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特許7236569高強度ステンレス鋼ローター及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】高強度ステンレス鋼ローター及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20230302BHJP
   C21D 8/00 20060101ALI20230302BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20230302BHJP
   C22C 38/48 20060101ALI20230302BHJP
   B21J 5/00 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
C21D8/00 E
C21D9/00 A
C22C38/48
B21J5/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021576893
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 CN2021090831
(87)【国際公開番号】W WO2021219056
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】202010357799.5
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521319133
【氏名又は名称】鋼鉄研究総院
【氏名又は名称原語表記】CENTRAL IRON & STEEL RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.76 Xueyuan Nanlu, Haidian District, Beijing 100081, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 振宝
(72)【発明者】
【氏名】梁 剣雄
(72)【発明者】
【氏名】王 曉輝
(72)【発明者】
【氏名】孫 永慶
(72)【発明者】
【氏名】王 長軍
(72)【発明者】
【氏名】楊 志勇
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-332020(JP,A)
【文献】特開2004-018897(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110125317(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111730014(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108246944(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114635075(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00
C21D 8/00
C21D 9/00
C22C 38/48
B21J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローターの元素組成は、質量百分率で計算され、C:0.03%~0.050%、Cr:14.90%~15.80%、Ni:5.00%~5.70%、Cu:2.20%~2.80%、Nb+Ta:0.35%~0.44%、Mo:0.45%~0.54%、V:0.06%~0.10%、Si:0.20%~0.60%、Mn:0.40%~0.80%、P≦0.010%、S≦0.010%、O≦0.003%であり、残部が鉄と避けられない不純物元素であることを特徴とする高強度ステンレス鋼ローター。
【請求項2】
請求項1に記載の高強度ステンレス鋼ローターを製造するために使用され、
ローターステンレス鋼ブランクを準備するステップ1と、
前記ローターステンレス鋼ブランクを1回目に加熱した後、自由鍛造を行い、その後、自由鍛造後に1回目の焼鈍と表面処理を行い、鍛造用材を得るステップ2と、
前記鍛造用材を2回目に加熱し、2回目の加熱後に型鍛造を行い、型鍛造後に2回目の焼鈍処理と固溶化処理を行って鍛造品を得るステップ3と、
前記鍛造品を粗加工、時効処理、仕上げ加工した後に高強度ステンレス鋼ローターを得るステップ4と、を含むことを特徴とする高強度ステンレス鋼ローターの製造方法。
【請求項3】
前記ステップ1において、ローターステンレス鋼ブランクの長さは450~480mm、直径はφ350mmであることを特徴とする請求項に記載の高強度ステンレス鋼ローターの製造方法。
【請求項4】
前記ステップ2において、第1回目の加熱プロセスは、ガス炉の温度を750℃に上昇させ、ローターステンレス鋼ブランクをガス炉に入れ、温度を1.5~2時間維持した後、200~300℃/hの速度で1140~1170℃まで温度を上昇させ、温度を2~3時間維持することであることを特徴とする請求項に記載の高強度ステンレス鋼ローターの製造方法。
