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特許7236715材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する方法およびその測定システム
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  • 特許-材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する方法およびその測定システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する方法およびその測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/56 20060101AFI20230303BHJP
   G01N 25/00 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
G01N3/56 E
G01N25/00 Z
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021043226
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022000624
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2021-11-28
(31)【優先権主張番号】202010191243.3
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010190905.5
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010190902.1
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】劉 嘉斌
(72)【発明者】
【氏名】王 宏涛
(72)【発明者】
【氏名】方 攸同
(72)【発明者】
【氏名】関 慰勉
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-196853(JP,A)
【文献】特開平07-209162(JP,A)
【文献】特開平03-081642(JP,A)
【文献】特公昭57-038858(JP,B2)
【文献】特開2012-254477(JP,A)
【文献】米国特許第06437281(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/56
G01N 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定システムを構築または取得するステップS1と、
陰極サンプルを準備し、最低アブレーション時間を設定するステップS2と、
陰極サンプルを測定システムに搭載し、陰極サンプルに対してアークアブレーション試験を行い、ここで、試験のアブレーション時間は最低アブレーション時間以上であり、アークアブレーションのパラメータを記録するステップS3と、
アークアブレーション試験後の陰極サンプルを取り出し、陰極サンプルを冷却した後、陰極サンプルに対して洗浄および乾燥を行い、さらにアブレーション領域の3次元輪郭情報を取得することでアブレーション損傷体積を取得し、アブレーション損傷体積をアブレーション電力で割ることでアブレーション損傷速度を取得し、アブレーション損傷速度を電極材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する指標とするステップS4と、
を含む、材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する方法。
【請求項2】
ステップS4において、表面輪郭測定器を用いてアブレーション領域の3次元輪郭情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する方法。
【請求項3】
ステップS2において、陰極サンプルのアーク接触面は滑らかで局所的な突起がなく、アーク接触面の表面粗さはRa≦0.8 μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する方法。
【請求項4】
ステップS2において、陰極サンプルのアーク接触面について研磨、艶出し、乾燥のアーク接触面処理を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する方法。
【請求項5】
ステップS2において、陰極サンプルのアーク接触面処理が完了した後、室温条件のもとで陰極サンプルの熱伝導率、電気伝導率および硬度を測定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する方法。
【請求項6】
ステップS2において、陰極サンプルを超音波で洗浄し、ステップS4において、アブレーション後の陰極サンプルを超音波で洗浄する、
ことを特徴とする請求項1に記載の材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する方法。
【請求項7】
請求項1に記載の材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する方法において使用される測定システムであって、陽極と、陰極サンプルを搭載するサンプル取付具と、陰極サンプルを冷却する冷却システムと、保護カバーと、を含み、
アークは陰極と陽極との間で生成され、アークは保護カバー内に位置し、陽極および陰極はそれぞれアーク給電電源と接続するポートを有し、陰極サンプルとアークとの間では相対変位を有する、
測定システム。
【請求項8】
陰極サンプルはフレーク状のサンプルであり、サンプル取付具は陰極サンプルを載置しながら中心を自転し、アークは固定されるか径方向に平行移動し、
サンプル取付具はベースを含み、ベースは冷却キャビティおよび給液リングを有し、冷却キャビティはサンプル搭載領域内に位置され、陰極サンプルをサンプル取付具に搭載した際、陰極サンプルとサンプル搭載領域は中心が位置合わせされており、冷却キャビティは内側に、給液リングは外側に位置し、給液リングと冷却キャビティとは連通され、かつ、回転可能に密封接続されており、給液リングは固定されかつ給液管と接続されており、冷却キャビティの中央には排液通路が設けられており、
測定システムは回転可能な駆動部品セットを有し、回転可能な駆動部品セットは、ベースに固定された従動輪とモーターに接続された能動輪を有し、従動輪はベースと中心が位置合わせされている、
ことを特徴とする請求項に記載の測定システム。
【請求項9】
ベースは円筒形を呈し、冷却キャビティの側壁には複数の貫通孔が設けられており、給液リングは円環状を呈し、給液リングはすべての貫通孔を覆い、給液リングとベースとの間にはシールリングが設けられている、
ことを特徴とする請求項に記載の測定システム。
【請求項10】
ベースと従動輪とは同軸に固定され、ベースは内側で、従動輪は外側であり、および/または、ベースは一体型の円筒であり、円筒の頂部は開口され、かつ、陰極サンプルと密封して取り付けられ、円筒の底部には排液通路が設けられている、
ことを特徴とする請求項に記載の測定システム。
【請求項11】
ベースは、陰極ベース頂部蓋および固定台座を含み、陰極ベース頂部蓋と固定台座とは回転可能に密封接続され、陰極ベース頂部蓋と固定台座とは冷却キャビティを構成し、陰極ベース頂部蓋と固定台座とは回転可能に接続され、陰極ベース頂部蓋と固定台座との間にはシールリングが設けられている、
ことを特徴とする請求項10に記載の測定システム。
【請求項12】
陰極ベース頂部蓋は、陰極サンプルと接続する第一接続部と、従動輪と接続する第二接続部と、を有し、第一接続部と従動輪とは距離が開けられている、および/または、第一接続部および第二接続部は二段式であり、第二接続部は従動輪と接続するためのフランジとして、第一接続部に沿って外側へ延伸する凸縁に位置され、これにより陰極ベース頂部蓋と従動輪との安定した接続を実現する、
ことを特徴とする請求項11に記載の測定システム。
【請求項13】
陰極サンプルはフレーク状のサンプルであり、陰極サンプルとサンプル取付具とは着脱可能に取り付けられ、陰極サンプルは固定され、アークは陰極サンプルの中心を回って回転し、保護カバーの外側には電磁コイルが設けられ、電磁コイルの磁界の方向と陽極から陰極に向かった方向とは平行であり、電磁コイルはコイル電源と接続するポートを有し、サンプル搭載領域の外側には絶縁リングが設けられ、絶縁リングとサンプル搭載領域とは中心が位置合わせされている、
