(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】リチウムイオン電気化学的電池、その成分、その製造法およびその使用
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20230303BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20230303BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20230303BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20230303BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20230303BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20230303BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230303BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230303BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0567
H01M10/0565
H01M10/0568
H01M4/134
H01M4/40
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/62 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020198508
(22)【出願日】2020-11-30
(62)【分割の表示】P 2018172458の分割
【原出願日】2013-11-27
【審査請求日】2020-11-30
(32)【優先日】2012-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500287732
【氏名又は名称】シオン・パワー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】リャオ,ジャオフイ
(72)【発明者】
【氏名】スコーディリス-ケリー,チャリクリー
(72)【発明者】
【氏名】ミカーイリク,ユリー・ヴイ
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-197175(JP,A)
【文献】特開2010-067435(JP,A)
【文献】特開2011-204695(JP,A)
【文献】特表2010-511995(JP,A)
【文献】特開2000-040523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00
H01M 50/409
H01M 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム-イオン電気化学的電池であって、
金属酸化物カソード;
リチウム金属またはリチウム金属合金であるアノード;
アノードとカソードとの間のセパレーター;
1種以上の非水溶媒および1種以上のリチウム塩を含む非水電解質;ならびに
LiNO
3
を含み、
非水電解質が、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,3-ジオキソラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、およびスルホランのうちの1種以上を含み、
LiNO
3
が、非水電解質中に懸濁しており、そして
リチウム-イオン電気化学的電池が減圧密封されている、
前記リチウム-イオン電気化学的電池。
【請求項2】
リチウム-イオン電気化学的電池であって、
金属酸化物カソード;
リチウム金属またはリチウム金属合金であるアノード;
アノードとカソードとの間のセパレーター;
1種以上の非水溶媒および1種以上のリチウム塩を含む非水電解質;ならびに
LiNO
3
を含み、
LiNO
3
が非水電解質中に懸濁しており、そして
リチウム-イオン電気化学的電池が減圧密封されている、
前記リチウム-イオン電気化学的電池。
【請求項3】
前記カソードが、LiCoO
2、LiCo
xNi
(1-x)O
2(xはおおよそ0.0
5~0.8である)、LiCo
xNi
yMn
(1-x-y)O
2、LiMn
2O
4、およびこれらの組合せからなる群から選択される物質を含む、請求項1または2に記載の電気化学的電池。
【請求項4】
アノードが、
LiNO
3
を含む、請求項1または2に記載の電気化学的電池。
【請求項5】
LiNO
3
が、アノード上にイオン伝導性表面層を形成する、請求項1または2に記載の電気化学的電池。
【請求項6】
アノードが、リチウムホイル、および基体上に堆積したリチウムからなる群から選択される1種以上の物質を含む、請求項1または2に記載の電気化学的電池。
【請求項7】
LiNO
3
が、アノード、カソード、およびセパレーターのうちの1つ以上のものの一部を形成している、請求項1または2に記載の電気化学的電池。
【請求項8】
電解質がN-O添加剤をさらに含む、請求項1に記載の電気化学的電池。
【請求項9】
電解質が、30%~90%の1種以上の非水溶媒、0.1%~10%のN-O添加剤、4%以下の
LiNO
3
、および20%以下のLiTFSIを含む、請求項8に記載の電気化学的電池。
【請求項10】
電解質が、50%~85%の1種以上の非水溶媒、0.5%~7.5%のN-O添加剤、4%以下の
LiNO
3
、および4%~20%のLiTFSIを含む、請求項9に記載の電気化学的電池。
【請求項11】
金属酸化物カソードがLiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2を含む、請求項1または2に記載の電気化学的電池。
【請求項12】
放電容量比率が60サイクル後に0.8よりも大きい、請求項1に記載の電気化学的電池。
【請求項13】
金属酸化物カソードがLiNi
0.4Co
0.2Mn
0.4O
2を含む、請求項1に記載の電気化学的電池。
【請求項14】
金属酸化物カソードがLiNi
0.4Co
0.2O
2を含む、請求項1に記載の電気化学的電池。
【請求項15】
非水電解質が液体またはゲルであり、かつ、電気化学的電池の充電および放電のサイクルが加圧下で行われる、請求項1または2に記載の電気化学的電池。
【請求項16】
ハウジング;
ポジティブリード線;
ネガティブリード線;および
1以上の、請求項1~
15のいずれかに定義の電気化学的電池
を含むバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本願は、2013年3月12日に出願された米国特許出願第13/797,281号に対する優先権を主張し、当該出願は2012年12月17日に出願された米国予備特許出願第61/738,275号に対する優先権を主張する。これらの出願の開示を、本願の開示と矛盾しない程度まで、本願明細書に含める。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概して、リチウムイオン電気化学的電池およびリチウムイオン電気化学的電池構成成分に関する。さらに詳細には、本発明は、窒素含有化合物を含むリチウムイオン電気化学的電池、その構成成分、該電気化学的電池を含むバッテリー、ならびに該バッテリー、電気化学的電池および構成成分の形成方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
典型的な再充電可能なバッテリーに比較して、相対的に高いエネルギー密度および使用しないときに経時にわたって電荷の損失速度が遅いので、リチウムイオンバッテリーは、家庭用電化製品における使用や、防衛、航空宇宙、および自動車(例えば、電気自動車やハイブリッドカー)を含むその他の応用においてますます人気が上がってきた。リチウムイオンバッテリーは、種々の応用に相対的に良く作用するが、当該バッテリーは短寿命であり、該バッテリーが、特にリチウムをアノード物質として使用するときに、放電および再充電されるので、サイクル効率が下がる。
【0004】
リチウムイオンバッテリーは、一般に、1以上の電気化学的電池を含み、各電気化学的
電池はアノード、カソード、電解質、およびアノードとカソードとの間のセパレーターを含む。バッテリーの放電の間、リチウムイオンは、アノードからカソードへ、電気化学的電池の電解質およびセパレーターを介して電流を運ぶ。バッテリーの再充電のため、充分なバイアスの外部電流源をバッテリーに適用し、リチウムイオンを逆方向(カソードからアノードへそしてアノードにリデポジットへ)に流れを起こす。
【0005】
リチウムイオン電気化学的電池は、アノードとして炭素のような種々の材料を使用できる。しかし、リチウム金属は、例えば、リチウムインターカレートカーボンアノードのようなアノードと比較して(ここで、非電気活性材料の存在は、アノードの重量および容積を増加させ、それにより、電池のエネルギー密度を減少する)、その極度に軽量および高エネルギー密度のため、電気化学的電池のアノードとして使用するのに特に魅力的であり得る。これらの特徴は、低重量であることが重要である、携帯電話やラップトップコンピューターのようなポータブル電子器具ならびに電気自動車、軍事、および航空宇宙応用のバッテリーに高度に望ましい。
【0006】
残念なことに、リチウム金属をリチウムイオンバッテリーのアノードとして使用するとき、微細に分散した、高表面積リチウムの進行的形成が、電池を繰り返し充電したり放電したりした後、アノード表面で起こり得る。この高表面積リチウムは非常に反応性であり、電解質成分と反応するかまたはバルクアノード材料から電気的に単離するようになり得、順に、サイクル効率およびリチウムイオン電気的電池の寿命に悪い影響を与え得る。
【0007】
したがって、リチウムアノード、電池の構成成分を有する改良したリチウムイオン電池、当該電池を含むバッテリーおよび当該電池の形成方法および使用方法の改良が望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、概して、リチウムイオン電気化学的電池およびバッテリーに関し、さらに詳細には、リチウムアノード、カソード、電解質、および可溶性であることができ、相対的にもしくは実質的に固定されるか、またはその構成成分に対して実質的に不溶性である、1種以上の窒素含有化合物を含有するリチウムイオン電気化学的電池、ならびにかかる電池を含有するバッテリーに関する。驚いたことにおよび予期できないことに、リチウムイオン電気化学的電池への窒素含有化合物の添加が、放電や充電後のアノード構造を改良し、サイクル効率およびリチウムイオン電気化学的電池およびバッテリーの寿命を向上させることが見出された。
【0009】
本発明の種々の実施態様では、リチウムイオン電気化学的電池は、リチウムを含有するアノード、カソード(例えば、金属酸化物を含む)、セパレーター、電解質、および1種以上の窒素含有化合物を含み、該窒素含有化合物は、例えば、可溶性であり、実質的に固定されおよび/または実質的に不溶性窒素含有化合物であり、それは、最初、1以上のアノード、カソード、セパレーター、および/または電解質の一部を形成できる。電気化学的電池の操作またはサイクルの間に、窒素含有化合物は、リチウムアノード上に均一イオン伝導性表面層を形成できる。イオン伝導性表面層の形成は、アノード上の樹枝状形成および高表面積リチウムの成長を抑制することにより、電池の充電の間にアノード上にリチウムの均一な堆積を容易にする。
【0010】
実施態様の種々の局面では、窒素含有化合物は、無機硝酸塩、有機硝酸塩、無機亜硝酸塩、有機亜硝酸塩、ニトロ化合物、並びにその他のN-Oおよびアミン化合物、例えば、アミン、硝酸根(nitrate)、亜硝酸根(nitrite)、またはニトロ官能基で官能化されたポリマー等からなる群から選択される。実施態様の別の局面では、窒素含有化合物(類)は、電池の特定の領域に主に制限(confined or restricted)される(例えば、アノード/電解
質界面)。窒素含有化合物(複数)の可動性を制限することは利点があり得る。所望の結果(例えば、サイクル効率およびサイクル寿命の向上等)を、相対的に少量の窒素含有化合物で達成することができ、一方で、さもなければもたらされ得るいずれかのガス生成を軽減するからである。
