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特許7236721固定装置、および当該固定装置を備えた固定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】固定装置、および当該固定装置を備えた固定システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/00 20060101AFI20230303BHJP
   B23Q 7/00 20060101ALI20230303BHJP
   B25J 15/04 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
B23Q3/00 A
B23Q7/00 E
B25J15/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018212957
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020078843
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】春名 陽介
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-115166(JP,A)
【文献】特開2008-105122(JP,A)
【文献】特開2006-123103(JP,A)
【文献】特開2003-311568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/00
B23Q 7/00
B25J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準部材(R)に可動部材(M)を着脱可能に固定する固定装置(1)であって、
上記可動部材(M)に形成された第1孔(M1)に挿入可能な筒部材(12)であって、先端側に開口(12c)を有する筒部材(12)と、
上記筒部材(12)の周壁に設けられると共に、上記可動部材(M)と係合する係合部材(14)であって、上記筒部材(12)の半径方向に移動可能な係合部材(14)と、
上記筒部材(12)内に挿入され、当該筒部材(12)の軸方向へ移動可能な出力部材(15)であって、上記開口(12c)を介して押圧されることにより上記係合部材(14)を係合位置(X)または係合解除位置(Y)に移動させる出力部材(15)とを備え
上記出力部材(15)が押圧されたとき、上記係合部材(14)は上記係合位置(X)から上記係合解除位置(Y)に移動する、
ことを特徴とする固定装置(1)。
【請求項2】
請求項1の固定装置(1)において、
上記出力部材(15)を先端側へ付勢するバネ部材(16)をさらに備える、
ことを特徴とする固定装置(1)。
【請求項3】
請求項1または2の固定装置(1)において、
上記係合部材(14)を複数の係合ボール(14)により構成し、
上記第1孔(M1)に被係合部材(6)が設けられており、
上記係合ボール(14)は、上記係合位置(X)において上記被係合部材(6)の内周面(61a)に係合することにより、上記基準部材(R)に上記可動部材(M)を固定する、
ことを特徴とする固定装置(1)。
【請求項4】
上記基準部材(R)に設けられる請求項1からのいずれか1項の固定装置(1)と、
上記可動部材(M)を搬送する搬送装置(2)と、
上記搬送装置(2)に設けられるシリンダ装置(3)であって、上記開口(12c)に挿入可能な押圧部材(32c)を有するシリンダ装置(3)と、
上記搬送装置(2)に設けられるクランプ装置(4)であって、上記可動部材(M)をクランプするクランプ装置(4)とを備える、
ことを特徴とする固定システム。
【請求項5】
請求項の固定システムにおいて、
上記クランプ装置(4)は、上記可動部材(M)に形成された第2孔(M2)の内周面と係合することにより上記可動部材(M)をクランプする、
ことを特徴とする固定システム。
【請求項6】
請求項またはの固定システムにおいて、
上記搬送装置(2)をロボットアーム(2)により構成し、
上記シリンダ装置(3)および上記クランプ装置(4)は、上記ロボットアーム(2)の先端部(2a)に設けられる、
ことを特徴とする固定システム。
【請求項7】
基準部材(R)に可動部材(M)を着脱可能に固定する固定装置(1)であって、
