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特許7236816車両用動力装置および発電機付き車輪用軸受装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】車両用動力装置および発電機付き車輪用軸受装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 7/00 20060101AFI20230303BHJP
   B60B 27/00 20060101ALI20230303BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20230303BHJP
   F16D 65/12 20060101ALI20230303BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20230303BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20230303BHJP
   H02K 7/102 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
B60K7/00
B60B27/00 J
F16C19/18
F16D65/12 X
H02K7/14 C
H02K7/18 A
H02K7/102
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018097102
(22)【出願日】2018-05-21
(65)【公開番号】P2019018839
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2017138846
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】藪田 浩希
(72)【発明者】
【氏名】西川 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】川村 光生
(72)【発明者】
【氏名】石河 智海
(72)【発明者】
【氏名】矢田 雄司
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-153266(JP,A)
【文献】中国実用新案第205610442(CN,U)
【文献】特開平8-226475(JP,A)
【文献】特開平8-20318(JP,A)
【文献】特開2007-162923(JP,A)
【文献】特開2007-161032(JP,A)
【文献】特開2007-211809(JP,A)
【文献】特表2012-523817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0168193(US,A1)
【文献】特開2006-282158(JP,A)
【文献】特開2006-199107(JP,A)
【文献】特開2007-8441(JP,A)
【文献】特開2007-99106(JP,A)
【文献】特表2010-502494(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1323777(KR,B1)
【文献】特開2008-178225(JP,A)
【文献】特開2005-73364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 7/00
B60B 27/00
B60B 35/02
F16C 19/18
F16D 65/12
H02K 7/14
H02K 7/18
H02K 7/102
H02K 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定輪、およびハブフランジを有し前記固定輪に転動体を介して回転自在に支持されて前記ハブフランジに車両の車輪およびブレーキロータが取付けられる回転輪を有する車輪用軸受と、
前記固定輪に取付けられたステータ、および前記回転輪に取付けられたロータを有する発電機と、を備えた発電機付き車輪用軸受装置において、
前記ブレーキロータの一部が、前記発電機の半径方向外方に位置し、前記発電機の外周面に複数の凹凸部を備え、前記発電機がラジアルギャップ型であり、前記ブレーキロータにおける円筒部の内周面と、発電機ケースとなる回転ケースの外周面との間には、放熱性を高めるための環状隙間が設けられている発電機付き車輪用軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発電機付き車輪用軸受装置において、前記発電機は、前記ステータが前記車輪用軸受の外周に位置し、前記ロータが前記ステータの半径方向外方に位置するアウターロータモータであり、前記凹凸部が、前記ロータの外周面に設けられている発電機付き車輪用軸受装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の発電機付き車輪用軸受装置において、前記ブレーキロータに通気口が設けられている発電機付き車輪用軸受装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発電機付き車輪用軸受装置において、前記凹凸部がフィン形状から成る発電機付き車輪用軸受装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発電機付き車輪用軸受装置において、前記車輪用軸受が、前記車両の主駆動源と機械的に非連結である従動輪を支持する軸受である発電機付き車輪用軸受装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発電機付き車輪用軸受装置において、前記発電機は、給電されることによって前記従動輪を回転駆動可能な走行補助用の電動発電機である発電機付き車輪用軸受装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の発電機付き車輪用軸受装置において、前記発電機は、給電されることによって前記車輪を回転駆動可能な電動発電機である発電機付き車輪用軸受装置。
