(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】走行制御装置、走行制御方法および草刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/76 20060101AFI20230303BHJP
A01D 34/64 20060101ALI20230303BHJP
A01D 34/78 20060101ALI20230303BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
A01D34/76 Z
A01D34/64 M
A01D34/78 Z
A01B69/00 301
A01B69/00 303M
(21)【出願番号】P 2019087529
(22)【出願日】2019-05-07
【審査請求日】2021-06-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】南方 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝徳
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-252819(JP,A)
【文献】特開平01-291716(JP,A)
【文献】特開2000-253729(JP,A)
【文献】特開平10-155327(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0105339(US,A1)
【文献】国際公開第2017/154524(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/76
A01D 34/64
A01D 34/78
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機の駆動力により走行しながら前記原動機の駆動力により作業を行う作業走行が可能な作業機の走行制御装置であって、
前記原動機からの出力の回転数を検出するセンサと、
前記回転数から作業負荷が高負荷状態であるか否かを判定する負荷判定部と、
前記作業負荷が前記高負荷状態である場合に、所定の対応処置を行う制御部とを備え、
前記高負荷状態は、前記回転数が、所定の第1の回転数より小さい状態が前記作業走行が開始されてから所定の第1の時間以上継続した第1状態、または、前記回転数が、前記第1の回転数以上になった後、前記第1の回転数より小さい所定の第2の回転数より小さくなる第2状態であ
り、
前記作業は、作業領域の走行経路を順に走行しながら行われ、
前記所定の対応処置は、走行中の前記走行経路を、走行済みの前記走行経路の方向に所定の第2の距離ずらす走行である走行制御装置。
【請求項2】
前記回転数は所定の第2の時間ごとに検出され、
第2状態の前記高負荷状態は、前記回転数が、前記第1の回転数以上になった後、連続して検出された所定の数の前記回転数の平均値が前記第2の回転数より小さくなる状態である請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記所定の対応処置は、警報の報知である請求項1または2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の走行制御装置を備える草刈機。
【請求項5】
原動機の駆動力により走行しながら前記原動機の駆動力により作業を行う作業走行が可能な作業機の走行制御方法であって、
前記原動機からの出力の回転数を検出する工程と、
前記回転数から作業負荷が所定の負荷以上に高い高負荷状態であるか否かを判定する工程と、
前記作業負荷が前記高負荷状態である場合に、所定の対応処置を行う工程とを備え、
前記高負荷状態は、前記回転数が、所定の第1の回転数より小さい状態が前記作業走行が開始されてから所定の第1の時間以上継続した第1状態、または、前記回転数が、前記第1の回転数以上になった後、前記第1の回転数より小さい所定の第2の回転数より小さくなる第2状態であり、
前記作業は、作業領域の走行経路を順に走行しながら行われ、
前記所定の対応処置は、走行中の前記走行経路を、走行済みの前記走行経路の方向に所定の第2の距離ずらす走行である走行制御方法。
【請求項6】
前記回転数は所定の第2の時間ごとに検出され、
