(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】線虫カエノラブディティスエレガンスを使用して臭気物質を自動で検出する装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20230303BHJP
G01N 33/497 20060101ALI20230303BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230303BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20230303BHJP
【FI】
G01N33/48 N
G01N33/497 D
G01N21/64 Z
C12M1/34 Z
(21)【出願番号】P 2020521434
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 IB2018058127
(87)【国際公開番号】W WO2019077558
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】102017000119113
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】522138559
【氏名又は名称】ディスラプティブ テクノロジカル アドバンシス イン ライフ サイエンス エス.アール.エル.
(73)【特許権者】
【識別番号】510121547
【氏名又は名称】フォンダツィオーネ・イスティトゥート・イタリアーノ・ディ・テクノロジャ
【氏名又は名称原語表記】FONDAZIONE ISTITUTO ITALIANO DI TECNOLOGIA
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォリ ヴィオラ
(72)【発明者】
【氏名】サンティネリ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ブローリア マルコ
【審査官】白形 優依
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0154510(US,A1)
【文献】国際公開第2015/088039(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0061240(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102669058(CN,A)
【文献】BAKHTINA, N. A. et al.,Microfluidic laboratories for C. elegans enhance fundamental studies in biology,RSC Advances,2014年,Vol.4,pp.4691-4709
【文献】AI, X. et al.,A high-throughput device for size based separation of C. elegans developmental stages,Lab on a Chip,2014年05月21日,Vol.14, No.10,pp.1746-1752
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
G01N 35/00 - 35/10
G01N 37/00
G01N 1/00 - 1/44
B01L 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線虫の使用に基づく臭気物質の検出を自動的に行う装置(1000)であって、初期線虫個体群から成虫期の線虫を選択するように構成された、線中の中間個体群を得る機械的選択ユニット(100)と、前記中間個体群から成虫期の線虫の最終個体群を選択し、産卵成虫期の線虫から若い成虫期の線虫を選択して、臭気物質の刺激への前記最終個体群の線虫の反応を検出するように構成された測定ユニット(300)に送るように構成された線虫を用いた光学的選択ユニット(200)とを備え、前記機械的選択ユニット(100)は、少なくとも3路分岐を有する接続チャネルによって前記光学的選択ユニット(200)に接続され、前記光学的選択ユニット(200)は、ローディングマイクロチャネルによって前記測定ユニット(300)に接続され、
- 前記機械的選択ユニット(100)は、線虫を含むメンテナンス緩衝液を容器(12)に導入するように構成された少なくとも1つの第1の閉鎖可能な入口ノズルと、追加の緩衝液を前記容器(12)に導入するように構成された少なくとも1つの第2の閉鎖可能な入口ノズルとを備えた収集容器(12)を備え、前記容器(12)には、第1の開口構成および第2の閉鎖構成をとるように構成された閉鎖可能な出口穴(15)および電動の二重格子(14)が設けられ、前記少なくとも1つの第1のノズルおよび前記少なくとも1つの第2のノズルは、前記容器(12)の基部付近に配置され、前記基部から始めて前記メンテナンス緩衝液を前記容器(12)に導入するように構成され、前記電動の二重格子(14)は、前記容器の前記基部と平行に、前記基部から前記少なくとも1つの第1のノズルおよび前記少なくとも1つの第2のノズルよりも長い距離に配置され、線虫の卵または幼虫のみがその穴を通過するように構成され;
- 前記光学的選択ユニット(200)は、前記中間個体群の線虫を1匹ずつチャネリングするように構成された少なくとも3つの測定マイクロ流体チャネルと、前記チャネリングされた線虫の長さ測定を実行するように構成された3つの光センサ(22、23、24)と、前記少なくとも3つの測定マイクロ流体チャネルを照明するように構成され、前記個々のチャネリングされた線虫の自己蛍光測定を実行するように構成されたダブルフォトダイオード(26)に関連付けられた照明器(25)と、線虫を前記測定ユニット(300)または廃液タンク(16)へと導くように構成された前記光学的選択ユニット(200)と、前記測定ユニット(300)内の線虫の通過を妨害するように構成された遮断弁とを備え、;
- 前記測定ユニット(300)は、線虫を
マイクロ流体回路(51)内へと誘導するように構成されたローディングマイクロチャネルに接続されたローディング穴、および前記マイクロ流体回路(51)からの線虫を除去するように構成された排出穴を備えた柱状の
前記マイクロ流体回路(51)を有するマイクロ流体のチップ(50)を含む中心層であって、前記チップ(50)は、第1の入口チャネルを介して試験液を受け取り、第2の入力チャネルを介して中性緩衝液を受け取るように構成される、中心層と、前記マイクロ流体回路(51)を照明する連続光および変調光を放出するように構成された光源を備え、前記放出された変調光は、線虫の蛍光を刺激するように構成され、前記光源は線虫の蛍光を受け取るように構成されたフォトダイオードと関連付けられた、第1の端層と、前記中心層に対して前記第1の端層の反対側にある光センサを備え、前記放出された連続光によって照明されたときに前記マイクロ流体回路(51)の透過光画像を取得し、臭気物質の存在下および非存在下で運動性線虫を分析するように構成された第2の端層とを備え、
前記装置(1000)は、前記機械的選択ユニット(100)、前記光学的選択ユニット(200)および前記測定ユニット(300)を制御する制御ユニットをさらに備える、装置。
【請求項2】
前記少なくとも3路の前記接続チャネルおよび前記ローディングマイクロチャネルは、100μm以上のセクションを有する、請求項1に記載の装置(1000)。
【請求項3】
