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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20230303BHJP
   B66C 13/12 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
E02F9/00 B
E02F9/00 N
B66C13/12 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019030691
(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2020133320
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本木 豪一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和義
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027120(JP,A)
【文献】特開2017-155493(JP,A)
【文献】特開2004-337668(JP,A)
【文献】特開2010-240541(JP,A)
【文献】特開2010-209521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B66C 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロント装置を備えた本体と、
前記本体および前記フロント装置に設けられた油圧アクチュエータと、
作動油を前記油圧アクチュエータに供給する油圧ポンプと、
前記本体に設けられ作動油を冷却するオイルクーラと、
前記本体に設けられ作動油を貯えた作動油タンクと、
前記作動油タンク内の作動油を前記油圧アクチュエータに供給するために前記作動油タンクと前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間を接続した供給管路と、
前記油圧アクチュエータから排出された作動油を前記オイルクーラを介して前記作動油タンク内に戻す戻り管路とを含んで構成された建設機械において、
前記戻り管路は、前記オイルクーラと前記作動油タンクとの間を接続する下流戻り管路部を有し、
前記下流戻り管路部は、前記オイルクーラの下側に接続された上流部位と、前記上流部位よりも高い位置で前記作動油タンクの上側に接続された下流部位と、前記上流部位と前記下流部位との間を接続する中間部位と、により構成されており、
前記下流戻り管路部のうち前記上流部位に、作動油の性状を検出するオイルセンサが設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記下流戻り管路部のうち前記上流部位には、作動油のサンプルを取出すオイルサンプリングポートが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば作動油タンクと油圧アクチュエータとの間で作動油を流通させる構成を備えた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回装置を介して旋回可能に設けられた上部旋回体と、上部旋回体の前部に俯仰の動作が可能に設けられたフロント装置とにより構成されている。また、下部走行体、旋回装置およびフロント装置には、各種の油圧アクチュエータが設けられている。
【0003】
上部旋回体には、エンジン等の原動機によって駆動され作動油を油圧アクチュエータに供給する油圧ポンプと、作動油を冷却するオイルクーラと、作動油を貯えた作動油タンクとを備えている。また、上部旋回体には、作動油タンク内の作動油を各油圧アクチュエータに供給するために作動油タンクと油圧ポンプと各油圧アクチュエータとの間を接続した供給管路と、油圧アクチュエータから排出された作動油をオイルクーラを介して作動油タンク内に戻す戻り管路とが設けられている。
【0004】