第2状態の前記高負荷状態は、前記回転数が、前記第1の回転数以上になった後、連続して検出された所定の数の前記回転数の平均値が前記第2の回転数より小さくなる状態である請求項
5に記載の走行制御方法。
【請求項7】
前記所定の対応処置は、警報の報知である請求項
5または
6に記載の走行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行しながら作業を行う作業機の走行制御装置、走行制御方法および走行制御装置を搭載する草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機の一例である草刈機は、エンジンの動力により車輪を駆動させて走行し、刈刃により草が刈り取られる。このような草刈機では、作業走行中のエンジン音等により、作業者が草刈り中の負荷を判断し、走行速度を調整する等の対処を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
草刈機は、無線により操縦されたり、自動走行したりするものもある。このような草刈機では、エンジン音等を確認することが困難であるため、作業者が草刈り中の負荷を判断できず、適切な作業走行を行えない場合がある。
【0005】
上記問題点を解決するために、本発明は、継続して適切な作業走行を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る走行制御装置は、原動機の駆動力により走行しながら前記原動機の駆動力により作業を行う作業走行が可能な作業機の走行制御装置であって、前記原動機からの出力の回転数を検出するセンサと、前記回転数から作業負荷が高負荷状態であるか否かを判定する負荷判定部と、前記作業負荷が前記高負荷状態である場合に、所定の対応処置を行う制御部とを備え、前記高負荷状態は、前記回転数が、所定の第1の回転数より小さい状態が前記作業走行が開始されてから所定の第1の時間以上継続した第1状態、または、前記回転数が、前記第1の回転数以上になった後、前記第1の回転数より小さい所定の第2の回転数より小さくなる第2状態である。
【0007】
このよう構成により、原動機の回転数によって容易に作業負荷を推定しながら、作業負荷に基づいて適切な作業走行を行うことができる。つまり、作業負荷が高すぎる状態では、作業が適切に行われなかったり、作業を行う作業装置が故障したりする場合がある。作業負荷が所定の負荷より高い高負荷状態であることを判定し、高負荷状態である場合に、適切な対応処置がとられることにより、適切に作業が行われ、作業装置の故障も抑制することができる。その結果、継続して適切な作業走行が行われる。
【0008】
【0009】
作業走行の開始時において、原動機の回転数が上がらない状態は、作業機に問題が生じていたり、作業領域の状態が悪化していたりして、作業負荷が高くなっている状態である可能性が高い。たとえば、作業走行の開始時において、作業走行が開始されてから所定の時間(第1の時間)経過しても所定の回転数(第1の回転数)に到達しない場合、作業負荷が高くなっていると推定できる。そのため、上記のような構成により、作業走行開始時において、容易に作業負荷が高負荷状態になっていることを判定することができる。
【0010】
【0011】
作業走行の開始時以外にも、作業走行中に原動機の回転数が所定の回転数(第2の回転数)まで下がった状態は、作業領域の状態の変化等により作業負荷が高くなっている状態である可能性が高い。そのため、上記のような構成により、作業走行中においても、容易に作業負荷が高負荷状態になっていることを判定することができる。
【0012】
また、第2状態の前記高負荷状態は、前記回転数が、所定の第1の回転数以上になった後、連続して検出された所定の数の前記回転数の平均値が前記第2の回転数より小さくなる状態であっても良い。
【0013】
作業走行中は、作業領域の状態等は一定ではなく、たえず作業負荷は変化し、原動機の回転数も変化している。そのため、上記のような構成により、作業走行中の原動機の回転数を平均化することにより、実効的な回転数を算出でき、実際の作業走行に則した回転数から正確な作業負荷を推定することができる。
【0014】
また、前記所定の対応処置は、警報の報知であっても良い。
【0015】
このような構成により、作業者は、作業負荷が高負荷状態であることを容易に認識することができ、適切な対応を行う契機とすることができる。その結果、継続して適切な作業走行が行われる。
