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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】飛行装置、およびバラシュート装置
(51)【国際特許分類】
   B64D 17/72 20060101AFI20230303BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
B64D17/72
B64C39/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020020714
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021126910
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】酒本 譲
(72)【発明者】
【氏名】下久 昌司
(72)【発明者】
【氏名】持田 佳広
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193055(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0016468(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 17/00-17/80
B64C 39/02
B64C 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体ユニットと、
前記機体ユニットに接続され、揚力を発生する揚力発生部と、
前記揚力発生部を制御する飛行制御部と、
パラシュートと、
前記機体ユニットに設けられ、前記パラシュートを収容するパラシュート収容部と、
前記パラシュートに連結された複数の飛翔体と、
前記飛翔体毎に設けられ、対応する前記飛翔体を保持し、保持した前記飛翔体を射出するための複数の射出部と、
飛行時の異常を検出する異常検出部と、
前記異常検出部による異常の検出に応じて、前記飛翔体を前記射出部から射出させる落下制御部と
風上判定閾値を記憶する記憶部と、を備え、
前記落下制御部は、前記複数の射出部のうち少なくとも1つの前記射出部の前記飛翔体を優先して射出し、
前記落下制御部は、前記複数の射出部のうち第1の射出部群を特定し、前記第1の射出部群の前記飛翔体を優先して射出し、
前記落下制御部は、前記機体ユニットの最も風上の位置と各前記射出部の位置との間の距離を算出し、前記距離が前記風上判定閾値以下である前記射出部を前記第1の射出部群として特定する
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項2】
請求項1に記載の飛行装置において、
前記落下制御部は、前記機体ユニットの地上から最も遠い位置に配置された前記射出部の前記飛翔体を優先して射出する
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項3】
請求項に記載の飛行装置において、
前記落下制御部は、前記機体ユニットの地上から最も遠い位置と各前記射出部の位置に基づいて、前記第1の射出部群を特定し、前記第1の射出部群の前記飛翔体を優先して射出する
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか一項に記載の飛行装置において、
前記落下制御部は、前記飛翔体を優先して射出した後に、残りの前記射出部の前記飛翔体を射出する
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか一項に記載の飛行装置において、
前記落下制御部は、前記飛翔体を優先して射出した後に、残りの前記射出部の前記飛翔体を時間をずらして射出する
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項6】
請求項1に記載の飛行装置において、
風向を検出するセンサ部を更に備え、
前記落下制御部は、
前記センサ部の検出結果と各前記射出部の位置に基づいて、前記第1の射出部群を特定し、前記第1の射出部群の前記飛翔体を最初に射出する
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項7】
請求項に記載の飛行装置において、
前記機体ユニットの傾きを検出するセンサ部を更に備え、
前記落下制御部は、
前記センサ部の検出結果と各前記射出部の位置に基づいて、前記第1の射出部群を特定し、前記第1の射出部群の前記飛翔体を最初に射出する
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項8】
パラシュートと、
機体ユニットに設けられ、前記パラシュートを収容するパラシュート収容部と、
前記パラシュートに連結された複数の飛翔体と、
前記飛翔体毎に設けられ、対応する前記飛翔体を保持し、保持した前記飛翔体を射出するための複数の射出部と、
飛行時の異常を検出する異常検出部と、
前記異常検出部による異常の検出に応じて、前記飛翔体を前記射出部から射出させる落下制御部と、
風上判定閾値を記憶する記憶部と、を備え、
前記落下制御部は、前記複数の射出部のうち少なくとも1 つの前記射出部の前記飛翔体を優先して射出し、
前記落下制御部は、前記複数の射出部のうち第1の射出部群を特定し、前記第1の射出部群の前記飛翔体を優先して射出し、
前記落下制御部は、前記機体ユニットの最も風上の位置と各前記射出部の位置との間の距離を算出し、前記距離が前記風上判定閾値以下である前記射出部を前記第1の射出部群として特定する
ことを特徴とするパラシュート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行装置に関し、例えば、遠隔操作および自律飛行が可能な、マルチロータの回転翼機型の飛行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠隔操作および自律飛行が可能な、マルチロータの回転翼機型の飛行装置(以下、単に「回転翼機」とも称する。)の産業分野への実用化が検討されている。例えば、運送業において、回転翼機(所謂ドローン)による荷物の輸送や旅客の輸送等が検討されている。
【0003】
輸送用の回転翼機は、GPS(Global Positioning System)信号等によって自己の位置を特定しながら飛行する自律飛行機能を備えている。しかしながら、何らかの原因で回転翼機に異常が発生した場合、自律飛行ができなくなり、回転翼機の落下等の事故が発生するおそれがある。そのため、回転翼機の安全性の向上が望まれている。
【0004】
特に、輸送用の回転翼機は、今後、より大きな荷物や、旅客を輸送できるように機体の大型化が進むと予想される。このような大型の回転翼機が何らかの原因で制御不能に陥って落下した場合、これまでの回転翼機に比べて、人や構造物に甚大な被害を与えるおそれがある。そのため、回転翼機の大型化を図る場合には、これまで以上に安全性を重視する必要がある。
【0005】
