(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】アミン化合物、マレイミド化合物、硬化性樹脂組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
C07D 207/452 20060101AFI20230303BHJP
C08F 22/40 20060101ALI20230303BHJP
C08G 10/04 20060101ALI20230303BHJP
C07C 211/50 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
C07D207/452 CSP
C08F22/40
C08G10/04
C07C211/50
(21)【出願番号】P 2021175773
(22)【出願日】2021-10-27
【審査請求日】2022-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠島 隆行
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌典
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-176191(JP,A)
【文献】特開2021-021027(JP,A)
【文献】特開2018-016713(JP,A)
【文献】特開2019-064926(JP,A)
【文献】特開2008-208201(JP,A)
【文献】特開2009-149729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 207/452
C08F 22/40
C08G 10/04
C07C 211/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるマレイミド化合物。
【化1】
(式(1)中、複数存在するRはそれぞれ独立して存在し、水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。pは0~5の実数を表し、qは0~4の実数を表す。mおよびnは繰り返し数であり、0≦m<20、1<n<20である。)
【請求項2】
下記式(2)で表されるマレイミド化合物。
【化2】
(式(2)中、mおよびnは繰り返し数であり、0≦m<20、1<n<20である。)
【請求項3】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量が300~3000である請求項1または請求項2に記載のマレイミド化合物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のマレイミド化合物を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、ラジカル重合開始剤を含有する請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物。
【請求項7】
下記式(3)で表されるアミン化合物。
【化3】
(式(3)中、複数存在するRはそれぞれ独立して存在し、水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。pは0~5の実数を表し、qは0~4の実数を表す。mおよびnは繰り返し数であり、0≦m<20、1<n<20である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造を有するアミン化合物、マレイミド化合物、硬化性樹脂組成物、及びその硬化物に関するものであり、半導体封止材、プリント配線基板、ビルドアップ積層板などの電気・電子部品、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチックなどの軽量高強度材料、3Dプリンティング用途に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子部品を搭載する積層板はその利用分野の拡大により、要求特性が広範かつ高度化している。従来の半導体チップは金属製のリードフレームに搭載することが主流であったが、中央処理装置(以下、CPUと表す。)などの処理能力の高い半導体チップは高分子材料で作られる積層板に搭載されることが多くなってきている。
【0003】
特にスマートフォンなどに使用されている半導体パッケージ(以下、PKGと表す。)では小型化、薄型化および高密度化の要求に応えるために、PKG基板の薄型化が求められているが、PKG基板が薄くなると剛性が低下するため、PKGをマザーボード(PCB)に半田実装する際の加熱によって、大きな反りが発生するなど不具合が発生する。これを低減するために半田実装温度以上の高TgのPKG基板材料が求められている。
【0004】
加えて、現在開発が加速している第5世代通信システム「5G」では、さらなる大容量化と高速通信が進むことが予想されている。5Gでは使用する周波数の高周波化が進むことになるが、高周波を利用した高速通信の実現には基板材料の更なる性能向上が求められることとなる。例えば、伝送損失低減のために低誘電特性を有すること等が重要であり、誘電正接としては少なくとも10GHzにおいて0.005以下が要求される。プリント基板上で発生する伝送損失は導体損失と誘電体損失に由来する(非特許文献1)。導体損失は基板上の配線などの導体の抵抗成分に起因するものであり、高周波での表皮効果による損失と、銅箔表面の粗さによる散乱損失に分けられる。高周波ほど銅箔表面近傍に電気信号が流れるため(銅箔表面からの距離としては、1GHz:2.1μm、10GHz:0.66μm)、表皮効果低減のため近年では銅箔の低粗度化が進んでいる。こうしたことから、樹脂材料への要求の一つとして低粗度銅箔に対する密着性担保が課題となってきているが、低誘電材料はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やLCP(液晶ポリマー)に代表されるように密着性に乏しく、またこれらの材料は熱可塑性材料であるため、成形性にも乏しい。これを踏まえ、密着性と低誘電特性、成形性に優れた熱硬化性樹脂の開発が望まれている。
【0005】
更に、自動車分野においては電子化が進み、エンジン駆動部付近に精密電子機器が配置されることもあるため、より高水準での耐熱・耐湿性が求められる。電車やエアコン等にはSiC半導体が使用され始めており、半導体素子の封止材には極めて高い耐熱性が要求されるため、従来のエポキシ樹脂封止材では対応できなくなっている。
【0006】
このような背景を受けて、耐熱性と低誘電正接特性を両立できる高分子材料が検討されている。例えば、特許文献1ではマレイミド樹脂とプロペニル基含有フェノール樹脂を含む組成物が提案されている。しかしながら、一方で硬化反応時に反応に関与しないフェノール性水酸基が残存するため、電気特性が十分とは言えない。また特許文献2では水酸基をアリル基で置換したアリルエーテル樹脂が開示されている。しかしながら、190℃においてクライゼン転位が起こることが示されており、一般的な基板の成型温度である200℃においては、硬化反応に寄与しないフェノール性水酸基が生成することから電気特性を満足できるものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】プリント基板上高速信号伝送における信号損失要因(三井金属鉱業株式会社)第29回エレクトロニクス実装学会春季公演大会16P1-17
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平04-359911号公報
【文献】国際公開2016/002704号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、優れた耐熱性と電気特性を示し、良好な硬化性を有するマレイミド化合物、硬化性樹脂組成物、及びこれらの原料となるアミン化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、下記[1]~[7]に関する。なお、本願において「(数値1)~(数値2)」は上下限値を含むことを示す。
[1]
下記式(1)で表されるマレイミド化合物。
【0011】
【0012】
(式(1)中、複数存在するRはそれぞれ独立して存在し、水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。pは0~5の実数を表し、qは0~4の実数を表す。mおよびnは繰り返し数であり、0≦m<20、1<n<20である。)
[2]
下記式(2)で表されるマレイミド化合物。
【0013】
【0014】
(式(2)中、mおよびnは繰り返し数であり、0≦m<20、1<n<20である。)