前記二重格子(14)の前記穴は、50μm~500μmの範囲のサイズを有する、請求項1または2に記載の装置(1000)。
【請求項4】
前記少なくとも3つの測定マイクロ流体チャネルのそれぞれについて、前記3つの光センサ(22、23、24)は、前記チャネルの長手方向に沿って配置され、第1の光センサ(22)、第2の光センサ(23)および第3の光センサ(24)のチャネルでの直角投影がそれぞれ第1の目標位置、第2の目標位置および第3の目標位置を特定する距離で互いから平行移動され
ている、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(1000)。
【請求項5】
前記第2の光センサ(23)および前記第3の光センサ(24)は、前記第1の光センサ(23)からそれぞれ900μmから1000μm平行移動されている、請求項4に記載の装置(1000)。
【請求項6】
前記少なくとも3つの測定マイクロ流体チャネルのそれぞれに関して、各光センサ(22、23、24)は第1の高さに配置され、前記照明器(25)は前記第1の高さと測定マイクロ流体チャネルからの方向が反対の第2の高さに配置され
る、請求項4
または5に記載の装置(1000)。
【請求項7】
前記照明器(25)は、前記3つの目標位置の中心に配置される、請求項6に記載の装置(1000)。
【請求項8】
前記照明器(25)は、前記第1の目標位置および前記第2の目標位置の中心に配置される、請求項6に記載の装置(1000)。
【請求項9】
前記第1の端層の前記光源は、
連続光および変調光を放出するように二重アレイで配置されたLEDである、請求項1から
8のいずれか一項に記載の装置(1000)。
【請求項10】
前記第1の端層の前記光源は、それぞれ550nmおよび470nmで連続光および変調光を放出する、請求項9に記載の装置(1000)。
【請求項11】
前記第1の端層の前記光源は、変調周波数が1KHzを超えずに、連続光および変調光を放出する、請求項9または10に記載の装置(1000)。
【請求項12】
請求項1に記載の装置を使用した線虫の使用に基づいて臭気物質を自動的に検出する方法であって、前記方法は、
線虫の初期個体群を含む初期量のメンテナンス緩衝液を、前記少なくとも1つの第1の閉鎖可能な入口ノズルを開いて、マイクロチャネル構造(11)を通る過圧システムを介して前記機械的選択ユニット(100)の前記容器(12)に注入する(600)ステップであって、前記初期量のメンテナンス緩衝液は、開口構成で前記二重格子(14)に触れる、ステップと;
ある時間の経過後、ある量の追加の緩衝液を、前記少なくとも1つの第2の閉鎖可能な入口ノズルを開いて、マイクロチャネルの前記構造(11)を通る前記機械的選択ユニット(100)の前記容器(12)にパルス状に注入する(610)ステップであって、前記開いた二重格子(14)の穴のサイズよりも小さな特定のサイズを有する前記初期個体群のメンバーが前記二重格子を通過するように前記開いた二重格子(14)へと前記初期線虫個体群を押し込むステップと、
前記二重格子(14)ならびに前記少なくとも1つの第1の閉鎖可能な入口ノズルおよび前記少なくとも1つの第2の閉鎖可能な入口ノズルを閉鎖する(611)ことにより、前記収集容器(12)が、大部分が成虫期である線虫の中間個体群を含む中間量のメンテナンス緩衝液を含む、ステップと;
前記閉鎖可能な出口穴(15)を開き(612)、線虫を前記少なくとも3つの測定マイクロ流体チャネルに個別にチャネリングするように、少なくとも3路分岐を有する前記接続チャネルを通して前記中間量の液体を前記光学的選択ユニット(200)に注入するステップと、
個々のチャネリングされた線虫を光学的に選択する(620)ステップであって、
- 個々のチャネリングされた線虫の長さlを光学的に測定し(621)、前記長さlが決定された長さの範囲Δlに含まれるかどうかを確認し(622)、前記長さlが前記決定された範囲Δlに含まれない場合、前記少なくとも3つの測定チャネル出口にいる前記個々のチャネリングされた線虫を前記廃液タンク(16)へと破棄する(630)、サブステップと;
- 前記個々のチャネリングされた線虫の緑色自己蛍光F
greenおよび赤色自己蛍光F
redを測定し(623)、比率Δ(F
green/F
red)が決定された閾値εよりも小さいかどうかを確認し(624)、前記比率Δ(F
green/F
red)が前記閾値εよりも大きい場合、前記少なくとも3つの測定チャネル出口にいる前記個々のチャネリングされた線虫を前記廃液タンク(16)へと破棄する(630)、サブステップと;
- 前記長さlが、前記範囲Δl内にあり、前記比率Δ(F
green/
F
red)が前記決定された閾値εよりも小さい場合、前記個々のチャネリングされた線虫を、前記ローディングマイクロチャネルおよび前記ローディング穴に向けて前記測定ユニット(300)の前記柱状のマイクロ流体回路(51)に送り(640)、前記測定ユニット(300)に送られた線虫数Nを数えるサブステップと;
を含む光学的に選択するステップ(620)と:
Nが所定の値N
tot以上であるかどうかを確認し(650)、NがN
tot以上であれば、前記遮断弁を作動させることによって前記測定ユニット(300)内の線虫の通過を遮断する(660)ステップと;
前記柱状のマイクロ流体回路(51)内のN匹の線虫の臭気物質に対する反応を分析するステップ(670)であって、
- 前記柱状のマイクロ流体回路(51)の領域を、前記第1の端層の前記光源によって放出した光で照明する(671)サブステップと;
- 前記光源に関連付けられた前記フォトダイオードを介して前記柱状のマイクロ流体回路(51)の前記領域全体で積分した第1の自己蛍光信号を測定し(672)、蛍光バックグラウンド値を取得し、前記柱状のマイクロ流体回路(51)の前記領域の光センサ、sCMOSまたはCCDを介して透過光画像を取得し、前記マイクロ流体回路(51)内の線虫の数および運動性を確認するサブステップと;
- 少なくとも1種の臭気物質を含み得る試験液を、第3のタンク(17)から前記チップ(50)に注入する(673)サブステップと;
- 中性緩衝液を第4のタンク(18)から前記チップ(50)内に注入し(674)、前記試験液を出口タンクに排出するサブステップと;
- 前記第1の端層の前記光源に関連付けられた前記フォトダイオードを介して、第2の積分蛍光信号を測定する(675)サブステップと;
- 立上がり時間τ
riseおよび立下がり時間τ
fallの、前記第2の積分蛍光信号のパラメータを計算する(676)サブステップと;
- τ
riseが第1の時間範囲T
1に含まれているか(τ
rise∈T
1)、かつτ
fallが第2の時間範囲T
2に含まれているか(τ
fall∈T
2)を確認し(677)、T
1およびT
2は、臭気物質の存在下で線虫によって感知される刺激の不足によって活性化するニューロン中のカルシウム濃度の再構成の標準時間範囲であり、
【数1】
かつ
【数2】
の場合、前記方法は、前記試験液に臭気物質が存在しないことを認識するが、τ
rise∈T
1かつτ
fall∈T
2の場合、前記方法は走化性に起因する線虫の運動性があるかどうかを確認する(679)サブステップと;
- 前記マイクロ流体回路(51)の前記領域のsCMOSまたはCCD光センサを通じて透過光画像を取得する(678)サブステップと;
- 前記取得した画像を分析して(679)、走化性に起因する運動性があるかどうかを確認する(680)ために、線虫の運動性を決定するサブステップであって、
- 走化性に起因する運動性がない場合、前記方法は、前記試験液に臭気物質が存在しないことを認識するが、
