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  • 特許-可搬型計量装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】可搬型計量装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 23/01 20060101AFI20230303BHJP
   G01G 23/37 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
G01G23/01 B
G01G23/37 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018248295
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020106500
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】594010733
【氏名又は名称】株式会社田中衡機工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】天野 洋継
(72)【発明者】
【氏名】坂爪 和雄
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04258811(US,A)
【文献】特開平11-132836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 1/00- 9/00
G01G 21/00-23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型計量装置であって、
基準としての重りである基準重りの重量に応じて第出力を行う第1重量対応出力部と、
被計量対象の重量に応じて第2出力を行う第2重量対応出力部と、
上部が開口しており、内部の底面に前記第1重量対応出力部と前記第2重量対応出力部とが並列して固定される有底箱状部材と、
前記有底箱状部材の前記上部の開口に覆い被さると共に、前記被計量対象が載置される蓋状部材と、
前記第2重量対応出力部と前記蓋状部材とを連結し、前記第2重量対応出力部が前記被計量対象の重量に応じて前記第2出力を行えるように前記蓋状部材を支持するスペーサと、
前記被計量対象が前記蓋状部材に載置された状態において、前記第1重量対応出力部からの前記第出力に基づいて前記第2重量対応出力部からの前記第2出力を補正する制御部と、
補正された前記第出力に基づいて、前記被計量対象の重量値を表示する表示部と、
を備え、
前記制御部は、前記被計量対象が前記蓋状部材に載置された状態における前記第1出力及び前記第2出力と、予め登録されている1重力加速度がかかった場合における前記第1出力と、前記可搬型計量装置の個体差による固有の値とに基づいて、前記第2出力を補正する
ことを特徴とする可搬型計量装置。
【請求項2】
前記制御部は、計量毎に、前記可搬型計量装置の個体差による固有の値に基づいて前記被計量対象の重量によって変動する精度補正係数を算出し、前記被計量対象が前記蓋状部材に載置された状態における前記第1出力及び前記第2出力と、予め登録されている1重力加速度がかかった場合における前記第1出力と、前記精度補正係数とに基づいて、前記第2出力を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の可搬型計量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上において操業を行う漁船では、捕獲した魚をその日のうちに計量している。洋上での魚介類の重量の測定については、例えば陸上用の台はかり等通常のはかりを使用することが考えられる。しかしながら、絶えず動揺している船上では目盛の値が定まらず、読み取りに困難を来すなどかなりの無理な測定をするので、その精度は信頼できない。
【0003】
そこで、船舶において船体の上下動及び揺動に無関係に重量を測定する秤量装置が開示されている(例えば、特許文献1)。この秤量装置は、船室側に制御部、表示手段及びプリンタが配置されるほか、アンプボックスが配置され、甲板側に魚種魚形選択操作盤、基準ロードセル及び測定用ロードセルが配置されており、制御部が基準ロードセルの出力に基づいて測定用ロードセルの出力を補正して計量値を求めている。
【0004】
