(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20230303BHJP
C08K 5/3475 20060101ALI20230303BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20230303BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20230303BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/3475
C08K5/521
C08K5/101
C08K5/13
(21)【出願番号】P 2019032917
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】大平 洋二
(72)【発明者】
【氏名】首藤 弘
(72)【発明者】
【氏名】田辺 誠一
(72)【発明者】
【氏名】一色 英樹
(72)【発明者】
【氏名】河合 功治
(72)【発明者】
【氏名】金子 恒太郎
(72)【発明者】
【氏名】金子 信裕
(72)【発明者】
【氏名】矢下 亜紀良
(72)【発明者】
【氏名】中村 大介
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/021664(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/174788(WO,A1)
【文献】特開2017-132948(JP,A)
【文献】特開2018-122449(JP,A)
【文献】特開2017-201002(JP,A)
【文献】特開2018-184519(JP,A)
【文献】特開平07-011138(JP,A)
【文献】特表2002-543266(JP,A)
【文献】特表平06-505744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08K 5/3475
C08K 5/521
C08K 5/101
C08K 5/13
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度平均分子量
が21,000~26,000である
、ホスゲンもしくは炭酸ジエステルより選ばれるカーボネート前駆体と二価フェノールとを反応させて得られる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、添加剤(B)を0.2~1.5質量部含み、かつ、前記添加剤(B)として、下記式1で示されるベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤(B1)を0.2~
1.4質量
部含み、前記紫外線吸収剤(B1)以外の前記添加剤(B)は、リン系安定剤(B2)、脂肪酸エステル系離型剤(B3)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(B4)、エポキシ基含有化合物(B5)、前記紫外線吸収剤(B1)以外の紫外線吸収剤(B6)、及びブルーイング剤(B7)からなる群より選ばれる、ポリカーボネート樹脂組成物:
【化1】
式1中、
R
1~R
5はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、及び水酸基のいずれかを示し、かつ、前記炭化水素基には、酸素含有基が含まれてもよく、
R
6~R
9はそれぞれ独立に、水素原子、又は、R-S-で表わされる硫黄含有基のいずれかを示し、かつ、R
6~R
9の少なくとも一つは、R-S-で表わされる硫黄含有基であり、Rは、炭素原子数1~24の炭化水素基である。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤(B1)のR-S-で表わされる硫黄含有基のRが、炭素原子数1~24のアルキル基を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前
記R
6又はR
9
がR-S-で表わされる硫黄含有基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記紫外線吸収剤(B1)におけるR
1~R
5の炭化水素基が、炭素原子数1~12のアルキル基である、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記紫外線吸収剤(B1)におけるR
1~R
5の炭化水素基が、炭素原子数1~4のアルキル基である、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記紫外線吸収剤(B1)におけるR
1~R
5のうちの少なくとも一つが、メチル基である、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記紫外線吸収剤(B1)におけるR
1~R
5のうちの少なくとも一つが、メチル基であり、かつ、残りのR
1~R
5のうちの少なくとも一つがブチル基である、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、前記添加剤(B)として、リン系熱安定剤(B2)を0.01~0.1質量部含む、請求項1~
7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、前記添加剤(B)として、脂肪酸エステル系離型剤(B3)を0.03~0.5質量部含む、請求項1~
8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、前記添加剤(B)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(B4)を0.01~0.30質量部含む、請求項1~
9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、前記添加剤(B)として、エポキシ基含有化合物(B5)を0.001~0.02質量部含む、請求項1~
10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、前記添加剤(B)として、前記紫外線吸収剤(B1)以外の紫外線吸収剤(B6)を0.05~0.3質量部を含む、請求項1~
11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
加熱溶融成形品の成形材料として用いる、請求項1~
12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
眼鏡レンズ成形品の成形材料として用いる、請求項1~
12のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特定の紫外線領域、即ち、有害光とされている420nm付近の波長の光線透過率を抑制しながら、高い全光線透過率を維持し、かつ、耐衝撃強度、成形滞留安定性に優れるポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂(プラスチック)を用いて形成される成形品は、ガラス材料よりも割れにくく、着色及び各種の成形加工が容易であるため、ガラス材料からの代替が進んできている。例えば、眼鏡レンズ、カメラレンズ、各種ディスプレイの前面板、光源カバーなどの光学成形品についても、ガラス材料に代わって合成樹脂が使用されてきている。
【0003】
合成樹脂成形品は、日光又は紫外線の長期の暴露により劣化しやすく、例えば、黄変等の変色が避けられない。このような変色等の劣化を抑制するために、耐光性を改良する目的で合成樹脂成形品に対して紫外線吸収剤が配合されている。
【0004】
この他、最近では、眼を保護する目的で、合成樹脂成形品に対して紫外線吸収能を付与する検討も行われている。紫外線が眼に悪影響を及ぼすことは、従来より指摘されている。また、例えば自然光、オフィス機器の液晶ディスプレイ、スマートフォン又は携帯電話等の携帯機器のディスプレイ等から発せられる青色光も、眼の疲れや痛みを感じるなど、眼への影響が懸念されている。例えば、眼が青色光の照射を長期間浴びると、眼精疲労や、活性酸素、特に過剰な一重項酸素の発生による酸化ストレスを受けることが指摘されている。この一重項酸素は、紫外線及び可視光の中でもエネルギーの強い短波長の青色光によって産生が促進されることが分かっている。
【0005】
また網膜では、加齢とともに網膜色素上皮内にリポフスチンと呼ばれる老廃物が蓄積し、これが光増感物質として作用して一重項酸素を発生させると考えられている。このリポフスチンは、可視光から紫外領域にわたって波長が短くなるほど吸収が高くなるという特性を有している。一方、一重項酸素による酸化ストレスを抑制する物質として、ルテインが知られている。ルテインは網膜中に存在しているが、紫外から青色領域の光によって劣化してしまう。
