(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】冷媒回収システム及び冷媒回収システム制御方法
(51)【国際特許分類】
F25B 45/00 20060101AFI20230303BHJP
【FI】
F25B45/00 A
(21)【出願番号】P 2019090656
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】並木 勝也
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-351532(JP,A)
【文献】特開2004-53076(JP,A)
【文献】特開2016-1097(JP,A)
【文献】特開2017-26272(JP,A)
【文献】特開2002-31439(JP,A)
【文献】特開2012-202606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 45/00
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍空調機の冷媒循環路の低圧サービスポートに接続されて冷媒ガスを引き出す引出路と、
前記引出路に設けられ、引き出された前記冷媒ガスを圧縮して下流に送る圧縮機と、
前記引出路における前記圧縮機の下流に設けられ、前記冷媒ガスの送出先を切り替える切替弁と、
前記切替弁の前記送出先として設けられ、冷媒回収ボンベに接続された回収路と、
前記回収路に設けられ、前記冷媒ガスを液化する凝縮器と、
前記切替弁の別の前記送出先として設けられ、前記冷媒循環路の高圧サービスポートに接続される還流路と、
前記切替弁により前記冷媒ガスが前記回収路に送出される場合において、前記冷媒ガスの前記冷媒回収ボンベへの回収効率が低下したときに、前記切替弁を切り替えて前記冷媒ガスを前記還流路に送出する制御を行う制御部と、
を備える、ことを特徴とする冷媒回収システム。
【請求項2】
請求項1に記載の冷媒回収システムにおいて、
前記制御部は、前記冷媒ガスの温度、圧力、流速、回収量の少なくとも一つに基づいて、前記回収効率の低下を判定する、ことを特徴とする冷媒回収システム。
【請求項3】
請求項1に記載の冷媒回収システムにおいて
前記制御部は、前記切替弁により前記冷媒ガスが前記還流路に送出される場合において、前記冷媒ガスの回収効率が上昇する条件を満たした場合に、前記切替弁を切り替えて前記冷媒ガスを前記回収路に送出する制御を行う、ことを特徴とする冷媒回収システム。
【請求項4】
請求項3に記載の冷媒回収システムにおいて、
前記制御部は、前記冷媒ガスの温度、圧力、流速の少なくとも一つに基づいて、前記回収効率が上昇する条件を判定する、ことを特徴とする冷媒回収システム。
【請求項5】
冷凍空調機の冷媒循環路の低圧サービスポートに接続されて冷媒ガスを引き出す引出路と、
前記引出路に設けられ、引き出された前記冷媒ガスを圧縮して下流に送る圧縮機と、
前記引出路における前記圧縮機の下流に設けられ、前記冷媒ガスの送出先を切り替える切替弁と、
前記切替弁の前記送出先として設けられ、冷媒回収ボンベに接続された回収路と、
前記回収路に設けられ、前記冷媒ガスを液化する凝縮器と、
前記切替弁の別の前記送出先として設けられ、前記冷媒循環路の高圧サービスポートに接続される還流路と、
を備えた冷媒回収システムを制御する方法であって、
前記切替弁により前記冷媒ガスが前記回収路に送出される場合において、前記冷媒ガスの前記冷媒回収ボンベへの回収効率が低下したときに、前記切替弁を切り替えて前記冷媒ガスを前記還流路に送出させる手順と、
前記切替弁により前記冷媒ガスが前記還流路に送出される場合において、前記冷媒ガスの前記冷媒回収ボンベへの回収効率が上昇する条件を満たしたときに、前記切替弁を切り替えて前記冷媒ガスを前記回収路に送出させる手順と、
