(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20230303BHJP
【FI】
B60C11/12 A
(21)【出願番号】P 2019064585
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】谷口 二朗
(72)【発明者】
【氏名】大橋 稔之
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-104188(JP,A)
【文献】特開2018-118723(JP,A)
【文献】登録実用新案第3190836(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイプが形成された陸部を有するトレッド部を備える空気入りタイヤであって、
前記サイプは、それぞれ陸部の表面から見たときのサイプ延在方向とサイプ深さ方向とに広がり、かつサイプ幅方向に間隔を隔てて互いに対向する第1側面と第2側面とを含む壁面によって画定され、
前記第1側面と前記第2側面は、前記陸部の前記表面側の第1部分と、前記サイプの
底部側の第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に介在する第3部分とをそれぞれ備え、
前記第1側面の前記第1部分と、前記第2側面の前記第1部分とは、互いに相補な形状を有し、
前記第1側面の前記第1部分と前記第2側面の前記第1部分は、それぞれ前記サイプ延在方向の一端から他端に向かって前記サイプ幅方向に振幅を有し、かつ前記陸部の前記表面から前記サイプの底部に向かって前記振幅が漸減する形状を有
し、
前記第1側面の前記第1部分は、前記陸部の前記表面から前記サイプの前記底部に向かって延び、かつ前記第2側面から離れる向きに窪んだ第1凹部と、前記第1凹部に対して前記サイプ延在方向に並んで配置され、前記陸部の前記表面から前記サイプの底部に向かって延び、かつ前記第2側面に向かって突出する第1凸部とを備え、
前記第2側面の前記第1部分は、前記第1凹部と前記サイプ幅方向に対向して配置され、前記陸部の表面から前記サイプの底部に向かって延び、かつ前記第1側面に向かって突出する第2凸部と、前記第1凸部と前記サイプ幅方向に対向して配置され、前記陸部の表面から前記サイプの底部に向かって延び、かつ前記第1側面から離れる向きに窪んだ第2凹部とを備え、
前記第1凹部、前記第1凸部、前記第2凸部、及び前記第2凹部は、前記陸部の前記表面から前記サイプの前記底部に向かって前記サイプ延在方向の寸法が漸次縮小し、
前記第1凹部、前記第1凸部、前記第2凸部、及び前記第2凹部は、前記サイプの前記底部に向かって尖った半錐状である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1凹部、前記第1凸部、前記第2凸部、及び前記第2凹部は、前記サイプの前記底部に向かって尖った半円錐状である、請求項
1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1側面の前記第2部分と、前記第2側面の前記第2部分とは、それぞれ前記サイプの前記底部に向かって前記サイプ幅方向に振幅を有し、かつ互いに相補な形状を有する、請求項1
又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1側面の前記第2部分は、前記サイプ延在方向に延び、かつ前記第2側面から離れる向きに窪んだ第3凹部と、前記第3凹部に対して前記サイプ深さ方向に並んで配置され、前記サイプ延在方向に延び、かつ前記第2側面に向かって突出する第3凸部とを備え、
前記第2側面の前記第2部分は、前記第3凹部と前記サイプ幅方向に対向して配置され、前記サイプ延在方向に延び、かつ前記第1側面に向かって突出する第4凸部と、前記第3凸部と前記サイ
