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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】ワイパアーム
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/46 20060101AFI20230303BHJP
【FI】
B60S1/46 D
B60S1/46 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019174959
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021049900
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 伸敬
(72)【発明者】
【氏名】町田 健
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-116733(JP,A)
【文献】特表2004-501826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0066413(US,A1)
【文献】特表平05-508596(JP,A)
【文献】特開2015-003716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00-1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームヘッドと、
前記アームヘッドの先端に連結され、かつ互いに対向する一対の側壁と、前記側壁のそれぞれの上端部に繋がる天壁と、を備えたシャンクと、
ウォッシャ液を供給するチューブと、
前記側壁のそれぞれの下端部と接合され、かつ前記天壁と対向するボトムカバーと、
を有し、
前記ボトムカバーは、板状の本体部と、前記本体部に設けられ、かつ前記天壁に向かって突出する壁部と、を備え、
前記チューブは、前記本体部および前記壁部と前記シャンクとの間に配置され、かつ前記本体部に接触する第1平面と、前記壁部に接触する第2平面と、前記第1平面および前記第2平面に繋がるシャンク側面と、を備え、
前記チューブの前記シャンク側面に、前記ウォッシャ液を噴射する噴射孔が開口している、ワイパアーム。
【請求項2】
前記シャンク側面は、前記第1平面を備えた第1平面状部に繋がる円弧状部と、前記第2平面を備えた第2平面状部に繋がる第3平面を備えた第3平面状部と、を含む部分の外側の面であり、
前記噴射孔は、前記円弧状部に形成されている、請求項1に記載のワイパアーム。
【請求項3】
前記チューブは、前記第2平面状部と前記第3平面状部との接合部に位置する角部と、前記チューブの内周面からなる前記ウォッシャ液の流路と、を備え、
前記流路における前記チューブの長手方向と交差する方向の切断面は、円形であり、
前記噴射孔は、前記流路の中心に対して前記角部と対称な位置に形成され、
前記流路の直径方向における前記円弧状部の厚さより前記角部の厚さの方が厚い、請求項2に記載のワイパアーム。
【請求項4】
前記ボトムカバーは、前記壁部と対向して前記壁部の外側に配置され、かつ前記チューブの前記円弧状部が当接する保持部をさらに備え、
前記チューブは、前記壁部と前記保持部とによって挟持されている、請求項2又は請求項3に記載のワイパアーム。
【請求項5】
前記ボトムカバーの前記本体部に形成された孔部を備え、
前記孔部は、前記噴射孔と対向する位置に形成され、
前記保持部に、前記孔部と連通する貫通孔が形成されている、請求項4に記載のワイパアーム。
【請求項6】
前記チューブにおける前記第1平面と前記第2平面とが成す角度は、90°である、請求項1から請求項5の何れか1項に記載のワイパアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、払拭面を払拭するワイパ装置に設けられるワイパアームに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両にはワイパ装置が搭載されている。ワイパ装置は、駆動源であるワイパモータと、ワイパモータの駆動により揺動されるワイパアームと、ワイパアームに装着されるワイパブレードとを備えている。そして、ワイパブレードの一例として、ブレードラバーとラバーホルダを有したワイパブレードが知られている。
【0003】