また、船上等の動揺が生じる環境下において重量を計測するための重量計測方法が開示されている(例えば、特許文献2)。この重量計測方法では、計測対象物及びダミーウェイトの重量をそれぞれ、各ロードセルが同時に計測し、ダミーウェイトの計測重量を真の重量と比較し、ダミーウェイトの計測重量と真の重量との差が所定の範囲内の場合に同時に計測された計測対象物の計測重量を正常な計測値として採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-241236号公報
【文献】特開2008-070282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術は、いずれも船舶に固定され、一体となったものであり、船上において移動や設置場所の自由がなく、汎用性に乏しい。また、従来技術のはかりを船上に設置する場合には、船舶の一部において改築する必要があり、容易にそのはかりを取りつけることができない。
【0007】
本発明では、船舶に固定されておらず、運搬可能で、船上で容易に使用可能であって、船体の揺動を軽減して高精度で計量できる可搬型計量装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面における可搬型計量装置は、基準としての重りである基準重りの重量に応じて第1出力を行う第1重量対応出力部と、被計量対象の重量に応じて第2出力を行う第2重量対応出力部と、上部が開口しており、内部の底面に前記第1重量対応出力部と前記第2重量対応出力部とが並列して固定される有底箱状部材と、前記有底箱状部材の前記上部の開口に覆い被さると共に、前記被計量対象が載置される蓋状部材と、前記第2重量対応出力部と前記蓋状部材とを連結し、前記第2重量対応出力部が前記被計量対象の重量に応じて前記第2出力を行えるように前記蓋状部材を支持するスペーサと、前記被計量対象が前記蓋状部材に載置された状態において、前記第1重量対応出力部からの前記第1出力に基づいて前記第2重量対応出力部からの前記第2出力を補正する制御部と、補正された前記第2出力に基づいて、前記被計量対象の重量値を表示する表示部と、を備え、前記制御部は、前記被計量対象が前記蓋状部材に載置された状態における前記第1出力及び前記第2出力と、予め登録されている1重力加速度がかかった場合における前記第1出力と、前記可搬型計量装置の個体差による固有の値とに基づいて、前記第2出力を補正することを特徴とする。
【0009】
前記制御部は、計量毎に、前記可搬型計量装置の個体差による固有の値に基づいて前記被計量対象の重量によって変動する精度補正係数を算出し、前記被計量対象が前記蓋状部材に載置された状態における前記第1出力及び前記第2出力と、予め登録されている1重力加速度がかかった場合における前記第1出力と、前記精度補正係数とに基づいて、前記第2出力を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる可搬型計量装置によれば、船舶に固定されておらず、運搬可能で、船上で容易に使用可能であって、船体の揺動を軽減して高精度で計量できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態における計量装置の外観の一例を示す外観斜視図である。
図2】本実施形態における計量装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】本実施形態における計量処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施形態における計量装置の外観の一例を示す外観斜視図である。図1の計量装置1は、運搬可能な可搬型であって、一例として、指示計部2、指示計支持部5、計量台6を含む。
【0013】
指示計部2は、計量装置1の設定情報を入力したり、計量結果を表示したりする。指示計部2には、入力部3及び表示部4が設けられている。入力部3は、計量装置1の各種設定を行うための入力インターフェースである。表示部4は、計量結果を、例えばデジタル表示させる7セグメントディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等であってよい。なお、指示計部2は、タッチパネルで構成されていてもよい。
【0014】
計量台6は、計量を行う計量装置本体である。計量台6は、その底面の四隅に設けられた4つの計量台支持部7によって支持されている。指示計支持部5は、指示計部2を支持して、指示計部2と計量台6とを接続する。
【0015】
図2は、本実施形態における計量装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。計量台6は、底面側筐体21、載せ台22、基準ロードセル23、基準重り24、計量用ロードセル25、スペーサ26を含む。
【0016】
底面側筐体21は、上部が開口している箱状の部材であって、その内部底面に基準ロードセル23、計量用ロードセル25が設置されている。載せ台22は、底面側筐体21の開口を覆うカバーであると共に、被計量対象が載置される。
