(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2465 20160101AFI20230303BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20230303BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20230303BHJP
H01M 8/2432 20160101ALI20230303BHJP
【FI】
H01M8/2465
H01M8/0273
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/2432
(21)【出願番号】P 2020120432
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】堀田 信行
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-038984(JP,A)
【文献】特開2007-317490(JP,A)
【文献】特開2009-129580(JP,A)
【文献】特開2014-216216(JP,A)
【文献】特開昭62-243259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、前記空気極に面する空気室または前記燃料極に面する燃料室を構成するフレーム貫通孔が形成されたフレーム部材と、を備える電気化学反応単位が、前記第1の方向に複数並べて配置された電気化学反応ブロックと、
前記電気化学反応ブロックにおける前記第1の方向の両側にそれぞれ位置し、前記第1の方向視で少なくとも一部が前記フレーム部材に重なるように配置された一対のエンド部材と、
前記第1の方向において互いに隣り合う前記電気化学反応単位の前記フレーム部材同士の間に配置されたコンプレッションシール部材と、
を備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記一対のエンド部材の少なくとも一方には、前記第1の方向視で前記コンプレッションシール部材に重なり、かつ、前記第1の方向に垂直な面方向に沿った平面部と、前記面方向に沿って延び、かつ、前記平面部より前記第1の方向に突出する凸部とが形成されて
おり、
前記エンド部材の厚さが3mm以下である、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項2】
電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、前記空気極に面する空気室または前記燃料極に面する燃料室を構成するフレーム貫通孔が形成されたフレーム部材と、を備える電気化学反応単位が、前記第1の方向に複数並べて配置された電気化学反応ブロックと、
前記電気化学反応ブロックにおける前記第1の方向の両側にそれぞれ位置し、前記第1の方向視で少なくとも一部が前記フレーム部材に重なるように配置された一対のエンド部材と、
前記第1の方向において互いに隣り合う前記電気化学反応単位の前記フレーム部材同士の間に配置されたコンプレッションシール部材と、
を備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記一対のエンド部材の少なくとも一方には、前記第1の方向視で前記コンプレッションシール部材に重なり、かつ、前記第1の方向に垂直な面方向に沿った平面部と、前記面方向に沿って延び、かつ、前記平面部より前記第1の方向に突出する凸部とが形成されており、
前記凸部と前記平面部とがR部を介して連結されており、かつ、前記R部の内側面の半径は、前記平面部の厚さより大きい、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記エンド部材の前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、前記凸部が複数形成されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項4】
請求項1
から請求項
3のいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記エンド部材には、前記第1の方向視で、エンド貫通孔が形成されており、
前記エンド部材における外周部と内周部との両方に前記凸部が形成されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項5】
請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記凸部は、前記エンド部材における全周にわたって形成されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項6】
請求項1から請求項
5までのいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記エンド部材には、さらに、前記エンド部材の前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、前記平面部同士を連結し、前記第1の方向に隆起した隆起部が形成されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項7】
請求項1から請求項
6までのいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記平面部からの前記凸部の立ち上がり長さは、前記平面部の厚さより大きい、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項8】
請求項1から請求項
7までのいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第1の方向視で、前記凸部の少なくとも1つは、前記コンプレッションシール部材に重なる位置に配置されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項9】
請求項1から請求項
8までのいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記エンド部材の表面には、不動態被膜が形成されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記凸部の厚さと前記平面部の厚さとは同じである、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物を含む電解質層を備える固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という)が知られている。SOFCの構成単位である燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という)は、電解質層と、電解質層を挟んで所定の方向(以下、「第1の方向」という)に互いに対向する空気極および燃料極とを含む。
【0003】
SOFCは、一般に、発電単位が、第1の方向に複数並べて配置された発電ブロックを備える燃料電池スタックの形態で利用される。発電単位は、例えば、単セルと、フレーム部材と、を備える。フレーム部材は、空気極に面する空気室または燃料極に面する燃料室を構成する貫通孔が形成されている。第1の方向において互いに隣り合う発電単位のフレーム部材同士の間には、コンプレッションシール部材が配置されている。また、燃料電池スタックは、さらに、一対のエンド部材を備える。一対のエンド部材は、発電ブロックにおける第1の方向の両側にそれぞれ位置し、第1の方向視で少なくとも一部がフレーム部材に重なるように配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した燃料電池スタックでは、エンド部材は、単に平板状の部材であり、剛性が低いため、コンプレッションシール部材からの反発力に起因してエンド部材が変形しやすい。その結果、例えば燃料電池スタックの性能が低下するおそれがある。
【0006】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解セル単位を複数備える電解セルスタックにも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼び、燃料電池発電単位と電解セル単位とをまとめて電気化学反応単位と呼び、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタックにも共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、前記空気極に面する空気室または前記燃料極に面する燃料室を構成するフレーム貫通孔が形成されたフレーム部材と、を備える電気化学反応単位が、前記第1の方向に複数並べて配置された電気化学反応ブロックと、前記電気化学反応ブロックにおける前記第1の方向の両側にそれぞれ位置し、前記第1の方向視で少なくとも一部が前記フレーム部材に重なるように配置された一対のエンド部材と、前記第1の方向において互いに隣り合う前記電気化学反応単位の前記フレーム部材同士の間に配置されたコンプレッションシール部材と、を備える電気化学反応セルスタックにおいて、前記一対のエンド部材の少なくとも一方には、前記第1の方向視で前記コンプレッションシール部材に重なり、かつ、前記第1の方向に垂直な面方向に沿った平面部と、前記面方向に沿って延び、かつ、前記平面部より前記第1の方向に突出する凸部とが形成されている。
