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特許7236755育毛用組成物、遺伝子の発現促進用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】育毛用組成物、遺伝子の発現促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7016 20060101AFI20230303BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20230303BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
A61K31/7016
A61K8/60
A61Q7/00
A61P17/14
A61P43/00 111
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021084598
(22)【出願日】2021-05-19
(65)【公開番号】P2022178071
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】佐山 浩二
(72)【発明者】
【氏名】福田 信治
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-054836(JP,A)
【文献】特開平08-020514(JP,A)
【文献】国際公開第2004/071472(WO,A1)
【文献】Cryobiology,2015年,Vol.71,p.405-412
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/7016
A61K 8/60
A61Q 7/00
A61P 17/14
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレハロース有効成分として含有し、女性型脱毛を有する対象又は女性型脱毛のリスクを有する対象に使用される、育毛用組成物(但し、さらにL-アスコルビン酸グルコシド、5-アミノレブリン酸、ローヤルゼリー及び植物性ポリフェノールから選ばれる1以上を腸溶性素材で封入したものを含有する経口用組成物、並びに、さらにキトサンを0.1%以上含有する組成物を除く)
【請求項2】
薄毛の予防若しくは改善、脱毛の予防若しくは改善、毛髪量の改善、毛質の改善、毛髪の成長促進及び発毛促進からなる群より選ばれる少なくとも1つのための、請求項1に記載の育毛用組成物。
【請求項3】
休止期脱毛の予防又は改善のための、請求項1又は2に記載の育毛用組成物。
【請求項4】
毛乳頭細胞においてANGPT2、TNFSF10、SOCS3、PRLR、ISG20、BCL2及びNR5A2からなる群より選ばれる少なくとも1種の遺伝子の発現が低下した対象に使用される、請求項1~のいずれか一項に記載の育毛用組成物。
【請求項5】
外用剤である、請求項1~のいずれか一項に記載の育毛用組成物。
【請求項6】
トレハロース含有する、線維芽細胞のANGPT2伝子の発現促進用組成物(但し、さらにL-アスコルビン酸グルコシド、5-アミノレブリン酸、ローヤルゼリー及び植物性ポリフェノールから選ばれる1以上を腸溶性素材で封入したものを含有する経口用組成物、並びに、さらにキトサンを0.1%以上含有する組成物を除く)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育毛用組成物及び特定の遺伝子の発現促進用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪には、毛周期(ヘアサイクル)と呼ばれる、毛の成長から脱毛までを繰り返す周期があることが知られている。毛周期は、成長期、退行期及び休止期の3ステージに大きく分けられる。
【0003】
いわゆる薄毛や脱毛を呈する疾患又は症状として多く見られるのは、毛周期が本来と異なるタイミングで休止期に移行して脱毛する、休止期脱毛である。休止期脱毛には、男性型脱毛と女性型脱毛が含まれる。
【0004】
男性型脱毛(androgenetic alopecia、AGAとも呼ばれる)は、臨床的には、前頭部や頭頂部の頭髪が軟毛化して細く短く変化し、20代後半から40代に顕著に見られる。男性型脱毛は、遺伝的要因や男性ホルモンであるアンドロゲンに依存した成長期の短縮によって休止期の毛包の割合が増え、さらに毛包が委縮することによってもたらされると考えられている(非特許文献1)。
【0005】
一方、女性型脱毛(Female pattern hair loss、FPHLとも呼ばれる)は、頭頂部の広い範囲の頭髪が薄くなることが知られている(非特許文献1)。女性型脱毛は更年期に多発することから、女性ホルモンであるエストロゲンの減少がその原因の一つであると考えられている。
【0006】