さらに、油圧ショベルの稼働状態を把握するために、油圧ショベルには、エンジンの排気温度、排気圧力、潤滑油の温度、作動油の温度、圧力等を含む稼働データを検出する稼働センサが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-259729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、油圧ショベルにおいて、作動油の性状を把握することは重要であり、作動油が劣化したり、作動油に異物が混入したりしていると、各油圧アクチュエータや油圧ポンプの性能が低下する虞がある。この場合、作動油の性状を正確に把握するためには、作動油の性状を検出するポイントが重要になる。しかし、特許文献1の発明では、稼働センサによる作動油の検出ポイントが定まっていないため、作動油の性状を正確に検出することができない虞がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、オイルセンサによって作動油の性状を正確に検出でき、耐久性や信頼性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フロント装置を備えた本体と、前記本体および前記フロント装置に設けられた油圧アクチュエータと、作動油を前記油圧アクチュエータに供給する油圧ポンプと、前記本体に設けられ作動油を冷却するオイルクーラと、前記本体に設けられ作動油を貯えた作動油タンクと、前記作動油タンク内の作動油を前記油圧アクチュエータに供給するために前記作動油タンクと前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間を接続した供給管路と、前記油圧アクチュエータから排出された作動油を前記オイルクーラを介して前記作動油タンク内に戻す戻り管路とを含んで構成された建設機械において、前記戻り管路は、前記オイルクーラと前記作動油タンクとの間を接続する下流戻り管路部を有し、前記下流戻り管路部は、前記オイルクーラの下側に接続された上流部位と、前記上流部位よりも高い位置で前記作動油タンクの上側に接続された下流部位と、前記上流部位と前記下流部位との間を接続する中間部位と、により構成されており、前記下流戻り管路部のうち前記上流部位に、作動油の性状を検出するオイルセンサが設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オイルセンサによって作動油の性状を正確に検出でき、耐久性や信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る油圧ショベルを示す正面図である。
図2】上部旋回体をフロント装置の一部と一緒に拡大して示す平面図である。
図3】上部旋回体の後側部位を拡大して示す斜視図である。
図4】外装カバーのメンテナンス用の開口部から戻り管路に設けられたオイルセンサとオイルサンプリングポートを露出させた状態を示す要部拡大の斜視図である。
図5】オイルクーラ、作動油タンク、コントロールバルブ、供給管路、戻り管路、オイルセンサおよびオイルサンプリングポートを示す斜視図である。
図6】作動油の流通経路を模式的に示す構成図である。
図7】本発明の第2の実施の形態による戻り管路を、オイルクーラ、作動油タンク、コントロールバルブ、供給管路、オイルセンサ、オイルサンプリングポートと一緒に図5と同様位置から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、以下に説明する複数の発明を包含する発明群に属する発明であり、以下に、その発明群の実施形態として、第1および第2の実施形態について説明するが、そのうち、第2の実施形態が、本出願人が特許請求の範囲に記載した発明に対応するものである。
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。

【0012】
図1ないし図6は、本発明の第1の実施の形態を示している。油圧ショベル1は、前,後方向に自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4の前,後方向の前部に俯仰の動作が可能に設けられ土砂の掘削作業等を行うフロント装置5とにより構成されている。下部走行体2と上部旋回体4とは、本体を構成している。また、下部走行体2は走行用の油圧モータ2A(図6中に図示)を有し、旋回装置3は旋回用の油圧モータ3A(図6中に図示)を有している。これらの油圧モータ2A,3Aは、油圧アクチュエータを構成している。
【0013】
フロント装置5は、後述する旋回フレーム6の前部に設けられている。フロント装置5は、基端側のフート部が旋回フレーム6の各縦板6B,6Cの前部に俯仰の動作が可能に取付けられたブーム5Aと、ブーム5Aの先端部に回動可能に取付けられたアーム5Bと、アーム5Bの先端部に回動可能に取付けられたバケット5Cと、これらを駆動する油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5Fとにより構成されている。なお、フロント装置5は、バケット5Cに交換して、グラップル、カッター、ブレーカ等(いずれも図示せず)の他の作業具を取付けることができる。他の作業具を取付けた場合、取付けられる作業具によっては油圧アクチュエータが追加されることがある。