を含む、ことを特徴とする冷媒回収システム制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒回収システム及び冷媒回収システム制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒を用いて室内、容器などの空間を冷蔵または冷凍する機器(これを「冷凍空調機」と呼ぶ)では、機器の撤去時などに冷媒の回収が行われる。冷媒の回収は、例えば、気化した状態の冷媒(「冷媒ガス」と呼ぶ)を吸引することにより行われる。冷媒ガスを回収する場合、気化熱によって残った液体の冷媒(「冷媒液」と呼ぶ)が低温化するため、冷媒液の気化が遅れ、冷媒の回収効率が低下する。特に、冬季などの低温下では、冷媒液が冷媒循環路に溜まった状態となり(冷媒が「寝込む」という場合がある)回収が難しくなる。
【0003】
下記特許文献1には、冷凍空調機から冷媒を回収する冷媒回収装置について記載されている。この冷媒回収装置では、冷凍空調機の冷媒循環路における低圧サービスポートに取り付けた管に圧縮機が接続され、圧縮機の先には三方弁が取り付けられている。三方弁の一方は冷媒回収ボンベに接続され、もう一方は冷凍空調機の冷媒循環路における高圧サービスポートに取り付けられている。冷媒回収装置では、まず、三方弁を高圧サービスポートの側に向けて開いて圧縮機の運転を行う。そして、冷凍空調機の冷媒循環路の温度所定の温度に達した時点で、三方弁を切り替えることで、冷媒回収ボンベに冷媒が回収される。これにより、冷媒の回収率が高められることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の冷媒回収装置では、冷媒循環路の温度を高めた後に、三方弁を一度だけ切り替えて、冷媒を回収しているに過ぎず、それにより冷媒が回収できない状況は想定していない。しかし、冬季などの低温状態では、冷媒循環路の温度は低く、十分な量の冷媒を回収できない状況が考えられる。特に、法令で回収が義務付けられたフロン類が冷媒として用いられている場合には、法令で定められた量の冷媒を回収し、冷媒の漏洩を防止または抑制する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、冷凍空調機から回収する冷媒の回収率向上と回収時間短縮とを両立させることが可能な冷媒回収システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる冷媒回収システムは、冷凍空調機の冷媒循環路の低圧サービスポートに接続されて冷媒ガスを引き出す引出路と、前記引出路に設けられ、引き出された前記冷媒ガスを圧縮して下流に送る圧縮機と、前記引出路における前記圧縮機の下流に設けられ、前記冷媒ガスの送出先を切り替える切替弁と、前記切替弁の前記送出先として設けられ、冷媒回収ボンベに接続された回収路と、前記回収路に設けられ、前記冷媒ガスを液化する凝縮器と、前記切替弁の別の前記送出先として設けられ、前記冷媒循環路の高圧サービスポートに接続される還流路と、前記切替弁により前記冷媒ガスが前記回収路に送出される場合において、前記冷媒ガスの前記冷媒回収ボンベへの回収効率が低下したときに、前記切替弁を切り替えて前記冷媒ガスを前記還流路に送出する制御を行う制御部と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の一形態においては、前記制御部は、前記冷媒ガスの温度、圧力、流速、回収量の少なくとも一つに基づいて、前記回収効率の低下を判定する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の一形態においては、前記制御部は、前記切替弁により前記冷媒ガスが前記還流路に送出される場合において、前記冷媒ガスの回収効率が上昇する条件を満たした場合に、前記切替弁を切り替えて前記冷媒ガスを前記回収路に送出する制御を行う、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の一形