(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/496 20060101AFI20230302BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20230302BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
A61F13/496 100
A61F13/49 311Z
A61F13/49 312Z
A61F13/51
(21)【出願番号】P 2022116979
(22)【出願日】2022-07-22
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2021126070
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 京子
(72)【発明者】
【氏名】松田 昂平
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-227407(JP,A)
【文献】登録実用新案第3229304(JP,U)
【文献】特開2018-88945(JP,A)
【文献】特開2002-102283(JP,A)
【文献】特開平7-213553(JP,A)
【文献】国際公開第2019/123549(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性本体と、前記吸収性本体の非肌対向面側に配置され、縦方向の両側に位置する腹側領域及び背側領域を含み、複数の熱可塑性シートが積層されて構成された外装体と、前記外装体の前記腹側領域と前記背側領域とを前記縦方向と直交する横方向の側縁部において接合する一対のサイド接合部と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、
前記一対のサイド接合部は、前記縦方向の両端部を構成するウエスト端部及びレッグ端部と、前記ウエスト端部から前記縦方向に25mm以内のウエスト領域と、前記縦方向に沿って配列された複数のシール部と、を有し、
前記複数のシール部は、内端部と外端部との間を前記横方向に延び、前記内端部と前記外端部との間である第1寸法よりも小さい第2寸法の間隔をあけて配列されており、
前記一対のサイド接合部の少なくとも一方は、前記熱可塑性シート間において線状に設けられた接合強度低下剤と、前記複数のシール部に含まれ、前記ウエスト領域において前記縦方向に連続して並び、前記内端部及び前記外端部以外で前記接合強度低下剤と交差する交差部を有する複数の交差シール部と、を更に有し、
前記複数の交差シール部は、前記内端部と前記交差部との間の交差距離が前記第2寸法よりも小さい第1交差シール部と、前記第1交差シール部に前記レッグ端部側に隣接し、前記交差距離が前記第1交差シール部の前記交差距離以下である第2交差シール部と、を含み、
前記複数の熱可塑性シートは、前記ウエスト領域において前記外装体の肌対向面を構成する肌側シートと、前記肌側シートに隣接する隣接シートと、を含み、
前記接合強度低下剤は、前記肌側シートと前記隣接シートとの間に配置される
パンツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記接合強度低下剤は、前記ウエスト領域において、前記肌側シートと前記隣接シートとの間に配置される
請求項1に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記肌側シートでは前記隣接シートよりも前記接合強度低下剤の染み込み深さが深い
請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
吸収性本体と、前記吸収性本体の非肌対向面側に配置され、縦方向の両側に位置する腹側領域及び背側領域を含み、複数の熱可塑性シートが積層されて構成された外装体と、前記外装体の前記腹側領域と前記背側領域とを前記縦方向と直交する横方向の側縁部において接合する一対のサイド接合部と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、
前記一対のサイド接合部は、前記縦方向の両端部を構成するウエスト端部及びレッグ端部と、前記ウエスト端部から前記縦方向に25mm以内のウエスト領域と、前記縦方向に沿って配列された複数のシール部と、を有し、
前記複数のシール部は、内端部と外端部との間を前記横方向に延び、前記内端部と前記外端部との間である第1寸法よりも小さい第2寸法の間隔をあけて配列されており、
前記一対のサイド接合部の少なくとも一方は、前記熱可塑性シート間において線状に設けられた接合強度低下剤と、前記複数のシール部に含まれ、前記ウエスト領域において前記縦方向に連続して並び、前記内端部及び前記外端部以外で前記接合強度低下剤と交差する交差部を有する複数の交差シール部と、を更に有し、
前記複数の交差シール部は、前記内端部と前記交差部との間の交差距離が前記第2寸法よりも小さい第1交差シール部と、前記第1交差シール部に前記レッグ端部側に隣接し、前記交差距離が前記第1交差シール部の前記交差距離以下である第2交差シール部と、を含み、
前記腹側領域及び前記背側領域はそれぞれ、肌対向面を構成する第1肌側シートを含む3枚以上の熱可塑性シートが積層された第1積層領域と、肌対向面を構成する第2肌側シートを含み、前記第
1積層領域よりも少ない枚数の熱可塑性シートが積層された第2積層領域と、を有し、
前記第1肌側シート及び前記第2肌側シートがそれぞれ、複数のエンボス部を含むスパンボンド不織布で構成され、
前記第1肌側シートでは前記第2肌側シートよりも前記複数のエンボス部が占める面積率が高い
パンツ型吸収性物品。
【請求項5】
吸収性本体と、前記吸収性本体の非肌対向面側に配置され、縦方向の両側に位置する腹側領域及び背側領域を含み、複数の熱可塑性シートが積層されて構成された外装体と、前記外装体の前記腹側領域と前記背側領域とを前記縦方向と直交する横方向の側縁部において接合する一対のサイド接合部と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、
前記一対のサイド接合部は、前記縦方向の両端部を構成するウエスト端部及びレッグ端部と、前記ウエスト端部から前記縦方向に25mm以内のウエスト領域と、前記縦方向に沿って配列された複数のシール部と、を有し、
前記複数のシール部は、内端部と外端部との間を前記横方向に延び、前記内端部と前記外端部との間である第1寸法よりも小さい第2寸法の間隔をあけて配列されており、
前記一対のサイド接合部の少なくとも一方は、前記熱可塑性シート間において線状に設けられた接合強度低下剤と、前記複数のシール部に含まれ、前記ウエスト領域において前記縦方向に連続して並び、前記内端部及び前記外端部以外で前記接合強度低下剤と交差する交差部を有する複数の交差シール部と、を更に有し、
前記複数の交差シール部は、前記内端部と前記交差部との間の交差距離が前記第2寸法よりも小さい第1交差シール部と、前記第1交差シール部に前記レッグ端部側に隣接し、前記交差距離が前記第1交差シール部の前記交差距離以下である第2交差シール部と、を含み、
前記腹側領域及び前記背側領域はそれぞれ、肌対向面を構成する第1肌側シートを含む3枚以上の熱可塑性シートが積層された第1積層領域と、肌対向面を構成する第2肌側シートを含み、前記第
1積層領域よりも少ない枚数の熱可塑性シートが積層された第2積層領域と、を有し、
前記第1肌側シート及び前記第2肌側シートがそれぞれ、複数のエンボス部を含むスパンボンド不織布で構成され、
前記第1肌側シートでは前記第2肌側シートよりも前記複数のエンボス部間の距離が小さい
パンツ型吸収性物品。
【請求項6】
吸収性本体と、前記吸収性本体の非肌対向面側に配置され、縦方向の両側に位置する腹側領域及び背側領域を含み、複数の熱可塑性シートが積層されて構成された外装体と、前記外装体の前記腹側領域と前記背側領域とを前記縦方向と直交する横方向の側縁部において接合する一対のサイド接合部と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、
前記一対のサイド接合部は、前記縦方向の両端部を構成するウエスト端部及びレッグ端部と、前記ウエスト端部から前記縦方向に25mm以内のウエスト領域と、前記縦方向に沿って配列された複数のシール部と、を有し、
前記複数のシール部は、内端部と外端部との間を前記横方向に延び、前記内端部と前記外端部との間である第1寸法よりも小さい第2寸法の間隔をあけて配列されており、
前記一対のサイド接合部の少なくとも一方は、前記熱可塑性シート間において線状に設けられた接合強度低下剤と、前記複数のシール部に含まれ、前記ウエスト領域において前記縦方向に連続して並び、前記内端部及び前記外端部以外で前記接合強度低下剤と交差する交差部を有する複数の交差シール部と、を更に有し、
前記複数の交差シール部は、前記内端部と前記交差部との間の交差距離が前記第2寸法よりも小さい第1交差シール部と、前記第1交差シール部に前記レッグ端部側に隣接し、前記交差距離が前記第1交差シール部の前記交差距離以下である第2交差シール部と、を含み、
前記腹側領域及び前記背側領域はそれぞれ、肌対向面を構成する第1肌側シートを含む3枚以上の熱可塑性シートが積層された第1積層領域と、肌対向面を構成する第2肌側シートを含み、前記第
1積層領域よりも少ない枚数の熱可塑性シートが積層された第2積層領域と、を有し、
前記第1肌側シートでは前記第2肌側シートよりも融点が高い
パンツ型吸収性物品。
【請求項7】
吸収性本体と、前記吸収性本体の非肌対向面側に配置され、縦方向の両側に位置する腹側領域及び背側領域を含み、複数の熱可塑性シートが積層されて構成された外装体と、前記外装体の前記腹側領域と前記背側領域とを前記縦方向と直交する横方向の側縁部において接合する一対のサイド接合部と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、
前記一対のサイド接合部は、前記縦方向の両端部を構成するウエスト端部及びレッグ端部と、前記ウエスト端部から前記縦方向に25mm以内のウエスト領域と、前記縦方向に沿って配列された複数のシール部と、を有し、
前記複数のシール部は、内端部と外端部との間を前記横方向に延び、前記内端部と前記外端部との間である第1寸法よりも小さい第2寸法の間隔をあけて配列されており、
前記一対のサイド接合部の少なくとも一方は、前記熱可塑性シート間において線状に設けられた接合強度低下剤と、前記複数のシール部に含まれ、前記ウエスト領域において前記縦方向に連続して並び、前記内端部及び前記外端部以外で前記接合強度低下剤と交差する交差部を有する複数の交差シール部と、を更に有し、
前記複数の交差シール部は、前記内端部と前記交差部との間の交差距離が前記第2寸法よりも小さい第1交差シール部と、前記第1交差シール部に前記レッグ端部側に隣接し、前記交差距離が前記第1交差シール部の前記交差距離以下である第2交差シール部と、を含み、
前記腹側領域及び前記背側領域はそれぞれ、肌対向面を構成する第1肌側シートを含む3枚以上の熱可塑性シートが積層された第1積層領域と、肌対向面を構成する第2肌側シートを含み、前記第
1積層領域よりも少ない枚数の熱可塑性シートが積層された第2積層領域と、を有し、
前記第1肌側シートでは前記第2肌側シートよりも坪量が低い
パンツ型吸収性物品。
【請求項8】
前記接合強度低下剤は、ホットメルト接着剤を含む
請求項1