上記のようなワイパアームの一例として、払拭面に対して噴射させる洗浄液の水路が形成されたラバーホルダを有したワイパアームが知られており、このようなワイパアームが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/080997号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたワイパアームにおいては、ラバーホルダに水路が形成されているため、ラバーホルダの形状が複雑になり、ラバーホルダを備えたワイパブレードの組付けが困難となる。そこで、ラバーホルダとは別部材として、洗浄液を噴射する噴射孔が形成された円筒形のチューブをワイパアームに設ける構造を採用することが考えられる。
【0006】
しかしながら、チューブが円筒形であるため、ワイパアームにチューブを固定する際に、チューブが周方向に回転してしまい、噴射孔の位置決めが困難となる虞れがあった。
【0007】
本発明の目的は、チューブの周方向の回転を防止しつつ、チューブの固定の容易化が図られたワイパアームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、アームヘッドと、前記アームヘッドの先端に連結され、かつ互いに対向する一対の側壁と、前記側壁のそれぞれの上端部に繋がる天壁と、を備えたシャンクと、ウォッシャ液を供給するチューブと、前記側壁のそれぞれの下端部と接合され、かつ前記天壁と対向するボトムカバーと、を有している。前記ボトムカバーは、板状の本体部と、前記本体部に設けられ、かつ前記天壁に向かって突出する壁部と、を備えている。前記チューブは、前記本体部および前記壁部と前記シャンクとの間に配置され、かつ前記本体部に接触する第1平面と、前記壁部に接触する第2平面と、前記第1平面および前記第2平面に繋がるシャンク側面と、を備え、前記チューブの前記シャンク側面に、前記ウォッシャ液を噴射する噴射孔が開口している。
【0009】
本発明の他の態様では、前記シャンク側面は、前記第1平面を備えた第1平面状部に繋がる円弧状部と、前記第2平面を備えた第2平面状部に繋がる第3平面を備えた第3平面状部と、を含む部分の外側の面であり、前記噴射孔は、前記円弧状部に形成されている。
【0010】
本発明の他の態様では、前記チューブは、前記第2平面状部と前記第3平面状部との接合部に位置する角部と、前記チューブの内周面からなる前記ウォッシャ液の流路と、を備え、前記流路における前記チューブの長手方向と交差する方向の切断面は、円形である。前記噴射孔は、前記流路の中心に対して前記角部と対称な位置に形成され、前記流路の直径方向における前記円弧状部の厚さより前記角部の厚さの方が厚い。
【0011】
本発明の他の態様では、前記ボトムカバーは、前記壁部と対向して前記壁部の外側に配置され、かつ前記チューブの前記円弧状部が当接する保持部をさらに備え、前記チューブは、前記壁部と前記保持部とによって挟持されている。
【0012】
本発明の他の態様では、前記ボトムカバーの前記本体部に形成された孔部を備え、前記孔部は、前記噴射孔と対向する位置に形成され、前記保持部に、前記孔部と連通する貫通孔が形成されている。
【0013】
本発明の他の態様では、前記チューブにおける前記第1平面と前記第2平面とが成す角度は、90°である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ワイパアームにおいてチューブがその外周形状に少なくとも2つの平面を有していることにより、チューブ取付時のチューブの周方向の回転を防止しつつ、チューブの固定の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のワイパアームの外観構造を示す斜視図である。
図2図1に示すワイパアームのボトムカバー側の構造を示す斜視図である。
図3図2のA-A線に沿って切断したシャンクの構造を示す断面図である。
図4図2のA-A線に沿って切断した構造を示す部分斜視図である。
図5】実施の形態のワイパアームにおけるクローズ側チューブの構造を示す断面図である。
図6】実施の形態のワイパアームにおけるオープン側チューブの構造を示す断面図である。
図7】比較例のワイパアームにおけるチューブの孔部の位置ずれ状態を示す断面図である。
図8】誤組み状態のワイパアームにおいて孔部内を眺めて見える構造を示す部分裏面図である。
図9】正規組付け状態のワイパアームにおいて孔部内を眺めて見える構造を示す部分裏面図である。