【0014】
図2に示すように、上部旋回体4を構成する旋回フレーム6は、底板6Aと、底板6Aの左,右方向に中央寄りに位置して立設され、底板6A上を前,後方向に延びた左縦板6B,右縦板6Cとを備えている。左,右の縦板6B,6Cには、その前部にフロント装置5のブーム5Aのフート部が俯仰の動作が可能に取付けられている。
【0015】
カウンタウエイト7は、フロント装置5との重量バランスをとるために旋回フレーム6の後部に取付けられている。キャブ8は、旋回フレーム6の左前部に設けられ、内部には運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー等(いずれも図示せず)が設けられている。
【0016】
エンジン9は、カウンタウエイト7の前側に位置して旋回フレーム6上に左,右方向に延びる横置き状態で搭載されている(図2中に点線で図示)。このエンジン9は、旋回フレーム6上に防振状態で支持されている。エンジン9の左側には、後述の熱交換装置12に冷却風を供給するための冷却ファン9Aが設けられている。一方、エンジン9の右側には、油圧ポンプ11が設けられている。さらに、エンジン9には、当該エンジン9から排出された排気ガスを処理する排気ガス処理装置10が接続して設けられている。
【0017】
油圧ポンプ11は、エンジン9の右側に設けられている。油圧ポンプ11は、エンジン9によって駆動されることにより、後述の作動油タンク14から供給される作動油を圧油とし、この圧油をコントロールバルブ15を介して下部走行体2の油圧モータ2A,3A、フロント装置5の各シリンダ5D,5E,5F等に向け供給する。
【0018】
熱交換装置12は、エンジン9の左側に位置して冷却ファン9Aに対面して設けられている。熱交換装置12は、本体を構成する上部旋回体4の旋回フレーム6上に取付けられた矩形状の枠体12Aを有し、この枠体12A内に、オイルクーラ13(図5参照)、ラジエータ、インタクーラ(いずれも図示せず)等を備えている。
【0019】
オイルクーラ13は、枠体12Aにラジエータ、インタクーラ等と並んで設けられている。オイルクーラ13は、作動油タンク14に戻される作動油を冷却する。オイルクーラ13は、上,下方向の上側位置に流入管13Aを有し、下側位置に流出管13Bを有している。流入管13Aには、後述するメイン戻り管路17の上流戻り管路部17Aが接続されている。一方、流出管13Bには、下流戻り管路部17Bが接続されている。
【0020】
作動油タンク14は、油圧ポンプ11の前側に位置して旋回フレーム6の右側に設けられている。作動油タンク14は、円筒状の胴部14Aと、胴部14Aの上側を閉塞した上蓋部14Bと、胴部14Aの下側を閉塞した下蓋部14Cとにより構成されている。作動油タンク14は、内部に作動油を貯えている。作動油タンク14Aは、上部側に位置してフィルタ14D(図6中に点線で図示)を内蔵している。このフィルタ14Dは、作動油が油圧ポンプ11、コントロールバルブ15、各油圧モータ2A,3A、各シリンダ5D,5E,5Fを流通して摩耗粒子等の異物が混入したときに、この異物を除去する。フィルタ14Dは、供給管路16とメイン戻り管路17とからなる作動油の流通経路の最下流部に配置されている。
【0021】
コントロールバルブ15は、例えば、エンジン9の前側に位置して旋回フレーム6上に設けられている。コントロールバルブ15は、下部走行体2の油圧モータ2A、旋回装置3の油圧モータ3A、フロント装置5のブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5F等の各種の油圧アクチュエータに対し、圧油の給排を制御する複数の方向制御弁の集合体として構成されている。
【0022】
ここで、コントロールバルブ15は、油圧ポンプ11から供給された圧油が流入する流入ポート、オイルクーラ13に向けて作動油が流出するメイン流出ポート、オイルクーラ13をバイパスして作動油タンク14に向けて作動油が流出するサブ流出ポート、油圧モータ2A,3A、シリンダ5D,5E,5F等との間で圧油が流出、流入する給排ポートを備えている。
【0023】
