(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】太陽電池付き時計、太陽電池付き時計の製造方法
(51)【国際特許分類】
G04B 19/06 20060101AFI20230303BHJP
【FI】
G04B19/06 C
G04B19/06 R
(21)【出願番号】P 2019194123
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎也
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/037350(WO,A1)
【文献】特開2012-163568(JP,A)
【文献】特開2008-089330(JP,A)
【文献】特開2011-106908(JP,A)
【文献】特開平11-064540(JP,A)
【文献】特開昭53-070858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定方向に偏光した光成分を透過する偏光板と、該偏光板よりも視認側の反対側に設けられており、透過する光に位相差を与える位相差板とを、少なくとも含む文字板と、
前記文字板を透過した光が入射されることにより発電する太陽電池と、
を有し、
前記文字板は、前記偏光板よりも視認側に設けられており、互いに離間して前記偏光板の透過軸に交差する方向に延びると共に所定の高さを有する複数の第1の遮光部を含む遮光構造体を有する、
太陽電池付き時計。
【請求項2】
前記位相差板は、該位相差板に対して直交する方向から入射した光にπ/2の位相差を与える、
請求項1に記載の太陽電池付き時計。
【請求項3】
前記複数の第1の遮光部は、前記偏光板の透過軸に対して45°傾斜した方向に延びている、
請求項1又は2に記載の太陽電池付き時計。
【請求項4】
前記複数の第1の遮光部は、3時側から9時側に延びている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の太陽電池付き時計。
【請求項5】
前記偏光板の透過軸は、6時側と9時側との間から、12時側と3時側との間に延びている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の太陽電池付き時計。
【請求項6】
前記位相差板の進相軸は、前記偏光板の透過軸に対して交差する方向に延びている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の太陽電池付き時計。
【請求項7】
前記位相差板の進相軸は、前記偏光板の透過軸に対して45°傾斜する方向に延びている、
請求項6に記載の太陽電池付き時計。
【請求項8】
前記遮光構造体は、前記第1の遮光部が延びる方向に交差する方向に延びる複数の第2の遮光部を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の太陽電池付き時計。
【請求項9】
前記第2の遮光部は、前記第1の遮光部が延びる方向に対して直交する方向に延びている、
請求項8に記載の太陽電池付き時計。
【請求項10】
前記遮光構造体は、透光板と、該透光板上に設けられる前記第1の遮光部とを含む、
請求項1~9のいずれか1項に記載の太陽電池付き時計。
【請求項11】
前記遮光構造体は、前記偏光板の視認側の面に接触して設けられている、
請求項1~10のいずれか1項に記載の太陽電池付き時計。
【請求項12】
透光板を用意する工程と、
前記透光板上に第1の遮光部を設ける工程と、
特定方向に偏光した光成分を透過する偏光板と、該偏光板よりも視認側の反対側に設けられており、透過する光に位相差を与える位相差板とを、前記透光板の視認側の反対側に設ける工程と、
前記位相差板の視認側の反対側に太陽電池を配置する工程と、
を有し、
前記第1の遮光部を設ける工程において、硬化性樹脂を塗布することにより前記第1の遮光部を形成する、
太陽電池付き時計の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池付き時計、及び太陽電池付き時計の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池付き時計においては、太陽電池に光を入射させるため、光透過性を有する文字板が用いられている。太陽電池は、独特の濃紫色を有しており、また複数のセルを区画する分割線を有している。そのため、文字板から太陽電池が透けて見えると美観を損なう可能性がある。そこで、例えば、特許文献1においては、光透過性を確保しつつ太陽電池を遮蔽するために、偏光板及び位相差板を文字板に設ける技術が開示されている。なお、例えば、特許文献2には、視角に応じて明度や色彩を調整可能とするために、文字板に遮光板を設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4948730号公報