【0006】
このため、リポフスチンによる一重項酸素の発生の抑制、及び酸化ストレスを抑制するルテインの劣化抑制のためには、ルテインとリポフスチンの光吸収特性がオーバーラップする波長範囲である400~420nmの波長を、網膜より手前でカットすることが非常に効果的である。
【0007】
さらに近年の研究では、411nmの短波長光に網膜組織が曝されると、470nmの波長光に曝された場合よりも、ニューロン網膜細胞が強い酸化ストレスを受け、細胞死の兆候が認められることや、網膜組織の構造の歪みが引き起こされることが指摘され、加齢黄斑変性が進行する要因の一つと考えられている。
【0008】
また、400~420nmの波長光の照射により、皮質白内障の原因である活性酸素種の生成、DNA損傷及び水晶体上皮細胞の細胞死が開始することが指摘されていることから、眼組織の障害の引き金となる可能性がある400~420nmの短波長光をブロックすることは眼を健康に保つために非常に重要である。言い換えれば、420nm付近の波長光の光線透過率を抑制することは、眼を健康に保つために非常に重要である。
【0009】
特許文献1及び2には、プラスチック成形品に400~420nmの波長光を吸収する性能を付与する紫外線吸収剤の使用が提案されている。
【0010】
特許文献3及び4には、400~420nmの波長を十分に効率よく吸収しながらも、420nm以上の波長光の吸収を抑制し、有害光の影響が少なく、黄色化を抑えて外観に優れるプラチックレンズが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第5620033号公報
【文献】特許第4334633号公報
【文献】国際公開第2016/021664号
【文献】国際公開第2016/174788号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1には、紫外線吸収剤として2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-クロロベンゾトリアゾールを使用し、エピスルフィド樹脂等の樹脂材料と組み合わせる技術が提案されている。また、特許文献2には、特定のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を配合する技術が提案されている。
【0013】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を樹脂に添加し、400~420nm付近の波長光を十分吸収させようとすると、その波長領域の吸収効率が低いため、紫外線吸収剤の添加量を多くする必要があり、同時に、その光学的特性より、420nm付近より長波長の光も多く吸収するため、成形品が黄色化する問題があった。
【0014】
特許文献3及び4は、420nmの波長の透過率を抑制する透明なプラスチック成形品を提案するものである。しかしながら、これらの提案の中で具体的に示されたプラスチックレンズ等のプラスチック成形品は、耐衝撃強度が不十分な熱硬化性樹脂からなる成形品である。
【0015】
一般に、ポリカーボネート樹脂は、他の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂に比べ、耐衝撃強度などの機械物性が優れるといわれている。しかしながら、耐衝撃強度以外の様々な機能性を付与するために、ポリカーボネート樹脂と各種添加剤を併用した場合、添加剤の種類及びその量によっては、成形品の機械物性が低下する問題、或いは成形加工時の熱安定性が悪化し、結果として成形品の着色や物性低下の問題が生じることも多い。
【0016】
前述のように、これまでには、有害とされる420nm付近の波長の透過率を抑制する透明なプラスチック成形品の提案はあったが、420nm付近の波長の光線透過率を抑制しながら、耐衝撃強度に優れるポリカーボネート樹脂組成物を得るための具体的な提案はなかった。さらに、420nm付近の波長の光線透過率を抑制し、耐衝撃強度に優れ、かつ、全光線透過率が高く、成形加工時や押出加工時の成形滞留安定性に優れるポリカーボネート樹脂組成物が強く望まれていた。
【0017】
したがって、本開示の目的は、特定の紫外線領域、即ち、有害光とされている420nm付近の波長の光線透過率を抑制しながら、高い全光線透過率を維持し、かつ、耐衝撃強度、成形滞留安定性に優れるポリカーボネート樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
〈態様1〉
粘度平均分子量が、21,000~26,000であるポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、添加剤(B)を0.2~1.5質量部含み、かつ、前記添加剤(B)として、下記式1で示されるベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤(B1)を0.2質量部以上含む、ポリカーボネート樹脂組成物:
【化1】
式1中、
R
1~R
5はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、及び水酸基のいずれかを示し、かつ、前記炭化水素基には、酸素含有基が含まれてもよく、
R
6~R
9はそれぞれ独立に、水素原子、又は、R-S-で表わされる硫黄含有基のいずれかを示し、かつ、R
6~R
9の少なくとも一つは、R-S-で表わされる硫黄含有基であり、Rは、炭素原子数1~24の炭化水素基である。
〈態様2〉
前記紫外線吸収剤(B1)のR-S-で表わされる硫黄含有基のRが、炭素原子数1~24のアルキル基を示す、態様1に記載の組成物。
〈態様3〉
前記紫外線吸収剤(B1)のR-S-で表わされる硫黄含有基が、R
6又はR
9に結合した、態様1又は2に記載の組成物。
〈態様4〉
前記紫外線吸収剤(B1)におけるR
1~R
5の炭化水素基が、炭素原子数1~12のアルキル基である、態様1~3のいずれかに記載の組成物。
〈態様5〉
前記紫外線吸収剤(B1)におけるR
1~R
5の炭化水素基が、炭素原子数1~4のアルキル基である、態様1~3のいずれかに記載の組成物。
〈態様6〉
前記紫外線吸収剤(B1)におけるR
1~R
5のうちの少なくとも一つが、メチル基である、態様1~5のいずれかに記載の組成物。
〈態様7〉
前記紫外線吸収剤(B1)におけるR
1~R
5のうちの少なくとも一つが、メチル基であり、かつ、残りのR
1~R
5の炭化水素基のうちの少なくとも一つがブチル基である、態様1~5のいずれかに記載の組成物。
〈態様8〉
前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、前記紫外線吸収剤(B1)を0.2~1.4質量部含む、態様1~7のいずれかに記載の組成物。
〈態様9〉
前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、前記添加剤(B)として、リン系熱安定剤(B2)を0.01~0.1質量部含む、態様1~8のいずれかに記載の組成物。
〈態様10〉
前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、前記添加剤(B)として、脂肪酸エステル系離型剤(B3)を0.03~0.5質量部含む、態様1~9のいずれかに記載の組成物。
〈態様11〉
前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、前記添加剤(B)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(B4)を0.01~0.30質量部含む、態様1~10のいずれかに記載の組成物。
〈態様12〉
前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、前記添加剤(B)として、エポキシ基含有化合物(B5)を0.001~0.02質量部含む、態様1~11のいずれかに記載の組成物。
〈態様13〉
前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、前記添加剤(B)として、前記紫外線吸収剤(B1)以外の紫外線吸収剤(B6)を0.05~0.3質量部を含む、態様1~12のいずれかに記載の組成物。
〈態様14〉
加熱溶融成形品の成形材料として用いる、態様1~13のいずれかに記載の組成物。
〈態様15〉
眼鏡レンズ成形品の成形材料として用いる、態様1~13のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、特定の紫外線領域、即ち、有害光とされている420nm付近の波長の光線透過率を抑制しながら、高い全光線透過率を維持し、かつ、耐衝撃強度、成形滞留安定性に優れるポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。