プ幅方向に対向して配置され、前記サイプ延在方向に延び、かつ前記第1側面から離れる向きに窪んだ第4凹部とを備える、請求項
3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第3凹部、前記第3凸部、前記第4凸部、及び前記第4凹部は、前記サイ
プ幅方向から見て直線状である、請求項
4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第3凹部、前記第3凸部、前記第4凸部、及び前記第4凹部は、前記サイ
プ幅方向から見て蛇行状である、請求項
4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記第1側面及び前記第2側面の前記第3部分は平坦面である、請求項
3から請求項
5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたサイプは、陸部の表面側の第1部分と、この第1の部分に対して陸部の表面とは反対側の第2部分とを備える。第1部分におけるサイプの形状は、サイプ延在方向の一端から他端に向かってサイプ幅方向に振幅を有する。また、第1部分におけるサイプの形状は、サイプ深さ方向に変化を有しない。第2の部分におけるサイプの形状は、サイプの底部に向かってサイプ幅方向に振幅を有する。このサイプの形状は、氷雪路面性能の向上と、陸部の倒れ込み抑制による耐偏摩耗性能の向上との両立を意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたサイプでは、前述のように、第1部分におけるサイプの形状はサイプ深さ方向に変化しない。そのため、第1の部分における陸部の柔軟性は、サイプ深さ方向に均一である。氷雪路面性能向上の観点から陸部の表面において必要な柔軟性を確保した場合、第1部分のうち表面とは反対側の領域において、柔軟性が過剰となる傾向がある。この傾向は、倒れ込み抑制の観点で好ましくない。逆に、倒れ込み抑制の観点から第1部分のうち表面とは反対側の領域の柔軟性を抑制した場合、陸部の表面における柔軟性が不足する傾向がある。この傾向は、氷雪路面性能向上の観点で好ましくない。これらの理由から、特許文献1に開示されたサイプは、氷雪路面性能の向上と、陸部の倒れ込み抑制による耐偏摩耗性能の向上との両立についてさらなる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、空気入りタイヤにおける、氷雪路面性能の向上と、陸部の倒れ込み抑制による耐偏摩耗性能の向上との両立を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、サイプが形成された陸部を有するトレッド部を備える空気入りタイヤであって、前記サイプは、それぞれ陸部の表面から見たときのサイプ延在方向とサイプ深さ方向とに広がり、かつサイプ幅方向に間隔を隔てて互いに対向する第1側面と第2側面とを含む壁面によって画定され、前記第1側面と前記第2側面は、前記陸部の前記表面側の第1部分と、前記サイプの底部側の第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に介在する第3部分とをそれぞれ備え、前記第1側面の前記第1部分と、前記第2側面の前記第1部分とは、互いに相補な形状を有し、前記第1側面の前記第1部分と前記第2側面の前記第1部分は、それぞれ前記サイプ延在方向の一端から他端に向かって前記サイプ幅方向に振幅を有し、かつ前記陸部の前記表面から前記サイプの底部に向かって前記振幅が漸減する形状を有し、前記第1側面の前記第1部分は、前記陸部の前記表面から前記サイプの前記底部に向かって延び、かつ前記第2側面から離れる向きに窪んだ第1凹部と、前記第1凹部に対して前記サイプ延在方向に並んで配置され、前記陸部の前記表面から前記サイプの底部に向かって延び、かつ前記第2側面に向かって突出する第1凸部とを備え、前記第2側面の前記第