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特許7236858操舵機能付ハブユニットおよび操舵システム並びにこれを備えた車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】操舵機能付ハブユニットおよび操舵システム並びにこれを備えた車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 7/08 20060101AFI20230303BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20230303BHJP
   B62D 7/18 20060101ALN20230303BHJP
【FI】
B62D7/08 Z
B62D5/04
B62D7/18 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018235127
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020097256
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】石原 教雄
(72)【発明者】
【氏名】大場 浩量
(72)【発明者】
【氏名】伊東 貴志
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-114121(JP,A)
【文献】特開2017-040344(JP,A)
【文献】特開2016-040141(JP,A)
【文献】特開2014-061744(JP,A)
【文献】特開2012-121391(JP,A)
【文献】特開2017-049063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 7/08
B62D 5/04
B62D 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる操舵用アクチュエータと、を備え、
前記ユニット支持部材は、上下に突出して設けられたトラニオン軸状の転舵軸部を有し、
前記転舵軸部は、前記転舵軸心と同軸であり、
前記操舵用アクチュエータは、回転駆動源と、この回転駆動源の回転出力を直進運動に変換する直動機構とを有し、
前記直動機構の出力ロッドの移動量を監視する位置センサを有し、この位置センサは、位置の変化を検出する半導体素子を1パッケージに2個有し、前記各半導体素子の出力を前記パッケージの外部に出力する出力端子を個別に有する操舵機能付ハブユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の操舵機能付ハブユニットにおいて、前記位置センサが磁気センサである操舵機能付ハブユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の操舵機能付ハブユニットと、制御装置とを備え、前記制御装置は、上位制御部の指令信号を受け、前記直動機構の駆動源となるモータに対する電流指令信号を出力する操舵制御部、および前記電流指令信号に応じた電流を出力して前記モータに印加し前記操舵用アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動制御部を有する操舵システム。
【請求項4】
請求項3に記載の操舵システムにおいて、前記操舵機能付ハブユニットに、前記直動機構の駆動源であるモータの回転を検出する回転センサを有し、前記制御装置に、前記位置センサの前記個々の半導体素子の検出値である2つの検出値と前記回転センサの検出値とを相互に比較して、前記位置センサが異常であるか、および前記回転センサが異常であるかを判定し、異常である場合に制御停止指令を出力するセンサ異常判定部を有する操舵システム。
【請求項5】
請求項1もしくは請求項2に記載の操舵機能付ハブユニット、または請求項3もしくは請求項4に記載の操舵システムを備え、前記操舵機能付ハブユニットを、左右の前輪に装備した車両。
【請求項6】
請求項1もしくは請求項2に記載の操舵機能付ハブユニット、または請求項3もしくは請求項4に記載の操舵システムを備え、前記操舵機能付ハブユニットを、左右の後輪に装備した車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステアリング装置による操舵に付加して操舵輪または非操舵輪に微小な操舵を左右輪独立で行う機能を備えた操舵機能付ハブユニットおよび操舵システム並びにこれを備えた車両に係り、走行状況に合わせ左右の車輪を適切な転舵角に制御することで、燃費の改善および走行性の安定と安全性の向上を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な自動車等の車両は、ハンドルとステアリング装置が機械的に接続され、また、ステアリング装置の両端はタイロッドによってそれぞれの左右輪につながっている。そのため、ハンドルの動きによる左右輪の切れ角度は初期の設定によって決まる。
車両のジオメトリには、(1) 左右輪の切れ角度が同じである「パラレルジオメトリ」、(2) 旋回中心を1か所にするために旋回内輪車輪角度を旋回外輪車輪角度よりも大きく切る「アッカーマンジオメトリ」が知られている。
