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特許7236768心筋血流量及びCT画像に基づく冠状動脈冠血流予備量比の計算方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】心筋血流量及びCT画像に基づく冠状動脈冠血流予備量比の計算方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20230303BHJP
【FI】
A61B6/03 370Z
A61B6/03 360J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021529763
(86)(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2019071203
(87)【国際公開番号】W WO2020107667
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】201811438744.6
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520283048
【氏名又は名称】スーチョウ レインメド メディカル テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フー、インフェイ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ、クワンジー
(72)【発明者】
【氏名】ウー、シンユン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ツィーユアン
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106023202(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108550189(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0341453(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0095292(US,A1)
【文献】特開2017-070742(JP,A)
【文献】特表2017-512577(JP,A)
【文献】特表2016-511649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
G01T 1/161-1/166
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
S01:心臓を含むCT画像を分割し、形態学操作により心臓のみを含む心臓画像を得て、前記心臓画像をヒストグラム分析して心室心房のみを含む心室心房画像を得て、前記心臓画像と前記心室心房画像の差分により心筋を含む画像を得て、前記心筋を含む画像に基づいて心筋体積を特定し、
S02:前記心臓画像から心臓の大動脈画像を得て、前記大動脈画像の二値化画像に対して形態学膨張を行い、心臓の全大動脈の二値画像を得て、そして画素リバースにより心臓の全大動脈相補画像を得て、前記大動脈画像において前記大動脈の中心線上点の平均グレースケールに基づき領域成長を行い、冠状動脈口を含む大動脈画像を得て、前記冠状動脈口を含む大動脈画像と前記全大動脈相補画像に基づき、冠状動脈口を含む画像を得て、冠状動脈口を含む画像に基づいて前記大動脈における前記冠状動脈口の位置を特定し、
S03:前記心筋を含む画像において前記冠状動脈口をシードポイントとし、領域成長により前記冠状動脈を抽出し、前記冠状動脈の平均グレースケールを計算し、前記冠状動脈のグレースケール分布及び前記冠状動脈の平均グレースケールを比較し前記冠状動脈の成長方向に沿って冠状動脈ツリーを抽出し、