供給管路16は、作動油タンク14内の作動油を油圧アクチュエータとしての油圧モータ2A,3A、シリンダ5D,5E,5F等に供給するために、作動油タンク14と油圧ポンプ11と油圧モータ2A,3A、シリンダ5D,5E,5Fとの間を接続して設けられている。供給管路16は、作動油タンク14と油圧ポンプ11とを接続した上流供給管路部16Aと、油圧ポンプ11とコントロールバルブ15とを接続した下流供給管路部16Bと、コントロールバルブ15と油圧モータ2A,3A、シリンダ5D,5E,5Fとを接続して設けられた2本を1組とする複数組の給排管路部16Cとにより構成されている。
【0024】
各給排管路部16Cは、油圧モータ2A,3Aの回転方向、シリンダ5D,5E,5Fの伸長、縮小動作に応じて供給と排出とが切換わる。即ち、各給排管路部16Cは、供給管路16の下流供給管路部16Bの一部と、後述するメイン戻り管路17の上流戻り管路部17Aの一部との両方を構成している。
【0025】
メイン戻り管路17は、油圧モータ2A,3A、シリンダ5D,5E,5Fから排出された作動油をオイルクーラ13を介して作動油タンク14内に戻す戻り管路を構成している。メイン戻り管路17は、コントロールバルブ15とオイルクーラ13との間を接続した上流戻り管路部17Aと、オイルクーラ13と作動油タンク14との間を接続した下流戻り管路部17Bとにより構成されている。前述したように、上流戻り管路部17Aの一部には、供給管路16の各給排管路部16Cが含まれる。
【0026】
上流戻り管路部17Aは、作動油の流れ方向の上流側がコントロールバルブ15のメイン流出ポートに接続されている。一方、下流側は、オイルクーラ13の流入管13Aに接続されている。
【0027】
下流戻り管路部17Bは、作動油の流れ方向の上流側がオイルクーラ13の流出管13Bに接続されている。一方、下流側は、作動油タンク14でフィルタ14Dに接続されている。ここで、下流戻り管路部17Bは、オイルクーラ13側の上流部位17B1と、作動油タンク14側の下流部位17B2と、上流部位17B1と下流部位17B2との間となる中間部位17B3とに分けることができる。この場合、上流部位17B1は、オイルクーラ13の下側に位置する流出管13Bに接続されているから、後述の外装カバー21内で低い位置に配置されている。また、上流部位17B1が配置されたオイルクーラ13の近傍位置は、後述する外装カバー21の左開閉カバー部22を開くことにより、上部旋回体4の左側の外部から手の届く位置となっている。
【0028】
下流部位17B2は、作動油タンク14の上側に位置するフィルタ14Dに接続されているから、高い位置に配置されている。この下流部位17B2が配置された外装カバー21内の高所位置は、外装カバー21の上面カバー部24に設けられたメンテナンス用の開口部24Aと対面している。即ち、下流部位17B2は、上面カバー部24上に乗った作業者がメンテナンス用の開口部24Aに手を差し入れて容易に届く位置となっている。
【0029】
さらに、下流部位17B2には、センサ接続口17Cとポート接続口17Dとが設けられている。センサ接続口17Cとポート接続口17Dとは、例えば、内周側に雌ねじが形成された筒状体からなり、メイン戻り管路17内の油通路と連通するように下流部位17B2の外周側に固着されている。センサ接続口17Cには、後述のオイルセンサ18が接続され、ポート接続口17Dには、後述のオイルサンプリングポート19が接続されている。
【0030】
オイルセンサ18は、メイン戻り管路17のうち、オイルクーラ13と作動油タンク14との間を接続した下流戻り管路部17Bに設けられている。オイルセンサ18は、作動油の性状を検出するもので、例えば、作動油の粘度、濃度、非導電率、温度等を検出し、コントローラ(図示せず)に出力する。オイルセンサ18は、下流戻り管路部17Bのセンサ接続口17Cに取付けられている。また、オイルセンサ18は、下流部位17B2から前側に突出するように配置され、これにより、メンテナンス用の開口部24Aを通じて点検作業や交換作業を容易に行うことができる。
【0031】
オイルサンプリングポート19は、オイルセンサ18と一緒に、下流戻り管路部17Bに設けられている。オイルサンプリングポート19は、作動油の性状をより詳しく調べるために、実際の作動油を抽出するための抽出口を構成している。オイルサンプリングポート19は、例えば、チェック弁を内蔵しており、このチェック弁を強制的に開弁させることで作動油を取出すことができる。抽出した作動油は、検査機関に送られて検査される。また、オイルサンプリングポート19は、作動油の流れ方向でオイルセンサ18と同じ位置に設けられている。これにより、オイルセンサ18が検出している作動油を検査対象として抽出させることができる。さらに、オイルサンプリングポート19は、下流戻り管路部17Bのポート接続口17Dに下向きに突出するように取付けられている。