- 走化性に起因する運動性がある場合、前記方法は、前記試験液に臭気物質が存在することを認識する、サブステップと;
- 前記中性緩衝液を前記チップ(50)から前記出口タンク内に排出する(690)サブステップと
を通して行うステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記N匹の線虫の反応を分析する前記ステップ(670)は、m回実行され(m=1,2,…であ
る)、その後前記方法が終了する、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記N匹の線虫の反応を分析する前記ステップ(670)は、m回実行され(m=2である)、その後前記方法が終了する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記長さの範囲Δ1は、第2の光センサ(23)から第1の光センサ(22)までの距離と第3の光センサ(24)から前記第1の光センサ(22)までの距離との間の範囲であ
る、請求項
12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記長さの範囲Δ1は、900μm~1000μmの範囲である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記閾値εは0.5に等しい、請求項
12から
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
N
totは20~50の範囲である、請求項
12から
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記取得された画像を分析する前記ステップ(679)は、後続の透過画像を比較することによって、バイナリ画像を生成する弁別閾手順を通して実行され、それにより、画素は、強度が決定された閾値を超えているか否かに応じてバックグラウンドまたは線虫に関連付けられる、請求項
12から
18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率的で確実、簡単かつ安価な多細胞微生物の使用に基づく、溶液中の分子化合物を自動で検出する装置および方法に関する。
【0002】
特に、本装置は、高い化学的感受性および走化性(単細胞または多細胞微生物が、周囲環境における化学物質の存在に応じて自身の移動を誘導する現象)を示す特定の分子化合物を認識し、これと相互作用することに高度に効率的な、線虫のカエノラブディティスエレガンスまたはC.エレガンスの使用に基づく。このような分子化合物は、線虫C.エレガンスの感覚器の嗅覚系と相互作用するため、これらは臭気物質(odorant substanceまたはodorant)とも呼ばれる。
【0003】
本発明は、添付の特許請求の範囲で定義される保護の範囲内に留まりながらも、例えば、腫瘍マーカーおよび他の疾患の早期検出のための医療分野におけるスクリーニング、特定の化学化合物または毒素の存在を検出するための環境汚染の制御、行動力学に関連付けられた分子の検出を通じた人工知能および人間とロボットの相互作用の開発等のさまざまな適用状況に適用されてよい。
【背景技術】
【0004】
C.エレガンスは、その遺伝子組み換え系統が特定の分子標的への誘引に関して極めて高効率であることが文献により知られており、その嗅覚系を刺激する分子に反応してニューロン活動可能という性質を持つ。その神経系の大部分およびその遺伝子の5%超は、環境中の化学物質認識に特化している。化学物質感受性刺激は、走化性、全体的な運動性の変化および各種発達期間の遷移を誘発し得る。これらの挙動は、11対の化学感覚ニューロンを含む、感覚器官である双器によって制御される。各感覚ニューロンは、特定の候補受容体遺伝子のセットを発現し、誘引分子、忌避分子、またはフェロモンの特定のセットを識別する。約500~1000の異なるGタンパク質結合受容体(GPCR)が化学感覚ニューロンで発現される。したがって、C.エレガンスは高度に発達した化学感覚系を有し、これにより、さまざまな種類の揮発性または水溶性化合物を識別できるようにする。“Microfluidic laboratories for C. elegans enhance fundamental studies in biology” by N.Bakhtina,J.Korvink,RSC Adv.,2014,4,4691の論文では、著者はC.エレガンスが、多様な分子、例えば塩化ナトリウムNaCl、エタノール、イソアミルアルコール、塩化銅CuCl2、イベルメクチン、シアン化物、グリセロール、抗生物質、重金属を識別することを示している。Hirotsu T.et al.(2015),A Highly Accurate Inclusive Cancer Screening Test Using Caenorhabditis elegans Scent Detection,PLoS ONE 10(3):e0118699,doi:10.1371/journal.pone.0118699では、腫瘍代謝産物へのC.エレガンス感受性が示されている。今までのところニューロン活動を刺激すると思われない分子に関して、必要な受容体が嗅覚ニューロンの一部で発現される線虫の遺伝子組換え変異体を開発することが可能である。すなわち、C.エレガンスに適用される遺伝子工学技術のおかげで、所定の臭気物質に高い感受性を持つトランスジェニックワーム系統を作成することが可能である。
【0005】
現在の臭気物質の識別技術は、実験中の臭気物質による刺激から線虫が分離されるときに発する蛍光パルス(ニューロン活動)の測定に基づく。主な欠点は、線虫が高速で繁殖するため、先に選択した個体群が数時間後には非常に不均一になることである。C.エレガンスの発達期は、胚期、4つの幼虫期(L1~L4)、成虫期に体系化できる。成虫期では、若い成虫期と産卵を始める成虫期を区別することができる。卵、産卵期の成虫、または死期が近い(またはすでに死んでいる)個体が存在すると、線虫に典型的な非常に高レベルの自己蛍光が生じるため、ニューロン反応の測定が特に複雑になる。したがって、1回の測定と比較した1/2時間の精度での同時線虫飼育が必要となり、化合物の検出が線虫飼育と無関係である可能性は低い。上記の欠点により、線虫C.エレガンス等の多細胞微生物の使用に基づく分子化合物検出技術の長時間の自動の、すなわち工業規模実験による使用が困難になる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、これまでに記載された欠点を克服し、線虫C.エレガンス等の微小多細胞微生物を使用することにより特定の分子化合物を確実、安全かつ安価に検出する方法を可能にすることである。
【0007】
本発明の特定の主題は、線虫の使用に基づく臭気物質の検出のための自動装置であって、中間線虫個体群を得る初期線虫個体群から成虫期の線虫を選択するように構成された機械的選択ユニットと、中間個体群から成虫期の線虫の最終個体群を選択し、産卵成虫期の線虫から若い成虫期の線虫を選択して、臭気物質の刺激への最終個体群の線虫の反応を検出するように構成された測定ユニットに送るように構成された線虫光学的選択ユニットとを備え、機械的選択ユニットは、少なくとも3路分岐を有する接続チャネルによって光学的選択ユニットに接続され、光学的選択ユニットは、ローディングマイクロチャネルによって測定ユニットに接続され、
