(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/60 20170101AFI20230303BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230303BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20230303BHJP
G06T 5/00 20060101ALI20230303BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
G06T7/60 200J
G06T7/00 650A
G06T1/00 330A
G06T5/00 735
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2018234798
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金武 純
(72)【発明者】
【氏名】岡田 康貴
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕明
(72)【発明者】
【氏名】吉村 亮
(72)【発明者】
【氏名】吉原 篤
(72)【発明者】
【氏名】山本 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】倭文 知騎
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-176641(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102834309(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
G06T 1/00
G06T 5/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置によって得られた画像データの画素に対し、R値、またはG値と、B値との差に基づく彩度を算出する算出部と、
算出された前記彩度を強調量として所定の黄色条件を満たす画素の輝度値を補正する補正部と、
補正後の輝度値に基づいて路面に表示された線を検出する検出部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記補正部は、
実画像データに基づいて予め設定された最大強調量を上限として、前記所定の黄色条件を満たす画素の輝度値を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記補正後の輝度値を用いて前記画像データの輝度値を正規化する変換部
を備え、
前記検出部は、
正規化された輝度値に基づいて前記線を検出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記変換部は、
前記画像データの画素の輝度値と、前記強調量とを異なる圧縮率で圧縮し正規化する
ことを特徴とする請求項
3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記変換部は、
前記画像データの画素の輝度値の圧縮率よりも、前記強調量の圧縮率を高くする
ことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記算出部は、
前記所定の黄色条件を満たす画素にのみ前記彩度を算出する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記算出部は、
前記R値と前記B値との差を前記彩度として算出し、
前記補正部は、
(A)前記R値と前記G値との差が第1所定値以下であり、(B)前記R値と前記B値との差が第2所定値以上であり、(C)前記G値と前記B値との差が第3所定値以上であり、かつ(D)前記R値または前記G値が第4所定値以上である画素の輝度値を補正する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の画像処理装置。
【請求項8】
撮像装置によって得られた画像データの画素に対し、R値、またはG値と、B値との差に基づく彩度を算出する算出工程と、
算出された前記彩度を強調量として所定の黄色条件を満たす画素の輝度値を補正する補正工程と、
補正後の輝度値に基づいて路面に表示された線を検出する検出工程と