【0011】
本発明の種々の実施態様の典型的局面にしたがう電気化学的電池には、電解質、リチウムを含有するアノードおよび場合によりバインダー(複数)、コーティング(複数)および/または層(複数)があり、ここで、アノードは本明細書中で記載した1種以上の窒素
含有化合物を含み、金属酸化物を含むカソード、およびセパレーターを含む。アノードは、窒素含有化合物を含むバインダーおよび/または窒素含有化合物を含むポリマー層を含むことができる。
【0012】
本発明のさらに追加の実施態様では、電気化学的電池は、上述の1種以上の窒素含有化合物を含む電解質(例えば、液体、固体、または気体)、リチウムを含有するアノード、金属酸化物を含有するカソード、およびセパレーターを含む。
【0013】
本発明の別の実施態様では、電気化学的電池で使用するためのカソードは、リチウム化した金属酸化物および上述した通りの窒素含有化合物を含む。該カソードは、1種以上の窒素含有化合物を含むバインダーを含んでもよく、または該カソードは、1種以上の窒素含有化合物を含む1以上のポリマー層を含んでもよい。
【0014】
さらに、追加の実施態様では、バッテリーは1以上のリチウムイオン電気化学的電池を含み、ここで、1以上の電池は、リチウムアノード、金属酸化物カソード、電解質、およびセパレーターを含み、そして、1以上のアノード、カソード、電解質、およびセパレー
ターは、窒素含有化合物を含む。
【0015】
本発明の例示的実施例を添付の図面と関連づけて記載する。
【0016】
図面は縮尺を示す必要のないことが了解されよう。例えば、図面内の要素の寸法は、本発明の例証した実施態様の理解を増す助けのために他の要素に関連して拡大されるかもしれない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の典型的実施態様にしたがう窒素含有化合物を含有する電気化学的電池を例証する。
【
図2】
図2は、本発明の種々の典型的実施態様にしたがうアノードを例証する。
【
図3】
図3は、本発明の種々の追加の典型的実施態様にしたがうアノードを例証する。
【
図4】
図4は、電気化学的電池のサイクル寿命の機能として放電容量を例証する。
【
図5】
図5は、電気化学的電池のサイクル寿命の機能として再充電比率を例証する。
【
図6】
図6は、リチウムアノードのSEM像を例証する。
【
図7】
図7は、本発明の典型的実施態様にしたがう電池のサイクルの機能として放電容量を例証する。
【
図8】
図8は、本発明の典型的実施態様にしたがう電池のサイクルの機能として再充電比率を例証する。
【
図9】
図9は、本発明の典型的実施態様にしたがう電池のサイクルの機能として放電能力を例証する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に与える本発明の典型的実施態様の記述は単なる例示であり、例証のみであることを意図し、下記の記載は、本明細書中で開示する発明の範囲を制限することを意図していない。
【0019】
本発明の種々の典型的実施態様は、改良したリチウムイオン電気化学的電池、その構成成分、とりわけ、自動車、医療器具、携帯用電子機器、航空産業、軍事産業、および航空宇宙産業を含む様々な応用に適するものを提供する。典型的実施態様では、典型的リチウムイオン電気化学的電池は、1種以上の窒素含有化合物を含み、典型的なリチウムアノード、リチウムイオン電池と比較して、サイクル効率を向上させ、サイクル寿命を向上させる。この向上サイクル効率およびサイクル寿命は、改良したアノード構造からもたらされると考えられ、それは、さもなければ、電気化学的電池の放電および蓄電後により悪くなる。
【0020】
図1は、本発明の種々の典型的実施態様にしたがう、窒素含有化合物を含む、電気化学的電池100を例証する。電池100は、カソード102(場合により、カソードコーティングまたはカソード層110を含む)、アノード104、電解質106,セパレーター108を含み、場合により、集電体112、114を含む。
【0021】
カソード102は活性物質を含む。カソード102に使用するのに適切なカソード活性物質および明細書中で記載する電気化学的電池には、金属酸化物、例えば、LiCoO2、LiCoxNi(l-x)O2(式中、xはおおよそ0.05~0.8(例:LiCo0.2Ni0.8O2)、LiCoxNiyMn(l-x-y)(例:LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2またはLiNi0.4Co0.2Mn0.4O)である)、LiMn2O4、およびそれらの組み合わせがある。以下により詳細に示すようにカソード102または層110は1以上の窒素含有物質をさらに含むことができる。
【0022】
本発明の種々の典型的実施態様にしたがう「窒素含有物質」には、N-O(例:ニトロ)および/またはアミン官能基を含む化合物がある。本実施態様の種々の典型的局面では、1種以上の窒素含有化合物には、1種以上の無機硝酸化物、有機硝酸化物、無機亜硝酸化物、有機亜硝酸化物、ニトロ化合物、アミン、ならびにモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを含むその他の化合物であって、ポリエチレンイミン、ポリホスファゼン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアニリン、高分子電解質(例:官能基としてニトロ脂肪族部分を有する)、およびアミン基、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアリルアミドおよびポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアミド等からなる群から選択される化合物等がある。
【0023】
使用できる無機硝酸化物の例には、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸セシウム、硝酸バリウム、および硝酸アンモニウム等があるが、これらに限定されない。使用できる有機硝酸化物の例には、硝酸ピリジン、硝酸グアニジン、および硝酸ジアルキルイミダゾリウム等があるが、これらに限定されない。特定の例では、窒素含有化合物として使用するための硝酸化物は、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸セシウム、硝酸バリウム、硝酸アンモニウム、硝酸ピリジン、および硝酸ジアルキルイミダゾリウムからなる群から選択され、例えば、硝酸リチウム、硝酸ピリジンから選択される。
【0024】
使用できる無機亜硝酸化物の例には、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸セシウム、亜硝酸バリウム、および亜硝酸アンモニウム等があるが、これらに限定されない。使用できる亜有機硝酸化物の例には、亜硝酸エチル、亜硝酸プロピル、亜硝酸ブチル、亜硝酸ペンチル、および亜硝酸オクチル等があるが、これらに限定されない。特定の例では、窒素含有化合物として使用するための亜硝酸化物は、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸セシウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸アンモニウム、および亜硝酸エチルからなる群から選択され、例えば、亜硝酸リチウムから選択される。
【0025】
使用できるニトロ化合物には、ニトロメタン、ニトロプロパン、ニトロブタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロトルエン、ジニトロトルエン、ニトロピリジン、ジニトロピリジン等があるが、これらに限定されない。
【0026】
使用できるその他のN-O化合物の例には、ピリジンn-オキシド、アルキルピリジンN-オキシド、およびテトラメチルピリジンN-オキシル(TEMPO)等があるがこれらに限定されない。
【0027】
種々の典型的実施態様にしたがって使用するためのポリマーおよび高分子電解質は、例えば、硝酸と芳香族基を有するモノマー、オリゴマー、および/またはポリマーとで直接ニトロ化反応により合成でき、ニトロ官能基は、モノマー、オリゴマー、および/またはポリマー中に組み込まれる。典型的高分子電解質に適しているモノマー、オリゴマー、および/またはポリマーにはポリスチレン、ポリアリーレン、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレン等がある。
【0028】
窒素含有物質は、無機硝酸化物、有機硝酸化物、無機亜硝酸化物、有機亜硝酸化物、ニトロ化合物、アミン、および上述したようなその他の化合物のような可溶性化合物であることができる。或いは、窒素含有物質は、電解質中の実質的に不溶性の化合物であることもできる。本明細書中で使用する「実質的に不溶性」という用語は、電解質中に1%未満または0.5%未満の溶解度を意味する(別記しない限り、%は重量%または質量%であ
る)。
【0029】
実質的に不溶性の化合物は、例えば、窒素含有化合物に不溶性カチオン、モノマー、またはポリマーを結合させることにより形成することができ、ポリマーの例はポリスチレンもしくはセルロース等であり、ポリニトロスチレンもしくはニトロセルロースを形成する。1つのこのような不溶性化合物は亜硝酸オクチルである。さらにもしくは或いは、K、Mg、Ca、Sr、Alの塩、芳香族炭化水素またはブチルエーテルのようなエーテル等の化合物を電解質に添加し、窒素含有化合物(例えば、無機硝酸化物、有機硝酸化物、無機亜硝酸化物、有機亜硝酸化物、有機にトロ化合物等)の溶解度を低下させることができ、このようにして、可溶性もしくは可動性窒素含有物質は、電解質中で実質的に不溶性および/または実質的に不動性になる。
【0030】
窒素含有物質の可動性および可溶性を低下させて実質的に不溶性の窒素含有化合物を形成する別のアプローチには、N-O(例:ニトロ)および/またはアミン官能基を、例えば、約8~約25炭素原子を有する長炭素鎖に結合し、電解質溶液に面する活性基(例:硝酸根)とミセル型構造を形成することがある。
【0031】
図1に言及すると、金属酸化物に加えて、カソード102は結合剤、電解質、および/または導電性添加剤を含むことができる。本発明の種々の典型的実施態様では、金属酸化物、結合剤、電解質、および/または導電性添加剤は官能化(例:ニトロまたはアミン官能基で)され、これらは窒素含有化合物である。
【0032】
カソード102は、1種以上の導電性充填剤を含み、電子伝導率を向上させることができる。導電性充填剤は物質の電気的伝導性を向上させることができ、例えば、カーボンブラック(例:Vulcan XC72Rカーボンブラック、Printex XE2、またはAkzo Nobel Ketjen EC-600JD)、グラファイトファイバー、グラファイトフィブリル、グラファイトパウダー(例:Fluka#50870)、活性化カーボンファイバー、カーボンファブリック、非活性化カーボンナノファイバーのような導電性カーボン等がある。導電性充填剤の他の非限定的例には、金属被覆ガラス粒子、金属粒子、金属繊維、ナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤ、金属フレーク、金属粉末、および金属メッシュ等がある。一定の実施態様では、導電性充填剤は、導電性プラスチックであることができる。適切な電気活性導電性ポリマーには、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、およびポリアセチレンからなる群から選択される電気活性および電子的導電性ポリマー等があるが、これらに限定されない。当業者に公知の他の導電性物質も導電性充填剤として使用できる。存在する場合、導電性充填剤の量は、カソード活性層の2~30重量%の範囲で存在することができる。本発明の種々の典型的実施態様では、該充填剤は、N-Oまたはアミン基のような窒素基で官能化される。カソード102は、金属酸化物、アルミナ、シリカ、および遷移金属カルコゲニドを含む他の添加剤も含むことができ、アミンやN-O基のような窒素含有基で、追加的にまたは代替的に官能化されることができる。
【0033】