ことを特徴とする請求項に記載の測定システム。
【請求項14】
サンプル取付具はベースを含み、ベースには冷却キャビティが設けられ、冷却キャビティは給液管および排液管とそれぞれ連通し、給液管および排液管は循環冷却システムと接続されており、
陰極サンプルをサンプル取付具に搭載した際、陰極サンプルは冷却キャビティを密閉し、冷却キャビティはベース頂部開口に設けられた凹部キャビティであり、陰極サンプルがサンプル取付具に搭載された際、陰極サンプルは冷却キャビティを密封し、給液管および排液管はベースの側面に設けられ、給液管は排液管より下側へ設けられている、
ことを特徴とする請求項13に記載の測定システム。
【請求項15】
保護カバーの断面は円形を呈し、保護カバーの雰囲気入口は、軸方向に沿って吸気し、または、接線方向に沿って吸気する、
ことを特徴とする請求項に記載の測定システム。
【請求項16】
保護カバーの断面は円形を呈し、保護カバーには雰囲気入口が設けられ、雰囲気入口は接線方向に沿って吸気し、および/または、雰囲気入口は少なくとも一組有し、雰囲気入口が複数組を有する場合、複数組の雰囲気入口は輪郭の周方向に均一の配置されている、
ことを特徴とする請求項15に記載の測定システム。
【請求項17】
陰極サンプルは中空管であり、陰極の両端は開口され、陰極サンプルの両端はそれぞれ高圧回転継手と密封接続され、一つの高圧回転継手は冷却剤の入力管に接続され、他の一つの高圧回転継手は冷却剤の出力管に接続されており、冷却剤は入力管から中空管に入って出力管から流出され、入力管と出力管との間には冷却剤を冷却する冷却機構が設けられ、または、入力管と出力管との間には冷却剤を供給する液体貯蔵装置が設けられ、陰極サンプルと駆動装置は接続されており、陽極は陰極サンプルの外表面に位置合わせされ、アークは陽極と陰極との間において形成され、陰極サンプルは中軸を回って自転し、アークのアーク根は陰極の外表面に沿って変位する、
ことを特徴とする請求項に記載の測定システム。
【請求項18】
陽極が固定されるか、または、陽極が中空管軸に沿った平行移動を供する平行移動駆動機構と接続される場合、陽極が中空管軸に沿って平行移動するとき、アーク根は陰極の外表面に沿って螺旋線を形成し、
陽極が固定される場合、アーク根は陰極の外表面に沿って円を形成する、
ことを特徴とする請求項17に記載の測定システム。
【請求項19】
高圧回転継手は、陰極サンプルに接続される第一接続部と、配管に接続される第二接続部と、を有し、第一接続部と第二接続部とは回転可能に密封接続され、第一接続部は駆動装置に接続され、第二接続部はブラケットに固定され、陰極サンプルは二つの高圧回転継手によってブラケットに設けられている、
ことを特徴とする請求項18に記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料性能試験の技術分野に関し、特に、材料の耐アブレーション性能(ablation resistance)の実験による測定方法および測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空宇宙技術は、国の科学技術力を示す重要な指標であるとともに国際的な影響力の有力な保障であり、一国の総合的な国力のレベルを反映する。極超音速飛翔体は、極超音速ミサイル、極超音速機、宇宙飛行機などを含む超音速で飛行する飛翔体である。極超音速飛翔体は、大気圏内で高速かつ長時間飛行するため、表面での空力加熱の効果により外形において深刻なアブレーションが引き起こされる。外形アブレーションは、飛翔体の捩れ、反転、ひいては解体を引き起してしまう。このため、極超音速飛翔体の耐熱設計は、飛翔体の耐熱材料および構造の信頼性、有効性および適用性を検証するために、厳格な耐熱試験や評価を通らなければならない。現在、飛翔体に対する評価方式は主に、モデルを用いた試験飛行、数値シミュレーションおよび地上風洞試験の三種類がある。ここで、極超音速の数値計算は、多物理場結合を伴うため、計算が難しく、精度が低く、耐熱評価の根拠とすることは困難である。また、モデルを用いた試験飛行で得られるデータは限られ、失敗のリスクやコストが高い。このため、地上風洞試験は、極超音速飛翔体の熱防護評価の核心的なメイン方式となっている。現在、極超音速飛翔体の耐熱試験研究を行える高温風洞設備には主に、燃焼風洞、アーク風洞、衝撃波風洞、弾道ターゲットなどがある。ここで、マッハ8以上の耐熱評価試験において、燃焼風洞の流れ場の総温度上限は、試験需要を満たすことが難しい。また、衝撃波風洞やアーク風洞は高速かつ高温の空気流れ場を提供できるが、衝撃波風洞の試験時間はミリ秒程度しかなく、極超音速飛翔体の高マッハ数の長時間飛翔試験研究のニーズを満たせない。相対的に、アーク風洞は長時間の連続した評価試験条件を提供できるため、極超音速飛翔体の先端部、翼の前縁およびエンジンなどの重要な部品の地上耐熱性能を評価する必須の手段となっている。
【0003】
高温アーク風洞試験を行う際、高電圧はアーク加熱器内の銅電極の空気を破壊して強烈なプラズマアーク放電の形成し、回転して流れ込む高圧の清浄空気を激しく加熱することにより、高圧の高エンタルピー気流を取得し、さらにはノズル膨張の加速を介して高温ジェットを形成し、ノズル出口に取り付けたサンプルについてアブレーション試験を行う。
【0004】
電極は高温アーク風洞の「心臓」として、劣悪な環境で使用され、高温、高気圧、大電流、高電圧に耐える必要がある。アーク根における極めて高い熱の入力(~20000 MW/m)は、電極表面の局所的な酸化、溶融を引き起こしてしまう。高圧気流に押されて電極の壁が次第に薄くなり、ひいては部分的に焼けてしまうため、空気が漏れて水が通らなくなる。このため,電極の耐アブレーション性能により、アーク加熱器の試験能力がほぼ決定される。
【0005】
現在、電極のアブレーションを減らすための主な措置は次のようなものを含む。
1、アーク制御の面において、アーク根のアブレーション時間を短縮し、アーク根の電流を減らすことから電極のアブレーションを減らす。
2、電極材料の面において、現在、主には電極のアブレーションに係る熱物理化学プロセスをめぐって基礎理論を探索し、材料の特性、材料の微細構造、電極表面の雰囲気や温度などの要因が電極材料のアブレーション程度に対する影響法則を検討する。
このように、電極材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する方法は、切迫に求められている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、電極材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する方法および電極材料の耐アブレーション性能を測定する測定システムを提供することにより、小さいサイズの電極材料サンプルを用いてアークのアブレーションを再現することである。
また、本発明は、電極材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する方法を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する方法は、
測定システムを構築または取得するステップS1と、
陰極サンプルを準備し、最低アブレーション時間を設定するステップS2と、
陰極サンプルを測定システムに搭載し、陰極サンプルに対してアークによるアブレーション試験を行い、試験のアブレーション時間は最低アブレーション時間以上であり、アーク電源の動作電圧、アブレーション時間、磁界の強さやサンプルの回転速度などアークアブレーションのパラメータを記録するステップS3と、
アークアブレーション試験後の陰極サンプルを取り出し、陰極サンプルを冷却した後、陰極サンプルに対して洗浄および乾燥を行い、さらにアブレーション領域の3次元輪郭情報を取得することでアブレーション体積を取得し、アブレーション体積をアブレーション電力で割ることでアブレーション速度を取得し、アブレーション速度を電極材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する指標とするステップS4と、
を含む。
【0008】
好ましくは、ステップS4において、表面輪郭測定器を用いてアブレーション領域の3次元輪郭情報を取得する。
なお、ステップS1では、上述した任意の測定システムを使用できる。
【0009】
