(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】燃料電池用分離板組立体およびこれを含む燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0228 20160101AFI20230303BHJP
H01M 8/0247 20160101ALI20230303BHJP
H01M 8/0267 20160101ALI20230303BHJP
H01M 8/0271 20160101ALI20230303BHJP
H01M 8/0284 20160101ALI20230303BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20230303BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20230303BHJP
【FI】
H01M8/0228
H01M8/0247
H01M8/0267
H01M8/0271
H01M8/0284
H01M8/10 101
H01M8/2483
(21)【出願番号】P 2019068747
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0156386
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ソンイル
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ユチャン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ビョン-ホン
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-272474(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0239128(US,A1)
【文献】特表2018-527716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0358805(US,A1)
【文献】特開2009-104987(JP,A)
【文献】特開2018-137074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーリングのために突出したビードシールが形成される第1分離板と;
前記第1分離板に接合されて一体化され、前記ビードシールが形成された位置と対応する位置に、前記ビードシールと同じ方向に突出するアーチ型の膨隆部が形成される第2分離板であって、前記アーチ型の膨隆部の中央側の上面が前記第2分離板の両端面よりも上方に位置する、第2分離板と;
前記第2分離板の膨隆部が形成された位置における、突出方向と反対の方向面に形成されるガスケットと;
前記第1分離板のビードシールが形成された位置における突出方向面に塗布されるシール剤と;を含む、燃料電池用分離板組立体。
【請求項2】
前記第2分離板から膨隆部が突出する高さは、前記第1分離板からビードシールが突出する高さよりも低いことを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用分離板組立体。
【請求項3】
前記第2分離板に形成される膨隆部の高さは、第1分離板と第2分離板との厚さの和と同じか小さいことを特徴とする、請求項2に記載の燃料電池用分離板組立体。
【請求項4】
前記ガスケットの幅は前記シール剤の幅よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用分離板組立体。
【請求項5】
前記ガスケットは弾性のあるゴム素材を射出して形成されることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用分離板組立体。
【請求項6】
両端にサブガスケットが形成された膜電極接合体と、一対のガス拡散層、アノード分離板およびカソード分離板からなる多数の燃料電池セルとが積層されて形成される燃料電池スタックであって、
互いに隣接する燃料電池セルにおいて互いに対面するアノード分離板とカソード分離板とが接合されて一体化され、
前記アノード分離板には、シーリングのために突出したビードシールが形成され、
前記カソード分離板には、前記ビードシールの形成位置と対応する位置に、前記ビードシールと同じ方向に突出するアーチ型の膨隆部が形成され、前記アーチ型の膨隆部の中央側の上面が前記カソード分離板の両端面よりも上方に位置
し、
前記カソード分離板の膨隆部が形成された位置における、突出方向と反対の方向面にはガスケットが形成され、
前記アノード分離板のビードシールが形成された位置における突出方向面にはシール剤が塗布されることを特徴とする、燃料電池スタック。
