合に超伝導のように見え得る小さな抵抗を測定しようとする際に生じる不確実性を排除する。例えば、本明細書に開示される構造および方法がない場合、10ミリオームのノイズフロアを有する試験装置は、マイクロオームまたは数ミリオーム程度のDC抵抗を有するものとは対照的に、バンプ接合が超伝導であることを保証できない。
【0010】
したがって、本明細書に記載の試験構造および方法は、直流超伝導量子干渉デバイス(DC_SQUID)を活用した測定を使用することにより、超伝導性を検証するとともに、フリップチップ超伝導の集積化製造プロセスデバイスにおける1つまたは複数のバンプ接合のインダクタンスを抽出することができる。循環電流が試験対象のバンプ接合を流れるようにDC_SQUIDが構成されているため、臨界電流(Ic)変調測定が成功するかどうかは、試験対象のバンプ接合が(単に非常に低い抵抗からなるものとは対照的に)真に超伝導であるかどうかに依存する。
【0011】
図1は、極低温冷凍システムによって提供され得る、低温空間102における例示的な超伝導バンプ接合電気的特性試験構造100のブロック図である。試験対象の超伝導材料バンプ接合104および別のバンプ接合106は、第1のチップ108を第2のチップ110に接続する。「超伝導材料バンプ接合」とは、少なくともいくつかの実際に達成可能な温度条件下で、すなわちゼロケルビンよりも大きい、例えば2ケルビンよりも大きい、例えば3または4ケルビン程度の条件下で超伝導となることが知られている材料からバンプ接合が製造されることを意味する。バンプ接合用の超伝導材料は、例えば、インジウムまたはインジウム合金であってよい。構造100は、破線ボックスで示されるDC_SQUID112を含み、このDC_SQUID112は、第1のチップ108および第2のチップ110の双方の電気的な部分であり、バンプ接合104,106に電気的に接続され、バンプ接合104の電気的特性を試験するように構成されている。第1のチップ108および第2のチップ110は各々、例えば集積回路であってよい。第1のチップ108は、マルチチップモジュール(MCM)を含み得るか、または第2のチップ110と一緒にMCMを含み得る。第2のチップ110は、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)であってもよい。第1のチップ108は「ベースチップ」と呼ぶことができ、第1のチップ108の上部に接合された第2のチップ110は「フリップチップ」と呼ぶことができ、本開示では、この命名規則が使用される。バンプ接合104,106は、例えば、直径数マイクロメートルのオーダー、例えば直径約5マイクロメートル~約20マイクロメートル、例えば直径約10マイクロメートルであってよい。
【0012】
図1のDC_SQUID112は、例えば、並列の2つのジョセフソン接合を含み得る。いくつかの例では、DC_SQUID112の第1のジョセフソン接合および第2のジョセフソン接合は双方、第1のチップ108に製造される。他の例では、DC_SQUID112の第1のジョセフソン接合および第2のジョセフソン接合は第2のチップ110に製造される。さらに他の例では、DC_SQUID112の第1のジョセフソン接合は第1のチップ108に製造される一方、DC_SQUID112の第2のジョセフソン接合は第2のチップ110に製造される。
【0013】
図1のバンプ接合104,106は各々、ほぼ球形状で示されているが、各々、平坦化された球形状、ディスク形状、または第1のチップ108と第2のチップ110との間の超伝導またはほぼ超伝導の電流の流れを促進するのに有効な任意の他の形状であってよい。試験配線114は、低温空間102の外側で電気的特性を観測可能とするべくDC_SQUIDに直接的または間接的に接続される。図示はされていないが、試験配線は、低温空間の外側の制御および/または測定回路に接続され得る。このような制御および/または測定回路は、例えば、DC_SQUID112を臨界的にバイアスするためのDC_SQUIDバイアス電流を供給し、すなわち試験対象のバンプ接合104を介して(例えば、他のバンプ接合106を介さずに)垂直に磁束バイアス電流を供給し、および/またはDC_SQUID112の両端間の電圧を(例えば、印加された磁束バイアス電流に応じて)測定するように構成され得る。また、図示されていないが、演算装置は、このような測定回路に接続されて、DC_SQUID112の両端間の測定電圧に基づきバンプ接合104のインダクタンスを計算するように構成され得る。
【0014】
図2は、例示的な超伝導バンプ接合電気特性試験構造200の回路概略図を示す。試験構造200は、2つのジョセフソン接合J
1,J
2を並列に含むDC_SQUID212を含む。試験構造200のDC_SQUID212は、
図1の試験構造100のDC_SQUID112に対応し得る。図示されるように、DC_SQUID212は、完全にバンプ接合されたチップセットの第1のチップ(例えば、ベースチップ)および第2のチップ(例えば、フリップチップ)内に配線を有している。