1部分は、前記第1凹部と前記サイプ幅方向に対向して配置され、前記陸部の表面から前記サイプの底部に向かって延び、かつ前記第1側面に向かって突出する第2凸部と、前記第1凸部と前記サイプ幅方向に対向して配置され、前記陸部の表面から前記サイプの底部に向かって延び、かつ前記第1側面から離れる向きに窪んだ第2凹部とを備え、前記第1凹部、前記第1凸部、前記第2凸部、及び前記第2凹部は、前記陸部の前記表面から前記サイプの前記底部に向かって前記サイプ延在方向の寸法が漸次縮小し、前記第1凹部、前記第1凸部、前記第2凸部、及び前記第2凹部は、前記サイプの前記底部に向かって尖った半錐状である、空気入りタイヤを提供する。
【0007】
サイプを画定する第1及び第2側面の陸部の表面側の部分である第1部分は、サイプ延在方向の一端から他端に向かってサイプ幅方向に振幅を有する。また、これらの第1部分は、陸部の表面からサイプの底部に向かって振幅が漸減する形状を有する。つまり、第1及び第2側面の第1部分は、陸部の表面からサイプの底部に向かって、振幅を有する形状から平坦な形状に漸次変化している。かかる第1及び第2側面の第1部分の形状により、陸部のサイプが設けられた領域の柔軟性は、陸部の表面からサイプの底部に向かって、漸減する。従って、陸部のサイプが設けられた領域において、表面では所望の氷雪路面性能を得るために必要な柔軟性を確保しつつ、第1部分のうちサイプの底部側の領域では、倒れ込み抑制のために求められる剛性を確保できる。その結果、氷雪路面性能の向上と、陸部の倒れ込み抑制による耐偏摩耗性能の向上との高次元での両立を図ることができる。
【0009】
前記第1凹部、前記第1凸部、前記第2凸部、及び前記第2凹部は、前記サイプの前記底部に向かって尖った半錐状であってもよい。
【0010】
前記第1凹部、前記第1凸部、前記第2凸部、及び前記第2凹部は、前記サイプの前記底部に向かって尖った半円錐状であってもよい。
【0011】
前記第1側面の前記第2部分と、前記第2側面の前記第2部分とは、それぞれ前記サイプの前記底部に向かって前記サイプ幅方向に振幅を有し、かつ互いに相補な形状を有する。
【0012】
サイプを画定する第1及び第2側面のサイプの底部側の部分である第2部分をかかる形状とすることで、陸部のサイプが設けられた領域に対して倒れ込みを生じさせるような荷重が作用したときに、第1側面の第2部分と第2側面との第2部分とが互いに係合することにより、倒れ込みを抑制できる。
【0013】
具体的には、前記第1側面の前記第2部分は、前記サイプ延在方向に延び、かつ前記第2側面から離れる向きに窪んだ第3凹部と、前記第3凹部に対して前記サイプ深さ方向に並んで配置され、前記サイプ延在方向に延び、かつ前記第2側面に向かって突出する第3凸部とを備え、前記第2側面の前記第2部分は、前記第3凹部と前記サイプ幅方向に対向して配置され、前記サイプ延在方向に延び、かつ前記第1側面に向かって突出する第4凸部と、前記第3凸部と前記サイプ幅方向に対向して配置され、前記サイプ延在方向に延び、かつ前記第1側面から離れる向きに窪んだ第4凹部とを備える。
【0014】
前記第3凹部、前記第3凸部、前記第4凸部、及び前記第4凹部は、前記サイプ幅方向から見て直線状であってもよい。
【0015】
前記第3凹部、前記第3凸部、前記第4凸部、及び前記第4凹部は、前記サイプ幅方向から見て蛇行状であってもよい。
【0016】
蛇行状とすることで、陸部のサイプが設けられた領域にせん断変形を生じさせるような荷重、つまり第1側面と第2側面とをサイプ延在方向に互いにずれさせるような荷重が作用した場合に、第3凹部と第4凸部とが係合し、第3凸部と第4凹部とが係合する。これらの係合により、せん断変形を抑制できる。
【0017】
前記第1側面及び前記第2側面の前記第3部分は平坦面であってもよい。
【0018】
