IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイエル、アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】フルオピコリドの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/61 20060101AFI20230303BHJP
【FI】
C07D213/61
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020528128
(86)(22)【出願日】2018-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018082011
(87)【国際公開番号】W WO2019101769
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】17203042.1
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516245885
【氏名又は名称】バイエル、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BAYER AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】ワヘド、アーメッド、モラーディ
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト、シュナッテラー
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/173998(WO,A1)
【文献】特表2006-508143(JP,A)
【文献】特表2004-506716(JP,A)
【文献】特表2002-503723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 213/61
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式(I)中、
pは、1、2、3または4に等しい整数であり、
qは、1、2、3または4に等しい整数であり、
Xは、水素、ハロゲン、(C1-C4)アルキルおよび(C1-C4)ハロアルキルからなる群から独立して選択されるが、少なくとも1つのXはハロゲンであり、
Yは、ハロゲンである。]
の置換ピリジルメチルベンズアミド誘導体またはその塩の調製方法であって、
[A1]式(III)の置換2-(アミノメチル)ピリジル誘導体またはその塩と、式(IV)の化合物とを、適切な溶媒中、適切な塩基の存在下、0℃~+50℃の温度で反応させる工程と、ここで、式(III)の前記化合物は、ラネーニッケル水素化によって得られ、
【化2】
[式(III)中、pおよびXは上記のように定義される。]
【化3】
[式(IV)中、
qは、1、2、3または4に等しい整数であり、
Yは、ハロゲンであり、
1は、脱離基である。]
[A2]得られた反応混合物を+70℃~+90℃の温度に加熱する工程と、
[A3]前記反応混合物を、適切な酸を用いて、pH値0~3に酸性化する工程と、
[A4]相を分離して、水相を廃棄する工程と、
[A5]水と適切な塩基とを加えて、pH値を4~6に調整する工程と、
[A6]相を分離して、水相を廃棄する工程と、
[A7]前記反応混合物を0℃~+10℃にゆっくり冷却する工程と、
[A8]前記反応混合物を濾過し、フィルターケーキを適切な溶媒を用いて洗浄し、ウェットフィルターケーキを乾燥して、式(I)の化合物またはその塩を与える工程と
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記方法[A]が、工程[A4]の後に、さらに
[A4a]水と適切な酸とを加えて、pH値を0~3に調整する工程と、
[A4b]相を分離して、水相を廃棄する工程と
を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程[A1]における前記適切な溶媒が、水、炭化水素、およびそれらの10:1~1:10の比率の混合物から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素が、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼンから選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程[A1]における前記適切な塩基が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応溶液のpH値がpH6~9に調整されるまで、工程[A1]における前記適切な塩基を加えることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程[A3]における前記適切な酸が、塩酸(HCl)および硫酸(H2SO4)から選択されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程[A4a]における前記適切な酸が、塩酸(HCl)および硫酸(H2SO4)から選択されることを特徴とする、請求項2~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程[A5]における前記適切な塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウムから選択されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
式(I)の前記化合物が、式(Ia):
【化4】
のフルオピコリドであることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
式(III)の前記化合物が、式(IIIa):
【化5】
の1-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリド-2-イルメタンアミン-アセテートであることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式(IV)の前記化合物が、式(IVa):
【化6】
の2,6-ジクロロベンゾイルクロリドであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラネーニッケル水素化によって得られる置換2-(アミノメチル)ピリジン誘導体から、式(I)の置換ピリジルメチルベンズアミド誘導体(特に2,6-ジクロロ-N-{[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジル]メチル}ベンズアミド(フルオピコリド))を調製する、改良された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)の置換ピリジルメチルベンズアミド誘導体は、植物病原性真菌に対して活性が高い。式(I)の化合物は、欧州特許出願公開第1056723(B1)号に記載されている。
【化1】
[式(I)中、
pは、1、2、3または4に等しい整数であり、
qは、1、2、3または4に等しい整数であり、
Xは、水素、ハロゲン、(C1-C4)アルキルおよび(C1-C4)ハロアルキルからなる群から独立して選択されるが、少なくとも1つのXはハロゲンであり、
Yは、ハロゲンである。]
【0003】
特に3-クロロ-2-シアノ-5-トリフルオロメチルピリジン等の置換2-(アミノメチル)ピリジン誘導体は、下記式(Ia)に示すフルオピコリド(2,6-ジクロロ-N-{[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジル]メチル}ベンズアミド)(市販の殺菌剤である)を調製するための重要な中間体である。
【化2】
【0004】
置換2-(アミノメチル)ピリジン誘導体の調製は、先行技術で知られている。国際公開第99/42447号および国際公開第2004/65359号は、置換ピリジルメチルベンズアミド誘導体を、置換イミン誘導体を用いて形成することを記載している。この方法は数工程を有し、したがってあまり効率的ではない。国際公開第2002/016322号は、置換2-(アミノメチル)ピリジン誘導体を、炭素上のパラジウムの存在下で、対応する置換2-シアノピリジン誘導体の水素化によって調製することを開示している。しかしながら、この方法には、水素化工程の低収率、脱ハロゲン化生成物の形成、2-(アミノメチル)ピリジン誘導体の単離、および単離された物質の安定性の問題等の、いくつかの不利な点がある。国際公開第2004/046114号は、酢酸中のラネーニッケルの存在下において、置換2-シアノピリジン誘導体を、対応する2-(アミノメチル)ピリジン誘導体へ接触水素化することを開示している。一般的に、ニトリルの接触水素化は文献でよく知られており、様々なニッケル触媒を用いて行うことができる(“Handbook of Heterogeneous Catalytic Hydrogenation for Organic Synthesis”、Nishimura、pp.259-285、John Wiley and Sons、New York、2001)。所望の第一級アミンへのニトリルの接触水素化は、通常、大量の第二級および第三級アミンの形成(これらのアミンは、所望の第一級アミンを汚染し、その単離を非常に複雑で、費用がかかり、かつ非効率的なものとする)を伴い、したがって、工業規模での使用には適していないことも知られている。驚くべきことに、国際公開第2004/046114号に記載されている方法は、望ましくない副生成物の形成をもたらさず、したがって、国際公開第99/42447号、国際公開第2004/6535号および国際公開第2002/016322号に開示されている方法に代わる優れた方法である。しかしながら、国際公開第2004/046114号に記載されている、ラネーニッケルの存在下での水素化による置換2-シアノピリジン誘導体の還元には、得られる2-(アミノメチル)ピリジン誘導体およびその後の置換ピリジルメチルベンズアミド誘導体が、いわゆるニッケル浸出が原因で、農業生産物には受け入れられない程度までニッケルで汚染されているという大きな不利な点がある。したがって、上記先行技術の方法は、大規模製造にはあまり適していない。式(I)の置換ピリジルメチルベンズアミド誘導体を形成するための、国際公開第99/42447号に記載されている方法は、大規模製造には適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、ラネーニッケル水素化によって得られる置換2-(アミノメチル)ピリジン誘導体から置換ピリジルメチルベンズアミド誘導体を調製するための、工業規模に適した、新規で、改良された、技術的に実現可能で、より経済的および環境的に実行可能な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の新規な方法は、以下に詳細に記載するように、先行技術に記載された方法の上記問題を解決し、したがって、ラネーニッケル水素化によって得られる置換2-(アミノメチル)ピリジン誘導体から、ニッケル含有量が大幅に減少した置換ピリジルメチルベンズアミド誘導体を調製するための、工業規模に適した、経済的で技術的に容易に実現可能な方法を提供する。
【0007】
本発明の目的は、式(I):
【化3】
[式(I)中、
pは、1、2、3または4に等しい整数であり、
qは、1、2、3または4に等しい整数であり、
Xは、水素、ハロゲン、(C1-C4)アルキルおよび(C1-C4)ハロアルキルからなる群から独立して選択されるが、少なくとも1つのXはハロゲンであり、
Yは、ハロゲンである。]
の置換ピリジルメチルベンズアミド誘導体またはその塩の調製方法[A]であり、
上記方法は、
[A1]式(III)の置換2-(アミノメチル)ピリジル誘導体またはその塩と、式(IV)の化合物とを、適切な溶媒中、適切な塩基の存在下、0℃~+50℃の温度で反応させる工程と、ここで、式(III)の化合物は、ラネーニッケル水素化によって得られ、
【化4】
[式(III)中、pおよびXは上記のよう定義される。]
【化5】
[式(IV)中、
qは、1、2、3または4に等しい整数であり、
Yは、ハロゲンであり、
1は、脱離基である。]
[A2]得られた反応混合物を+70℃~+90℃の温度に加熱する工程と、
[A3]反応混合物を、適切な酸を用いて、pH値0~3に酸性化する工程と、
[A4]相を分離して、水相を廃棄する工程と、
[A5]水と適切な塩基とを加えて、pH値を4~6に調整する工程と、
[A6]相を分離して、水相を廃棄する工程と、
[A7]反応混合物を0℃~+10℃にゆっくり冷却する工程と、
[A8]反応混合物を濾過し、フィルターケーキを適切な溶媒を用いて洗浄し、ウェットフィルターケーキを乾燥して、式(I)の化合物またはその塩を与える工程と
を有することを特徴とする。
【0008】
他の実施形態において、方法[A]は、工程[A4]の後に、さらに[A4a]水と適切な酸とを加えて、pH値を0~3に調整する工程と、[A4b]相を分離して、水相を廃棄する工程とを有する。
【0009】
特に明記しない限り、以下の定義は、本明細書および特許請求の範囲を通じて使用される置換基および残基に適用される。
【0010】
式(I)の化合物の対応する塩は、好ましくは、硫酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩-硫酸塩混合物、塩酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、または酢酸塩である。
【0011】
式(III)の化合物の対応する塩は、好ましくは、硫酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩-硫酸塩混合物、塩酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、または酢酸塩である。特に好ましくは酢酸塩である。
【0012】
本発明を通じて、用語「当量」は、モル当量を指す。
【0013】
アルキルは、直鎖状または分枝鎖状の炭素数1~4の飽和炭化水素基を表す。非限定的な例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、1-メチルプロピル(イソブチル)、2-メチルプロピル(sec-ブチル)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチル)が挙げられる。メチルまたはエチル等の、炭素数1または2の直鎖状飽和炭化水素基を表す(C1-C2)アルキルが好ましい。
【0014】
ハロアルキルは、一般的に、1個~全ての水素原子がハロゲン原子で置換された、炭素数1~4のアルキル基を表す。非限定的な例としては、例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-2-フルオロエチル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、ペンタフルオロエチル、3-クロロ-1-メチルブチル、2-クロロ-1-メチルブチル、1-クロロブチル、3,3-ジクロロ-1-メチルブチル、3-クロロ-1-メチルブチル、1-メチル-3-トリフルオロメチルブチル、3-メチル-1-トリフルオロメチルブチルが挙げられる。ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチルが好ましい。
【0015】
好ましくは、Xは、フッ素、塩素、臭素、メチル、エチル、ならびにフッ素および塩素からなる群から独立して選択される1~5個のハロゲン原子を有する(C1-C2)ハロアルキルからなる群から独立して選択される。
【0016】
より好ましくは、Xは、フッ素、塩素、メチル、エチル、またはフッ素および塩素からなる群から独立して選択される1~5個のハロゲン原子を有する(C1-C2)ハロアルキルからなる群から独立して選択される。
【0017】
特に好ましくは、Xは、フッ素、塩素、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ジクロロメチルおよびトリクロロメチルからなる群から独立して選択される。
非常に特に好ましくは、Xは、塩素およびトリフルオロメチルからなる群から独立して選択される。
【0018】
特に好ましくは、2-ピリジル部分は、3位および5位でXにより置換されている。
非常に特に好ましくは、式(III)の化合物は、式(IIIa)の1-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリド-2-イルメタンアミン-アセテートである。
【0019】
【化6】
【0020】
好ましくは、Yは、フッ素、塩素および臭素からなる群から独立して選択される。より好ましくは、Yは、フッ素および塩素からなる群から独立して選択される。特に好ましくは、Yは、塩素である。
【0021】
より好ましくは、ベンゾイル部分は、2位および6位でXにより置換されている。
特に好ましくは、式(IV)の化合物は、式(IVa)の2,6-ジクロロベンゾイルクロリドである。
【0022】
【化7】
【0023】
好ましくは、pは、1、2または3に等しい整数である。
より好ましくは、pは、1または2に等しい整数である。
特に好ましくは、pは、2に等しい整数である。
好ましくは、qは、1、2または3に等しい整数である。
より好ましくは、qは、1または2に等しい整数である。
特に特定のqは、2に等しい整数である。
好ましくは、脱離基L1は、ハロゲンである。
より好ましくは、脱離基L1は、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される。
特に好ましくは、脱離基L1は、塩素である。
【0024】
非常に特に好ましくは、式(I)の化合物は、式(Ia)のフルオピコリドである。
【0025】
【化8】
【0026】
特に好ましくは、本発明の目的は、式(Ia)の置換ピリジルメチルベンズアミドの調製方法[A]であり、
【化9】
上記方法は、
[A1]式(IIIa)の置換2-(アミノメチル)ピリジル誘導体と、式(IVa)の化合物とを、適切な溶媒中、適切な塩基の存在下、0℃~+50℃の温度で反応させる工程と、ここで、式(IIIa)の化合物は、ラネーニッケル水素化によって得られ、
【化10】
【化11】
[A2]得られた反応混合物を+70℃~+90℃の温度に加熱する工程と、
[A3]反応混合物を、適切な酸を用いて、pH値0~3に酸性化する工程と、
[A4]相を分離して、水相を廃棄する工程と、
[A5]水と適切な塩基とを加えて、pH値を4~6に調整する工程と、
[A6]相を分離して、水相を廃棄する工程と、
[A7]反応混合物を0℃~+10℃にゆっくり冷却する工程と、
[A8]反応混合物を濾過し、フィルターケーキを適切な溶媒を用いて洗浄し、ウェットフィルターケーキを乾燥して、式(I)の化合物またはその塩を与える工程と
を有することを特徴とする。
【0027】
非常に特に好ましくは、方法[A]は、工程[A4]の後に、さらに[A4a]水と適切な酸とを加えて、pH値を0~3に調整する工程と、[A4b]相を分離して、水相を廃棄する工程とを有する。
【0028】
工程[A1]において適切な塩基は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の無機塩基、またはトリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基から選択される。工程[A1]において好ましい塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウムから選択される。より好ましい塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウムから選択される。最も好ましい塩基は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される。工程[A1]において、本明細書で定義される塩基を、反応溶液のpH値がpH4~14、特に好ましくはpH6~9に調整されるまで加えることが望ましい。
【0029】
工程[A1]において適切な溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ペンタノール、ベンジルアルコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-ブトキシエタノール、シクロヘキサノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、グリセロール、ヘキサノール、ヘキシレングリコール、イソペンタノール、イソブタノール、2-メトキシエタノール、1-オクタノール、ペンタノール、プロピレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルコール;エチルプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、n-ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、シクロヘキシルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、ジフェニルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、ジオキサン、ジクロロジエチルエーテル、石油エーテル、リグロイン、ならびにエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドのポリエーテル等のエーテル;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素から、または水もしくはN,N-ジメチルアセトイミド、N,N-ジメチルホルムアミド、2-ピロリドンおよびN-メチルピロリドン等の他の溶媒から選択される。好ましい溶媒は、水、ならびにトルエン、キシレンおよびエチルベンゼン等の炭化水素、ならびにそれらの10:1~1:10の比率の混合物から選択される。水とトルエンとの比率1:1の混合物が特に好ましい。
【0030】
好ましくは、工程[A2]における反応混合物を、30分~3時間の間、+70℃~+90℃の温度に加熱する。
より好ましくは、工程[A2]における反応混合物を、1時間~3時間の間、+75℃~+90℃の温度に加熱する。
より好ましくは、工程[A2]における反応混合物を、30分~3時間の間、+80℃~+85℃の温度に加熱する。
さらにより好ましくは、工程[A2]における反応混合物を、1時間~2時間の間、+80℃~+85℃の温度に加熱する。
【0031】
工程[A3]および[A4a]において適切な酸は、ガス状塩化水素、塩酸(HCl)、硫酸(H2SO4)、リン酸(H3PO4)等の無機酸、または酢酸(CH3CO2H)、トリフルオロ酢酸(CF3CO2H)、クエン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ギ酸等の有機酸から選択される。好ましい酸は、塩酸(HCl)および硫酸(H2SO4)から選択される。工程[A3]および[A4a]において、本明細書で定義される酸を反応混合物に添加して、pH値をpH0~4、非常に好ましくはpH0~3の値に調整することが望ましい。
【0032】
工程[A5]において適切な塩基は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の無機塩基、またはトリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基から選択される。工程[A5]において好ましい塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウムから選択される。より好ましい塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウムから選択される。最も好ましい塩基は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される。工程[A5]において、本明細書で定義される塩基を、反応溶液のpH値がpH4~7、特に好ましくはpH5~6に調整されるまで加えることが望ましい。
【0033】
本発明の方法は、その技術的な実現可能性により、大規模製造に適している。置換2-(アミノメチル)ピリジン誘導体は、式(I)のピリジルメチルベンズアミド誘導体を製造するための重要な中間体である。先行技術に記載されている方法は、副生成物の形成、合成で使用される試薬、および/またはニッケルの残留量のために、工業規模の製造には適していない。驚くべきことに、本発明の方法に従うことにより、ニッケル含有量が大幅に減少した、式(I)のピリジルメチルベンズアミド誘導体を調製するための、ラネーニッケル接触水素化によって得られる置換2-(アミノメチル)ピリジン誘導体を使用する、経済的で技術的に容易に実現可能な方法が提供されることが見出された。したがって、得られる式(I)のピリジルメチルベンズアミド誘導体は、農業生産物に適している。
【0034】
方法および略語
方法
方法1(HPLC):機器:Agilent 1100;カラム:Zorbax Eclipse XDB-C18 1.8μ、50mm x 4.6mm;溶離液A:1Lの水+1mLのリン酸、溶離液B:アセトニトリル;勾配:0.0分 90% A→4.25分 5% A→6.0分 5% A→6.01分 90% A;カラム温度:55℃;流量:2.0mL/min;UV検出:210nm。
方法2(原子吸光分析):グラファイト炉
【0035】
略語
HPLC 高圧液体クロマトグラフィー
wt% 重量パーセント
【実施例
【0036】
以下に示す実施例は、本発明をさらに限定することなく説明する。
【0037】
実施例1
1623gの水および1623.5gのトルエン中の、597.8gの1-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]メタンアミン-アセテート(2.2mol、77.5wt%の純度、Ni含有量480ppm、国際公開第2004/046114号に従って調製)の溶液に、60分間かけて、456.1gの2,6-ジクロロベンゾイルクロリド(2.175mol)を+20℃で添加し、並行して282.3gの水酸化ナトリウム水溶液(32wt%)を投入した。内部の温度を+38℃~+43℃に維持した。反応は発熱であった。ジャケットの温度を+30℃~+45℃に維持した。2,6-ジクロロベンゾイルクロリドを完全に添加した後、懸濁液を+40℃でさらに10分間処理し、続いて温度を55分間かけて+80℃に上げた。濃い懸濁液を+80℃でさらに15分間撹拌した。水相のpH値は約4.1であった。その後、109.5gの塩酸(20wt%、0.651mol)を+80℃で懸濁液に加え、pHを1未満に調整した。得られた二相性溶液をさらに5分間攪拌した。+82℃で相分離した後、水相を排出し、176gの水を有機相に加えた。水相のpHは約1.42であった。さらに、9.2gの塩酸(20wt%)を加え、pHを0.8に調整した。82℃で相分離した後、水相を排出し、さらに176.5gの水を有機溶液に加え、16.1gの水酸化ナトリウム水溶液(32wt%、0.129mol)を加えて、pHを5~5.5に調整した。+82℃で相分離した後、水相を排出した。溶液を2時間かけて5℃に冷却し、60分間撹拌した。結晶化は約+60℃で始まる。最後に、生成物を濾過により分離し、ウェットケーキを224gの予冷したトルエン(置換洗浄)を用いて+5℃で洗浄し、ウェットケーキを+65℃で真空乾燥する。810.50gの2,6-ジクロロ-N-{[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジル]メチル}ベンズアミド(99.7wt%)を、化学収率95.71%で得る。
【0038】
t(方法1)=3.25分
ニッケル含有量(方法2):0.5ppm未満