近年、閉経後の状態に対応するモデルである卵巣摘出(OVX)マウスにおいて、エストロゲンの一種であるβ-エストラジオール(E2)が脱毛を抑制することが示されている(非特許文献2)。また、毛乳頭細胞において、(a)ANGPT2、TNFSF10、SOCS3、PRLR、ISG20、BCL2、NR5A2等の遺伝子の発現がE2によって促進されること、(b)OVXマウスで毛包の上皮性部分と間葉性部分の両方、特に毛乳頭細胞でANGPT2の減少が見られること、(c)ANGPT2タンパク質の投与によってOVXマウスの脱毛が改善すること、が示されている(非特許文献3)。
【0007】
ANGPT2遺伝子は、血管新生及び血管の発達の制御に関わる分泌糖タンパク質であるアンジオポエチン2をコードする遺伝子であり、ヒトのANGPT2遺伝子はNCBIのGeneデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene)のアクセッションIDが285である。アンジオポエチン2はアンジオポエチン1と同様にレセプターチロシンキナーゼTie-2のリガンドであり、同程度の親和性で結合する。そして、アンジオポエチン2はTie-2のアンタゴニストとして作用する。
またアンジオポエチン2は、VEGF存在下では細胞増殖と内皮細胞の遊走など血管増生を引き起こす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】「男性型及び女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」日本皮膚科学会雑誌,2017年,第127巻,第13号,p.2763-2777
【文献】Journal of Dermatological Science, 2017, Vol.87, p.79-82
【文献】Journal of Dermatological Science, 2018, Vol.91, p.43-51
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、育毛に有効な新たな成分を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、トレハロース又はその誘導体が、(a)ANGPT2遺伝子の発現促進効果を有すること、(b)優れた育毛効果を有すること、及び(c)女性ホルモンが減少した対象において優れた育毛効果を有すること、を見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明は、以下の実施形態を含む。
[1]
トレハロース又はその糖誘導体を有効成分として含有する、育毛用組成物。
[2]
薄毛の予防若しくは改善、脱毛の予防若しくは改善、毛髪量の改善、毛質の改善、毛髪の成長促進及び発毛促進からなる群より選ばれる少なくとも1つのための、[1]に記載の育毛用組成物。
[3]
休止期脱毛の予防又は改善のための、[1]又は[2]に記載の育毛用組成物。
[4]
女性型脱毛を有する対象又は女性型脱毛のリスクを有する対象に使用される、[1]~[3]のいずれか一項に記載の育毛用組成物。
[5]
毛乳頭細胞においてANGPT2、TNFSF10、SOCS3、PRLR、ISG20、BCL2及びNR5A2からなる群より選ばれる少なくとも1種の遺伝子の発現が低下した対象に使用される、[1]~[4]のいずれか1に記載の育毛用組成物。
[6]
外用剤である、[1]~[5]のいずれか1に記載の育毛用組成物。
[7]
トレハロース又はその糖誘導体を含有する、ANGPT2、TNFSF10、SOCS3、PRLR、ISG20及びBCL2からなる群より選ばれる少なくとも1種の遺伝子の発現促進用組成物。
[8]
皮膚組織由来細胞に適用される、[7]に記載の遺伝子の発現促進用組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の育毛用組成物を頭皮等に適用することにより、優れた毛成長促進等の育毛効果が発揮される。そしてこの育毛効果は、女性ホルモンが減少している対象の頭皮等に適用した場合にも発揮される。
【0013】
また、本発明の遺伝子の発現促進用組成物により、皮膚組織由来細胞のANGPT2等の遺伝子の発現が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】試験例1で、トレハロースを0、30又は100mg/mL含有する培地で24時間又は48時間培養した正常ヒト皮膚線維芽細胞(「TH 0」「TH 30」、「TH 100」)におけるANGPT2 mRNA量を比較したグラフである。左は24時間培養後、右は48時間培養後のサンプルのANGPT2 mRNA量を表す。縦軸は、トレハロース含有培地に播種する前の細胞(「0 h」)のANGPT2 mRNA発現量を1としたときの相対値化したmRNA量を表す。「HA oligo」は30μg/mLのヒアルロン酸オリゴ糖で同様の処理を行った細胞の群を表す。各群n=3であり、エラーバーは標準偏差を表す。
図2】試験例2の各マウスの剃毛処理1日後(塗布前)及び剃毛処理から24日後(塗布から23日後)の背部の画像である。OVX:卵巣摘出、Sham:偽手術、Ctl:トレハロースを含有しない剤を塗布、TH:10質量%トレハロースを含有する剤を塗布。
図3】試験例2の剃毛処理から24日後のOVX Ctl群及びOVX TH群の剤を塗布処理した背部の代表的なダーモスコピー像を表す。
図4】試験例2の剃毛処理から24日後のOVX Ctl群及びOVX TH群の剃毛部の単位面積当たりの体毛本数を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[用語の定義等]
本明細書において特定の成分を特定の用途における「有効成分として含有する」とは、当該特定の成分以外の成分の含有の有無によらず、当該特定の成分が当該特定の用途に適した効果を発揮することを表す。即ち、例えば医薬品又は医薬部外品等において有効成分として承認、明示等がされているか否かは、本明細書における「有効成分として含有する」か否かとは必ずしも関連しない。また、ここで、下記の組成物等が、当該特定の成分に加えて、それ以外の成分を「有効成分として含有する」ことは特に除外されない。
【0016】
本明細書において「改善」とは、疾患、症状、健康状態若しくは審美的状態の治癒、好転若しくは緩和、又は、疾患、症状、健康状態若しくは審美的状態の悪化の進行の防止若しくは遅延、あるいは疾患若しくは症状の進行の逆転、防止若しくは遅延を表す。
【0017】
本明細書において「予防」とは、疾患若しくは症状の防止若しくは遅延させること、又は、疾患若しくは症状の発症率若しくはリスクを低下させることを表す。
【0018】
本明細書において「対象」とは、組成物を投与される生体(ヒト、哺乳動物)、組成物で処理される器官、組織又は細胞を表す。ここで、器官、組織又は細胞は、生体中のもの又は生体から分離されたものであり得る。本明細書において、「患者」は「対象」と同義に解釈される。
【0019】
本明細書において、含有量の単位「質量%」は、「g/100g」と同義である。
本明細書において、「v/v%」は、体積百分率を表し、「mL/100mL」と同義である。
【0020】
本明細書の遺伝子名の略号は、全て、NCBIのGeneデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene)で用いられる遺伝子シンボル(ヒトゲノム命名法委員会(HGNC)の公式シンボル)で表す。
【0021】
[I.トレハロース又はその誘導体]
トレハロース又はその糖誘導体としては、下記のトレハロース及びトレハロース糖誘導体からなる群より選ばれる1種単独又は2種以上の化合物の組み合わせを含み得る。
【0022】
本明細書において、「トレハロース」とは、2つのα-グルコースが1,1-グリコシド結合した二糖類であり、α,α-トレハロースとも呼ばれる。本明細書のトレハロースは無水物、二水和物等の水和物を包含する。
【0023】
本明細書において、トレハロースの誘導体には、トレハロースの糖誘導体が含まれる。
本明細書において、「トレハロースの糖誘導体」とは、トレハロースの糖質糖誘導体であり、分子内にα,α-トレハロース構造に1個以上の糖モノマーが縮合した糖質である。トレハロース糖誘導体の具体例としては、特に限定されないが、例えば、特開平7-143876号公報、特開平8-73504号公報、特許第3182679号公報、特開2000-228980号公報などに記載される、α-マルトシルα-グルコシド、α-イソマルトシルα-グルコシドなどのモノ-グルコシルα,α-トレハロース;α-マルトトリオシルα-グルコシド(別名α-マルトシルα,α-トレハロース)、α-マルトシルα-マルトシド、α-イソマルトシルα-マルトシド、α-イソマルトシルα-イソマルトシドなどのジ-グルコシルα,α-トレハロース;α-マルトテトラオシルα-グルコシド(別名α-マルトトリオシルα,α-トレハロース)、α-マルトシルα-マルトトリオシド、α-パノシルα-マルトシドなどのトリ-グルコシルα,α-トレハロース;α-マルトペンタオシルα-グルコシド(別名α-マルトテトラオシルα,α-トレハロース)、α-マルトトリオシルα-マルトトリオシド、α-パノシルα-マルトトリオシドなどのテトラ-グルコシルα,α-トレハロースなど、グルコース重合度が3~6のα,α-トレハロースの糖質糖誘導体が挙げられる。
【0024】
トレハロース又はその誘導体の由来や製法は特に限定されず、天然物由来であっても化学合成された物であってもよい。
【0025】
上記のトレハロース又はその誘導体は、下記の[育毛用組成物]及び[特定の遺伝子の発現促進用組成物]の項に記載される用途に使用することができ、またこれらの項に記載される組成物の製造に使用することができる。
【0026】
[II.組成物]
本発明の育毛用組成物及び特定の遺伝子発現促進用組成物は、トレハロース又はその誘導体を含有することを特徴とする。
一実施形態では、トレハロース又はその糖誘導体を含有することを特徴とする。
【0027】
本発明の組成物のトレハロース及びその誘導体の総含有量は、組成物の用途、剤形、適用対象、用量、使用するトレハロース又はその誘導体の種類、組成物の処方等に応じて適宜変更し得る。トレハロース及びその誘導体の総含有量は、組成物の全量に対して、トレハロース換算量で、例えば0.0001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上又は10質量%以上であり、そして、例えば、80質量%以下、70質量%以下、50質量%以下又は30質量%以下であり得る。
【0028】
本明細書において、トレハロース換算量とは、トレハロース及びその誘導体から、水和水及びトレハロース以外の糖部分を差し引いた、トレハロース部分に相当する質量を表す。
【0029】
[A.育毛用組成物]
(作用・用途)
本発明の育毛用組成物は、有効成分としてトレハロース又はその誘導体を含有する。本発明の育毛用組成物は、実施例にも示されるように、毛髪の伸長を促進し、発毛している毛髪の本数を増加させ、毛髪を太くする作用を有する。
【0030】
本発明の育毛用組成物は、実施例にも示されるように、皮膚組織由来細胞においてANGPT2遺伝子の発現を促進する作用を有する。
また、ANGPT2遺伝子とTNFSF10、SOCS3、PRLR、ISG20及びBCL2の各遺伝子の発現は相関する。よって、本発明の組成物は、TNFSF10、SOCS3、PRLR、ISG20及びBCL2の各遺伝子の発現を促進する作用を有することが理解される。
【0031】
さらに、非特許文献3においてANGPT2の投与によって脱毛の改善が見られたことから、上記のANGPT2遺伝子の発現促進作用によって、脱毛を抑制する作用も奏されることが理解される。
【0032】
以上から、本発明の育毛用組成物は、育毛の用途に適する。本明細書において、当該育毛用途は、治療的用途(医療用途)及び非治療的用途(非医療用途、例えば、美容目的、健康の維持又は増進等)の両方を含む。育毛用途のより具体的な例としては、例えば、薄毛の予防若しくは改善、脱毛の予防若しくは改善、毛髪量(毛髪のボリューム)の改善、毛質の改善(例えば、毛髪のハリ又はコシの改善)、毛髪の成長促進及び発毛促進からなる群より選ばれる少なくとも1つの用途が挙げられる。
【0033】
本発明の育毛用組成物は、例えば、休止期脱毛(男性型脱毛(AGA)、脂漏性脱毛症、女性型脱毛(FPHL)等)又は成長期脱毛(円形脱毛症、薬剤性脱毛症等)に適用される。
【0034】
本明細書において、「成長期脱毛」とは、毛周期が成長期の段階で、何らかの要因(例えば、自己免疫、薬剤等)によって毛包がダメージを受けて脱毛する状態を表す。
【0035】
本明細書において、「休止期脱毛」又は「休止期性脱毛」とは、毛周期が本来と異なるタイミングで休止期に移行して脱毛する状態を表す。
【0036】
一実施形態では、本発明の育毛用組成物は、休止期脱毛に適用される。
本発明の育毛用組成物は、好ましくは女性ホルモン又は男性ホルモンの量の変化又はこれらホルモンに対する毛組織の感受性の変化によって生じる休止期脱毛、例えば女性型脱毛又は男性型脱毛に適用される。
中でも、本発明の育毛用組成物は、より好ましくは女性ホルモンの量の減少又は女性ホルモンに対する毛組織の感受性の低下によって生じる休止期脱毛、例えば、女性型脱毛に適用される。
【0037】
女性ホルモンの量の減少の要因としては、例えば産後、加齢による減少、閉経等が挙げられる。
男性ホルモンの量の減少の要因としては、例えば、加齢による減少が挙げられる。
【0038】
(その他育毛関連成分)
本発明の育毛用組成物は、例えば、上記のトレハロース又はその誘導体以外に、育毛有効成分として、例えば、ミノキシジル、フィナステリド、デュタステリド、塩化カルプロニウム、ビマトプロスト、トランス-3,4’-ジメチル-3-ヒドロキシフラバノン(t-フラバノン)、6-ベンジルアミノプリン(サイトプリン)、ペンタデカン酸グリセリド(ペンタデカン)、アデノシン、パンテノール(D-パントテニルアルコール)、パントテニルエチルエーテル、酢酸DL-α-トコフェロール、グリチルリチン酸ジカリウム、ニンジンエキス、センブリエキス、オウゴンエキス及びイチョウエキスからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。
【0039】
本発明の育毛用組成物は、さらに、育毛に関連する成分として、トレハロース及びその誘導体並びに上記育毛有効成分以外に、例えば、血行促進剤、血管新生促進剤、角質溶解剤、細胞賦活剤及び抗炎症剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含有してもよい。
【0040】
(基剤又は担体)
本発明の育毛用組成物は、トレハロース、トレハロース誘導体及び上記の他の育毛関連成分の他に、さらに基剤又は担体を含み得る。
基剤又は担体としては、例えば、油溶性の基剤又は担体として、ワセリン、精製ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、ラノリン、精製ラノリン、炭化水素、植物油、動物油等の脂肪油;高級アルコール類;プラスチベース;グリコール類;高級脂肪酸;セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン等の液状の油等の油溶性溶媒;などが挙げられる。水溶性の基材又は担体としては、例えば、マクロゴール200、マクロゴール400、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール20000等のマクロゴール類(ポリエチレングリコール類);濃グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール類;ポビドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子;エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;水;などが挙げられる。本発明の外用剤にはこれらの基剤又は担体から選ばれるいずれか単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
一実施形態では、本発明の育毛用組成物は、基剤又は担体として、例えば、脂肪油、高級アルコール類、プラスチベース、グリコール類、高級脂肪酸、油溶性溶媒、マクロゴール類(ポリエチレングリコール類)、多価アルコール類、アルコール類及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。
【0042】
一実施形態では、本発明の育毛用組成物は、アルギン酸誘導体(例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム又はアルギン酸プロピレングリコールエステル)、カルボキシメチルセルロース又はその塩、タマリンド種子多糖(タマリンドガム)、キトサン、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンの総含有量を、組成物全量に対して0.5質量%未満若しくは0.1%未満、又はこれらの成分を実質的に含有しないものとすることができる。
【0043】
(その他成分)
本発明の育毛用組成物は、例えば、酵素、動植物エキス類、アミノ酸類、ビタミン類、保湿剤(ヘパリン類似物質等)、抗酸化剤、界面活性剤、紫外線防御剤、殺菌剤、抗脂漏剤、経皮吸収促進剤、増粘剤、分散剤、清涼剤、香料、界面活性剤、pH調整剤、賦形剤、溶解剤、保存剤、防腐剤、乳化剤、キレート剤、体質顔料、着色顔料及び着色剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分をさらに含んでもよい。
【0044】
(適用対象)
本発明の組成物の適用対象は、例えば哺乳動物であり、より具体的には、ヒト又はイヌ、ネコ、ウサギ、ラット、ハムスター、マウス等の動物が挙げられる。
【0045】
一実施形態では、適用対象はヒトであり、例えば、育毛を必要とするヒトである。より具体的には、本発明の育毛用組成物は、例えば、薄毛若しくは脱毛を有する者又は薄毛若しくは脱毛のリスクを有する者に使用されることが好ましい。
本発明の育毛用組成物は、中でも女性型脱毛を有する者又は女性型脱毛のリスクを有する対象に使用されることが好ましい。
女性型脱毛のリスクを有する者としては、例えば、女性ホルモン量の低下がみられる女性が挙げられる。そのような女性としては、更年期(例えば閉経前後5年の期間であり、例えば40~60歳又は45~55歳)若しくは閉経後(例えば、50歳以上、60歳以上又は70歳以上)の女性等が挙げられる。
また、女性ホルモン量が急激に減少した女性も同様に女性型脱毛のリスクを有する。そのような対象としては、例えば、産後(例えば分娩後から1年以内、6ヶ月以内又は3か月以内)の女性が挙げられる。
【0046】
また、本発明の育毛用組成物は、毛乳頭細胞においてANGPT2、TNFSF10、SOCS3、PRLR、ISG20、BCL2及びNR5A2からなる群より選ばれる少なくとも1種の遺伝子の発現が低下した対象(好ましくはヒト女性)にも好適に使用することができる。これらの対象は、女性ホルモンが低下又は急激に減少している対象であり得る。
【0047】
本発明の育毛用組成物の適用部位は、外用剤の場合、毛髪の存在する部分であれば特に限定されず、例えば頭皮、眉、眼瞼部(まつ毛の生える部分)、顎、口周辺、胸などが挙げられるが、好ましくは頭皮、眉又は眼瞼部、より好ましくは頭皮である。頭皮中の適用される部位としては、具体的には、例えば、頭頂部、生え際(例えば額部分の生え際)、髪の分け目などが挙げられる。
【0048】
(組成物の形態)
<態様1.医薬品、医薬部外品、化粧品又は食品>
一態様では、本発明の育毛用組成物は、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品又は食品の形態であり得るが、外用剤として、医薬品、医薬部外品若しくは化粧品、又はそれらの製剤の形態をとることが好ましい。
【0049】
外用剤の具体例としては、例えば、発毛促進剤、育毛剤、養毛剤、トニック、ヘアローション、ヘアカラー、ヘアマニキュア、シャンプー、コンディショナー、リンス、トリートメント、パーマ剤、スタイリング剤、ヘアスプレー、頭皮パック、ヘアパック、頭皮マッサージ剤、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、眉墨などの外用医薬品、外用医薬部外品又は化粧品が挙げられる。
外用剤の剤形としては、例えば、外用固形剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等が挙げられる。
【0050】
外用剤の形態の場合、本発明の育毛用組成物は、トレハロース及びその誘導体の総含有量は、組成物の全量に対して、トレハロース換算量で、例えば0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、又は10質量%以上であり、そして、例えば、80質量%以下、好ましくは70質量%以下、50質量%以下又は30質量%以下であり得る。
【0051】
外用剤の形態の場合、本発明の育毛用組成物は、適用される疾患、症状、健康状態若しくは審美的状態、並びに対象の年齢及び性別に応じて適宜変更し得るが、例えば、1日1~数回(例えば、約1~5回、好ましくは1~3回)、適量(例えば、約0.05~50、0.1~20g又は0.1~10g)を、例えば上記部位に塗布して投与することができる。
【0052】
外用剤の形態の場合、本発明の育毛用組成物の塗布による10cm当たりの1回の投与量もまた、適用される疾患、症状、健康状態若しくは審美的状態、並びに対象の年齢及び性別に応じて適宜変更し得るが、例えば、トレハロース換算量で、0.1mg以上、0.5mg以上、1mg以上、2mg以上、5mg以上、10mg以上、20mg以上、50mg以上又は100mg以上であり、そして例えば5,000mg以下、2,000mg以下、1,000mg以下、500mg以下又は200mg以下であり得る。
【0053】
<態様2.医薬品、医薬部外品、化粧品又は食品の製造用製剤>
一態様では、本発明の育毛用組成物は、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品又は食品の製造用製剤の形態であり得る。ここで、製造用製剤とは、医薬品、医薬部外品、化粧品又は食品の製造に使用される組成物全般を表し、当該製剤の使用目的、種類(例えば有効成分、助剤、添加剤等の別など)は特に限定されない。
【0054】
製剤中のトレハロース及びその誘導体の総含有量は、上記の態様1の育毛用組成物のトレハロース及びその誘導体の総含有量となるように育毛用組成物に配合されることが好ましい。
【0055】
製造用製剤の場合、本発明の育毛用組成物は、さらに上記の医薬品、医薬部外品、化粧品又は食品に使用され得る成分を含有してもよい。
製造用製剤の場合、本発明の育毛用組成物は、例えば、賦形剤、乳化剤又はそれらの両方をさらに含み得る。
【0056】
(製造方法)
本発明の育毛用組成物は、トレハロース又はその誘導体を、必要に応じて適宜他の成分と混合して製造することができる。混合その他の製造工程は、医薬品、医薬部外品、化粧品又は食品で使用される公知の手段を使用することができる。
【0057】
[B.特定の遺伝子の発現促進用組成物]
本発明の遺伝子の発現促進用組成物は、トレハロース又はその誘導体を含有し、ANGPT2、TNFSF10、SOCS3、PRLR、ISG20及びBCL2からなる群より選ばれる少なくとも1種の遺伝子の発現促進の用途に使用することができる。
【0058】
一実施形態では、本発明の遺伝子の発現促進用組成物は、皮膚組織由来細胞におけるANGPT2遺伝子の発現促進の用途に使用される。
上記の皮膚組織由来細胞は、皮膚組織(例えば、表皮、真皮、角膜上皮、角膜実質、毛包、汗腺、脂肪組織等)に由来する細胞全般を指す。
上記の皮膚組織由来細胞は、好ましくは間葉系細胞であり、より具体的には、線維芽細胞、毛乳頭細胞、真皮毛根鞘細胞、脂肪細胞等が挙げられる。
【0059】
皮膚組織由来細胞は、例えば哺乳動物、より具体的には、ヒト又はイヌ、ネコ、ウサギ、ラット、ハムスター、マウス等の動物に由来する。一実施形態では、皮膚組織由来細胞は、ヒト由来の細胞である。
【0060】
上記細胞は、例えば生体中若しくは生体から分離された器官若しくは組織中の細胞、それらから樹立された細胞、又は、幹細胞(例えば人工多能性幹細胞(iPSC)、胚性幹細胞(ESC)等の多能性幹細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞等の体性幹細胞など)から分化・樹立された細胞であってもよい。
【0061】
本明細書において、特定の遺伝子の発現促進とは、細胞中の当該遺伝子から転写されたmRNAの存在量又は当該遺伝子にコードされるタンパク質の存在量が増加することを表す。
【0062】
本発明の遺伝子の発現促進用組成物のトレハロース及びその誘導体の総含有量は、組成物の全量に対して、トレハロース換算量で、例えば0.0001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上又は5質量%以上であり、そして例えば、100質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、50質量%以下又は30質量%以下であり得る。
【0063】
本発明の遺伝子の発現促進用組成物は、例えば、上記の育毛用組成物と同様の形態、用途、使用対象に使用されるほか、培地、培地添加用サプリメント、血清、緩衝液、培養基材等の培養用品、その他研究用試薬などに使用することができる。
【0064】
ANGPT2遺伝子産物であるアンジオポエチン2は、血管新生促進作用を有することから、本発明のトレハロース又はその誘導体を含有する組成物は、血管新生促進の用途に用いることもできる。当該用途においては、本発明の組成物は、例えば、VEGF、又はVEGFの発現促進作用若しくは活性化作用がある成分と組み合わせて使用することで、その血管新生促進効果をさらに高めることができる。
【0065】
[III.さらなる実施形態]
本発明の実施形態は、下記を含む。これらの実施形態の各構成要素の詳細は、上記の記載に基づいて理解することができる。
[9]
育毛のため、好ましくは薄毛の予防若しくは改善、脱毛の予防若しくは改善、毛髪量(毛髪のボリューム)の改善、毛質の改善(例えば、毛髪のハリ又はコシの改善)、毛髪の成長促進及び発毛促進からなる群より選ばれる少なくとも1つのために用いられる、トレハロース又はその誘導体。
[10]
休止期脱毛の予防又は改善のための、[9]に記載のトレハロース又はその誘導体。
[11]
女性型脱毛を有する対象又は女性型脱毛のリスクを有する対象に使用される、[9]又は[10]のいずれか一項に記載のトレハロース又はその誘導体。
[12]
毛乳頭細胞においてANGPT2、TNFSF10、SOCS3、PRLR、ISG20、BCL2及びNR5A2からなる群より選ばれる少なくとも1種の遺伝子の発現が低下した対象に使用される、[9]~[11]のいずれか1に記載のトレハロース又はその誘導体。
[13]
ANGPT2、TNFSF10、SOCS3、PRLR、ISG20及びBCL2からなる群より選ばれる少なくとも1種の遺伝子の発現促進のための、トレハロース又はその誘導体。
[14]
皮膚組織由来細胞に適用される、[13]に記載のトレハロース又はその誘導体。
[15]
育毛用組成物の製造のためのトレハロース又はその誘導体の使用。
[16]
前記育毛用組成物が、薄毛の予防若しくは改善、脱毛の予防若しくは改善、毛髪量(毛髪のボリューム)の改善、毛質の改善(例えば、毛髪のハリ又はコシの改善)、毛髪の成長促進及び発毛促進からなる群より選ばれる少なくとも1つのために用いられる、[15]に記載の使用。
[17]
前記育毛用組成物が、女性型脱毛を有する対象又は女性型脱毛のリスクを有する対象に使用される、[15]又は[16]に記載の使用。
[18]
前記育毛用組成物が、毛乳頭細胞においてANGPT2、TNFSF10、SOCS3、PRLR、ISG20、BCL2及びNR5A2からなる群より選ばれる少なくとも1種の遺伝子の発現が低下した対象に使用される、[15]~[17]のいずれか1に記載の使用。
[19]
ANGPT2、TNFSF10、SOCS3、PRLR、ISG20及びBCL2からなる群より選ばれる少なくとも1種の遺伝子の発現促進用組成物の製造のための、トレハロース又はその誘導体の使用。
[20]
前記発現促進用組成物が皮膚組織由来細胞に適用される、[19]に記載の使用。
【実施例
【0066】
[試験例1.ANGPT2遺伝子の発現促進効果の検証]
(方法)
(1)0、30又は100mg/mLトレハロース、1%ウシ胎仔血清(FCS)及び1%ABAM(Antibiotics-Antimycotic solution,100x、ThermoFisher Scientific社製)を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Gibco社製)を調製し、細胞培養ディッシュに分取した。また、トレハロースの代わりにヒアルロン酸オリゴ糖4mer(HA4)(コスモバイオ株式会社製、商品コード11006)を30μg/mL含有する培地も調整し、同様にディッシュに分取した。