,2,4,5,6,7のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項9】
前記第2寸法は、前記第1寸法と前記第2交差シール部の前記交差距離との差よりも小さい
請求項1
,2,4,5,6,7のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項10】
前記腹側領域及び前記背側領域にはそれぞれ、前記横方向に延びる複数の弾性部材が配置された伸縮領域が設けられ、
前記ウエスト領域における前記複数の弾性部材の平均伸長率は、前記ウエスト領域よりも前記レッグ端部側の領域における前記複数の弾性部材の平均伸長率よりも低い
請求項1
,2,4,5,6,7のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項11】
前記複数の交差シール部は、前記ウエスト端部側から前記レッグ端部側に向けて前記交差距離が単調減少する3つ以上の交差シール部を含む
請求項1
,2,4,5,6,7のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項12】
前記複数の交差シール部は、前記縦方向に10mm以上の領域にわたって前記ウエスト端部側から前記レッグ端部側に向けて前記交差距離が単調減少するように設けられている
請求項1
,2,4,5,6,7のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項13】
前記腹側領域及び前記背側領域にはそれぞれ、前記横方向に延びる複数の弾性部材が配置され、
前記複数のシール部は、前記第1寸法の1.2倍以上に前記横方向に伸長可能である
請求項1
,2,4,5,6,7のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項14】
前記複数の熱可塑性シートは、前記ウエスト領域において前記外装体の肌対向面を構成し、複数のエンボス部を含むスパンボンド不織布で構成された肌側シートを含み、
前記第1交差シール部及び前記第2交差シール部はそれぞれ、前記内端部及び前記外端部以外において少なくとも1つの前記エンボス部と重なる
請求項1
,2,4,5,6,7のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等のパンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
パンツ型吸収性物品は、一般に、吸収性本体と、外装体と、腹側の外装体と背側の外装体とが側端部で接合されたサイド接合部(サイドシール部)と、を備えている。腹側の外装体と背側の外装体とがサイド接合部によって接合されることで、パンツ型吸収性物品のウエスト部分が形成される。
一方で、パンツ型吸収性物品の着用後には、衛生上の観点等から、サイド接合部を引き裂いて廃棄することがある。このため、サイド接合部は、着用動作時(パンツ型吸収性物品を履かせる際)及び着用時には剥がれることがなく、廃棄時には容易に引き裂くことができる機能が求められている。
【0003】
このような観点から、特許文献1には、外装体の腹側部と背側部の両側端の接合部に、接合強度を低減させる接合強度低減剤が配置された強度低減領域部と、接合強度低減剤が配置されていない非強度低減領域部と、を有するパンツ型吸収性物品が開示されている。同文献において、接合部は、長手方向に連続して配置され、強度低減領域部は、例えば、接合部の幅方向内側及び/又は外側に配置されている。
【0004】
特許文献2には、サイド接合部におけるシート間に接合強度低減剤が配されており、接合強度低減剤は、サイド接合部の幅方向における外側部分に内側部分よりも多く配されている、パンツ型着用物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-72577号公報
【文献】特開2018-88945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載の技術は、いずれも、接合強度低減剤によってサイド接合部の接合強度を調整するものであるが、着用動作時及び着用時の剥がれ防止と、廃棄時の引き裂き容易性との観点からは、さらに改善の余地があった。
【0007】
本発明の課題は、着用動作時及び着用時の剥がれ防止と、廃棄時の引き裂き容易性とを両立させることが可能なパンツ型吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係るパンツ型吸収性物品は、吸収性本体と、前記吸収性本体の非肌対向面側に配置され、縦方向の両側に位置する腹側領域及び背側領域を含み、複数の熱可塑性シートが積層されて構成された外装体と、前記外装体の前記腹側領域と前記背側領域とを前記縦方向と直交する横方向の側縁部において接合する一対のサイド接合部と、を備える。
前記一対のサイド接合部は、前記縦方向の両端部を構成するウエスト端部及びレッグ端部と、前記ウエスト端部から前記縦方向に25mm以内のウエスト領域と、前記縦方向に沿って配列された複数のシール部と、を有する。
前記複数のシール部は、内端部と外端部との間を前記横方向に延び、前記内端部と前記外端部との間の第1寸法よりも小さい第2寸法の間隔をあけて配列されている。
前記一対のサイド接合部の少なくとも一方は、前記熱可塑性シート間において線状に設けられた接合強度低下剤と、前記複数のシール部に含まれ、前記ウエスト領域において前記縦方向に連続して並び、前記内端部及び前記外端部以外で前記接合強度低下剤と交差する交差部を有する複数の交差シール部と、を更に有する。
前記複数の交差シール部は、前記内端部と前記交差部との間の交差距離が前記第2寸法よりも小さい第1交差シール部と、前記第1交差シール部に前記レッグ端部側に隣接し、前記交差距離が前記第1交差シール部の前記交差距離以下である第2交差シール部と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明のパンツ型吸収性物品によれば、着用動作時及び着用時の剥がれ防止と、廃棄時の引き裂き容易性とを両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るパンツ型吸収性物品を示す模式的な斜視図である。
【
図2】上記パンツ型吸収性物品の肌対向面側を示す模式的な平面図であり、上記パンツ型吸収性物品を展開し、各部の弾性部材を伸長させて平面状に広げた態様を示す図である。
【
図3】上記パンツ型吸収性物品のサイド接合部を示す模式的な平面図である。
【
図4】上記サイド接合部の模式的な断面図であり、腹側領域と背側領域とを分離した態様を示す図である。
【
図5】上記実施形態の変形例に係るサイド接合部を示す模式的な平面図である。
【
図6】上記実施形態の変形例に係るサイド接合部を示す模式的な平面図である。
【
図7】上記サイド接合部の肌側シートのエンボス部の配置を説明するための模式的な平面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るパンツ型吸収性物品のサイド接合部の模式的な断面図であり、腹側領域と背側領域とを分離した態様を示す図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係るパンツ型吸収性物品のサイド接合部の模式的な断面図であり、腹側領域と背側領域とを分離した態様を示す図である。
【
図10】本発明の第4実施形態に係るパンツ型吸収性物品のサイド接合部の模式的な断面図であり、腹側領域と背側領域とを分離した態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
<第1実施形態>
[パンツ型使い捨ておむつの全体構成]
図1及び
図2には、本発明の第1実施形態に係るパンツ型吸収性物品として、パンツ型使い捨ておむつ1が示されている。パンツ型使い捨ておむつ1は、以下、おむつ1と称する。
【0013】
図1に示すように、おむつ1は、ウエスト開口部1W及び一対のレッグ開口部ILを備え、着用時に、着用者の胴回り及び股間部に着用される。ウエスト開口部1Wは、ウエスト開口端Waを有する。おむつ1は、縦方向X、横方向Yを有する。縦方向Xは、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる。横方向Yは、縦方向Xに直交し、着用者の左右方向に対応する。さらに、
図2等に示すように、おむつ1の縦方向X及び横方向Yに直交する方向を、厚み方向Zとする。
本明細書において、「ウエスト側」とは、縦方向Xにおいて、ウエスト開口部1Wのウエスト開口端Waに近づく側を意味し、「レッグ側」とは、縦方向Xにおいて、ウエスト開口端Waから遠ざかる側を意味する。
本明細書において、「横方向Y内側」とは、横方向Yにおいて、パンツ型吸収性物品(おむつ1)を横方向Yに2等分する縦中心線CLに近づく側を意味し、「横方向Y外側」とは、縦中心線CLから遠ざかる側を意味する。
本明細書では、厚み方向Zに関しては、パンツ型吸収性物品(おむつ1)の着用時において着用者の肌に近い側を肌側、着衣に近い側を非肌側という事がある。また、「肌対向面」とは、パンツ型吸収性物品(おむつ1)又はその構成部材における、着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い面を意味する。「非肌対向面」とは、パンツ型吸収性物品(おむつ1)又はその構成部材における、肌対向面とは反対側(着衣側)に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌から遠い面を意味する。
【0014】
着用者がおむつ1を着用する際には、まず、一対のレッグ開口部1Lに脚を通し、おむつ1を胴体側に引き上げ、おむつ1を着用者の胴回り及び股間部に配置する。本明細書において、この一連の動作を、「着用動作」と称する。着用動作は、おむつ1の着用者ではなく、介助者によって行われることもある。このため、本明細書では、着用動作の主体を、「介助者等」とする。
また、本明細書において、着用者の通常想定される適正な着用位置におむつ1が配置された状態を、「着用時」と称する。
【0015】
図1及び
図2に示すように、おむつ1は、吸収性本体4と、吸収性本体4の非肌対向面側に配置された外装体5と、を備える。
なお、
図2は、おむつ1を展開し、各部の弾性部材を伸長させて、弾性部材の影響を一切排除した状態の設計寸法となるように平面状に広げた形態を示す。この態様をおむつ1の「展開伸長状態」とも称する。おむつ1を展開するとは、後述するサイド接合部8の腹側領域5a及び背側領域5bを分離することを意味する。
【0016】
吸収性本体4は、外装体5の肌対向面側に固定されている。吸収性本体4は、吸収体40を少なくとも有し、さらに、表面シート2、裏面シート(図示せず)等を有していてもよい。例えば、吸収性本体4は、裏面シート、吸収体40及び表面シート2が厚み方向Zに積層された構成を有する。吸収体40は、液保持性の吸収性コアを含み、さらに、当該吸収性コアを被覆するコアラップシートを含んでいてもよい。
吸収性本体4に含まれる各構成(裏面シート、吸収体40、表面シート2等)に用いられる材料としては、当該技術分野において用いられるものを特に制限なく用いることができる。
【0017】
外装体5は、複数の熱可塑性シート50を含む。外装体5は、例えば、複数の熱可塑性シート50の積層体として構成される。