【0032】
このように、オイルセンサ18と一緒にオイルサンプリングポート19を設けた構成では、オイルセンサ18による作動油の検出結果とオイルサンプリングポート19から抽出した実際の作動油の検査結果とを比較することができる。これにより、オイルセンサ18を含む作動油の性状検出に係る機器類の不良等を、両者の結果の差として発見することができる。
【0033】
ここで、オイルセンサ18およびオイルサンプリングポート19が取付けられている下流戻り管路部17Bの下流部位17B2は、供給管路16とメイン戻り管路17とからなる作動油の流通経路の最下流部となるフィルタ14Dの近傍となっている。従って、下流部位17B2は、油圧ポンプ11、コントロールバルブ15、各油圧モータ2A,3A、各シリンダ5D,5E,5F等の機器を通過した作動油が流通する。このことから、各機器で摩耗粒子等の異物が発生した場合、下流部位17B2では、作動油に混入した異物の量が最大となる。これにより、オイルセンサ18は、現状で最も悪い作動油の性状を検出でき、オイルサンプリングポート19は、現状で最も性状が悪い作動油を抽出させることができる。
【0034】
サブ戻り管路20は、コントロールバルブ15と作動油タンク14とを接続している。サブ戻り管路20は、作動油の流れ方向の上流側がコントロールバルブ15のサブ流出ポートに接続され、下流側は、作動油タンク14のフィルタ14Dに接続されている。サブ戻り管路20は、コントロールバルブ15から作動油タンク14に直接的に作動油を戻すものである。
【0035】
外装カバー21は、キャブ8とカウンタウエイト7との間に位置して旋回フレーム6上に設けられている。この外装カバー21は、エンジン9、油圧ポンプ11、オイルクーラ13を含む熱交換装置12、供給管路16および戻り管路17,20を覆っている。外装カバー21は、左開閉カバー部22、右開閉カバー部23、上面カバー部24を含んで構成されている。
【0036】
左開閉カバー部22は、キャブ8とカウンタウエイト7との間で、熱交換装置12の左側を覆うように設けられている。また、左開閉カバー部22は、例えば、水平方向に回動可能(開閉可能)に設けられ、開扉された状態では、熱交換装置12等のメンテナンスを行うことができる。
【0037】
右開閉カバー部23は、作動油タンク14とカウンタウエイト7との間で、油圧ポンプ11の右側を覆うように設けられている。また、右開閉カバー部23は、例えば、水平方向に回動可能(開閉可能)に設けられ、開扉された状態では、油圧ポンプ11等のメンテナンスを行うことができる。
【0038】
上面カバー部24は、キャブ8とカウンタウエイト7との間で、エンジン9、油圧ポンプ11、熱交換装置12、供給管路16および戻り管路17,20を上側から覆って設けられている。上面カバー部24には、エンジンカバー部24C(エンジン9)の前側で作動油タンク14の左側に、左,右方向に延びてメンテナンス用の開口部24A(図4参照)が設けられている。この開口部24Aは、オイルセンサ18とオイルサンプリングポート19と対面する上側位置に開口している。また、上面カバー部24には、開口部24Aを覆うことができる閉塞板24Bが着脱可能(開閉可能)に設けられている。
【0039】
上面カバー部24の後側には、エンジン9、油圧ポンプ11、熱交換装置12の上側を開放してメンテナンス開口(図示せず)が設けられている。さらに、上面カバー部24には、メンテナンス開口を開閉可能に覆ったエンジンカバー部24Cが設けられている。
【0040】
なお、燃料タンク25は、作動油タンク14の前側に位置して旋回フレーム6上に設けられている。この燃料タンク25は、エンジン9に供給する燃料を貯えるもので、直方体状の容器として形成されている。
【0041】
本実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0042】
まず、オペレータはキャブ8に搭乗してエンジン9を作動させる。そして、オペレータが、キャブ8内に配置された走行用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、油圧ショベル1を走行させることができ、作業用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、旋回装置3、フロント装置5を動作させて土砂の掘削作業を行うことができる。