【請求項7】
前記アノード分離板に形成されるビードシールは、隣接するサブガスケット方向に突出し、前記シール剤によって前記サブガスケットに密着してシールされ、
水素が流動する領域では、前記ビードシールの両側外郭領域でアノード分離板とカソード分離板とを接合させる接合部が形成され、前記ビードシールには、ビードシールの両側外郭領域を連通させてアノード分離板とサブガスケットとの間に水素を流動させる一対の連通孔が形成されることを特徴とする、請求項
6に記載の燃料電池スタック。
【請求項8】
前記カソード分離板に形成される膨隆部は、隣接するサブガスケット方向の反対方向に突出し、前記ガスケットによって前記サブガスケットに密着してシールされ、
空気が流動する領域では、前記膨隆部の両側外郭領域のうち、空気の流れ方向における上流領域はカソード分離板とアノード分離板との間を離隔させ、空気の流れ方向における下流領域にはカソード分離板とアノード分離板とを接合させる接合部が形成され、前記膨隆部には、空気の流れ方向における下流領域に膨隆部の一面と他面を貫通させて、カソード分離板とアノード分離板との間に流動する空気をカソード分離板とサブガスケットとの間に流動させる貫通孔が形成されることを特徴とする、請求項
6に記載の燃料電池スタック。
【請求項9】
前記カソード分離板に形成される膨隆部は、隣接するサブガスケット方向の反対方向に突出し、前記ガスケットにより前記サブガスケットに密着してシールされ、
空気が流動する領域では、前記ガスケットに段差を形成して段差によりガスケットの両側外郭領域を連通するようにして、カソード分離板とサブガスケットとの間に空気を流動させることを特徴とする、請求項
6に記載の燃料電池スタック。
【請求項10】
前記アノード分離板は、前記シール剤により、隣接する異なるサブガスケットのうちの一方に密着してシールされ、前記カソード分離板は、前記ガスケットにより前記隣接する異なるサブガスケットのうちの他方に密着してシールされ、
冷却水が流動する領域では、前記アノード分離板に形成されるビードシールのうち、前記アノード分離板とカソード分離板との間で冷却水が流動する領域に形成されるビードシールの両側外郭領域をカソード分離板と離隔させてアノード分離板とカソード分離板の間に冷却水を流動させることを特徴とする、請求項
6に記載の燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用分離板組立体およびこれを含む燃料電池スタックに係り、より詳細には、生産コストを削減しながらもスタックの気密性および耐久性能を向上させることができる燃料電池用分離板組立体およびこれを含む燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料が持っている化学エネルギーをスタック内で電気化学的に反応させて電気エネルギーに変換する一種の発電装置であって、産業用、家庭用および車両の駆動電力を供給するだけでなく、携帯用装置などの小型電子製品の電力供給に使用でき、最近、その使用領域が高効率のクリーンエネルギー源へと益々拡大しつつある。
【0003】
図1は一般な燃料電池スタックの構成を示す図、
図2はサブガスケットが適用された燃料電池用単位セルを示す図、
図3はサブガスケットが適用された燃料電池用単位セルにおけるガスケットの配置を示す図である。
【0004】
図1から分かるように、一般な燃料電池スタックは、最も内側に膜電極接合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)が位置するが、この膜電極接合体10は、水素プロトン(Proton)を移動させることができる高分子電解質膜11と、この電解質膜の両面に水素と酸素とが反応することができるように塗布された触媒層、すなわち、燃料極12(anode)および空気極13(cathode)で構成されている。
【0005】
また、前記膜電極集合体10の外側部分、すなわち、燃料極12および空気極13が位置した外側部分には、ガス拡散層20(GDL:Gas Diffusion Layer)が積層され、前記ガス拡散層20の外側には、燃料を供給し且つ反応により発生した水を排出するように流路(Flow Field)が形成された分離板30a、30bがガスケット40(Gasket)を挟んで位置し、最も外側には、前述した各構成を支持および固定させるためのエンドプレート50(End plate)が結合される。
【0006】
したがって、前記燃料電池スタックの燃料極12では、水素の酸化反応が行われて水素イオン(プロトン(Proton))と電子(Electron)が発生し、この時、生成された水素イオンと電子は、それぞれ電解質膜11と電線を介して空気極13へ移動し、前記空気極13では、燃料極12から移動した水素イオンと電子、空気中の酸素が参加する電気化学反応を介して水を生成すると同時に、電子の流れから電気エネルギーを生成する。