S04:前記冠状動脈ツリーの画像を二値化し、二値化したデータに基づいて等値面画像を三次元座標系に描き、最終的に前記冠状動脈三次元格子画像を得て、
S05:最大充血状態における前記冠状動脈口の総流量Qtotal=心筋体積×安静状態心筋血流量×CFRを計算し、CFRは冠状動脈冠血流予備能(coronary flow reserve:CFR)であり、
S06:最大充血状態における血流速度V1を計算し、
S07:V1冠状動脈狭窄血管の入口流速とし、冠状動脈入口から冠状動脈狭窄遠位までの圧力損失ΔP、狭窄遠位冠状動脈内平均圧Pd=Pa-ΔPを計算し、但し、Pa心臓の大動脈平均圧であり、冠血流予備量比FFR=Pd/Paを得る、
ステップを含
前記ステップS06は、
S61:流量体積スケーリング則及び三次元再構成の前記冠状動脈ツリーに基づき、前記冠状動脈ツリー内の任意の一本の血管内の血流量Q=Q total ×(V/V total 3/4 を特定し、但し、Q total は前記最大充血状態における前記冠状動脈口の総流量であり、V total は三次元再構成の前記冠状動脈ツリーの中のすべての冠状動脈の血管体積の和であり、Vは前記冠状動脈ツリー内の任意の一本の血管及びその下流血管中の血管体積の和であり、
S62:流量体積スケーリング則及び三次元再構成の前記冠状動脈ツリーに基づき、前記冠状動脈ツリー内の任意の一本の血管内の血流速度V 1 =Q/Dを特定し、但し、Dは当該血管の平均断面積である、
ことを含み、
前記ステップS07は具体的に、
血管三次元格子に対して解を求め、数値解法を用いて連続性及びナビエ-ストークス(Navier-Stokes)方程式の解を求め:
【数1】
【数2】
但し、
P、ρ、μはそれぞれ流速、圧力、血液密度、血液粘度であり、
入口境界条件は、最大充血状態における冠状動脈狭窄血管の入口流速V 1 であり、
三次元計算流体力学により各冠状動脈狭窄の圧力損失ΔP 1 、ΔP 2 、ΔP 3 ・・・、冠状動脈入口から冠状動脈狭窄遠位までの圧力損失ΔP=ΣΔP i (i=1、2、3・・・)、狭窄遠位冠状動脈内平均圧Pd=Pa-ΔPを計算し、但し、Paは大動脈平均である、ことを含む、
ことを特徴とする心筋血流量及びCT画像に基づく冠状動脈冠血流予備量比の計算方法。
【請求項2】
前記ステップS02において、冠状動脈口を含む画像を得た後、前記冠状動脈口を含む画像に対して連結領域分析を行い、異なるグレースケールラベルで各連結領域をマークし、前記大動脈における前記冠状動脈口の位置を特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の心筋血流量及びCT画像に基づく冠状動脈冠血流予備量比の計算方法。
【請求項3】
前記ステップS02において、前記心臓画像において、大動脈断面が円状になる特徴を利用し、心臓の上行大動脈及びその中心線を抽出し、心臓の大動脈画像を得る、ことを特徴とする請求項1に記載の心筋血流量及びCT画像に基づく冠状動脈冠血流予備量比の計算方法。
【請求項4】
前記ステップS04において冠状動脈画像二値化は、
前記冠状動脈画像V1中のボクセルをトラバーサルし、もしボクセル画素が0に等しい場合、当該画素値は変わらず、もし0に等しくない場合、画素値を1とし、これらの画素値は一つの新しいデータV2となることを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の心筋血流量及びCT画像に基づく冠状動脈冠血流予備量比の計算方法。
【請求項5】
前記ステップS05において心筋コントラストエコー法(MCE)または単一光子放射断層撮影法(SPECT)または陽電子放出断層撮影法(PET)または心臓核磁気共鳴画像法(MRI)またはCT灌流により、安静状態心筋血流量及び冠状動脈冠血流予備能(CFR)を特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の心筋血流量及びCT画像に基づく冠状動脈冠血流予備量比の計算方法。
【請求項6】
