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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】ドライアイス噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B24C 5/04 20060101AFI20230303BHJP
   B24C 1/00 20060101ALI20230303BHJP
   B24C 11/00 20060101ALI20230303BHJP
   B08B 7/00 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
B24C5/04 A
B24C1/00 A
B24C11/00 E
B08B7/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018106656
(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公開番号】P2019209414
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】506219889
【氏名又は名称】株式会社クールテクノス
(73)【特許権者】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】和田 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】和田 好史
(72)【発明者】
【氏名】赤木 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 臣哉
(72)【発明者】
【氏名】石井 辰弥
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-029849(JP,U)
【文献】実開平05-049258(JP,U)
【文献】特開2013-226628(JP,A)
【文献】実開平07-007771(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 5/04
B24C 1/00
B24C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライアイス粒子をキャリアガスに合流させた噴射体を対象物に向けて噴射するドライアイス噴射用のノズルを備えるドライアイス噴射装置であって、
前記ノズルは、
所定の軸線方向に延びる筒状のノズル本体を有し、
前記ノズル本体の軸線方向一端側に設けられた噴射口形成部に、前記噴射体を噴射する噴射口が形成されており、
前記噴射口が、
前記ノズルの外側において前記軸線方向と交差する開口幅方向に延びるように形成された外側開口と、
前記ノズルの内側に形成される内側開口とを有し、
前記外側開口と前記内側開口とをつなぐ貫通孔として形成されており、
前記ノズル本体の内側において前記軸線上に規定された基準点Pを起点として前記内側開口を経て前記外側開口に至る経路において、前記内側開口から前記外側開口に至る部分の経路長が、前記軸線位置における経路長よりも前記噴射口の前記開口幅方向両端側における経路長の方が小さく、
前記噴射口形成部の裏面をなす内壁面が、前記軸線方向に膨出する円錐状である、
とを特徴とするドライアイス噴射装置
【請求項2】
請求項に記載のドライアイス噴射装置において、
前記内側開口が、基準点Pを中心として角度θ1の開口範囲に亘って開口しており、
前記外側開口が、前記内側開口の開口範囲を含み、前記角度θ1よりも大きい角度θ2の開口範囲に亘って開口している、
ことを特徴とするドライアイス噴射装置
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドライアイス噴射装置であって、
噴射装置本体と、液化二酸化炭素供給部と、キャリアガス供給部と、を備え、
前記噴射装置本体は、前記ノズルと、ドライアイス生成管と、合流部材と、を含み、
前記ドライアイス生成管は、その内部が、前記液化二酸化炭素供給部から供給される液化二酸化炭素が断熱膨張してドライアイス粒子を形成する膨張空間として機能し、
