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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】庇
(51)【国際特許分類】
   E04F 10/00 20060101AFI20230303BHJP
   E04B 7/02 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
E04F10/00
E04B7/02 501D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019066716
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165201
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000230607
【氏名又は名称】日本化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山窪 泉
(72)【発明者】
【氏名】本城 和幸
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-99728(JP,U)
【文献】特開2006-307424(JP,A)
【文献】特開2014-177752(JP,A)
【文献】特開2012-102600(JP,A)
【文献】特開2003-160993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 10/00
E04F 10/08
E04B 7/02
E04D 3/40
E04H 6/02
E04B 1/00
F16B 1/00
A47B 96/06
E06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の庇本体と、
前記庇本体に対して起立して接続され、外壁に固定される庇固定片と、
前記庇本体に一つ以上配置される補強部材であって、前記庇本体に取り付けられる取付片と、該取付片の長手方向に沿って起立され、該取付片に対して接続された補強片と、該取付片か該補強片の少なくとも一方の長手方向の端部に接続され、前記庇固定片を介して前記外壁に固定される補強固定片と、を有する補強部材と、
前記庇本体に接合される庇側ブラケットと、
一端部が前記庇本体より上方か下方のいずれかの位置の外壁に対して連結され、他端部が前記庇側ブラケットに対して連結されるステーと、を有し、
前記庇側ブラケットは前記庇本体と前記取付片とを挟み込み、該庇本体と前記補強部材とを一体にさせ接合することを特徴とする庇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の庇に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁から片持ち状に張り出した庇を構成することが行われている。このような庇として、張出方向の一方の端部が外壁に支持されると共に、中間部分がステーを介して外壁に吊り下げた状態で支持された構造のものがある。
【0003】
例えば特許文献1に記載された庇は、板ガラス製の庇板の基端縁が外壁に固定された支持具に挟み込まれて支持されている。また、庇板の幅方向の両端に対応する位置には一端が外壁に支持されたアームが夫々配置されており、庇板はこれらのアームに取り付けた縁枠に端縁が挟み込まれて支持されている。更に、庇板の先端縁を挟み込んだ縁枠をアームによって支持することで、風圧、積雪などの外力に対応し得るように構成されている。
【0004】
また特許文献2に記載された建屋用庇は、下部側に庇継合部材を支持すると共に、上部側に一端が庇継合部材に接続されたアーム材の他端を支持した建屋ブラケットが建物の外壁に固定されている。また、建物ブラケットの下方側には雨樋が配置されている。そして、彎曲した庇本体は、幅方向の端部が庇継合部材に係合して支持されるように構成されている。
【0005】
特許文献3に記載された庇は、平板状の庇本体の構成により、薄くすっきりとした意匠を実現することができる。この庇は、庇本体に対して起立し外壁に固定される固定片と、外壁に固定された固定ブラケットと、庇本体に取り付けた固定金具と、固定ブラケットと固定金具を繋ぐステーと、を有して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4669738号公報
【文献】特開平6-193223号公報
【文献】特開2008-63750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