図10】比較例のワイパアームにおけるチューブの孔部の加工方法を示す横断面図であり、(a)はレーザー照射状態、(b)は孔部形成後の構造である。
図11図10に示す比較例のワイパアームにおけるチューブの孔部加工方法を示す縦断面図であり、(a)はレーザー照射状態、(b)は孔部形成後の構造である。
図12】実施の形態のワイパアームにおけるクローズ側チューブの孔部加工方法を示す縦断面図であり、(a)はレーザー照射状態、(b)は孔部形成後の構造である。
図13】実施の形態のワイパアームにおけるオープン側チューブの孔部加工方法を示す縦断面図であり、(a)はレーザー照射状態、(b)は孔部形成後の構造である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1に示すワイパ装置10は、例えば、自動車等の車両に設けられたリヤガラス等の払拭面を払拭する装置である。ワイパ装置10は、細長いアームシャンク(シャンク)12を備えたワイパアーム11と、上記払拭面を払拭するブレードラバー16を備えたワイパブレード15と、ワイパアーム11とワイパブレード15を連結する連結部材(図示せず)と、を有している。
【0018】
なお、ワイパアーム11は、アームシャンク12と、アームシャンク12を回動自在に支持するアームヘッド13と、からなる。
【0019】
また、ワイパブレード15は、アームシャンク12の長手方向の中央部付近に上記連結部材を介して回動自在に連結されている。さらに、ワイパアーム11の基端側には、ワイパ装置10を形成するワイパモータの出力軸(図示せず)が固定されている。
【0020】
そして、車室内等に設けたワイパスイッチをオン操作することで、上記ワイパモータの出力軸が正逆方向に回転してワイパアーム11が揺動する。これにより、ワイパブレード15に取り付けられたブレードラバー16がリヤガラスなどの払拭面の所定の払拭範囲を往復払拭動作し、これにより、リヤガラス等の払拭面に付着した雨水等が払拭される。
【0021】
ワイパアーム11は、例えば、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで棒状に形成され、ワイパアーム11の先端側の太さは、基端側の太さよりも細く形成されている。より具体的には、ワイパアーム11は、その基端側から先端側に向かうにつれて徐々に細くなる先細り形状に形成されている。これにより、ワイパアーム11のデザイン性を向上させている。ただし、ワイパアーム11の外観形状は上述の形状に限定されるものではない。
【0022】
また、ワイパアーム11のアームシャンク12には、リヤガラス等の払拭面に向けてアームシャンク12を倒す方向に押圧力が作用しており、したがって、ワイパブレード15の往復払拭動作時において、ワイパブレード15が脱落するようなことは無い。なお、上記押圧力は、アームシャンク12の基端側に設けられた引っ張り用のスプリング19のバネ力により発生する。
【0023】
ここで、本実施の形態のワイパアーム11では、アームヘッド13の先端にアームシャンク12が連結されている。そして、アームシャンク12の内部には、図2に示すように、ウォッシャ液(洗浄液とも言う)22(図4参照)を供給するための2本のチューブ20,21が配置されている。つまり、本実施の形態では、アームシャンク12の内部に給水用の2本のチューブ20,21が配置されている場合を一例として説明する。
【0024】
また、アームシャンク12は、図3に示すように、対向する一対の側壁12a,12bと、一対の側壁12a,12bのそれぞれの上端部に繋がる天壁12cと、を備えている。天壁12cは、例えば、側壁12a,12bのそれぞれと一体成形されている。つまり、アームシャンク12は、その断面形状が、対向する一対の側壁12a,12bと天壁12cとから構成されたかまぼこ型を成す細長い板状の部材である。
【0025】
また、アームシャンク12は、一対の側壁12a,12bそれぞれの下端部と接合され、かつ天壁12cと対向するボトムカバー14を備えている。つまり、板状のかまぼこ型のアームシャンク12の底部にボトムカバー14が配置されており、アームシャンク12とボトムカバー14とによって囲まれた領域が中空部となっている。そして、アームシャンク12とボトムカバー14とによって囲まれた上記中空部に2本のチューブ20,21が横並びで配置されている。アームシャンク12の内部は、アームシャンク12の底部にボトムカバー14が配置されたことで、天壁12cと反対側の底面側からでも見えない状態となっている。すなわち、アームシャンク12の底部にボトムカバー14が配置されたことで、アームシャンク12の内部を隠すことができる。