好ましくは、ステップS2において、陰極サンプルのアーク接触面は滑らかで局所的な突起がなく、アーク接触面の表面粗さはRa≦0.8 μmであり、アークを均一に放電する表面条件を備えている。
【0010】
好ましくは、ステップS2において、陰極サンプルのアーク接触面について研磨、艶出し、乾燥のアーク接触面処理を行う。
【0011】
好ましくは、ステップS2において、陰極サンプルのアーク接触面処理が完了した後、室温条件のもとで陰極サンプルの熱伝導率、電気伝導率および硬度を測定する。電極材料がアーク接触面での耐アブレーション性能およびベースでの高い導電性、熱伝導性を必要とするため、電極の導電性および熱伝導性を測定することは、材料が電極として適切か否かを総合的に評価したり、耐アブレーション性能があまり変わらないと判断した場合の最適材料を選択したりするために用いられる。硬度値は通常、材料の力学的性能の評価に用いられる。これは、電極が使用中に一定の構造強度を備えることにより内壁の高圧気流および背部の高圧水流の押圧に耐えられることが必要だからである。
【0012】
好ましくは、ステップS3において、陰極サンプルを搭載する際、陰極サンプルのアーク接触面の垂直方向を水平に保って、陽極を同期移動させることにより陽極を陰極サンプルのアブレーション開始位置に位置合わせする。
【0013】
好ましくは、8520。超音波で洗浄することで、アブレーション領域に付着した黒い汚染物質を除去し、表面の光反射率を向上する。
【0014】
第1の態様によれば、本発明に係る材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する方法において使用される測定システムは、陽極と、陰極サンプルを搭載するサンプル取付具と、陰極サンプルを冷却する冷却システムと、を含み、
アークは陰極と陽極との間で生成され、陽極および陰極はそれぞれアーク給電電源と接続するポートを有し、陰極サンプルはサンプル取付具に着脱可能に取り付けられ、陰極サンプルがサンプル取付具に取り付けられた際、陰極サンプルは冷却システムの冷却剤と接触し、陰極と陽極との間には駆動装置が設けられ、駆動装置によりアークと陰極サンプルとが相対変位する。
【0015】
好ましくは、アークと陰極サンプルとの間の相対変位は、回転変位または平面上の変位である。
【0016】
好ましくは、冷却システムの冷却キャビティはサンプル搭載領域内に位置され、陰極サンプルと冷却キャビティとの間には金属シールリングが設けられる。金属シールリングは、高温のアブレーションに耐えることができ,冷却システムの密封性を良好に保つことができる。
【0017】
好ましくは、絶縁リングにより陰極サンプルをサンプル取付具に圧着する。
測定する際、作成した陰極サンプルをサンプル取付具に搭載し、陽極および陰極に電気を通すと、陽極から陰極へアークが生成され、アークは陰極に対してアブレーションを行う。同時に、冷却システムは陰極に対して冷却を行う。アークおよび冷却システムを制御することにより、実際のアブレーション状況をシミュレーションできる。アークアブレーション試験後、陰極サンプルを取り出し、アブレーション後の材料について測定することにより、陰極サンプルの耐アブレーション性能を判断する。
【0018】
一例として、陰極サンプルは、フラットなフレーク状のサンプルであり、アークとフラットなフレーク状の陰極サンプルとの間で相対変位を発生させる駆働装置を有する。
【0019】
(3軸移動プラットフォームを駆動装置とする方法)
好ましくは、駆動装置は、X方向の移動軸、Y方向の移動軸およびZ方向の移動軸を含む3軸移動プラットフォームであり、陽極はZ方向の移動軸に固定されている。サンプル取付具はベースを含み、冷却システムはベース内に設置される。冷却システムは、冷却剤給水管、冷却剤排水管および冷却タンクを含む。ベース上にはサンプルの押圧板が設けられ、冷却タンクの外側には金属シールリングが設けられている。陰極サンプルには、金属シールリングに合わせたシール溝が設けられている。
【0020】
サンプルに対してアークアブレーション試験を行う際、サンプルを陰極とし、まずはサンプル表面においてステンレスのシールリングと適合する溝を作り出し、プレスブロックによりサンプルをサンプル取付具に圧着し、サンプル表面の溝と金属シールリングを密接に取り付ける。冷却剤は、冷却タンクとサンプルとの間に制限され、ステンレスのシールリングは冷却剤が滲み出ることを防止する。
【0021】
好ましくは、金属シールリングはステンレスのシールリングである。好ましくは、ステンレスのシールリングは、固溶態のステンレス316Lにより作製される。
【0022】
好ましくは、ベース上には電源ポートがあり、電源ポートは冷却タンクに電気的に接続され、冷却媒体を導体としてサンプルに接続する。該電源ポートは、電源の陰極に接続されるため、サンプルはアークアブレーションシステムにおける陰極となる。陽極は電源の陽極に接続されているため、陽極とサンプルとの間においてアークが生成される。
【0023】
好ましくは、ベース上にはサンプルを収容するサンプル溝が設けられ、冷却タンクはサンプル溝の領域内に位置され、冷却タンクとサンプル溝の内壁との間にはサンプル保持面があり、金属シールリングはサンプル保持面に設けられる。すなわち、ベース上にはサンプルを収容するための凹溝が設けられ、サンプル溝を形成し、さらにサンプル溝内において冷却剤を収容する溝を掘って冷却タンクとする。冷却タンクとサンプル溝との間には一回りの枠ができ、この枠がサンプルを保持するサンプル保持面となる。サンプルとサンプル溝の隙間が合わせられ、サンプルは金属シールリングにより完全に覆われている。
【0024】
好ましくは、冷却剤給水管は、冷却タンクに連通する給水通路を有し、給水通路の数は少なくとも1つである。好ましくは、給水通路は垂直に上を向く貫通孔であり、給水通路の底部は冷却剤の給水管に連通され、上部は冷却タンクに連通されている。冷却剤の給水管の水は下から上に向かって溢れ出して冷却タンク内に達し、冷却水は給水通路を通って強制的に流れ方向を変えさせられ、サンプルの背面側を強制的に流れることで、サンプルに対する良好な冷却効果を保証する。
【0025】
好ましくは、冷却剤排水管は冷却タンクの下に位置し、冷却タンクは排水通路を介して冷却剤排水管と連通している。排水通路と冷却剤排水管との間は、円弧形か斜面の形式で移り変わる。
【0026】
好ましくは、ベース上にはサンプル搭載溝が設けられ、サンプル搭載溝内にはサンプル取付具が設けられ、サンプル取付具は一対あり、それぞれサンプル搭載溝の両端に位置されている。冷却タンクはサンプル取付具の間に位置し、金属製シールリングは、冷却タンクとサンプル取付具との間に位置する。サンプルの背面側には、金属製シールリングと密封接続する密封溝を備えている。サンプルが作製されて準備できたら、サンプルをサンプル搭載溝内に入れ、サンプルの両端をサンプル取付具で固定する。また、サンプルの密封溝と金属製シールリングは密封接続され、サンプルの背面側は冷却タンクと接触する。金属製シールリングは、冷却液を冷却タンク内に閉じ込め、冷却液が漏れたり染み出たりしないようにする。
【0027】
好ましくは、サンプル取付具にはネジ穴があり、個々のサンプル取付具は一つのサンプル押圧板に対応する。サンプル押圧板には同様に対応するネジ穴が設けられている。サンプル溝の幅はサンプルより1~2mm大きく、サンプル溝の長さはサンプルより1~2mm大きい。つまり、サンプルを作製する際、サンプルの幅をサンプル溝の幅より1~2mm小さく、サンプルの長さをサンプル溝の長さより1~2mm小さくする。
【0028】
さらに,ベース上には複数のサンプル搭載溝が設けられている。複数のサンプルに対してアブレーション性能試験を行うことができる。
サンプル取付具はサンプル搭載領域を有し、搭載される陰極サンプルはフレーク状のサンプルであり、陽極はサンプル搭載領域に位置合わせされている。フレーク状のサンプルは比較的に作製しやすく、製造プロセスも比較的に簡単で、使用される材料も少ない。高温アーク風洞の陰極と比較して、本発明では、陰極サンプルの量およびサイズに対する要求が大幅に低減されている。
【0029】
(プラットなフレーク状のサンプルに対して,電磁場駆動のアークで陰極サンプルの周りを回転させる方法)
アーク温度が非常に高いため、ある箇所に対して放電し続けると、電極が急速に溶けたり、アブレーションしたり、破壊(故障)したりする。このため、耐アークアブレーションの材料を選別する際、アーク風洞のアークアブレーション状況をよりリアルに再現するため、本発明に係る測定システムでは様々な技術的解決手段を開示して、アークと陰極サンプルとの相対的な回転運働を可能にしている。
たとえば、陰極サンプルを固定し、アークを陰極サンプルの中心を回って回転させる。