第1及び第2側面の第1部分(陸部の表面側)は、サイプ延在方向の一端から他端に向けてサイプ幅方向に振幅を有する。一方、第1及び第2側面の第2部分(サイプの底部側)は、サイプの底部に向かってサイプ幅方向に振幅を有する。このように振幅の形態が異なる第1部分と第2部分との間に介在する第3部分を平坦面とすることで、第1部分における陸部の変形と、第2部分における陸部の変形とが相互に与える影響を低減できる。その結果、第1部分における陸部については、陸部の表面からサイプの底部に向かって柔軟性が漸減していることによる利点をより確実に確保でき、第2部分における陸部については、倒れ込み抑制をより確実に確保できる。つまり、第1及び第2側面の第3部分を平坦面とすることで、氷雪路面性能の向上と、陸部の倒れ込み抑制による耐偏摩耗性能の向上とをより高次元で両立できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の空気入りタイヤによれば、氷雪路面性能の向上と、陸部の倒れ込み抑制による耐偏摩耗性能の向上との高次元での両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態にかかる空気入りタイヤのブロックを示す模式的な斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照すると、本発明の実施形態にかかる空気入りタイヤ1のトレッド部2はブロック(陸部)3を備える。ブロック3にサイプ4が形成されている。本実施形態では、ブロック3は直方体状で、2本のサイプ4が設けられている。ブロック3は他の形状を有していてもよいし、サイプ4の本数は1本又は3本以上であってもよい。さらに、サイプ4が形成される陸部はリブであってもよい。本実施形態のサイプ4は、概ね
図6に示すような形状を有するサイプブレード100を、タイヤ加硫成形金型内の適所に配置することで形成できる。
【0022】
図1において、符号SEはブロック3の表面3aから見たときのサイプ4が延在する方向、つまりサイプ延在方向を示す。また、
図1において符号SDはブロック3の表面3aからサイプ4がタイヤ径方向内向きに延びる方向、つまりサイプ深さ方向を示す。さらに、
図1において、符号SWはサイプ幅方向を示す。
【0023】
以下の説明では、特に言及しない限り、
図1から
図5、特に
図1が参照される。
【0024】
サイプ4はブロック3の表面3aで開口している。サイプ4は5個の壁面、つまり第1側面5A、第2側面5B、第1端面6A、第2端面6B、及び底面7によって画定されている。第1側面5Aと第2側面5Bは、サイプ延在方向SEとサイプ深さ方向SDとにそれぞれ広がり、かつサイプ幅方向SWに間隔を隔てて互いに対向している。第1端面6Aと第2端面6Bは、第1側面5Aと第2側面5Bのサイプ延在方向SEの端部を連結するように、サイプ幅方向SWとサイプ深さ方向SDにそれぞれ広がっており、サイプ延在方向SEに互いに対向している。本実施形態では、第1端面6Aと第2端面6Bはいずれも平坦面である。本実施形態では、底面7はサイプ延在方向SEとサイプ深さ方向SDに広がっている。
【0025】
第1側面5Aと第2側面5Bは、それぞれ凹凸が設けられおり、互いに相補な形状を有する。ここで相補な形状とは、第1側面5Aと第2側面5Bのうちの一方が凸状である部分では他方が凹状であることにより、少なくとも荷重が作用しない状態では、第1側面5Aと第2側面5Bとが非接触で、それらの間にサイプ幅方向SWの隙間があることを意味する。
【0026】
第1側面5Aと第2側面5Bは、サイプ深さ方向SDに3つの部分に分かれている。つまり、第1側面5Aと第2側面5Bは、ブロック3の表面3a側の第1部分5aと、サイプ4の底部側(底面7側)の第2部分5bと、第1部分5aと第2部分5bとの間に介在する第3部分5cとをそれぞれ備える。
【0027】