【0026】
なお、図2に示すように、ボトムカバー14もアームシャンク12の延在方向に沿って細長く形成されている。
【0027】
また、アームシャンク12の先端部には先端ノズル18が連結されている。この先端ノズル18には2つの噴射孔18aが形成されており、一方の噴射孔18aには、チューブ20が接続され、他方の噴射孔18aには、チューブ21が接続されている。したがって、チューブ20,21のそれぞれに供給されたウォッシャ液22(図4参照)のうち、先端ノズル18まで到達したウォッシャ液22は、2つの噴射孔18aからそれぞれ外部に噴射される。
【0028】
なお、2本のチューブ20,21のそれぞれの先端側の部分は、アームシャンク12の先端付近の位置でチューブホルダ17によって保持されている。一方、2本のチューブ20,21のそれぞれの基端側の部分は、アームヘッド13の端部からアームヘッド外に延びている。
【0029】
次に、本実施の形態のボトムカバー14の詳細の構造について説明する。
【0030】
図3及び図4に示すように、ボトムカバー14は、2本のチューブ20,21のそれぞれを保持する機能を有している。具体的には、ボトムカバー14は、板状の本体部14aと、本体部14aに設けられ、かつ天壁12cに向かって突出する壁部(第3壁部14cc)と、有している。さらに、ボトムカバー14には、第3壁部14ccと対向して第3壁部14ccの外側に配置され、かつチューブ20,21のそれぞれの一部が当接する保持部14cが設けられており、チューブ20,21のそれぞれは、第3壁部14ccと保持部14cとによって挟持されている。
【0031】
なお、ボトムカバー14の本体部14aには、チューブ20,21それぞれの噴射孔20a,21aに対向する位置に孔部14bが形成されている。そして、ボトムカバー14の保持部14cは、孔部14bの上方に配置された第1壁部14caと、第1壁部14caの上端に繋がる第2壁部14cbと、を備えている。第1壁部14caと第2壁部14cbは、例えば、一体成形されている。さらに、ボトムカバー14の板状の本体部14aと、第1壁部14ca及び第2壁部14cbからなる保持部14cとが、一体成形されている。
【0032】
また、ボトムカバー14の保持部14cは、図2に示すように、横並びに配置された2本のチューブ20,21のそれぞれの延在方向に対して、ボトムカバー14に互い違い(交互)に複数個ずつ設けられている。図2に示す複数の孔部14bのそれぞれの位置に保持部14cが形成されている。そして、この構造の場合、2本のチューブ20,21に対する保持部14c及び孔部14bは、2本のチューブ20,21のそれぞれの延在方向に対して互い違い(交互)に設けられているため、ボトムカバー14に設けられた左右の保持部14c及び孔部14bは、横並びには設けられていない。
【0033】
次に、本実施の形態のワイパアーム11に組み込まれるチューブ20,21の形状について説明する。図3及び図4に示すように、チューブ20,21のそれぞれは、チューブ20,21それぞれの長手方向に交差する方向の切断面の形状が、かまぼこ型となっている。すなわち、チューブ20,21のそれぞれの外周面20f,21fは、3つの平面と1つの円弧状面とから構成されている。
【0034】
具体的には、チューブ20は、ボトムカバー14の本体部14aおよび第3壁部14ccと、アームシャンク12との間の収容部に配置されている。また、図4に示すように、チューブ20は、本体部14aに接触する第1平面20baを備えた第1平面状部20bと、第3壁部14ccにおけるチューブ20の配置側の面であり、かつアームシャンク12の外側を向いた外側面14cca(チューブ配置側の面)に接触する第2平面20caを備えた第2平面状部20cと、を備えている。さらに、チューブ20は、第1平面20ba及び第2平面20caに繋がるシャンク側面20eaを備えたシャンク側接続部20eを有している。そして、シャンク側接続部20eは、第1平面状部20bに繋がる円弧状部20ebと、第2平面状部20cに繋がり、かつ第3平面20daを備えた第3平面状部20dと、を有している。つまり、シャンク側面20eaは、第1平面状部20bに繋がる円弧状部20ebと、第2平面状部20cに繋がる第3平面20daを備えた第3平面状部20dと、を含む部分の外側の面である。そして、ウォッシャ液22を噴射させる噴射孔20aは、シャンク側面20eaに開口するようにシャンク側接続部20eの円弧状部20ebに形成されている。