【0003】
アッカーマンジオメトリは、車両に作用する遠心力を無視できるような低速域での旋回において、車両をスムーズに旋回させるために、各輪が共通の一点を中心として旋回するように左右輪の舵角差を設定している。しかし、遠心力を無視できない高速域の旋回においては、車輪は遠心力とつり合う方向にコーナリングフォースを発生させることが望ましいため、アッカーマンジオメトリよりもパラレルジオメトリとすることが好ましい。
【0004】
前述したように一般的な車両の操舵装置は機械的に車輪と接続されているため、一般的には固定された単一のステアリングジオメトリしか取ることができず、アッカーマンジオメトリとパラレルジオメトリとの中間的なジオメトリに設定されることが多い。しかし、この場合、低速域では左右輪の舵角差が不足して外輪の舵角が過大となり、高速域では内輪の舵角が過大となる。このように内外輪の車輪横力配分に不要な偏りがあると、走行抵抗の悪化による燃費悪化及びタイヤの早期摩耗の原因となり、また内外輪を効率的に利用できないので、コーナリングのスムーズさが損なわれるといった課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102012206337号明細書
【文献】特開2014-061744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、モータを2個使っているため、モータ個数の増大によるコスト増が生じるだけでなく、制御が複雑になる。
特許文献2に記載の技術は、転舵軸に対しハブベアリングを片持ち支持しているため、剛性が低下し、過大な走行Gの発生によってステアリングジオメトリが変化してしまう可能性がある。
また、転舵軸上に減速機を設けた場合、モータを含めてサイズが大きくなる。サイズが大きくなると車輪の内周部に全体を配置することが困難となる。また、減速比の大きい減速機を設けた場合、応答性が悪化する。
【0007】
上記のように従来の補助的な操舵機能を備えた機構は、車両において車輪のトー角度やキャンバー角度を任意に変更することを目的としているため、モータ及び減速機構が複数個必要になり複雑な構成となっている。また、剛性を確保することが困難であり、剛性を確保するためには大型とする必要があり、重くなる。
また、キングピン軸と転舵軸が一致する場合は、構成要素部品がハブユニットの後方(車体側)に配置されるために全体のサイズが大きくなり重くなる。
【0008】
走行中の車両において、車輪のトー角度とキャンバー角度を自由に変更するためには、複雑な構成が必要であり、構成部品が多くなり、巨大化する可能性がある。
【0009】
操舵機能付ハブユニットにおいて、転舵角を細密に制御するために、台形ねじ等を用いた直動機構の出力ロッドの移動量を適切に管理する必要があり、磁気センサ等の直線位置センサ(以下単に「位置センサ」と称する)によるリアルタイムな監視が必要である。
【0010】
また制御中に、前記モータのレゾルバなどの回転センサと位置センサの値を相互チェックすることで、操舵機能付ハブユニットのアクチュエータが正しく動作しているかを互いに確認し、どちらかに異常が生じた場合には制御を停止することが望ましい。
しかし、制御中に位置センサが失陥した場合には、モータのレゾルバ等の回転センサの値と位置センサの値が整合できなくなり、即座に制御が停止してしまう。これを回避するために、磁気センサ等の位置センサを2個設置すると、操舵機能付ハブユニットが大きくなり、サスペンション等の他部品に干渉する可能性がある。
操舵機能付ハブユニットを車輪内の限られたスペースに収容するためには小型化が必要であるが、2個の位置センサを適切に配することが課題となる。
【0011】
この発明の目的は、操舵輪の通常の操舵に加えて、操舵輪または非操舵輪に微小な角度の操舵を左右輪独立で行う機能を備え、走行状況に合わせ左右の車輪を適切な転舵角に制御することで、燃費の改善および走行性の安定と安全性の向上を図れ、かつコンパクトな構造で、直動機構の出力ロッドの移動量を正確に、かつ冗長性を確保して監視することができる操舵機能付ハブユニット、および操舵システム、並びにこれを備えた車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の操舵機能付ハブユニットは、車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる操舵用アクチュエータと、を備え、
前記操舵用アクチュエータは、回転駆動源と、この回転駆動源の回転出力を直進運動に変換する直動機構とを有し、
前記直動機構の前記出力ロッドの移動量を監視する位置センサを有し、この位置センサは、位置の変化を検出する半導体素子を1パッケージに2個有し、前記各半導体素子の出力を前記パッケージの外部に出力する出力端子を個別に有する。
【0013】
この構成の操舵機能付ハブユニットによると、操舵用アクチュエータの駆動により、ハブベアリングを有するハブユニット本体が前記転舵軸心回りに回転させられる。このため操舵輪の通常の操舵に加えて、操舵輪または非操舵輪に微小な角度の操舵を左右輪独立で行うことができる。
具体的には、この構成を操舵輪である前輪に適用した場合、通常のステアリング装置により運転者のハンドル操作で、車輪はナックルおよびユニット支持部とともに操舵されるが、この操舵に付加する形で、この操舵機能付ハブユニットにおける転舵軸心回りに僅かな角度の補助的な操舵を車輪毎に独立して行える。