【請求項5】
前記ステップ2において、自由鍛造には、ローターのステンレス鋼ブランクの2回のアプセットと1回の打ち延ばしが含まれ、一回にアプセットして直径φ440~460mmにした後、直径φ350~380mmに打ち延ばし、2回にアプセットして直径φ440~460mmにし、ローターステンレス鋼ブランクの自由鍛造での初期温度は1140~1170℃、最終鍛造温度は900℃以上であり、ローターステンレス鋼ブランクの自由鍛造後、ブランクスタックを300℃に冷却して分散させ、室温まで空冷することを特徴とする請求項又はに記載の高強度ステンレス鋼ローターの製造方法。
【請求項6】
前記ステップ3において、2回目の加熱は、ガス炉の温度を750℃に上昇させ、鍛造用材を装填し、1.5~3時間保持した後、100~150℃/hの速度で1120℃~1150℃に上昇させ、温度を1~2時間保持することであることを特徴とする請求項に記載の高強度ステンレス鋼ローターの製造方法。
【請求項7】
前記ステップ3において、型鍛造プロセスは、2回目の加熱後の鍛造用材を型鍛造機に入れて型鍛造を行い、型鍛造の初期鍛造温度が1120~1140℃であり、最終鍛造温度が900℃以上であり、型鍛造後、鍛造用材を室温まで空冷することであることを特徴とする請求項に記載の高強度ステンレス鋼ローターの製造方法。
【請求項8】
前記型鍛造の過程では、下型で鍛造品を下に押圧する変形方法を採用し、5回の押圧変形を行い、前記5回の押圧変形は、
1回目の押圧変形では、2000~3000トンの圧力で上型によって鍛造用材を押圧し、
2回目と3回目の押圧変形では、上型を使用して5000トン以上の圧力で鍛造用材を押圧し、
4回目の押圧変形では、4500トンの圧力で鍛造用材を押圧し、
5回目の押圧変形では、4000トンの圧力で鍛造用材を押圧し、30~40秒間保持することであることを特徴とする請求項又はに記載の高強度ステンレス鋼ローターの製造方法。
【請求項9】
前記型鍛造後、得られた鍛造用材の厚さ方向を280mmから100~120mmに押圧し、鍛造比を2以上にすることを特徴とする請求項に記載の高強度ステンレス鋼ローターの製造方法。
【請求項10】
前記ステップ3において、固溶化処理は、2回目の焼鈍処理の鍛造用材を抵抗炉に置いて1035~1045℃に加熱し、温度を1~1.5時間保持し、保持が終了した後に鍛造用材を32℃以下に空冷して鍛造品が得られることであることを特徴とする請求項に記載の高強度ステンレス鋼ローターの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2020年4月29日に中国特許庁に提出され、出願番号202010357799.5、発明の名称「高強度ステンレス鋼ローター及びその製造方法」の中国特許出願の優先権を要求し、そのすべての内容は参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、金属材料の熱処理の技術分野、特に高強度ステンレス鋼ローター及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高強度ステンレス鋼は、高強度、靭性、耐食性を備えて、優れた構造材料であり、石油、化学工業、民間船、航空宇宙、民間機等の分野で広く使用されている。現在、高強度ステンレス鋼鍛造品が広く使用されており、鍛造プロセスが研究されている。
【0004】
高速ローターはジャイロスコープの重要な部品であり、高強度ステンレス鋼は、高強度、高靭性、高寸法安定性、耐食性などの特性を備えているため、高速ローターの製造に使用すると、より優れたサービス性能を実現できる。従来技術では、1Cr18Ni9Tiステンレス鋼を用いて自由鍛造プロセスで棒材を製造し、次に切削加工で高速ローターを製造しているため、切削加工量が多いため、原材料を大量に浪費し、コストを増加させる。同時に、棒材によって機械加工されたローターの金属の流線は閉じられておらず、使用中の安全上の問題があり、また、1Cr18Ni9Tiステンレス鋼材料で製造されたローターの強度はわずか560MPaであり、強度が低いため耐用年数が短くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の分析を考慮して、本発明の実施例は、従来技術におけるローターの低強度、短耐用年数、および鍛造中の切削プロセスにおける原材料の多くの無駄、高いコストという問題を解決するために、高強度ステンレス鋼ローター及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の技術的解決手段により実現される。
【0007】
高強度ステンレス鋼ローターであって、ローターの元素組成は、質量百分率で計算される:C:0.03%~0.050%、Cr:14.90%~15.80%、Ni:5.00%~5.70%、Cu:2.20%~2.80%、Nb+Ta:0.35%~0.44%、Mo:0.45%~0.54%、V:0.06%~0.10%、Si:0.20%~0.60%、Mn:0.40%~0.80%、P≦0.010%、S≦0.010%、O≦0.003%、残部が鉄と避けられない不純物元素である。
【0008】