前記ステップS07は、
CT再構成の前記冠状動脈の三次元格子画像に基づき、狭窄のある血管を真っすぐに引き伸ばし、二次元軸対称モデルを構築し、二次元格子を分割し、数値解法を用いて連続性及びナビエ-ストークス方程式の解を求め:
【数3】
【数4】
【数5】
但し、ρは血液の密度を表し、uz、urはそれぞれz方向、r方向の流速を表し、μは血液の動粘度を表し、pは血液の圧の強さを表し、
入口境界条件は、最大充血状態における冠状動脈狭窄血管の入口流速V1であり、
二次元流体力学により各冠状動脈狭窄の圧力損失ΔP1、ΔP2、ΔP3・・・、冠状動脈入口から冠状動脈狭窄遠位までの圧力損失ΔP=ΣΔPi(i=1、2、3・・・)、狭窄遠位冠状動脈内平均圧Pd=Pa-ΔPを計算する、但し、Paは大動脈平均圧である、ことを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の心筋血流量及びCT画像に基づく冠状動脈冠血流予備量比の計算方法。
【請求項7】
前記ステップS07はさらに、
前記冠状動脈の異なるタイプの弯曲に対して、前記冠状動脈の三次元格子画像冠状動脈入口から冠状動脈狭窄遠位までの圧力損失を計算し、前記二次元軸対称モデルに照らして計算し、各タイプの弯曲の二次元軸対称結果に対する修正係数を記憶するためのデータベースを構築し、
圧力損失を得た後、前記データベース中の修正係数に照らし、修正後の冠状動脈入口から冠状動脈狭窄遠位までの圧力損失を得て、その後前記FFRを計算する、
ことを含む、ことを特徴とする請求項に記載の心筋血流量及びCT画像に基づく冠状動脈冠血流予備量比の計算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冠状動脈画像学評価分野に関し、特に心筋血流量及びCT画像に基づく冠状動脈冠血流予備量比の計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冠状動脈造影及び血管内超音波はいずれも冠動脈性心疾患を診断する“ゴールデンスタンダード”として考えられているが、これらは病変狭窄程度に対して画像学評価できるだけであり、狭窄が遠位血流に対して果たしてどれほど大きな影響を及ぼすかについては知ることができない。冠血流予備量比(FFR)は現在既に冠動脈狭窄機能性評価の公認指標となっており、その最も重要な機能は一つの影響が知られていない冠動脈狭窄の機能結果に対して正確な評価を行うことである。
【0003】
冠血流予備量比(FFR)は冠状動脈に狭窄病変が存在する場合において、目標測定血管が心筋領域のために得られる最大血流量と同一領域の理論上の正常下で得られる最大血流量の比を指す。FFR主に冠状動脈狭窄遠位圧力と大動脈根部圧力の比を計算することにより得る。狭窄遠位圧力は圧力ガイドワイヤにより最大灌流血流(パパベリン又はアデノシン又はATPを冠動脈内又は静脈内に注射する)時に測定して得られる。心筋最大充血状態における狭窄遠位冠状動脈内平均圧(Pd)と冠状動脈口部大動脈平均圧(Pa)の比、即ちFFR=Pd/Paと簡略化できる。
【0004】
冠動脈CTAは冠動脈狭窄程度を正確に評価でき、且つ血管壁プラーク性質を見分けることができる、一つの非侵襲的で、操作が簡単な冠状動脈病変診断検査方法であり、リスクの高い人をスクリーニングする優先的な方法となる。よって、冠動脈性心疾患患者の血管に対して介入する場合、初期段階で患者冠動脈に対してCTA評価を行わなければならない。
【0005】
冠動脈CTAにより非侵襲で得られたFFR(CTFFR)を計算する場合、別途、イメージング検査又は薬は不要であり、根本的に、不必要な冠動脈血管造影と血行再建治療を避けることができる。DeFacto試験結果でも明確に表明されているように、冠状動脈CTにおいて、CTFFR結果の分析は本当の血流が制限され、病人のリスクが増加する病変の生理情報を提供する。CTFFRは冠動脈CTAとFFRの優位性を組み合わせ、構造及び機能の両面から冠状動脈狭窄を評価することができ、冠動脈病変解剖学及び機能学情報の新規の非侵襲性検出体系を提供するものとなる。しかしCTAは充血状態における冠動脈流速を測定できず、数値方法に頼って予測するしかないため、CTFFRの臨床応用を大いに制限している。