熱可塑性シート50は、熱可塑性樹脂を主体とするシート材である。熱可塑性シート50は、好ましくは90質量%以上の熱可塑性樹脂を含み、より好ましくは100質量%の熱可塑性樹脂で構成される。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。熱可塑性繊維は、短繊維でも長繊維でも良い。熱可塑性繊維としては、芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型等の複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。
【0018】
外装体5は、着用者の腹側に配置される腹側領域5aと、着用者の背側に配置される背側領域5bと、を少なくとも有する。本実施形態の外装体5は、さらに、腹側領域5a及び背側領域5bの間に位置し着用者の股間部に配置される股下領域5cを含む。この例において、腹側領域5a、股下領域5c、及び背側領域5b、は、縦方向Xに沿って配置されている。また、外装体5は、股下領域5cにおいて横方向Y内側に括れた形状を有する。これにより、着用者の脚繰りに沿ったレッグ開口部1L(
図1参照)が形成される。
外装体5の外縁は、縦中心線CLに関して線対称(左右対称)に構成されることが好ましい。
【0019】
さらに、外装体5は、腹側領域5aの横方向Yにおける側縁部5dと、背側領域5bの横方向Yにおける側縁部5eとがそれぞれ接合された、一対のサイド接合部8を有する。つまり、右側のサイド接合部8は、腹側領域5aの右側の側縁部5dと、背側領域5bの右側の側縁部5eとが、厚み方向Zに重ねられて接合された構成を有する。左側のサイド接合部8は、腹側領域5aの左側の側縁部5dと、背側領域5bの左側の側縁部5eとが、厚み方向Zに重ねられて接合された構成を有する。
サイド接合部8は、詳細を後述するように、ヒートシールや超音波シールなどによって接合されることが好ましい。
【0020】
[サイド接合部の構成]
図2に示すように、一対のサイド接合部8は、縦方向Xの両端部を構成する、ウエスト端部8aと、レッグ端部8bと、をそれぞれ有する。
ウエスト端部8aは、サイド接合部8におけるウエスト側の端部である。
レッグ端部8bは、サイド接合部8におけるレッグ側の端部である。
各サイド接合部8は、全体として、ウエスト端部8aからレッグ端部8bまで、縦方向Xに延びる構成を有する。
【0021】
ウエスト端部8aからレッグ端部8bまでそれぞれ延びる一対のサイド接合部8によって、腹側領域5aと背側領域5bとが着用者の胴周りに沿った筒状となり、おむつ1のウエスト開口部1W及びレッグ開口部1Lが形成される。サイド接合部8は、着用動作時及び着用時には、腹側領域5aと背側領域5bとが剥がれることなく、接合された状態を維持することが好ましい。
本明細書において、おむつ1の着用動作時及び着用時に、サイド接合部8の腹側領域5aと背側領域5bとが意図せずに分離することを「剥がれる」と表現する。
一方で、着用後におむつ1を交換する際には、おむつ1に付着した排泄物を衛生的に処理する観点から、介助者等が、サイド接合部8の腹側領域5aと背側領域5bとを分離して、おむつ1を展開してから廃棄することがある。
本明細書において、おむつ1の廃棄時に、サイド接合部8及び/又はその周囲に外力を加えて、意図的にサイド接合部8の腹側領域5aと背側領域5bを分離する動作を、「引き裂く」と表現する。
このように、サイド接合部8は、着用動作時及び着用時においては剥がれを防止でき、かつ、廃棄時においては容易に引き裂ける構成を有することが好ましい。
【0022】
上記観点から、
図3に示すように、本実施形態において、一対のサイド接合部8はそれぞれ、複数のシール部Sと、接合強度低下剤9と、を含む。一対のサイド接合部8は、同様の構成を有していることが好ましい。以下では、一方のサイド接合部8の構成について詳細に説明する。
また、本明細書において、各部位の寸法及び角度は、説明のない限り、各部の弾性部材を伸長させない自然状態において測定したものとする。
【0023】
シール部Sは、腹側領域5a及び背側領域5bの双方の熱可塑性シート50が融着して接合された部分である。シール部Sは、例えば、加圧手段及び/又は加熱手段によって接合され、具体的には、ヒートシールや超音波シールなどによって接合される。
複数のシール部Sは、縦方向Xに離間して配置され、横方向Yにそれぞれ延びる。
複数のシール部Sが縦方向Xに離間して配置されていることで、一つのシール部Sが剥がれた場合に、縦方向Xに沿ってサイド接合部8全体が剥がれることを防止できる。
図3に示すように、複数のシール部Sは、サイド接合部8全体の接合強度を安定化させる観点から、縦方向Xに等間隔に離間して配置されることが好ましい。
【0024】
「シール部Sが横方向Yに延びる」とは、シール部Sの横方向Yの寸法が縦方向Xの寸法よりも大きいことにより、シール部Sが全体として横方向Yに延びていることを意味する。つまり、シール部Sは、横方向Yに平行に延びる態様に限定されない。
シール部Sは、横方向Y内側の端部である内端部Scと、横方向Y外側の端部である外端部Sdと、を含む。
さらに、シール部Sは、例えば、ウエスト端部8a側の端部であり横方向Yに延びる上端部Saと、レッグ端部8b側の端部であり横方向Yに延びる下端部Sbと、を含んでいてもよい。
図3に示す例では、シール部Sは、平面視において、横方向Yに延びる長方形状に構成される。
【0025】
図3には、複数のシール部Sの横方向Yの寸法を規定する第1寸法D1が示されている。第1寸法D1は、各シール部Sの内端部Scと外端部Sdとの間の距離として規定される。
また、
図3には、複数のシール部Sの縦方向Xの間隔を規定する第2寸法D2が示されている、第2寸法D2は、シール部Sの下端部Sbと当該シール部Sにレッグ端部8b側に隣接するシール部Sの上端部Saとの間の距離として規定される。
サイド接合部8では、着用動作時及び着用時の剥がれを防止する観点から、複数のシール部Sの縦方向Xの間隔が狭いことが好ましく、つまり第2寸法D2が小さいことが好ましい。このため、サイド接合部8では、第2寸法D2が第1寸法D1よりも小さく、つまり「D2/D1<1」の関係を満足する。
【0026】
接合強度低下剤9は、外装体5の熱可塑性シート50間に配置され、線状に延びる構成を有する。接合強度低下剤9は、例えば、シール部Sを形成するためのシール工程の前に、シール部Sの一部と重なる位置の外装体5の熱可塑性シート50間に配置される。接合強度低下剤9は、このシール工程における熱可塑性樹脂の融着を阻害し、シール部Sの接合強度を低下させる機能を有する。接合強度低下剤9の具体例については、後述する。
接合強度低下剤9は、腹側領域5aに含まれる熱可塑性シート50間に配置されていてもよいし、背側領域5bに含まれる熱可塑性シート50間に配置されていてもよい。あるいは、接合強度低下剤9は、サイド接合部8において対向する、腹側領域5aの最も肌側の熱可塑性シート50及び背側領域5bの最も肌側の熱可塑性シート50間に配置されていてもよい。
「接合強度低下剤9が線状に延びる」とは、接合強度低下剤9が直線状及び/又は曲線状に延びることを意味する。
【0027】
図3に示すように、複数のシール部Sは、第1交差シール部S1と、第2交差シール部S2と、を少なくとも含む。第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2は、複数のシール部Sのうち、平面視において接合強度低下剤9と交差するシール部Sであって、以下の構成を有する。
第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2は、ウエスト端部8aから25mm以内に位置するウエスト領域8cに配置される。本発明者らの知見では、廃棄のための引き裂き動作の開始時において、介助者等の指は、サイド接合部8の横方向Y両側の、ウエスト開口端Waから25mm~30mm程度の位置に配置されやすい。このため、ウエスト領域8cは、廃棄時に、引き裂きのための外力(「引き裂き力」とも称する)が特に付加されやすい領域となる。
第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2は、ウエスト端部8a側からレッグ端部8b側に向かって順に、隣り合って配置される。つまり、第1交差シール部S1はウエスト側に配置され、第2交差シール部S2はレッグ側に配置される。
図3に示す例のように、第1交差シール部S1は、複数のシール部Sのうち、ウエスト端部8aに最も近い位置に配置されたシール部Sであることが好ましい。これにより、ウエスト端部8aに最も近いシール部Sが第1交差シール部S1として接合強度低下剤9と交差することになる。したがって、サイド接合部8がウエスト端部8aのより近傍から引き裂きやすくなり、引き裂き容易性を向上させることができる。なお、第1交差シール部S1は、ウエスト領域8cにおいて最もウエスト側に位置するシール部Sに限定されず、第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2がウエスト領域8cに配置されていればよい。
【0028】
また、着用動作時及び着用時の剥がれを防止する観点から、第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2は、平面視において、内端部Sc及び外端部Sd以外で接合強度低下剤9と交差する。
つまり、接合強度低下剤9は、第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2を横方向Yと交差する方向に横切り、少なくとも、第1交差シール部S1の上端部Saから第2交差シール部S2の下端部Sbまで延びる。
第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2において、接合強度低下剤9と平面視において重なる部分を交差部9sとすると、交差部9sは、内端部Sc及び外端部Sdに位置せず、内端部Sc及び外端部Sdの間に位置する。
各交差シール部S1,S2における交差部9sは、1つであることが好ましい。例えば、サイド接合部8では、1本の接合強度低下剤9が第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2とそれぞれ1箇所で交差していることがより好ましい。
【0029】
引き裂き動作の際には、まず介助者等の指からサイド接合部8に、ウエスト端部8aの内側から縦方向X下方及び横方向Y外方の成分を併せ持つ斜めの力が加えられる。このため、サイド接合部8には、ウエスト領域8cにおいて介助者等の指から、縦方向X下方及び横方向Y外方に対しておよそ45°傾いた斜め下向きの力が加わりやすい。したがって、サイド接合部8では、ウエスト端部8a側のシール部Sから順番に、内端部Scから外端部Sdに向けて引き裂かれる。
上記のように複数のシール部Sの縦方向Xの間隔が狭いサイド接合部8では、ウエスト端部8a側のシール部Sの引き裂きが完了する前に、次のシール部Sの引き裂きが開始する。サイド接合部8では、2つの隣接するシール部Sが近い位置において同時に引き裂かれることで、外装体5に対して局所的に過大な負荷が加わる。これにより、サイド接合部8では、外装体5がシール部Sに隣接する部分で破断し、更に外装体5の破断がシール部Sの長手方向に沿って横方向Y外向きに進行するいわゆる横裂けが発生することがある。外装体5の横裂けが発生すると、その度に引き裂き動作が中断するため、介助者等や着用者にとって大きいストレスとなる。
【0030】
これに対し、サイド接合部8では、ウエスト領域8cに位置する第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2が外装体5の横裂けを防止可能なように構成されている。