【0010】
本電気化学反応セルスタックによれば、凸部によってエンド部材の剛性が向上するため、エンド部材が凸部を備えない構成に比べて、コンプレッションシール部材からの反発力に起因してエンド部材が変形することを抑制することができる。
【0011】
(2)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記エンド部材の前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、前記凸部が複数形成されている構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、エンド部材の断面において、凸部が1つだけ形成された構成に比べて、エンド部材の剛性がさらに向上するため、コンプレッションシール部材からの反発力に起因してエンド部材が変形することを、より効果的に抑制することができる。
【0012】
(3)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記エンド部材には、前記第1の方向視で、エンド貫通孔が形成されており、前記エンド部材における外周部と内周部との両方に前記凸部が形成されている構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、エンド部材の剛性がさらに向上するため、コンプレッションシール部材からの反発力に起因してエンド部材が変形することを、より効果的に抑制することができる。
【0013】
(4)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記凸部は、前記エンド部材における全周にわたって形成されている構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、凸部の一部が欠けている構成に比べて、エンド部材の剛性がさらに向上するため、コンプレッションシール部材からの反発力に起因してエンド部材が変形することを、より効果的に抑制することができる。
【0014】
(5)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記エンド部材には、さらに、前記エンド部材の前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、前記平面部同士を連結し、前記第1の方向に隆起した隆起部が形成されている構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、エンド部材には、凸部に加えて、隆起部が形成されているため、エンド部材の剛性がさらに向上し、コンプレッションシール部材からの反発力に起因してエンド部材が変形することを、より効果的に抑制することができる。
【0015】
(6)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記平面部からの前記凸部の立ち上がり長さは、前記平面部の厚さより大きい構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、平面部からの凸部の立ち上がり長さが平面部の厚さ以下である構成に比べて、エンド部材の剛性がさらに向上するため、コンプレッションシール部材からの反発力に起因してエンド部材が変形することを、より効果的に抑制することができる。
【0016】
(7)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1の方向視で、前記凸部の少なくとも1つは、前記コンプレッションシール部材に重なる位置に配置されている構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、凸部がコンプレッションシール部材に重ならない位置に配置された構成に比べて、コンプレッションシール部材によるシール性能を向上させることができる。
【0017】
(8)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記エンド部材の表面には、不動態被膜が形成されている構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、不動態被膜が形成されており、肉厚を厚くすることが難しいエンド部材を備える電気化学反応セルスタックに対して本発明は特に有用である。
【0018】
(9)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記凸部と前記平面部とがR部を介して連結されており、かつ、前記R部の内側面の半径は、前記平面部の厚さより大きい構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、凸部と平面部との間のR面の半径が平面部の厚さ以下である構成に比べて、凸部と平面部との境界部分に応力が集中することに起因して破損等することを抑制することができる。
【0019】
(10)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記凸部の厚さと前記平面部の厚さとは同じである構成としてもよい。
【0020】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応単セル(燃料電池単セルまたは電解単セル)、電気化学反応単セルを有する電気化学反応単位(燃料電池発電単位または電解セル単位)、複数の電気化学反応単位を備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図
【
図2】
図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
【
図3】
図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
【
図4】
図1のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図
【
図5】
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
【
図6】
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
【
図7】
図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.実施形態:
A-1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図3は、
図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図4は、
図1のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図5以降についても同様である。
【0023】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という。)102と、末端セパレータ210、上端プレート220、下端プレート189と、一対のターミナルプレート410,420、絶縁部200、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のターミナルプレート410,420のうちの一方(以下、「上側ターミナルプレート410」という。)は、7つの発電単位102から構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という。)の上側に配置されており、一対のターミナルプレート410,420のうちの他方(以下、「下側ターミナルプレート420」という。)は、発電ブロック103の下側に配置されている。末端セパレータ210は、上側ターミナルプレート410の上側に配置されており、下端プレート189は、下側ターミナルプレート420の下側に配置されている。絶縁部200は、末端セパレータ210の上側に配置されている。一対のエンドプレート104,106のうちの一方(以下、「上側エンドプレート104」という。)は、絶縁部200の上側に配置されており、一対のエンドプレート104,106のうちの他の(以下、「下側エンドプレート106」という。)は、下端プレート189の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106は、発電ブロック103と、末端セパレータ210と、下端プレート189と、一対のターミナルプレート410,420、絶縁部200とを上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0024】
図1および
