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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/04 20060101AFI20230303BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20230303BHJP
   B60N 3/00 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
B60R7/04 C
E02F9/16 K
B60N3/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019161474
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021037892
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 肇
(72)【発明者】
【氏名】田中 友幸
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-048538(JP,A)
【文献】特開2011-084149(JP,A)
【文献】実開昭48-041593(JP,U)
【文献】特開2013-245508(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0201197(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
E02F 9/16
B60N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられた運転席と、
前記運転席の周囲に設けられたコンソールと、
上方が開放されて、前記コンソールに設けられた凹部からなる収納トレイと
を備えた建設機械において、
前記収納トレイは、前記運転席の前,後方向に長尺で、左,右方向に短尺な長方形状である開口を有し、互いに対面して前記開口の左辺および右辺から下側に延びて設けられた一対の側面部と、前記一対の側面部の間で、水平面に対して傾けて設けられ、互いの接合部分が前記凹部の最深部となる前記開口の前辺から下斜め後側に延びて設けられた第1底面部および前記開口の後辺から下斜め前側に延びて設けられた第2底面部とにより形成されており、
前記第1底面部の水平面に対する前記運転席の前,後方向の傾きの角度および前記第2底面部の水平面に対する前記運転席の前,後方向の傾きの角度は、前記車体の登坂能力から定まる最大登坂角度以上、90度未満に設定され
前記第1底面部および前記第2底面部は、前記車体が最大登坂角度で傾いたときに水平状態または前記開口側が高くなるように形成され、
前記第1底面部と前記第2底面部とは、前記最深部の位置で直角に配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記運転席の左,右両側には、前,後方向に延びた前部に操作レバーを有している左,右のコンソールボックスが設けられ、
前記コンソールは、前記左,右のコンソールボックスの少なくとも一方のコンソールボックスであることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械において、
前記収納トレイの後側、かつ前記運転席に対して前記収納トレイよりも離れた位置には、電源供給装置が設けられ、
前記第2底面部は、前記第1底面部よりも長尺な底面部として形成されており、
前記第1底面部は、前記第2底面部の前位置に配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において、
前記収納トレイの前側、かつ前記運転席に対して前記収納トレイよりも離れた位置には、電源供給装置が設けられ、
前記第1底面部は、前記第2底面部よりも長尺な底面部として形成されており、
前記第1底面部は、前記第2底面部の前位置に配置されていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンソールにスマートフォン等の物品を収容するための収納トレイが設けられた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載され、下部走行体と共に車体を構成する上部旋回体と、上部旋回体に俯仰の動作が可能に設けられた作業装置とを備えている。
【0003】
上部旋回体には、オペレータが座る運転席が設けられている。この運転席の周囲には、コンソールが設けられている。コンソールには、運転席の右前方に位置してモニタ、スイッチ等の計器類を備えたコンソール、運転席の左,右の両側に位置して、前部に操作レバーを有している左,右のコンソールボックス等がある。