【0030】
好ましくは、測定システムには台座が設置され、保護カバーはサンプル取付具を保護カバーと台座の間に密閉する。
【0031】
好ましくは、保護カバーには雰囲気入口が設けられ、雰囲気入口は配管を介して高圧給気システムに接続されている。雰囲気入口は、アークアブレーションが行われる空間内に保護雰囲気を進入させる。どのような気体に通す必要があれば、雰囲気入口の配管はその気体源と接続する。たとえば、窒素を通す場合、窒素の気体源と接続する。空気を通す場合、空気の気体源と接続する。
【0032】
好ましくは、保護カバーの外側に、電磁コイルが設けられ、電磁コイルの磁界方向は、陽極から陰極に向かっている方向と平行である。電磁コイルは、コイル電源に接続されるポートを有する。サンプル搭載領域の外側には絶縁リングが設けられ、絶縁リングとサンプル搭載領域とは中心が位置合わせされている。
【0033】
電磁コイルの磁界方向が陽極から陰極に向かう方向と平行する際、アーク円柱の中の帯電粒子の運動方向は磁界方向と同じで、生成される電界の力はゼロである。しかしながら、アーク円柱の断面内における帯電粒子の濃度は、中心から周辺へと徐々に減少し、この帯電粒子の濃度差は、帯電粒子の中心から周囲への拡散を引き起こす。アークの断面をXOY平面とし、濃度差による帯電粒子の拡散運動は、径方向に沿った運動成分VxおよびVyを同時に有し、かつ、運動成分VxおよびVyは磁界に対して垂直である。このとき、帯電粒子はx方向およびy方向に拡散することにより、磁場の作用もとでローレンツ力が発生し、拡散中の電子(あるいはイオン)はローレンツ力の作用もとで円周運動をし、運動速度はVzである。半径rに沿って円周運動をする帯電粒子は磁場によって求心力Fxを生じる。この帯電粒子は同時にVxとVyの二つの方向の運動成分を有するため、帯電粒子の実際の運動ルートはrを半径とする螺旋状の線になる。外部磁場の作用の下で,アーク中の帯電粒子の陽極から陰極への運動は磁力線の方向に沿った螺旋運動に変わる。外部から印加された磁場の強さが大きいほど、螺旋の半径は小さくなる。帯電粒子はローレンツ力によって螺旋運動をし、その過程で中性粒子と衝突してアークを回転させる。磁界の強度が増すにつれて、回転半径は小さくなり、アークは収縮する。磁界の強度が減少するにつれて、回転半径は大きくなり、アークは拡散する。したがって、電磁コイルを印加して電磁場の強さを変えることによって、フレーク状のサンプルに対してアークを回転させる目的を達成する。
絶縁部品は外側に位置し、陰極サンプルは内側に位置し、絶縁部品はアークをその内部に収める。
【0034】
好ましくは、サンプル取付具はベースを含み、ベースには冷却キャビティが設けられ、冷却キャビティは給液管および排液管とそれぞれ連通する。給液管および排液管は循環冷却システムと接続されている。陰極サンプルがサンプル取付具に搭載される際、陰極サンプルは冷却キャビティを密閉する。陰極サンプルが冷却キャビティを密閉することとは、給液管および排液管の他、冷却キャビティはその他の開口部を有しないことをいう。
【0035】
冷却媒体は陰極サンプルと接触して、陰極サンプルに対して冷却放熱作用を果たして、陰極サンプルがアークに接触すると破壊されることを避けて、陰極材料が長時間アブレーションされる状況をシミュレーションする。
【0036】
好ましくは、冷却キャビティは、ベースの頂部開口に設けられた凹部キャビティであり、サンプルがサンプル取付具に搭載された際、陰極サンプルは冷却キャビティの頂部開口を密閉する。
【0037】
好ましくは、給液管および排液管はベースの側面に設けれている。
【0038】
好ましくは、給液管は出液管より下側へ設けられている。
【0039】
好ましくは、循環冷却システムは、液体貯蔵タンクおよびポンプを有し、液体貯蔵タンクはそれぞれ配管を介して給液管および排液管に接続され、ポンプは配管上に設置されている。
【0040】
好ましくは、陰極サンプルは円形を呈し、冷却キャビティは円形キャビティを呈する。
【0041】
好ましくは、保護カバーの断面は円形を呈し、雰囲気入口は、接線方向に沿って吸気する。雰囲気入口は少なくとも一組有し、雰囲気入口が複数組を有する場合、複数組の雰囲気入口は輪郭の周方向に均一に配置されている。雰囲気(気体、空気)は接線方向に沿ってアークの発生する領域内に入り、アークのために回転補助の力を提供する。
【0042】
(プラットなフレーク状のサンプルに対して、陰極サンプルのサンプル取付具が自転する駆動装置の方法)
サンプル取付具は陰極サンプルを載置しながら中心を自転し、アークは固定されるか径方向に平行移動する。
【0043】
好ましくは、サンプル取付具はベースを含み、ベースは冷却キャビティおよび給液リングを有し、冷却キャビティはサンプル搭載領域内に位置され、陰極サンプルをサンプル取付具に搭載した際、陰極サンプルとサンプル搭載領域は中心が位置合わせされている。冷却キャビティが内側に位置し、給液リングが外側に位置し、給液リングと冷却キャビティとは連通され、かつ、回転可能に密封接続されており、給液リングは固定されかつ給液管と接続されており、冷却キャビティの中央には排液通路が設けられている。測定システムは回転可能な駆動部品セットを有し、回転可能な駆動部品セットはベースに固定された従動輪とモーターに接続された能動輪を有し、従動輪はベースと中心が位置合わせされている。
【0044】
回転可能な駆動部品セットは中心を自転するように陰極サンプルを駆動させ、ベースは回転可能な駆動部品セットにともなって回転し、サンプルはベースにともなって自転する。給液リングは固定され、冷却媒体の入力管に接続されている。排液通路を冷却キャビティの中心に設置し、排液通路上に回転可能な液体密封継手を接続する。このようにするだけで、給液リングおよび排液通路を介して、冷却媒体の冷却キャビティにおける循環が実現され、陰極サンプル7を継続的に冷却できる。
【0045】
好ましくは、ベースは円筒形を呈し、冷却キャビティの側壁には複数の貫通孔が設けられ、給液リングは円環状を呈し、給液環はすべての貫通孔を覆い、給液リングとベースとの間にはシールリングが設けられている。シールリングは、冷却媒体を給液リングおよび冷却キャビティ内に閉じ込め、給液リングはリング全体の周方向から冷却キャビティ内に給液する。
給液リングを設けることにより、冷却媒体の入力管がベースにともなって回転することを回避し、配管の巻き付き問題を回避する。
【0046】
好ましくは、ベースは従動輪と同軸に固定され、ベースが内側で、従動輪が外側に位置される。ベースと従動輪との固定は、ほぞ継ぎによる固定であってもよいし、キー連結による固定などであってもよい。
【0047】
好ましくは、ベースは一体型の円筒であり、円筒の頂部は開口され、かつ、陰極サンプルと密封して取り付けられ、円筒の底部には排液通路が設けられている。この場合、排液通路と回転可能な密閉継手との接続により、出力管が回転する問題を回避できる。
または、ベースが陰極ベース頂部蓋および固定台座(台座)を含み、陰極ベース頂部蓋の中央部は貫通孔であり、陰極ベース頂部蓋と固定台座とは回転可能に密封接続され、陰極ベース頂部蓋と固定台座とは冷却キャビティを構成する。好ましくは、陰極ベース頂部蓋と台座とは回転可能に接続され、陰極ベース頂部蓋と台座との間にはシールリングが設けられている。このようにして、陰極ベース頂部蓋と台座との回転可能な密封接続が実現される。この場合、台座を固定された出力管に接続すればよい。
【0048】
好ましくは、陰極ベース頂部蓋は、陰極サンプルと接続する第一接続部と、従動輪と接続する第二接続部と、を有し、第一接続部と従動輪とは距離が開けられている。好ましくは、第一接続部および第二接続部は二段式であり、第二接続部は従動輪と接続するためのフランジとして、第一接続部に沿って外側へ延伸する凸縁に位置され、これにより陰極ベース頂部蓋と従動輪との安定した接続を実現する。
【0049】
好ましくは、保護カバーの雰囲気入口は、軸方向に沿って吸気し、または、接線方向に沿って吸気する。保護雰囲気を軸方向に沿って吸気することで、アークへの気流進入による影響を低減できる。
【0050】
陰極材料の選別を行うには、手段として、よどみ点アブレーションであってよく、よどみ点アブレーションの時間、電力、およびアブレーション後の材料損失などのパラメータで材料の耐アブレーション性能を評価するため、試験では、よどみ点アブレーションも一つの試験選択である。
【0051】
よどみ点アブレーションでは上述の任意の測定システムを採用できる。電磁コイルを有する方法についていえば、電磁コイルに電力を供給しなければよい。回転駆動部品セットを有する方法についていえば、回転駆動部品セットの動作を停止させれば実現できる。