図4に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(発電ブロック103と、末端セパレータ210と、下端プレート189と、一対のターミナルプレート410,420、絶縁部200)のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、各層を上下方向に貫通する孔が形成されている。上側エンドプレート104のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、孔(ネジ孔)が貫通形成されており、下側エンドプレート106のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、孔(ネジ孔)が貫通形成されている。これらの各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、上下方向に延びるボルト孔109を構成している。以下の説明では、ボルト孔109を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、ボルト孔109と呼ぶ場合がある。
【0025】
各ボルト孔109にはボルト22が挿入されている。各ボルト22の上端部は、上側エンドプレート104の孔を介してナット24のネジ孔に螺合しており、各ボルト22の下端部は、下側エンドプレート106の孔を介してナット24のネジ孔に螺合している。このような構成のボルト22およびナット24により、燃料電池スタック100の各層が一体に締結されている。
【0026】
また、
図1から
図3に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(各発電単位102、下側ターミナルプレート420、下端プレート189、下側エンドプレート106)のZ軸方向回りの周縁部には、各層を上下方向に貫通する4つの孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、最上部の発電単位102から下側エンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0027】
図1および
図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の後述する空気室166に供給するガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。
【0028】
また、
図1および
図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する辺の内、上述した酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の後述する燃料室176に供給するガス流路である燃料ガス供給マニホールド171として機能し、上述した酸化剤ガス供給マニホールド161として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、燃料ガスFGとしては、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0029】
図2および
図3に示すように、燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。
図2に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、
図3に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス供給マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。なお、各ガス通路部材27と下側エンドプレート106の表面との間には、絶縁シート26が介在している。
【0030】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。一対のエンドプレート104,106の中央付近には、それぞれ、Z軸方向に貫通する孔32,34が形成されている。Z軸方向視で、一対のエンドプレート104,106のそれぞれに形成された孔32,34の内周線は、後述する各単セル110の少なくとも一部を内包している。各ボルト22およびナット24による締結によって生じるZ軸方向の圧縮力は、主として各発電単位102の周縁部(後述する各単セル110より外周側の部分)に作用する。なお、エンドプレート104,106は、特許請求の範囲における一対のエンド部材に相当する。エンドプレート104,106の具体的構成については後述する。
【0031】
(ターミナルプレート410,420の構成)
一対のターミナルプレート410,420は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。上側ターミナルプレート410の中央付近には、Z軸方向に貫通する孔412が形成されている。Z軸方向視で、上側ターミナルプレート410に形成された孔412の内周線は、後述する各単セル110を内包している。Z軸方向視で、一対のターミナルプレート410,420のそれぞれの一方側(X軸正方向側)の端部は、発電ブロック103から側方に張り出している。本実施形態では、上側ターミナルプレート410の張り出し部分は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側ターミナルプレート420の張り出し部分は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0032】
(上端プレート220の構成)
上端プレート220は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。上端プレート220は、発電ブロック103の上側に配置されており、発電ブロック103における上端に位置するインターコネクタ190に電気的に接続されている。本実施形態では、上端プレート220とインターコネクタ190とは、後述の燃料極側集電部材144と同一構造の接続部材を介して電気的に接続されている。下端プレート189は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。
【0033】
(末端セパレータ210の構成)
末端セパレータ210は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔211が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。末端セパレータ210の板厚は、比較的薄く、例えば0.05mm以上、0.2mm以下程度である。末端セパレータ210における貫通孔211を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、上端プレート220の周縁部における上側の表面に例えば溶接により接合されている。末端セパレータ210は、上端プレート220と発電ブロック103との間の空間と燃料電池スタック100の外部空間とを区画する。
【0034】
末端セパレータ210は、末端セパレータ210の貫通孔周囲部(貫通孔211を取り囲む部分)を含む内側部216と、内側部216より外周側に位置する外側部217と、内側部216と外側部217とを連結する連結部218とを備える。本実施形態では、内側部216および外側部217は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部218は、内側部216と外側部217との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部218における下側(発電ブロック103側)の部分は凸部となっており、連結部218における上側(上側エンドプレート104側)の部分は凹部となっている。このため、連結部218は、Z軸方向における位置が内側部216および外側部217とは異なる部分を含んでいる。
【0035】
(下端プレート189の構成)
下端プレート189は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えば絶縁材料により形成されている。下端プレート189の周縁部は、下側ターミナルプレート420と下側エンドプレート106との間に挟み込まれており、これにより、各マニホールド161,162,171,172のシール性と、下側ターミナルプレート420と下側エンドプレート106との絶縁性とが確保されている。
【0036】
(絶縁部200の構成)
絶縁部200は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔が形成されたフレーム状の部材であり、例えば絶縁材料により形成されている。絶縁部200は、上側エンドプレート104と末端セパレータ210との間に挟み込まれており、これにより、各マニホールド161,162,171,172のシール性と、上側エンドプレート104と末端セパレータ210との絶縁性とが確保されている。なお、絶縁部200の具体的構成については後述する。
【0037】
(発電単位102の構成)