そこで、本願発明者らは、回転翼機の安全性を向上させるために、例えば下記特許文献に開示されているような飛翔体用のパラシュートを回転翼機に取り付けることを検討した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4785084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の飛翔体用のパラシュートは、飛翔時に発生する気流によりパラシュートが開傘しやすいように設計されているため、上空において静止している状態から落下する時などのように、すぐに気流の効果を得られない場合に、パラシュートが直ちに開傘しないおそれがあることが発明者らの検討により明らかとなった。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、飛行装置の飛行時または落下時における気流の効果がすぐに得られない場合であっても、素早く確実にパラシュートを開傘可能な飛行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の代表的な実施の形態に係る飛行装置は、機体ユニットと、前記機体ユニットに接続され、揚力を発生する揚力発生部と、前記揚力発生部を制御する飛行制御部と、パラシュートと、前記機体ユニットに設けられ、前記パラシュートを収容するパラシュート収容部と、前記パラシュートに連結された複数の飛翔体と、前記飛翔体毎に設けられ、対応する前記飛翔体を保持し、保持した前記飛翔体を射出するための複数の射出部と、飛行時の異常を検出する異常検出部と、前記異常検出部による異常の検出に応じて、前記飛翔体を前記射出部から射出させる落下制御部と、を備え、前記落下制御部は、前記複数の射出部のうち少なくとも1つの前記射出部の前記飛翔体を優先して射出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、飛行装置の飛行時または落下時における気流の効果がすぐに得られない場合であっても、素早く確実にパラシュートを開傘することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る飛行装置の外観を模式的に示す図である。
図2】実施の形態1に係る飛行装置に搭載されるパラシュート装置の構成を模式的に示す図である。
図3】パラシュートが開いた状態を模式的に示す図である。
図4】実施の形態1に係る飛行装置の機能ブロック図である。
図5】実施の形態1に係る飛行装置による落下準備処理の流れを示すフローチャートである。
図6】実施の形態1に係る飛行装置による異常検知の流れを示すフローチャートである。
図7】実施の形態1に係るパラシュート開傘制御(ステップS5)の流れを示すフローチャートである。
図8A】パラシュート装置が3つの射出部を備えている場合における飛翔体の射出手順を説明するための図である。
図8B】パラシュート装置が4つの射出部を備えている場合における飛翔体の射出手順を説明するための図である。
図8C】パラシュート装置が6つの射出部を備えている場合における飛翔体の射出手順を説明するための図である。
図8D】パラシュート装置が8つの射出部を備えている場合における飛翔体の射出手順を説明するための図である。
図9】第1の射出部群と第2の射出部群に分けて飛翔体を射出した場合におけるパラシュートの開傘の様子を模式的に示す図である。
図10】実施の形態1に係る飛行装置のパラシュートが開いた状態を模式的に示す図である。
図11】実施の形態2に係る飛行装置の機能ブロック図である。
図12】実施の形態2に係るパラシュート開傘制御(ステップS5)の流れを示すフローチャートである。
図13A】飛翔体の射出時の機体ユニットの状態を模式的に示す図である。
図13B】飛翔体の射出時の機体ユニットの状態を模式的に示す図である。
図14】別の実施の形態に係るパラシュート装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0013】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る飛行装置(1,1A,1B)は、機体ユニット(2)と、前記機体ユニットに接続され、揚力を発生する揚力発生部(3)と、前記揚力発生部を制御する飛行制御部(14)と、パラシュート(400)と、前記機体ユニットに設けられ、前記パラシュートを収容するパラシュート収容部(40)と、前記パラシュートに連結された複数の飛翔体(43)と、前記飛翔体毎に設けられ、対応する前記飛翔体を保持し、保持した前記飛翔体を射出するための複数の射出部(41)と、飛行時の異常を検出する異常検出部(15)と、前記異常検出部による異常の検出に応じて、前記飛翔体を前記射出部から射出させる落下制御部(16,16A,16B)とを備え、前記落下制御部は、前記複数の射出部のうち少なくとも1つの前記射出部の前記飛翔体を優先して射出することを特徴とする。
【0014】
〔2〕上記飛行装置において、前記落下制御部は、前記機体ユニットの最も風上の位置に配置された前記射出部の前記飛翔体を優先して射出してもよい。
【0015】
〔3〕上記飛行装置において、前記落下制御部は、前記機体ユニットの最も風上の位置と各前記射出部の位置とに基づいて、第1の射出部群を特定し、前記第1の射出部群の前記飛翔体を優先して射出してもよい。
【0016】
〔4〕上記飛行装置において、前記落下制御部は、前記機体ユニットの地上から最も遠い位置に配置された前記射出部の前記飛翔体を優先して射出してもよい。
【0017】
〔5〕上記飛行装置において、前記落下制御部は、前記機体ユニットの地上から最も遠い位置と各前記射出部の位置に基づいて、第1の射出部群を特定し、前記第1の射出部群の前記飛翔体を優先して射出してもよい。
【0018】
〔6〕上記飛行装置において、前記落下制御部は、前記飛翔体を優先して射出した後に、残りの前記射出部の前記飛翔体を射出してもよい。
【0019】
〔7〕上記飛行装置において、前記落下制御部は、前記飛翔体を優先して射出した後に、残りの前記射出部の前記飛翔体を時間をずらして射出してもよい。
【0020】
〔8〕上記飛行装置は、風向を検出するセンサ部(12,28)を更に備え、前記落下制御部は、前記センサ部の検出結果と各前記射出部の位置に基づいて、前記第1の射出部群を特定し、前記第1の射出部群の前記飛翔体を最初に射出してもよい。
【0021】
〔9〕上記飛行装置において、前記機体ユニットの傾きを検出するセンサ部(12,24,27)を更に備え、前記落下制御部は、前記センサ部の検出結果と各前記射出部の位置に基づいて、前記第1の射出部群を特定し、前記第1の射出部群の前記飛翔体を最初に射出してもよい。
【0022】
〔10〕本発明の代表的な実施の形態に係るパラシュート装置(4,4A,4B)は、
パラシュート(400)と、機体ユニット(2,2A)に設けられ、前記パラシュートを収容するパラシュート収容部(40)と、前記パラシュートに連結された複数の飛翔体(43)と、前記飛翔体毎に設けられ、対応する前記飛翔体を保持し、保持した前記飛翔体を射出するための複数の射出部(41)と、飛行時の異常を検出する異常検出部(15,15B)と、前記異常検出部による異常の検出に応じて、前記飛翔体を前記射出部から射出させる落下制御部(16,16A,16B)と、を備え、前記落下制御部は、前記複数の射出部のうち少なくとも1つの前記射出部の前記飛翔体を優先して射出する。