- 機械的選択ユニットは、線虫を含むメンテナンス緩衝液を容器に導入するように構成された少なくとも1つの第1の閉鎖可能な入口ノズルと、追加の緩衝液を容器に導入するように構成された少なくとも1つの第2の閉鎖可能な入口ノズルとを備えた収集容器を備え、容器には、第1の開口構成および第2の閉鎖構成をとるように構成された閉鎖可能な出口穴および電動二重格子が設けられ、当該少なくとも1つの第1のノズルおよび当該少なくとも1つの第2のノズルは、容器の基部付近に配置され、基部から始めて容器を満たすように構成され、電動二重格子は、容器の基部と平行に、基部から当該少なくとも1つの第1のノズルおよび当該少なくとも1つの第2のノズルよりも大きい距離に配置され、線虫の卵または幼虫のみがその穴を通過するように構成され;
- 光学的選択ユニットは、中間個体群の線虫を1匹ずつチャネリングするように構成された少なくとも3つの測定マイクロ流体チャネルと、チャネリングされた線虫の長さ測定を実行するように構成された3つの光センサと、少なくとも3つの測定マイクロ流体チャネルを照明するように構成され、個々のチャネリングされた線虫の自己蛍光測定を実行するように構成されたダブルフォトダイオードに関連付けられた照明器と、線虫を測定ユニットまたは廃液タンクへと導くように構成された光学的選択ユニットと、測定ユニット内の線虫の通過を妨害するように構成された遮断弁とを備え;
- 測定ユニットは、線虫をマイクロ流体回路内へと誘導するように構成されたローディングマイクロチャネルに接続されたローディング穴、およびマイクロ流体回路からの線虫を除去するように構成された排出穴を備えた柱状マイクロ流体回路を有するマイクロ流体チップを含む中心層であって、チップは、第1の入口チャネルを介して試験液を受け取り、第2の入力チャネルを介して中性緩衝液を受け取るように構成される、中心層と、マイクロ流体回路を照明する連続光および変調光を放出するように構成された光源を備え、放出された変調光は、線虫の蛍光を刺激するように構成され、光源は線虫の蛍光を受け取るように構成されたフォトダイオードと関連付けられた、第1の端層と、中心層に対して第1の端層の反対側にある光センサを備え、放出された連続光によって照明されたときにマイクロ流体回路の透過光画像を取得し、臭気物質の存在下および非存在下で運動性線虫を分析するように構成された第2の端層とを備え;
装置は、機械的選択ユニット、光学的選択ユニットおよび測定ユニットを制御する制御ユニットをさらに備える。
【0008】
本発明の別の態様によれば、当該少なくとも3路の接続チャネルおよび当該ローディングマイクロチャネルは、100μm以上のセクションを有することができる。
【0009】
本発明のさらなる態様によれば、二重格子の当該穴は、50μm~500μmの範囲のサイズを有することができる。
【0010】
本発明の追加の態様によれば、当該少なくとも3つの測定マイクロ流体チャネルのそれぞれについて、当該3つの光センサは、チャネルの長手方向に沿って配置されてよく、第1の光センサ、第2の光センサおよび第3の光センサのチャネルでの直角投影がそれぞれ第1の目標位置、第2の目標位置および第3の目標位置を特定する距離で互いから平行移動されてよく、第2の光センサおよび第3の光センサは所望により、第1の光センサからそれぞれ約900μmおよび1000μm平行移動されている。
【0011】
本発明の別の態様によれば、当該少なくとも3つの測定マイクロ流体チャネルのそれぞれに関して、各光センサは第1の高さに配置されてよく、当該照明器は第1の高さと反対の第2の高さに配置されてよく、当該照明器は第3の目標位置に対する中心位置、所望により第1の目標位置および第2の目標位置に対して中心に配置される。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、第1の端層の当該光源は、所望によりに変調周波数が1KHzを超えない、所望によりそれぞれ550nmおよび470nmで連続光および変調光を放出するように二重アレイで配置されたLEDであってよい。
【0013】
本発明のさらなる特定の主題は、本発明の自動検出装置を使用した線虫の使用に基づいて臭気物質を自動的に検出する方法であって、本方法は、
線虫の初期個体群を含む初期量のメンテナンス緩衝液を、当該少なくとも1つの第1の閉鎖可能な入口ノズルを開いて、マイクロチャネル構造を通る過圧システムを介して機械的選択ユニットの容器に注入するステップであって、当該初期量のメンテナンス緩衝液は、開口構成で二重格子に触れるようなものである、ステップと;
ある時間の経過後、ある量の追加の緩衝液を、当該少なくとも1つの第2の閉鎖可能な入口ノズルを開いて、マイクロチャネルの構造を通る機械的選択ユニットの容器にパルス状に注入するステップであって、最低比重、および開いた二重格子通路の穴のサイズよりも小さな特定のサイズを有する初期個体群のメンバーが二重格子を通過するように開いた二重格子へと初期線虫個体群を押し込む、注入するステップと;
二重格子ならびに少なくとも1つの第1の閉鎖可能な入口ノズルおよび少なくとも1つの第2の閉鎖可能な入口ノズルを閉鎖することにより、収集容器が、大部分が成虫期である線虫の中間個体群を含む中間量のメンテナンス緩衝液を含むステップと;
閉鎖可能な出口穴を開き、線虫を少なくとも3つの測定マイクロ流体チャネルに個別にチャネリングするように、少なくとも3路分岐を有する接続チャネルを通して中間量の液体を光学的選択ユニットに注入するステップと;
個々のチャネリングされた線虫を光学的に選択するステップであって、
- 個々のチャネリングされた線虫の長さlを光学的に測定し、長さlが決定された長さの範囲Δlに含まれるかどうかを確認し、長さlが決定された範囲Δlに含まれない場合、少なくとも3つの測定チャネル出口にいる個々のチャネリングされた線虫を廃液タンクへと破棄する、サブステップと;
- 個々のチャネリングされた線虫の緑色自己蛍光F
greenおよび赤色自己蛍光F
redを測定し、比率Δ(F
green/F
red)が決定された閾値εよりも小さいかどうかを確認し、比率Δ(F
green/F
red)が閾値εよりも大きい場合、少なくとも3つの測定チャネル出口にいる個々のチャネリングされた線虫を廃液タンクへと破棄する、サブステップと;
- 長さlが、範囲Δl内にあり、比率Δ(F
green/F
red)が決定された閾値εよりも小さい場合、個々のチャネリングされた線虫を、ローディングマイクロチャネルおよびローディング穴に向けて測定ユニットの柱状マイクロ流体回路に送り、測定ユニットに送られた線虫数Nを数えるサブステップと;
を含む光学的に選択するステップと:
Nが所定の値N
tot以上であるかどうかを確認し、数NがN
tot以上であれば、遮断弁を作動させることによって測定ユニット内の線虫の通過を遮断するステップと;
柱状マイクロ流体回路内のN匹の線虫の臭気物質に対する反応を、
- 柱状ピラーマイクロ流体回路の領域を、第1の端層の光源から放出した光で照明するサブステップと;
- 光源に関連付けられたフォトダイオードを介して柱状マイクロ流体回路の領域全体で積分した第1の自己蛍光信号を測定し、蛍光バックグラウンド値を取得し、柱状マイクロ流体回路の領域の光センサ、sCMOSまたはCCDを介して透過光画像を取得し、マイクロ流体回路内の線虫の数および運動性を確認するサブステップと;
- 少なくとも1種の臭気物質を含み得る試験液を、第3のタンクからチップに注入するサブステップと;
- 中性緩衝液を第4のタンクからチップ内に注入し、試験液を出口タンクに排出するサブステップと;
- 第1の端層の光源に関連付けられたフォトダイオードを介して、第2の積分蛍光信号を測定するサブステップと;
- 立上がり時間τ
riseおよび立下がり時間τ
fall等、第2の蛍光信号のパラメータを計算するサブステップと;
- τ
riseが第1の時間範囲T
1に含まれているか(τ
rise∈T
1)かつτ
fallが第2の時間範囲T
2に含まれているか(τ
