(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】患者にセンサを経皮挿入するための注入器
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1459 20060101AFI20230303BHJP
A61B 5/1473 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
A61B5/1459
A61B5/1473
(21)【出願番号】P 2019008702
(22)【出願日】2019-01-22
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】10 2018 101 275.6
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517276701
【氏名又は名称】アイセンス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】EYESENSE GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】アヒム・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】トム・マイスナー‐ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ピシャン
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0243302(US,A1)
【文献】特開2016-128031(JP,A)
【文献】特表2010-507456(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0184835(US,A1)
【文献】国際公開第2013/136968(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/145-5/1495
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者にセンサを経皮挿入するための注入器であって、
カニューレ(3)と、前記カニューレ(3)内に配置されたセンサ(6)と、ベース部
材(1)と、注入方向において当該患者に前記センサ(6)を内蔵した前記カニューレ(
3)を経皮挿入するために注入方向へ変位し得るようにして前記ベース部材(1)に配置
された押込部材(2)とを備え、前記カニューレ(3)は、少なくとも近位領域において
、前記カニューレ(3)の長手方向に延びる一本のスリットを有するように構成した注入
器において、
前記注入器は、変位し得るようにして前記ベース部材(1)に配置された保持部材(5
)を有し、排出プロセスにおいて当該患者から前記カニューレ(3)を引き抜く際に、前
記保持部材によって前記センサの引き抜きが阻止され、
前記保持部材(5)は、前記センサの遠位端領域において、当該スリットを貫いて前記
カニューレ(3)内に嵌合し、
保持部材(5)及び/又はベース部材(1)は少なくとも一つの固定手段を有し、その
ため、当該患者に当該カニューレ(3)が経皮挿入された状態において、前記保持部材(
5)は間接的に又は
直接的に前記ベース部材(1)に自動的に拘束され得ることを特徴とする注入器。
【請求項2】
保持部材(5)とセンサ(6)とは分離し得るように、
別々のユニットとして、形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の注入器。
【請求項3】
前記固定手段は係止部材として形成され、
前記
保持部材(5)及びベース部材(1)の一方は係止部材を有し、
当該他方は前記係止部材に対応する窪みを有することを特徴とする、請求項1又は2に記
載の注入器。
【請求項4】
前記カニューレ(3)はその遠位端が、変位し得るようにして前記ベース部材(1)に
配置されたカニューレ上部部材(4)に配置され、押込部材及びカニューレ上部部材(4
)は協働して、当該注入プロセスに際し前記カニューレ上部部材(4)が前記押込部材(
2)によって注入方向へ変位し得るように形成されていることを特徴とする、請求項1か
ら3のいずれか一項に記載の注入器。
【請求項5】
前記保持部材(5)は
前記ベース部材(1)上に変位可能に配置されたカニューレ上部部材(4)と協働して、当該注入プロセスに際し前記保持部材(5)が前記カニューレ上部部材(4)によって注入方向へ変位し得るように形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の注入器。
【請求項6】
前記カニューレ上部部材(4)は、前記カニューレ(3)が配置され、かつ、少なくと
も一つのガイド突出片を有する中央部材を有し、