図3には、第1交差シール部S1の内端部Scと交差部9sとの間の距離である交差距離a1と、第2交差シール部S2の内端部Scと交差部9sとの間の距離である交差距離a2と、が示されている。交差距離a1及び交差距離a2は、ゼロより大きく、シール部Sの横方向Yの第1寸法D1よりも小さい。なお、交差距離a1及び交差距離a2は、上端部Saにおいて計測した値と、下端部Sbにおいて計測した値と、の平均値とすることができる。
【0031】
サイド接合部8では、第1交差シール部S1の交差距離a1が複数のシール部Sの縦方向Xの間隔を規定する第2寸法D2よりも小さい。これにより、サイド接合部8では、第2交差シール部S2の引き裂きが開始する前に、第1交差シール部S1の引き裂きが接合強度の弱い交差部9sまで進行する。このため、サイド接合部8では、第2交差シール部S2の引き裂きが開始する際に外装体5に加わる負荷が抑制されるため、外装体5に横裂けが発生することを防止することができる。
また、サイド接合部8では、第2交差シール部S2の交差距離a2が第1交差シール部S1の交差距離a1以下である。これにより、サイド接合部8では、第1交差シール部S1の引き裂きが完了する前に、第2交差シール部S2の引き裂きが接合強度の弱い交差部9sまで進行する構成とすることができる。このため、サイド接合部8では、第1交差シール部S1の引き裂きが交差部9sを超えて進行する過程においても外装体5に加わる負荷が抑制されるため、外装体5に横裂けが発生することを防止することができる。
【0032】
更に、外装体5の横裂けを防止する観点から、サイド接合部8を縦方向Xに3分割した各部分について、腹側領域5a及び背側領域5bのそれぞれを構成する外装体5の横方向Yの破断強度が、交差部9sを含まない複数のシール部Sを横方向Yに沿って引き剥がす際の剥離強度よりも大きいことが好ましい。これにより、外装体5が破断することなく、複数のシール部Sの剥離によってシール部Sの引き裂きが順調に進行しやすくなる。なお、外装体5の破断強度及び複数のシール部Sの剥離強度は、例えば、おむつ1から外装体5におけるサイド接合部8を含む部分を切り出したサンプルに対する引張試験によって得ることができる。
また、サイド接合部8では、
図3に示すように、接合強度低下剤9が第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2の交差部9s間で連続していることが好ましい。これにより、第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2間において接合強度低下剤9が外装体5の破断の横方向Y外向きへの伝播を妨げるように作用するため、外装体5における横裂けの進行を食い止めることができる。
【0033】
[外装体の構成例]
図4に示すように、外装体5は、複数の熱可塑性シート50として、例えば、外層シート51と、内層シート52と、を含むことが好ましい。外層シート51は、内層シート52よりも非肌側に配置され、外装体5の非肌対向面を形成する。内層シート52と外層シート51との間には、後述する弾性部材10が配置されていることが好ましい。
本実施形態において、外装体5の少なくとも一部がウエスト開口端Waから肌側に折り返されることにより、外装体5が折り返し構造を有している。
図4に示す例では、外層シート51のみがウエスト端部8aから肌側に折り返されている。
なお、
図4の断面図では、説明のため、サイド接合部8の腹側領域5aと背側領域5bとを分離した状態で示している。
【0034】
図4に示す例では、ウエスト領域8cが外装体5の折り返し構造を含む領域に配置されている。
この場合、ウエスト領域8cでは、外装体5の複数の熱可塑性シート50において、肌対向面を構成する肌側シートPは折り返された外層シート51であり、肌側シートPに隣接する隣接シートQは、内層シート52となる。
なお、肌側シートPは、腹側領域5a及び背側領域5b各々のウエスト領域8cにおいて最も肌側に位置するシートである。腹側領域5aの肌側シートP及び背側領域5bの肌側シートPは、対向した状態で接触してシールされる。つまり、肌側シートPの肌対向面は、サイド接合部8の接合界面となる。
【0035】
[接合強度低下剤の配置例]
接合強度低下剤9は、シール部Sの接合強度をより効果的に低下させる観点から、以下ように配置されることが好ましい。
図4に示すように、接合強度低下剤9は、ウエスト領域8cにおいて、肌側シートPと、隣接シートQとの間に配置されることが好ましい。
図4に示す例では、接合強度低下剤9は、腹側領域5aに配置されるが、背側領域5bに配置されてもよく、腹側領域5aと背側領域5bの双方に配置されていてもよい。
これにより、シール時に接合界面となる肌側シートPと、それに隣接する隣接シートQとの間に、接合強度低下剤9が配置されることになる。したがって、接合強度低下剤9による腹側領域5a及び背側領域5b間の融着阻害作用が発揮されやすくなり、交差部9sの接合強度を効果的に低下できる。この結果、引き裂き容易性をより向上させることができる。
【0036】
引き裂き容易性をさらに向上させる観点から、肌側シートPにおける接合強度低下剤9の染み込み深さは、隣接シートQにおける接合強度低下剤9の染み込み深さよりも深いことが好ましい。
染み込み深さとは、接合強度低下剤9の、塗布面からシート厚み方向への染み込んだ深さを意味する。染み込み深さは、以下のように測定することができる。
【0037】
(接合強度低下剤の染み込み深さの測定方法)
測定対象のサイド接合部8を縦方向X及び横方向Yにカットして切り出し、接合強度低下剤9の断面が現れた測定片を作製する。次いで、前記測定片におけるサイド接合部8の断面の拡大画像を、KEYENCE社製のマイクロスコープVHX1000を用いて倍率200倍にて撮影し、その観察視野の画像を得る。前記観察視野において、接合強度低下剤9が染み込んだ部分は透明に光った部分として観察されるので、当該部分の輪郭を特定し、さらに該輪郭で囲まれた領域の面積を測定する。この測定を、ウエスト領域8cの5箇所について行い、これらの平均値をウエスト領域8cにおける接合強度低下剤9の染み込み深さとする。
【0038】
これにより、接合強度低下剤9が、肌側シートPの非肌対向面から、接合界面となる肌対向面側へ移行しやすくなり、接合強度低下剤9による融着阻害作用がより効果的に発揮され得る。したがって、引き裂き容易性をより効果的に向上させることができる。
【0039】
[交差シール部の構成例]
第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2は、ウエスト領域8cに配置されるシール部Sであればよく、
図3に示す構成に限定されない。
例えば、縦方向Xへの引き裂き容易性を向上させる観点から、複数のシール部Sは、3つ以上の交差シール部を含んでいてもよい。
図5に示す例では、複数のシール部Sが、第1交差シール部S1、第2交差シール部S2、第3交差シール部S3、及び第4交差シール部S4を含む。この場合、交差シール部S1,S2,S3,S4の交差距離a1,a2,a3,a4は、ウエスト端部8a側からレッグ端部8b側に向けて単調減少していることが好ましい。これにより、サイド接合部8では、ウエスト領域8cを引き裂く際における外装体5に加わる負荷が抑制される範囲が広く拡張されるため、外装体5に横裂けが発生することをより効果的に防止することができる。
上記の構成に限定されず、複数のシール部Sは、複数のシール部Sが、接合強度低下剤9と交差するシール部Sであって、第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2を含む3つ以上のn個の交差シール部S1,S2,…,Snを含む構成とすることができる。この場合、3つ以上の交差シール部S1~Snの交差距離a1~anは、ウエスト端部8a側からレッグ端部8b側に向けて単調減少していることが好ましい。単調減少とは、交差距離an-1よりも交差距離anの方が短い関係を満たすことをいう。
【0040】
また、引き裂き容易性をより向上させる観点からは、複数の交差シール部は、前記縦方向Xに10mm以上の領域にわたってウエスト端部8a側からレッグ端部8b側に向けて交差距離anが単調減少するように設けられていることが好ましい。例えば、複数のシール部Sは、第1交差シール部S1の上端部Saからレッグ端部8b側に10mm以内の領域に位置する全てのシール部Sが、ウエスト端部8a側からレッグ端部8b側に向けて交差距離が単調減少するように設けられた交差シール部として構成されることが好ましい。
第1交差シール部S1からレッグ端部8b側に10mm以内の領域は、廃棄を行う介助者等の指が配置されやすい領域の近傍に位置し、引き裂き動作の開始時に横方向Yの力が特に強く加わりやすい領域でもある。この領域のシール部Sを全て交差シール部Snとして構成することで、外装体5に横裂けが発生することをより効果的に抑制することができる。
【0041】
更に、サイド接合部8では、
図5に示すように、接合強度低下剤9が交差シール部S1,S2,…,Snの交差部9sを一連に接続していることが好ましい。これにより、交差シール部S1,S2,…,Sn間において接合強度低下剤9が外装体5の破断の横方向Y外向きへの伝播を妨げるように作用するため、外装体5における横裂けの進行を食い止めることができる。
【0042】
なお、おむつ1では、一対のサイド接合部8のいずれも上記の構成の接合強度低下剤9と複数の交差シール部とを有することが好ましいが、場合によっては、一対のサイド接合部8のいずれか一方のみが上記の構成の接合強度低下剤9と複数の交差シール部とを有する構成であってもよい。
【0043】
[シール部の寸法例]
第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2を含むシール部Sの寸法としては、着用動作時及び着用時の剥がれ防止と引き裂き容易性とを両立させる観点から、以下の例が挙げられる。なお、上述のように、以下の寸法は、弾性部材を伸長させていない自然状態における寸法である。
シール部Sの横方向Yの第1寸法D1は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また好ましくは10mm以下、より好ましくは4mm以下であり、また好ましくは0.5mm以上10mm以下、より好ましくは1mm以上4mm以下である。
シール部Sの縦方向Xの寸法は、好ましくは0.1m以上、より好ましくは0.3mm以上であり、また好ましくは2mm以下、より好ましくは0.6mm以下であり、また好ましくは0.1mm以上2mm以下、より好ましくは0.3mm以上0.6mm以下である。
シール部Sの横方向Yの第1寸法D1は、シール部Sの縦方向Xの寸法に対して、好ましくは400%以上800%以下である。
複数のシール部Sの縦方向Xの間隔を規定する第2寸法D2は、上記のとおり第1寸法D1よりも小さく、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また好ましくは10mm以下、より好ましくは4mm以下であり、また好ましくは0.1mm以上10mm以下、より好ましくは1mm以上4mm以下である。
【0044】
[弾性部材の構成例]
図2に示すように、外装体5の腹側領域5a及び背側領域5bは、横方向Yに延びる複数の弾性部材10を含む。
複数の弾性部材10は、外装体5の複数の熱可塑性シート50間に配置される。
図4に示す例では、複数の弾性部材10は、外層シート51及び内層シート52の間に配置されている。