さらに、前記ローターの元素組成は、質量百分率で計算され、C:0.043%、Cr:15.4%、Ni:5.35%、Cu:2.52%、Nb+Ta:0.41%、Mo:0.53%、V:0.08%、Si:0.25%、Mn:0.46%、P:0.005%、S≦0.010%,O≦0.003%であり、残部が鉄と避けられない不純物元素である。
【0009】
高強度ステンレス鋼ローターの製造方法であって、上記高強度ステンレス鋼ローターを製造するために使用され、
ローターステンレス鋼ブランクを準備するステップ1と、
前記ローターステンレス鋼ブランクを1回目に加熱した後、自由鍛造を行い、その後、自由鍛造後に1回目の焼鈍と表面処理を行い、鍛造用材を得るステップ2と、
前記鍛造用材を2回目に加熱し、2回目の加熱後に型鍛造を行い、型鍛造後に2回目の焼鈍処理と固溶化処理を行って鍛造品を得るステップ3と、
前記鍛造品を粗加工、時効処理、仕上げ加工した後に高強度ステンレス鋼ローターを得るステップ4と、を含む。
【0010】
さらに、前記ステップ1において、ローターステンレス鋼ブランクの長さは450~480mm、直径はφ350mmである。
【0011】
さらに、前記ステップ2において、1回目の加熱プロセスは次のとおりである。ガス炉の温度を750℃に上昇させ、ブランクをガス炉に入れ、温度を1.5~2時間維持した後、200~300℃/hの速度で1140~1170℃まで温度を上昇させ、温度を2~3時間維持する。
【0012】
さらに、前記ステップ2において、自由鍛造には、ローターのステンレス鋼ブランクの2回のアプセットと1回の打ち延ばしが含まれ、一回にアプセットして直径φ440~460mmにした後、直径φ350~380mmに打ち延ばし、2回にアプセットしては直径φ440~460mmにし、ローターステンレス鋼ブランクの自由鍛造初期温度は1140~1170℃、最終鍛造温度は900℃以上であり、自由鍛造後、ブランクスタックを300℃に冷却して分散させ、室温まで空冷する。
【0013】
さらに、前記ステップ2において、1回目の焼鈍処理は、自由鍛造後のブランクを抵抗炉に入れ、640℃~660℃に加熱し、12時間~20時間保持した後、炉で室温まで冷却して鍛造用材を得るというものである。
【0014】
さらに、前記ステップ3において、2回目の加熱は、ガス炉の温度を750℃に上昇させ、鍛造用材を装填し、1.5~3時間保持した後、100~150℃/hの速度で1120℃~1150℃に上昇させ、温度を1~2時間保持する。
【0015】
さらに、前記ステップ3において、型鍛造プロセスは以下のとおりである。2回目の加熱後の鍛造用材を型鍛造機に入れて型鍛造を行い、型鍛造の初期鍛造温度は1120~1140℃であり、最終鍛造温度は900℃以上であり、型鍛造後、鍛造用材を室温まで空冷する。
【0016】
さらに、前記型鍛造の過程では、下型で鍛造品を下に押圧する変形方法を採用し、5回の押圧変形を行い、前記5回の押圧変形は以下の通りである。
【0017】
1回目の押圧変形では、2000~3000トンの圧力で上型によって鍛造用材を押圧する。
2回目と3回目の押圧変形では、上型を使用して5000トン以上の圧力で鍛造用材を押圧する。
4回目の押圧変形では、4500トンの圧力で鍛造用材を押圧する。
5回目の押圧変形では、4000トンの圧力で鍛造用材を押圧し、30~40秒間保持する。
【0018】
さらに、前記型鍛造後、得られた鍛造用材の厚さ方向を280mmから100~120mmに押圧し、鍛造比を2以上にする。
【0019】
さらに、前記ステップ3において、2回目の焼鈍処理は、型鍛造後の鍛造用材を抵抗炉に入れ、640℃~660℃まで温度を上昇させ、25時間~30時間保持し、室温まで冷却することである。
【0020】
さらに、前記ステップ3において、固溶化処理は、2回目の焼鈍処理の鍛造用材を抵抗炉に置いて1035~1045℃に加熱し、1~1.5時間保持した後、鍛造用材を32℃以下に空冷して鍛造品が得られることである。
【0021】
さらに、前記ステップ4において、時効処理は、粗加工された鍛造品を抵抗炉に入れて550~560℃に加熱し、4~4.5時間保持し、室温まで空冷することである。
【0022】
さらに、仕上げ加工した前記高強度ステンレス鋼ローターの表面品質はRa1.6に達する。
【発明の効果】
【0023】
従来技術に比べて、本発明は、以下の有益な効果のうちの少なくとも1つを達成することができる。
1、本発明は、高強度ステンレス鋼材料を採用して、自由鍛造と型鍛造の2つの鍛造工程を組み合わせて使用し、自由鍛造と型鍛造前にそれぞれ加熱し、自由鍛造と型鍛造後にそれぞれ焼鈍処理を行い、最後の焼鈍処理後、鍛造品に固溶化処理、粗加工、時効処理、仕上げ処理を施した後、ローターの引張強度Rは1100MPa以上、降伏強度Rp0.2は1000MPa以上、破壊後の伸長率Aは15%以上、断面収縮率Zは55%以上、硬さは36HRC以上であり、既存のローター強度よりも500MPa以上高く、ローターの耐用年数を改善する。
2、本発明は、最初に自由鍛造、次に型鍛造の製造プロセスを採用し、自由鍛造の鍛造比は3より大きく、型鍛造の鍛造比は2より大きく、そして自由鍛造と型鍛造の累積鍛造比は5より大きく、横方向、縦方向の両方に大きな変形があり、オーステナイト結晶粒度が細かく、結晶粒が大きく壊れており、結晶粒度が細かく(グレード6以上)、鍛造品の横方向と縦方向の機械的性質を一致にし、ローターの高速回転部品の疲労寿命を改善し、安全性と信頼性を向上させる。