また、この構成を非転舵輪である後輪に適用した場合は、操舵機能付ハブユニットの全体は転舵しないが、補助操舵機能により、前輪と同様に僅かな角度の転舵を車輪毎に独立して行える。
前記操舵用アクチュエータにより、ハブベアリングを有するハブユニット本体を転舵軸心回りに一定の範囲で自由に回転させることができ、車両の走行状況に応じて、例えば車輪のトー角を任意に変更することができる。
また、旋回走行時に、走行速度に応じて左右輪の舵角差を変えることができる。例えば高速域の旋回走行においてはパラレルジオメトリとし、低速域の旋回走行においてはアッカーマンジオメトリとする等、走行中にステアリングジオメトリを変化させることができる。このように走行中に車輪角度を自由に変更することができるため、車両の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。さらに、左右の車輪の操舵角度を適切に変えることで、旋回走行における車両の旋回半径を小さくし、小回り性能を向上させることもできる。
【0014】
さらに直線走行時にも、それぞれの場面に合わせてトー角度の量を調整することで、低速時にはタイヤをまっすぐに向け抵抗を小さくし燃費を悪化させることなく、高速時にはタイヤ角度をトーインとし走行安定性を確保するなど調整が可能である。
後輪に適用した場合は、舵角を前輪と同じ位相にすると、転舵時に発生するヨーを抑え、車両の安定性を高めることができる。さらに、直線走行時にも左右独立でトー角度を調整することで、走行安定性を確保することができる。
このように車両の挙動を制御するためには、正確に車輪の舵角を制御する必要があるとともに、異常時にはタイヤの角度を初期状態に戻して、安全に制御を停止させる必要がある。
この発明では、車輪の角度を適切に管理し、または指令値通りに動作しているかを確認するために、直動機構の出力ロッドの移動量を監視するセンサとして、直線位置センサである位置センサを用いているため、モータから直動機構に駆動力を伝達する減速機等の経路中や、直動機構自体の遊びに影響されずに精度良く検出できる。また、モータにレゾルバ等の高精度の回転センサを設けた場合も、何回転目であるかの判断を前記位置センサの出力によって行え、かつ相互チョックにより検出の信頼性が高められる。
さらに、前記位置センサには、位置の変化を検出する半導体素子を1パッケージに2個有する、いわゆるデュアルダイの位置センサを配置している。そのため、この操舵機能付ハブユニットは、冗長性を確保し、小型化することができる。
【0015】
この操舵機能付ハブユニットは、このように通常のステアリング装置による操舵輪の操舵に加えて、操舵輪または非操舵輪に微小な角度の操舵を左右輪独立で行えて、走行状況に合わせ左右の車輪を適切な転舵角に制御することで、燃費の改善および走行性の安定と安全性の向上を図れ、かつデュアルダイの位置センサを用いたため、タイヤハウス内に収まるコンパクトな構造で、直動機構の出力ロッドの移動量を正確に、かつ冗長性を確保して監視することができる。
【0016】
この発明の操舵機能付ハブユニットにおいて、前記位置センサが磁気センサであってもよい。この場合、前記半導体素子は、例えばホール素子である。
磁気センサであると、光源が不要で構成が簡素となり、また走行に伴い振動を受ける環境下での耐久性に優れる。
【0017】
この発明の操舵システムは、この発明の操舵機能付ハブユニットは、制御装置とを備え、前記制御装置は、上位制御部の指令信号を受け、前記直動機構の駆動源となるモータに対する電流指令信号を出力する操舵制御部、および前記電流指令信号に応じた電流を出力して前記モータに印加し前記操舵用アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動制御部を有する。
この構成の操舵システムによると、この発明の操舵機能付ハブユニットを簡単な構成で制御して、この操舵機能付ハブユニットの上記利点を効果的に得ることができる。
【0018】
この発明の操舵システムにおいて、前記操舵機能付ハブユニットに、前記直動機構の駆動源であるモータの回転を検出する回転センサを有し、前記制御装置に、前記位置センサの前記個々の反動体素子の検出値である2つの検出値と前記回転センサの検出値とを相互に比較して、前記位置センサに異常であるか、および前記回転センサに異常があるかを判定し、異常である場合に制御停止指令を出力するセンサ異常判定部を有していてもよい。前記回転センサは、例えばレゾルバである。
このセンサ異常判定部を備えることにより、デュアルダイの位置センサを用いたことと相まって、より信頼性の高い操舵の制御が行える。
【0019】
この発明の車両は、この発明の操舵機能付ハブユニット、またはこの発明の操舵システムを備え、前記操舵機能付ハブユニットを、左右の前輪に装備する。
この構成の車両によると、この発明の操舵機能付ハブユニットを前輪に装備した場合の前記各効果を得ることができる。
【0020】
この発明の他の車両は、この発明の操舵機能付ハブユニット、またはこの発明の操舵システムを備え、前記操舵機能付ハブユニットを、左右の後輪に装備する。
