(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】スクラップ捕捉装置
(51)【国際特許分類】
B21D 22/16 20060101AFI20230302BHJP
B23D 21/00 20060101ALI20230302BHJP
B23D 33/00 20060101ALI20230302BHJP
B21D 41/04 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B21D22/16 E
B23D21/00 E
B23D33/00 H
B23D33/00 B
B21D41/04 B
(21)【出願番号】P 2022179297
(22)【出願日】2022-11-09
(62)【分割の表示】P 2020161713の分割
【原出願日】2020-09-28
【審査請求日】2022-11-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 徹
(72)【発明者】
【氏名】大塚 清輝
(72)【発明者】
【氏名】小川 安浩
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-39782(JP,A)
【文献】特開2009-50882(JP,A)
【文献】特開昭63-150106(JP,A)
【文献】特開平5-137553(JP,A)
【文献】特開2020-138250(JP,A)
【文献】特開2002-18635(JP,A)
【文献】特開昭61-164710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/14 - 22/16
B23D 21/00
B23D 33/00
B26D 3/16
B21D 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
公転軸を中心として金属管からなるワークの周りを公転しつつ前記ワークの端部に縮径部を形成するスピニングローラ、前記公転軸に平行な方向において進退自在に駆動される芯金、及び前記公転軸を中心として前記ワークの周りを公転しつつ前記縮径部の先端部である管端を切断するカッター刃を備えるスピニング加工機に組み込まれる、スクラップ捕捉装置であって、
前記芯金の先端に設けられた捕捉部を更に備え、
前記捕捉部は、前記芯金の先端に接続された本体部、前記公転軸に平行な方向に延在し且つ前記公転軸とは反対側に面する表面である外面を有する複数の受け部材及び前記受け部材を駆動する駆動機構を備え、前記芯金と一体的に進退駆動されるように構成されており、
前記駆動機構は、前記本体部の先端側の表面から先端側へ向かって延在するフォーク部に取り付けられたパンタグラフ機構を介して前記受け部材を駆動して、前記受け部材の前記外面を前記公転軸に対して平行に維持しつつ前記受け部材を駆動して前記ワークの管端を間に挟んで前記カッター刃に対向するように前記受け部材の前記外面を配置すると共に前記受け部材の前記外面と前記公転軸との間の距離を増減し、前記ワークの管端からスクラップが切除される際に前記受け部材の前記外面を前記スクラップの内周面に対して平行に維持すると共に前記縮径部の内周面と前記受け部材の前記外面との間に前記公転軸に平行な方向における全長に亘って所定量の隙間を維持しつつ当該内周面に近接した位置に前記受け部材の前記外面を配置し、前記ワークの前記管端から切除された前記スクラップの挙動を抑制し、前記スクラップを捕捉する、
ことを特徴とする、スクラップ捕捉装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたスクラップ捕捉装置であって、
前記受け部材が前記公転軸に最も近い位置にあるときの前記公転軸に直交する平面への垂直投影図において前記本体部の最外周面の内部に前記捕捉部の全体が収まる、
ことを特徴とする、スクラップ捕捉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラップ捕捉装置に関する。より具体的には、本発明は、金属製の管状製品の管端から切除されたスクラップを確実に捕捉し、所定位置へと移動させて排出することができるスクラップ捕捉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の管状部材の端部に縮径部を形成するスピニング加工において、縮径部の板厚及び/又は形状の精度を確保することを目的として、最終的な製品において求められる長さよりも長い縮径部をスピニング加工によって予め形成し、その後、当該縮径部の端部(管端)の一部を切除して、所望の長さを有する縮径部を得る場合がある。特に、直管部(上記管状部材の縮径部ではない部分)の軸に対して偏芯、傾斜及び捩れの少なくとも何れかの関係にある軸を有する縮径部をスピニング加工によって形成する場合、管端の形状が不安定になりがちであるため、上述したように管端の一部を切除する必要性が高い。
【0003】
上記のように管端の一部を切除するための具体的な手法としては、スピニングローラと同様に回転面盤に保持された丸刃カッター(「切断ローラ」又は「カッター刃」等と称呼される場合がある。)を管端の所定の箇所に押し当てつつ公転させることによって管端を切断する手法が効率的であり、多用されている。
【0004】
上記のように管端の一部を切除するとリング状の端材(以降、単に「スクラップ」と称呼される場合がある。)が生ずる。当然のことながら、当該スクラップは、製品から離隔され、所定の位置において排出される必要がある。そこで、当該技術分野においては、管端から切除されたスクラップを製品から離隔して所定の位置において排出するための様々な技術が提案されている。
【0005】
例えば、
図12の(a)に示す特許文献1(特開2002-18635号公報)に開示された排出装置は、マンドレル238の先端から進退可能に備えられ縮径部255b内においてスクラップ255cを係止するガイド棒249とガイド棒249からスクラップ255cを払い落とす払い落とし手段240とを備える。当該装置によれば、スクラップ255cが払い落とし手段240に当接してガイド棒249から脱落する位置までガイド棒249を後退させることにより、所定の位置に設けられたシュート内にスクラップ255cを落下させて排出することができる。
【0006】
しかしながら、上記装置においては、前述したように縮径部255bに対して公転するカッター232によって縮径部255bの管端を切断するため、ガイド棒249を回転中心とする回転力及び遠心力がスクラップ255cに作用する。その結果、
図12の(b)に示すように、スクラップ255cは複雑な挙動を伴いながら回転し、ガイド棒249から離脱して、スピニング加工機の本体及び/又は周辺機器等に衝突したり可動部分に挟まったりして、スピニング加工機の不具合を招く虞がある。
【0007】
そこで、