3、本発明におけるブランクの自由鍛造は、2回のアプセットプロセスおよび1回の打ち延ばしプロセスを含む。ブランクを1回目に直径φ440~460mmにアプセットし、その後に直径φ350~380mmに打ち延ばし、2回目に直径φ440~460mmにアプセットする。ブランクに2回のアプセット及び1回の打ち延ばしを行った後、自由鍛造を開始する。ブランク自由鍛造の初期鍛造温度は1140~1170℃、好ましくは1140~1150℃である。ブランクの自由鍛造において、2回のアプセットと1回の打ち延ばしの目的は、ブランクの変形量を大きくし、結晶粒を小さくすると同時に、ブランクの横方向と縦方向の結晶粒サイズを均一に一致することである。
4、本発明では、自由鍛造後の1回目の焼鈍処理と型鍛造後の2回目の焼鈍処理を採用する。鍛造プロセス中に初期鍛造と最終鍛造の温度範囲を厳密に制御し、自由鍛造の初期鍛造温度は1140~1170℃、最終鍛造温度は900℃より大きい、型鍛造の初期鍛造温度は1120~1140℃、型鍛造の最終鍛造温度は900℃より大きいであり、この温度での鍛造用材は熱可塑性に優れており、毎回の変形量や変形サイズを制御することで変形に有利であり、鍛造プロセスでの材料の可塑性を確保し、より大きな鍛造比を得て、ひび割れなどの欠陥がない。
5、本発明の鍛造品は、固溶化処理後の粗加工により工具損失を低減し、非常に小さな仕上げ代を残し、時効後の仕上げ加工を行うことで、材料の硬さの上昇による工具摩耗を低減することができる。
6、本発明では、自由鍛造と型鍛造とを組み合わせた製造プロセスを採用して、鍛造品の形状に沿って閉じた金属流線を得ることができ、製造されたローターは、金属流線全体が閉じられており、鍛造品の耐疲労性と使用安全性を向上させ、10年以上のサービスサイクルに適している。
7、本発明の鍛造品は、切削量が少なく、使用する原材料の量を節約し、コストを効果的に削減し、従来の技術では、棒材を直接切削して鍛造品の形状に加工すると、大量の加工と原材料の浪費の問題を回避し、そして、製品の一致性は良好で、合格率は100%に達する。
【0024】
本発明において、上記の技術的解決手段を互いに組み合わせて、より好ましい組み合わせ解決手段を達成することもできる。本発明の他の特徴および利点は、以下の説明で説明され、一部の利点は、明細書から明らかになるか、または本発明を実施することによって理解され得る。本発明の目的および他の利点は、明細書および図面で具体的に指摘された内容を通じて実現および得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図面は、具体的な実施例を説明する目的でのみ使用され、本発明の限定とは見なされない。図面全体を通して、同じ参照記号は同じ構成要素を表す。
【0026】
図1はローター型鍛造品の模式図である。
図2はローターの模式図である。
図3は、実施例1の高速ローターのコアの結晶粒度を示している。
図4は、実施例1の高速ローターのエッジの結晶粒度を示している。
図5は、比較例1の高速ローターのコアの結晶粒度を示している。
図6は、比較例1の高速ローターのエッジの結晶粒度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の好ましい実施例は、添付の図面を参照して以下に詳細に説明される。ここで、図面は本出願の一部を構成し、本発明の実施例とともに、本発明の原理を説明するために使用され、本発明の範囲を限定するために使用されない。
【0028】
本発明の一つの具体的な実施例は、高強度ステンレス鋼ローターを開示している。その元素組成は、質量百分率で計算され、C:0.03%~0.050%、Cr:14.90%~15.80%、Ni:5.00%~5.70%、Cu:2.20%~2.80%、Nb+Ta:0.35%~0.44%、Mo:0.45%~0.54%、V:0.06%~0.1%、Si:0.20%~0.60%、Mn:0.40%~0.80%、P≦0.010%、S≦0.010%、O≦0.003%であり、残部が鉄と避けられない不純物元素である。
【0029】
高強度ローターを得るために、5.00~5.70%のNiを添加してマルテンサイト組織を得る。強化元素Cu(2.20~2.80%)を添加し、第2相ε-Cuを析出させる。Nbを添加してNbC析出相を取得する。Moの添加は固溶強化効果がある。疲労性能を確保するために、PとSを0.01%以下に低減し、酸化物不純物の含有量を低減して疲労性能を向上させるために、Oを0.003%以下に低減し、ローターの耐食性を向上させるために、合金配合ではCr元素が14.90~15.80%である。
【0030】
一方、本発明は、高強度ステンレス鋼ローターの製造方法を提供する。本発明は、高強度ステンレス鋼ローターの製造方法を提供し、
ローターステンレス鋼ブランクを準備するステップ1と、
ブランクを1回目に加熱した後、自由鍛造を行い、自由鍛造後に1回目の焼鈍と表面処理を行い、鍛造用材を得るステップ2であって、