【0023】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0024】
≪実施の形態1≫
図1は、実施の形態1に係るパラシュート装置を搭載した飛行装置の外観を模式的に示す図である。図1に示される飛行装置1は、例えば、3つ以上のロータを搭載したマルチロータの回転翼機型の飛行装置であり、所謂ドローンである。
【0025】
図1に示すように、飛行装置1は、機体ユニット2、揚力(推進力)発生部3_1~3_n(nは3以上の整数)、パラシュート装置4、報知装置5、およびアーム部6を備えている。
【0026】
機体ユニット2は、飛行装置1の本体部分である。機体ユニット2は、後述のように、飛行装置1の飛行を制御するための各種機能部を収容している。なお、図1では、一例として円柱状の機体ユニット2を図示しているが、機体ユニット2の形状は特に制限されない。
【0027】
揚力発生部3_1~3_nは、揚力を発生するロータである。なお、以下の説明において、各揚力発生部3_1~3_nを特に区別しない場合には、単に、「揚力発生部3」と表記する。飛行装置1が備える揚力発生部3の個数は特に制限されないが、3つ以上であることが好ましい。例えば、飛行装置1は、3つの揚力発生部3を備えたトライコプター、4つの揚力発生部3を備えたクワッドコプター、6つの揚力発生部を備えたヘキサコプター、および8つの揚力発生部3を備えたオクトコプターなどの何れであってもよい。
【0028】
なお、図1では、飛行装置1が4つ(n=4)の揚力発生部3_1~3_4を搭載したクワッドコプターである場合を一例として図示している。
【0029】
揚力発生部3は、例えば、プロペラ30と、プロペラ30を回転させるモータ31とを、筒状の筐体32に収容した構造を有している。筒状の筐体32の開口部には、プロペラ30との接触を防止するための網(例えば、樹脂材料や金属材料(ステンレス鋼等)等)が設けられていてもよい。
【0030】
アーム部6は、機体ユニット2と各揚力発生部3とを連結するための構造体である。アーム部6は、機体ユニット2から、例えば、機体ユニット2の中心軸Oを中心として放射状に突出して形成されている。各アーム部6の先端には、揚力発生部3がそれぞれ取り付けられている。
【0031】
報知装置5は、飛行装置1の外部に危険を知らせるための装置である。報知装置5は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等から成る光源や音声発生装置(アンプおよびスピーカ等)を含んで構成されている。報知装置5は、後述する異常検出部15による異常の検出に応じて、飛行装置1が危険な状態であることを、光や音声によって外部に報知する。
【0032】
なお、報知装置5は、機体ユニット2の外部に露出していてもよいし、光源から発生した光やスピーカから発生した音声等を外部に出力可能な形態で機体ユニット2の内部に収容されていてもよい。
【0033】
パラシュート装置4は、飛行装置1に異常が発生し、落下のおそれがある場合に、飛行装置1の落下速度を緩やかにして、飛行装置1を安全に落下させるための装置である。パラシュート装置4は、飛行装置1の機体ユニット2に設けられる。例えば図1に示すように、パラシュート装置4は、機体ユニット2の上面、すなわち飛行中の機体ユニット2において地面と反対側の面上に設置されている。
【0034】
図2は、パラシュート装置4の構成を模式的に示す図である。同図には、パラシュート装置4の側断面が示されている。
図3は、パラシュート装置4のパラシュート400が開いた状態を模式的に示す図である。
【0035】
パラシュート装置4は、パラシュート400、パラシュート収容部40、射出部41、射出制御部42、および飛翔体43を備えている。図3に示すように、パラシュート400は、傘体(キャノピー)406、および傘体406とパラシュート収容部40(パラシュート取り付け部404)とを連結する吊索407を有している。
【0036】
傘体406は、連結索46によって飛翔体43と連結されている。例えば、図3に示すように、連結索46は、傘体406の頂点よりもエッジ(周縁)側において、傘体406と接続されている。より具体的には、各連結索46は、パラシュート400の周縁部に互いに離間してそれぞれ接続されている。例えば、図3に示すように、パラシュート400が開いたときの頂点側から見たときのパラシュート400の形状が円形状である場合には、各連結索46は、パラシュート400の周縁部の円周方向に沿って等間隔に接続される。
【0037】
なお、飛翔体43が1つのみ設けられる場合は、連結索46は、パラシュート400の周縁部に接続されていればよい。この場合、連結索46が接続されるパラシュート400の周縁部上の位置については、特に制限されない。
【0038】
連結索46は、例えば、金属材料(例えばステンレス鋼)、または、繊維材料(例えば、ナイロン紐)から構成されている。
【0039】
例えば、飛行装置1を低速で落下させるために必要な傘体406の直径Dは、下記式(1)に基づいて算出することができる。式(1)において、mは飛行装置1の総重量、vは飛行装置1の落下速度、ρは空気密度、Cdは抵抗係数である。
【0040】
【数1】
【0041】
例えば、飛行装置1の総重量m=250〔kg〕、抵抗係数Cd=0.9、空気密度ρ=1.3kg/mとしたとき、飛行装置1の落下速度vを5〔m/s〕とするために必要な傘体406の直径Dは、式(1)より14.6〔m〕と算出される。
【0042】
例えば図2に示すように、パラシュート400は、その使用前において、傘体406が折り畳まれた状態でパラシュート収容部40に収容されている。
【0043】
パラシュート収容部40は、パラシュート400を収容する容器である。パラシュート収容部40は、例えば樹脂から構成されている。図1に示すように、パラシュート収容部40は、機体ユニット2の上面、すなわち飛行装置1の飛行時において地面と反対側の面に設定されている。例えば、パラシュート収容部40は、機体ユニットの上面において、機体ユニット2の中心軸Oとパラシュート収容部40の中心軸Pとが重なるように設置されていることが好ましい。
【0044】
図2に示すように、パラシュート収容部40は、例えば、一端が開口し、他端が有底の筒形状を有する。具体的に、パラシュート収容部40は、例えば円筒状の側壁部401と、側壁部401の一端側の開口を塞ぐように形成された底部402とを有する。
【0045】
側壁部401と底部402とによって、パラシュート400を収容するための収容空間403が画成されている。なお、側壁部401と底部402とは、それぞれ個別に形成されて接合されていてもよいし、一体形成されていてもよい。
【0046】
図3に示すように、底部402には、パラシュート収容部40とパラシュート400とを連結するためのパラシュート取り付け部404が設けられている。例えば、パラシュート400の吊索407の一端がパラシュート取り付け部404に連結されることにより、パラシュート400とパラシュート収容部40とが連結される。