【0004】
これらのコンソールには、上方が開放された収納凹部が設けられている。収納凹部は、収納トレイとも呼ばれるもので、長方形の薄板状の物品、例えば、スマートフォン等の通信端末、手帳、タバコ等を収納することができる。例えば、車両用の技術としては、長方形の薄板状の物品を収納する収納凹部を備えたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-74865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両用の技術である特許文献1の収納凹部は、互いに対面する側壁面以外に、底面、第1傾斜面、立壁面、第2傾斜面、水平面を含んで構成されており、この技術を油圧ショベルに適用することも考えられる。この場合、薄板状の物品を多くの面で支持する構成では、収納凹部と物品との間に隙間が形成され易く、作業時にガタ付きを生じてしまう。また、多くの面を有した収納凹部は、物品に対して大きな接触面を形成することができない。このために、油圧ショベルを傾斜地で作業させた場合には、物品が滑って収納凹部から落下する虞がある。
【0007】
本発明の一実施形態の目的は、収納トレイ内に物品を安定的に保持できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、車体に設けられた運転席と、前記運転席の周囲に設けられたコンソールと、上方が開放されて、前記コンソールに設けられた凹部からなる収納トレイとを備えた建設機械において、前記収納トレイは、前記運転席の前,後方向に長尺で、左,右方向に短尺な長方形状である開口を有し、互いに対面して前記開口の左辺および右辺から下側に延びて設けられた一対の側面部と、前記一対の側面部の間で、水平面に対して傾けて設けられ、互いの接合部分が前記凹部の最深部となる前記開口の前辺から下斜め後側に延びて設けられた第1底面部および前記開口の後辺から下斜め前側に延びて設けられた第2底面部とにより形成されており、前記第1底面部の水平面に対する前記運転席の前,後方向の傾きの角度および前記第2底面部の水平面に対する前記運転席の前,後方向の傾きの角度は、前記車体の登坂能力から定まる最大登坂角度以上、90度未満に設定され、前記第1底面部および前記第2底面部は、前記車体が最大登坂角度で傾いたときに水平状態または前記開口側が高くなるように形成され、前記第1底面部と前記第2底面部とは、前記最深部の位置で直角に配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、収納トレイ内に物品を安定的に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態が適用される油圧ショベルを左側から示す左側面図である。
図2】フロア部材、運転席、左,右のコンソールボックス、後部カバー等を示す斜視図である。
図3】右コンソールボックスと後部カバーを拡大して示す斜視図である。
図4】収納トレイに通信端末を収納した右コンソールボックスと後部カバーを示す一部破断の左側図である。
図5】収納トレイに通信端末を収納した状態を示す要部拡大の断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態による右コンソールボックスを示す平面図である。
図7図6の収納トレイに通信端末を収納した状態を示す要部拡大の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る建設機械の代表例として、油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0012】
まず、図1ないし図5は、本発明の第1の実施形態を示している。第1の実施形態の特徴は、収納トレイの後側には、電源供給装置が設けられ、第2底面部は、第1底面部よりも長尺な底面部として形成されており、第1底面部は、第2底面部の前位置に配置されていることにある。
【0013】
図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、自走が可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回の動作が可能に支持され、下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体3と、上部旋回体3の前部に俯仰の動作が可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置4とにより構成されている。
【0014】