【0016】
また、前記所定の対応処置は、前記原動機の停止であっても良い。
【0017】
このような構成により、高負荷状態での作業走行がそれ以上継続されることがなく、適切な対応処理を行ってから作業走行を再開することができるため、適切な作業走行を継続することができる。
【0018】
また、前記所定の対応処置は、所定の第1の距離だけ後進した後、再び前進を行う走行であっても良い。
【0019】
このような構成により、作業状態が悪化している等の原因によって作業負荷が高くなっている領域から一旦後退し、作業走行が終了した領域を走行して勢いをつけた状態で作業負荷が高くなっている領域の作業走行を再開することができ、適切な作業走行を行うことができる可能性が向上する。また、高負荷状態またはそれに近い作業負荷で作業走行を行った領域は、十分な作業ができていない可能性がある。上記のような構成により、このような領域を再び作業走行することができるため、十分な作業が行われなかった作業領域を残す可能性を低減させることができる。以上により、適切な作業走行を継続することができる。
【0020】
また、前記作業は、作業領域の走行経路を順に走行しながら行われ、前記所定の対応処置は、走行中の前記走行経路を、走行済みの前記走行経路の方向に所定の第2の距離ずらす走行であっても良い。
【0021】
作業走行において、十分な作業を行うことができず、作業負荷が高くなる場合がある。また、作業走行は、走行経路を順に走行して行うため、2列目の走行経路以降を走行する際は、隣り合う走行経路の少なくとも1つはすでに作業走行を終えた領域となる。そのため、上記のような構成により、走行経路をすでに作業走行を終えた走行経路側にずらすことにより、作業走行中の作業幅を削減することができるため、作業負荷を低減することができる。その結果、適切な作業走行を継続することができる。
【0022】
さらに、本発明の一実施形態に係る草刈機は、前記走行制御装置を備える。
【0023】
このような構成により、継続して適切な草刈走行が行われる草刈機を提供することができる。
【0024】
さらに、本発明の一実施形態に係る走行制御方法は、原動機の駆動力により走行しながら前記原動機の駆動力により作業を行う作業走行が可能な作業機の走行制御方法であって、前記原動機からの出力の回転数を検出する工程と、前記回転数から作業負荷が所定の負荷以上に高い高負荷状態であるか否かを判定する工程と、前記作業負荷が前記高負荷状態である場合に、所定の対応処置を行う工程とを備え、前記高負荷状態は、前記回転数が、所定の第1の回転数より小さい状態が前記作業走行が開始されてから所定の第1の時間以上継続した第1状態、または、前記回転数が、前記第1の回転数以上になった後、前記第1の回転数より小さい所定の第2の回転数より小さくなる第2状態である。
【0025】
このよう構成により、原動機の回転数によって容易に作業負荷を推定しながら、作業負荷に基づいて適切な作業走行を行うことができる。つまり、作業負荷が高すぎる状態では、作業が適切に行われなかったり、作業を行う作業装置が故障したりする場合がある。作業負荷が所定の負荷より高い高負荷状態であることを判定し、高負荷状態である場合に、適切な対応処置がとられることにより、適切に作業が行われ、作業装置の故障も抑制することができる。その結果、継続して適切な作業走行が行われる。
【0026】
【0027】
作業走行の開始時において、原動機の回転数が上がらない状態は、作業機に問題が生じていたり、作業領域の状態が悪化していたりして、作業負荷が高くなっている状態である可能性が高い。たとえば、作業走行の開始時において、作業走行が開始されてから所定の時間(第1の時間)経過しても所定の回転数(第1の回転数)に到達しない場合、作業負荷が高くなっていると推定できる。そのため、上記のような構成により、作業走行開始時において、容易に作業負荷が高負荷状態になっていることを判定することができる。
【0028】
【0029】
作業走行の開始時以外にも、作業走行中に原動機の回転数が所定の回転数(第2の回転数)まで下がった状態は、作業領域の状態の変化等により作業負荷が高くなっている状態である可能性が高い。そのため、上記のような構成により、作業走行中においても、容易に作業負荷が高負荷状態になっていることを判定することができる。
【0030】
また、前記回転数は所定の第2の時間ごとに検出され、第2状態の前記高負荷状態は、前記回転数が、所定の第1の回転数以上になった後、連続して検出された所定の数の前記回転数の平均値が前記第2の回転数より小さくなる状態であっても良い。