第1側面5Aの第1部分5aと第2側面5Bの第1部分5aは、平坦面ではなく、それぞれサイプ延在方向SEの一端から他端に向かってサイプ幅方向SWに振幅を有している。また、この振幅は、ブロック3の表面3aからサイプ4の底部に向かって漸減している。さらに、第1側面5Aの第1部分5aと第2側面5Bの第1部分5aは、互いに相補な形状を有する。以下、第1及び第2側面5A,5Bの第1部分5aの形状を具体的に説明する。
【0028】
図1、
図2、及び
図3を参照すると、第1側面5Aの第1部分5aは、ブロック3の表面3aからサイプ4の底部に向かって延びる複数の凹部(第1凹部)10aと、同じくブロック3の表面3aからサイプ4の底部に向かって延びる複数の凸部(第1凸部)11aを備える。個々の凹部10aは第2側面5Bから離れる向きに窪んでおり、個々の凸部11aは第2側面5Bに向かって突出している。凹部10aと凸部11aは、サイプ延在方向SEに交互に並んで配置されている。凹部10aと凸部11aはいずれも、ブロック3の表面3aからサイプ4の底部に向かって漸次縮小して終端している。本実施形態における凹部10aと凸部11aは、サイプ4の底部に向かって尖った半円錐状であり、概ね同形状かつ同寸法である。第1側面5Aの第1部分5aは、サイプ延在方向SEの両端に平坦面12a,15aを有する。
【0029】
図1、
図4、及び
図5を参照すると、第2側面5Bの第1部分5aは、ブロック3の表面3aからサイプ4の底部に向かって延びる複数の凸部(第2凸部)11bと、同じくブロック3の表面3aからサイプ4の底部に向かって延びる複数の凹部(第2凹部)10bを備える。個々の凸部11bは第1側面5Aに向かって突出し、個々の凹部10bは第1側面5Aから離れる向きに窪んでいる。凸部11bと凹部10bは、サイプ延在方向SEに交互に並んで配置されている。第2側面5Bの第1部分5aは、サイプ延在方向SEの両端に平坦面12b,15bを有する。
【0030】
第2側面5Bの第1部分5aが備える凸部11bと凹部10bは、第1側面5Aの第1部分5aが備える凹部10aと凸部11aに対応する配置、形状、及び寸法を有する。まず、凸部11bは凹部10aとサイプ幅方向SWに対向して配置され、凹部10bは凸部11aとサイプ幅方向SWに対向して配置されている。また、凸部11bは、凸部11aと同様に、サイプ4の底部に向かって尖った半円錐状であり、凸部11aと形状と寸法が同じである。さらに、凹部10bは、凹部10aと同様に、サイプ4の底部に向かって尖った半円錐状であり、凹部10aと形状と寸法が同じである。
【0031】
第1及び第2側面5A,5Bの第1部分5aが、以上のような凹部10a,10bと凸部11a,11bとを備えるので、第1側面5A(第1部分5a)とブロック3の表面3aとによって、また、第2側面5B(第1部分5a)とブロック3の表面3aとによって、波形のエッジが形成される。かかる形状のエッジは、直線形状のエッジと比較してより長いエッジ長を確保できるので、氷雪路面性能の向上に寄与する。
【0032】
凹部10a,10bと凸部11a,11bは、サイプ4の底部に向かって漸次縮小して終端している限り、具体的な形状は特に限定されない。例えば、凹部10a,10bと凸部11a,11bは、半四角錐状、半三角錐状のような半円錐状の範疇に含まれない半錐状であってもよい。本実施形態では、ブロック3の表面3aにおいて凹部10aと凸部11aとが連続し、凸部11bと凹部10bとが連続している。しかし、ブロック3の表面3aにおいて、凹部10aと凸部11aとの間、及び凸部11bと凹部10bとの間に直線状の部分が介在してもよい。
【0033】
図2及び
図4に最も明瞭に示すように、本実施形態では、凹部10a,10bと凸部11a,11bの終端部分、つまり半円錐の先端のサイプ深さ方向SDの位置は同一に設定されている。しかし、凹部10a,10bと凸部11a,11bの終端部分のサイプ深さ方向SDの位置が、サイプ延在方向SEに規則的又は不規則に変化していてもよい。
【0034】