【0020】
また、本開示によれば、各種加熱溶融成形品、例えばパソコンやカーナビなど各種ディスプレイの前面板、発光体の前面板やカバー、光源カバー、多目的シート(例えば射出成形された平面板、押出成形された平面板又はフィルム)、及び眼鏡レンズを成形するための成形材料として用いられるポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0022】
本開示の一実施態様のポリカーボネート樹脂組成物は、粘度平均分子量が、21,000~26,000であるポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、添加剤(B)を0.2~1.5質量部含み、かつ、前記添加剤(B)として、下記式1で示されるベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤(B1)を0.2質量部以上含む、ポリカーボネート樹脂組成物である:
【化2】
式1中、
R
1~R
5はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、及び水酸基のいずれかを示し、かつ、前記炭化水素基には、酸素含有基が含まれてもよく、
R
6~R
9はそれぞれ独立に、水素原子、又は、R-S-で表わされる硫黄含有基のいずれかを示し、かつ、R
6~R
9の少なくとも一つは、R-S-で表わされる硫黄含有基であり、Rは、炭素原子数1~24の炭化水素基である。
【0023】
本開示のポリカーボネート樹脂組成物は、特定の紫外線領域、即ち、有害光とされている420nm付近の波長の光線透過率を抑制しながら、高い全光線透過率を維持し、かつ、耐衝撃強度、成形滞留安定性に優れる。原理によって限定されるものではないが、本開示のポリカーボネート樹脂組成物の作用原理は、以下のとおりであると考える。
【0024】
本開示のポリカーボネート樹脂組成物には、特定の粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂と上述した式1で示される特定の紫外線吸収剤が含まれている。この紫外線吸収剤を採用することによって、従来のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤に比べ、低量でありながらも、420nm付近の波長の光線透過率を十分に抑制しつつ、高い全光線透過率を維持することができると考えている。
【0025】
また、係る紫外線吸収剤は、特に、式1におけるR6~R9の少なくとも一つが、特定のR-S-で表わされる硫黄含有基を有している。紫外線吸収剤が、このような特定の硫黄含有基を有しているため、耐熱性、及びポリカーボネート樹脂との相溶性などが向上し、紫外線吸収剤の添加量が多くても、耐衝撃強度の低下を抑制する効果が得られるものと考えている。
【0026】
また、一般的な紫外線吸収剤を含むポリカーボネート樹脂組成物は、押出、成形加工すると、配合する紫外線吸収剤自体が揮発しやすく固化しやすいため、例えば、押出機又は成形機に連結している真空ベント配管、ベント配管の途中に設置した揮発物トラップ装置が閉塞しやすかった。つまり、従来の紫外線吸収剤を使用して十分な紫外線吸収能を発揮させるためには、成型加工時の揮発分を考慮して、紫外線吸収剤を多量に配合させておく必要があったため、ポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形物の耐衝撃強度等を低下させる要因となっていたと考えられる。一方、本開示の特定の紫外線吸収剤は、従来の紫外線吸収剤に比べて分子量が高く、耐熱性及びポリカーボネート樹脂との相溶性に優れ、組成物から揮発しにくいため、低量で充分な紫外線吸収能を発揮できるとともに、成形物の耐衝撃強度等を低下させることがないと考えている。また、本開示の紫外線吸収剤は、従来の紫外線吸収剤に比べ、押し出し等の加熱溶融を伴う成形加工時に揮発しにくく、固化や結晶化も進みにくいため、真空ベント配管等を閉塞させる問題も軽減することができる。
【0027】
《ポリカーボネート樹脂組成物》
本開示のポリカーボネート樹脂組成物は、各種性能に優れている。
【0028】
〈420nm以下の光の遮蔽性能〉
本開示のポリカーボネート樹脂組成物は、420nm付近の光を遮蔽することができる。例えば、ポリカーボネート樹脂組成物から得られる厚さ2mmのシートを使用した場合、係るシートにおける420nmの光の分光光線透過率は、70%以下、70%未満、65%以下、又は60%以下とすることができる。この下限値については特に制限はないが、例えば、0.1%以上、0.5%以上、1%以上、3%以上、5%以上、7%以上、又は10%以上と規定することができる。
【0029】
本開示のポリカーボネート樹脂組成物は、400nm付近の光を遮蔽することもできる。例えば、ポリカーボネート樹脂組成物から得られる厚さ2mmのシートを使用した場合、係るシートにおける400nmの分光光線透過率は、1%以下、1%未満、0.9%以下、又は0.8%以下とすることができる。この下限値については特に制限はないが、例えば、0%以上、0%超、又は0.1%以上と規定することができる。
【0030】
〈全光線透過率〉
本開示のポリカーボネート樹脂組成物は、透明性に優れている。例えば、ポリカーボネート樹脂組成物から得られる厚さ2mmのシートを使用した場合、係るシートにおける全光線透過率は、87%以上、87%超、88%以上、又は89%以上とすることができる。この上限値については特に制限はないが、例えば、100%未満、99%以下、又は98%以下と規定することができる。
【0031】
〈耐衝撃性〉
本開示のポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性に優れている。例えば、ポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形物は、後述するシャルピー衝撃強さ試験において、55kJ/m2超、60kJ/m2以上、70kJ/m2以上、又は80kJ/m2以上を達成することができる。この上限値については特に制限はないが、例えば、150kJ/m2以下、120kJ/m2以下、又は100kJ/m2以下と規定することができる。
【0032】
〈耐熱性〉
本開示のポリカーボネート樹脂組成物は、耐熱性に優れている。耐熱性とは、高温下で成形品の変形が少ないことを意図し、例えば、後述する荷重たわみ温度試験で評価することができる。ポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形物は、係る荷重たわみ温度試験において、124℃超、125℃以上、又は126℃以上を達成することができる。この上限値については特に制限はないが、例えば、135℃以下、132℃以下、又は130℃以下と規定することができる。
【0033】
〈成形滞留安定性〉
本開示のポリカーボネート樹脂組成物は、成形滞留安定性に優れている。例えば、ポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形物は、後述する成形滞留試験において、0.75以下、0.75未満、0.72以下、又は0.70以下の色差(ΔE)を達成することができる。この下限値については特に制限はないが、例えば、0.40以上、0.45以上、又は0.50以上と規定することができる。
【0034】
〈ポリカーボネート樹脂(A)〉
本開示のポリカーボネート樹脂組成物に配合し得るポリカーボネート樹脂としては、粘度平均分子量が、21,000~26,000のポリカーボネート樹脂である限り特に制限はない。
【0035】
(粘度平均分子量)
粘度平均分子量は、例えば、耐衝撃性、溶融流動性、成型加工性等の観点から、21,500~25,000であることがより好ましく、22,000~24,000であることが特に好ましい。
【0036】
ここで、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、オストワルド粘度計を使用して、塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を用い、以下の式2及び式3から算出したものである:
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c …式2
[η]=1.23×10-4M0.83 …式3
ここで、[η]は極限粘度であり、cは0.7である。
【0037】
本開示の組成物中のポリカーボネート樹脂としては、例えば、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られる芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することができる。