図2における太字の破線は、第1のチップ内の配線(例えば、ベースチップ配線)に対応し、
図2における細字の実線は、第2のチップ内の配線(例えば、フリップチップ配線)に対応する。DC_SQUID212のループは少なくとも2つの超伝導バンプ接合204,206を含み、これらはそれぞれ
図1のバンプ接合104,106に対応し得る。試験動作時、電流はバンプ接合によって生成された第1のチップと第2のチップとの間の境界を流れ、それによってDC_SQUIDループ212を介した回路経路を完成させる。
【0015】
また、
図2においては、2つの観測接続部Sq+,Sq-がDC_SQUID212に対してジョセフソン接合ペアの各側に1つずつ設けられて、DC_SQUID212の両端間の電圧の測定を容易にする。磁束バイアス電流214をDC_SQUIDループに流すために、2つの磁束バイアス電流入力接続部Φ+,Φ-がDC_SQUIDループのバンプ接合204に対して設けられる。このバンプ接合204は、図示の構造200における試験対象のバンプ接合である。磁束バイアス電流入力接続部Φ+,Φ-の双方は1つのチップ内に(例えば、図示の場合は、第1のチップ内に)設けられ得るが、これら磁束バイアス電流入力接続部からの導電経路は、それらのうちの1つ(例えば、Φ-)が第1のチップ(例えば、ベースチップ)における試験対象のバンプ接合204に接続されるとともに、他方の接続(例えば、Φ+)が第2のチップ(例えば、ここではバンプ接合208によるフリップチップ)を介して試験対象のバンプ接合204に対して設けられるように配置されることで、磁束バイアス電流がバンプ接合204を介して垂直に流れる、すなわち第1のチップと第2のチップとの間を確実に流れるようにしてもよい。
【0016】
図2に示される例ではすべての入力/出力(I/O)電気接続部Sq+,Sq-,Φ+,Φ-が第1のチップ上にのみ存在するという点で、
図2の回路構造200は、試験構造100の多くの例示的な実装に存在し得る実際の場合を反映しており、試験構造に対するI/O電気接続部は、一方のチップのみを介し他方のチップを介さずに可能とされてよく、
図2に示される例では、試験対象とされない他のバンプ接合208,210を第1および第2のチップ間に含むことを説明している。しかしながら、I/O電気接続部が他のチップを介して設けられ得る状況において追加のバンプ接合208,210が必ずしも含まれていなくてもよい。例えば、
図2の試験構造200は、接続部Φ+がバンプ接合208または第1のチップ(例えば、ベースチップ)の配線を介すことなく第2のチップ(例えば、フリップチップ)の配線を介して試験対象のバンプ接合204に直接接続されるように変更されてもよく、および/または、接続部Sq+がバンプ接合210または第1のチップ(例えば、ベースチップ)の配線を介すことなく第2のチップ(例えば、フリップチップ)の配線を介してDC_SQUID212の下部ノードに直接接続されるように変更されてもよい。
【0017】
概して、試験構造200の試験方法は、印加磁束バイアスに応じた臨界電流(I
c)の変調を観測接続部Sq+,Sq-を使用して観測してDC_SQUID212の両端間の電圧を測定することにより、そのような変調を観測して試験対象のバンプ接合の超伝導を確認することを含む。具体的には、試験対象のバンプ接合が真に超伝導である場合には(伝統的な抵抗測定試験機器のノイズフロアよりも低い低抵抗を単に有するものとは対照的に)、試験は、試験対象のバンプ接合のインダクタンスに比例する周期性を有してDC_SQUID212の臨界電流が変調されることを示す。予想される臨界電流変調を観測するために、試験を実行する種々の方法がある。以下でより詳細に説明する1つの便利な方法は、DC_SQUID212を臨界電流近くにバイアスして、磁束バイアス電流入力接続部Φ+,Φ-間に印加される磁束バイアスを掃引しながら観測接続部Sq+,Sq-間の電圧を測定することにより、
図5に示されるような周期的なプロットを得ることを含む。
【0018】
予想される臨界電流変調を観測するためのより強力な(brute-force)方法は、磁束バイアス電流入力接続部Φ+,Φ-間の磁束バイアスを繰り返し増分し、そのような増分毎に、観測接続部Sq+,Sq-間に印加される異なるSQUIDバイアス電流の範囲について観測接続部Sq+,Sq-間の電圧を測定することにより
図4に示されるようなDC_SQUID212のI-V曲線を取得し、その得られた各I-V曲線の臨界電流を記録することである。試験対象のバンプ接合が真に超伝導である場合、この強力な試験方法から得られた、臨界電流に対する増分磁束バイアス電流のプロットも同様の定性的形状を有し、定量的には、上述したより便利な試験方法を使用して取得される
図5のプロットのような上述した周期性プロットとまったく同じ周期を有するものとなる。すなわち、臨界電流に対する磁束バイアス電流のプロットは、Φ
0/Lの周期を有するものとなり、ここで、Lは、試験対象の回路部分(いくつかの例では、試験対象の1つのバンプ接合のみ)のインダクタンスである。
【0019】