【0052】
測定システムを構築した後、陰極サンプルを試作してサンプル取付具に搭載してアブレーション試験を行う。アブレーション試験後后、陰極サンプルを取り出し、耐アブレーション性能の定量的な評価を行う。
【0053】
他の態様として、陰極は管状サンプルで、アークとプラットなフレーク状の陰極サンプルとにおいて相対的な変位をする測定システムおよび駆働装置が採用できる。
【0054】
好ましくは、陰極サンプルは中空管であり、陰極の両端は開口され、陰極サンプルの両端はそれぞれ高圧回転継手と密封接続され、一つの高圧回転継手は冷却剤の入力管に接続され、他の一つの高圧回転継手は冷却剤の出力管に接続されており、冷却剤は入力管から中空管に入って出力管から流出され、入力管と出力管との間には冷却剤を冷却する冷却機構が設けられ、または、入力管と出力管との間には冷却剤を供給する液体貯蔵装置が設けられ、陰極サンプルと駆動装置は接続されており、陽極は陰極サンプルの外表面に位置合わせされ、アークは陽極と陰極との間において形成され、陰極サンプルは中軸を回って自転し、アークのアーク根は陰極の外表面に沿って変位する。
【0055】
好ましくは、陽極が固定されるか、または、陽極が中空管軸に沿った平行移動を供する平行移動駆動機構と接続される場合、陽極が中空管軸に沿って平行移動するとき、アーク根は陰極の外表面に沿って螺旋線を形成し、陽極が固定される場合、アーク根は陰極の外表面に沿って円を形成する。
【0056】
好ましくは、高圧回転継手は、陰極サンプルに接続される第一接続部と、配管に接続される第二接続部と、を有し、第一接続部と第二接続部とは回転可能に密封接続され、第一接続部は駆動装置に接続され、第二接続部はブラケットに固定され、陰極サンプルは二つの高圧回転継手によってブラケットに設けられている。
【0057】
駆動装置は、モーターおよび伝動機構を含み、伝動機構は、ギヤ機構、タービンスクリュー機構またはチェーン伝動機構などである。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、以下のような効果を奏する。
1、陰極サンプルをフレーク状のサンプルに作製し、アークを生成するとともに、陰極サンプルに対してアークアブレーションを行い、かつ、陰極サンプルに対して冷却して、高温アーク風洞のアブレーション状況をシミュレーションできる。地上の高温アーク風洞に比べれば、実際の状況をシミュレーションできるとともに、陰極サンプルの必要とされる材料の量が少なく、構造が簡略化され、コストが低く、材料の選別が便利である。
【0059】
2、電磁コイルを設置することによって、アークを回転させ、陰極サンプルを固定した際、陰極サンプルに対するアークの移動アブレーションを実現できる。
【0060】
3、回転駆動部品セットを設置することによって、サンプルの自転を発生させ、アークを固定した際、陰極サンプルに対するアークの移動アブレーションを実現できる。
【0061】
4、材料の耐アブレーション性能の評価指標としてアブレーション速度を提示し、アブレーション速度を取得する具体的なステップを開示し、定量的に陰極材料の耐アブレーション性能を評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】実施例1を示す図である。
図2】保護カバーを示す図である。
図3】磁気駆動回転アーク発生装置の構成を示す図である。
図4】アーク根の回転を示す図である。
図5】電磁界によりアークが螺旋運動する原理を説明するための図であり、a)はアークの外側に電磁コイルを設けることを示す図であり、b)は帯電粒子の磁界での軸運動の分解を示す図であり、c)は求心力frの作用により帯電粒子が遠心力を受けてz方向の速度を持つことを示す図であり、d)z方向の速度を有する帯電粒子が円弧運動する際に求心力を受けることを示す図である。
図6】雰囲気が保護カバーの接線方向から吸気されることを示す図である。
図7】陰極サンプルのアクティブ回転によるアーク発生装置の構成を示す図である。
図8】アーク発生装置本体の分解図である。
図9】アーク発生装置の平面図である。
図10】陰極ベース頂部蓋を示す図である。
図11】電極背面の冷却水の流れを示す図である。
図12】サンプル表面においてアーク根が軸を回って回転する軌跡を示す図である。
図13】純銅サンプルのアブレーション後の破壊を示す図である。
図14】純銅アブレーション後の3次元輪郭図(アーク時間 720s)である。
図15】銅クロム合金Cu50Cr50電極のアブレーション後の3次元輪郭図(アーク時間 720s)である。
図16】純銅アブレーション後の3次元輪郭図(アーク時間 120s)である。
図17】管状サンプルの耐アブレーション測定システムの概略図である。
図18】管状サンプルの耐アブレーション測定システムの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る測定システムの具体的な構造例について詳細に説明する。
【0064】
(実施例1)
本実施例は、よどみ点アブレーションの測定システムに関する。
図1に示されるように、耐アブレーション材料を選別するためのアブレーション性能測定システムは、陽極6、陰極サンプルを搭載するサンプル取付具、陰極サンプルを冷却する冷却システム3、および保護カバー10を含む。アークは陰極と陽極6との間において生成され、アークは保護カバー10内に位置し、電磁コイル9により生成される磁場の方向は、陽極6から陰極に向かった方向に平行する。陽極6および陰極は、それぞれアーク給電電源1に接続されるポートを有する。陰極サンプル7は、サンプル取付具と着脱可能に接続される。
【0065】
陰極材料せお陰極サンプル7に作製してサンプル取付品に搭載し、保護カバー10を被せ、陽極6および陰極に電気を通せば、陽極6から陰極に向かってアークが生成され、アークは陰極に対してアブレーションを行う。同時に、冷却システム3は陰極を冷却する。アークおよび冷却システム3を制御することにより、実際のアークアブレーション状況をシミュレーションできる。アークアブレーション試験が完了した後、陰極サンプル7を取り外して、アブレーション後の材料について測定を行い、陰極サンプル7の耐アブレーション性能を判断する。
【0066】
サンプル取付具はサンプル搭載領域を有し、搭載された陰極サンプル7はフレーク状のサンプルであり、陽極6はサンプル搭載領域と中心が位置合わせされている。フレーク状のサンプルは比較的に作りやすく、製造工程も比較的に簡単で、必要な材料も少ない。高温のアーク風洞の陰極に比べて、本発明では、陰極サンプルの量とサイズに対する要求を大幅に低減している。
【0067】
冷却システム3の冷却キャビティはサンプル搭載領域内に位置され、陰極サンプル7と冷却キャビティとの間には金属製のシールリング5が設けられている。金属シールリング5は、冷却システム3のシール性を良好に保つため、高温のアブレーションに耐えて破壊されないことが必要である。絶縁リング8は、陰極サンプル7をサンプル取付具に圧着する。
【0068】
(実施例2)
本実施例は、必要に応じて保護雰囲気(保護気体)を通す材料の耐アブレーション性能測定システムに関する。
本実施例は、図2に示されるように、保護カバー10には雰囲気入り口12が設けられている点で実施例1と異なる。雰囲気入口12は、配管を介して高圧給気システムと接続されている。雰囲気入口12は、アークアブレーションが行われる空間内に保護雰囲気を進入させる。どのような気体を通す必要があれば、雰囲気入口12の配管はその気体源4と接続する。たとえば、窒素を通す場合、窒素源4と接続し、空気を通す場合、空気源4と接続する。
【0069】
測定システムには台座11が設けられ、保護カバー10は、サンプル取付具を保護カバー10と台座11との間に密閉する。当然でありながら、密閉しなくてもよい。
本実施例に係るその他の構造は、実施例1と同じである。
【0070】
(実施例3)
本実施例は、陰極に対してアークが回転する材料の耐アブレーション性能測定システムに関する。
本実施例は、図4に示されるように、陰極サンプル7が固定されており、アークが陰極サンプル7の中心を回って回転する点で実施例1または2と異なる。
【0071】
図3に示されるように、測定システムは電磁コイル9を有し、電磁コイル9の磁界方向は陽極6から陰極に向かった方向と平行であり、電磁コイル9はコイル電源2と接続するポートを有する。サンプル搭載領域の外側には絶縁リング8が設けられており、絶縁リング8はサンプル搭載領域と中心が位置合わせされている。電磁コイル9は、保護カバー10の外側に設けられている。絶縁リング8が外側にあり、陰極サンプル7が内側にあるため、絶縁リング8はアークをその内側に収める。