カソード102が結合剤を含む場合、結合剤材料は高分子物質であることができる。ポリマー結合剤材料の例には、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)系ポリマー、例えば、ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVDF)、PVF2、およびそれらと、ヘキサフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ポリ(ビニルフルオリド)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリブタジエン、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースとのコポリマーもしくはタートリマーおよびそれとスチレン-ブタジエンゴム、ポリアクリロニトリル、エチレン-プロピレン-ジエン(EPDM)ゴム、エチレンプロピレンジエンターポリマー、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)ポリイミドもし
くはエチレン-酢酸ビニルコポリマーとのブレンド等があるが、これらに限定されない。ある場合では、結合剤材料は水性流体キャリヤー中に実質的に可溶性であることができ、セルロース誘導体、典型的には、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド(PA)、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキシド(PEO)等があるが、これらに限定されない。一実施態様では、結合材料はポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-5-メチレン-2-ノルボルネン)(EPMN)であり、それは電池構成成分に対して化学的に中性(例:不活性)であり得る。UV硬化性アクリレート、UV硬化性メタクリレート、および熱硬化性ジビニルエーテルも使用できる。存在する場合、結合剤の量は、カソード活性層の2~30重量%の範囲である。本発明の種々実施態様では、結合剤は、N-O(例:ニトロ)やアミン基のような窒素基で官能化される。
【0034】
ある実施態様では、カソード102は、導電性多孔性支持構造も含むことができる。多孔性支持構造はいずれの適切な形態を含むことができる。ある場合では、多孔性支持構造は、バラバラの粒子の多孔性塊を含むことができ、その範囲内で該粒子は多孔性または非多孔性であることができる。例えば、多孔性支持構造は、結合剤で多孔性または非多孔性粒子を混合することにより形成され、多孔性塊を形成する。電極活性物質は、粒子内の該粒子および/または多孔間の間隔内に配置され(多孔性粒子が使用される場合)、本明細
書中で記載する電極を形成する。
【0035】
ある実施態様では、多孔性支持構造は、「多孔性連続(porous continuous)」構造であ
ることができる。多孔性連続構造は、本明細書中で使用しているように、その中に多孔を含有する連続固体構造を意味し、孔を確定する固体の領域間の相対的な連続表面を持つ。多孔性連続構造の例には、例えば、その容積の中に複数の孔を有する材料がある(例:多孔性炭素粒子、金属フォーム等)。当業者は、例えば、2構造のSEM像を比較することにより、多孔性連続構造と、例えば、多孔性連続構造でない構造との間で識別することができるが、しかし、バラバラの粒子の多孔性塊であり(バラバラの粒子間で間隔および/
またはその他の穴が多孔性であると考えられる)。本発明の種々の実施態様では、多孔性支持は、N-Oおよび/またはアミン基のような官能性窒素基を含み、窒素含有化合物である。
【0036】
多孔性支持構造は、いずれかの適切な形体または寸法であることができる。例えば、該支持構造は、いずれかの適切な最大断面寸法(例:約10mm未満、約1mm未満、約500μm未満)の多孔性連続粒子であることができる。ある場合では、多孔性支持構造(多孔性連続ほか)は、相対的に大きな最大断面寸法(例:少なくとも約500μm、少なくとも約1mm、少なくとも約10mm、少なくとも約10cm、約1mm~約50cm、約10mm~約50cm、あるいは、約10mm~約10cm)を有することができる。ある実施態様では、電極内の多孔性支持構造の最大断面寸法は、多孔性連続構造を使用して形成された電極の最大断面寸法の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%であることができる。
【0037】
特定の例では、カソード102は、約20%までの、または約0.5%~約4%の、または約1%~約2%の窒素含有材料、例えば、官能N-Oもしくはアミン基を有する材料、約40%までの、または約2%~約30%、または約10~約20%の充填剤、および約40%までの、または約2%~約30%、または約10~約20%の結合剤を有することができる。
【0038】
前述したように、窒素含有材料は、官能化ポリマー、金属酸化物、充填剤、および/ま
たは結合剤であることができる。追加的にまたは代替的に、窒素含有材料は、層110の形体であることができ、あるいは、例えば、1種以上のモノマー、オリゴマー、および/または以下に示すポリマーからなる群の1種以上から選択されるポリマーから形成されることができる。該ポリマーは、ポリエチレンイミン、ポリホスファゼン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアニリン、高分子電解質(例:官能基としてニトロ脂肪族部分を有する)、およびアミン基を有するもの、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアリルアミドおよびポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアミド等からなる群である。
【0039】
アノード104は、与えられたカソード共に与えられた電気化学的電池に使用するのに適したいずれの構造であってもよい。アノード104用の、リチウムを含む適切な活性物質には、リチウム金属、例えば、リチウムホイルおよび支持体(例えば、プラスチックフィルム)、上に堆積したリチウム等、およびリチウム合金、例えば、リチウム-アルミニ
ウムアロイおよびリチウム-錫アロイ等があるが、これらに限定されない。
【0040】
一定の実施態様では、アノードの厚さは、例えば、おおよそ0を超え、数ミクロンまで変動できる。例えば、アノードは、200μm未満、100μm未満、50μm未満、25μm未満、10μm未満、または5μm未満およびおおよそ0μmを超える厚さを有することができる。典型的な電池では、電池が最初にアセンブリされるとき、リチウムの大部分はカソードであることができる。この場合、電池はアノード上にリチウム無しで形成でき、アノードは、集電体上に、一層以上のポリマーおよび1種以上のリチウムイオン伝導性セラミックもしくはガラスセラミック層を含む保護構造を最初含み、それにより、充電時、リチウムは保護構造を介して集電体上にメッキする。典型的な保護構造は、出願番号13/524,662号(発明の名称:電極用のメッキ技術;出願日:2012年6月15日)に記載されている(本特許出願の内容が本願明細書の開示に矛盾しない限り参照として本明細書に含める)。アノード厚さの選択は、例えば、過剰量の所望リチウム、サイクル寿命、およびカソード電極の厚さ等の電池設計パラメーターに依存する。一実施態様では、アノード活性層の厚さは約2~100μmの範囲(例:約5~50μm、約5~25μm、または約10~25μm)である。
【0041】
アノード104は、多層を含むことができる。アノードのこれらの層は、当業界で一般的に公知の種々のいずれかの方法により蒸着できる、例えば、これらの方法には、物理的もしくは化学的蒸着法、押出、または電気メッキ等がある。適当な物理的もしくは化学的蒸着法には、熱蒸発(抵抗性、誘導性、放射性、および電子ビーム加熱等があるがこれらに限定されない)、スパッタリング(ダイオード、DCマグネトロン、RF、RFマグネトロン、パルス、ドュアルマグネトロン、AC、MF、および反応性等があるが、これらに限定されない)、化学的蒸着、プラズマ強化化学的蒸着、レーザー強化化学的蒸着、イオンメッキ、陰極アーク、ジェット蒸着、レーザー切断等があるが、これらに限定されない。
【0042】
層の蒸着は、層に不純物を導入し得る、または層の所望の形態に悪影響を与える等の、蒸着した層における副作用を可及的に少なくするために真空または不活性雰囲気中で行う。ある実施態様では、アノード活性層および多層構造の層は、多段階蒸着装置において連続的な方式で蒸着される。
【0043】
あるいは、アノードがリチウムホイルまたはリチウムホイルおよび基体を含む場合、ホイルおよび基体は、公知の積層法により共に積層され得る。
【0044】
図2は、本発明の種々の典型的実施態様にしたがう、ベース電極材料層202(例:リチウムのような電気活性材料を含む)および多層化構造204を含む、アノード104を
例証する。本明細書中ある場合には、アノードは、「アノード系材料」、「アノード活性材料」等と呼び、いずれかの保護構造と共にアノードは、まとめて「アノード」と呼ぶ。例示的実施態様では、多層構造204は、シングルイオン伝導材料206、ベース電極材料とシングルイオン伝導材料との間に配置したポリマー層208、および電極とポリマー層との間に配置した分離層210(例:電極のプラズマ処理よりもたらされる層)を含む。以下により詳細に論じるように、アノード104の種々の構成成分は、本発明の種々の典型的実施態様にしたがってニトロ基で官能化できる。
【0045】
多層化構造204はリチウムイオンの通過を可能にし、さもなければアノードに損傷を与える他の成分の通過を妨げる。多層化構造204は欠点の数を減少させることができ、それにより、ベース電極材料の表面の少なくとも幾らかを電流伝導に関与させるのを強制し、高電流密度誘導表面損傷を遅らせ、および/または一定の種(例:電解質)からアノードを保護するために有効なバリヤーとして作用する。
【0046】
ある実施態様では、シングルイオン伝導層206材料は非ポリマーである。一定の実施態様では、シングルイオン伝導材料層は一部または全部リチウムに対して高度に伝導性であり、電子に対して低い導電性の金属層により確定される。換言すれば、シングルイオン伝導材料は、層を通過することから、一方でリチウムイオンを許容するが電子または他のイオンを妨げるように選択され得る。金属層は金属アロイ層、例えば、リチウム化金属層を含むことができる。金属アロイ層中のリチウム含量は、例えば、金属の特定の選択、所望のリチウムイオン伝導性、および金属アロイ層の所望の可撓性に依存して、約0.5重量%~約20重量%で変動できる。シングルイオン伝導材料に使用するのに適した金属には、Al、Zn、Mg、Ag、Pb、Cd、Bi、Ga、In、Ge、Sb、As、およびSn等があるがこれらに限定されない。時々、上記列挙したもののような金属の組み合わせを、シングルイオン伝導材料に使用できる。
【0047】
他の実施態様では、シングルイオン伝導層206材料はセラミックス層等があり、例えば、リチウムイオンに対してシングルイオン伝導性ガラス伝導体がある。適切なガラスには、当業界で公知であるような、「変性」部分および「ネットワーク」部分を含有するとして特徴付けられ得るものがあるが、これらに限定されない。変性剤にはガラス中の金属イオン伝導性の金属酸化物等があり得る。ネットワーク部分は、例えば、金属酸化物や硫化物のような金属カルコゲニド等があり得る。シングルイオン伝導層は、窒化リチウム、ケイ酸リチウム、ホウ酸リチウム、アルミン酸リチウム、リン酸リチウムオキシニトリド、リチウムシリコスルフィド、リチウムゲルマノスルフィド、リチウム酸化物(例:Li2O、LiO、LiO2、LiRO2、ここで、Rは希土類金属である)、リチウムランタンオキシド、リチウムチタンオキシド、リチウムボロスルフィド、リチウムアルミノスルフィド、およびリチウムホスホスルフィド、ならびにその組み合わせからなる群から選択されるガラス様材料を含むガラス様層であり得る。一実施態様では、シングルイオン伝導層は、電解質の形態の窒化リン酸リチウムを含む。
【0048】