[3]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量が300~3000である前項[1]または[2]に記載のマレイミド化合物。
[4]
前項[1]乃至[3]のいずれか一項に記載のマレイミド化合物を含有する硬化性樹脂組成物。
[5]
さらに、ラジカル重合開始剤を含有する前項[4]に記載の硬化性樹脂組成物。
[6]
前項[4]または[5]に記載の硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物。
[7]
下記式(3)で表されるアミン化合物。
【0015】
【0016】
(式(3)中、複数存在するRはそれぞれ独立して存在し、水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。pは0~5の実数を表し、qは0~4の実数を表す。mおよびnは繰り返し数であり、0≦m<20、1<n<20である。)
【発明の効果】
【0017】
本発明のマレイミド化合物は硬化性に優れ、その硬化物は高耐熱性、低誘電特性に優れた特性を有する。そのため、電気電子部品の封止や回路基板、炭素繊維複合材などに有用な材料である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のマレイミド化合物は芳香族ビニル化合物および芳香族アルデヒドをプロトン酸触媒存在下反応させたプリンス反応生成物とアニリン類を反応させることによって得られるアミン化合物と無水マレイン酸の反応により得られる。
【0020】
本発明のマレイミド化合物は、下記式(1)で表される。
【化4】
【0021】
(式(1)中、複数存在するRはそれぞれ独立して存在し、水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。pは0~5の実数を表し、qは0~4の実数を表す。mおよびnは繰り返し数であり、0≦m<20、1<n<20である。)
【0022】
前記式(1)で表される化合物は、ポリスチレンセグメントを導入した分子設計とすることで優れた耐熱性、高流動性、低誘電特性を有する。
【0023】
前記式(1)中、nの値はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、検出器:RI)の測定により求められた数平均分子量、あるいは分離したピークの各々の面積比から算出することができる。nの値は1<n<15であることがさらに好ましく、1<n<10であることが特に好ましい。前記式(1)中、mの値はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、検出器:RI)の測定により求められた数平均分子量、あるいは分離したピークの各々の面積比から算出することができる。mの値は0≦m<15であることがさらに好ましく、0≦m<10であることが特に好ましい。
【0024】
前記式(1)で表される化合物は、GPC測定による重量平均分子量が300~3000であることが好ましく、より好ましくは350~2500、さらに好ましくは400~2000である。GPC測定による重量平均分子量が200~3000であることが好ましく、より好ましくは250~2500、さらに好ましくは300~2000である。
重量平均分子量および数平均分子量が上記範囲の下限未満のときは分子量増加による耐熱性向上効果を得ることが難しい。また、重量平均分子量および数平均分子量が上記範囲の上限より大きいときは水洗等による精製が困難となることに加え、半導体封止材等に使用する際に粘度が高すぎて流動性が確保できず、配線間の充填が難しくなるほか、基板用途においてもプリプレグの流動性が確保しづらくなり、配線の埋め込み性が損なわれる。
【0025】
前記式(1)で表される化合物は、通常、常温で固体の樹脂状であり、その軟化点は180℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは150℃以下である。軟化点が180℃より高い場合、粘度が高く、プリプレグ作成時に繊維含侵性が低下する。
【0026】
前記式(1)で表される化合物の好ましい構造の一例としては下記式(2)で表される化合物を挙げることができる。種々の配向性を含むことで結晶性が低くなり、溶剤溶解性の向上が見込め、アルキル基導入による弾性率低下や耐熱性低下を防げるためである。
【0027】
【0028】
(式(2)中、mおよびnは繰り返し数であり、0≦m<20、1<n<20である。)
【0029】
前記式(2)中のmおよびnの好ましい範囲は、前記式(1)と同じである。
【0030】
本発明のマレイミド化合物の製法は特に限定されないが、芳香族ビニル化合物および芳香族アルデヒドをプロトン酸触媒存在下反応させて反応物を得た後、さらにアニリン類を反応させることによって得られるアミン化合物と無水マレイン酸とを反応させることによって得られる。
【0031】
より具体的には、スチレン系化合物およびベンズアルデヒド系化合物をスルホン酸等の酸触媒下でプリンス反応させた後、アニリン系化合物を追加し、再度加熱・反応させることにより得られたアミン化合物を無水マレインと反応させることで得ることができる。
【0032】
上記アミン化合物として好ましい構造は、下記式(3)で表される。
【0033】
【0034】
(式(3)中、複数存在するRはそれぞれ独立して存在し、水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。pは0~5の実数を表し、qは0~4の実数を表す。mおよびnは繰り返し数であり、0≦m<20、1<n<20である。)
【0035】
(式(3)中、mおよびnは繰り返し数であり、0≦m<20、1<n<20である。)
【0036】
前記式(3)中のR、m、n、p、qの好ましい範囲は、前記式(1)と同じである。
【0037】
前記式(3)で表される化合物は、GPC測定による重量平均分子量が200~3000であることが好ましく、より好ましくは250~2500、さらに好ましくは300~2000である。GPC測定による重量平均分子量が150~3000であることが好ましく、より好ましくは200~2500、さらに好ましくは250~2000である。
重量平均分子量および数平均分子量が上記範囲の下限未満のときは、式(3)に由来するマレイミド等の誘導体やアミン化合物そのものとして硬化物を作成した際に分子量増加による耐熱性向上効果を得ることが難しい。また、重量平均分子量および数平均分子量が上記範囲の上限より大きいときは水洗等による精製が困難となる。
【0038】
ここで、前記式(3)で表されるアミン化合物の製法について説明する。前記式(3)で表されるアミン化合物の製法は特に限定されないが、例えば、スチレン系化合物およびベンズアルデヒド系化合物をスルホン酸等の酸触媒下でプリンス反応させた後、アニリン系化合物を追加し、再度加熱・反応させることにより得ることができる。この際、アニリン系化合物の置換基としては無置換、または炭素数1~5のアルキル基を有していることが好ましく、耐熱性向上の観点から、無置換、または炭素数1~3のアルキル基を有していることがより好ましい。合成の際には、酸触媒として塩酸、燐酸、硫酸、蟻酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸のほか、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸、活性白土、酸性白土、ホワイトカーボン、ゼオライト、シリカアルミナ等の固体酸、酸性イオン交換樹脂等を用いることができる。これらは単独でも二種以上併用しても良い。触媒の使用量は、反応基質であるスチレン系化合物およびベンズアルデヒド系化合物の重量の総和に対して、0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%である。触媒の使用量が多すぎると無用な廃棄物が増える恐れがあり、少なすぎると反応の進行が遅くなる恐れがある。使用する溶剤としては、例えばトルエン、キシレンなどの芳香族溶剤、シクロヘキサン、n-ヘキサンなどの脂肪族溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤などの非水溶性溶剤が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、2種以上を併用しても良い。また、前記非水溶性溶剤に加えて非プロトン性極性溶剤を併用することもできる。例えば、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルピロリドンなどが挙げられ、2種以上を併用しても良い。非プロトン性極性溶剤を使用する場合は、併用する非水溶性溶剤よりも沸点の高いものを使用することが好ましい。反応温度は80~250℃が好ましく、90~240℃がより好ましく、100℃から230℃がさらに好ましい。反応温度が高すぎるとプリンス反応生成物(本明細書では、スチレン系化合物およびベンズアルデヒド系化合物を酸触媒により反応させたもの)が揮発するおそれがあり、反応温度が低すぎると反応が十分に進行しない恐れがある。プリンス反応生成物とフェノール系化合物との反応時には水が副生されるため、昇温時に溶剤と共沸させながら系内から除去する。反応終了後、アルカリ水溶液等で酸性触媒を中和後、油層に非水溶性有機溶剤を加えて廃水が中性になるまで水洗を繰り返したのち、溶剤を加熱減圧下において除去する。活性白土やイオン交換樹脂を用いた場合は、反応終了後に反応液を濾過して触媒を除去する。