これらの弾性部材10により、おむつ1の胴周りに伸縮性が発揮され、着用動作が容易になるとともに、着用時のフィット性が維持される。
なお、「弾性部材10が横方向Yに延びる」とは、展開伸長状態において弾性部材10が横方向Yに延びることを意味する。但し、上記表現は、弾性部材10が展開伸長状態において横方向Yに平行な態様に限定されず、全体として横方向Yに延びる態様を含むものとする。
さらに、
図2に示すように、外装体5は、上記弾性部材10の他、レッグ開口部1Lの周囲に配置されたレッグ用弾性部材11を含んでいてもよい。
【0045】
弾性部材10,11は、断面が矩形、正方形、円形、多角形状等の糸状(糸ゴム等)若しくは紐状(平ゴム等)のもの、又はマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を好ましく用いることができる。弾性部材10,11の材料は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に従来用いられるもの等を特に制限なく用いることができ、例えば、スチレン-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができる。
【0046】
腹側領域5a及び背側領域5b各々の弾性部材10の横方向Y外側の端部は、胴周り全体の伸縮性を確保する観点から、サイド接合部8又はその近傍に位置していることが好ましい。具体的に、当該端部は、サイド接合部8との横方向Yにおける距離が10mm以下であることが好ましく、当該距離が0mmであって当該端部がサイド接合部8内に位置していることがより好ましい。
この場合、複数のシール部Sは、横方向Yに収縮しており、つまり横方向Yに伸長可能である。複数のシール部Sでは、このように横方向Yに伸長可能とすることで、弾性部材10を伸長させていない自然状態における第1寸法D1を小さく留めつつ接合強度を高めることができる。複数のシール部Sは、外装体5の横裂けを防止しつつ、より高い接合強度を得る観点から、第1寸法D1の1.2倍以上に横方向Yに伸長可能であることが好ましい。
弾性部材10は、引き裂き時に力が加えられる領域又はその近傍まで配置されることが一般的であり、廃棄時の引き裂き容易性に影響を与えやすい。
そこで、廃棄時の引き裂き容易性を向上させる観点から、弾性部材の伸長率を以下のように調整することが好ましい。
【0047】
図2に示すように、腹側領域5a及び背側領域5bは、それぞれ、ウエスト伸縮領域5fと、レッグ側伸縮領域5gと、に区分される伸縮領域を有する。これらの領域は、ウエスト開口端Waから縦方向Xに25mmの位置において横方向Yに平行に延びる仮想的な境界線によって区分された領域である。すなわち、ウエスト伸縮領域5fは、ウエスト開口端Waから縦方向Xに25mm以内に位置する。ウエスト伸縮領域5fの横方向Y両側縁部は、上述のウエスト領域8cに相当する。レッグ側伸縮領域5gは、ウエスト伸縮領域5fよりも縦方向Xにおけるレッグ側に位置する。なお、ウエスト伸縮領域5f及びレッグ側伸縮領域5gを区画する境界線は、展開伸長状態において、ウエスト開口端Waから縦方向Xに25mmの位置に横方向Yに平行に延びるものとする。
【0048】
ウエスト伸縮領域5fは、横方向Yに延びる複数の弾性部材10を含む。同様に、レッグ側伸縮領域5gは、横方向Yに延びる複数の弾性部材10を含む。ウエスト伸縮領域5fにおける複数の弾性部材10の平均伸長率は、レッグ側伸縮領域5gにおける複数の弾性部材10の平均伸長率よりも低いことが好ましい。
弾性部材10の伸長率は、パンツ型吸収性物品から取り出された自然長における弾性部材の長さに対する、パンツ型吸収性物品の展開伸長状態において伸長された弾性部材の長さの割合を意味する。
つまり、この伸長率が低いほど、弾性部材10を引っ張った際の弾性力がより小さくなる傾向となる。
なお、弾性部材10の伸長率は、製造時において、外装体5に配置される弾性部材10の伸長の度合いを調整することで、調整することができる。製造時には、例えば、弾性部材10を所定の長さまで伸長させ、コーム等によって弾性部材10に接着剤を塗布し、外装体5の熱可塑性シート50に弾性部材10を固定する。
【0049】
ウエスト領域8cには、上述のように、引き裂き動作時に横方向Yの力が直接加えられやすい。上記構成では、ウエスト伸縮領域5fの弾性部材10の平均伸長率が低いことで、引き裂き力に対する抗力となる弾性部材10の弾性力が低くなる。これにより、引き裂き力に係るエネルギが弾性部材10の伸長によって消費されにくくなり、より弱い力でも効率よく引き裂くことができる。したがって、上記構成により、安定した引き裂き動作が可能となり、引き裂き力が強すぎることによる外装体5の破れ等の不具合を防止することができる。
【0050】
(弾性部材の平均伸長率の測定方法)
パンツ型吸収性物品のサイド接合部8を分離して吸収性本体4を外し、外装体5の腹側領域5a及び背側領域5bを切り出す。さらに、腹側領域5a及び背側領域5bのウエスト開口端Waから縦方向Xに25mmの位置において横方向Yに平行に切断し、ウエスト伸縮領域5f及びレッグ側伸縮領域5gを切り出す。
そして、パンツ型吸収性物品の展開伸長状態における、切り出した各領域の弾性部材10の長さを測定する。この測定値から、各領域5f,5gにおける全ての弾性部材10の最大伸長状態の長さの平均値を算出する。
各領域5f,5gに接着剤等によって固定された全ての弾性部材10を、酢酸エチル等の適当な溶剤を用いて外装体5の他の構成部材から取り外し、各領域5f,5gにおける自然長の弾性部材10の長さを測定する。この測定値から、各領域5f,5gにおける自然長の全ての弾性部材10の長さの平均値を算出する。
そして、各領域5f,5gにおいて、自然長における弾性部材10の長さの平均値に対する、展開伸長状態における弾性部材10の長さの平均値の割合を算出し、これを各領域5f,5gの弾性部材10の平均伸長率とする。
【0051】
ウエスト伸縮領域5fにおける複数の弾性部材10の平均伸長率は、好ましくは120%以上、より好ましくは130%以上であり、好ましくは500%以下、より好ましくは450%以下である。
レッグ側伸縮領域5gにおける複数の弾性部材10の平均伸長率は、好ましくは150%以上、より好ましくは180%以上であり、好ましくは550%以下、より好ましくは500%以下である。
レッグ側伸縮領域5gにおける複数の弾性部材10の平均伸長率に対する、ウエスト伸縮領域5fにおける複数の弾性部材10の平均伸長率の割合は、上記作用効果を効果的に得る観点から、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。
【0052】
[接合強度低下剤の平面視における構成例]
より安定した引き裂き動作を実現する観点から、接合強度低下剤9は、平面視において、以下のような構成を有することが好ましい。
図3に示すように、接合強度低下剤9が均一な線幅を有することが好ましい。これにより、第1交差シール部S1と接合強度低下剤9との交差部9sの横方向Yにおける幅b1と、第2交差シール部S2と接合強度低下剤9との交差部9sの横方向Yにおける幅b2と、を実質的に同一とすることができる。
各交差部9sの横方向Yにおける幅b1,b2は、上端部Saにおける交差部9sの横方向Yの幅と、下端部Sbにおける交差部9sの横方向Yの幅と、の平均値とすることができる。
上記幅が「実質的に同一」とは、各交差部9sの幅が、全ての交差部9sの幅のうち最も小さい幅を100%とした場合に、150%以下に収まっていることを意味する。
上記構成では、弱接合部である交差部9sの幅b1,b2の変動を抑え、各交差シール部S1,S2の接合強度の変動を抑えることができる。これにより、パンツ型吸収性物品の廃棄を行う介助者等が、引き裂きの途中で違和感を覚えることを防止できる。したがって、介助者等が必要以上に強い引き裂き力を加えて、外装体5が破れるような不具合を防止することができる。
また、交差部9sの幅b1,b2を安定化させることで、交差シール部S1,S2の接合強度の大幅な低下を抑制でき、着用動作時及び着用時におけるサイド接合部8の剥がれをより確実に防止することができる。
【0053】
また、
図5に示す例のように、複数のシール部Sが、3本以上のn本の交差シール部S1,S2,…,Snを含んでいる場合は、全ての交差シール部S1,S2,…,Snの接合強度低下剤9との交差部9sの横方向Yにおける幅が、実質的に同一であることが好ましい。
これにより、縦方向Xにおける引き裂き容易性に加えて、引き裂き動作の安定性を高めることができる。
【0054】
具体的に、交差部9sの横方向Yにおける幅は、交差シール部の第1寸法D1に対して、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上であり、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下である。
交差部9sの横方向Yにおける幅は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上であり、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.2mm以下である。
なお、交差部9sの寸法及び交差シール部の寸法は、最大伸長状態での寸法として測定するものとする。
【0055】
また、接合強度低下剤9は、
図3,5に示すように直線状に延びる構成に限定されず、曲線状であってもよい。
特に、
図6(A)及び(B)に示すように、接合強度低下剤9は、腹側領域5a及び背側領域5bの少なくとも一方にスパイラル状又は波状の曲線状に設けられる場合には、スパイラル状又は波状の曲線の一部として第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2と交差していてもよい。
【0056】
接合強度低下剤9を形成するスパイラル状又は波状の曲線は、複数の単位形状9a,9bが、一方向に繰り返し配置される形状を有する。
図6(A)は、接合強度低下剤9の上記曲線がスパイラル状である例を示す。ここでいうスパイラル状とは、円形又は楕円形に近い形状を一つの単位形状9aとして、複数の単位形状9aが一方向に沿って繰り返し配置された形状を意味する。
図6(A)では、楕円形に近い単位形状9aが、横方向Yに繰り返し配置されている。なお、
図6(A)では、各単位形状9aが閉鎖された環状で形成されているが、一つの単位形状9aの一部が隣接する単位形状9aとつながっており、複数の単位形状9aが連続的に形成されていてもよい。
図6(B)は、接合強度低下剤9の上記曲線が波状である例を示す。波状とは、一方向とその反対方向に凸状に起伏する形状を一つの単位形状9bとして、複数の単位形状9bが、他の方向に沿って繰り返し配置された形状を意味する。
【0057】
この場合に、上記単位形状9a,9bは、横方向Yの寸法よりも縦方向Xの寸法の方が大きいことが好ましい。この単位形状9a,9bの寸法は、サイド接合部8に少なくとも一部が重なる単位形状9a,9b又はそれと隣接する単位形状9a,9bの寸法とする。また、縦方向Xの寸法は、当該単位形状9a,9bの縦方向Xの最大寸法を意味し、横方向Yの寸法は、当該単位形状9a,9bの横方向Yの最大寸法を意味する。
例えば、
図6(A)に示すスパイラル状の曲線では、単位形状9aの縦方向Xの寸法c1は、横方向Yの寸法c2よりも大きい。
同様に、例えば、
図6(B)に例示する波状の曲線では、単位形状9bの縦方向Xの寸法d1は、横方向Yの寸法d2よりも大きい。
これにより、単位形状9a,9bが縦方向Xに長い形状となり、交差部9sの位置をより的確に制御しやすくなる。