シングルイオン伝導材料層206の厚さ(例:多層化構造内)は、約1nm~約10μmの範囲にわたって変動できる。例えば、シングルイオン伝導材料層は1~10nm厚さの間、10~100nmの厚さの間、100~1000nm厚さの間、1~5μm厚さの間、または5~10μm厚さであることができる。シングルイオン伝導材料層の厚さは、例えば、10μm厚さ以下、5μm厚さ以下、1000nm厚さ以下、500nm厚さ以下、250nm厚さ以下、100nm厚さ以下、50nm厚さ以下、25nm厚さ以下、または10nm厚さ以下であることができる。ある場合では、シングルイオン伝導層は、多層化構造のポリマー層と同じ厚さを有する。
【0049】
シングルイオン伝導層206は、スパッタリング、電子ビーム蒸発、真空熱蒸発、レー
ザーアブレ-ション、化学蒸着(CVD)、熱蒸発、プラズマ強化化学真空蒸着(PECVD)、レーザー強化化学蒸着、およびジェット蒸着のような適切ないずれかの方法により蒸着する。使用する技術は、蒸着される層に関連する因子、例えば、蒸着される材料の性質や層の厚さ等に依存する。
【0050】
幾つかの実施態様では、多層化構造(例:層208等)に使用するのに適したポリマー層には、リチウムに対して高度に伝導性で電子に対して最小限に導電性あるポリマー等がある。このようなポリマーの例には、イオン的に伝導性のポリマー、スルホン化ポリマー、および炭化水素ポリマー等がある。ポリマーの選択は、電池に使用する電解質およびカソードの特性を含む多くの因子に依存する。適切なイオン的に伝導性ポリマーには、例えば、リチウム電気化学電池のために固体ポリマー電解質およびゲルポリマー電解質に有用であると公知の伝導性ポリマー、例えば、ポリエチレンオキシド等がある。
【0051】
適切なスルホン化ポリマーには、例えば、スルホン化シロキサンポリマー、スルホン化ポリスチレン-エチレン-ブチレンポリマー、およびスルホン化ポリスチレンポリマー等があり得る。適切な炭化水素ポリマーには、例えば、エチレン-プロピレンポリマー、ポリスチレンおよび/またはポリマー等があり得る。
【0052】
多層構造204のポリマー層208には、例えば、アルキルアクリレート、グリコールアクリレート、ポリグリコールアクリレート、ポリグリコールビニルエーテル、および/またはポリグリコールジビニルエーテルのようなモノマーの重合反応から形成される架橋済みポリマー材料等であることもできる。例えば、かかる架橋済みポリマー材料の一はポリジビニルポリ(エチレングリコール)である。架橋済みポリマー材料は、イオン伝導性を向上させるために、例えば、リチウム塩のような塩をさらに含むことができる。一実施態様では、多層構造のポリマー層は架橋済みポリマーを含む。
【0053】
ポリマー層に使用するのに適することのできるその他のポリマー類には、ポリアミン(例:ポリ(エチレンイミン)およびポリプロピレンイミン(PPI));ポリアミド(例:ポリアミド(ナイロン)、ポリ(e-カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66);ポリイミド(例:ポリイミド、ポリニトリル、およびポリ(ピロメリトイミド-1,4-ジフェニルエーテル(カプトン));ビニルポリマー(例:ポリアクリルアミド、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルクロリド)、ポリ(ビニルフルオリド)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ビニルポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、およびポリ(イソヘキシルシアノアクリレート));ポリアセタール;ポリオレフィン(例:ポリ(ブテン1)、ポリ(ペンテン-2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン);ポリエステル(例:ポリカルボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート);ポリエーテル(例:ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO));ビニリデンポリマー(例:ポリイソブチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ビニリデンクロリド)、およびポリ(ビニリデンフルオリド));ポリアラミド(例:ポリ(イミノ-1,3-フェニレンイミノイソフタロイル)およびポリ(イミノ-1,4-フェニレンイミノテトラフタロイル));ポリヘテロ芳香族化合物(例:ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビソキサゾール(PBO)およびポリベンゾビスチアゾール(PBT));ポリヘテロ環状化合物(例:ポリピロール);ポリウレタン;フェノール性ポリマー(例:フェノール-ホルムアルデヒド);ポリアルキン(例:ポリアセチレン);ポリジエン(例:1,2-ポリブタジエン、シスもしくはトランス-1,4-ポリブタジエン);ポリシロキサン(例:ポ
リジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリジエチルシロキサン(PDES)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)、およびポリメチルフェニルシロキサン(PMPS));ならびに無機ポリマー(例:ポリホスファゼン、ポリホスホネート、ポリシラン、ポリシラザン)等があるがこれらに限定されない。
【0054】
上記列挙し本明細書中で記載するポリマーは、イオン伝導性を向上させるために、例えば、リチウム塩(例:LiSCN,LiBr、LiI、LiClO4、LiAsF6、LiSO3CF3、LiSO3CH3、LiBF4、LiB(Ph)4、LiPF6、LiC(SO2CF3)3、およびLiN(SO2CF3)2)のような塩をさらに含むことができる。
【0055】
ポリマー層208の厚さは、例えば、約0.1μmから約100μmまでの範囲にわたって変動できる。該ポリマー層の厚さは、例えば、アノードまたはカソードを隣接して配置されているかどうか、セパレーターが電池中にも存在しているかどうか、および/またはバッテリー中のポリマー層の数等に依存し得る。例えば、該ポリマー層の厚さは、0.1~1μm間の厚さ、1~5μm間の厚さ、5~10μm間の厚さ、10~30μm間の厚さ、または30~50μm間の厚さ、50~70μm間の厚さ、または50~100μm間の厚さであることができる。幾つかの実施態様では、ポリマー層の厚さは、例えば、50μm厚さ以下、25μm厚さ以下、10μm厚さ以下、5μm厚さ以下、2.5μm厚さ以下、1μm厚さ以下、0.5μm厚さ以下、0.1μm厚さ以下であることができる。
【0056】
ポリマー層は、例えば、電子ビーム蒸発、真空熱蒸発、レーザーアブレ-ション、化学蒸着、熱蒸発、プラズマ補助化学真空蒸着、レーザー強化化学蒸着、ジェット蒸着、および押出のような方法により形成され得る。該ポリマー層は、スピンコーティング技法によっても形成できる。ポリマー層を形成するのに使用される技法は、例えば、堆積される材料の種類、または層の厚さのようないずれかの適切な変動要素に依存し得る。本発明の様々な実施態様では、該ポリマー層は、本明細書中で記載したような窒素基で官能化される。
【0057】
特定の一実施態様において、
図2に例証されているアノード104に関する説明で注記されているように、電解質106からベース電極材料層202を分離する、保護構造204には、ベース電極材料層202または分離層210に隣接するポリマー層208等がある。別の配列では、ポリマー層は、ベース電極材料層または分離層に隣接する第一層である必要でない。種々の多層構造を含む、種々の層の配列を以下に記載するが、ベース電極材料層に隣接する第一層はポリマー層であっても、ポリマー層でなくてもよい。特定の配列の層のいずれかが示されている総ての配列において、層の順番の代替は本発明の範囲内であることは了解される。これらのオプションにかかわらず、本発明の一局面には、ベース電極材料層または分離層のいずれかに直ちに隣接する非脆性ポリマーにより実現される特殊な利点等がある。
【0058】
多層化構造には、必要に応じて種々の多くのポリマー/シングルイオン導電性ペア等があり得る。一般に、多層化構造はnポリマー/シングルイオン導電性ペアを有することができ、ここで、nは電池の特定の性能基準に基づいて決定することができる。例えば、nは、1に等しいかまたはそれを超える整数、または2、3、4、5、6、7、10、15、20、40、60、100、または1000等に等しいかそれを超えることができる。
【0059】
他の実施態様では、多層化構造は、シングルイオン伝導層よりも多数のポリマー層、またはポリマー層よりも多数のシングルイオン伝導層を含むことができる。例えば、多層化構造は、nポリマー層およびn+1シングルイオン伝導層、またはnシングルイオン伝導
層およびn+1ポリマー層を含むことができ、ここで、nは2を超えるかもしくは2に等しい。例えば、nは2、3、4、5、6、または7に等しいかそれよりも高い。しかし、上述したように、少なくとも1つのポリマー層に密接に隣接し、そしてイオン伝導層の少なくとも50%、70%、90%、または95%であり、このような層はどちらか一方側上のポリマー層に密接に隣接している。
【0060】
別の実施態様は、ベース電極材料からなる2層間に配置した埋め込まれた層(例:シングルイオン伝導材料層のような保護層の)を含む。これは「ラマノード(lamanode)」構造と称される。
図3はベースの電極物質層からなる第一の層202(例えばリチウム、これはLiリザーバとも称される)、埋め込み層302、およびベースの電極物質を含む第二の層304(作用Li層)を有する典型的なアノード104を例示する。
図3に例示するように、第二の層304はベースの電極物質層202と電解質106の間に配置されている。第二の層304は電解質と直接接触しているか、あるいは何らかの形態の表面層(例えば、電極安定化構造またはここで説明しているもののような多層構造)を介して電解質と間接的に接触している。埋め込み層302によって分離された各々のベースの電極物質層を有する二層アノードの機能は、以下の説明から明らかになるであろう。層302が例示されていて、この説明においては「埋め込み」と記述されているが、この層は部分的または完全に埋め込まれている必要はないことに言及しておく。多くの場合または大部分の場合において、層302は実質的に薄くて二面のある構造であり、それぞれの面がベースの電極物質で被覆されているが、しかしその端部においてはベースの電極物質で覆われていない。
【0061】
一般に、
図3に示す配置の操作において、アノードの第二の層304の幾らかまたは全部は、放電すると(それが電解質の中へ移動するリチウムイオンに転換されるときに)アノードから「失われる」。充電されると、リチウムイオンがアノードの上にリチウム金属としてめっきされるときに、それは層302の上に304の部分(または第二の層304の少なくとも幾らかの部分)としてめっきされる。当業者であれば、ここで説明しているもののような電気化学電池においては、電池の各々の充電/放電のサイクルにおいて少量の総体的なリチウムの喪失があることを知っている。
図3に例示する配置において、層304の厚さ(または層304の質量)は、電池が完全に放電したときに層304の大部分または全部が失われることとなるように選択することができる(すなわち、カソードの完全な「充足」。これは、当業者であれば理解するであろう制限によって充電のプロセスにカソードがもはや参加できなくなった時点をいう)。
【0062】
特定の態様において、層302はリチウムイオンに対して伝導性のものになるように選択される。埋め込み層は、最初のサイクルの高いLi+フラックスがLi層の最上面を損傷するときに下のLi層が損傷するのを遮蔽することができる。したがって、特定の放電サイクルにおいて層304の全部が消費されると、さらなる放電によって層202からのリチウムの酸化が生じ、層302をリチウムイオンが通過して、電解質の中へリチウムイオンが放出される。当然のことながら、層304は、それの全部またはほとんど全部が最初の放電時に消費されるものであって、特定の質量を有する必要はない。何回かの放電/充電のサイクルを行うことができ、各々のサイクルを通して本質的に少量のリチウムの損失があり、それにより202の部分からリチウムを取り出して層302を介して電解質の中へ送る必要が生じる。
【0063】