【0007】
一方、前記分離板30a、30bは、支持の役割を果たすランドと、流体の流路となるチャネルが繰り返し形成された構造で製作されるのが一般的である。
【0008】
つまり、一般な分離板は、ランドとチャネル(流路)が繰り返し屈曲された構造となっているので、ガス拡散層20と向かい合う一面側のチャネルは、水素または空気などの反応ガスが流れる空間として活用されるとともに、反対側のチャネルは、冷却水が流れる空間として活用されることにより、水素/冷却水チャネルを有する分離板1枚と、空気/冷却水チャネルを有する分離板1枚の合計2枚の分離板から一つの単位セルを構成することができる。
【0009】
一方、
図2に示すように、膜電極集合体10は、高分子電解質膜11、燃料極12および空気極13のハンドリング(Handling)を容易にしながらスタックの気密性を向上させるために、燃料極12および空気極13の縁領域にサブガスケット14を形成することができる。
【0010】
また、サブガスケット14および分離板30a、30bには、両端領域に対して反応ガスおよび冷却水を流出入させる複数の入口マニホールドおよび出口マニホールドがそれぞれ形成される。
【0011】
一方、
図3に示すように、サブガスケット14と一対の分離板30a、30bとの間には、反応ガスと冷却水が流動しなければならないため、サブガスケット14と一対の分離板30a、30bとの間には、所定の厚さをもってゴム材質で形成されるガスケット40a、40b、40cが射出されて配置されることにより、単位セルの積層の際にガスケットが圧着されて相互間の間隔を維持しながらもスタックの気密性が保障される。
【0012】
しかし、ゴム材質のガスケット40a、40b、40cは、コストが高いため、最近では、ガスケット40a、40b、40cが配置される厚さだけ分離板を突出させたビードシールを形成しながら薄い厚さでシール剤を塗布してスタックの気密性を確保している。
【0013】
ところが、複数の単位セルを積層した後、圧着してスタックを構成する場合に、ビードシールが形成された領域に作用する面圧によってビードシールの形状が変更されながら気密性が低下するという問題が生じた。
【0014】
前述の背景技術として説明された事項は、本発明の背景に対する理解増進のためのものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者に既に知られている従来技術に該当することを認めるものと受け入れられてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2018-125258号公報(2018年8月9日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、ビードシールを適用して生産コストを削減しながらもスタックの気密性および耐久性能を向上させることができる燃料電池用分離板組立体およびこれを含む燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一実施形態に係る燃料電池用分離板組立体は、シーリングのために突出したビードシールが形成される第1分離板と;前記第1分離板に接合されて一体化され、前記ビードシールが形成された位置と対応する位置に、前記ビードシールと同じ方向に突出するアーチ型の膨隆部が形成される第2分離板と;前記第2分離板の膨隆部が形成された位置における、突出方向と反対の方向面に形成されるガスケットと;前記第1分離板のビードシールが形成された位置における突出方向面に塗布されるシール剤と;を含んでなる。
【0018】
前記第2分離板から膨隆部が突出する高さは、前記第1分離板からビードシールが突出する高さよりも低いことが好ましい。
【0019】
前記第2分離板に形成される膨隆部の高さは、第1分離板と第2分離板との厚さの和と同じか小さいことが好ましい。
【0020】
前記ガスケットの幅は前記シール剤の幅よりも大きいことが好ましい。
【0021】
前記ガスケットは弾性のあるゴム素材を射出して形成され、前記シール剤はスクリーンコートされて塗布されることが好ましい。
【0022】
一方、本発明の一実施形態に係る燃料電池スタックは、両端にサブガスケットが形成された膜電極接合体と、一対のガス拡散層、アノード分離板およびカソード分離板からなる多数の燃料電池セルとが積層されて形成される燃料電池スタックであって、互いに隣接する燃料電池セルにおいて互いに対面するアノード分離板とカソード分離板とが接合されて一体化され、前記アノード分離板には、シーリングのために突出したビードシールが形成され、前記カソード分離板には、前記ビードシールの形成位置と対応する位置に、前記ビードシールと同じ方向に突出するアーチ型の膨隆部が形成されることを特徴とする。