庇の張り出し寸法を大きくし、雨がかりしにくくしたり、また日よけを図ることがある。一般に、庇の張り出し寸法が大きくなることに伴い、庇の面積が増すことになる。これに比例して庇にかかる風圧力、積雪荷重が大きくなり、このような外力に耐えるためには、庇の強度増を図ることが必要になる。しかしながら、前述の特許文献3の技術では、庇の張り出し寸法が大きくなったとき、庇本体の剛性を外力に対応させる場合には庇本体の厚さを大きくすることが必要になるという問題があった。そして、庇本体の厚さが大きくなることによって、薄くすっきりした意匠性が損なわれるという問題が生じる。このような問題の対策のため、庇本体を薄くしたまま、庇本体に特許文献1、2に記載されたアームのような補強材を接合することで庇本体の剛性を高め、外力に対応させることが考えられる。この場合、この補強材を設ける手間が生じることになり、この手間を出来るだけ抑制することが施工上望ましい。
【0008】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、意匠性に優れかつ、庇の張り出し寸法の延長に伴う強度増を容易に図ることができる庇を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明に係る庇の構成は、平板状の庇本体と、前記庇本体に対して起立して接続され、外壁に固定される庇固定片と、前記庇本体に一つ以上配置される補強部材であって、前記庇本体に取り付けられる取付片と、該取付片の長手方向に沿って起立され、該取付片に対して接続された補強片と、該取付片か該補強片の少なくとも一方の長手方向の端部に接続され、前記庇固定片を介して前記外壁に固定される補強固定片と、を有する補強部材と、前記庇本体に接合される庇側ブラケットと、一端部が前記庇本体より上方か下方のいずれかの位置の外壁に対して連結され、他端部が前記庇側ブラケットに対して連結されるステーと、を有し、前記庇側ブラケットは前記庇本体と前記取付片とを挟み込み、該庇本体と前記補強部材とを一体にさせ接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る庇の構成によれば、補強部材は、庇本体に対して容易に設置することができる。すなわち、庇とステーとの接続部となる庇側ブラケットを利用して、補強部材を庇本体に連結させ、他方外壁への固定は、ねじなどの固定具により、補強固定片と庇固定片とを共留めできる構成であるため、補強部材の設置に要する工程を庇側ブラケットの設置作業及び庇本体のねじ留め作業と共通に行うことができる。従って、補強部材に設置に要する工数増を抑えることができ、庇への補強部材の設置が容易にできる。故に意匠性を減ずることなく、張り出し寸法の延長の容易化を図ることができる。
【0011】
尚、現場での作業を出来るだけ縮減したい場合には、補強部材を壁側ブラケットにより庇本体に予め工場で組み立てておくことも可能である。
【0012】
補強部材が、庇本体に取り付けられる取付片と、この取付片に対して接続された補強片と、取付片か補強片の少なくとも一方の長手方向の端部に接続された補強固定片を有している。そして、取付片を庇本体に取り付けると共に補強固定片を庇本体の庇固定片を介して外壁に固定することによって、補強部材は庇本体の張り出し方向に配置されて固定される。従って、補強片が庇本体の平面から起立することとなり、剛性を高めることができる。このため、意匠性を損なうことなく、張り出し寸法の大きい庇を構成することができる。
【0013】
補強部材の補強固定片が庇本体の庇固定片を介して直接外壁に固定されるため、補強部材は単に庇本体に固定されるのみならず外壁にも固定されることとなる。このため、補強部材と一体化された庇本体をより確実に外壁に固定することができ、且つ高い剛性を発揮することができる。
【0014】
特に、補強部材を庇本体の幅方向の寸法に対応させて配置数を設定することで、幅方向の寸法の制限のない庇を構成することができる。また、補強部材が補強固定片を庇本体の庇固定片を介して外壁に固定した状態で庇本体の張出方向に配置される。このため、庇本体の張出寸法に対応させた補強部材を配置することで、張出寸法の大きさに対応することができる。従って、寸法の自由度の高い庇を構成することができる。
【0015】