ここで、本実施形態の油圧ショベル1が有する走行性能の一部について述べる。油圧ショベル1は、傾斜面や段差部で作業を行ったり、これらを走行したりする。このために、油圧ショベル1は、水平な地面Gに対して、例えば70%の登坂能力を有している。70%の登坂能力とは、水平な地面Gに対する最大登坂角度αが35度程度となっている。なお、上述した70%の登坂能力と35度の最大登坂角度αは、油圧ショベル1の一般的な数値を例示したもので、特殊な仕様、オプション設定等によっても変わる値である。
【0015】
登坂能力は、「平らな堅土の坂路で、無負荷状態の油圧ショベルを登坂、降坂及び停止するため、走行制御装置の能力、エンジンの傾斜運転角度、燃料・作動油などの漏れを生じない傾斜角度及び機械安全性などの制限から登坂できる最大能力。ただし、油圧ショベルと路面との滑りによる影響はないものとした場合の連続登坂できる最大の能力。」(JIS規格のA8403-1参照)と定義付けられている。そして、車体の登坂能力から最大登坂角度αが設定される。
【0016】
また、油圧ショベル1は、旋回が可能な上部旋回体3を有している。従って、傾斜地での作業では、上部旋回体3を旋回動作させると、上部旋回体3の前側(キャブ7側)が上側に位置したり、下側に位置したりして傾斜方向が変化する。
【0017】
上部旋回体3の配置関係について説明するにあたり、後述の運転席10に着座したオペレータの目線の方向を前側とし、これと反対側を後側として説明する。上部旋回体3は、支持構造体を形成する旋回フレーム5と、旋回フレーム5の後部に設けられ、作業装置4との重量バランスをとるカウンタウエイト6と、旋回フレーム5の左前部に設けられたキャブ7とを含んで構成されている。上部旋回体3は、円弧状に形成されたカウンタウエイト6が旋回中心に近付いた位置に配置されている。これにより、油圧ショベル1は、上部旋回体3が下部走行体2上で旋回したときに、カウンタウエイト6の外周面が下部走行体2の車幅寸法の120%以内に収まる後方超小旋回型の油圧ショベルとして構成されている。
【0018】
キャブ7は、長方形状のフロア部材8(図2参照)と、フロア部材8の上側に設けられたキャブボックス9とによって箱型状に形成されている。キャブ7のフロア部材8は、前,後方向に長尺な長方形状の板体として形成され、後側寄りには、運転席台座8Aが設けられている。そして、キャブ7内の運転室には、後述の運転席10、走行操作レバー・ペダル14、左コンソール装置15、右コンソール装置19等が設けられている。
【0019】
キャブボックス9は、前面パネル9A、後面パネル9B、左面パネル9C、右面パネル(図示せず)および天面パネル9Dにより箱型状に形成されている。左面パネル9Cには、オペレータがキャブ7内の運転室に出入りするときに開閉されるドア9Eが設けられている。
【0020】
運転席10は、車体、即ち、上部旋回体3を構成するキャブ7内に設けられている。運転席10は、フロア部材8の運転席台座8A上に設けられている。運転席10は、オペレータが着座する。運転席10の後側には、後面パネル9Bを覆うように後部カバー11が設けられている。後部カバー11は、電気部品(図示せず)等を覆っている。また、後部カバー11には、右コンソール装置19の後側となる右上側に位置して後述の電源供給装置12が設けられている。
【0021】
電源供給装置12は、右コンソール装置19の後側、即ち、後述する収納トレイ23の後側に設けられている。電源供給装置12は、例えば、USBポート、アクセサリソケット、シガーライタソケット等により構成されている。電源供給装置12は、その使用方法の一例として、通信端末25に充電を行うときに、通信端末25に接続された充電ケーブル26が接続される。
【0022】
右前コンソール13は、フロア部材8の右前側からキャブボックス9の右面パネルに沿うように上側に延びて設けられている。右前コンソール13は、コンソールを構成している。右前コンソール13は、運転席10の右前方に位置してモニタ、スイッチ等の計器類(いずれも図示せず)を備えている。
【0023】
左,右の走行操作レバー・ペダル14は、運転席10の前方となるフロア部材8の前部位置に設けられている。各走行操作レバー・ペダル14は、前,後方向に傾転することにより、下部走行体2を走行させることができる。
【0024】
左コンソール装置15は、運転席10の左側に位置してフロア部材8の運転席台座8Aに取付けられている。左コンソール装置15は、前,後方向に延びた左のコンソールボックス16と、コンソールボックス16の前部に設けられた操作レバー17とを含んで構成されている。操作レバー17は、作業装置4等を操作する。また、左コンソール装置15には、コンソールボックス16の後部の上方に位置して、オペレータの左腕を乗せるアームレスト18が設けられている。
【0025】