上記可動部材(M)に形成された第1孔(M1)に挿入可能な筒部材(12)であって、先端側に開口(12c)を有する筒部材(12)と、
上記筒部材(12)の周壁に設けられると共に、上記可動部材(M)と係合する係合部材(14)であって、上記筒部材(12)の半径方向に移動可能な係合部材(14)と、
上記筒部材(12)内に挿入され、当該筒部材(12)の軸方向へ移動可能な出力部材(15)であって、上記開口(12c)を介して押圧されることにより上記係合部材(14)を係合位置(X)または係合解除位置(Y)に移動させる出力部材(15)とを備える、上記基準部材(R)に設けられる固定装置(1)と、
上記可動部材(M)を搬送する搬送装置(2)と、
上記搬送装置(2)に設けられるシリンダ装置(3)であって、上記開口(12c)に挿入可能な押圧部材(32c)を有するシリンダ装置(3)と、
上記搬送装置(2)に設けられるクランプ装置(4)であって、上記可動部材(M)をクランプするクランプ装置(4)とを備える、
ことを特徴とする固定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固定装置に関し、より詳しく言えば、マシニングセンタのテーブル等の基準部材にワークパレット等の可動部材を着脱可能に固定する固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の固定装置には、特許文献1(国際公開第2004/012902号)に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
【0003】
その従来公報の第1図に示すように、基準部材に設けられた圧油給排路を経て油圧室へ圧油が供給される。その油圧室の油圧力によってピストンがクランプバネに抗してロッドを上昇させ、各ボール(係合ボール)が退避溝に対面して係合解除位置へ移動することで、ロック解除状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2004/012902号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術は次の問題がある。通常、ワークパレット等の可動部材は、ロボットアーム等の搬送装置によって搬送される。このため、上記の従来技術では、可動部材を搬送する操作と、固定装置をロック状態とロック解除状態とに切り換える操作とを個別に行う必要性があり操作が煩雑であった。
【0006】
本発明の目的は、操作を簡略化することが可能な固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、図1から図5に示すように、固定装置を次のように構成した。
基準部材Rに可動部材Mを着脱可能に固定する固定装置1であって、上記可動部材Mに形成された第1孔M1に挿入可能な筒部材12が、先端側に開口12cを有する。上記筒部材12の周壁に設けられると共に、上記可動部材Mと係合する係合部材14が、上記筒部材12の半径方向に移動可能となっている。上記筒部材12内に挿入され、当該筒部材12の軸方向へ移動可能な出力部材15が、上記開口12cを介して押圧されることにより上記係合部材14を係合位置Xまたは係合解除位置Yに移動させる。
【0008】
本発明は、上記のように構成されることから、次の作用効果を奏する。
例えば固定装置によって可動部材が基準部材に固定されている場合、固定装置の先端側に形成された開口を介して出力部材を押圧操作することにより、固定装置をロック状態からロック解除状態に切り換える構成とすることができる。このため、例えば可動部材を搬送する搬送装置に出力部材を押圧操作するための押圧部材を設けることにより、可動部材の搬送と、固定装置のロック状態とロック解除状態との切り換えとを、搬送装置で操作することが可能となる。したがって、本発明によれば、操作を簡略化することが可能な固定装置を提供することができる。
【0009】
上記の本発明は、下記(1)から(3)のとおり構成することが好ましい。
(1)例えば図3および図4に示すように、上記出力部材15が押圧されたとき、上記係合部材14は上記係合位置Xから上記係合解除位置Yに移動する。
【0010】
この場合、出力部材が押圧される間はロック解除状態となる固定装置を構成することができる。
【0011】
(2)例えば図1図5に示すように、上記出力部材15を先端側へ付勢するバネ部材16をさらに備える。
【0012】