前記ベース部材(1)は、前記カニューレ上部部材を注入方向へガイドするための、前
記カニューレ上部部材(4)の前記ガイド突出片用のガイドスリット(1a)の設けられ
た少なくとも一つのガイド壁(1b)を有し、
前記ガイド突出片は前記ベース部材(1)の前記ガイド壁(1b)を貫通し、
前記押込部材は、前記カニューレ上部部材の前記中央部材とは反対側に位置する前記ガ
イド壁(1b)側で、前記ガイド突出片に作用するように形成されていることを特徴とす
る、請求項4又は5に記載の注入器。
【請求項7】
当該注入器は排出ばね(7)及び排出ばね保持部材(8)を有し、前記排出ばね保持部
材(8)は前記ベース部材(1)に固定し得るように形成されているため、前記排出ばね
(7)は前記排出ばね保持部材によって圧縮又は伸長された状態で固定し得ることを特徴
とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の注入器。
【請求項8】
前記押込部材(2)は前記排出ばね保持部材と協働して、前記押込部材によって前記排
出ばね保持部材(8)が、当該注入プロセスの最後に、
注入軸を中心とした前記排出ばね保持部材の回転によって、固定位置から解除され得るように形成されていることを特徴とする、請求項7に記載の注入器。
【請求項9】
押込部材(2)及び排出ばね保持部材(8)は、一本の共通の注入軸を中心に回転し得
るようにして、前記ベース部材(1)に配置されていることを特徴とする、請求項7又は
8に記載の注入器。
【請求項10】
ベース部材(1)及び/又は押込部材は、当該注入プロセスに際し、近位端領域におい
て、前記押込部材の注入方向への変位時に前記ベース部材(1)に対する前記押込部材の
回転が行われるように配置された少なくとも一つの斜面(1c、1d)を有することを特
徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の注入器。
【請求項11】
押込部材(2)及び排出ばね保持部材(8)は、前記押込部材の回転によって
排出手段が固定位置から解除され得るように配置された互いに対応する当接面を有し、
前記排出ばね保持部材(8)は一つの突起を有し、前記押込部材(2)は一つの対応するガイド面(2a)を有することを特徴とする、請求項8又は10に記載の注入器。
【請求項12】
ベース部材(1)及び押込部材は、当該近位端領域においてのみ前記ベース部材(1)
に対して前記押込部材(2)が回転し得るように形成されて配置された互いに対応するガ
イド部材を有することを特徴とする、請求項10又は11に記載の注入器。
【請求項13】
前記押込部材は、当該近位端領域における前記押込部材の回転後に前記カニューレ上部
部材が当該注入方向とは反対方向に変位し得るように配置された、前記カニューレ上部部
材の
ガイド突出片のためのガイドスリットを有することを特徴とする、請求項5又は
請求項4~6のいずれかを直接又は間接的に従属する請求項10に記載の注入器。
【請求項14】
注入プロセスに際し、近位端領域において、前記押込部材の注入方向への変位時に前記ベース部材(1)に対する前記押込部材の回転が行われるように前記ベース部材(1)に配置された斜面(1c、1d)は、前記押込部材の前記ガイドスリットの近位端に形成されていることを特徴とする、請求項13に記載の注入器。
【請求項15】
当該注入器は、ベース部材(1)と押込部材との間に、注入方向への前記押込部材の変
位を防止するようにして配置された反力ばねを有することを特徴とする、請求項1から1
4のいずれか一項に記載の注入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者にセンサを経皮挿入するための、請求項1のプリアンブルに記載の注入器に関する。
【背景技術】
【0002】
多様な医学的利用のため、特に、当該患者の測定値例えばグルコース値又はラクトース値を得るために、患者へのセンサの挿入は不可欠である。
【0003】
米国特許出願公開第2004/0133164号明細書から、患者にセンサを経皮挿入するための注入器であって、スリット付きのカニューレとその中に配されたセンサとが押込部材によって患者に経皮挿入される注入器が知られている。当該カニューレは、そのため、当該カニューレの長手方向に連続した一本のスリットを有する。当該センサは、当該カニューレが抜き出される際に、一緒に抜き出されることがないように、摩擦によって、特に、返し付きフックによって、当該患者組織中に残留保持される。
【0004】
ただし、当該センサの当該形状寸法については、より多くの自由度が望ましく、センサと組織との間の当該摩擦特性に関する要件は、より少ないことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2004/0133164号明細書
【文献】国際公開第2016128334号