右コンソール装置19は、運転席10の周囲、即ち、運転席10の右側に位置して、車体をなす上部旋回体3に設けられている。右コンソール装置19は、後述する右のコンソールボックス20、操作レバー21、アームレスト22および収納トレイ23を含んで構成されている。
【0026】
右のコンソールボックス20は、コンソールを構成している。コンソールボックス20は、運転席10の右側に前,後方向に延びた箱状体として設けられている。右のコンソールボックス20は、前,後方向に長尺な長方形状の上面部20Aと、上面部20Aの前部から下向きに延びた前面部20Bと、上面部20Aの後部から下向きに延びた後面部20Cと、上面部20Aの左部から下向きに延びた左面部20Dと、上面部20Aの右部から下向きに延びた右面部20Eとを備えている。
【0027】
右のコンソールボックス20は、上面部20Aの前側部分が操作レバー21を取付けるためのレバー取付部20A1となっている。また、コンソールボックス20の上面部20Aの後側寄りには、運転席10から離れる右側に位置して各種スイッチを備えた操作パネル20Fが設けられている。さらに、上面部20Aには、操作パネル20Fの左側(運転席10側)に位置して後述の収納トレイ23が設けられている。
【0028】
ここで、図5に示すように、右のコンソールボックス20の上面部20Aは、水平な地面Gと平行な水平面Hとなっている。この水平面Hは、各部の加工、組立に関する公差、作業装置4の姿勢、搭乗したオペレータの体重、キャブ7を支持するマウント部材(図示せず)の経年劣化等の条件で、地面Gに対して僅かに傾くことが考えられる。即ち、上面部20Aは、地面Gと平行になるように、また平行に近付くように設計されている。なお、コンソールボックス20の上面部20Aは、例えば、運転席10に着座したオペレータが操作パネル20F等を操作し易いように、右側や前側を高くした傾斜面としてもよい。
【0029】
操作レバー21は、コンソールボックス20の前部に位置するレバー取付部20A1に設けられている。操作レバー21は、前述した左側の操作レバー17と同様に、作業装置4等を操作する。また、アームレスト22は、コンソールボックス20の後部の上方に位置して、オペレータの右腕を乗せる。
【0030】
次に、本実施形態の特徴部分となる収納トレイ23の構成について、図3ないし図5を参照しつつ詳細に説明する。なお、収納トレイ23に収納される物品としては、長方形状の薄板状をした通信端末25(スマートフォン)を例示している。
【0031】
図3図4に示すように、収納トレイ23は、右コンソール装置19を構成する右のコンソールボックス20の上面部20Aに、上方が開放された凹部として設けられている。収納トレイ23には、長方形の薄板状の物品、例えば、スマートフォン等の通信端末25を収容する。収納トレイ23には、通信端末25以外にも、長方形の薄板状の物品、例えば、手帳、タバコ等を収納することができる。
【0032】
収納トレイ23は、前,後方向に長尺で、左,右方向に短尺な長方形状、即ち、4辺をもった開口24を有している。収納トレイ23は、開口24の左辺および右辺から下側に延びて設けられ、互いに対面する左側面部23A、右側面部23Bと、一対の側面部23A,23B間に位置して開口24の前辺から下斜め後側に延びて設けられた第1底面部23Cと、一対の側面部23A,23B間に位置して開口24の後辺から下斜め前側に延びて設けられた第2底面部23Dとにより構成されている。
【0033】
収納トレイ23は、第1底面部23Cと第2底面部23Dとが互いに接合した接合部分が凹部の最深部23Eとなっている。換言すると、収納トレイ23は、三角形状をした溝状の有底穴として形成され、三角形の頂部が最深部23Eとなっている。また、第1底面部23Cと第2底面部23Dとは、最深部23Eの位置で直角に配置されている。これにより、収納トレイ23(各側面部23A,23B)は、直角三角形を形成している。
【0034】
ここで、第1底面部23Cと第2底面部23Dとを最深部23Eで直角に配置した構造では、収納した通信端末25の隣り合う2面(2辺)、即ち、長辺25Aと短辺25Bとに各底面部23C,23Dを面接触させることができる。
【0035】
第2底面部23Dは、第1底面部23Cよりも長尺な底面部として形成されている。この上で、第1底面部23Cは、第2底面部23Dの前位置に配置されている。即ち、長尺な第2底面部23Dは、短尺な第1底面部23Cの後位置に配置されている。長尺な第2底面部23Dは、水平面Hに対して角度β1で傾斜している。第2底面部23Dの角度β1は、前述した油圧ショベル1の70%の登坂能力から定まる最大登坂角度αである35度以上、90度未満に設定されている(35度≦β1<90度)。好ましくは、第2底面部23Dの角度β1は、35度以上、60度以下(本実施形態では35度)に設定されている。これにより、第2底面部23Dは、上部旋回体3の前側が高くなるように最大で35度まで傾いた場合でも、水平状態または開口24側が高くなるように傾きを維持することができる。