1回目の加熱プロセスは次のとおりである。ガス炉の温度を750℃に上昇させ、ブランクをガス炉に入れ、温度を1.5~2時間維持した後、200~300℃/hの速度で1140~1170℃まで温度を上昇させ、温度を2~3時間保持する。自由鍛造には、ブランクの2回のアプセットと1回の打ち延ばしが含まれ、一回にアプセットして直径φ440~460mmにした後、その後に直径φ350~380mmに打ち延ばし、2回にアプセットしては直径φ440~460mmにし、ブランクの自由鍛造の初期鍛造温度は1140~1170℃、最終鍛造温度は、900℃以上であり、鍛造後、ブランクスタックを300℃に冷却した後、分散させ、室温まで空冷する。1回目の焼鈍処理は、自由鍛造後のブランクを抵抗炉に入れ、640℃~660℃に加熱し、12時間~20時間保持した後、炉で室温まで冷却して鍛造用材を得るというものであることと、
鍛造用材を2回目に加熱し、2回目の加熱後に型鍛造を行い、型鍛造後に2回目の焼鈍処理と固溶化処理を行って鍛造品を得るステップ3であって、
2回目の加熱は、ガス炉の温度を750℃に上昇させ、鍛造用材を装填し、1.5~3時間保持した後、100~150℃/hの速度で1120℃~1150℃に上昇させ、温度を1~2時間保持することである。型鍛造プロセスは、鍛造用材を型鍛造機に入れて型鍛造を行い、初期鍛造温度は1120~1140℃であり、最終鍛造温度は900℃以上であり、鍛造後、鍛造用材を室温まで空冷することである。2回目の焼鈍処理は、型鍛造後の鍛造用材を抵抗炉に入れ、640℃~660℃まで温度を上昇させ、25時間~30時間保持した後、室温まで冷却することである。固溶化処理は、2回目の焼鈍処理後の鍛造用材を抵抗炉に置いて1035~1045℃に加熱し、1~1.5時間保持した後、32℃以下に空冷し、鍛造品を得ることであることと、
鍛造品を粗加工、時効処理、仕上げ加工した後に高強度ステンレス鋼ローターを得るステップ4であって、
時効処理は、粗加工された鍛造品を抵抗炉に入れて550~560℃に加熱し、4~4.5時間保持し、室温まで空冷してローターを得ることであることと、を含む。
【0031】
具体的には、ステップ1において、直径φ350mmの高強度ステンレス鋼棒材を準備し、長さ450~480mmのブランクを切断して表面のバリを取り除く。後続の鍛造プロセス中の角での応力集中を軽減し、潜在的な安全上の危険を排除するために、本発明は、ブランクの2つの端面で角R20を丸める。
【0032】
ステップ2において、具体的なステップは以下のとおりである。
【0033】
ステップ21:ブランクをガス炉で1回目に加熱することであって、
ガス炉の温度を750~760℃に上昇させた後、ブランクを入れて、温度を1.5~2時間保持した後、200~300℃/hの速度で1140~1170℃に上昇させ、温度を2~3時間保持する。ブランクを750~760℃で炉に入れることを選択すると、ブランクが400~470℃の脆性温度範囲をすばやく通過し、ブランクの脆性を低減する。ブランクを400~470℃の温度範囲で長時間保持すると、組織内に強化相が析出し、内部熱応力の影響で材料に亀裂が生じやすくなる。
【0034】
従来技術のガス炉の温度上昇速度が100℃/hであることと比較して、本発明のブランクは、温度上昇速度200~300℃/hで、温度が1140~1170に急速に上昇する。温度上昇時間を短縮し、エネルギー消費量を削減し、生産効率を向上させる。同時に、温度上昇速度を短くすると、高温でのステンレス鋼ブランクのオーステナイト結晶粒の成長を抑制し、ブランクの強度を高め、ブランクの可塑性を低下させることもできる。ブランクを1140~1170℃で2~3時間保持すると、鍛造前のブランクの温度と組織の均一性を確保できる。
【0035】
ステップ22:ブランクの自由鍛造であって、
ブランクの自由鍛造は、2回のアプセットプロセスおよび1回の打ち延ばしプロセスを含む。ブランクを1回目に直径φ440~460mmにアプセットし、その後に直径φ350~380mmに打ち延ばし、2回目に直径φ440~460mmにアプセットする。ブランクに2回のアプセット及び1回の打ち延ばしを行った後、自由鍛造を開始する。ブランク自由鍛造の初期鍛造温度は1140~1170℃、好ましくは1140~1150℃である。ブランクの自由鍛造において、2回のアプセットと1回の打ち延ばしの目的は、ブランクの変形量を大きくし、結晶粒のサイズを小さくすると同時に、横方向と縦方向の結晶粒サイズを均一で一致にすることで、型鍛造のために準備を行うことである。
【0036】
従来技術では、棒材はローターに直接機械加工されており、棒材は変形せず、鍛造比もない。本発明は、鍛造法により棒材の鍛造比を大きくし、自由鍛造の鍛造比が3より大きいため、結晶粒が大きく変形し、蓄積されたエネルギーは、変形した結晶粒の境界に新しい結晶粒核形成コアを形成し、再結晶化して、小さくて均一な等軸結晶粒を形成させる。
【0037】
また、本発明では、ブランクが十分に変形し、結晶粒が壊れて細かくなり、鍛造プロセス中にブランクにひびが入らないようにするために、最終鍛造温度は900℃より大きい。自由鍛造後、鍛造用材スタックを300℃に冷却した後に分散し、空冷する。主な目的は、過度の冷却速度により、鍛造用材のコアや表面に不均一な熱応力が発生したり、亀裂が発生したりするのを防ぐことである。ブランクを自由鍛造した後に鍛造用材を得る。