態においては、前記制御部は、前記冷媒ガスの温度、圧力、流速の少なくとも一つに基づいて、前記回収効率が上昇する条件を判定する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明にかかる冷媒回収システム制御方法は、冷凍空調機の冷媒循環路の低圧サービスポートに接続されて冷媒ガスを引き出す引出路と、前記引出路に設けられ、引き出された前記冷媒ガスを圧縮して下流に送る圧縮機と、前記引出路における前記圧縮機の下流に設けられ、前記冷媒ガスの送出先を切り替える切替弁と、前記切替弁の前記送出先として設けられ、冷媒回収ボンベに接続された回収路と、前記回収路に設けられ、前記冷媒ガスを液化する凝縮器と、前記切替弁の別の前記送出先として設けられ、前記冷媒循環路の高圧サービスポートに接続される還流路と、を備えた冷媒回収システムを制御する方法であって、前記切替弁により前記冷媒ガスが前記回収路に送出される場合において、前記冷媒ガスの前記冷媒回収ボンベへの回収効率が低下したときに、前記切替弁を切り替えて前記冷媒ガスを前記還流路に送出させる手順と、前記切替弁により前記冷媒ガスが前記還流路に送出される場合において、前記冷媒ガスの前記冷媒回収ボンベへの回収効率が上昇する条件を満たしたときに、前記切替弁を切り替えて前記冷媒ガスを前記回収路に送出させる手順と、を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低温下においても、効率的に、かつ、高い回収率で、冷凍空調機から冷媒を回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態にかかる冷媒回収システム等の構成を示す図である。
【
図2】回収モードにおける冷媒の流れを示す図である。
【
図3】還流モードにおける冷媒の流れを示す図である。
【
図4】冷媒回収過程での温度、圧力、回収量の時間変化を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら、実施形態について説明する。説明においては、理解を容易にするため、具体的な態様について示すが、これらは実施形態を例示するものであり、他にも様々な実施形態をとることが可能である。
【0015】
図1は、実施形態にかかる空調機10と、冷媒回収システム30と、冷媒回収ボンベ70との概略的な構成を示す図である。
【0016】
空調機10は、冷凍空調機の一例であり、建造物などの室内空間を冷却するための装置である。空調機10には、冷媒を循環させる冷媒循環路12が設けられている。冷媒としては、フロン類が用いられる他、ノンフロンの物質が用いられることもある。空調機10に封入されている冷媒の重量は、空調機10のサイズあるいは冷却性能に応じて異なっており、少量の数kg程度のものから100kgを超えるものまで様々である。冷媒循環路12には、圧縮機14、凝縮器16、膨張弁18、蒸発器20、アキュムレータ22がこの順番で配置されている。
【0017】
圧縮機14は、アキュムレータ22から供給される低温低圧の冷媒ガスを圧縮して高温高圧状態の冷媒ガスに変えて、凝縮器16の側に輸送する電動ポンプである。圧縮機14は、アキュムレータ22から凝縮器16に向けた方向にのみ冷媒ガスを輸送するように構成された一方向性の特性をもつ装置である。圧縮機14では、電源が停止された状態においても、強制的に凝縮器16に向かう方向へ冷媒ガスを流し込むことは可能であるが、逆方向への流し込むことは実質的に不可能となっている。
【0018】
凝縮器16は、冷媒ガスを冷却して、高圧の冷媒液にする装置である。凝縮器16には、ファンが取り付けられ、外気と熱交換させることで冷却を行う。膨張弁18は、冷媒液を減圧する装置である。膨張弁18を通過した冷媒は、低温低圧の冷媒液となる。蒸発器20は、冷媒液を気化させる装置である。気化の際には、室内空間の空気から熱が奪われて、冷媒の気化熱として用いられる。これにより、室内空間の冷却が行われる。アキュムレータ22には、気化した冷媒ガスが流し込まれる。アキュムレータ22の下部には、冷媒液が溜まっており、冷媒ガスと冷媒液が平衡した状態にある。