【文献】国際公開第2006092317号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、当該カニューレを抜き出す際に、当該患者組織中に当該センサを残留残置するために高い要件が求められることのない、患者にセンサを経皮挿入するための注入器を創作することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、請求項1に記載の注入器によって達成される。本発明による注入器の好適な実施態様は当該従属項に記載したとおりである。
【0008】
患者にセンサを経皮挿入するための本発明による注入器は、カニューレと、当該カニューレ内に配置されたセンサと、ベース部材と、注入方向に変位し得るようにして当該ベース部材に配置された、注入プロセスにおいて当該患者に当該センサを内蔵した当該カニューレを経皮挿入するための押込部材とを有する。したがって、当該注入プロセスに際し、注入方向(当該患者の方向)への当該押込部材の変位によって、カニューレとセンサが当該患者に経皮挿入される。当該カニューレは、少なくとも近位領域において、当該カニューレの長手方向に延びるスリットを有する。
【0009】
重要な点は、当該注入器が、変位し得るようにして当該ベース部材に配置された保持部材を有し、排出プロセスにおいて当該患者から当該カニューレが引き抜かれる際に、当該センサの引き抜きが当該保持部材によって阻止される点にある。当該保持部材は、当該センサの遠位端の領域において、当該スリットを貫いて当該カニューレ内部に作用する。
【0010】
保持部材及び/又はベース部材は少なくとも一つの固定手段を有するために、当該患者に当該カニューレが経皮挿入された状態において、当該保持部材は間接的若しくは好ましくは直接的に当該ベース部材に自動的に拘束され得る。
【0011】
したがって、当該注入プロセスに際し、カニューレ、センサ及び保持部材は、当該押込部材によって、遠位に位置する開始位置から近位端位置へと当該ベース部材に対して変位されるため、当該注入プロセスに際し、センサ及びカニューレは注入方向において当該患者に経皮挿入される。
【0012】
当該保持部材は、当該センサの遠位端の領域において、当該スリットを貫いて当該カニューレ内に嵌合し、間接的若しくは好ましくは直接的に当該ベース部材に自動的に拘束されるように形成されているために、当該注入プロセスの当該完了位置において当該保持部材の当該拘束が行われ、こうして、排出プロセスにおいて当該カニューレが当該注入方向とは反対方向へ引き抜かれる際に、当該保持部材は、この運動を共に遂行することなく、当該センサの当該遠位端の領域―特に、当該センサの当該遠位端の上部領域―において当該カニューレの当該スリット内に嵌合していることにより、同じく、当該センサの運動と共に当該センサの引き抜きも阻止することになる。
【0013】
そのため、当該センサは、当該排出プロセスに際しても、場合によりセンサと当該患者組織との間に摩擦力又は付着力が存在しようともそれにかかわりなく、引き続き当該注入位置、とりわけ経皮注入位置に残留したままとなる。
【0014】
好適な実施形態において、当該注入器は、当該センサの注入後、当該患者において検出素子が当該センサに接続されて、データが記録され、好ましくは無線で評価ユニットに転送されるようにして、取り去られる。
【0015】
したがって、好適には、保持部材とセンサとは分離し得るように形成されているため、当該注入器の除去に際し、当該センサが抜き取られることなく、当該保持部材も除去することが可能である。それゆえ、特に、保持部材とセンサを別々のユニットとして形成するのが好適である。
【0016】
好ましい実施形態において、当該固定手段は係止部材として形成され、当該双方の部材である保持部材とベース部材のうちの一方が当該係止部材を有し、当該双方の部材のうちの他方が当該係止部材に対応する窪み及び/又は凹所を有する。特に、当該固定手段は、好ましくは、少なくとも一つの係止突起を有し、該係止突起は、当該注入プロセスの最後に、対応する窪み及び/又は凹所に係合し、これによって、当該保持部材を自動的に当該ベース部材に拘束する。逆に、当該ベース部材が、当該注入プロセスの最後に、対応する当該保持部材の窪み及び/又は凹所に係合する当該係止突起を有するようにすることも同じく可能である。
【0017】
当該カニューレはその遠位端が、変位し得るようにして当該ベース部材に配置されたカニューレ上部部材に配置され、当該押込部材とカニューレ上部部材とが協働して、当該注入プロセスに際し、当該カニューレ上部部材が当該押込部材によって注入方向へ変位され得るように形成されているのが好ましい。それゆえ、この好ましい実施形態において、当該カニューレへの力の作用は、当該ユーザが当該押込部材を当該患者の方向へ変位させ、これによって、力の作用が当該カニューレ上部部材を介して当該カニューレに伝達されて当該カニューレが当該患者に経皮挿入されることにより、間接的に行われる。
【0018】