【0072】
図4に示されるように、サンプル取付具はベースを含み、ベースには冷却キャビティが設けられ、冷却キャビティはそれぞれ給液管および排液管に連通されており、陰極サンプル7がサンプル取付具に搭載されると、陰極サンプル7は冷却キャビティを密閉する。陰極サンプル7が冷却キャビティを密閉することとは、給液管および排液管の他、冷却キャビティはその他の開口部を有しないことをいう。
【0073】
冷却媒体は陰極サンプル7に接触して、陰極サンプル7に対して冷却放熱作用を果たし、陰極サンプル7がアークに接触すると破壊されることを避け、陰極材料が長時間アブレーションされる状況をシミュレーションする。
【0074】
冷却キャビティは、ベースの頂部開口に設けられた凹部キャビティであり、サンプルがサンプル取付具に搭載された際、陰極サンプル7は冷却キャビティの頂部開口を密閉する。
【0075】
図3に示されるように、給液管および排液管はベースの側面に設けられている。給液管は出液管より下側へ設けられている。循環冷却システム3は、液体貯蔵タンクおよびポンプを有し、液体貯蔵タンクはそれぞれ配管を介して給液管および排液管に接続され、ポンプは配管上に設置されている。陰極サンプル7は円形を呈し、冷却キャビティは円形キャビティを呈する。保護カバー10の断面は円形を呈し、雰囲気入口12は、接線方向に沿って吸気する。図2に示したように、雰囲気入口12は少なくとも一組有し、雰囲気入口12が複数組を有する場合、複数組の雰囲気入口12は輪郭の周方向に均一に配置されている。雰囲気(気体、空気)は接線方向に沿ってアークの発生する領域内に入り、アークのために回転補助の力を提供する。
本実施例に係るその他の構造は、実施例1または2と同じである。
【0076】
(実施例4)
本実施例では、アークが回転するとともにサンプルも自転する。
本実施例は、図7に示されるように、サンプル取付具が陰極サンプル7を載置しながら中心を自転し、アークは固定されるか径方向に平行移動する点で、実施例1または2と異なる。
【0077】
図7および図8に示されるように、サンプル取付具はベースを含み、ベースは冷却キャビティおよび給液リングを有し、冷却キャビティはサンプル搭載領域内に位置され、陰極サンプル7をサンプル取付具に搭載した際、陰極サンプル7とサンプル搭載領域は中心が位置合わせされている。冷却キャビティが内側に位置し、給液リングが外側に位置し、給液リングと冷却キャビティとは連通され、かつ、回転可能に密封接続されており、給液リングは固定されかつ給液管と接続されており、冷却キャビティの中央には排液通路が設けられている。測定システムは回転可能な駆動部品セットを有し、回転可能な駆動部品セットはベースに固定された従動輪13とモーター14に接続された能動輪15を有し、従動輪13はベースと中心が位置合わせされている。
【0078】
図7に示したように、回転可能な駆動部品セットは中心を自転するように陰極サンプル7を駆動させ、ベースは回転可能な駆動部品セットにともなって回転し、サンプルはベースにともなって自転する。給液リングは固定され、冷却媒体の入力管19に接続されている。排液通路を冷却キャビティの中心に設置し、排液通路上に回転可能な液体密封継手を接続する。このようにするだけで、給液リングおよび排液通路を介して、冷却媒体の冷却キャビティにおける循環が実現され、陰極サンプル7を継続的に冷却できる。
【0079】
図10および図11に示されるように、ベースは円筒形を呈し、冷却キャビティの側壁には複数の貫通孔が設けられ、給液リングは円環状を呈し、給液環はすべての貫通孔を覆い、給液リングとベースとの間にはシールリング5が設けられている。シールリング5は、冷却媒体を給液リングおよび冷却キャビティ内に閉じ込め、給液リングはリング全体の周方向から冷却キャビティ内に給液する。
【0080】
給液リングを設けることにより、冷却媒体の入力管19がベースにともなって回転することを回避し、配管の巻き付き問題を回避する。
【0081】
ベースは従動輪13と同軸に固定され、ベースが内側で、従動輪13が外側に位置される。ベースと従動輪13との固定は、ほぞ継ぎによる固定であってもよいし、キー連結による固定などであってもよい。
【0082】
ベースは一体型の円筒であり、円筒の頂部は開口され、かつ、陰極サンプル7と密封して取り付けられ、円筒の底部には排液通路が設けられている。この場合、排液通路と回転可能な密閉継手との接続により、出力管18が回転する問題を回避できる。
【0083】
保護カバー10の雰囲気入口12は、軸方向に沿って吸気し、および/または、図9に示すように、接線方向に沿って吸気する。保護雰囲気を軸に沿って吸気することで、アークへの気流進入の影響を低減できる。
本実施例に係るその他の特徴は、実施例1または2と同じである。
【0084】
(実施例5)
本実施例は、図8に示されるように、ベースが陰極ベース頂部蓋12および台座11を含み、陰極ベース頂部蓋12の中央部は貫通孔であり、陰極ベース頂部蓋と台座11とは回転可能に密封接続され、陰極ベース頂部蓋12と台座11とは冷却キャビティを構成する点で、実施例4と異なる。
【0085】
陰極ベース頂部蓋12と台座とは回転可能に接続され、陰極ベース頂部蓋12と台座11との間にはシールリング5が設けられている。このようにして、陰極ベース頂部蓋12と台座11との回転可能な密封接続が実現される。この場合、台座11を固定された出力管18に接続すればよい。
【0086】
陰極ベース頂部蓋12は、陰極サンプル7と接続する第一接続部と、従動輪13と接続する第二接続部と、を有し、第一接続部と従動輪13とは距離が開けられている。第一接続部および第二接続部は二段式であり、第二接続部は従動輪13と接続するためのフランジとして、第一接続部に沿って外側へ延伸する凸縁に位置され、これにより陰極ベース頂部蓋12と従動輪13との安定した接続を実現する。
本実施例に係るその他の特徴は、実施例4と同じである。
【0087】
(実施例6)
本実施例に係る材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する方法は、以下のステップを含む。
(ステップS1)
測定システムを構築または取得する。測定システムはよどみ点アブレーションを採用し、保護カバー10の雰囲気は空気である。
(ステップS2)
陰極サンプルを準備する。ライン切断方式により個々のサンプルサイズが68*18*3 mmのフレーク状サンプルを準備する。電極材料は純銅で、密度は8.9g/cmである。ここで、アーク接触面(頂面)を500-2000目のサンドペーパーで研磨して艶出し(磨き上げ)することにより、表面粗さがRa≦0.8μm、サンプル熱伝導率が395W m-1-1、電気伝導率が99%IACS、硬度が80HVであることを保証する。
(ステップS3)
陰極サンプル7を測定システムに搭載し、陰極サンプル7に対してアークアブレーション試験を行い、アークアブレーションのパラメータを記録する。ここで、アークアブレーションのパラメータは、アーク電流が15A、アーク時間が720s、電極背面冷却液の流量が0.8L/min、アーク長さが約3~4mm、光フィルター条件の下でアークスポット直径が約0.5~0.8mm、陰極サンプル7の表面アークスポットの自発移動速度が約10-2m/sである。アークは陰極サンプル7に対して、よどみ点アブレーションを行う。
(ステップS4)
アークアブレーション試験後の陰極サンプル7を取り出し(取り外し)、陰極サンプル7を冷却した後、陰極サンプル7に対して洗浄および乾燥を行い、さらにアブレーション領域の3次元輪郭情報を取得することでアブレーション損傷体積(アブレーション体積)として672±2.57mmを取得し、アブレーション損傷体積をアブレーション電力で割ることでアブレーション損傷速度(アブレーション速度)として(62.2±0.238)×10-3mm/Cを取得し、アブレーション損傷速度を電極材料の耐アブレーション性能を定量的に評価する指標とする。
【0088】
図13に示されるように、電極アブレーションにおいて採用されるフレーク状の純銅サンプルは、加工サイズが68*18*3mm、密度が8.9g/cmである。ここで、アーク接触面(頂面)を500-2000目のサンドペーパーで研磨して艶出しすることにより、表面粗さがRa≦0.8μmを保証する。アブレーション後、よどみ点アブレーションもとでは、電極表面に直径が約5mmの円形のアブレーション孔が残り、エッジ部はアブレーションされていない領域との境界がはっきりしている。
【0089】
