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特許7236799自転車用制御装置およびこれを備える自転車用サスペンションシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】自転車用制御装置およびこれを備える自転車用サスペンションシステム
(51)【国際特許分類】
   B62K 25/04 20060101AFI20230303BHJP
   B62J 45/40 20200101ALI20230303BHJP
【FI】
B62K25/04
B62J45/40
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2017135443
(22)【出願日】2017-07-11
(65)【公開番号】P2019018587
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2019-07-11
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】手塚 俊雄
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】筑波 茂樹
【審判官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-304325(JP,A)
【文献】特開2015-93671(JP,A)
【文献】特開2003-130886(JP,A)
【文献】特開2000-177674(JP,A)
【文献】特開2002-225776(JP,A)
【文献】特開2015-27861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 25/04
B62J 45/40
B62J 99/00
B62M 1/10
B62M 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪、ドライブトレイン、およびサスペンションを備える自転車の自転車用制御装置であって、
前記ドライブトレインは、駆動力が入力される入力部、前記駆動力が伝達される後輪、および、前記入力部に入力された前記駆動力を前記後輪に伝達する伝達機構を含み、
前記入力部に入力された前記駆動力によって前記後輪が回転していない状態における前記前輪、および、前記後輪のタイヤへの圧力に応じて、前記サスペンションの動作状態を変更する制御部を備え、
前記制御部は、前記前輪、および、前記後輪の前記タイヤへの圧力が大きくなると、前記入力部に入力された前記駆動力によって前記後輪が回転していない状態から、前記入力部に入力された前記駆動力によって前記後輪が回転を開始すると判定して、前記サスペンションの動作状態を変更し、
前記入力部に入力された前記駆動力によって前記後輪が回転していない状態は、前記後輪の回転速度が0の状態、前記後輪の回転速度が0よりも小さい状態、および、前記後輪の回転速度が0よりも大きく、かつクランクの回転およびペダルの移動の少なくとも一方が検出されていない状態の少なくとも1つを含む、自転車用制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、さらに、前記入力部に入力された前記駆動力によって前記後輪が回転していない状態における前記入力部、前記伝達機構、前記前輪、および、前記後輪の少なくとも1つの動きに応じて、前記サスペンションの動作状態を変更する、請求項1に記載の自転車用制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記入力部に入力された前記駆動力によって前記後輪が回転していない状態において、前記入力部に前記駆動力が入力されていない状態から前記入力部に前記駆動力が入力された状態に変化した場合、前記入力部、前記伝達機構、前記前輪、および、前記後輪の少なくとも1つの動きに応じて、前記サスペンションの動作状態を変更する、請求項1または2に記載の自転車用制御装置。
【請求項4】
前記入力部、前記伝達機構、前記前輪、および、前記後輪の少なくとも1つの動きを検出する第1検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1検出部の検出結果に基づき前記サスペンションの動作状態を変更する、請求項1~3のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項5】
前記入力部および前記伝達機構は、回転部を含み、
前記第1検出部は、前記回転部の回転を検出する回転センサを含む、請求項4に記載の自転車用制御装置。
【請求項6】
前記回転部は、リアディレーラのプーリを含み、
前記回転センサは、前記プーリの回転を検出するプーリ回転センサを含む、請求項5に記載の自転車用制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記プーリが停止または逆転している状態から正転した状態に変化した場合に、前記サスペンションの動作状態を変更する、請求項6に記載の自転車用制御装置。
【請求項8】
前記回転部は、前記クランクを含み、
前記回転センサは、前記クランクの回転を検出するクランク回転センサを含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項9】
前記クランク回転センサは、前記クランクの前記自転車のフレームに対する回転を検出する、請求項8に記載の自転車用制御装置。
【請求項10】
前記クランク回転センサは、前記クランクの前記自転車のフレームに取り付けられたボトムブラケットに対する回転を検出する、請求項8に記載の自転車用制御装置。
【請求項11】
前記回転部は、リアスプロケットを含み、
前記回転センサは、前記リアスプロケットの回転を検出するリアスプロケット回転センサを含む、請求項5~10のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項12】
前記リアスプロケット回転センサは、前記リアスプロケットの前記自転車のフレームに対する回転を検出する、請求項11に記載の自転車用制御装置。
【請求項13】
前記伝達機構は、リアスプロケットおよび前記リアスプロケットが取り付けられるリアハブを含み、
前記リアハブは、
前記後輪のリムとスポークによって連結されるハブシェルと、
前記リアスプロケットを支持する支持体と、
前記ハブシェルと前記支持体の間に配されるワンウェイクラッチと、を備え、
前記ワンウェイクラッチは、
前記ハブシェルおよび前記支持体の一方に設けられるラチェットと、
前記ハブシェルおよび前記支持体の他方に設けられ、前記ラチェットに係合可能な爪体と、を備え、
前記第1検出部は、前記ラチェットおよび前記爪体の少なくとも一方における圧力を検出する圧力センサを含む、請求項4~12のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項14】
前記伝達機構は、リアスプロケットおよび前記リアスプロケットが取り付けられるリアハブを含み、
前記リアハブは、
前記後輪のリムとスポークによって連結されるハブシェルと、
前記リアスプロケットを支持する支持体と、
前記ハブシェルと前記支持体の間に配されるワンウェイクラッチと、を備え、
前記ワンウェイクラッチは、
前記ハブシェルと係合し、第1ラチェット歯が形成される第1面を有するディスク形状の第1ラチェットメンバと、
前記支持体と係合し、前記第1ラチェット歯と係合することによって前記第1ラチェットメンバに前記駆動力を伝達する第2ラチェット歯が形成される第2面を有し、前記第1ラチェットメンバと相対移動可能な第2ラチェットメンバと、を備え、
前記第1検出部は、前記第1ラチェットメンバと前記第2ラチェットメンバとの相対移動を検出するディスクラチェット移動センサを含む、請求項4~12のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項15】
前記第1ラチェットメンバおよび前記第2ラチェットメンバの一方は、前記リアハブの回転軸と平行な方向に移動し、
前記ディスクラチェット移動センサは、前記第1ラチェットメンバおよび前記第2ラチェットメンバの一方の前記リアハブの回転軸と平行な方向の移動を検出する、請求項14に記載の自転車用制御装置。
【請求項16】
前記伝達機構は、チェーンを含み、
前記第1検出部は、前記チェーンがスプロケットから外れる方向への移動を規制するチェーンデバイスに取り付けられ、前記チェーンの移動を検出するチェーン移動センサを含む、請求項4~15のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項17】
前記入力部は、前記ペダルを含み、
前記第1検出部は、前記ペダルのクランク軸まわりの移動を検出するペダル移動センサを含む、請求項4~16のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項18】
記前輪および前記後輪の前記タイヤへの圧力を検出するタイヤ圧力センサをさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項19】
前記制御部は、前記入力部に入力された前記駆動力によって前記後輪が回転していない状態において前記入力部、前記伝達機構、前記前輪、および、前記後輪の少なくとも1つが動いた場合、かつ、前記駆動力の大きさが所定の駆動力以上である場合、前記サスペンションの動作状態を変更する、請求項1~18のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項20】
前記入力部に入力された前記駆動力を検出する駆動力センサをさらに含む、請求項19に記載の自転車用制御装置。
【請求項21】
前記サスペンションは、フロントサスペンションおよびリアサスペンションの少なくとも一方を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項22】
前記サスペンションは、第1部分と、前記第1部分に嵌め込まれて前記第1部分と相対移動可能な第2部分とを含み、
前記サスペンションの動作状態は、前記第1部分と前記第2部分との相対移動が規制されるロック状態と、前記第1部分と前記第2部分との相対移動が許容されるアンロック状態とを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項23】
前記アンロック状態は、第1アンロック状態と、前記第1アンロック状態よりも前記第1部分と前記第2部分とが相対移動しやすい第2アンロック状態とをさらに含む、請求項22に記載の自転車用制御装置。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の自転車用制御装置と、
前記サスペンションと、を備え、
前記サスペンションは、前記サスペンションの動作によって発電する発電部と、前記発電部によって生じた電力を用いて動作状態を変更するアクチュエータと、を備える、自転車用サスペンションシステム。
【請求項25】
請求項1~23のいずれか一項に記載の自転車用制御装置と、