図13の(a)に示す特許文献2(2009-39782号公報)に開示された排出装置においては、係止部材321がガイド棒319の先端に設けられている。係止部材321は、
図13の(b)に示すように、支点321dを中心として回動する一対の鉤状部材によって開閉可能に構成されている。当該装置によれば、縮径部325aの内部において係止部材321が開いた状態にて管端を切断し、スクラップ325bを係止部材321によって捕捉(受け取り)した後、係止部材321を閉じてガイド棒319を芯金(マンドレル)316の内部へと後退させることにより、所定の位置に設けられたシュート内にスクラップ325bを落下させて排出することができる。
【0008】
しかしながら、スクラップ325bが管端から切除された直後においては、係止部材321を構成する一対の鉤状部材の先端に形成された爪部321bは縮径部325aの内周面に当接しているものの、係止部材321の爪部321b以外の部分はスクラップ325bの内径よりも小さく且つ傾斜している。一方、スクラップ325bが管端から切除された直後のスクラップ325bは、上述したように、複雑な挙動を伴いながら勢い良く回転している。従って、スクラップ325bを係止部材321によって捕捉しようとしても、スクラップ325bが係止部材321の所定の位置に留まらずに離脱して飛び出したりする虞がある。また、勢い良く回転するスクラップ325bとの接触により係止部材321に破損(折損)が生ずる虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2002-18635号公報
【文献】特開2009-39782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したように、当該技術分野においては、製品の管端から切除された直後に勢い良く回転するスクラップを確実に捕捉し、スクラップの回転を減衰及び/又は停止させ、スクラップを離脱させること無く係止した状態のまま所定の位置まで移動させ、所定位置において確実に排出することができるスクラップ捕捉装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に鑑み、本発明者は、鋭意研究の結果、スピニングローラ、芯金、及びカッター刃を備えるスピニング加工機に組み込まれるスクラップ捕捉装置において、芯金の先端に設けられた捕捉部を構成する受け部材の外面をカッター刃の公転軸に対して平行に維持しつつ径方向に進退自在に駆動することにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0012】
具体的には、本発明に係るスクラップ捕捉装置(以降、「本発明装置」と称呼される場合がある。)は、スピニングローラ、芯金、及びカッター刃を備えるスピニング加工機に組み込まれる、スクラップ捕捉装置である。スピニングローラは、公転軸を中心として金属管からなるワークの周りを公転しつつ当該ワークの端部に縮径部を形成する。芯金は、上記公転軸に平行な方向において進退自在に駆動される。カッター刃は、上記公転軸を中心として上記ワークの周りを公転しつつ上記縮径部の先端部である管端を切断する。
【0013】
本発明装置は、上記芯金の先端に設けられた捕捉部を更に備える。上記捕捉部は、上記公転軸に平行な方向に延在し且つ上記公転軸とは反対側に面する表面である外面を有する複数の受け部材及び上記受け部材を駆動する駆動機構を備える。上記駆動機構は、上記受け部材の上記外面を上記公転軸に対して平行に維持しつつ上記受け部材を駆動して上記受け部材の上記外面と上記公転軸との間の距離を増減する(上記受け部材を径方向に進退自在に駆動する)。
【発明の効果】
【0014】
上記のように、本発明装置は芯金の先端に設けられた捕捉部を更に備え、捕捉部はスピニングローラ及びカッター刃に共通の公転軸に平行な方向に延在し且つ公転軸とは反対側に面する表面である外面を有する複数の受け部材及び受け部材を駆動する駆動機構を備える。更に、駆動機構は、受け部材の外面を公転軸に対して平行に維持しつつ受け部材を駆動して受け部材の外面と公転軸との間の距離を増減する。従って、本発明装置においては、製品の管端からスクラップが切除される際に、受け部材の外面をスクラップの内周面に対して平行に維持しつつ、当該内周面に近接した位置に受け部材の外面を配置することができる。
【0015】
その結果、本発明装置によれば、製品の管端から切除された直後に勢い良く回転するスクラップを確実に捕捉し、スクラップの回転を減衰及び/又は停止させることができる。このため、本発明装置によれば、スクラップを離脱させること無く係止した状態のまま所定の位置まで移動させ、所定位置において確実に排出することができる。
【0016】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施態様に係るスクラップ捕捉装置(第1装置)の構成を例示する模式図である。
【
図2】本発明の第2実施態様に係るスクラップ捕捉装置(第2装置)の構成の一例を示す模式図である。
【
図3】
図2に例示した第2装置が備える捕捉部においてパンタグラフ機構を介して受け部材が駆動される様子を説明する模式図である。
【
図4】第2装置が備える捕捉部の構成のもう1つの例を示す模式図である。
【
図5】本発明の第3実施態様に係るスクラップ捕捉装置(第3装置)の構成を例示する模式図である。
【
図6】本発明の第4実施態様に係るスクラップ捕捉装置(第4装置)の構成の一例を示す模式図である。
【
図7】本発明の第5実施態様に係るスクラップ捕捉装置(第5装置)が備える捕捉部の構成の一例を示す模式図である。
【
図8】本発明の第6実施態様に係るスクラップ捕捉装置(第6装置)の構成の一例を示す模式図である。
【
図9】本発明の実施例に係るスクラップ捕捉装置(実施例装置)が備える捕捉部においてパンタグラフ機構を介して受け部材が駆動される様子を説明する模式図である。
【
図10】
図9の(a)に例示した実施例装置の外観を示す模式的な斜視図である。
【
図11】
図9の(b)に例示した実施例装置の外観を示す模式的な斜視図である。
【
図12】従来技術に係るスクラップ排出装置の構成の1つの例を示す模式図である。
【
図13】従来技術に係るスクラップ排出装置の構成のもう1つの例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
《第1実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態に係るスクラップ捕捉装置(以降、「第1装置」と称呼される場合がある。)について説明する。尚、以下の説明においては、第1装置が組み込まれるスピニング加工機が備えるスピニングローラの公転軸に平行な方向を「軸方向」と称呼し、当該公転軸に直交する方向を「径方向」又は「放射方向」と称呼する。また、軸方向において、第1装置を基準としてワークが位置する側を「先端側」と称呼し、当該先端側とは反対の側を「基端側」と称呼する。