図14に示される3次元輪郭図の対応するサンプルは、図13のよどみ点アブレーション後の純銅サンプルである。この3次元輪郭図に基づいて、任意のXZまたはYZ方向の線輪郭情報およびXOY平面と平行するアブレーション損傷体積などを得ることができる。この図に対応して、測定されたアブレーション損傷体積は672±2.57mmであり、換算されたアブレーション損傷速度は(62.2±0.238)×10-3mm/Cである。図からわかるように、アブレーション損傷領域では凹部が目立ち、アブレーションされていない領域との境界には高さが約50~100μmの押し出しピークがある。これは、純銅の高熱伝導率が溶融池の凝固を加速させたためである。
【0090】
(実施例7)
本実施例は、陰極サンプル7が銅クロム合金電極サンプル(Cu50Cr50)である点で実施例6と異なる。陰極サンプル7の寸法は同じく68*18*3mmで、サンプル熱伝導率は236Wm-1-1で、導電率は60%IACSで、硬度は170HVである。
本実施例に係るその他の構造およびパラメータは、いずれも実施例6と同じである。
【0091】
図15は、銅クロム合金電極サンプル(Cu50Cr50)のアブレーション損傷の3次元輪郭を示す図である。銅クロム合金電極サンプルは15Aのアークの下でよどみ点アブレーション720s、アーク長さが約2~3mm、光フィルター条件の下でアークスポット直径が約0.6~0.9mm、陰極サンプル7の表面アークスポット自発移動速度が約(0.4~0.6)×10-2m/sの条件下で測定して得たアブレーション損傷体積は526±6.21mm、換算したアブレーション損傷速度は(48.7±0.575)×10-3mm/Cである。アブレーション後に図13と比較すると、該サンプルのアブレーション損傷領域の側壁が比較的に滑らかで、部分的な高低のすれ違いが緩和され、アブレーションされた領域とアブレーションされていない領域との境界における押し出しピークの高さが低くなったことがわかる。
【0092】
(実施例8)
本実施例は、陰極サンプル7が純クロム電極サンプル(Cr)である点で実施例6と異なる。陰極サンプル7の寸法は同じく68*18*3mmであり、サンプル熱伝導率は95Wm-1-1であり、導電率は13%IACSであり、硬度は861HVである。
本実施例に係るその他の構造およびパラメータは、実施例6と同じである。
【0093】
アークアブレーション試験後の陰極サンプル7を取り出し、陰極サンプル7を冷却した後、陰極サンプル7に対して洗浄および乾燥を行い、さらにアブレーション損傷領域の3次元輪郭情報を取得することによりアブレーション損傷体積として510±3.02mmを取得し、アブレーション損傷体積をアブレーション電力で割ることでアブレーション損傷速度として(47.2±0.28)×10-3mm/Cが得られる。
【0094】
(実施例9)
本実施例は、ライン切断方式により個々のサンプル直径が60mm、厚さが3mmの円板状陰極サンプル7を準備した点で、実施例6と異なる。電極材料は純銅で、密度は8.9g/cmである。アーク接触面(頂面)は500-2000目のサンドペーパーで研磨して艶出しすることにより、表面粗さがRa≦0.8μmで、サンプル熱伝導率が397Wm-1-1で、電気伝導率が99%IACSで、硬度が75HVであることを保証する。
【0095】
アークアブレーション試験のパラメータは、アーク電流が20A、アークアブレーションのアーク時間が120s、アーク長さが4~5mm、陰極スポットの直径が0.5~0.8mm、陰極スポット移動速度が10-2m/sである。
【0096】
アークアブレーション試験後の陰極サンプル7を取り外し、陰極サンプル7を冷却した後、陰極サンプル7に対して洗浄および乾燥を行い、さらにアブレーション損傷領域の3次元輪郭情報を取得することによりアブレーション損傷体積として137±1.15mm、アブレーション損傷体積をアブレーション電力で割ることでアブレーション損傷速度として(57.1±0.479)×10-3mm/Cが得られる。
【0097】
図16に示すように、実施例2の試験条件に対応して走査された円板状純銅電極の3次元輪郭図において、中心の緑色の領域は周囲のベース平面に比べてアブレーション損傷により凹んだ領域であり、アブレーション損傷領域とアブレーション損傷されていない領域との間には、赤色の押し出し領域がある。
【0098】
(実施例10)
本実施例は、測定システムが電磁コイル9を採用する点で、実施例6と異なる。電磁コイル9は、直径が150mmで、巻き数が20で、3Aの直流が供給されるもとで、コイル中心より長さが30mm、直径が75mmの范囲内において、磁界范囲が-120μT~120μTの均一な磁界を生成し、磁界の方向は陽極6から陰極に向かった方向と平行する。
【0099】
陰極サンプル7は、ライン切断方式により個々のサンプルの直径が60mm、厚さが3mmの円板状サンプルを準備(作製)する。電極材料は純銅、密度は8.9g/cmである。アーク接触面(頂面)は500-2000目のサンドペーパーで研磨して艶出しすることにより、表面粗さがRa≦0.8μm、サンプル熱伝導率が395Wm-1-1、電気伝導率(導電率)が99%IACS、硬度が82HVであることを保証する。
【0100】
アークアブレーション試験のアークパラメータは、アーク電流が20A、アークアブレーションのアーク時間が120s、アーク長さが8~10mm、陰極スポットの直径が0.6~0.8mm、陰極スポットの移動速度が0.5~0.8m/s、磁界強度が75μTである。
【0101】
ステップS4として、アークアブレーション試験後の陰極サンプル7を取り外し、陰極サンプル7を冷却した後、陰極サンプル7に対して洗浄および乾燥を行い、さらにアブレーション損傷領域の3次元輪郭情報を取得することによりアブレーション損傷体積として96.1±8.27mmが取得され、アブレーション損傷体積をアブレーション電力で割ることでアブレーション損傷速度として(40.0±3.45)×10-3mm/Cが得られる。
【0102】
(実施例11)
本実施例は、測定システムが電磁コイル9を採用し、電磁コイル9の直径が150mmで、2Aの直流が供給されるもとで、コイル中心より長さが30mm、直径が65mmの范囲内において、磁界范囲が-80μT~80μTの均一な磁界を生成し、磁界の方向は陽極6から陰極に向かった方向と平行する点で実施例10と異なる。
本実施例に係るその他の構成およびパラメータは、実施例8と同じである。
【0103】
アークアブレーション試験後の陰極サンプル7を取り外し、陰極サンプル7を冷却した後、陰極サンプル7に対して洗浄および乾燥を行い、さらにアブレーション損傷領域の3次元輪郭情報を取得することによりアブレーション損傷体積として112.7±6.12mmが取得され、アブレーション損傷体積をアブレーション電力で割ることでアブレーション損傷速度として(47.0±2.55)×10-3mm/Cが得られる。
【0104】
(実施例12)
本実施例は、陰極材料を採用(銅クロム合金電極サンプル(Cu50Cr50)、陰極サンプル7のサイズは同じであり、サンプル熱伝導率は239Wm-1-1、電気伝導率は61%IACS、硬度は168HVである)している点で、実施例10と異なる。
本実施例に係るその他のパラメータ、構造は、実施例10と同じである。
【0105】
アークアブレーション試験後の陰極サンプル7を取り外し、陰極サンプル7を冷却した後、陰極サンプル7に対して洗浄および乾燥を行い、さらにアブレーション損傷領域の3次元輪郭情報を取得することによりアブレーション損傷体積として86.9±2.19mmが取得され、アブレーション損傷体積をアブレーション電力で割ることでアブレーション損傷速度として(36.2±0.91)×10-3mm/Cが得られる。
【0106】
(実施例13)
本実施例は、陰極材料を採用(純クロム電極サンプル(Cr)、陰極サンプル7のサイズは同じであり、サンプル熱伝導率は96Wm-1-1、電気伝導率は13%IACS、硬度は862HVである)している点で、実施例10と異なる。
本実施例に係るその他のパラメータ、構造は、実施例10と同じである。
【0107】
アークアブレーション試験後の陰極サンプル7を取り外し、陰極サンプル7を冷却した後、陰極サンプル7に対して洗浄および乾燥を行い、さらにアブレーション損傷領域の3次元輪郭情報を取得することによりアブレーション損傷体積として79.8±1.02mmが取得され、アブレーション損傷体積をアブレーション電力で割ることでアブレーション損傷速度として(33.2±0.43)×10-3mm/Cが得られる。
【0108】
(実施例14)