【0039】
マレイミド化の反応条件は特に限定されないが、使用する溶剤としては、例えばトルエン、キシレンなどの芳香族溶剤、シクロヘキサン、n-ヘキサンなどの脂肪族溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤などの非水溶性溶剤が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、2種以上を併用しても良い。また、前記非水溶性溶剤に加えて非プロトン性極性溶剤を併用することもできる。例えば、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルピロリドンなどが挙げられ、2種以上を併用しても良い。非プロトン性極性溶剤を使用する場合は、併用する非水溶性溶剤よりも沸点の高いものを使用することが好ましい。反応の際、必要により、触媒として塩酸、燐酸、硫酸、蟻酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸のほか、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸、活性白土、酸性白土、ホワイトカーボン、ゼオライト、シリカアルミナ等の固体酸、酸性イオン交換樹脂等を用いることができる。これらは単独でも二種以上併用しても良い。触媒の使用量は、使用されるアミン化合物のアミノ基1モルに対して通常0.1~0.8モルであり、好ましくは0.2~0.7モルである。触媒の使用量が多すぎると反応溶液の粘度が高すぎて攪拌が困難になる恐れがあり、少なすぎると反応の進行が遅くなる恐れがある。また、イミド化の助触媒としてはトリエチルアミン等の塩基性助触媒を単独もしくは併用することもできる。スルホン酸等を触媒とした場合、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属で中和を行ってから抽出工程に進んでも良い。抽出工程についてはトルエンやキシレン等の芳香族炭化水素溶媒を単独で用いてもよいし、シクロヘキサンやトルエン等の非芳香族炭化水素を併用しても良い。抽出後、排水が中性になるまで有機層を水洗し、エバポレータ等を用いて溶剤を留去することで目的のマレイミド化合物を得ることができる。
【0040】
前記式(3)で表されるアミン化合物は下記式(4)で表されるときがさらに好ましい。
【0041】
【0042】
(式(4)中、mおよびnは繰り返し数であり、0≦m<20、1<n<20である。)
【0043】
前記式(4)中のmおよびnの好ましい範囲は、前記式(3)と同じである。
【0044】
本発明の硬化性組成物は、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤を含有することで保管安定性が向上するとともに、反応開始温度を制御することができる。反応開始温度を制御することで、流動性の確保が容易となり、ガラスクロスなどへの含侵性が損なわれない上に、プリプレグ化などBステージ化が容易となる。プリプレグ化時に重合反応が進行しすぎると積層工程で積層が困難となるなどの不具合が発生しやすい。
使用できる重合禁止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系、ヒンダートアミン系、ニトロソ系、ニトロキシルラジカル系等の重合禁止剤が挙げられる。重合禁止剤は、本発明のマレイミド化合物を合成するときに添加しても、合成後に添加してもよい。また、重合禁止剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。重合禁止剤の使用量は、樹脂成分100重量部に対して、通常0.008~1重量部、好ましくは0.01~0.5重量部である。これら重合禁止剤はそれぞれ単独で使用できるが、2種以上を組み合わせて併用しても構わない。本発明では、フェノール系、ヒンダートアミン系、ニトロソ系、ニトロキシルラジカル系が好ましい。
【0045】
フェノール系重合禁止剤の具体例としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-p-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、等のモノフェノール類;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-{β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルスルホン酸エチル)カルシウム等のビスフェノール類;1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレイト、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類が例示される。
【0046】
イオウ系重合禁止剤の具体例としては、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリルル-3,3’-チオジプロピオネート等が例示される。
【0047】
リン系重合禁止剤の具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2-t-ブチル-6-メチル-4-{2-(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類などが例示される。
【0048】
ヒンダートアミン系重合禁止剤の具体例としては、アデカスタブLA-40MP、アデカスタブLA-40Si、アデカスタブLA-402AF、アデカスタブLA-87、デカスタブLA-82、デカスタブLA-81、アデカスタブLA-77Y、アデカスタブLA-77G、アデカスタブLA-72、アデカスタブLA-68、アデカスタブLA-63P、アデカスタブLA-57、アデカスタブLA-52、Chimassorb2020FDL、Chimassorb944FDL、Chimassorb944LD、Tinuvin622SF、TinuvinPA144、Tinuvin765、Tinuvin770DF、TinuvinXT55FB、Tinuvin111FDL、Tinuvin783FDL、Tinuvin791FB等が例示されるが、これに限定されない。
【0049】
ニトロソ系重合禁止剤の具体例としては、p-ニトロソフェノール、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアンモニウム塩、(クペロン)等があげられ、好ましくは、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアンモニウム塩(クペロ
ン)である。
【0050】
ニトロキシルラジカル系重合禁止剤の具体例としては、ジ-tert-ブチルニトロキサイド、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物は本発明のマレイミド化合物以外の硬化性樹脂として、公知のいかなる材料も用いることができる。具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミン樹脂、活性アルケン含有樹脂、イソシアネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、プロペニル樹脂、メタリル樹脂、活性エステル樹脂などが挙げられ、1種類で用いても、複数併用してもよい。また、耐熱性、密着性、誘電特性のバランスから、エポキシ樹脂、活性アルケン含有樹脂、シアネートエステル樹脂を含有することが好ましい。これらの硬化性樹脂を含有することによって、硬化物の脆さの改善および金属への密着性を向上でき、はんだリフロー時や冷熱サイクルなどの信頼性試験におけるパッケージのクラックを抑制できる。
上記硬化性樹脂の使用量は、本発明のマレイミド化合物に対して、好ましくは10質量倍以下、さらに好ましくは5質量倍以下、特に好ましくは3質量倍以下の質量範囲である。また、好ましい下限値は0.5質量倍以上、更に好ましくは1質量倍以上である。10質量倍以下であれば、本発明のマレイミド化合物の耐熱性や誘電特性の効果を活かすことができる。