本実施形態では、凹部10a,10bと凸部11a,11bの寸法と形状(半円錐の寸法と形状)を統一している。そのため、ブロック3の表面3aから見たサイプ4の形状は、振幅と周期が一定の波形である。しかし、凹部10a,10bと凸部11a,11bの寸法と形状は、サイプ延在方向SEに規則的又は不規則に変化していてもよい。例えば、ブロック3の表面3aから見たサイプ4の形状は、規則的又は不規則に振幅及び周期のうちの一方又は両方が変化していてもよい。
【0035】
第1及び第2側面5A,5Bの第1部分5aは、ブロック3の表面3aからサイプ4の底部に向かって、振幅を有する形状から平坦な形状に漸次変化している。かかる第1及び第2側面5A,5Bの第1部分5aの形状により、ブロック3のサイプ4が設けられた領域の柔軟性は、ブロック3の表面3aからサイプ4の底部に向かって、漸減する。従って、ブロック3のサイプ4が設けられた領域において、表面3aでは所望の氷雪路面性能を得るために必要な柔軟性を確保しつつ、第1部分5aのうちサイプ4の底部側の領域では、倒れ込み抑制のために求められる剛性を確保できる。その結果、氷雪路面性能の向上と、陸部の倒れ込み抑制による耐偏摩耗性能の向上との高次元での両立を図ることができる。
【0036】
第1側面5Aの第2部分5bと第2側面5Bの第2部分5bは、平坦面ではなく、それぞれサイプ4の底部に向かってサイプ幅方向SWに振幅を有している。本実施形態では、この振幅は、サイプ4のサイプ延在方向SEの一端から他端まで変化せず一定である。さらに、第1側面5Aの第2部分5bと第2側面5Bの第2部分5bは、互いに相補な形状を有する。以下、第1及び第2側面5A,5Bの第2部分5bの形状を具体的に説明する。
【0037】
図1、
図2、及び
図3を参照すると、第1側面5Aの第2部分5bは、サイプ延在方向SEに延びる2個の凹部(第3凹部)13aと、これらの凹部13aの間に介在するように設けられたサイプ延在方向SEに延びる1個の凸部(第3凸部)14aを備える。個々の凹部13aは第2側面5Bから離れる向きに窪んでおり、凸部14aは第2側面5Bに向かって突出している。本実施形態における、凹部13aと凸部14aは、サイプ延在方向SEに直交する断面の形状が半円状であり、概ね同形状かつ同寸法である。また、本実施形態における、第1側面5Aをサイプ幅方向SWに正面視したときの凹部13aと凸部14aの形状は、蛇行することなくサイプ延在方向SEに直線状に延びている。
【0038】
図1、
図4、及び
図5を参照すると、第2側面5Bの第2部分5bは、サイプ延在方向SEに延びる2個の凸部(第4凸部)14bと、これらの凸部14bの間に介在するように設けられたサイプ延在方向SEに延びる1個の凹部(第4凹部)13bを備える。個々の凸部14bは第1側面5Aに向かって突出し、凹部13bは第1側面5Aから離れる向きに窪んでいる。
【0039】
第2側面5Bの第2部分5bが備える凸部14bと凹部13bは、第1側面5Aの第2部分5bが備える凹部13aと凸部14aに対応する配置、形状、及び寸法を有する。まず、凸部14bは凹部13aとサイプ幅方向SWに対向して配置され、凹部13bは凸部14aとサイプ幅方向SWに対向して配置されている。また、凸部14bは、凸部14aと同様に、サイプ延在方向SEに直交する断面の形状が半円状であり、凸部14aと形状と寸法が同じである。さらに、凹部13bは、凹部13aと同様に、サイプ延在方向SEに直交する断面の形状が半円状であり、凹部13aと同じ形状と寸法が同じである。第2側面5Bをサイプ幅方向SWに正面視したときの凸部14bと凹部13bの形状は、蛇行することなくサイプ延在方向SEに直線状に延びている。
【0040】
サイプ4を画定する第1及び第2側面5A,5Bのサイプ4の底部側の部分である第2部分5aをかかる形状とすることで、ブロック3のサイプ4が設けられた領域に対して倒れ込みを生じさせるような荷重が作用したときに、凹部13aと凸部14bとが互いに係合し、さらに凸部14aと凹部13bとが互いに係合することにより、倒れ込みを抑制できる。