【文献】特開昭50-93460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記特許文献1に開示される文字板においては、偏光板及び位相差板の特性により文字板を視認する方向によっては、太陽電池が視認されやすくなってしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、太陽電池における発電量を確保しつつ、太陽電池の遮蔽性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下の通りである。
【0007】
(1)特定方向に偏光した光成分を透過する偏光板と、該偏光板よりも視認側の反対側に設けられており、透過する光に位相差を与える位相差板とを、少なくとも含む文字板と、前記文字板を透過した光が入射されることにより発電する太陽電池と、を有し、前記文字板は、前記偏光板よりも視認側に設けられており、互いに離間して前記偏光板の透過軸に交差する 方向に延びると共に所定の高さを有する複数の第1の遮光部を含む遮光構造体を有する、太陽電池付き時計。
【0008】
(2)(1)において、前記位相差板は、該位相差板に対して直交する方向から入射した光にπ/2の位相差を与える、太陽電池付き時計。
【0009】
(3)(1)又は(2)において、前記複数の第1の遮光部は、前記偏光板の透過軸に対して45°傾斜した方向に延びている、太陽電池付き時計。
【0010】
(4)(1)~(3)のいずれかにおいて、前記複数の第1の遮光部は、3時側から9時側に延びている、太陽電池付き時計。
【0011】
(5)(1)~(4)のいずれかにおいて、前記偏光板の透過軸は、6時側と9時側との間から、12時側と3時側との間に延びている、太陽電池付き時計。
【0012】
(6)(1)~(5)のいずれかにおいて、前記位相差板の進相軸は、前記偏光板の透過軸に対して交差する方向に延びている、太陽電池付き時計。
【0013】
(7)(6)において、前記位相差板の進相軸は、前記偏光板の透過軸に対して45°傾斜する方向に延びている、太陽電池付き時計。
【0014】
(8)(1)~(7)のいずれかにおいて、前記遮光構造体は、前記第1の遮光部が延びる方向に交差する方向に延びる複数の第2の遮光部を含む、太陽電池付き時計。
【0015】
(9)(8)において、前記第2の遮光部は、前記第1の遮光部が延びる方向に対して直交する方向に延びている、太陽電池付き時計。
【0016】
(10)(1)~(9)のいずれかにおいて、前記遮光構造体は、透光板と、該透光板上に設けられる前記第1の遮光部とを含む、太陽電池付き時計。
【0017】
(11)(1)~(10)のいずれかにおいて、前記遮光構造体は、前記偏光板の視認側の面に接触して設けられている、太陽電池付き時計。
【0018】
(12)透光板を用意する工程と、前記透光板上に第1の遮光部を設ける工程と、特定方向に偏光した光成分を透過する偏光板と、該偏光板よりも視認側の反対側に設けられており、透過する光に位相差を与える位相差板とを、前記透光板の視認側の反対側に設ける工程と、前記位相差板の視認側の反対側に太陽電池を配置する工程と、を有し、前記第1の遮光部を設ける工程において、硬化性樹脂を塗布することにより前記第1の遮光部を形成する、太陽電池付き時計の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
上記本発明の(1)~(12)の側面によれば、太陽電池における発電量を確保しつつ、太陽電池の遮蔽性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る太陽電池付き時計を示す平面図である。
【
図3】本実施形態の文字板及び太陽電池の概要を示す断面図である。
【
図4】本実施形態における位相差板及び偏光板の配置の向きを模式的に示す平面図である。
【
図5】偏光板に対して傾斜する方向から光が入射された場合において、反射板において反射された光の強度を示すグラフである。
【
図6】本実施形態における遮光構造体を示す平面図である。
【
図7】本実施形態の第1の変形例における文字板及び太陽電池の概要を示す断面図である。
【
図8】第2の変形例における遮光構造体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態という)について図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る太陽電池付き時計を示す平面図である。