【0031】
作業走行中は、作業領域の状態等は一定ではなく、たえず作業負荷は変化し、原動機の回転数も変化している。そのため、上記のような構成により、作業走行中の原動機の回転数を平均化することにより、実効的な回転数を算出でき、実際の作業走行に則した回転数から正確な作業負荷を推定することができる。
【0032】
また、前記所定の対応処置は、警報の報知であっても良い。
【0033】
このような構成により、作業者は、作業負荷が高負荷状態であることを容易に認識することができ、適切な対応を行う契機とすることができる。その結果、継続して適切な作業走行が行われる。
【0034】
また、前記所定の対応処置は、前記原動機の停止であっても良い。
【0035】
このような構成により、高負荷状態での作業走行がそれ以上継続されることがなく、適切な対応処理を行ってから作業走行を再開することができるため、適切な作業走行を継続することができる。
【0036】
また、前記所定の対応処置は、所定の第1の距離だけ後進した後、再び前進を行う走行であっても良い。
【0037】
このような構成により、作業状態が悪化している等の原因によって作業負荷が高くなっている領域から一旦後退し、作業走行が終了した領域を走行して勢いをつけた状態で作業負荷が高くなっている領域の作業走行を再開することができ、適切な作業走行を行うことができる可能性が向上する。また、高負荷状態またはそれに近い作業負荷で作業走行を行った領域は、十分な作業ができていない可能性がある。上記のような構成により、このような領域を再び作業走行することができるため、十分な作業が行われなかった作業領域を残す可能性を低減させることができる。以上により、適切な作業走行を継続することができる。
また、前記作業は、作業領域の走行経路を順に走行しながら行われ、前記所定の対応処置は、走行中の前記走行経路を、走行済みの前記走行経路の方向に所定の第2の距離ずらす走行であっても良い。
【0038】
作業走行において、十分な作業を行うことができず、作業負荷が高くなる場合がある。また、作業走行は、走行経路を順に走行して行うため、2列目の走行経路以降を走行する際は、隣り合う走行経路の少なくとも1つはすでに作業走行を終えた領域となる。そのため、上記のような構成により、走行経路をすでに作業走行を終えた走行経路側にずらすことにより、作業走行中の作業幅を削減することができるため、作業負荷を低減することができる。その結果、適切な作業走行を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図3】エンジンから車輪及び刈刃への伝動系を示す伝動系図である。
【
図5】制御装置と各部の連係状態を示す概略図である。
【
図6】走行制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図7】走行制御方法の構成例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1~
図6に、作業機の一例として、無線操縦による遠隔操作型の草刈機が示されている。
図1~
図6において、「F」は草刈機の前方向を示し、「B」は草刈機の後方向を示している。「U」は草刈機の上方向を示し、「D」は草刈機の下方向を示している。「R」は草刈機の右方向を示し、「L」は草刈機の左方向を示している。
【0041】
(草刈機の全体構成)
図1及び
図2に示すように、草刈機において、刈刃ハウジング1が備えられて、刈刃ハウジング1に刈刃2が収容されており、刈刃ハウジング1に伝動ケース3及びエンジン4(原動部に相当)が支持されている。
【0042】
刈刃ハウジング1の前後方向の一方側の右の車輪5及び左の車輪6、刈刃ハウジング1の前後方向の他方側の右の車輪5及び左の車輪6が備えられて、車輪5,6により刈刃ハウジング1が支持されている。また、伝動ケース3及びエンジン4等の上側を覆うカバー7が備えられている。
【0043】
(刈刃及びエンジンに関する構成)
図1及び
図2に示すように、前側及び後側のフレーム8が、左右方向に沿って刈刃ハウジング1に連結されており、フレーム9が、前後方向に沿って前側及び後側のフレーム8に亘って連結されている。
【0044】