【請求項8】
固定輪、およびハブフランジを有し前記固定輪に転動体を介して回転自在に支持されて前記ハブフランジに車両の車輪およびブレーキロータが取付けられる回転輪を有する車輪用軸受と、
前記固定輪に取付けられたステータ、および前記回転輪に取付けられたモータロータを有する電動機と、を備えた車両用動力装置において、
前記ブレーキロータの一部が、前記電動機の半径方向外方に位置し、前記電動機の外周面に複数の凹凸部を備え、前記電動機がラジアルギャップ型であり、前記ブレーキロータにおける円筒部の内周面と、電動機ケースとなる回転ケースの外周面との間には、放熱性を高めるための環状隙間が設けられている車両用動力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、前輪駆動または後輪駆動などの車両において、モータ、内燃機関、またはこれらを組合せたハイブリッド形式の主駆動源とは別に設けられて、車両性能を向上させる車両用動力装置および発電機付き車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪用回転電動機の取付構造が提案されている(例えば、特許文献1)。
この取付構造では、車輪と一体的に回転するホイールハブと、このホイールハブを回転可能に支持する軸受と、この軸受のフランジ部を車輪側の部分に当接させて支持する軸受支持部材と、車体と車輪との間に取り付けられて前記軸受支持部材を支持する懸架装置とを備えている。回転電動機はフランジ部を備え、軸受と回転電動機とを一体に成形して車輪用回転電動機のフランジ部を共通化し、懸架部分を大きく改造することなく車体に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4348941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された構成では、車軸の軸方向にモータが突き出ており、車体取付部(ナックル部)の構造を変更する必要がある。また、モータトルクを向上させるために、モータ躯体の径方向寸法を大きくすると、モータ躯体が周辺の懸架装置と干渉するため、減速機を組み込むことが一般的である。
【0005】
そこで、本件出願人は、モータをブレーキロータ内に組み込み、モータの径方向寸法を確保し、取り付け部を大きく改造することなく、且つ、減速機を用いないダイレクトドライブシステムを提案している(特願2016-184295)。
【0006】
しかし、モータを稼働させると、鉄損および銅損によりモータが発熱すると共に、車両の制動時には、ブレーキロータとブレーキパッドの摩擦熱により、モータ周囲にも発熱源が存在する。ブレーキロータ内部にモータを組み込んだ構成では、放熱する手段が無く、モータの温度上昇によりコイル等の絶縁性能の劣化が早まりモータの異常の原因となる。磁石の熱減磁によるモータ性能の低下、およびコイルの減磁等を防ぐために、駆動の電流量を低下させる等の制限を行う必要があることから、モータ性能を十分に発揮できない。また、車軸用軸受も長時間高温に曝されることにより、潤滑剤の劣化および金属材料の強度の低下等を招く。
【0007】
この発明の目的は、ブレーキロータ内に構成された電動機または発電機の熱を効率的に放出することで、電動機または発電機の異常等を防ぐと共に、ブレーキ性能の低下、軸受内の潤滑剤の劣化、および軸受材料の強度低下をそれぞれ防ぐことができる車両用動力装置および発電機付き車輪用軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の発電機付き車輪用軸受装置は、固定輪、およびハブフランジを有し前記固定輪に転動体を介して回転自在に支持されて前記ハブフランジに車両の車輪およびブレーキロータが取付けられる回転輪を有する車輪用軸受と、 前記固定輪に取付けられたステータ、および前記回転輪に取付けられたロータを有する発電機と、を備えた発電機付き車輪用軸受装置において、
前記ブレーキロータの一部が、前記発電機の半径方向外方に位置し、
前記ブレーキロータの内周面と前記発電機の外周面とのいずれか一方または両方に、複数の凹凸部を備える。
【0009】
この構成によると、発電機のロータが、車輪用軸受の回転輪に取付けられたダイレクトドライブ形式であるため、発電機の構成が簡易で省スペースで済み、車両重量の増加も抑えられる。特に、発電機の全体がブレーキロータの前記外周部よりも小径であり、且つ、発電機におけるハブフランジへの取付部を除く全体が、車輪用軸受のインボード側の車体取り付け面と、ハブフランジとの間の軸方向範囲に位置する。このため、ブレーキロータに摩擦パッドを押し付けるブレーキキャリパが発電機と干渉せず、発電機の設置によってブレーキの設置が妨げられることもない。
【0010】
またブレーキロータの内周面と発電機の外周面とのいずれか一方または両方に、発電機を冷却する凹凸部を備える。この凹凸部により、発熱源であるブレーキロータまたは発電機の表面積を増加させたうえで、回転輪の回転により空気の流れを生み出し、ブレーキロータまたは発電機の表面の熱交換を生じ易くする。したがって、発電機の昇温に起因する異常を防ぐことができる。また、ブレーキロータ内で発生した熱が、前記空気の流れによりブレーキロータ外に放出される。ブレーキの動作温度を下げることで、ブレーキ性能を維持することができる。また、車輪用軸受は長時間高温に曝されることを未然に防ぐことができるため、軸受内の潤滑剤の劣化、および軸受材料の強度低下をそれぞれ防ぐことができる。
【0011】
前記発電機は、前記ステータが前記車輪用軸受の外周に位置し、前記ロータが前記ステータの半径方向外方に位置するアウターロータモータであり、モーメント発生位置が外径側となり、インナーロータ形に比べて発電効率がよい。前記凹凸部は、前記ブレーキロータの内周面と前記ロータの外周面とのいずれか一方または両方に設けられていてもよい。特に、ロータの外周面に凹凸部を設ける場合、インナーロータ形よりアウターロータ形の方が空気の循環が行い易い構造となる。
【0012】
前記ブレーキロータに通気口が設けられていてもよい。この場合、ブレーキロータ内の空気が循環し易くなる。つまりブレーキロータ内で発生した熱が、凹凸部による空気の流れにより、通気口を通してブレーキロータ外に放出される。
【0013】
前記凹凸部がフィン形状から成るものであってもよい。この場合、空気を攪拌し、空気の流れを強く生じさせることができるため、冷却効果を高めることができる。前記凹凸部が軸流式のフィン形状から成る場合、空気を連続的に圧縮することで、冷却効果をさらに高めることができる。
【0014】
前記車輪用軸受が、前記車両の主駆動源と機械的に非連結である従動輪を支持する軸受であってもよい。この場合、発電機が簡易で省スペースで済む構成であるため、一般的な車輪用軸受およびブレーキの構成を大きく変えることなく、この発電機を従動輪に簡単に設置することができる。
【0015】
前記発電機は、給電されることによって前記従動輪を回転駆動可能な走行補助用の電動発電機であってもよい。この場合、車両の走行状態等に併せて電動発電機を駆動させることで、主駆動源を効率が良くなる回転数・トルクとなるように駆動でき、車両の走行性能を向上させることができる。
【0016】
前記発電機は、給電されることによって前記車輪を回転駆動可能な電動発電機であってもよい。この場合、車両の走行状態等に併せて電動発電機を駆動させることで、車両の走行性能を向上させることができる。例えば、従動輪および駆動輪をそれぞれ電動発電機で駆動することで、車両の走行性能をさらに向上することができる。
【0017】
この発明の車両用動力装置は、固定輪、およびハブフランジを有し前記固定輪に転動体を介して回転自在に支持されて前記ハブフランジに車両の車輪およびブレーキロータが取付けられる回転輪を有する車輪用軸受と、
前記固定輪に取付けられたステータ、および前記回転輪に取付けられたモータロータを有する電動機と、を備えた車両用動力装置において、
前記ブレーキロータの一部が、前記電動機の半径方向外方に位置し、
前記ブレーキロータの内周面と前記電動機の外周面とのいずれか一方または両方に、複数の凹凸部を備える。
【0018】
この構成によると、車両の走行状態等に併せて電動機を駆動させることで、主駆動源を効率が良くなる回転数・トルクとなるように駆動でき、車両の走行性能を向上させることができる。またモータロータが、車輪用軸受の回転輪に取付けられたダイレクトドライブ形式であるため、電動機の構成が簡易で省スペースで済み、車両重量の増加も抑えられる。特に、電動機の全体がブレーキロータの前記外周部よりも小径であり、且つ、電動機におけるハブフランジへの取付部を除く全体が、車輪用軸受のインボード側の車体取り付け面と、ハブフランジとの間の軸方向範囲に位置する。このため、ブレーキロータに摩擦パッドを押し付けるブレーキキャリパが電動機と干渉せず、電動機の設置によってブレーキの設置が妨げられることもない。
またブレーキロータの内周面と電動機の外周面とのいずれか一方または両方に、電動機を冷却する凹凸部を備える。この凹凸部により、発熱源であるブレーキロータまたは電動機の表面積を増加させたうえで、回転輪の回転により空気の流れを生み出し、ブレーキロータまたは電動機の表面の熱交換を生じ易くする。したがって、電動機の昇温に起因する異常を防ぐことができる。また、ブレーキロータ内で発生した熱が、前記空気の流れによりブレーキロータ外に放出される。ブレーキの動作温度を下げることで、ブレーキ性能を維持することができる。また、車輪用軸受は長時間高温に曝されることを未然に防ぐことができるため、軸受内の潤滑剤の劣化、および軸受材料の強度低下をそれぞれ防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明の発電機付き車輪用軸受装置は、固定輪、およびハブフランジを有し前記固定輪に転動体を介して回転自在に支持されて前記ハブフランジに車両の車輪およびブレーキロータが取付けられる回転輪を有する車輪用軸受と、前記固定輪に取付けられたステータ、および前記回転輪に取付けられたロータを有する発電機と、を備えた発電機付き車輪用軸受装置において、前記ブレーキロータの一部が、前記発電機の半径方向外方に位置し、前記ブレーキロータの内周面と前記発電機の外周面とのいずれか一方または両方に、前記発電機を冷却する凹凸部を備える。このため、ブレーキロータ内に構成された発電機の熱を効率的に放出することで、発電機の異常等を防ぐと共に、ブレーキ性能の低下、軸受内の潤滑剤の劣化、および軸受材料の強度低下をそれぞれ防ぐことができる。
【0020】
この発明の車両用動力装置は、固定輪、およびハブフランジを有し前記固定輪に転動体を介して回転自在に支持されて前記ハブフランジに車両の車輪およびブレーキロータが取付けられる回転輪を有する車輪用軸受と、前記固定輪に取付けられたステータ、および前記回転輪に取付けられたモータロータを有する電動機と、を備えた車両用動力装置において、前記ブレーキロータの一部が、前記電動機の半径方向外方に位置し、前記ブレーキロータの内周面と前記電動機の外周面とのいずれか一方または両方に、複数の凹凸部を備える。このため、ブレーキロータ内に構成された電動機の熱を効率的に放出することで、電動機の異常等を防ぐと共に、ブレーキ性能の低下、軸受内の潤滑剤の劣化、および軸受材料の強度低下をそれぞれ防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の実施形態に係る発電機付き車輪用軸受装置(車両用動力装置)の断面図である。