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車線マーカのコントラストが大きくなるように赤成分、および緑成分の画像情報から黄色の画面を合成し、その合成画面に対して認識処理を行うことで路面に表示された黄色の線を認識する画像処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、黄色の画面を合成し、合成した画面に対して処理が行われるため、黄色の線を検出する際の処理負荷が大きくなる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、処理負荷を抑制しつつ、黄色の線を正確に検出する画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る画像処理装置は、算出部と、補正部と、検出部とを備える。算出部は、撮像装置によって得られた画像データの画素に対し、R値、またはG値と、B値との差に基づく彩度を算出する。補正部は、算出された彩度を強調量として所定の黄色条件を満たす画素の輝度値を補正する。検出部は、補正後の輝度値に基づいて路面に表示された線を検出する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、処理負荷を抑制しつつ、黄色の線を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1B】
図1Bは、黄色の区画線が表示された路面を撮影した画像データ、およびグレースケール処理が行われた画像データの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る正規化の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る黄色強調処理を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る正規化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る画像処理装置および画像処理方法について詳細に説明する。なお、本実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
(第1実施形態)
まず、
図1A~
図1Cを用いて第1実施形態に係る画像処理装置1の概要について説明する。
図1Aは、画像処理装置1の搭載例を示す図である。
図1Bは、黄色の区画線LCが表示された路面を撮影した画像データ、およびグレースケール処理が行われた画像データの一例を示す図である。また、
図1Cは、画像処理方法の概要を示す図である。なお、画像処理方法は、
図1A、および
図1Cに示す画像処理装置1によって実行される。
【0011】
図1Aに示すように、第1実施形態に係る画像処理装置1は、車両Cに搭載され、車載カメラ10によって撮像されて得られた撮像データから駐車枠PSを検出する。駐車枠PSは、路面上に表示された区画線LCに挟まれた領域であり、車両Cが駐車されるスペースである。
【0012】
車載カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を備え、車両Cの周囲を撮像する。また、車載カメラ10のレンズには、例えば、魚眼レンズなどの広角レンズが採用され、
図1Aに示すような撮像領域Rを有する。
【0013】
なお、
図1Aに示す例では、車載カメラ10が、車両Cの左側方を撮像する左サイドカメラである場合について示したが、車載カメラ10には、車両Cの前方を撮像する前方カメラ、車両Cの後方を撮像するバックカメラ、車両Cの右側方を撮像する右サイドカメラが含まれる。
【0014】
ところで、画像処理装置1は、駐車枠PSを検出するにあたり、車載カメラ10によって撮影されて取得された画像データに基づいて、路面上に表示された区画線LCを検出する。そして、画像処理装置1は、検出した区画線LCの情報に基づいて駐車枠PSを検出する。
【0015】
具体的には、画像処理装置1は、取得された画像データに対して、車載カメラ10から入力される画像データにグレースケール処理を行い、画像データをグレースケールの画像データに変換する。グレースケール処理は、画像データにおける各画素を輝度値に応じて白から黒までの各階調(例えば256階調)で表現するように変換する処理である。
【0016】