上述した最初のこのような試験方法では、観測接続部Sq+,Sq-を使用することにより、ジョセフソン接合の臨界電流Icの近傍にDC_SQUIDループをバイアスすることができ、例えば、導入された磁束による臨界電流Icのわずかな変化でDC_SQUIDループの両端間の電圧に測定可能な変化が生じるように、臨界電流Icのごく近傍にDC_SQUIDループをバイアスすることができる。例えば、DC_SQUIDループをIcの15パーセント以内、例えばIcの10パーセント以内、例えばIcの5パーセント以内にバイアスするように、観測接続部Sq+,Sq-を介して電気エネルギーが供給され得る。DC_SQUID212を適切にバイアスすることで、磁束バイアス電流入力接続部Φ+,Φ-間で磁束バイアス電流214を着実に増加させることができ、この磁束バイアス電流214に応じてDC_SQUID212の両端間(すなわち、観測接続部Sq+,Sq-間)の電圧を測定することができる。上述のように、磁束バイアス電流214は、試験対象のバンプ接合204を垂直に(すなわち、第1のチップと第2のチップの間で)流れ、試験対象のバンプ接合204は、DC_SQUIDループのうち磁束バイアス電流214が流れる唯一の部分である。観測接続部Sq+,Sq-間の初期バイアスが臨界電流Icのすぐ上にある状況でも、そのバイアスは磁束バイアス電流入力接続部Φ+,Φ-間の電流を増加させるように機能する。一般に、バイアス電流は負から正、または正から負に掃引することが可能であり、臨界電流Icの周期的な変調は、試験対象の回路部分(例えば、いくつかの例では単一のバンプ接合)が真に超伝導である限り観測される。これは、SQUIDが臨界電流Icのすぐ上にバイアスされているのかそれともすぐ下にバイアスされているのかによらず当てはまる。
【0020】
磁束バイアス電流214が増加すると、磁束がDC_SQUIDループに導入され、その量はΦ=LIにほぼ等しくなる。ここで、Iは磁束バイアス電流214であり、LはDC_SQUIDにガルバニックに結合されているバイアス線の部分のインダクタンスである。
図2に示された試験構造200では、DC_SQUID212のうち磁束バイアス電流が流れる唯一の部分がバンプ接合204(すなわち、試験対象のバンプ接合)であり、試験構造200の場合においてLは試験対象のバンプ接合204の自己インダクタンスであることを示しており、したがって、DC_SQUID212のうち磁束バイアス電流が流れる唯一の部分は試験対象のバンプ接合204の自己インダクタンスのみとなる。DC_SQUIDループは、それを通る総磁束を維持することを優先するため、総磁束は単一磁束量子Φ
0=h/2e≒2.07mA-pHの整数倍にほぼ等しい。ここで、hはプランク定数であり、eは電荷であり、
図2のDC_SQUIDループは、循環電流を自発的に発生させてバイアス電流から導入磁束を増加または減少させる。この循環電流の自発的な発生の結果がI
cの事実上の変調であり、この変調は、
図5のプロット500に示されるように、観測接続部Sq+,Sq-間のDC_SQUID212の電圧測定を通じて観測され得る。
【0021】
DC_SQUIDループに抵抗がある(バンプ接合204,206が有し得る抵抗を含む)場合、予想されるI
c変調は発生しない。したがって、このような変調を観測することで、DC_SQUIDループ全体が超伝導であり、DC_SQUIDループに含まれるバンプ接合204,206自体が超伝導であることが確認される。また、I
c(したがってDC_SQUID212の両端間の測定電圧)はΦ
0=h/2eに等しい周期で変調するため、試験対象のバンプ接合204のインダクタンスは、L=Φ/I=h/2eIを解くことによってI
c変調曲線から抽出することができる。ここで、Iは、
図5に示されるような、また、以下でより詳細に説明するような、変調電圧信号の単一周期を誘導する磁束バイアス電流214の量である。
【0022】
磁束バイアス電流入力接続部Φ+,Φ-を介して供給された磁束バイアス電流214を調整する場合、DC_SQUIDループの外側のそのような磁束バイアス電流214の経路のどの部分も、ループへの磁束には寄与しない。そのような磁束バイアス電流214がDC_SQUIDループの一部となるときのみ、すなわち、そのような磁束バイアス電流214がDC_SQUIDループの或るアームを伝わるときのみ、そのような磁束バイアス電流214が、本明細書に記載の構造および/または方法を使用して測定されたインダクタンスに関連するものとなる。バンプ接合208はDC_SQUIDループの外側にあるため、たとえバンプ接合208に関連する自己インダクタンスがある場合でも、バンプ接合208を通過する磁束バイアス電流214はDC_SQUID212に直接結合されず、したがって、バンプ接合208を流れる電流のいかなる部分も、DC_SQUID212の両端間の測定電圧に関連するパラメータには寄与せず、バンプ接合208の自己インダクタンスも、試験対象のバンプ接合204のインダクタンスの演算に寄与しない。磁束バイアス電流214がDC_SQUIDループの或るアームに沿ってDC_SQUIDループに入ることで、磁束バイアス電流214はDC_SQUID212に磁束を導入し、その後に変調測定で観測することが可能となる。バンプ接合206はDC_SQUIDループ内にあるが、磁束バイアス電流214はバンプ接合206を通過しないため、バンプ接合206は測定には考慮されない。バンプ接合210はDC_SQUIDループの外側にあるため、同様にバンプ接合210に磁束バイアス電流214は流れない。したがって、バンプ接合210はDC_SQUID212に接続されて測定を実行するためのものとして機能する。したがって、