【0038】
(二価フェノール)
二価フェノールの具体例としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAと称する場合がある。)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が挙げられ;1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類が挙げられ;4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類が挙げられ;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類が挙げられ;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類が挙げられ;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。これらの二価フェノールは、単独で用いてもよく、或いは二種以上併用してもよい。
【0039】
上述した二価フェノールのうち、耐衝撃性等の観点から、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好ましい。ビスフェノールAの割合としては、全二価フェノール成分中、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、又は80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上、95モル%以上、又は100%であることがより好ましい。
【0040】
(ポリカーボネート樹脂の製造方法)
ポリカーボネート樹脂の製造方法については特に制限はないが、例えば以下のような方法で製造することができる。
【0041】
例えば、カーボネート前駆体としてホスゲンを用いる溶液法を採用することができる。この方法では、通常、酸結合剤及び有機溶媒の存在下で、二価フェノール成分とホスゲンとの反応を行う。
【0042】
酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、又はピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。
【0043】
また、任意に、反応促進のために、例えば、第三級アミン、第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることができ、分子量を調節するために、例えば、フェノール、p-tert-ブチルフェノールのようなアルキル置換フェノール等の末端停止剤を用いることができる。
【0044】
反応温度は通常0~40℃、反応時間は1分~5時間とすることができ、また、反応中のpHは10以上に保つことが好ましい。
【0045】
カーボネート前駆体として、炭酸ジエステルを用いるエステル交換法(溶融法)を使用することもできる。この方法は、不活性ガスの存在下で、所定割合の二価フェノール成分と炭酸ジエステルとを加熱しながら撹拌し、生成するアルコール又はフェノール類を留出させる方法である。
【0046】
反応温度は生成するアルコール又はフェノール類の沸点等により異なるが、通常120~350℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコール又はフェノール類を留出させながら反応させる。また、反応を促進するために、通常のエステル交換反応触媒を用いることができる。
【0047】
このエステル交換反応に用いる炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられ、特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0048】
〈添加剤(B)〉
本開示のポリカーボネート樹脂組成物は、所定量の添加剤(B)を含んでいる。
【0049】
この添加剤(B)は、ポリカーボネートに配合可能な添加剤であり、複数の添加剤で構成されていてもよいが、好ましくは、この添加剤(B)は、ポリカーボネートに配合可能な以下の(B1)~(B7)で示される添加剤を意味する。
【0050】
添加剤(B)の総量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.2~1.5質量部である。添加剤(B)の総量は、耐衝撃性、耐熱性等の観点から、好ましくは0.3~1.4質量部であり、より好ましくは0.4~1.3質量部であり、さらに好ましくは0.6~1.2質量部であり、特に好ましくは0.8~1.1質量部である。
【0051】
(式1で示される紫外線吸収剤(B1))
本開示の組成物は、添加剤(B)として、下記式1で示される特定のベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤(B1)を含んでいる。この紫外線吸収剤(B1)は、420nm付近の光線透過率の十分な抑制効果、及び耐衝撃性等の観点から、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.2質量部以上含み、好ましくは0.2~1.4質量部含み、より好ましくは0.3~1.3質量部含み、さらに好ましくは0.4~1.2質量部含み、特に好ましくは0.6~1.1質量部含み、最も好ましくは0.8~1.0質量部含む:
【化3】
式1中、R
1~R
5はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、及び水酸基のいずれかを示し、炭化水素基には、酸素含有基が含まれてもよい。R
6~R
9はそれぞれ独立に、水素原子、又は、R-S-で表わされる硫黄含有基のいずれかを示し、R
6~R
9の少なくとも一つは、R-S-であり、Rは、炭素原子数1~24の炭化水素基である。
【0052】
炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0053】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。アルキル基は、直鎖又は分岐を含み、特に限定されないが、例えば、メチル基、エタン-1-イル基、プロパン-1-イル基、1-メチルエタン-1-イル基、ブタン-1-イル基、ブタン-2-イル基、2-メチルプロパン-1-イル基、2-メチルプロパン-2-イル基、ペンタン-1-イル基、ペンタン-2-イル基、ヘキサン-1-イル基、ヘプタン-1-イル基、オクタン-1-イル基、1,1,3,3-テトラメチルブタン-1-イル基、ノナン-1-イル基、デカン-1-イル基、ウンデカン-1-イル基、ドデカン-1-イル基、トリデカン-1-イル基、テトラデカン-1-イル基、ペンタデカン-1-イル基、ヘキサデカン-1-イル基、ヘプタデカン-1-イル基、オクタデカン-1-イル基、ノナデカン-1-イル基、エイコサン-1-イル基、ヘンエイコサン-1-イル基、ドコサン-1-イル基、トリコサン-1-イル基、テトラコサン-1-イル基、ベンジル基、α,α-ジメチルベンジル基等が挙げられる。アルケニル基は直鎖又は分岐を含み、特に限定されないが、例えば、ビニル基、プロパ-1-エン-1-イル基、アリル基、イソプロペニル基、ブタ-1-エン-1-イル基、ブタ-2-エン-1-イル基、ブタ-3-エン-1-イル基、2-メチルプロパ-2-エン-1-イル基、1-メチルプロパ-2-エン-1-イル基、ペンタ-1-エン-1-イル基、ペンタ-2-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、3-メチルブタ-2-エン-1-イル基、3-メチルブタ-3-エン-1-イル基、ヘキサ-1-エン-1-イル基、ヘキサ-2-エン-1-イル基、ヘキサ-3-エン-1-イル基、ヘキサ-4-エン-1-イル基、ヘキサ-5-エン-1-イル基、4-メチルペンタ-3-エン-1-イル基、4-メチルペンタ-3-エン-1-イル基、ヘプタ-1-エン-1-イル基、ヘプタ-6-エン-1-イル基、オクタ-1-エン-1-イル基、オクタ-7-エン-1-イル基、ノナ-1-エン-1-イル基、ノナ-8-エン-1-イル基、デカ-1-エン-1-イル基、デカ-9-エン-1-イル基、ウンデカ-1-エン-1-イル基、ウンデカ-10-エン-1-イル基、ドデカ-1-エン-1-イル基、ドデカ-11-エン-1-イル基、トリデカ-1-エン-1-イル基、トリデカ-12-エン-1-イル基、テトラデカ-1-エン-1-イル基、テトラデカ-13-エン-1-イル基、ペンタデカ-1-エン-1-イル基、ペンタデカ-14-エン-1-イル基、ヘキサデカ-1-エン-1-イル基、ヘキサデカ-15-エン-1-イル基、ヘプタデカ-1-エン-1-イル基、ヘプタデカ-16-エン-1-イル基、オクタデカ-1-エン-1-イル基、オクタデカ-9-エン-1-イル基、オクタデカ-17-エン-1-イル基、ノナデカ-1-エン-1-イル基、エイコサ-1-エン-1-イル基、ヘンエイコサ-1-エン-1-イル基、ドコサ-1-エン-1-イル基、トリコサ-1-エン-1-イル基、テトラコサ-1-エン-1-イル基等が挙げられる。