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  • 特許-紙製構造体及び紙材用接着剤 図1
  • 特許-紙製構造体及び紙材用接着剤 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】紙製構造体及び紙材用接着剤
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/56 20060101AFI20230303BHJP
   B65D 5/42 20060101ALI20230303BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230303BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
B65D5/56 Z
B65D5/42 Z
C09J11/06
C09J201/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020135438
(22)【出願日】2020-08-08
(65)【公開番号】P2022031591
(43)【公開日】2022-02-21
【審査請求日】2022-04-06
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520301227
【氏名又は名称】株式会社松本工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100181582
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 直斗
(72)【発明者】
【氏名】松本 直行
(72)【発明者】
【氏名】松本 輝男
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-111477(JP,A)
【文献】特開2000-355675(JP,A)
【文献】特開2004-168717(JP,A)
【文献】特開平04-026401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/56
B65D 5/42
C09J 201/00
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙材であるダンボール原紙からなるダンボールにより構成された紙製構造体であって、
前記ダンボールの接着箇所同士を接着剤により接着して貼り合わせた接着部を有し、
前記接着剤は、接着主成分と、接着強化成分であるヒバ油と、を含み、
前記接着剤の前記接着主成分は、酢酸ビニル樹脂系接着剤であり、
前記接着剤の前記接着強化成分であるヒバ油の含有量は、前記接着主成分100質量%に対して0.2~1.0質量%である、紙製構造体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製構造体及び紙材用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダンボール(段ボール)等で構成された包装箱が提案されている。例えば、特許文献1には、接着剤により接着した接着部の接着強度を向上させることができるダンボール等で構成された包装箱が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-282185
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ダンボール等で構成された包装箱等について、例えば、耐荷重性を確保するために、また環境面から過剰包装を見直して包装簡素化及び構造強化を図るために、接着部に高い接着強度が求められる場合がある。しかしながら、接着部の接着強度を効果的に高めるための手法が十分に確立されているとは言えなかった。
【0005】
本発明は、接着部の接着強度を効果的に高め、抗菌性・防虫性をも有する紙製構造体及び紙材用接着剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様は、紙材により構成された紙製構造体であって、接着箇所同士を接着剤により接着した接着部を有し、接着剤は、接着主成分と、ヒバ油を含む接着強化成分と、を含む。
【0007】