【0052】
フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミン樹脂、活性アルケン含有樹脂、イソシアネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂としては、以下に例示するものを使用することができる。
【0053】
フェノール樹脂:フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド、フルフラール等)との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物、フェノール類と置換ビフェニル類(4,4’-ビス(クロルメチル)-1,1’-ビフェニル及び4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)等との重縮合により得られるフェノール樹脂、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物、ポリフェニレンエーテル化合物。
【0054】
ポリフェニレンエーテル化合物としては、公知のいかなるものを用いてもよいが、耐熱性と電気特性の観点から、エチレン性不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物であることが好ましく、アクリル基、メタクリル基、又はスチレン構造を有するポリフェニレンエーテル化合物であることがさらに好ましい。市販品としては、SA-9000-111(SABIC社製、メタクリル基を有するポリフェニレンエーテル化合物)やOPE-2St 1200(三菱瓦斯化学社製、スチレン構造を有するポリフェニレンエーテル化合物)などが挙げられる。
ポリフェニレンエーテル化合物の数平均分子量(Mn)は、500~5000であることが好ましく、2000~5000であることがより好ましく、2000~4000であることがより好ましい。分子量が500未満であると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られない傾向がある。また、分子量が5000より大きいと、溶融粘度が高くなり、充分な流動性が得られないため、成形不良となりやすくなる傾向がある。また、反応性も低下して、硬化反応に長い時間を要し、硬化系に取り込まれずに未反応のものが増加して、硬化物のガラス転移温度が低下し、硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。
ポリフェニレンエーテル化合物の数平均分子量が500~5000であれば、優れた誘電特性を維持したまま、優れた耐熱性及び成形性等を発現させることができる。なお、ここでの数平均分子量は、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー等を用いて測定することができる。
【0055】
ポリフェニレンエーテル化合物は、重合反応により得られたものであっても、数平均分子量10000~30000程度の高分子量のポリフェニレンエーテル化合物を再分配反応させて得られたものであってもよい。また、これらを原料として、メタクリルクロリド、アクリルクロリド、クロロメチルスチレン等、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と反応させることでラジカル重合性を付与してもよい。再分配反応によって得られたポリフェニレンエーテル化合物は、例えば、高分子量のポリフェニレンエーテル化合部をトルエン等の溶媒中で、フェノール化合物とラジカル開始剤との存在下で加熱し再分配反応させて得られる。このように再分配反応により得られるポリフェニレンエーテル化合物は、分子鎖の両末端に硬化に寄与するフェノール系化合物に由来する水酸基を有するために、さらに高い耐熱性を維持することができることに加え、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物で変性した後も分子鎖の両末端に官能基を導入できる点から好ましい。また、重合反応により得られたポリフェニレンエーテル化合物は、優れた流動性を示す点から好ましい。
【0056】
ポリフェニレンエーテル化合物の分子量の調整は、重合反応により得られたポリフェニレンエーテル化合物の場合、重合条件等を調整することにより行うことができる。また、再分配反応によって得られたポリフェニレンエーテル化合物の場合は、再分配反応の条件等を調整することにより、得られるポリフェニレンエーテル化合物の分子量を調整することができる。より具体的には、再分配反応において用いるフェノール系化合物の配合量を調整すること等が考えられる。すなわち、フェノール系化合物の配合量が多いほど、得られるポリフェニレンエーテル化合物の分子量が低くなる。この際、再分配反応を受ける高分子量のポリフェニレンエーテル化合物としては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等を用いることができる。また、前記再分配反応に用いられるフェノール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のように、フェノール性水酸基を分子中に2個以上有する多官能のフェノール系化合物が好ましく用いられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
また、ポリフェニレンエーテル化合物の含有量は、特に限定されないが、硬化性樹脂成分合計質量に対して、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。ポリフェニレンエーテル化合物の含有量が10~90質量%であると、耐熱性等に優れるだけではなく、ポリフェニレンエーテル化合物の有する優れた誘電特性を充分に発揮された硬化物が得られる点で好ましい。
【0058】
エポキシ樹脂:前記のフェノール樹脂、アルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、4-ビニル-1-シクロヘキセンジエポキシドや3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシラートなどを代表とする脂環式エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)やトリグリシジル-p-アミノフェノールなどを代表とするグリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂。
【0059】
アミン樹脂:ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ナフタレンジアミン、アニリンノボラック、オルソエチルアニリンノボラック、アニリンとキシリレンクロライドとの反応により得られるアニリン樹脂、日本国特許第6429862号公報に記載のアニリンと置換ビフェニル類(4,4’-ビス(クロルメチル)-1,1’-ビフェニル及び4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)。
【0060】
活性アルケン含有樹脂:前記のフェノール樹脂と活性アルケン含有のハロゲン系化合物(クロロメチルスチレン、アリルクロライド、メタリルクロライド、アクリル酸クロリド、アリルクロライド等)の重縮合物、活性アルケン含有フェノール類(2-アリルフェノール、2-プロペニルフェノール、4-アリルフェノール、4-プロペニルフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール等)とハロゲン系化合物(4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル、1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ジブロモベンゾフェノン、塩化シアヌル等)の重縮合物、エポキシ樹脂若しくはアルコール類と置換若しくは非置換のアクリレート類(アクリレート、メタクリレート等)の重縮合物、マレイミド樹脂(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2’-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン)、ザイロック型マレイミド樹脂(アニリックス マレイミド、三井化学ファイン株式会社製)ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(特開2009-001783号公報の実施例4に記載のマレイミド樹脂(M2)を含む樹脂溶液を減圧下溶剤留去することにより固形化したもの)ビスアミノクミルベンゼン型マレイミド(国際公開第2020/054601号記載のマレイミド樹脂)。