図2の試験設定を使用して計算されたインダクタンスは、バンプ接合204のみのインダクタンスである。
【0023】
図3は、超伝導バンプ接合の電気的特性試験構造を提供する例示的なフリップチッププロセスデバイス(例えば、MCMチップセット)の物理的断面300を示す図であるが、この図は必ずしも縮尺どおりではない。断面300は、バンプ接合された2つのチップ、すなわち、バンプ接合306,308によってガルバニックに接続された第1のチップ302(例えば、ベースチップ)と第2のチップ304(例えば、フリップチップ)の層スタックを示している。バンプ接合306,308は、
図1のバンプ接合104,106および
図2のバンプ接合204,206に対応し得る。各チップ302,304は、例えば、ニオブまたはアルミニウムなどの超伝導金属および多数のアクティブデバイス(例えば、ジョセフソン接合)から製造された多数の配線層を有し得る。断面300のドット状の陰影部分は、各チップ基板に製造された配線およびビア310を表しており、第1のチップ302のチップ基板には水平ハッチングによる陰影が付けられており、第2のチップ304のチップ基板には垂直ハッチングによる陰影が付けられている。チップ基板は、配線およびビアが埋め込まれた誘電体材料とすることができる。第1のチップ302の2つのジョセフソン接合312,314は、
図1および
図2のジョセフソン接合J
1,J
2に機能的に対応し得るが、
図3に示された例では、ジョセフソン接合は、第2のチップ304(例えば、フリップチップ)ではなく第1のチップ302(例えば、ベースチップ)に製造されたものとして示されている。
【0024】
ジョセフソン接合312,314、および配線310によって形成されたそれらの間のガルバニック接続は、双方のチップ302,304に跨がるDC_SQUIDループを完成させる。ワイヤ接合316は、第1のチップ302(例えば、MCM)上のパッドに接続されて、信号を駆動したり信号を読み取ったりするための導電性チャネルを提供する。実際の実装には、
図2の概略図の場合のように、複数のそのようなワイヤ接合、例えば4つのワイヤ接合が含まれ得る。
【0025】
図4のプロットは、
図2または
図3のいずれかのようなDC_SQUIDの2つの例示的なI-V曲線402,404を示している。各曲線402,404は、DC_SQUIDバイアス電流の範囲(y軸)にわたって観測接続部Sq+,Sq-間で電圧測定(x軸)が行われたことを示している。なお、DC_SQUIDバイアス電流は、本明細書で規定された用語による磁束バイアス電流と混同すべきではない。上側の曲線402は、SQUIDループにおけるnΦ
0の磁束に対応してI
c0の臨界電流になり、下側の曲線404は、SQUIDループの(n+1/2)Φ
0の磁束に対応してI
c1の臨界電流になる。ここで、nは整数である。各曲線402,404におけるV=0の垂直領域は、DC_SQUIDが超伝導しているバイアス電流範囲を表している。各曲線402,404が垂直でなくなる位置の電流は、導入された所与の磁束量に対するDC_SQUIDの臨界電流であり、
図4では、曲線402についてはI
c0、曲線404についてはI
c1で示されている。DC_SQUIDの臨界電流は、磁束がSQUIDに導入されると、I
c0とI
c1との間で振動する。I
c0とI
c1との違いは、ループの総インダクタンスを含むDC_SQUIDの特定の設計パラメータに依存するが、一般には、磁束がループに導入されると、SQUIDの臨界電流は或るI
c0とI
c1との間で連続的に振動する。臨界電流自体はループ内の磁束に依存するため、臨界電流は増加した磁束バイアス電流に応じて測定することができ、それによって(
図5に示される)周期変調を観測することができる。ただし、臨界電流よりも上方のI-V曲線の形状も臨界電流に依存するため、I
c0に近い或るバイアス電流IbでSQUIDをバイアスすることにより、増加した磁束バイアス電流に応じて電圧を測定することができ、それによって周期変調を測定することもできる。一定のSQUIDバイアスに対する測定電圧の周期変調を駆動するのは臨界電流の周期変調であるため、2つの測定値は等価である。十分に低いバイアス電流(すなわち、垂直V=0の範囲内)では、ジョセフソン接合が超伝導であるため、DC_SQUIDの両端間の電圧降下がなく、DC_SQUIDの並列ジョセフソン接合を介して電流が超伝導するが、臨界電流I
c0またはI
c1よりも上方(絶対値条件で)では、DC_SQUIDのジョセフソン接合は超伝導でなくなり、抵抗のように動作し始める。