【0019】
〈構成〉
第1装置は、スピニングローラ、芯金、及びカッター刃を備えるスピニング加工機に組み込まれる、スクラップ捕捉装置である。スピニングローラは、公転軸を中心として金属管からなるワークの周りを公転しつつ当該ワークの端部に縮径部を形成する。芯金は、上記公転軸に平行な方向において進退自在に駆動される。カッター刃は、上記公転軸を中心として上記ワークの周りを公転しつつ上記縮径部の先端部である管端を切断する。
【0020】
上記のようなスピニング加工機の構成及び当該スピニング加工機を使用するスピニング加工によって金属管からなるワークの端部に縮径部を形成する工程の詳細については当業者に周知であるので、ここでの説明は省略する。
【0021】
本発明装置は、上記芯金の先端に設けられた捕捉部を更に備える。上記捕捉部は、上記公転軸に平行な方向に延在し且つ上記公転軸とは反対側に面する表面である外面を有する複数の受け部材及び上記受け部材を駆動する駆動機構を備える。上記駆動機構は、上記受け部材の上記外面を上記公転軸に対して平行に維持しつつ上記受け部材を駆動して上記受け部材の上記外面と上記公転軸との間の距離を増減する(上記受け部材を径方向に進退自在に駆動する)。
【0022】
図1は、第1装置の構成の一例を示す模式図である。具体的には、
図1は、図示しないスピニングローラの公転軸AXを含む平面による第1装置の模式的な断面図である。尚、
図1の(a)においては、第1装置の構成に関する理解を容易なものとすることを目的として、第1装置が組み込まれるスピニング加工機が備えるカッター刃及び芯金並びに当該スピニング加工機によってスピニング加工が施されるワークが破線によって描かれている。但し、スピニング加工機が備えるスピニングローラ並びにスピニングローラ、芯金及びカッター刃を駆動するための機構は省略されている。また、受け部材を駆動するための機構も省略されている(詳しくは後述する)。一方、
図1の(b)及び(c)においては、第1装置(を構成する捕捉部)のみが描かれている。
【0023】
図1の(a)に例示する第1装置101aは、スピニングローラ(図示せず)、芯金132、及びカッター刃133を備えるスピニング加工機に組み込まれるスクラップ捕捉装置である。スピニングローラは、公転軸AXを中心として金属管からなるワーク150の周りを公転しつつワーク150の(基端側の)端部に縮径部151を形成する。芯金132は、図示しない駆動装置により、公転軸AXに平行な方向(軸方向)において進退自在に駆動される。カッター刃133は、公転軸AXを中心としてワーク150の周りを公転しつつ縮径部151の先端部である管端151Eを所定の位置において切断する。
【0024】
第1装置101aは、芯金132の先端に設けられた捕捉部110を更に備える。捕捉部110は、公転軸AXに平行な方向(軸方向)に延在し且つ公転軸AXとは反対側に面する表面である外面111Sを有する複数の受け部材111及び受け部材111を駆動する駆動機構(図示せず)を備える。更に、駆動機構は、外面111Sを公転軸AXに対して平行に維持しつつ受け部材111を駆動して外面111Sと公転軸AXとの間の距離を増減する(受け部材111を径方向に進退自在に駆動する)。
【0025】
図1の(a)に例示する第1装置101aにおいては、捕捉部110は、図面に向かって上下にそれぞれ2つ(合計で4つ)の受け部材111及び芯金132の先端に接続された本体部112を備える。尚、
図1においては、図面に向かって奥側の受け部材111は描かれていない。そして、これら4つの受け部材111は、図示しない駆動機構により、外面111Sが公転軸AXに対して平行となる姿勢を維持されつつ外面111Sと公転軸AXとの間の距離が増減するように駆動される。より詳細には、例えば、
図1の(a)に例示する第1装置101aが備える捕捉部110においては、公転軸AXに直交する方向(径方向、放射方向)において進退自在に受け部材111が駆動される(黒塗りの両矢印を参照)。
【0026】
また、
図1の(b)に例示する第1装置101bが備える捕捉部110においては、公転軸AXに直交する成分と公転軸AXに平行な成分とからなる公転軸AXに対して傾斜した方向において直線的に進退自在に受け部材111が駆動される(黒塗りの両矢印を参照)。更に、
図1の(c)に例示する第1装置101cが備える捕捉部110においては、公転軸AXに直交する成分と公転軸AXに平行な成分とからなる公転軸AXに対して傾斜した方向において曲線的に進退自在に受け部材111が駆動される(黒塗りの両矢印を参照)。これらの例に示すように、第1装置において受け部材111が進退自在に駆動される際の受け部材111の移動軌跡の形状は、外面111Sが公転軸AXに対して平行となる姿勢を維持されつつ外面111Sと公転軸AXとの間の距離が増減するように駆動される限り、特に限定されない。即ち、第1装置において受け部材111が駆動される軌跡の形状は、必ずしも公転軸AXに直交する方向(径方向、放射方向)における直線状である必要は無く、公転軸AXに対して傾斜した方向における直線状であってもよく、或いは公転軸AXに対する角度が変化する曲線状であってもよい。
【0027】
受け部材111を駆動する駆動機構の構成は、上記のように受け部材111の外面111Sを公転軸AXに対して平行に維持しつつ受け部材111を駆動して外面111Sと公転軸AXとの間の距離を増減する(受け部材111を径方向に進退自在に駆動する)ことが可能である限り、特に限定されない。このような駆動機構の具体例としては、例えば、電動モータ及び気圧又は液圧を利用するシリンダを始めとする各種駆動装置並びに当該駆動装置によって駆動されるパンタグラフ機構を始めとする各種リンク機構等を挙げることができる(詳しくは後述する)。
【0028】
また、受け部材111の数は、製品の管端から切除された直後に勢い良く回転するスクラップを確実に捕捉し且つスクラップの回転を減衰及び/又は停止させることが可能である限り特に限定されない。具体的には、受け部材111の数は、
図1に例示したように4つであってもよく、或いは2つ若しくは3つ又は5つ以上であってもよい。尚、製品の管端から切除された直後に勢い良く回転するスクラップの複雑な挙動を抑制して確実に捕捉する観点からは、これら複数の受け部材111が公転軸AXを中心とする回転対称な位置に配設されていることが望ましい。
【0029】
更に、捕捉部110を構成する材料は、スピニング加工が実施される環境及び負荷に耐え得る材料であることが望ましい。受け部材111を構成する材料については、スピニング加工が実施される環境及び負荷に耐え得ると共に、例えば製品の管端から切除された直後に勢い良く回転するスクラップとの接触に耐え得る機械的強度及びスクラップとの摩擦に耐え得る耐摩耗性等を有する材料であることが望ましい。このような材料の具体例としては、例えばステンレス鋼等の金属材料を挙げることができる。