【0058】
[接合強度低下剤の具体例]
接合強度低下剤9は、シール部Sの形成工程であるシール工程時に付与される熱の影響を抑制することができる物質を特に制限なく用いることができる。接合強度低下剤9は、このような物質として、例えば、油剤、熱可塑性シート50よりも高融点の高融点樹脂、ホットメルト接着剤等を含むことが好ましい。
シール工程において発生する熱の低減に加え、シート同士を接合する観点から、接合強度低下剤9は、ホットメルト接着剤を含むことが好ましい。ホットメルト接着剤としては、例えば、スチレン系(SIS、SBS、SEBS)、又はポリオレフィン系の材料を用いることができる。
接合強度低下剤9を配置する方法は、通常用いられる方法を特に制限なく用いることができるが、コーターガンを用いて接合強度低下剤9を塗工する方法が好ましい。これにより、接合強度低下剤9の塗工形状及び坪量等を容易に制御でき、接合強度を容易に制御することができる。
【0059】
[外装体の肌側シートの構成例]
図7を参照し、ウエスト領域8cにおいて、外装体5の肌対向面を構成する肌側シートPは、引き裂き容易性を向上させる観点から、スパンボンド不織布で構成されることが好ましい。スパンボンド不織布は、シート形成性の観点から、上述の熱可塑性樹脂のうち、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを含んでいることが好ましく、より好ましくは、ポリプロピレンを含んでいることがより好ましい。ポリプロピレンとしては、α-オレフィン等が挙げられる。
【0060】
肌側シートPに用いられるスパンボンド不織布は、繊維同士を確実に融着してシートを形成する観点から、複数のエンボス部12を含むことが好ましい。エンボス部12は、繊維が圧着されて融着した部分である。エンボス部12は、例えば、エンボス凸ロールとフラットロールなどによる熱圧着により間欠的に形成されたもの、超音波融着により形成されたもの、間欠的に熱風を加えて部分融着させて形成されたものなどが挙げられる。高い生産性と低い装置コストという観点から、エンボス部12は熱圧着により形成されたものが好ましい。
エンボス部12の平面形状は、円形状、楕円形状、多角形状、又はこれらに類似する形状等の任意の形状を採り得る。
エンボス部12は、一定のパターンで形成されることが好ましいが、ランダムなパターンで形成されていてもよい。
図7において、エンボス部12は、縦方向X及び横方向Yにおいて略一定の間隔(ピッチ)で配置され、かつ、横方向Yに沿った各列が隣接する列と相互に半ピッチずつずれて配置されている。
エンボス部12では、形成時の加熱処理及び/又は加工処理によって繊維が切れやすいため、シール部Sのエンボス部12と重なる領域は、重なっていない領域よりも接合強度が低下し得る。そこで、引き裂き容易性をより向上させる観点から、第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2とエンボス部12とを、以下のような位置関係とすることが好ましい。
【0061】
第1交差シール部S1と第2交差シール部S2とは、それぞれ、平面視において、内端部Sc及び外端部Sdと重ならず、内端部Sc及び外端部Sd以外において、少なくとも1つのエンボス部12と重なることが好ましい。
つまり、第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2において、エンボス部12と平面視において重なる部分は、内端部Sc及び外端部Sdに位置せず、内端部Sc及び外端部Sdの間に位置することが好ましい。
エンボス部12が内端部Sc及び外端部Sdに重ならないことで、着用動作においてパンツ型吸収性物品を介助者等が引き上げる際に、介助者等の指が上記内端部Sc及び外端部Sdに接触し、第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2が剥がれることを防止できる。また、着用時において、着用者の腹囲が大きく変動した場合に、第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2の内端部Scに横方向Yの力が加わり、これらが剥がれることを防止できる。したがって、この構成により、着用動作時及び着用時のサイド接合部8の剥がれを防止することができる。
また、第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2が内端部Sc及び外端部Sd以外において、少なくとも1つのエンボス部12と重なることで、引き裂き動作の際に、交差シール部S1,S2がエンボス部12と重なる部分において繊維が切れることで引き裂きが進行する。これにより、引き裂き動作の際に外装体5の横裂けが発生しにくくなる。
【0062】
[サイド接合部の外装体の積層数が異なる場合の構成例]
本実施形態では、
図4に示すように、サイド接合部8を構成する外装体5が折り返し構造を有しており、サイド接合部8が、熱可塑性シート50の積層数の異なる複数の領域を有している。
つまり、本実施形態では、サイド接合部8は、3枚以上の熱可塑性シート50が積層された第1積層領域T1と、第1積層領域T1よりも少ない数の熱可塑性シート50が積層された第2積層領域T2と、を有する。第1積層領域T1は、熱可塑性シート50として、肌対向面を構成する第1肌側シートP1を含む。第2積層領域T2は、熱可塑性シート50として、肌対向面を構成する第2肌側シートP2を含む。本実施形態において、第1積層領域T1は、外装体5が折り返された領域に相当し、ウエスト領域8cの肌側シートPは、第1肌側シートP1に相当する。
【0063】
図4に示す例では、腹側領域5aの第1積層領域T1は、折り返されていない外層シート51と、折り返されていない内層シート52と、折り返された外層シート51と、の3層で構成される。背側領域5bの第1積層領域T1も、同様の3層で構成される。これにより、第1積層領域T1は、合計6層で構成される。第1積層領域T1において、第1肌側シートP1は、折り返された外層シート51で構成される。
図4に示す例では、腹側領域5aの第2積層領域T2は、折り返されていない外層シート51と、折り返されていない内層シート52と、の2層で構成される。背側領域5bの第2積層領域T2も、同様の2層で構成される。これにより、第2積層領域T2は、合計4層で構成される。第2積層領域T2において、第2肌側シートP2は、折り返されていない内層シート52で構成される。
【0064】
上記構成では、第1積層領域T1は、第2積層領域T2よりも熱可塑性シート50の積層数が多いため、熱可塑性樹脂の量も多くなる。このため、第1積層領域T1は、第2積層領域T2よりも熱融着する樹脂の量が多くなり、シール部Sの接合強度が高くなりやすい。
したがって、本実施形態では、異なる構成の第1肌側シートP1及び第2肌側シートP2を採用することで、第1積層領域T1と第2積層領域T2における接合強度を調整し、引き裂き安定性の向上を図ることができる。
【0065】
(肌側シートにおけるエンボス部の面積率)
本実施形態において、第1肌側シートP1及び第2肌側シートP2は、それぞれ、複数のエンボス部12を含むスパンボンド不織布で構成されることが好ましい。
この場合に、第1肌側シートP1と第2肌側シートP2とで、エンボス部12の面積率、つまり所定の領域の総面積に対する当該領域のうち複数のエンボス部12が占める領域の合計面積の比率が相互に異なるスパンボンド不織布で構成することが好ましい。具体的に、第1肌側シートP1では第2肌側シートP2よりもエンボス部12の面積率が高いことが好ましい。
スパンボンド不織布におけるエンボス部12の面積率は、複数のエンボス部12を充分多く含む領域で測定され、例えば、スパンボンド不織布の20mm×20mmの正方形状の領域で測定することができる。なお、各エンボス部12が占める領域は、繊維の熱融着が見られる一連の領域として認識することができる。また、上記距離の測定については、展開伸長状態で行うものとする。
【0066】
上述のように、エンボス部12では、シール部Sの接合強度が低下し得る。このため、積層数が多い第1積層領域T1において、エンボス部12の面積率を高くすることにより、第1積層領域T1のシール部Sの接合強度が高まることを抑制することができる。これにより、第1積層領域T1と第2積層領域T2との間の接合強度の差を小さくすることができ、サイド接合部8全体における接合強度をより安定化させることができる。したがって、サイド接合部8の引き裂き安定性を高めることができる。
【0067】
第1肌側シートP1のエンボス部12の面積率は、好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上であり、好ましくは20%以下、より好ましくは17%以下である。
第2肌側シートP2のエンボス部12の面積率は、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上であり、好ましくは17%以下、より好ましくは15%以下である。
【0068】
(肌側シートの融点)
他の例として、第1肌側シートP1の融点は、第2肌側シートP2の融点よりも高いことが好ましい。
融点の高い熱可塑性シート50は、融点の低い熱可塑性シート50と比較して、同一の条件のシール工程を実施した場合に熱融着しにくくなり、接合強度が低下しやすくなる。このため、積層数が多い第1積層領域T1において、第1肌側シートP1の融点を高くすることにより、第1積層領域T1のシール部Sの接合強度が高まることを抑制することができる。これにより、第1積層領域T1と第2積層領域T2との間の接合強度の差を小さくすることができ、サイド接合部8全体における接合強度をより安定化させることができる。したがって、サイド接合部8の引き裂き容易性を高めることができる。
【0069】
第1肌側シートP1の融点は、好ましくは125℃以上、より好ましくは155℃以上であり、好ましくは260℃以下、より好ましくは250℃以下である。
第2肌側シートP2の融点は、好ましくは123℃以上、より好ましくは125℃以上であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下である。
【0070】
(肌側シートの坪量)
他の例として、第1肌側シートP1の坪量は、第2肌側シートP2の坪量よりも低いことが好ましい。
坪量の高い熱可塑性シート50では、熱可塑性樹脂の量も多くなり、シール部Sにおける接合強度が高くなりやすい。このため、積層数が多い第1積層領域T1において、第1肌側シートP1の坪量を低くすることにより、第1積層領域T1のシール部Sの接合強度が高まることを抑制することができる。これにより、第1積層領域T1と第2積層領域T2との間の接合強度の差を小さくすることができ、サイド接合部8全体における接合強度をより安定化させることができる。したがって、サイド接合部8の引き裂き安定性を高めることができる。
【0071】
第1肌側シートP1の坪量は、好ましくは10g/m2以上、より好ましくは12g/m2以上であり、好ましくは30g/m2以下、より好ましくは25g/m2以下である。
第2肌側シートP2の坪量は、好ましくは12g/m2以上、より好ましくは14g/m2以上であり、好ましくは40g/m2以下、より好ましくは30g/m2以下である。
【0072】
<第2実施形態>
上述の第1実施形態では、外装体5の折り返し構造として、外層シート51のみ折り返す構成について説明したが、これに限定されない。
本実施形態では、
図8に示すように、外層シート51及び内層シート52の双方が折り返されていてもよい。