【0047】
なお、パラシュート収容部40には、パラシュート400を収容空間403に収容した状態で側壁部401の開口した一端側を覆う蓋が設けられていてもよい。
【0048】
飛翔体43は、パラシュート400をパラシュート収容部40の外部に放出し、パラシュート400の開傘(展開)を補助するための装置である。飛翔体43は、例えばガスを噴射することによって推力を得る。飛翔体43は、上述したように連結索46を介して、パラシュート400と連結されている。
【0049】
パラシュート装置4は、複数の飛翔体43を備えている。例えば、パラシュート装置4は、3つ以上の飛翔体43を備えていることが好ましい。図1には、パラシュート装置4が3つの飛翔体を備えている場合が例示されている。なお、飛翔体43の具体的な構成については後述する。
【0050】
射出部41は、飛翔体43を保持し、保持している飛翔体43を射出するため装置である。射出部41は、飛翔体43毎に設けられている。本実施の形態に係るパラシュート装置4は、3つの飛翔体43を別々に収容するために、3つの射出部41を備えている。
図1および図2に示すように、射出部41は、一端が開口し、他端が有底の筒状(例えば円筒状)に形成されている。具体的に、射出部41は、例えば円筒状の側壁部411と、側壁部411の一端を覆う底部412とを有する。側壁部411と底部412とは、飛翔体43を収容するための収容空間を画成している。側壁部411および底部412は、例えば樹脂から構成されている。
【0051】
各射出部41は、パラシュート収容部40に設けられている。具体的には、図2等に示すように、各射出部41は、側壁部411における底部412と反対側の端部に形成された開口部である射出口413がパラシュート収容部40の開口した一端側を向くようにパラシュート収容部40の外周面にそれぞれ接合されている。
【0052】
また、各射出部41は、パラシュート収容部40の中心軸Pを中心とした回転方向において等間隔に配置されている。例えば、本実施の形態のように飛翔体43および射出部41が3つある場合には、各射出部41は、パラシュート収容部40の中心軸Pを中心とした回転方向に120°(=360°/3)間隔で配置される。
【0053】
飛翔体43は、ガス発生装置45と飛翔体本体部44とを有する。図2に示すように、飛翔体43は、飛翔体本体部44の一端側が射出部41の内部に挿入され、且つ、射出部41の内部においてガス発生装置45が射出部41の底部412と対面した状態で、配置されている。
【0054】
ガス発生装置45は、飛翔体43を射出部41の射出口413から外部に射出するための推力の基になるガスを発生する装置である。ガス発生装置45は、射出部41と飛翔体本体部44とによって画成される内部空間440に配置されている。ガス発生装置45は、例えば、点火薬およびガス発生剤を有する。
【0055】
ガス発生装置45は、リード線(導線)47を介して、後述する射出制御部42と電気的に接続されている。ガス発生装置45は、射出制御部42から出力された点火信号に応じて点火薬に点火して、ガス発生剤を化学的に反応させることにより、ガスを発生させる。
【0056】
飛翔体本体部44は、ガス発生装置45を保持するとともに、連結索46と連結される部品である。飛翔体本体部44は、例えば、棒状に形成されている。より具体的には、飛翔体本体部44は、例えば一部が中空の円柱状に形成されている。飛翔体本体部44は、射出部41と係合されている。
【0057】
飛翔体本体部44は、一端においてガス発生装置45を保持し、他端において連結索46と連結されている。飛翔体本体部44は、例えば、樹脂から構成されている。
【0058】
射出制御部42は、各射出部41に保持されている飛翔体43を射出するための制御を行う機能部である。射出制御部42は、例えば、落下制御部16からパラシュート400の開傘を指示する制御信号に応じて、点火信号を出力する。点火信号は、リード線47を介して各飛翔体43に設けられたガス発生装置45の点火部(図示せず)にそれぞれ入力され、点火部は、入力された点火信号に応じて点火薬を点火する。
【0059】
次に、機体ユニット2に収容されている各機能部について説明する。
図4は、実施の形態1に係る飛行装置1の機能ブロック図である。
【0060】
図4に示すように、機体ユニット2は、電源部11、センサ部12、モータ駆動部13_1~13_n(nは3以上の整数)、飛行制御部14、異常検出部15、落下制御部16、通信部17、および記憶部18を含む。
【0061】
これらの機能部のうち、飛行制御部14、異常検出部15、および落下制御部16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等の記憶装置を含むマイクロコントローラ等のプログラム処理装置によるプログラム処理と周辺回路(ハードウェア資源)との協働によって実現される。
【0062】
電源部11は、バッテリ22と電源回路23とを含む。バッテリ22は、例えば二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)である。電源回路23は、バッテリ22の出力電圧に基づいて電源電圧を生成し、上記機能部を実現する各ハードウェアに供給する回路である。電源回路23は、例えば複数のレギュレータ回路を含み、上記ハードウェア毎に適切な大きさの電源電圧を供給する。
【0063】
センサ部12は、飛行装置1の状態を検知する機能部である。センサ部12は、飛行装置1の機体の傾きや周囲環境における風量や風向き等を検出する。例えば、センサ部12は、角速度センサ24と、加速度センサ25と、磁気センサ26と、角度算出部27と、風量センサ28と含む。
【0064】
角速度センサ24は、角速度(回転速度)を検出するセンサである。例えば、角速度センサ24は、x軸、y軸、およびz軸の3つの基準軸に基づいて角速度を検出する3軸ジャイロセンサである。
【0065】
加速度センサ25は、加速度を検出するセンサである。例えば、加速度センサ25は、x軸、y軸、およびz軸の3つの基準軸に基づいて加速度を検出する3軸加速度センサである。
【0066】
磁気センサ26は、地磁気を検出するセンサである。例えば、磁気センサ26は、x軸、y軸、およびz軸の3つの基準軸に基づいて方位(絶対方向)を検出する3軸地磁気センサ(電子コンパス)である。
【0067】
角度算出部27は、角速度センサ24および加速度センサ25の少なくとも一方の検出結果に基づいて、飛行装置1の機体の傾きを算出する。ここで、飛行装置1の機体の傾きとは、地面(水平方向)に対する機体(機体ユニット2)の角度のことである。
【0068】
例えば、角度算出部27は、角速度センサ24の検出結果に基づいて、地面に対する機体の角度を算出してもよいし、角速度センサ24および加速度センサ25の検出結果に基づいて、地面に対する機体の角度を算出してもよい。なお、角速度センサ24や加速度センサ25の検出結果を用いた角度の算出方法は、公知の計算式を用いてもよい。
【0069】
また、角度算出部27は、角速度センサ24および加速度センサ25の少なくとも一方の検出結果に基づいて算出した角度を、磁気センサ26の検出結果に基づいて補正してもよい。
【0070】
風量センサ28は、風量および風向きを検出するセンサである。
【0071】
なお、センサ部12は、上述した各種センサに加えて、例えば、気圧センサ、超音波センサ、GPS受信機、およびカメラ等を含んでもよい。
【0072】
通信部17は、外部装置9と通信を行うための機能部である。ここで、外部装置9は、飛行装置1の動作を制御し、飛行装置1の状態を監視する送信機やサーバ等である。通信部17は、例えば、アンテナおよびRF(Radio Frequency)回路等によって構成されている。通信部17と外部装置9との間の通信は、例えば、ISMバンド(2.4GHz帯)の無線通信によって実現される。
【0073】
通信部17は、外部装置9から送信された飛行装置1の操作情報を受信して飛行制御部14に出力するとともに、センサ部12によって計測された各種計測データ等を外部装置9へ送信する。また、通信部17は、異常検出部15によって飛行装置1の異常が検出された場合に、飛行装置1に異常が発生したことを示す情報を外部装置9に送信する。また、通信部17は、飛行装置1が地上に落下した場合に、飛行装置1が落下したことを示す情報を外部装置9に送信する。更に、通信部17は、パラシュート400を開傘させたときにパラシュート400を開傘する制御を実行したことを示す情報を外部装置9に送信する。
【0074】
モータ駆動部13_1~13_nは、揚力発生部3毎に設けられ、飛行制御部14からの指示に応じて、駆動対象のモータ31を駆動する機能部である。
【0075】
なお、以下の説明において、各モータ駆動部13_1~13_nを特に区別しない場合には、単に、「モータ駆動部13」と表記する。
【0076】
モータ駆動部13は、飛行制御部14から指示された回転数でモータ31が回転するように、モータ31を駆動する。例えば、モータ駆動部13は、ESC(Electronic Speed Controller)である。
【0077】
飛行制御部14は、飛行装置1の各機能部を統括的に制御する機能部である。
飛行制御部14は、飛行装置1が安定して飛行するように揚力発生部3を制御する。具体的に、飛行制御部14は、通信部17によって受信した外部装置9からの操作情報(上昇や下降、前進や後退等の指示)と、センサ部12の検出結果とに基づいて、機体が安定した状態で所望の方向に飛行するように、各揚力発生部3のモータ31の適切な回転数を算出し、算出した回転数を各モータ駆動部13にそれぞれ指示する。
【0078】
飛行制御部14は、例えば風等の外部からの影響によって機体の姿勢が乱れた場合に、角速度センサ24の検出結果に基づいて、機体が水平になるように、各揚力発生部3のモータ31の適切な回転数をそれぞれ算出し、算出した回転数を各モータ駆動部13にそれぞれ指示する。
【0079】
また、例えば、飛行制御部14は、飛行装置1のホバリング時に飛行装置1のドリフトを防止するために、加速度センサ25の検出結果に基づいて各揚力発生部3のモータ31の適切な回転数を算出し、算出した回転数を各モータ駆動部13にそれぞれ指示する。
【0080】
また、飛行制御部14は、通信部17を制御して、外部装置9との間で上述した各種データの送受信を実現する。
【0081】
記憶部18は、飛行装置1の動作を制御するための各種プログラムやパラメータ等を記憶するための機能部である。例えば、記憶部18は、フラッシュメモリおよびROM等の不揮発性メモリやRAM等から構成されている。
【0082】
記憶部18に記憶される上記パラメータは、例えば、後述する残容量閾値180、傾き閾値181、故障モータ数閾値182、落下判定閾値183、および風上判定閾値184である。
【0083】
異常検出部15は、飛行時の異常を検出する機能部である。具体的に、異常検出部15は、センサ部12の検出結果と、バッテリ22の状態と、揚力発生部3の動作状態とを監視し、飛行装置1が異常状態であるか否かを判定する。
【0084】
ここで、異常状態とは、飛行装置1の自律飛行が不可能になるおそれがある状態(自律飛行が不可能な状態も含む)を言う。例えば、揚力発生部3が故障したこと(故障した揚力発生部3の個数が故障モータ数閾値182を超えたこと)、バッテリ22の残容量が所定の閾値よりも低下したこと、機体(機体ユニット2)が異常に傾いたこと、および機体が落下していることの少なくとも一つが発生した状態を異常状態と言う。
【0085】
異常検出部15は、揚力発生部3(モータ)の故障を検出した場合に、飛行装置1が異常状態であると判定する。ここで、揚力発生部3の故障とは、例えば、飛行制御部14が指定した回転数でモータ31が回転しないこと、プロペラ30が回転しないこと、およびプロペラ30が破損したこと等を言う。
【0086】
具体的に、異常検出部15は、故障した揚力発生部3(モータ31)の数をカウントし、故障モータ数が故障モータ数閾値182以上になった場合に、飛行装置1が異常状態であると判定する。故障モータ数閾値182は、飛行装置1が異常状態であるか否かを判定するための、故障した揚力発生部3(モータ31)の数に関する基準値である。故障モータ数閾値182は、例えば、予め記憶部18に記憶されている。
【0087】
また、異常検出部15は、バッテリ22の残容量が所定の閾値(以下、「残容量閾値」とも称する。)180よりも低下したことを検出した場合に、飛行装置1が異常状態であると判定する。
【0088】
ここで、残容量閾値180は、例えば、飛行制御部14が指示した回転数でモータが回転できなくなる程度の容量値とすればよい。残容量閾値180は、例えば、予め記憶部18に記憶されている。
【0089】
また、異常検出部15は、飛行装置1(機体)の異常な傾きを検出した場合に、飛行装置1が異常であると判定する。例えば、異常検出部15は、角度算出部27によって算出した角度が所定の閾値(以下、「傾き閾値」とも称する。)181を超えている状態が所定期間継続した場合に、飛行装置1が異常状態であると判定する。
【0090】
傾き閾値181は、例えば、飛行装置1が前後方向に移動するときの角度(ピッチ角)や飛行装置1が左右方向に移動するときの角度(ロール角)を予め実験により取得し、それらの角度よりも大きい値に設定すればよい。傾き閾値181は、例えば、予め記憶部18に記憶されている。
【0091】
また、異常検出部15は、飛行装置1の機体(機体ユニット2)が落下状態であることを検出した場合に、飛行装置1が異常であると判定する。例えば、異常検出部15は、加速度センサ25の検出結果に基づいて、機体ユニット2の鉛直下向きの加速度が所定の閾値(以下、「落下判定閾値」とも称する。)183を超えていると判定した場合に、飛行装置1が異常であると判定する。
【0092】
落下制御部(パラシュート制御部)16は、飛行装置1の落下を制御するための機能部である。具体的に、落下制御部16は、異常検出部15によって飛行装置1が異常状態であることが検出された場合に、飛行装置1を安全に落下させるための落下準備処理を実行する。
【0093】
具体的に、落下制御部16は、落下準備処理として以下に示す処理を実行する。落下制御部16は、異常検出部15による異常の検出に応じて報知装置5を制御して、危険な状態であることを外部に報知する。また、落下制御部16は、異常検出部15による異常の検出に応じて各モータ駆動部13を制御して、各モータ31の回転を停止させる。
【0094】
更に、落下制御部16は、落下準備処理として、異常検出部15による異常の検出に応じて、パラシュートの開傘を指示する制御信号をパラシュート装置4(射出制御部42)に出力して、パラシュート400を開傘させる。
【0095】
このとき、落下制御部16は、複数の飛翔体43を時間をずらして射出するパラシュート開傘制御を行う。パラシュート開傘制御において、落下制御部16は、複数の射出部41のうち少なくとも1つの射出部41の飛翔体43を優先して射出する。具体的に、落下制御部16は、パラシュート開傘制御として、機体ユニット2の最も風上の位置に配置された射出部41の飛翔体43を優先して射出する。
【0096】
より具体的には、落下制御部16は、機体ユニット2の最も風上の位置と各射出部41の位置とに基づいて第1の射出部群を特定し、第1の射出部群の飛翔体43を優先して射出する。落下制御部16は、第1の射出部群の飛翔体43を優先して射出した後に、残りの射出部41の飛翔体43を射出する。このとき、落下制御部16は、例えば、残りの射出部41の飛翔体43の中で更に優先順位をつけて(時間をずらして)射出する。
【0097】
次に、実施の形態1に係る飛行装置1による落下準備処理の流れについて詳細に説明する。
図5は、実施の形態1に係る飛行装置1による落下準備処理の流れを示すフローチャートである。
図6は、実施の形態1に係る飛行装置1による異常検知の流れを示すフローチャートである。
【0098】
飛行装置1が飛行している状態において、落下制御部16は、異常検出部15によって異常状態が検出されたか否かを判定する(ステップS1)。図5のステップS1において、異常検出部15は、飛行装置1の自立飛行が不可能になる虞がある状態であるか否か検出する。
【0099】
具体的には、図6に示すように、異常検出部15は、先ず、例えばユーザーによる外部装置9の操作等に応じて送信されたパラシュートの開傘を指示する指示信号を飛行装置1が受信したか否かを判断する(ステップS101)。
【0100】
飛行装置1が指示信号を受信した場合(ステップS101:Yes)、異常検出部15は、飛行装置1が異常状態であると判定する(ステップS106)。これにより、ユーザーが目視等によって飛行装置1の異常を発見した場合に、飛行装置1に対してパラシュート400の開傘を指示することができる。
【0101】
飛行装置1が指示信号を受信していない場合(ステップS101:No)、異常検出部15は、故障している揚力発生部3の数が故障モータ数閾値182を超えているか否かを判定する(ステップS102)。故障している揚力発生部3の数が故障モータ数閾値182を超えている場合(ステップS102:Yes)、異常検出部15は、飛行装置1が異常状態であると判定する(ステップS106)。
【0102】
故障している揚力発生部3の数が故障モータ数閾値182を超えていない場合(ステップS102:No)、異常検出部15は、飛行装置1(機体ユニット2)の傾きが傾き閾値181を超えている状態が所定期間継続したか否かを判定する(ステップS103)。飛行装置1の傾きが傾き閾値181を超えている状態が所定期間継続した場合(ステップS103:Yes)、異常検出部15は、飛行装置1が異常状態であると判定する(ステップS106)。
【0103】
飛行装置1の傾きが傾き閾値181を超えている状態が所定期間継続していない場合(ステップS103:No)、異常検出部15は、飛行装置1(機体ユニット2)が落下状態であるか否かを判定する(ステップS104)。飛行装置1が落下状態であると判定した場合(ステップS104:Yes)、異常検出部15は、飛行装置1が異常状態であると判定する(ステップS106)。
【0104】
飛行装置1が落下状態でないと判定した場合(ステップS104:No)、異常検出部15は、バッテリ22の残容量が残容量閾値180を下回ったか否かを判定する(ステップS105)。残容量が残容量閾値180を下回ったと判定した場合(ステップS105:Yes),異常検出部15は、飛行装置1が異常状態であると判定する(ステップS106)。一方、残容量が残容量閾値180を下回っていないと判定した場合(ステップS105:No)、異常検出部15は、再び、ステップS101~S105の処理を実行する。
【0105】
上述したステップS1の処理において、異常検出部15によって飛行装置1が異常状態であると判定されなかった場合(ステップS1:No)、落下制御部16は、落下準備処理を開始せず、引き続き飛行装置1が安定して飛行するように制御を行いつつ、異常検出部15による異常の検出の有無を監視する。
【0106】
一方、ステップS1において、異常検出部15によって飛行装置1が異常状態であると判定された場合(ステップS1:Yes)、落下制御部16は、落下準備処理を開始する(ステップS2)。例えば、強風によって飛行装置1の機体(機体ユニット2)が傾き閾値181を超えて傾いた状態が所定期間継続した場合、異常検出部15は異常を検出したことを示す信号を落下制御部16に通知する。落下制御部16は、その信号を受信した場合に飛行装置1が落下するおそれがあると判定し、落下制御処理を開始する。
【0107】
落下制御処理において、先ず、落下制御部16は、報知装置5を制御して、飛行装置1が危険な状態であることを外部に報知する(ステップS3)。例えば、落下制御部16は、報知装置5を構成する光源を駆動して点滅する光を発生させる。また、落下制御部16は、報知装置5を構成する音声発生装置を駆動して警告音や退避を促すアナウンスを出力する。
【0108】
次に、落下制御部16は、モータ31を停止する(ステップS4)。具体的に、落下制御部16は、各モータ駆動部13_1~13_nに対してモータ31の停止を指示する。これにより、飛行装置1のモータ31が停止し、プロペラ30の回転が停止する。
【0109】
なお、モータ駆動部13_1~13_nへの指示は、落下制御部16からモータ駆動部13_1~13_nへ直接行ってもよいし、落下制御部16から飛行制御部14を介してモータ駆動部13_1~13_nへ間接的に行ってもよい。
【0110】
次に、落下制御部16は、パラシュート開傘制御を行う(ステップS5)。
図7は、パラシュート開傘制御(ステップS5)の流れを示すフローチャートである。
図8A図8Dは、パラシュート装置4が複数の射出部41を備えている場合における飛翔体43の射出手順を説明するための図である。
【0111】
ステップS5において、先ず、落下制御部16は、機体ユニット2の最も風上の位置に配置された少なくとも1つの射出部41を含む第1の射出部群を選択する(S501)。例えば、落下制御部16は、先ず、記憶部18に記憶された機体ユニット2における各位置の座標情報と風量センサ28によって検出された風向とに基づいて、機体ユニット2の最も風上の位置を特定する。次に、落下制御部16は、特定した機体ユニット2の最も風上の位置の座標情報と、記憶部18に記憶されている各射出部41の座標情報とに基づいて、機体ユニット2の最も風上の位置と各射出部41の位置との間の距離を算出し、その距離が風上判定閾値184以下の射出部41を第1の射出部群として特定する。
【0112】
例えば、図8Aに示すように、パラシュート装置4が3つの射出部41を備えている場合において、落下制御部16は、位置aが機体ユニット2において最も風上に近い座標であると特定したとき、位置aまでの距離が風上判定閾値よりも短い射出部41_1を含む射出部群Aを第1の射出部群とする。あるいは、図8Aにおいて、落下制御部16は、位置bが機体ユニット2において最も風上に近い座標であると特定したとき、位置bまでの距離が風上判定閾値よりも短い射出部41_1および射出部41_2を含む射出部群Bを第1の射出部群とする。
【0113】
図8B図8C図8Dに示すように、パラシュート装置4が4乃至6つの射出部41を備えている場合も同様に、機体ユニット2において最も風上に近い座標である位置a,bからの距離に基づいて第1の射出部群を特定する。
【0114】
次に、落下制御部16は、ステップS501で特定した第1の射出部群から飛翔体43を射出させる(ステップS502)。具体的には、落下制御部16は、特定した第1の射出部群から飛翔体43を射出することを指示する制御信号を射出制御部42に出力し、射出制御部42が点火信号を第1の射出部群に出力することにより、飛翔体43を射出させる。
【0115】
次に、落下制御部16は、飛翔体43を射出していない残りの射出部41(第2の射出部群)の飛翔体を射出させる(ステップS503)。例えば、図8Dにおいて、ステップS502で第1の射出部群として選択された射出部41_1、41_2、41_8の飛翔体43を射出した場合、ステップS503では、第2の射出部群として残りの射出部41_3~41_7の飛翔体を射出する。
【0116】
このとき、落下制御部16は、第2の射出部群の全ての射出部41_3~41_7を同時に射出させてもよいし、第2の射出部群の射出部41を時間をずらして射出させてもよい。例えば、落下制御部16は、図8Dにおいて、第2の射出部群としての射出部41_3~41_7の飛翔体43を全て同時に射出してもよいし、射出部41_3~41_7の飛翔体43を時間差を設けて一つずつ順番に射出させてもよい。
【0117】
時間差を設けて飛翔体43を射出する場合、落下制御部16は、第1の射出部群を起点として、機体ユニット2の上面側から見て右回りまたは左回りの順に、第2の射出部群の飛翔体43を順次射出させてもよい。あるいは、第2の射出部群のうちステップS501で特定された最も風上の位置から近い順に、飛翔体43を射出してもよい。例えば、図8Dにおいて、第1の射出部群Aの飛翔体43を射出した後、第2の射出部群のうち最も風上に近い射出部41_3、41_7の飛翔体を同時に射出し、その次に残りの射出部41うち最も風上に近い射出部41_4、41_6の飛翔体を同時に射出し、最後に射出部41_5の飛翔体43を射出させてもよい。
【0118】
また、落下制御部16は、第2の射出部群の飛翔体43を射出するとき、飛翔体43を射出していない射出部41のうち最も風上に近い射出部41を特定し、特定した射出部41から飛翔体43を射出させる処理を繰り返し実行してもよい。
【0119】
図9は、第1の射出部群と第2の射出部群に分けて飛翔体43を射出した場合におけるパラシュート400の開傘の様子を模式的に示す図である。
図10は、パラシュート400が開いた状態の飛行装置1を模式的に示す図である。
【0120】
図9に示すように、風上側の第1の射出部群から優先して飛翔体43を射出することにより、放出されたパラシュート400が風をはらみ易くなり、パラシュート400を確実かつ速やかに開傘させることができる。
全ての飛翔体43が射出された後、図10に示すようにパラシュート400が開く。これにより、飛行装置1が地上へ向かってゆっくりと落下する。
【0121】
パラシュート開傘制御(ステップS5)の後、落下制御部16は、通信部17を介して飛行装置1が落下したことを外部装置9に通知する(ステップS6)。
なお、外部装置9への通知は、落下制御処理の開始(ステップS2)の後であれば、どのタイミングで行ってもよい。例えば、飛行装置1が着陸した後に行ってもよいし、落下制御処理(ステップS2)の開始直後であってもよい。
【0122】
また、落下制御部16は、飛行装置1が落下したことを外部装置9に通知するとき、GPS受信機によって取得した落下場所の位置情報も一緒に、外部装置9に通知してもよい。上述した手順により、飛行装置1の落下制御処理が行われる。
【0123】
以上、実施の形態1に係る飛行装置1は、パラシュートを射出するとき、複数の射出部41のうち少なくとも1つの射出部41の飛翔体43を優先して射出する。
これによれば、飛行環境に応じてパラシュートが適切に開傘するように制御することができる。具体的には、上述したように、機体ユニット2の最も風上の位置に配置された射出部41の飛翔体43を優先して射出する。より具体的には、機体ユニット2の最も風上の位置と各射出部41の位置とに基づいて、第1の射出部群を特定し、第1の射出部群の飛翔体43を優先して射出する。これによれば、放出されたパラシュート400が風をはらみ易くなり、パラシュート400を確実かつ速やかに開傘させることができる。
【0124】
≪実施の形態2≫
図11は、実施の形態2に係る飛行装置1Aの機能ブロック図である。
実施の形態2に係る飛行装置1Aは、パラシュート開傘制御として飛行装置1Aの落下時に機体ユニット2Aの地上から最も遠い位置に配置された飛翔体43を優先して射出する点において、実施の形態1に係る飛行装置1と相違し、その他の点においては実施の形態1に係る飛行装置1と同様である。
【0125】
実施の形態2に係る飛行装置1Aによる落下準備処理の全体的な流れは、実施の形態1に係る飛行装置1と同様であり、パラシュート開傘制御(ステップS5)の内容が相違する。以下、実施の形態2に係る飛行装置1によるパラシュート開傘制御について、詳細に説明する。
【0126】
図12は、実施の形態2に係る飛行装置1Aによるパラシュート開傘制御(ステップS5A)の流れを示すフローチャートである。
【0127】
ステップS5Aにおいて、先ず、落下制御部16Aは、センサ部12の検出結果に基づいて、飛翔体43が射出されていない射出部41のうち機体ユニット2の地上から最も遠い位置に配置された少なくとも1つの射出部41を含む第1の射出部群を特定する(ステップS501A)。
【0128】
具体的には、落下制御部16Aは、記憶部18Aに記憶された各射出部41の座標情報と、角度算出部27によって算出された角度とに基づいて、全ての射出部41の中から機体ユニット2の地上から最も遠い位置に配置されている射出部41を特定し、第1の射出部群とする。
【0129】
次に、落下制御部16Aは、ステップS501Aで特定した第1の射出部群から飛翔体43を射出させる(ステップS502A)。具体的には、落下制御部16は、特定した第1の射出部群から飛翔体43を射出することを指示する制御信号を射出制御部42に出力し、射出制御部42が点火信号を第1の射出部群に出力することにより、飛翔体43を射出させる。
【0130】
次に、落下制御部16Aは、飛翔体43を射出していない残りの射出部41(第2の射出部群)の飛翔体を射出させる(ステップS503A)。
このとき、落下制御部16Aは、第2の射出部群の全ての射出部41を同時に射出させてもよいし、第2の射出部群の射出部41を時間をずらして射出させてもよい。時間差を設けて各飛翔体43を射出する場合、落下制御部16Aは、第1の射出部群を起点として、機体ユニット2Aの上面側から見て右回りまたは左回りの順に、第2の射出部群の飛翔体43を順次射出させてもよい。あるいは、落下制御部16Aは、第2の射出部群の飛翔体43を射出するとき、飛翔体43を射出していない射出部41のうち機体ユニット2Aの地上から最も遠い位置に配置されている射出部41を特定し、特定した射出部41から飛翔体43を射出させる処理を繰り返し実行してもよい。
【0131】
以上、実施の形態2に係る飛行装置1Aは、機体ユニット2Aの地上から最も遠い位置に配置された射出部41の飛翔体43を優先して射出する。これによれば、パラシュート400が完全に開く前に飛行装置1Aの機体を水平な状態に近づけることが可能となるので、落下中の飛行装置1Aの姿勢が安定し、飛行装置1Aの落下速度をより緩やかにすることが可能となる。
【0132】
より具体的には、落下制御部16Aは、センサ部12の検出結果に基づいて、飛翔体43を射出していない射出部41のうち機体ユニット2Aの地上から最も遠い位置に配置された射出部41を選択し、選択した射出部41の飛翔体43を最初に射出する。
【0133】
これによれば、図13Aに示すように、最初の飛翔体43を発射したときの反動により、飛翔体43の射出方向Sと反対方向の力Fが機体ユニット2の地上から最も遠い側に加わる。その結果、図13Bに示すように、機体ユニット2をより水平に近い状態にすることが可能となる。この状態において、次の飛翔体43を射出した場合、その飛翔体43によって牽引されるパラシュート400を地上に対してより垂直な方向に打ち上げることができるので、二つ目の飛翔体43によって牽引されるパラシュート400が空気を孕み易くなり、そのパラシュート400をより早く開かせることが可能となる。その結果、機体ユニット2に加わっている地上に向かう方向の力を軽減し、飛行装置1Aの落下時間をより長くすることができるので、飛行装置1Aの落下時の安全性を更に向上させることが可能となる。
【0134】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0135】
例えば、上記実施の形態において、射出制御部42がパラシュート装置4に設けられる場合を例示したが、これに限られない。例えば、射出制御部42は、飛行装置1に設けられていてもよい。
【0136】
また、上記実施の形態では、機体ユニット2,2A側に設けられた落下制御部16,16Aからの信号に応じてパラシュート装置4が飛翔体43を射出する場合を例示したが、これに限られない。例えば、図14に示すように、パラシュート装置4Bが、センサ部12B、異常検出部15B、および落下制御部16Bを含む異常状態検知機構を備えていてもよい。センサ部12B、異常検出部15B、および落下制御部16Bは、それぞれセンサ部12、異常検出部15、および落下制御部16と同様の機能を有している。これによれば、パラシュート装置4B自らが異常状態を検出して飛翔体43を射出することが可能となる。
【0137】
この場合、機体ユニット2は、センサ部12、異常検出部15、および落下制御部16を含む異常状態検知機構を有していてもよいし、有していなくてもよい。機体ユニット2とパラシュート装置4Bがそれぞれ異常状態検知機構を有することにより、何等かの原因で一方の異常状態検知機構が異常状態を検知できなかった場合であっても、他方の異常状態検知機構によって異常状態を検知して、より確実にパラシュート400を開傘することが可能となる。
【0138】
また、上記実施の形態では、パラシュート収容部40が円筒状である場合を例示したが、これに限られない。すなわち、パラシュート収容部40は、内部にパラシュート400を収容するための空間を有していればよく、例えば、多角柱(例えば四角柱)状であってもよい。
【0139】
また、上記実施の形態において、射出部41の外形が円筒状である場合を例示したが、これに限られない。すなわち、射出部41は、内部に飛翔体43を収容し、飛翔体43を射出可能な構造であればよく、例えば、外形が多角柱(例えば四角柱)状で、飛翔体43を収容する内部空間が円筒状であってもよい。但し、その場合は、飛翔体43の内部形状を射出部41に合わせる必要がある。
【0140】
また、上記実施の形態に係る飛行装置1において、通常状態での飛行を制御するための機能部としての飛行制御部14等と、異常発生時の落下制御を行うための機能部としての異常検出部15、落下制御部16、および記憶部18とが同一のバッテリ22からの電源供給によって動作する場合を例示したが、これに限られない。
例えば、通常状態での飛行を制御するための機能部用のバッテリと、異常発生時の落下制御を行うための機能部用のバッテリとをそれぞれ別個に用意してもよい。これによれば、通常状態での飛行を制御するための機能部用のバッテリに異常が発生して電源供給が行えなくなった場合であっても、落下制御処理を実行することが可能となる。
【0141】
また、異常発生時の落下制御を行うための機能部は、上述した2つのバッテリからの電源供給が選択できるように構成されていてもよい。これによれば、一方のバッテリに異常が発生した場合でも他方のバッテリから電源供給を受けることができるので、落下制御処理を確実に実行することが可能となる。
【0142】
また、上記実施の形態において、機体ユニット2の下面にエアバッグなどの衝撃緩衝部材を設けてもよい。これによれば、飛行装置1の落下時の安全性を更に向上させることができる。
【符号の説明】
【0143】
1,1A,1B…飛行装置、2,2A…機体ユニット、3…揚力発生部、4,4A,4B…パラシュート装置、5…報知装置、6…アーム部、9…外部装置、11…電源部、12,12B…センサ部、13…モータ駆動部、14…飛行制御部、15,15B…異常検出部、16,16A,16B…落下制御部、17…通信部、18,18A…記憶部、22…バッテリ、23…電源回路、24…角速度センサ、25…加速度センサ、26…磁気センサ、27…角度算出部、28…風量センサ、30…プロペラ、31…モータ、32…筐体、40…パラシュート収容部、41…射出部、42…射出制御部、43…飛翔体、44…飛翔体本体部、45…ガス発生装置、46…連結索、47…リード線、180…残容量閾値、181…傾き閾値、182…故障モータ数閾値、183…落下判定閾値、184…風上判定閾値、400…パラシュート、401…側壁部、402…底部、403…収容空間、404…パラシュート取り付け部、406…傘体(キャノピー)、407…吊索、411…側壁部、412…底部、413…射出口、440…内部空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14