【0030】
〈効果〉
以上のように、第1装置は芯金の先端に設けられた捕捉部を更に備え、捕捉部はスピニングローラ及びカッター刃に共通の公転軸に平行な方向に延在し且つ公転軸とは反対側に面する表面である外面を有する複数の受け部材及び受け部材を駆動する駆動機構を備える。更に、駆動機構は、受け部材の外面を公転軸に対して平行に維持しつつ受け部材を駆動して上記受け部材の上記外面と上記公転軸との間の距離を増減する(受け部材を径方向に進退自在に駆動する)。従って、第1装置においては、製品の管端からスクラップが切除される際に、受け部材の外面をスクラップの内周面に対して平行に維持しつつ、当該内周面に近接した位置に受け部材の外面を配置することができる。
【0031】
その結果、第1装置によれば、製品の管端から切除された直後に勢い良く回転するスクラップを確実に捕捉し、スクラップの回転を減衰及び/又は停止させることができる。このため、第1装置によれば、スクラップを離脱させること無く係止した状態のまま所定の位置まで移動させ、所定位置において確実に排出することができる。
【0032】
更に、第1装置においては、受け部材を径方向に進退自在に駆動することにより捕捉部の外径を自在に変更することができるので、ワークに合わせて捕捉部を組み替えること無く、異なる内径を有する縮径部(を有するワーク)に対応することができる。従って、第1装置によれば、例えばスピニング加工機の設備コストの削減及び生産銘柄の変更に伴う作業工数の低減等、製造コストの低減及び作業効率の向上を達成することができる。
【0033】
《第2実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第2実施形態に係るスクラップ捕捉装置(以降、「第2装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0034】
第1装置に関する説明において上述したように、受け部材を駆動する駆動機構の具体例としては、例えば、電動モータ及び気圧又は液圧を利用するシリンダを始めとする各種駆動装置並びに当該駆動装置によって駆動されるパンタグラフ機構を始めとする各種リンク機構等を挙げることができる。これら種々の駆動機構の中で、パンタグラフ機構は、単純な構造にも拘わらず、より確実に上記受け部材の上記外面を上記公転軸に対して平行に維持しつつ径方向(放射方向)において進退自在に受け部材を駆動することができるので特に好ましい。
【0035】
〈構成〉
そこで、第2装置は、上述した第1装置であって、上記受け部材がパンタグラフ機構を介して駆動されることを特徴とする、スクラップ捕捉装置である。
【0036】
図2は、第2装置の構成の一例を示す模式図である。具体的には、
図2は、図示しないスピニングローラの公転軸AXに直交する方向(径方向又は放射方向)において観察される第2装置の模式的な側面図である。尚、
図2においてもまた、前述した
図1と同様に、第2装置の構成に関する理解を容易なものとすることを目的として、第2装置が組み込まれるスピニング加工機が備えるカッター刃及び芯金並びに当該スピニング加工機によってスピニング加工が施されるワークが破線によって描かれている。また、スピニング加工機が備えるスピニングローラ並びにスピニングローラ、芯金及びカッター刃を駆動するための機構は省略されている。
【0037】
図2に例示する第2装置102aは、受け部材111を駆動する駆動機構としてのパンタグラフ機構113を捕捉部110が備える点を除き、
図1の(a)に例示した第1装置101aと同様の構成を有する。第2装置102aにおいては、パンタグラフ機構113により、公転軸AXに対して平行な姿勢に受け部材111を維持しつつ径方向(放射方向)において進退自在に受け部材111を駆動することができる。
【0038】
図3は、
図2に例示した第2装置102aが備える捕捉部110においてパンタグラフ機構113を介して受け部材111が駆動される様子を説明する模式図である。
図3の(a)は、パンタグラフ機構113が収縮して、径方向(放射方向)において内側に受け部材111が配置された状態を示す。一方、
図3の(b)は、パンタグラフ機構113が伸長して、径方向(放射方向)において外側に受け部材111が配置された状態を示す。尚、
図3においては、図面の都合上、(b)にのみ符号が付されている。
【0039】
図3に例示する捕捉部110においては、本体部112の先端側の表面から先端側へ向かって延在するフォーク部112Fが図面に向かって手前側及び奥側にそれぞれ突設されている。この一対のフォーク部112Fの図面に向かって上側及び下側にはパンタグラフ機構113を介して2つの受け部材111がそれぞれ接続されている。パンタグラフ機構113は、基端側に位置する3つの関節(ピボット)のうち中央の(黒丸によって示す)関節の位置を(黒塗りの両矢印によって示す)軸方向に変化させることにより径方向(放射方向)に伸縮することができるように構成されている。
【0040】
従って、パンタグラフ機構113の関節を回動可能に接続する軸が挿通される受け部材111及びフォーク部112Fに形成された貫通孔のうち、先端側(ワーク側)の貫通孔の形状は当該軸に対応する円形状である。これに対し、基端側(芯金側)の貫通孔の形状は公転軸AXに平行な方向(軸方向)に長いスリット状であり、これらの関節の軸が公転軸AXに平行な方向(軸方向)に摺動可能なスライド穴を構成している。このように、所定の関節を軸方向に駆動してパンタグラフ機構113を径方向(放射方向)に伸縮させることにより、より確実に受け部材111の外面111Sを公転軸AXに対して平行に維持しつつ径方向(放射方向)において進退自在に受け部材111を駆動することができる。
【0041】
尚、
図3に示したパンタグラフ機構113は第2装置が備えるパンタグラフ機構の一例に過ぎず、受け部材111の外面111Sを公転軸AXに対して平行に維持しつつ径方向(放射方向)において進退自在に受け部材111を駆動することが可能である限り、パンタグラフ機構の構成及び駆動方式等は上記に限定されない。例えば、
図4に例示する第2装置102bが備える捕捉部110のように、基端側(芯金側)ではなく先端側(ワーク側)の関節の位置を(黒塗りの両矢印によって示す)軸方向に変化させることによってパンタグラフ機構113を径方向(放射方向)に伸縮させてもよい。この場合、受け部材111及びフォーク部112Fに形成される貫通孔は、
図3に示した例とは逆に、基端側(芯金側)の貫通孔の形状は上記軸に対応する円形状となるのに対し、先端側(ワーク側)の貫通孔の形状は公転軸AXに平行な方向(軸方向)に長いスリット状となる(スライド穴を構成する)。尚、
図2乃至
図4の何れにおいても、パンタグラフ機構を伸縮させるための機構は省略されている(詳しくは後述する)。
【0042】
〈効果〉