図5は、
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図6は、
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図7は、
図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【0038】
図5から
図7に示すように、発電単位102は、燃料電池単セル(以下、「単セル」という。)110と、単セル用セパレータ120と、空気極側フレーム130と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電部材144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ190および一対のIC用セパレータ180とを備えている。単セル用セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、IC用セパレータ180におけるZ軸方向回りの周縁部には、各マニホールド161,162,171,172として機能する各連通孔108を構成する孔と、各ボルト孔109を構成する孔とが形成されている。
【0039】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112のZ軸方向の一方側(上側)に配置された空気極114と、電解質層112のZ軸方向の他方側(下側)に配置された燃料極116と、電解質層112と空気極114との間に配置された反応防止層118とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、反応防止層118)を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0040】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含むように構成されている。すなわち、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、例えばペロブスカイト型酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))を含むように構成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。反応防止層118は、Z軸方向視で空気極114と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えばGDC(ガドリニウムドープセリア)とYSZとを含むように構成されている。反応防止層118は、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO3)が生成されることを抑制する機能を有する。
【0041】
単セル用セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。単セル用セパレータ120の板厚は、比較的薄く、例えば0.05mm以上、0.2mm以下程度である。単セル用セパレータ120における貫通孔121を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、単セル110(電解質層112)の周縁部における上側の表面に対向している。単セル用セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、単セル110(電解質層112)と接合されている。単セル用セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が抑制される。
【0042】
単セル用セパレータ120は、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部(貫通孔121を取り囲む部分)を含む内側部126と、内側部126より外周側に位置する外側部127と、内側部126と外側部127とを連結する連結部128とを備える。本実施形態では、内側部126および外側部127は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部128は、内側部126と外側部127との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部128における下側(燃料室176側)の部分は凸部となっており、連結部128における上側(空気室166側)の部分は凹部となっている。このため、連結部128は、Z軸方向における位置が内側部126および外側部127とは異なる部分を含んでいる。
【0043】
単セル用セパレータ120における貫通孔121付近には、ガラスを含むガラスシール部125が配置されている。ガラスシール部125は、接合部124に対して空気室166側に位置しており、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部の表面と、単セル110(本実施形態では電解質層112)の表面との両方に接触するように形成されている。ガラスシール部125により、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が効果的に抑制される。
【0044】
インターコネクタ190は、略矩形の平板形状の平板部150と、平板部150から空気極114側に突出した複数の略柱状の空気極側集電部134とを有する導電性の部材であり、金属(例えば、フェライト系ステンレス)により形成されている。本実施形態では、インターコネクタ190の表面(空気室166に面する表面)に、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性の被覆層194が形成されている。以下では、被覆層194に覆われたインターコネクタ190を、単にインターコネクタ190という。各発電単位102において、上側のインターコネクタ190(の平板部150)は、単セル110に対して空気室166を挟んで上側に配置されている。上側のインターコネクタ190(の各空気極側集電部134)は、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性接合材196を介して、単セル110の空気極114に接合されており、これにより単セル110の空気極114に電気的に接続されている。また、各発電単位102において、下側のインターコネクタ190は、単セル110に対して燃料室176を挟んで下側に配置されており、後述する燃料極側集電部材144を介して、単セル110の燃料極116に電気的に接続されている。インターコネクタ190は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を抑制する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ190は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ190は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ190と同一部材である。また、燃料電池スタック100は下側ターミナルプレート420および下端プレート189を備えているため、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていない(
図2から
図4参照)。
【0045】
IC用セパレータ180は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔181が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。IC用セパレータ180の板厚は、比較的薄く、例えば0.05mm以上、0.2mm以下程度である。IC用セパレータ180における貫通孔181を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、インターコネクタ190の平板部150の周縁部における上側の表面に例えば溶接により接合されている。ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、上側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の空気室166と、該発電単位102に対して上側に隣り合う他の発電単位102の燃料室176とを区画する。また、ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、下側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の燃料室176と、該発電単位102に対して下側に隣り合う他の発電単位102の空気室166とを区画する。このように、IC用セパレータ180により、発電単位102の周縁部における発電単位102間のガスのリークが抑制される。なお、燃料電池スタック100において最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190に接合されたIC用セパレータ180は、上側ターミナルプレート410に電気的に接続されている。