この場合、出力部材が押圧されていないとき出力部材は先端側に戻るため、出力部材の押圧操作に連動した、固定装置のロック状態とロック解除状態との切り換えを好適に行うことができる。また、固定装置の作動に圧油等の圧力流体が不要となるため、固定装置および基準部材の構成を簡略化することができる。
【0013】
(3)例えば図1図5に示すように、上記係合部材14を複数の係合ボール14により構成し、上記第1孔M1に被係合部材6が設けられており、上記係合ボール14は、上記係合位置Xにおいて上記被係合部材6の内周面61aに係合することにより、上記基準部材Rに上記可動部材Mを固定する。
【0014】
この場合、係合ボールが可動部材の第1孔に設けられた被係合部材の内周面に係合するため、基準部材に可動部材をより確実に固定することができる。
【0015】
また、上記の目的を達成するため、本発明は、例えば図1から図5に示すように、固定システムを次のように構成した。
固定システムであって、上記基準部材Rに設けられ上記固定装置1と、上記可動部材Mを搬送する搬送装置2と、上記搬送装置2に設けられるシリンダ装置3であって、上記開口12cに挿入可能な押圧部材32cを有するシリンダ装置3と、上記搬送装置2に設けられるクランプ装置4であって、上記可動部材Mをクランプするクランプ装置4とを備える。
【0016】
この場合、可動部材の搬送と、固定装置のロック状態とロック解除状態との切り換えとを、搬送装置で操作することができる。したがって、本発明によれば、操作を簡略化することが可能な固定システムを提供することができる。
【0017】
上記の本発明は、下記(4)および(5)のとおり構成することが好ましい。
【0018】
(4)例えば図2から図5に示すように、上記クランプ装置4は、上記可動部材Mに形成された第2孔M2の内周面と係合することにより上記可動部材Mをクランプする。
【0019】
この場合、可動部材に形成された第1孔および第2孔に対して同一方向からシリンダ装置およびクランプ装置を挿入することで、固定装置のロック状態とロック解除状態との切り換えと、可動部材のクランプとを行うことができる。
【0020】
(5)例えば図1から図5に示すように、上記搬送装置2をロボットアーム2により構成し、上記シリンダ装置3および上記クランプ装置4は、上記ロボットアーム2の先端部2aに設けられる。
【0021】
この場合、可動部材の搬送と、固定装置のロック状態とロック解除状態との切り換えとを、ロボットアームで好適に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の実施形態を示し、固定装置を利用した固定システムの立面視の断面図である。
図2図2は、上記固定システムのクランプ装置がワークパレットをクランプした状態を示す、上記図1に類似する図である。
図3図3は、上記固定システムの固定装置のロックが解除された状態を示す、上記図1に類似する図である。
図4図4は、上記固定システムのロボットアームが上昇した状態を示す、上記図1に類似する図である。
図5図5は、上記ロボットアームがさらに上昇した状態を示す、上記図1に類似する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図1から図5によって説明する。
【0024】
まず、図1から図5に基づいて、固定システムの各部の構造を説明する。固定システムは、可動部材としてのワークパレットMを、基準部材としてのテーブルRに固定する固定装置1と、搬送装置としてのロボットアーム2と、当該ロボットアーム2の先端部2aに設けられるシリンダ装置3およびクランプ装置4とを備える。
【0025】
まず、固定装置1の構造を説明する。図1に示すように、テーブルRの上面に固定装置1のハウジング11が取り付けられる。ハウジング11は、先端側がテーブルRの上面から突出しており、基端側がテーブルRに埋設される。そのハウジング11は、筒部材12と、当該筒部材12の下方から嵌入される下壁13とを有する。
【0026】
上記の筒部材12内の基端側に収容孔12aが上下方向(筒部材12の軸方向)に形成される。また、その収容孔12aに連通するように、筒部材12内の先端側に収容孔12aよりも小径の操作孔12bが上下方向に形成される。操作孔12bは、筒部材12の先端側で開口することで開口12cを形成する。
【0027】