上記紙製構造体によれば、接着部に用いる接着剤は、接着主成分と、ヒバ油を含む接着強化成分と、を含んでいる。そのため、ヒバ油を含む接着強化成分によって、接着主成分の接着性を強化し、接着剤全体の接着性を向上させることができる。これにより、接着剤により接着した接着部の接着強度を効果的に高めることができる。
【0008】
また、接着部に用いる接着剤において、接着強化成分に含まれるヒバ油は、抗菌性・防虫性を有する。そのため、接着部を有する紙製構造体は、紙製構造体全体として抗菌性・防虫性を有する。これにより、紙製構造体は、接着部の接着強度を効果的に高めるだけでなく、抗菌性・防虫性の効果をも有する。
【0009】
上記紙製構造体において、接着剤の接着主成分は、熱可塑性樹脂系接着剤であってもよい。この場合には、ヒバ油を含む接着強化成分によって、接着剤の接着性をより向上させ、接着部の接着強度をより効果的に高めることができる。
【0010】
また、接着剤の接着強化成分に含まれるヒバ油の含有量は、接着主成分100質量%に対して0.1質量%以上であってもよい。この場合には、ヒバ油を含む接着強化成分によって、接着剤の接着性をより向上させ、接着部の接着強度をより効果的に高めることができる。
【0011】
本発明の他の態様は、紙材同士を接着するための紙材用接着剤であって、接着主成分と、ヒバ油を含む接着強化成分と、を含む。
【0012】
上記紙材用接着剤によれば、接着主成分と、ヒバ油を含む接着強化成分と、を含んでいる。そのため、ヒバ油を含む接着強化成分によって、接着主成分の接着性を強化し、接着剤全体の接着性を向上させることができる。これにより、接着剤により接着した部分(接着部)の接着強度を効果的に高めることができる。また、接着強化成分に含まれるヒバ油は、抗菌性・防虫性を有する。そのため、接着部の接着強度を効果的に高めるだけでなく、抗菌性・防虫性の効果をも有する。
【0013】
上記紙材用接着剤において、接着主成分は、熱可塑性樹脂系接着剤であってもよい。また、接着強化成分に含まれるヒバ油の含有量は、接着主成分100質量%に対して0.1質量%以上であってもよい。これらの場合には、ヒバ油を含む接着強化成分によって、接着剤の接着性をより向上させ、接着部の接着強度をより効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】試験体の作製工程を示す説明図である。
図2】試験体の接着強度試験の概要を示す説明図である。
図3】試験体の接着強度を示すグラフである。
図4】紙製構造体の実施形態例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の紙製構造体は、紙材により構成されている。紙材の材質としては、例えば、紙又は板紙を用いることができる。紙は、基本的に薄い紙で、パルプ(木材の繊維)層が1層のみで構成された紙である。板紙は、基本的に厚い紙で、パルプ(木材の繊維)層が2層以上(複数層)で構成された紙である。
【0016】
紙製構造体を構成する紙としては、例えば、包装用紙等が挙げられる。包装用紙は、物や商品を包んで守ったり、運んだりするために使用される紙である。紙製構造体を構成する板紙としては、例えば、紙器用板紙、ダンボール原紙、その他の板紙等が挙げられる。紙器用板紙は、主に箱状の容器に使用される紙である。ダンボール原紙は、ダンボールの表層(ライナー)及び中芯となる紙である。その他の板紙は、紙管、建設用の防水原紙等の特殊な用途向けに加工をした紙等である。
【0017】
紙製構造体としては、紙材が紙である場合、例えば、包装用紙を用いた包装紙、封筒、紙袋、お菓子の袋等が挙げられる。また、紙材が板紙である場合、例えば、紙器用板紙を用いた菓子箱、化粧品箱、台紙等、ダンボール原紙(ダンボール)を用いたダンボール箱、その他の板紙を用いた紙管、建設用の防水原紙等が挙げられる。
【0018】
紙製構造体は、1つの構成部材(部品)で構成されていてもよいし、複数の構成部材(部品)を組み合わせて構成されていてもよい。紙製構造体を構成する1又は複数の構成部材には、1つの紙材が用いられていてもよいし、複数の紙材が用いられていてもよい。
【0019】
紙製構造体は、接着箇所同士を接着剤により接着した接着部を有する。接着箇所は、紙製構造体において、接着剤により接着する部分(接着面、接着領域)である。紙製構造体は、接着剤により接着する2つの接着箇所を少なくとも有する。接着剤により接着する2つの接着箇所は、紙製構造体を構成する1つの構成部材にその両方が存在していてもよいし、紙製構造体を構成する2つの構成部材にそれぞれ1つずつ存在していてもよい。