【0026】
バンプ接合試験を実行する一つの便利な方法では、臨界電流I
c付近(すなわち、その直上または直下)でDC_SQUIDバイアス電流が(例えば、
図2の配置の場合には観測接続部Sq+,Sq-間に)適用され得るとともに、印加磁束バイアス電流が(例えば、
図2の配置の場合には磁束バイアス電流入力接続部Φ+,Φ-間に)適用され得ることによりDC_SQUIDループに磁束が導入されてDC_SQUIDループの周りに循環電流が生成され、これによりSQUIDにバイアスを加えてDC_SQUIDのジョセフソン接合を超伝導領域と非超伝導領域との間で往復させることができる。その結果、標準的な測定機器で容易に測定できるほど十分に大きい電圧降下を、印加磁束バイアスの周期的なほぼ正弦波状または鋸歯状の関数として観測することができる。このような試験観測は、
図5においてプロット500として示されているが、このプロット500は、磁束バイアス電流の増加に応じて適切にバイアスされたDC_SQUIDの両端間の測定電圧を示している。
図4のI-V曲線402,404は、DC_SQUIDが機能することを示しているだけでなく、適切なSQUIDバイアスを(例えば、観測接続部Sq+,Sq-間に)適用してDC_SQUIDを臨界電流I
cの適切な割合内にバイアスすることにより
図5の変調測定を有用に実行可能とするのにも役立ち得る。
【0027】
図6は、超伝導バンプ接合電気的特性試験構造600の例示的な回路概略図を示しており、この構造600は、
図2に示された試験構造200の概略を拡張して、単一のバンプ接合の測定を超えるより多くの測定を含む。
図2の試験構造200と同様に、試験構造600は、2つのジョセフソン接合J
1,J
2を並列に含むDC_SQUID612を含む。図示されるように、DC_SQUID612は、完全にバンプ接合されたチップセットの第1のチップ(例えば、ベースチップ)および第2のチップ(例えば、フリップチップ)内に配線を有している。
図6における太字の破線は、第1のチップ内の配線(例えば、ベースチップ配線)に対応し、
図6における細字の実線は、第2のチップ内の配線(例えば、フリップチップ配線)に対応する。
【0028】
試験構造600において、DC_SQUID612のループは、3つ以上の超伝導材料バンプ接合、すなわち、A、B、C、D、E、Fと示されたものを含む。図示されるように、バンプ接合の交互の直列対はそれぞれ第1のチップ内および第2のチップ内のガルバニック接続によって互いに接続されている。すなわち、バンプ接合Aは、第1のチップ内のガルバニック接続によってバンプ接合Bに接続され、バンプ接合Bは、第2のチップ内のガルバニック接続によってバンプ接合Cに接続され、バンプ接合Cは、第1のチップ内のガルバニック接続によってバンプ接合Dに接続され、バンプ接合Dは、第2のチップ内のガルバニック接続によってバンプ接合Eに接続され、バンプ接合Eは、第2のチップ内のガルバニック接続によってバンプ接合Fに接続されている。したがって、第1のチップ302は、バンプ接合の交互の対のうちの1つのセット(A-B,C-D,E-F)に対する接続を含み、第2のチップ304は、バンプ接合の交互の対のうちの他のセット(B-C,D-E)に対する接続を含む。試験動作時、電流はバンプ接合A~Fによって生成された第1のチップと第2のチップとの間の境界を流れ、それによってDC_SQUIDループ612を介した回路経路を完成させる。
【0029】
また、
図6においては、2つの観測接続部Sq+,Sq-がDC_SQUID612に対してジョセフソン接合ペアの各側に1つずつ設けられて、上記のようなDC_SQUID612の近臨界バイアスとDC_SQUID612の両端間の電圧の測定を容易にする。磁束バイアス電流をDC_SQUIDループに流すために、2つの磁束バイアス電流入力接続部Φ1,Φ2がDC_SQUIDループのバンプ接合Aに対して設けられ、第3の磁束バイアス電流接続部Φ3がバンプ接合608およびバンプ接合Fを介してDC_SQUIDループに対して設けられる。磁束バイアス電流入力接続部Φ1,Φ2間に第1の磁束バイアス電流614を適用することにより、
図2の試験構造200に関して上記で説明した方法と同様の方法で、超伝導の検証とともにバンプ接合Aのインダクタンスの測定が可能となる。また、磁束バイアス電流入力接続部Φ1,Φ3間に第2の磁束バイアス電流616を個別に適用することにより、超伝導の検証とともに、バンプ接合された2つのチップに製造されたバンプ接合A~Fのインダクタンスの測定が可能となる。
【0030】
図2の試験構造200に関して上記で説明したように、観測接続部Sq+,Sq-を使用することにより、ジョセフソン接合J
1,J
2の臨界電流I
cの近傍にDC_SQUIDループをバイアスすることができ、例えば、導入された磁束による臨界電流I
cのわずかな変化でDC_SQUIDループの両端間の電圧に測定可能な変化が生じるように、臨界電流I
cのごく近傍にDC_SQUIDループをバイアスすることができる。例えば、DC_SQUIDループをI