画像処理装置1は、グレースケールの画像データにおける各画素の輝度値に基づいたエッジ点を繋いだエッジ線を抽出する。画像処理装置1は、エッジ線のうち、所定条件を満たすペアをペアエッジ線Lp(以下、区画線候補と称する。)として検出する。具体的には、画像処理装置1は、エッジ線のうち、互いに略平行であり、その間隔が区画線LCの幅に応じた所定範囲に収まるエッジ線のペアを区画線候補Lpとして検出する。すなわち、区画線候補Lpは、区画線LCの幅方向の左右両端に対応するエッジ線のペアである。
【0017】
次に、画像処理装置1は、所定間隔をあけて平行配置される2組の区画線候補Lpをそれぞれ区画線LCとして検出する。具体的には、画像処理装置1は、区画線候補Lpを形成するペアのエッジ線に挟まれた領域を区画線LCとして検出する。所定間隔は、駐車場に関する法令等で規定される一般公共用の標準的な駐車領域の幅である。
【0018】
そして、画像処理装置1は、所定間隔をあけて平行配置された2つの区画線LCに基づいて駐車枠PSを検出する。画像処理装置1は、2つの区画線LCの内側のエッジ線で挟まれるスペースを、実際に車両Cを駐車可能な駐車枠PSとして検出する。
【0019】
しかしながら、区画線LCが黄色の塗料で路面に表示されている場合には、グレースケール処理が行われると、
図1Bに示すように、区画線LCに対応する画素と路面に対応する画素とのコントラスト差が低下する。そのため、画像処理装置1は、黄色の区画線LCを正確に検出することができないおそれがある。
図1Bでは、画像データにおける区画線LCと路面とのコントラスト差をドットの密度で表示しており、ドットの密度が大きいほど、コントラスト差が大きいことを示す。なお、以下で示す
図1Cにおいても同様である。
【0020】
そこで、第1実施形態に係る画像処理装置1は、所定の黄色条件を満たす画素の輝度値を補正し、強調することとした。なお、所定の黄色条件については、後述する。これにより、第1実施形態に係る画像処理装置1は、黄色の区画線LCを正確に検出することができる。
【0021】
具体的には、画像処理装置1は、
図1Cに示すように、車載カメラ10によって撮影されて得られた画像データを取得する(S10)。
【0022】
画像処理装置1は、R値とB値との差に基づく彩度を算出する(S11)。画像処理装置1は、彩度を強調量として、黄色条件を満たす画素の輝度値を補正する(S12)。すなわち、黄色条件を満たす画素にのみ彩度を加算する処理を行う。
【0023】
これにより、区画線LCがより黄色に近いほど、区画線LCに対応する画素の輝度値が大きくなり、区画線LCに対応する画素と路面に対応する画素とのコントラスト差が大きくなる。
【0024】
画像処理装置1は、補正された輝度値に基づいて区画線LCを検出する(S13)。これにより、画像処理装置1は、黄色の区画線LCを正確に検出することができる。
【0025】
例えば、黄色の区画線LCを検出する方法として、R値と、G値とに基づいて黄色の画像を合成し、合成した画像に対して区画線LCの検出処理を行う方法がある。しかしながら、このような検出方法では、黄色の画像を合成しなければならず、処理負荷が大きくなる。
【0026】
これに対し、画像処理装置1は、黄色条件を満たす画素の輝度値を補正することで、黄色の区画線LCを検出することができ、区画線LCを検出する際の処理負荷を抑制することができる。
【0027】
このように、第1実施形態に係る画像処理装置1は、処理負荷を抑制しつつ、黄色の区画線LCを正確に検出することができる。
【0028】
次に、
図2を用いて第1実施形態に係る画像処理装置1の構成例について説明する。
図2は、画像処理装置1のブロック図である。なお、
図2には、画像処理装置1を含む駐車支援システム100を示す。
図2に示すように、駐車支援システム100は、画像処理装置1と、車載カメラ10と、センサ群Scと、上位ECU(Electronic Control Unit)50とを備える。また、
図2に示すように、画像処理装置1と、センサ群Scと、上位ECU50とは、それぞれCAN(Control Area Network)通信の通信規格の通信バスBによって相互に通信することができる。
【0029】
センサ群Scは、車両Cの走行状態を検出する各種センサであり、検出したセンサ値を画像処理装置1へ通知する。センサ群Scは、車両Cの車輪の回転数を検出する車速センサや、車両Cの舵角を検出する舵角センサ等を含む。
【0030】