【0023】
前記カソード分離板の膨隆部が形成された位置における、突出方向と反対の方向面にはガスケットが形成され、前記アノード分離板のビードシールが形成された位置における突出方向面にはシール剤が塗布されることが好ましい。
【0024】
前記アノード分離板に形成されるビードシールは、隣接するサブガスケット方向に突出して前記シール剤によって前記サブガスケットに密着してシールされ、水素が流動する領域では、前記ビードシールの両側外郭領域でアノード分離板とカソード分離板とを接合させる接合部が形成され、前記ビードシールには、ビードシールの両側外郭領域を連通させてアノード分離板とサブガスケットとの間に水素を流動させる一対の連通孔が形成されることが好ましい。
【0025】
前記カソード分離板に形成される膨隆部は、隣接するサブガスケット方向の反対方向に突出して前記ガスケットによって前記サブガスケットに密着してシールされ、空気が流動する領域では、前記膨隆部の両側外郭領域のうち、空気の流れ方向における上流領域はカソード分離板とアノード分離板との間を離隔させ、空気の流れ方向における下流領域にはカソード分離板とアノード分離板とを接合させる接合部が形成され、前記膨隆部には、空気の流れ方向における下流領域に膨隆部の一面と他面を貫通させて、カソード分離板とアノード分離板との間に流動する空気をカソード分離板とサブガスケットとの間に流動させる貫通孔が形成されることが好ましい。
【0026】
前記カソード分離板に形成される膨隆部は、隣接するサブガスケット方向の反対方向に突出して前記ガスケットにより前記サブガスケットに密着してシールされ、空気が流動する領域では、前記ガスケットに段差を形成して段差によりガスケットの両側外郭領域を連通するようにして、カソード分離板とサブガスケットとの間に空気を流動させることが好ましい。
【0027】
前記アノード分離板は、前記シール剤により前記サブガスケットに密着してシールされ、前記カソード分離板は、前記ガスケットにより前記サブガスケットに密着してシールされ、冷却水が流動する領域では、前記アノード分離板に形成されるビードシールのうち、前記アノード分離板とカソード分離板との間で冷却水が流動する領域に形成されるビードシールの両側外郭領域をカソード分離板と離隔させて、アノード分離板とカソード分離板との間に冷却水を流動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の実施形態によれば、一対の分離板を一体化させる場合、1つの分離板にはビードシールを適用し、残り一つの分離板にはアーチ型の膨隆部とゴム素材のガスケットを適用することにより、生産コストを削減しながらもスタックの気密性および耐久性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】一般な燃料電池スタックの構成を示す図である。
【
図2】サブガスケットが適用された燃料電池用単位セルを示す図である。
【
図3】サブガスケットが適用された燃料電池用単位セルにおけるガスケットの配置を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る燃料電池用分離板組立体の要部を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る燃料電池用分離板組立体の要部を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る燃料電池用分離板組立体における、水素が流動する領域を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る燃料電池用分離板組立体における、空気が流動する領域を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る燃料電池用分離板組立体における、空気が流動する領域を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る燃料電池用分離板組立体における、冷却水が流動する領域を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る燃料電池用分離板組立体に作用する面圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態をより詳細に説明する。しかし、本発明は、以下で開示する実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現される。但し、本実施形態は、本発明の開示を完全たるものし、通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。図面上において、同一符号は同一の要素を指し示す。