好適には、この場合、当該保持部材は当該カニューレ上部部材と協働して、当該注入プロセスに際して、当該保持部材が当該カニューレ上部部材によって注入方向へ変位され得るように形成されている。
【0019】
これによって、当該注入プロセスに際し、当該押込部材の力の作用が当該カニューレ上部部材を介して当該保持部材に伝達されることにより、構造的にシンプルな態様が達成される。好ましくは、当該保持部材は、当該カニューレ上部部材の、当該患者に向いた側に配置されている。
【0020】
構造的にシンプルな態様を達成すべく、当該保持部材は当該カニューレを包囲するように形成されているのが特に好適である。
【0021】
当該カニューレは、好ましくは、当該上部部材と固定結合され、特に、当該上部部材と不可脱式に結合されている。好適には、当該カニューレ上部部材は当該カニューレの遠位端で当該カニューレを包囲している。
【0022】
好適には、当該カニューレ上部部材は、中央部材と少なくとも一つのガイド突出片―特に、一つのガイド突起―を有する。当該ベース部材は、当該カニューレ上部部材を注入方向へガイドするために、当該カニューレ上部部材の当該ガイド突出片のためのスリットの設けられた好ましくは少なくとも一つのガイド壁を有する。当該カニューレは、この好適な態様において、当該中央部材に配置されている。好適には、当該押込部材は当該ガイド突出片に作用し、その結果、当該押込部材の操作時に、当該ガイド突出片を介して当該中央部材へ、そして、当該カニューレへの力の伝達が行われる。当該ガイド突出片は当該ベース部材の当該ガイド壁を貫通し、当該押込部材は、当該カニューレ上部部材の当該中央部材とは反対側に位置する当該ガイド壁側で当該ガイド突出片に作用するように形成されているのが特に好適である。これによって、当該ガイド壁及び当該ガイド壁に設けられた当該ガイドスリットによって、注入方向への当該カニューレ上部部材の効果的な案内が与えられる。
【0023】
好適な発展態様において、注入方向への変位に際する当該カニューレ上部部材の傾倒は次のようにして―つまり、当該カニューレ上部部材の互いに相反する二つの側にそれぞれ一つのガイド突出片が形成され、当該ベース部材が、それに対応して、当該双方のガイド突出片のために注入方向に延びる少なくとも二つのガイドスリットを有し、当該押込部材が当該双方のガイド突出片に作用するように形成されていることによって―防止される。
【0024】
この場合、当該双方のガイドスリットは、当該ベース部材の一つの共通のガイド壁に形成されていてよい。特に好適なのは、当該ベース壁が当該カニューレ上部部材の当該中央部材及び、好ましくは、当該保持部材をも包囲して形成されていることである。特に、ガイド壁は、安定した構造のために、中空円筒の形をしているのが好適である。同じく、当該ベース部材が、当該カニューレ上部部材及び好ましくは当該保持部材のために複数のガイド壁を有することも本発明の範囲に属する。
【0025】
好ましい態様において、当該注入器は、排出手段―特に、排出ばね―及び拘束部材―特に、排出ばね保持部材―を有する。当該排出ばね保持部材は当該ベース部材に固定し得るように形成されているために、当該排出ばねは、当該排出ばね保持部材によって締付け若しくは圧縮された状態で、固定し得る。
【0026】
これにより、メーカーサイドで、当該排出ばねを、例えば、圧縮された状態で配置することができるため、かくて、これによって蓄えられたエネルギーを当該カニューレの排出に使用することが可能であり、こうして、自動的排出が行われる。
【0027】
好適には、この場合、当該押込部材は当該拘束部材と協働し、当該押込部材によって当該拘束部材を当該注入プロセスの最後に―とりわけ好ましくは、当該押込部材による当該拘束部材の回転、好ましくは、注入軸を中心とした回転によって―固定位置から解除し得るように形成されている。
【0028】
当該注入軸は、それに沿って当該カニューレ及び当該センサが当該注入プロセスに際して注入方向へ変位させられると共に、それに沿って当該カニューレが当該排出プロセスに際して当該注入方向とは反対方向へ変位させられる当該軸に等しい。当該注入軸は、好ましくは、当該カニューレの中心軸を通って延びている。
【0029】
好適には、当該押込部材と当該拘束部材は、一本の共通の注入軸を中心として回転し得るようにして当該ベース部材に配置されている。これによって、構造的にシンプルな構成がもたらされる。
【0030】
好適には、ベース部材及び/又は押込部材は、当該注入プロセスに際し、近位端領域において、注入方向への当該押込部材の変位時に、当該ベース部材に対する当該押込部材の回転が行われるように配置された、少なくとも一つの斜面―特に、ガイド面―を有する。これによって、構造的にシンプルな方法で、カニューレが完全に又はほぼ完全に挿入されている状態で当該押込部材の回転が達成されて、当該拘束部材の解除及び当該排出ばねの伸長ないし収縮による当該カニューレの排出が開始される。
【0031】