【0019】
通常、アキュムレータ22、圧縮機14、凝縮器16は室外機として構成され、屋外空間に設置される。また、膨張弁18と蒸発器20は、室内機として構成され、室内空間に設置される。
【0020】
冷媒循環路12では、圧縮機14の上流側において圧縮機14とアキュムレータ22との間に低圧サービスポート24が設けられている。また、圧縮機14の上流側において、圧縮機14と凝縮器16との間に、高圧サービスポート26が設けられている。低圧サービスポート24と高圧サービスポート26は、冷媒循環路12に冷媒を注入する注入口、あるいは冷媒循環路12から冷媒を排出するための排出口である。
【0021】
冷媒回収システム30は、空調機10から冷媒を回収するための装置である。冷媒回収システム30には、低圧サービスポート24から冷媒ガスを引き出す引出路である引出管32が設けられている。引出管32には、冷媒を導く流路を構成するものであればよく、材質、形状、硬さなどは特に限定されるものではない。引出管32には、その途上に圧縮機34が設けられている。圧縮機34は、空調機10の圧縮機14と同様に、電動駆動されるポンプであり、冷媒ガスを圧縮して、下流側に向けて送出する。
【0022】
引出管32の下流端には、三方弁36が設けられている。三方弁36は、引出管32から流入する冷媒ガスの送出先を切り替える切替弁であり、例えば、電磁的アクチュエータによって動作する。三方弁36の一方の送出先は、回収路である回収管37である。回収管37には、凝縮器38が取り付けられており、冷媒ガスを液体化して冷媒回収ボンベ70に流し込む。三方弁36の他方の排出先は還流路である還流管40である。還流管40の先端は、高圧サービスポート26に接続されており、冷媒ガスを空調機10の冷媒循環路12に戻す。回収管37と還流管40も、引出管32と同様に、その材質、形状、硬さなどは自由に設定可能である。
【0023】
引出管32には、圧縮機34よりも上流に、冷媒ガスの温度を検出する温度センサ42、圧力を検出する圧力センサ44、流速を検出する流速センサ46が取り付けられている。引出管32は、低圧サービスポート24と接続されているため、温度センサ42及び圧力センサ44が検出する温度及び圧力は、冷媒循環路12における低圧サービスポート24付近の冷媒ガスの温度及び圧力とほぼ等しくなる。温度センサ42、圧力センサ44、流速センサ46による検出結果は、制御部50に入力される。
【0024】
制御部50は、冷媒回収システム30の動作を制御する。制御部50は、コンピュータ機能を備えたハードウエアとその制御を行うソフトウエア(例えばPC、マイコンなど)によって構築される。制御部50には、記憶部52と判定部54が構築されている。記憶部52は、制御に必要となる温度、圧力、流速、重量などの制御基準値を記憶している。また、判定部54は、温度センサ42から入力された温度、圧力センサ44から入力された圧力、流速センサ46から入力された流速、あるいは重量計60から入力された重量を、記憶部52が記憶する温度、圧力、流速あるいは重量の制御基準値と比較して、三方弁36などの制御を行う。制御の詳細については後述する。なお、制御部50では、回収作業を行うユーザからの入力を受け付けることにより、制御の設定、変更が行われる。図示を省略したが、ユーザからの入力は、例えば、冷媒回収システム30にタッチパネルディスプレイなどの操作部を設けることで、あるいは、スマートフォンやPCなどの外部装置と通信することで、行うことが可能となる。
【0025】
重量計60は、冷媒回収システム30において、冷媒回収ボンベ70の重量を測定するセンサである。重量計60によって測定された重量は、制御部50に入力される。これにより、制御部50では、どの程度の冷媒が回収されているかをリアルタイムで把握することができる。また、冷媒の回収作業では、この重量計60の測定結果に基づいて、回収した冷媒の量が記録される。