なお、以下の第2~第4実施形態において、上述の第1実施形態と同一の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
図8に示す例では、外層シート51及び内層シート52がウエスト開口端Waから肌側に折り返されている。折り返された領域の外層シート51及び内層シート52のレッグ側の端部は、縦方向Xにおいて略同一の位置に配置される。
【0074】
ウエスト領域8cでは、外装体5の複数の熱可塑性シート50において、肌対向面を構成する肌側シートPは折り返された外層シート51であり、肌側シートPに隣接する隣接シートQは、折り返された内層シート52となる。
この場合、第1実施形態と同様に、接合強度低下剤9は、ウエスト領域8cにおいて、肌側シートPと、隣接シートQとの間に配置されることが好ましい。
図8に示す例では、接合強度低下剤9は、折り返された外層シート51と、それに隣接する折り返された内層シート52との間に配置される。これにより、サイド接合部8の接合界面の近傍に接合強度低下剤9が配置され、交差部9sの接合強度を効果的に低下できる。
また、引き裂き容易性をさらに向上させる観点から、肌側シートPにおける接合強度低下剤9の染み込み深さは、隣接シートQにおける接合強度低下剤9の染み込み深さよりも深いことが好ましい。
なお、
図8に示す例では、接合強度低下剤9は、背側領域5bに配置されるが、上述のように、腹側領域5aに配置されてもよく、腹側領域5a及び背側領域5bの双方に配置されてもよい。
【0075】
また、第1実施形態と同様に、本実施形態でも、サイド接合部8は、第1肌側シートP1を含み3枚以上の熱可塑性シート50が積層された第1積層領域T1と、第2肌側シートP2を含み第1積層領域T1よりも少ない数の熱可塑性シート50が積層された第2積層領域T2と、を有する。この例において、第1積層領域T1は、外装体5が折り返された領域に相当し、ウエスト領域8cの肌側シートPは、第1肌側シートP1に相当する。
【0076】
図8に示す例では、腹側領域5aの第1積層領域T1は、折り返されていない外層シート51と、折り返されていない内層シート52と、折り返された内層シート52と、折り返された外層シート51と、の4層で構成される。背側領域5bの第1積層領域T1も、同様の4層で構成される。これにより、第1積層領域T1は、合計8層で構成される。第1積層領域T1において、第1肌側シートP1は、折り返された外層シート51で構成される。
図8に示す例では、腹側領域5aの第2積層領域T2は、折り返されていない外層シート51と、折り返されていない内層シート52と、の2層で構成される。背側領域5bの第2積層領域T2も、同様の2層で構成される。これにより、第2積層領域T2は、合計4層で構成される。第2積層領域T2において、第2肌側シートP2は、折り返されていない内層シート52で構成される。
【0077】
本実施形態においても、サイド接合部8全体における接合強度をより安定化させる観点から、第1肌側シートP1及び第2肌側シートP2をそれぞれ以下のような構成にすることが好ましい。
例えば、第1肌側シートP1及び第2肌側シートP2は、それぞれ、複数のエンボス部12を含むスパンボンド不織布で構成されることが好ましく、第1肌側シートP1におけるエンボス部12の面積率は、サイド接合部8全体における接合強度をより安定化させる観点から、第2肌側シートP2におけるエンボス部12の面積率よりも大きいことが好ましい。
例えば、本実施形態においても、第1肌側シートP1におけるエンボス部12間の距離は、サイド接合部8全体における接合強度をより安定化させる観点から、第2肌側シートP2におけるエンボス部12間の距離よりも小さいことが好ましい。
例えば、本実施形態においても、第1肌側シートP1の融点は、サイド接合部8全体における接合強度をより安定化させる観点から、第2肌側シートP2の融点よりも高いことが好ましい。
例えば、本実施形態においても、第1肌側シートP1の坪量は、第2肌側シートP2の坪量よりも低いことが好ましい。
【0078】
本実施形態のサイド接合部8を有するパンツ型吸収性物品においても、上記構成に加えて、接合強度低下剤9と第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2とが第1実施形態と同様の構成を有することで、着用動作時及び着用時の剥がれ防止と、廃棄時の引き裂き容易性とを両立させることができる。
【0079】
<第3実施形態>
折り返し構造を有する外装体5の構成は、上述の例に限定されない。例えば、外層シート51の折り返された領域の端部である折り返し端部51aと、内層シート52の折り返された領域の端部である折り返し端部52aの位置が縦方向Xにおいて異なっていてもよい。
図9に示す例では、内層シート52の折り返し端部52aが、外層シート51の折り返し端部51aよりも縦方向Xにおいてウエスト側に位置している。
【0080】
図9に示す例において、ウエスト領域8cでは、外層シート51及び内層シート52の双方が折り返されている。この場合、肌対向面を構成する肌側シートPは折り返された外層シート51であり、肌側シートPに隣接する隣接シートQは、折り返された内層シート52となる。
この場合、第1実施形態と同様に、接合強度低下剤9は、ウエスト領域8cにおいて、肌側シートPと、隣接シートQとの間に配置されることが好ましい。
図9に示す例では、接合強度低下剤9は、折り返された外層シート51と、それに隣接する折り返された内層シート52との間に配置される。
また、引き裂き容易性をさらに向上させる観点から、肌側シートPにおける接合強度低下剤9の染み込み深さは、隣接シートQにおける接合強度低下剤9の染み込み深さよりも深いことが好ましい。
なお、
図9に示す例では、接合強度低下剤9は、腹側領域5aに配置されるが、上述のように、背側領域5bに配置されてもよく、腹側領域5a及び背側領域5bの双方に配置されてもよい。
【0081】
また、第2実施形態と同様に、本実施形態でも、サイド接合部8は、第1肌側シートP1を含む3枚以上の熱可塑性シート50が積層された第1積層領域T1と、第2肌側シートP2を含む第1積層領域T1よりも少ない数の熱可塑性シート50が積層された第2積層領域T2と、を有する。この例において、第1積層領域T1は、外装体5が折り返された領域に相当し、ウエスト領域8cの肌側シートPは、第1肌側シートP1に相当する。
さらに、本実施形態では、第1積層領域T1が、熱可塑性シート50の積層数の異なる領域を含む。つまり、第1積層領域T1は、第2積層領域T2に隣接し第2積層領域T2よりも多い数の熱可塑性シート50が積層されたレッグ側積層領域T12と、レッグ側積層領域T12よりも多い数の熱可塑性シート50が積層されたウエスト側積層領域T11と、を含む。
図9に示す例では、ウエスト領域8cは、ウエスト側積層領域T11に含まれる。
【0082】
図9に示す例では、腹側領域5aのウエスト側積層領域T11は、折り返されていない外層シート51と、折り返されていない内層シート52と、折り返された内層シート52と、折り返された外層シート51と、の4層で構成される。背側領域5bのウエスト側積層領域T11も、同様の4層で構成される。これにより、ウエスト側積層領域T11は、合計8層で構成される。
また、腹側領域5aのレッグ側積層領域T12は、折り返されていない外層シート51と、折り返されていない内層シート52と、折り返された外層シート51と、の3層で構成される。背側領域5bのレッグ側積層領域T12も、同様の3層で構成される。これにより、レッグ側積層領域T12は、合計6層で構成される。
また、ウエスト側積層領域T11及びレッグ側積層領域T12のいずれも、第1肌側シートP1は、折り返された外層シート51で構成される。
図9に示す例では、腹側領域5aの第2積層領域T2は、折り返されていない外層シート51と、折り返されていない内層シート52と、の2層で構成される。背側領域5bの第2積層領域T2も、同様の2層で構成される。これにより、第2積層領域T2は、合計4層で構成される。第2積層領域T2において、第2肌側シートP2は、折り返されていない内層シート52で構成される。
【0083】
本実施形態においても、サイド接合部8全体における接合強度をより安定化させる観点から、第1肌側シートP1及び第2肌側シートP2をそれぞれ以下のような構成にすることが好ましい。
例えば、第1肌側シートP1及び第2肌側シートP2は、それぞれ、複数のエンボス部12を含むスパンボンド不織布で構成されることが好ましく、第1肌側シートP1におけるエンボス部12の面積率は、サイド接合部8全体における接合強度をより安定化させる観点から、第2肌側シートP2におけるエンボス部12の面積率よりも大きいことが好ましい。
例えば、本実施形態においても、第1肌側シートP1におけるエンボス部12間の距離は、サイド接合部8全体における接合強度をより安定化させる観点から、第2肌側シートP2におけるエンボス部12間の距離よりも小さいことが好ましい。
例えば、本実施形態においても、第1肌側シートP1の融点は、サイド接合部8全体における接合強度をより安定化させる観点から、第2肌側シートP2の融点よりも高いことが好ましい。
例えば、本実施形態においても、第1肌側シートP1の坪量は、第2肌側シートP2の坪量よりも低いことが好ましい。
【0084】
本実施形態のサイド接合部8を有するパンツ型吸収性物品においても、上記構成に加えて、接合強度低下剤9と第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2とが第1実施形態と同様の構成を有することで、着用動作時及び着用時の剥がれ防止と、廃棄時の引き裂き容易性とを両立させることができる。
【0085】
<第4実施形態>
本発明のパンツ型吸収性物品は、上述の各実施形態のように、外装体5が折り返し構造を有する例に限定されず、外装体5が折り返し構造を有していなくてもよい。
本実施形態では、
図10に示すように、外層シート51及び内層シート52の双方が折り返されておらず、これらのシートの端部がウエスト開口端Waに一致していてもよい。
つまり、この例では、外装体5は、全体が同一の積層数で構成され、例えば、腹側領域5a及び背側領域5bがそれぞれ外層シート51と内層シート52の2層で構成される。
【0086】
つまり、サイド接合部8のウエスト領域8cでは、外装体5の複数の熱可塑性シート50において、肌対向面を構成する肌側シートPは内層シート52であり、肌側シートPに隣接する隣接シートQは、外層シート51となる。
この場合においても、第1実施形態と同様に、接合強度低下剤9は、交差部9sの接合強度を効果的に低下させる観点から、ウエスト領域8cにおいて、肌側シートPと、隣接シートQとの間に配置されることが好ましい。
図8に示す例では、接合強度低下剤9は、内層シート52と、それに隣接する外層シート51と、の間に配置される。
また、交差部9sの接合強度をより効果的に低下させる観点から、肌側シートPにおける接合強度低下剤9の染み込み深さは、隣接シートQにおける接合強度低下剤9の染み込み深さよりも深いことが好ましい。
なお、
図10に示す例では、接合強度低下剤9は、腹側領域5a及び背側領域5bの双方に配置されるが、上述のように、腹側領域5a又は背側領域5bの一方に配置されてもよい。
【0087】
また、本実施形態では、肌側シートPは、サイド接合部8全体における接合強度をより安定化させる観点から、サイド接合部8全体において同一の不織布で構成されることが好ましい。