【0038】
ステップ23:ブランクの1回目の焼鈍処理であって、
鍛造用材を抵抗炉で640~660℃、好ましくは640~650℃に温度上昇させ、12時間~20時間、好ましくは12~15時間保持する。1回目の焼鈍処理は、不均一な鍛造変形によって引き起こされる組織欠陥を排除し、鍛造品の結晶粒間の転位密度を低減し、組織を均一にし、残留応力を排除するためである。
【0039】
従来技術では、ブランクの焼鈍温度は620~640℃であるか、焼鈍処理なしである。従来技術の620~640℃の焼鈍温度と比較して、本発明の焼鈍温度範囲が高い。これは、自由鍛造における鍛造用材の鍛造比が大きく、変形が大きく、内部応力が大きく、より高い焼鈍温度によって内部応力を排除するからである。
【0040】
ステップ24:ブランクを焼鈍処理した後、表面処理して鍛造用材を得ることであって、
鍛造品の表面処理は、ショットブラスト機を使用して、鍛造後の鍛造用材の表面酸化皮膜を洗浄し、鍛造品の表面欠陥を研磨する。表面処理の目的は、その後の型鍛造プロセス中に表面亀裂などの欠陥が部品の内部に侵入するか、または亀裂を続けて歩留まりを低下させ、鍛造品の性能に影響を与えることを防ぐことである。
【0041】
ステップ3において、具体的なステップは以下のとおりである。
ステップ31:上記の表面処理後、鍛造用材を2回目に加熱することであって、
2回目の加熱は、表面処理された鍛造用材を加熱して、型鍛造の準備をすることである。ガス炉の温度を750~780℃に上昇させた後、鍛造用材を入れて1.5~3時間保持した後、100~150℃/hの速度で1120℃~1150℃まで温度上昇させ、1~2h温度保持する。鍛造用材を750~780℃で炉に入れ、鍛造用材の加熱温度に400~470℃の脆性温度範囲をすばやく通過させ、温度をこの温度範囲に長時間保持すると、組織内に沈殿強化相が析出し、内部熱応力の影響で材料が割れる傾向が大幅に増加する。温度は100~150℃/hの速度で1120℃~1150℃に上昇し、好ましい上昇速度は120~150℃/hであり、この温度上昇速度を使用すると、加熱プロセス中の鍛造用材の表面からコアまでの温度をより均一にすることができ、温度勾配は小さくなり、1120℃~1150℃、保持時間1~2hを使用することで、エネルギー消費量を削減でき、次に、高温でのオーステナイト結晶粒の成長を抑制し、材料組織の均一性を確保する。
【0042】
特に、本発明において、温度上昇速度は2つの加熱工程で異なる。1回目の加熱は自由鍛造前の加熱であり、加熱速度がより速い。2回目の加熱は金型鍛造のための加熱であり、鍛造用材の内部と外部の温度を同じにするため、加熱速度が遅くなる。また、1回目の温度上昇速度が速いのは加熱時間を短くするためであり、加熱時間が長すぎると結晶粒が成長する。2回目の加熱速度の低下は、加熱速度が速すぎるため、内外の温度勾配が大きくなり、熱応力が発生し、熱塑性が低下し、鍛造変形に影響を及ぼすためである。
【0043】
ステップ32:鍛造用材を2回目の加熱後に型鍛造することであって、
鍛造用材の型鍛造の初期鍛造温度は1120~1140℃、好ましい鍛造温度は1120~1130℃である。この温度での鍛造用材は熱可塑性に優れており、変形に有利である。型鍛造の最終鍛造温度は900℃より大きい。型鍛造工程の角に応力集中を避けるため、最終鍛造温度はできるだけ高くする必要があるが、同時に、結晶粒が十分に破壊され、微細な結晶粒が得られることを考慮するため、好ましい最終鍛造温度は950℃よりも高くなる。型鍛造後、鍛造品を室温まで空冷して鍛造品を得る。
【0044】
型鍛造過程では、下型で鍛造用材を下に押圧する変形方法を採用し、5回の押圧変形を行い、まず、マニピュレータを使用して、2回目の加熱後の鍛造用材を型鍛造機の下型のキャビティ内に配置し、鍛造プロセス中の偏心を避けるために、鍛造用材の軸心を金型軸心と合わせるように調整し、1回目の変形では、2000~3000トンの圧力で上型によって鍛造用材を押圧し、鍛造用材が中心合わせ且つ下型のキャビティ内に固定されていることを保証し、2回目と3回目の変形では、上型を使用して5,000トン以上の圧力で鍛造用材を押圧し、より大きな鍛造比が得られ、結晶粒を十分に破壊することができ、4回目の変形では、鍛造用材を4500トンの圧力で押圧し、上下の型のキャビティを鍛造用材で満充填することができ、5回目の変形では、鍛造用材を4000トンの圧力で押圧し、かつ30~40秒間保持すると、鍛造用材で上下の型キャビティをさらに満充填することができ、同時に、鍛造用材をキャビティ内に30~40秒間保持すると、角での応力が解放され、鍛造用材の内側と外側の温度と組織がより均一になり、外形寸法は要件を満たすことを保証できる。型鍛造後、鍛造用材の厚さ方向を280mmから100~120mmに押圧し、鍛造比を2より大きくして型のキャビティを満充填し、型鍛造により、高速ローターに似た形状の鍛造品が得られ、その後の加工量が少なく、横方向、縦方向ともに大きな変形を保証でき、材料性能は、すべての方向に一致している傾向にある。
【0045】
ステップ33:型鍛造後の鍛造用材に対して、2回目の焼鈍工程を行うことであって、