fall∈T
2)を確認し、T
1およびT
2は、臭気物質の存在下で線虫によって感知される刺激の不足によって活性化するニューロン中のカルシウム濃度の再構成の標準時間範囲であり、
【数1】
かつ
【数2】
の場合、本方法は、試験液に臭気物質が存在しないことを認識するが、τ
rise∈T
1かつτ
fall∈T
2の場合、本方法は走化性に起因する線虫の運動性があるかどうかを確認するサブステップと;
- マイクロ流体回路の領域のsCMOSまたはCCD光センサを通じて透過光画像を取得するサブステップと;
- 取得した画像を分析して、走化性に起因する運動性があるかどうかを確認するために、線虫の運動性を決定するサブステップであって、
- 走化性に起因する運動性がない場合、本方法は、試験液に臭気物質が存在しないことを認識するが、
- 走化性に起因する運動性がある場合、本方法は、試験液に臭気物質が存在することを認識する、サブステップと;
- 中性緩衝液をチップから出口タンク内に排出するサブステップと
を通して分析するステップと
を含む。
【0014】
本発明のさらなる態様によれば、N匹の線虫の反応を分析する当該ステップは、m回実行されてもよく(m=1,2,…、所望により2に等しい)、その後本方法が終了する。
【0015】
本発明の追加の態様によれば、当該長さの範囲Δ1は、第2の光センサから第1の光センサまでの距離と第3の光センサから第1の光センサまでの距離との間の範囲であってよく、所望により、900μm~1000μmの範囲である。
【0016】
本発明の別の態様によれば、当該閾値εは、0.5に等しくてもよい。
【0017】
本発明のさらなる態様によれば、当該Ntotは20~50の範囲であってよい。
【0018】
本発明の追加の態様によれば、取得された画像を分析する当該ステップは、後続の透過画像を比較することによって、バイナリ画像を生成する弁別閾手順を通して実行でき、それにより、画素は、強度が決定された閾値を超えているか否かに応じてバックグラウンドまたは線虫に関連付けられ得る。
【0019】
従来技術の解決策に関して本発明による装置によって提供される利点は数多くあり、重要である。
【0020】
サイズおよび比重による線虫の分離単位の発達期の流れに基づいた線虫の分離単位により、不均一な個体群に関して分子化合物を検出するための非常に効率的な線虫の個体群を確保する。これには、例えば、飼育センターから合理的な距離に位置する複数の測定ラボに毎日配送できるように線虫を飼育および分配するシステムを編成することによって、線虫の同時飼育の問題を克服するという第1の利点がある。第2の利点は、分子化合物に対する線虫のニューロン反応の測定における信号雑音比が増加するにつれて、分子化合物の検出の信頼性が高まることである。臭気物質の刺激に対する反応の測定単位は、行動測定、すなわち走化性、およびニューロン活動の測定、すなわちカルシウムイメージングを可能にする。これは、有利には、分子化合物を検出する際の装置の信頼性、すなわちその感度を高め、偽陽性または陰性を低減する。別の重要な利点は、装置が完全に自動化され、選択および準備に2日以上かかるラボ試験で今日起こっていることとは対照的に、数分程度の反応時間を提供することである。さらなる利点は、装置がコンパクトで携帯可能であるため、非常に用途が広いことである。さらに別の利点は、C.エレガンスが原料として大量に利用できること、または大量に低コストでC.エレガンスを生産でき、いかなる倫理的問題も提起しないことである。
【0021】
本発明は、特に添付の図面の図を参照することによって、その好ましい実施形態に従って、限定ではなく例示としてここで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明に係る装置の好ましい実施形態を概略的に示す。
【
図2】
図2は、
図1の装置の線虫の機械的選択のためのユニットの概略図を示す。
【
図3】
図3は、
図1の装置の線虫の光学的選択のためのユニットの概略図を示す。
【
図4】
図4は、
図1の装置の臭気物質刺激への反応測定のためのユニットの概略図を示す。
【
図5】
図5は、
図1の装置のマイクロ流体チップの斜視図(a)および正面図(b)を示す。
【
図6】
図6は、本発明に係る方法の好ましい実施形態の概略的フローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面において、同一の参照番号は類似の要素に使用される。
【0024】
図1は、初期線虫個体群から成虫の線虫を機械的に選択して中間線虫個体群を得るユニット100を含む、本発明による装置1000の好ましい実施形態を示す。このような機械的選択ユニット100は、中間個体群から線虫を光学的に選択して最終個体群を得るユニット200に接続され、これは、臭気物質の刺激に対する最終個体群の線虫の反応を検出するように構成された測定ユニット300に接続される。そのような第1、第2および第3のユニットは、
図2~4を参照して以下で詳細に説明される。装置1000は、流体管理用のサービスユニット、例えば、液体貯蔵タンクと、液体の流れを制御および調整し、機械式選択ユニットおよび光学的選択ユニット100、200ならびに測定ユニット300を制御し、測定ユニット300から取得したデータを分析するための、少なくとも1つの制御モジュール(図示せず)とをさらに備える。
図2を参照すると、装置1000は、C.エレガンスを、例えばM9、S basal等のメンテナンス緩衝液中に溶解して貯蔵するための第1貯蔵タンク5と、追加の、すなわち線虫を含まない緩衝液を貯蔵するための第2の貯蔵タンク10とを備える。第1の貯蔵タンク5および第2の貯蔵タンク10は、第1の端部でポンプによって作動される過圧システム(図示せず)に接続され、第2の端部で入口マイクロチャネル構造11に接続される。100μm以上、所望により200μmに等しいセクションの第1のマイクロチャネル構造11は、第1の貯蔵タンク5および第2の貯蔵タンク10を線虫機械的選択ユニット100に接続する。このような入口マイクロチャネル構造11は、線虫を含むメンテナンス緩衝液または追加の緩衝液をそれぞれの貯蔵タンクから図中には示されないポンプによって作動される過圧システムを通じてユニット100へと通過させる機能を持つ。図中には示されていない制御ユニットがポンプを制御する。機械的選択ユニット100は、初期線虫個体群から成虫期の線虫を選択するように構成される。機械的選択ユニット100は、線虫を含むメンテナンス緩衝液を容器12に導入するように構成された第1の閉鎖可能な入口ノズルと、追加の緩衝液を容器12に導入するように構成された第2の閉鎖可能な入口ノズルとを備えた収集容器12を含む。図中には示されない第1および第2の閉鎖可能な入口ノズルは、容器の基部に配置され、制御ユニットによって制御される。他の実施形態では、容器12は、3つ以上の閉鎖可能な入口ノズルを備えていてもよい。さらなる実施形態では、少なくとも2つのノズルは、容器12の基部付近に配置されてよい。制御ユニットによって制御されるポンプによって作動される過圧機構を通じて、初期線虫個体群を含む初期量のメンテナンス緩衝液は、第1の貯蔵タンク5から排出され、入口マイクロチャネル構造11内を通過し、開いた第1の閉鎖可能な入口ノズルを通じて収集容器12内に注入される。容器12は、その容量が第1のタンク5から排出される初期量の液体よりも多いようにサイズ決めされる。収集容器12は、容器12の基部からある距離をおいて容器12の基部に平行に配置された二重格子14を備える。少なくとも2つの閉鎖可能な入口ノズルが容器基部付近に配置される実施形態では、二重格子は、基部から、少なくとも2つの閉鎖可能な入口ノズルの距離よりも長い距離に配置される。