例えば、肌側シートPは、複数のエンボス部12を含むスパンボンド不織布で構成されることが好ましく、サイド接合部8の全体において、エンボス部12の面積率が実質的に一定であることが好ましい。なお、「サイド接合部8の全体において、エンボス部12の面積率が実質的に一定」とは、サイド接合部8における10箇所以上のエンボス部12の面積率を比較した場合に、最も低い面積率を100%とした場合に、最も高い面積率が110%以下に収まっていることを意味する。
例えば、本実施形態では、肌側シートPの融点は、サイド接合部8全体において、実質的に一定であることが好ましい。「肌側シートPの融点は、サイド接合部8全体において、実質的に一定」とは、サイド接合部8における10箇所以上の肌側シートPの融点を比較した場合に、最も低い融点を100%とした場合に、最も高い融点が110%以下に収まっていることを意味する。
例えば、本実施形態では、肌側シートPの坪量は、サイド接合部8全体において、実質的に一定であることが好ましい。「肌側シートPの坪量は、サイド接合部8全体において、実質的に一定」とは、サイド接合部8における10箇所以上の肌側シートPの坪量を比較した場合に、最も低い坪量を100%とした場合に、最も高い坪量が110%以下に収まっていることを意味する。
【0088】
本実施形態のサイド接合部8を有するパンツ型吸収性物品においても、上記構成に加えて、接合強度低下剤9と第1交差シール部S1及び第2交差シール部S2とが第1実施形態と同様の構成を有することで、着用動作時及び着用時の剥がれ防止と、廃棄時の引き裂き容易性とを両立させることができる。
【0089】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0090】
例えば、上記実施形態では、外装体5が、腹側領域5aと、背側領域5bと、股下領域5cと、を有すると説明したが、これに限定されない。例えば、外装体5は、股下領域を有さず、腹側領域と背側領域とが分割された構成を有していてもよい。
【0091】
本発明に係るパンツ型吸収性物品は、乳幼児用の使い捨ておむつでなくてもよく、例えば、大人用や子供用の使い捨ておむつであってもよい。更に、本発明に係るパンツ型吸収性物品は、下半身に着用するタイプの吸収性物品であれば、使い捨ておむつでなくてもよい。このようなパンツ型吸収性物品としては、例えば、パンツ型の生理用ナプキンなどが挙げられる。
【0092】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の吸収性物品を開示する。
<1>
吸収性本体と、前記吸収性本体の非肌対向面側に配置され、縦方向の両側に位置する腹側領域及び背側領域を含み、複数の熱可塑性シートが積層されて構成された外装体と、前記外装体の前記腹側領域と前記背側領域とを前記縦方向と直交する横方向の側縁部において接合する一対のサイド接合部と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、
前記一対のサイド接合部は、前記縦方向の両端部を構成するウエスト端部及びレッグ端部と、前記ウエスト端部から前記縦方向に25mm以内のウエスト領域と、前記縦方向に沿って配列された複数のシール部と、を有し、
前記複数のシール部は、内端部と外端部との間を前記横方向に延び、前記内端部と前記外端部との間である第1寸法よりも小さい第2寸法の間隔をあけて配列されており、
前記一対のサイド接合部の少なくとも一方は、前記熱可塑性シート間において線状に設けられた接合強度低下剤と、前記複数のシール部に含まれ、前記ウエスト領域において前記縦方向に連続して並び、前記内端部及び前記外端部以外で前記接合強度低下剤と交差する交差部を有する複数の交差シール部と、を更に有し、
前記複数の交差シール部は、前記内端部と前記交差部との間の交差距離が前記第2寸法よりも小さい第1交差シール部と、前記第1交差シール部に前記レッグ端部側に隣接し、前記交差距離が前記第1交差シール部の前記交差距離以下である第2交差シール部と、を含む
パンツ型吸収性物品。
<2>
前記接合強度低下剤は、油剤、高融点樹脂、及びホットメルト接着剤の少なくとも1つを含む
<1>に記載のパンツ型吸収性物品。
<3>
前記接合強度低下剤は、ホットメルト接着剤を含む
<2>に記載のパンツ型吸収性物品。
<4>
前記複数の熱可塑性シートは、前記ウエスト領域において前記外装体の肌対向面を構成する肌側シートと、前記肌側シートに隣接する隣接シートと、を含み、
前記接合強度低下剤は、前記肌側シートと前記隣接シートとの間に配置される
<1>から<3>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
<5>
前記接合強度低下剤は、前記ウエスト領域において、前記肌側シートと前記隣接シートとの間に配置される
<4>に記載のパンツ型吸収性物品。
<6>
前記肌側シートでは前記隣接シートよりも前記接合強度低下剤の染み込み深さが深い
<4>又は<5>に記載のパンツ型吸収性物品。
<7>
前記第2寸法は、前記第1寸法と前記第2交差シール部の前記交差距離との差よりも小さい
<1>から<6>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
<8>
前記第1交差シール部が、前記複数のシール部の最も前記ウエスト端部側に位置する
<1>から<7>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
<9>
前記腹側領域及び前記背側領域にはそれぞれ、前記横方向に延びる複数の弾性部材が配置された伸縮領域が設けられ、
前記ウエスト領域における前記複数の弾性部材の平均伸長率は、前記ウエスト領域よりも前記レッグ端部側の領域における前記複数の弾性部材の平均伸長率よりも低い
<1>から<8>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
<10>
前記ウエスト領域よりも前記レッグ端部側の領域における前記複数の弾性部材の平均伸長率に対する、前記ウエスト領域における前記複数の弾性部材の平均伸長率の割合は、20%以上90%以下、好ましくは30%以上80%以下である
前記<9>に記載のパンツ型吸収性物品。
<11>
前記接合強度低下剤は、前記第1交差シール部及び前記第2交差シール部の前記交差部間で連続している
<1>から<10>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
<12>
前記複数の交差シール部は、前記ウエスト端部側から前記レッグ端部側に向けて前記交差距離が単調減少する3つ以上の交差シール部を含む
<1>から<11>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
<13>
前記接合強度低下剤は、前記腹側領域及び前記背側領域の少なくとも一方にスパイラル状又は波状の曲線状に設けられる
<1>から<12>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
<14>
前記接合強度低下剤は、均一な線幅で設けられている
<1>から<13>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
<15>
前記複数の交差シール部は、前記縦方向に10mm以上の領域にわたって前記ウエスト端部側から前記レッグ端部側に向けて前記交差距離が単調減少するように設けられている
<1>から<14>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
<16>
前記一対のサイド接合部がいずれも、前記接合強度低下剤と前記複数の交差シール部とを有する
<1>から<15>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
<17>
前記腹側領域及び前記背側領域にはそれぞれ、前記横方向に延びる複数の弾性部材が配置され、
前記複数のシール部は、前記第1寸法の1.2倍以上に前記横方向に伸長可能である
<1>から<16>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
<18>
前記複数の熱可塑性シートは、前記ウエスト領域において前記外装体の肌対向面を構成し、複数のエンボス部を含むスパンボンド不織布で構成された肌側シートを含み、
前記第1交差シール部及び前記第2交差シール部はそれぞれ、前記内端部及び前記外端部以外において少なくとも1つの前記エンボス部と重なる
<1>から<17>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
<19>
前記腹側領域及び前記背側領域はそれぞれ、肌対向面を構成する第1肌側シートを含む3枚以上の熱可塑性シートが積層された第1積層領域と、肌対向面を構成する第2肌側シートを含み、前記第1の積層領域よりも少ない枚数の熱可塑性シートが積層された第2積層領域と、を有し、
前記第1肌側シート及び前記第2肌側シートがそれぞれ、複数のエンボス部を含むスパンボンド不織布で構成され、
前記第1肌側シートでは前記第2肌側シートよりも前記複数のエンボス部が占める面積率が高い
<1>から<18>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
<20>
前記一対のサイド接合部を前記縦方向に3分割した各部分について、前記外装体の前記横方向の破断強度が前記複数のシール部の前記横方向の剥離強度よりも大きい
<1>から<19>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
<21>
前記腹側領域及び前記背側領域はそれぞれ、肌対向面を構成する第1肌側シートを含む3枚以上の熱可塑性シートが積層された第1積層領域と、肌対向面を構成する第2肌側シートを含み、前記第1の積層領域よりも少ない枚数の熱可塑性シートが積層された第2積層領域と、を有し、
前記第1肌側シート及び前記第2肌側シートがそれぞれ、複数のエンボス部を含むスパンボンド不織布で構成され、
前記第1肌側シートでは前記第2肌側シートよりも前記複数のエンボス部間の距離が小さい
<1>から<20>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
<22>
前記腹側領域及び前記背側領域はそれぞれ、肌対向面を構成する第1肌側シートを含む3枚以上の熱可塑性シートが積層された第1積層領域と、肌対向面を構成する第2肌側シートを含み、前記第1の積層領域よりも少ない枚数の熱可塑性シートが積層された第2積層領域と、を有し、
前記第1肌側シートでは前記第2肌側シートよりも融点が高い
<1>から<21>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
<23>
前記腹側領域及び前記背側領域はそれぞれ、肌対向面を構成する第1肌側シートを含む3枚以上の熱可塑性シートが積層された第1積層領域と、肌対向面を構成する第2肌側シートを含み、前記第1の積層領域よりも少ない枚数の熱可塑性シートが積層された第2積層領域と、を有し、
前記第1肌側シートでは前記第2肌側シートよりも坪量が低い
<1>から<22>のいずれか1つに記載のパンツ型吸収性物品。
【符号の説明】
【0093】
1…パンツ型吸収性物品(使い捨ておむつ、おむつ)
4…吸収性本体
5…外装体
5a…腹側領域
5b…背側領域
50…熱可塑性シート
8…サイド接合部
8a…ウエスト端部
8b…レッグ端部
9…接合強度低下剤
S…シール部
S1…第1交差シール部
S2…第2交差シール部
Sc…内端部
Sd…外端部