【0061】
イソシアネート樹脂:p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環構造のジイソシアネート類;イソシアネートモノマーの一種類以上のビュレット体又は、上記ジイソシアネート化合物を3量化したイソシアネート体等のポリイソシアネート;上記イソシアネート化合物とポリオール化合物とのウレタン化反応によって得られるポリイソシアネート。
【0062】
ポリアミド樹脂:アミノ酸(6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等)、ラクタム(ε-カプロラクタム、ω-ウンデカンラクタム、ω-ラウロラクタム)および「ジアミン(エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタンなどの脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン;キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン等とジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、スクシン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;これらジカルボン酸のジアルキルエステル、およびジクロリド)との混合物から選ばれた1種以上を主たる原料とした重合物。
【0063】
ポリイミド樹脂:前記のジアミンとテトラカルボン酸二無水物(4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2ジカルボン酸無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2’-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物)、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、メチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、オキシ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、チオ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、スルホニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、rel-[1S,5R,6R]-3-オキサビシクロ[3,2,1]オクタン-2,4-ジオン-6-スピロ-3’-(テトラヒドロフラン-2’,5’-ジオン)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、エチレングリコール-ビス-(3,4-ジカルボン酸無水物フェニル)エーテル、4,4’-ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物)との重縮合物。
【0064】
シアネートエステル樹脂:フェノール樹脂をハロゲン化シアンと反応させることにより得られるシアネートエステル化合物であり、具体例としては、ジシアナートベンゼン、トリシアナートベンゼン、ジシアナートナフタレン、ジシアンートビフェニル、2、2’-ビス(4-シアナートフェニル)プロパン、ビス(4-シアナートフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナートフェニル)メタン、2,2’-ビス(3,5-ジメチル-4-シアナートフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-シアナートフェニル)エタン、2,2’-ビス(4-シアナートフェニル)ヘキサフロロプロパン、ビス(4-シアナートフェニル)スルホン、ビス(4-シアナートフェニル)チオエーテル、フェノールノボラックシアナート、フェノール・ジシクロペンタジエン共縮合物の水酸基をシアネート基に変換したもの等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また、特開2005-264154号公報に合成方法が記載されているシアネートエステル化合物は、低吸湿性、難燃性、誘電特性に優れているためシアネートエステル化合物として特に好ましい。
シアネートエステル樹脂は、必要に応じてシアネート基を三量化させてsym-トリアジン環を形成するために、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、鉛アセチルアセトナート、ジブチル錫マレエート等の触媒を含有させることもできる。触媒は、硬化性樹脂組成物の合計質量100質量部に対して通常0.0001~0.10質量部、好ましくは0.00015~0.0015質量部使用する。
【0065】
活性エステル樹脂:エポキシ樹脂等、本発明のマレイミド化合物以外の硬化性樹脂の硬化剤として1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を必要に応じて用いることができる。活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及びチオカルボン酸化合物の少なくともいずれかの化合物と、ヒドロキシ化合物及びチオール化合物の少なくともいずれかの化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及びナフトール化合物の少なくともいずれかの化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましい。
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
活性エステル系硬化剤の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」、「EXB-8150-65T」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱化学社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱化学社製);リン原子含有活性エステル系硬化剤としてDIC社製の「EXB-9050L-62M」;等が挙げられる。
【0066】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤(硬化触媒)を併用して硬化性を向上させることもできる。用い得る硬化促進剤の具体例として、オレフィン化合物やマレイミド化合物等のラジカル重合可能な硬化性樹脂の自己重合やその他の成分とのラジカル重合を促進する目的でラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。用い得るラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、過酸化ベンゾイル等のジアシルパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)-ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、α-クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン等のパーオキシカーボネート類、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシオクトエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物の公知の硬化促進剤が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類等が好ましく、ジアルキルパーオキサイド類がより好ましい。ラジカル重合開始剤の添加量としては、硬化性樹脂組成物の100質量部に対して0.01~5質量部が好ましく、0.01~3質量部が特に好ましい。用いるラジカル重合開始剤の量が多いと重合反応時に分子量が十分に伸長しない。
【0067】