二重格子は、線虫の卵または幼虫のみが通過できるように構成される。二重格子14は電動式であり、制御ユニットによって制御される。二重格子14は、第1の格子およびこれに平行な第2の格子から構成される。このような第1および第2の格子は、それぞれの穴が整列し、すなわち、二重格子14が開いており、それによって容器12に含まれる溶液が容器12内部から穴を通って外に通過し得る第1の位置と、それぞれの穴がずれており、すなわち二重格子14が閉じられ、それによって容器12に含まれる溶液が穴を通過できない第2の位置とをとるように、線形アクチュエータ19を通して互いに平行移動し得る。本発明の他の実施形態では、第1の有孔格子が固定され、線形アクチュエータによって作動される第2のスライド格子が二重格子14を開閉させる。二重格子は、50μm~500μmの範囲であり得る穴を有する正方形アレイである。他の実施形態では、穴は、正方形とは異なる形状をとってもよい。二重格子14は、容器12に導入された初期量のメンテナンス液の体積に等しい液体体積に触れるように、容器12の接触高さに配置される。したがって、初期量のメンテナンス液が導入されると、二重格子14はこのような液量に触れる。追加の緩衝液が初期量のメンテナンス液を含む容器12に注入されると、前者は初期線虫個体群を開いた二重格子14に向けて押す。追加の緩衝液は、容器12の下部から溶液が流れ、溶液を開いた二重格子14へと押すように設計される。したがって、最低比重および開いた二重格子14の穴のサイズよりも小さい特定のサイズを有する初期個体群のメンバー、すなわち卵および幼虫は、大部分が成虫期である中間線虫個体群を含んだ中間量のメンテナンス液が容器12に残るまでそのような格子を通過する。実際、穴のサイズよりも大きなサイズを有する、900~940μmの範囲のサイズ(長さ)の若い成虫期、および1110~1150μmの範囲のサイズ(長さ)の成虫期の線虫は、開いた二重格子の外に通過できない。容器12は、液体を容器12から排出させて容器12を空にするように構成された、
図3に見ることができる第1の電磁弁アセンブリ20によって閉鎖可能な出口穴15を備える。本発明の好ましい実施形態では、注入される溶液の量は、約200mm
3の体積に等しい約200μLであり、容器12は、約6×6mm
2の正方形の底面を有し、二重格子14は、容器12内の初期溶液の量に触れるように、約6mmの高さに配置される。別の好ましい実施形態では、容器12は、より大きな面積の正方形または長方形の底面を有し、より大きな面積を持つ(より容易に製造できる)二重格子14を容器12の下部により近い、より低い位置で配置させるようにする。容器は格子の上にさらに11mmの高さだけ延び、約400μLの追加の緩衝液を収容する。他の実施形態では装置のサイズが異なり、したがって、装置のサイズに応じて、注入される溶液の量が200μLよりも少なくまたは多くなり得る。機械的選択ユニット100は、図中に示されない3路分岐を備えた接続チャネルを介して線虫の光学的選択ユニット200に接続され、3路分岐のセクションそれぞれは100μm以上であり、第1の電磁弁アセンブリ20を介して容器12の閉鎖可能な出口穴15に接続される。さらなる実施形態では、接続チャネルは、3つよりも多い数の進路を備えた分岐を有していてもよい。接続チャネルは、中間量の液体、すなわち大部分が成虫期である中間線虫個体群を、制御ユニットによって制御されるポンプによって作動される過圧機構を通じて、機械的選択ユニット100から
図3に示す線虫光学的選択ユニット200に通過させ、その後、当該制御ユニットが、第1および第2の閉鎖可能な入口ノズルおよび出口ノズルならびに二重格子14を閉鎖する機能を有する。光学的選択ユニット200は、中間個体群に含まれる個々の線虫の第1の光学的測定および第2の光学的測定を介して、中間個体群から成虫期の線虫の最終個体群を選択し、産卵成虫期の線虫から若い成中期の線虫を選択するように構成される。光学的選択ユニット200は、互いに平行な3つの測定マイクロ流体チャネルを含み、3路接続チャネルが分岐し、線虫は、ポンプによって作動される過圧システムを通じて1匹ずつチャネリングされる。少なくとも3つの測定マイクロ流体チャネルの存在により、そのチャネルのうちの1つで線虫により閉塞されても、閉塞により生じ得る装置の動作中断が回避される。さらなる実施形態では、光学的選択ユニットの測定チャネルの数は、3つよりも多い。3つの測定マイクロ流体チャネルのうちの1つを線虫が通過する間に、線虫の発達期を確認するために第1および第2の光学的測定が行われる。第1の光学的測定は、チャネリングされた線虫の長さを識別し、第2の光学的測定は、赤色自己蛍光に対する緑色自己蛍光の強度を識別する。実際、線虫の長さが分かれば、産卵成虫期の線虫から若い成中期の線虫を選択できる。一方、線虫の年齢が高くなるにつれて自己蛍光の比率が増加するため、緑色と赤色の自己蛍光の比率の測定により線虫が選択される。実行された第1および第2の光学的測定の結果に応じて、臭気物質の刺激に対するそれらの反応の測定ユニット300に送られる線虫が選択される。光学的選択ユニット200は、線虫の長さの第1の光学的測定を実行するために3つの測定マイクロ流体チャネルのそれぞれに対して第1の光センサ22、第2の光センサ23および第3の光センサ24を備える。各測定チャネルについて、第1の光センサ22、第2の光センサ23および第3の光センサ24は、チャネルから第1の高さで、チャネルの長手方向に沿って配置され、それらは、関連チャネルの第1の光センサ22の直角投影が第1の目標位置を特定し、関連チャネルの第2の光センサ23の直角投影が第2の目標位置を特定し、関連チャネルの第3の光センサ24の直角投影が第3の目標位置を特定するように、互いから平行移動している。装置の好ましい実施形態では、第1の光センサからの第2および第3の光センサの距離は、それぞれ約900μmおよび1000μmに等しい。3つの光センサ22、23および24は、制御ユニットによって制御される。3つの測定マイクロ流体チャネルそれぞれについて、第1の光学的測定によって与えられ、以下に示される線虫の選択の論理は、第1のセンサ22が、個々のチャネリングされた線虫の第1の目標位置への到着により作動すると、第1の光センサ22からの電気信号は、第2の目標位置に到達したときに個々のチャネリングされた線虫によって引き起こされる第2の光センサ23の作動までゼロに落ち込んではならず、第2の目標位置に到達するときに個々のチャネリングされた線虫によって引き起こされる第3の光センサ24の作動前にゼロに戻さなければならない。これらの条件が発生した場合、すなわち測定中の個々のチャネリングされた線虫が、第1と第2の目標位置間の距離によって特定される第1の長さから、第1と第3の目標位置間の距離によって特定され、若い成虫期の長さに起因する第2の長さまでの範囲の長さを有する場合にのみ、若年成人の長さに対して、個々のチャネリングされた線虫は、機械的選択ユニット100から出る中間個体群から選択可能である。光学的選択ユニット200は、400~440nmの波長範囲内に白色光または青色光を有する照明器25、所望によりLED照明器を備える。照明器25は、3つの測定マイクロ流体チャネルを照明するように構成され、チャネリングされた線虫の自己蛍光の第2の光学的測定を実行するように構成された測定マイクロ流体チャネルそれぞれのためのダブルフォトダイオード26に関連付けられている。ダブルフォトダイオード26は、それぞれ緑色波長および赤色波長の光を検出するための2つの検出素子と、検出素子の表面に配置された2つの干渉フィルタと、2つの検出素子それぞれに放出された光を集光する2つの収集光学系とを有する。第2の光学的測定によって与えられ、以下に示す線虫選択論理は、緑色自己蛍光と赤色自己蛍光の比率が所定の閾値よりも小さい、所望により0.5よりも小さいことを示す。この条件および上記の長さに関する条件が発生した場合にのみ、個々のチャネリングされた線虫は、最終個体群の機械的選択ユニット100から出る中間個体群から選択される。照明器25は、3つの測定マイクロ流体チャネルから第2の高さに配置される。