図2は、
図1のA-A切断線における断面図である。なお、
図2においては、後述の竜頭13の図示は省略しており、また、指針の配置を分かりやすくするため、分針16が9時側を向いており、時針15及び秒針17が3時側を向いている状態を示している。
【0023】
図1には、太陽電池付き時計1の外装ケース(時計ケース)である胴10、胴10内に配置された文字板14、時刻を示す指針である時針15、分針16、秒針17が示されている。また、文字板14には所定の位置に時字49が設けられている。また、胴10の12時側及び6時側の側面からは、バンドを固定するためのバンド固定部11が伸びている。また、胴10の3時側の側面にはユーザが種々の操作を行うためのボタン12、竜頭13が配置されている。
【0024】
なお、
図1に示した時計のデザインは一例である。ここで示したもの以外にも、例えば、胴10を丸型でなく角型にしてもよいし、ボタン12や竜頭13の有無、数、配置は任意である。また、本実施形態では、指針を時針15、分針16、秒針17の3本としているが、これに限定されず、秒針17を省略してもよいし、あるいは、曜日、タイムゾーンやサマータイムの有無、電波の受信状態や電池の残量、各種の表示を行う指針や、日付表示等を追加したりしてもよい。
【0025】
なお、本明細書では、太陽電池付き時計1として、GPS(Global Positioning System)衛星などの日付や時刻に関する情報を含む衛星信号を送信する衛星から当該衛星信号を受信し、それに含まれる日付や時刻に関する情報に基づき、時計内部に保持される内部時刻を修正する機能を有している衛星電波腕時計を示す。ただし、これに限られるものではなく、一般的な標準電波を受信して内部時刻を修正する電波時計であってもよいし、こうした時刻修正機能を備えない時計であってもよい。
【0026】
図2に示すように、太陽電池付き時計1は、文字板14を覆うようにガラス等の透明材料により形成された風防32を有し、風防32は胴10に取り付けられている。また、風防32の反対側においては裏蓋36が胴10に取り付けられている。
【0027】
本明細書では、以降、
図1における紙面手前側(
図2、
図3における上側)を視認側、
図1における紙面奥側(
図2、
図3における下側)を視認側の反対側と呼ぶ。また、各部材における視認側の面を視認面、視認側の反対側の面を裏面と呼ぶ。
【0028】
文字板14の視認側の反対側には、太陽電池30が配置されている。太陽電池30は、文字板14を透過して入射される光により発電する。そのため、文字板14はある程度光を透過する材質で形成される。
【0029】
本実施形態においては、
図1の破線で示すように、太陽電池30は概略円形をなし、10時方向から2時方向が扇状に切り欠かれている。そして、文字板14の視認側の反対側において、この切り欠かれた部分(太陽電池30が存在しない領域)に衛星信号を受信するためのパッチアンテナ20が配置されている。このように、パッチアンテナ20を、平面視において太陽電池30と重ならないように配置することにより、太陽電池30に含まれる電極によるパッチアンテナ20の受信感度への影響を抑制することができる。なお、電波を受信する機能を有しない時計においては、パッチアンテナ20等のアンテナは不要である。その場合、太陽電池30は扇状の切り欠きを有している必要はなく、平面形状が円形であるとよい。
【0030】
図2に示すように、太陽電池付き時計1は、さらに、太陽電池30の視認側の反対側に設けられるムーブメント38を有する。ムーブメント38は、指針を駆動するための輪列とモータ、時刻を計時する水晶振動子を含む時計回路、太陽電池付き時計1全体を制御するコントローラ等を地板と呼ばれる枠に一体に組み付けたものである。ムーブメント38は、ムーブメント38に取り付けられた蓄電池から電力を得て動作する。蓄電池は、ムーブメント38に電力を供給すると同時に、太陽電池30により発電された電力を蓄積するものであり、例えば、ボタン型のリチウム二次電池である。
【0031】
本実施形態においては、太陽電池30は、ムーブメント38に一体的に設けられている。また、ムーブメント38には指針軸が文字板14の上面から突出するように設けられており、その先端に秒針17、分針16、時針15が取り付けられている。そして、それらを覆うようにして風防32が胴10に固定されている。
【0032】
次に、
図3を参照して、本実施形態の文字板14の構成の詳細について説明する。
図3は、本実施形態の文字板及び太陽電池の概要を示す断面図である。また、
図3においては、文字板14に入射される光を矢印を用いて模式的に示している。また、
図3においては、図中の左側が6時側であり、図中の右側が12時側である。
【0033】
文字板14は、位相差板141と、位相差板141よりも視認側に設けられる偏光板142と、偏光板142よりも視認側に設けられる遮光構造体143とを含む。本実施形態においては、偏光板142の裏面に位相差板141の視認面が貼り付けられており、偏光板142の視認面に遮光構造体143が貼り付けられている例について説明する。
【0034】
位相差板141は、入射光に位相差を与える機能を備える板である。本実施形態においては、位相差板141として、位相差板141に対して直交する方向から入射された入射光にπ/2(λ/4)の位相差を与える機能を備える板を採用する。
【0035】
偏光板142は、特定方向に偏光した光だけを透過させる直線偏光板である。本実施形態おいては、偏光板142が、進行方向に対して直交するx軸方向に振動する直線偏光のみを透過させ、進行方向及びx軸方向に直交するy軸方向に振動する直線偏光を吸収する例について説明する。
【0036】
本実施形態においては、位相差板141と偏光板142とは、互いに重ねて設けられることにより、いわゆる円偏光板として機能している。
【0037】
遮光構造体143は、複数の第1の遮光部1431と、複数の透光部1432を含んでいる。複数の第1の遮光部1431と複数の透光部1432とは交互に配置されている。
【0038】
複数の第1の遮光部1431は、互いに離間して設けられており、所定の高さを有している。なお、所定の高さとは、文字板14の厚み方向における長さに対応するものである。第1の遮光部1431の高さを調整することにより、文字板14全体の厚さを0.5mm程度にするとよい。
【0039】
複数の透光部1432も同様に、互いに離間して設けられており、所定の高さを有している。透光部1432は、第1の遮光部1431よりも光透過性が高い材料からなるとよい。
【0040】
なお、
図3においては、遮光構造体143において第1の遮光部1431が占める割合と透光部1432が占める割合とがほぼ同じである例について示すが、これに限られるものではない。第1の遮光部1431が占める割合を大きくすることにより、太陽電池30の遮蔽性を向上することができ、一方で、透光部1432が占める割合を大きくすることにより、透過性を向上し、太陽電池30の発電量を向上することができる。
【0041】
ここで、
図3を参照して、文字板14に対して直交する方向から入射される光L1について説明する。遮光構造体143に含まれる透光部1432に入射された光L1は、透光部1432を透過し、偏光板142の視認面に入射される。
【0042】
偏光板142へ入射された光L1の一部は反射される。偏光板142において反射されなかった光のうちy軸方向に振動する直線偏光は、偏光板142において吸収される。一方、偏光板142において反射されなかった光のうちx軸方向に振動する直線偏光は、偏光板142を透過する。偏光板142を透過したx軸方向に振動する直線偏光は、位相差板141の視認面に入射される。
【0043】
位相差板141の視認面に入射された光L11は、位相差板141を透過すると共に、π/2(λ/4)の位相差が与えられる。これにより、位相差板141を透過した光は、円偏光となる。本実施形態においては、位相差板141を透過した光は右回り円偏光であるとする。位相差板141を透過した右回り円偏光L12は、空気層を通過して、太陽電池30へ入射される。
【0044】
太陽電池30へ入射された光L13の一部は太陽電池30に吸収されて発電に寄与し、他の一部(光L14)は太陽電池30の表面で反射される。太陽電池30へ入射された右回り円偏光は、太陽電池30の表面で反射されることにより、逆回りである左回り円偏光となる。
【0045】
太陽電池30の表面で反射された左回り円偏光は、空気層を通過して、位相差板141の裏面に入射される。位相差板141へ入射された光L14は、位相差板141を透過すると共に、π/2(λ/4)の位相差が与えられて、y軸方向に振動する直線偏光となる。
【0046】
さらに、位相差板141を透過した直線偏光L15は、偏光板142の裏面に入射される。偏光板142はy軸方向に振動する直線偏光を吸収するため、位相差板141を透過して偏光板142の裏面に入射された直線偏光L15は、偏光板142に吸収される。すなわち、太陽電池30の表面で反射された光は、文字板14の外部へ漏れ出さない。そのため、ユーザが、太陽電池30を視認することがない。これは、文字板14に対して直交する方向から光が入射された場合の例であり、文字板14の面に対して傾斜する方向から入射された光については、この限りではない。位相差板141が、位相差板141に直交する方向から光が入射された場合に、π/2(λ/4)の位相差を与えるように、その厚み(光路長)が設定されているためである。
【0047】
位相差板141に対して傾斜する方向から入射された光は、直交する方向から入射された光よりも、位相差板141を通過する際の光路長が長くなる。そのため、位相差板141に対して傾斜する方向から入射された光に対しては、π/2(λ/4)よりも大きい位相差を与えることとなる。
【0048】
そのため、偏光板142及び位相差板141を透過した光は、右回り円偏光ではなく、右回り楕円偏光となり、太陽電池30で反射した光は、左回り円偏光ではなく、左回り楕円偏光となってしまう。楕円偏光は、円偏光よりも一の方向における光成分が他の方向における光成分よりも大きくなった偏光である。当該一の方向における光成分は、偏光板142において吸収されず、偏光板142を透過して、文字板14の外部へ漏れ出してしまう。
【0049】
そのため、文字板14を正面方向からではなく、斜め方向から見たユーザは太陽電池30を視認してしまう可能性がある。太陽電池30は、独特の濃紫色を有しており、また、ソーラセルを区分する分割線を有する。そのような太陽電池30が、外部から視認されると、審美性が低下してしまう。以下、
図4、
図5を参照して、位相差板141及び偏光板142の性質について、さらに詳細に説明する。
【0050】
図4は、本実施形態における位相差板及び偏光板の配置を模式的に示す平面図である。なお、
図4においては、平面視における偏光板142の透過軸(偏光軸とも呼ばれる)に対する方位角θを示している。なお、方位角θは、時計回りか反時計回りかに関わらず、偏光板142の透過軸の延びる方向に対する角度とする。
【0051】
図4に示すように、本実施形態においては、偏光板142の透過軸に対して、位相差板141の進相軸が45°傾斜して配置されるように、偏光板142と位相差板141とを重ねて設けた。このような構成により、上述のように、円偏光板としての機能を発揮することとなる。
【0052】
図5は、偏光板に対して傾斜する方向から光が入射された場合において、反射板において反射されて外部に出射された出射光の強度を示すグラフであって、本出願の発明者が行ったシミュレーション結果を示している。本シミュレーションにおいては、本実施形態における位相差板141と偏光板142に相当する板を互いに重ねて設け、それらの視認側の反対側に反射板を配置した。なお、反射板は、本実施形態の太陽電池30の代わりに配置したものである。
【0053】
図5は、偏光板に対して傾斜する方向から光が入射された場合において、外部に漏れ出した光の強度を示すグラフであるといえる。外部に漏れ出した光の強度が大きい程、位相差板の視認側の反対側に設けられる部材が外部から視認されやすい。なお、
図5の縦軸は、外部に漏れ出した光の強度を示している。
図5の横軸は、反射板において反射されて外部に出射された出射光の出射角φを示している。なお、偏光板に対して照射された入射光の入射角と、反射板において反射されて外部に出射された出射光の出射角は等しく、共にφであるとする。
【0054】
本シミュレーションにおいては、平面視において偏光板の透過軸に対する方位角θが0°、45°、90°、又は135°であって、偏光板に対して傾斜する方向から波長が550nmの可視光を照射した場合における、外部に漏れ出した光の強度をそれぞれ計測した。
【0055】
偏光板に対して照射された入射光の入射角φに関わらず、偏光板の透過軸に対する方位角θが45°となる方向から光を照射した場合に、外部に漏れ出した光の強度が強い傾向にある。すなわち、
図5に示すように、偏光板の透過軸に対する方位角θが45°となる方向から光を照射した場合に、反射板において反射されて外部に出射された出射角φの出射光の強度が強い傾向にある。また、偏光板の透過軸に対する方位角θが135°となる方向から光を照射した場合においても、外部に漏れ出した光の強度が強い傾向にある。
【0056】
このように、反射板において反射されて、偏光板の透過軸に対する方位角が45°又は135°となる方向から外部に出射された出射光は、外部に漏れ出しやすい。すなわち、偏光板の透過軸に対する方位角が45°又は135°である方向から文字板14を見た場合に、太陽電池30で反射された反射光は文字板の外部に漏れやすく、太陽電池30の遮蔽性が低いといえる。なお、図示は省略するが、波長が450nm、650nmの光を照射させた場合においても、θ=0°、90°の場合と比較して、θ=45°、135°の場合の方が、強度の強い光が計測された。
【0057】
すなわち、
図4に示す配置を採用した場合、12時側、6時側、3時側、及び9時側から文字板14を見た場合に、太陽電池30が透けて見えやすい。
【0058】
そこで、本実施形態においては、遮光構造体143を設けることにより、12時側及び6時側から文字板14を見た際に、太陽電池30が透けて見えにくい構成を採用した。具体的には、偏光板142の透過軸に対して45°傾斜した方向に延びる複数の第1の遮光部1431を含む遮光構造体143を設けた。
【0059】
図3、
図4、
図6を参照して、遮光構造体143の構成の詳細について説明する。
図6は、本実施形態における遮光構造体を示す平面図である。
【0060】
遮光構造体143は、偏光板142よりも視認側に設けられている。また、遮光構造体143は、複数の第1の遮光部1431を含んでいる。
【0061】
また、本実施形態において、偏光板142を、その透過軸が12時側に対して45°時計回りさせた方向に延びるように設けた。すなわち、偏光板142の透過軸は、6時側と9時側との間から、12時側と3時側との間に延びている。
【0062】
そして、本実施形態においては、第1の遮光部1431を、3時側から9時側に延びるように設けた。すなわち、第1の遮光部1431を、偏光板142の透過軸が延びる方向に対して45°時計回りさせた方向に延びるように設けた(
図4、
図6参照)。
【0063】
図3に示すように、12時側から入射されると共に文字板14に対して傾斜する方向から入射された光L2(入射角φ)は、第1の遮光部1431に入射される。これは第1の遮光部1431が所定の高さを有するためである。光L2は、光透過性の低い第1の遮光部1431に入射されるため、太陽電池30まで到達しにくい。すなわち、文字板14に対して傾斜する方向であって12時側から光が入射された場合において、太陽電池30で反射する光の強度は小さくなる。すなわち、太陽電池30で反射されて外部に出射される出射角φの出射光の強度は小さく、ユーザが6時側から文字板14を見た場合において、太陽電池30を視認しにくくなる。なお、12時側から文字板14を視認した場合も同様である。
【0064】
本実施形態においては、6時側又は12時側から入射される光が太陽電池30に到達しにくい一方で、3時側又は9時側から入射される光は、遮光構造体143のうち透光部1432を透過して、太陽電池30に入射されやすい。そのため、本実施形態の文字板14においては、6時側及び12時側から見た際の太陽電池30の遮蔽性を向上できると共に、太陽電池30の発電量を確保することができる。
【0065】
また、本実施形態の文字板14においては、遮光構造体143が設けられることにより、文字板14を所望の厚みにできると共に、強度が向上し、反りや歪み等が発生することを抑制することができる。
【0066】
なお、
図1に示す時字49は、遮光構造体143の視認面に設けられているとよい。遮光構造体143を偏光板142の視認面に設ける前に、時字49を遮光構造体143の視認面に設けておくとよい。これにより、時字49を目印にして偏光板142に対する遮光構造体143の位置決めをすることができる。このため、製造工程において、周方向における遮光構造体143の向き(第1の遮光部1431の延びる方向と、偏光板142の透過軸が延びる方向との位置関係)を間違えることがない。
【0067】
なお、周方向における位相差板141、偏光板142、遮光構造体143の配置の関係は、
図4、
図6に示したものに限られるものではなく、第1の遮光部1431の延びる方向が、偏光板142の透過軸に交差する方向であればよい。すなわち、第1の遮光部1431の延びる方向は、偏光板142の透過軸に対して45°傾斜するものに限られるものではなく、少なくとも偏光板142の透過軸と平行でなければよい。
【0068】
また、上述のように、位相差板141と偏光板142とを
図4に示す配置とした場合、12時側、6時側、3時側、及び9時側から文字板14を見た場合に、太陽電池30が透けて見えやすい。そのため、第1の遮光部1431の延びる方向が、12時側から6時側に延びる方向になるように、遮光構造体143を設けてもよい。
【0069】
また、例えば、偏光板142の透過軸が延びる方向を9時側から3時側とした場合、第1の遮光部1431が延びる方向を、12時側と9時側の間から、3時側と6時側の間に延びる方向とするとよい。
【0070】
また、第1の遮光部1431は、
図6に示すようにストライプ状に設けられるものに限られず、例えば、円形状に設けられていてもよい。すなわち、第1の遮光部1431は、少なくとも一部が偏光板142の透過軸に対して交差するように設けられていればよい。
【0071】
次に、
図7を参照して、本実施形態の第1の変形例について説明する。
図7は、本実施形態の第1の変形例における文字板及び太陽電池の概要を示す断面図である。
【0072】
第1の変形例においては、遮光構造体143は、透光板1433と、第1の遮光部1431とを含む。遮光部1431は、
図3、
図6で示したものと同様である。透光板1433は、偏光板142の視認面に貼り付けられている。また、第1の遮光部1431は、透光板1433の視認面上に設けられている。また、複数の第1の遮光部1431は互いに離間して設けられており、第1の遮光部1431間は間隙となっている。なお、第1の遮光部1431は、例えば、着色顔料を含む材料からなるとよい。
【0073】
なお、
図7においては、透光板1433の視認面に第1の遮光部1431が設けられる例について示すが、これに限られるものではなく、透光板1422の裏面に第1の遮光部1431が設けられていてもよい。
【0074】
次に、本実施形態の第1の変形例における太陽電池付き時計の製造方法の一例について説明する。まず、透光板1433の視認面上に第1の遮光部1431を設ける。また、偏光板142と、偏光板142よりも視認側の反対側に設けられる位相差板141とを、透光板1433の視認側の反対側に設ける。より具体的には、位相差板141の視認面を偏光板142の裏面に貼り付け、偏光板142の視認面を透光板1433の裏面に貼り付ける。その後、位相差板141の視認側の反対側に太陽電池30を配置する。
【0075】
第1の遮光部1431を設ける工程においては、まず、透光板1433を用意する。そして、例えば、インクジェット技術を用いて、透光板1433の視認面上に第1の遮光部1431を設けるとよい。具体的には、透光板1433の視認面上に、第1の遮光部1431を構成する硬化性樹脂を吐出するとよい。このようにインクジェット技術を用いることにより、第1の遮光部1431のパターンを容易かつ位置精度高く形成することができる。
【0076】
図8を参照して、本実施形態の第2の変形例について説明する。
図8は、本実施形態の第2の変形例における遮光構造体を示す平面図である。なお、第2の変形例においては、位相差板141及び偏光板142の構成や配置は、
図3、
図4で示したものと同様とする。
【0077】
第2の変形例においては、遮光構造体243は、
図3、
図6で示した遮光構造体143の視認面側にさらに第2の遮光部2431を含む構成である。第2の遮光部2431は、
図8に示すように、12時側から6時側に延びるように、互いに離間して複数設けられている。すなわち、第2の遮光部2431は、第1の遮光部1431が延びる方向に対して直交する方向に延びるように設けられている。
【0078】
また、第2の遮光構造体243は、複数の第2の遮光部2431間であって、互いに離間して設けられる複数の透光部2432を含んでいるとよい。透光部2432は、第2の遮光部2431よりも光透過性が高い材料からなるとよい。
【0079】
第2の遮光部2431が設けられることにより、ユーザは、6時側又は12時側から文字板14を視認した場合のみでなく、3時側又は9時側から文字板14を視認した場合にも太陽電池30を視認しにくくなる。
【0080】
第2の変形例においては、文字板14に対して傾斜する方向であればいずれの方向から視認された場合であっても、太陽電池30が遮蔽されやすくなる。すなわち、文字板14の審美性の低下が抑制されることになる。
【0081】
なお、第2の遮光部2431が延びる方向は、第1の遮光部1431が延びる方向に対して直交するものに限られず、少なくとも、第1の遮光部1431が延びる方向に対して交差するものであるとよい。
【0082】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、この実施形態に示した具体的な構成は一例として示したものであり、本発明の技術的範囲をこれに限定することは意図されていない。当業者は、これら開示された実施形態を適宜変形してもよく、本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。
【符号の説明】
【0083】
1 太陽電池付き時計、10 胴、11 バンド固定部、12 ボタン、13 竜頭、14 文字板、141 位相差板、142 偏光板、143,243 遮光構造体、1431 第1の遮光部、1432 透光部、1433 透光板、第2の遮光部 2431、2432 透光部、15 時針、16 分針、17 秒針、20 パッチアンテナ、30 太陽電池、32 風防、36 裏蓋、38 ムーブメント、49 時字。