筒部材12の周壁に、ガイド孔12dが周方向に所定の間隔をあけて4つ形成される(図1から図5には、ガイド孔12dを2つだけ示す)。各ガイド孔12dに、係合部材としての係合ボール14が、筒部材12の半径方向へ移動可能に設けられる。また、収容孔12aに、出力部材15が上下方向に移動可能に挿入される。その出力部材15は、筒部材12の操作孔12bと対向する上面が被押圧面15aとして機能する。また、出力部材15には、その周壁に係合ボール14を退避させる退避溝15bが周方向に形成されると共に、退避溝15bに連続形成され、下方に向かうにつれて拡がる(下方に向かうにつれて軸心から離れる)ように形成された出力面15cが形成される。
【0028】
上記の出力部材15の下面と下壁13の上面との間に進出バネ16が装着され、その進出バネ16が出力部材15を上方へ付勢する。その進出バネ16の内側には、下壁13から上方へ突出した突起部13aが挿入される。その突起部13aによって、進出バネ16が上下方向に案内される。その突起部13aは、出力部材15に下方から当接可能(受止め可能)となっている。
【0029】
このような構成の固定装置1では、開口12cを介して出力部材15の被押圧面15aが押圧されることにより、固定装置1がロック状態とロック解除状態とに切り換わる。より詳しく言えば、図1図2および図5に示すように、出力部材15が上端位置にあるとき、係合ボール14は、出力部材15の出力面15cにより半径方向の外方へ押し出されることによって、係合位置Xに位置する。その結果、固定装置1がロック状態となり、テーブルRにワークパレットMが固定される。一方、図3および図4に示すように、被押圧面15aが押圧され出力部材15が上端位置から下降したとき、係合ボール14は半径方向の内方へ移動し、出力部材15の退避溝15bに受け止められることによって、係合解除位置Yに移動する。その結果、固定装置1がロック解除状態となり、テーブルRからワークパレットMが搬送可能な状態となる。
【0030】
そのワークパレットMには、固定装置1の先端側が挿入可能な第1孔M1と、クランプ装置4の先端側が挿入可能な第2孔M2とが形成される。第1孔M1には、固定装置1の係合ボールと係合する、被係合部材としてのブロック6が設けられる。そのブロック6は、固定装置1の係合ボールと係合する環状のリング部材61と、当該リング部材61を第1孔M1に固定する環状の固定部材62とを有する。リング部材61の内周面61aは、下側部分が内側に膨出しており、上方に向かって次第に拡径するテーパ面を有する。そのテーパ面が係合位置Xにある係合ボール14と係合することにより、テーブルRにワークパレットMが固定される。
【0031】
次に、ロボットアーム2の先端部2aに設けられるシリンダ装置3およびクランプ装置の構造を説明する。
シリンダ装置3のハウジング31の内部に、シリンダ孔31aが形成される。そのシリンダ孔31aには、ピストン32aが、封止部材33を介して、上下方向(軸方向)に移動可能に保密状に嵌入される。そのピストン32aには、ピストン32aから先端側へピストンロッド32bが突設される。ピストン32aとピストンロッド32bとによって、出力部材32が構成される。ピストンロッド32bの先端側には、固定装置1の開口12cに挿入可能な押圧部材32cが取り付けられる。その押圧部材32cが固定装置1の被押圧面15aを押圧することにより、固定装置1がロック状態からロック解除状態に切り換わる。
【0032】
上記のピストン32aの上側に第1作動室34が形成されると共に、ピストン32aの下側に第2作動室35が形成される。第1作動室34には、当該第1作動室34に圧力流体を供給および排出するための第1給排路36が連通する。第2作動室35には、当該第2作動室35に圧力流体を供給および排出するための第2給排路37が連通する。
【0033】
このような構成のシリンダ装置3では、第2作動室35の圧力流体が第2給排路37から排出されると共に、第1給排路36からの圧力流体が第1作動室34に供給されることにより、出力部材32が下降する。また、第1給排路36から第1作動室34の圧力流体が排出されると共に、第2給排路37からの圧力流体が第2作動室35に供給されることにより、出力部材32が上昇する。
【0034】
クランプ装置4のハウジング41内の先端側に、収容孔41aが上下方向(軸方向)に形成される。その収容孔41aに支持筒42が上下方向および半径方向に移動可能に挿入される。支持筒42は、下側から順に形成された頂部42aと周壁42bとフランジ部42cとを有する。その支持筒42の頂部42aおよび周壁42bは、ワークパレットMの第2孔M2に挿入可能となっている。収容孔41aの上面と支持筒42の上面との間に進出バネ43が装着され、その進出バネ43がバネ受け43aを介して支持筒42を下方へ付勢する。