(2)正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF、Cambrex社製)を5.5×10細胞/cmとなるように、(1)の細胞培養ディッシュに播種し、24時間又は48時間培養した。
(3)各時間培養後に細胞を回収し、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いてトータルmRNAを抽出した。mRNAからiScript cDNA Synthesis kit(B10-RAD社製)を用いてcDNAを調製した。方法はそれぞれのマニュアルに従って行った。次いで、ANGPT2遺伝子の定量PCR(qPCR)を行った。反応には、Fast Start Universal Probe Master (Rox)(Roche社)、StepOnePlue Real time PCR systemを用いた。リファレンス遺伝子にはGAPDHを用いた。プライマーセットは、それぞれの遺伝子に対するTaqManプローブ(ThermoFisher Scientific)を用いた(ANGPT2アッセイID:Hs00169867_m1、GAPDHアッセイID:Hs02758991_g1)。各群n=3で測定した。
【0067】
(結果)
qPCRの結果を図1に示した。培養24時間後において、30mg/mL又は100mg/mLトレハロースで処理した線維芽細胞(TH30及びTH100)では、処理前の細胞(0h)に比べてANGPT2 mRNA発現量の顕著な増加が見られた。トレハロースなしで培養を行った群(TH0)では、逆にANGPT2 mRNA発現量が減少した。トレハロースの代わりにヒアルロン酸オリゴ糖で処理した群(HA Oligo)は、トレハロースなしの場合と同様にANGPT2 mRNA発現量が減少した。
【0068】
以上から、トレハロースは線維芽細胞中のANGPT2遺伝子の発現を促進する作用を有することが明らかとなった。よって、毛乳頭細胞においてもトレハロースがANGPT2遺伝子の発現を促進することにより、特に女性ホルモンが減少した対象において、脱毛抑制効果をもたらすことが推察された。
【0069】
[試験例2.in vivo試験による育毛効果の検証]
(方法)
トレハロースの育毛効果を検証するために、下記のメスのC57BL/6マウスを用いたin vivo試験を行った。本試験方法では、女性ホルモンの影響下での育毛効果を検証することができる。
(1)3週齢のマウスを麻酔し、手術により卵巣を摘出した群(OVX)と卵巣を摘出しない偽手術を施した群(Sham)を用意した。
(2)各マウスが9週齢になった段階で、背部中央の体毛を電気バリカンで刈って剃毛した。
(3)剃毛してから1日後に、Sham群及びOVX群を、塗布する剤の種類によってさらに対照群(Ctl)及びトレハロース処理群(TH)に分けて、下記の剤を1匹当たり約125mg塗布した。各群のマウスの例数は、Sham Ctl群はn=5、Sham TH、OVX Ctl及びOVX THの各群はn=6であった。剤の塗布及び背部の観察は毎日実施した。
対照群:Vanicream(Pharmaceutical specialties, INC)
トレハロース群:10質量%のトレハロースを含有するVanicream
(4)上記剃毛処理から24日後(塗布開始から23日後)に、背部全体の観察に加えて剃毛部のダーモスコピーを行った。さらに、各群のマウスの剃毛部を実体顕微鏡で観察し、単位面積当たりの体毛の本数を計数した。
【0070】
(結果)
剃毛処理1日後(塗布前)と剃毛処理24日後(塗布開始から23日後)の各群のマウスの背部を図2に示した。Sham群、OVX群ともに、トレハロースを含有する剤を塗布した群のほうが、顕著に剃毛部の体毛量が増加していた。
【0071】
OVX群について、対照群(Ctl)とトレハロース群(TH)のマウスの剃毛部の典型的なダーモスコピー像を図3に示した。ダーモスコピー像から、トレハロース群のほうが、毛の太さ及び本数が増加していた。
また、体毛の本数を測定した結果を図4に示した。OVX群では、トレハロースを含有する剤によって、剃毛部からの発毛した体毛の本数が顕著に増加していた。
【0072】
以上から、トレハロースは発毛促進、毛の成長促進の効果を有することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の組成物は、優れた育毛効果を有するので、発毛促進、育毛、養毛等の効果を有する医薬品、医薬部外品、化粧品等に使用することができる。
また、本発明の組成物は、ANGPT2等の特定の遺伝子の発現促進効果を有するので、培養用品、その他研究用試薬等に使用することができ、また血管新生促進用に使用することもできる。
図1
図2
図3
図4