また、前述したとおり、現場における作業を容易に行うことができるので、庇本体、補強部材、壁側ブラケット、庇側ブラケットを個別の部品として構成して現場組立とすることができるため、現場への搬入作業を容易に且つ確実に行うことができる。すなわち、輸送による振動や、現場での持ち運びの際の傷防止のため、各部品はエアキャップやビニールシートにより養生をすることが好ましいが、部品を個別化することにより、養生が容易にできる。また、梱包は製品全体を保護のため段ボールで覆うことが一般であるが、部品を個別化することにより、比較的にかさばらず、緩衝材を削減し、製品の梱包形状の凹凸を最小限にすることができ、倉庫に於ける保管時、輸送時の積み重ねが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る庇の構成を示す斜視図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】本発明に係る庇の正面図である。
図4】庇本体の構成を示す斜視図である。
図5】補強部材の構成を示す斜視図である。
図6】庇本体に補強部材を取り付ける際の手順の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図6を用いて本発明に係る庇の構成について説明する。図において、1は平板状の庇本体であり、該庇本体1の先端部(外壁2と反対側の辺)には、該庇本体1の先端部(外壁2と反対側の辺)の全長にわたって上方に所定角度で折曲された水止め片1aが形成されている。
【0018】
また、庇本体1の後端部(外壁2側の辺)には、該庇本体1に対して該庇本体1の後端部(外壁2側の辺)の全長にわたって上方に起立して接続された庇固定片1bが形成されている。この庇固定片1bには複数の穴1cが形成されており、該穴1cに固定部材となる固定ビス11を挿通してシーリング材10aを介して外壁2に固定することにより、庇本体1の庇固定片1bを外壁2に固定することができる。
【0019】
また、庇本体1の平面部分には、該庇本体1の幅方向(図3の左右方向)の予め設定された位置には複数の穴1dが形成されている。この穴1dは、後述する補強部材3、庇側ブラケット5、固定部材6を取り付けるためのものであり、補強部材3の取付数及び配置位置、庇固定片1bからの寸法などの条件に対応した夫々位置に形成されている。
【0020】
尚、庇固定片1bは庇本体1に対して直角若しくは鈍角に起立させることが出来る。また、庇固定片1bは必ずしも庇本体1の一部を折り曲げて形成する必要はなく、L字型に成形した材を庇本体1の後端部に溶接等の手段で接続しても良い。
【0021】
ここで、庇本体1の材質としては可撓性を有する金属製の薄板或いは可撓性の合成樹脂板等により作成することが出来る。
【0022】
庇本体1の幅方向の中央部及びその両側に合計3本の補強部材3が配置されている。各補強部材3は庇本体1と対応する部位が庇側ブラケット5と固定部材6によって庇本体1に取り付けられ、外壁2と対応する部位は固定ビス11によって外壁2に固定されている。尚、庇本体1に取り付けられる補強部材3の数は、本実施形態に於ける3本に限定されるものではなく、庇本体1の幅方向の寸法や耐荷重に応じて、補強部材3の数を適宜増減させることができる。補強部材3を取り付ける位置は実施形態に限らず、庇本体1の端に設置することも可能である。下からの見栄えの点からは、実施形態のように補強部材3が見えにくいように庇本体1の端から離して設置することが好ましい。下からの意匠を他の補強材がついていない庇とさほどかわらなくすることで、補強材がある庇と、補強材がない庇とを一の製品群として商品化を図ることが容易になる。
【0023】
本実施形態に於いて、補強部材3は、庇本体1に取り付けられる取付片3aと、取付片3aの長手方向に沿って起立して接続された一対の補強片3bと、を有する長尺状の溝型に形成されている。また、取付片3aの長手方向の端部には、該取付片3aに起立して補強固定片3cが接続されている。この補強固定片3cは取付片3aに接続すると共に補強片3bにも接続されている。補強固定片3cは、補強片3bの端部から折り曲げして構成してもよく、取付片3aか補強固定片3cか何れか一方に板状のものを溶接したり、アングル状のものをネジ留めして構成することも可能である。
【0024】
尚、本実施形態では、補強部材3を取付片3aに沿って起立して接続された一対の補強片3bを有する溝型に形成したが、一つの補強片を有するアングル状に形成したものであっても良い。また、補強部材3の長さは限定するものではなく、庇本体1の張出長さや板厚等の条件に対応させて適宜設定することが好ましい。
【0025】
補強部材3の補強固定片3cであって、庇本体1の庇固定片1bに形成された穴1cと対応する位置には、穴3dが形成されている。また、取付片3aには、補強固定片3cをシーリング材10bを介して庇固定片1bに接触させたときに庇本体1に形成された穴1dと対応する位置に夫々穴3eが形成されている。
【0026】