図3の本発明の好ましい実施形態では、第2の高さは3つの光センサ22、23および24の第1の高さと反対側にあり、照明器25は、線虫が3つの目標に対する中心位置、所望により第1および第2の目標に対して中心にあるときに自己蛍光の第2の光学的測定を行うような位置にある。光センサ22、23および2
4は、制御ユニットによって制御される。他の実施形態では、蛍光の第2の測定は、第1の長さ測定の後に段階的に実行される。制御ユニットによって制御される第2の電磁弁アセンブリ21は、3つの測定マイクロ流体チャネルの出口に配置され、チャネリングされた線虫を、測定ユニット300または廃液タンク16に向けて、所望により約100μm以上の直径の光学的選択ユニット200を測定ユニット300に接続するローディングマイクロチャネルへと導く。追加の計数光センサは、線虫ローディングマイクロチャネルに対応して配置され、制御ユニットにより制御される。装置1000は、所定数、所望により20~50匹の線虫の通過後、測定ユニット300内の線虫の通過を遮断する遮断弁を備える。遮断弁によって遮断された中間個体群の線虫は、測定ユニット300によって行われる次の測定を待ちながらユニット200とユニット300の間でローディングチャネル内に数分程度残るか、または第2の電磁弁アセンブリ21を介して廃液タンク16に送られる。臭気物質刺激への反応の測定ユニット300の概略図を
図4に示す。測定ユニット300は、走化性およびニューロン活動、すなわち運動性および蛍光の測定を通じて臭気物質刺激に対する線虫の反応を検出するように構成される。測定ユニット300は、少なくとも3層デバイスを備える。中心層は、柱状マイクロ流体回路51が作製されているマイクロ流体チップ50を含み、そこには最終個体群の線虫が導入される。
図5は、マイクロ流体チップ50の実施形態を示す。マイクロ流体チップ50は、線虫をマイクロ流体回路51に導入するように構成された、ローディングマイクロチャネルに接続されたローディング穴52を柱状マイクロ流体回路51の第1の縁部付近に備える。マイクロ流体チップ50は、第1の入口チャネルを介して第3の貯蔵タンク17から試験液を受け取るように構成された第1の入口穴53と、第2の入口チャネルを介して第4の貯蔵タンク18から中性緩衝液を受け取るように構成された第2の入口穴54とを第1の縁部付近にさらに備える。試験液は、臭気物質の存在の可能性を検出する必要がある液体であり、緩衝液は、例えばM9、S basal等の臭気物質を含まない液体である。マイクロ流体チップ50は、柱状マイクロ流体回路の第1の縁部の反対側の第2の縁部の付近に、液体を回路51から出すように構成された、出口チャネルを介して廃液タンク16に接続された排出穴55を備える。さらなる実施形態では、出口チャネルは、廃液タンク16とは異なる出口タンクに接続される。本発明による装置の好ましい実施形態では、マイクロ流体チップは、柱が70μm高、直径が200μm、および間隔が300μmの20mm×20mmまでのサイズを有し、液体入口チャネルは約100μmの直径を有する。本発明のさらなる実施形態は、異なるサイズおよび間隔を有してよい。第1の端層は、中心層のマイクロ流体チップを照明する連続光源および変調光源を含み、第2の端層(中心層に対して第1の端層の反対側)は、第1の端層の光源からの照明時、すなわち走化性を測定するように構成された透過光イメージングの測定時に、マイクロ流体チップの透過光画像を取得するsCMOSまたはCCD等の光センサを含む。特に、走化性測定を得るために、試験液がワームローディングマイクロチャネルに注入された後、後続の画像を比較することによって得られたシェード画像が分析される。装置の好ましい実施形態では、第2の端層の光センサと層のチップとの間の距離は、約300μmである。装置の好ましい実施形態では、第1の端層の光源は、ダブルアレイで配置されたLEDであり、透過画像、すなわち透過光イメージングの測定を取得するための550nmでの連続光と、利用される特定のトランスジェニック線虫により発現される緑色蛍光タンパク質GFPの蛍光を刺激するための、所望により1kHzを超えない変調波長数での、470nmの変調光とを放出するように構成される。装置の他の実施形態では、連続光源は、白色光を放出するランプまたはLEDであってよい。反応測定の第3のユニット300は、変調光源に関連付けられた適切な収集光学系を備えたフォトダイオードをさらに備え、その検知面には、利用されるトランスジェニック系統の特定のGFPの発光ピークに対応する約525/50nmの干渉フィルタが配置される。実際、適切な遺伝的改変に続いて、利用される線虫は受容体ニューロンでカルシウムと結合する特定のタンパク質を発現する。
図6に示すフローチャートを参照して、本発明による線虫の使用に基づいて試験液中の臭気物質を自動的に検出する方法の好ましい実施形態のステップを以下で説明する。このような方法は、上記装置1000を使用することによって実行される。最初のステップ600では、ポンプによって作動される過圧システムを介して、初期線虫個体群を含む初期量のメンテナンス緩衝液は第1の貯蔵タンク5から排出され、機械的選択ユニット100に注入されて初期個体群から成虫線虫を選択する。初期線虫個体群は、入口マイクロチャネル構造11を通して、開いている第1の閉鎖可能な入口ノズルを備えた収集容器12に注入される。初期量は、収集容器12に収容されたときに開いた二重格子14に接触する液体量に相当する。ステップ610にて、数分程度、所望により1分に等しい所定の時間の後、線虫を含まない追加緩衝液の量は、ポンプにより作動される過圧システムを介して第2の貯蔵タンク10からパルス状に排出され、開いている第2の閉鎖可能な入口ノズルを備えた入口マイクロチャネル構造11を介して収集容器12に注入される。このようにして、追加の緩衝液は、容器12に含まれる初期量の液体を開いた二重格子14を通るように押し、その結果、線虫の卵および幼虫は、二重格子14を通過する。本発明の装置の好ましい実施形態を用いた本方法の実行において、パルス数は4であり、追加の緩衝液の量の体積流量は、約100μL/秒に等しい。他の実施形態では、追加の緩衝液のパルス数および体積流量は、機械的選択ユニット100のサイズ、特に収集容器12のサイズに応じて変化し得る。ステップ611では、二重格子14は、パルスの終わりに、二重格子14を通過したばかりのメンバーの落下を回避するために閉鎖され、収集容器12の第1および第2の入口ノズルが閉鎖される。したがって、収集容器12は、大部分が成虫期である中間線虫個体群を含む中間量のメンテナンス液を含む。次のステップ612では、第1の電磁弁アセンブリ20が閉鎖可能な出口穴15を開き、中間量の液体が、3路分岐を有する接続チャネルを介してポンプで作動される過圧システムによって光学的選択ユニット200に注入され、中間個体群の線虫は、3つの測定マイクロ流体チャネルに1匹ずつチャネリングされる。次のステップ620では、成虫期の線虫および若い成虫期の線虫は、産卵成虫期の線虫から光学的に選択される。このような選択は、中間個体群に含まれる個々の線虫を光学的に分析することによって行われる。線虫の光学的選択のステップ620は、2回の光学的測定621および623を含み、これらは同時にまたは段階的に実行されてよい。サブステップ621において、前述のように、個々のチャネルリングされた線虫の長さlが光学的に測定され、サブステップ622において、そのような長さlが、決定された長さの範囲Δl内に含まれるかどうかが確認される。長さlが決定された範囲Δlに含まれない場合、フローは「NO」の分岐を通って線虫を廃棄するステップ630に続き、それにより、光学的選択ユニット200の測定チャネルの出口で、第2の電磁弁アセンブリ21は、個々のチャネリングされた線虫を廃棄タンク16へと導く。長さlが所定の範囲Δl内に含まれる場合、フローは「YES」の分岐を通って、前述のように個々のチャネリングされた線虫の緑色自己蛍光F