アルキニル基は直鎖又は分岐を含み、特に限定されないが、例えば、エチニル、プロパ-1-イン-1-イル基、プロパ-2-イン-1-イル基、ブタ-1-イン-1-イル基、ブタ-3-イン-1-イル基、1-メチルプロパ-2-イン-1-イル基、ペンタ-1-イン-1-イル基、ペンタ-4-イン-1-イル基、ヘキサ-1-イン-1-イル基、ヘキサ-5-イン-1-イル基、ヘプタ-1-イン-1-イル基、ヘプタ-6-イン-1-イル基、オクタ-1-イン-1-イル基、オクタ-7-イン-1-イル基、ノナ-1-イン-1-イル基、ノナ-8-イン-1-イル基、デカ-1-イン-1-イル基、デカ-9-イン-1-イル基、ウンデカ-1-イン-1-イル基、ウンデカ-10-イン-1-イル基、ドデカ-1-イン-1-イル基、ドデカ-11-イン-1-イル基、トリデカ-1-イン-1-イル基、トリデカ-12-イン-1-イル基、テトラデカ-1-イン-1-イル基、テトラデカ-13-イン-1-イル基、ペンタデカ-1-イン-1-イル基、ペンタデカ-14-イン-1-イル基、ヘキサデカ-1-イン-1-イル基、ヘキサデカ-15-イン-1-イル基、ヘプタデカ-1-イン-1-イル基、ヘプタデカ-16-イン-1-イル基、オクタデカ-1-イン-1-イル基、オクタデカ-17-イン-1-イル基、ノナデカ-1-イン-1-イル基、エイコサ-1-イン-1-イル基、ヘンエイコサ-1-イン-1-イル基、ドコサ-1-イン-1-イル基、トリコサ-1-イン-1-イル基、テトラコサ-1-イン-1-イル基等が挙げられる。
【0054】
脂環式炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0055】
芳香族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル残基、ナフタレン残基、アントラセン残基等の芳香環残基を含む基が挙げられる。1価の芳香族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,5-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-プロピルフェニル基、4-イソプロピルフェニル基、4-ブチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-ペンチルフェニル基、4-tert-ペンチルフェニル基、2,4-ビス(4-tert-ペンチル)フェニル基、1,1,3,3-テトラメチルブチルフェニル基、2-メチル-5-tert-ブチルフェニル基、4-ペンチルフェニル基、4-ヘキシルフェニル基、4-ヘプチルフェニル基、4-オクチルフェニル基、4-ノニルフェニル基、4-デカニルフェニル基、4-ウンデシルフェニル基、4-ドデシルフェニル基、4-トリデシルフェニル基、4-テトラデシルフェニル基、4-ペンタデシルフェニル基、4-ヘキサデシルフェニル基、4-ヘプタデシルフェニル基、4-オクタデシルフェニル基、4-ビフェニル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-エトキシフェニル基、3-エトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、2-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2-トリフルオロメチルフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基等が挙げられ、2価の芳香族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,2-フェニレン基、1,8-ナフチレン基、2,7-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、1,4-ナフチレン基、1,3-ナフチレン基、9,10-アントラセニレン基、1,8-アントラセニレン基、2,7-アントラセニレン基、2,6-アントラセニレン基、1,4-アントラセニレン基、1,3-アントラセニレン基等が挙げられる。
【0056】
酸素含有基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、sec-ペンチルオキシ基、iso-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、1-ヘキシルオキシ基、2-ヘキシルオキシ基、3-ヘキシルオキシ基、1-ヘプチルオキシ基、2-ヘプチルオキシ基、3-ヘプチルオキシ基、4-ヘプチルオキシ基、1-オクチルオキシ基、2-オクチルオキシ基、3-オクチルオキシ基、4-オクチルオキシ基、1-ノニルオキシ基、2-ノニルオキシ基、3-ノニルオキシ基、4-ノニルオキシ基、5-ノニルオキシ基、1-デシルオキシ基、2-デシルオキシ基、3-デシルオキシ基、4-デシルオキシ基、5-デシルオキシ基、1-ウンデシルオキシ基、1-ドデシルオキシ基、1-トリデシルオキシ基、1-テトラデシルオキシ基、1-ペンタデシルオキシ基、1-ヘキサデシルオキシ基、1-ヘプタデシルオキシ基、1-オクタデシルオキシ基、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ナフトキシ基、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基、アセトキシ基、アセチル基、アルデヒド基、カルボキシ基、尿素基、ウレタン基、アミド、イミド、エーテル基、カルボニル基、エステル基、オキサゾール基、モルホリン基、カルバメート基、カルバモイル基、ポリオキシエチレン基等が挙げられる。
【0057】
式1におけるR1~R5の炭化水素基としては、炭素原子数1~12のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はブチル基が特に好ましい。さらに、R1~R5のうちの少なくとも一つは、メチル基であることが好ましく、また、残りのR1~R5のうちの少なくとも一つが、ブチル基であることがより好ましい。さらに、R2及びR4のうちの少なくとも一つが、このようなアルキル基から選択され、かつ、R1が水酸基であることが最も好ましい。
【0058】
また、紫外線吸収剤(B1)は、R-S-で表わされる硫黄含有基を有している。この硫黄含有基が存在することによって、特定の粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂に紫外線吸収剤(B1)を配合したときに、高い全光線透過率、並びに優れた耐衝撃性及び成形滞留安定性を維持しながら、400nmの光線はもちろん、特に400~420nmの光線透過率を抑制することができる。
【0059】
上記式1において、R-S-で表わされる硫黄含有基は、R6~R9のいずれかに位置するが、上記のような性能をより発現させやすくするという観点から、R6又はR9の位置にあることが好ましい。Rは、炭素原子数1~24のアルキル基であるが、上記のような性能をより発現させやすくするという観点から、炭素原子数1~18のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~12のアルキル基がさらに好ましく、炭素原子数1~8のアルキル基が特に好ましい。また、アルキル基は直鎖であることが好ましい。
【0060】
さらに、R-S-で表わされる硫黄含有基の導入は、驚くべきことに、紫外線吸収剤自体の分子量を高めながらも、従来の紫外線吸収剤に比べ、押出や成形加工に用いる押出機や成形機に連結している真空ベント配管系(例えば係る系には、ベント配管や揮発物トラップ装置が含まれる。)の詰まりを抑制できることがわかった。この理由としては、硫黄含有基の分だけ分子量が高くなり揮発性が抑制されていることに加え、押出機や成形機に連結する真空ベント配管系内に揮発物として入りこんだ紫外線吸収剤(B1)が、他の従来の紫外線吸収剤と比べて固化又は結晶化が進み難いため、系内において堆積物が嵩高く成長しづらいことが要因であると推定される。
【0061】
(任意の添加剤)
本開示の組成物には、添加剤(B)として、紫外線吸収剤(B1)以外の以下で例示されるような他の添加剤を1種又は複数種配合してもよい。この場合、紫外線吸収剤(B1)以外の添加剤は、耐衝撃性等の機械的物性、耐熱性等の観点から、例えば、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.01~0.5質量部の範囲で配合することができ、0.02~0.4質量部の範囲で配合することが好ましく、0.03~0.3質量部の範囲で配合することがより好ましく、0.04~0.25質量部の範囲で配合することがさらに好ましく、0.05~0.2質量部の範囲で配合することが特に好ましい。