上位ECU50は、例えば、車両Cの自動駐車を支援するECUであり、例えば、画像処理装置1によって検出された駐車枠PSに基づいて車両Cを駐車させる。例えば、上位ECU50は、車両Cの操舵角を制御するEPS(Electric Power Steering)-ECUであり、画像処理装置1によって検出された駐車枠PSへの操舵角を制御することができる。なお、上位ECU50は、アクセル制御やブレーキ制御を行うECUを含むようにすることにしてもよい。
【0031】
図2に示すように、画像処理装置1は、制御部2と、記憶部3とを備える。制御部2は、線分抽出部21と、不適領域判定部22と、区画線候補検出部23と、除外判定部24と、区画線検出部25(検出部の一例)と、駐車枠検出部26と、駐車枠管理部27と、停車位置決定部28とを備える。
【0032】
制御部2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0033】
コンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部2の線分抽出部21、不適領域判定部22、区画線候補検出部23、除外判定部24、区画線検出部25、駐車枠検出部26、駐車枠管理部27および停車位置決定部28として機能する。
【0034】
また、制御部2の線分抽出部21、不適領域判定部22、区画線候補検出部23、除外判定部24、区画線検出部25、駐車枠検出部26、駐車枠管理部27および停車位置決定部28の少なくともいずれか一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0035】
また、記憶部3は、例えば、RAMやHDDに対応する。RAMやHDDは、各種情報や各種プログラムの情報を記憶することができる。なお、画像処理装置1は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。
【0036】
制御部2は、例えば、車両Cが駐車場を走行していると想定される場合(例えば、車速30Km/h以内)に、駐車枠PSの検出処理を行うことにしてもよいし、あるいは、車両Cが走行している全ての期間でかかる検出処理を行うことにしてもよい。
【0037】
線分抽出部21は、車載カメラ10から入力される画像データから各画素の輝度値に基づくエッジ点を抽出し、エッジ点を繋いだエッジ線を抽出する。線分抽出部21の詳細については後述する。
【0038】
線分抽出部21は、エッジ点、およびエッジ線に関するエッジ情報を不適領域判定部22へ通知する。
【0039】
不適領域判定部22は、エッジ点、およびエッジ線に基づき、駐車枠PSを区画する区画線LCの検出が困難となる不適領域の有無を判定する。例えば、不適領域判定部22は、舗装された路面に比べて、エッジ点が多く抽出される舗装されていない路面領域(例えば、砂利)や、グレーチング領域を不適領域として判定することができる。
【0040】
具体的には、不適領域判定部22は、各エッジ点の密度が予め設定された所定密度以上であり、各エッジ点の輝度勾配が不均一である領域について、不適領域として判定することができる。不適領域判定部22は、判定した不適領域に基づいて上記のエッジ情報から不適領域に関するエッジ情報を除去して後段の処理へ回す。
【0041】
区画線候補検出部23は、エッジ情報に基づいて駐車枠PSを区画する区画線LCの候補となる区画線候補Lpをエッジ線から選択し、検出する。区画線候補検出部23は、検出した区画線候補Lpに関する情報を生成し、除外判定部24へ通知する。
【0042】
なお、区画線候補検出部23は、不適領域判定部22によって検出された不適領域を除いて、区画線候補Lpの検出処理を行うことができる。言い換えれば、区画線候補検出部23は、不適領域について区画線候補Lpの検出処理を行わない。これにより、制御部2の処理負荷の抑えることが可能となる。
【0043】
除外判定部24は、区画線候補検出部23によって検出された区画線候補Lpに基づいて車両Cの駐車が認められていない駐車不可領域の有無を判定する。例えば、除外判定部24は、駐車不可領域として、ゼブラゾーン(導流帯)などの駐車不可領域の有無を判定する。
【0044】
具体的には、ゼブラゾーンが、互いに略平行な区画線候補Lpを区画線LCと仮定した場合に、仮定した区画線LCに対して傾斜した区画線候補Lpが所定の間隔をあけて3本以上存在する場合に、仮定した区画線LCに挟まれた領域を駐車不可領域と判定する。
【0045】
また、除外判定部24は、路面標識等の駐車枠PSの検出に不要な区画線候補Lpの有無を判定することも可能である。例えば、除外判定部24は、区画線候補検出部23によって検出された区画線候補Lpと、各路面標識のテンプレートモデルとのマッチング処理を行うことで画像データに含まれる各路面標識を検出することができる。