前記合流部材は、内部に前記ドライアイス生成管が設けられ、該ドライアイス生成管から流出するドライアイス粒子と、前記キャリアガス供給部から供給されるキャリアガスとを合流する合流空間を有し、
前記ドライアイス生成管から流出するドライアイス粒子は、前記ドライアイス生成管の周囲から前記噴射口に向かって流れるキャリアガスの流れに乗って前記噴射口から噴射される、
ことを特徴とするドライアイス噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライアイス粒子を対象物に向けて噴射することで対象物の表面の洗浄等を行うドライアイス噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液化二酸化炭素を断熱膨張させて生成したドライアイス粒子をキャリアガスの流れに導入して噴射するドライアイス噴射装置が知られている。
【0003】
ドライアイス噴射装置では、液化炭酸ガス容器から供給される液化二酸化炭素をドライアイス生成管内で断熱膨張させてドライアイスを生成し、生成したドライアイスをドライアイス噴射用ノズルに供給されるキャリアガスの流れに導入して噴射する。
【0004】
ドライアイス噴射装置では、噴射対象に合わせて噴射口の大きさや形状が設計される。例えば、下記特許文献1では、吐出口の形状をスリット口とした噴射ガンが開示されている。また、特許文献1には、スリット口とした吐出口により、広巾の対象物に対する走査を行う場合に便利であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平05-49258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、ドライアイス噴射装置では、噴射口から噴射されるガスの圧力(噴射圧)は、ノズルの軸線中心に沿って噴射されるガスほど噴射圧が強く、ノズルの軸線となす角度が大きくなるほど噴射圧が弱くなる。また、噴射口の形状をスリット状にして扁平状の噴射範囲を形成させた場合には、噴射範囲をなす角度が広がるに従って、このような噴射圧の偏りが顕著となる。
【0007】
そのため、従来、扁平状の幅広とされた噴射範囲とされたドライアイス噴射装置のノズルでは、噴射圧の強い部分が噴射範囲の中央に偏るため、噴射範囲の中央を対象物に当てながら洗浄等の処理を行う必要が生じる。その結果、特許文献1の装置では、幅広の範囲でガスを噴射することができるものの、噴射範囲の両端では噴射圧が弱くなり、何度も噴射範囲を往復させ、噴射範囲をオーバーラップさせながら処理が行われていた。そのため、従来のノズルでは、幅広に拡散された噴射範囲の全域を十分に活用するには至らず、処理の効率を十分に向上させることができないといった問題があった。
【0008】
そこで本発明は、ドライアイス粒子をキャリアガスに合流させた噴射体を広角で噴射させつつ、処理効率を向上させることができるノズル、及びドライアイス噴射装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題について、本願の発明者らが噴射口の形状と、噴射範囲における噴射圧との関係について鋭意検討したところ、噴射口を形成する部材の厚みを調整することで、噴射体が拡散されて噴射される方向(拡散方向)において噴射圧の調整を行うことができるとの知見が得られた。
【0010】
上述の知見に基づき提供される本発明の一態様に係るノズルは、噴射体を対象物に向けて噴射するドライアイス噴射用のノズルであって、所定の軸線方向に延びる筒状のノズル本体を有し、前記ノズル本体の軸線方向一端側に設けられた噴射口形成部に、前記噴射体を噴射する噴射口が形成されている。前記噴射口は、前記ノズルの外側において前記軸線方向と交差する開口幅方向に延びるように形成された外側開口と、前記ノズルの内側に形成される内側開口とを有し、前記外側開口と前記内側開口とをつなぐ貫通孔として形成されている。前記ノズル本体の内側において前記軸線上に規定された基準点Pを起点として前記内側開口を経て前記外側開口に至る経路において、前記内側開口から前記外側開口に至る部分の経路長が、前記開口幅方向の各部において相違している。
【0011】