以上のように、第2装置においてはパンタグラフ機構を介して受け部材が駆動される。従って、第2装置によれば、所定の関節を軸方向に駆動してパンタグラフ機構を径方向に伸縮させることにより、より確実に受け部材の外面を公転軸に対して平行に維持しつつ径方向において進退自在に受け部材を駆動することができる。
【0043】
《第3実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第3実施形態に係るスクラップ捕捉装置(以降、「第3装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0044】
上述したように、第2装置においては、パンタグラフ機構を介して受け部材が駆動される。従って、第2装置によれば、所定の関節を軸方向に駆動してパンタグラフ機構を径方向に伸縮させることにより、より確実に受け部材の外面を公転軸に対して平行に維持しつつ径方向において進退自在に受け部材を駆動することができる。
【0045】
パンタグラフ機構の所定の関節を軸方向に駆動するための手段は、特に限定されない。典型的には、パンタグラフ機構は、例えば、プッシュロッド、プルロッド及びねじロッド等によって駆動されて変形することにより受け部材を駆動する。
【0046】
〈構成〉
そこで、第3装置は、上述した第2装置であって、上記パンタグラフ機構がプッシュロッド、プルロッド又はねじロッドによって駆動されて変形することにより上記受け部材を駆動することを特徴とする、スクラップ捕捉装置である。
【0047】
図5は、第3装置の構成を例示する模式図であり、上述した第2装置に関する説明において参照した
図3及び
図4の(b)のように、パンタグラフ機構が伸長して、径方向(放射方向)において外側に受け部材が配置された状態を示す。
図5の(a)及び(b)の何れにおいても、パンタグラフ機構113は、基端側に位置する3つの関節(ピボット)のうち中央の(黒丸によって示す)関節の位置を(黒塗りの両矢印によって示す)軸方向に変化させることにより径方向(放射方向)に伸縮することができるように構成されている。即ち、
図5に例示する第3装置が備えるパンタグラフ機構113は、
図2及び
図3に例示した第2装置102aが備えるパンタグラフ機構113と同様の構成を有する。
【0048】
但し、第3装置においては、パンタグラフ機構がプッシュロッド、プルロッド又はねじロッドによって駆動されて変形することにより受け部材が駆動される。具体的には、例えば、
図5の(a)に例示する第3装置103aにおいては、捕捉部110の本体部112の内部において公転軸AXに平行な方向(軸方向)に摺動可能に収容されたプッシュロッド114(破線によって描かれている)によってパンタグラフ機構113が駆動されて伸縮することによって受け部材111が駆動される。
【0049】
図5の(a)に例示する構成において、パンタグラフ機構113の所定の関節(黒丸)にプッシュロッド114が当接して押圧して当該関節を先端側へ移動させることによってパンタグラフ機構113を伸長させる場合、例えばバネ等の弾性体によりパンタグラフ機構113を収縮方向に付勢することにより、プッシュロッド114による押圧力の低減に伴ってパンタグラフ機構113が収縮するようにしてもよい。或いは、プッシュロッド114に代えてプルロッドを上記関節に係合させて当該関節を基端側へと引くことによってパンタグラフ機構113を収縮させるようにしてもよい。この場合、例えばバネ等の弾性体によりパンタグラフ機構113を伸長方向に付勢することにより、当該プルロッドによって上記関節を引く力の低減に伴ってパンタグラフ機構113が伸長するようにしてもよい。
【0050】
一方、
図5の(b)に例示する第3装置103bにおいては、捕捉部110の本体部112の内部において公転軸AXを中心として回転可能に収容されたねじロッド115(斜線部によって示されている)がパンタグラフ機構113の所定の関節(黒丸)の軸方向における可動範囲を含む領域にまで延在している。そして、例えば、ねじロッド115と類合し且つねじロッド115の回転に伴って軸方向に移動するナット部材(図示せず)によって上記関節を軸方向に移動させることによりパンタグラフ機構113が駆動されて伸縮して受け部材111が駆動される。
【0051】
図5の(b)に例示する構成においては、ねじロッド115の回転方向を切り替えることにより上記関節を移動させる方向を先端側向けと基端側向けとで切り替えることができる。従って、この場合は、上述したような付勢手段を設けること無く、パンタグラフ機構113を伸長させたり収縮させたりすることができる。
【0052】
尚、上述したプッシュロッド、プルロッド又はねじロッドを駆動する手段の具体例としては、例えば、電動モータ及び気圧又は液圧を利用するシリンダを始めとする各種駆動装置を上げることができる。
【0053】
〈効果〉
以上のように、第3装置においては、パンタグラフ機構がプッシュロッド、プルロッド又はねじロッドによって駆動されて変形することによって受け部材が駆動される。従って、公転軸AXに平行な方向(軸方向)におけるプッシュロッド若しくはプルロッドの移動量又はねじロッドの回転量(回転角度)によりパンタグラフ機構の伸縮量を精度良く制御することができる。その結果、ワークの縮径部の内周面に対する受け部材の外面の位置を精度良く制御することができるので、製品の縮径部の端部(管端)から切除された直後に勢い良く回転するスクラップをより確実に捕捉し、スクラップの回転を減衰及び/又は停止させることができる。このため、第3装置によれば、スクラップを離脱させること無く係止した状態のまま所定の位置まで移動させ、所定位置において排出する効果をより確実に達成することができる。
【0054】
《第4実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第4実施形態に係るスクラップ捕捉装置(以降、「第4装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0055】
これまで説明してきたように、第1装置乃至第3装置を始めとする本発明の種々の実施形態に係るスクラップ捕捉装置(本発明装置)によれば、製品の縮径部の端部(管端)からスクラップが切断される際に、受け部材の外面をスクラップの内周面に対して平行に維持しつつ、当該内周面に近接した位置に受け部材の外面を配置することができる。
【0056】
その結果、本発明装置によれば、製品の管端から切除された直後に勢い良く回転するスクラップを確実に捕捉し、スクラップの回転を減衰及び/又は停止させることができるので、スクラップを離脱させること無く係止した状態のまま所定の位置まで移動させ、所定位置において確実に排出することができる。
【0057】
ところで、公転するカッター刃によって製品の管端からスクラップを切除する際に縮径部の内面と受け部材とが接触していると、例えば管端の切断時にスピニング加工機及び/又はワークから受ける衝撃及び/又は振動等に起因して受け部材が摩耗したり破損したりする虞がある。