【0062】
a.リン系熱安定剤(B2)
本開示の組成物には、リン系熱安定剤を配合することができる。リン系熱安定剤としては、例えば、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト及びビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。
【0063】
これらの中でも、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく;ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトがより好ましく;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。
【0064】
リン系熱安定剤の含有量は、成形滞留安定性、耐衝撃性等の機械的物性、耐熱性等の観点から、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して0.01~0.1質量部であることが好ましく、0.01~0.05質量部であることがより好ましく、0.015~0.03質量部であることがさらに好ましい。
【0065】
b.脂肪酸エステル系離型剤(B3)
本開示の組成物には、例えば、溶融成形時における成形品の金型からの離型性能を向上させるために、脂肪酸エステル系離型剤を配合することができる。
【0066】
脂肪酸エステル系離型剤としては、例えば、(i)炭素原子数1~20の一価アルコールと炭素原子数10~30の飽和若しくは不飽和脂肪酸とのエステル、及び(ii)炭素原子数1~25の多価アルコールと炭素原子数10~30の飽和若しくは不飽和脂肪酸との部分エステル又はフルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の離型剤が使用される。
【0067】
(i)炭素原子数1~20の一価アルコールと炭素原子数10~30の飽和若しくは不飽和脂肪酸とのエステルとしては、例えば、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられ、中でもステアリルステアレートが好ましい。
【0068】
(ii)炭素原子数1~25の多価アルコールと炭素原子数10~30の飽和若しくは不飽和脂肪酸との部分エステル又はフルエステルとしては、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリントリベヘネート、グリセリントリソルビネート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステル、ジペンタエリスルトールの部分エステル等が挙げられる。
【0069】
これら脂肪酸エステルの中でも、ペンタエリスリトールテトラステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリントリステアレートとステアリルステアレートとの混合物が好ましく用いられる。特にグリセリントリステアレートとステアリルステアレートとの混合物が好ましく用いられる。混合重量比(前者/後者)は、好ましくは45~15/55~85、より好ましくは40~15/60~85である。
【0070】
脂肪酸エステル系離型剤の含有量は、耐衝撃性、耐熱性、離型性、耐変色性等の観点から、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.03~0.5質量部であり、より好ましくは0.08~0.4質量部であり、さらに好ましくは0.1~0.3質量部である。
【0071】
脂肪酸エステル系離型剤は、当業者に知られている公知の他の離型剤とも併用可能であるが、その場合でも、脂肪酸エステル系離型剤の含有量は、0.02~0.45質量部であることが好ましく、離型剤の主成分(50%以上)であることが好ましい。
【0072】
高温での成形滞留安定性等の観点から、脂肪酸エステル系離型剤中の微量金属不純物、特にスズ(Sn)の含有量は、より少ないことが好ましく、例えば、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましく、1ppm以下であることが特に好ましい。離型剤中の各種金属量は、ICP(誘導結合プラズマ)分析法により分析することができる。
【0073】
c.ヒンダードフェノール系酸化防止剤(B4)
本開示の組成物には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を配合することができる。係る酸化防止剤の配合は、例えば、成形加工時の色相悪化や成形品を高温下で長期間使用した場合の変色を抑制する効果(耐乾熱性)を発揮させることができる。
【0074】
ヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、n-オクタデシル-β-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェル)プロピオネート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、及びテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも市販品として入手可能である。上記ヒンダードフェノール系安定剤は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0075】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、耐衝撃性、耐乾熱性等の観点から、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01~0.30質量部であり、より好ましくは0.02~0.25質量部であり、さらに好ましくは0.03~0.15質量部である。
【0076】
d.エポキシ基含有化合物(B5)
本開示の組成物には、エポキシ基含有化合物を配合することができる。係るエポキシ基含有化合物は、金型腐食を抑制する目的や耐湿熱性を向上する目的で配合されるものであり、基本的にエポキシ官能基を有するもの全てが適用できる。
【0077】
好ましいエポキシ基含有化合物の具体例としては、例えば、3,4ーエポキシシクロヘキシルメチルー3’,4’ーエポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロセキサン付加物、メチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体、スチレンとグリシジルメタクリレートの共重合体等が挙げられる。
【0078】
係るエポキシ基含有化合物の含有量としては、耐衝撃性、耐熱性、成形滞留安定性、透明性、金型腐食抑制効果、耐湿熱性向上効果等の観点から、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.001~0.02質量部であり、より好ましくは0.004~0.15質量部であり、さらに好ましくは0.005~0.1質量部である。
【0079】
e.紫外線吸収剤(B1)以外の紫外線吸収剤(B6)
本開示の組成物には、紫外線吸収剤(B1)以外に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤、又はシアノアクリレート系紫外線吸収剤等を含有することができる。
【0080】
例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾ-ル等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上の混合物で用いることができる。
【0081】
中でも、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾ-ルが好ましく;2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]がより好ましい。
【0082】
本開示の組成物において、紫外線吸収剤(B1)以外の紫外線吸収剤(特にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)の含有量は、耐衝撃性、耐熱性、透明性、成形加工性、色相の観点から、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.05~0.3質量部であることが好ましく、0.1~0.25質量部であることがより好ましく、0.15~0.25質量部であることがさらに好ましい。