【0026】
冷媒回収ボンベ70は、回収した冷媒を貯蔵するボンベである。冷媒回収ボンベ70としては、例えば10L(リットル)、20L、100Lなど様々な容量のものが用いられる。空調機10に封入された冷媒量が冷媒回収ボンベ70よりも多い場合には、回収の途中で冷媒回収ボンベ70が取り替えられる。
【0027】
続いて、
図2~
図4を参照して、冷媒の回収過程について説明する。ここで、
図2と
図3は、
図1において、冷媒の流れを追記した図である。
図2は、冷媒を冷媒回収ボンベ70に貯蔵する場合(これを「回収モード」と呼ぶことにする)での冷媒の流れを示しており、
図3は、冷媒を還流させている場合(これを「還流モード」と呼ぶことにする)の流れを示している。
【0028】
冷媒の回収作業を行う場合、通常、空調機10は停止した状態にあり、圧縮機14も動作していない。この状態で、作業者は、空調機10の室外機に、冷媒回収システム30を接続する。具体的には、引出管32を低圧サービスポート24に接続し、回収管37を冷媒回収ボンベ70に接続し、還流管40を高圧サービスポート26に接続する。そして冷媒回収ボンベ70は重量計60に設置した上で、制御部50を起動する。回収作業は、制御部50の下、
図2に示す回収モードと、
図3に示す還流モードを適宜繰り返すことにより行われる。
【0029】
図2に示すように、回収モードでは、制御部50によって、三方弁36は、引出管32から流入する冷媒ガスを、回収管37に流し込むように切り替えられる。この状態では、圧縮機34が動作した場合、引出管32を通じて、冷媒循環路12内の冷媒ガスが吸引される。低圧サービスポート24は、圧縮機14とアキュムレータ22の間に位置しているため、冷媒ガスは、圧縮機14の側からも、アキュムレータ22の側からも吸引される。しかし、上述のように、圧縮機14は一方向性の特性をもつ装置であり、圧縮機14を超えて、凝縮器16の側から冷媒ガスが流れ込むことはない。このため、実質的には、冷媒ガスはアキュムレータ22の側から供給されることになる。特に、アキュムレータ22には、液体状態の冷媒である冷媒液が大量に溜まっており、この冷媒液が気化して冷媒ガスとなって、冷媒回収システム30に流れ込むことになる。
【0030】
引き出された冷媒ガスは、圧縮機34により高温高圧化されて、三方弁36に至る。そして、三方弁36により回収管37に送られ、凝縮器38において液化された後に、冷媒回収ボンベ70に流し込まれる。
【0031】
アキュムレータ22では、気化する冷媒ガスに気化熱が与えられるため、残った冷媒液の温度が低下する。これにより、冷媒液からの気化量が低下することになる。特に、冬季などの低温状態下では、冷媒液からの気化がほぼ止まってしまうため、冷媒液の回収が困難になってしまう。そこで、三方弁36の移行が行われる。
【0032】
図3に示した還流モードでは、制御部50によって、三方弁36は、引出管32から流入する冷媒ガスを還流管40に排出するように切り替えられている。このため、一旦、冷媒回収ボンベ70に流し込まれた冷媒の逆流が防止されている。
【0033】
還流モードでは、三方弁36を通過した冷媒ガスは、高圧サービスポート26から冷媒循環路12に再度流入している。このとき、上述の通り、冷媒ガスは、圧縮機14を超えてアキュムレータ22の側に流れることはできない。このため、冷媒ガスは、凝縮器16の側に流れ、さらに、膨張弁18、蒸発器20を通過してアキュムレータ22に向かう。アキュムレータ22では、新たに気化した冷媒ガスが加わって、低圧サービスポート24から引出管32に流れ込む。圧縮機34では、この冷媒ガスを圧縮して、三方弁36へ送る。
【0034】