それゆえ、好適には、押込部材及び拘束部材は、当該押込部材の回転によって当該排出手段が固定位置から解除され得るように配置された互いに対応する当接面を有する。好ましくは、当該拘束部材は突起を有し、当該押込部材はそれに対応するガイド面を有する。
【0032】
好適には、ベース部材及び押込部材は、当該近位端領域においてのみ当該押込部材が当該ベース部材に対して回転し得るように形成されて配置された、互いに対応するガイド部材を有する。
【0033】
これによって、当該ユーザが既に当該近位端領域前で当該ベース部材に対する当該押込部材の回転を実施し、その結果、誤動作、特に、当該排出ばねの早期作動又は作動不能が招来される可能性が防止される。
【0034】
そのため、好適には、当該双方の部材―つまり、ベース部材及び押込部材―のいずれか一方に、注入方向に真っ直ぐに延び、ただし、当該近位端領域において、当該ベース部材に対する当該押込部材の回転を実現するガイドスリット又はガイド溝が形成されており、それゆえ、特に好ましくは、ガイドスリット又はガイド溝はL形になして形成されている。当該双方の部材の他方には、好ましくは、当該上記ガイド溝ないしガイドスリットに嵌合する、好ましくは、一つのガイド突出片特に突起が形成されている。
【0035】
当該押込部材は、当該近位端領域における当該押込部材の回転後、当該カニューレ上部部材が当該注入方向とは反対方向に変位し得るように配置された、当該カニューレ上部部材の当該突出片のための、好ましくは複数のガイドスリットを有する。これによって、構造的にシンプルな形で、排出プロセスが可能であり、そのために当該押込部材が当該注入方向とは反対方向に運動させられる必要はない。
【0036】
したがって、排出手段―特に、排出ばね―の設けられた好適な態様において、当該排出プロセスに際し、好ましくは、当該ベース部材と当該押込部材に対する、カニューレを具えたカニューレ上部部材の当該注入方向とは反対方向への変位が行われ、そのため、当該排出プロセス中にベース部材と押込部材との間のさらなる変位はなんら行われないか若しくはせいぜいわずかなそれが生ずるにすぎない。
【0037】
上述した当該斜面は、好ましくは、当該押込部材の上記の当該ガイドスリットの近位端に形成されている。これによって、構造的にシンプルな構成が達成される。
【0038】
好適には、当該注入器は、ベース部材と押込部材との間に、注入方向への当該押込部材の変位を防止するようにして配置された反力ばねを有する。これによって、当該注入プロセスが当該押込部材への圧力によってのみ開始させられようにし、例えば、ほとんど当該押込部材の当該重力によるのみで行われてしまうことがない旨保証される。
【0039】
以下、一実施例及び当該図面を参照して、その他の好ましい特徴及び実施例を説明する。各図は以下を示している。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】患者にセンサを経皮挿入するための本発明による注入器の一実施例の側面図である。
【
図2】注入器のカニューレ、カニューレ上部部材及び保持部材の側面図であって、aは突出片の当該端面を正面から眺めた際の側面図であり、bは突出片の長手方向が当該描図面内に位置する際の側面図である。
【
図3】
図2に示した前記部材を上方から眺めた平面図である。
【
図4】
図2に示した前記部材の断面図であって、aは
図2bに示した切断線A-Aに沿った断面図であり、bは
図3に示した切断線B-Bに沿った断面である。
【
図5】当該注入プロセス前の当該注入器の断面図である。
【
図6】当該注入プロセス完了後の当該注入器の断面図である。
【
図7】当該注入プロセス完了時のさらに別の断面図であって、当該切断面は
図6に示した当該切断面に対して垂直をなしている断面図である。
【
図8a】排出ばね保持部材を具えた当該検出器の詳細図である。
【
図8b】排出ばね保持部材を具えた当該検出器の詳細図である。
【
図9】当該注入プロセスの近位端領域における上記注入器の詳細図である。
【
図10】当該排出プロセス完了後の上記注入器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図面中の同一符号は、同一の部材ないし同一作用を有する部材を表している。
【0042】
図1は、本発明による注入器の当該実施例の側面図を示している。当該注入器は、ベース部材1及び押込部材2を有している。当該押込部材は、注入方向Iに変位し得るようにして、当該ベース部材に配置されている。
【0043】
当該注入器は、さらに、当該ベース部材に配置されて、当該ベース部材並びに当該下部、特に、
図1に示した当該押込部材2の当該下側半分を包囲するハウジングを有していてよい。分かり易さを優先させて、当該ハウジングは図中不図示である。
【0044】