【0020】
接着部は、紙製構造体において、接着箇所同士(2つの接着箇所)を接着剤により接着した部分である。紙製構造体は、少なくとも1つの接着部を有する。すなわち、紙製構造体は、1つの接着部を有していてもよいし、複数の接着部を有していてもよい。
【0021】
接着剤(紙材用接着剤)は、接着主成分と、ヒバ油を含む接着強化成分と、を含む。接着主成分は、接着剤の主となる成分であり、接着剤として接着機能を発揮する成分である。接着主成分としては、紙材を接着するのに好適な接着剤等を用いることができる。接着主成分としては、例えば、熱可塑性樹脂系接着剤等が挙げられる。接着主成分には、接着主成分として用いられる接着剤に対して、さらに水等の溶媒を添加して希釈したものも含まれる。水等の溶媒を添加して希釈することにより、接着主成分自体の接着性向上に寄与することがある。
【0022】
熱可塑性樹脂系接着剤としては、例えば、酢酸ビニル系の酢酸ビニル樹脂系接着剤やエチレン酢酸ビニル(EVA)樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤等が挙げられる。熱可塑性樹脂系接着剤の形態としては、例えば、エマルジョン形、溶液形、固形等が挙げられる。酢酸ビニル樹脂系接着剤の場合には、溶液形やエマルジョン形が挙げられる。
【0023】
接着強化成分は、接着主成分の接着性を強化する(接着強度を高める)ための成分である。接着強度成分には、少なくとも、ヒバ油が含まれる。接着強度成分は、ヒバ油のみであってもよいし、ヒバ油以外の成分が含まれていてもよい。
【0024】
ヒバ油は、青森ヒバ等のヒバを水蒸気蒸留して得られる精油である。ヒバ油としては、液体状のヒバ油(ヒバ液)や粉末状のヒバ油(ヒバ粉)があるが、接着剤の接着性を効果的に高めるためには、液体状のヒバ油(ヒバ液)を用いることが好ましい。ヒバ油には、抗菌性・抗カビ性を有するヒノキチオール等の成分、防虫性を有するシトロネール等の成分が含まれている。したがって、ヒバ油は、抗菌性・防虫性の効果を奏する。
【0025】
接着剤は、ヒバ油を含む接着強化成分を含むことにより、接着主成分の接着性を強化することができる。そのため、接着剤全体の接着性を向上させることができる。これにより、接着剤により接着した接着部の接着強度を効果的に高めることができる。よって、接着部を有する紙製構造体の耐荷重性を向上させることができる。また、接着部の接着強度が高くなることにより、例えば、紙製構造体を包装等に用いる場合、環境面から過剰包装を見直し、包装簡素化及び構造強化を実現することができる。
【0026】
また、接着剤には、抗菌性・防虫性を有するヒバ油が含まれる。そのため、接着剤により接着した接着部を有する紙製構造体は、紙製構造体全体として抗菌性・防虫性の効果を有するものとなる。例えば、紙製構造体を食料品の包装や長期間の輸送等に用いる場合には、抗菌性・防虫性の効果をより有効に発揮することができる。
【0027】
接着剤の接着主成分としては、熱可塑性樹脂系接着剤を用いることが好ましい。接着主成分を熱可塑性樹脂系接着剤とすることにより、ヒバ油を含む接着強化成分によって、接着剤の接着性をより向上させることができる。そのため、接着部の接着強度をより効果的に高めることができる。
【0028】
また、熱可塑性樹脂系接着剤としては、酢酸ビニル系、特にエマルジョン形の酢酸ビニル樹脂系接着剤を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂系接着剤をエマルジョン形の酢酸ビニル樹脂系接着剤とすることにより、ヒバ油を含む接着強化成分によって、接着剤の塗布性や接着性をより一層向上させることができる。
【0029】
接着剤における接着強化成分の含有量や接着強化成分に含まれるヒバ油の含有量は、接着主成分の接着性を十分に強化できる量、さらには抗菌性・防虫性の効果を十分に有する量とすればよい。
【0030】
接着剤の接着強化成分に含まれるヒバ油の含有量は、接着主成分100質量%に対して0.1質量%以上であることが好ましい。これにより、接着剤の接着性をより向上させ、接着部の接着強度をより効果的に高めることができる。また、このような効果をさらに発揮するために、ヒバ油の含有量は、例えば、接着主成分100質量%に対して0.2~1.0質量%の範囲とすることができる。
【0031】