このようにして、還流モードでは、冷媒ガスが、空調機10と冷媒回収システム30との間を循環する。冷媒ガスは、圧縮機34を通過する際に、圧縮されることで、高温高圧化する。すなわち、冷媒ガスは、熱力学的にみれば、圧縮機34によって仕事をされることで、内部エネルギを高めて高温化するとともに、圧力も上昇する。この温度上昇のため、冷媒循環路12に残っている冷媒液の気化が促進される。特に、アキュムレータ22に残る大量の冷媒液に熱が与えられることで、その蒸発が進むことになる。この結果、冷媒ガスの量が増え、冷媒ガスの圧力も上昇する。
【0035】
この後、再度、回収モードへ移行し、三方弁36が切り替えられる。この段階では、既に気化している冷媒ガスが回収されるだけでなく、アキュムレータ22の温度が上昇したことで、新たに気化する冷媒ガスの回収も行われる。必要に応じて、さらに、還流モードへの移行とその後の回収モードへの移行を繰り返すことで、空調機10内の冷媒が高い収率で、速やかに回収されることになる。
【0036】
図4(a)は、冷媒の回収過程において、温度センサ42により検出される温度、あるいは、圧力センサ44により検出される圧力の、時間変化を模式的に示す図である。また、
図4(b)は、
図4(a)と同じ時間軸の下で、冷媒回収ボンベ70に回収される冷媒の重量を示す図である。
【0037】
図4では、時刻t0において、回収の準備が整い、回収モードでの処理が開始されたものとしている。
図4(a)に示すように、時刻t0で温度センサ42が検出する冷媒ガスの温度はT0である。冷媒の大部分は、空調機10の室外機にあるアキュムレータ22に貯蔵されているため、この温度T0は、外気温にほぼ等しくなる。時刻t0での圧力センサ44が検出する冷媒ガスの圧力はP0である。また、
図4(b)に示すように、時刻t0で重量計60による回収された冷媒の重量(すなわち、重量計60の測定値から空の冷媒回収ボンベ70の重量を差し引いた重量)は0である。
【0038】
その後、時刻t1に至るまでは、回収モードによる冷媒の回収が行われている。回収の開始直後は、アキュムレータ22などに溜まっている冷媒液は温度T0に近く、気化が速やかに進むため、
図4(b)に示すように、冷媒回収量は時間に対してほぼ比例する。また、冷媒液から冷媒ガスへの蒸発の過程で冷媒液から気化熱が奪われるために、冷媒液及び冷媒ガスの温度は時間が経過するにつれ低下する。そして、冷媒液の温度が低下するにつれて気化する冷媒ガスの量も減るため、時間とともに単位時間あたりの回収量は減り、また、冷媒ガスの圧力も低下する。
【0039】
この結果、時刻t1では回収量はm1にまで達しているものの、頭打ちの状態に至っている。また、冷媒ガスの温度と圧力の低下の度合いも小さくなっており、時刻t1では、冷媒ガスの温度はT1、圧力はP0となっている。
【0040】
そこで、時刻t1において、還流モードへの移行が行われている。この切り替えは、例えば、制御部50において、記憶部52に予め温度の制御基準値T1を記憶させておくことで実施できる。すなわち、判定部54では、温度センサ42から入力される温度が制御基準値T1と同じかそれ以下になった時点で、還流モードへの切り替えを行うようにすればよい。還流モードへの移行では、三方弁36の切り替えが行われる。また、必要に応じて、圧縮機34の出力を増加または低下させることもできる。
【0041】
図4(b)に示すように、時刻t1で還流モードに移行されたことで、その後の回収量は増えておらず、m1で一定化している。また、冷媒ガスの温度と圧力は時間とともに上昇し、時刻t2には温度がT2、圧力がP2に達している。冷媒ガスの温度上昇は、冷媒循環路12のアキュムレータ22等に残る冷媒液が気化しやすくなることを示す。すなわち、冷媒ガスがある程度の温度上昇(あるいはそれと関連する圧力上昇あるいは流速変化)をした場合、冷媒ガスの回収効率が上昇する条件が満たされると言える。
【0042】
そこで、制御部50では、冷媒ガスの回収効率が上昇する条件として、予め記憶部52に温度の制御基準値T2が記憶されている。そして、判定部54では、温度センサ42から入力される温度がT2と同じかそれ以上になった時点で、回収モードへの移行を行っている。回収モードへの移行では、三方弁36の切り換えが行われ、また、必要に応じて圧縮機34の出力が変更される。