この構成の車両によると、この発明の操舵機能付ハブユニットを後輪に装備した場合の前記各効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明の操舵機能付ハブユニットは、車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる操舵用アクチュエータと、を備え、前記操舵用アクチュエータは、回転駆動源と、この回転駆動源の回転出力を直進運動に変換する直動機構とを有し、前記直動機構の前記出力ロッドの移動量を監視する位置センサを有し、この位置センサは、位置の変化を検出する半導体素子を1パッケージに2個有し、前記各半導体素子の出力を前記パッケージの外部に出力する出力端子を個別に有するため、操舵輪の通常の操舵に加えて、操舵輪または非操舵輪に微小な角度の操舵を左右輪独立で行うことができて、走行状況に合わせ左右の車輪を適切な転舵角に制御することで、燃費の改善および走行性の安定と安全性の向上を図れ、かつタイヤハウス内に収まるコンパクトな構造で、直動機構の出力ロッドの移動量を正確に、かつ冗長性を確保して監視することができる。
【0022】
この発明の操舵システムは、この発明の操舵機能付ハブユニットは、制御装置とを備え、前記制御装置は、上位制御部の指令信号を受け、前記直動機構の駆動源となるモータに対する電流指令信号を出力する操舵制御部、および前記電流指令信号に応じた電流を出力して前記モータに印加し前記操舵用アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動制御部を有するため、この発明の操舵機能付ハブユニットを簡単な構成で制御して、この発明の操舵機能付ハブユニットの上記利点を効果的に得ることができる。
【0023】
この発明の車両は、この発明の操舵機能付ハブユニット、またはこの発明の操舵システムを備え、前記操舵機能付ハブユニットを、左右の前輪または後輪に装備するため、この発明の操舵機能付ハブユニットを前輪または後輪に装備した場合の前記各効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明の第1の実施形態に係る操舵機能付ハブユニットおよびその周辺の構成を示す縦断面図である。
図2】同操舵機能付ハブユニットおよびその周辺の構成を示す水平断面図に制御系のブロックを付した説明図である。
図3】同操舵機能付ハブユニットの外観を示す斜視図である。
図4】同操舵機能付ハブユニットの側面図である。
図5】同操舵機能付ハブユニットの平面図である。
図6図4のVI - VI 線断面図である。
図7図2の一部を拡大して示す拡大断面図である。
図8】同操舵機能付ハブユニットに用いた位置センサの概念構成の説明図である。
図9】同操舵機能付ハブユニットを用いた操舵システムにおけるセンサ異常判定部の処理の流れ図である。
図10】同操舵機能付ハブユニットを備えた車両の一例の模式平面図である。
図11】同操舵機能付ハブユニットを備えた車両の他の例の模式平面図である。
図12】同操舵機能付ハブユニットを備えた車両のその他の例の模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1の実施形態]
この発明の第1の実施形態に係る操舵機能付ハブユニットを図1ないし図10と共に説明する。
<操舵機能付ハブユニットの概略構造>
図1に示すように、この操舵機能付ハブユニット1は、ハブベアリング15を有するハブユニット本体2と、ユニット支持部材3と、操舵用アクチュエータ5とを備える。前記ユニット支持部材3は、足回りフレーム部品であるナックル6に一体に設けられている。このユニット支持部材3のインボード側に、操舵用アクチュエータ5のアクチュエータ本体7が設けられ、ユニット支持部材3のアウトボード側に、ハブユニット本体2が設けられる。操舵機能付ハブユニット1を車両に搭載した状態で、車両の車幅方向外側をアウトボード側といい、車両の車幅方向中央側をインボード側という。なお、操舵機能付ハブユニット1を、以下単にハブユニット1と言う場合がある。
【0026】
図2および図3に示すように、ハブユニット本体2とアクチュエータ本体7とはジョイント部8により連結されている。通常、このジョイント部8は、防水、防塵のために図示外のブーツで覆われている。
【0027】
図1に示すように、ハブユニット本体2は、上下方向に延びる転舵軸心A回りに回転自在なように、上下二箇所で回転許容支持部品4,4を介してユニット支持部材3に支持されている。転舵軸心Aは、車輪9の回転軸心Oとは異なる軸心であり、主な操舵を行うキングピン軸とも異なっている。通常の車両は、車両走行の直進安定性の向上を目的としてキングピン角度が10~20度で設定されているが、この実施形態の操舵機能付ハブユニット1は、前記キングピン角度とは別の角度(軸)の転舵軸心を有する。車輪9は、ホイール9aとタイヤ9bとを備える。
【0028】
<操舵機能付ハブユニット1の設置箇所>
この操舵機能付ハブユニット1は、この実施形態では操舵輪に設けられている。具体的には図10に示すように、この操舵機能付ハブユニット1は、車両10の前輪9Fの通常の操舵を行うステアリング装置11による操舵に付加して左右輪個別に微小な角度(約±5deg)を操舵させる機構として、懸架装置12のナックル6に一体に設けられる。
【0029】