伝動ケース3がフレーム9に連結されて刈刃ハウジング1に支持されており、伝動ケース3から下向きに延出された刈刃支持部3aが、刈刃ハウジング1に挿入されている。伝動ケース3の刈刃支持部3aに、刈刃2が回転可能な状態で支持されて、刈刃2が刈刃ハウジング1に収容されている。
【0045】
図1,
図2,
図3に示すように、刈刃2は、円板状の支持板2aと、支持板2aの外周部の複数個所において上下方向の軸芯P2周りに自由回転可能な状態で支持された刃部2bとを備えている。
【0046】
刈刃ハウジング1の内部で刈刃2が回転駆動されると、刈刃2により地面の小石等が跳ね飛ばされて、刈刃ハウジング1の外側に飛散することがあるので、
図1及び
図2に示すように、刈刃ハウジング1からの飛散物を止める右及び左のカバー部50が、刈刃ハウジング1の右部及び左部に備えられている。
【0047】
図1及び
図2に示すように、エンジン4が、刈刃ハウジング1の右部に位置するようにフレーム8に連結されて刈刃ハウジング1に支持されている。
平面視で、エンジン4が刈刃ハウジング1の左右中央CLから右側に変位して配置された状態となっており、エンジン4が右の車輪5の間に配置されている。前後方向視で、右の車輪5の上部と、エンジン4の下部とが重複するように、エンジン4が低い位置に配置されている。
【0048】
(刈刃への伝動構造)
図3に示すように、エンジン4の出力軸4aの動力が、伝動ケース3の内部の遠心クラッチ16及びブレーキ17を介して、伝動軸18に伝達され、伝動軸18から伝動ベルト19を介して発電機20に伝達される。
【0049】
伝動ケース3の内部において、伝動軸18の動力が伝動軸21に伝達され、伝動軸21の動力が、刈刃クラッチ22を介して、伝動ケース3の刈刃支持部3aの内部に支持された刈刃駆動軸23に伝達される。
【0050】
刈刃駆動軸23の下部に、刈刃2(支持板2a)が連結されており、刈刃2が回転駆動される。刈刃クラッチ22は、刈刃ハウジング1に支持された刈刃クラッチレバー(図示せず)により、伝動状態及び遮断状態に操作することができる。
【0051】
(車輪の支持構造及び伝動構造)
図3に示すように、伝動ケース3の内部において、伝動軸21にウォーム機構24が備えられている。伝動軸21の動力が、ウォーム機構24から伝動軸25、変速装置26、伝動軸27を介して、前後進切換装置28に伝達される。伝動ケース3の外部において、前後進切換装置28の動力が、トルクリミッター29及び伝動チェーン30を介して、伝動軸31に伝達される。
【0052】
変速装置26は、シフト部材のスライド操作により、低速状態及び高速状態に変速可能であり、刈刃ハウジング1に支持された変速レバー(図示せず)により、低速状態及び高速状態に操作することができる。前後進切換装置28は、シフト部材のスライド操作により、前進状態及び後進状態、中立状態に操作可能である。
【0053】
図1,
図2,
図3に示すように、刈刃ハウジング1の前部の右部及び左部に伝動軸32が上下方向に支持され、刈刃ハウジング1の後部の右部及び左部に伝動軸32が、上下方向の軸芯P1に沿って支持されており、伝動軸31の動力が伝動軸32に伝達される。
【0054】
図1及び
図2に示すように、右の車輪支持ケース10が、刈刃ハウジング1の前部及び後部の右部において、上下方向に支持された伝動軸32(軸芯P1)周りに操向可能な状態で支持されている。左の車輪支持ケース11が、刈刃ハウジング1の前部及び後部の左部において、上下方向に支持された伝動軸32(軸芯P1)周りに操向可能な状態で支持されている。
【0055】
図1,
図2,
図3に示すように、右及び左の車輪支持ケース10,11に車軸33が支持されて、車軸33に車輪5,6が連結されており、伝動軸32の動力が車軸33に伝達されて、車輪5,6が回転駆動される。
【0056】
図1及び
図2に示すように、右及び左の車輪支持ケース10,11のアーム10a,11aに亘ってタイロッド12が接続されている。刈刃ハウジング1に取り付けられた第1操向モータ13(
図5参照)と、右の車輪支持ケース10のアーム10bとに亘って、ロッド15が接続されており、第1操向モータ13により、刈刃ハウジング1の前後方向の一方側の右及び左の車輪5,6が操向操作される。
【0057】
刈刃ハウジング1に取り付けられた第2操向モータ14(
図5参照)と、左の車輪支持ケース11のアーム11bとに亘って、ロッド15が接続されており、第2操向モータ14により、刈刃ハウジング1の前後方向の他方側の右及び左の車輪5,6が操向操作される。