【0043】
回収モードへの移行を行った時刻t2以降における冷媒の回収量の変化、冷媒ガスの温度及び圧力の変化は、時刻t0移行と同様の傾向を示す。ただし、ここでは、時刻t0~t1において大半の冷媒が回収されたことを仮定しており、時刻t2では空調機10内の冷媒の量が少ない状態にあるため、比較的短い時間で、再度、回収量が頭打ちとなっている。そこで、時刻t3(このときの回収量はm3、冷媒ガスの温度はT1、圧力はP1である)において、再度、還流モードへの移行が行われている。
【0044】
同様にして、時刻t4で回収モードへの移行、時刻t4で還流モードへの移行、時刻t6で回収モードへの移行が行われている。そして、時刻t7に至った段階で、冷媒の回収量がm7となり、目標とした回収量に達している。そこで、作業者は、冷媒回収ボンベ70の閉栓を行い、冷媒回収システム30の撤去を行って回収作業を終了している。
【0045】
以上の説明では、還流モードへの移行及び回収モードへの移行は、制御部50において、温度センサ42により検出された温度を制御基準値と比較することで行うものとした。しかし、他の態様によっても、還流モードへの移行及び回収モードへの移行を行うことが可能である。例えば、
図4(a)に模式的に示したように、圧力が温度と似た時間変化を示すことから、圧力センサ44により検出された圧力を、予め設定された制御基準値と比較することで、モードの移行を行う態様が挙げられる。また、回収された冷媒の重量の時間変化が所定の制御基準値以下となった場合に、回収モードから還流モードに移行するようにしてもよい。回収される冷媒重量の時間変化は、流速センサ46が検出する流速と対応した関係にあることから、流速センサ46の検出結果を所定の制御基準値と比較して還流モードへの移行を行うようにしておよい。また、例えば、還流モードから回収モードへの移行は還流モードへの移行後一定時間経過した後に行うようにすることも可能である。
【0046】
また、以上の説明においては、制御部50では、引出管32における圧縮機34の上流に設けられた温度センサ42によって直接測定された冷媒ガスの温度を入力されるものとした。しかし、冷媒ガスの温度は、例えば、引出管32の外表面の温度を測定することでも近似的に検出可能であるし、冷媒循環路12内の冷媒ガスから検出してもよい。また、圧縮機34よりも下流における冷媒ガスの温度を測定して、処理を行うことも可能である。同様に、冷媒ガスの圧力の様々に取得することが可能であり、例えば、冷媒循環路12内の圧力、あるいは、圧縮機34よりも下流における冷媒ガスの圧力を取得するようにしてもよい。
【0047】
実施形態にかかる冷媒回収システム30は、さらに様々に変形可能である。例えば、引出管32には、その途中に分岐路が設けられていてもよい。そのような分岐路がある場合でも、適宜分岐路を弁によって冷媒ガスの流れを制御することが可能であれば、上述の回収モードと還流モードとの間の移行を問題なく行うことが可能となる。
【0048】
図4を用いた説明では、冷媒回収作業は、まず回収モードから始めるものとした。しかし、例えば、外気温が非常に低い場合には、まず、還流モードから始めるようにしてもよい。
【0049】
なお、冷媒回収システム30の操作は、制御部50に代えて、あるいは、制御部50とともに、作業者が適宜、実施することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 空調機、12 冷媒循環路、14 圧縮機、16 凝縮器、18 膨張弁、20 蒸発器、22 アキュムレータ、24 低圧サービスポート、26 高圧サービスポート、30 冷媒回収システム、32 引出管、34 圧縮機、36 三方弁、37 回収管、38 凝縮器、40 還流管、42 温度センサ、44 圧力センサ、46 流速センサ、50 制御部、52 記憶部、54 判定部、60 重量計、70 冷媒回収ボンベ。