また、必要に応じてラジカル重合開始剤以外の硬化促進剤を添加、または併用しても差し支えない。用い得る硬化促進剤の具体例としては2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール及び2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2-(ジメチルアミノメチル)フェノールや1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級フォスフォニウム塩(4級塩のカウンターイオンはハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオンなど、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。)、オクチル酸スズ、カルボン酸亜鉛(2-エチルヘキサン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、ミスチリン酸亜鉛)やリン酸エステル亜鉛(オクチルリン酸亜鉛、ステアリルリン酸亜鉛等)等の亜鉛化合物等の遷移金属化合物(遷移金属塩) 等が挙げられる。硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂100に対して0.01~5.0重量部が必要に応じて用いられる。
【0068】
本発明の硬化性樹脂組成物には、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル-2,6-ジキシリレニルホスフェート、1,3-フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4-フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4’-ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3-フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4-フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4’-ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。リン含有化合物の含有量は(リン含有化合物)/(全エポキシ樹脂)が0.1~0.6(重量比)の範囲であることが好ましい。0.1以下では難燃性が不十分であり、0.6以上では硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0069】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて光安定剤を添加しても構わない。光安定剤としては、ヒンダートアミン系の光安定剤、特にHALS等が好適である。HALSとしては特に限定されるものではないが、代表的なものとしては、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ〔{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドリキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、等が挙げられる。HALSは1種のみが用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0070】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じてバインダー樹脂を配合することもできる。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ-ナイロン系樹脂、NBR-フェノール系樹脂、エポキシ-NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、樹脂成分100質量部に対して0.05~50質量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.05~20質量部が必要に応じて用いられる。
【0071】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて溶融シリカ、結晶シリカ、多孔質シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、石英粉、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、ジルコニア、窒化アルミニウム、グラファイト、フォルステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、酸化鉄アスベスト、ガラス粉末等の粉体、またはこれらを球形状あるいは破砕状にした無機充填材を添加することができる。また、特に半導体封止用の硬化性樹脂組成物を得る場合、上記の無機充填材の使用量は硬化性樹脂組成物中、通常80~92質量%、好ましくは83~90質量%の範囲である。
【0072】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて公知の添加剤を配合することができる。用いうる添加剤の具体例としては、ポリブタジエン及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂、シリコーンゲル、シリコーンオイル、シランカップリング剤のような充填材の表面処理剤、離型剤、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤が挙げられる。これら添加剤の配合量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して好ましくは1,000質量部以下、より好ましくは700質量部以下の範囲である。低吸水性、電気特性の観点からポリブタジエン及びこの変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、フッ素樹脂などが好ましい。電気特性、密着性、低吸水性の観点からポリブタジエン及びこの変性物が好ましい。具体的には、例えば、スチレンブタジエン共重合体(SBR:RICON-100、RICON-181、RICON-184 いずれもクレイバレー社製など)、アクリロニトリルブタジエン共重合体等のブタジエン系熱可塑性エラストマー;スチレンブタジエンスチレン共重合体(SBS)、水添スチレンブタジエンスチレン共重合体、スチレンイソプレンスチレン共重合体(SIS)、水添スチレンイソプレンスチレン共重合体、水添スチレン(ブタジエン/イソプレン)スチレン共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのスチレン系熱可塑性エラストマーは単独で用いても、二種類以上を併用してもよい。これらの高分子量体のなかで、スチレンブタジエンスチレン共重合体、水添スチレンブタジエンスチレン共重合体、スチレンイソプレンスチレン共重合体、水添スチレンイソプレンスチレン共重合体、水添スチレン(ブタジエン/イソプレン)スチレン共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、特にスチレンイソプレンスチレン共重合体、水添スチレンブタジエンスチレン共重合体、水添スチレンイソプレンスチレン共重合体、水添スチレン(ブタジエン/イソプレン)スチレン共重合体が、より高い耐熱性を有しかつ酸化劣化しにくいため、さらに好ましい。具体的にはセプトン1020、セプトン2002、セプトン2004F、セプトン2005、セプトン2006、セプトン2063、セプトン2104、セプトン4003、セプトン4044、セプトン4055、セプトン4077、セプトン4099、セプトン8004、セプトン8006、セプトン8007L、セプトンHG252、セプトンV9827、ハイブラー7125(水添)、ハイブラー7215F、ハイブラー7311F(いずれも株式会社クラレ社製)また、スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は10000以上であれば特に制限はないが、大きすぎるとポリフェニレンエーテル化合物のほか、重量平均分子量50~1000程度の低分子量成分および、重量平均分子量1000~5000程度のオリゴマー成分との相溶性が悪化し、混合および溶剤安定性の担保が困難になることから、10000~300000程度であることが好ましい。一般に、ビスマレイミドやポリマレイミドのような酸素や窒素などのヘテロ原子を含む化合物の場合、その極性に起因し、上記添加剤や前記硬化性樹脂成分等のうち、主に炭化水素から構成される化合物もしくは炭化水素のみからなる化合物のような低極性化合物との相溶性の担保が困難である。一方、本発明記載の分子内にポリスチレン構造を有するマレイミド化合物は、それ自体が酸素や窒素などのヘテロ原子を積極的に導入した骨格設計ではない(極性基が少ない)ことに起因し、低極性かつ低誘電特性を有する材料や、炭化水素のみで構成される化合物との相溶性にも優れる。