【0035】
同様に、チューブ21は、ボトムカバー14の本体部14aおよび第3壁部14ccと、アームシャンク12との間の収容部に配置されている。また、チューブ21は、本体部14aに接触する第1平面21baを備えた第1平面状部21bと、第3壁部14ccにおけるチューブ21の配置側の面であり、かつアームシャンク12の外側を向いた外側面14cca(チューブ配置側の面)に接触する第2平面21caを備えた第2平面状部21cと、を備えている。さらに、チューブ21は、第1平面21ba及び第2平面21caに繋がるシャンク側面21eaを備えたシャンク側接続部21eを有している。そして、シャンク側接続部21eは、第1平面状部21bに繋がる円弧状部21ebと、第2平面状部21cに繋がり、かつ第3平面21daを備えた第3平面状部21dと、を有している。つまり、シャンク側面21eaは、第1平面状部21bに繋がる円弧状部21ebと、第2平面状部21cに繋がる第3平面21daを備えた第3平面状部21dと、を含む部分の外側の面である。そして、ウォッシャ液22を噴射させる噴射孔21aは、シャンク側面21eaに開口するようにシャンク側接続部21eの円弧状部21ebに形成されている。
【0036】
また、図5に示すように、チューブ20における第1平面20baと第2平面20caとが成す角度は、90°(直角)である。一方、図6に示すように、チューブ21における第1平面21baと第2平面21caとが成す角度も、90°(直角)である。さらに、図3に示すボトムカバー14の本体部14aに形成された第3壁部14ccは、板状の本体部14aと直角に設けられている。
【0037】
したがって、本実施の形態のワイパアーム11では、図3及び図4に示すように、チューブ20の第1平面20baがボトムカバー14の板状の本体部14aに面接触しており、さらに第2平面20caがボトムカバー14の本体部14aに設けられた第3壁部14ccの外側面14ccaに面接触している。そして、チューブ20は、第3壁部14ccと保持部14cとによって挟持されている。
【0038】
一方、チューブ21においても、該チューブ21の第1平面21baがボトムカバー14の板状の本体部14aに面接触しており、さらに第2平面21caがボトムカバー14の本体部14aに設けられた第3壁部14ccの外側面14ccaに面接触している。そして、チューブ21は、第3壁部14ccと保持部14cとによって挟持されている。
【0039】
また、図3に示すように、本実施の形態のワイパアーム11では、ボトムカバー14の板状の本体部14aにおいて、チューブ20の噴射孔20aに対向する位置に孔部14bが形成され、さらに、本体部14aと一体成形された保持部14cに、孔部14bと連通する貫通孔14cdが形成されている。同様に、ボトムカバー14の板状の本体部14aにおいて、チューブ21の噴射孔21aに対向する位置に孔部14bが形成され、さらに、本体部14aと一体成形された保持部14cに、孔部14bと連通する貫通孔14cdが形成されている。
【0040】
また、チューブ20は、図5に示すように、第1平面20ba、第2平面20ca及びシャンク側面20eaにより構成された外周面20fと、チューブ20の直径方向Kの外周面20fの内側において断面形状が円20gaに形成された内周面20gと、第2平面状部20cと第3平面状部20dとの接合部に位置する角部20hと、を有している。円形の内周面20gは、ウォッシャ液22(図4参照)の流路20kを形成している。そして、チューブ20の噴射孔20aは、チューブ20の長手方向と交差する断面において、図12(b)に示すように、内周面20gにより形成される円20ga(流路20k)の中心Cに対して角部20hと対称な位置に形成されており、円20ga(流路20k)の直径方向Kにおける円弧状部20ebの厚さT1より角部20hの厚さT2の方が厚くなっている(T1<T2)。
【0041】
同様に、チューブ21は、図6に示すように、第1平面21ba、第2平面21ca及びシャンク側面21eaにより構成された外周面21fと、チューブ21の直径方向Kの外周面21fの内側において断面形状が円21gaに形成された内周面21gと、第2平面状部21cと第3平面状部21dとの接合部に位置する角部21hと、を有している。円形の内周面21gは、ウォッシャ液22(図4参照)の流路21kを形成している。そして、チューブ21の噴射孔21aは、チューブ21の長手方向と交差する断面において、図13(b)に示すように、内周面21gにより形成される円21ga(流路21k)の中心Cに対して角部21hと対称な位置に形成されており、円21ga(流路21k)の直径方向Kにおける円弧状部21ebの厚さT1より角部21hの厚さT2の方が厚くなっている(T1<T2)。