【0046】
IC用セパレータ180は、IC用セパレータ180の貫通孔周囲部(貫通孔181を取り囲む部分)を含む内側部186と、内側部186より外周側に位置する外側部187と、内側部186と外側部187とを連結する連結部188とを備える。本実施形態では、内側部186および外側部187は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部188は、内側部186と外側部187との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部188における下側(空気室166側)の部分は凸部となっており、連結部188における上側(燃料室176側)の部分は凹部となっている。このため、連結部188は、Z軸方向における位置が内側部186および外側部187とは異なる部分を含んでいる。
【0047】
図5から
図7に示すように、空気極側フレーム130は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、単セル用セパレータ120の周縁部における上側の表面と、上側のIC用セパレータ180の周縁部における下側の表面とに接触しており、両者の間のガスシール性(すなわち、空気室166のガスシール性)を確保するシール部材として機能する。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180間(すなわち、一対のインターコネクタ190間)間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通流路132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通流路133とが形成されている。なお、空気極側フレーム130は、特許請求の範囲におけるコンプレッションシール部材に相当する。
【0048】
図5から
図7に示すように、燃料極側フレーム140は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、単セル用セパレータ120の周縁部における下側の表面と、下側のIC用セパレータ180の周縁部における上側の表面とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通流路142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通流路143とが形成されている。
【0049】
図5から
図7に示すように、燃料極側集電部材144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電部材144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116の下側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ190(の平板部150)の上側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていないため、該発電単位102における燃料極側集電部材144のインターコネクタ対向部146は、下側ターミナルプレート420に接触している。燃料極側集電部材144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ190(または下端プレート189)とを電気的に接続する。なお、燃料極側集電部材144の電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電部材144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電部材144を介した燃料極116とインターコネクタ190(または下側ターミナルプレート420)との電気的接続が良好に維持される。
【0050】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2および
図5に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス供給マニホールド161に供給され、酸化剤ガス供給マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通流路132を介して、空気室166に供給される。また、
図3および
図6に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス供給マニホールド171に供給され、燃料ガス供給マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通流路142を介して、燃料室176に供給される。
【0051】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は上側のインターコネクタ190に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電部材144を介して下側のインターコネクタ190(または、下端プレート189)に電気的に接続されている。すなわち、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。また、最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190およびIC用セパレータ180は、上側ターミナルプレート410に電気的に接続されており、最も下側に位置する発電単位102の燃料極側集電部材144には、下側ターミナルプレート420が電気的に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するターミナルプレート410,420から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0052】
図2および
図5に示すように、各発電単位102の空気室166から酸化剤ガス排出連通流路133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、
図3および
図6に示すように、各発電単位102の燃料室176から燃料ガス排出連通流路143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0053】
なお、本実施形態の燃料電池スタック100では、Z軸方向視で、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通する酸化剤ガス供給連通流路132と、燃料ガス排出マニホールド172に連通する燃料ガス排出連通流路143とが、単セルの一の辺に(同じ方向に)対向するように配置されており、かつ、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通する酸化剤ガス排出連通流路133と、燃料ガス供給マニホールド171に連通する燃料ガス供給連通流路142とが、単セルの一の辺に対して単セル110の中心点を挟んで対向する他の辺に(同じ方向に)対向するように配置されている。すなわち、本実施形態の発電単位102(燃料電池スタック100)は、空気室166における酸化剤ガスOGの主たる流れ方向(X軸正方向からX軸負方向へ向かう方向)と燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向(X軸負方向からX軸正方向へ向かう方向)とが略反対方向(互いに対向する方向)である、カウンターフロータイプのSOFCである。
【0054】
A-3.エンドプレート104,106の詳細構成:
エンドプレート104,106の詳細構成について説明する。
【0055】
(上側エンドプレート104の構成)
図2から
図4に示すように、上側エンドプレート104は、平面部310と、凸部320と、隆起部330と、を含んでいる。平面部310は、Z軸方向視で燃料極側フレーム140に重なり、かつ、Z軸方向に垂直な面方向(XY平面に平行な方向)に沿っている。平面部310は、所定の領域(例えば締結部材(ボルト22)が挿入される2つ以上のボルト孔109同士をつなぐ領域)を有して面方向に平行な平坦部分である。具体的には、平面部310のZ軸方向視での形状は、全体として、矩形枠状である。Z軸方向視で、平面部310の内周部(孔32の輪郭線)は、全周にわたって、燃料極側フレーム140の孔141の輪郭線の内周側に位置している。Z軸方向視で、平面部310の外周部は、全周にわたって、燃料極側フレーム140の外周部と同じ位置、または、該外周部の外周側に位置している。すなわち、Z軸方向視で、平面部310の外周側が燃料極側フレーム140に重なっており、平面部310の内周側が燃料極側フレーム140より内側に張り出している。なお、上述したボルト孔109を構成する孔は、平面部310におけるZ軸方向回りの周縁部に形成されている。孔32は、特許請求の範囲におけるエンド貫通孔に相当し、燃料極側フレーム140は、特許請求の範囲におけるフレーム部材に相当し、孔141は、特許請求の範囲におけるフレーム貫通孔に相当する。