上記注入器を使用するために、ベースプレートが当該患者の皮膚に付着され、上記注入器は、当該ベース部材の当該下側面に形成されたバヨネット継手を介して当該ベースプレートに取り付けられるため、上記注入器は当該ベースプレートに着脱式に―したがって、当該患者に着脱し得るようにして―配置されている。同じく、上記注入器は、注入器とベースプレートが当該患者の皮膚に付着されるように、供給状態において既に当該ベースプレートに取り付けられていてもよい。
【0045】
したがって、当該患者の当該組織は、いずれの図にあっても、下側に位置していることから、各図において当該下側領域が近位領域を示し、当側上側領域が遠位領域を示している。
【0046】
上記ベース部材は、カニューレ上部部材4を有するカニューレ3及び保持部材5をほぼ包囲する略中空円筒として形成された領域を有する。これらの部材は
図2から4に別々に示されている。
【0047】
上記カニューレ3は、その遠位端が、上記カニューレ上部部材4の中央部材4a(
図4b参照)に埋め込まれて、該部材に固定結合されている。上記カニューレ上部部材4の下側には保持部材5が配置され、該部材はその遠位領域に、上記カニューレ上部部材4が嵌合する陥入部を有しており、その際、上記保持部材5は軽度の圧嵌めによって上記カニューレ上部部材4に配置されている。
【0048】
上記カニューレ上部部材4はさらに、互いに相反する側に配置されて、上記カニューレ3の長手方向に対して垂直をなして延びる―したがって、注入方向Iに対して垂直をなして延びる―二つの突出片4b、4cを有している。
【0049】
この場合、
図2aは、上記の突出片4cの当該端面を正面から眺めた際の側面図を示し、
図2bは、上記の突出片4b及び4cの長手方向が当該描図面内に位置する際の側面図を示している。
【0050】
図3は、上記カニューレ上部部材4を上方から眺めた平面図を示している。
図4aは、
図2bに示した切断線A-Aに沿った断面を示しており、その際、当該切断面は
図2aの描図面に対して垂直をなしている。
図4bは、
図3に示した切断線B-Bに沿った断面を示しており、その際、同じく当該切断面は
図3の描図面に対して垂直をなしている。
【0051】
例えば
図2aから看取し得るように、当該カニューレ3は、近位領域Sに、スリットを有している。
図2aは、当該カニューレ3の当該スリットを前方から眺めた平面図を示している。当該カニューレ3内には、例えば
図4a及び4bから看取されるように、センサ6が配置されている。
【0052】
このセンサは、検出器として形成された検出素子/検出ユニットによって測定値を視覚的に求めるために、当該注入器によって当該患者組織に経皮挿入されることとなる。この種の視覚的測定の当該基本原理は国際公開第2016128334号及び国際公開第2006092317号に開示されている。
【0053】
同じく、その他のセンサ、特に、測定値を電気的に検出するための電極を有したセンサの挿入も同様にして可能である。
【0054】
特に、
図2b、4a及び4bから看取されるように、上記保持部材5は突部5aを有し、該突部は、上記センサ6の当該遠位端の領域において、上記カニューレ3の当該スリットを貫いてカニューレ内に嵌合し、こうして、上記センサ6の上部遠位端に接している(
図4b参照)。
【0055】
上記保持部材5はさらに、係止突起として形成された固定手段5b及び5cを有しているため、注入プロセスの最後に、上記保持部材5は上記ベース部材に自動的に固定されることができる。
【0056】
図5は、当該注入器の断面図を示しており、その際、当該切断面は当該カニューレ3の当該中心軸を通ると共に、当該注入軸を通って延びている。図示されているのは、供給状態を表す当該注入プロセス前の状態であり、その際、カニューレ及びセンサは当該注入器の内部、特に、上記ベース部材1の内部に位置している。
【0057】
センサ6を収容したカニューレ3、保持部材5及び上記カニューレ上部部材4の中央部材4aは、上記ベース部材1の略円筒状に形成された領域内に配置されている。この円筒状の領域は、注入方向Iに直線状に延びるガイドスリットを有しており、そのうち一本のガイドスリット1aが
図1から看取される。
【0058】
上記カニューレ上部部材4の上記突出片4b及び4cは、上記ベース部材1の略円筒状に形成された上記領域を貫通している。
図5から看取し得るように、上記押込部材2は、上記ベース部材1の上記円筒状領域の外部で、上記突出片4b及び4cに作用する。したがって、上記押込部材2は、上記ベース部材1の上記円筒状領域の外壁に沿って注入方向に変位し得るように案内され、上記カニューレ上部部材4の中央部材4a並びに保持部材5は、上記ベース部材1の上記円筒状領域の当該内側面に沿って、注入方向に変位し得るように案内される。したがって、上記ベース部材1の上記円筒状領域は、これらの部材のためのガイド壁1bを形成している。
【0059】
さて、当該ユーザが上記押込部材2を注入方向に向かって下方に押すと、その力は、上記突出片4b及び4cを介して、上記中央部材4a及びそれと共に当該カニューレ3に伝達される。同じく、その力は、上記中央部材4aを介して、上記保持部材5に伝達され、その結果、これらの部材並びに上記センサ6は注入方向に運動させられる。