【0058】
〈構成〉
そこで、第4装置は、上述した第1装置乃至第3装置の何れかであって、上記カッター刃による上記管端の切断時において上前記縮径部の内周面と上記受け部材の上記外面との間に所定量の隙間が維持されることを特徴とする、スクラップ捕捉装置である。
【0059】
図6は、第4装置の構成の一例を示す模式図である。
図6の(a)は上述した第2装置に関する説明において参照した
図2に対応する模式図であり、
図6の(b)は
図6の(a)において太い破線によって囲まれている部分の拡大図である。
図6の(b)に例示するように、第4装置104においては、カッター刃133によって縮径部151の管端151Eが切断されてスクラップが切除される際に、縮径部151の内周面と受け部材111の外面111Sとの間に所定量(例えば、数mm)の隙間Gが維持されている。
【0060】
上記隙間Gの具体的な大きさは、切断時におけるスピニング加工機及び/又はワーク150の振動等による悪影響の低減と製品の管端から切断された直後に勢い良く回転するスクラップの確実な捕捉とを同時に達成するのに好適な大きさに設定される。このような隙間Gの好適な大きさは、例えば、第4装置104が組み込まれるスピニング加工機及び加工しようとするワーク150を用いる予備実験、並びに/又はスピニング加工機及びワーク150の仕様とスピニング加工条件とに基づくコンピュータシミュレーション等、種々の手法によって特定することができる。
【0061】
〈効果〉
以上のように、第4装置においては、カッター刃による製品の管端の切断時において縮径部の内周面と受け部材の外面との間に所定量の隙間が維持される。従って、第4装置によれば、公転するカッター刃によって製品の管端からスクラップを切除する際に縮径部の内面と受け部材とが接触していないので、例えば管端の切断時にスピニング加工機及び/又はワークから受ける衝撃及び/又は振動等に起因して受け部材が摩耗したり破損したりする虞を低減することができる。
【0062】
《第5実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第5実施形態に係るスクラップ捕捉装置(以降、「第5装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0063】
前述したように、第1装置乃至第4装置を始めとする本発明の種々の実施形態に係るスクラップ捕捉装置(本発明装置)においては、受け部材を径方向に進退自在に駆動することにより捕捉部の外径を自在に変更することができるので、ワークに合わせて捕捉部を組み替えること無く、異なる内径を有する縮径部(を有するワーク)に対応することができる。従って、本発明装置によれば、例えばスピニング加工機の設備コストの削減及び銘柄変更に伴う作業工数の低減等、製造コストの低減及び作業効率の向上を達成することができる。
【0064】
ところで、例えばスピニング加工によって成形しようとする製品の形状及びワークの形状等によっては、例えば生産銘柄の変更等に伴って、スピニング加工機が備える芯金を別の芯金(例えば、捕捉部が先端に形成されていない芯金又は異なる捕捉部が先端に形成されている芯金等)に交換する必要が生ずる場合がある。スピニング加工機において芯金を交換する場合、一般的には、スピニング加工機の基端側へと芯金が抜き取られ、スピニング加工機の基端側からロールヘッドの中心に形成された貫通孔に別の芯金が挿入される。
【0065】
上記のようにして芯金を交換しようとする場合、交換前の芯金の先端に設けられた捕捉部が当該芯金よりも太い(捕捉部の外径が芯金の外径よりも大きい)と、スピニング加工機の主軸に形成された貫通孔を通して基端側へと当該芯金を抜き取ることができない。従って、このような芯金を別の芯金と交換するためには、当該捕捉部を当該芯金から事前に取り外しておく等の措置が必要となる。その結果、例えば生産銘柄の変更等に要する作業工数、作業時間及びコストの増大等の問題に繋がる虞がある。
【0066】
〈構成〉
そこで、第5装置は、上述した第1装置乃至第4装置の何れかであって、上記受け部材が上記公転軸に最も近い位置にあるときの上記公転軸に直交する平面への垂直投影図において上記芯金の最外周面の内部に上記捕捉部の全体が収まることを特徴とする、スクラップ捕捉装置である。
【0067】
スピニングローラの公転軸に直交する平面への垂直投影図において受け部材が公転軸に最も近い位置にあるときに芯金の最外周面の内部に捕捉部の全体が収まるということは捕捉部を芯金よりも細くすることが可能であるということを意味する。この場合、スピニング加工機の主軸に形成された貫通孔を通して基端側へと当該芯金を抜き取ることができる。従って、当該捕捉部を当該芯金から事前に取り外しておく等の措置を必要とすること無く、当該芯金を別の芯金と交換することができる。その結果、例えば生産銘柄の変更等に要する作業工数、作業時間及びコストの増大等の問題を低減することができる。
【0068】
図7は、第5装置が備える捕捉部の構成の一例を示す模式図である。具体的には、
図7の(a)は、図示しないスピニングローラの公転軸AXに直交する方向(径方向又は放射方向)において観察される第5装置の模式的な側面図である。一方、
図7の(b)は、公転軸AXに平行な方向(軸方向)において先端側から観察される
図7の(a)に例示した捕捉部の模式的な正面図である。
【0069】
尚、
図7においては、第5装置の構成に関する理解を容易なものとすることを目的として、第5装置が組み込まれるスピニング加工機が備える芯金が破線によって描かれている。但し、スピニング加工機が備えるスピニングローラ及びカッター刃並びにスピニングローラ、芯金及びカッター刃を駆動するための機構は省略されている。また、受け部材を駆動するための機構も省略されている。更に、表面からは見えない内部構造も破線によって描かれている。
【0070】
図7に例示する第5装置105が備える捕捉部110が備える4つの受け部材111は、本体部112が備える一対のフォーク部112Fの間において図面に向かって上下方向(即ち、径方向)に伸縮可能に保持されたパンタグラフ機構113の両端にそれぞれ2つずつ取り付けられている。
図7に例示する捕捉部110においては、パンタグラフ機構113が最も収縮した状態にあり、4つの受け部材111が公転軸AXに最も近い位置にある。
図7の(b)に示すように、4つの受け部材111及び一対のフォーク部112Fの径方向において外側に面する表面(即ち、外面)は、当該状態において本体部112の外周面と概ね面一となるように構成されている。
図7の(a)に示したように、本体部112の横断面(公転軸AXに垂直な平面による断面)は芯金132の横断面と同じか又は芯金132の横断面よりも小さい。
【0071】
即ち、