【0017】
基準ロードセル23は、基準となる荷重(基準重り24)を電気抵抗の変化としてひずみ計で計測し、重さに変換する装置である。基準重り24は、基準となる重りである。基準重り24は、より重いほど計量する際の補正の分解能は向上するが、計量装置1が可搬型であることから、底面側筐体21のサイズや内部空間の空きスペース、及び材質等に応じて総合的に判断され決定される。仕様にもよるが、可搬型の計量装置であることと、分解能とのバランスから、実用的には、一例として、基準重り24は、4kgの重りであってもよい。底面側筐体21内の空間を有効活用するために、基準重り24の端部分は、基準ロードセル23の上面よりも低い位置にて保持されるように垂れ下がった構造となっていてもよい。これにより、底面側筐体21内の限らせたスペースにおいて効率的に基準重り24を配置することができると共に、動揺に対して安定して基準重り24を配置することができる。
【0018】
なお、基準重り24は、基準ロードセル23によってのみ支持されており、基準重り24と載せ台22との間には、隙間が形成されて、基準ロードセル23及び基準重り24は、被計量対象の荷重の影響を受けないような構造となっている。
【0019】
計量用ロードセル25は、スペーサ26を介して支持されている載せ台22に載置された被計量対象の荷重を電気抵抗の変化としてひずみ計で計測し、重さに変換する装置である。スペーサ26は、計量用ロードセル25と載せ台22との間の隙間を埋めるスペーサである。スペーサ26は、載せ台22を支持し、計量用ロードセル25に荷重を伝える。
【0020】
なお、基準ロードセル23及び計量用ロードセル25は、より近く、好ましくは隣接している方が好ましい。これにより、基準ロードセル23と計量用ロードセル25間で、動揺している際に加わる重力による影響をより同じ条件、環境にすることができるので、補正による効果を向上することができる。
【0021】
また、基準ロードセル23及び計量用ロードセル25は、理想的には荷重以外は同一の条件であるのが好ましい。したがって、基準ロードセル23及び計量用ロードセル25は、同じ種類、同じ型、同じスペックのロードセルであるのが好ましい。
【0022】
指示計部2は、入力部3、表示部4、制御部11、メモリ12、A/D変換器13を含む。制御部11は、計量装置1全体を制御するプロセッサであり、例えば中央演算装置(CPU)である。制御部11は、本実施形態にかかるプログラムを実行し、例えば、入力部3により入力された内容に基づいて処理を行ったり、基準ロードセル23及び計量用ロードセル25からの信号に基づいて、計量結果を表示部4に表示させたり等する。
【0023】
メモリ12は、例えば、本実施形態にかかるプログラムを格納したり、入力部3により入力された内容や所定の値を格納したり、一時的にデータを保持したり等する記憶部である。メモリ12は、振動や揺動に強い、例えばフラッシュメモリ等の半導体メモリであってもよい。
【0024】
A/D変換器13は、基準ロードセル23及び計量用ロードセル25から出力されたアナログ信号(アナログ値)をデジタル信号(デジタル値)に変換し、変換したデジタル信号(デジタル値)をA/D値として制御部11へ出力する。なお、A/D変換器13は計量台6内部にあってもよい。
【0025】
以下では、基準ロードセル23から出力されたアナログ信号をデジタル信号(A/D値)に変換した信号を「基準A/D値」と称する。また、計量用ロードセル25から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換した信号を「計量A/D値」と称する。
【0026】
図3は、本実施形態における計量処理を示すフローチャートである。この計量処理は、計量が行われる度に制御部11により実行される。制御部11は、メモリ12から計量処理に必要なプログラムや値を予め読み込んでいる。
【0027】
まず、制御部11は、計測対象物が載せ台22に載置された場合、フィルタリングのため、30m秒経過するまで待つ(S1でNO)。ここで、待ち時間の30m秒は、例示であってこれに限定されない。
【0028】
30m秒経過後(S1でYES)、制御部11は、計量用ロードセル25から出力されてA/D変換器13によって変換された計量A/D値、及び基準ロードセル23から出力されてA/D変換器13によって変換された基準A/D値を取得する(S2、S3)。
【0029】
制御部11は、式(1)により精度補正係数αの最適値を算出する(S4)。精度補正係数αは、被計量対象の重量によって変動する値であるため、計量処理毎に最適値が算出される。