【0056】
凸部320は、面方向に沿って延び、かつ、平面部310よりZ軸方向に突出している。凸部320は、所定の長さ(例えば凸部320の厚さより大きい長さ)を有して面方向(凸部320)に平行に延びているリブである。平面部310からの凸部320の立ち上がり長さ(Z軸方向の長さ)は、平面部310の厚さより大きく、例えば、平面部310の厚さの30倍以上の長さが好ましく、50倍以上の長さがより好ましい。なお、凸部320は、例えば締結部材(ボルト22)が挿入される2つ以上のボルト孔109同士をつなぐ領域(平面部310)の周縁部に形成されていることが好ましい。
【0057】
具体的には、凸部320は、外側凸部322と、内側凸部324と、を有している。外側凸部322は、平面部310の外周部から上側(発電ブロック103とは反対側 Z軸正方向側)に向かって突出している。外側凸部322は、平面部310の外周部の全周にわたって形成されている。Z軸方向視で、外側凸部322は、空気極側フレーム130に重なる位置に配置されている。内側凸部324は、平面部310の内周部から上側(発電ブロック103とは反対側 Z軸正方向側)に向かって突出している。内側凸部324は、平面部310の内周部の全周にわたって形成されている。すなわち、上側エンドプレート104のZ軸方向に平行な少なくとも1つの断面において、凸部320(外側凸部322、内側凸部324)が複数形成されている(
図2から
図4参照)。
【0058】
隆起部330は、上側エンドプレート104のZ軸方向に平行な少なくとも1つの断面において、平面部310の部分同士を連結し、Z軸方向に隆起した部分である。すなわち、隆起部330は、上側エンドプレート104の周縁部から離間した位置に形成されており、Z軸方向における位置が平面部310とは異なる部分(隆起した先端部分)を有している。隆起部330は、所定の長さ(例えば凸部320の厚さより大きい長さ)を有して面方向(凸部320)に平行に延びている。隆起部330は、例えば締結部材(ボルト22)が挿入される2つのボルト孔109同士の間に位置し、かつ、該2つのボルト孔109の並び方向に沿って延びていることが好ましい(
図1参照)。
【0059】
具体的には、隆起部330は、上側エンドプレート104における外側凸部322と内側凸部324との間に配置されている。各隆起部330は、凸部320に平行に延びる一対の側壁332と、一対の外側凸部322同士の上端を連結する連結壁334と、隆起部330の長手方向の両端を塞ぐ封止壁336と、を有している。各側壁332は、平面部310に対して略垂直であり、連結壁334は、平面部310に略平行であり、各封止壁336は、連結壁334から平面部310に向かって傾斜している(
図1参照)。
【0060】
(下側エンドプレート106の構成)
図2から
図4に示すように、下側エンドプレート106は、平面部510と、凸部520と、を含んでいる。平面部510は、Z軸方向視で燃料極側フレーム140に重なり、かつ、Z軸方向に垂直な面方向(XY平面に平行な方向)に沿っている。平面部510は、所定の領域(例えば締結部材(ボルト22)が挿入される2つ以上のボルト孔109同士をつなぐ領域)を有して面方向に平行な平坦部分である。具体的には、平面部510のZ軸方向視での形状は、全体として、矩形枠状である。Z軸方向視で、平面部510の内周部(孔34の輪郭線)は、全周にわたって、燃料極側フレーム140の孔141の輪郭線の内周側に位置している。Z軸方向視で、平面部510の外周部は、全周にわたって、燃料極側フレーム140の外周部と同じ位置、または、該外周部の外周側に位置している。すなわち、Z軸方向視で、平面部510の外周側が燃料極側フレーム140に重なっており、平面部310の内周側が燃料極側フレーム140より内側に張り出している。なお、上述したボルト孔109を構成する孔は、平面部510におけるZ軸方向回りの周縁部に形成されている。孔34は、特許請求の範囲におけるエンド貫通孔に相当する。
【0061】
凸部520は、面方向に沿って延び、かつ、平面部510よりZ軸方向に突出している。凸部520は、所定の長さ(例えば凸部520の厚さより大きい長さ)を有して面方向(凸部520)に平行に延びているリブである。平面部510からの凸部520の立ち上がり長さ(Z軸方向の長さ)は、平面部510の厚さより大きく、例えば、平面部510の厚さの30倍以上の長さが好ましく、50倍以上の長さがより好ましい。なお、凸部520は、例えば締結部材(ボルト22)が挿入される2つ以上のボルト孔109同士をつなぐ領域(平面部510)の周縁部に形成されていることが好ましい。
【0062】
具体的には、凸部520は、外側凸部522と、内側凸部524と、を有している。外側凸部522は、平面部510の外周部から下側(発電ブロック103とは反対側 Z軸負方向側)に向かって突出している。外側凸部522は、平面部510の外周部の全周にわたって形成されている。Z軸方向視で、外側凸部522は、燃料極側フレーム140に重なる位置に配置されている。内側凸部524は、平面部510の内周部から下側(発電ブロック103とは反対側 Z軸負方向側)に向かって突出している。内側凸部524は、平面部510の内周部の全周にわたって形成されている。すなわち、上側エンドプレート104のZ軸方向に平行な少なくとも1つの断面において、凸部520(外側凸部522、内側凸部524)が複数形成されている(
図2から
図4参照)。
【0063】
上記実施形態では、エンドプレート104,106のそれぞれの表面には、不動態被膜(例えばアルミナ被膜)が形成されている。また、凸部320,520と平面部310,510とがR部を介して連結されており、かつ、R部の内側面の半径は、平面部310,510の厚さより大きい。また、エンドプレート104,106は、それぞれ、1枚の板状部材をプレス加工(屈曲)して形成されたものである。したがって、平面部310,510の厚さと、凸部320,520の厚さと、隆起部330の厚さとは、互いに同じである。エンドプレート104,106の板厚は、例えば0.5mm以上、3mm以下程度である。
【0064】
なお、本実施形態では、各凸部320,520の先端部分は、面方向に折り曲げられている。これにより、各エンドプレート104,106の剛性がさらに向上している。また、各外側凸部322,522の先端部分は、外周側に折り曲げられており、Z軸方向視で発電ブロック103より外側に突出している。このような構成により、燃料電池スタック100を横向きに配置したときに発電ブロック103が床面に衝突することを抑制できる。
【0065】
A-4.絶縁部200の詳細構成:
絶縁部200の詳細構成について説明する。
図2から
図4に示すように、絶縁部200は、第1の絶縁体201と、第2の絶縁体202と、を備えている。第1の絶縁体201と第2の絶縁体202とは、例えばマイカシートや、バーミキュライトシート、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。第1の絶縁体201および第2の絶縁体202のそれぞれのZ軸方向視での形状は、全体として、矩形枠状である。
【0066】
(第1の絶縁体201の構成)
Z軸方向視で、第1の絶縁体201の内周部は、全周にわたって、末端セパレータ210の外側部217より内周側まで延出している。Z軸方向視で、第1の絶縁体201の外周部は、全周にわたって、燃料極側フレーム140の外周部と同じ位置、または、該外周部の外周側に位置している。すなわち、Z軸方向視で、第1の絶縁体201の外周側が燃料極側フレーム140に重なっており、第1の絶縁体201の内周側が燃料極側フレーム140より内側に張り出している。第1の絶縁体201は、上側エンドプレート104の下面全体を覆っている。
【0067】
第1の絶縁体201と末端セパレータ210の連結部218とは、Z軸方向において離間している。なお、ここでいう離間距離とは、第1の絶縁体201と、該連結部218の凹形状における底(内周面の最下点)との距離である。また、第1の絶縁体201と末端セパレータ210の連結部218との離間距離は、空気極側フレーム130のZ軸方向の長さより長い。空気極側フレーム130は、特許請求の範囲におけるシール部材に相当する。また、第1の絶縁体201と末端セパレータ210の連結部218との離間距離は、0.5mm以上であることが好ましい。また、上側エンドプレート104と末端セパレータ210における連結部218との離間距離は、末端セパレータ210における内側部216と外側部217との距離より長い。
【0068】
(第2の絶縁体202の構成)
Z軸方向視で、第2の絶縁体202の内周部は、全周にわたって、燃料極側フレーム140の内周部と同じ位置、または、該内周部の内周側であって、かつ、第1の絶縁体201の内周部より外周側に位置している。Z軸方向視で、第2の絶縁体202の外周部は、全周にわたって、燃料極側フレーム140の外周部と同じ位置、または、該外周部の外周側に位置している。すなわち、上側エンドプレート104に最も近い第1の絶縁体201だけが、末端セパレータ210の外側部217より内周側に延出している。これにより、不要に多くの絶縁部を使用することなく、末端セパレータ210と上側エンドプレート104との間に介在する第1の絶縁体201を末端セパレータ210から離間させることにより、末端セパレータ210の自由な変位が確保されている。