図7に例示する捕捉部110は、受け部材111が公転軸AXに最も近い位置にあるときの公転軸AXに直交する平面への垂直投影図において芯金132の最外周面の内部に捕捉部110の全体が収まるように構成されている。このことは、捕捉部110を芯金132よりも細くすることが可能であるということを意味し、図示しないスピニング加工機の主軸に形成された貫通孔を通して基端側へと芯金132を抜き取ることができる。従って、捕捉部110を芯金132から事前に取り外しておく等の措置を必要とすること無く、芯金132を別の芯金と交換することができるので、例えば生産銘柄の変更等に要する作業工数、作業時間及びコストの増大等の問題を低減することができる。
【0072】
〈効果〉
以上のように、第5装置は、受け部材が公転軸に最も近い位置にあるときの公転軸に直交する平面への垂直投影図において芯金の最外周面の内部に捕捉部の全体が収まるように構成されている。即ち、第5装置においては、捕捉部を芯金よりも細くすることが可能である。従って、スピニング加工機の主軸に形成された貫通孔を通して基端側へと当該芯金を容易に抜き取ることができる。その結果、捕捉部を芯金から事前に取り外しておく等の措置を必要とすること無く芯金を別の芯金と交換することができるので、例えば生産銘柄の変更等に要する作業工数、作業時間及びコストの増大等の問題を低減することができる。
【0073】
《第6実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第6実施形態に係るスクラップ捕捉装置(以降、「第6装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0074】
前述したように、第1装置乃至第5装置を始めとする本発明の種々の実施形態に係るスクラップ捕捉装置(本発明装置)によれば、製品の縮径部の端部(管端)からスクラップが切断される際に、受け部材の外面をスクラップの内周面に対して平行に維持しつつ、当該内周面に近接した位置に受け部材の外面を配置することができる。その結果、製品の管端から切除された直後に勢い良く回転するスクラップを確実に捕捉し、スクラップの回転を減衰及び/又は停止させることができるので、スクラップを離脱させること無く係止した状態のまま所定の位置まで移動させ、所定位置において確実に排出することができる。
【0075】
ところで、スピニング加工の終了後に製品の縮径部の端部(管端)をカッター刃によって切断しスクラップを切除する際には、カッター刃の少なくとも先端は製品の管端の外周面から内周面へと到達する。従って、例えば管端の切断時にスピニング加工機及び/又はワークから受ける衝撃及び/又は振動等に起因してカッター刃が受け部材に接触して、カッター刃及び/又は受け部材が摩耗したり破損したりする虞がある。
【0076】
尚、前述した第4装置においては、カッター刃による製品の管端の切断時において縮径部の内周面と受け部材の外面との間に所定量の隙間が維持されることにより、管端の切断時にスピニング加工機及び/又はワークから受ける衝撃及び/又は振動等に起因して受け部材が摩耗したり破損したりする虞を低減することができる。しかしながら、管端の切断時に受ける衝撃及び/又は振動等の大きさによっては、上記のように縮径部の内周面と受け部材の外面との間に所定量の隙間が維持されていても、カッター刃が受け部材に接触して、カッター刃及び/又は受け部材が摩耗したり破損したりする可能性がある。
【0077】
〈構成〉
そこで、第6装置は、上述した第1装置乃至第5装置の何れかであって、上記受け部材の上記外面において、少なくとも上記カッター刃による上記管端の切断時に上記縮径部を間に挟んで上記カッター刃に対向する領域に、その他の領域よりも前記縮径部の内周面との間の間隔がより大きい領域である退避領域が形成されていることを特徴とする、スクラップ捕捉装置である。
【0078】
退避領域は、受け部材の外面において、少なくともカッター刃による管端の切断時に縮径部(を構成するワークの管壁)を間に挟んでカッター刃に対向する領域に形成される。換言すれば、退避領域は、受け部材の径方向において外側に面する表面(外面)の管端の切断時にカッター刃の公転軌道に対向する領域を含む位置に形成される。
【0079】
退避領域の形状(例えば、深さ及び幅等)は、例えば、カッター刃の形状、カッター刃による製品の管端の切断時における縮径部の内周面と受け部材との間の隙間の大きさ、並びにカッター刃による製品の管端の切断時に想定される衝撃及び/又は振動の大きさ等に応じて適宜定めることができる。典型的には、退避領域は、受け部材の外面の少なくともカッター刃による管端の切断時におけるカッター刃の公転軌道に対向する領域に形成された窪み又は溝の底面によって構成される。或いは、退避領域は、受け部材の外面に形成された段差を構成する低い方の面(公転軸AXに近い方の面)であって、受け部材の外面の少なくともカッター刃による管端の切断時におけるカッター刃の公転軌道に対向する領域を含む面によって構成される。
【0080】
図8は、第6装置の構成の一例を示す模式図である。具体的には、
図8の(a)は、図示しないスピニングローラの公転軸AXに直交する方向(径方向又は放射方向)において観察される第6装置の模式的な側面図である。一方、
図8の(b)は、
図8の(a)に例示する第6装置106が備える捕捉部110の模式的な拡大図である。
【0081】
尚、
図8の(a)においては、第6装置の構成に関する理解を容易なものとすることを目的として、第6装置が組み込まれるスピニング加工機が備えるカッター刃及び芯金並びに当該スピニング加工機によってスピニング加工が施されるワークが破線によって描かれている。また、スピニング加工機が備えるスピニングローラ並びにスピニングローラ、芯金及びカッター刃を駆動するための機構は省略されている。
【0082】
図8に例示する第6装置106が備える捕捉部110を構成する受け部材111の径方向において外側に面する表面(外面)の管端の切断時におけるカッター刃133の公転軌道に対向する領域には、所定の深さ及び幅を有する窪み111Cが形成されている。従って、製品の縮径部の端部(管端)をカッター刃によって切断する際に管端の外周面から内周面へと到達するカッター刃133が受け部材111に接触して、カッター刃133及び/又は受け部材111が摩耗したり破損したりする可能性を低減することができる。即ち、
図8に例示する第6装置106においては、窪み111Cの底面(公転軸AXに最も近い面)によって上述した退避領域が構成されている。但し、上述したように、退避領域は、このような窪みの底面のみならず、溝の底面によって構成されていてもよく、或いは受け部材の外面に形成された段差を構成する低い方の面によって構成されていてもよい。
【0083】
〈効果〉
以上のように、第6装置においては、受け部材の外面において、少なくともカッター刃による管端の切断時に縮径部を間に挟んでカッター刃に対向する領域に、その他の領域よりも縮径部の内周面との間の間隔がより大きい領域である退避領域が形成されている。従って、例えば管端の切断時にスピニング加工機及び/又はワークから受ける衝撃及び/又は振動等に起因してカッター刃が受け部材に接触してカッター刃及び/又は受け部材が摩耗したり破損したりする虞を低減することができる。