【0083】
f.ブルーイング剤(B7)
本開示の組成物には、ポリカーボネート樹脂や紫外線吸収剤に起因する成形品の黄色味を打ち消すために、ブルーイング剤を含有することができる。ブルーイング剤としてはポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば特に制限はない。一般的にはアントラキノン系染料は入手が容易であるため好ましい。
【0084】
具体的なブルーイング剤としては、例えば、一般名Solvent Violet13(CA.No(カラーインデックスNo)60725;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイオレットB」、三菱化学株式会社製「ダイアレジンブルーG」、住友化学工業株式会社製「スミプラストバイオレットB」)、一般名Solvent Violet31(CA.No 68210;商標名 三菱化学株式会社製「ダイアレジンバイオレットD」)、一般名Solvent Violet33(CA.No 60725;商標名 三菱化学株式会社製「ダイアレジンブルーJ」)、一般名Solvent Blue94(CA.No 61500;商標名 三菱化学株式会社製「ダイアレジンブルーN」)、一般名Solvent Violet36(CA.No 68210;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイオレット3R」)、一般名Solvent Blue97(商標名バイエル社製「マクロレックスブルーRR」)及び一般名Solvent Blue45(CA.No 61110;商標名 クラリアント社製「ポリシンスレンブルーRLS」)が代表例として挙げられる。
【0085】
ブルーイング剤は、視感透過率等を考慮し、通常0.3~1.2ppmの濃度でポリカーボネート樹脂中に含有することができる。
【0086】
本開示の組成物にはさらに、本開示の目的を損なわない範囲で、例えば、上記以外の他の熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、熱線遮蔽剤、蛍光増白剤、顔料、光拡散剤、強化充填剤、他の樹脂やエラストマー等を含有することができる。
【0087】
他の熱安定剤としては、例えば、硫黄系熱安定剤を挙げることができる。硫黄系熱安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。中でもペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネートが好ましい。特に好ましくはペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)である。該チオエーテル系化合物は住友化学工業株式会社からスミライザーTP-D(商品名)及びスミライザーTPM(商品名)等として市販されており、容易に入手できる。
【0088】
本開示の組成物中の硫黄系熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して0.001~0.2質量部であることが好ましい。
【0089】
〈加熱溶融成形品〉
加熱溶融成形品とは、本開示のポリカーボネート樹脂組成物を、加熱溶融成形、例えば、射出成形、押出成形、回転成形などの加熱溶融を伴う成形方法によって得られる透明な成形体を意図している。具体的には、例えば、パソコンやカーナビなどの各種ディスプレイの前面板、各種発光体のカバーや前面板、各種光源のカバーや前面板として用いられる平面形状成形品(例えば射出成形平面板、押出成形平面板(例えば押出成形シート));窓ガラスとして用いる平面形状成形品(例えば射出成形シート、押出成形シート);眼鏡レンズ等の光学レンズなどが挙げられる。さらに、それら成形品表面には表面賦型が施されていてもよく、平面形状成形品がさらにプレス成形されて、曲面形状又は立体形状が付与された成形品であってもよい。このような各種の成形品は、いずれも、優れた耐衝撃強度を有し、高い光線透過率を維持し、400nmはもちろん、特に400~420nmの光線透過率の抑制効果を有するものである。
【0090】
成形品の厚みとしては特に制限はないが、成形品の実用強度の観点から、0.3mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、1.0mm以上であることがさらに好ましく、2mm以上であることが特に好ましい。厚みの上限値としては特に制限はないが、成形加工性の観点から、10mm以下であることが好ましく、7mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。
【0091】
〈眼鏡レンズ〉
加熱溶融成形品の1種である眼鏡レンズとしては、例えば、成形の時点でレンズの凸面及び凹面を共にガラスモールド面の転写によって光学的に仕上げ、所望の度数にあわせて成形されるフィニッシュレンズが挙げられる。また、例えば、凸面のみがフィニッシュレンズと同様に光学的に仕上げられ、後に受注等による所望の度数に合わせて凹面側を光学的に仕上げるセミフィニッシュレンズなども挙げることができる。
【0092】
セミフィニッシュレンズは、必要な凹面加工に合わせて、カーブジェネレータ若しくはNC制御されたバイト等によって研削又は切削され、必要に応じて平滑処理(ファイニング)が施される。この切削又は研削、平滑化(ファイニング)された面を、研磨剤及び研磨布を介在させた研磨皿や柔軟性を有する研磨工具等を用いて研磨加工し、鏡面化させて光学的に仕上げられる。
【0093】
その後、フィニッシュレンズも研磨されたセミフィニッシュレンズも、洗浄し、傷や異物などの検査が行なわれる。さらに、任意に、例えばレンズに所望に応じた色を付ける染色工程、プラスチックレンズのキズ付き易さをカバーするための硬化膜を形成するハードコート処理工程、レンズの表面反射を低減し透過率を向上させる反射防止膜の成膜工程などを行って、完成品として出荷され、各ユーザーで使用される。
【0094】
本開示のポリカーボネート樹脂組成物を用いて形成される眼鏡レンズは、視力補正用レンズ、サングラス及び保護眼鏡等に用いることができる。いずれの眼鏡レンズも、高い光線透過率を維持して420nm付近、特に400nm~420nmの光線透過率の抑制効果を有するものである。
【実施例】
【0095】
以下、実施例により、本開示を更に具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0096】
《実施例1~12及び比較例1~7》
下記に示す製造方法により得たポリカーボネート樹脂組成物について、以下の評価を行い、その結果を表1に示す。ここで、表1におけるポリカーボネート樹脂及び各種添加剤の数値は、全て質量部である。
【0097】
〈シャルピー衝撃強さ(耐衝撃性)〉
各実施例で得たペレットを120℃で5時間、熱風乾燥機にて乾燥し、株式会社日本製鋼所製のJ75EIII射出成形機にて、シリンダー温度280℃、金型温度70~75℃で、1分サイクルにて、幅10mm、長さ80mm、厚み4mmの試験片を成形し、ISO179に準拠してノッチ付きのシャルピー衝撃強さを測定した。
【0098】
〈荷重たわみ温度(耐熱性)〉
各実施例で得たペレットを120℃で5時間、熱風乾燥機にて乾燥し、株式会社日本製鋼所製のJ75EIII射出成形機にて、シリンダー温度280℃、金型温度70~75℃、1分サイクルにて、幅10mm、長さ80mm、厚み4mmの試験片を成形し、ISO75-1,75-2に準拠して、1.80MPaの荷重を付加した状態の荷重たわみ温度を測定した。
【0099】
〈全光線透過率〉
各実施例で得たペレットを120℃で5時間、熱風乾燥機にて乾燥し、株式会社日本製鋼所製のJ75EIII射出成形機を用いてシリンダー温度350℃、金型温度80℃、1分サイクルにて、幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm)の3段型プレートを成形し、これを試験片とした。3段型プレートの厚み2mm部における全光線透過率を、JIS K7361に従い、日本電色工業株式会社製のNDH-2000を用いて測定した。
【0100】
〈分光光線透過率〉
各実施例で得たペレットを射出成形機(シリンダー温度350℃、1分サイクル)で成形し、測定用平板(縦90mm×横50mm×厚み2mm)を得た。測定用平板の波長領域300nm~500nmにおける分光光線透過率を、Varian社製のCary5000で測定し、420nm及び400nmの分光光線透過率を求めた。
【0101】
〈成形滞留試験〉