【0035】
支持筒42の周壁42bにガイド孔42dが周方向に所定の間隔をあけて3つ形成される(図1から図5には、ガイド孔42dを1つだけ示す)。各ガイド孔42dに係合部材44が当該ガイド孔42dの壁面に沿って半径方向へ移動可能に挿入される。各係合部材44の外周部に押部44aが形成され、その押部44aがワークパレットMの第2孔M2の内周面を押圧可能となっている。また、係合部材44の内壁に、受け面44bが上方に向うにつれて軸心に近づくように形成される。さらに、係合部材44の外周壁と支持筒42の外周壁とに跨って、環状の弾性部材44cが装着される。
【0036】
支持筒42内にクランプロッド45が上下方向に移動可能に挿入される。そのクランプロッド45は、下側から順に形成される第1ロッド45aと第2ロッド45bとを有する。その第1ロッド45aがピンを介して第2ロッド45bに半径方向に移動可能となるように連結される。第1ロッド45aの下端部(先端部)が支持筒42の内周孔に摺動可能に挿入される。その第1ロッド45aの下端部に楔部46が設けられる。楔部46は、上方に向かうにつれて狭まる(上方に向かうにつれて軸心に近づく)ように形成された楔面46aを有し、その楔面46aが係合部材44の受け面44bに下方から係合する。
【0037】
収容孔41aに連通するシリンダ孔47が、ハウジング41内の上側(基端側)に形成される。そのシリンダ孔47は、下方から順に形成された小径孔47aと大径孔47bとを有する。小径孔47aにクランプロッド45の第2ロッド45bが上下方向に移動可能で保密状に挿入される。
【0038】
大径孔47bに筒状のピストン48が上下方向に移動可能で保密状に挿入される。そのピストン48の上側に第1作動室49が形成されると共に、ピストン48の下側に第2作動室50が形成される。第1作動室49には、当該1作動室49に圧力流体を供給および排出するための第1給排路51が連通する。第2作動室50には、当該第2作動室50に圧力流体を供給および排出するための第2給排路52が連通する。また、ハウジング41の上壁とピストン48との間に保持バネ53が装着され、その保持バネ53がピストン48を下方に付勢する。
【0039】
大径孔47bの下端面から筒状の支持部54が上方に突設され、その支持部54の上端部にガイド溝54aが周方向に間隔をあけて半径方向に形成される。ガイド溝54aに対応する位置で第2ロッド45bの外周壁に溝45cが下方に向かうにつれて軸心に近づくように形成され、その溝45cの底壁に受け面45dが形成される。また、ガイド溝54aに対応する位置でピストン48の内周壁に溝48aが上方に向かうにつれて軸心に近づくように形成され、その溝48aの底壁に押面48bが形成される。ガイド溝54aと受け面45dと押面48bとによって形成された楔空間に係合ボール55が挿入される。
【0040】
このような構成のクランプ装置4では、第2作動室50の圧力流体が第2給排路52から排出されると共に、第1給排路51からの圧力流体が第1作動室49に供給されることにより、ピストン48が下降する。より詳しく言えば、第1作動室49の圧力流体の圧力に相当する押圧力と保持バネ53の付勢力とによってピストン48が下降する。次いで、ピストン48が押面48bを介して係合ボール55をガイド溝54aに沿って半径方向の内方に押動していくと、その係合ボール55が受け面45dを介してクランプロッド45を上方へ押動させていく。引き続いて、楔部46の楔面46aと各係合部材44の受け面44bとを介して各係合部材44をガイド孔42dに沿って半径方向の外方に移動させていく。すると、各係合部材44の押部44aがワークパレットMの第2孔M2の内周面に係合される。これにより、クランプ装置は、ワークパレットMをクランプしたクランプ状態となる。
【0041】
また、クランプ装置4では、第1作動室49の圧力流体が第1給排路51から排出されると共に、第2給排路52からの圧力流体が第2作動室50に供給されることにより、ピストン48が上昇する。より詳しく言えば。第2作動室50の圧力流体の圧力に相当する押圧力が、ピストン48を保持バネ53の下方への付勢力に抗してピストン48を上方に移動させると共に、第2作動室50の圧力流体がクランプロッド45を下方に移動させる。すると、楔部46の楔面46aが下方に移動されることにより、係合部材44の外周壁と支持筒42の外周壁とに跨って装着される環状の弾性部材44cの弾性復元力によって、係合部材44が支持筒42の内方に移動される。これにより、クランプ装置は、ワークパレットMをリリース下したリリース状態となる。