【0069】
A-5.本実施形態の効果:
(エンドプレート104,106の剛性)
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100では、各エンドプレート104,106は、3mm以下の薄板により形成されている。このため、従来の厚板のエンド部材を備える形態に比べて、燃料電池スタック100全体の軽量化を図ることができる。また、燃料電池スタック100全体の熱容量を低減できるため、燃料電池スタック100の温度制御の応答遅れに起因する燃料電池スタック100の起動と停止の動作遅れを抑制することができる。ただし、このような薄板のエンド部材を備える構成では、エンド部材の剛性が低いため、空気極側フレーム130等のコンプレッションシール部材からの反発力に起因してエンド部材が変形しやすい。
【0070】
これに対して、本実施形態では、エンドプレート104,106には、凸部320,520が形成されている。凸部320は、面方向に沿って延び、かつ、平面部310よりZ軸方向に突出している。このため、エンドプレート104,106の軽量化および熱容量の低減を図りつつ、エンドプレート104,106の剛性が向上する。このため、空気極側フレーム130等からの反発力に起因してエンドプレート104,106が変形することを抑制することができる。
【0071】
本実施形態では、各エンドプレート104,106のZ軸方向に平行な少なくとも1つの断面において、凸部320,520(外側凸部322,522、内側凸部324,524)が複数形成されている(
図2から
図4参照)。これにより、同断面において、凸部が1つだけ形成された構成に比べて、各エンドプレート104,106の剛性がさらに向上するため、コンプレッションシール部材(空気極側フレーム130等)からの反発力に起因してエンドプレート104,106が変形することを、より効果的に抑制することができる。
【0072】
本実施形態では、凸部320,520は、各エンドプレート104,106の外周部と内周部との両方に形成されている。これにより、凸部320,520が各エンドプレート104,106の外周部と内周部との一方だけに形成された形態に比べて、エンドプレート104,106の剛性がさらに向上するため、コンプレッションシール部材からの反発力に起因してエンドプレート104,106が変形することを、より効果的に抑制することができる。
【0073】
凸部320,520は、各エンドプレート104,106の全周にわたって形成されている。これにより、凸部320,520が、エンドプレート104,106の外周部の一部分だけに形成された構成に比べて、エンドプレート104,106の剛性がさらに向上するため、コンプレッションシール部材からの反発力に起因してエンド部材が変形することを、より効果的に抑制することができる。
【0074】
上側エンドプレート104には、隆起部330が形成されている。隆起部330は、上側エンドプレート104のZ軸方向に平行な少なくとも1つの断面において、平面部310の部分同士を連結し、Z軸方向に隆起した部分である。これにより、上側エンドプレート104の剛性がさらに向上し、コンプレッションシール部材からの反発力に起因して上側エンドプレート104が変形することを、より効果的に抑制することができる。
【0075】
平面部310,510からの凸部320,520の立ち上がり長さ(Z軸方向の長さ)は、平面部310,510の厚さより大きい。これにより、該立ち上がり長さが平面部310,510の厚さ以下である構成に比べて、エンドプレート104,106の剛性がさらに向上するため、コンプレッションシール部材からの反発力に起因してエンドプレート104,106が変形することを、より効果的に抑制することができる。
【0076】
Z軸方向視で、外側凸部322,522は、空気極側フレーム130に重なる位置に配置されている。これにより、いずれの凸部320,520も空気極側フレーム130に重ならない位置に配置された構成に比べて、空気極側フレーム130によるシール性能を向上させることができる。
【0077】
本実施形態では、エンドプレート104,106のそれぞれの表面には、不動態被膜(例えばアルミナ被膜)が形成されている。このような不動態被膜が形成される部材をエンドプレート104,106に用いる場合、エンドプレート104,106の肉厚を厚くすることが難しい。しかし、本実施形態のようにエンドプレート104,106に凸部320,520等を形成することにより、エンドプレート104,106の剛性を向上させることができるから特に有用である。
【0078】
凸部320,520と平面部310,510とがR部を介して連結されており、かつ、R部の内側面の半径は、平面部310,510の厚さより大きい。これにより、凸部320,520と平面部310,510との間のR面の半径が平面部310,510の厚さ以下である構成に比べて、凸部320,520と平面部310,510との境界部分に応力が集中することに起因して破損等することを抑制することができる。
【0079】
(上側エンドプレート104と末端セパレータ210との短絡抑制)
本実施形態では、上側エンドプレート104の剛性の向上のために104の面方向の幅が広く確保されており、Z軸方向視で、上側エンドプレート104(平面部310)の内周側が燃料極側フレーム140より内側に張り出している。このため、部材間の熱膨張差に起因して変化する末端セパレータ210と上側エンドプレート104とが接触して短絡しやすい。これに対して、本実施形態では、上側エンドプレート104と末端セパレータ210との間に第1の絶縁体201が介在しており、Z軸方向視で、第1の絶縁体201の内周部は、全周にわたって、末端セパレータ210の外側部217より内周側まで延出している。これにより、部材間の熱膨張差に起因して末端セパレータ210が変化しても、上側エンドプレート104と末端セパレータ210とが短絡することを抑制することができる。
【0080】
第1の絶縁体201と末端セパレータ210の連結部218とは、Z軸方向において離間している。これにより、末端セパレータ210の連結部218と第1の絶縁体201とが接触している構成に比べて、第1の絶縁体201の存在に起因して末端セパレータ210の変位が制約されることを抑制することができる。第1の絶縁体201と末端セパレータ210の連結部218との離間距離は、0.5mm以上であることが好ましい。これにより、末端セパレータ210における連結部218と第1の絶縁体201との離間距離が0.5mm未満である構成に比べて、第1の絶縁体201の存在に起因して末端セパレータ210の変位が制約されることを抑制することができる。第1の絶縁体201と末端セパレータ210の連結部218との離間距離は、空気極側フレーム130のZ軸方向の長さより長い。これにより、末端セパレータ210における連結部218と第1の絶縁体201との離間距離が空気極側フレーム130の上下方向の長さ以下である構成に比べて、第1の絶縁体201の存在に起因して末端セパレータ210の変位が制約されることを抑制することができる。末端セパレータ210における連結部218と第1の絶縁体201との離間距離が0.5mm以上である構成でもよいし、該離間距離が空気極側フレーム130の上下方向の長さ以上である構成であってもよい。
【0081】
上側エンドプレート104と末端セパレータ210における連結部218との離間距離は、末端セパレータ210における内側部216と外側部217との距離より長い。これにより、末端セパレータ210における連結部218と第1の絶縁体201との離間距離が末端セパレータ210における内側部216と外側部217との距離以下である構成に比べて、第1の絶縁体201の存在に起因して末端セパレータ210の変位が制約されることを抑制することができる。
【0082】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0083】
上記実施形態における燃料電池スタック100の構成や燃料電池スタック100を構成する各部分の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180が、連結部128,188を有しているが、単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180が、連結部128,188を有さなくてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、一対のエンドプレート104,106に孔32,34が形成されているが、一対のエンドプレート104,106の少なくとも一方について該孔32,34が形成されていなくてもよい。各エンドプレート104,106の孔32,34の輪郭線は、燃料極側フレーム140における孔141の輪郭線の内周側に位置していなくてもよい。また、一対のエンドプレート104,106の少なくとも一方は、3mmを超える厚さの厚板であってもよい。また、一対のエンドプレート104,106の少なくとも一方は、凸部320,520等を備えない全体として平板状であってもよい。また、上記実施形態では、一対のターミナルプレート410,420を備えていたが、一対のターミナルプレート410,420を備えずに、一対のエンドプレート104,106がターミナルプレートとして機能する形態であってもよい。この場合、末端セパレータは、発電ブロック103のZ軸方向の上端に位置するIC用セパレータ180であってもよい。