図2】同車両用動力装置を車体側から見た破断斜視図である。
図3】同車両用動力装置の要部の斜視図である。
図4】この発明の他の実施形態に係る車両用動力装置の断面図である。
図5】同車両用動力装置の破断斜視図である。
図6】同車両用動力装置の要部の破断斜視図である。
図7】同車両用動力装置の要部の斜視図である。
図8】この発明のさらに他の実施形態に係る車両用動力装置の斜視図である。
図9】この発明のさらに他の実施形態に係る車両用動力装置の斜視図である。
図10】この発明のさらに他の実施形態に係る車両用動力装置の斜視図である。
図11】この発明のさらに他の実施形態に係る車両用動力装置の斜視図である。
図12】この発明のさらに他の実施形態に係る車両用動力装置の斜視図である。
図13】この発明のさらに他の実施形態に係る車両用動力装置の斜視図である。
図14】この発明のさらに他の実施形態に係る車両用動力装置の空気の流れを示す図である。
図15】いずれかの車両用動力装置を用いた車両用システムの概念構成を示すブロック図である。
図16】同車両用システムを搭載した車両の一例となる電源系統図である。
図17】同車両用動力装置を用いた他の車両用システムの概念の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施形態に係る発電機付き車輪用軸受装置(車両用動力装置)を図1ないし図3と共に説明する。
図1および図2に示すように、この発電機付き車輪用軸受装置1は、車輪用軸受2と、発電機3とを備える。後述するように、発電機3が、車輪10を回転駆動可能な走行補助用の電動発電機(電動機)である場合、この発電機付き車輪用軸受装置は、「車両用動力装置」と同義である。
【0023】
<車輪用軸受2について>
車輪用軸受2は、固定輪である外輪4と、複列の転動体6と、回転輪である内輪5とを有する。外輪4に複列の転動体6を介して内輪5が回転自在に支持されている。内輪5は、外輪4よりも軸方向のアウトボード側に突出した箇所にハブフランジ7を有する。外輪4は、ハブフランジ7とは反対側(インボード側)の端部である車体取り付け面4aにおいて、ナックル等の足回りフレーム部品8に図示外のボルトで取付けられ、車体の重量を支持する。なおこの明細書において、車両用動力装置1が車両に搭載された状態で車両の車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側と呼び、車両の車幅方向の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。
【0024】
ハブフランジ7のアウトボード側の側面には、車輪10のリム11とブレーキロータ12とが軸方向に重なった状態で、ハブボルト13により取り付けられている。リム11の外周にタイヤ14が取付けられている。
【0025】
<ブレーキ17について>
ブレーキ17は、ディスク式のブレーキロータ12と、図示外のブレーキキャリパとを備える摩擦ブレーキである。ブレーキロータ12は、平板状部12aと、外周部12bとを有する。平板状部12aは、ハブフランジ7に重なる環状で且つ平板状の部材である。外周部12bは、平板状部12aから外輪4の外周側へ延びる。外周部12bは、平板状部12aの外周縁部からインボード側に円筒状に延びる円筒状部12baと、この円筒状部12baのインボード側端から外径側に平板状に延びる平板部12bbとを有する。
【0026】
前記ブレーキキャリパは、ブレーキロータ12の平板部12bbを挟み付ける摩擦パッド(図示せず)を有する。前記ブレーキキャリパは、足回りフレーム部品8に取付けられている。前記ブレーキキャリパは、油圧式および機械式のいずれであってもよく、また電動モータ式であってもよい。
【0027】
<発電機3について>
この例の発電機3は、車輪10の回転で発電を行い且つ給電されることによって車輪10を回転駆動可能な走行補助用の電動発電機(電動機)である。以後、発電機3を電動機3と言う場合がある。電動機3は、外輪4の外周面に取付けられたステータ18と、内輪5のハブフランジ7に取付けられたモータロータ(ロータ)19とを有する。図示の例の電動機3は、アウターロータ型のIPM(Interior Permanent Magnet Motor)同期モータであるが、アウターロータ型のSPM(Surface Permanent Magnet Motor)同期モータであってもよい。
【0028】
その他、電動機3は、スイッチトリラクタンスモータ(Switched reluctance motor;略称:SRモータ)、インダクションモータ(Induction Motor;略称:IM)等各種形式が採用できる。同期モータにおいては、ステータ18の巻き線形式として分布巻、集中巻の各形式が採用できる。
【0029】
ステータ18は、コア18aと、このコア18aの各ティースに巻回されたコイル(図示せず)とを有する。モータロータ19は、モータケースとなる回転ケース19aと、この回転ケース19aの内周に設けられる磁性体19bと、この磁性体19bに内蔵される図示外の永久磁石とを備え、回転ケース19aがハブフランジ7に取付けられている。ハブフランジ7の外周面に、例えば、嵌合、溶接、または接着等により、回転ケース19aのアウトボード側の内周面が固定されている。回転ケース19aのインボード側の一端には、モータシールド21が取付けられている。モータシールド21は、回転ケース19aのインボード側の一端を閉鎖し、足回りフレーム部品8側から電動機3の内部への異物の侵入を防止する。