【0046】
除外判定部24は、区画線候補Lpの情報から不要な区画線候補Lpを除去するとともに、区画線候補Lpの情報に駐車不可領域に関する情報を付与して、駐車枠検出部26へ通知する。
【0047】
区画線検出部25は、区画線候補検出部23によって検出された区画線候補Lpに基づき、区画線LCを検出する。
【0048】
駐車枠検出部26は、区画線検出部25によって検出された区画線LCに基づき、駐車枠を検出する。なお、駐車枠検出部26は、除外判定部24によって駐車不可領域として判定された領域を避けて、駐車枠PSを検出することができる。
【0049】
すなわち、駐車枠検出部26は、ゼブラゾーン等を避けて駐車枠PSを検出することができる。駐車枠検出部26は、駐車枠PSを検出すると、駐車枠PSに関する駐車枠情報を駐車枠管理部27へ通知する。また、駐車枠情報には、車両Cを基準とする各区画線LCの頂点座標が含まれる。
【0050】
駐車枠管理部27は、駐車枠検出部26によって検出された駐車枠PSを時系列で管理する。駐車枠管理部27は、センサ群Scから入力されるセンサ値に基づいて車両Cの移動量を推定し、かかる移動量に基づいて過去の駐車枠情報に基づく実際の各区画線LCの頂点座標を推定することができる。
【0051】
また、駐車枠管理部27は、新たに入力される駐車枠情報に基づいて、過去の駐車枠情報における区画線LCの座標情報を更新することも可能である。すなわち、駐車枠管理部27は、車両Cとの駐車枠PSとの相対的な位置関係を車両Cの移動に伴って随時更新する。
【0052】
また、駐車枠管理部27は、複数の駐車枠PSがそれぞれ連続して配置されると仮定して、駐車枠PSの検出範囲を設定することも可能である。例えば、駐車枠管理部27は、駐車枠検出部26によって検出された1つの駐車枠PSを基準とし、かかる駐車枠PSと連続して複数の駐車枠PSが存在すると仮定する。
【0053】
そして、駐車枠管理部27は、仮定した駐車枠PSの位置を検出範囲として設定する。これにより、上記の線分抽出部21は、駐車枠管理部27によって設定された検出範囲においてのみ、エッジ線の検出処理を行えばよいので、制御部2の処理負荷を抑えることが可能となる。
【0054】
停車位置決定部28は、駐車枠情報、およびエッジ情報に基づき、車両Cが駐車枠PSへ駐車する際の停車位置を決定する。例えば、停車位置決定部28は、線分抽出部21によって検出されたエッジ線に基づき、輪留めや縁石、壁、車幅方向に延びる白線などを検出することで、車両Cの停車位置を決定する。
【0055】
停車位置決定部28は、輪留めを検出した場合、車両Cの後輪が輪留めの手前に来るように停車位置を決定し、輪留めに代えて、白線や壁等を検出した場合、白線の手前に車両Cの後端(例えば、リアバンパの先端)がくるように停車位置を決定する。
【0056】
次に、
図3を用いて線分抽出部21の構成例について説明する。
図3は、線分抽出部21のブロック図である。線分抽出部21は、取得部40と、算出部41と、判定部42と、補正部43と、変換部44と、抽出部45とを備える。
【0057】
取得部40は、車載カメラ10によって撮影されて得られた画像データを取得する。
【0058】
算出部41は、取得された画像データの各画素の輝度値を算出する。また、算出部41は、所定の黄色条件を満たす画素について彩度を強調量として算出する。彩度は、R値とB値との差である。なお、算出部41は、所定の黄色条件を満たす画素に対してのみ彩度(強調量)を算出する。
【0059】
判定部42は、各画素について所定の黄色条件を満たすか否かを判定する。黄色は、RGB値において(255,255,0)として表示されるが、実際に区画線LCとして用いられる塗料の色や、環境(例えば、区画線LCの劣化や、周囲の明るさ)によって上記する値になるとは限らない。
【0060】
ここで、色空間においてRGBからHSVへの変換式は、以下のように表すことができる。
【0061】
【0062】
なお、MAXは、RGB値の中で最も大きい値であり、MINは、RGB値の中で最も小さい値である。
【0063】
HSV色空間では、黄色の色相は、60°付近であり、上記(1)~(3)から、黄色であるためには、以下の(a)~(d)の特徴を有すればよい。
【0064】
(a)RGB値の中でB値が最も小さい。
(b)R値とG値との差が小さい。
(c)R値(またはG値)とB値との差が大きい。
(d)R値(またはG値)が大きい。
【0065】
そこで、第1実施形態では、以下の(A)~(D)を所定の黄色条件とした。
【0066】
(A)R値とG値との差が第1所定値以下である。
(B)R値とB値との差が第2所定値以上である。
(C)G値とB値との差が第3所定値以上である。
(D)R値が第4所定値以上である。
【0067】
なお、第1所定値~第4所定値は、予め設定された値である。
【0068】
判定部42は、(A)~(D)を全て満たす画素を、黄色条件を満たす画素として判定する。また、判定部42は、(A)~(D)のうち、いずれかの条件を満たさない画素を、黄色条件を満たさない画素として判定する。
【0069】
また、判定部42は、画像データの全画素について所定の黄色条件を満たすか否かを判定し、画像データのグレースケール処理が終了したか否かを判定する。
【0070】
補正部43は、黄色条件を満たす画素に対し、画素の輝度値に強調量を加算し、輝度値を補正する。
【0071】
なお、補正部43は、最大強調量を上限として、強調量を加算する。最大強調量は、黄色の区画線LCにおいて頻度が高い強調量であり、様々な黄色の区画線を撮影して得られた実画像データに基づいて設定される。補正部43は、取得された画像データから算出された強調量(彩度)が、最大強調量よりも大きい場合には、最大強調量を画素の輝度値に加算する。
【0072】
これにより、黄色条件を満たす画素と、黄色条件を満たさない画素とのコントラスト差が大きくなる。なお、ここでは、上記するように強調量(彩度)をR値とB値との差としているが、これは、黄色であるための上記特徴(a)および(d)によるものである。黄色の特徴としては、(a)RGB値の中でB値が最も小さい、および(d)R値が大きい、ことが挙げられる。そのため、黄色の区画線LCに対応する画素では、R値とB値との差が大きい。
【0073】
補正部43は、黄色条件を満たす画素の輝度値に、黄色の区画線LCが有する特徴に応じた値であるR値とB値との差を強調量として加算することで、黄色の区画線LCに対応する画素と路面に対応する画素とのコントラスト差を黄色の区画線LCが有する特徴に応じて大きくすることができる。
【0074】
変換部44は、取得された画像データにグレースケール処理を行う。変換部44は、画像データの各画素の輝度値を正規化し、画像データにおける各画素を輝度値に応じて白から黒までの各階調(256階調)で表現する。変換部44は、例えば、取得された画像データが16bitである場合に、8bitのグレースケールの画像データに変換する。
【0075】
変換部44は、強調量が加算された補正後の輝度値を用いて正規化を行う。具体的には、変換部44は、補正前の輝度値で取り得る最大輝度値に、最大強調量を加算した値が、グレースケール処理後の輝度値の最大輝度値となるように正規化を行う。
【0076】
変換部44は、黄色条件を満たす画素については強調量が加算された補正後の輝度値に対して正規化を行う。また、変換部44は、黄色条件を満たさない画素については算出された輝度値、すなわち強調量が加算されていない輝度値に対して正規化を行う。変換部44は、画像データの全画素の輝度値に対して正規化を行う。
【0077】
変換部44における正規化の一例について、
図4を参照し説明する。
図4は、第1実施形態に係る正規化の一例を示す図である。ここでは、取得された画像データの画素の輝度値が「255」であり、最大強調量として「95」が設定され、最大強調量が強調量として画素の輝度値に加算されているものとする。
【0078】
この場合、正規化前の画像データにおける輝度値「255」に、最大強調量「95」を加算した値「350」が、「255」となるように正規化が行われる。すなわち、黄色条件を満たす画素については補正後の輝度値に対し、および黄色条件を満たさない画素については画素の輝度値に対して、255/350の圧縮率で正規化が行われる。
【0079】
図3に戻り、抽出部45は、グレースケールの画像データに対して、例えば、ソベルフィルタを適用することで、各画素のエッジ強度および輝度勾配を求める。続いて、抽出部45は、エッジ強度が予め設定された所定強度を超える画素を抽出することで、エッジ点を抽出し、隣接するエッジ点を繋ぐことで、エッジ線を抽出する。
【0080】
このように、黄色の区画線LCに対応する画素では、輝度値が補正され、補正された輝度値に基づいてエッジ線が抽出され、区画線LCが検出される。従って、画像処理装置1は、処理負荷を抑制しつつ、黄色の区画線LCを正確に検出することができる。
【0081】
次に、第1実施形態に係る黄色強調処理について
図5を参照し説明する。
図5は、第1実施形態に係る黄色強調処理を説明するフローチャートである。
【0082】
画像処理装置1は、車載カメラ10によって撮影されて得られた画像データを取得する(S100)。
【0083】
画像処理装置1は、取得された画像データの画素の輝度値を算出し(S101)、取得された画像データの画素が黄色条件を満たすか否かを判定する(S102)。なお、画像処理装置1は、処理が戻ってきた場合には、新たな画素について輝度値を算出し、黄色条件を満たすか否かを判定する。
【0084】
画像処理装置1は、黄色条件を満たす場合には(S102:Yes)、強調量を算出し(S103)、算出した強調量を画素の輝度値に加算し、輝度値を補正する(S104)。
【0085】
画像処理装置1は、輝度値を正規化する(S105)。具体的には、画像処理装置1は、黄色条件を満たす画素については補正後の輝度値を正規化する。また、画像処理装置1は、黄色条件を満たさない画素については画素の輝度値を正規化する。
【0086】
画像処理装置1は、画像データの全画素について上記処理が終了したか否かを判定する(S106)。すなわち、画像処理装置1は、画像データのグレースケール処理が終了したか否かを判定する。画像処理装置1は、画像データの全画素について上記処理が終了した場合には(S106:Yes)、今回の処理を終了する。
【0087】
画像処理装置1は、画像データの画素について上記処理を適用していない画素がある場合には(S106:No)、新たな画素に対して上記処理を行う(S101)。
【0088】
次に、第1実施形態に係る画像処理装置1の効果について説明する。
【0089】
画像処理装置1は、R値とB値との差である彩度を算出し、算出した彩度を強調量として黄色条件を満たす画素の輝度値に加算し、黄色条件を満たす画素の輝度値を補正する。そして、画像処理装置1は、補正された輝度値に基づいて区画線LCを検出する。
【0090】
これにより、画像処理装置1は、黄色条件を満たす画素の輝度値を大きくし、黄色の区画線LCに対応する画素と路面に対応する画素とのコントラスト差を大きくすることができる。そのため、画像処理装置1は、例えば、R値とG値とから新たな黄色の画像を合成することなく、黄色の区画線LCを検出することができる。従って、画像処理装置1は、区画線LCを検出する際の処理負荷を抑制しつつ、黄色の区画線LCを正確に検出することができる。
【0091】
画像処理装置1は、補正後の輝度値を用いて画像データの輝度値を正規化する。
【0092】
これにより、画像処理装置1は、黄色の区画線LCに対応する画素と、路面に対応する画素とのコントラスト差を大きくした状態で、画像データの輝度値を正規化することができる。そのため、画像処理装置1は、黄色の区画線LCを正確に検出することができる。
【0093】
画像処理装置1は、実画像データに基づいて設定された最大強調量を上限として、黄色条件を満たす画素の輝度値を補正する。
【0094】
これにより、画像処理装置1は、例えば、取得した画像データの中で最も強調量が大きくなる画素を探索することなく、黄色条件を満たす画素の輝度値を補正し、画像データの輝度値を正規化することができる。そのため、画像処理装置1は、処理負荷を抑制することができる。
【0095】
画像処理装置1は、黄色条件を満たす画素に対してのみ彩度(強調量)を算出する。
【0096】
これにより、画像処理装置1は、処理負荷を抑制することができる。
【0097】
画像処理装置1は、R値とB値との差を彩度として算出する。また、画像処理装置1は、R値とG値との差が第1所定値以下であり、R値とB値との差が第2所定値以上であり、G値とB値との差が第3所定値以上であり、かつR値が弟4所定値以上の画素を、黄色条件を満たす画素として判定し、輝度値を補正する。
【0098】
これにより、画像処理装置1は、黄色条件を満たす画素に対して輝度値を補正することができ、黄色の区画線LCを正確に検出することができる。
【0099】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る画像処理装置1について説明する。ここでは、第1実施形態と異なる箇所を中心に説明する。第2実施形態に係る画像処理装置1は、正規化方法が異なっており、他の構成、および処理については、第1実施形態の画像処理装置1と同じであり、説明は省略する。
【0100】
第2実施形態に係る画像処理装置1の変換部44は、画像データの画素の輝度値と、強調量とを異なる圧縮率で圧縮することで正規化を行う。圧縮率は、正規化後の輝度値を、正規化前の輝度値で除算した値である。数値が小さいほど、圧縮率が高いことを意味する。
【0101】
具体的には、変換部44は、画像データの画素の輝度値を第1圧縮率で圧縮し、強調量を第2圧縮率で圧縮し、正規化を行う。第2圧縮率は、第1圧縮率よりも小さい値である。すなわち、強調量に対する圧縮率は、画像データの画素の輝度値に対する圧縮率よりも高い。
【0102】
変換部44における正規化の一例について、
図5を参照し説明する。
図5は、第2実施形態に係る正規化の一例を示す図である。ここでは、取得された画像データの画素の輝度値が「255」であり、最大強調量として「95」が設定され、最大強調量が強調量として画素の輝度値に加算されているものとする。
【0103】
この場合、第1実施形態と同様に、正規化前の画像データにおける最大輝度値「255」に、最大強調量「95」を加算した値「350」が、「255」となるように正規化が行われる。
【0104】
また、画像データの画素の輝度値は、「255」から「210」に圧縮されており、第1圧縮率は、「0.82」である。最大強調量は、「95」から「45」に圧縮されており、第2圧縮率は、「0.47」である。このように、第2圧縮率は、第1圧縮率よりも高い。
【0105】
このように、黄色条件を満たす画素では、画像データの画素の輝度値に対して、第1圧縮率(例えば、210/255)、および強調量に対して第2圧縮率(例えば、45/95の)で正規化が行われる。また、黄色条件を満たさない画素では、画像データの画素の輝度値に対して、第1圧縮率(例えば、210/255)で正規化が行われる。
【0106】
次に、第2実施形態に係る画像処理装置1の効果について説明する。
【0107】
画像処理装置1は、取得された画像データの画素の輝度値と、強調量とを異なる圧縮率で圧縮し、正規化を行う。画像処理装置1は、黄色条件を満たすか否かに関わらず、画像データの画素の輝度値を第1圧縮率で圧縮し、正規化を行う。
【0108】
これにより、画像処理装置1は、黄色条件を満たす画素の画像データでの輝度値と、黄色条件を満たさない画素の画像データでの輝度値とのコントラスト差の変化を抑制しつつ、黄色条件を満たす画素の輝度値を補正することができる。そのため、画像処理装置1は、画像データにおける画素間のコントラスト差を維持した状態で、黄色条件を満たす画素の輝度値を補正(強調)することができる。従って、画像処理装置1は、画像データの性能変化を小さくしつつ、黄色の区画線LCを正確に検出することができる。
【0109】
画像処理装置1は、第2圧縮率を第1圧縮率よりも高くする。
【0110】
仮に、第1圧縮率を高くすると、画像データにおける画素間のコントラスト差が小さくなり、例えば、白線の区画線LCに対応するエッジ線を正確に抽出することができなくなり、区画線LCを正確に検出することができなくなるおそれがある。これに対し、画像処理装置1は、画像データにおける画素間のコントラスト差を重視しつつ、黄色条件を満たす画素の輝度値を補正することができる。そのため、画像処理装置1は、白線の区画線LC、および黄色の区画線LCを正確に検出することができる。
【0111】
次に変形例に係る画像処理装置1について説明する。
【0112】
変形例に係る画像処理装置1は、G値とB値とを彩度(強調量)として算出してもよい。また、変形例に係る画像処理装置1は、黄色条件のうち「(D)R値が弟4所定値以上である。」を「G値が弟4所定値以上である。」としてもよい。
【0113】
これにより、変形例に係る画像処理装置1は、緑色に近い黄色の区画線LCを正確に検出することができる。
【0114】
また、変形例に係る画像処理装置1は、黄色条件を満たさない画素に対する強調量を「0」とし、全画素の輝度値に強調量を加算し、全画素を補正してもよい。
【0115】
また、変形例に係る画像処理装置1は、最大強調量を設けずに強調量を算出し、正規化を行ってもよい。
【0116】
なお、上記した黄色強調処理は、区画線LC(駐車枠PS)の検出の他に、路面に表示された黄色の車線など、黄色の線を検出する際に、適用することができる。
【0117】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0118】
1 画像処理装置
10 車載カメラ(撮像装置)
21 線分抽出部
25 区画線検出部(検出部)
40 取得部
41 算出部
42 判定部
43 補正部
44 変換部
45 抽出部