ステアリング装置11は、車体に取り付けられ、運転者のハンドル11aの操作、または図示外の自動運転装置、運転支援装置の指令等によって動作し、その進退するタイロッド14が、ユニット支持部材3(図2参照)のステアリング結合部6d(後述する)に連結されている。ステアリング装置11は、ラック・ピニオン式等とされるが、どのタイプのステアリング装置でも構わない。懸架装置12は、例えば、ショックアブソーバーをナックル6に直接固定するストラット式サスペンション機構を適用しているが、マルチリンク式サスペンション機構、その他のサスペンション機構を適用してもよい。
【0030】
<ハブユニット本体2について>
図1に示すように、ハブユニット本体2は、車輪9の支持用のハブベアリング15と、アウターリング16と、このアウターリング16に設けられた後述の補助操舵用の操舵力受け部であるアーム部17(図3)とを備える。
ハブベアリング15は、内輪18と、外輪19と、これら内外輪18,19間に介在したボール等の転動体20とを有し、車体側の部材と車輪9とを繋ぐ役目をしている。
【0031】
このハブベアリング15は、図示の例では、外輪19が固定輪、内輪18が回転輪となり、転動体20が複列とされたアンギュラ玉軸受とされている。図6に示すように、内輪18は、ハブフランジ18aaを有しアウトボード側の軌道面を構成するハブ輪部18aと、このハブ輪部18aの外周に嵌合して固定されてインボード側の軌道面を構成する内輪部18bとを有する。図1に示すように、ハブフランジ18aaに、車輪9のホイール9aがブレーキロータ21aと重なり状態で、ハブボルト41により固定されている。内輪18は、回転軸心O回りに回転する。
【0032】
図6に示すように、アウターリング16は、ハブベアリング15の外輪19の外周面に嵌合された円環部16aと、この円環部16aの外周から上下に突出して設けられた転舵中心部であるトラニオン軸状の転舵軸部16b,16bとを有する。上下の各転舵軸部16bは、転舵軸心Aに同軸に設けられる。
【0033】
図2に示すように、ブレーキ21は、ブレーキロータ21aと、ブレーキキャリパ21bとを有する。ブレーキキャリパ21bは、ハブユニット本体2の前記アウターリング16に一体にアーム状に突出して形成された上下二箇所のブレーキキャリパ取付部22(図4)に取付けられる。
【0034】
<回転許容支持部品4およびユニット支持部材3について>
図6に示すように、各回転許容支持部品4は転がり軸受から成る。この例では、転がり軸受として、円すいころ軸受が適用されている。転がり軸受は、転舵軸部16bの外周に嵌合した内輪4aと、ユニット支持部材3に嵌合した外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在する複数の転動体4cとを有する。
【0035】
ユニット支持部材3は、ナックル6と一体のユニット支持部材本体3Aと、ユニット支持部材結合体3Bとを有する。ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端に、略半割りリング形状のユニット支持部材結合体3Bが着脱自在に固定されている。ユニット支持部材結合体3Bのインボード側側面のうち上下の部分には、部分的な凹球面状の嵌合孔形成部3Baがそれぞれ形成されている。
【0036】
図5および図6に示すように、ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端のうち上下の部分には、部分的な凹球面状の嵌合孔形成部3Aaがそれぞれ形成されている。ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端にユニット支持部材結合体3Bが固定され、各上下の部分につき、嵌合孔形成部3Aa,3Baが互いに組み合わされることにより、全周に連なる嵌合孔が形成される。この嵌合孔に外輪4b(図6参照)が嵌合されている。なお、図3において、ユニット支持部材3を、一点鎖線のハッチングを付して表す。
【0037】
図6に示すように、各転舵軸部16bは、中空軸とされて内周孔内に雌ねじ部が径方向に延びるように形成され、この雌ねじ部に螺合するボルト23が設けられている。内輪4aの端面に円板状の押圧部材24を介在させ、前記雌ねじ部に螺合するボルト23により、内輪4aの端面に押圧力を付与することで、各回転許容支持部品4にそれぞれ予圧を与えている。すなわち、車両の重量などの外力がハブユニットに作用した場合でも予圧が抜けないように初期予圧が設定されている。これにより各回転許容支持部品4の剛性を高め得る。なお、回転許容支持部品4の転がり軸受は、円すいころ軸受に代えてアンギュラ玉軸受または四点接触玉軸受など、他の形式の軸受を用いることも可能であるが、予圧を与えることができる軸受が好ましい。
【0038】
図1に示すように、上下の転舵軸部16b,16bは、それぞれ回転許容支持部品4,4を介してユニット支持部材3に支持され、各回転許容支持部品4が車輪9のホイール9a内に位置する。この例では、各回転許容支持部品4が、ホイール9a内でこのホイール9aの幅方向中間付近に配置される。
【0039】
図2に示すように、ハブユニット本体2のアーム部17は、ハブベアリング15の外輪19に補助的な操舵力を与える作用点となる部位であり、アウターリング16の外周の一部に一体に突出する。アーム部17は、ジョイント部8を介して、操舵用アクチュエータ5の直動出力部となる出力ロッド25aに回転自在に連結されている。これにより、操舵用アクチュエータ5の出力ロッド25aが進退することで、ハブユニット本体2が転舵軸心A回りに回転、つまり補助操舵させられる。