【0042】
また、チューブ20,21のそれぞれは、図4に示すように、ボトムカバー14に設けられた第3壁部14ccと、第1壁部14ca及び第2壁部14cbからなる保持部14cとによって挟持される。その際、第1壁部14caと第2壁部14cbとからなる保持部14cは、チューブ20,21のそれぞれの円弧状部20eb,21ebの円弧状と同様の円弧状となっている。すなわち、円弧状の保持部14cは、チューブ20,21のそれぞれの円弧状部20eb,21ebに対してスナップフィット構造となっている。
【0043】
さらに、チューブ20,21のそれぞれの円弧状部20eb,21ebと反対側の面のそれぞれが、第2平面20ca,21caとなっており、これら第2平面20ca,21caが第3壁部14ccに面接触している。つまり、かまぼこ型のチューブ20,21の円弧状部20eb,21ebのそれぞれが外側に向くようにチューブ20,21を配置しないと、ボトムカバー14の第3壁部14ccと円弧状の保持部14cとの間には、チューブ20,21のそれぞれが嵌まらない構造となっている。そして、円弧状の保持部14cが、チューブ20,21のそれぞれの円弧状部20eb,21ebに対してスナップフィット構造となっていることで、第3壁部14ccと保持部14cとによってチューブ20,21のそれぞれを挟持することができるとともに、チューブ20,21のそれぞれを配置向きを間違えることなく、第3壁部14ccと保持部14cとに嵌め込むことができる。
【0044】
以上のように、本実施の形態のワイパアーム11では、チューブ20,21のそれぞれがそれらの外周形状に少なくとも2つの平面(第1平面20ba,21ba及び第2平面20ca,21ca)を有していることにより、チューブ取付時のチューブ20,21のそれぞれの周方向の回転(回動)を防止することができる。さらにチューブ20,21のそれぞれをボトムカバー14の第3壁部14ccと保持部14cとに嵌め込んで固定することにより、チューブ20,21のそれぞれの固定の容易化を図ることができる。
【0045】
ここで、本願発明者が検討した図7に示す比較例のチューブ30について説明する。図7に示すチューブ30は、断面形状が円筒形のものである。
【0046】
例えば、図1に示すようなワイパアーム11に図7に示すような2本のチューブ30を配置する場合に、オープン側とクローズ側とで、長さや断面形状が同じで、かつ噴射孔30aの位置だけ異なる2本のチューブ30を組み付ける場合があるが、長さや断面形状が同じであるため、オープン側とクローズ側とでチューブ30を誤って組み付ける、所謂誤組みが懸念される。誤組みを認識できるように、噴射孔30aの位置が設計通りの位置に配置されているか否かを外観検査で確認、または射点検査時に正しい位置に噴射されているか否かで確認する必要がある。その際、外観検査では小さな噴射孔30aの僅かな位置ずれを検出するのは困難であり、射点検査まで誤組みが検出されない場合は、誤組み後、射点検査の工程が全て無駄になってしまうという課題があった。
【0047】
そこで、本実施の形態のワイパアーム11では、誤組みによりオープン側とクローズ側とで間違ったチューブ20を組付けた場合、図8のQ部に示すように、外観検査で、ボトムカバー14の孔部14bからチューブ20の噴射孔20a(図9参照)が確認できない状態となり、外観検査にて誤組みを認識(検出)することができる。オープン側とクローズ側と正規のチューブ20が組付けられている場合には、図9のR部に示すように、外観検査で、ボトムカバー14の孔部14bからチューブ20の噴射孔20aが確認できるため、誤組みでないことを認識することができる(チューブ21についても同様)。
【0048】