【0030】
電動機3は、その全体が、ブレーキロータ12の外周部12bよりも小径である。さらに電動機3におけるハブフランジ7への取付部を除く全体が、車輪用軸受2のインボード側の車体取り付け面4aと、ハブフランジ7との間の軸方向範囲L1に位置する。すなわち、電動機3は、ブレーキロータ12の外周部12bと外輪4の外周との間の径方向範囲に収められ、軸方向範囲L1については、ブレーキロータ12の外周部12bにおける円筒部12baに、電動機3の一部(アウトボード側半部)が入っている。
【0031】
<冷却構造について>
この実施形態の冷却構造では、電動機3の外周面に凹凸部22が設けられ、車輪用軸受2の回転で空気を循環させて熱を逃がす。
図3は、この車両用動力装置1の斜視図である。この図3では、図2からブレーキロータ等が省略されている。図3に示すように、回転ケース19aの外周面に、この電動機3(図2)を冷却する複数の凹凸部22が設けられている。凹凸部22により、発熱源である電動機3(図2)の表面積を増加させたうえで、内輪5の回転により空気の流れを生み出し、熱交換を生じ易くする。この例の複数の凹凸部22は、複数の凹部22aと、複数の凸部22bとを含む。各凹部22aは、回転ケース19aの外周面よりも凹球面状に凹むディンプル形状である。各凸部22bは、回転ケース19aの外周面よりも半球面状に突出する。
【0032】
回転ケース19aの外周面に、例えば金型等により凹凸部22を成形してもよいし、機械加工により凹凸部22を加工してもよい。その他、凹凸部22のうち凹部22aのみ金型または機械加工により成形し、凸部22bを、回転ケース19aと別部品として回転ケース19aの外周面に溶接等により固定してもよい。回転ケース19aの外周面において、複数の凹部22aが軸方向に一定間隔おきに並ぶと共に、前記凹部22aに対し円周方向に所定間隔を空けて、複数の凸部22bが軸方向に一定間隔おきに並ぶ。軸方向に並ぶ凹部22aの列と、軸方向に並ぶ凸部22bの列とが円周方向に互い違いに表れるように回転ケース19aの外周面に設けられている。
【0033】
また図1に示すように、ブレーキロータ12における円筒部12baの内周面と、回転ケース19aの外周面との間には、放熱性を高めるため、環状隙間δが設けられている。環状隙間δは、例えば、設計等によって任意に定める隙間であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な隙間を求めて定められる。
【0034】
<作用効果等>
ところで、車両の制動装置として、前述の摩擦ブレーキが一般的である。摩擦ブレーキは作用するときに運動エネルギーを熱エネルギーに変換して制動力を生み出す。自動車用のディスクブレーキでは、ブレーキ面とキャリパの温度は、600℃から1000℃に達する場合もある。電動モータジェネレータである電動機は、電気エネルギーを回転エネルギーに、または回転エネルギーを電気エネルギーに変換する装置である。電動モータジェネレータは車両走行時には駆動モータとして動作し、コイルの導体抵抗による銅損、渦電流による鉄損など各損失により、熱が発生する。また、車両制動時には、ジェネレータとして動作し回生電流が発生するため、主に銅損による発熱がある。
【0035】
一般的な構造の自動車において、電動機3は、その全体が、ブレーキロータ12の外周部12bよりも小径である。さらに電動機3におけるハブフランジ7への取付部を除く全体が、車輪用軸受2のインボード側の車体取り付け面4aと、ハブフランジ7との間の軸方向範囲に位置する。このため、車体を大きく改造することなく電動機3を組み込むことができ、自動車の燃費低下、車両動力性能の向上に寄与する。
【0036】
しかし、前記の構成にした場合、ブレーキロータ12の発熱と電動機3の発熱に加えて、車輪用軸受2の回転による摩擦熱により、ブレーキロータ12内に発熱源が集中する。そのため、ブレーキロータ内部に電動機を組み込んだ従来構成では、ブレーキロータ内で発生した熱は、ブレーキロータ自身の熱放射、および車体との接触部を通じた熱伝導しか外部への放熱経路がないため、高温になる。ブレーキが高温になると、ブレーキフルードへ熱が伝わり、ブレーキフルード内で気泡が発生するベイパーロック、ブレーキパッドの過熱によるフェード現象、過度なブレーキパッドの摩耗等が生じる恐れがある。また、動力補助機能を有する電動機が高温になった場合は、モータコイルの絶縁被膜の異常、または磁石型モータの場合は磁石の熱減磁が発生し、モータの性能を著しく低下させる。車輪用軸受においては、潤滑剤の熱劣化および金属材料の強度低下が発生し、軸受寿命を低下させる。
【0037】
そこで、本実施形態では、ダイレクトドライブ形式の電動機3を構成し、回転ケース19aの外周面に、この電動機3を冷却する複数の凹凸部22を設けている。凹凸部22により、発熱源である電動機3の表面積を増加させたうえで、内輪5の回転により空気の流れを生み出し、熱交換を生じ易くする。また電動機3の表面積が増加するため、車両の静止時にも熱交換が行われる。
【0038】
したがって、電動機3の昇温に起因する異常を未然に防止することができる。またブレーキロータ12内で発生した熱が、前記空気の流れにより環状隙間δからブレーキロータ12外に放出される。これにより、ブレーキ17の動作温度を下げることで、ブレーキ性能を維持することができる。車輪用軸受2は長時間高温に曝されることを未然に防ぐことができるため、軸受内の潤滑剤の劣化、および軸受材料の強度低下をそれぞれ防ぐことができる。これにより軸受寿命を延ばすことができる。
【0039】
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0040】
図4図7に示すように、回転ケース19aの外周面に、フィン形状から成る複数の凹凸部22が設けられた構成でもよい。この例の複数の凹凸部22は、回転ケース19aの外周面に所定間隔おきに設けられた複数枚のフィンから成る凸部22bと、各フィン間の凹部22aとを含む。各フィンは、回転ケース19aの外周面において、アウトボード側からインボード側に向かうに従って円周方向一方に傾斜する遠心式である。ブレーキロータ12における円筒部12baの内周面と、回転ケース19aの外周面との間には、放熱性を高めるため、環状隙間δが設けられている。
【0041】
この構成によると、フィン形状から成る複数の凹凸部22により、電動機3の表面積を増加させたうえで、内輪5の回転により空気を攪拌し、空気の流れを強く生じさせることができるため、冷却効果を高めることができる。ブレーキロータ12内で発生した熱が、前記空気の流れにより環状隙間δからブレーキロータ12外に強制的に放出される。なお前記フィンは遠心式に限定されるものではない。例えば、凹凸部22が軸流式のフィン形状から成る場合、空気を連続的に圧縮することで、冷却効果をさらに高めることができる。
【0042】
図8に示すように、複数の凹凸部22は、回転ケース19aの外周面(凸部)に、回転軸方向に平行に延びる溝(凹部)25を複数個備えた構成でもよい。これら複数個の溝25は、円周方向所定間隔おきに設けられている。各溝25は、回転ケース19aの外周面におけるインボード側端からアウトボード側に所定距離延びる。各溝25の幅寸法はそれぞれ同一幅に設定されている。各溝25の軸方向寸法、幅寸法および外周面からの凹み量は、試験またはシミュレーション等により適宜に定められる。回転ケース19aの外周面に、例えば金型等により溝25を成形してもよいし、機械加工により溝25を加工してもよい。
図8の構成によれば、ブレーキロータ12(図2)の内周側で高温になった空気を、複数の溝25に沿って外部へ逃がす効果を奏する。また、回転ケース19aの外周面の表面積が増加するため、回転ケース19aからの放熱が促進される。
【0043】
図9に示すように、複数の凹凸部22は、回転ケース19aの外周面(凸部)に、回転軸方向に延びる溝(凹部)26を複数個備えた構成でもよい。これら複数個の溝26は、円周方向所定間隔おきに設けられ、各溝26は、回転ケース19aの外周面におけるインボード側端からアウトボード側に所定距離延びる。各溝26の幅寸法26Hは、アウトボード側からインボード(足回りフレーム部品8)側に向かうに従って幅広となるように設定されている。
図9の構成によれば、回転ケース19aの外周面の表面積が増加するため、回転ケース19aからの放熱が促進される。各溝26の幅寸法26Hが足回りフレーム部品8側に向かうに従って幅広に設定されているため、ブレーキロータ12(図2)の内周側で高温になった空気を、より効率良く外部へ逃がすことができる。
【0044】
図10に示すように、複数の凹凸部22は、回転ケース19aの外周面(凸部)に、円周方向の複数個の環状溝27を備えた構造でもよい。これら複数の環状溝27は軸方向所定間隔おきに設けられる。図示しないが環状溝27は螺旋溝であってもよい。
図10の構成によれば、回転ケース19aの外周面の表面積が増加するため、回転ケース19aからの放熱が促進される。
【0045】
図11に示すように、複数の凹凸部22は、回転ケース19aの外周面(凸部)に、円周方向の複数個の環状溝28を備えた構造でもよい。複数の環状溝28は、軸方向所定間隔おきに設けられ、各環状溝28は回転軸方向に波打った形状を有する。
図11の構成によれば、回転ケース19aの外周面の表面積がより増加するため、回転ケース19aからの放熱効果が大きい。また、環状溝28の波形状により、車輪回転中に空気の流れが発生し、回転ケース19aが冷却される。
【0046】
図12に示すように、ブレーキロータ12の平板状部12aに、軸方向に貫通する複数の通気口23を設けてもよい。これら通気口23は、平板状部12aの外周側の部分に、円周方向一定間隔おきに設けられている。この構成によると、ブレーキロータ12内の空気が循環し易くなる。つまりブレーキロータ12内で発生した熱が凹凸部22(図6)による空気の流れにより、通気口23を通してブレーキロータ12外に放出される。またブレーキロータ12内で発生した熱は、前述の各実施形態と同様に、前記空気の流れにより環状隙間δ(図5)からもブレーキロータ12外に放出される。
【0047】
図13に示すように、ブレーキロータ12の円筒状部12baに、径方向に貫通する複数の通気口24を円周方向一定間隔おきに設けてもよい。この場合にも、ブレーキロータ12内で発生した熱が凹凸部22による空気の流れにより、通気口24を通してブレーキロータ12外に放出される。またブレーキロータ12内で発生した熱は、前記空気の流れにより環状隙間δ(図5)からもブレーキロータ12外に放出される。
【0048】
図14に示すように、ブレーキロータ12に軸方向に貫通する複数の通気口23を設けると共に(図12の構成)、ブレーキロータ12に径方向に貫通する複数の通気口24を設けてもよい(図13の構成)。この図14の構成によれば、同図の太矢印で示すように、ブレーキロータ12内で発生した熱が、軸方向および径方向に貫通する各通気口23,24を通して、ブレーキロータ12外に円滑に放出される。またブレーキロータ12内で発生した熱は、前記空気の流れにより環状隙間δからもブレーキロータ12外に放出される。
なお図示しないが、ブレーキロータ12をベンチレーテッドディスクとしてもよい。この場合、ブレーキロータ12の放熱性が向上する。
【0049】
電動機3は、インナーロータ型とすることも可能である。但し、インナーロータ型の電動機の外周面に凹凸部を設ける場合、電動機3の表面積が増加するため、熱交換が行われる効果を奏するが、アウターロータ型の方が本発明の効果を発揮しやすく空気の循環が行いやすい。また限られたスペース内でより大きなトルクを発生させるには、モーメント発生位置が外径側であるアウターロータ型が望ましい。
【0050】
回転ケース19aの外周面に所定間隔おきに複数の凸部22bを設け、凹凸部22は、前記凸部22bと、隣合う凸部間の回転ケース19aの外周面を成す凹部とを有する構成としてもよい。
回転ケース19aの外周面に所定間隔おきに複数の凹部22aを設け、凹凸部22は、前記凹部22aと、隣合う凹部間の回転ケース19aの外周面を成す凸部とを有する構成としてもよい。
ブレーキロータ22の円筒状部12baの内周面および外周面のいずれか一方または両方に、凹凸部22を設けてもよい。この場合にも回転ケース19aの外周面に凹凸部22を設けた構成と同様の作用効果を奏する。但し、円筒状部12baの内周面への凹凸部22の加工が難しく、円筒状部12baの外周面に凹凸部22を設ける場合、ブレーキキャリパとの干渉に注意する必要がある。
【0051】
<車両用システムについて>
図15は、いずれかの車両用動力装置1を用いた車両用システムの概念構成を示すブロック図である。
この車両用システムにおいて、車両用動力装置1は、主駆動源と機械的に非連結である従動輪10を持つ車両2において、従動輪10に対して搭載される。車両用動力装置1における車輪用軸受2(図1)は、従動輪10を支持する軸受である。
【0052】
主駆動源35は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン等の内燃機関、または電動発電機(電動モータ)、または両者を組み合わせたハイブリッド型の駆動源である。前記「電動発電機」は、回転付与による発電が可能な電動モータと称す。図示の例では、車両30は、前輪が駆動輪10、後輪が従動輪10となる前輪駆動車であって、主駆動源35が内燃機関35aと駆動輪側の電動発電機35bとを有するハイブッリド車(以下、「HEV」と称することがある)である。
【0053】
具体的には、駆動輪側の電動発電機35bが48V等の中電圧で駆動されるマイルドハイブリッド形式である。ハイブリッドはストロングハイブリッドとマイルドハイブリッドとに大別されるが、マイルドハイブリッドは、主要駆動源が内燃機関であって、発進時や加速時等にモータで走行の補助を主に行う形式を言い、EV(電気自動車)モードでは通常の走行を暫くは行えても長時間行うことができないことでストロングハイブリッドと区別される。同図の例の内燃機関35aは、クラッチ36および減速機37を介して駆動輪10のドライブシャフトに接続され、減速機37に駆動輪側の電動発電機35bが接続されている。
【0054】
この車両用システムは、従動輪10の回転駆動を行う走行補助用の電動発電機である電動機3と、この電動機3の制御を行う個別制御手段39と、上位ECU40に設けられて前記個別制御手段39に駆動および回生の制御を行わせる指令を出力する個別電動発電機指令手段45とを備える。電動機3は、蓄電手段に接続されている。この蓄電手段は、バッテリー(蓄電池)またはキャパシタ、コンデンサ等を用いることができ、その形式や車両30への搭載位置は問わないが、この実施形態では、車両30に搭載された低電圧バッテリー50および中電圧バッテリー49のうちの中電圧バッテリー49とされている。
【0055】
従動輪用の電動機3は、変速機を用いないダイレクトドライブモータである。電動機3は、電力を供給することで電動機として作用し、また車両30の運動エネルギーを電力に変換する発電機としても作用する。
電動機3は、ハブ輪である内輪5(図1)にモータロータ19(図1)が取付けられているため、電動機3に電流を印加すると内輪5(図1)が回転駆動され、逆に電力回生時には誘起電圧を負荷することで回生電力が得られる。
【0056】
<車両30の制御系について>
上位ECU40は、車両30の統合制御を行う手段であり、トルク指令生成手段43を備える。このトルク指令生成手段43は、アクセルペダル等のアクセル操作手段56およびブレーキペダル等のブレーキ操作手段57からそれぞれ入力される操作量の信号に従ってトルク指令を生成する。この車両30は、主駆動源35として内燃機関35aおよび駆動輪側の電動発電機35bを備え、また二つの従動輪10,10をそれぞれ駆動する二つの電動機3,3を備えるため、前記トルク指令を各駆動源35a,35b,3,3に定められた規則によって分配するトルク指令分配手段44が上位ECU40に設けられている。
【0057】
内燃機関35aに対するトルク指令は内燃機関制御手段47に伝達され、内燃機関制御手段47によるバルブ開度制御等に用いられる。駆動輪側の発電電動機35bに対するトルク指令は、駆動輪側電動発電機制御手段48に伝達されて実行される。従動輪側の電動機3,3に対するトルク指令は、個別制御手段39,39に伝達される。前記トルク指令分配手段44のうち、個別制御手段39,39へ出力する部分を個別電動発電機指令手段45と称している。この個別電動発電機指令手段45は、ブレーキ操作手段57の操作量の信号に対して、電動機3が回生制動により制動を分担する制動力の指令となるトルク指令を個別制御手段39へ与える機能も備える。
【0058】
個別制御手段39はインバータ装置であり、中電圧バッテリー49の直流電力を三相の交流電圧に変換するインバータ41と、前記トルク指令等によりインバータ41の出力をPWM制御等で制御する制御部42とを有する。インバータ41は、半導体スイッチング素子等によるブリッジ回路(図示せず)と、電動機3の回生電力を中電圧バッテリー49に充電する充電回路(図示せず)とを備える。なお個別制御手段39は、二つの電動機3,3に対して個別に設けられるが、一つの筐体内に収められ、制御部42を両個別制御手段39,39で共有する構成であってもよい。
【0059】
図16は、図15に示した車両用システムを搭載した車両の一例となる電源系統図である。同図の例では、バッテリーとして低電圧バッテリー50と中電力バッテリー49とが設けられ、両バッテリー49,50は、DC/DCコンバータ51を介して接続されている。電動機3は二つあるが、代表して一つで図示している。図15の駆動輪側の電動発電機35bは、図16では図示を省略しているが、従動輪側の電動機3と並列に中電力系統に接続されている。低電圧系統には低電圧負荷52が接続され、中電圧系統には中電圧負荷53が接続される。低電圧負荷52および中電圧負荷53は、それぞれ複数あるが、代表して一つで示している。
【0060】
低電圧バッテリー50は、制御系等の電源として各種の自動車一般に用いられているバッテリーであり、例えば12Vまたは24Vとされる。低電圧負荷52としては、内燃機関35aのスタータモータ、灯火類、上位ECU40およびその他のECU(図示せず)等の基幹部品がある。低電圧バッテリー50は電装補機類用補助バッテリーと称し、中電圧バッテリー49は電動システム用補助バッテリー等と称しても良い。
【0061】
中電圧バッテリー49は、低電圧バッテリー50よりも電圧が高く、かつストロングハイブリッド車等に用いられる高圧バッテリー(100V以上、例えば200~400V程度)よりも低く、かつ作業時に感電による人体への影響が問題とならない程度の電圧であり、近年マイルドハイブリッドに用いられている48Vバッテリーが好ましい。48Vバッテリー等の中電圧バッテリー49は、従来の内燃機関を搭載した車両に比較的容易に搭載することができ、マイルドハイブリッドとして電力による動力アシストや回生により、燃費低減することができる。
【0062】
前記48V系統の中電圧負荷53は前記アクセサリー部品であり、前記駆動輪側の電動機3である動力アシストモータ、電動ポンプ、電動パワーステアリング、スーパーチャージャ、およびエアーコンプレッサなどである。アクセサリーによる負荷を48V系統で構成することで、高電圧(100V以上のストロングハイブリッド車など)よりも動力アシストの出力が低くなるものの、乗員やメンテナンス作業者への感電の危険性を低くすることができる。電線の絶縁被膜を薄くすることができるので、電線の重量や体積を減らすことができる。また、12Vよりも小さな電流量で大きな電力量を入出力することができるため、電動機または発電機の体積を小さくすることができる。これらのことから、車両の燃費低減効果に寄与する。
【0063】
この車両用システムは、こうしたマイルドハイブリッド車のアクセサリー部品に好適であり、動力アシストおよび電力回生部品として適用される。なお、従来よりマイルドハイブリッド車において、CMG、GMG、ベルト駆動式スタータモータ(いずれも図示せず)などが採用されることがあるが、これらはいずれも、内燃機関または動力装置に対して動力アシストまたは回生するため、伝達装置および減速機などの効率の影響を受ける。
【0064】
これに対してこの実施形態の車両用システムは従動輪10に対して搭載されるため、内燃機関35aおよび電動モータ(図示せず)等の主駆動源とは切り離されており、電力回生の際には車体1の運動エネルギーを直接利用することができる。また、CMG、GMG、ベルト駆動式スタータモータなどを搭載する際には、車両30の設計段階から考慮して組み込む必要があり、後付けすることが難しいが、従動輪10内に収まるこの車両用システムの電動機3は、完成車であっても部品交換と同等の工数で取り付けることができ、内燃機関35aのみの完成車に対しても48Vのシステムを構成することができる。この実施形態の車両用システムを搭載した車両に、図15の例のように別の補助駆動用の電動発電機35bが搭載されていても構わない。その際は車両30に対する動力アシスト量や回生電力量を増加させることができ、さらに燃費低減に寄与する。
【0065】
図17は、いずれかの実施形態に係る車両用動力装置1を、前輪である駆動輪10および後輪である従動輪10にそれぞれ適用した例を示す。駆動輪10は内燃機関からなる主駆動源35により、クラッチ36および減速機7を介して駆動される。この前輪駆動車において、各駆動輪10および従動輪10の支持および補助駆動に、車両用動力装置1が設置されている。このように車両用動力装置1を、従動輪10だけでなく、駆動輪10にも適用し得る。
【0066】
図15に示す車両用システムは、発電を行う機能を有するが、給電による回転駆動をしないシステムとしてもよい。この車両用システムには、モータを兼用しない発電機3と、車輪用軸受2とを備える発電機付き車輪用軸受装置が搭載される。この発電機付き車輪用軸受装置は、いずれかの実施形態の車両用動力装置に対し、モータを兼用する電動発電機(電動機)を除き同一構成である。この場合、発電機3が発電した回生電力を中電圧バッテリー49に蓄えることにより、制動力を発生させることができる。機械式のブレーキ操作手段57と併用や使い分けで、制動性能も向上させることができる。このように発電を行う機能に限定した場合、個別制御手段39はインバータ装置ではなく、AC/DCコンバータ装置(図示せず)として構成することができる。前記AC/DCコンバータ装置は、3相交流電圧を直流電圧に変換することで、発電機3の回生電力を中電圧バッテリー49に充電する機能を備え、インバータと比較すると制御方法が容易であり、小型化が可能となる。
【0067】
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1…車両用動力装置(発電機付き車輪用軸受装置)
2…車輪用軸受
3…電動機(発電機)
4…外輪(固定輪)
4a…車体取り付け面
5…内輪(回転輪)
6…転動体
7…ハブフランジ
10…従動輪
12…ブレーキロータ
12b…外周部
18…ステータ
19…モータロータ(ロータ)
22…凹凸部
23,24…通気口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17