greenおよび赤色自己蛍光F
redが測定されるサブステップ623に続き、サブステップ624では、緑色自己蛍光F
greenと赤色自己蛍光F
redとの比率Δ(F
green/F
red)が所望により0.5に等しい所定の閾値εよりも小さいかどうかを確認する。比率Δ(F
green/F
red)が閾値εより大きい場合、フローは「NO」の分岐を通って廃棄するステップ630に続く。比率Δ(F
green/F
red)が閾値ε以下である場合、フローは「YES」の分岐を通って、個々のチャネリングされた線虫を測定ユニット300に送る後続のステップ640へと続き、それにより、光学的選択ユニット200の測定チャネルの出口で、第2の電磁弁アセンブリ21は、個々のチャネリングされた線虫を測定ユニット300のマイクロ流体チップ50に向かうローディングマイクロチャネル内へと導く。ステップ640では、測定ユニット300に送られた個々の線虫は、線虫ローディングマイクロチャネルに対応して配置された計数光センサによってさらに計数され、送られた線虫の数Nを得る。後続のステップ650では、ステップ640で測定された、測定ユニット300に送られた線虫の数Nが、所望により20~50の範囲の決定された値N
tot以上であるかどうかを確認する。測定ユニット300に送られた線虫の数NがN
tot未満である場合、フローは続いて「NO」の分岐を介してステップ640に戻る。測定ユニット300に送られた線虫の数NがN
tot以上である場合、フローは「YES」の分岐を介して、遮断弁によって測定ユニット300内の線虫の通過を遮断するステップ660に続き、反応測定ユニット300内の臭気物質に対するN
tot匹の線虫の反応を分析する後続のステップ670へと続く。臭気物質に対する線虫の反応の分析670は、以下に説明するサブステップを含む。まず、サブステップ671では、柱状マイクロ流体回路51の領域は第1の端層の光源によって放出された光で照明され、サブステップ672では、柱状マイクロ流体回路51の領域全体で積分された第1の自己蛍光信号が後続の蛍光測定の分析に使用するためのバックグラウンド値を取得するために、光源に関連付けられたフォトダイオードによって測定される。サブステップ672では、個々の線虫の位置は、透過光イメージングの測定によりさらに記憶され、測定の質を保証するためにそれらの数および運動性が確認される。サブステップ673では、試験液が第3のタンク17からマイクロ流体チップ50に注入され、後続のサブステップ674では、中性緩衝液が第4のタンク18からマイクロ流体チップ50に注入される。中性緩衝液を柱状マイクロ流体回路51に注入すると、試験液がチップから廃液タンク16内に排出され、この中性緩衝液によって置き換えられる。サブステップ675では、第2の積分蛍光信号、すなわち線虫のニューロン信号が、例えば測定感度を高めるロックイン技法等の技法を用いて、変調光源と同期した光源に関連付けられたフォトダイオードによって検出される。サブステップ676では、立上がり時間τ
riseおよび立下がり時間τ
fall等のニューロン信号のパラメータが計算され、サブステップ677では、積分された第2の蛍光信号の時間プロットが、第1の時間範囲T
1に含まれる立上がり時間および第2の時間範囲T
2に含まれる立下がり時間を持つパルスに対応するかどうかを確認する。このような第1の時間範囲T
1および第2の時間範囲T
2は、線虫によって以前に感知された刺激の欠如によって活性化されたニューロンにおけるカルシウム濃度の再構成の標準的な時間範囲であり、それらの値は、使用される特定のカルシウムインジケータに依存し、それぞれ数百ミリ秒および数百秒程度である。
【数3】
かつ
【数4】
である場合、本発明による方法は、試験液中に臭気物質が存在しないことを認識し、フローは、「NO」の分岐を介して、ステップ677から、中性緩衝液がマイクロ流体回路51から出口タンクへと排出される本方法のステップ690に続く。τ
rise∈T
1かつτ
fall∈T
2である場合、フローは、ステップ677から「YES」の分岐を介して、以下で説明する線虫の走化性に起因する運動性を確認するステップ680に続く。
【0025】
サブステップ674に続いて、サブステップ675と同時にサブステップ678では、柱状マイクロ流体回路51の領域の透過画像が、測定ユニット300の第2の端層の光センサ、すなわちsCMOSまたはCCDによって取得される。サブステップ679では、取得した画像を分析して、サブステップ680で線虫の走化性に起因する可能性のある運動性を確認し、それにより、走化性に起因する運動性がある場合、本方法は臭気物質が試験液中に存在することを認識するが、線虫が関心を示さない、すなわち走化性に起因する運動性がない場合、本方法は、臭気物質が試験液中に存在しないことを示す。ステップ677では、τrise∈T1かつτfall∈T2であることが確認され、ステップ680では、走化性に起因する運動性の欠如が確認され、本方法は、それが偽陽性であると認識する。好ましい実施形態では、サブステップ679の分析は、ワーム追跡技術を通じて実行され、それにより、取得されたシェード画像が分析され、すなわち、後続の透過画像が比較される。この技法を用いると、信号雑音比を改善すること、およびマイクロ流体チップの固定バックグラウンドをなくすことの両方のために、線虫の形状は、異なる画像間の弁別閾手順を用いてバックグラウンド雑音から推測される。このような手順により、線虫を白いバックグラウンド上のコントラストの高い(黒い)オブジェクトとして簡単に認識できるように、ビデオの品質を最適化できる。上記弁別閾操作は、強度が所定の閾値を超えるかどうかに応じて画素を線虫またはバックグラウンドに割り当て、それにより線虫を頭から尾端まで画定することを可能にするバイナリ画像を生成する。したがって、このバイナリ画像が利用可能であることにより、線虫の数または線虫の質量中心としてさまざまなパラメータを取得でき、それにより、時間に沿った質量中心の変位速度としてそれらの速度を取得することもできる。走化性に起因する運動性の確認680の終わりに、フローは、中性緩衝液がチップから出口タンクに排出されるステップ690に続く。本方法の好ましい実施形態では、ステップ670は、方法が終了する前にm回(m=1,2,…)実行される、すなわち、方法フローのステップ690から、m回ステップ670に戻った後、方法を終了する。好ましい実施形態では、m=2であり、液体の流量は約50μL/分~100μL/分であり、試験液は30秒間注入され、中性緩衝液は30秒間注入される。本方法の好ましい実施形態のサイズを用いると、約3秒で、毎分50μLの流量により、柱状マイクロ流体回路51の内容物を完全に変化させ、次に試験液から中性緩衝液に通過させるか、または試験液を変化させることができる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態を記述し、複数の変形例を上記で提案したが、当業者においては、添付の特許請求の範囲に定義されるその保護範囲から逸脱することなく他の変形および変更を行うことができることが理解されるべきである。