【0073】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記各成分を所定の割合で均一に混合することにより得られ、通常130~180℃で30~500秒の範囲で予備硬化し、更に、150~200℃で2~15時間、後硬化することにより充分な硬化反応が進行し、本発明の硬化物が得られる。又、硬化性樹脂組成物の成分を溶剤等に均一に分散または溶解させ、溶媒を除去した後硬化させることもできる。
【0074】
こうして得られる本発明の硬化性樹脂組成物は、絶縁材料、積層板(プリント配線板、BGA用基板、ビルドアップ基板など)、封止材料、レジスト等あらゆる電気・電子部品用材料として有用である。又、成形材料、複合材料の他、塗料材料、接着剤、3Dプリンティング等の分野にも用いることができる。特に半導体封止においては、耐ハンダリフロー性が有益なものとなる。
【0075】
半導体装置は本発明の硬化性樹脂組成物で封止されたものを有する。半導体装置としては、例えばDIP(デュアルインラインパッケージ)、QFP(クワッドフラットパッケージ)、BGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)、SOP(スモールアウトラインパッケージ)、TSOP(シンスモールアウトラインパッケージ)、TQFP(シンクワッドフラットパッケージ)等が挙げられる。
【0076】
本発明の硬化性樹脂組成物の調製方法は特に限定されないが、各成分を均一に混合するだけでも、あるいはプレポリマー化してもよい。例えば本発明のマレイミド化合物を触媒の存在下または非存在下、溶剤の存在下または非存在下において加熱することによりプレポリマー化する。同様に、本発明のマレイミド化合物の他、エポキシ樹脂、アミン化合物、マレイミド系化合物、シアネートエステル化合物、フェノール樹脂、酸無水物化合物などの硬化剤及びその他添加剤を追加してプレポリマー化してもよい。各成分の混合またはプレポリマー化は溶剤の非存在下では例えば押出機、ニーダ、ロールなどを用い、溶剤の存在下では攪拌装置つきの反応釜などを使用する。
【0077】
均一に混合する手法としては50~100℃の範囲内の温度でニーダ、ロール、プラネタリーミキサー等の装置を用いて練りこむように混合し、均一な樹脂組成物とする。得られた樹脂組成物は粉砕後、タブレットマシーン等の成型機で円柱のタブレット状に成型、もしくは顆粒状の紛体、もしくは粉状の成型体とする、もしくはこれら組成物を表面支持体の上で溶融し0.05mm~10mmの厚みのシート状に成型し、硬化性樹脂組成物成型体とすることもできる。得られた成型体は0~20℃でべたつきのない成型体となり、-25~0℃で1週間以上保管しても流動性、硬化性をほとんど低下させない。
得られた成型体についてトランスファー成型機、コンプレッション成型機にて硬化物に成型することができる。
【0078】
本発明の硬化性樹脂組成物に有機溶剤を添加してワニス状の組成物(以下、単にワニスという。)とすることもできる。本発明の硬化性樹脂組成物を必要に応じてトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の溶剤に溶解させてワニスとし、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10~70重量%、好ましくは15~70重量%を占める量を用いる。また液状組成物であれば、そのまま例えば、RTM方式でカーボン繊維を含有する硬化性樹脂硬化物を得ることもできる。
【0079】
また、本発明の硬化性組成物をフィルム型組成物の改質剤としても使用できる。具体的にはB-ステージにおけるフレキ性等を向上させる場合に用いることができる。このようなフィルム型の樹脂組成物は、本発明の硬化性樹脂組成物を前記硬化性樹脂組成物ワニスとして剥離フィルム上に塗布し、加熱下で溶剤を除去した後、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤として得られる。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することができる。
【0080】
本発明の硬化性樹脂組成物は、加熱溶融し、低粘度化してガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維などの強化繊維に含浸させることによりプリプレグを得ることができる。その具体例としては、例えば、Eガラスクロス、Dガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、球状ガラスクロス、NEガラスクロス、及びTガラスクロス等のガラス繊維、更にガラス以外の無機物の繊維やポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン株式会社製)、全芳香族ポリアミド、ポリエステル;並びに、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリイミド及び炭素繊維などの有機繊維が挙げられるが、これらに特に限定されない。基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマットなどが挙げられる。また、織布の織り方としては、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、織布を開繊処理したものやシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.01~0.4mm程度である。また、前記ワニスを、強化繊維に含浸させて加熱乾燥させることによりプリプレグを得ることもできる。
【0081】
本実施形態の積層板は、上記プリプレグを1枚以上備える。積層板はプリプレグを1枚以上備えるものであれば特に限定されず、他のいかなる層を有していてもよい。積層板の製造方法としては、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。例えば、金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを用いることができ、上記プリプレグ同士を積層し、加熱加圧成形することで積層板を得ることができる。このとき、加熱する温度は、特に限定されないが、65~300℃が好ましく、120~270℃がより好ましい。また、加圧する圧力は、特に限定されないが、加圧が大きすぎると積層板の樹脂の固形分調整が難しく品質が安定せず、また、圧力が小さすぎると、気泡や積層間の密着性が悪くなってしまうため2.0~5.0MPaが好ましく、2.5~4.0MPaがより好ましい。本実施形態の積層板は、金属箔からなる層を備えることにより、後述する金属箔張積層板として好適に用いることができる。
上記プリプレグを所望の形に裁断、必要により銅箔などと積層後、積層物にプレス成形法やオートクレーブ成形法、シートワインディング成形法などで圧力をかけながら硬化性樹脂組成物を加熱硬化させることにより電気電子用積層板(プリント配線板)や、炭素繊維強化材を得ることができる。
【0082】
本発明の硬化物は成型材料、接着剤、複合材料、塗料など各種用途に使用できる。本発明記載の硬化性樹脂組成物の硬化物は優れた耐熱性と誘電特性を示すため、半導体素子用封止材、液晶表示素子用封止材、有機EL素子用封止材、プリント配線基板、ビルドアップ積層板等の電気・電子部品や炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック等の軽量高強度構造材用複合材料に好適に使用される。
【実施例】
【0083】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明する。以下、特に断わりのない限り、部は質量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0084】
以下に実施例で用いた各種分析方法について記載する。
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)>
ポリスチレン標準液を用いてポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を算出した。
GPC:DGU-20A3R,LC-20AD,SIL-20AHT,RID-20A,SPD-20A,CTO-20A,CBM-20A(いずれも島津製作所製)
カラム:Shodex KF-603、KF-602x2、KF-601x2)
連結溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.5ml/min.