補強部材3は、補強固定片3cをシーリング材10bを介して庇本体1の庇固定片1bに接触させると共に、取付片3aをシーリング材10cを介して庇本体1に接触させて配置されている。そして、補強部材3の庇本体1の先端側が固定部材6によって、該固定部材6よりも補強固定片3c側が庇側ブラケット5によって、庇本体1に取り付けられている。
【0027】
すなわち、図6に示すように、庇本体1に形成された穴1d、補強部材3と庇本体1との隙間への水の浸入を防ぐための、シーリング材10cを介して庇本体1の上面に配置された補強部材3の取付片3aに形成された穴3eには、庇本体1の下面側から固定部材6の支持ボルト6a、庇側ブラケット5の支持ボルト5aが差し込まれている。また、庇本体1の上面側に露出した各支持ボルト6a、5aにはパネル受け6b、5b、座金6c、5c、5dが差し込まれ、支持ボルト6aには袋ナット6dが締結され、支持ボルト5aにはブラケット体5eが締結されている。尚、庇側ブラケット5を構成するブラケット体5eにはボルト5fが回動可能に設けられている。
【0028】
上記の如くして庇側ブラケット5と支持ボルト5aとが対になり、補強部材3と庇本体1とを挟み込み補強部材3は庇本体1に一体的に取り付けられている。シーリング材10b、10cは、防錆上、補強部材3と、庇本体1との間の水の滞留を防止する。尚、構成を簡略化するためにシーリング材10b、10cを省略することもできる。
【0029】
庇本体1は、庇固定片1bをシーリング材10aを介して外壁2に接触させると共に、該庇固定片1bに形成された穴1cに固定ビス11を挿通して外壁2に締結することで、該外壁2に固定されている。そして、外壁2における庇本体1に取り付けた補強部材3と対応する位置(外壁2に対向した補強固定片3cの上方)には、壁側ブラケット7が固定ビス11によって固定されている。シーリング材10aは、外壁2の不陸を吸収すると共に防水性能を発揮する。尚、構成を簡略化するためにシーリング材10aを省略することもできる。
【0030】
壁側ブラケット7は、取付座7aと、この取付座7aから起立した支柱7bと、支柱7bの先端に回動可能に構成されたボルト7cと、を有している。そして、取付座7aに挿通した固定ビス11を外壁2に締結することで、壁側ブラケット7は外壁2に固定されている。
【0031】
壁側ブラケット7と庇側ブラケット5はステー8を介して連結されている。すなわち、ステー8は、一端部が壁側ブラケット7のボルト7cに締結され、他端部が庇側ブラケット5のボルト5fに締結されている。尚、ステー8と壁側ブラケット7のボルト7c、庇側ブラケット5のボルト5fとの螺合をどの時点で行うかは限定するものではなく、現場の状況に応じた手順で行うことが好ましい。また、ステー8の配置についても本実施形態に限定するものではなく、庇側ブラケット5と固定部材6の位置を交換してもよい。すなわち、庇側ブラケット5を補強部材3の先端側とし、固定部材6を外壁2側として接続してもよい。
【0032】
そして、ステー8を介して庇側ブラケット5と壁側ブラケット7を連結すると共に、庇固定片1bを外壁2に固定することで、庇本体1は外壁2に支持されている。特に、ステー8をターンバックルとして機能させることで、庇本体1の外壁2からの張り出し勾配を設定することが可能となる。
【0033】
庇本体1に所望の勾配に設定した後、庇側ブラケット5のボルト5f、壁側ブラケット7のボルト7cに夫々ロックナット9によって固定することで、各ボルト5f、7cは緩みを生じることなく確実に締結されている。
【0034】
上記の如く構成された庇では、雨がかりや日よけ対策を目的として庇の張出寸法を大きくするのに伴って庇の面積が増大した場合でも、補強部材3の配置数や寸法を適宜設定することで、庇本体1の板厚を厚くすることなく、意匠性を確保した薄板での強度確保を実現することが可能となる。このように、庇本体1を薄板の単板によって構成することで安価な庇を構成することが可能であり、且つ補強部材3との接合も強固なものとすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の活用例として、建築物の庇に適用することが出来る。
【符号の説明】
【0036】
1…庇本体
1a…水止め片
1b…庇固定片
1c、1d…穴
2…外壁
3…補強部材
3a…取付片
3b…補強片
3c…補強固定片
3d、3e…穴
5…庇側ブラケット
5a、6a…支持ボルト
5b、6b…パネル受け
5c、5d、6c…座金
5e…ブラケット体
5f、7c…ボルト
6…固定部材
6d…袋ナット
7…壁側ブラケット
7a…取付座
7b…支柱
8…ステー
9…ロックナット
10a~10c…シーリング材
11…固定ビス
図1
図2
図3
図4
図5
図6