【0036】
一方、第2底面部23Dよりも短い短尺な第1底面部23Cは、水平面Hに対して角度γ1で傾斜している。第1底面部23Cの角度γ1は、第2底面部23Dの角度β1と同様に、最大登坂角度αである35度以上、90度未満に設定されている(35度≦γ1<90度)。好ましくは、第1底面部23Cの角度γ1は、35度以上、60度以下(本実施形態では55度)に設定されている。これにより、第1底面部23Cは、上部旋回体3の前側が最大で35度まで下向きに傾いた場合でも、水平状態または開口24側が高くなるように傾きを維持することができる。
【0037】
このような角度に設定された第1底面部23Cと第2底面部23Dとは、油圧ショベル1が最大登坂角度αまで傾いた場合でも、水平状態または開口24側が高くなるように傾いているから、収納した通信端末25が開口24側に滑り出るのを抑制することができる。一方で、第1底面部23Cの角度γ1と第2底面部23Dの角度β1が油圧ショベル1の最大登坂角度αとなる35度に満たない場合には、油圧ショベル1が35度で傾いた状態で作業を行ったときに、開口24側が低くなって通信端末25が滑り落ちてしまう。
【0038】
また、第1底面部23Cと第2底面部23Dとは、通信端末25の形状が長方形であることから、第1底面部23Cと第2底面部23Dの両方を通信端末25に面接触させるために、第1底面部23Cと第2底面部23Dとは、90度の角度をもって配置されている。これにより、第1底面部23Cの角度γ1と第2底面部23Dの角度β1とを合わせると90度になる(γ1+β1=90度)。
【0039】
さらに、第1底面部23Cと第2底面部23Dとのうち、長尺な第2底面部23Dは、短尺な第1底面部23Cの後位置に配置されている。これにより、電源供給装置12が設けられた後側に位置する第2底面部23Dの傾斜を、第1底面部23Cの傾斜よりも小さくすることができる。即ち、図4図5に示すように、収納トレイ23は、長方形状の通信端末25を横倒し(長手方向を横向き)にした状態で安定的に収納することができる。しかも、横倒しにした通信端末25は、充電ケーブル26の差込口(図示せず)を電源供給装置12側となる後側に向けることができるから、通信端末25は、充電ケーブル26を用いて電源供給装置12に容易に接続することができる。
【0040】
通信端末25は、例えば、スマートフォンである。この通信端末25は、長方形の薄板状の物品として形成されている。具体的には、通信端末25の周縁(周面)は、平行に延びる長辺25Aと、各長辺25Aの端部を繋ぐ平行な短辺25Bとなっている。また、通信端末25は、各短辺25Bのうち、一方にUSBポート等からなる差込口(図示せず)が設けられている。この差込口には、充電ケーブル26等を接続することができる。
【0041】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0042】
キャブボックス9のドア9Eを開いてキャブ7内に乗込んだオペレータは、運転席10に着座する。運転席10に着座したオペレータは、走行操作レバー・ペダル14を操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。また、左,右のコンソール装置15,19の操作レバー17,21を操作することにより、作業装置4等を動作させて土砂の掘削作業を行うことができる。
【0043】
作業現場では、作業の確認、作業状況の報告等を行うために通信端末25を用いて通信を行う。この場合には、右コンソール装置19のコンソールボックス20に設けた収納トレイ23内に通信端末25を収納できるから、この収納トレイ23から通信端末25を取出して容易に使用することができる。また、使用後には、通信端末25を開口24から収納トレイ23内に挿入することにより、この収納トレイ23に保管することができる。
【0044】
ここで、油圧ショベル1は、傾斜面等で傾いた状態のまま作業を行うことがある。この場合、油圧ショベル1は、水平な地面Gに対して最大で35度傾く(最大登坂角度α=35度)。このように、油圧ショベル1が最大登坂角度αまで傾いた場合には、収納トレイ23内に収納した通信端末25が滑り落ちることが考えられる。特に、油圧ショベル1は、上部旋回体3が旋回することで、キャブ7の傾斜方向が異なってしまう。即ち、通信端末25を収納した収容した収納トレイ23も、前側や後側に大きく傾いてしまう。
【0045】