精度補正係数α=P1+{(計量A/D値-P2)/(基準A/D値-P2)}×P3 ・・・(1)
ここで、P1,P2,P3は基準ロードセル23及び計量用ロードセル25の特性等で異なる計量装置1の固定の値である。上述の通り、基準ロードセル23及び計量用ロードセル25は、同じ種類、同じ型、同じスペックのロードセルであるが、個体差や計量装置毎のロードセルの設置環境の相違等が存在するため、個々の計量装置に応じてP1,P2,P3を調整する必要がある。
【0030】
次に制御部11は、基準A/D値に基づいて計量A/D値を補正した計量A/D値(補正計量A/D値)を算出する(S5)。制御部11は、式(2)により、補正計量A/D値を算出する。
補正計量A/D値=計量A/D値×(1G時の基準A/D値-α)/(基準A/D値-α) ・・・(2)
ここで、1G時の基準A/D値とは、重力加速度1G(=9.80665m/sの場合に基準ロードセル23に出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換した基準A/D値であって、予めメモリ12に記憶されており、制御部11によって読み出される。
【0031】
制御部11は、算出した補正計量A/D値を計量値(kg単位)に換算する(S6)。制御部11は、換算した計量値(kg単位)を表示部4に出力し、表示部4に表示させる(S7)。
【0032】
図3の計量処理により、基準ロードセル23と計量用ロードセル25とをほぼ同一の環境に配置することで、船上における船の動揺が生じても、その動揺による加速度の影響は基準ロードセル23と計量用ロードセル25とに及ぶので、基準ロードセル23に対して、計量用ロードセル25にかかる被計量対象の重量を相対的に計測することができる。
【0033】
このとき、被計量対象の重量及びロードセルの個体差によって変動する精度補正係数αを、計量毎に調整することができる。
【0034】
なお、図1の計量装置1の構成は一例であって、例えば、計量台6に指示計部2が直接設けられていてもよい。また、指示計部2は、図1では指示計支持部5の末端に設けられていているが、これに限定されず、指示計支持部5の側面に設けられていてもよい。また、指示計支持部5は定型の筐体状のものに限定されず、可撓性のあるチューブ状の素材で形成されていてもよい。または、例えば、指示計支持部5を省略して、指示計部2と計量台6との間を無線通信(例えば、Bluetooth(登録商標))を用いて接続してもよい。
【0035】
本実施形態によれば、可搬型計量装置(例えば、計量装置1)は、
基準としての重りである基準重りの重量に応じて第1出力を行う第1重量対応出力部(例えば、基準ロードセル23)と、
被計量対象の重量に応じて第2出力を行う第2重量対応出力部(例えば、計量用ロードセル25)と、
上部が開口しており、内部の底面に前記第1重量対応出力部と前記第2重量対応出力部とが並列して固定される有底箱状部材(例えば、底面側筐体21)と、
前記有底箱状部材の前記上部の開口に覆い被さると共に、前記被計量対象が載置される蓋状部材(例えば、載せ台22)と、
前記第2重量対応出力部と前記蓋状部材とを連結し、前記第2重量対応出力部が前記被計量対象の重量に応じて前記第2出力を行えるように前記蓋状部材を支持するスペーサ(例えば、スペーサ26)と、
前記被計量対象が前記蓋状部材に載置された状態において、前記第1重量対応出力部からの前記第1出力に基づいて前記第2重量対応出力部からの前記第2出力を補正する制御部(例えば、制御部11)と、
補正された前記第2出力に基づいて、前記被計量対象の重量値を表示する表示部(例えば、表示部4)と、
を備える。
【0036】
このように構成することにより、船舶に固定されておらず、運搬可能で、船上で容易に使用可能であって、船体の揺動を軽減して高精度で計量できる。すなわち、船舶の構造に関わらず、また、船舶の改築にかかわらず、船上において、船体の揺動を軽減して船上で容易に、高精度で被計量対象の計量を行うことができる。
【0037】
前記制御部は、前記被計量対象が前記蓋状部材に載置された状態における前記第1出力及び前記第2出力と、予め登録されている1重力加速度がかかった場合における前記第1出力とに基づいて、前記第2出力を補正する。
【0038】
このように構成することにより、筐体にかかる動揺の影響を低減して高精度に計量することができる。
【0039】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 計量装置
2 指示計部
3 入力部
4 表示部
5 指示計支持部
6 計量台
7 計量台支持部
11 制御部
12 メモリ
13 A/D変換器
21 底面側筐体
22 載せ台
23 基準ロードセル
24 基準重り
25 計量用ロードセル
26 スペーサ

図1
図2
図3