(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】身体支持装置
(51)【国際特許分類】
A47C 27/10 20060101AFI20230303BHJP
【FI】
A47C27/10 Z
(21)【出願番号】P 2021195963
(22)【出願日】2021-12-02
(62)【分割の表示】P 2020148330の分割
【原出願日】2017-02-06
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390039985
【氏名又は名称】パラマウントベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】大野 健太
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特許第6770907(JP,B2)
【文献】特開2007-125313(JP,A)
【文献】特開2012-029870(JP,A)
【文献】特開2014-083141(JP,A)
【文献】特開2012-050521(JP,A)
【文献】特開2014-083140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/10
A61G 7/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を収容可能な複数の流体セルを有するマット部と;
それぞれの前記流体セルへの前記流体の供給及び前記流体セルからの前記流体の排出を行う供給排出部と;
前記マット部に設けられ、使用者の体重が前記マット部に付与する圧力分布を検出する圧力分布検出部と;
前記圧力分布のうち前記使用者の
臀部による部分圧力分布を指標にしながら、前記供給排出部を駆動して、前記使用者の
首部に対応する前記流体セルに対して前記流体を供給又は排出して操作する際に、前記
臀部に対応する前記流体セルに対しては前記流体を供給又は排出しない流体調整部と;
を備えた、
身体支持装置。
【請求項2】
前記複数の流体セルの一部は、前記マット部の全体に略均一に配置された主流体セルであり、
前記複数の流体セルの他の一部は、使用者の身体を囲むように局所的に配置された補助流体セルである、
請求項
1に記載の身体支持装置。
【請求項3】
前記主流体セルは複数設けられており、
各前記主流体セルの形状は、前記マット部の短手方向に延びる棒状であり、
前記複数の主流体セルは、前記マット部の長手方向に沿って配列されている
請求項
2に記載の身体支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の身体を支持する身体支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の身体を支持するエアマット装置や椅子等の身体支持装置が知られている。例えば、エアマット装置は、複数のエアセル(流体セル)を有するマット部を備えている。この種のエアマット装置としては、例えば特許文献1に開示された装置がある。
エアマット装置は、複数のエアセル内に空気(流体)を供給したり排出したりしてマット部の上面を所望の形状にする。これにより、マット部上に寝る使用者がマット部に作用させる力の圧力分布(体圧分布)を調節することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用者に作用している圧力が大きいエアセルほど、使用者を強く押圧する。このエアセルを収縮させると、使用者に作用している圧力が分散される。
一般的に、従来は最大圧力が作用しているエアセルを収縮させることで体圧を分散していた。
しかしながら、従来のエアマット装置では、使用者の身体にマット部がフィット(適合)できていない。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、使用者の身体にマット部を効率的にフィットさせることができる身体支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係る身体支持装置は、流体を収容可能な複数の流体セルを有するマット部と;それぞれの前記流体セルへの前記流体の供給及び前記流体セルからの前記流体の排出を行う供給排出部と;前記マット部に設けられ、使用者の体重が前記マット部に付与する圧力分布を検出する圧力分布検出部と;前記圧力分布のうち前記使用者の身体の第1部位による部分圧力分布、前記部分圧力分布による荷重、及び前記圧力分布検出部に前記第1部位から前記使用者の体重が作用している面積の少なくとも一つを指標にしながら、前記供給排出部を駆動して前記使用者の身体の第2部位に対応する前記流体セルに対して前記流体を供給又は排出して操作する流体調整部と;を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、流体調整部は、使用者の身体の第1部位に関する部分圧力分布等を指標にしながら、使用者の身体の第2部位に対応する流体セルに対して流体を供給又は排出する。このため、使用者の身体にマット部をフィットさせることができる。
また、流体を供給又は排出することで、複数の流体セルの全体としての形状が変化し、使用者の姿勢を変えることができる。
【0008】
(2) (1)に記載の身体支持装置であって、前記流体調整部は、前記指標に基づいて前記供給排出部を駆動して前記流体セルを操作し、前記操作する前記流体セルとは異なる前記流体セルが前記使用者から付与される圧力を変化させてもよい。
この発明によれば、操作する流体セルとは異なる流体セルの圧力を変化させるのに前記操作する流体セルの圧力を変化させることで、より広い範囲にわたる流体セルの圧力を変化させ、使用者の身体にマット部を効果的にフィットさせることができる。
【0009】
(3) (2)に記載の身体支持装置であって、前記流体調整部は、前記圧力が所定の値以下である前記流体セルを操作してもよい。
この発明によれば、これまで圧力が所定の値以下であることを圧力分布検出部が検出していた流体セルに流体を供給又は排出し、その流体セルを膨張又は収縮させる。これにより、使用者の体圧をより効率的に分散させることができる。
【0010】
(4) (2)又は(3)に記載の身体支持装置であって、前記流体調整部は、前記圧力が最大でない前記流体セルを操作し、前記圧力が最大である前記流体セルにおける前記圧力を変化させてもよい。
この発明によれば、圧力が最大である流体セルを直接操作しないで、圧力が最大である流体セルにおける圧力を変化させることができる。
【0011】
(5) (1)から(4)のいずれか一項に記載の身体支持装置であって、前記複数の流体セルの内圧をそれぞれ検出する内圧検出部をさらに備え;前記流体調整部は、前記操作する前記流体セルについて、予め記憶された設定内圧と、前記内圧検出部が検出する内圧と、が等しくなるように、前記供給排出部を駆動してもよい。
この発明によれば、操作する流体セルの内圧を調節する目標が設定内圧として予め記憶されているため、操作する流体セルの内圧の調節を素早く行うことができる。
【0012】
(6) (5)に記載の身体支持装置であって、予め取得された既存圧力分布と、前記既存圧力分布に関連付けて設定した前記設定内圧と、の組合わせを複数組、記憶した既存情報記憶部と;複数の前記既存圧力分布の中から、前記圧力分布検出部の検出結果に最も近い前記既存圧力分布を選択する選択部と;をさらに備え、前記流体調整部は、前記操作する前記流体セルについて、前記選択部が選択した前記既存圧力分布に対応する前記設定内圧と、前記内圧検出部が検出する内圧と、が等しくなるように、前記供給排出部を駆動してもよい。
この発明によれば、既存情報記憶部に記憶されている複数組の既存圧力分布及び設定内圧のうち、検出結果に最も近い既存圧力分布に対応する設定内圧に基づいて、操作する流体セルに流体を供給又は排出することができる。
【0013】
(7) (5)に記載の身体支持装置であって、前記圧力分布検出部の検出結果に基づいて、前記使用者の身体の状態を判定する判定部と;前記身体の状態と、前記身体の状態に関連付けて設定した前記設定内圧と、の組合わせを複数組、記憶した既存情報記憶部と;前記既存情報記憶部に記憶された複数の前記身体の状態の中から、前記判定部が判定した前記身体の状態に最も近い前記身体の状態を選択する選択部と;をさらに備え、前記流体調整部は、前記操作する前記流体セルについて、前記選択部が選択した前記身体の状態に対応する前記設定内圧と、前記内圧検出部が検出する内圧と、が等しくなるように、前記供給排出部を駆動してもよい。
この発明によれば、既存情報記憶部に記憶されている複数組の身体の状態及び設定内圧のうち、圧力分布検出部の検出結果に最も近い身体の状態に対応する設定内圧に基づいて、操作する流体セルに流体を供給又は排出することができる。
【0014】
(8) (5)から(7)のいずれか一項に記載の身体支持装置であって、前記流体調整部は、前記操作する前記流体セルの内圧が前記設定内圧に至るまで前記供給排出部を駆動した後、前記操作する前記流体セルの内圧を、前記駆動の過程で、前記使用者から付与される圧力を変化させることを所望する前記流体セルに作用する前記圧力が最小になったときの内圧に設定してもよい。
この発明によれば、供給排出部の駆動の過程において、圧力を変化させることを所望する流体セルに作用する圧力が最小になったときの状態に、操作する流体セルの内圧を調節することができる。
【0015】
(9) (1)から(8)のいずれか一項に記載の身体支持装置であって、前記流体調整部は、前記供給排出部を駆動して前記第1部位に対応する前記流体セルに対して前記流体を供給又は排出して操作してもよい。
この発明によれば、第2部位に対応する流体セルだけでなく第1部位に対応する流体セルに流体を供給又は排出することで、より広い範囲にわたる流体セルの圧力を変化させ、使用者の身体にマット部を効果的にフィットさせることができる。
【0016】
(10)本発明に係る他の身体支持装置は、流体を収容可能な複数の流体セルを有するマット部と;それぞれの前記流体セルへの前記流体の供給及び前記流体セルからの前記流体の排出を行う供給排出部と;前記マット部に設けられ、使用者の体重が前記マット部に付与する圧力分布を検出する圧力分布検出部と;前記供給排出部を駆動して、前記流体セルに対して前記流体を供給又は排出して操作する流体調整部と;前記複数の流体セルの内圧をそれぞれ検出する内圧検出部と;予め取得された既存圧力分布と、前記既存圧力分布に関連付けて設定した前記流体セルの設定内圧と、の組合わせを複数組、記憶した既存情報記憶部と;複数の前記既存圧力分布の中から、前記圧力分布検出部の検出結果に最も近い前記既存圧力分布を選択する選択部と;を備え、前記流体調整部は、前記操作する前記流体セルについて、前記選択部が選択した前記既存圧力分布に対応する前記設定内圧と、前記内圧検出部が検出する内圧と、が等しくなるように、前記供給排出部を駆動することを特徴とする。
この発明によれば、例えば、圧力分布検出部により使用者の圧力分布を1度検出するだけで、既存情報記憶部に記憶されている複数組の既存圧力分布及び設定内圧のうち、圧力分布検出部の検出結果に最も近い既存圧力分布に対応する設定内圧に基づいて、操作する流体セルに流体を供給又は排出することができる。検出結果から予め記憶された設定内圧を選ぶため、使用者の身体にマット部をフィットさせることができる。
圧力分布を1度検出すれば、その後で、指標を用いて流体を供給又は排出して操作する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の身体支持装置によれば、使用者の身体にマット部を効率的にフィットさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態のエアマット装置の概要構成を示す側面図である。
【
図2】同エアマット装置の概要構成を示す平面図である。
【
図3】同エアマット装置の体圧を分散させる動作を示すフローチャートである。
【
図4】給気する前の補助エアセルの状態を示す要部の側面図である。
【
図5】給気した後の補助エアセルの状態を示す要部の側面図である。
【
図6】補助エアセルの内圧の変化に対する最大圧力の変化を表す図である。
【
図7】本発明の第2実施形態のエアマット装置の概要構成を示す側面図である。
【
図8】同エアマット装置で記憶される既存情報の束のデータ構成を示す説明図である。