【0031】
本発明の一実施形態に係る燃料電池スタックは、
図1および
図2に示された従来のスタック構成をそのまま維持しながら、分離板の形状および気密構造を改善して反応ガスおよび冷却水の流動性を確保しかつ気密性を向上させるものである。したがって、本発明の一実施形態に係る燃料電池スタックは、
図1および
図2に示すように、両端にサブガスケット14が形成された膜電極接合体10、一対のガス拡散層20、アノード分離板30aおよびカソード分離板30bを含めて単位セルを構成し、単位セルが多数個直列に接続されて構成される。よって、1つのセルに構成されるアノード分離板30aは、それに隣接するセルに構成されるカソード分離板30bと互いに対面して配置されるが、本実施形態では、互いに対面するアノード分離板30aとカソード分離板30bとを接合して一体化させることにより分離板組立体を構成する。
【0032】
付け加えると、
図4および
図5は本発明の一実施形態に係る燃料電池用分離板組立体の要部を示す図である。
図4および
図5は、説明の便宜のために、本実施形態で改善される分離板の形状および気密構造を示す要部を表現したものである。このとき、サブガスケット14、アノード分離板200およびカソード分離板100は、説明の便宜のために、互いに離隔して配置された状態を示す。
【0033】
図5に示すように、本実施形態に係る燃料電池用分離板組立体は、相互間に積層されて圧着が行われる場合に気密性を維持しながら、面圧によって分離板が変形することを最小限に抑えるための方案として、シーリングのために突出したビードシール210が形成される第1分離板200と;前記第1分離板200と接合されて一体化されるが、前記ビードシール210が形成された位置と対応する位置に、前記ビードシール210と同じ方向に突出するアーチ型の膨隆部110が形成される第2分離板100と;前記第2分離板100の膨隆部110が形成された位置における、突出方向と反対の方向面に形成されるガスケット300と;前記第1分離板200のビードシール210が形成された位置における突出方向面に塗布されるシール剤400と;を含む。以下、第1分離板200はアノード分離板と説明し、第2分離板100はカソード分離板と説明する。
【0034】
また、ガスケット300は弾性のあるゴム素材を射出して形成され、シール剤400はスクリーンコートされて塗布されることが好ましい。
【0035】
このようにアノード分離板200に形成されるビードシール210に対応する膨隆部110をカソード分離板100に形成する理由は、スタックの積層時にビードシール210が形成された領域に面圧が作用する場合、ビードシール210によって形成されるカソード分離板100とアノード分離板200との間の空間にカソード分離板100が変形しながら、カソード分離板100とアノード分離板200との密着度が低下し、これによりスタックの気密性が低下することを防止するためである。
【0036】
このため、本実施形態では、カソード分離板100に予めアーチ型の膨隆部110を形成することにより、該当領域に面圧が発生してもアーチ型の構造によって該当領域での変形が防止されるようにする。
【0037】
よって、カソード分離板100に形成される膨隆部110が突出する高さは、アノード分離板200からビードシール210が突出する高さよりも低くすることが好ましい。さらに好ましくは、膨隆部110の高さhはアノード分離板200とカソード分離板100との厚さの和と同一にするかそれよりも小さくするのがよい。
【0038】
面圧の分散のために、ガスケット300の幅WGはシール剤400の幅WSよりも大きくすることが好ましい。さらに好ましくは、ガスケット300の幅WGはシール剤400の幅WSと積層公差との和よりも大きくすることが好ましい。もしシール剤400の幅WSがガスケット300の幅WGよりも大きく形成される場合には、その分だけビードシール210の幅が大きくなることを意味し、この場合、ビードシール210の剛性が弱いため、スタックの積層時にビードシール210での変形が発生して気密性が低下する問題が発生するおそれがある。
【0039】
一方、前記で提示された気密構造は、燃料電池スタックに構成される膜電極接合体を取り囲む領域、複数の入口マニホールドおよび出口マニホールドを取り囲む領域に適用され、該当領域の気密性を確保することが好ましい。
【0040】
但し、膜電極接合体が配置される反応面と複数の入口マニホールドおよび出口マニホールドとの間には、水素および空気などの反応ガスと冷却水を流動させるための流路を確保しなければならない。
【0041】
そのため、本発明に係る分離板組立体は、水素、空気および冷却水が流動する領域の構造にそれぞれ流路を形成することができるようにビードシール、膨隆部およびガスケットのいずれかの構造を変更することができる。