また、図7に示す比較例の円筒形のチューブ30では、チューブ30が周方向に回転して組み付けられることも懸念される。しかしながら、本実施の形態のワイパアーム11では、チューブ20のそれぞれの第1平面20baが、ボトムカバー14の本体部14aに面接触(当接)するとともに、円弧状部20ebと反対側に位置する第2平面20caがボトムカバー14の第3壁部14ccの外側面14ccaに面接触(当接)している。さらに、チューブ20の円弧状部20ebがボトムカバー14の保持部14cによって保持されている。すなわち、チューブ20が第3壁部14ccと保持部14cとによって挟持されている。これにより、ボトムカバー14に対してチューブ20が周方向に回転することもなく、チューブ20が位置決めされるとともに、チューブ20のワイパアーム11の幅方向Pにおけるがたつきを防止することができる。したがって、オープン側とクローズ側とでチューブ20が正規に取り付けられている場合には、外観検査で、ボトムカバー14の孔部14bからチューブ20の噴射孔20aを容易に確認することができる(チューブ21についても同様)。
【0049】
また、ボトムカバー14の保持部14cがスナップフィット構造であるため、チューブ20の第3壁部14ccと保持部14cとによる保持力が高められ、ワイパアーム11の幅方向Pにおけるチューブ20のがたつきを防止することができ、噴射孔20aの位置ずれも防止することができる(チューブ21についても同様)。
【0050】
また、図7のS部に示すように、比較例のチューブ30において、チューブ30の周方向への回転によって噴射孔30aの位置がずれた場合には、洗浄性の低下が懸念される。しかしながら、本実施の形態のワイパアーム11では、チューブ20,21のそれぞれがボトムカバー14の本体部14aと第3壁部14ccと保持部14cとによって位置決めされるとともに、周方向への回転も防止されるため、洗浄性の低下を招くことを抑制することができる。
【0051】
また、本実施の形態のワイパアーム11では、上述のようにチューブ20,21のそれぞれの第1平面20ba,21baおよび第2平面20ca,21caがボトムカバー14と当接しているため、チューブ20,21のそれぞれが周方向に回転することを防止できる。その際、チューブ20,21のそれぞれの噴射孔20a,21aがアームシャンク12の幅方向Pの外側に向けて設けられている。これにより、ウォッシャ液22をワイパアーム11の払拭方向に向かって拡散させつつ噴射することができる。
【0052】
その結果、ウォッシャ液22による洗浄性を向上させることができるとともに、払拭面の洗浄範囲を広げることができる。
【0053】
また、チューブ20,21のそれぞれにおいては、外周面20f,21fの形状がかまぼこ型であり、かつ内周面20g,21gの切断面の形状が円形であるため、外周面20f,20gが平面の箇所に噴射孔20a,21aを設けると、噴射孔20a,21aの形成箇所によって噴射孔20a,21aの長さが異なってしまう。しかしながら、本実施の形態のワイパアーム11のように、チューブ20,21のそれぞれの円弧状部20eb,20ebに噴射孔20a,21aを設けることにより、噴射孔20a,21aのそれぞれの長さを一定に保つことができ、ひいてはウォッシャ液22の吐出能力(吐出量・吐出圧等)を一定に保つことができる。その結果、ウォッシャ液22による洗浄性の均一化を図ることができる。
【0054】
また、チューブ20,21のそれぞれがボトムカバー14の第3壁部14ccと保持部14cとによって挟持されるため、ワイパアーム11の幅方向Pにおけるチューブ20,21のそれぞれの固定力を高めることができる。
【0055】
また、ボトムカバー14の本体部14aに孔部14bが形成され、かつボトムカバー14の保持部14cに孔部14bと連通する貫通孔14cdが形成されたことにより、ウォッシャ液22の噴射方向のチューニング範囲を斜め下方などに広げることができる。これにより、ワイパアーム11による洗浄性を向上させることができる。
【0056】
また、チューブ20,21のそれぞれの第1平面20ba,21baと第2平面20ca,21caとが成す角度が90°(直角)であることにより、第2平面20ca,21caのそれぞれを当接させるボトムカバー14の第3壁部14ccを本体部14aに突設する際に、上下の型抜きのみで容易にボトムカバー14に第3壁部14ccを形成することができる。
【0057】
次に、本実施の形態のチューブの孔加工について説明する。
【0058】
図10及び図11の比較例に示すように、チューブ30の孔加工では、レーザー23や針等を用いて噴射孔30aを形成する加工方法が考えられる。例えば、図10(a)に示すように、レーザー23を用いて図10(b)の噴射孔30aを加工する場合、チューブ30の逆側の壁までレーザー23が到達して突き抜け部23aとなり、図10(b)に示すように逆側の壁に過剰孔30b(U部)が形成されることがある。この現象は、レーザー23の焦点距離が影響していて所望の孔径で加工するためには、避けられない副作用である。
【0059】