【
図9】同エアマット装置の体圧を分散させる動作を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の第3実施形態のエアマット装置の概要構成を示す側面図である。
【
図11】同エアマット装置の体圧を分散させる動作を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の第4実施形態のエアマット装置の概要構成を示す側面図である。
【
図13】同エアマット装置の体圧を分散させる動作を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の第5実施形態のエアマット装置の概要構成を示す側面図である。
【
図15】同エアマット装置の概要構成を示す平面図である。
【
図16】同エアマット装置で記憶される既存情報の束のデータ構成を示す説明図である。
【
図17】同エアマット装置の体圧を分散させる動作を示すフローチャートである。
【
図18】同エアマット装置の動作における円背判定工程を示すフローチャートである。
【
図19】同エアマット装置の動作における下肢拘縮判定工程を示すフローチャートである。
【
図20】同エアマット装置の動作における上半身向き判定工程を示すフローチャートである。
【
図21】同エアマット装置の動作における下半身向き判定工程を示すフローチャートである。
【
図22】実施例において、センサ部上に寝る使用者の状態を示す斜視図である。
【
図23】圧力分布検出部が検出した圧力分布を示す図である。
【
図24】圧力分布検出部が検出した他の使用者の圧力分布を示す図である。
【
図25】実施例において、補助エアセルを膨らませる前のセンサ部上に寝る円背である使用者の状態を示す斜視図である。
【
図26】圧力分布検出部が検出した圧力分布を示す図である。
【
図27】補助エアセルを膨らませた後のセンサ部上に寝る円背である使用者の状態を示す斜視図である。
【
図28】圧力分布検出部が検出した圧力分布を示す図である。
【
図29】実施例において、補助エアセルを膨らませる前のセンサ部上に寝る下肢拘縮である使用者の状態を示す斜視図である。
【
図30】圧力分布検出部が検出した圧力分布を示す図である。
【
図31】補助エアセルを膨らませた後のセンサ部上に寝る下肢拘縮である使用者の状態を示す斜視図である。
【
図32】圧力分布検出部が検出した圧力分布を示す図である。
【
図33】本発明の実施形態の変形例における補助エアセルを説明する図である。
【
図34】本発明の第6実施形態のエアマット装置の概要構成を示す側面図である。
【
図35】同エアマット装置の体圧を分散させる動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る身体支持装置の第1実施形態を、身体支持装置がエアマット装置である場合を例にとって、
図1から
図6を参照しながら説明する。
図1及び
図2に示す本実施形態のエアマット装置1は、例えば、医療環境下(介護環境下を含む)において利用することができる。
図1以降において、矢印Hは、エアマット装置1に仰臥位で寝る使用者Pに対して頭側となる向きを示す。また、矢印F、R、Lは仰臥位で寝る使用者Pに対して足側、右側(一方側)、左側(他方側)となる向きを示している。
以下の説明においては、頭側H及び脚側Fを含む方向を頭足方向(第一の方向)D1、右側R及び左側Lを含む方向を左右方向(第二の方向)D2と称する。左右方向D2は、頭足方向D1に直交(交差)する方向である。
【0020】
エアマット装置1は、空気(流体)を収容可能な複数の主エアセル(流体セル)12及び補助エアセル(流体セル)13を有するマット部11と、エアセル12、13への空気の供給及びエアセル12、13からの空気の排出を行う供給排出部15と、マット部11に設けられ、使用者Pの体重がマット部11に付与する圧力分布を検出する圧力分布検出部16と、エアセル12、13の内圧をそれぞれ検出する内圧検出部17と、エアセル12、13の内圧等を記憶する測定情報記憶部18と、圧力分布検出部16の検出結果に基づいて供給排出部15を駆動する流体調整部19と、を備えている。
【0021】
エアマット装置1のマット部11は、例えば公知の寝台装置101に支持される。寝台装置101は、図示はしないがパネル部材が頭足方向D1に複数に分割され、これらのパネル部材の角度が変化することで背上げ及び脚上げ(膝上げ)動作が可能であるものであってもよい。
【0022】
本実施形態では、複数の主エアセル12として、主エアセル121~主エアセル12NのN個の主エアセル12を備えている。なお、主エアセル121~12Nを区別なく呼ぶときは、主エアセル12と総称する。補助エアセル13等も同様である。
主エアセル12の構成は、特に限定されない。本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、各主エアセル12は、マット部11の左右方向D2の全長にわたり延びる棒状のセルである。主エアセル121~12Nは、頭側Hから脚側Fに向けて主エアセル121~12Nの順で並べて配置されている。複数の主エアセル12は、前後方向D1に並べられることで、マット部11の外形となる主マット部11Aを構成する。主マット部11Aは、例えば20本から30本の主エアセル12により構成される。
各主エアセル12は、例えば塩化ビニル又はウレタン製のフィルムを袋状に溶着して製造することができる。頭足方向D1に隣接して配置された主エアセル12同士は、互いに固定されていてもよいし、互いに固定されていなくてもよい。各主エアセル12は、複数の主エアセル12を一体に覆う図示しないカバーに、ボタンや紐等を介して固定すること等もできる。
主マット部11Aは、水平面に沿って延びるように配置される。
【0023】
本実施形態では、補助エアセル13として、7つの補助エアセル131~137が用いられている。各補助エアセル13は、例えば三日月形に形成されている。各補助エアセル13は、主エアセル12と同様に製造することができる。なお、マット部11が有する補助エアセル13の数は1つ以上であれば特に限定されない。補助エアセル13の形状は、三日月形に限定されないし、各補助エアセル13の形状は互いに異なっていてもよい。
図2に示すように、補助エアセル131は、例えば左右方向D2に延びるとともに凹部131aが脚側Fを向くように配置されている。補助エアセル131は、使用者Pの例えば首部に接触するように配置されている。
補助エアセル132は、頭足方向D1に延びるとともに凹部132aが左側Lを向くように配置されている。補助エアセル132は、使用者Pの例えば右肩部に接触するように配置されている。
補助エアセル133は、補助エアセル132に対して左右方向D2に対向するように配置されている。
【0024】
補助エアセル134は、頭足方向D1に延びるとともに凹部134aが左側Lを向くように配置されている。補助エアセル134は、使用者Pの例えば右臀部に接触するように配置されている。
補助エアセル135は、補助エアセル134に対して左右方向D2に対向するように配置されている。
補助エアセル136は、頭足方向D1に延びるとともに凹部136aが左側Lを向くように配置されている。補助エアセル136は、使用者Pの例えば右ひざ部に接触するように配置されている。
補助エアセル137は、補助エアセル136に対して左右方向D2に対向するように配置されている。
補助エアセル13は、主マット部11A上に配置される。
【0025】
供給排出部15の構成は、特に限定されない。
図1に示すように、供給排出部15は、例えばエアセル12、13への給気を行うポンプ25と、エアセル12、13からの排気を行う排気弁26と、エアセル12、13とポンプ25及び排気弁26とを各別に接続する接続路27と、接続路27を開閉する複数の開閉弁281~28N、291~297と、を備えている。
接続路27は、主エアセル121~12Nに対応してN本設けられた分岐路301~30Nと、補助エアセル131~137に対応して7本設けられた分岐路311~317と、分岐路301~30N、311~317が共通して接続される共通路32と、を有している。分岐路301は、主エアセル121に接続されている。同様に、分岐路302~30Nは主エアセル122~12Nにそれぞれ接続されている。分岐路311~317は、補助エアセル131~137にそれぞれ接続されている。
【0026】
共通路32は、分岐路301~30N、311~317とポンプ25及び排気弁26との間を各別に接続している。
開閉弁281は、分岐路301と、ポンプ25及び排気弁26と、の間を互いに連通した開状態と、この連通が解除された閉状態とに切り替える。開閉弁282~28N、291~297についても、分岐路302~30N、311~317と、ポンプ25及び排気弁26と、の間で同様の切り替え動作をする。
【0027】
このように構成された供給排出部15は、以下のように動作する。
すなわち、例えば主エアセル121に給気(空気の供給)を行う場合には、開閉弁281を開状態にするとともに、開閉弁282~28N、291~297、排気弁26を閉状態にする。ポンプ25を駆動することで、共通路32、分岐路301を通して、主エアセル121内に空気が給気される。給気された空気は、主エアセル121内に収容される。
一方で、主エアセル121の排気(空気の排出)を行う場合には、開閉弁281を開状態にするとともに、開閉弁282~28N、291~297を閉状態にする。排気弁26を開状態にすることで、主エアセル121内の空気が、分岐路301及び共通路32を通して、排気弁26から外部に排出される。
各主エアセル122~12N、各補助エアセル13についても、同様に給気及び排気をすることができる。
【0028】
圧力分布検出部16は、
図1及び
図2に示すように、例えば公知の圧力センサ35aを複数配置したセンサ部35と、センサ部35の検出結果を処理する処理部36と、を有している。圧力センサ35aが圧力を検出する方式は特に限定されず、静電容量式、ピエゾ抵抗式(感圧式)、袋状のフィルムを用いた空圧センサ式等でもよい。
複数の圧力センサ35aは、例えば頭足方向D1及び左右方向D2に沿って碁盤目状に配置されている。なお、複数の圧力センサ35aは、特定の部分だけ設けなかったり、後述する上半身領域A2、臀部領域A3、又は使用者Pの腰やかかと等に対応する部分にピンポイント(局所的)に1つ又は複数設けたりしてもよい。
【0029】
各圧力センサ35aが検出した圧力(検出結果)は、処理部36に送信される。複数の圧力センサ35a間の相対的な位置は、図示しない保持部材等により保持されている。センサ部35は、全体としてシート状に形成されている。前述の頭足方向D1及び左右方向D2は、センサ部35(センサ部35の主面35b)に沿う方向である。
各圧力センサ35aにより、圧力(圧力値)が検出される。検出された圧力を圧力センサ35aの位置に碁盤目状に配置することで、圧力分布が検出される。
センサ部35は、補助エアセル13上に配置される。なお、センサ部35は主マット部11Aの下方に配置されてもよい。
【0030】
処理部36は、図示しない演算回路やメモリ等を有している。メモリには、演算回路を制御するための制御プログラムが記憶されている。なお、流体調整部19、及び後述する主制御部42も、処理部36と同様に構成することができる。
処理部36のメモリには、各圧力センサ35aが占める面積等が記憶されている。さらに、このメモリには、各圧力センサ35aから送信された圧力の検出結果が記憶される。
演算回路は、メモリに記憶された複数の圧力から、検出した圧力が最大の圧力センサ35a(最大圧力を検出した圧力センサ35a)を、圧力センサ35aの識別番号(位置)等により特定することができる。
なお、処理部36はセンサ部35に取付けられてもよい。
【0031】
前述の共通路32には、公知の構成の圧力センサ39が接続されている。なお、圧力センサ39、接続路27、開閉弁281~28N、291~297で、前述の内圧検出部17が構成される。
すなわち、本実施形態では、圧力センサ39は各主エアセル12及び補助エアセル13に対して1つ設けられている。内圧検出部17は、接続路27を通して各主エアセル12内、及び各補助エアセル13の内圧を検出する。
例えば内圧検出部17が主エアセル121の内圧を検出する場合には、開閉弁281を開状態にするとともに、開閉弁282~28N、291~297、排気弁26を閉状態にして、主エアセル121の内圧を検出する。
なお、内圧検出部は、各主エアセル12、及び各補助エアセル13に対応してそれぞれ設けられてもよい。
【0032】
図1に示すように、前述のポンプ25、圧力センサ39、開閉弁281~28N、291~297、排気弁26、共通路32、処理部36、測定情報記憶部18、流体調整部19、及び、後述する主制御部42は、ケーシング44内に収容されている。ケーシング44内に設けられた伝送路であるバス45には、ポンプ25、圧力センサ39、開閉弁281~28N、291~297、排気弁26、処理部36、測定情報記憶部18、流体調整部19、主制御部42、及び、後述する入出力部46が接続されている。
なお、ケーシング44内に収容されたポンプ25等により、制御ユニット48が構成される。
【0033】
流体調整部19のメモリには、圧力分布検出部16の各圧力センサ35aに対応する主エアセル12及び補助エアセル13、主エアセル12及び各補助エアセル13の設定内圧等が予め記憶されている。
各圧力センサ35aに対応する主エアセル12及び補助エアセル13とは、より具体的には、各圧力センサ35aの下方にある主エアセル12及び補助エアセル13のことを意味する。
各補助エアセル13の設定内圧とは、例えば4kPa(キロパスカル)である各補助エアセル13の内圧を上げた後の圧力である。
【0034】
流体調整部19の演算回路は、処理部36から最大圧力を検出した圧力センサ35aの識別番号が送信されたときに、この識別番号及びメモリに記憶されている各圧力センサ35aとエアセル12、13との対応情報から、最大圧力を検出した圧力センサ35aに対応するエアセル12、13(使用者Pから付与される圧力が最大のエアセル12、13)を対象セルとして設定する。
ここで言う対象セルとは、使用者Pから付与される圧力を変化させるエアセル12、13のことを意味する。さらに言い換えれば、対象セルとは、圧力を変化させる目的とするエアセル12、13、圧力を変化させることを所望するエアセル12、13のことを意味する。
【0035】
例えば、
図1及び
図2に示す位置Qに最大の圧力が作用した場合に、流体調整部19が、エアセル12、13のうち、圧力が最大のエアセル12、13である主エアセル12k(kは1以上N以下の自然数)を対象セルに設定し、主エアセル12kとは異なるエアセル12、13である主エアセル121~12k-1、12k+1~12N、及び補助エアセル13を操作セル(操作するエアセル12、13)に設定する。例えば、主エアセル12kは使用者Pの臀部に対応するエアセル12、13であるとする。
なお、流体調整部19は操作セルを設定しなくてもよい。この場合、例えば、流体調整部19は所定の順番にしたがって操作対象となるエアセル12、13に空気を供給又は排出させる等してもよい。
以下では説明を簡単にするために、操作セルが主エアセル121~12k-1、12k+1~12Nを含まずに、補助エアセル131~137のみであるとして説明する。
流体調整部19は、対象セル及び操作セルを設定したときに、供給排出部15のポンプ25、排気弁26、開閉弁281~28N、291~297を駆動して、補助エアセル13に給気する。
【0036】
測定情報記憶部18は、ハードディスクドライブ等の補助記憶装置である。測定情報記憶部18は、エアマット装置1を後述する初期状態にした後における初期最大圧力とエアセル12、13の初期内圧とを記憶する。初期最大圧力は、圧力分布検出部16が検出した最大圧力である。初期内圧は、内圧検出部17が検出した各エアセル12、13の内圧である。
【0037】
主制御部42は、エアマット装置1についての全般的な制御を行う。
入出力部46は、キーボード等の入力部46aと、液晶モニタ等の出力部46bと、を有している。
医療従事者等の介助者が入力部46aから入力した指示は、バス45を介して流体調整部19、主制御部42等に送信される。出力部46bには、使用者Pや介助者に対する表示が示される。
【0038】
次に、本実施形態のエアマット装置1の体圧を分散させる動作について説明する。
図3は本実施形態のエアマット装置1の体圧を分散させる動作を示すフローチャートである。
本実施形態のエアマット装置1の動作の概要を説明すると、まず、複数の補助エアセル13を順番に膨張させる。膨張させた時の主エアセル12k(対象セル)に付与される圧力が初期最大圧力よりも上がったときには、例えばその補助エアセル13の内圧を膨張させる前の初期内圧に戻す等し、それ以外のときは補助エアセル13の内圧を保持する。
以下、エアマット装置1の体圧を分散させる動作について詳細に説明する。
【0039】
介助者が入力部46aを操作すると、エアマット装置1が起動される。エアマット装置1を起動した後、センサ部35上に使用者Pが仰臥位で乗る前の初期状態において、流体調整部19は以下のように動作する。すなわち、流体調整部19は、ポンプ25を駆動するとともに排気弁26、開閉弁281~28N、291~297を切り替えて、各主エアセル12及び補助エアセル13を初期状態にする。初期状態では、各主エアセル12内の空気の圧力が比較的高圧(例えば、4~5kPa)に制御される。
これにより、例えば、エアマット装置1の最大使用荷重の使用者Pが仰臥位で乗ったときであっても、使用者Pの底付きを抑えることができる。
一方で、初期状態では、各補助エアセル13内には空気が供給されていなく、各補助エアセル13は平坦な状態になっている。
初期状態においては、センサ部35の上面はほぼ平坦である。
【0040】
例えば、圧力分布検出部16のセンサ部35上に使用者Pが仰臥位で乗ると、初期体圧測定工程(
図3に示すステップS11)を行う。
初期体圧測定工程S11では、センサ部35は使用者Pの体重がマット部11に付与する圧力分布(体圧分布)を検出する。センサ部35は、各圧力センサ35aによる検出結果を、処理部36に送信する。処理部36は、センサ部35から送信された圧力分布から、最大圧力、及び最大圧力を検出した圧力センサ35aの識別番号を特定する。この例では、処理部36は
図1に示す位置Qに最大圧力が作用したことを検出したとする。処理部36は、最大圧力、及び圧力センサ35aの識別番号を流体調整部19に送信する。
【0041】
流体調整部19は、送信された圧力センサ35aの識別番号から、例えば主エアセル12kを対象セルに設定し、補助エアセル13を操作セルに設定したとする。以下では、補助エアセル131~137の順番に給気する例で説明するが、補助エアセル131~137に給気する順番はこれに限られない。
流体調整部19は、初期体圧測定工程S11を終了し、ステップS13に移行する。
【0042】
ステップS13では、流体調整部19は測定情報記憶部18に初期最大圧力と初期内圧とを記憶させ、ステップS14に移行する。初期最大圧力は、初期体圧測定工程S11で検出した最大圧力である。初期内圧は、内圧検出部17によりエアセル12、13の内圧を検出させたもので、補助エアセル13の内圧は、0kPa程度の値である。主エアセル12の内圧は、センサ部35上に使用者Pが乗ることで、一般的に前述の4~5kPaよりも上がる(高くなる)。
ステップS14では、流体調整部19は変数iの値を0に設定し、ステップS15に移行する。
ステップS15では、変数iの値を1増やしてステップS16に移行する。ステップS14において変数iの値を0に設定しているため、ステップS14の直後のステップS15の終了時点では変数iの値は1になる。
ステップS16では、流体調整部19は、補助エアセル13iが操作セルか否かを判断する。ステップS16でYESと判断したときには、ステップS17に移行する。一方で、ステップS16でNOと判断したときには、ステップS15に移行する。この例では、補助エアセル131は操作セルであるため、ステップS16でYESと判断してステップS17に移行する。
【0043】
ステップS17では、個別圧力調整工程を行う。
まず、ステップS18において、流体調整部19は、供給排出部15を駆動することで補助エアセル131に給気し、ステップS19に移行する。補助エアセル131に給気する空気の量は、適宜設定される。給気している補助エアセル13を出力部46bに示して、使用者Pを安心させてもよい。
ステップS18を行うことにより、
図4に示すように補助エアセル131が平坦な状態から、
図5に示すように補助エアセル131が膨張した状態になる。なお、
図4及び
図5ではセンサ部35は示していない。
膨らんだ補助エアセル131は、使用者Pの首部P1に接触する。このとき、使用者Pの体圧を補助エアセル131で支持する割合が増加する。
【0044】
流体調整部19は、供給排出部15により補助エアセル131に給気させるとともに、圧力分布検出部16により最大圧力を検出させ、内圧検出部17により補助エアセル131の内圧を検出させる。流体調整部19は、自身のメモリ等に、
図6に示すような補助エアセル131に給気することに伴う、補助エアセル131の内圧に対する最大圧力の変化を記憶する。
図6の横軸は補助エアセル131の内圧を表し、縦軸は圧力分布検出部16が検出する最大圧力を表す。
【0045】
流体調整部19は補助エアセル131に給気させることで、補助エアセル131の内圧が初期内圧(内圧P6)から補助エアセル131の設定内圧(内圧P7)に至るまで上げる。すなわち、流体調整部19は、補助エアセル131の設定内圧と、内圧検出部17が検出する補助エアセル131の内圧と、が等しくなるように、供給排出部15を駆動して補助エアセル131に給気させる。
縦軸における最大圧力が初期最大圧力(圧力P8)よりも下がる(低くなる)領域R6が、主エアセル12kに作用する圧力が下がり使用者Pの体圧が分散される望ましい領域となる。
すなわち、流体調整部19は、最大圧力という指標に基づいて供給排出部15を駆動して補助エアセル131を操作し、操作する補助エアセル131とは異なる主エアセル12kが使用者Pから付与される圧力を変化させる。
以上でステップS18を終了し、ステップS19に移行する。
【0046】
ステップS19では、流体調整部19は、補助エアセル131に給気の過程において主エアセル12kに作用する圧力が最小になったときの補助エアセル131の内圧に、補助エアセル131の内圧を設定する。
言い換えれば、流体調整部19は、補助エアセル131の内圧が設定内圧に至るまで供給排出部15を駆動する。その後で、流体調整部19は、補助エアセル131の内圧を、供給排出部15の駆動の過程で、主エアセル12kに作用する圧力が最小になったときの補助エアセル131の内圧に、補助エアセル131の内圧を設定する。
【0047】
具体的には、
図6中に曲線L6で示すように、補助エアセル131の内圧が上がるにしたがい最大圧力が上がることなく下がる場合には、補助エアセル131の内圧を内圧P7(設定内圧)に設定する。
曲線L7で示すように、補助エアセル131の内圧が上がるにしたがい最大圧力が一度上がっても最終的には初期最大圧力P8よりも下がる場合には、補助エアセル131の内圧を内圧P7に設定する。
【0048】
図6中に曲線L8で示すように、補助エアセル131の内圧が上がるにしたがい最大圧力が下がることなく上がる場合には、補助エアセル131の内圧を内力P6(初期内圧)に設定する(戻す)。
曲線L9で示すように、補助エアセル131の内圧が上がるにしたがい最大圧力が、補助エアセル131の内圧P9で最小になりその後初期最大圧力P8よりも上がる場合には、補助エアセル131の内圧を内圧P9に設定する。
このように、曲線L6~L9で示したいずれの場合においても、最大圧力は初期最大圧力P8以下になる。
【0049】
すなわち、流体調整部19は、圧力分布検出部16が検出した圧力分布のうち使用者Pの身体の臀部(第1部位)による最大圧力(部分圧力分布)を指標にしながら、供給排出部15を駆動して使用者Pの身体の首部(第2部位)に対応する補助エアセル131に対して空気を供給して操作する。このように、第1部位と第2部位とは異なるが、第1部位と第2部位とは同一でもよい。
首部に対応する補助エアセル13とは、首部に接触するように配置された補助エアセル13、又は、首部の下方に配置された補助エアセル13のことを意味する。
流体調整部19は、供給排出部15を駆動した結果を見る。その結果に応じて、流体調整部19は、補助エアセル131の内圧を初期最大圧力P8以下にすることで、補助エアセル131の内圧を初期の内圧以下に抑えることができる。
以上でステップS19を終了し、ステップS20に移行する。
【0050】
ステップS20では、流体調整部19は、給気の過程に応じて測定情報記憶部18に初期最大圧力と初期内圧とを記憶し直す。
具体的には、
図6で曲線L6、L7、L9で示したように最大圧力が下がる場合には、測定情報記憶部18に初期最大圧力よりも下がった後の最大圧力を、初期最大圧力として記憶させる。
曲線L6、L7で示したように最大圧力が下がる場合には、測定情報記憶部18に補助エアセル131の初期内圧として内圧P7を記憶させる。曲線L9で示したように最大圧力が下がる場合には、測定情報記憶部18に補助エアセル131の初期内圧として内圧P9を記憶させる。
一方で、曲線L8で示したように最大圧力が上がる場合は、上がった後の最大圧力を記憶させない。
以上でステップS20を終了し、ステップS21に移行する。
【0051】
ステップS21では、変数iの値が、補助エアセル13の数である7か否かを判断する。ステップS21でYESと判断したときには、このエアマット装置1の体圧を分散させる動作の全ての工程を終了する。一方で、ステップS21でNOと判断したときには、ステップS15に移行する。この例では変数iの値は1であるため、ステップS15に移行する。
【0052】
ステップS15では、変数iの値を1増やしてステップS16に移行する。なお、ステップS15の終了時点では変数iの値は2になる。
次に、ステップS16~19を繰り返すことで、補助エアセル132~137に対して補助エアセル131と同様の工程を行う。
補助エアセル131~137に対して順番に給気して補助エアセル131~137内の圧量を調整して、エアマット装置1の体圧を分散させる動作の全ての工程を終了する。
【0053】
なお、操作セルが補助エアセル13だけでなく主エアセル121~12k-1、12k+1~12Nを含む場合にも、各操作セルに対して個別圧力調整工程S17を行うことで、圧力分布検出部16が検出する最大圧力が下がるように各補助エアセル13の内圧、及び主エアセル121~12k-1、12k+1~12Nの内圧が適切な値に調整される。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のエアマット装置1によれば、流体調整部19は、最大圧力を指標にしながら補助エアセル131に対して空気を供給すため、エアセル12、13を有するマット部11を使用者Pの身体にフィットさせることができる。
流体調整部19は、最大圧力に基づいて供給排出部15を駆動して補助エアセル13を操作し、操作する補助エアセル131とは異なる主エアセル12kが使用者Pから付与される圧力を変化させる。主エアセル12kの圧力を変化させるのに補助エアセル131の圧力を変化させることでより広い範囲にわたるエアセル12、13の圧力を変化させ、使用者Pの身体にマット部11を効果的にフィットさせることができる。
【0055】
流体調整部19は使用者Pから付与される圧力を変化させる対象セル(主エアセル12k)とは異なる操作セル(主エアセル121~12k-1、12k+1~12N、補助エアセル13)に給気して、その操作セルを膨張させる。これにより、使用者Pの体圧を対象セルで支持する割合が減少する一方で、操作セルで支持する割合が増加する。したがって、使用者Pの体圧を効率的に分散させることができる。
また、補助エアセル13を膨張させることで、エアセル12、13の全体としての形状が変化し、エアセル12、13上に寝る使用者Pの姿勢を変えることができる。
流体調整部19は、圧力が最大であるエアセル12、13を対象セルとして設定するため、圧力が最大である対象セルで支持する使用者Pの体圧を減少させ、最大圧力を下げることができる。
【0056】
流体調整部19は、補助エアセル131の設定内圧と、内圧検出部17が検出する補助エアセル131の内圧と、が等しくなるように、供給排出部15を駆動する。補助エアセル131の内圧を調節する目標が設定内圧として予め記憶されているため、補助エアセル131の内圧の調節を素早く行うことができる。
流体調整部19は、補助エアセル131の内圧が設定内圧に至るまで供給排出部15を駆動した後、補助エアセル131の内圧を、供給排出部15の駆動の過程で、主エアセル12kに作用する圧力が最小になったときの補助エアセル131の内圧に、補助エアセル131の内圧を設定する。これにより、供給排出部15の駆動の過程において、主エアセル12kに作用する圧力が最小になったときの状態に、補助エアセル131の内圧を調節することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、エアマット装置1において操作セルが主エアセル121~12k-1、12k+1~12N、補助エアセル131~137であるとして説明したが、エアマット装置1に操作セルが1つしかない場合でも適用可能である。すなわち、流体調整部19は、1つの操作セルに給気することで最大圧力を低下させるように制御する。
また、流体調整部19は使用者Pにより付与される圧力が最大であるエアセル12、13を対象セルとして設定するとした。しかし、対象セルの設定方法はこれに限られず、使用者Pにより付与される圧力が、2番目に大きいエアセル12、13や3番目に大きいエアセル12、13等を対象セルとして設定してもよい。
流体調整部19は、圧力が最大でないエアセル12、13を操作し、圧力が最大である主エアセル12kにおける圧力を変化させてもよい。このように構成することで、圧力が最大である主エアセル12kを直接操作しないで、主エアセル12kにおける圧力を変化させることができる。
【0058】
流体調整部19は、供給排出部15を駆動して臀部に対応する補助エアセル13に対して空気を供給して操作するようにしてもよい。
このように構成することで、首部に対応するエアセル12、13だけでなく臀部に対応するエアセル12、13に空気を供給することで、より広い範囲にわたるエアセル12、13の圧力を変化させ、使用者Pの身体にマット部11を効果的にフィットさせることができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図7から
図9を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図7に示すように、本実施形態のエアマット装置2は第1実施形態のエアマット装置1の各構成に加えて、予め取得された圧力分布等を含む既存情報の束を複数記憶した既存情報記憶部56と、既存情報の束を選択する選択部57と、を備えている。
なお、本実施形態では流体調整部19のメモリに設定内圧が記憶されていなくてもよい。
【0060】
ここで、既存情報の束について説明する。
図8に示すように、既存情報の束D6は、既存圧力分布D6a、及び設定内圧D6bを含む。
既存圧力分布D6aは、予め1又は複数の使用者(以下、先の使用者と称する)に対して取得された圧力分布である。先の使用者は、エアマット装置2を新たに用いようとする使用者と別の者でもよいし、同一の者でもよい。先の使用者は、エアマット装置2のセンサ部35上に乗る等して圧力分布検出部16に体重を付与し、圧力分布検出部16が圧力分布を検出する。この検出した圧力分布を、既存圧力分布D6aとする。既存圧力分布D6aは、例えばセンサ部35の頭足方向D1及び左右方向D2の複数の位置に対応する圧力を、マトリクス状に配置したデータである。
既存圧力分布D6aは、方向D1、D2に関するマトリクス状のデータであるため、本明細書では便宜上、(D1,D2)と表す。
【0061】
設定内圧D6bは、例えば各補助エアセル131~137に対して予め取得された圧力を表すデータである。データPi(iは1~7までの自然数)は、ある先の使用者に対して、いずれかの補助エアセル13iに給気した後で、圧力分布検出部16が検出した各補助エアセル13iの内圧である。
言い換えれば、設定内圧D6bは、各先の使用者に対して最終的に各補助エアセル13をどの圧力まで変化させたかの記録である。
本明細書では、設定内圧D6bを便宜上(P1,‥,P7)と表す。
既存情報の束D6では、既存圧力分布D6aと設定内圧D6bとが組合わせられるとともに関連付けられる。
【0062】
ある先の使用者がエアマット装置2を使用することで、既存圧力分布D6a、及び設定内圧D6bを含む既存情報の束D6が得られる。
複数の既存情報の束D6のうち、例えばm1個の既存情報の束D6が後述する第一記憶部56aに記憶され、m2個の既存情報の束D6が後述する第二記憶部56bに記憶されている。すなわち、(D1,D2)1から(D1,D2)m1までの既存圧力分布D6a、及び、(P1,‥,P7)1から(P1,‥,P7)m1までの供給後セル内圧力D6bが第一記憶部56aに記憶される。(D1,D2)1から(D1,D2)m2までの既存圧力分布D6a、及び、(P1,‥,P7)1から(P1,‥,P7)m2までの供給後セル内圧力D6bが第二記憶部56bに記憶される。
各既存情報の束D6は、使用者Pに適用するのに好ましい補助エアセル13の内圧である。
【0063】
本実施形態では、
図7に示すように、既存情報記憶部56として第一記憶部56a及び第二記憶部56bを有する。記憶部56a、56bは、データベースであり、ハードディスクドライブ等の補助記憶装置を用いることができる。
第一記憶部56aは、例えばケーシング44内に配置された状態で、バス45を介して流体調整部19に接続されている。第二記憶部56bは、インターネット等のネットワーク上に配置された装置であり、バス45とは公知の有線回線又は無線回線で接続されている。
介助者等が入出力部46の入力部46aから入力した指示の一部は、既存情報記憶部56に送信される。これにより、介助者等は、既存情報記憶部56に記憶された既存情報の束D6の既存圧力分布D6a等の値を修正することができる。
【0064】
選択部57は、図示しない演算回路やメモリ等を有している。
選択部57は、既存情報記憶部56に記憶された複数の既存情報の束D6が含む既存圧力分布D6aの中から、圧力分布検出部16が検出した圧力分布(検出結果)に最も近い既存圧力分布D6aを含む既存情報の束D6を選択する。
複数の既存圧力分布D6aのうち検出した圧力分布に最も近い既存圧力分布D6aを判定する方法は、特に限定されず公知の画像処理方法等を用いることができる。例えば、以下の方法で判定することができる。
【0065】
●輪郭(シルエット):検出した圧力分布と既存圧力分布D6aとを、両圧力分布の輪郭形状で比較する。両圧力分布の輪郭形状が一致するほど、両圧力分布が近いことを意味する。
●荷重:検出した圧力分布と既存圧力分布D6aとを、両圧力分布から得られる荷重(体重)で比較する。両圧力分布から得られる荷重が一致するほど、両圧力分布が近いことを意味する。
●面積:検出した圧力分布と既存圧力分布D6aとを、両圧力分布が分布している面積(圧力を検出した圧力センサ35aの数)で比較する。両圧力分布から得られる面積が一致するほど、両圧力分布が近いことを意味する。
【0066】
選択部57は、これら輪郭、荷重、及び面積の少なくとも1つを用いて、複数の既存圧力分布D6aのうち検出した圧力分布に最も近い既存圧力分布D6aを判定する。輪郭、荷重、及び面積の2つ以上を用いる場合には、例えば、各輪郭、荷重、及び面積の評価結果に重み付け係数をかけたものの和で、輪郭、荷重、及び面積の2つ以上を用いた近さを評価してもよい。
本実施形態では、流体調整部19は、圧力分布検出部16が検出した圧力分布のうち使用者Pの身体の全体(第1部位)による圧力分布(部分圧力分布)を指標にしながら、選択部57が選択した設定内圧D6bに基づいた使用者Pの第2部位に対応する補助エアセル13に対して空気を供給して操作する。
【0067】
次に、本実施形態のエアマット装置2の体圧を分散させる動作について説明する。
図9は本実施形態のエアマット装置2の体圧を分散させる動作を示すフローチャートである。
本実施形態のエアマット装置2の動作の概要を説明すると、まず、使用者Pの圧力分布に最も近い既存圧力分布を含む既存情報の束D6をデータベースから読み込む。各補助エアセル13を既存情報の束D6が含む設定内圧D6bまで順番に膨張させ、第1実施形態のエアマット装置1と同様の動作をする。
以下、エアマット装置2の体圧を分散させる動作について詳細に説明する。
【0068】
まず、第1実施形態と同様に初期体圧測定工程S11を行い、ステップS26に移行する。初期体圧測定工程S11では、圧力分布検出部16により使用者Pの圧力分布を1度検出する。
ステップS26では、選択部57は、使用者Pの体重に対して圧力分布検出部16が検出した圧力分布に基づいて既存情報の束D61(
図8参照)を前述のように選択し、ステップS13に移行する。
ステップS13以降は、第1実施形態と同様である。
ただし、個別圧力調整工程S17のステップS18では、ステップS26で選択した既存情報の束D61の設定内圧D6bに基づいて補助エアセル131に給気する。具体的には、例えば
図6における補助エアセル131の内圧を上げる目標値である内圧P7(設定内圧)を、既存情報の束D61の設定内圧D6bにおけるデータP1(補助エアセル131に対応する設定内圧D6bのデータ)が表す圧力にする。言い換えれば、流体調整部19は、補助エアセル131について、選択部57が選択した既存圧力分布D6aに対応する設定内圧D6bにおけるデータP1と、内圧検出部17が検出する内圧と、が等しくなるように、供給排出部15を駆動して補助エアセル131に給気する。
【0069】
ただし、例えば
図6中に曲線L8で示すように最大圧力が変化した場合には、補助エアセル131の内圧を内圧P6(初期内圧)に戻す。このため、補助エアセル131の内圧を補助エアセル131の設定内圧D6bであるデータP1に保持しない。
この場合、既存情報の束D61において設定内圧D6bのデータP1の値を内圧P6(初期内圧)に修正したデータ(修正した既存情報の束D61)を、既存情報記憶部56に記憶してもよい。修正した既存情報の束D61は、既存情報記憶部56に記憶されていた内圧の設定が当てはまらなかった新たなケースとして、既存情報記憶部56に記憶される。
【0070】
ステップS15~S17を、補助エアセル131以外の補助エアセル132~137に対して行う。
この場合、流体調整部19は、予め既存情報記憶部56に記憶された補助エアセル13の設定内圧D6bと内圧検出部17が検出する補助エアセル13の内圧とが、補助エアセル13の少なくとも一部で等しくなるように、供給排出部15を駆動して補助エアセル13に給気させる。
【0071】
このように、本実施形態では、使用者Pの圧力分布に最も近い既存圧力分布D6aを含む既存情報の束D61を選択し、この既存情報の束D61が含む設定内圧D6bに基づいて各補助エアセル13の内圧を調整するため、各補助エアセル13内の好ましい圧力が迅速に決まる。
必要に応じて介助者等は、入力部46aを操作して、記憶部56a、56bに記憶された既存情報の束D6の既存圧力分布D6a等の値を修正する。
【0072】
以上説明したように、本実施形態のエアマット装置2によれば、使用者Pの身体にマット部11を効率的にフィットさせることができる。
さらに、エアマット装置2が既存情報記憶部56及び選択部57を備えることで、既存情報記憶部56に記憶されている複数組の既存圧力分布D6a及び設定内圧D6bのうち、検出結果に最も近い既存圧力分布D6aに対応する設定内圧D6bに基づいて、補助エアセル13に空気を供給することができる。
【0073】
また、既存情報記憶部56として記憶部56a、56bを備えることで、複数の既存情報の束D6を複数の記憶部56a、56bに分けて記憶することができる。ネットワーク上に配置された第二記憶部56bは、エアマット装置2の介助者以外の他の介助者にとってアクセスが比較的容易になり、他の介助者が第二記憶部56bに既存情報の束D6を記憶させやすくなる。
エアマット装置2が既存情報の束D6を修正可能な入力部46aを備えることで、既存情報の束D6が含む情報が誤っている場合等に既存情報の束D6を修正し、既存情報の束D6の信頼性を高めることができる。そして、使用者Pの体圧を分散させるアルゴリズムの精度を向上させることができる。
【0074】
なお、本実施形態では既存情報記憶部56は第二記憶部56bを備えずに第一記憶部56aのみを備えてもよいし、第一記憶部56aを備えずに第二記憶部56bのみを備えてもよい。
【0075】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図10及び
図11を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図10に示すように、本実施形態のエアマット装置3は、第1実施形態のエアマット装置1の測定情報記憶部18及び流体調整部19に代えて、前述の既存情報記憶部56及び選択部57、そして流体調整部63を備えている。
【0076】
流体調整部63は、前述の流体調整部19に対してメモリに記憶されている制御プログラムが異なる。すなわち、流体調整部63は、流体調整部19に対して処理フローが異なる。
【0077】
次に、本実施形態のエアマット装置3の体圧を分散させる動作について説明する。
図11は本実施形態のエアマット装置3の体圧を分散させる動作を示すフローチャートである。
本実施形態のエアマット装置3の動作の概要は、使用者Pの圧力分布に最も近い既存圧力分布を含む既存情報の束D6をデータベースから読み込む。そして、読み込んだ既存情報の束D6の設定内圧D6bに基づいて補助エアセル13を膨張させる。
以下、エアマット装置3の体圧を分散させる動作について詳細に説明する。
【0078】
ステップS11までは、第1実施形態と同様である。
ステップS11の後で、既存圧力調整工程(
図11に示すステップS31)を行う。
既存圧力調整工程S31では、まず、選択部57は、圧力分布検出部16が検出した使用者Pの体重の圧力分布に基づいて、この圧力分布に最も近い既存圧力分布D6aを含む既存情報の束D61を前述のように選択する(ステップS32)。そして、ステップS33に移行する。
【0079】
ステップS33では、流体調整部63は、この選択した既存情報の束D61の補助エアセル13の設定内圧D6bと、内圧検出部17が検出する補助エアセル13の内圧とが等しくなるように、供給排出部15を駆動して補助エアセル13に給気する。具体的には、1~7までの自然数iに対して、内圧検出部17が検出する各補助エアセル13iの内圧を、既存情報の束D61の設定内圧D6bにおけるデータPiが表す圧力にする。言い換えれば、流体調整部63は、補助エアセル13iについて、選択部57が選択した既存圧力分布D6aに対応する設定内圧D6bにおけるデータPiと、内圧検出部17が検出する内圧と、が等しくなるように、供給排出部15を駆動して補助エアセル13iに給気させる。
以上で、既存圧力調整工程S31、及びエアマット装置3の体圧を分散させる動作の全ての工程を終了する。
【0080】
以上説明したように、本実施形態のエアマット装置3によれば、使用者Pの身体にマット部11を効率的にフィットさせることができる。
さらに、既存情報記憶部56に記憶されている複数の既存情報の束D6のうち、使用者Pの圧力分布に近い既存圧力分布D6aを含む既存情報の束D61の設定内圧D6bに基づいて、各補助エアセル13内に給気することができる。これにより、各補助エアセル13内の好ましい圧力を素早く決めることができる。
【0081】
また、エアマット装置3は、初期体圧測定工程S11において圧力分布検出部16により使用者Pの圧力分布を1度検出したら、流体調整部63は指標に基づいて空気を供給しなくてもよい。
エアマット装置3は、圧力分布検出部16により使用者Pの圧力分布を1度検出するだけで、既存情報記憶部56に記憶されている複数組の既存圧力分布D6a及び設定内圧D6bのうち、圧力分布検出部16の検出結果に最も近い既存圧力分布D6aに対応する設定内圧D6bに基づいて、補助エアセル13に空気を供給することができる。
検出結果から予め記憶された設定内圧D6bを選ぶため、使用者Pの身体にマット部11をフィットさせることができる。
圧力分布を1度検出すれば、流体調整部19はその後で指標に基づいて空気を供給して操作する必要がなくなる。
【0082】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図12及び
図13を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図12に示すように、本実施形態のエアマット装置4は第3実施形態のエアマット装置3の各構成に加えて、前述の測定情報記憶部18を備えている。
【0083】
次に、本実施形態のエアマット装置4の体圧を分散させる動作について説明する。
図13は本実施形態のエアマット装置4の体圧を分散させる動作を示すフローチャートである。
本実施形態のエアマット装置4の動作の概要を説明すると、まず、使用者Pの圧力分布に最も近い既存圧力分布を含む既存情報の束D6をデータベースから読み込んで補助エアセル13を適宜膨張させる。補助エアセル13を膨張させた後で最大圧力が上がったときに、一つの補助エアセル13を膨張させる。膨張させた時の最大圧力が、前記初期最大圧力よりも下がったときは、補助エアセル13の内圧を保持し、補助エアセル13の内圧をデータベースに記憶する。それ以外のときは、その補助エアセル13の内圧を膨張させる前の圧力に戻す等する。
以下、エアマット装置4の体圧を分散させる動作について詳細に説明する。
【0084】
ステップS13までは、第1実施形態と同様である。
ステップS13の後で、前述の既存圧力調整工程S31を行う。既存圧力調整工程S31を終了すると、ステップS36に移行する。
【0085】
ステップS36では、流体調整部63は既存圧力調整工程S31を行う前に測定情報記憶部18に記憶された初期最大圧力に比べて、既存圧力調整工程S31を行った後に圧力分布検出部16が検出した最大圧力が上がったか否かを判断する。なお、ステップS36では使用者Pの圧力分布を検出してもよい。
ステップS36でYESと判断したときには、ステップS37に移行する。一方で、ステップS36でNOと判断したときには、エアマット装置4の体圧を分散させる動作の全ての工程を終了する。
ステップS37では、前述のステップS13と同一の工程を行い測定情報記憶部18に初期最大圧力と初期内圧とを記憶させ、ステップS38に移行する。
【0086】
ステップS38では、流体調整部63は供給排出部15を駆動して複数の補助エアセル13の一つ(例えば補助エアセル131とする)に給気し、ステップS39に移行する。 ステップS39、及びステップS39に続いて行うステップS40では、補助エアセル131に対して前述のステップS19、S20と同一の工程を行い、ステップS42に移行する。
ステップS42では、流体調整部63は測定情報記憶部18に記憶された初期最大圧力に比べて圧力分布検出部16が検出した最大圧力が下がったか否かを判断する。ステップS42でYESと判断したときには、ステップS43に移行する。一方で、ステップS42でNOと判断したときには、エアマット装置4の体圧を分散させる動作の全ての工程を終了する。
【0087】
ステップS43では、ステップS36で検出した使用者Pの圧力分布を既存圧力分布とし、この既存圧力分布、及び修正した設定内圧を含む既存情報の束D6を既存情報記憶部56に記憶する。ここで言う修正した設定内圧とは、ステップS32で選択した既存情報の束D61の設定内圧D6bに対して、補助エアセル131の内圧を、
図6における内圧P6、P9等としたものを意味する。
修正された既存情報の束D6が既存情報記憶部56に記憶されることで、既存情報の束が表す調整すべき圧力の情報を改善される。そして、エアマット装置4の体圧を分散させる動作の全ての工程を終了する。
【0088】
なお、ステップS37~S43を、補助エアセル131以外の補助エアセル132~137に対して行ってもよい。
【0089】
以上説明したように、本実施形態のエアマット装置4によれば、使用者Pの身体にマット部11を効率的にフィットさせることができる。
さらに、既存圧力調整工程S31を行った後で圧力分布検出部16が検出する最大圧力が上がったとき、操作セル(補助エアセル13)の一つに給気する。そして、初期最大圧力に比べて最大圧力が下がれば、修正した設定内圧を含む既存情報の束D6を既存情報記憶部56に記憶し、最大圧力が初期最大圧力以上になれば、操作セルの内圧を操作セルを膨張させる前の圧力に戻す等する。これにより、最大圧力が下がるように操作セルの内圧を修正するとともに、既存情報の束D6が表す調整目標となる圧力の情報を改善することができる。
【0090】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について
図14から
図33を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図14に示すように、本実施形態のエアマット装置5は第3実施形態のエアマット装置3の既存情報記憶部56、選択部57、流体調整部63に代えて、判定部66、既存情報記憶部67、選択部68、流体調整部69を備えている。
【0091】
本実施形態では、処理部36は、
図15に示すように、使用者Pの体重を支持しつつ、頭足方向D1に沿った複数の領域A1、A2、A3、A4ごとに圧力分布を検出する。複数の領域A1、A2、A3、A4は、頭部領域A1、上半身領域A2、臀部領域A3、及び足部領域A4の4つの領域を含んでいる。頭部領域A1、上半身領域A2、臀部領域A3、及び足部領域A4は、頭側Hから脚側Fに向けてこの順に位置している。
頭部領域A1は、使用者Pの身体の頭部による圧力分布が検出される領域である。同様に、上半身領域A2は使用者Pの身体の頭部以外の上半身による圧力分布が検出される領域であり、臀部領域A3は使用者Pの身体の臀部による圧力分布が検出される領域であり、足部領域A4は使用者Pの身体の足部による圧力分布が検出される領域である。
【0092】
なお、複数の領域A1、A2、A3、A4は頭部領域A1、上半身領域A2、臀部領域A3、及び足部領域A4の少なくとも1つを含むように構成してもよい。処理部36が検出可能な圧力分布の分割数は4つに限られず、2つ、3つでもよいし、5つ以上でもよい。
【0093】
さらに、上半身領域A2は、頭側Hから脚側Fに向けて上半身第一領域A21、上半身第二領域A22を有する。上半身第一領域A21は、上半身領域A2のうち頭足方向D1の中央部よりも頭部領域A1寄りの領域である。上半身第二領域A22は、上半身領域A2のうち頭足方向D1の中央部よりも臀部領域A3寄りの領域である。
足部領域A4は、頭側Hから脚側Fに向けて足部第一領域A41、足部第二領域A42を有する。足部第一領域A41は、足部領域A4のうち頭足方向D1の中央部よりも臀部領域A3寄りの領域である。足部第二領域A42は、足部領域A4のうち頭足方向D1の中央部よりも臀部領域A3とは反対寄りの領域である。
各領域A1、A2、A3、A4、A21、A22、A41、A42の頭足方向D1の長さは、エアマット装置1を使用する複数の使用者の体型等に応じて適切な値に設定されている。
【0094】
例えば、前述の補助エアセル131は、センサ部35の上半身領域A2の上方に配置される。補助エアセル132、133は、センサ部35の上半身領域A2に配置される。補助エアセル134、135は、センサ部35の臀部領域A3に配置される。そして、補助エアセル136、137は、センサ部35の足部第一領域A41に配置される。
【0095】
本実施形態では、処理部36のメモリには各圧力センサ35aが属する領域A1等の種類等が記憶されている。処理部36の演算回路は、メモリに記憶された複数の圧力から、頭部領域A1等に作用する全荷重等を演算することができる。
【0096】
判定部66は、処理部36と同様に構成される。判定部66は、圧力分布検出部16の検出結果に基づいて、使用者Pの身体の状態、具体的には使用者Pの身体の円背、下肢拘縮、上半身及び下半身の向き等である身体の水平位からの屈曲及び捻じれの少なくとも一方を判定する。判定部66は、さらに、仰臥位と側臥位との違い、仰臥位時の足や腕の開閉状態、背上げ時の身体の向きや姿勢の崩れ等を判定する。
判定部66のメモリには、使用者Pの体重に対する割合を表す第四の割合、上半身領域A2、臀部領域A3の左右に作用する全荷重の割合を表す第五の割合、第六の割合が予め記憶されている。なお、第一の割合から第三の割合は、後述するように主制御部42に記憶されている。
第四~六の割合は、例えば「10%」等の値や、「20%以上30%以下」等の範囲として設定することができる。
【0097】
図14に示すように、既存情報記憶部67は、第一記憶部56a、第二記憶部56bと同様に構成された第一記憶部67a、第二記憶部67bを有している。
記憶部67a、67bには、
図16に示すように、複数の既存情報の束D10が予め記憶されている。それぞれの既存情報の束D10は、使用者Pの身体の状態D10a、及び、前述の設定内圧D6bを含む。
身体の状態D10aにおいて、例えば、データC1は使用者Pの円背の有無をYES(円背が有る(円背である))又はNO(円背が無い)で表す情報である。データC2は、使用者Pの下肢拘縮の有無をYES(下肢拘縮が有る(下肢拘縮である))又はNO(下肢拘縮が無い)で表す情報である。データC3、C4(不図示)は、使用者Pの上半身、下半身の向きを、右向き、仰向け、及び左向きで区別して表す情報である。
本明細書では、身体の状態D10aを便宜上(C1,C2,‥)と表す。既存情報の束D10では、身体の状態D10aと設定内圧D6bとが組合わせられるとともに関連付けられる。
(C1,C2,‥)1から(C1,C2,‥)m1までの身体の状態D10aが、第一記憶部67aに記憶される。(C1,C2,‥)1から(C1,C2,‥)m2までの身体の状態D10aが、第二記憶部67bに記憶される。
【0098】
選択部68、流体調整部69は、前述の選択部57、流体調整部63に対してメモリに記憶されている制御プログラムが異なる。
すなわち、選択部68は、既存情報記憶部67に記憶された複数の身体の状態D10aの中から、判定部66が判定した身体の状態に最も近い身体の状態D10aを選択する。
例えば、この例では身体の状態D10aとして円背、下肢拘縮、上半身の向き、及び下半身の向きの4つの項目がある。一致している項目の数が多い身体の状態D10aほど、判定部66が判定した身体の状態に近いとしてもよい。
【0099】
ここで、使用者Pが円背であり、下肢拘縮であり、上半身の向きが仰向けであり、さらに下半身の向きが右向きであることを、便宜上(YES,YES,仰向け,右向き)と表すとする。判定部66が判定したこの身体の状態に対して、既存情報記憶部67に記憶された1つの身体の状態D10a(以下、第一の身体の状態D10aと称する)が(YES,YES,仰向け,仰向け)であり、他の1つの身体の状態D10a(以下、第二の身体の状態D10aと称する)が(NO,NO,仰向け,仰向け)であるとする。
第一の身体の状態D10aは判定部66が判定した身体の状態に対して一致している項目の数が3であり、第二の身体の状態D10aは判定部66が判定した身体の状態に対して一致している項目の数が1である。この場合、選択部68は、第二の身体の状態D10aよりも第一の身体の状態D10aの方が判定部66が判定した身体の状態に近いと判定し、第一の身体の状態D10aを含む既存情報の束D10を選択する。
なお、判定部66が身体の状態が近いことを判断する方法は、これに限られない。
【0100】
流体調整部69は、流体調整部63に対して処理フローが異なる。
主制御部42のメモリには、使用者Pの体重に対する割合を表す第一の割合、第二の割合、及び第三の割合が予め記憶されている。各割合は、前述の第四~六の割合と同様に設定することができる。
【0101】
次に、本実施形態のエアマット装置5の体圧を分散させる動作について説明する。
図17から
図21は本実施形態のエアマット装置5の体圧を分散させる動作を示すフローチャートである。
本実施形態のエアマット装置5の動作の概要は、使用者Pの身体の状態に最も近い身体の状態D10aを含む既存情報の束D10をデータベースから読み込む。そして、読み込んだ既存情報の束D10の設定内圧D6bに基づいて補助エアセル13を膨張させる。
以下、エアマット装置5の体圧を分散させる動作について詳細に説明する。
第1実施形態における初期体圧測定工程S11の前までは、第1実施形態と同様である。
【0102】
次に、処理部36の演算回路は、例えば頭部領域A1に属する各圧力センサ35aの検出した圧力に、圧力センサ35aが占める面積を掛けた値を足し合わせること等により、頭部領域A1の圧力分布による全荷重(部分圧力分布による荷重)を演算する。同様に、各領域A21、A22、A3、A41、A42の圧力分布による全荷重を演算する。上半身第一領域A21の圧力分布による全荷重に上半身第二領域A22の圧力分布による全荷重を足すことで、上半身領域A2の圧力分布による全荷重を演算する。同様に、足部第一領域A41の圧力分布による全荷重に足部第二領域A42の圧力分布による全荷重を足すことで、足部領域A4の圧力分布による全荷重を演算する。
これらの各領域A1、A2、A3、A4の圧力分布による全荷重を合計することで、使用者Pの体重を演算する。
【0103】
なお、演算回路は、
図23に示すように、上半身領域A2における圧力分布の圧力中心位置P2を算出する。圧力中心位置P2は、例えば、圧力が分布する範囲(圧力分布検出部16に第1部位から使用者Pの体重が作用している面積)の左右方向D2の幅に対する中心線である。
この際に、上半身領域A2における圧力分布を、上半身領域A2内で最も広い範囲にわたり連続した圧力分布が生じている領域である主領域R21と、主領域R21から離間して圧力分布が生じている領域である離間領域R22とに分けてもよい。そして、圧力中心位置を、上半身領域A2の主領域R21における圧力を検出した圧力センサ35aの位置の重心としてもよい。
同様に、演算回路は、臀部領域A3における圧力分布の圧力中心位置P3を算出する。
【0104】
演算回路は、上半身領域A2の圧力中心位置P2に対する右側Rの上半身右側領域A23の圧力分布による全荷重と、上半身領域A2の圧力中心位置P2に対する左側Lの上半身左側領域A24の圧力分布による全荷重と、をそれぞれ演算する。
演算回路は、臀部領域A3の圧力中心位置P3に対する右側Rの臀部右側領域A33の圧力分布による全荷重と、上半身領域A2の圧力中心位置P3に対する左側Lの臀部左側領域A34の圧力分布による全荷重と、をそれぞれ演算する。
演算された各領域A23、A24、A33、A34ごとの圧力分布による全荷重は、処理部36のメモリに記憶される。
【0105】
処理部36は、演算した各領域に作用する荷重、及び使用者Pの体重等を、主制御部42及び判定部66に送信する。各荷重及び体重は、主制御部42及び判定部66のメモリに記憶される。すなわち、流体調整部69は、各領域に作用する荷重、及び圧力中心位置P2、P3を指標にしながら空気を供給する。
以上で、使用者Pの身体の状態を判定するための基礎となる演算が終了する。
次に、身体の状態を判定する前に、使用者Pの初期の位置を調節する初期工程(
図17のステップS45)を行う。
なお、以下で説明する初期工程S45におけるステップS46の工程は、センサ部35に対して使用者Pが寝る頭足方向D1の位置が、使用者Pの臀部を中心に一意に定まると考えるために行う工程である。また、初期工程S45におけるステップS47の工程は、センサ部35上に使用者Pを正しく寝させるための工程である。
【0106】
主制御部42は、初期工程S45において、送信された臀部領域A3に作用する荷重、及び使用者Pの体重から、臀部領域A3に使用者Pの体重の第一の割合の荷重が分布(作用)したか否かを判断する(ステップS46)。臀部領域A3に使用者Pの体重の第一の割合の荷重が分布していることは、使用者Pが臀部領域A3上に臀部を正しく乗せた状態で寝ていて、臀部領域A3に使用者Pの体重がある程度集中していることを意味する。
ステップS46でYESと判断したときには、ステップS47に移行する。一方で、ステップS46でNOと判断したときには、ステップS48に移行する。
【0107】
ステップS47では、主制御部42は、上半身領域A2に使用者Pの体重の第二の割合の荷重が分布し、足部領域A4に使用者Pの体重の第三の割合の荷重が分布したか否かを判断する。上半身領域A2に使用者Pの体重の第二の割合の荷重が分布していることは、使用者Pが上半身領域A2上に上半身を正しく乗せた状態で寝ていることを意味する。足部領域A4に使用者Pの体重の第三の割合の荷重が分布していることは、使用者Pが足部領域A4上に足部を正しく乗せた状態で寝ていることを意味する。
ステップS47でYESと判断したときには、初期工程S45を終了してステップS50に移行する。一方で、ステップS47でNOと判断したときには、ステップS48に移行する。
【0108】
ステップS48では、主制御部42は、入出力部46の出力部46bに、使用者Pがセンサ部35上に寝直すことを促す表示や、寝台装置101を背下げすること等によりマット部11の角度を修正することを促す表示をする。そして、ステップS46に移行する。介助者は、寝台装置101を操作して背下げしたりする。また、使用者Pは、必要に応じて介助者に手助けしてもらって寝直す。
ステップS46でYESと判断され、さらに、ステップS47でYESと判断されるまで、ステップS46、S47、S48の工程を繰り返し行う。
【0109】
ステップS50では、身体の状態判定工程を行う。
最初に、ステップS51の円背判定工程を行う。
図18に示すように、まず、判定部66が、上半身第一領域A21の圧力分布である上半身第一圧力分布による全荷重よりも上半身第二領域A22の圧力分布である上半身第二圧力分布による全荷重の方が大きいか否かを判断する(ステップS52)。言い換えれば、上半身第一圧力分布による全荷重と上半身第二圧力分布による全荷重とを比較し、上半身領域A2に作用する荷重が臀部領域A3側(脚側F)に偏っているか否かを判断する。使用者Pが円背であると、使用者Pの上半身が脚側Fに曲がるため、このように判断する。
ステップS52でYESと判断したときには、ステップS53に移行する。一方で、ステップS52でNOと判断したときには、ステップS54に移行する。
ステップS53では、判定部66が使用者Pの身体が屈曲していて使用者Pの身体の状態が円背であると判定する。そして、ステップS51の全ての工程を終了し、ステップS61に移行する。ステップS54では、判定部66は使用者Pが円背でないと判定する。そして、ステップS51の全ての工程を終了し、ステップS61に移行する。
【0110】
ステップS61では、下肢拘縮判定工程を行う。
図19に示すように、まず、判定部66が、足部第一領域A41の圧力分布である足部第一圧力分布がいずれかの位置で0Pa(パスカル)よりも大きく、足部第二領域A42の圧力分布である足部第二圧力分布がいずれの位置においても0Paに等しいか否かを判断する(ステップS62)。言い換えれば、足部第一圧力分布及び足部第二圧力分布を、0Paである基準圧力と比較する。
足部第一圧力分布がいずれかの位置で0Paよりも大きいとは、足部第一領域A41に対応する複数の圧力センサ35aのいずれかが0Paよりも大きい圧力を検出することを意味する。足部第二圧力分布がいずれの位置においても0Paに等しいとは、足部第二領域A42に対応する複数の圧力センサ35aのいずれも0Paの圧力を検出することを意味する。
【0111】
使用者Pが下肢拘縮であると、使用者Pの足部が脚側Fに伸びにくくなるため、このように判断する。
ステップS62でYESと判断したときには、ステップS63に移行する。一方で、ステップS62でNOと判断したときには、ステップS64に移行する。
ステップS63では、判定部66が使用者Pの身体の状態が下肢拘縮であると判定する。そして、ステップS61の全ての工程を終了し、ステップS71に移行する。
【0112】
ステップS64では、判定部66は、足部領域A4に使用者Pの体重の第四の割合の荷重が分布したか否かを判断する。足部領域A4に使用者Pの体重の第四の割合の荷重が分布していることは、使用者Pの足部が脚側Fに伸びているが、使用者P全体の重さに比べて足部の重さが軽くなっていることを意味する。使用者Pが下肢拘縮であると、使用者P全体の重さに比べて足部の重さが軽くなるため、このように判断する。
ステップS64でYESと判断したときには、ステップS63に移行する。一方で、ステップS64でNOと判断したときには、ステップS65に移行する。
ステップS65では、判定部66は使用者Pが下肢拘縮でないと判定する。そして、ステップS61の全ての工程を終了し、ステップS71に移行する。
【0113】
ステップS71では、上半身向き判定工程を行う。
図20に示すように、まず、判定部66は、上半身右側領域A23の圧力分布である第一圧力分布による全荷重と上半身左側領域A24の圧力分布である第二圧力分布による全荷重とを比較する(ステップS72)。より具体的には、第一圧力分布による全荷重と第二圧力分布による全荷重との和(以下、上半身全荷重の和と称する)に対する第一圧力分布による全荷重の比に基づいて判断する。
ステップS72で、上半身全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が第五の割合よりも小さいと判断したときには、ステップS73に移行する。ステップS72で、上半身全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が第五の割合よりも大きいと判断したときには、ステップS74に移行する。そして、ステップS72で、上半身全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が第五の割合に入ると判断したときには、ステップS75に移行する。
【0114】
ステップS73では、判定部66は使用者Pの上半身が右向きと判定する。そして、ステップS71の全ての工程を終了し、ステップS81に移行する。ステップS74では、判定部66は使用者Pの上半身が左向きと判定する。そして、ステップS71の全ての工程を終了し、ステップS81に移行する。ステップS75では、判定部66は使用者Pの上半身が仰向けと判定する。そして、ステップS71の全ての工程を終了し、ステップS81に移行する。
【0115】
ステップS81では、下半身向き判定工程を行う。
図21に示すように、まず、判定部66は、臀部右側領域A33の圧力分布である第一圧力分布による全荷重と臀部左側領域A34の圧力分布である第二圧力分布による全荷重とを比較する(ステップS82)。より具体的には、第一圧力分布による全荷重と第二圧力分布による全荷重との和(以下、上半身全荷重の和と称する)に対する第一圧力分布による全荷重の比に基づいて判断する。
ステップS82で、臀部全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が第六の割合よりも小さいと判断したときには、ステップS83に移行する。ステップS82で、臀部全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が第六の割合よりも大きいと判断したときには、ステップS84に移行する。そして、ステップS82で、臀部全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が第六の割合に入ると判断したときには、ステップS85に移行する。
【0116】
ステップS83では、判定部66は使用者Pの下半身が右向きと判定する。そして、ステップS81及び身体の状態判定工程S50の全ての工程を終了し、ステップS91に移行する。ステップS84では、判定部66は使用者Pの下半身が左向きと判定する。そして、ステップS81及び身体の状態判定工程S50の全ての工程を終了し、ステップS91に移行する。ステップS85では、判定部66は使用者Pの下半身が仰向けと判定する。そして、ステップS81及び身体の状態判定工程S50の全ての工程を終了し、ステップS91に移行する。
【0117】
このように、身体の状態判定工程S50では、使用者Pの体重による圧力分布を検出し、この圧力分布に基づいて使用者Pの身体の状態を判定する。
例えば、上半身向き判定工程S71で使用者Pの上半身が右向きと判定し、下半身向き判定工程S81で使用者Pの下半身が仰向け又は左向きと判定することで、使用者の身体の捻じれを判定することができる。上半身向き判定工程S71で使用者Pの上半身が左向きと判定し、下半身向き判定工程S81で使用者Pの下半身が仰向け又は右向きと判定した場合、及び、上半身向き判定工程S71で使用者Pの上半身が仰向けと判定し、下半身向き判定工程S81で使用者Pの下半身が右向き又は左向きと判定した場合も同様に、使用者の身体の捻じれを判定することができる。
使用者Pの身体の水平位からの屈曲及び捻じれに応じて、使用者Pが作用させた圧力分布が変化する。この圧力分布の偏りや分布等を分析することで、使用者Pの身体が水平位から屈曲したり、捻じれている状態が分かる。
【0118】
判定部66は、使用者Pに関して判定した円背か否か、下肢拘縮か否か、上半身の向き、及び下半身の向きを表す身体の状態を、流体調整部69に送信する。
【0119】
図17に示すステップS91の既存圧力調整工程では、まず、選択部68は、判定部66が判定した身体の状態に基づいて、この身体の状態に最も近い身体の状態D10aを含む既存情報の束D101(
図16参照)を前述のように選択する(ステップS92)。そして、ステップS93に移行する。
ステップS93では、流体調整部69は、この選択された既存情報の束D101の補助エアセル13の設定内圧D6bと内圧検出部17が検出する補助エアセル13の内圧とが等しくなるように、供給排出部15を駆動して補助エアセル13に給気する。具体的には、1~7までの自然数iに対して、内圧検出部17が検出する各補助エアセル13iの内圧を、既存情報の束D101の設定内圧D6bにおけるデータPiが表す圧力にする。言い換えれば、流体調整部69は、補助エアセル13について、選択部68が選択した身体の状態に対応する設定内圧D6bと、内圧検出部17が検出する内圧と、が等しくなるように、供給排出部15を駆動して補助エアセル13に給気させる。
以上で、既存圧力調整工程S91、及びエアマット装置5の体圧を分散させる動作の全ての工程を終了する。
【0120】
(実施例)
以下では、本発明の実施例を具体的に示してより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施形態のエアマット装置5及び身体状態判定方法を用いて、実験を行った。この実施例では、センサ部35として頭足方向D1に沿って144個、左右方向D2に沿って48個(
図23参照)の圧力センサ35aを碁盤目状に配置した。
頭部領域A1、上半身領域A2、臀部領域A3、及び足部領域A4の頭足方向D1の長さの比は、1:2:2:4とした。上半身第一領域A21、上半身第二領域A22の頭足方向D1の長さの比は、1:1とした。足部第一領域A41、足部第二領域A42の頭足方向D1の長さの比は、1:1とした。
このため、頭足方向D1において、No.1~16の圧力センサ35aが頭部領域A1となる。同様に、No.17~48の圧力センサ35aが上半身領域A2となり、No.49~80の圧力センサ35aが臀部領域A3となり、No.81~144の圧力センサ35aが足部領域A4となる。
左右方向D2において、No.1~24の圧力センサ35aが左側Lとなり、No.25~48の圧力センサ35aが右側Rとなる。
【0121】
第一の割合として、35%以上55%以下の範囲を用いた。第二の割合として、30%以上50%以下の範囲を用いた。第三の割合として、3%以上20%以下の範囲を用いた。第四の割合として、0%以上10%以下の範囲を用いた。そして、第五の割合及び第六の割合として、45%以上55%以下の範囲を用いた。
なお、第一の割合から第六の割合は、これらの範囲に限定されず、適切な範囲に設定することができる。
【0122】
(1.円背、下肢拘縮、上半身及び下半身の向きの評価)
〔サンプル1〕
使用者Pの円背、下肢拘縮、上半身及び下半身の向きを評価した。
図22に示すように、エアマット装置5のセンサ部35上で、使用者Pに仰臥位で寝て(横たわって)もらった。なお、
図22及び後述する
図25、
図27、
図29、
図31では、エアマット装置5は、主に関連する構成のみ示している。この使用者Pは、わずかに円背であり、下肢拘縮である。使用者Pは、上半身は仰向け、下半身は右向きの状態で寝ていた。
圧力分布検出部16が検出した圧力分布を、
図23に示す。
図23では、約0Paの圧力が検出された部分を白色で示し、検出された圧力が高くなるのにしたがって濃い灰色で示す。後述する
図24、
図26、
図28、
図30、及び
図32も同様である。
使用者Pの身体の水平位からの屈曲及び捻じれに応じて、使用者Pの体重による圧力分布が変化する。
【0123】
検出した使用者Pの圧力分布から、圧力分布検出部16は以下のように演算した。なお、括弧内には、使用者Pの体重に対する割合を示す。
・使用者Pの体重:43.6kg
・頭部領域A1に作用する荷重:3.5kg(8%)
・上半身領域A2に作用する荷重:18.3kg(42%)
上半身第一領域A21に作用する荷重:6.0kg(14%)
上半身第二領域A22に作用する荷重:12.3kg(28%)
上半身右側領域A23の圧力分布による全荷重:9.1kg(21%)
上半身左側領域A24の圧力分布による全荷重:9.2kg(21%)
・臀部領域A3に作用する荷重:18.7kg(43%)
臀部右側領域A33の圧力分布による全荷重:6.3kg(14%)
臀部左側領域A34の圧力分布による全荷重:12.4kg(29%)
・足部領域A4に作用する荷重:3.0kg(7%)
【0124】
上半身第一圧力分布よる全荷重よりも上半身第二圧力分布による全荷重の方が大きいことから、前述のエアマット装置5の動作のステップS52においてYESと判断し、使用者Pが円背であると判定した。
図23より足部第一圧力分布及び足部第二圧力分布がいずれかの位置でそれぞれ0Paよりも大きいため、ステップS62においてNOと判断した。足部領域A4に体重の7%(第四の割合は0%以上10%以下)の荷重が分布していることから、ステップS64においてYESと判断し、使用者Pが下肢拘縮であると判定した。
上半身全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が50%(第五の割合は45%以上55%以下)であることから、ステップS72において上半身全荷重の和に対して第一圧力分布による全荷重が第五の割合に入ると判断し、使用者Pの上半身が仰向けと判定した。
臀部全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が34%(第六の割合は45%以上55%以下)であることから、ステップS82において臀部全荷重の和に対して第一圧力分布による全荷重が第六の割合よりも小さいと判断し、使用者Pの下半身が右向きと判定した。
【0125】
これらの判定部66による使用者Pの判定結果が、センサ部35上で寝ている使用者Pの円背、下肢拘縮、上半身及び下半身の向きの状態を適切に判定できていることが分かった。
使用者Pの上半身が仰向けであり下半身が左向きと判定したときには、使用者Pの身体の軸が捻じれていることが分かる。この場合には、例えば使用者Pの下半身が仰向けになるように、流体調整部69は補助エアセル135及び補助エアセル137を膨らませてもよい。このようにすることで、使用者Pの身体の軸の捻じれを無くし、使用者Pの姿勢を矯正することができる。
【0126】
〔サンプル2〕
使用者Pが寝ている状態は示さないが、使用者Pは円背及び下肢拘縮がなく、上半身は仰向け、下半身は仰向けの状態で寝ていた。圧力分布検出部16が検出した圧力分布を、
図24に示す。
検出した使用者Pの圧力分布から、圧力分布検出部16は以下のように演算した。
・使用者Pの体重:59kg
・頭部領域A1に作用する荷重:3.3kg(6%)
・上半身領域A2に作用する荷重:23.8kg(40%)
上半身第一領域A21に作用する荷重:12.4kg(21%)
上半身第二領域A22に作用する荷重:11.4kg(19%)
上半身右側領域A23の圧力分布による全荷重:12.2kg(21%)
上半身左側領域A24の圧力分布による全荷重:11.6kg(20%)
・臀部領域A3に作用する荷重:25.2kg(43%)
臀部右側領域A33の圧力分布による全荷重:12.9kg(22%)
臀部左側領域A34の圧力分布による全荷重:12.3kg(21%)
・足部領域A4に作用する荷重:6.8kg(12%)
【0127】
上半身第一圧力分布よる全荷重よりも上半身第二圧力分布による全荷重の方が大きくないことから、前述のエアマット装置5の動作のステップS52においてNOと判断し、使用者Pが円背でないと判定した。
図24より足部第一圧力分布及び足部第二圧力分布がいずれかの位置でそれぞれ0Paよりも大きいため、ステップS62においてNOと判断した。足部領域A4に体重の12%(第四の割合は0%以上10%以下)の荷重が分布していることから、ステップS64においてNOと判断し、使用者Pが下肢拘縮でないと判定した。
上半身全荷重の和に対して第一圧力分布による全荷重が51%(第五の割合は45%以上55%以下)であることから、ステップS72において上半身全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が第五の割合に入ると判断し、使用者Pの上半身が仰向けと判定した。
臀部全荷重の和に対して第一圧力分布による全荷重が51%(第六の割合は45%以上55%以下)であることから、ステップS82において臀部全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が第六の割合に入ると判断し、使用者Pの下半身が仰向けと判定した。
【0128】
これらの判定部66による使用者Pの判定結果が、センサ部35上で寝ている使用者Pの円背、下肢拘縮、上半身及び下半身の向きの状態を適切に判定できていることが分かった。
【0129】
(2.円背である判定した後の対応例)
図25に示すように、エアマット装置5のセンサ部35上で、円背である使用者Pに仰臥位で寝てもらった。各主エアセル12及び各補助エアセル13は、前述の初期状態になっている。
このとき、圧力分布検出部16が検出した圧力分布を、
図26に示す。
図26及び後述する
図28中には、補助エアセル131の位置を示した。圧力分布検出部16が検出した圧力の最大値は45.7mmHg(1mmHgは133.3Pa(パスカル))であった。
【0130】
図27に示すように、補助エアセル131を膨らませて、使用者Pの首部に補助エアセル131を接触させる。このとき、圧力分布検出部16が検出した圧力分布を、
図28に示す。圧力分布検出部16が検出した圧力の最大値は40.1mmHgに低下し、使用者Pの体圧が分散することが分かった。
【0131】
(3.下肢拘縮である判定した後の対応例)
図29に示すように、エアマット装置5のセンサ部35上で、下肢拘縮である使用者Pに仰臥位で寝てもらった。各主エアセル12及び各補助エアセル13は、前述の初期状態になっている。
このとき、圧力分布検出部16が検出した圧力分布を、
図30に示す。
図30及び後述する
図32中には、補助エアセル136の位置を示した。圧力分布検出部16が検出した圧力の最大値は54mmHgであった。
【0132】
図31に示すように、補助エアセル136を膨らませて、使用者Pのひざ部に補助エアセル136を接触させる。このとき、圧力分布検出部16が検出した圧力分布を、
図32に示す。圧力分布検出部16が検出した圧力の最大値は41.1mmHgに低下し、使用者Pの体圧が分散することが分かった。
さらに、使用者Pの身体の軸の捻じれが改善され、捻じれによって生じる筋緊張を緩和し、拘縮の進行を抑えることができる。
【0133】
以上説明したように、本実施形態のエアマット装置5によれば、使用者Pの身体にマット部11を効率的にフィットさせることができる。
さらに、既存情報記憶部67に記憶されている複数組の身体の状態及び設定内圧のうち、圧力分布検出部16の検出結果に最も近い身体の状態に対応する設定内圧に基づいて、補助エアセル13に空気を供給することができる。
【0134】
なお、本実施形態では補助エアセル13の形状は三日月形であるとしたが、補助エアセル13の形状は特に限定されない。例えば、
図33(A)に示すように補助エアセル71は半円形でもよい。図示はしないが、補助エアセルはこの形以外にも、矩形、L字形(ブーメラン形)等でもよい。
図33(B)に示すように、補助エアセル72は三角柱形等でもよい。図示はしないが、補助エアセルはこの形以外にも、円柱形、半円柱形等でもよい。
図33(C)に示すように、補助エアセル73は、C字形でもよい。図示はしないが、補助エアセルはこの形以外にも、丸形、O字形、凹字形等でもよい。
図33(D)に示すように、補助エアセル74はV字形(半円筒形)でもよい。図示はしないが、補助エアセルはこの形以外にも、山字形等でもよい。
前記した各実施形態についても、補助エアセル13の形状は特に限定されない。
【0135】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について
図34及び
図35を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図34に示すように、本実施形態のエアマット装置6は第5実施形態のエアマット装置5の各構成に加えて、前述の測定情報記憶部18を備えている。
【0136】
次に、本実施形態のエアマット装置6の体圧を分散させる動作について説明する。
図35は本実施形態のエアマット装置6の体圧を分散させる動作を示すフローチャートである。
本実施形態のエアマット装置6の動作の概要を説明すると、まず、使用者Pの身体の状態に最も近い既存圧力分布を含む既存情報の束D10をデータベースから読み込んで補助エアセル13を適宜膨張させる。補助エアセル13を膨張させた後で最大圧力が上がったときに、一つの補助エアセル13を膨張させる。膨張させた時の最大圧力が初期最大圧力よりも下がったときは、補助エアセル13の内圧を保持し、補助エアセル13の内圧をデータベースに記憶する。それ以外のときは、その補助エアセル13の内圧を膨張させる前の圧力に戻す等する。
以下、エアマット装置6の体圧を分散させる動作について説明する。
【0137】
初期工程S45までは、第5実施形態と同様である。
初期工程S45の後で、前述のステップS13を行い測定情報記憶部18に初期最大圧力と初期内圧とを記憶させる。
さらに、第5実施形態と同様の身体の状態判定工程S50及び既存圧力調整工程S91を行い、ステップS36に移行する。
ステップS36~S43の工程は、第4実施形態と同様なので説明を省略する。
なお、ステップS43では、既存情報記憶部67に既存情報の束D10が記憶される。
【0138】
以上説明したように、本実施形態のエアマット装置6によれば、使用者Pの身体にマット部11を効率的にフィットさせることができる。
さらに、既存圧力調整工程S91を行った後で圧力分布検出部16が検出する最大圧力が上がったとき、操作セルの一つに給気する。そして、初期最大圧力に比べて最大圧力が下がれば、修正した設定内圧を含む既存情報の束D10を既存情報記憶部67に記憶し、最大圧力が初期最大圧力以上になれば、操作セルの内圧を操作セルを膨張させる前の圧力に戻す等する。これにより、最大圧力が低下するように各補助エアセル13の内圧を修正するとともに、既存情報の束D10が表す調整目標となる圧力の情報を改善することができる。
【0139】
以上、本発明の第1実施形態から第6実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
【0140】
例えば、前記第1実施形態から第6実施形態では、流体調整部は、操作セルを圧力が最大である対象セル(前述の主エアセル12k)とは異なるエアセル12、13に設定するとした。しかし、操作セルの設定方法はこの限りでなく、流体調整部は、使用者Pから付与される圧力が所定の値以下であるエアセル12、13を操作セルとして設定してもよいここで言う所定の値とは、例えば使用者Pの体重をセンサ部35の主面35bの面積で割った基準圧力に対して5%等の所定の割合や、予め定められた値等と規定することができる。
このように設定することで、これまで圧力が所定の値以下であることを圧力分布検出部16が検出していたエアセル12、13に給気し、そのエアセル12、13を膨張させ、使用者Pに接触させる。これにより、使用者Pの体圧をより効率的に分散させることができる。
流体調整部は、対象セルに空気を供給又は排出して操作してもよい。
【0141】
流体は空気であるとしたが、流体は空気に限定されず水や油等でもよい。
流体調整部は、圧力分布検出部16の検出結果に基づいて供給排出部15を駆動することで、エアセル12、13に空気を供給するとしたが、エアセル12、13から空気を排出するとしてもよい。
身体支持装置はエアマット装置であるとしたが、身体支持装置はこれに限られず、椅子、介護等に用いられるロボット等でもよい。身体支持装置が例えばロボットである場合には、身体状態判定装置は、使用者の身体の立位からの屈曲及び捻じれの少なくとも一方を判定する。ここで言う立位とは、身体を鉛直方向に沿って伸ばしている状態を意味する。身体支持装置が椅子等である場合も同様である。
【符号の説明】
【0142】
1、2、3、4、5、6 身体支持装置
11 マット部
12 主エアセル(流体セル)
13、71、72、73、74 補助エアセル(流体セル)
15 供給排出部
16 圧力分布検出部
17 内圧検出部
19、63 流体調整部
56、67 既存情報記憶部
57、68 選択部
66 判定部
D6、D10 既存情報の束
D6a 既存圧力分布
D6b 設定内圧
D10a 身体の状態
P 使用者