前記構成を備えるノズルでは、ノズル本体の噴射口形成部に、軸線方向と交差する開口幅方向に延びるように形成された外側開口が設けられている。そのため、このノズルによれば、ノズル本体内に導入された噴射体を幅広の噴射範囲を形成するように噴射させることができる。また、噴射口において内側開口から外側開口に至る部分の経路長を開口幅方向の各部において相違させていることで、噴射口を通過する際に噴射体に作用する通過抵抗を、開口幅方向の各部において相違させることができる。これにより噴射体の噴射範囲内において、噴射圧の分布を最適化することができる。すなわち、前記構成を備えるノズルは、拡散方向における噴射圧の強弱を、噴射範囲の一端側に偏らせる、あるいは噴射範囲の中央の噴射圧を弱めて噴射範囲の両端において噴射圧を強め、拡散方向において噴射圧を略均一とするなど、噴射圧の調整を行い得る。その結果、広角の噴射範囲としつつ、対象物の処理を効率的に行い得る。
【0012】
ここで、本願の発明者らは、拡散方向において略均一な噴射圧とすることができるノズルについて検討した。その結果、噴射口を形成する部材を、噴射口の中心付近の厚みを大きくし、噴射口の両端付近の厚みを小さくするなどして、噴射口の前記開口幅方向両端側における経路長が、軸線位置における経路長よりも小さくなるようにすることで、噴射口中央と噴射口両側とで噴出圧のバランスが取れ、拡散方向において略均一な噴射圧とすることができるとの知見が得られた。
【0013】
上述の知見に基づき提供される本発明の一態様に係るノズルは、噴射口の前記開口幅方向両端側における前記経路長が、前記軸線位置における前記経路長よりも小さいこと、を特徴とするものである。
【0014】
上述の構成によれば、噴射口中央と噴射口両側とで噴出圧のバランスを取り、拡散方向において略均一な噴射圧とすることができる。これにより、幅広とされた噴射範囲において、略均一な噴出圧として対象物の洗浄等の処理を行うことができる。
【0015】
本発明の一態様に係るノズルは、前記噴射口形成部の裏面をなす内壁面が、前記軸線方向に膨出する半球状のものであることが望ましい。
【0016】
本発明の一態様に係るノズルは、前記噴射口形成部の裏面をなす内壁面が、前記軸線方向に膨出する円錐状のものであってよい。
【0017】
上述のとおり、本願の発明者らは、拡散方向における噴出圧の課題について、噴射口形成部の厚みを調整するなどして、内側開口から外側開口に至る部分の経路長を調整することにより、噴射圧を調整可能であることを見いだした。ここで、本願の発明者らは、噴射範囲の高さ方向(噴射口の開口幅方向に対して交差する方向)への広がりを調整することについてさらに検討した。具体的には、噴射範囲が高さ方向に広がると、噴射圧が上下方向に分散して処理効率が低下することが想定されるため、噴射範囲の高さの広がりを小さくしてより薄い扁平状の噴射範囲とすることを検討した。
【0018】
かかる知見に基づき、発明者らがさらに鋭意検討したところ、噴射された噴射体が乱流状態になるに連れ、噴射範囲が高さ方向(上下方向)に広がる懸念があることが判明した。また、これに対して、噴射された噴射体に噴射口両側からエアの巻き込みを発生させると、噴射された噴射体が層流化しやすく、噴射範囲の高さ方向の広がりを抑え、噴射範囲をより扁平状となる傾向にあることが見いだされた。さらに噴射口両側からのエアの巻き込みをどのように発生させるかについて、種々の構成について検討した結果、噴射口形成部の外側の開口(外側開口)を噴射範囲を超えて形成することにより、エアの巻き込みを発生させることができるとの知見が得られた。
【0019】
上述の知見に基づき提供される本発明に係るノズルは、前記内側開口が、基準点Pを中心として角度θ1の開口範囲に亘って開口しており、前記外側開口が、前記内側開口の開口範囲を含み、前記角度θ1よりも大きい角度θ2の開口範囲に亘って開口している、ことを特徴とするものである。
【0020】
上述の構成によれば、噴射された噴射体に噴射口両側からエアの巻き込みを発生させて、噴射された噴射体を層流化させ、噴射範囲の高さ方向の広がりを抑制することができる。これにより、本発明のノズルは、噴射圧が上下方向に分散して処理効率が低下することを抑制し、さらに効率的な処理を実現することができる。
【0021】
本発明に係るドライアイス噴射装置は、上述した構成のノズルを備えること、を特徴とするものである。
【0022】