【0058】
また、エンジン4の出力軸4aには、エンジンの出力回転数を計測するセンサ34が設けられる。
【0059】
図4に示すように、センサ34は、出力軸4aの回転に伴って回転するように、出力軸4aに設けられるギア35と、出力軸4aを中心に公転するギア35の歯35aの軌道の近傍に設けられる回転センサ36とを有する。ギア35は、周囲に複数の歯35aを有し、出力軸4aの回転に伴い、出力軸4aの軸芯を中心に歯35aが公転するように回転する。回転センサ36は、所定の時間の間にギア35上の一点を通過する歯35aの数を測定することにより、出力軸4aの回転数を計測する。
【0060】
(草刈機の無線操縦)
この草刈機は、無線操縦による遠隔操作型である。
図5に示すように、草刈機は、刈刃ハウジング1に、制御装置44、受信機45及び作業者が操作する運転停止スイッチ46、エンジン4のアクセル4b及びブレーキ17を操作するアクセルモータ47、前後進切換装置28を操作する前後進モータ48を備える。
【0061】
エンジン4のアクセル4bはバネ(図示せず)によって低速側(アイドリング側)に付勢されており、ブレーキ17はバネ(図示せず)により制動側に付勢されている。
エンジン4のアイドリング状態で、遠心クラッチ16(
図3参照)が遮断状態であり、ブレーキ17が制動状態である。アクセルモータ47により、ブレーキ17が解除状態に操作され、エンジン4のアクセル4bが高速側に操作されて、遠心クラッチ16(
図3参照)が伝動状態となる。
【0062】
制御装置44によって、第1操向モータ13、第2操向モータ14、アクセルモータ47、前後進モータ48が操作されるのであり、受信機45及び運転停止スイッチ46の操作信号が制御装置44に入力されている。
【0063】
作業者が操作する送信機49の操作信号を受信機45が受信し、送信機49(受信機45)の操作信号に基づいて、制御装置44が第1操向モータ13、第2操向モータ14、アクセルモータ47、前後進モータ48を操作する。
【0064】
第1操向モータ13により、刈刃ハウジング1の前後方向の一方側の右及び左の車輪5,6を操向操作する場合、及び、第2操向モータ14により、刈刃ハウジング1の前後方向の他方側の右及び左の車輪5,6を操向操作する場合、以下の(1)~(4)に記載の第1操向モード、第2操向モード、同位相モード、逆位相モードを、送信機49によって選択することができる。
【0065】
(1)他方側の右及び左の車輪5,6を直進位置に固定した状態で、第1操向モータ13により一方側の右及び左の車輪5,6を操向操作する第1操向モード。
(2)一方側の右及び左の車輪5,6を直進位置に固定した状態で、第2操向モータ14により他方側の右及び左の車輪5,6を操向操作する第2操向モード。
【0066】
(3)第1操向モータ13及び第2操向モータ14により、一方側及び他方側の右及び左の車輪5,6を同じ向きに操向操作して草刈機を平行移動させる同位相モード。
(4)第1操向モータ13及び第2操向モータ14により、一方側及び他方側の右及び左の車輪5,6を互いに逆向きに操向操作して草刈機を小回り旋回させる逆位相モード。
【0067】
斜面の草刈り作業を行う場合、斜面の一方の端部から他方の端部に亘って、斜面の等高線に沿う走行経路を走行しながら草刈り作業を行い、草刈機が斜面の他方の端部に達すると、草刈機を斜面に沿って少し下側又は上側に移動させ、斜面の他方の端部から一方の端部に亘って、斜面の等高線に沿う別の走行経路走行しながら草刈り作業を行うという作業を繰り返すことがある。なお、互いに隣接する走行経路は、幅方向において、所定の範囲でオーバーラップさせて設定されることが好ましい。圃場のうねりや異物の存在により、走行経路がずれる場合があり、刈り残しが発生する場合がある。走行経路にオーバーラップを設けることにより、多少走行経路を外れて走行しても、刈り残しを抑制することができる。
【0068】
前述の草刈り作業において、本実施形態の草刈機は、エンジン4側の右の車輪5が斜面の山側(上側)となり、エンジン4とは反対側の左の車輪6が斜面の谷側(下側)となる状態で、等高線に沿って走行すれば良い。
【0069】
草刈機が斜面の一方(他方)の端部に達した場合、前述の(1)~(4)に記載の第1操向モード、第2操向モード、同位相モード、逆位相モードのうちの一つに基づいて、草刈機の操向操作を行い、草刈機の前後進操作を行って、草刈機を斜面に沿って少し下側又は上側に移動させれば良い。