前記自転車の搭乗者が操作可能なサスペンション操作部と、
前記サスペンション操作部の操作に応じたサスペンション操作信号を無線で送信するサスペンション操作信号送信部と、を備え、
前記自転車用制御装置は、前記サスペンション操作信号送信部からの前記サスペンション操作信号を受信するサスペンション操作信号受信部をさらに備え、
前記制御部は、前記サスペンション操作信号に基づいて前記サスペンションの動作状態を変更する手動制御モードを実行可能である、自転車用サスペンションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用制御装置およびこれを備える自転車用サスペンションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自転車のコンポーネントを制御する自転車用制御装置が知られている。例えば、特許文献1は、自転車用制御装置によって制御されるサスペンションを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-308172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ユーザビリティに貢献できる自転車用制御装置およびこれを備える自転車用サスペンションシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う自転車用制御装置の一形態は、前輪、ドライブトレイン、およびサスペンションを備える自転車の自転車用制御装置であって、前記ドライブトレインは、駆動力が入力される入力部、前記駆動力が伝達される後輪、および、前記入力部に入力された前記駆動力を前記後輪に伝達する伝達機構を含み、前記入力部に入力された前記駆動力によって前記後輪が回転していない状態における前記入力部、前記伝達機構、前記前輪、および、前記後輪の少なくとも1つの動きに応じて、前記サスペンションの動作状態を変更する制御部を備える。
上記第1側面によれば、入力部に入力された駆動力によって後輪が回転し始めるよりも前に、サスペンションの動作状態を変更する制御を開始することができるため、サスペンションの動作状態の変更を早期に行うことができる。このため、ユーザビリティに貢献できる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記入力部に入力された前記駆動力によって前記後輪が回転していない状態において、前記入力部に前記駆動力が入力されていない状態から前記入力部に前記駆動力が入力された状態に変化した場合、前記入力部、前記伝達機構、前記前輪、および、前記後輪の少なくとも1つの動きに応じて、前記サスペンションの動作状態を変更する。
上記第2側面によれば、搭乗者が自転車を漕ぎだす際のサスペンションの動作状態の変更を早期に行うことができる。
【0007】
前記第1または第2側面に従う第3側面の自転車用制御装置において、前記入力部、前記伝達機構、前記前輪、および、前記後輪の少なくとも1つの動きを検出する第1検出部をさらに備え、前記制御部は、前記第1検出部の検出結果に基づき前記サスペンションの動作状態を変更する。
上記第3側面によれば、第1検出部によって検出される入力部、伝達機構、前輪、および、後輪の少なくとも1つの動きに応じて、サスペンションの動作状態を早期に変更できる。
【0008】
前記第3側面に従う第4側面の自転車用制御装置において、前記入力部、前記伝達機構、前記前輪、および、前記後輪の少なくとも1つは回転部を含み、前記第1検出部は、前記回転部の回転を検出する回転センサを含む。
上記第4側面によれば、回転センサによって検出される入力部、伝達機構、前輪、および、後輪の少なくとも1つに含まれる回転部の回転に応じて、サスペンションの動作状態を早期に変更できる。
【0009】
前記第4側面に従う第5側面の自転車用制御装置において、前記回転部は、リアディレーラのプーリを含み、前記回転センサは、前記プーリの回転を検出するプーリ回転センサを含む。
上記第5側面によれば、プーリ回転センサによって検出されるリアディレーラのプーリの回転に応じて、サスペンションの動作状態を早期に変更できる。
【0010】
前記第5側面に従う第6側面の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記プーリが停止または逆転している状態から正転した状態に変化した場合に、前記サスペンションの動作状態を変更する。
上記第6側面によれば、プーリ回転センサによって搭乗者が自転車を漕ぎだす際のサスペンションの動作状態の変更を早期に行うことができる。
【0011】
前記第4~第6側面に従う第7側面の自転車用制御装置において、前記回転部は、クランクを含み、前記回転センサは、前記クランクの回転を検出するクランク回転センサを含む。
上記第7側面によれば、クランク回転センサによって検出されるクランクの回転に応じて、サスペンションの動作状態を早期に変更できる。
【0012】
前記第7側面に従う第8側面の自転車用制御装置において、前記クランク回転センサは、前記クランクの前記自転車のフレームに対する回転を検出する。
上記第8側面によれば、クランクがフレームに対して回転し始めた際に、サスペンションの動作状態を早期に変更できる。
【0013】
前記第7側面に従う第9側面の自転車用制御装置において、前記クランク回転センサは、前記クランクの前記自転車のフレームに取り付けられたボトムブラケットに対する回転を検出する。
上記第9側面によれば、クランクがボトムブラケットに対して回転し始めた際に、サスペンションの動作状態を早期に変更できる。
【0014】
前記第4~第9側面のいずれか1つに従う第10側面の自転車用制御装置において、前記回転部は、リアスプロケットを含み、前記回転センサは、前記リアスプロケットの回転を検出するリアスプロケット回転センサを含む。
上記第10側面によれば、リアスプロケット回転センサによって検出されるリアスプロケットの回転に応じて、サスペンションの動作状態を早期に変更できる。
【0015】
前記第10側面に従う第11側面の自転車用制御装置において、前記リアスプロケット回転センサは、前記リアスプロケットの前記自転車のフレームに対する回転を検出する。
上記第11側面によれば、リアスプロケットがフレームに対して回転し始めた際に、サスペンションの動作状態を早期に変更できる。
【0016】
前記第3~第11側面のいずれか1つに従う第12側面の自転車用制御装置において、前記伝達機構は、リアスプロケットおよび前記リアスプロケットが取り付けられるリアハブを含み、前記リアハブは、前記後輪のリムとスポークによって連結されるハブシェルと、前記リアスプロケットを支持する支持体と、前記ハブシェルと前記支持体の間に配されるワンウェイクラッチと、を備え、前記ワンウェイクラッチは、前記ハブシェルおよび前記支持体の一方に設けられるラチェットと、前記ハブシェルおよび前記支持体の他方に設けられ、前記ラチェットに係合可能な爪体と、を備え、前記第1検出部は、前記ラチェットおよび前記爪体の少なくとも一方における圧力を検出する圧力センサを含む。
【0017】
上記第12側面によれば、ラチェットと爪体とが係合して入力部に入力された駆動力によって後輪が回転している場合と、ラチェットと爪体とが係合せずに入力部に入力された駆動力によって後輪が回転していない場合とで、ラチェットおよび爪体の少なくとも一方における圧力が異なる。このため、圧力センサによって検出されるラチェットおよび爪体の少なくとも一方における圧力に応じて、サスペンションの動作状態を早期に変更できる。
【0018】
前記第3~第11側面のいずれか1つに従う第13側面の自転車用制御装置において、前記伝達機構は、リアスプロケットおよび前記リアスプロケットが取り付けられるリアハブを含み、前記リアハブは、前記後輪のリムとスポークによって連結されるハブシェルと、前記リアスプロケットを支持する支持体と、前記ハブシェルと前記支持体の間に配されるワンウェイクラッチと、を備え、前記ワンウェイクラッチは、前記ハブシェルと係合し、第1ラチェット歯が形成される第1面を有するディスク形状の第1ラチェットメンバと、前記支持体と係合し、前記第1ラチェット歯と係合することによって前記第1ラチェットメンバに前記駆動力を伝達する第2ラチェット歯が形成される第2面を有し、前記第1ラチェットメンバと相対移動可能な第2ラチェットメンバと、を備え、前記第1検出部は、前記第1ラチェットメンバと前記第2ラチェットメンバとの相対移動を検出するディスクラチェット移動センサを含む。
上記第13側面によれば、第1ラチェットメンバと第2ラチェットメンバとが係合して入力部に入力された駆動力によって後輪が回転している場合と、第1ラチェットメンバと第2ラチェットメンバとが係合せずに入力部に入力された駆動力によって後輪が回転していない場合とで、第1ラチェットメンバと第2ラチェットメンバとの相対位置が異なる。このため、ディスクラチェット移動センサによって検出される第1ラチェットメンバと第2ラチェットメンバとの相対移動に応じて、サスペンションの動作状態を早期に変更できる。
【0019】
前記第13側面に従う第14側面の自転車用制御装置において、前記第1ラチェットメンバおよび前記第2ラチェットメンバの一方は、前記リアハブの回転軸と平行な方向に移動し、前記ディスクラチェット移動センサは、前記第1ラチェットメンバおよび前記第2ラチェットメンバの一方の前記リアハブの回転軸と平行な方向の移動を検出する。
上記第14側面によれば、ディスクラチェット移動センサによって検出される第1ラチェットメンバおよび第2ラチェットメンバの一方のリアハブの回転軸と平行な方向の移動に応じて、サスペンションの動作状態を早期に変更できる。
【0020】
前記第3~第14側面のいずれか1つに従う第15側面の自転車用制御装置において、
前記伝達機構は、チェーンを含み、前記第1検出部は、前記チェーンがスプロケットから外れる方向への移動を規制するチェーンデバイスに取り付けられ、前記チェーンの移動を検出するチェーン移動センサを含む。
上記第15側面によれば、チェーン移動センサによって検出されるチェーンの移動に応じて、サスペンションの動作状態を早期に変更できる。
【0021】
前記第3~第15側面のいずれか1つに従う第16側面の自転車用制御装置において、前記入力部は、ペダルを含み、前記第1検出部は、前記ペダルのクランク軸まわりの移動を検出するペダル移動センサを含む。
上記第16側面によれば、ペダル移動センサによって検出されるペダルのクランク軸まわりの移動に応じて、サスペンションの動作状態を早期に変更できる。
【0022】
前記第3~第16側面のいずれか1つに従う第17側面の自転車用制御装置において、前記第1検出部は、前記前輪および前記後輪の少なくとも一方のタイヤへの圧力を検出するタイヤ圧力センサを含む。
上記第17側面によれば、タイヤ圧力センサによって検出されるタイヤへの圧力に応じて、サスペンションの動作状態を早期に変更できる。
【0023】
前記第1~第17側面のいずれか1つに従う第18側面の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記入力部に入力された前記駆動力によって前記後輪が回転していない状態において前記入力部、前記伝達機構、前記前輪、および、前記後輪の少なくとも1つが動いた場合、かつ、前記駆動力の大きさが所定の駆動力以上である場合、前記サスペンションの動作状態を変更する。