一方、ヒバ油の含有量は、ある一定の量を超えると、接着剤の接着性を向上させる効果が飽和する傾向が見られる。そのため、ヒバ油の含有量は、例えば、接着主成分100質量%に対して3.0質量%以下、さらには1.5質量%以下とすることができる。
【0032】
上述したように、微量の接着強化成分(ヒバ油)により、接着剤の接着性を十分に向上させることができる。すなわち、接着主成分に微量の成分を添加するだけで、接着主成分の接着性を十分に強化することができる。よって、接着部の接着強度を非常に効果的に高めることができる。
【0033】
(接着強度試験)
本発明の効果を確認するための接着強度試験について説明する。
ここでは、各種試験体(試験体E1~E9)を作製し、接着剤により接着した接着部の接着強度を測定した。接着強度の測定は、JIS P8113:2006(紙及び板紙-引張特性の試験方法-)に準拠して行った。
【0034】
まず、試験体の作製について説明する。
図1(A)に示すように、試験体を構成する2枚のダンボールライナー11、12を準備する。ダンボールライナー11、12は、ダンボールの表層(表面、裏面)を構成するダンボール原紙であり、市販のKライナーである。ダンボールライナー11、12の寸法は50mm×140mmであり、厚みは約0.3mmである。
【0035】
ダンボールライナー11、12は、接着剤によって互いに接着する接着領域(接着箇所)111、112を有する。接着領域111、112は、ダンボールライナー11、12の一方の面の下半分の領域である。接着領域111、112の寸法は、50mm×70mmである。
【0036】
次いで、図1(B)に示すように、一方のダンボールライナー11の接着領域111に接着剤13を所定量塗布する。そして、接着剤13を塗布した一方のダンボールライナー11の接着領域111と他方のダンボールライナー12の接着領域121とを貼り合わせる。
【0037】
これにより、図1(C)に示すように、接着領域111と接着領域121とを接着剤13により接着した接着部14が形成される。その後、接着部14に対して、所定荷重で所定時間加圧する。以上により、試験体1を作製する。なお、接着剤13の塗布量、接着部14に対する荷重、加圧時間等、各試験体の作製条件は同一とする。試験体1は、温度23±1℃、湿度50±2%の雰囲気で24時間以上放置した後、接着強度の測定を行う。
【0038】
次に、各試験体の接着強度の測定方法について説明する。
図2に示すように、引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン万能材料試験機:RTC-1250A)に試験体1をセットする。具体的には、向きを水平にした試験体1について、一方のダンボールライナー11を中間位置で下方に折り曲げ、他方のダンボールライナー12を中間位置で上方に折り曲げる。
【0039】
そして、引張試験機の2個のつかみ具で試験体1のダンボールライナー11、12の先端部分を上下から掴んで固定する。その後、試験体1のダンボールライナー11、12を上下方向(垂直方向)に定速で引っ張り、接着部14が剥離したときの剥離強度を接着強度(N)とした。各試験体のサンプル数(n数)は10個とし、各試験体について接着強度の平均値を算出した。
【0040】
次に、各試験体に用いた接着剤について説明する。
試験体E1では、接着剤Aを用いた。接着剤Aは、エマルジョン形の酢酸ビニル樹脂系接着剤(アイカ工業社製、アイカアイボンAK-272GHQ)である。
【0041】
試験体E2では、接着剤Bを用いた。接着剤Bは、接着剤Aに水等の溶媒を添加して希釈したものである。溶媒の添加量は、接着剤Aを100質量%とした場合に10質量%である(10%希釈)。
【0042】
試験体E3~E9では、接着剤Cを用いた。接着剤Cは、接着主成分と接着強化成分とを含む。接着主成分は、試験体E2に用いた接着剤Bである。すなわち、接着剤Aであるエマルジョン形の酢酸ビニル樹脂系接着剤(アイカ工業社製、アイカアイボンAK-272GHQ)に水等の溶媒を添加して希釈したものである(10%希釈)。接着強化成分は、市販の液体状のヒバ油(ヒバ液)である。
【0043】
また、試験体E3~E9では、接着主成分に対して、接着強化成分であるヒバ油の含有量を変化させている。ヒバ油の含有量は、試験体E3が0.02質量%、試験体E4が0.1質量%、試験体E5が0.2質量%、試験体E6が0.5質量%、試験体E7が1.0質量%、試験体E8が1.5質量%、試験体E9が3.0質量%である。なお、ヒバ油の含有量は、接着主成分を100質量%とした場合の含有量である。