カラム温度:40℃
検出:RI(示差屈折検出器)
【0085】
・GC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)分析
装置:JEОL製JMS-Q1500GC
カラム:Agilent製HP-5ms 30m×0.25mm i.d.(膜厚0.25μm)
キャリア:He 1.5mL/min Split 1/30
インジェクション温度:300℃
オーブン温度:100℃(2min)-310℃(37min)10℃/min昇温
イオン化電流:70eV
イオン化:EI
サンプルインジェクション:1μL
【0086】
<樹脂物性測定条件>
・アミン当量
JIS K-7236 に記載された方法を参考に過塩素酸を用いずに測定し、得られた値をアミン当量とした。単位はg/eq.である。
・軟化点
JISK-7234 に準拠した方法で測定し、単位は℃である。
・ICI粘度
JISK-7117-2 に準拠した方法で測定し、単位はPa・sである。
【0087】
[実施例1]
温度計、冷却管、分留管、撹拌機を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、トルエン100部、スチレン26.0部(東京化成社製)、ベンズアルデヒド(東京化成社製)26.5部を加え、p-トルエンスルホン酸3.3部を加え、120℃で4時間反応させた。室温まで放冷後、アニリン93.1部、35%塩酸26.1部を加え、脱水により生成する水をトルエンとともに抜き出しながら内温を180℃まで昇温し、14時間反応させた。室温まで放冷し、抜き出したトルエンおよび水を系内へ戻し、30%水酸化ナトリウム水溶液39.2部を添加し、中和を施した。その後、廃液が中性になるまで有機層を水洗後濃縮し、アミン化合物(A1)を61.5部得た。アミン化合物(A1)のアミン当量は325.9g/eq、軟化点は80.9℃、ICI粘度(150℃)は0.08Pa・sであった。GPC分析(RI)した際のチャートを
図1に示す。GPC分析による数平均分子量Mnは410、重量平均分子量Mwは521であった。目的化合物のGC-MSチャートを
図2に示す。GC-MS分析より前記式(3)で表されるアミン化合物が生成していることを確認した。
【0088】
[実施例2]
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコにトルエン100部、無水マレイン酸25.0部、メタンスルホン酸2.8部を加え還流状態になるまで加熱・攪拌した。別途調製したアミン溶液(実施例1で合成したアミン化合物A1:55.5部、トルエン:55.5部、NMP:11.0部)を還流下で滴下し、還流下2時間反応させた。放冷後、水100部で4回有機層を洗浄後、有機層を反応容器に戻し、メタンスルホン酸2.8部を再度添加し、還流下2時間反応させた。トルエン150部を加え、水100部で5回有機層を洗浄し、加熱減圧下において溶剤を留去することにより目的のマレイミド化合物(M-1)を褐色固形樹脂として得た。得られたマレイミド化合物のGPCチャートを
図3に示す。GPC分析による数平均分子量Mnは602、重量平均分子量Mwは928であった。目的のマレイミド化合物のGC-MSチャートを
図4に示す。GC-MS分析より前記式(1)で表されるGPC分析による数平均分子量Mnは410、重量平均分子量Mwは521であった。化合物が生成していることを確認した。
【0089】
[実施例3、比較例1]
表1に示す割合で各材料をアセトンに固形分50質量%となるよう溶解させ配合し、真空オーブン内で60℃30分予備乾燥後、150℃で1時間乾燥させ、粉末状の樹脂組成物を得た。その後、5gのサンプルを鏡面銅箔(T4X:福田金属銅箔社製)で挟み込みながら真空プレス成型し、220℃で2時間硬化させた(比較例1については、175℃で2時間硬化させた)。この際、スペーサとして厚さ250μmのクッション紙の中央を縦横150mmにくり抜いたものを用いた。評価にあたっては、必要に応じてレーザーカッターを用いて所望のサイズに試験片を切り出し、評価を実施した。
【0090】
<誘電率試験・誘電正接試験>
(株)ATE社製の10GHz空洞共振器を用いて、空洞共振器摂動法にてテストを行った。サンプルサイズは幅1.7mm×長さ100mmとし、厚さは0.3mmで試験を行った。
【0091】
<耐熱性(DSC)>
示差走査熱量計:DSC6220(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)
測定温度範囲:30~330℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:窒素(30mL/min)
試料量:5mg
Tg:DSCチャートの変曲点をTgとした。
実施例3、比較例1のDSCチャートをそれぞれ
図5、6に示す。
【0092】
【0093】
・NC-3000-L:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製)
・DCP:ジクミルパーオキサイド(東京化成社製)
・2E4MZ:2-エチル-4-メチルイミダゾール(硬化促進剤、四国化成社製)
【0094】
表1の結果より、実施例3は高耐熱性、低誘電特性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の硬化性樹脂組成物およびその硬化物は、電気電子部品用絶縁材料(高信頼性半導体封止材料など)及び積層板(プリント配線板、BGA用基板、ビルドアップ基板など)、接着剤(導電性接着剤など)やCFRPを始めとする各種複合材料用、塗料、3Dプリンティング等の用途に有用である。
【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、優れた耐熱性と電気特性を示し、良好な硬化性を有するマレイミド化合物、硬化性樹脂組成物、及びこれらの原料となるアミン化合物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるマレイミド化合物。
(式(1)中、複数存在するRはそれぞれ独立して存在し、水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。pは0~5の実数を表し、qは0~4の実数を表す。mおよびnは繰り返し数であり、0≦m<20、1<n<20である。)
【選択図】
図2