上記第18側面によれば、運転者の走行意思が反映される駆動力に応じてサスペンションの動作状態を変更することによって、好適にサスペンションの動作状態を変更できる。
【0024】
前記第18側面に従う第19側面の自転車用制御装置において、前記入力部に入力された前記駆動力を検出する駆動力センサをさらに含む。
上記第19側面によれば、駆動力センサによって、駆動力を好適に検出できる。
【0025】
本発明の第20側面に従う自転車用制御装置の一形態は、自転車の走行する路面状態を反映する情報に応じて前記自転車のサスペンションの動作状態を変更する制御部を備え、前記路面状態を反映する情報は、前記自転車のハンドル部に加わる衝撃、前記自転車のペダルに与えられる踏力の変動の不規則性、前記自転車のクランクに与えられる駆動力の変動の不規則性、前記自転車の車速の不規則性、前記自転車の少なくとも1つの車輪の角速度の不規則性、前記自転車のクランクの角速度の不規則性、および、前記少なくとも1つの車輪のタイヤへの圧力、のうちの少なくとも1つを含む。
上記第20側面によれば、サスペンションの動作状態を路面状態に適するように変更できるため、ユーザビリティに貢献できる。
【0026】
前記第20側面に従う第21側面の自転車用制御装置において、前記路面状態を反映する情報を検出する第2検出部をさらに備え、前記制御部は、前記第2検出部の検出結果に基づき前記サスペンションの動作状態を変更する。
上記第21側面によれば、第2検出部によって、路面状態を反映する情報を好適に検出できる。
【0027】
前記第1~21側面のいずれか1つに従う第22側面の自転車用制御装置において、前記サスペンションは、フロントサスペンションおよびリアサスペンションの少なくとも一方を含む。
上記第22側面によれば、フロントサスペンションおよびリアサスペンションの少なくとも一方の動作状態を好適に変更できる。
【0028】
本発明の第23側面に従う自転車用制御装置の一形態は、自転車の走行する路面状態を反映する情報および前記自転車の走行状態に関する情報の少なくとも一方に応じて前記自転車のサスペンションの動作状態を変更する制御部と、前記路面状態を反映する情報および前記走行状態に関する情報の少なくとも一方、および、前記サスペンションの動作状態とを関連付けた切替情報を記憶する記憶部と、を備え、前記制御部は、前記切替情報に応じて前記サスペンションの動作状態を変更し、外部からの入力に基づき前記切替情報を更新する。
上記第23側面によれば、路面状態および自転車の走行状態の少なくとも一方に好適なサスペンションの動作状態に変更できる。また、切替情報を搭乗者の好み等に応じた切替情報に更新できるため、ユーザビリティにより貢献できる。
【0029】
前記第23側面に従う第24側面の自転車用制御装置において、前記路面状態を反映する情報は、前記自転車のハンドル部に加わる衝撃、前記自転車のフロントフォークに加わる衝撃、前記自転車のフレームに加わる衝撃、前記自転車のペダルに与えられる踏力の変動の不規則性、前記自転車のクランクに与えられる駆動力の変動の不規則性、前記自転車の車速の不規則性、前記自転車の少なくとも1つの車輪の角速度の不規則性、前記自転車のクランクの角速度の不規則性、および、少なくとも1つの車輪のタイヤへの圧力のうちの少なくとも1つを含む。
上記第24側面によれば、サスペンションの動作状態を路面状態に適するように変更できるため、ユーザビリティに貢献できる。
【0030】
前記第24側面に従う第25側面の自転車用制御装置において、前記路面状態を反映する情報を検出する第2検出部をさらに備え、前記制御部は、前記第2検出部の検出結果に基づき前記サスペンションの動作状態を変更する。
上記第25側面によれば、第2検出部によって、路面状態を反映する情報を好適に検出できる。
【0031】
前記第23~第25側面のいずれか1つに従う第26側面の自転車用制御装置において、前記サスペンションは、フロントサスペンションおよびリアサスペンションの少なくとも一方を含み、前記切替情報は、前記路面状態を反映する情報および前記走行状態に関する情報の少なくとも一方と、前記フロントサスペンションの動作状態および前記リアサスペンションの動作状態の少なくとも一方とを含む。
上記第26側面によれば、フロントサスペンションおよびリアサスペンションの少なくとも一方の動作状態を好適に変更できる。
【0032】
前記第26側面に従う第27側面の自転車用制御装置において、前記サスペンションは、フロントサスペンションおよびリアサスペンションの両方を含み、前記切替情報は、前記路面状態を反映する情報および前記走行状態に関する情報の少なくとも一方と、前記フロントサスペンションの動作状態および前記リアサスペンションの動作状態の組み合わせとを含む。
上記第27側面によれば、フロントサスペンションおよびリアサスペンションの両方の動作状態を好適に変更できる。また、走行状況に応じてより細かい制御を行うことができる。
【0033】
前記第1~第27側面のいずれか1つに従う第28側面の自転車用制御装置において、前記サスペンションは、第1部分と、前記第1部分に嵌め込まれて前記第1部分と相対移動可能な第2部分とを含み、前記サスペンションの動作状態は、前記第1部分と前記第2部分との相対移動が規制されるロック状態と、前記第1部分と前記第2部分との相対移動が許容されるアンロック状態とを含む。
上記第28側面によれば、サスペンションのロック状態およびアンロック状態を好適に変更できる。
【0034】
前記第28側面に従う第29側面の自転車用制御装置において、前記アンロック状態は、第1アンロック状態と、前記第1アンロック状態よりも前記第1部分と前記第2部分とが相対移動しやすい第2アンロック状態とをさらに含む。
上記第29側面によれば、サスペンションのロック状態、第1アンロック状態、および、第2アンロック状態を好適に変更できる。より細かい制御を行うことができる。
【0035】
本発明の第30側面に従う自転車用制御装置の一形態は、ウェアラブルデバイスを制御する制御部を備え、前記ウェアラブルデバイスは、自転車の搭乗者の身体または着用物に取り付け可能な取付部、および、前記取付部に設けられ振動を発生させる振動部を備え、前記制御部は、前記自転車のサスペンションの動作状態、前記自転車の変速機の動作状態、前記自転車の走行を補充するアシストユニットの動作状態、および、前記自転車のアジャスタブルシートポストの動作状態の少なくとも1つと対応づけられた振動を前記振動部に発生させる。
上記第30側面によれば、サスペンションの動作状態、変速機の動作状態、アシストユニットの動作状態、および、アジャスタブルシートポストの動作状態の少なくとも1つを振動によって把握できるため、搭乗者の利便性が向上する。このため、ユーザビリティに貢献できる。
【0036】
前記第30側面に従う第31側面の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記自転車の搭乗者が操作可能な振動発生操作部が操作された場合、前記振動部に振動を発生させる。
上記第31側面によれば、搭乗者がサスペンションの動作状態、変速機の動作状態、アシストユニットの動作状態、および、アジャスタブルシートポストの動作状態の少なくとも1つを把握したいときに、これを把握することができる。
【0037】
前記第31側面に従う第32側面の自転車用制御装置において、前記ウェアラブルデバイスは、振動発生指示信号を受信する振動発生指示受信部をさらに含み、前記自転車用制御装置は、前記振動発生指示信号を送信する振動発生指示送信部をさらに含み、前記制御部は、前記振動発生操作部が操作された場合、前記振動発生指示信号を無線で前記振動発生指示受信部に送信する。
上記第32側面によれば、自転車用制御装置の配線が簡略化できる。
【0038】
本発明の第33側面に従う自転車用サスペンションシステムの一形態は、前記第1~32側面のいずれか1つに記載の自転車用制御装置と、前記サスペンションと、を備え、前記サスペンションは、前記サスペンションの動作によって発電する発電部と、前記発電部によって生じた電力を用いて動作状態を変更するアクチュエータと、を備える。
上記第33側面によれば、バッテリの消費電力を低下できる、または、バッテリを省略できる。
【0039】
本発明の第34側面に従う自転車用サスペンションシステムの一形態は、前記第1~32側面のいずれか1つに記載の自転車用制御装置と、前記自転車の搭乗者が操作可能なサスペンション操作部と、前記サスペンション操作部が操作されることによって発電する発電部と、前記発電部によって生じた電力を用いて、前記サスペンション操作部の操作に応じたサスペンション操作信号を送信するサスペンション操作信号送信部と、を備え、前記自転車用制御装置は、前記サスペンション操作信号を受信するサスペンション操作信号受信部をさらに備え、前記制御部は、前記サスペンション操作信号に基づいて、前記サスペンションの動作状態を変更する手動制御モードを実行可能である。
上記第34側面によれば、バッテリの消費電力を低下できる、または、バッテリを省略できる。このため、ユーザビリティに貢献できる。
【0040】
本発明の第35側面に従う自転車用サスペンションシステムの一形態は、前記第1~32側面のいずれか1つに記載の自転車用制御装置と、前記自転車の搭乗者が操作可能なサスペンション操作部と、前記サスペンション操作部の操作に応じたサスペンション操作信号を無線で送信するサスペンション操作信号送信部と、を備え、前記自転車用制御装置は、前記サスペンション操作信号送信部からの前記サスペンション操作信号を受信するサスペンション操作信号受信部をさらに備え、前記制御部は、前記サスペンション操作信号に基づいて前記サスペンションの動作状態を変更する手動制御モードを実行可能である。
上記第3側面によれば、自転車用サスペンションシステムの配線が簡略化できる。このため、ユーザビリティに貢献できる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の自転車用制御装置およびこれを備える自転車用サスペンションシステムユーザビリティに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】第1実施形態の自転車用サスペンションシステムを含む自転車の側面図。
図2図1のリアハブの部分断面図。
図3図2の3-3線に沿う断面図。
図4図1のフロントサスペンションの側面図。
図5図1のリアサスペンションの側面図。
図6図1の自転車用サスペンションシステムの電気的な構成を示すブロック図。
図7図4の制御部によって実行されるサスペンションの動作状態を変更する処理のフローチャート。
図8図4のウェアラブルデバイスの平面図。
図9図4の制御部によって実行されるウェアラブルデバイスを制御する処理のフローチャート。
図10】第2実施形態のリアハブの部分断面図。
図11】図10のリアハブを分解して示す側面図。
図12】第2実施形態の自転車用サスペンションシステムの電気的な構成を示すブロック図。
図13】第3実施形態の自転車用サスペンションシステムの電気的な構成を示すブロック図。
図14】自転車が、粗さが小さい路面を走行している場合の踏力の時間変化の一例を示すグラフ。
図15】自転車が、粗さが大きい路面を走行している場合の踏力の時間変化の一例を示すグラフ。
図16】第4実施形態の自転車用サスペンションシステムの電気的な構成を示すブロック図。
図17】第4実施形態の変形例の自転車用サスペンションシステムの電気的な構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(第1実施形態)
図1を参照して、自転車用サスペンションシステムおよび自転車用制御装置を搭載する自転車10について説明する。
自転車10は、前輪12、ドライブトレイン14、および、サスペンション16を備える。自転車10は、フレーム18、ハンドル部20、および、フロントフォーク22をさらに備える。自転車10には、自転車用サスペンションシステム60が搭載される。自転車用サスペンションシステム60は、サスペンション16を含んで構成される。
【0044】
フレーム18は、スイングアーム18Aとチェーンステー18Bを含む。ハンドル部20は、ステム20Aおよびハンドルバー20Bを備える。ステム20Aは、フロントフォーク22に着脱可能に接続される。ハンドルバー20Bは、搭乗者が操作可能に構成される。フロントフォーク22は、フレーム18に支持される。前輪12は、複数のスポーク12A、リム12B、およびタイヤ12Tを備える。前輪12の複数のスポーク12Aは、フロントハブ13のハブシェル(図示しない)に接続される。フロントハブ13は、フロント固定機構(図示しない)によってフロントフォーク22の端部において、回転可能に支持される。
【0045】
ドライブトレイン14は、入力部24、後輪26、および、伝達機構28を含む。
入力部24は、駆動力が入力される。入力部24は、ペダル24Aを含む。後輪26は、複数のスポーク26A、リム26B、およびタイヤ26Tを含む。後輪26の複数のスポーク26Aは、リアハブ38のハブシェル46(図2参照)と接続される。リアハブ38は、リア固定機構26Cによって、スイングアーム18Aのリアエンド部において、回転可能に支持される。リアハブ38には、リアスプロケット36が取り付けられる。後輪26には、入力部24に入力された駆動力が伝達される。
【0046】
伝達機構28は、入力部24に入力された駆動力を後輪26に伝達する。伝達機構28は、クランク30、フロントスプロケット32、チェーン34、リアスプロケット36、リアハブ38、および、リアディレーラ40を含む。
【0047】
クランク30は、クランク軸30Aおよび一対のクランクアーム30Bを含む。各クランクアーム30Bの一端には、クランク軸30Aが接続される。各クランクアーム30Bの他端には、それぞれペダル24Aが接続される。クランク軸30Aは、フレーム18に取り付けられたボトムブラケット42に回転可能に支持される。
【0048】
入力部24に入力された駆動力は、クランク30、フロントスプロケット32、チェーン34、リアスプロケット36、リアディレーラ40、および、リアハブ38を介して後輪26に伝達される。フロントスプロケット32は、クランク軸30Aに取り付けられる。
【0049】
チェーン34は、フロントスプロケット32、リアスプロケット36、および、リアディレーラ40のプーリ40Aに巻き掛けられる。フレーム18には、チェーンデバイス44が設けられる。チェーンデバイス44は、チェーン34がフロントスプロケット32から外れる方向への移動を規制する。チェーンデバイス44は、一例では、フレーム18のシートチューブに取り付けられ、フロントスプロケット32の近傍においてチェーン34の自転車10の幅方向の外側を覆う。
【0050】
図2および図3に示されるとおり、リアハブ38は、ハブシェル46と、支持体48と、ワンウェイクラッチ50と、を備える。ハブシェル46は、後輪26のリム26B(図1参照)と、スポーク26A(図1参照)によって連結される。支持体48は、リアスプロケット36(図1参照)を支持する。ハブシェル46は、スポーク26Aとの連結部を含むフランジ46Aを有する。
【0051】
ワンウェイクラッチ50は、ハブシェル46と支持体48の間に配される。ワンウェイクラッチ50は、ラチェット52と、ラチェット52に係合可能な爪体54と、を備える。ラチェット52は、ハブシェル46および支持体48の一方に設けられ、爪体54は、ハブシェル46および支持体48の他方に設けられる。図2および図3に示すリアハブ38では、ラチェット52は、ハブシェル46に設けられ、爪体54は、支持体48に設けられる。ラチェット52は、環状部を有し、内周部に複数の凹部52Aを含む。爪体54は、ラチェット52の径方向内側に配置される。爪体54の外周部には、複数の爪54Aが設けられる。爪54Aは、爪体54の外周部に回動可能に設けられる。爪体54はリアスプロケット36と一体に回転する。リアスプロケット36が正転する場合、爪54Aは、凹部52Aに向かって突出して凹部52Aに係合する。このため、爪体54は、凹部52Aを介してラチェット52をリアスプロケット36と一体に回転させる。後輪26の逆転によってハブシェル46が逆転する場合、ラチェット52の凹部52Aの斜面によって爪体54が径方向の内側に押さえつけられる。このため、ラチェット52と爪54Aとが係合せず、ラチェット52と爪体54との相対回転が許容される。なお、正転は、自転車10が前方に走行する場合の各回転体の回転方向と対応する。逆転は、自転車10が後方に走行する場合の各回転体の回転方向と対応する。
【0052】
図1に示されるとおり、リアスプロケット36は、複数のリアスプロケット36Aを含む。リアディレーラ40は、複数のリアスプロケット36Aのうちの1つのリアスプロケット36Aから、他のリアスプロケット36Aにチェーン34を掛け替える。リアディレーラ40は、2つのプーリ40Aを備えることが好ましい。
【0053】
図6に示されるとおり、自転車用サスペンションシステム60は、自転車用制御装置70と、サスペンション16とを備える。自転車用サスペンションシステム60は、自転車用サスペンションシステム60に含まれるコンポーネントに電力を供給するバッテリBをさらに備えることが好ましい。
【0054】
図4および図5に示されるとおり、サスペンション16は、第1部分16Aと、第1部分16Aに嵌め込まれて第1部分16Aと相対移動可能な第2部分16Bとを含む。サスペンション16は、油圧サスペンションであってもよく、エアサスペンションであってもよい。サスペンション16は、車輪W(図1参照)に加えられる衝撃を吸収する。車輪Wは、前輪12および後輪26を含む。サスペンション16の動作状態は、第1部分16Aと第2部分16Bとの相対移動が規制されるロック状態と、第1部分16Aと第2部分16Bとの相対移動が許容されるアンロック状態とを含む。アンロック状態は、第1アンロック状態と、第1アンロック状態よりも第1部分16Aと第2部分16Bとが相対移動しやすい第2アンロック状態とをさらに含む。サスペンション16は、アクチュエータ16Cをさらに含む。アクチュエータ16Cは、例えば、電気モータを含む。アクチュエータ16Cは、サスペンション16の動作状態を切り替える。なお、サスペンション16のロック状態は、車輪Wに強い力が加えられた場合に、第1部分16Aと第2部分16Bとがわずかに相対移動する状態を含み得る。
【0055】
サスペンション16は、フロントサスペンション62およびリアサスペンション64(図5参照)の少なくとも一方を含む。図1に示す自転車10のサスペンション16は、フロントサスペンション62およびリアサスペンション64の両方を含む。
【0056】
図1に示すフロントサスペンション62は、前輪12に加えられる衝撃を吸収する。フロントサスペンション62は、フロントフォーク22に設けられる。
図4に示されるとおり、フロントサスペンション62は、第1部分62Aと、第1部分62Aに嵌め込まれて第1部分62Aと相対移動可能な第2部分62Bとを含む。フロントサスペンション62の動作状態は、第1部分62Aと第2部分62Bとの相対移動が規制されるロック状態と、第1部分62Aと第2部分62Bとの相対移動が許容されるアンロック状態とを含む。アンロック状態は、第1アンロック状態と、第1アンロック状態よりも第1部分62Aと第2部分62Bとが相対移動しやすい第2アンロック状態とをさらに含む。フロントサスペンション62は、アクチュエータ62Cをさらに含む。アクチュエータ62Cは、例えば、電気モータを含む。アクチュエータ62Cは、フロントサスペンション62の動作状態を切り替える。なお、フロントサスペンション62のロック状態は、前輪12に強い力が加えられた場合に、第1部分62Aと第2部分62Bとがわずかに相対移動する状態を含み得る。
【0057】
図1に示すリアサスペンション64は、後輪26に加えられる衝撃を吸収する。リアサスペンション64は、フレーム18と後輪26を支持するスイングアーム18Aとの間に設けられる。
図5に示されるとおり、リアサスペンション64は、第1部分64Aと、第1部分64Aに嵌め込まれて第1部分64Aと相対移動可能な第2部分64Bとを含む。リアサスペンション64の動作状態は、第1部分64Aと第2部分64Bとの相対移動が規制されるロック状態と、第1部分64Aと第2部分64Bとの相対移動が許容されるアンロック状態とを含む。アンロック状態は、第1アンロック状態と、第1アンロック状態よりも第1部分64Aと第2部分64Bとが相対移動しやすい第2アンロック状態とをさらに含む。リアサスペンション64は、アクチュエータ64Cをさらに含む。アクチュエータ64Cは、例えば、電気モータを含む。アクチュエータ64Cは、リアサスペンション64の動作状態を切り替える。なお、リアサスペンション64のロック状態は、後輪26に強い力が加えられた場合に、第1部分64Aと第2部分64Bとがわずかに相対移動する状態を含み得る。
【0058】
図1および図6を参照して、自転車用制御装置70の構成について説明する。自転車用制御装置70は、制御部72を備える。自転車用制御装置70は、記憶部74、第1検出部76、駆動力センサ78、および、車速センサ80をさらに備える。
【0059】
第1検出部76は、入力部24、伝達機構28、前輪12、および、後輪26の少なくとも1つの動きを検出する。第1検出部76は、入力部24に入力された駆動力によって後輪26が回転していない状態における入力部24、伝達機構28、前輪12、および、後輪26の少なくとも1つの動きを検出可能である。第1検出部76は、回転センサ82、圧力センサ84、チェーン移動センサ86、ペダル移動センサ88、および、タイヤ圧力センサ90のうちの少なくとも1つを含む。
【0060】
入力部24、伝達機構28、前輪12、および、後輪26の少なくとも1つは回転部RAを含む。回転センサ82は、回転部RAの回転を検出する。回転センサ82は、プーリ回転センサ92、クランク回転センサ94、および、リアスプロケット回転センサ96のうちの少なくとも1つを含む。回転センサ82が、プーリ回転センサ92を含む場合、回転部RAは、リアディレーラ40のプーリ40Aを含む。回転センサ82が、クランク回転センサ94を含む場合、回転部RAは、クランク30を含む。回転センサ82が、リアスプロケット回転センサ96を含む場合、回転部RAは、リアスプロケット36を含む。回転部RAは、後輪26の回転が停止している状態から、入力部24に駆動力が入力されてから後輪26が入力部24に入力された駆動力によって回転を開始するまでの期間において、後輪26が回転を開始するよりも前に回転を開始する。
【0061】
プーリ回転センサ92は、リアディレーラ40のプーリ40Aの回転を検出する。プーリ回転センサ92は、例えば、プーリ40Aの回転軸に設けられ、プーリ40Aの回転位相を検出する。プーリ回転センサ92は、プーリ40Aに取り付けられる磁石の磁力を検出するものであってもよく、ロータリーエンコーダであってもよい。プーリ回転センサ92は、制御部72と有線または無線によって通信可能に接続されている。プーリ回転センサ92は、プーリ40Aの回転角度に応じた信号を制御部72に出力する。自転車用サスペンションシステム60が行う無線通信の規格の一例は、ANT+(登録商標)またはBluetooth(登録商標)である。
【0062】
クランク回転センサ94は、クランク30の回転を検出する。クランク回転センサ94は、例えば、クランク30の回転角度を検出する。一例では、クランク回転センサ94は、クランク30のフレーム18に対する回転を検出する。別の例では、クランク回転センサ94は、クランク30のボトムブラケット42に対する回転を検出する。クランク回転センサ94は、自転車10のフレーム18に取り付けられる。クランク回転センサ94は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含んで構成される。周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石が、クランク軸30Aまたはクランク軸30Aからフロントスプロケット32までの間の動力伝達経路に設けられる。磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを用いることによって、1つのセンサで、クランク30の回転速度およびクランク30の回転角度を検出することができ、構成および組立を簡略化することができる。クランク回転センサ94は、クランク30の回転角度に加えて、クランク30の回転速度を検出することもできる。クランク回転センサ94は、制御部72と有線または無線によって通信可能に接続されている。クランク回転センサ94は、クランク30の回転角度に応じた信号を制御部72に出力する。
【0063】
リアスプロケット回転センサ96は、リアスプロケット36の回転を検出する。リアスプロケット回転センサ96は、リアスプロケット36のフレーム18に対する回転を検出する。リアスプロケット回転センサ96は、例えば、フレーム18のうちのリアスプロケット36と対向する部分に設けられ、リアスプロケット36の回転位相を検出する。リアスプロケット回転センサ96は、リアスプロケット36に取り付けられる磁石の磁力を検出するものであってもよく、ロータリーエンコーダであってもよい。リアスプロケット回転センサ96は、制御部72と有線または無線によって通信可能に接続されている。リアスプロケット回転センサ96は、リアスプロケット36の回転角度に応じた信号を制御部72に出力する。
【0064】
圧力センサ84は、リアハブ38のラチェット52および爪体54の少なくとも一方における圧力を検出する。圧力センサ84は、例えば、ラチェット52の凹部52Aや、爪体54の爪54Aの先端に設けられる。圧力センサ84は、制御部72と有線または無線によって通信可能に接続されている。圧力センサ84は、凹部52Aや爪体54にかかる圧力に応じた信号を制御部72に出力する。ラチェット52および爪体54は、後輪26の回転が停止している状態から、入力部24に駆動力が入力されてから後輪26が入力部24に入力された駆動力によって回転を開始するまでの期間において、後輪26が回転を開始するよりも前にラチェット52および爪体54が係合する。
【0065】
チェーン移動センサ86は、チェーンデバイス44に取り付けられ、チェーン34の移動を検出する。チェーン移動センサ86は、例えば、チェーンデバイス44のうちのチェーン34と対向する部分に設けられ、チェーン34の移動を検出する。チェーン移動センサ86は、チェーン34に取り付けられる磁石の磁力を検出するものであってもよく、リニアエンコーダであってもよい。チェーン移動センサ86は、制御部72と有線または無線によって通信可能に接続されている。チェーン移動センサ86は、チェーン34の移動量に応じた信号を制御部72に出力する。チェーン34は、後輪26の回転が停止している状態または後輪26の回転が逆転している状態では、移動しない。チェーン34は、後輪26の回転が停止している状態から、入力部24に駆動力が入力されてから後輪26が入力部24に入力された駆動力によって回転を開始するまでの期間において、後輪26が回転を開始するよりも前に移動を開始する。
【0066】
ペダル移動センサ88は、ペダル24Aのクランク軸30Aまわりの移動を検出する。ペダル移動センサ88は、例えば、フレーム18のうちのペダル24Aと対向可能な部分に設けられ、ペダル24Aの回転位相を検出する。ペダル移動センサ88は、ペダル24Aに取り付けられる磁石の磁力を検出するものであってもよい。また、ペダル移動センサ88は、例えば、ペダル24Aに設けられ、フレーム18のうちのペダル24Aと対向可能な部分に取り付けられる磁石の磁力を検出するものであってもよい。ペダル移動センサ88は、制御部72と有線または無線によって通信可能に接続されている。ペダル移動センサ88は、ペダル24Aの回転角度に応じた信号を制御部72に出力する。ペダル24Aは、後輪26の回転が停止している状態から、入力部24に駆動力が入力されてから後輪26が入力部24に入力された駆動力によって回転を開始するまでの期間において、後輪26が回転を開始するよりも前に移動を開始する。
【0067】
タイヤ圧力センサ90は、前輪12および後輪26の少なくとも一方のタイヤ12T,26Tへの圧力を検出する。タイヤ圧力センサ90は、例えば、前輪12のリム12Bに取り付けられるタイヤ12Tおよび後輪26のリム26Bに取り付けられるタイヤ26Tの空気バルブの少なくとも一方に設けられる。タイヤ圧力センサ90は、タイヤ12T,26T内部の空気圧の変動を検出することによって、タイヤ12T,26Tへの圧力を検出する。後輪26の回転が停止している状態から、入力部24に駆動力が入力されてから後輪26が入力部24に入力された駆動力によって回転を開始するまでの期間において、後輪26が回転を開始するよりも前にタイヤ12T,26Tに加えられる圧力が大きくなる。
【0068】
車速センサ80は、後輪26の回転速度を検出する。車速センサ80は、有線または無線によって制御部72と電気的に接続されている。車速センサ80は、フレーム18のチェーンステー18Bに取り付けられる。車速センサ80は、制御部72と有線または無線によって通信可能に接続されている。車速センサ80は、後輪26に取り付けられる磁石Mと車速センサ80との相対位置の変化に応じた信号を制御部72に出力する。制御部72は、後輪26の回転速度に基づいて自転車10の車速を演算する。車速センサ80は、リードスイッチを構成する磁性体リード、または、ホール素子を含むことが好ましい。
【0069】
駆動力センサ78は、入力部24に入力された駆動力Tを検出する。駆動力センサ78は、駆動力Tに応じた信号を出力する。駆動力センサ78は、クランク軸30Aからフロントスプロケット32までの間の駆動力Tの伝達経路に設けられてもよく、クランク軸30Aまたはフロントスプロケット32に設けられてもよく、クランクアーム30Bまたはペダル24Aに設けられてもよい。駆動力センサ78は、例えば、歪センサ、光学センサ、および、圧力センサ等を用いて実現することができる。歪センサは、歪ゲージ、磁歪センサ、および、圧電センサを含む。駆動力センサ78は、クランクアーム30Bまたはペダル24Aに加えられる駆動力Tに応じた信号を出力するセンサであれば、いずれのセンサを採用することもできる。駆動力センサ78は、制御部72と有線または無線によって通信可能に接続されている。駆動力センサ78は、駆動力Tに応じた信号を制御部72に出力する。
【0070】
制御部72は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。制御部72は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。制御部72は、通信部をさらに含んでいてもよい。通信部は、例えば、電力線通信(PLC;Power Line Communication)を行うための通信回路を含む。制御部72は、各コンポーネントと別体で設けられてもよく、各コンポーネントのうちの1つに設けられてもよく、各コンポーネントのうちの複数に設けられてもよい。
【0071】
記憶部74は、不揮発性メモリを含む。記憶部74は、各コンポーネントと別体で設けられてもよく、各コンポーネントのうちの1つに設けられてもよく、各コンポーネントのうちの複数に設けられてもよい。記憶部74は、走行状態に関する情報と、サスペンション16の動作状態とを関連付けた切替情報を記憶する。切替情報は、テーブルであってもよく、マップであってもよい。走行状態に関する情報は、例えば、駆動力Tを含む。切替情報は、走行状態に関する情報と、フロントサスペンション62の動作状態およびリアサスペンション64の動作状態の少なくとも一方とを含む。サスペンション16は、フロントサスペンションおよびリアサスペンションの両方を含み、切替情報は、走行状態に関する情報と、フロントサスペンション62の動作状態およびリアサスペンション64の動作状態の組み合わせとを含む。表1は、記憶部74に記憶されるサスペンション16の動作状態と駆動力Tとが対応づけられた関係情報の一例を示す。第1駆動力T1、第2駆動力T2、および、第3駆動力T3については、T1>T2>T3の関係が成立する。第3駆動力T3は、例えば0である。
【0072】
【表1】
【0073】
制御部72は、入力部24に入力された駆動力Tによって後輪26が回転していない状態における入力部24、伝達機構28、前輪12、および、後輪26の少なくとも1つの動きに応じて、サスペンション16の動作状態を変更する。制御部72は、入力部24に入力された駆動力Tによって後輪26が回転していない状態において、入力部24に駆動力が入力されていない状態から入力部24に駆動力が入力された状態に変化した場合、入力部24、伝達機構28、前輪12、および、後輪26の少なくとも1つの動きに応じて、サスペンション16の動作状態を変更する。
【0074】
制御部72は、入力部24に入力された駆動力Tによって後輪26が回転していない状態において入力部24、伝達機構28、前輪12、および、後輪26の少なくとも1つが動いた場合、かつ、駆動力Tの大きさが所定の駆動力TA以上である場合、サスペンション16の動作状態を変更する。所定の駆動力TAは、例えば、搭乗者による自転車10の走行開始の意思を反映する駆動力Tが設定される。制御部72が表1に応じてサスペンション16を制御する場合、所定の駆動力TAは、第3駆動力T3未満かつ第4駆動力T4よりも大きい値にしてもよい。所定の駆動力TAを第3駆動力T3未満かつ第4駆動力T4よりも大きい値にすることによって、自転車10の走行開始時に駆動力Tが第3駆動力T3に達する前に、サスペンション16の動作状態の変更を開始することができる。
【0075】
制御部72は、第1検出部76の検出結果に基づきサスペンション16の動作状態を変更する。第1検出部76が回転センサ82を含む場合、制御部72は、回転部RAが停止または逆転している状態から正転した状態に変化した場合に、サスペンション16の動作状態を変更する。第1検出部76がプーリ回転センサ92を含む場合、制御部72は、プーリ40Aが停止または逆転している状態から正転した状態に変化した場合に、サスペンション16の動作状態を変更する。第1検出部76がクランク回転センサ94を含む場合、制御部72は、クランク30が停止または逆転している状態から正転した状態に変化した場合に、サスペンション16の動作状態を変更する。第1検出部76がリアスプロケット回転センサ96を含む場合、制御部72は、リアスプロケット36が停止または逆転している状態から正転した状態に変化した場合に、サスペンション16の動作状態を変更する。
【0076】
制御部72は、第1検出部76の検出結果に基づき、自転車10の走行が開始されたと判定した場合、サスペンション16の動作状態を変更する。表1の例では、制御部72は、第1検出部76の検出結果に基づき、自転車10の走行が開始されたと判定した場合、リアサスペンション64の動作状態を第2アンロック状態から第1アンロック状態に変更する。
【0077】
図7を参照して、サスペンション16の動作状態を変更する制御について説明する。制御部72は、電源が供給されると処理を開始して図7に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部72は電源が供給されている限り、所定周期ごとにステップS11からの処理を実行する。なお、以下では、第1検出部76が検出する入力部24、伝達機構28、前輪12、および、後輪26の少なくとも1つの動きを、検出対象の動きと記載する。
【0078】
制御部72は、ステップS11において、後輪26が入力部24に入力された駆動力Tによって回転していないか否かを判定する。具体的には、制御部72は、車速センサ80によって検出される後輪26の回転速度が0(あるいは実質的に0)の場合、入力部24に入力された駆動力Tによって後輪26が回転していないと判定する。制御部72は、後輪26の回転速度が0よりも小さい場合、すなわち、後輪26が逆転している場合にも、入力部24に入力された駆動力Tによって後輪26が回転していないと判定してもよい。また、制御部72は、後輪26の回転速度が0よりも大きく、かつクランク30の回転およびペダル24Aの移動の少なくとも一方が検出されていない場合、すなわち自転車10がコースティング状態にある場合にも、入力部24に入力された駆動力Tによって後輪26が回転していないと判定してもよい。制御部72は、入力部24に入力された駆動力Tによって後輪26が回転していると判定した場合、処理を終了する。制御部72は、入力部24に入力された駆動力Tによって後輪26が回転していないと判定した場合、ステップS12に移行する。
【0079】
制御部72は、ステップS12において、第1検出部76の検出対象が動いたか否かを判定する。制御部72は、第1検出部76の検出対象が動いていないと判定した場合、処理を終了する。制御部72は、第1検出部76の検出対象が動いたと判定した場合、ステップS13に移行する。
【0080】
制御部72は、ステップS13において、第1検出部76の検出対象が動いた後に検出された駆動力Tが所定の駆動力TA以上か否かを判定する。制御部72は、駆動力Tが所定の駆動力TA未満と判定した場合、処理を終了する。制御部72は、駆動力Tが所定の駆動力TA以上と判定した場合、ステップS14に移行する。制御部72は、ステップS14において、サスペンション16の動作状態を変更し、処理を終了する。
【0081】
自転車用制御装置70の作用について説明する。
表1の例では、制御部72は、後輪26の駆動が停止している状態では、リアサスペンション64の動作状態を第2アンロック状態に設定し、後輪26が停止した状態において第1検出部76の検出対象が動いた場合に、リアサスペンション64の動作状態を第1アンロック状態に変更する。このため、後輪26が回転を開始し、自転車10が走行を開始する前に、サスペンション16を自転車10の走行開始時に好適な動作状態への変更を開始することができる。
【0082】
図6に示される自転車用サスペンションシステム60は、振動発生操作部66をさらに備える。振動発生操作部66は、自転車10の搭乗者が操作可能である。振動発生操作部66は、一例では、ハンドル部20に取り付けられる。振動発生操作部66は、例えば、ボタンを含む。振動発生操作部66は、ハンドル部20(図1参照)に直接的に設けられてもよく、サイクルコンピュータに設けられてもよい。
【0083】
自転車用制御装置70は、振動発生指示送信部98をさらに含む。振動発生指示送信部98は、振動発生指示信号を送信する。振動発生指示送信部98は、無線信号を送信する。制御部72は、ウェアラブルデバイス100を制御する。振動発生指示送信部98は、ウェアラブルデバイス100に振動発生指示信号を送信することによって、ウェアラブルデバイス100を制御する。
【0084】
図6および図8に示されるとおり、ウェアラブルデバイス100は、取付部102および振動部104を備える。ウェアラブルデバイス100は、振動発生指示信号を受信する振動発生指示受信部106をさらに含む。振動発生指示受信部106は、無線信号を受信する。
【0085】
取付部102は、自転車10の搭乗者の身体または着用物に取り付け可能である。図6に示すウェアラブルデバイス100の取付部102は、イヤークリップを含み、搭乗者の耳に取り付け可能である。取付部102は、バンドを含み、搭乗者の手首に取り付け可能であってもよい。取付部102は、搭乗者の着用物に取り付け可能であってもよい。着用物は、例えば、衣服およびヘルメット等を含む。振動部104は、取付部102に設けられ振動を発生させる。振動部104は、例えば、スピーカを含み、可聴域の振動を発生させる。
【0086】
制御部72は、自転車10のサスペンション16の動作状態と対応づけられた振動を振動部104に発生させる。制御部72は、振動発生操作部66が操作された場合、振動部104に振動を発生させる。制御部72は、振動発生操作部66が操作された場合、振動発生指示信号を無線で振動発生指示受信部106に送信する。振動部104が発生する自転車10のサスペンション16の動作状態と対応づけられた振動の一例は、例えば音声を含む。例えば、フロントサスペンション62がロック状態かつリアサスペンション64が第1アンロック状態の場合、振動部104は、「フロントはロックです。リアは第1アンロックです」という音声を出力する。または、振動部104は、予めサスペンション16の動作状態と対応づけられた報知音を出力する。この場合、サスペンション16の各動作状態に対して、音の回数、長さ、および、周波数の少なくとも1つが互いに異なる報知音が対応づけられている。
【0087】
図9を参照して、サスペンション16の動作状態を報知する制御について説明する。制御部72は、電源が供給されると処理を開始して図9に示すフローチャートのステップS21に移行する。制御部72は電源が供給されている限り、所定周期ごとにステップS21からの処理を実行する。
【0088】
制御部72は、ステップS21において、振動発生操作部66が操作されたか否かを判定する。制御部72は、例えば、振動発生操作部66が操作されて、振動発生操作部66からの信号が入力された場合、振動発生操作部66が操作されたと判定する。制御部72は、振動発生操作部66が操作されていないと判定した場合、処理を終了する。制御部72は、振動発生操作部66が操作されたと判定した場合、ステップS22に移行する。
【0089】
制御部72は、ステップS22において、サスペンション16の動作状態を取得し、ステップS23に移行する。制御部72は、ステップS23において、ステップS22において取得したサスペンション16の動作状態と対応づけられた振動発生指示信号を送信し、処理を終了する。
【0090】
(第2実施形態)
図10図12を参照して、第2実施形態の自転車用制御装置70Aについて説明する。第2実施形態の自転車用制御装置70Aは、リアハブ38に代えてリアハブ138を含む自転車10に搭載される点、および、リアハブ138がリア固定機構126Cによって、スイングアーム18Aのリアエンド部において、回転可能に支持される点以外は第1実施形態の自転車用制御装置70と同様であるので、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0091】
図10および図11に示されるとおり、リアハブ138は、ハブシェル146と、支持体148と、ワンウェイクラッチ150と、を備える。ハブシェル146は、後輪26のリム26B(図1参照)と、スポーク26A(図1参照)によって連結される。支持体148は、リアスプロケット36(図1参照)を支持する。ハブシェル146は、スポーク26Aとの連結部を含むフランジ146Aを有する。
【0092】
ワンウェイクラッチ150は、ハブシェル146と支持体148の間に配される。ワンウェイクラッチ150は、ディスク形状の第1ラチェットメンバ152と、ディスク形状の第2ラチェットメンバ154と、を備える。
【0093】
第1ラチェットメンバ152は、ハブシェル146と係合する。第1ラチェットメンバ152は、第1ラチェット歯152Bが形成される第1面152Aを有する。
第2ラチェットメンバ154は、支持体148と係合する。第2ラチェットメンバ154は、第2ラチェット歯154Bが形成される第2面154Aを有する。第2ラチェット歯154Bは、第1ラチェット歯152Bと係合することによって第1ラチェットメンバ152に駆動力Tを伝達する。第2ラチェットメンバ154は、第1ラチェットメンバ152と相対移動可能である。第1ラチェットメンバ152および第2ラチェットメンバ154の一方は、リアハブ138の回転軸Cと平行な方向に移動する。
【0094】
支持体148のリアハブ138の回転軸Cと平行な方向の一方の端部には、第1ヘリカルスプライン148Aが形成されている。第2ラチェットメンバ154の内周部には、第1ヘリカルスプライン148Aと係合する第2ヘリカルスプライン154Cが形成されている。入力部24(図1参照)に入力された駆動力Tによって支持体148が正転した場合、第2ラチェットメンバ154は、第1ヘリカルスプライン148Aに沿って回転軸Cと平行な方向に移動し、第2ラチェット歯154Bが第1ラチェット歯152Bと係合する。これによって、第2ラチェットメンバ154の回転が第1ラチェットメンバ152に伝達され、ハブシェル146を回転させる。他方、後輪26(図1参照)が逆転した場合、第2ラチェットメンバ154は、第1ヘリカルスプライン148Aに沿って回転軸Cと平行な方向に移動し、第2ラチェット歯154Bが第1ラチェット歯152Bから離れる。これによって、第1ラチェットメンバ152の回転が第2ラチェットメンバ154に伝達されない。
【0095】
図12に示されるとおり、第1検出部76は、ディスクラチェット移動センサ84Aを含む。ディスクラチェット移動センサ84Aは、第1ラチェットメンバ152と第2ラチェットメンバ154との相対移動を検出する。ディスクラチェット移動センサ84Aは、第1ラチェットメンバ152および第2ラチェットメンバ154の一方のリアハブ138の回転軸Cと平行な方向の移動を検出する。ディスクラチェット移動センサ84Aは、例えば、後輪26のリア固定機構126Cに設けられる。ディスクラチェット移動センサ84Aは、第2ラチェットメンバ154に取り付けられる磁石の磁力を検出するものであってもよく、リニアエンコーダであってもよい。ディスクラチェット移動センサ84Aは、制御部72と有線または無線によって通信可能に接続されている。ディスクラチェット移動センサ84Aは、第2ラチェットメンバ154の位置に応じた信号を制御部72に出力する。
【0096】
(第3実施形態)
図1および図13図15を参照して、第3実施形態の自転車用制御装置70Bについて説明する。第3実施形態の自転車用制御装置70Bは、第2検出部108の検出結果に基づいてサスペンション16を制御する点以外は第1実施形態の自転車用制御装置70と同様であるので、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0097】
図1および図13を参照して、自転車用制御装置70Bの構成について説明する。
自転車用制御装置70Bは、制御部72および記憶部74を備える。自転車用制御装置70Aは、第2検出部108をさらに備える。
制御部72は、自転車10の走行する路面状態を反映する情報に応じてサスペンション16の動作状態を変更する。路面状態を反映する情報は、ハンドル部20に加わる衝撃、ペダル24Aに与えられる踏力の変動の不規則性、クランク30に与えられる駆動力Tの変動の不規則性、車速の不規則性、少なくとも1つの車輪Wの角速度の不規則性、クランク30の角速度の不規則性、および、少なくとも1つの車輪Wのタイヤ12T,26Tへの圧力、のうちの少なくとも1つを含む。
【0098】
第2検出部108は、路面状態を反映する情報を検出する。第2検出部108は、自転車10に加わる衝撃、ペダル24Aに与えられる踏力、クランク30に与えられる駆動力T、車速、少なくとも1つの車輪Wの角速度、および、少なくとも1つの車輪Wのタイヤ12T,26Tへの圧力のうちの少なくとも1つを検出する。路面状態を反映する情報が自転車10に加わる衝撃を含む場合、第2検出部108は、衝撃センサ110を含む。路面状態を反映する情報がペダル24Aに与えられる踏力を含む場合、第2検出部108は、踏力センサ112を含む。路面状態を反映する情報がクランク30に与えられる駆動力Tを含む場合、第2検出部108は、駆動力センサ78を含む。路面状態を反映する情報が車速を含む場合、第2検出部108は、車速センサ80を含む。路面状態を反映する情報が少なくとも1つの車輪Wの角速度を含む場合、第2検出部108は、車速センサ80を含む。路面状態を反映する情報が少なくとも1つの車輪Wのタイヤ12T,26Tへの圧力を含む場合、第2検出部108は、タイヤ圧力センサ90を含む。
【0099】
衝撃センサ110は、例えばハンドル部20に設けられる。衝撃センサ110は、例えば、ジャイロセンサを含む。衝撃センサ110は、制御部72と有線または無線によって通信可能に接続されている。衝撃センサ110は、自転車10に加わる衝撃に応じた信号を制御部72に出力する。
【0100】
踏力センサ112は、ペダル24Aに設けられる。踏力センサ112は、ペダル24Aの歪みを検出する。踏力センサ112は、制御部72と有線または無線によって通信可能に接続されている踏力センサ112は、ペダル24Aに与えられる踏力に応じた信号を制御部72に出力する。ペダル24Aに与えられる踏力と、クランク30に与えられる駆動力Tとは対応している。このため、踏力センサ112を省略し、駆動力センサ78の検出結果に基づき、制御部72がペダル24Aに与えられる踏力を計算してもよい。
【0101】
制御部72は、第2検出部108の検出結果に基づきサスペンション16の動作状態を変更する。制御部72は、自転車10の走行する路面状態を反映する情報および自転車10の走行状態に関する情報の少なくとも一方に応じてサスペンション16の動作状態を変更する。
【0102】
記憶部74は、路面状態を反映する情報および走行状態に関する情報の少なくとも一方と、サスペンション16の動作状態とを関連付けた切替情報を記憶する。走行状態に関する情報は、例えば、駆動力Tを含む。切替情報は、路面状態を反映する情報および走行状態に関する情報の少なくとも一方と、フロントサスペンション62の動作状態およびリアサスペンション64の動作状態の少なくとも一方とを含む。サスペンション16は、フロントサスペンションおよびリアサスペンションの両方を含み、切替情報は、路面状態を反映する情報および走行状態に関する情報の少なくとも一方と、フロントサスペンション62の動作状態およびリアサスペンション64の動作状態の組み合わせとを含む。路面状態は、路面の粗さを含む。路面の凹凸が大きく自転車10に加わる衝撃が大きいほど、路面は粗くなる。
【0103】
路面状態を反映する情報がハンドル部20に加わる衝撃を含む場合、制御部72は、例えば、ハンドル部20の速度または加速度が第1の所定値以上の場合、路面の粗さが大きいと判定する。または、制御部72は、第1の所定期間においてハンドル部20が複数の異なる方向に移動した場合、路面の粗さが大きいと判定する。
【0104】
路面状態を反映する情報がペダル24Aに与えられる踏力の変動の不規則性を含む場合、制御部72は、例えば、第2の所定期間において踏力の変化量が第2の所定値を超えた場合、路面の粗さが大きいと判定する。第2の所定期間は、クランク30が上死点または下死点から上死点と下死点との中間角に変化するまで、および、上死点と下死点との中間角から上死点または下死点に変化するまでの期間よりも小さいことが好ましい。第2の所定値は、クランク30が上死点または下死点から上死点と下死点との中間点までに変化するまでの期間における踏力の変化量よりも小さいことが好ましい。図14は、路面の粗さが小さい場合の踏力の時間変化の一例を示し、図15は、路面の粗さが大きい場合の踏力の時間変化の一例を示す。
【0105】
路面状態を反映する情報がクランク30に与えられる駆動力Tの変動の不規則性を含む場合、制御部72は、例えば、第3の所定期間において駆動力Tの変化量が第3の所定値を超えた場合、路面の粗さが大きいと判定する。第3の所定期間は、クランク30が上死点または下死点から上死点と下死点との中間角に変化するまで、および、上死点と下死点との中間角から上死点または下死点に変化するまでの期間よりも小さいことが好ましい。第3の所定値は、クランク30が上死点または下死点から上死点と下死点との中間点までに変化するまでの期間における駆動力Tの変化量よりも小さいことが好ましい。路面の粗さが小さい場合、駆動力Tは図14の踏力と同様の時間変化を示す。路面の粗さが大きい場合、駆動力Tは図15の踏力と同様の時間変化を示す。
【0106】
路面状態を反映する情報が車速の場合、制御部72は、例えば、第4の所定期間において車速の変化量が第4の所定値を超えた場合、路面の粗さが大きいと判定する。制御部72は、第4の所定期間において、車速の加速度が0よりも大きい値から0以下になった後、再び0よりも大きい値に変化した場合、路面の粗さが大きいと判定してもよい。
【0107】
路面状態を反映する情報が少なくとも1つの車輪Wの角速度の不規則性の場合、制御部72は、例えば、第5の所定期間において車輪Wの角速度の変化量が第5の所定値を超えた場合、路面の粗さが大きいと判定する。制御部72は、第5の所定期間において、車輪Wの角加速度の加速度が0よりも大きい値から0以下になった後、再び0よりも大きい値に変化した場合、路面の粗さが大きいと判定してもよい。
【0108】
路面状態を反映する情報が少なくとも1つの車輪Wのタイヤ12T,26Tへの圧力の場合、制御部72は、例えば、第6の所定期間においてタイヤ12T,26Tへの圧力の変化量が第6の所定値を超えた場合、路面の粗さが大きいと判定する。制御部72は、第6の所定期間において、タイヤ12T,26Tへの圧力が増加と減少を繰り返す場合、路面の粗さが大きいと判定してもよい。
【0109】
切替情報は、例えば、路面の粗さが比較的大きい場合、サスペンション16の状態がアンロック状態と対応させ、路面の粗さが比較的小さい場合、サスペンション16の状態がロック状態となるように設定されている。表2は、切替情報の一例を示す。
【0110】
【表2】
【0111】
(第4実施形態)
図16を参照して、第4実施形態の自転車用制御装置70Cについて説明する。第4実施形態の自転車用制御装置70Cは、制御部72がサスペンション操作部からの無線信号によってサスペンション16を制御する点以外は第1実施形態の自転車用制御装置70と同様であるので、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0112】
自転車用サスペンションシステム60Aは、自転車用制御装置70Cと、サスペンション16とを備える。自転車用サスペンションシステム60Aは、サスペンション操作部68Aと、サスペンション操作信号送信部68Bと、をさらに備える。
【0113】
サスペンション操作部68Aは、自転車10の搭乗者が操作可能である。サスペンション操作部68Aは、例えば、ハンドル部20(図1参照)に設けられる。サスペンション操作部68Aは、ハンドル部20に直接的に設けられてもよく、サイクルコンピュータに設けられてもよい。
【0114】
サスペンション操作信号送信部68Bは、サスペンション操作部68Aの操作に応じたサスペンション操作信号を無線で送信する。サスペンション操作信号送信部68Bは、サスペンション操作部68Aと電気的に接続されている。サスペンション操作信号送信部68Bは、サスペンション操作部68Aと同一のハウジングに設けられてもよく、サスペンション操作部68Aと別体に設けられて、サスペンション操作部68Aと電線で接続されてもよい。
【0115】
自転車用制御装置70Cは、サスペンション操作信号送信部68Bからのサスペンション操作信号を受信するサスペンション操作信号受信部114をさらに備える。制御部72は、サスペンション操作信号に基づいてサスペンション16の動作状態を変更する手動制御モードを実行可能である。制御部72は、サスペンション操作信号受信部114にサスペンション操作信号が入力された場合、サスペンション16の動作状態を変更する。手動制御モードは、オンとオフとを切り替え可能に構成されていてもよい。手動制御モードがオフの場合には、制御部72は、各種センサの出力に応じてサスペンション16を制御する自動制御モードを実行する。自動制御モードによって実行される処理は、例えば、第1実施形態の図7に示す処理を含む。制御部72は、手動制御モードがオンの場合に、自動制御モードを実行しないようにしてもよい。
【0116】
(変形例)
上記実施形態に関する説明は、本発明に従う自転車用制御装置およびこれを備える自転車用サスペンションシステムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う自転車用制御装置およびこれを備える自転車用サスペンションシステムは、例えば以下に示される上記実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0117】
・第1または第2実施形態に、第3実施形態および第4実施形態の少なくとも一方の構成を組み合わせることもできる。
図7の処理において、ステップS13の判定処理を省略することもできる。この場合、制御部72は、駆動力Tの大きさに限らず、第1検出部76の検出対象が動いた場合には、サスペンション16の動作状態を変更する。
【0118】
・第3実施形態に、第4実施形態の構成を組み合わせることもできる。
・第3実施形態において、切替情報を外部からの入力に応じて更新されないようにしてもよい。
・第3実施形態の構成および第4実施形態の構成を含む自転車用制御装置において、制御部72は、切替情報を学習によって更新するようにしてもよい。例えば、制御部72は、手動制御モードにおいて、搭乗者がサスペンション16の動作状態を切り替えた場合の駆動力Tまたは路面状態とサスペンション16の動作状態とを対応づけて記憶部74に記憶する。制御部72は、記憶部74に記憶している駆動力Tまたは路面状態とになった場合に、駆動力Tまたは路面状態と対応づけられているサスペンション16の動作状態になるようにサスペンション16を制御する。
【0119】
・第3実施形態において、切替情報から自転車10の走行状態を省略することもできる。例えば、表3に示されるように、切替情報は、路面状態を反映する情報とサスペンション16の動作状態とを対応づけている。
【0120】
【表3】
【0121】
・第3実施形態において、制御部72は、切替情報に応じてサスペンション16の動作状態を変更し、外部からの入力に基づき切替情報を更新するようにしてもよい。外部からの入力は、例えば、パーソナルコンピュータおよびスマートフォン等からの入力を含む。この場合、路面状態を反映する情報は、自転車10のフロントフォーク22に加わる衝撃、および、自転車10のフレーム18に加わる衝撃の少なくとも一方を含んでいてもよい。自転車10のフロントフォーク22に加わる衝撃は、フロントフォーク22に設けられる衝撃センサによって検出するようにしてもよい。自転車10のフレーム18に加わる衝撃は、フレーム18に設けられる衝撃センサによって検出するようにしてもよい。
【0122】
・第3実施形態において、路面状態を反映する情報は、ブレーキ装置による制動の有無、シートポストSの高さの変動、サスペンション16のストロークの長さ、および、フレーム18の変形の少なくとも1つを含んでもよい。路面状態を反映する情報がシートポストSの高さの変動を含む場合、自転車10は、図1に示すシートポストSの高さを変更できるアジャスタブルシートポスト120を備えることが好ましい。フレーム18の変形は、例えば、スイングアーム18Aのピボット軸まわりの移動による変形を含む。路面状態を反映する情報がフレーム18の変形を含む場合、スイングアーム18Aのピボット軸まわりの移動を検出するセンサによって、フレーム18の変形を検出する。
【0123】
・第4実施形態において、サスペンション16が発電部を備えるようにしてもよい。例えば、図17に示すサスペンション160は、サスペンション160の動作によって発電する発電部160Dと、発電部160Dによって生じた電力を用いて動作状態を変更するアクチュエータ160Cと、を備える。この変形例では、制御部72およびサスペンション操作信号受信部114は、サスペンション160に設けられてもよい。サスペンション160は、フロントサスペンション162およびリアサスペンション164の少なくとも一方を含む。フロントサスペンション162は、フロントサスペンション162の動作によって発電する発電部162Dと、発電部162Dによって生じた電力を用いて動作状態を変更するアクチュエータ162Cと、を備える。リアサスペンション164は、リアサスペンション164の動作によって発電する発電部164Dと、発電部164Dによって生じた電力を用いて動作状態を変更するアクチュエータ164Cと、を備える。なお、サスペンション160が、フロントサスペンション162およびリアサスペンション164の両方を含む場合、フロントサスペンション162の発電部162Dおよびリアサスペンション164の発電部164Dのいずれか一方は省略されてもよい。例えば、リアサスペンション164の発電部164Dは省略されてもよい。
【0124】
図17に示す変形例において、制御部72と電線で接続されるサスペンション操作部を設けることもできる。制御部72は、電線で接続されるサスペンション操作部が操作された場合、サスペンション16の動作状態を変更する。電線で接続されるサスペンション操作部は、サスペンション操作部68Aと一体に設けられてもよく、別体で設けられてもよい。電線で接続されるサスペンション操作部がサスペンション操作部68Aと一体に設けられる場合には、サスペンション操作信号を電線によって制御部72に送信するモードと、無線によって制御部72に送信するモードとを切り替えるスイッチを設けてもよい。
【0125】
・上記各実施形態において、振動部104は、搭乗者に接触するようにウェアラブルデバイス100に設けられてもよい。この場合、振動部104は、搭乗者の身体または着用物を振動させることによってサスペンション16の動作状態を搭乗者に知らせることができる。この場合、骨伝導によってサスペンション16の動作状態を搭乗者に知らせてもよい。
【0126】
・上記各実施形態において、制御部72は、サスペンション16の動作状態を変更する毎に、振動部104を振動させるようにしてもよい。
・上記各実施形態において、振動発生操作部66をウェアラブルデバイス100に設けてもよい。この場合、ウェアラブルデバイス100には、サスペンション16の動作状態に関する情報を要求する信号を制御部72に送信する送信部が設けられる。制御部72は、サスペンション16の動作状態に関する情報を要求する信号を受信した場合、振動発生信号をウェアラブルデバイス100に送信する。
【0127】
・上記各実施形態において、ウェアラブルデバイス100および振動発生指示送信部98を省略してもよい。
・上記各実施形態において、ウェアラブルデバイス100と自転車用制御装置70,70A,70B,70Cとを電線で接続してもよい。
【0128】
・上記各実施形態において、制御部72は、サスペンション16の動作状態に代えてまたは加えて、図1の自転車10の変速機116の動作状態、自転車10の走行を補充するアシストユニット118の動作状態、および、自転車10のアジャスタブルシートポスト120の動作状態の少なくとも1つと対応づけられた振動を振動部104に発生させてもよい。変速機116は、一例では、リアディレーラ40を含む。変速機116は、電気モータ116Aを含む。変速機116の動作状態は、電気モータ116Aの回転位相、リアディレーラ40のリンク機構、または、プレートの位置を含む。アシストユニット118は、電気モータ118Aを含む。アシストユニット118の動作状態は、駆動力Tに対する電気モータ118Aの出力トルクの比率の異なる複数の状態を含む。アジャスタブルシートポスト120は、アクチュエータ120Aを含む。アジャスタブルシートポスト120の動作状態は、シートポストSの高さ位置を含む。
【0129】
・上記各実施形態において、制御部72は、フロントサスペンション62およびリアサスペンション64の一方のみを制御するようにしてもよい。
・上記各実施形態において、自転車10からフロントサスペンション62およびリアサスペンション64の一方を省略してもよい。この場合、制御部72は、フロントサスペンション62およびリアサスペンション64の他方のみを制御する。
【0130】
・制御部72は、バッテリBのバッテリ残量に応じて、コンポーネントを順番に動作させないようにすることもできる。例えば、制御部72は、バッテリ残量が第1の残量以下になった場合、アジャスタブルシートポスト120を動作させないようにする。制御部72は、アジャスタブルシートポスト120を動作させないようにする前に、アジャスタブルシートポスト120をシートポストSが中間の高さ位置になるように停止させることが好ましい。制御部72は、バッテリ残量が第1の残量よりも少ない第2の残量以下になった場合、サスペンション16を動作させないようにする。制御部72は、サスペンション16を動作させないようにする前に第2のアンロック状態にすることが好ましい。制御部72は、バッテリ残量が第2の残量よりも少ない第3の残量以下になった場合、変速機116を動作させないようにする。制御部72は、変速機116を動作させないようにする前に、自転車10の変速比が変速機116によって実現できる変速比のうちの中間の変速比と対応する位置で変速機116の動作状態を停止させることが好ましい。この変形例において、バッテリ残量と、動作させないようにするコンポーネントとの対応づけを、ユーザが変更できるようにしてもよい。変速機116は、内装変速機を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0131】
RA…回転部、W…車輪、10…自転車、12…前輪、12T…タイヤ、18…フレーム、20…ハンドル部、14…ドライブトレイン、16A,62A,64A…第1部分、16B,62B,64B…第2部分、16C,62C,64C…アクチュエータ、24…入力部、24A…ペダル、26…後輪、26T…タイヤ、26A…スポーク、26B…リム、28…伝達機構、30…クランク、34…チェーン、36…リアスプロケット、38,138…リアハブ、40…リアディレーラ、40A…プーリ、42…ボトムブラケット、44…チェーンデバイス、46,146…ハブシェル、48,148…支持体、50,150…ワンウェイクラッチ、52…ラチェット、54…爪体、16…サスペンション、62…フロントサスペンション、64…リアサスペンション、60…自転車用サスペンションシステム、66…振動発生操作部、70…自転車用制御装置、72…制御部、74…記憶部、76…第1検出部、78…駆動力センサ、80…車速センサ、82…回転センサ、84…圧力センサ、84A…ディスクラチェット移動センサ、86…チェーン移動センサ、88…ペダル移動センサ、90…タイヤ圧力センサ、92…プーリ回転センサ、94…クランク回転センサ、96…リアスプロケット回転センサ、98…振動発生指示送信部、100…ウェアラブルデバイス、102…取付部、104…振動部、106…振動発生指示受信部、108…第2検出部、110…衝撃センサ、112…踏力センサ、68A…サスペンション操作部、68B…サスペンション操作信号送信部、114…サスペンション操作信号受信部、116…変速機、118…アシストユニット、120…アジャスタブルシートポスト、150…ワンウェイクラッチ、152…第1ラチェットメンバ、152A…第1面、152B…第1ラチェット歯、154…第2ラチェットメンバ、154A…第2面、154B…第2ラチェット歯。
図1
図2
図3
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図6
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図17