【0060】
図6は当該注入プロセスの最後を示している。つまり、上記押込部材2は下方に完全に押し下げられ、当該センサ6を収容した上記カニューレ3は当該患者組織に経皮挿入されて、係止突起として形成された上記固定手段5b及び5cは、
図7から看取されるように、上記ベース部材1の対応する凹部に係合している。
【0061】
したがって、当該注入プロセスの最後に、上記保持部材5は自動的に上記ベース部材1に固定されることとなる。
【0062】
以後の当該排出プロセスに際し、上記カニューレ上部部材4は当該注入方向Iとは反対向きに上方へ向かって運動させられ、こうして、上記カニューレ3は当該患者組織から抜き出される。ただし、上記保持部材5は上記ベース部材1に固定されているために、上記保持部材は当該注入方向とは反対向きの当該運動を共に遂行することはない。場合により、保持部材5とカニューレ上部部材4との間に圧嵌めが生じていても、それは当該係止突起による当該固定によって克服される。さらに、上記保持部材5の上記突部5aが、上記センサの当該遠位端において、上記カニューレ3の当該スリットを貫いて当該カニューレ内に嵌合しているため、これによって、上記カニューレ3の抜き出しに際して上記センサも当該患者組織から抜き出されてしまうことが阻止される。とりわけ、センサとカニューレの間に生ずる付着又は摩擦もこれによって克服することが可能である。
【0063】
当該排出プロセスの完了後、当該注入器は上述したベースプレートから取り外されるために、当該患者に残置されているのはベースプレートとセンサ6だけである。それゆえ、保持部材5とセンサ6は、別々のユニットとして形成されている。
【0064】
本実施例に準拠した当該注入器はさらに、排出ばね7として形成された排出手段及び排出ばね保持部材8として形成された上記排出手段のための拘束部材を有している。
図1から看取されるように、供給状態において、上記排出ばね7は、ベース部材1と排出ばね保持部材8との間に圧縮されて配置されている。上記排出ばね7は、近位領域において、上記ベース部材1の当該円筒状領域を取り巻いている。
【0065】
上記排出ばね保持部材8は基本的に環状に形成されて、当該内側面にも当該外側面にも一つの突起を有している。当該内側突起によって、上記排出ばね保持部材は、上記ベース部材の、注入方向に対して垂直をなして延びるガイドに嵌脱式に固定されている(
図8a参照)。
図8aにおいて円でマーキングされた領域において、上記排出ばね保持部材8の当該内側突起は上記ベース部材1の当該外壁に設けられたガイドに嵌合しているために、この状態において上記排出ばね7の伸長は不可能である。以下において詳しく説明するように、押込部材2と排出ばね保持部材8とは次のように―つまり、当該注入プロセスの最後に、上記排出ばね保持部材8の回転が行われ、
図8aに示した図において、上記排出ばね保持部材8の当該突起が左に回転させられて、上記ベース部材1の当該ガイドスリット1aの領域内に達するために、上記排出ばね7の伸長が可能となるように―協働するように形成されている。
【0066】
図8a及び8bから看取されるように、上記ベース部材は、近位領域に、斜面つまり傾斜面として形成された二つのガイド1c及び1dを有しており、これらが、当該注入プロセスの最後に、上記押込部材2の対応する当接面と接触するに至る。この終端領域において、上記押込部材がさらに押し下げられると、当該斜面1c及び1dによって、上記ベース部材に対する上記押込部材の当該注入軸を中心とした回転が行われる。分かり易さを優先させて、
図8aにおいて、例えば上記押込部材などの部材は不図示である。
【0067】
図8bから看取し得るように、上記排出ばね保持部材8は、突起として形成された外側突出片8aを有しており、該突出片は、上記押込部材2の回転時に、該押込部材2の対応するガイド面2aと接触するに至り、こうして、上述したように、上記排出ばね保持部材8の回転が行われる。
【0068】
図9は、上記押込部材2が下方に向かって完全に押し下げられて、上記ベース部材1に対する上記押込部材2の回転も完了している状態を示している。同図から看取し得るように、当該注入プロセスのこの終了状態において、上記排出ばね保持部材8の外側突起8a並びに上記カニューレ上部部材4の突出片4bはいずれも上記押込部材2のガイドスリット2bの領域内に位置している。互いに相反する側(図中不可視である)には、相応して、上記カニューレ上部部材4の上記突出片4cが、上記押込部材2の半径方向正反対側に配置されたガイドスリット内に位置している。
【0069】
したがって、この状態において、上記突出片4b及び4c並びに上記外側突起8aに関しては、当該注入方向とは反対向きの運動に関してなんらの制限も存在していない。その結果、上記排出ばね7の伸長が行われ、これによって、排出ばね保持部材8及びカニューレ上部部材4は、排出プロセスにおいて、当該注入方向とは反対に、上方へ向かって押し上げられる。他方、上記保持部材5は、該保持部材が係合係止されているために、その位置を変えることはない。