【0042】
図6は本発明の一実施形態に係る燃料電池用分離板組立体における、水素が流動する領域を示す図であり、
図7および
図8は本発明の一実施形態に係る燃料電池用分離板組立体における、空気が流動する領域を示す図であり、
図9は本発明の一実施形態に係る燃料電池用分離板組立体における、冷却水が流動する領域を示す図である。例えば、
図6は
図2におけるA-A線に沿った断面構造に該当し、
図7および
図8は
図2におけるC-C線に沿った断面構造に該当し、
図9は
図2におけるB-B線に沿った断面構造に該当する。
【0043】
まず、
図6に示すように、水素が流動する領域では、アノード分離板200に形成されるビードシール210が隣接のサブガスケット14の方向に突出し、シール剤400によってサブガスケット14に密着してシールされる。このとき、ビードシール210の両側外郭領域に、アノード分離板200とカソード分離板100とを接合させる接合部W1、W2が形成される。
【0044】
また、ビードシール210には、ビードシール210の両側外郭領域を連通させる一対の連通孔211が形成される。よって、一対の連通孔211を介して、アノード分離板200とサブガスケット14との間に水素が流動して反応面へ水素が供給される。
【0045】
また、空気が流動する領域では、
図7に示すように、カソード分離板100に形成される膨隆部110は、隣接するサブガスケット14方向の反対方向に突出し、ガスケット300によってサブガスケット14に密着してシールされる。この時、膨隆部110の両側外郭領域のうち、空気の流れ方向における上流領域はカソード分離板100とアノード分離板200との間を離隔させ、空気の流れ方向における下流領域にはカソード分離板100とアノード分離板200とを接合させる接合部W1が形成される。
【0046】
また、膨隆部110には、空気の流れ方向における下流領域に膨隆部110の一面と他面を貫通させて、カソード分離板100とアノード分離板200との間に流動する空気をカソード分離板100とサブガスケット14との間に流動させる貫通孔111が形成される。そのため、空気の流れ方向における上流領域では、カソード分離板100とアノード分離板200との間に空気が流動した後に貫通孔111を通過し、次いで、空気の流れ方向における下流領域では、カソード分離板100とサブガスケット14との間に空気が流動して反応面へ空気が供給される。
【0047】
一方、
図8を参照すると、空気が流動する領域では、空気を流動させる他の実施形態として、カソード分離板100に形成される膨隆部110は隣接するサブガスケット14方向の反対方向に突出し、ガスケット300によってサブガスケット14に密着してシールされる。そして、ビードシール210の両側外郭領域に、アノード分離板200とカソード分離板100とを接合させる接合部W1、W2が形成される。
【0048】
このとき、カソード分離板100とサブガスケット14との間に形成されるガスケット300に段差310を形成し、段差310によってガスケットの両側外郭領域を連通させる。よって、カソード分離板100とサブガスケット14との間に空気を流動させることにより、反応面へ空気が供給される。
【0049】
一方、冷却水が流動する領域では、
図9に示すように、アノード分離板200はシール剤400によってサブガスケット14に密着してシールされ、カソード分離板100はガスケット300によってサブガスケット14に密着してシールされる。
【0050】
この時、アノード分離板200とカソード分離板100との間で冷却水が流動する領域に形成されるビードシール210の両側外郭領域は、カソード分離板100と離隔させる。そのため、アノード分離板200とカソード分離板100との間に冷却水を流動させる。
【0051】
一方、
図10は本発明の一実施形態に係る燃料電池用分離板組立体に作用する面圧を示す図である。本発明に係る分離板組立体を適用してスタックを積層する場合には、面圧分布Aがビードシール210の形状に沿ってビードシール210の中心部に向かうほど面圧が高くなる傾向を示した。このように形成される面圧に対してカソード分離板100が変形するのを防止するために、カソード分離板100にアーチ型の膨隆部110を形成したのである。
【0052】
本発明を添付図面と前述した好適な実施形態を参照して説明したが、本発明は、これに限定されず、後述される特許請求の範囲によって限定される。よって、本技術分野における通常の知識を有する者であれば、後述される特許請求の範囲の技術的思想から逸脱することなく、本発明を多様に変更および修正することができる。
【符号の説明】
【0053】
100 カソード分離板
110 膨隆部
111 連通孔
200 アノード分離板
210 ビードシール
211 貫通孔
300 ガスケット
310 段差
400 シール剤