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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】鋼管内作業装置用支持脚
(51)【国際特許分類】
   B05C 7/00 20060101AFI20230303BHJP
   B05B 13/06 20060101ALI20230303BHJP
   B08B 9/043 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
B05C7/00
B05B13/06
B08B9/043 436
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019052767
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020151667
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】306033025
【氏名又は名称】日本鉄塔工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(74)【代理人】
【識別番号】100213746
【弁理士】
【氏名又は名称】川成 渉
(72)【発明者】
【氏名】辻丸 敏彦
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-300958(JP,A)
【文献】特開2011-50858(JP,A)
【文献】特開平5-57793(JP,A)
【文献】特開昭49-119928(JP,A)
【文献】特開2017-12953(JP,A)
【文献】実開昭62-48485(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B05B 1/00-17/08
B05D 1/00-7/26
B08B 1/00-13/00
E04G 23/00-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空鋼管の中心軸上に鋼管内作業装置を保持するための支持脚であって、
総体的に棒状の外形形状を有する脚支持部材と、少なくとも3本の所定の長さを有する線状部材からなる少なくとも1組の線状脚部材とから構成され、
各線状脚部材は弾性または発条性を有する部材により形成され、各線状脚部材の両端部は該端部間に位置する中間部分が脚支持部材の外周面から外方へ弧状に膨出すると共に、各線状脚部材の中間部分が脚支持部材の中心軸方向に対して斜交するように脚支持部材に相互に離間されてそれぞれ固着される、支持脚。
【請求項2】
2組またはそれ以上の線状脚部材が脚支持部材の中心軸方向に並べて配置される、請求項1に記載の支持脚。
【請求項3】
線状脚部材の脚支持部材への取付けは、脚支持部材の両端部に設けられた開孔に各線状脚部材の端部をそれぞれ挿入して固着される、請求項1または2に記載の支持脚。
【請求項4】
線状脚部材の端部を固着する開孔は、外方へ膨出する線状脚部材の中間部分が脚支持部材の軸心から延びる放射方向に対して交差する方向に延びるように設けられる、請求項3に記載の支持脚。
【請求項5】
線状脚部材の脚支持部材への取付けは、脚支持部材の外周面に各線状脚部材の端部を添えて固着される、請求項1または2に記載の支持脚。
【請求項6】
各線状脚部材の両端部は、外方へ膨出する中間部分が脚支持部材の軸心から延びる放射方向に対して交差する方向に延びるように、脚支持部材の外周面上にそれぞれ固着される、請求項5に記載の支持脚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の鋼管構造物の鋼管、特に挿入口の狭い鋼管内に挿入して内壁面の検査や修復等を行う作業装置を所定の位置に保持するための支持脚に関する。
【背景技術】
【0002】
既設の鋼管構造物の中空鋼管内に挿入して内壁面の検査や修復等を行う作業装置を鋼管中心位置に保持するための支持脚としては、リンク機構を用いてアームを開閉する(特公平4-46627号公報)、ラック・アンド・ピニオン機構を用いてアームを開閉する(特開2008-100139号公報)、バネ力を用いてアームを開閉する(特開2011-47237号公報)等のような、開閉脚するアーム部材によって作業装置を鋼管の中心軸上に保持する手段が提案されている。
【0003】
このようなアーム部材を用いた支持脚は機械的、電気的可動部品を用いており、製造コストが掛かるだけでなく、使用時に異物が侵入して作動しなくなる等の故障を起こしやすいものであった。加えて、例えば、鋼管鉄塔の腹材のように、相対的に細い中空鋼管からなり、しかもその端部にU字プレート継手や溝型継手を備えているような場合、腹材内への挿入口が狭く、従来のアーム部材を開閉する形式の支持脚を備えた作業装置を挿入することはほぼ不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平4-46627号公報
【文献】特開2008-100139号公報
【文献】特開2011-47237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のアーム開閉機構を備えた作業装置を挿入するには狭すぎる挿入口しかない既設の中空鋼管内に挿入でき、かつ、中空鋼管内において脚支持部材を鋼管の中心軸上に保持できる支持脚を提供するものである。
【0006】
本発明はまた、鋼管内への挿入時はもちろんのこと、取り出し時においても、簡単かつ円滑に作業装置を挿脱できる支持脚を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による鋼管内作業装置のための支持脚は中空鋼管の中心軸上に鋼管内作業装置を保持するための支持脚であって、総体的に棒状の外形形状を有する脚支持部材と、少なくとも3本の所定の長さを有する線状部材からなる少なくとも1組の線状脚部材とからなり、各線状脚部材は弾性または発条性を有する部材により形成され、各線状脚部材の両端部は該端部間に位置する中間部分が脚支持部材の外周面から外方へ弧状に膨出すると共に、各線状脚部材の中間部分が脚支持部材の中心軸方向に対して斜交するように脚支持部材に相互に離間されてそれぞれ固着される。
【0008】
線状脚部材の脚支持部材への取付けは、脚支持部材の両端部に設けられた開孔に各線状脚部材の端部をそれぞれ挿入して固着するか、或いは、脚支持部材の外周面に各線状脚部材の端部を添えて固着することにより行うことができる。線状脚部材の脚支持部材への固着は、好ましくは、外方へ膨出する中間部分が脚支持部材の軸心から延びる放射方向に対して交差する方向に延びるように、脚支持部材の外周面上にそれぞれ固着される。また、2組またはそれ以上の線状脚部材を脚支持部材の中心軸方向に並べて配置することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明による鋼管内作業装置のための支持脚は、狭い挿入口を通過するとき、膨出した線状脚部材の部分が挿入口の壁面と当接して脚支持部材側へと弾性的変形することにより外形輪郭形状を縮小し、挿入口の通過を可能にする。このとき、各線状脚部材の中間部分が脚支持部材の中心軸方向に対して斜交するように設けられているため、線状脚部材は弾性的変形を容易かつ円滑に行うことができる。
【0010】
挿入口を通過した線状脚部材は弾性的に元の形状へと戻るため、鋼管内壁に当接して脚支持部材を鋼管中心位置に保持する。脚支持部材の挿入側先端部には所要の作業のための作業部材を設け、後端部には作業部材に連結されて所定の作業を行わせるための索部材を設けることにより鋼管内作業装置を構成する。一例として、鋼管内作業装置が鋼管内の状態を検査する装置の場合、作業部材はCCDカメラであり、索部材はCCDカメラに電力を供する電源ケーブルとカメラの出力信号を伝送するためのケーブルであり、また、鋼管内作業装置が鋼管内壁を塗装する装置の場合、作業部材は塗料噴霧用ノズルであり、索部材は塗料をノズルへ送るためのホースである。この形体の鋼管内作業装置は、作業部材側を先頭にして鋼管内の最深部まで挿入されたのち、索部材を抜き出して行くことにより鋼管内作業装置を移動させるため、鋼管内壁面に当接しながら移動される線状脚部材と、抜き出される索部材の引張力とにより脚支持部材、すなわち、鋼管内作業装置を鋼管の中心軸に沿って移動させることができる。
【0011】
線状脚部材の中間部分が脚支持部材の軸心から延びる放射方向に対して交差する方向に延びるように設けられた開孔に線状脚部材の端部をそれぞれ挿入して固着、或いは、脚支持部材の外周面に添って線状脚部材の端部を固着した支持脚を用いることは、線状脚部材の中間部分をより容易にかつより線状脚部材に密着した状態に変形させることができ、それにより、より狭い挿入口しかない鋼管内に鋼管内作業装置を挿入することができる。さらに、2組またはそれ以上の線状脚部材を脚支持部材の中心軸方向に並べて配置することにより、挿入口を通過して鋼管内に挿入されたとき、複数の組の線状脚部材がそれぞれ弾性的に元の形状へと戻って鋼管内壁に当接することにより、脚支持部材を鋼管中心位置にそれぞれ保持し、それにより、鋼管内作業装置を中空鋼管の中心軸上に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態による鋼管内作業装置用支持脚を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す支持脚の側面図である。
図3図3は、図1に示す支持脚を一端側から見た図である。
図4図4は、図1示す支持脚の変形例を示す図1と同様な斜視図である。
図5図5は、本発明の別の実施形態による鋼管内作業装置用支持脚を示す図1と同様な斜視図である。
図6図6は、図5に示す支持脚の側面図である。
図7図7は、図5に示す支持脚を一端側から見た図である。
図8図8は、本発明の支持脚の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例による支持脚は、図1~3に示すように、総体的に棒状の外形形状を有する脚支持部材1と、少なくとも3本(図示の場合、8本)の所定の長さを有する線状部材からなる少なくとも1組の線状脚部材2とから構成される。
【0014】
各線状脚部材2は、弾性または発条性を有する部材により形成され、脚支持部材1の周縁に相互に等間隔で離間して設けられる。各線状脚部材2の両端部21、21は、該端部間に位置する中間部分22が脚支持部材1の外周面から外方へ弧状に膨出すると共に、各線状脚部材2の中間部分22が脚支持部材1の中心軸方向に対して斜交するように、脚支持部材1にそれぞれ固着される。より具体的には、図3に明示されているように、線状脚部材2は、線状脚部材2の一端21の脚支持部材1への取付け位置に対して、他端21が脚支持部材1の円周方向へ所定の中心角αだけ変位した位置(図示の場合、時計回りに90度変位した位置)となるように、脚支持部材1の外周面に設けられた開孔(図示なし)に各線状脚部材2の端部21をそれぞれ挿入して固着することにより植設される。この中心角αは、線状脚部材2に用いられる弾性または発条性を有する部材の特性、太さ、長さ、断面形状等の種々の要因により適宜に選定されるが、少なくとも、相対的に狭い挿入口を支持脚が通過するときに、線状脚部材2を脚支持部材1の外周面に接面させるように変形可能であると共に、挿入口を通過したのちは、線状脚部材2により脚支持部材1を鋼管中心位置に保持できるように選定される。
【0015】
上述の如く構成される本発明の支持脚は、脚支持部材1を所要の鋼管内作業装置と一体化される。一例として、鋼管内壁の検査を行う場合、中空の脚支持部材1を使用し、脚支持部材1の一端にCCDカメラ等の撮影装置を取り付け、他端に撮影ケーブルが接続される。また、鋼管内壁の塗装を行う場合は、中空の脚支持部材1の一端に塗料吐出用ノズルを取り付け、他端に塗料供給用ホースが接続される。一体化された支持脚を有する鋼管内作業装置は、相対的に狭い挿入口を通過したのち、鋼管の最深部まで前進させられ、撮影ケーブルまたは塗料供給用ホースを鋼管から引き出す際に所要の検査または塗装を行う。このとき、脚支持部材1は、線状脚部材2により鋼管中心位置に保持されると同時に、撮影ケーブルまたは塗料供給用ホースの引張力により、線状脚部材2を鋼管の中心軸上に位置させながら移動することになる。
【0016】
ここにおいて、本支持脚のみで脚支持部材1を鋼管の中心軸上に位置させたい場合、図4に示すように、複数組(図示の場合、2組)の線状脚部材2を脚支持部材1の軸方向へ離間して設けることにより、脚支持部材1を鋼管の中心軸上に位置させることができることは容易に理解されよう。また、図1~3に示す支持脚を1つのユニットとして形成し、複数の支持脚の脚支持部材1の端部間を連結することにより、図4の支持脚と同様に構成できることもまた容易に理解されよう。
【0017】
図5~7は、本発明の別の実施例による支持脚を示す図で、より狭い挿入口に対応できるように構成されている。本実施例の支持脚は、前述の実施例と比べ、線状脚部材2の数が少ない(図示の場合、6本)こと以外に、線状脚部材2の脚支持部材1への取付け形態が異なっていることを除き、その他の構成は前述の実施例と同様に形成される。
【0018】
本実施例における線状脚部材2の脚支持部材1への取付けは、前述の実施例では線状脚部材2が脚支持部材1の軸心から放射方向へ延びるように脚支持部材1に植設されるのに対し、脚支持部材1の外周面に各線状脚部材2の端部21を添えた形態で固着される。より具体的には、各線状脚部材2の両端部21は、外方へ膨出する中間部分22が脚支持部材1の接線の一方の方向(図7の場合、反時計方向)に延びるように、脚支持部材1の外周面上にそれぞれ固着される。
【0019】
これにより、各線状脚部材2は脚支持部材1の外周面に一方向(図7の場合、反時計方向)に傾いた形体で添設されることになるため、挿入口に挿入されたとき、線状脚部材2が脚支持部材1の外周面上へと簡単に変形できると共に、脚支持部材1の外周面から垂直に突出する部分を有していないことにより、線状脚部材2をより小さな半径内に納めることができ、より狭い挿入口であっても鋼管内作業装置を鋼管内に挿入できる。
【0020】
ここにおいて、線状脚部材2の両端の脚支持部材1への取付け部分を、相互に近接する方向(図7の場合、手前側が時計方向、後ろ側が反時計方向)に延びるように、或いは、相互に離間する方向(図7の場合、手前側が反時計方向、後ろ側が時計方向)に延びるように脚支持部材1に取り付けることもできる。相対的に、前者の場合、線状脚部材2の折り畳みに要する力が増大する一方、鋼管内で拡張された線状脚部材2による位置保持力が増加するのに対し、後者の場合、鋼管内への挿入をより容易に行える反面、位置保持力が小さくなる。
【0021】
図示されていないが、線状脚部材2の端部21は、外方へ弧状に膨出する中間部分22が脚支持部材1の外周面の方向へ傾くように、脚支持部材1の中心から延びる放射方向に対して斜交する方向(脚支持部材1の外周面の接線と直交するのではなく、外周面の接線に対して斜交する方向)に延びる開孔を設け、該開孔に線状脚部材2の端部21を挿入して固着することにより、より確実かつ簡単に線状脚部材2を設けることができる。
【0022】
上述の説明において、脚支持部材1は1本の棒状部材として図示し説明したが、図8に例示するように、脚支持部材1の両端部分に対応する1対のリング状部分1’、1’として形成し、このリング状部分1’、1’を鋼管内作業装置または適当な連結用部材に着脱自在に取り付けることにより、上述した支持脚と同様に用いることができる。この形体における最も大きな利点は、リング状部分1’、1’間の間隔を調整することにより、線状脚部材2の中間部分22が外方へ膨出する量を変更できるため、作業対象の鋼管の内径に応じた中間部分22の膨出を得ることができ、また、リング状部分1’、1’間の間隔が一定に制限されている場合であっても、中間部分22の捻れ量を調整することにより鋼管の内径に対応させることができる点にある。
【符号の説明】
【0023】
1 脚支持部材
2 線状脚部材
21 端部
22 中間部分
α 中心角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8