型鍛造後の鍛造品を抵抗炉に入れ、640℃~660℃まで温度上昇させ、25時間~30時間保持した後、炉で室温まで空冷する。好ましい焼鈍温度は640~650℃であり、二次焼鈍は、型鍛造品の組織欠陥を排除し、再び結晶粒間の転位密度を低減し、組織を均一にし、残留応力を排除することができる。
【0046】
ステップ34:型鍛造後の鍛造用材を、2回目の焼鈍工程後に固溶化処理し、鍛造品が得られることであって、
固溶化処理により、合金元素や析出相を高温オーステナイトに固溶化し、時効過程での析出相の分散・析出のために準備し、組織をより均一にすることができる。したがって、固溶化処理中、型鍛造後の鍛造用材を抵抗炉内で固溶温度1035~1045℃まで加熱し、好ましい固溶温度は1040℃であり、保持時間は1~1.5時間、好ましくは1時間であり、その後、鍛造用材を32℃以下に空冷し、32℃以下に空冷することは、マルテンサイトの相転移を完全させ、鋼の高強度を保証する。
【0047】
ステップ4において、具体的なステップは以下のとおりである。
ステップ41:鍛造品の粗加工であって、鍛造品では、フライス盤や旋盤で型鍛造品を粗加工し、1~1.5mmの仕上げ代を残す。
ステップ42:鍛造品を、粗加工後、時効処理することであって、抵抗炉で粗加工した鍛造品を550~560℃に加熱し、4~4.5時間保持し、室温まで空冷する。ここで、好ましい温度は550℃であり、好ましい保持時間は4時間である。時効処理により、豊富なCuやNb(CN)などの微細で分散した強化相が鋼中に大量に析出し、鋼の強度が大幅に向上し、機械的性質の使用要件を満たすことができる。
ステップ43:最後に仕上げ加工した後、鍛造品が完成することであって、工作機械を使用して、時効後の鍛造品を仕上げ加工し、最終的な表面品質とサイズの要件を満たし、最終的な表面品質はRa1.6に達し、図1に示すように、型鍛造品の形状はジャイロ形状である。
【0048】
実施例1
本実施例は、高強度ステンレス鋼ローターを提供し、その元素組成は、質量百分率で計算され、C:0.043%、Cr:15.4%、Ni:5.35%、Cu:2.52%、Nb+Ta:0.41%、Mo:0.53%、V:0.08%、Si:0.25%、Mn:0.46%、P:0.005%、S≦0.010%、O≦0.003%、残部が鉄と避けられない不純物元素であった。
【0049】
一方では、本発明は、高強度ステンレス鋼ローターの製造方法を提供し、
ローターステンレス鋼ブランクを準備するステップ1であって、
φ350~465mmの高強度ステンレス鋼ブランクを準備し、表面のバリを取り除き、端面に角R20を丸めたことと、
ブランクを1回目に加熱した後、自由鍛造を行い、自由鍛造後に1回目の焼鈍と表面処理を行い、鍛造用材を得たステップ2であって、
ブランクをガス炉で1回目に加熱したステップ21であって、
ガス炉の温度を750℃に上昇させた後、ブランクを入れて1.5時間保持した後、250℃/hの速度で1140℃に上昇させ、2.5時間保持したこと、
ブランクを自由鍛造するステップ22であって、
ブランクを1000トンの高速鍛造機に入れ、最初に一回目のアプセットを実行し、ブランクを直径φ450mm、高さ約280mmにアプセットし、直径φ3650mm、高さ約440mmに打ち延ばし、2回目のアプセットを直径φ450mm、高さ280mmに実施し、初期鍛造温度は1140℃であり、最終鍛造温度は950℃であり、鍛造後、鍛造用材スタックを300℃に冷却した後に分散し、空冷した。鍛造比は約4.5であったこと、
ブランクを自由鍛造した後、1回目の焼鈍と表面処理を行い、鍛造用材を得たことであって、
自由鍛造後、ブランクを抵抗炉に入れて640℃まで加熱し、12時間保持し、室温まで冷却した。ショットブラスト機を使用して、鍛造後のブランクの表面酸化皮膜を洗浄し、鍛造の表面欠陥を研磨したことと、
鍛造用材を2回に加熱し、2回目の加熱後に型鍛造を行い、型鍛造後に2回目の焼鈍処理と固溶化処理を行って鍛造品を得たステップ3であって、
鍛造用材を2回目に加熱したステップ31であって、
ガス炉の温度を750℃に上昇させた後、鍛造用材を入れて2時間保持した後、150℃/hの速度で1130℃まで温度上昇させ、1h温度保持したこと、
2回目の加熱後に鍛造用材を型鍛造したステップ32であって、
ガス炉で2回に加熱した後の鍛造用材を、6000トンの型鍛造機に入れて型鍛造し、型鍛造工程では、1回目の変形で3000トンの圧力で上型を使用して鍛造用材を押圧し、鍛造用材を中心合わせに配置して下型のキャビティに固定し、2回目と3回目の変形では、上型を使用して5300トンの圧力で鍛造用材を押圧し、4回目の変形では、鍛造用材を4500トンの圧力で押圧し、鍛造用材を上下の型のキャビティに満充填し、5回目の変形では、鍛造用材を4000トンの圧力で押圧し、かつ30秒間保持した。鍛造用材の厚さ方向を280mmから105mmに押圧し、上下型のキャビティを満充填し、初期鍛造温度は1120℃、最終鍛造温度は950℃であった。鍛造後、室温まで空冷したこと、
型鍛造後に鍛造用材に対して、2回目の焼鈍を行うことであって、
鍛造後の鍛造用材を抵抗炉に入れ、640℃に加熱し、25時間保持した後、室温まで冷却したこと、
2回目の焼鈍後、鍛造用材を固溶して鍛造品を得たステップ34であって、
2回目の焼鈍後の鍛造用材を抵抗炉で1040℃に加熱し、1時間保持した後、32℃以下に空冷したことと、