幾つかの実施態様において、埋め込み層302は0.01~1μmの間の厚さを有することができ、そしてそれは、例えば埋め込み層を形成するのに用いられる材料の種類および/またはその材料を堆積させる方法に依存し得る。例えば、埋め込み層の厚さは0.01~0.1μmの間、0.1~0.5μmの間、または0.5~1μmの間であることができる。他の態様において、より厚い埋め込み層が含まれる。例えば、埋め込み層は1~
10μmの間、10~50μmの間、または50~100μmの間の厚さを有することができる。
【0064】
幾つかの場合において、埋め込まれる材料はポリマー、例えば、リチウムイオン伝導性である上述したものを含むポリマーで形成することができる。ポリマーのフィルムを、真空を用いるPML法、VMT法またはPECVD法などの技術を用いて形成させることができる。他の場合においては、埋め込み層は金属または材料を含み得る。金属と半導体は、例えばスパッタリングにより形成することができる。
【0065】
特定の例として、アノード104はリチウムを含み、そして窒素含有物質からなる少なくとも一つの層を含む。窒素含有物質は官能化された表面であることができ、この表面は、例えば、アミン基またはニトロ基を有し、あるいは1種以上のモノマー、オリゴマーおよび/または次のものからなる群から選択されるポリマーを含む:ポリエチレンイミン、ポリホスファゼン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアニリン、高分子電解質(例えば、官能基としてニトロ脂肪族部分を有するもの)、およびアミン基を有するもの、例えばポリアクリルアミド、ポリアリルアミドおよびポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミド、その他同種類のもの。アノードの窒素含有化合物の部分のパーセントは、約20%以下、約0.5%から約5%までの範囲、あるいは約1%から約2%までの範囲とすることができる。
【0066】
電解質106はイオンを貯蔵して輸送するための媒質として機能することができ、また固体電解質およびゲル状電解質の特殊な場合には、これらの材料はさらにアノード104とカソード102の間のセパレーター(例えばセパレーター108)として機能し得る。アノードとカソードの間でイオンを貯蔵して輸送することのできる、あらゆる適当な液体、固体またはゲル材料を用いてもよい。電解質106は、アノード104とカソード102の間の短絡を防ぐために電子非伝導性であることができる。
【0067】
電解質はイオン伝導性を与えるための1種以上のイオン性電解質の塩と1種以上の液体電解質の溶媒、ゲル状ポリマー材料またはポリマー材料を含むことができる。
【0068】
適切な非水電解質は、液体電解質、ゲル状ポリマー電解質および固体ポリマー電解質からなる群から選択される1種以上の物質を含む有機電解質を含むことができる。
【0069】
有用な非水液体電解質溶媒の例には、非水有機溶媒、例えば、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,3-ジオキソラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、スルホランおよびその組み合わせ等があるが、これらに限定はされない。
【0070】
溶媒の特定の混合物には、1,3-ジオキソランおよびジメトキシエタン、1,3-ジオキソランおよびジメチレングリコールジメチルエーテル、1,3-ジオキソランおよびトリエチレングリコールジメチルエーテル、ならびに1,3-ジオキソランおよびスルホランであるが、これらに限定されない。該混合物中の2溶媒の重量比は、約5~95から95~5まで変動できる。幾つかの実施態様では、溶媒混合物はジオキソランを含む(例:40重量%を超えるジオキソラン)。
【0071】
液体電解質溶媒はゲル状ポリマー電解質のための可塑剤としても有用になり得る。有用なゲル状ポリマー電解質の例としては、(これらに限定はされないが)ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリエーテル、スルホン化ポリイミド、ペルフルオロ膜(NAFION樹脂
)、ポリジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、これらの誘導体、これらのコポリマー、これらの架橋したネットワーク構造、およびこれらのブレンドからなる群から選択される1種以上のポリマーを含むもの(場合により、1種以上の可塑剤)があるが、これらに限定されない。
【0072】
有用な固体ポリマー電解質の例には、ポリエチレングリコール、モノ、ジ、トリアクリレートポリマー、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(アクリロ-ニトリル)(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびポリ(ビニリデンフルオライド)(PVDF)、これらの誘導体、これらのコポリマー、これらの架橋したおよびネットワーク構造体、およびこれらのブレンドからなる群から選択される1種以上のポリマーを含むものがあるが、これらに限定はされない。
【0073】
電解質溶媒、ゲル化剤、および電解質を形成する為に当業界で公知のポリマーに加えて、電解質は、イオン伝導性を向上させるために、1種以上のイオン性電解質塩(同様に当業界で公知)をさらに含む。
【0074】
本明細書中で記載する電解質に使用するためのイオン性電解質塩の例には、LiPF6、LiBF4、リチウムビス(オキサレート)ボレート、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiAsF6、LiClO4およびLiC(CF3SO2)3等があるがこれらに限定されない。溶媒へのイオン性リチウム塩は任意である。さらに、無機硝酸塩、有機硝酸塩、無機亜硝酸塩のようなイオン性N-O添加剤、またはポリ電解質が使用されるとき、電解質にイオン伝導性を与えることができ、その場合、追加のイオン性リチウム電解質塩は必須であり得る。
【0075】
電気化学電池の充電/放電を行う間に不純物の形成および/または電極と電解質材料を含めた電気化学的な活物質の消耗を低減または防止することのできる添加剤を、本明細書中で記載している電気化学的電池に組み入れてもよい。
【0076】
幾つかの場合において、有機金属化合物のような添加剤を電解質の中に組み入れることができ、それにより電池の少なくとも二つの構成要素または化学種の間の相互作用を低下または防止して、電池の効率および/または寿命を増大させることができる。典型的に、電気化学的電池は充電/放電のサイクルを受け、それに伴って、充電するときにはアノード(例:ベースの電極材料)の表面上に金属(例:リチウム金属)が堆積し、また放電するときにはアノード表面でその金属が反応して金属イオンを形成する。その金属イオンはアノード表面から、カソードとアノードを接続する電解質物質の中へ拡散し得る。このようなプロセスの効率と一様性は電池性能に影響を与え得る。例えば、リチウム金属は電解質の1種以上の化学種と相互作用して、リチウム含有不純物を実質的に不可逆的に形成し、その結果、電池の1つ以上の活性成分(例:リチウム、電解質の溶媒)の望ましくない消耗が起き得る。本明細書中で記載している特定の態様では、電池の電解質の中に一定の添加剤を組み入れることによって、そのような相互作用が減少して、電池のサイクル寿命および/または性能が向上することが見いだされた。
【0077】
幾つかの態様において、添加剤は電池内での活物質(例:電極、電解質)の消耗を低下または防止することのできるいずれかの適当な化学種またはその塩であることができ、これは例えば、電池内でのリチウム含有不純物の形成(これはリチウムと電解質物質との間の反応により形成し得る)を低減させることによって行われる。幾つかの態様において、添加剤は有機化合物または有機金属化合物、ポリマー、その塩、またはこれらの組み合わせであることができる。幾つかの態様において、添加剤は中性の化学種であることができる。幾つかの態様において、添加剤は荷電した化学種であることができる。本明細書中で
記載している添加剤は電池の1つ以上の構成成分(例:電解質)に対して可溶性であることもできる。幾つかの場合において、添加剤は電気化学的に活性な種であってもよい。例えば、添加剤はリチウムおよび/または電解質の消耗を低下または防止することのできるリチウム塩であることができ、電気化学的に活性なリチウム塩として用いることもできる。
【0078】
電池中での不純物の形成および/または活物質の消耗を抑制(例:低下または防止)するのに足る量で添加剤が電気化学的電池の中に存在(例:添加)することができる。本明細書中で「電池中での不純物の形成および/または活物質の消耗を抑制するのに足る量」とは、添加剤のない本質的に同一の電池と比較して、不純物の形成および/または活物質の消耗に影響を与える(例:低下させる)のに充分なほどに多くの量で添加剤が存在することを意味する。例えば、痕跡量の添加剤は、電池中での活物質の消耗を抑制するのに充分ではないだろう。当業者であれば、電気化学的デバイス中で活物質の消耗に影響するほどに足る量で添加剤が存在するかどうかを判断できるだろう。例えば、電気化学的電池の構成成分(例:電解質)の中に添加剤を組み入れることができ、そして多くの充電/放電のサイクルを通して電気化学的電池をモニターし、それにより電極または電解質の量、厚さまたは形態の何らかの変化あるいは電池性能の何らかの変化を観察することができる。
【0079】
多くの充電/放電のサイクルを通しての活物質における変化量の決定により、不純物の形成および/または活物質の消耗を抑制するのに足る量で添加剤が存在するか否かを判定することができる。幾つかの場合において、充電/放電のサイクルの本質的に同一のセットを通して、添加剤のない本質的に同一の電池と比較して、電池における不純物の形成および/または活物質の消耗を少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、あるいは幾つかの場合においては100%抑制するのに足る量で電気化学電池に添加剤を添加できる。
【0080】
幾つかの場合において、添加剤は、アノードのリチウムと電解質中の溶媒(例えば、エステル、エーテル、アセタール、ケタール等)との間の反応の生成物と同じ化学構造を有することができる。このような溶媒の例には、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジオキサン、エチレンカーボネート、およびジメチルカーボネート等があるが、これらに限定されない。
【0081】
幾つかの場合において、本明細書中で記載している添加剤はポリマーと関連づけることができる。例えば、添加剤を、ポリマー分子と組み合わせることができ、あるいはポリマー分子に結合させることができる。幾つかの場合においては、添加剤はポリマーであることができる。例えば、添加剤は式R’-(O-Li)nを有することができ、ここでR’はア
ルキルまたはアルコキシアルキルである。幾つかの実施態様では、添加剤は電気化学電池に添加され、このとき添加剤は電気化学的に活性な種である。例えば、添加剤は電解質の塩として用いることができ、電池の充電および/または放電を行う間に1つ以上のプロセスを促進することができる。幾つかの場合において、添加剤は電池の1つ以上の構成成分と実質的に可溶性または混和性であってもよい。幾つかの場合において、添加剤は電解質に対して実質的に可溶性の塩であってもよい。添加剤は電池中での不純物の形成および/または活物質の消耗を低減させるか、または防止するために用い、ならびに電池中での充電と放電のプロセスを促進させるために用いることができる。
【0082】
本明細書中で説明している添加剤を組み入れることにより、添加剤のない本質的に同一の電池において用いられる量と比較して、より少ない量のリチウムおよび/または電解質を電気化学的電池の中で用いることを可能にできる。上述したように、本明細書中で説明している添加剤のない電池においては、電池の充電と放電のサイクルを行う間にリチウム含有不純物を生成し、また活物質(例:リチウム、電解質)の消耗を被り得る。幾つかの
場合において、多数回の充電と放電のサイクルを行った後に、リチウム含有不純物を生成する反応は安定化し、そして/または自己抑制を開始し、それにより実質的に何らの追加の活物質も消耗しなくなり、そして電池は残りの活物質で機能できる。本明細書中で説明している添加剤のない電池では、この「安定化」は、かなりの量の活物質が消費されて電池の性能が低下した後にだけ達する。したがって、幾つかの場合において、活物質が消費される間に物質が失われることに適応して電池の性能を保護するために、相対的に大量のリチウムおよび/または電解質を電池の中に組み入れた。