成形滞留安定性を評価するために成形耐熱試験に相当する成形滞留試験を実施した。各実施例で得たペレットを120℃で5時間、熱風乾燥機にて乾燥し、株式会社日本製鋼所製の射出成形機J85-ELIIIを用いてシリンダー温度350℃、金型温度80℃、1分サイクルにて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm)の3段型プレートを成形した。連続して20ショット成形した後、該射出成形機のシリンダー温度350℃のシリンダー中に樹脂を10分間滞留させ、滞留前後の試験片の厚さ2mm部の色相 (L,a,b)を、JIS K-7105に従って、Gretag Macbeth社製のColor-Eye7000Aを用いてC光源透過法にて測定し、以下の式4により色差ΔE’を求めた。ΔE’が小さいほど成形滞留安定性が優れることを示す。
【0102】
ΔE’={(ΔL’)2+(Δa’)2+(Δb’)2}1/2 …式4
滞留前の成形板の色相:L’’、a’’、b’’
滞留後の成形板の色相:L’’’、a’’’、b’’’
ΔL’:L’’-L’’’
Δa’:a’’-a’’’
Δb’:b’’-b’’’
【0103】
〈紫外線吸収剤(B1)の合成〉
紫外線吸収剤(B1)として、下記合成例1により得られた下記式5で示される化合物を使用した。
【0104】
(合成例1)
2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(5.00g,15.8mmol)、オクタンチオール(7.63g,52.1mmol)、炭酸カリウム(7.20g,52.1mmol)及びヨウ化カリウム(0.18g,1.1mmol)を、DMF50mL中で、150℃、20時間反応させた。反応終了後、精製して下記式5で示される化合物(UV-1)を得た。また係る化合物の各分析結果を以下に示す:
【化4】
【0105】
FT-IR(KBr)による分析
3125cm-1:O-H伸縮振動
1438,1391cm-1:トリアゾール環伸縮振動
661cm-1:C-S伸縮振動
【0106】
1H-NMR(CDCl3 400MHz)による分析
δ 0.88(t,3H,CH
3(CH2)7-S),1.27(m,8H,CH3(CH
2)4(CH2)3-S),1.49(m,11H,-Ph-OH-CH3-C(CH
3)3,CH3(CH2)4CH
2(CH2)2-S),1.75(quin,2H,CH3(CH2)5CH
2CH2-S),2.38(s,3H,-Ph-OH-CH
3-C(CH3)3),3.03(t,2H,CH3(CH2)5CH2CH
2-S),7.16(s,1H),7.37(d,1H),7.70(s,1H),7.81(d,1H),8.05(s,1H),(insg.5arom.CH),11.61(s,1H,-Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
【0107】
13C-NMR(CDCl3 400MHz)による分析
δ 14.0(CH3(CH2)7-S),20.0(-Ph-OH-CH3-C(CH3)3),22.6(-Ph-OH-CH3-C(CH3)3),28.7(CH3(CH2)5CH2CH2-S),31.9(-Ph-OH-CH3-C(CH3)3),33.2(CH3(CH2)5
CH2CH2-S),35.4(CH3(CH2)5CH2
CH2-S),113.6,117.5,119.3,128.7,129.3(CHarom),141.2,143.4(C
arom),125.4(C
arom-N),128.3(Carom-CH3),138.0(C
arom-S),139.1(C
arom-C(CH3)3),146.7(C
arom-OH)
【0108】
(実施例1)
常法によりビスフェノールAとホスゲンを界面重合法で重合して得た粘度平均分子量23,900のポリカーボネート樹脂粉粒体(PC-1)100部に、紫外線吸収剤として合成例1で得られた化合物(UV-1)0.22部、リン系熱安定剤(P-1)0.03部、離型剤として脂肪酸エステル系離型剤(R-1)0.1部、及びブルーイング剤(BL―1)0.00025部を各々添加し、タンブラーにて十分混合した後に、30mmφのベント式二軸押出成形機により温度290℃、真空度4.7kPaでペレット化した。
【0109】
(実施例2~12、比較例1~7)
各種材料を表1記載の量で使用する以外は、実施例1と同様の操作を行った。その評価結果を表1に示す。なお、表1記載の各記号に相当する成分を下記に示す。
【0110】
(ポリカーボネート樹脂粉粒体)
PC-1;ビスフェノールAとホスゲンを界面重合法で重合して得た粘度平均分子量23,900の芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成株式会社製:パンライト(商標)L-1250WP)。
【0111】
PC-2;ビスフェノールAとホスゲンを界面重合法で重合して得た粘度平均分子量22,200の芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成株式会社製:パンライト(商標)L-1225WP)。
【0112】
PC-3;ビスフェノールAとホスゲンを界面重合法で重合して得た粘度平均分子量19,700の芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成株式会社製:パンライト(商標)L-1225WX)。
【0113】
(紫外線吸収剤)
UV-1;2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-オクチルスルファニルベンゾトリアゾール(合成例1で得られた化合物)。
【0114】
UV-2;2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF株式会社社製:Tinuvin(商標)329)。
【0115】
UV-3;2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(BASF株式会社社製:Tinuvin(商標)326)。
【0116】
(リン系熱安定剤)
P-1;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF株式会社:Irgafos(商標)168)。
【0117】
P-2:ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(株式会社ADEKA製:アデカスタブ(商標)PEP-36)。
【0118】
(脂肪酸エステル系離型剤)
R-1;ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物(理研ビタミン社製:リケマール(商標)SL-900)。
【0119】
R-2;ペンタエリスリトールテトラステアレート(エメリーオレオケミカルズ株式会社製:ロキシオール(商標)VPG861)。
【0120】
(酸化防止剤)
H-1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤;オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF株式会社製Irganox(商標)1076)。
【0121】
H-2;ヒンダードフェノール系酸化防止剤;ペンタエリスリトール-テトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(BASF株式会社製Irganox(商標)1010)。
【0122】
(エポキシ基含有化合物)
C-1;スチレンとグリシジルメタクリレートの共重合体(日油株式会社製:マープルーフ(商標)G-0250SP)。
【0123】
(ブルーイング剤)
BL-1;ブルーイング剤(バイエル株式会社製:マクロレックスバイオレット(商標)B)。
【0124】
【0125】
〈結果〉
表1の結果から分かるように、特定の紫外線吸収剤(B1)を所定量含む実施例1~12のポリカーボネート樹脂組成物は、400nmはもちろん、特に420nmの光線透過率の抑制効果を有するとともに、耐衝撃強度及び成形滞留安定性にも優れることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0126】
全光線透過率が高いことや、成形加工時や押出加工時の成形滞留安定性が優れることは、眼鏡レンズを含めた透明プラスチック成形品における成形材料としてのポリカーボネート樹脂組成物で重要視されている特性である。
【0127】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、420nm付近、特に400~420nmの波長の光線透過率を抑制しながら、高い全光線透過率を維持し、かつ、耐衝撃強度、成形滞留安定性に優れるため、それらの特長を生かしたパソコンやカーナビなど各種ディスプレイの前面板、発光体の前面板やカバー、光源カバー、多目的シート(例えば射出成形された平面板、押出成形された平面板又はフィルム)及び眼鏡レンズなどの加熱溶融成形品を得るための成形材料として産業上幅広く利用される。