鍛造品を粗加工、時効処理、仕上げ加工した後に高強度ステンレス鋼ローターを得たステップ4であって、
鍛造品の粗加工ステップ41であって、
フライス盤及び旋盤で型鍛造品を粗加工して1mmの仕上げ代を残したこと、
時効処理のステップ42であって、
粗加工された鍛造品を抵抗炉に入れ、550℃に加熱し、4時間保持した後、室温まで空冷したこと、
時効処理後の鍛造品の仕上げ加工ステップ43であって、
工作機械を使用して、時効後の鍛造品を仕上げ加工し、最終的な表面品質とサイズの要件を満たし、最終的な表面品質はRa1.6に達し、図1に示すように、型鍛造品の形状はジャイロ形状であったことと、を含む。
【0050】
実施例2
実施例1で説明した方法によると、異なることは次のとおりであった。自由鍛造の初期鍛造温度は1150℃、最終鍛造温度は900℃であった。鍛造後、鍛造用材スタックを300℃に冷却した後に分散し、空冷した。機械的性質を表1に示した。
【0051】
実施例3
実施例1で説明した方法によると、異なることは次のとおりであった。型鍛造工程では、1回目の変形で3000トンの圧力で上型を使用して鍛造用材を押圧し、鍛造用材を中心合わせに配置して下型のキャビティに固定し、2回目と3回目の変形では、上型を使用して5500トンの圧力で鍛造用材を押圧し、4回目の変形では、鍛造用材を4500トンの圧力で押圧し、鍛造用材を上下の型のキャビティに満充填し、5回目の変形では、鍛造用材を4000トンの圧力で押圧し、かつ40秒間保持した。鍛造用材の厚さ方向を280mmから120mmに押圧し、上下型のキャビティを満充填し、初期鍛造温度は1140℃、最終鍛造温度は950℃であった。鍛造後、室温まで空冷した。機械的性質を表1に示した。
【0052】
実施例4
実施例1で説明した方法によると、異なることは次のとおりであった。2回目の焼鈍処理後の鍛造用材を抵抗炉で1035℃に加熱し、温度を1時間保持した後、32℃以下に空冷した。機械的性質を表1に示した。
【0053】
実施例5
実施例1で説明した方法によると、異なることは次のとおりであった。時効処理は、560℃に加熱した後、4時間保持し、室温まで空冷した。機械的性質を表1に示した。
【0054】
比較例1
実施例1で説明したローターの製造方法を使用し、異なることは次のとおりであった。型鍛造工程では、鍛造用材の厚さ方向を280mmから150mmに押圧し、機械的性質を表1に示し、粗結晶と混晶を図5に示し、金属平均結晶粒度測定法GB/T6394に記載されている方法で測定された。
【0055】
比較例2
実施例1で説明したローターの方法を使用し、異なることは次のとおりであった。時効処理の時、540℃に加熱した後、4時間保持し、室温まで空冷した。機械的性質を表1に示した。
【0056】
表1に、高速ローターの測定された室温での機械的特性を示し、機械的特性テストは、標準のGB/T228テストに準拠している。
【0057】

【表1】
【0058】
表1から、本発明により製造された高強度ステンレス鋼ローターは、優れた機械的性質を有し、その引張強度Rは1100MPa以上、降伏強度Rp0.2は1000MPa以上、破壊後の伸長率Aは15%以上、断面収縮率Zは55%以上、硬さは36HRC以上であり、機械的性質は標準要件を満たし、横方向と縦方向の特性の差は非常に小さく、設計と使用の要件を満たすことが分かる。
【0059】
図3図4は、それぞれ実施例1で製造した高速ローターのコアとエッジのオーステナイト結晶粒の形態であり、両者の結晶粒サイズは類似しており、平均結晶粒度は6.5~7.0であり、高速ローターの異なる位置の組織はほぼ同じであり、本発明の製造方法は、より均一な組織を得ることができる。
【0060】
図5および図6は、それぞれ、比較例1のコアおよびエッジのオーステナイト結晶粒形態である。鍛造比制御が不十分なため、混晶が発生し、粗い結晶が激しく、伸長率が大幅に低下し、指数要件を満たさず、ローターの性能に影響を及ぼした。
【0061】
比較例2では、時効温度は540℃である。4時間の温度保持後、強度は大幅に向上したが、伸長率や断面収縮率が大幅に減少し、性能が指標要件を満たしていないため、ローターの性能に影響を与える。
【0062】
要約すると、本発明によって提供される高強度ステンレス鋼高速ローターの製造方法は、自由鍛造と型鍛造プロセスを効果的に組み合わせて、変形量および鍛造比を増加させ、均一な組織と安定した性能を有する高速ローターを得る。本発明の製造方法は、加工量を大幅に削減し、原材料の利用率を改善し、組織を制御するために合理的な熱処理プロセスを採用し、加工工具の損失を減らし、すべての性能が指標要件を満たし、そして、製造された高速ローターは均一な組織を持ち、横方向と縦方向の機械的性質に明らかな差はなく、優れた性能を持ち、実際のサービス要件を満たしている。
【0063】
上記は、本発明の好ましい発明を実施するための形態にすぎないが、本発明の保護範囲はそれに限定されない。本発明に開示された技術の範囲内で当業者によって容易に想像することができる変更または置換も、本発明の保護範囲内によってカバーされるべきである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6