【0044】
表1に、各試験体の接着強度の測定結果を示す。また、図3に、各試験体の接着強度の平均値をグラフにして示す。
試験体E1及び試験体E2は、従来の接着剤A、Bを用いたものである。接着剤Aを希釈した接着剤Bを用いた試験体E2は、試験体E1よりも接着強度が高くなっている。この試験体E2の接着強度の平均値(23.2N)を基準値とする。また、表1には、各試験体について、試験体E2の接着強度の平均値を100%とする接着強度比率(%)を示す。
【0045】
一方、接着強化成分としてヒバ油を添加した接着剤Cを用いた試験体E3~E9は、基準である試験体E2に対して接着強度が高くなっていることがわかる。また、ヒバ油の含有量が0.1質量%以上である試験体E4~E9は、基準値となる試験体E2に比べて接着強度の平均値が20%以上高くなっている。具体的には、試験体E4は、基準値となる試験体E2に比べて接着強度の平均値が28%高くなっている。
【0046】
また、ヒバ油の含有量が0.2~1.0質量%である試験体E5~E7は、基準値となる試験体E2に比べて接着強度の平均値が30%以上高くなっている。具体的には、試験体E5、E6、E7は、基準値となる試験体E2に比べて接着強度の平均値がそれぞれ43%、46%、36%高くなっている。
【0047】
また、ヒバ油の含有量が1.5質量%である試験体E8と3.0質量%である試験体E9とは、接着強度の平均値がほとんど変わらない。すなわち、ヒバ油の含有量がある一定の量を超えると、接着強度を向上させる効果が飽和する傾向がわかる。試験体E8、E9は、基準値となる試験体E2に比べて接着強度の平均値がどちらも22%高くなっている。
【0048】
以上の結果からわかるように、接着主成分に対して、接着強化成分(ヒバ油)を添加したことにより、接着主成分の接着性を強化し、接着剤全体の接着性を向上させることができる。これにより、接着剤により接着した接着部の接着強度を効果的に高めることができる。
【0049】
【表1】
【0050】
(実施形態例)
本発明の実施形態例について説明する。
図4(A)に示すように、紙製構造体であるダンボール箱2は、紙材であるダンボール原紙からなるダンボールで構成されている。ダンボール箱2の側面を構成する長さ面21と幅面22とは、継ぎしろ(のりしろ)23によって継ぎ合わされている。幅面22の端部と長さ面21に連結された継ぎしろ23とは、接着剤により接着されている。両者を接着剤により接着した部分には、接着部31が形成されている。
【0051】
図4(B)に示すように、ダンボール箱2は、底面側において、2つの外フラップ24と2つの内フラップ25とが接着剤32により接着されている。具体的に接着手順を説明すると、2つの内フラップ25の所定箇所(各内フラップ25につき2箇所)に接着剤32を塗布する。その後、各外フラップ24を2つの内フラップ25に貼り合わせる。これにより、2つの外フラップ24と2つの内フラップ25とが接着剤32により接着され、接着剤32により接着した接着部31が形成される。
【0052】
なお、ダンボール箱2に使用した接着剤32は、接着主成分と接着強化成分とを含む。接着主成分は、熱可塑性樹脂系接着剤であるエマルジョン形の酢酸ビニル樹脂系接着剤である。接着強化成分は、ヒバ油を含む。接着剤32におけるヒバ油の含有量は、接着主成分100質量%に対して0.1質量%以上である。
【0053】
ダンボール箱2によれば、接着部31に用いる接着剤32は、接着主成分と、ヒバ油を含む接着強化成分とを含んでいる。そのため、ヒバ油を含む接着強化成分によって、接着主成分の接着性を強化し、接着剤32全体の接着性を向上させることができる。これにより、接着剤32により接着した接着部31の接着強度を効果的に高めることができる。
【0054】
また、接着部31に用いる接着剤32において、接着強化成分に含まれるヒバ油は、抗菌性・防虫性を有する。そのため、接着部31を有するダンボール箱2は、ダンボール箱2全体として抗菌性・防虫性を有する。これにより、ダンボール箱2は、接着部31の接着強度を効果的に高めるだけでなく、抗菌性・防虫性の効果をも有する。
【0055】
本発明は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。例えば、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。
図1
図2
図3
図4