本発明に係るドライアイス噴射装置によれば、噴射範囲を幅広に形成しつつ、拡散方向に噴射圧を調整することができる。これにより、本発明のドライアイス噴射装置は、拡散方向における噴射圧の強弱を、噴射範囲の一端側に偏らせる、あるいは噴射範囲の中央の噴射圧を弱めて噴射範囲の両端において噴射圧を強め、拡散方向において噴射圧を略均一とするなど、噴射圧の調整を行い得る。その結果、本発明のドライアイス噴射装置は、広角の噴射範囲としつつ、対象物の処理を効率的に行い得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ドライアイス粒子をキャリアガスに合流させた噴射体を広角で噴射させつつ、処理効率を向上させることができるノズル、及びドライアイス噴射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係るドライアイス噴射装置の要部を示す部分断面図である。
図2図1のドライアイス噴射装置のノズルを示す斜視図である。
図3図2のノズルの正面図である。
図4図3のノズルのA-A’線断面図である。
図5図3のノズルのB-B’線断面図である。
図6図2のノズルの噴射角度及び開口角度を示す図である。
図7図2のノズルの噴射口及び噴射口形成部の厚みを示す斜視図である。
図8図2のノズルの噴射口の両端のエアの巻き込みを示す概念図である。
図9】(a)は図2のノズルの噴射範囲の高さを示す概念図、(b)は噴射体に乱流が発生した場合を示す参考図である。
図10】本発明の第二実施形態に係るノズルを示す正面図である。
図11図10のノズルのE-E’線断面図である。
図12図10のノズルのF-F’線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<ドライアイス噴射装置の全体構成について>
以下、本発明の実施の形態に係るドライアイス噴射装置について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はノズルに特徴を有するものであるが、本発明の実施形態に係るノズルの説明に先立って、ドライアイス噴射装置の全体構成について説明する。図1に示すように、ドライアイス噴射装置1は、噴射装置本体2、液化二酸化炭素供給部3、キャリアガス供給部4等を備えている。
【0026】
噴射装置本体2は、図1に示すように、合流部材8、ドライアイス生成管10、ノズル20等を備えている。ノズル20の詳細については後で詳述する。
【0027】
合流部材8は、キャリアガス供給路7を通じて供給されるキャリアガスと、後述するドライアイス生成管10から流出するドライアイス粒子と合流する合流空間11を内部に有する。本実施形態ではキャリアガスとしてドライエアが使用されている。なお、キャリアガスには、露点温度の低いガスを使用することができ、上記ドライエアの他、窒素ガス、炭酸ガスなどを使用してもよい。
【0028】
また、合流部材8内には、図1に示すように、2重管からなるドライアイス生成管10が設けられている。ドライアイス生成管10は、基端部がオリフィス板13を介して液化二酸化炭素供給路6に接続されている。
【0029】
オリフィス板13は、1又は複数の噴出孔16(本実施形態では、内径0.1mm~0.2mmの噴出孔16が2、3カ所形成されている。)が形成された薄板(例えば板厚1mmの円板)で構成されている。このオリフィス板13は、液化二酸化炭素供給路6の下流端とドライアイス生成管10との境界に設けられている。
【0030】
オリフィス板13に形成された噴出孔16は、液化二酸化炭素供給路6から供給される液化二酸化炭素を噴出する。なお、液化二酸化炭素は、低温の液化二酸化炭素である。
【0031】
ドライアイス生成管10は、内管101と、内管101の外側に隙間を介して設けられた外管102とを備えている。内管101の先端部101aは、外管102の先端部102aより所定の長さ先端側に位置している。本実施形態では、外管102の基端部は内管101の外周面に固定されている。
【0032】
ドライアイス生成管10の内管101は、その内部が膨張空間10aとして機能する。また、オリフィス板13の噴出孔16から膨張空間10aに噴出された液化二酸化炭素が断熱膨張して固いドライアイス粒子を形成するように、ドライアイス生成管10内の上流部の断面積は、オリフィス板13に形成された噴出孔16の断面積に対してある程度大きく設定されている。
【0033】