【0040】
<操舵用アクチュエータ5、回転センサ53>
図3に示すように、操舵用アクチュエータ5は、ハブユニット本体2を転舵軸心A(図1)回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7を有する。
図2に示すように、アクチュエータ本体7は、駆動源であるモータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を出力ロッド25aの往復直線動作に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。モータ26には回転位置を検出するレゾルバ等の回転センサ53が設けられている。
【0041】
減速機27は、ベルト伝達機構等の巻き掛け式伝達機構またはギヤ列等を用いることができ、図2の例ではベルト伝達機構が用いられている。減速機27は、ドライブプーリ27a、ドリブンプーリ27bと、ベルト27cとを有する。モータ26のモータ軸にドライブプーリ27aが結合され、直動機構25の回転自在なナット部材25bに、ドリブンプーリ27bが設けられている。このドリブンプーリ27bは、前記モータ軸に平行に配置されている。モータ26の駆動力は、ドライブプーリ27aからベルト27cを介してドリブンプーリ27bに伝達される。前記各ドライブプーリ27a,ドリブンプーリ27bとベルト27cとで、巻き掛け式の減速機27が構成される。
【0042】
<直動機構25>
直動機構25は、滑りねじまたはボールねじ等の送りねじ機構、またはラック・ピニオン機構等を用いることができ、この例では台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構が用いられている。この直動機構25は、具体的には、外周部に前記ドリブンプーリ27bが設けられて軸方向両側の軸受42,42によりユニット支持部材3に回転自在に設置されたナット部材25bと、このナット部材25bに噛み合う雄ねじ部25aa(図7参照)が外周に設けられた前記出力ロッド25aとでなる。出力ロッド25aは、軸状の回り止め部材51によってユニット支持部材3に対して回り止めされている。回り止め部材51は、出力ロッド25aの後端に取付けられていて、外周にローラ51aを有し、このローラ51aは、出力ロッド25aの進退時に、ユニット支持部材3に設けられた回り止め用ガイド面52に回転しながら案内される。
直動機構25は、前記台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構を備えるため、タイヤ9bからの逆入力の防止効果を高め得る。モータ26、減速機27および直動機構25を備えたアクチュエータ本体7は、サブアセンブリとして組み立てられてケース6bにボルト等により着脱自在に取り付けられる。なおモータ26の駆動力を、減速機を介さず直接に直動機構25へ伝達する機構も可能である。
【0043】
<位置センサ44>
図7に拡大して示すように、操舵用アクチュエータ5には直動機構25の出力ロッド25aの移動量を監視する直線位置センサである位置センサ44を備える。この位置センサ44は、図8に概念的に示すように、位置の変化を検出する半導体素子45を、1つのパッケージ46に2個有し、各半導体素子45,45の出力をパッケージ46の外部に出力する出力端子47,47を個別に有している。位置センサ44は、磁気式、光学式、静電容量式等の各種のセンサを用いることができるが、この実施形態では、磁気センサが用いられ、前記半導体素子45,45にはホール素子が用いられている。
【0044】
同図に示すように、直動機構25の出力ロッド25aの後端にセンサターゲットとなる永久磁石48が取付けられており、位置センサ44は、出力ロッド25aの進退に伴う永久磁石48の磁場の変化を前記各半導体素子45,45が読み取り、出力ロッド25aの進退位置を検出する。永久磁石48は、図示の例では前記回り止め部材51に取付けられている。位置センサ44は、基板49を介してユニット支持部材3のセンサハウジング50に取付けられており、永久磁石48が進退する経路に対向して、直動機構25の後部に配置されている。
【0045】
<その他の機構的構成>
図2において、前記ケース6bは、ユニット支持部材3の一部として、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ケース6bは、有底筒状に形成され、モータ26を支持するモータ収容部と、直動機構25を支持する直動機構収容部が設けられている。前記モータ収容部には、モータ26をケース内所定位置に支持する嵌合孔が形成されている。前記直動機構収容部には、直動機構25をケース内所定位置に支持する嵌合孔、および、出力ロッド25aの進退を許す貫通孔等が形成されている。
【0046】