【0083】
したがって、本明細書中で説明している添加剤を組み入れることにより、活物質の消耗を低下および/または防止させることができ、それにより電気化学的電池の中に大量のリチウムおよび/または電解質を含める必要がなくなる。例えば、電池を使用する前に、あるいは電池の寿命の初期段階(例:5回の充電と放電のサイクル未満)で、添加剤を電池の中に組み入れることができ、それにより電池の充電または放電を行ったときに活物質の消耗がほとんど生じないか、あるいは実質的に全く生じない。電池の充電と放電を行う間に活物質の喪失に適応する必要性が低下および/または解消することによって、本明細書中で説明している電池とデバイスを製作するのに用いるリチウムの量は相対的に少なくなるだろう。幾つかの態様において、本明細書中で説明しているデバイスは、その寿命の中で5回よりも少ない回数で充電と放電を行った電気化学電池を含むものであり、このとき、当該電池はリチウムを含むアノード、カソードおよび電解質を含み、アノードはリチウムを電池の1回の完全な放電のサイクルを行う間にイオン化することのできる量の5倍以下の量で含んでいる。幾つかの場合において、アノードは電池の1回の完全な放電のサイクルを行う間にイオン化することのできるリチウムの量の4倍以下、3倍以下または2倍以下を含む。
【0084】
幾つかの実施態様では、製作する間に電気化学的電池に添加される電解質の中に添加剤が添加される場合、その添加剤を、電解質の中に入ることのできるものとは別の電池成分の一部として電池中に最初に導入できる。添加剤を液体、ゲルまたは固体のポリマー電解質の中に組み入れることができる。幾つかの実施態様では、添加剤を、製作プロセスにおいてカソードの処方中にまたはセパレーター中に組み入れることができ、ただし、この場合は、それが電解質の中に充分な濃度で入るようなやり方で含めるようにする。したがって、電池の放電と充電を行う間に、カソード処方またはセパレーター中に組み入れた添加剤は、少なくとも部分的に電解質の中に溶解し得る。
【0085】
幾つかの実施態様では、上述した窒素含有化合物を添加剤として使用できる。電解質106中に含まれるとき、電解質中の窒素含有化合物の濃度は、約0.01m~約2.0(例:約0.1mから約1.5mまでまたは約0.2mから約1.0まで)であることができる。添加リチウム塩を含まない実施態様で使用するときのイオン性窒素含有添加剤の濃度は、約0.2mから約2.0mまでで変動できる。
【0086】
幾つかの実施態様では、本明細書中で説明する電気化学的電池は、電解質組成物が電池の異なる部分に分離されるように適合されて配置される。そのような分離により、電気化学的電池の一部から特定の種が隔離されるか、あるいはその種にその部分が晒される量が、少なくとも減少するかもしれない。それは、このタイプのデバイスの電極の上またはその内部に一定の固体が堆積するのを防ぐことを含めて、様々な目的のために行われる。
【0087】
本明細書中で説明する電解質組成物の分離は様々なやり方で行うことができる。一技法では、デバイスの中のある位置にポリマー(これはゲルであってもよい)が配置され、その位置は、ポリマーに対して相対的高い親和性を有する特定の電解質溶媒が存在するのが望ましい位置である。別の一技法では、二つの異なるポリマーがデバイスの中の特定の位置に配置され、その特定の位置とは、二つの異なる電解質溶媒がポリマーのうちの1つに
対して相対的に大きな親和性をそれぞれが有するような位置であるのが望ましい。同様の配置は、二つよりも多いポリマーを用いることによっても考えられる。お互いに対して、またデバイスの他の構成要素に対して相対的に不混和性の電解質溶媒を使用して配置して、それによりデバイスの少なくとも一つの構成要素の特定の種への曝露を制御するようにすることができ、これは、その種が他の溶媒の中よりもある一つの溶媒の中で可溶性が高いかもしれないという事実を利用するものである。この一般的な分離の方法論については、上で概略的に説明した方法、または他の方法、または任意の組み合わせを用いることができる。
【0088】
本明細書中で説明するように、電気化学的電池は、活性なアノード種としてリチウム(例:リチウム金属、リチウム挿入化合物、またはリチウム合金)を有するアノードとリチウム化金属酸化物カソードとを含むことができる。これらの実施態様では、リチウムバッテリーに適した電解質は、アノードの方へ分配(partition)しアノードに対して好まし
い第一電解質溶媒(例:ジオキソラン(DOL))(本明細書中では「アノード側の電解質溶媒」と呼ぶ)とカソードの方へ分配し、カソードに対して好ましい第二電解質溶媒(例:1,2-ジメトキシエタン(DME))(本明細書中では「カソード側の電解質溶媒」と呼ぶ)を含む不均質電解質を含むことができる。幾つかの実施態様では、アノード側の電解質溶媒はリチウム金属に対してカソード側の電解質溶媒よりも相対的に低い反応性を有する。カソード側の電解質溶媒はリチウム金属に対してより反応性であることができる。電気化学電池を操作する間に、アノード側の電解質溶媒がアノードにおいて不均衡に存在し、カソード側の電解質溶媒がカソードにおいて不均衡に存在するように電解質溶媒を分離させることによって、電気化学的電池は双方の電解質溶媒の望ましい特性からの利益を得ることができる。特に、アノードの消耗を低減させることができ、結果として、電気化学電池は長いサイクル寿命を有することができる。さらに、本明細書中で説明するバッテリーは高い比エネルギー(例:350Wh/kgを超える)と向上した安全性を示し、
および/または広範囲の温度(例:-70℃から+75℃まで)において動作可能となる。電池中での特定の位置において他の種に対して一つの種または溶媒が不均衡に存在するということは、第一の種または溶媒がその位置に(例:電池の電極の表面に)少なくとも2:1のモル比または重量比で、あるいは5:1、10:1、50:1、または100:1あるいはもっと大きな比率で存在することを意味する。
【0089】
本明細書中で用いるとき、「不均質な電解質」とは、少なくとも二種の異なる液体溶媒を含む電解質である(本明細書中では、しばしば、第一および第二電解質溶媒、またはアノード側およびカソード側の電解質溶媒と言うことがある)。それら二つの異なる液体溶媒は互いに混和性または不混和性であることができるが、本発明の多くの局面では、電解質系は、溶媒の大部分が分離して、少なくともその1種類は電池の少なくとも一つの構成成分から隔離されうるという程度に不混和性であるような(あるいは電池中で不混和性になりうるような)1種以上の溶媒を含む。不均質な電解質は液体、ゲルまたはこれらの組み合わせの形態であることができる。
【0090】
本明細書中で記載する一定の実施態様が、電気化学的電池の動作の間に分配しうる少なくとも二種の電解質溶媒を有する不均質電解質に関連するとき、一目的は、自発的溶媒混合、すなわち、二種の不混和性液体からなるエマルションの形成、の可能性を防止または低下させることができることにある。以下により詳細に説明するように、これは、幾つかの態様では、例えば、その電極(例:アノード)で不均衡に存在する、ポリマーゲル電解質、ガラス様ポリマーまたはより高粘度の液体を形成することによって、少なくとも1つの電解質溶媒を該電極において「固定する」ことによって達成することができる。
【0091】
幾つかの実施態様では、アノードは、該アノードの多層構造に隣接するポリマー層を含む(例:外側層として配置)。該ポリマー層は、幾つかの場合では、ポリマーゲルまたは
ガラス様ポリマーの形態であることができる。ポリマー層は不均質な電解質のうちの一つの電解質溶媒に対して親和性を有することができ、それにより、電気化学的電池の動作の間に、第一電解質溶媒はアノードにおいて不均衡に存在し、一方、第二電解質溶媒はポリマー層から実質的に排除されて、カソードにおいて不均衡に存在する。例えば、第一電解質溶媒は主として、アノードに隣接するポリマー層において存在することができる。第一電解質溶媒はアノードの近くに存在するので、それは一般に、リチウムに対する低い反応性(例:高いリチウムのサイクル性を可能にする)、合理的なリチウムイオンの伝導性といった1つ以上の特性を有するように選択される。第二電解質溶媒はカソードにおいて不均衡に存在することができ、例えば、実質的にセパレーター、カソードに隣接するポリマー層、および/またはカソードのベースの電極材料層(例えば、カソード活物質の層)の中に存在できる。例えば、第二電解質溶媒は、主としてカソードに隣接するポリマー層、主としてベースの電極材料層の中、またはこれらを組み合わせたものの中に存在できる。幾つかの場合では、第二電解質溶媒は本質的にアノードと接触していない。第二電解質溶媒は、カソードの性能に対して有利な特性、例えば、高いリチウムイオンの伝導性を有することができ、そして広い液体状態の温度範囲を有することができる。幾つかの場合においては、第二電解質溶媒は第一電解質溶媒よりもリチウムに対してより高い反応性を有する。したがって、電気化学的電池の動作の間は、第二電解質溶媒をカソードにおいて(すなわち、アノードから離して)存在させるのが望ましく、それによってアノードにおけるその濃度と反応性を効果的に低下させることができる。
【0092】
上で説明したように、不均質な電解質の第一電解質溶媒は、多層構造体に隣接して配置されるポリマー層の中に存在することによってアノードにおいて不均衡に存在できる。したがって、ポリマー層の物質の組成を、該ポリマーが第二電解質溶媒と比較して第一電解質溶媒に対して相対的に高い親和性(第一電解質溶媒の中での高い溶解性)を有するように選択できる。例えば、幾つかの実施態様では、ポリマー層は、モノマー、第一電解質溶媒、そして場合により他の成分(例:架橋剤、リチウム塩等)を混合し、得られた混合物をアノード上に配置することによって、ゲルの形態で調製される。モノマーを様々な方法(例:ラジカル開始剤、紫外線放射、電子ビームまたは触媒(例:酸、塩基または繊維金属触媒)を用いる方法)によって重合させ、ゲル状電解質を形成することができる。重合は混合物をアノード上に配置する前と後のいずれで行なってもよい。電池のその他の構成要素をアセンブリした後に、該電池に第二電解質溶媒を満たすことができる。第二電解質溶媒をポリマー層から排除できる(その理由は、例えば、ポリマー層中にすでに存在する第一電解質溶媒との当該ポリマーの高い親和性のため、および/または第一電解質溶媒と第二電解質溶媒との間の不混和性のためである)。幾つかの場合では、第二電解質溶媒をセパレーターおよび/またはカソードの中の空間(例:細孔)に充填できる。幾つかの実施態様では、このプロセスを容易にするために、電気化学的電池をアセンブリする前にカソードを乾燥できる。追加として、および/または代替として、カソード(例:カソードのベース電極物質層)は、第二電解質溶媒に高い親和性を有するポリマーを含むことができる。ベース電極物質層中のポリマーは粒子の形態であることができる。幾つかの場合では、第二電解質は、少なくとも一部は、カソードに隣接して配置されるポリマー層の中に存在することができる。
【0093】
別の実施態様では、ポリマー層をアノードで形成し、電池のアセンブリ前に乾燥する。次いで、第一および第二電解質溶媒を含む不均質な電解質を電池に充填することができる。ポリマー層を第一電解質溶媒に対して高い親和性を有するように(そして/または、セパレーターおよび/またはカソードが第二電解質溶媒に対して高い親和性を有するように)選択する場合、第一および第二電解質溶媒の少なくとも一部を、それらを電池中に導入したときに分配することができる。さらに別の実施態様では、第一および第二電解質溶媒の分配を、電池の最初の放電を開始した後に行うことができる。例えば、バッテリーを動作させる間に熱が発生するので、ポリマー層と第一電解質溶媒との間の親和性は増大し得
る(そして/または、セパレーターおよび/またはカソードと第二電解質溶媒との間の親和性も増大し得る)。したがって、電池の動作の間に電解質溶媒のかなりの程度の分配が生じ得る。さらに、より低い温度で、この効果は不可逆的であり得、そのため第一電解質溶媒はポリマー層中に閉じ込められ、第二電解質溶媒はセパレーターおよび/またはカソードの細孔中に閉じ込められる。
【0094】