cの15パーセント以内、例えばI
cの10パーセント以内、例えばI
cの5パーセント以内にバイアスするように、観測接続部Sq+,Sq-を介して電気エネルギーが供給され得る。DC_SQUID612を適切にバイアスすることで、磁束バイアス電流入力接続部Φ1,Φ2間、または磁束バイアス電流入力接続部Φ1,Φ3間で、磁束バイアス電流614,616のいずれかをそれぞれ着実に増加させることができ、この磁束バイアス電流に応じてDC_SQUID612の両端間(すなわち、観測接続部Sq+,Sq-間)の電圧を測定することにより、
図5に示されるような出力プロットを生成することができる。
【0031】
このようなプロットにおいてI
c変調が観測される場合は、DC_SQUIDループのバンプ接合が超伝導であることを示しており、このような変調が観測できない場合は、複数のバンプ接合のうちの少なくとも1つ、またはDC_SQUIDループのバンプ接合A~F間において介在している超伝導配線の少なくとも1つが超伝導ではないことを示している。インダクタンスは、
図2に関して上記で説明した方法と同様な方法で抽出することができる。抽出されたインダクタンスは、第1の磁束バイアス電流614を適用した場合におけるバンプ接合Aのインダクタンスか、または、第2の磁束バイアス616を適用した場合におけるバンプ接合A~Fおよびバンプ接合A~F間におけるすべての介在する超伝導配線のインダクタンスである。
【0032】
図2および
図6の例は、任意の数のバンプ接合を含むように拡張することができる。また、2つのチップを接続する各バンプ接合に対して別個の試験構造200,600またはその拡張構造を提供することにより、各バンプ接合を個別に試験して各バンプ接合の超伝導性またはいくつかのバンプ接合の超伝導性を検証したり、各バンプ接合のインダクタンスを個別に測定したり、いくつかのバンプ接合のインダクタンスを測定したりすることも可能である。
【0033】
図7は、
図2の試験構造200に類似した超伝導バンプ接合電気特性試験構造700の回路図の例を示しており、第2のチップ(細字の実線で示された配線を有する)に対して第1のチップ(太字の破線で示された配線を有する)内にDC_SQUID812のジョセフソン接合J
1,J
2が設けられている。したがって、
図2のバンプ接合210のような中間バンプ接合は構造700に存在せず、観測接続部Sq+は(太字の破線で示された)第1のチップの配線を介してDC_SQUID712の下部ノードに直接接続されている。それ以外の機能は、
図2に関して上記で説明したとおりであり、1つの試験方法では、近臨界DC_SQUIDバイアス電流が観測接続部Sq+,Sq-間に適用され得るとともに、磁束バイアス電流714が磁束バイアス電流入力接続部Φ+,Φ-間にすなわち試験対象のバンプ接合704に垂直に適用され得る。変調臨界電流の動作が観測接続部Sq+,Sq-間で観測される場合、DC_SQUIDループのバンプ接合704,706が双方とも超伝導であり(単に非常に低い抵抗を有するものとは対照的に)、磁束バイアス電流714に応じた同じ電圧測定が分析されることにより、試験対象のバンプ接合714の自己インダクタンスを得ることができる。
【0034】
図8は、
図6の試験構造600に類似した超伝導バンプ接合電気特性試験構造800の回路図の例を示しており、第2のチップ(細字の実線で示された配線を有する)に対して第1のチップ(太字の破線で示された配線を有する)内にDC_SQUID812のジョセフソン接合J
1,J
2が設けられている。したがって、
図6のバンプ接合604のような中間バンプ接合は構造800に存在せず、I/O接続部Sq+は(太字の破線で示された)第1のチップの配線を介してDC_SQUID812の下部ノードに直接接続されている。それ以外の機能は、
図6に関して上記で説明したとおりであり、1つの試験方法では、近臨界DC_SQUIDバイアス電流が観測接続部Sq+,Sq-間に適用され得るとともに、第1の磁束バイアス電流814または第2の磁束バイアス電流816がそれぞれ磁束バイアス電流入力接続部Φ1,Φ2間または磁束バイアス電流入力接続部Φ1,Φ3間に、すなわち試験対象のバンプ接合Aに垂直にまたはバンプ接合A~Fのすべてに垂直に適用され得る。変調臨界電流の動作が観測接続部Sq+,Sq-で観測される場合、DC_SQUIDループのバンプ接合A~Fがすべて超伝導であり(単に非常に低い抵抗を有するものとは対照的に)、磁束バイアス電流814または磁束バイアス電流816に応じた同じ電圧測定が分析されることにより、第1の磁束バイアス電流814が適用されているのかまたは第2の磁束バイアス電流816が適用されているのかに応じて、それぞれ試験対象のバンプ接合Aまたはバンプ接合A~Fの自己インダクタンスを得ることができる。
【0035】
図9は、バンプ接合の超伝導を検証する方法900を示している。磁束バイアス電流がDC_SQUIDのバンプ接合を介して印加される(902)。DC_SQUIDの両端間の電圧を測定することによりDC_SQUIDの変調臨界電流が観測される(904)。したがって、変調臨界電流の観測に基づいてバンプ接合が超伝導であることが検証される(906)。
【0036】
図10は、バンプ接合の超伝導を検証する、および/またはそのインダクタンスを測定する方法1000を示している。SQUIDループ内でチップを接続するバンプ接合を含むDC_SQUIDが臨界的にバイアスされる(1002)。この文脈での「臨界的にバイアス」とは、DC_SQUIDの一方側の端子からDC_SQUIDの他方側の端子までDC_SQUIDを流れる電流が、DC_SQUIDのジョセフソン接合の臨界電流I
cのある小さな割合、例えばI
cの15パーセント以内、例えばI
cの10パーセント以内、または例えばI
cの5パーセント以内でもたらされることを意味する。次いで、チップ間のバンプ接合に流れる磁束バイアス電流が調整される(例えば増加される、例えば掃引される)(1004)。これにより、磁束がSQUIDループに導入される。DC_SQUIDの両端間の電圧を測定することによってDC_SQUIDの変調臨界電流が観測される(1006)。変調臨界電流の観測に基づいてバンプ接合が超伝導であることが確認され得る(1008)。磁束バイアス電流と観測された変調臨界電流の周期とに基づいてバンプ接合のインダクタンスが計算され得る(1010)。
【0037】
したがって、本明細書に記載の試験構造および方法は、バンプが高導電性であるが標準測定機器の検出閾値未満の抵抗を示し得る状況でさえ、超伝導フリップチップ集積回路プロセスにおけるバンプ接合が超伝導であるかどうかを決定することができる。いくつかのアプリケーションでは、低抵抗であるが有限である抵抗と真のゼロ抵抗とを区別することが重要な場合があり、本試験構造および方法によれば、これら2つのケースを明確に区別することができる。さらに、本明細書に記載の試験構造および方法によれば、バンプ接合のインダクタンスの実験的な決定が可能となる。このインダクタンス値は、バンプ接合自体が信号経路内に寄生インダクタンスを導入する可能性があるため、バンプ接合を利用する超伝導回路の設計およびシミュレーションでは特に重要であり、設計で適切に考慮する必要がある。したがって、本明細書に記載の試験構造および方法は、単一の測定で超伝導性の検証とバンプ接合のインダクタンスとの双方を提供する。
【0038】
以上の説明は本発明の例示である。本発明を説明する目的のために構成要素または方法のあらゆる考えられる組み合わせを記載することは勿論不可能であるが、当業者は本発明のさらなる多くの組み合わせおよび置換が可能であることを認識し得る。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲を含む本出願の範囲内に含まれるすべてのそのような代替、変形、および変更を包含することが意図される。また、本開示または請求項が「1つの」、「第1の」、または「別の」という要素を列挙するかまたはそれらの同等物を列挙する場合には、1つまたは2つ以上のそのような要素を含むと解釈されるべきであり、2つ以上のそのような要素を必須とするものでも、2つ以上のそのような要素を除外するものでもない。本明細書で使用される「含む」という用語は、含むがそれに限定されないことを意味する。「に基づく」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。
本開示に含まれる技術的思想を以下に記載する。
(付記1)
バンプ接合超伝導試験構造であって、
第1の超伝導集積回路(IC)である第1のチップと、
複数のバンプ接合によって前記第1のチップにガルバニック接続された第2の超伝導ICである第2のチップと、
前記複数のバンプ接合のうちの少なくとも2つを電気的に含むループを含むDC_SQUIDと、
を備えるバンプ接合超伝導試験構造。
(付記2)
前記DC_SQUIDは、並列に配置された2つのジョセフソン接合を含む、付記1に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
(付記3)
前記2つのジョセフソン接合部はともに前記第2のチップに製造され、前記第1のチップ内で一方側のみ互いに接続されている、付記2に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
(付記4)
前記第1のチップを介して前記DC_SQUIDに接続された試験配線をさらに備え、前記試験配線は、前記バンプ接合超伝導試験構造が低温空間にあるときに前記低温空間の外側から前記DC_SQUIDに試験信号を供給し、前記低温空間の外側で前記DC_SQUIDからの結果信号を受信するように構成されている、付記1に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
(付記5)
前記複数のバンプ接合のうちの1つに対するガルバニック接続をさらに備え、前記ガルバニック接続は、前記第1のチップと前記第2のチップとの間の前記1つのバンプ接合を介して垂直に磁束バイアス電流を供給するように構成されている、付記1に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