【0042】
上記構成の固定システムは、図1から図5に示すように、以下のように動作する。
図1に示すように、ワークパレットMは、固定装置1によってテーブルRに固定されているとき、固定装置1の出力部材15は上端位置にある。このため、係合ボール14は、出力部材15の出力面15cによって半径方向の外方へ押し出され、係合位置Xに位置する。
【0043】
次に、図2に示すように、ロボットアーム2を下降させてクランプ装置4の支持筒42をワークパレットMの第2孔M2に挿入し、係合部材44の押部44aをワークパレットMの第2孔M2の内周面に係合させる。これにより、クランプ装置4によって、ワークパレットMがクランプされる。
【0044】
次に、図3に示すように、シリンダ装置3のピストン32aを下方へ進出させていくと、押圧部材32cが固定装置1の開口12cから挿入されていく。次いで、押圧部材32cが出力部材15の被押圧面15aを下方へ押動させていく。すると、固定装置1の出力部材15が下方へ移動し、収容孔12aと出力部材15の退避溝15bとの間に空間ができ、係合ボール14が半径方向の内方に向けて移動することができるようになる。その結果、係合ボール14がその空間内の係合解除位置Yに移動して固定装置1がロック解除状態となり、テーブルRからワークパレットMを搬送可能な状態となる。次いで、出力部材15が下壁13の突起部13aの上面に受け止められる。このとき、シリンダ装置3のピストン32aはストローク途中位置に移動されており、当該ストローク途中位置において、出力部材15を介して突起部13aの上面に受け止められている。
【0045】
次に、図4に示すように、ロボットアーム2を上昇させる。すると、クランプ装置4がワークパレットMを持ち上げていく。すると、ロボットアーム2の上昇動作に追従するように、シリンダ装置3のピストン32aがストローク途中位置からストロークエンドまで下方へ進出していく。このため、押圧部材32cが出力部材15を下壁13の突起部13aに押し付けた状態が維持される。よって、固定装置1のロック解除状態が継続される。
【0046】
最後に、図5に示すように、ロボットアーム2をさらに上昇させると、シリンダ装置3の押圧部材32cが固定装置1から引き抜かれていく。すると、固定装置1の進出バネ16が出力部材15を上方へ移動させていく。これにより、出力部材15の出力面15cが係合ボール14を半径方向の外方の係合位置Xへ移動させる。
【0047】
この実施形態は次の長所を奏する。
シリンダ装置3の押圧部材32cが出力部材15の被押圧面15aを押圧することにより、固定装置1をロック状態からロック解除状態に切り換えることができる。このため、ロボットアーム2に出力部材15を押圧操作するシリンダ装置3を設けることにより、ワークパレットMの搬送と、固定装置1のロック状態とロック解除状態との切り換えとを、ロボットアーム2で操作することが可能となる。
【0048】
したがって、この実施形態によれば、操作を簡略化することが可能な固定装置1を実現することができる。
【0049】
上記の実施形態は次のように変更可能である。
上記の圧力流体は、圧油または、圧縮空気等であってもよい。
【0050】
また、上記の固定装置は、ワークパレットやワークピースの固定用途に限定されるものではなく、金型やアタッチメント等の固定にも利用できることは勿論である。テーブルに設けられる固定装置は、複数であってもよく、1つだけであってもよい。
【0051】
また、上記の固定装置は、バネ力によって駆動することに代えて、油圧力や空圧力などの流体圧力によって駆動することも可能である。
【0052】
また、上記の固定装置が備える係合部材は、例示の係合ボールに代えて、摩擦力や塑性変形力によって係合するコレットであってもよい。
【0053】
また、上記の可動部材の第1孔に設けられる被係合部材は、埋め込み形ブロックであってもよく、フランジ形ブロックであってもよい。その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
1:固定装置,2:ロボットアーム(搬送装置),3:シリンダ装置,4:クランプ装置,12:筒部材,12c:開口,14:係合ボール(係合部材),15:出力部材,16:バネ部材,32c:押圧部材,M:ワークパレット(可動部材),M1:第1孔,M2第2穴,R:テーブル(基準部材),X:係合位置,Y:係合解除位置.
図1
図2
図3
図4
図5