【0070】
(ステアリングアシスト制御)
このような作業走行において、ステアリングアシスト制御が行われても良い。ステアリングアシスト制御は、最初の走行経路を自動走行した後、2列目以降の走行経路を、最初の走行経路に倣って生成して自動走行する制御である。
【0071】
例えば、最初の走行経路の走行において、図示しないカメラにより圃場のカメラ画像を取得し、草刈りを行った領域の草刈跡が検出されて、圃場のエッジ部分や傾斜が検出される。次に、草刈機の傾きや変位量が検出される。次に、草刈跡の検出結果と草刈機の傾きや変位量から、自動的に操向操作が行われ、作業走行が行われる。そして、草刈跡が検出されなくなることを認識することにより、最初の走行経路の走行が終了したことが検出され、2列目以降の走行経路に作業走行が移行される。2列目の走行経路は、最初の走行経路に倣って自動的に生成され、以後、この走行経路に沿って、最初の走行経路と同様に自動的に作業走行が行われる。
【0072】
(草刈負荷に応じた走行制御)
図6に示すように、本実施形態の草刈機は、負荷判定部40と制御部41とを備える。なお、負荷判定部40および制御部41は、EUCやCPU等のプロセッサを含むハードウェアで構成することもできるし、少なくとも一部の機能をソフトウェアで構成することもできる。また、負荷判定部40および制御部41は一つの機能部で構成することもできるし、複数の機能部を組み合わせて負荷判定部40および制御部41を構成することもできる。また、制御部41または、負荷判定部40および制御部41は、前述の制御装置44により実現されても良い。
【0073】
負荷判定部40は、センサ34から、エンジン4からの出力回転数として、エンジン4の出力軸4aの回転数(以下、単に回転数と称す)を取得する。負荷判定部40は、取得した回転数から、草刈負荷を算出し、草刈負荷が高負荷状態であるか否かを判定する。負荷判定部40は、判定結果を制御部41に送信する。
【0074】
制御部41は、車内LAN等を介して、報知部42、エンジン4、前後進モータ48、アクセルモータ47、第1操向モータ13、第2操向モータ14と、これらを制御可能な状態で接続される。制御部41は、負荷判定部40から受信した判定結果に基づいて、走行状態を制御する。具体的には、高負荷状態である場合、制御部41は、報知部42、エンジン4、前後進モータ48、アクセルモータ47、第1操向モータ13、第2操向モータ14のうちのいずれか、またはこれらの組み合わせを制御して、高負荷状態を回避可能な対応処置を行う。
【0075】
以下、
図6,
図7を用いて、高負荷状態の判定、および対応処置の具体例を説明する。
【0076】
作業走行が開始されると(
図7のステップ#1)、負荷判定部40は、センサ34から受信した回転数から、草刈負荷が高負荷状態であるか否かを判定する。
【0077】
負荷判定部40は、まず、第1の回転数に到達したか否かを判定する(
図7のステップ#2)。
【0078】
第1の回転数に到達していない場合(
図7のステップ#2=No)、負荷判定部40は、第1の回転数に到達していない状態が第1の時間継続しているか否かを判定する(
図7のステップ#3)。第1の回転数に到達していない状態が第1の時間継続していない場合(
図7のステップ#3=No)、作業走行を開始してから第1の回転数に到達したか否かを判定する処理(
図7のステップ#2)に戻る。
【0079】
第1の回転数に到達していない状態が第1の時間継続している場合(
図7のステップ#3=Yes)、負荷判定部40は高負荷状態であると判定する(
図7のステップ#4)。
作業走行を開始してから、所定の時間経過しても回転数が所定の回転数に上がらない場合、草の密度が高すぎて草刈りが困難(草の抵抗が高い)になっていたり、圃場の異物により刃部2bが高い抵抗を受けたりして、草刈負荷が高くなっていると推定できる。そのため、第1の回転数に到達していない状態が第1の時間継続している場合、負荷判定部40は高負荷状態であると判定する。
【0080】
作業走行を開始してから第1の時間以内に第1の回転数に到達している場合(
図7のステップ#2=Yes)、負荷判定部40は、その後、回転数が第2の回転数に低下したか否かを判定する(
図7のステップ#5)。回転数が第2の回転数に低下していない場合(
図7のステップ#5=No)、回転数が第2の回転数に低下したか否かを継続的に判定する。
【0081】