然るに、本実施形態では、上方が開放されて、右のコンソールボックス20に設けられた凹部からなる収納トレイ23は、互いに対面する一対の側面部23A,23Bと、一対の側面部23A,23Bの間で、水平面Hに対して傾けて設けられ、互いの接合部分が凹部の最深部23Eとなる第1底面部23Cおよび第2底面部23Dとにより形成されている。この上で、水平面Hに対する第1底面部23Cの傾きの角度γ1および第2底面部23Dの傾きの角度β1は、車体、即ち、下部走行体2の登坂能力から定まる最大登坂角度αである35度以上、90度未満に設定されている。
【0046】
従って、上部旋回体3が最大登坂角度α(35度)まで前下りに傾いた場合、第1底面部23Cは、水平面Hに対し開口24側が高くなるように約20度の角度を維持することができる。一方、上部旋回体3が最大登坂角度α(35度)まで前上がりに傾いた場合、第2底面部23Dは、水平状態を維持することができる。
【0047】
この結果、収納トレイ23は、油圧ショベル1(上部旋回体3)が傾斜地で作業をした場合でも、収納した通信端末25が滑って落下するのを防止することができる。
【0048】
また、収納トレイ23の底部は、第1底面部23Cと第2底面部23Dとからなる2つの面で構成しているから、通信端末25の長辺25A、短辺25Bの何れかを第1底面部23Cまたは第2底面部23Dに面接触させることができる。特に、本実施形態では、第1底面部23Cと第2底面部23Dとは、最深部23Eの位置で直角に配置しているから、通信端末25の長辺25Aと短辺25Bを対応する第1底面部23Cと第2底面部23Dに面接触させることができる。これにより、収納トレイ23に対する通信端末25の摩擦抵抗を大きくすることができ、この点においても収納トレイ23から通信端末25が飛び出して落下するのを防止することができる。
【0049】
しかも、第1底面部23Cと第2底面部23Dとは、両方とも水平面Hに対し35度以上に設定している。従って、上部旋回体3が旋回することで、キャブ7の傾斜方向(前下り、前上がりなど)が異なった場合でも、第1底面部23Cと第2底面部23Dとの何れかで通信端末25を安定的に保持することができる。
【0050】
また、運転席10の左,右両側には、前,後方向に延びた前部に操作レバー17,21を有している左,右のコンソールボックス16,20が設けられている。そして、コンソールは、左,右のコンソールボックス16,20の少なくとも一方のコンソールボックス、本実施形態では、右コンソール装置19のコンソールボックス20である。即ち、右のコンソールボックス20に、収納トレイ23を設けて通信端末25を収納することができる。
【0051】
さらに、収納トレイ23の後側には、電源供給装置12が設けられている。第2底面部23Dは、第1底面部23Cよりも長尺な底面部として形成されている。さらに、第1底面部23Cは、第2底面部23Dの前位置に配置されている。これにより、収納トレイ23は、長方形状の通信端末25を後側の電源供給装置12に向けて横倒しにした状態で安定的に収納することができる。この状態では、通信端末25は、充電ケーブル26を用いて電源供給装置12に容易に接続することができる。
【0052】
次に、図6および図7は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、収納トレイの前側には、電源供給装置が設けられ、第1底面部は、第2底面部よりも長尺な底面部として形成されており、第1底面部は、第2底面部の前位置に配置されていることにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0053】
図6において、第2の実施形態による右のコンソールボックス31は、第1の実施形態による右のコンソールボックス20と同様に、前部にレバー取付部31A1を有する上面部31A、前面部31B、後面部31C、左面部31Dおよび右面部31Eを含んで構成されている。また、上面部31Aの右側には操作パネル31Fと後述の収納トレイ34が設けられている。しかし、第2の実施形態による右のコンソールボックス31は、後述の電源供給装置32が設けられている点で、第1の実施形態によるコンソールボックス20と相違している。
【0054】
電源供給装置32は、収納トレイ34の前側に位置して右のコンソールボックス31の上面部31Aに設けられている。具体的には、電源供給装置32は、上面部31Aの右寄りに位置していることから、操作パネル31Fの前部に並んで配置されている。電源供給装置32は、例えば、USBポートにより構成されている。電源供給装置32には、例えば通信端末25に充電を行うときに、通信端末25に接続された充電ケーブル33が接続される。
【0055】