【発明の概要】
【0006】
上記技術課題を解決するために、本発明は、非侵襲的測定により安静状態心筋血流量及び冠状動脈冠血流予備能(CFR)を特定し、そして冠動脈ツリーにおける異なる血管内面の最大充血状態の流量を特定し、そして最大充血状態の流速V1を特定することによって、冠血流予備量比FFRを早く、正確に、全自動で得ることができる、心筋血流量及びCT画像に基づく冠状動脈冠血流予備量比の計算方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の技術方案は以下のとおり:
心筋血流量及びCT画像に基づく冠状動脈冠血流予備量比の計算方法は以下のステップを含む:
S01:心臓CT画像を分割し、形態学操作により心臓画像を得て、当該心臓画像をヒストグラム分析して心室心房画像を得て、心臓画像と心室心房画像の差分により心筋画像を得て、心筋画像に基づいて心筋体積を特定し、
S02:大動脈画像を処理して全大動脈相補画像を得て、領域成長を行い、冠状動脈口を含む大動脈画像を得て、冠状動脈口を含む大動脈画像と全大動脈相補画像に基づき、冠状動脈口を含む画像を得て、冠状動脈口を含む画像に基づいて冠状動脈口を特定し、
S03:心筋画像において冠状動脈口をシードポイントとし、領域成長により冠状動脈を抽出し、冠状動脈の平均グレースケール及び平均分散を計算し、冠動脈グレースケール分布に基づき、冠状動脈方向に沿って冠動脈ツリーを抽出し、
S04:冠状動脈画像を二値化し、等値面画像を描き、冠状動脈三次元格子画像を得て、
S05:最大充血状態における冠動脈入口箇所の総流量Qtotal=心筋体積×心筋血流量×CFRを計算し、CFRは冠状動脈冠血流予備能(coronary flow reserve:CFR)であり、
S06:充血状態における血流速度V1を計算し、
S07:V1を冠動脈狭窄血管の入口流速とし、冠動脈入口から冠動脈狭窄遠位までの圧力損失ΔP、狭窄遠位冠状動脈内平均圧Pd=Pa-ΔPを計算し、但し、Paは大動脈平均圧であり、冠血流予備量比FFR=Pd/Paを得る。
【0008】
好ましい技術方案において、前記ステップS02において、冠状動脈口を含む画像を得た後、冠状動脈口を含む画像に対して連結領域分析を行い、異なるグレースケールラベルで各連結領域をマークし、冠状動脈口を特定する。
【0009】
好ましい技術方案において、前記ステップS02において、心臓画像において、大動脈断面が円状になる特徴を利用し、上行大動脈及び中心線を抽出し、大動脈画像を得る。
【0010】
好ましい技術方案において、前記ステップS04において冠状動脈画像二値化は、冠状動脈画像V1中のボクセルをトラバーサルし、もしボクセル画素が0に等しい場合、当該画素値は変わらず、もし0に等しくない場合、画素値を1とし、一つの新しいデータV2を得ることを含む。
【0011】
好ましい技術方案において、前記ステップS05において心筋コントラストエコー法(MCE)または単一光子放射断層撮影法(SPECT)または陽電子放出断層撮影法(PET)または心臓核磁気共鳴画像法(MRI)またはCT灌流により、安静状態心筋血流量及び冠状動脈冠血流予備能(CFR)を特定する。
【0012】
好ましい技術方案において、前記ステップS06は、
S61:流量体積スケーリング則及び心臓CT三次元再構成の心臓表面冠状動脈ツリーに基づき、ツリー内の任意の一本の血管内の血流量Q=Qtotal×(V/Vtotal3/4を特定し、但し、Vtotalは心臓CT三次元再構成のすべての心臓表面冠状動脈の血管体積の和であり、Vは心臓表面冠状動脈ツリー内の任意の一本の血管及びその下流血管中の血管体積の和であり、
S62:流量体積スケーリング則及び心臓CT三次元再構成の心臓表面冠状動脈ツリーに基づき、ツリー内の任意の一本の血管内の血流速度V1=Q/Dを特定し、但し、Dは当該血管の平均断面積である、ことを含む。