【0043】
ここで、エンジン9を作動させたときには、油圧ポンプ11により作動油タンク14内の作動油が圧油として供給管路16の上流供給管路部16A、下流供給管路部16Bを通じてコントロールバルブ15に供給される。この状態で、キャブ8内のオペレータが各操作レバーを操作すると、圧油が各給排管路部16Cを介して下部走行体2の油圧モータ2A、旋回装置3の油圧モータ3A、フロント装置5のブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5Fとの間で給排される。これにより、油圧モータ2A,3A、シリンダ5D,5E,5Fからなる各油圧アクチュエータを動作させることができる。
【0044】
一方、油圧モータ2A,3A、シリンダ5D,5E,5Fから排出された圧油は、各給排管路部16Cを通じてコントロールバルブ15に戻される。コントロールバルブ15に戻された圧油は、メイン戻り管路17の上流戻り管路部17Aを通じてオイルクーラ13に供給される。このオイルクーラ13では、供給された圧油を冷却する。そして、オイルクーラ13で冷却された圧油は、下流戻り管路部17Bを通じて作動油タンク14に戻される。このときに、作動油タンク14では、フィルタ14Dによって圧油に混入した摩耗粒子等の異物を除去し、圧油(作動油)を清浄化する。なお、圧油(作動油)の温度が低く、冷却する必要がない場合には、圧油は、サブ戻り管路20を通じて作動油タンク14に戻される。
【0045】
このように、供給管路16、戻り管路17,20で圧油を流通しているときには、油圧ポンプ11、コントロールバルブ15、油圧モータ2A,3A、シリンダ5D,5E,5Fで摩耗粒子等の異物が発生し、作動油に異物が混入することがある。作動油に対する異物の混入量が増加した場合、油圧ポンプ11、コントロールバルブ15、油圧モータ2A,3A、シリンダ5D,5E,5F等の損傷や劣化が疑われる。このため、油圧ショベル1では、作動油の性状を検査している。
【0046】
油圧ショベル1における作動油の性状検査について述べる。まず、オイルセンサ18は、オイルセンサ18は、メイン戻り管路17を流通する作動油の粘度、濃度、非導電率、温度等を検出し、コントローラに出力する。これにより、コントローラは、例えば、検出結果に基づいて作動油の性状を検査し、交換時期等を伝える。
【0047】
また、オイルサンプリングポート19を用いたサンプリング作業では、作業者は、外装カバー21の上面カバー部24に乗り、閉塞板24Bを取外す。これにより、開口部24Aを介してオイルサンプリングポート19が露出するから、作業者は、開口部24Aから手を差し入れることにより、オイルサンプリングポート19からメイン戻り管路17を流通する作動油を抽出することができる。抽出した作動油は、検査機関に送って詳しく検査する。これにより、検査結果に基づいて作動油の性状、交換時期等を伝える。
【0048】
かくして、本実施の形態では、メイン戻り管路17の下流戻り管路部17Bには、作動油の性状を検出するオイルセンサ18が設けられている。ここで、オイルセンサ18が取付けられている下流戻り管路部17Bの下流部位17B2は、供給管路16とメイン戻り管路17とからなる作動油の流通経路の最下流部となっている。従って、下流戻り管路部17Bの下流部位17B2に設けたオイルセンサ18によって作動油の性状を検出することにより、現状で最も悪い作動油の性状を検出することができる。
【0049】
この結果、オイルセンサ18は、作動油の性状を正確に検出することができるから、この検出結果に基づいて対処することができる。これにより、作動油ばかりでなく、油圧ポンプ11、コントロールバルブ15、油圧モータ2A,3A、シリンダ5D,5E,5F等の耐久性や信頼性を向上することができる。
【0050】
メイン戻り管路17の下流戻り管路部17Bの下流部位17B2には、作動油のサンプルを取出すオイルサンプリングポート19が設けられている。オイルサンプリングポート19から抽出した作動油の検査結果は、高い精度で作動油の性状を把握することができる。一方で、オイルセンサ18とオイルサンプリングポート19とを作動油の流通方向で同じ位置に設けた構成では、オイルセンサ18による作動油の検出結果とオイルサンプリングポート19から抽出した実際の作動油の検査結果とを比較することができる。即ち、オイルセンサ18を含む作動油の性状検出に係る機器類の不良等を、両者の結果の差として発見することができ、オイルセンサ18の修理、交換等の指示を速やかに出すことができる。