第2の実施形態による収納トレイ34は、第1の実施形態による収納トレイ23と同様に、右のコンソールボックス31の上面部31Aの左寄りに、上方が開口35となって開放された凹部として設けられている。収納トレイ34は、左側面部34A、右側面部34B、第1底面部34Cおよび第2底面部34Dにより構成されている。また、第1底面部34Cと第2底面部34Dとが互いに接合した接合部分は、凹部の最深部34Eとなっている。そして、第1底面部34Cと第2底面部34Dとは、最深部34Eの位置で直角に配置されている。しかし、第2の実施形態による収納トレイ34は、第1底面部34Cが第2底面部34Dよりも長尺に形成されている点で、第1の実施形態による収納トレイ23と相違している。
【0056】
具体的には、短尺な第1底面部34Cは、水平面Hに対して角度γ2で傾斜している。第1底面部34Cの角度γ2は、油圧ショベル1の登坂能力から定まる最大登坂角度αである35度以上、90度未満に設定されている(35度≦γ2<90度)。好ましくは、第1底面部34Cの角度γ2は、35度以上、60度以下(本実施形態では35度)に設定されている。これにより、第1底面部34Cは、上部旋回体3の前側が高くなるように最大で35度まで傾いた場合でも、水平状態または開口35側が高くなるように傾きを維持することができる。
【0057】
一方、長尺な第2底面部34Dは、水平面Hに対して角度β2で傾斜している。第2底面部34Dの角度β2は、第1底面部34Cの角度γ2と同様に、最大登坂角度αである35度以上、90度未満に設定されている(35度≦β2<90度)。好ましくは、第2底面部34Dの角度β2は、35度以上、60度以下(本実施形態では55度)に設定されている。これにより、第2底面部34Dは、上部旋回体3の前側が最大で35度まで下向きに傾いた場合でも、水平状態または開口35側が高くなるように傾きを維持することができる。
【0058】
このような角度に設定された第1底面部34Cと第2底面部34Dとは、長尺な第1底面部34Cが短尺な第2底面部34Dの前位置に配置されている。これにより、電源供給装置32が設けられた前側に位置する第1底面部34Cの傾斜を、第2底面部34Dの傾斜よりも小さくすることができる。即ち、収納トレイ34は、長方形状の通信端末25を横倒し(長手方向を横向き)にした状態で安定的に収納することができる。しかも、横倒しにした通信端末25は、充電ケーブル33の差込口(図示せず)を電源供給装置32側となる前側に向けることができるから、通信端末25は、充電ケーブル33を用いて電源供給装置32に容易に接続することができる。
【0059】
かくして、このように構成された第2の実施の形態でも、前述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、右のコンソールボックス31に設けた電源供給装置32と通信端末25とを充電ケーブル33を用いて短い距離で簡単に接続することができる。
【0060】
なお、第1の実施形態では、右コンソール装置19のコンソールボックス20に収納トレイ23を設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、左コンソール装置のコンソールボックスに収納トレイを設ける構成としてもよい。また、右前コンソールに収納トレイを設ける構成としてもよい。これらの構成は、第2の実施形態にも同様に適用することができる。
【0061】
第1の実施形態では、水平面Hに対する第1底面部23Cの角度γ1を55度に設定し、水平面Hに対する第2底面部23Dの角度β1を35度に設定し、両者の角度を異ならせた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、水平面Hに対する第1底面部23Cの角度γ1を45度に設定し、水平面Hに対する第2底面部23Dの角度β1を45度に設定し、両者の角度を同じにする構成としてもよい。この構成は、第2の実施形態にも同様に適用することができる。
【0062】
また、各実施形態では、建設機械として油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば油圧クレーン、ホイールローダ等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
10 運転席
12,32 電源供給装置
16 左のコンソールボックス
17,21 操作レバー
20,31 右のコンソールボックス(コンソール)
23,34 収納トレイ
23A,34A 左側面部
23B,34B 右側面部
23C,34C 第1底面部
23D,34D 第2底面部
23E,34E 最深部
25 通信端末
G 地面
H 水平面
α 最大登坂角度
β1,β2 第2底面部の角度
γ1,γ2 第1底面部の角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7