【0041】
凹部13a,13bと凸部14a,14bのサイプ延在方向SEに直交する断面の形状は、本実施形態のような半円状に限定されず、円弧状、楕円弧状、又は三角形、四角形、六角形のような多角形状であってもよい。
【0042】
本実施形態では、凹部13a,13bと凸部14a,14bの寸法と形状(円弧の寸法と形状)を統一している。そのため、サイプ延在方向SEに直交する断面におけるサイプ4の形状は、振幅と周期が一定の波形である。しかし、凹部13a,13bと凸部14a,14bの寸法と形状はサイプ深さ方向SDに規則的又は不規則に変化していてもよい。例えば、サイプ延在方向SEに直交する断面におけるサイプ4の第2部分5bの形状は、規則的又は不規則に振幅及び周期のうちの一方又は両方が変化していてもよい。
【0043】
図7に示す代案のように、第1及び第2側面5A,5Bをサイプ幅方向SWに正面視したときの凹部13a,13bと凸部14a,14bの形状は、折れ線状であってもよい。また、これらの形状は、例えば波形のような折れ線状の範疇に入らない蛇行状であってもよい。蛇行状とすることで、ブロック3のサイプ4が設けられた領域にせん断変形を生じさせるような荷重、つまり第1側面5Aと第2側面5Bとをサイプ延在方向SEに互いにずれさせるような荷重が作用した場合に、凹部13aと凸部14bとが係合し、凸部14aと凹部13bとが係合する。これらの係合により、せん断変形を抑制できる。
【0044】
前述のように、第1及び第2側面5A,5Bの第3部分5cは、ブロック3の表面3a側の第1部分5aと、サイプ4の底部側の第2部分5bとの間に介在している。より詳細には、第1側面5Aの第3部分5cは、凹部10aと凸部11aの最もサイプ4の底部側の部分(半円錐の先端)と、凹部13aの最もブロック3の表面3a側の部分の間の部分として定義される。また、第2側面5Bの第3部分5cは、凹部10bと凸部11bの最もサイプ4の底側の部分(半円錐の先端)と、凸部14bの最もブロック3の表面3a側の部分の間の部分として定義される。本実施形態では、第1及び第2側面5A,5Bの第3部分5cはいずれも、凹凸のない平坦面である。
【0045】
第1及び第2側面5A,5Bの第1部分5a(ブロック3の表面3a側)は、サイプ延在方向SEの一端から他端に向けてサイプ幅方向に振幅を有する。一方、第1及び第2側面5A,5Bの第2部分5b(サイプ4の底部側)は、サイプ4の底部に向かってサイプ幅方向SWに振幅を有する。このように振幅の形態が異なる第1部分5aと第2部分5bとの間に介在する第3部分5cを平坦面とすることで、第1部分5aにおけるブロック3の変形と、第2部分5bにおけるブロック3の変形とが相互に与える影響を低減できる。その結果、第1部分5aにおけるブロック3については、ブロック3の表面3aからサイプ4の底部に向かって柔軟性が漸減していることによる利点をより確実に確保でき、第2部分5bにおけるブロック3については、倒れ込み抑制をより確実に確保できる。つまり、第1及び第2側面5A,5Bの第3部分5cを平坦面とすることで、氷雪路面性能の向上と、陸部の倒れ込み抑制による耐偏摩耗性能の向上とをより高次元で両立できる。
【符号の説明】
【0046】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 ブロック(陸部)
3a 表面
4 サイプ
5A 第1側面
5B 第2側面
5a 第1部分
5b 第2部分
5c 第3部分
6A 第1端面
6B 第2端面
7 底面
10a 凹部(第1凹部)
10b 凹部(第2凹部)
11a 凸部(第1凸部)
11b 凸部(第2凸部)
12a,12b 平坦面
13a 凹部(第3凹部)
13b 凹部(第4凹部)
14a 凸部(第3凸部)
14b 凸部(第4凸部)
15a,15b 平坦面
100 サイプブレード
SE サイプ延在方向
SD サイプ深さ方向
SW サイプ幅方向