本実施例は、測定システムが回転駆動部品セット(モーターの静的モーメントが2.2N・m、定格電流が4A、口径が38mm、軸長が25mm)を採用する点で実施例6と異なり、回転駆動部品セットによる出力回転速度は540rpm、サンプル取付具の自転角速度は40~50rad/sである。
【0109】
陰極サンプル7は、ライン切断方式により個々のサンプルの直径が60mm、厚さが3mmの円板状サンプルを準備(作製)する。電極材料は純銅、密度は8.9g/cmである。アーク接触面(頂面)は500-2000目のサンドペーパーで研磨して艶出しすることにより、表面粗さがRa≦0.8μm、サンプル熱伝導率が393Wm-1-1、電気伝導率が98%IACS、硬度が96HVであることを保証する。
【0110】
アークアブレーション試験のアークパラメータは、アーク電流が20A、アークアブレーションのアーク時間が120s、アーク長さが6~8mm、陰極スポットの直径が0.4~0.5mm、陰極スポットの移動速度が0.3~0.5m/sである。
【0111】
アークアブレーション試験後に得られる陰極サンプル7のアブレーション損傷体積は114±6.73mmであり、アブレーション損傷体積をアブレーション電力で割ることでアブレーション損傷速度として(47.5±2.80)×10-3mm/Cが得られる。このアブレーション損傷速度を電極材料の耐アブレーション性能を評価する指標とする。
【0112】
(実施例15)
本実施例は、回転駆動部品セットの自転角速度が回転駆動部品セットの出力回転速度180rpmで、換算した後のサンプル取付具の自転角速度が10~20rad/sである点で、実施例14と異なる。
本実施例に係るその他のパラメータおよび構成は、実施例14と同じである。
【0113】
アークアブレーション試験後に得られる陰極サンプル7のアブレーション損傷体積は124±5.62mmであり、アブレーション損傷体積をアブレーション電力で割ることでアブレーション損傷速度として(51.7±2.34)×10-3mm/Cが得られる。このアブレーション損傷速度を電極材料の耐アブレーション性能を評価する指標とする。
【0114】
(実施例16)
本実施例は、電極材料が(銅クロム合金電極サンプル(Cu50Cr50)、陰極サンプル7のサイズが同じで、サンプル熱伝導率が236Wm-1-1、電気伝導率が60%IACS、硬度が166HV)実施例14と異なる。
本実施例に係るその他のパラメータおよび構造は、実施例14と同じである。
【0115】
アークアブレーション試験後に得られる陰極サンプル7のアブレーション損傷体積は102±3.21mmであり、アブレーション損傷体積をアブレーション電力で割ることでアブレーション損傷速度として(42.8±1.34)×10-3mm/Cが得られる。このアブレーション損傷速度を電極材料の耐アブレーション性能を評価する指標とする。
【0116】
(実施例17)
本実施例は、電極材料が(純クロム電極サンプル(Cr)、陰極サンプル7のサイズが同じで、サンプル熱伝導率が97Wm-1-1、電気伝導率が13%IACS、硬度が860HV)実施例14と異なる。
本実施例に係るその他のパラメータおよび構造は、実施例14と同じである。
【0117】
アークアブレーション試験後に得られる陰極サンプル7のアブレーション損傷体積は93.1±4.15mmであり、アブレーション損傷体積をアブレーション電力で割ることでアブレーション損傷速度として(38.8±1.73)×10-3mm/Cが得られる。このアブレーション損傷速度を電極材料の耐アブレーション性能を評価する指標とする。
【0118】
【表1】
表1に示されるように、特徴パラメータについて説明する。
1.組み合わせ1:コイルにより生成される磁気で駆動、給電電流は3A、磁界中心の強さは-120μT~120μT、陰極スポットの移動速度は0.5~0.8m/s;
2.組み合わせ2:コイルにより生成される磁気で駆動、給電電流は2A、磁界中心の強さは-80μT~80μT、陰極スポットの移動速度は0.2~0.4m/s;
3.組み合わせ3:電極で駆働、出力回転速度は540rpm、サンプル取付具の自転角速度は40~50rad/s;
4.組み合わせ4:電極で駆働、出力回転速度は180rpm、サンプル取付具の自転角速度は10~20rad/s。
【0119】
<耐アブレーション性能分析>
1.実施例6、7、8、実施例10、12、13および実施例14、16、17を比較すると、耐アブレーション性能は、純クロムが最も優秀で、銅クロムがその次で、純銅が最も悪い。
2.実施例10と9を比較すると、磁界コイルを使用したほうが効果的に電極の耐アブレーション性能を向上させることができる。
3.実施例11と10を比較すると、磁界コイルを使用した方法において、磁界強度を高めてアーク根の回転速度を増加させることで、電極のアブレーションを弱めることができる。
4.実施例14と9と比較すると、モーターを使用してサンプル回転を駆動するほうが電極の耐アブレーション性能を向上させることができる。
5.実施例14と15を比較すると、モーターを使用してサンプル回転を駆動する方法において、モーターの回転速度を上げることで、電極のアブレーションを弱めることができる。
【0120】
(実施例18)
図17および図18に示されるように、材料の耐アブレーション性能を測定する際、陰極は管状のサンプルで、アークとプラットフレーク状の陰極サンプル7とが相対的に変位する測定システムおよび駆働装置が使用される。
【0121】
図18に示されるように、陰極サンプル7は中空管であり、陰極の両端は開口され、陰極サンプル7の両端はそれぞれ高圧回転継手17と密封接続され、一つの高圧回転継手17は冷却剤の入力管19に接続され、他の一つの高圧回転継手17は冷却剤の出力管18に接続されており、冷却剤は入力管19から中空管に入って出力管18から流出され、入力管19と出力管18との間には冷却剤を冷却する冷却機構が設けられ、または、入力管19と出力管18との間には冷却剤を供給する液体貯蔵装置21が設けられ、陰極サンプル7と駆動装置は接続されており、陽極6は陰極サンプル7の外表面に位置合わせされ、アークは陽極6と陰極との間において形成され、陰極サンプル7は中軸を回って自転し、アークのアーク根は陰極の外表面に沿って変位する。
【0122】
陽極6が固定されるか、または、陽極6が中空管軸に沿った平行移動を供する平行移動駆動機構と接続される。陽極6が中空管軸に沿って平行移動するとき、アーク根は陰極の外表面に沿って螺旋線を形成する。陽極が固定される場合、アーク根は陰極の外表面に沿って円を形成する。
【0123】
高圧回転継手17は、陰極サンプル7に接続される第一接続部と、配管に接続される第二接続部と、を有し、第一接続部と第二接続部とは回転可能に密封接続され、第一接続部は駆動装置に接続され、第二接続部はブラケットに固定され、陰極サンプル7は二つの高圧回転継手17によってブラケットに設けられている。
【0124】
駆動装置は、モーター14および伝動機構20を含み、伝動機構20は、ギヤ機構、タービンスクリュー機構またはチェーン伝動機構20などである。
【0125】
上記平面移動を駆動する機構は、それぞれ独立したモーターで駆動される3本の高精細リニアレールを含み、制御センターで動作を一元的に制御することで、アブレーション試験前の位置決め、試験中のルート制御、および試験終了時の原点復帰などの動作を実現でき、リニアレールの位置決め精度は0.5mmである。
【0126】
上述の技術解決手段によれば、以下のような効果を奏する。
1.立体空間においてアークアブレーション試験の多様な形態を実現し、加熱器の復雑なアーク-電極相互作用プロセスのシミュレーションを実現できる。
2.アーク出力端のZ軸方向の位置決めで、材料に対する可変アーク長によるアブレーションを実現できる。
3.三軸のレールの迅速な位置決めおよび原点復帰動作により、測定システムの迅速な立ち上げや高い重複性を実現できる。
4.フレーク状のサンプルを采用することで、オリジナル素地の加工プロセスを簡略化でき、組み立てが早く、試験の再現性が良い。
5.高精密分流器によりアークの電流および電圧のパラメータをリアルタイムに取得できる。
6.リアルタイムにシステムをモニターリングすることでアークの形態の記録が可能であることを保証できる。
【0127】
以上の実施例に記載された内容は、本発明の技術的思想を実現する例示に過ぎず、本発明の保護範囲は、実施例に記載された具体的な形態に限定されるものと見るべきではなく、本発明の保護範囲は、いわゆる当業者が本発明の技術的思想から想到できる均等な技術解決手段の範囲にも及ぶ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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