(付記6)
前記ガルバニック接続および前記1つのバンプ接合は、前記磁束バイアス電流が流れる前記DC_SQUIDのループの唯一の部分が前記1つのバンプ接合であるように構成されている、付記5に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
(付記7)
前記磁束バイアス電流により前記DC_SQUIDの臨界電流が変調される、付記5に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
(付記8)
前記DC_SQUIDに対するガルバニック接続であって、前記DC_SQUIDに臨界バイアス電流を供給するように構成されたガルバニック接続をさらに備える付記1に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
(付記9)
前記DC_SQUIDに対する前記ガルバニック接続は、前記DC_SQUIDの両端間の電圧の測定値を提供するようにさらに構成されている、付記8に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
(付記10)
前記DC_SQUIDは、直列に配置された前記複数のバンプ接合のうちの3つ以上を電気的に含み、前記複数のバンプ接合の交互の直列対がそれぞれ前記第1のチップ内および前記第2のチップ内のガルバニック接続によって互いに接続されている、付記1に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
(付記11)
前記複数のバンプ接合に対する少なくとも3つのガルバニック接続をさらに備え、前記ガルバニック接続は、前記第1のチップと前記第2のチップとの間の前記バンプ接合の一つを介して垂直に第1の磁束バイアス電流を供給するとともに、前記複数のバンプ接合を介して第2の磁束バイアス電流を供給するように構成されている、付記10に記載のバンプ接合超伝導試験構造。
(付記12)
超伝導バンプ接合電気的特性評価の方法であって、
DC_SQUIDにおけるバンプ接合を介して磁束バイアス電流を印加すること、
前記DC_SQUIDの両端間の電圧を測定することにより前記DC_SQUIDの変調された臨界電流を観測すること、
前記変調された臨界電流の観測に基づいて前記バンプ接合の超伝導を検証すること、
を備える方法。
(付記13)
前記バンプ接合を通る前記磁束バイアス電流の調整に先立ち、前記DC_SQUIDを通るバイアス電流を印加することにより前記DC_SQUIDに臨界的にバイアスをかけることをさらに備える付記12に記載の方法。
(付記14)
前記磁束バイアス電流と前記観測された変調臨界電流の周期とに基づいて、前記バンプ接合のインダクタンスを計算することをさらに備える付記12に記載の方法。
(付記15)
前記観測された変調臨界電流の周期が、前記調整された磁束バイアス電流に応じた前記DC_SQUIDの両端間の測定電圧の周期である、付記14に記載の方法。
(付記16)
前記バンプ接合のインダクタンスが、インダクタンス式L=Φ/I=h/2eIに従って計算され、ここで、Iは、前記調整された磁束バイアス電流に応じた前記DC_SQUIDの両端間の測定電圧の単一周期を誘導する磁束バイアス電流の量である、付記15に記載の方法。
(付記17)
装置であって、
2つのバンプ接合超伝導集積回路(IC)である2つのICと、
前記2つのICの双方を通過する単一のループを有するDC_SQUIDと、
を備える装置。
(付記18)
前記2つのICのうちの第1のICにおける正および負のバイアスおよび電圧測定端子と、
前記第1のICにおける正および負の磁束バイアス端子と、
前記2つのICのうちの1つにおける前記DC_SQUIDの第1のジョセフソン接合(JJ)であって、前記第1のICと前記2つのICのうちの第2のICとを電気的に接続する第1のバンプ接合と第1のノードとの間に接続された前記第1のJJと、
前記2つのICのうちの1つにおける前記DC_SQUIDの第2のJJであって、前記第1のICと前記第2のICとを電気的に接続する第2のバンプ接合と前記第1のノードとの間に接続された前記第2のJJと、を備え、
前記DC_SQUIDのループが、前記第1のJJ、前記第2のJJ、前記第1のバンプ接合、前記第2のバンプ接合、および前記第1のノードを含む、付記17に記載の装置。
(付記19)
前記正および負の磁束バイアス端子間の電流経路を通過する前記ループの唯一の部分が前記第1のバンプ接合である、付記18に記載の装置。
(付記20)
前記ループの外側にあり、前記第1のICと前記第2のICとを電気的に接続するとともに、前記正の磁束バイアス端子と前記第1のバンプ接合との間に接続された第3のバンプ接合と、
前記ループの外側にあり、前記第1のチップと前記第2のチップとを電気的に接続するとともに、前記正のバイアスおよび電圧測定端子と前記第1のノードとの間に接続された第4のバンプ接合と、
をさらに備える付記18に記載の装置。