キャリアガス供給路7は、合流部材8の内部に形成された内部キャリアガス供給路7aと、合流部材8の外部に形成された外部キャリアガス供給路7bとで構成されている。
【0034】
内部キャリアガス供給路7aは、ドライアイス生成管10に向かってキャリアガスを供給するように形成されている。本実施形態では、内部キャリアガス供給路7aは直線流路を形成し、直管状のドライアイス生成管10に向かってキャリアガスを所定鋭角で供給する。換言すると、ドライアイス生成管10の中心線に対する、内部キャリアガス供給路7aの中心線の角度が所定鋭角(図2の例では30度)となっている。なお、上記中心線同士のなす角度は所定鋭角であることが望ましいが、略90度又は所定鈍角であってもよい。
【0035】
合流空間11では、キャリアガス供給路7から供給されるキャリアガスと、ドライアイス生成管10の内管101内で生成されたドライアイス粒子とが合流する。この合流空間11から、噴射装置本体2のノズル20の先端の噴射口30に至るまでノズル20内に噴射路18が形成されており、合流空間11でキャリアガスに合流したドライアイス粒子はキャリアガスの流れに乗って加速され噴射口30から対象物に向かって噴射される。
【0036】
外部キャリアガス供給路7bは、空気圧源(図示を省略)から合流部材8に至るまで形成され、キャリアガスを噴射装置本体2の合流部材8内に供給するようになっている。
【0037】
以上の構成を備えるドライアイス噴射装置1において、運転開始のための所定操作がなされると、液化二酸化炭素供給路6を介して液化二酸化炭素がオリフィス板13の噴出孔16に送液され、液化二酸化炭素は、噴出孔16からドライアイス生成管10の内管101内の膨張空間10aに噴出される。そして、液化二酸化炭素は、膨張空間10a内で断熱膨張してドライアイス粒子となる。また同時に、キャリアガス供給路7を介してキャリアガスがドライアイス生成管10の外管102に向かって供給され、噴射路18を通って噴射口30から噴射される。ドライアイス生成管10の内管101から流出するドライアイス粒子は、合流空間11で噴射口30に向かって流れるキャリアガスに混入し、そのキャリアガスの流れに乗って、噴射口30から対象物に向かって噴射される。
【0038】
<第一実施形態に係るノズルについて>
続いて、本発明の第一実施形態に係るノズル20について説明する。図1及び図2に示すとおり、ノズル20には、ドライアイス粒子をキャリアガスに合流させた噴射体を噴射させる噴射口30が形成されている。
【0039】
ノズル20は、図2図4に示すような噴射口30を有する。詳細については後述するが、噴射口30は、ノズル20の外側に設けられた外側開口32を有する。外側開口32は、ノズル20を径方向に横断するような細長の形状(スリット状)とされている。そのため、図2に示すとおり、ノズル20は、軸線Lに沿って噴射路18内で加速される噴射体をノズル20の径方向に拡散させて噴射させる広角ノズルとして機能する。言い換えれば、ノズル20は、噴射体をノズルの軸線Lと角度をなすように180度を超えない範囲で拡散させて噴射させる噴射範囲を形成することができる。
【0040】
以下、ノズル20の各部の構成について詳述する。なお、以下の説明において、ノズル20の軸線Lに沿う方向を、単に「軸線方向X」と記載して説明する場合がある。また、噴射体がノズルの径方向に拡散されて噴射される角度を、単に「噴射角度θ1」と記載して説明する場合がある。さらに噴射体が拡散されて噴射される範囲を、単に「噴射範囲R1」と記載して説明する場合がある。
【0041】
図1及び図2に示すとおり、ノズル20は、ノズル本体22及び噴射口形成部24を有している。本実施形態のノズル20は、筒状に形成されたノズル本体22の先端部に一体的に形成され、図2に示すような外観を備えている。また、ノズル20は、ナット等の着脱部材により噴射装置本体2に対して取り付けられ、噴射装置本体2に対して着脱可能とされている。
【0042】
ノズル20と噴射装置本体2との接続構造は、種々選択可能である。例えば、ノズル20は、噴射装置本体2の先端に直接形成されたものであってもよい。また、ノズル20は、ナット等の着脱部材を用いず、噴射装置本体2に着脱可能なものであっても良い。例えば、ノズル20は、ノズル20及び噴射装置本体2にねじを形成して、相対的に回動させることにより着脱可能としてもよい。
【0043】
ノズル本体22は、筒状の形状とされている。ノズル本体22は、断面形状がいかなる形状の筒体によって構成されていても良いが、本実施形態では円筒形とされている。図4に示すとおり、ノズル本体22は、外周面22aが直径D1とされ、内周面22bが直径D2とされている。
【0044】
図1及び図2に示すとおり、噴射口形成部24は、ノズル20において軸線方向Xの先端に設けられている。噴射口形成部24は、ノズル本体22内に導入された噴射体を噴射させる噴射口30が形成された部分である。
【0045】
図4に示すとおり、噴射口形成部24は、軸線方向Xの先端側(外側)の先端面24aと、先端面24aの裏面をなす内壁面24bの双方が、軸線方向Xの先端に向けて膨出する形状とされている。また、先端面24aは、直径D1の半球状の形状とされ、内壁面24bは、直径D3の円錐状の形状とされている。
【0046】
より具体的には、図4に示すとおり、先端面24aは、ノズル20を噴射口形成部24とノズル本体22とに分断したと仮定した場合の境目Mを境界として、軸線方向Xに膨出する半球状の形状とされている。また、内壁面24bは、軸線方向Xに膨出する円錐状の形状とされている。別の言い方をすれば、噴射口形成部24の内壁面24bは、ノズル20の先端に向けて縮径するテーパー状の形状とされている。
【0047】
なお、以下の説明において、内壁面24bをなす円錐の最も遠心側を通過し、且つ、当該円錐の母線に対して直交する線を「仮想線I」(図4参照)としたときに、仮想線Iが軸線L上において交差する。以下の説明においては、この交点を、単に「基準点P」と記載して説明する場合がある。
【0048】
先端面24a及び内壁面24bの軸線方向Xへの膨出の程度について、さらに詳細に説明する。図4に示すとおり、先端面24aは、直径D1とされ、基準点Pからの離間距離が距離C1とされている。また、内壁面24bは、直径D3とされ、基準点Pから中心点(円錐形状と軸線Lとが交差する点)までの離間距離が距離C2とされている。直径に対する基準点Pからの離間距離の比率を「膨出度」とすると、先端面24aの膨出度N1よりも内壁面24bの膨出度N2のほうが小さい(N2<N1)。噴射口形成部24は、内壁面24bよりも先端面24aの膨出度を大きくすることにより、後述する開口幅方向Wにおいて中心部の厚みT1(経路長)を開口幅方向Wにおける両端部の厚みT2(経路長)よりも大きいものとしている。
【0049】
噴射口30は、噴射体を噴射させる貫通孔として、噴射口形成部24に形成されている。図4及び図5に示すとおり、噴射口30は、ノズル20の外側であって先端面24aに形成される外側開口32と、ノズル20の内側であって内壁面24bに形成される内側開口34とを備える貫通孔として形成されている。
【0050】
図2及び図5に示すとおり、外側開口32は、軸線方向Xと交差する開口幅方向Wに延びる細長の形状とされている。また、外側開口32は、先端面24aがなす半球面における周方向全域に亘り形成されている。別の言い方をすれば、外側開口32は、ノズル20の先端を横断するように、略180度の角度をなすように形成されている。なお、以下の説明において、外側開口32がなす角度を、単に「開口角度θ2」と記載して説明する場合がある。
【0051】
図5及び図7に示すとおり、内側開口34は、軸線方向Xと交差する開口幅方向Wに延びる細長の形状とされている。内側開口34は、内壁面24bがなす錐面を分断するように形成されている。
【0052】
図4に示すとおり、先端面24aの直径D1はノズル本体22の外周面22aと略一致する。また、内壁面24bの直径D3は、ノズル本体22の内周面22bの直径D2よりも小さい(D3<D2)。そのため、ノズル20の径方向の距離において、外側開口32の開口径は、内側開口34の開口径よりも大きい。
【0053】
また、ノズル本体22の内周面22bの直径D2に対して、噴射口形成部24の内壁面24bの直径D3は縮径されている(D3<D2)。内周面22bと内壁面24bとの直径差により、ノズル20の内面には、段差部26が形成されている。
【0054】
図5に示すとおり、噴射口形成部24は、先端面24aと内壁面24bとの間に、所定の厚みを有する。ノズル本体22の内側において軸線L上に規定された基準点Pを起点として内側開口34を経て外側開口32に至る経路を想定した場合、噴射口形成部24の厚みは、内側開口34から外側開口32に至る部分の経路をなす部分の長さ(経路長)に当たる。噴射口形成部24は、基準点Pを基準として規定される外側開口32から内側開口34までの厚み(経路長)は、開口幅方向Wの各部において異なるものとされている。
【0055】
具体的には、噴射口形成部24の厚みは、図5に示すとおり、開口幅方向Wにおける両端部の厚みT2が、開口幅方向Wにおける中心部の厚みT1よりも小さい(T2<T1)。別の言い方をすれば、噴射口30を取り囲む面は、基準点Pから開口幅方向Wの中心部(軸線L側の位置)では内側開口34から外側開口32までの距離(経路長)が大きく、開口幅方向Wの両端部(軸線Lから離れた位置)では内側開口34から外側開口32までの距離(経路長)が比較的小さい。
【0056】
そのため、噴射口30から噴射される噴射体の噴射圧は、噴射口30の開口幅方向Wの中心部を通過する場合と、噴射口30の開口幅方向Wの両端部を通過する場合とで、噴射口形成部24の面により受ける摩擦が異なる。具体的には、図7に示すとおり、開口幅方向Wの中心部では内側開口34から外側開口32までの距離(厚みT1)が比較的大きいため、噴射口30から噴射される噴射体は、噴射口形成部24の面との摩擦により噴射圧の減衰率が高くなる。一方、開口幅方向Wの両端部では内側開口34から外側開口32までの距離(厚みT2)が比較的小さいため、噴射口30から噴射される噴射体は、噴射口形成部24の面との摩擦により噴射圧の減衰率が低くなる。
【0057】
これにより、ノズル20は、噴射口30の開口幅方向Wにおいて、両端部の噴射圧を高く維持して、中心部の噴射圧を低減させる。その結果、ノズル20は、噴射範囲R1において、噴射圧が高くなる傾向にある中心部の噴射圧を抑え、噴射範囲R1において略均一な噴射圧とすることができる。
【0058】
また、上述のとおり、ノズル20は、180度の角度を超えない噴射角度θ1において噴射体を噴射可能とされている(図6参照)。さらに、ノズル20は、外側開口32が略180度の角度をなす開口角度θ2とされている。言い換えれば、ノズル20は、噴射角度θ1を超える開口角度θ2を形成するように外側開口32が形成されている。
【0059】
これにより、ノズル20は、噴射体を噴射口30から噴射させた際に、外側開口32の両端近傍でエアの巻き込みを発生させる(図8参照)。また、外側開口32の近傍でエアの巻き込みが発生すると、噴射された噴射体が層流化しやすい傾向にある。これにより、図9(a)に示すとおり、ノズル20は、噴射された噴射体に乱流が発生する(図9(b)参照)ことを抑制し、噴射範囲R1が上下方向に広がって噴出圧が分散することを抑制することができる。
【0060】
<第二実施形態>
続いて、本発明の第二実施形態に係るノズル120について説明する。図11に示すとおり、ノズル120は、ノズル本体22、及び噴射口形成部124を有している。なお、ノズル本体22は、第一実施形態に係るノズル20のノズル本体22と同様の構成とされている。そのため、以下の説明では、噴射口形成部124について説明する。
【0061】
噴射口形成部124は、噴射体を噴射させる噴射口130を形成するために設けられている。噴射口形成部124は、ノズル120において軸線方向Xの先端に設けられている。
【0062】
図11に示すとおり、噴射口形成部124は、軸線方向Xの先端側(外側)の先端面124aと、先端面124aの裏面をなす内壁面124bの双方が、軸線方向Xの先端に向けて膨出する形状とされている。また、先端面124aは直径D1の半球状の形状とされ、内壁面124bは、直径D3の半球状の形状とされている。
【0063】
より具体的には、先端面124aは、ノズル120を噴射口形成部124とノズル本体22とに分断したと仮定した場合の境目Mを境界として軸線方向Xに膨出する半球状の形状とされている。また、内壁面124bは、先端面124aをなす球面の中心よりもノズル本体22の基端側に外れた位置にある点P’を中心とする半球状の形状とされている。
【0064】
噴射口130は、噴射体を噴射させる貫通孔として、噴射口形成部124に形成されている。図10に示すとおり、噴射口130は、ノズル120の外側であって先端面124aに形成される外側開口132と、ノズル120の内面であって内壁面124bに形成される内側開口134とを備える貫通孔として形成されている。
【0065】
図10に示すとおり、外側開口132は、軸線方向Xと交差する開口幅方向Wに延びる細長の形状とされている。また、外側開口132は、先端面24aがなす半球面における周方向全域に亘り形成されている。内側開口134は、軸線方向Xと交差する開口幅方向Wに延びる細長の形状とされている。内側開口134は、内壁面124bがなす球面の一部を横断するように形成されている。
【0066】
図12に示すとおり、噴射口形成部124は、先端面124aと内壁面124bとの間に、所定の厚みを有する。噴射口形成部124は、外側開口132から内側開口134までの厚みは、開口幅方向Wの各部において異なるものとされている。
【0067】
具体的には、図12に示すとおり、噴射口形成部124の厚みは、開口幅方向Wにおける両端部の厚みT’2が、開口幅方向Wにおける中心部の厚みT’1よりも小さい(T’2<T’1)。別の言い方をすれば、噴射口130を取り囲む面は、基準点Pから開口幅方向Wの中心部では内側開口134から外側開口132までの距離が大きく、開口幅方向Wの両端部では内側開口134から外側開口132までの距離が比較的小さい。
【0068】
そのため、噴射口130から噴射される噴射体の噴射圧は、噴射口130の開口幅方向Wの中心部を通過する場合と、噴射口130の開口幅方向Wの両端部を通過する場合とで、噴射口形成部124の面により受ける摩擦が異なる。具体的には、開口幅方向Wの中心部では内側開口134から外側開口132までの距離(厚みT’1)が比較的大きいため、噴射口130から噴射される噴射体は、噴射口形成部124の面との摩擦により噴射圧が減衰される程度が高くなる。一方、開口幅方向Wの両端部では内側開口134から外側開口132までの距離(厚みT’2)が比較的小さいため、噴射口130から噴射される噴射体は、噴射口形成部124の面との摩擦により噴射圧が減衰される程度が低くなる。
【0069】
これにより、ノズル120は、噴射口130の開口幅方向Wにおいて、両端部の噴射圧を高く維持して、中心部の噴射圧を低減させる。その結果、ノズル120は、噴射圧が高くなる傾向にある中心部の噴射圧を抑え、噴射範囲R1において略均一な噴射圧とすることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態に係るノズルについて説明したが、本発明のノズルは上述の実施形態に限定されない。
【0071】
例えば、上述の実施形態では、噴射口形成部の先端面を球面の一部により形成されるものとし、噴射口形成部の内壁面を球面の一部により形成されるもの又は円錐状の形状を有するものとした例を示したが、先端面及び内壁面の形状は、上記T1(T’1)とT2(T’2)の関係を満たす限り、いかなるものであってもよい。例えば、先端面を台形の形状として膨出させてもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、噴射口の開口角度を略180度を形成するものとした例を示したが、本発明のノズルはこれに限定されない。例えば、噴射口の開口角度は、180度よりも小さいものであってもよい。
【0073】
また、上述の実施形態では、段差部26が存在するが、ノズル本体22の内周面22bの直径D2と、噴射口形成部24の内壁面24b(又は噴射口形成部124の内壁面124b)の直径D3とを同一にして段差部26を無くしたものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、ドライアイス粒子を対象物に向けて噴射することで対象物の表面の洗浄等を行うドライアイス噴射装置に好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 ドライアイス噴射装置
20,120 ノズル
22 ノズル本体
24,124 噴射口形成部
24a,124a 先端面
24b,124b 内壁面
30,130 噴射口
32,132 外側開口
34,134 内側開口
L 軸線
T1,T’1 厚み(経路長)
T2,T’2 厚み(経路長)
W 開口幅方向
X 軸線方向
θ1 噴射角度
θ2 開口角度

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12