図3に示すように、ユニット支持部材本体3Aは、前記ケース6b、ショックアブソーバの取り付け部となるショックアブソーバ取り付け部6c、およびステアリング装置11(図2)の結合部となるステアリング装置結合部6dを有する。これらショックアブソーバ取り付け部6cおよびステアリング装置結合部6dも、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ユニット支持部材本体3Aの外表面部における上部に、ショックアブソーバ取り付け部6cが突出するように形成されている。ユニット支持部材本体3Aの外表面部における側面部には、ステアリング装置結合部6dが突出するように形成されている。
【0047】
<操舵システムについて>
図2に示すように、この操舵システムは、第1の実施形態に係る操舵機能付ハブユニット1と、この操舵機能付ハブユニット1の操舵用アクチュエータ5を制御する制御装置29とを備える。制御装置29は、操舵制御部30と、アクチュエータ駆動制御部31と、センサ異常判定部52を有する。
【0048】
操舵制御部30は、上位制御部32から与えられた補助操舵角指令信号(操舵角指令信号)に応じた電流指令信号を出力する。
上位制御部32は操舵制御部30の上位の制御手段であり、この上位制御部32として、例えば、車両全般を制御する電気制御ユニット(Vehicle Control Unit, 略称VCU)が適用される。
【0049】
アクチュエータ駆動制御部31は、操舵制御部30から入力された電流指令信号に応じた電流をモータ26に出力して操舵用アクチュエータ5の出力ロッド25aの進退位置を駆動制御し、転舵軸心A(図1参照)回りのハブユニット本体2の転舵角度を制御する。これにより、運転者のハンドル操作による操舵に付加して、車輪を微小に角度変化させることができる。直線走行時にも、それぞれの場面に合わせてトー角の量を調整し得る。
アクチュエータ駆動制御部31は、例えば、図示外のスイッチ素子を用いたハーフブリッジ回路を構成し、前記スイッチ素子のON-OFFデューティ比によりモータ印加電圧を決定するPWM制御を行う。
【0050】
アクチュエータ駆動制御部31は、モータ26に設けられたレゾルバ等の回転センサ53により検出される回転位置の値から求まる出力ロッド25aの進退位置を用いてフィードバック制御を行う。このとき、アクチュエータ駆動制御部31は、位置センサ44の検出値を用い、モータ26が原点から何回転目に位置するかの認識を行う。
なお、回転センサ53に異常が発生した場合に、位置センサ44の検出値を用いて前記制御を行うようにしてもよく、またモータ26に回転センサ53を設けずに、位置センサ44の検出値のみを用いてフィードバック等の制御を行うようにしてもよい。
【0051】
センサ異常判定部52は、位置センサ44の個々の半導体素子45,45(図8参照)の検出値である2つの検出値と回転センサ53の検出値とを相互に比較して、位置センサ44の2つの検出値の両方が共に異常であるか、および回転センサ53の検出値が異常であるかを判定し、異常である場合に制御停止指令を出力する。制御装置29は、この制御停止指令に応答してアクチュエータ駆動制御部31等の制御を停止する。センサ異常判定部52の具体的な処理については、後に図9の流れ図と共に説明する。
【0052】
<非操舵輪への適用について>
この操舵機能付ハブユニット1は、非操舵輪に対して用いてもよい。例えば、図11に示すように、前輪操舵の車両において、後輪9Rを支持する懸架装置12Rの車輪用軸受設置部となる足回りフレーム部品6Rに設定し、後輪操舵に用いてもよい。
その他図12に示すように、操舵機能付ハブユニット1を、操舵輪である左右の前輪9F,9Fおよび非操舵輪である左右の後輪9R,9Rにそれぞれ用いてもよい。
【0053】
<作用効果>
上記構成の操舵機能付ハブユニット1によれば、通常の操舵を行うステアリング装置11(図8参照)のキングピン軸とは異なる転舵軸心Aを持ち、ハブベアリング15を有するハブユニット本体2が前記転舵軸心A回りに上下両端部で回転可能に保持されている。また、ハブユニット1内に配置される操舵用アクチュエータ5によって、ハブユニット本体2を転舵軸心Aを中心として回転作動させることが可能である。これによって、簡単な構造でハブユニット本体2に取り付けられた車輪9のトー角度を走行中に自由に変更することができる。
【0054】
運転者はハンドル11aによって車輪9の舵角を操作するが、車両10の上位制御部32では車両10の状況に合わせて左右輪の補助転舵角の指令信号を出力し、操舵制御部30は入力された(舵角指令信号)に応じて電流指令信号を出力する。電流指令信号を受けたアクチュエータ駆動制御部31は、指令信号に応じてモータ駆動電流を左右の操舵用アクチュエータ5のモータに出力することにより、ユニット支持部材3に対するハブベアリング15を有するハブユニット本体2の角度を微小に変化させる。
【0055】
車両の走行条件に応じ、左右の車輪9,9(9F,9F)を独立して角度を任意に変更することができるため、適切にタイヤ角度を補正転舵することで、車両10の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。また、適切な車輪角度を設定することで燃費を改善することも可能となる。