【0051】
上部旋回体4には、油圧ポンプ11、オイルクーラ13、供給管路16および戻り管路17,20を覆う外装カバー21が設けられている。この上で、外装カバー21の上面カバー部24には、オイルセンサ18とオイルサンプリングポート19と対面する位置に、メンテナンス用の開口部24Aが設けられている。これにより、外装カバー21の上面カバー部24に乗った作業者は、開口部24Aからオイルセンサ18、オイルサンプリングポート19に向けて手を伸ばすことができる。この結果、オイルセンサ18の修理作業、交換作業、オイルサンプリングポート19によるサンプリング作業を容易に行うことができる。
【0052】
次に、図7は、本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、オイルセンサとオイルサンプリングポートを戻り管路の下流戻り管路部のオイルクーラ側寄りに設けたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0053】
図7において、第2の実施の形態によるメイン戻り管路31は、第1の実施の形態によるメイン戻り管路17とほぼ同様に、戻り管路を構成し、上流戻り管路部31A、下流戻り管路部31B、センサ接続口31Cおよびポート接続口31Dを備えている。また、下流戻り管路部31Bは、上流部位31B1、下流部位31B2および中間部位31B3に分けることができる。
【0054】
しかし、第2の実施の形態によるメイン戻り管路31は、下流戻り管路部31Bの上流部位31B1にセンサ接続口31Cとポート接続口31Dが設けられている点で、第1の実施の形態によるメイン戻り管路17と相違している。これにより、センサ接続口31Cとポート接続口31Dは、オイルクーラ13の流出管13Bの近傍に配置されている。センサ接続口31Cには、オイルセンサ18が取付けられ、ポート接続口31Dには、オイルサンプリングポート19が取付けられている。
【0055】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態と同様の作用および効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、オイルセンサ18とオイルサンプリングポート19は、オイルクーラ13の流出管13Bの近傍に配置している。従って、外装カバー21の左開閉カバー部22を開くことにより、上部旋回体4の左側の外部からオイルセンサ18とオイルサンプリングポート19に手を伸ばすことができる。これにより、作業者は、外装カバー21上に上ることなく、オイルセンサ18の修理作業、交換作業、オイルサンプリングポート19によるサンプリング作業を行うことができる。
【0056】
なお、第1の実施の形態では、メイン戻り管路17の下流戻り管路部17Bにオイルセンサ18とオイルサンプリングポート19とを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、下流戻り管路部17Bにオイルセンサ18だけを設ける構成としてもよい。この構成は、第2の実施の形態についても同様に適用することができる。
【0057】
また、各実施の形態では、建設機械として、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。それ以外にも、ホイールローダ、油圧クレーン等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(本体)
2A,3A 油圧モータ(油圧アクチュエータ)
3 旋回装置
4 上部旋回体(本体)
5 フロント装置
5D ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
5E アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
5F バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
11 油圧ポンプ
13 オイルクーラ
14 作動油タンク
15 コントロールバルブ
16 供給管路
17,31 メイン戻り管路(戻り管路)
17A,31A 上流戻り管路部
17B,31B 下流戻り管路部
18 オイルセンサ
19 オイルサンプリングポート
21 外装カバー
24 上面カバー部
24A 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7