【0070】
したがって、当該患者組織からの上記カニューレ3の引き抜きが行われ、その際、上記センサ6は、上記保持部材5の上記突部5aによって、引き抜きが阻止される。
【0071】
図11には、
図9に示した状況が断面図として示されており、その際、当該注入軸は当該描図面にあり、当該切断面は
図3に示した切断線Bに沿って延びている。ここで、特に、一方で上記保持部材8に作用し、他方で上記ベース部材1に作用する、圧縮された当該排出ばね7が看取される。さらに、当該排出ばね7と同心をなして―ただし、より大きな半径を有する―反力ばね7aが配置されており、該ばねは、一方で上記ベース部材1に作用し、他方で押込部材2に作用する。この反力ばねも、この状況において、完全に圧縮されている。当該反力ばねは、特に、当該重力による上記押込部材2の降下を回避する目的に資すると共に、一様な注入を可能とすべく、特に、当該患者への上記カニューレ3の一様な挿入速度を可能とすべく、当該注入プロセスに際して当該ユーザに略一定の反力を供する目的に資するものである。
【0072】
図10には、
図9と同様な図、ただし、当該排出プロセス完了後の図が表されている。
【0073】
先に述べたように、当該注入プロセスの最後に、上記保持部材8は当該注入軸を中心にして回転させられる結果、上記保持部材は、排出方向つまり当該注入方向とは反対向きの当該保持部材の運動が不可能な固定位置から、排出方向への運動を行うことができる排出位置へと移動させられる。
【0074】
既に
図8aに関連して述べたように、上記保持部材8は、上記内側面に突起を有し、該突起は、
図8aに示した固定位置において、上記ベース部材1の水平に延びるスリット内に配置されているために、排出方向(
図8aにおいて上方)への運動は不可能である。
【0075】
当該注入プロセスの最後に、当該注入軸を中心とした―
図8aにおいて時計回り方向への―上記保持部材8の回転が行われるために、上記保持部材8の上記内側突起は上記ベース部材1の当該ガイドスリット1aの当該溝内に位置することとなる。したがって、これによって、排出方向(上方)への上記ガイド部材8の運動が可能となる。上記保持部材8のこうした回転が行われることとなるのは、当該注入プロセスの最後に、上記ベース部材1の当該斜面1d及び1cと、それに対応する上記押込部材2の斜面に基づいて、当該注入軸を中心とした当該押込部材の(この場合、時計回り方向の)回転が行われ、かつ、上記保持部材8の上記外側突起に作用する上記押込部材2の当該面2aによって当該回転が上記保持部材8に伝達されるからである。
【0076】
上記保持部材8が排出位置にあれば、上記伸縮ばね7の伸長が可能である。これによって、上記保持部材8は上方へ押し上げられ、この運動が上記カニューレ上部部材4と共に上記カニューレ3にも伝達される結果、当該カニューレ3は排出プロセスにおいて当該患者から抜き出される。ただし、上記センサ6は、上述した保持部材5の作用により、当該患者に経皮残置されたままである。
【0077】
図10は、今や、当該排出プロセス完了後の状況を示している。当該排出ばね7は伸長した状態にあり、保持部材8及びカニューレ上部部材4(並びにカニューレ3)は上方へ移動させられて、上記ベース部材1の内部に位置している。ただし、上記押込部材2の当該位置は不変であり、そのため、外側に位置する上記反力ばねは、依然として、圧縮された状態にある。
【0078】
図12には、
図11と同様な―ただし、
図10に示した当該排出プロセスの最後における―断面が表されている。
【0079】
本実施例による当該注入器はさらに、特に、
図5及び6から看取されるように、当該カニューレ3のためのカニューレガイド9を有している。
【0080】
上記カニューレガイド9は、特に、当該注入プロセスの間―ただし、当該排出プロセスの間にも―当該カニューレが傾倒したりあるいは側方へずれたりするのを防止すべく、当該カニューレを案内するために使用される。そのため、上記カニューレガイド9は、上記ベース部材1の互いに相反する双方の側に配置され、中央に、当該カニューレ3が貫通して当該カニューレガイド9を二つの半体部に区分する孔を具えた弾性ガイド面を有している。
図5には、当該注入前の状態が表されている。ここで、当該カニューレ3は、近位領域において、上記カニューレガイド9によって案内されるために、以後の注入に際して傾倒したりあるいは側方へずれたりすることが防止される。
【0081】
当該注入プロセスの完了後、上記保持部材5及び上記カニューレ上部部材4は上記カニューレガイド9の当該領域に達する。上記カニューレガイド9が二体に区分されているために、当該カニューレガイド9の当該弾性要素は上記保持部材5によって左右に向かって押圧されることができる。これは
図6から看取することができる。