【実施例】
【0084】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例に係るスクラップ捕捉装置(以降、「実施例装置」と称呼される場合がある。)につき、図面を参照しながら、以下に詳しく説明する。
【0085】
図9は、実施例装置が備える捕捉部においてパンタグラフ機構を介して受け部材が駆動される様子を説明する模式図であり、前述した第2装置に関する説明において参照した
図3に対応する。即ち、
図9に例示する実施例装置は、前述した第2装置と同様に、受け部材がパンタグラフ機構を介して駆動されることを特徴とするスクラップ捕捉装置である。尚、
図9においては、
図3と同様に、図面の都合上、(b)にのみ符号が付されている。また、
図9に例示する実施例装置107が備える捕捉部110を構成する受け部材111及びパンタグラフ機構113等の構成並びにパンタグラフ機構113を伸縮させるための駆動機構については、前述した第2装置におけるものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0086】
図9の(a)は、実施例装置107が備える捕捉部110を構成するパンタグラフ機構113が収縮して、径方向(放射方向)において内側に受け部材111が配置された状態を示す。一方、
図9の(b)は、パンタグラフ機構113が伸長して、径方向(放射方向)において外側に受け部材111が配置された状態を示す。このように、実施例装置107によれば、所定の関節を軸方向に駆動してパンタグラフ機構113を径方向に伸縮させることにより、より確実に受け部材111の外面111Sを公転軸AXに対して平行に維持しつつ径方向において進退自在に受け部材111を駆動することができる。
【0087】
従って、実施例装置107によれば、製品の管端から切除された直後に勢い良く回転するスクラップを確実に捕捉し、スクラップの回転を減衰及び/又は停止させることができる。このため、実施例装置107によれば、スクラップを離脱させること無く係止した状態のまま所定の位置まで移動させ、所定位置において確実に排出することができる。
【0088】
次に、
図10は、
図9の(a)に例示した実施例装置107の外観を示す模式的な斜視図である。
図10に示すように、実施例装置107が備える捕捉部110においては、4つの受け部材111及び一対のフォーク部112Fの径方向において外側に面する表面(外面)が本体部112の外周面と概ね面一となるように構成されている。従って、本体部112の横断面(公転軸AXに垂直な平面による断面)が図示しない芯金の横断面と同じか又は芯金の横断面よりも小さい場合、当該捕捉部110は、受け部材111が公転軸AXに最も近い位置にあるときの公転軸AXに直交する平面への垂直投影図において芯金132の最外周面の内部に捕捉部110の全体が収まる。
【0089】
即ち、実施例装置107は、前述した第5装置と同様に、受け部材が公転軸に最も近い位置にあるときの公転軸に直交する平面への垂直投影図において芯金の最外周面の内部に捕捉部の全体が収まることを特徴とするスクラップ捕捉装置である。従って、実施例装置107においては、捕捉部を芯金よりも細くすることが可能であるので、スピニング加工機の主軸に形成された貫通孔を通して基端側へと当該芯金を容易に抜き取ることができる。その結果、捕捉部を芯金から事前に取り外しておく等の措置を必要とすること無く芯金を別の芯金と交換することができるので、例えば生産銘柄の変更等に要する作業工数、作業時間及びコストの増大等の問題を低減することができる。
【0090】
次に、
図11は、
図9の(b)に例示した実施例装置107の外観を示す模式的な斜視図である。
図11に示すように、実施例装置107が備える捕捉部110においては、本体部112の先端側の表面から先端側へ向かって延在する一対のフォーク部112Fの図面に向かって上側及び下側に、パンタグラフ機構113を介して2つの受け部材111がそれぞれ接続されている。
図11に例示するパンタグラフ機構113は、基端側に位置する3つの関節(ピボット)のうち中央の関節を回動可能に接続する軸が挿通され公転軸AXに平行な方向(軸方向)に摺動可能に構成された部材であるスライダ112Sを備える。スライダ112Sは、上記関節の軸に平行な方向における両端にローラを軸支しており、図示しないプッシュロッド等に接続されて、フォーク部112Fに形成されたスリット状の貫通孔(スライド穴)の内部において公転軸AXに平行な方向(軸方向)に摺動可能に構成されている。
【0091】
図11に例示するパンタグラフ機構113は、上記のように摺動するスライダ112Sによって上記関節の位置を(黒塗りの両矢印によって示す)軸方向に変化させることにより径方向(放射方向)に伸縮することができるように構成されている。即ち、実施例装置107は、前述した第3装置と同様に、パンタグラフ機構がプッシュロッド、プルロッド又はねじロッドによって駆動されて変形することにより受け部材を駆動することを特徴とする、スクラップ捕捉装置である。
【0092】
従って、実施例装置107においては、公転軸AXに平行な方向(軸方向)におけるプッシュロッド若しくはプルロッドの移動量又はねじロッドの回転量(回転角度)によりパンタグラフ機構の伸縮量を精度良く制御することができる。その結果、ワークの縮径部の内周面に対する受け部材の外面の位置を精度良く制御することができるので、製品の縮径部の端部(管端)から切除された直後に勢い良く回転するスクラップをより確実に捕捉し、スクラップの回転を減衰及び/又は停止させることができる。このため、実施例装置107によれば、スクラップを離脱させること無く係止した状態のまま所定の位置まで移動させ、所定位置において排出する効果をより確実に達成することができる。
【0093】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び実施例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び実施例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0094】
101a,101b,101c,102a,102b,103a,103b,104,105,106,107…スクラップ捕捉装置、110…捕捉部、111…受け部材、111C…窪み、112…本体部、112F…フォーク部、112S…スライダ、113…パンタグラフ機構、114…プッシュロッド又はプルロッド、115…ねじロッド、132…芯金、133…カッター刃、150…ワーク、151…縮径部、151E…管端、AX…公転軸、及びG…隙間。