【0013】
好ましい技術方案において、前記ステップS07は具体的に、
血管三次元格子に対して解を求め、数値解法を用いて連続性及びナビエ-ストークス(Navier-Stokes)方程式の解を求め:
【数1】
【数2】
但し、
P、ρ、μはそれぞれ流速、圧力、血液密度、血液粘度であり、
入口境界条件は、最大充血状態における冠動脈狭窄血管の入口流速V1であり、
三次元計算流体力学により各冠動脈狭窄の圧力損失ΔP1、ΔP2、ΔP3・・・、冠動脈入口から冠動脈狭窄遠位までの圧力損失ΔP=ΣΔPi(i=1、2、3・・・)、狭窄遠位冠状動脈内平均圧Pd=Pa-ΔPを計算する、但し、Paは大動脈平均であることを含む。
【0014】
好ましい技術方案において、前記ステップS07は、
CT再構成のジオメトリ構造に基づき、狭窄のある血管を真っすぐに引き伸ばし、二次元軸対称モデルを構築し、二次元格子を分割し、数値解法を用いて連続性及びナビエ-ストークス方程式の解を求め:
【数3】
【数4】
【数5】
但し、ρは血液の密度を表し、uz、urはそれぞれz方向、r方向の流速を表し、μは血液の動粘度を表し、pは血液の圧の強さを表し、
入口境界条件は、最大充血状態における冠動脈狭窄血管の入口流速V1であり、
二次元流体力学により各冠動脈狭窄の圧力損失ΔP1、ΔP2、ΔP3・・・、冠動脈入口から冠動脈狭窄遠位までの圧力損失ΔP=ΣΔPi(i=1、2、3・・・)、狭窄遠位冠状動脈内平均圧Pd=Pa-ΔPを計算する、但し、Paは大動脈平均圧である、ことを含む。
【0015】
好ましい技術方案において、前記ステップS07はさらに、血管の異なるタイプの弯曲に対して、三次元モデルで入口から出口までの圧力差を計算し、二次元軸対称モデルに照らして計算し、各類型の弯曲の二次元軸対称結果に対する修正係数を記憶するためのデータベースを構築し、圧力を得た後、データベース中の修正係数に照らし、修正後の入口から出口までの圧力差を得て、その後FFRを計算する、ことを含む。
【0016】
本発明は心筋血流量及び心臓CT画像により、冠血流予備量比FFRを早く、正確に、全自動で得ることができ、従来のCTFFR(またはFFRCT)の精度を大幅に高めることができる。非侵襲的測定により、操作が簡単で、手術の難度及びリスクを大幅に低減し、臨床で大規模に応用を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下に図面及び実施例と合わせて本発明を更に説明する。
【0018】
図1図1は本発明の方法フローチャートである。
図2図2は心臓CT画像の心筋分割結果である。
図3図3は冠動脈入口を有する大動脈分割結果である。
図4図4は冠動脈入口分割結果である。
図5図5は冠状動脈分割結果である。
図6図6は冠状動脈分割結果の格子モデルである。
図7図7は心臓及び冠状動脈血流概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の目的、技術方案及び長所をより明確に説明するために、以下に図面を参照しながら発明を実施するための形態と合わせて、本発明について、さらに詳細に説明する。これら説明は単なる例であり、本発明の範囲を限定するものではないと理解されるべきである。この他、以下の説明において、本発明の概念と不要な混同を避けるために、公知の構造及び技術に関する説明は省略する。
【0020】
所定の心臓CT画像について、リバースメソッドにより、心臓を抽出し、非目標領域である下行大動脈、脊椎、肋骨を対象に処理を行い、一つ一つ胸壁、肺部、椎骨及び下行大動脈等の非心臓組織を取り除いて心臓画像を抽出して得る。得られた心臓画像において、大動脈断面が円状になる特徴を利用し、上行大動脈及び中心線を抽出し、大動脈画像を得る。
【0021】