そして、円筒形のチューブ30では、図11(a)に示すようにチューブ30の肉厚が周方向のどの部分でも同じ厚さであるため、図11(b)に示すように、噴射孔30aの逆側の壁に過剰孔30bが形成されると、チューブ30の残留部30cの肉厚T3が薄くなり、チューブ30の破損に到ることが懸念される。
【0060】
そこで、本実施の形態のチューブは、外観形状がかまぼこ型である。すなわち、チューブ20,21のそれぞれにおいて、噴射孔20a,21aが設けられる箇所の逆側の部分には角部20h,21hが配置されており、図12及び図13に示すように、噴射孔20a,21aが設けられた円弧状部20eb,21ebの厚さT1に比べて角部20h,21hの厚さT2は十分に厚い。これにより、レーザー23が逆側の壁(角部20h,21h)に到達してもレーザー23が貫通しない程度の肉厚T2を確保することができる。
【0061】
なお、図12はクローズ側のチューブ20に対するレーザー加工を示すものであり、図12(a)に示すように、レーザー23が逆側の壁まで到達しても肉厚の角部20hが配置されており、図12(b)に示すように、角部20hにおいて過剰孔20iが形成されても肉厚T4が厚い残留部20jを形成することが可能である。
【0062】
同様に、図13(a)に示すオープン側のチューブ21においても、レーザー23が逆側の壁まで到達しても肉厚の角部21hが配置されており、図13(b)に示すように、角部21hにおいて過剰孔21iが形成されても肉厚T4が厚い残留部21jを形成することが可能である。
【0063】
すなわち、かまぼこ型のチューブ20,21のそれぞれでは、角部20hを2箇所有しているため、クローズ側とオープン側とでどちらの噴射孔20a,21aに対しても同様の効果が得られる。つまり、クローズ側とオープン側とでどちらのチューブ20,21のそれぞれにおいても、角部20h,21hが円弧状部20eb,21ebより肉厚(T1<T2)に設定されているため、レーザー23や針等が角部20h,21hを貫通する可能性を低減することができる。これにより、クローズ側とオープン側とでどちらのチューブ20,21に対してもチューブ20,21のそれぞれが破損に到ることを低減することができる。
【0064】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、ワイパアームを、自動車等の車両のリヤガラス等の払拭面を払拭するリヤワイパ装置に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、自動車等の車両のフロント側に搭載されるワイパ装置や、船舶,航空機,鉄道車両等に搭載されるワイパ装置にも適用することができる。
【0065】
また、上記実施の形態では、アームシャンクの内部に2本のチューブが設けられる場合を説明したが、アームシャンクの内部に設けられるチューブの本数は、1本でも3本以上でもよい。
【0066】
また、チューブを保持する保持部がボトムカバーに2列で設けられる場合、2列の保持部の配置は、互い違いだけでなく、横並びで配置されていてもよい。また、1列における保持部の数は、少なくとも1つ設けられていればよい。
【符号の説明】
【0067】
10 ワイパ装置
11 ワイパアーム
12 アームシャンク(シャンク)
12a 側壁
12b 側壁
12c 天壁
13 アームヘッド
14 ボトムカバー
14a 本体部
14b 孔部
14c 保持部
14ca 第1壁部
14cb 第2壁部
14cc 第3壁部(壁部)
14cca 外側面
14cd 貫通孔
15 ワイパブレード
16 ブレードラバー
17 チューブホルダ
18 先端ノズル
18a 噴射孔
19 スプリング
20 チューブ
20a 噴射孔
20b,21b 第1平面状部
20ba,21ba 第1平面
20c,21c 第2平面状部
20ca,21ca 第2平面
20d,21d 第3平面状部
20da,21da 第3平面
20e,21e シャンク側接続部
20ea,21ea シャンク側面
20eb,21eb 円弧状部
20f,21f 外周面
20g,21g 内周面
20ga,21ga 円
20h,21h 角部
20i,21i 過剰孔
20j,21j 残留部
20k,21k 流路
21 チューブ
21a 噴射孔
22 ウォッシャ液
23 レーザー
23a 突き抜け部
30 チューブ
30a 噴射孔
30b 過剰孔
30c 残留部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13