回転数が第2の回転数に低下している場合(
図7のステップ#5=Yes)、負荷判定部40は高負荷状態であると判定する(
図7のステップ#4)。第1の回転数に到達してから回転数が第2の回転数に低下した場合、草の密度が高すぎたり圃場の異物により刃部2bが高い抵抗を受けたりして、草刈り作業を行う作業領域の状態により草刈負荷が高くなっていると推定できる。そのため、回転数が第2の回転数に低下している場合、負荷判定部40は高負荷状態であると判定する。
【0082】
ここで、作業走行を開始してから第1の時間以内に第1の回転数に到達したあと、センサ34は所定の時間間隔で回転数の検出を行い、負荷判定部40は、所定の回数連続して測定された回転数の平均値を算出しても良い。そして、負荷判定部40は、この回転数の平均値が第2の回転数に低下したか否かを判定しても良い(
図7のステップ#5)。
【0083】
高負荷状態であると判定された場合、制御部41は、草刈負荷を抑制するために、所定の対応処置を行う(
図7のステップ#6)。例えば、制御部41は、報知部42に高負荷状態である旨の警報を報知させる。このような警報により、作業者は草刈機が高負荷状態であることを認識でき、作業者は、エンジン4の回転数を上げたり、走行速度を減速させたり、走行経路を変更したり等の対応処置を行うことができる。その結果、継続して適切な作業走行を行うことが可能となる。なお、報知部42は、例えば、スピーカー(図示せず)であり、スピーカーから発する警報音により高負荷状態である旨の警報が行われる。また、報知部42はランプ(図示せず)等であっても良く、この場合、ランプが点灯することにより高負荷状態である旨の警報が行われる。また、報知部42は表示装置(図示せず)であっても良く、この場合、表示装置に高負荷状態である旨の表示が行われることにより、高負荷状態である旨の警報が行われる。なお、報知部42は、スピーカー、ランプ、表示装置が任意に組み合わされて用いられても良い。
【0084】
制御部41は、他にも対応処置として、エンジン4を停止させたり、草刈機を一旦後進させたり、走行経路を変更したりすることができる。
【0085】
草刈機を一旦後進させる対応処置は、制御部41がエンジン4、アクセルモータ47および前後進モータ48を制御して、草刈機を一旦後進させた後、再び前進させる処置である。このように草刈機を一旦後進させることにより、既に草刈りが終了した領域を走行させて勢いをつけてから草刈り作業を開始することができ、草刈負荷を低減させて、継続して適切な作業走行を行うことが可能となる。また、草刈負荷が高くなっている場合は、草刈りが十分にできていない可能性がある。草刈機を一旦後進させた後、再び前進させることにより、草刈りが十分にできていない可能性がある領域に対して再度草刈走行(作業走行)することができるため、刈り残しを抑制して、適切な草刈作業を継続することが可能となる。
【0086】
走行経路を変更する対応処置は、制御部41が第1操向モータ13および第2操向モータ14を制御して、現在走行中の走行経路を、既に草刈りが終了した領域(走行経路)側に所定の距離だけ移動させる処置である。現在の走行経路に隣接して既に草刈り作業が終了した領域が存在する場合、この領域側に移動して作業走行を行うと、作業中の走行経路において、幅方向における未作業領域が減少する。その結果、作業走行中に幅方向において刈り取る必要のある草が減少し、草刈負荷が減少することになる。その結果、継続して適切な作業走行を行うことが可能となる。
【0087】
なお、制御部41は、警報の報知を行ってからエンジン4を停止させても良い。また、制御部41は、警報の報知、草刈機を一旦後進させる処置、走行経路の変更を適宜組み合わせて実施しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、無線操縦による遠隔操作型の作業機ばかりではなく、レーダーセンサー等により樹木等の障害物を検出して、障害物を避けながら自動的に走行する自律走行型の作業機や、機体から長い操縦ハンドルを延出して、作業者が操縦ハンドルを持って各種の操作を行う歩行型の作業機、乗用型の作業機等の様々な作業機にも適用できる。
【0089】
本発明は、草刈機ばかりではなく、地面の耕耘を行う耕耘装置を備えた作業機や、薬剤や水等を散布する散布装置を備えた作業機等にも適用できる。
【符号の説明】
【0090】
4 エンジン(原動機)
34 センサ
40 負荷判定部
41 制御部