幾つかの場合では、電気化学的電池の構成要素(例:ポリマー層)は、使用する前に(例えば、熱を用いて)予備処理をすることができ、それにより所望程度のポリマー/電解質溶媒相互作用に影響を与え得る。電解質溶媒を分配させるための他の方法も可能である。
【0095】
別の実施態様では、ポリマー層をアノードに堆積し、(当該ポリマー層を含めた)アノードを第一電解質溶媒に晒す。この曝露によって、第一電解質溶媒をポリマー中に吸収させることができる。カソードをアノードに隣接して配置させることによって電池を形成でき、それによりポリマー層をアノードとカソードとの間に配置する。次いで、カソードを第二電解質溶媒に晒すことができ、例えば、それにより第二電解質溶媒の少なくとも一部がカソード中に吸収される。他の実施態様では、アノードとカソードのアセンブリ前に、カソードを第二電解質溶媒に晒すことができる。場合により、カソードは、第一電解質溶媒よりも第二の電解質溶媒を優先的に吸収するポリマー層を含むことができる。幾つかの態様では、例えば、適切なポリマーおよび/またはアノードおよび/またはカソードを形成するために用いられる物質を選択することによって、第一および第二電解質溶媒の少なくとも一部を電池中で分離させることができる。例えば、より高い割合の第一電解質溶媒がアノードにおいて存在し、そしてより高い割合の第二電解質溶媒がカソードにおいて存在することができる。
【0096】
さらに別の実施態様では、電気化学的電池はアノードまたはカソードにおける分配のために特に使用されるポリマー層を含まない。セパレーターは、該セパレーターのカソード側よりもアノード側に近い位置で別の組成物を含むことができ、アノード側は第一溶媒に対してより高い親和性を有し、カソード側は第二溶媒に対してより高い親和性を有するようにする。追加として、および/または代替として、例えばカソードを第二電解質溶媒に対して高い親和性を有する成分を含有するように製作することによって、第二電解質溶媒を、カソードにおいて不均衡的に存在するようにすることができる。
【0097】
本明細書中で説明する実施態様の幾つかでは、電気化学的電池には、第一および第二電解質溶媒を含む不均質な電解質が充填することができ、電解質溶媒の分配(partitioning)は、電池の最初の放電が開始した後に起こり得る。したがって、幾つかの実施態様では、第一および第二電解質溶媒は、バッテリーの最初の放電が開始前には混和性であり、開始後には不混和性であり得る。他の実施態様では、第一および第二電解質溶媒は、電池の最初の放電が開始する前には混和性であるが、しかしそれらの電解質溶媒は、電池の動作中に電解質溶媒が加熱されることにより、不混和性になる。さらに別の実施態様では、第一および第二電解質溶媒は、電池の最初の放電が開始する前後で不混和性である。例えば、第一および第二電解質溶媒は室温において本質的に不混和性であり、バッテリーの動作中も不混和性であり得る。有利には、幾つかの実施態様では、電池のサイクルが行われる間に固体の膜が電極の体積変化を生じさ電池ときに、一方がアノードにおいて不均衡的に存在し、他方がカソードにおいて不均衡的に存在するような二つの不混和性の液体電解質溶媒はバッテリーに付加的な機械的応力を生じさせない。
【0098】
本明細書中で記載するように、幾つかの実施態様では、電解質溶媒に対して親和性を有するポリマーをカソードの中に(例えば、ベース電極物質層の中に)分散させることができる。例えば、カソードの活物質層は、その中に配合させる粉末形態のポリマー物質を含
むことができる。幾つかの場合では、そのポリマー物質はカソード層中の不溶性成分である。例えば、ポリマー物質は、カソードの活物質を溶解させるのに用いられる溶媒に不溶性であることができる。ポリマーは、適切な粒子サイズを有するように得るか、改質することができ、カソードスラリー中に配合することによってカソード全体わたって分散させることができる。不溶性のポリマーとカソードの活物質層とを組み合わせることの一つの利点は、ポリマーを、活性炭素部位を被覆しない、それを吸着しない、および/またはそれをブロックしない分離した粒子として残すことができることである。しかし、他の場合では、ポリマー物質をカソード層中のカソードバインダーとして溶解させるか、あるいは部分的に溶解させることができる。
【0099】
層内に分散させた1種以上のポリマー(例:カソード中に分散させた不溶性ポリマー粒子)を含む一定の態様では、当該ポリマーは任意の適切な粒子サイズを有することができる。ポリマー粒子の平均直径は、例えば、100μm以下、70μm以下、50μm以下、30μm以下、15μm以下、10μm以下、または5μm以下であることができる。当然であるが、様々な範囲のポリマー粒子サイズを使用できる。例えば、一実施態様では、ポリマー粒子は、d10=5μm、d50=12μm、およびd97=55μmのサイズを有することができ、これらは、粒子の10%が5μm未満であること、粒子の50%が12μm未満であること、そして粒子の3%のみが55μmを超えて測定される粒子であることを意味する。
【0100】
電解質溶媒を分配(partitioning)するのに適切なポリマー物質は、本明細書中で説明するポリマー、例えば、ポリマー層(例:多層保護構造体の一部としてのポリマー層)のために適したポリマー物質に関して前述したものを含むことができる。幾つかの実施態様では、単一ポリマー層が電気化学的電池のアノードまたはカソードと接触している。しかし、他の態様では、一層よりも多いポリマー層がアノードまたはカソードと関連することができる。例えば、アノード(またはカソード)と接触しているポリマー層を、順に被覆した1層よりも多いポリマー層で形成することができる。その連続ポリマーは、例えば、第一ポリマーと第二ポリマーを含むことができ、それら第一および第二ポリマーは同じでも、異なることができる。追加のポリマー、例えば、4番目、5番目または6番目のポリマー層を用いることもできる。場合により、各々のポリマー層は1種以上の充填剤またはその他の成分(例:架橋剤、リチウム塩等)を含むことができる。
【0101】
ポリマー層の厚さは、例えば、約0.1μmから約100μmまでの範囲にわたって変化できる。ポリマー層の厚さは、例えば、それがアノードまたはカソードに隣接して配置されるか、バッテリー中にセパレーターも存在するか、および/または電池内のポリマー層の数、に依存し得る。例えば、ポリマー層の厚さは0.1~1μmの間の厚さ、1~5μmの間の厚さ、5~10μmの間の厚さ、10~30μmの間の厚さ、あるいは30~50μmの間の厚さ、50~70μmの間の厚さ、あるいは50~100μmの間の厚さであることができる。幾つかの実施態様では、ポリマー層の厚さは、例えば、50μm以下の厚さ、25μm以下の厚さ、10μm以下の厚さ、5μm以下の厚さ、2.5μm以下の厚さ、1μm以下の厚さ、0.5μm以下の厚さ、あるいは0.1μm以下の厚さであることができる。
【0102】
前述したように、本発明のさらなる典型的な実施態様では、電解質106は不溶性のカチオン、モノマー、オリゴマーまたはポリマーに結合した窒素含有基を含み、それにより電解質中で不溶性窒素含有物質を形成する。追加として、あるいは代替として、K、Mg、Ca、Sr、Alの塩、芳香族炭化水素、またはエーテル(例えばブチルエーテル)のような化合物を電解質に添加し、それによって、例えば、無機硝酸塩、有機硝酸塩、無機亜硝酸塩、有機亜硝酸塩、有機ニトロ化合物等の窒素含有化合物の溶解度を低下させることができ、その結果、本明細書中で記載するいずれかの窒素含有化合物も、本明細書中で
定義した実質的に不溶性の窒素含有化合物になる。
【0103】
本発明の様々な典型的な実施態様では、電解質106は約30%~約90%、または約50%~約85%、または約60%~約80%の溶媒、約0.1%~約10%、または約0.5%~約7.5%、または約1%~約5%の窒素含有添加剤を含み、および約1%~約20%、または約1%~約10%、または約1%~約5%、または4%以下の実質的に不溶性の窒素含有物質、および約20%以下、または約4%~約20%、または約6%~約16%、または約8%~約12%の塩(例:LiTFSI)を含む。
【0104】
再び
図1を参照すると、本発明の様々な実施態様では、電気化学的電池100はカソード102とアノード104との間に置いたセパレーター108を含む。該セパレーターは、短絡を防ぐためにアノードとカソードを互いに分離または絶縁する固体の非導電性または絶縁性の物質であることができる。セパレーターの細孔に部分的か、または大部分を電解質を満たすことができる。
【0105】
セパレーターは、電池を組み立てる間にアノードとカソードとともに挿入される多孔性で自立性のフィルムとして供給することができる。あるいは、多孔性セパレーター層を電極のうちの一方の表面に直接施用できる。
【0106】
様々なセパレーター材料が当業界で知られている。適切な固体で多孔質のセパレーター物質の例には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ガラス繊維濾紙、およびセラミック材料があるが、これらに限定はされない。本発明において用いるのに適したセパレーターおよびセパレーター物質のさらなる例には、微孔質キセロゲル層(例えば、微孔質の擬似ベーマイト層)を含むものであり、これは自立性のフィルムとして、あるいは電極のうちの一方に直接塗布することによって付与することができる。固体電解質とゲル状電解質も、それらの電解質の機能に加えてセパレーターとしても機能し、これはアノードとカソードの間でイオンを移送させる。
【0107】
本発明の様々な実施態様では、セパレーター108は1種以上の窒素含有物質、例えば、1種以上のモノマー、オリゴマーおよび/または次のものからなる群から選択されるポリマーを含むことができる:すなわち、ポリエチレンイミン、ポリホスファゼン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアニリン、高分子電解質(例:官能基としてニトロ脂肪族部分を有するもの)、およびアミン基を有するもの、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアリルアミドおよびポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミド等である。
【0108】
セパレーター108中の窒素含有物質の組成は、100%以下または約30%~約60%であることができる。セパレーターは電気化学的電池の重量を基準に約20%以下または約4%~約6%であることができる。
【0109】
電気化学的電池は任意の適切な集電体112、114を有することができる。集電体は、電極の全体を通して発生した電流を効率的に集めるのに、また外部回路に通じる電気接点を取り付けるための効率的な表面を与えるのに有用である。広範囲の集電体が当業界で知られている。適切な集電体には、例えば、金属箔(例えばアルミニウム箔)、ポリマーフィルム、金属化ポリマーフィルム(例えば、アルミニウムで被覆したポリエステルフィルムなどのアルミニウムで被覆したプラスチックフィルム)、導電性ポリマーフィルム、導電性コーティングを有するポリマーフィルム、導電性金属コーティングを有する導電性ポリマーフィルム、および中に導電性粒子が分散したポリマーフィルム等が含まれ得る。
【0110】
幾つかの実施態様では、集電体には、アルミニウム、銅、クロム、ステンレス鋼および
ニッケルまたはこれらの金属の合金または複数の合金のような1種以上の導電性金属等を含む。その他の集電体には、例えば、エキスパンデッドメタル、金属メッシュ、金属グリッド、エキスパンデッドメタルグリッド、金属ウール、炭素繊維織物、炭素メッシュ織物、炭素メッシュ不織布、または炭素フェルト等があり得る。さらに、集電体は電気化学的に不活性であるか、あるいは電気活性な物質を含むことができる。例えば、集電体は電気活性物質層として(例:本明細書で記載するようなアノードまたはカソードとして)使用される物質を含むことができる。
【0111】
集電体は積層法、スパッタリングまたは蒸着のような任意の適切な方法によって表面上に配置できる。幾つかの場合では、集電体は、電気化学的電池の1つ以上の構成要素とともに積層させた市販のシートとして供給される。他の場合では、集電体は、電極を組み立てる間に、適当な表面上に導電性物質を堆積させることによって形成する。側部または端部の集電体を、本明細書で記載する電気化学的電池の中に組み入れてもよい。
【0112】