具体例を挙げると、高速域の旋回走行においてはパラレルジオメトリとし、低速域の旋回走行においてはアッカーマンジオメトリとする等、走行中にステアリングジオメトリを変化させることができる。このように走行中に車輪角度を自由に変更することができるため、車両10の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。さらに、左右の操舵輪の転舵角度を適切に変えることで、旋回走行における車両10の旋回半径を小さくし、小回り性能を向上させることもできる。直線走行時にも、それぞれの場面に合わせてトー角度の量を調整することで、低速時にはタイヤをまっすぐに向け抵抗を小さくし燃費を悪化させることなく、高速時にはタイヤ角度をトーインとし走行安定性を確保するなど調整が可能である。
【0056】
<位置センサ44の作用,効果>
直動機構25の出力ロッド25aの移動量を監視するセンサとして、直線位置センサである位置センサ44を用いているため、モータ26から直動機構25に駆動力を伝達する減速機等の経路中や、直動機構25自体の遊びに影響されずに精度良く検出できる。またモータ26にレゾルバ等の高精度の回転センサ53を設けた場合も、何回転目であるかの判断を前記位置センサ53の出力によって行え、かつ相互チェックにより検出の信頼性が高められる。
【0057】
<センサ異常の判定、制御の切換、停止>
この操舵機能付ハブユニット1において、転舵角を細密に制御するためには、直動機構25の出力ロッド25aの移動量を適切に管理する必要がある。また、制御中にモータ26のレゾルバなどの回転センサ53と位置センサ44の値を相互チェックすることで、操舵用アクチュエータ5が正しく動作しているかを互いに確認し、どちらかに異常が生じた場合には制御を停止することが望ましい。そこで、センサ異常判定部52を設け、図9に示す処理を行っている。
【0058】
図9と共に、センサ異常判定部52の処理を流れを説明する。同図において、位置センサ44の2つの半導体素子45,45(図7参照)は、「位置センサ(1) 」、「位置センサ(2) 」と称して区別している。図7のいずれの半導体素子45,45が位置センサ(1) であってもよい。また、回転センサ53については、レゾルバを用いた例であるため、「レゾルバ」と称し、その検出値を「モータレゾルバ値」と称している。
【0059】
走行中に位置センサ(1) と位置センサ(2) は、正常に動作しているか確認するために、値の範囲チェックを行う。(ステップS1)。この時、位置センサ(1) と位置センサ2(2) の値が範囲外(定められた位置検出範囲Cの外)の場合、位置センサ(1) 、位置センサ2(2) のどちらかに失陥が考えられるため、制御を停止し(ステップS9)、異常(位置センサ(1) 、(2) の異常)を出力する。(ステップS8)
【0060】
ステップS1で位置センサ44((1) ,(2) )が共に正常に動作していると判断した場合、モータレゾルバ値(R) と位置センサ(1) の値(A) との比較を行い、相互チェックを行っている。それぞれの値の偏差が小さい場合(設定偏差よりも小さい場合)は、正常に動作していると判断し、制御を継続する。(ステップS2)
それぞれの値の偏差が大きい場合、どちらかの位置センサ(1) ,(2) が失陥していると考えられるため、どちらの位置センサ(1) ,(2) が失陥しているかを判断するために、モータレゾルバ値(R) と位置センサ2の値(B) を比較する。(ステップS3)
この時に、モータレゾルバ値(R) と位置センサ(2) の値(B) の偏差が小さい場合は、位置センサ(1) の異常を出力(ステップS4)し、制御は継続する。(ステップS5)
【0061】
モータレゾルバ値(R) と位置センサ(2) の値(B) の偏差が大きい場合は、さらに位置センサ(1) の値(A) と位置センサ(2) の値(B) を比較する。(ステップS6)
位置センサ(1) と位置センサ(2) の値の偏差が小さい場合は、モータレゾルバが異常と判断し、モータレゾルバ異常を出力(ステップS7)して、制御を停止する。(ステップS9)
【0062】
また、位置センサ(1) の値(A) と位置センサ(2) の値(B) の偏差が大きい場合は、位置センサ(1) および位置センサ2(2) の異常を出力(ステップS8)し、制御を停止する。(ステップS9)
この様に、モータレゾルバ値と位置センサ44の出力2個を比較することで、冗長性を確保することが可能となる。
【0063】
以上のように、この実施形態では、車輪の角度を適切に管理し、または、指令値通りに動作しているかを確認するために、直動機構25の出力ロッド25aの移動量を直線位置センサである位置センサ44によってセンシングするとともに、この位置センサ44に、1パッケージに2個の半導体素子(ダイ)45,45を備えたデュアルダイの磁気センサを配置しているため、冗長性を確保し、補助転舵機能付きハブユニット1を小型化することができる。
【0064】
以上、実施形態に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
2…ハブユニット本体、3…ユニット支持部材、5…操舵用アクチュエータ、6…ナックル(足回りフレーム部品)、9…車輪、12,12R…懸架装置、15…ハブベアリング、16a…円環部、16b…転舵軸部(転舵中心部)、25…直動機構、25a…出力ロッド、29…制御装置、30…操舵制御部、31…アクチュエータ駆動制御部、32…上位制御部、44…位置センサ、45…半導体素子、46…パッケージ、47…端子、48…永久磁石、49…基板、52…センサ異常判定部、53…回転センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12