図1に示されるように、本発明の心筋血流量及びCT画像に基づく冠状動脈冠血流予備量比(FFR)の計算方法は、心筋画像を抽出し、冠状動脈口を抽出し、冠状動脈を抽出し、冠状動脈格子モデルを生成し、安静状態心筋血流量及び冠状動脈冠血流予備能(CFR)を特定し、最大充血状態における冠動脈入口箇所の総流量を計算し、充血状態における血流速度V1を計算し、冠状動脈FFRを特定することを含む。具体的に以下のステップを含む:
【0022】
1:心筋画像を抽出する:
心臓CT画像を分割し、形態学操作により心臓画像を得て、当該心臓画像をヒストグラム分析して心室心房画像を得て、心臓画像と心室心房画像の差分により心筋画像を得る。図2参照。
【0023】
2:冠状動脈口を抽出する:
大動脈画像の二値化画像に対して形態学膨張を行い、全大動脈の二値画像を得て、そして画素リバースにより全大動脈相補画像を得る。
大動脈中心線上点の平均グレースケールに基づき領域成長を行い、冠状動脈口を含む大動脈画像を得る。図3参照。
冠状動脈口を含む大動脈画像と全大動脈相補画像により画像乗算を行い、冠状動脈口を含む画像を得て、冠状動脈口を含む画像に対して連結領域分析を行い、異なるグレースケールラベルで各連結領域をマークし、冠状動脈口を特定する。図4参照。
【0024】
3:冠状動脈を抽出する:
心筋画像において冠状動脈口をシードポイントとし、領域成長により冠状動脈を抽出し、冠状動脈の平均グレースケール及び平均分散を計算し、冠動脈グレースケール分布に基づき、冠状動脈方向に沿って冠動脈ツリーを抽出する。図5参照。
【0025】
4:冠状動脈格子モデルを生成する:
ステップ三により、冠状動脈画像データV1を得て、当該データ中のボクセルは空間上に一つの立方体を構成し、冠状動脈部分に属すボクセル画素値は0ではなく(画素値約-3000~3000の間)、残りのボクセル画素値はすべて0である。
本ステップにおいて、ステップ五におけるFFR計算のために、データを空間三次元格子データV3に変える必要がある。
【0026】
(1)冠状動脈データ二値化
冠状動脈画像データV1中のボクセルをトラバーサルし、簡単な画素値判断を行い、もし画素A1が0に等しい場合、当該画素値は変わらず、もしA1が0に等しくない場合、A1の画素値を1とする。
最終的に一つの新しい画像データV2が得られ、当該画像において、冠状動脈部分に属するボクセル画素値は1であり、残りの部分は0である。
【0027】
(2)等値面生成
ボクセルは一つの極小の六面体であると定義され、隣接する上下層の間の四つの画素が立方体上の八つの頂点を構成する。等値面とは空間中のある同じ属性値を有するすべての点の集合である。これは次のように表すことができる:
{(x、y、z)│f(x、y、z)=c}、cは定数である
本方法におけるcは三次元再構成過程において与えられた画素値1である。
【0028】
等値面を抽出するフローは以下のとおり:
(1)原始データを前処理した後、特定の配列に読み込む。
(2)格子データボディから一つのユニットボディを抽出して現在のユニットボディとすると同時に当該ユニットボディのすべての情報を得る。
(3)現在のユニットボディの8個の頂点の函数値と所定の等値面値Cを比較し、当該ユニットボディの状態表を得る。
(4)現在のユニットボディの状態表インデックスから、等値面と交わるユニットボディエッジを探し出し、そして線形補間の方法により各交点の位置座標を計算する。
(5)中心差分法により現在のユニットボディの8個の頂点の法線ベクトルを求め、それから線形補間の方法により三角パッチの各頂点の法線を得る。
(6)各三角パッチの頂点座標及び頂点の法線ベクトルに基づき等値面イメージの作成を行う。
最終的に冠状動脈の三次元格子画像データV3を得る。図6参照。
【0029】
5:充血状態における血流速度V1を計算する:
心筋コントラストエコー法(MCE)または単一光子放射断層撮影法(SPECT)または陽電子放出断層撮影法(PET)または心臓核磁気共鳴画像法(MRI)またはCT灌流等非侵襲的測定により、安静状態心筋血流量及び冠状動脈冠血流予備能(CFR)を特定し、心筋体積、心筋血流量、CFRにより、最大充血状態における冠動脈入口箇所(左冠動脈ツリー及び右冠動脈ツリーの和を含む)の総流量Qtotal=心筋体積×心筋血流量×CFRを計算する。
【0030】
流量体積スケーリング則及び心臓CT三次元再構成の心臓表面冠状動脈ツリーに基づき、ツリー内の任意の一本の血管内の血流量Q:Q=Qtotal×(V/Vtotal3/4を特定し、但し、Vtotalは心臓CT三次元再構成のすべての心臓表面冠状動脈(左冠動脈ツリー及び右冠動脈ツリーの和を含む)の血管体積の和であり、Vは心臓表面冠状動脈ツリー内の任意の一本の血管及びその下流血管中の血管体積の和である。図7参照。流量体積スケーリング則及び心臓CT三次元再構成の心臓表面冠状動脈ツリーに基づき、特定ツリー内の任意の一本の血管内の血流速度V1:V1=Q/D、但し、Dは当該血管の平均断面積である(当該血管の血管体積を当該血管の長さで割る)。
【0031】
6:冠状動脈FFRの計算:
1を冠動脈狭窄血管の入り口流速とし、計算流体力学(CFD)方法により各冠動脈狭窄の厚力損失ΔP1、ΔP2、ΔP3等、冠動脈入口から冠動脈狭窄遠位までの圧力損失ΔP=ΣΔPii=1、2、3・・・)、狭窄遠位冠状動脈内平均圧Pd=Pa-ΔPを計算し、但し、Paは大動脈平均圧であり、最後に式FFR=Pd/Paにより冠血流予備量比を計算する。
【0032】
三次元モデルに対する処理ステップは以下を含む:
CT再構成のジオメトリ構造に基づき、三次元格子を分割し、数値解法(例えば、有限差分、有限要素法、有限体積法等)により連続性及びナビエ-ストークス(Navier-Stokes)方程式の解を求め:
【数6】
【数7】
但し、
P、ρ、μはそれぞれ流速、圧力、血液密度、血液粘度であり、
入口境界条件は、最大充血状態における冠動脈狭窄血管の入口流速V1であり、
式[A1]及び[A2]に基づき、三次元CFDを実行して各冠動脈狭窄の圧力損失ΔP1、ΔP2、ΔP3等、冠動脈入口から冠動脈狭窄遠位までの圧力損失ΔP=ΣΔPii=1、2、3・・・)、狭窄遠位冠状動脈内平均圧Pd=Pa-ΔPを計算し、但し、Paは大動脈平均圧である。
【0033】
二次元モデルに対して、以下のステップを含む:
CT再構成のジオメトリ構造に基づき、狭窄のある血管を真っすぐに引き伸ばし(二次元軸対称モデル)、二次元格子を分割し、数値解法(例えば、有限差分、有限要素法、有限体積法等)により連続性及びナビエ-ストークス方程式の解を求め:
【数8】
【数9】
【数10】
但し、ρは血液の密度を表し、uz、urはそれぞれz方向、r方向の流速を表し、μは血液の動粘度を表し、pは血液の圧の強さを表し、
入口境界条件は、最大充血状態における冠動脈狭窄血管の入口流速V1であり、
式[A3]~[A5]に基づき、二次元CFDを実行し、各冠動脈狭窄の圧力損失ΔP1、ΔP2、ΔP3等、冠動脈入口から冠動脈狭窄遠位までの圧力損失ΔP=ΣΔPi(i=1、2、3・・・)、狭窄遠位冠状動脈内平均圧Pd=Pa-ΔPを計算し、但し、Paは大動脈平均圧である。
【0034】
血管の異なるタイプの弯曲に対して、三次元モデルで入口から出口までの圧力差を計算し、二次元軸対称モデルに照らして計算し、各類型の弯曲の二次元軸対称結果に対する修正係数を記憶するためのデータベースを構築し、圧力算出後データベース中の修正係数に照らし、修正後の入口から出口までの圧力差を得て、最後に式により計算FFRを計算する。
【0035】
本発明の上記発明を実施するための形態は本発明の原理を単に例示的に説明又は解釈するためのものであり、本発明を限定するものではないと理解されるべきである。よって、本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、如何なる修正、均等の差し替え、改良等もすべて本発明の保護範囲に含まれる。この他、本発明に付属の請求項は、付属の請求項の範囲及び境界、またはこれらの範囲及び境界の均等形式における全ての変更及び修正例を含むことを意図するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7