集電体は任意の適切な厚さを有することができる。例えば、集電体の厚さは0.1~0.5μmの間の厚さ、0.1~0.3μmの間の厚さ、0.1~2μmの間の厚さ、1~5μmの間の厚さ、5~10μmの間の厚さ、5~20μmの間の厚さ、あるいは10~50μmの間の厚さであることができる。一定の実施態様では、集電体の厚さは、例えば、約20μm以下、約12μm以下、約10μm以下、約7μm以下、約5μm以下、約3μm以下、約1μm以下、約0.5μm以下、あるいは0.3μm以下である。幾つかの実施態様では、電極を作製する間に剥離層(release layer)を用いることによって、
極めて薄い集電体の形成または使用が可能になり、それにより電池の全体的な重量を少なくすることができ、それによって電池のエネルギー密度が増大する。
【0113】
前述したように、本発明の様々な態様に係る電気化学的電池は、電池の1つ以上の構成要素の中に1種以上の窒素含有化合物を含むことができる。例えば、電池はカソード、アノード、アノードとカソードの間のセパレーター、非水電解質、およびアノードとカソードとセパレーターからなる群のうちの1つ以上のものの中の窒素含有物質を含むことができる。あるいは、電池はカソード、アノード、アノードとカソードの間の任意のセパレーター、非水電解質、およびアノード、カソード、セパレーターおよび電解質からなる群のうちの1つ以上のものの中の窒素含有物質を含むことができ、窒素含有化合物は電解質に可溶であるかまたは実質的に不溶性である。窒素含有物質は電解質に可溶であるかまたは電解質の中で実質的に不溶性な部分に付加していて、実質的に不溶性であることができ、そして/またはカソード、アノード、セパレーター、またはこれらの一部のうちの一部分を形成していて、それにより電池の一部は窒素を含む官能基を含み、その部分は電解質の中で実質的に不溶性であることができる。典型的な電池はさらに、電解質の中に窒素含有添加剤を含むことができる。例として、アノード;カソード;セパレーター;電解質;アノードとカソード;セパレーターおよびアノードとカソードのうちの一方または双方;電解質およびアノードとカソードのうちの一方または双方;アノード、カソードおよびセパレーター;アノード、カソードおよび電解質;アノード、カソード、電解質およびセパレーターは、本明細書中で記載する窒素含有物質を含むことができる。
【0114】
典型的実施態様にしたがう前記化学的電池は、アノードとカソードとの間に挿入した多層構造を含むことができる。典型的な多層構造は、米国特許第8,197,971号明細書(発明の名称:電気化学的電池用リチウムアノード;2012年6月12日発行)および米国特許第7,771,870号明細書(発明の名称:再充電可能なリチウムバッテリーを含む、水性および非水性電気化学的電池の双方における電極保護;2010年8月10日発行)と同様に本明細書中に記載する(これらの特許文献の内容を、該内容が本明細書の記載と矛盾しない程度まで参照として本明細書に含める)。
【0115】
本発明の種々の典型的実施態様にしたがうバッテリーには、本明細書中で記載する一個以上の電池、集電体(例:集電体112、114)、集電体に電気的に結合したリードもしくは端子(例:ポジティブリードおよびネガティブリード)、および電池の少なくとも一部分を収容するケーシングもしくはハウジング等を含む。
【実施例】
【0116】
下記の非制限的実施例は、比較電気的電池および本発明の典型的実施態様にしたがう電気化学的電池を例証する。これらの実施例は単に例証であり、本発明を実施例に制限することを意図していない。
【0117】
下記の実施例および比較例では、下記の工程にしたがってリチウムイオン電気化学的電池を調製した:すなわち、アノードを、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に、集電体として200nmCuと共にLi(厚さ:25μm)を真空蒸着した。別記しない限り、使用した多孔性セパレーターは25μmポリオレフィン(Celgard2325)であり、使用したカソードは、2.7~2.8mA/cm2のキャパシティーを示すアルミニウム基材上に被覆したLiCoO2コートを使用した。上記構成成分を、アノード/セパレーター/カソード/セパレーター/アノードからなる層化構造にアセンブリした。総活性カソード表面積は33.147cm2だった。ホイル製袋中に電池構成成分をシール後、0.35mLの各電解質を加えた。次いで、電池パッケージを真空シールした。得られた電池を、拘束しないで電解質中に24時間浸漬し、次いで、10kg/cm2圧力をかけた。このような圧力下、総ての電池をサイクルにかけた。充電および放電サイクルを、それぞれ、スタンダードC/8(11.4mA)およびC/5レート(18.2mA)で行い、4.2ボルトの充電カットオフ電圧、次いで1.14mAに対して4.2Vのテーパー、3.2Vの放電カットオフ電圧で行った。
【0118】
アノード形態を、SEMにより5番目の放電の最終時に検討した。異なる電池中のLiストリップおよびデポジションの直接比較をするために、電気化学反応に関連するLi量を固定した。換言すれば、充電容量を68mAhで制御した。充電および放電率は、それぞれ7.8mAおよび13.7mAであり、上述したのと同じカットオフ電圧を示した。
【0119】
(比較例1)
電解質は、Novolyte Technologiesから購入した、ジメチルカーボネート(DMC)およびエチレンカーボネート(EC)の1:1重量比の混合物中の1Mリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)だった。この電解質はLi-イオン2として称される。
図4に示されているように、この電気化学的電池の放電容量は各サイクルに伴い次第に減少した。放電容量の損失はサイクル40でおおよそ10%である。
図5に示されている放電率はサイクル40でおおよそ0.97だった。
図6Aと6Bは、Li-イオン電解質中のLi利用性を例証する、5番目放電におけるアノード形態のSEM像はあまりに均質でなかった。さらに、窒素含有(例:N-O)化合物添加剤を含有する電気化学的電池と比較して、Liは多孔性であり、非常に高い表面積でゆるくパックされていた。
【0120】
(実施例1)
約1%濃度のLiNO3(飽和)を電解質に配合した以外は、電気化学的電池は比較例1と同じだった。
【0121】
(実施例2)
約1%濃度のLiNO3および約4%濃度の硝酸ピリジンを電解質に配合した以外は、電気化学的電池は比較例1と同じだった。
【0122】
実施例1および2双方について、添加剤添加電解質中の放電容量(
図4)および放電率(
図5)の消失率は、顕著に改良された。これらの添加剤の存在は、Liアノード表面形態を驚いたことにしかも予期できないで改良された。さらにLiの均質性利用性が観察され(
図6)、Liは、Li-イオン電解質中のアノードと比較して、顕著に減少した表面積でタイトにパックされた。電池サイクル寿命は、スタンダードLi-イオン電解質の~50サイクルから添加剤としてLiNO3含有電解質で~90サイクルに向上した。
【0123】
(実施例3)
懸濁剤として電解質中にLiNO3を配合した以外は、電解質は実施例1と同じであった。サイクル寿命がスタンダードLi-イオン電解質(比較例1)の倍以上だったのみならず、LiNO3溶液含有電解質のものよりも良好でもあった。ライフサイクルの間にLiO3が分解することによる損失を補償する電解質溶液中に、よりLiNO3が連続的に補充するものと思われる。
【0124】
(実施例4)
電解質は実施例1と同じだった。使用したカソードはNCM424(LiNi0.4Co0.2Mn0.4O2)だった。試験条件は、LiCoO2カソード材料を含む電池について上述したのと同様だった。充電および放電流をカソード容量に応じて調整し、その結果、充電および放電サイクルを、それぞれ、スタンダードC/8およびC/5率で行った。LiNO3添加剤添加電解質を含む電池について、
図7に示す、放電容量、および、
図8に示す、再充電比率の消失速度双方とも、顕著に改良された。
【0125】
(実施例5)
電解質は実施例3と同じだった。使用したカソードはHCM111(LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)だった。充電および放電流をカソード容量に応じて調整し、その結果、充電および放電サイクルを、それぞれ、スタンダードC/8およびC/5率で行った。
図9に示すように、電池サイクル寿命が、標準Li-イオン電解質における~80サイクルから、添加剤としてLiNO3含有電解質における~120、および懸濁剤としてLiNO3含有電解質における~140サイクルに向上した。
【0126】
本発明を以上で多くの典型的な実施態様と実施例とを参照して説明した。本明細書中で示した特定の実施態様は本発明の典型的実施態様の例証であり、それらは本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解すべきである。本明細書中で説明した態様に、本発明の範囲から逸脱することなく変更と修正をなしうることを認識すべきである。これらの変更または修正およびその他の変更または修正は、添付する特許請求の範囲およびその法律上の同等物に表された本発明の範囲の中に含まれることが意図されている。
[発明の態様]
[1]
リチウム-イオン電気化学的電池であって、
金属酸化物カソード;
リチウムを含むアノード;
アノードとカソードとの間のセパレーター;
1種以上の非水溶媒および1種以上のリチウム塩を含む非水電解質;ならびに
窒素含有物質
を含むリチウム-イオン電気化学的電池。
[2]
前記カソードが、LiCoO2、LiCoxNi(1-x)O2(xはおおよそ0.05~0.8である)、LiCoxNyMn(1-x-y)、LiMn2O4、およびこれらの組合せからなる群から選択される物質を含む、1に記載の電気化学的電池。
[3]
窒素含有化合物が、無機硝酸塩、有機硝酸塩、無機亜硝酸塩、有機亜硝酸塩、ニトロ化合物、その他のN-O化合物、およびアミン化合物からなる群から選択される、1に記載の電気化学的電池。
[4]
窒素含有物質が、電解質に可溶性である、1に記載の電気化学的電池。
[5]
窒素含有物質が、電解質に実質的に不溶性である、1に記載の電気化学的電池。
[6]
窒素含有物質が、高分子電解質を含む、1に記載の電気化学的電池。
[7]
カソードが、窒素含有物質を含む、1に記載の電気化学的電池。
[8]
アノードが、窒素含有物質を含む、1に記載の電気化学的電池。
[9]
セパレーターが、窒素含有物質を含む、1に記載の電気化学的電池。
[10]
窒素含有物質が、アノード上にイオン伝導性表面層を形成する、1に記載の電気化学的電池。
[11]
アノードが、リチウム金属、リチウムホイル、基体上に堆積したリチウム、およびリチウム合金からなる群から選択される、1に記載の電気化学的電池。
[12]
窒素含有物質が、N-Oおよびアミンなる群から選択される官能基を含み、この官能基が約8~約25個の炭素原子を含む炭素鎖に結合している、1に記載の電気化学的電池。[13]
窒素含有物質が、1以上のアノード、カソード、およびセパレーターの一部を最初に形成する、1に記載の電気化学的電池。
[14]
窒素含有物質が、カチオン、モノマー、オリゴマー、およびポリマーからなる群から選択される不溶性物質に結合した窒素基を含む、1に記載の電気化学的電池。
[15]
電解質がN-O添加剤をさらに含む、1に記載の電気化学的電池。
[16]
電解質が、約30%~約90%の1種以上の非水溶媒、約0.1%~約10%のN-O添加剤、4%以下の窒素含有物質、および約20%以下のLiTFSIを含む、15に記載の電気化学的電池。
[17]
電解質が、約50%~約85%の1種以上の非水溶媒、約0.5%~約7.5%のN-O添加剤、4%以下の窒素含有物質、および約4%~約20%以下のLiTFSIを含む、15に記載の電気化学的電池。
[18]
電気化学的電池であって、
電気活性金属酸化物を含むカソード;
リチウムを含むアノード;
窒素含有化合物;および
1種以上の非水溶媒、少なくとも一部の窒素含有化合物;および1種以上のリチウム塩を含む非水電解質
を含む電気化学的電池。
[19]
電池寿命が90サイクルよりも長い、1に記載の電気化学的電池。
[20]
放電容量比率が60サイクル後に0.8よりも大きい、1に記載の電気化学的電池。
[21]
ハウジング;
ポジティブリード線;
ネガティブリード線;および
1以上の1に記載の電気化学的電池
を含むバッテリー。