【0085】
上記実施形態では、凸部320,520は、平面部310,510からZ軸方向に突出していたが、凸部320,520は、平面部310,510に垂直な方向に対して傾斜していてもよい。平面部310,510に対する凸部320,520の傾斜角度は、70度以上であることが好ましい。また、各凸部320,520は、各エンドプレート104,106における全周にわたって形成されていたが、各凸部320,520は、各エンドプレート104,106における全周における一部分だけに形成されていてもよい。また、凸部320,520が各エンドプレート104,106の外周部と内周部とのいずれか一方だけに形成された形態であってもよい。平面部310,510からの凸部320,520の立ち上がり長さ(Z軸方向の長さ)は、平面部310,510の厚さ以下であってもよい。
【0086】
上側エンドプレート104は、隆起部330を備えない構成であってもよい。また、下側エンドプレート106は、隆起部を備える構成であってもよい。また、いずれの凸部320,520も空気極側フレーム130に重ならない位置に配置された構成であってもよい。
【0087】
上記実施形態において、エンドプレート104,106の表面に不動態被膜が形成されていなくてもよい。また、凸部320,520と平面部310,510との間のR面の半径が平面部310,510の厚さ以下である構成であってもよい。
【0088】
上記実施形態において、第1の絶縁体201と末端セパレータ210の連結部218とは接触していてもよい。また、末端セパレータ210における連結部218と第1の絶縁体201との離間距離が末端セパレータ210における内側部216と外側部217との距離以下である構成であってもよい。また、上記実施形態において、第2の絶縁体202を備えない構成、1枚だけ備える構成、3枚以上備える構成であってもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、インターコネクタ190は導電性の被覆層194を含んでいるが、インターコネクタ190が該被覆層194を含んでいなくてもよい。また、上記実施形態では、単セル110が反応防止層118を有しているが、単セル110が反応防止層118を有さないとしてもよい。また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数(発電単位102の個数)は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0090】
また、上記実施形態の燃料電池スタック100は、カウンターフロータイプのSOFCであるが、本明細書に開示される技術は、コフロータイプのSOFCにも同様に適用可能である。なお、コフロータイプのSOFCでは、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142と酸化剤ガス供給連通流路132とは、単セル110の一の辺に対向するように配置され、かつ、燃料ガス排出連通流路143と酸化剤ガス排出連通流路133とは、単セル110の該一の辺に対して単セル110の中心点を挟んで対向する他の辺に対向するように配置されているような構成を有している。また、本明細書に開示される技術は、クロスフロータイプのSOFCにも同様に適用可能である。
【0091】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池スタック100を対象としているが、本明細書に開示される技術は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルを複数備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの基本的な構成は、例えば特開2016-81813号公報に記載されているように公知であるが、おおよそ以下の通りである。すなわち、電解セルスタックの構成は、上述した実施形態の燃料電池スタック100の構成において、「発電単位」を「電解セル単位」と読み替え、「単セル」を「電解単セル」と読み替え、「酸化剤ガス供給マニホールド」を「空気排出マニホールド」と読み替え、「酸化剤ガス排出マニホールド」を「空気供給マニホールド」と読み替え、「燃料ガス供給マニホールド」を「水素排出マニホールド」と読み替え、「燃料ガス排出マニホールド」を「水蒸気供給マニホールド」と読み替え、「酸化剤ガス供給連通流路」を「空気排出連通流路」と読み替え、「酸化剤ガス排出連通流路」を「空気供給連通流路」と読み替え、「燃料ガス供給連通流路」を「水素排出連通流路」と読み替え、「燃料ガス排出連通流路」を「水蒸気供給連通流路」と読み替えた構成である。
【0092】
電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極(水素極)116がマイナス(陰極)となるように、電解セルスタックに電圧が印加される。また、ガス通路部材27を介して水蒸気供給マニホールドに原料ガスとしての水蒸気が供給される。なお、供給される水蒸気に、水素ガスが含まれていてもよい。水蒸気供給マニホールドに供給された水蒸気は、水蒸気供給マニホールドから各電解セル単位の水蒸気供給連通流路を介して燃料室176に供給され、各電解単セルにおける水の電気分解反応に供される。各電解単セルにおける水の電気分解反応により燃料室176で発生した水素ガスは、余った水蒸気と共に水素排出連通流路を介して水素排出マニホールドに排出され、水素排出マニホールドからガス通路部材27を経て電解セルスタックの外部に取り出される。
【0093】
また、電解セルスタックの運転の際には、電解セルスタックの温度の制御等のために、必要により空気が電解セルスタックの内部に供給される。この場合には、ガス通路部材27を介して空気供給マニホールドに供給された空気が、空気供給マニホールドから各電解セル単位の空気供給連通流路を介して、空気室166に供給される。空気室166に供給された空気は、空気極114で生成される酸素とともに空気排出連通流路を介して空気排出マニホールドに排出され、空気排出マニホールドからガス通路部材27を経て電解セルスタックの外部に排出される。
【0094】
このような構成の電解セルスタックにおいても、上記実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成を採用することにより、上記実施形態における燃料電池スタック100の作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0095】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本明細書に開示される技術は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0096】
22:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 32,34,131,141,412:孔 100:燃料電池スタック 102:発電単位 103:発電ブロック 104:上側エンドプレート 106:下側エンドプレート 108:連通孔 109:ボルト孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 118:反応防止層 120:単セル用セパレータ 121,181,211:貫通孔 124:接合部 125:ガラスシール部 126,186,216:内側部 127,187,217:外側部 128,188,218:連結部 130:空気極側フレーム 132:酸化剤ガス供給連通流路 133:酸化剤ガス排出連通流路 134:空気極側集電部 140:燃料極側フレーム 142:燃料ガス供給連通流路 143:燃料ガス排出連通流路 144:燃料極側集電部材 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:平板部 161:酸化剤ガス供給マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス供給マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 180:IC用セパレータ 189:下端プレート 190:インターコネクタ 194:被覆層 196:導電性接合材 200:絶縁部 201:第1の絶縁体 202:第2の絶縁体 210:末端セパレータ 220:上端プレート 310,510:平面部 320,520:凸部 322,522:外側凸部 324,524:内側凸部 330:隆起部 332:側壁 334:連結壁 336:封止壁 410:上側ターミナルプレート 420:下側ターミナルプレート FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス