(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】連続ウイルス不活化反応器の設計及び製造のための連続ウイルス不活化反応器の重要なプロセスパラメータを決定するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/36 20060101AFI20230303BHJP
B01F 25/00 20220101ALN20230303BHJP
C12N 7/04 20060101ALN20230303BHJP
【FI】
C12M1/36
B01F25/00
C12N7/04
(21)【出願番号】P 2021518915
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 US2019054216
(87)【国際公開番号】W WO2020076575
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-06-04
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,マシュー・アール
(72)【発明者】
【氏名】コフマン,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】オロスコ,ラケル
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-509338(JP,A)
【文献】Design of a novel continuous flow reactor for low pH viral inactivation, Biotechnol Bioeng, Epub 2017 Dec 11, vol.115, no.3, p.606-616
【文献】Design, Construction, and Optimization of a Novel, Modular, and Scalable Incubation Chamber for Continuous Viral Inactivation, Biotechnol Prog, 2017, vol.33, no.4, p.954-965
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12N 15/00-90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス不活化のための実反応器を設計するための方法であって、
既知の曲率半径及び既知の内径を有する実験用反応器に検出可能な粒子/トレーサを含むプロセス流を導入することであって、前記実験用反応器が第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方と通信する、ことと、
前記第1の検出器及び前記第2の検出器の少なくとも一方によって前記実験用反応器内のプロセス流の流量を検出することと、
前記第1の検出器及び前記第2の検出器の少なくとも一方によってプロセス流の流体相パラメータを検出することと、
前記第2の検出器によって前記実験用反応器を出る前記検出可能な粒子を検出することと、
前記検出可能な粒子を含む導入されたプロセス流に基づいて、実験用反応器パラメータ及び流体相パラメータのうちの少なくとも1つに関する経験値を決定することと、
実験用反応器パラメータ及び流体相パラメータのうちの少なくとも1つに関する非経験値を決定することと、
決定された経験値及び決定された非経験値に基づいて前記実反応器を設計することと
を含
み、
前記実反応器を設計することが、
前記実験用反応器の寸法を、前記実験用反応器と同じアスペクト比を有するが、異なる内径を有する前記実反応器にスケール変更すること、
前記実験用反応器の寸法を、前記実験用反応器と同じアスペクト比及び同じ内径を有する前記実反応器にスケール変更すること、
前記実験用反応器の寸法を、前記実験用反応器とは異なるアスペクト比及び前記実験用反応器とは異なる直径を有する前記実反応器にスケール変更すること、
前記実験用反応器の寸法を、前記実験用反応器とは異なるアスペクト比を有するが、前記実験用反応器と同じ直径を有する前記実反応器にスケール変更すること、
のうちの少なくとも1つを含み、
(1)前記実反応器が、前記実験用反応器の寸法を、前記実験用反応器と同じアスペクト比を有する前記実反応器にスケール変更することを含む場合、
前記方法が、以下の式(a)~(g)、
【数38】
式中、a、b、c、及びdは、すべてのディーン数の経験的データ適合に基づくものである、
【数39】
を利用した、平均流量に基づく、HETP、反応器容積、及び内径の導出を必要とする、
又は、
(2)前記実反応器が、前記実験用反応器の寸法を、前記実験用反応器と同じアスペクト比を有する前記実反応器にスケール変更することを含む場合、
前記方法が、以下の式(a)~(e)、
【数40】
を利用した低減されたHETP及びディーン数に基づくHETP、反応器容積、及び内径の導出を必要とする、
又は、
(3)前記実反応器が、前記実験用反応器の寸法を、前記実験用反応器と同じアスペクト比及び同じ内径を有する前記実反応器にスケール変更することを含む場合、
前記方法が、以下の式、
【数41】
式中、a、b、c、及びdは、100以上のディーン数についてのみ有効な経験的データ適合に基づくものである
【数42】
を利用した少なくともHETP及び経路長の導出を必要とする、
方法。
【請求項2】
前記検出可能な粒子が、ウイルス粒子及び代用トレーサの少なくとも一方である、
及び/又は、
前記経験値及び前記非経験値がタスク依存である、
及び/又は、
前記経験値及び前記非経験値に対応する実験用反応器パラメータ及び流体相パラメータが、理論的又は推定される最小滞留時間、理論的又は推定される最大滞留時間、内径、体積流量、流路の経路長、曲率半径、プロセス流の密度、動粘度、及び分散である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記経験値が、実験データセットに対して線形である実験用反応器パラメータ及び流体相パラメータに対応する値であり、前記非経験値が、理論的又は推定される最小滞留時間、理論的又は推定される最大滞留時間、内径、体積流量、流路の経路長、及び曲率半径のうちの少なくとも1つに対応する、
及び/又は、
前記実験用反応器を出る前記検出可能な粒子を検出することが、
バッチウイルス不活化のインキュベーション時間と同等の前記検出可能な粒子のうちの1つに要する最小滞留時間
及び最後の有意な量の前記検出可能な粒子が前記実験用反応器を出るために要する最大滞留時間を決定することをさらに含む、
及び/又は、
実験用反応器パラメータが、バッチウイルス不活化のインキュベーション時間と同等の前記検出可能な粒子のうちの1つに要する最小滞留時間、最後の有意な量の前記検出可能な粒子が前記実験用反応器を出るために要する最大滞留時間、反応管の内径、体積流量、反応管の長さ、曲率半径、及び前記実験用反応器の容積のうちの少なくとも1つを決定することを含む、
及び/又は、
流体相パラメータが、密度及び動粘度の少なくとも一方を含む、
請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記実験用反応器が、(i)入口と出口との間に蛇行パターンを形成する1組の交互ターン及び(ii)織り合わされた経路の少なくとも一方を含む反応管を含む、請求項1
~3に記載の方法。
【請求項5】
実際のウイルス不活化反応器サイズを決定するためのシステムであって、
プロセッサ(1001)と、
第1の検出器(30)及び第2の検出器(40)の少なくとも一方と通信する実験用反応器(100)のパラメータを受け取り、
前記第1の検出器(30)及び前記第2の検出器(40)の少なくとも一方によって前記実験用反応器(100)内の検出可能な粒子を含むプロセス流の流量を検出し、
前記第1の検出器(30)及び前記第2の検出器(40)の少なくとも一方によって前記実験用反応器(100)内のプロセス流の流体相パラメータを検出し、
前記第2の検出器(40)によって、前記実験用反応器(100)を出る最初の検出可能な粒子及び前記実験用反応器(100)を出る最後の検出可能な粒子を検出することによって前記検出可能な粒子を検出し、
前記実験用反応器(100)の反応器パラメータ及びプロセス流の流体パラメータのうちの少なくとも1つの経験値(200)を決定し、
前記実験用反応器(100)の反応器パラメータ及びプロセス流の流体パラメータのうちの少なくとも1つの非経験値(300)を決定し、
前記実験用反応器(100)における流体パラメータと実質的に同様のパラメータを含む所定量の流体を有する実際のプロセス流のための実反応器(400)を設計する、
ために前記プロセッサ(1001)によって実行可能な機械可読命令を格納する非一時的な機械可読記憶媒体(1002)と、
を含む、システム。
【請求項6】
前記実験用反応器(100)が仮想反応器である、
及び/又は、
前記経験値及び前記非経験値が、前記実験用反応器(100)に導入されたプロセス流における検出可能な粒子から導出される、
及び/又は、
前記経験値及び前記非経験値がタスク依存である、
及び/又は、
前記実験用反応器(100)の反応器パラメータ及び流体パラメータのうちの少なくとも1つの前記経験値、並びに前記実験用反応器(100)の反応器パラメータ及び流体パラメータのうちの少なくとも1つの前記非経験値が、
理論的又は推定される最小滞留時間、理論的又は推定される最大滞留時間、内径、体積流量、流路の経路長、曲率半径、プロセス流の密度、動粘度、及び分散に対応する、
及び/又は、
前記経験値が、実験データセットに対して線形である実験用反応器(100)パラメータ及び流体相パラメータに対応する値であり、
前記非経験値が、理論的又は推定される最小滞留時間、理論的又は推定される最大滞留時間、内径、体積流量、流路の経路長、及び曲率半径のうちの少なくとも1つに対応する、
及び/又は、
反応器パラメータが、バッチウイルス不活化のインキュベーション時間と同等のプロセス流における検出可能な粒子又はトレーサが要する最小滞留時間、最後の有意な検出可能な粒子/トレーサが前記実験用反応器(100)を出るために要する最大滞留時間、反応管の内径、体積流量、反応管の長さ、曲率半径、及び前記実験用反応器(100)の容積のうちの少なくとも1つを含む、
及び/又は、
流体パラメータが、密度及び動粘度の少なくとも一方を含む、
請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
設計された実反応器が、
前記実験用反応器(100)と同じアスペクト比を有するが、前記実験用反応器(100)と異なる内径を有する前記実験用反応器(100)のスケール変更されたサイズ、
前記実験用反応器(100)と同じアスペクト比及び同じ内径を有する前記実験用反応器(100)のスケール変更されたサイズ、
前記実験用反応器(100)と異なるアスペクト比及び前記実験用反応器(100)と異なる内径を有する前記実験用反応器(100)のスケール変更されたサイズ、
前記実験用反応器(100)と異なるアスペクト比を有するが、前記実験用反応器(100)と同じ内径を有する前記実験用反応器(100)のスケール変更されたサイズ、
のうちの少なくとも1つを含
み、
アスペクト比が0.01~10である、
請求項
5又は6に記載のシステム。
【請求項8】
設計された反応器が、(i)入口(10)と出口(20)との間に蛇行パターン(1~9)を形成する1組の交互ターン及び(ii)織り合わされた経路(10Z)の少なくとも一方を含む反応管を含む、請求項
5~7に記載のシステム。
【請求項9】
生物学的製剤の製造中にウイルスを連続的に不活化するための実反応器を設計するためのシステムであって、前記システムが、
既知の曲率半径及び既知の直径を有し、プロセス流を受け取るように設計された実験用反応器(100)と、
前記実験用反応器(100)と通信する第1の検出器(30)及び第2の検出器(40)の少なくとも一方であって、前記第1の検出器(30)及び前記第2の検出器(40)の前記少なくとも一方が、前記プロセス流の流体相パラメータを検出し、前記第2の検出器(40)が前記実験用反応器(100)を出る検出可能な粒子を検出する、第1の検出器(30)及び第2の検出器(40)の少なくとも一方と、
プロセッサ(1001)と、
前記実験用反応器(100)及びプロセス流の流体の少なくとも一方のパラメータに対応する経験値(200)を決定し、
前記実験用反応器(100)及びプロセス流の流体の少なくとも一方のパラメータに対応する非経験値(300)を決定し、
決定された経験値及び決定された非経験値に基づいて、所定量の流体を有する実際のプロセス流のための前記実反応器を設計する、
ために前記プロセッサ(1001)によって実行可能な機械可読命令を格納する非一時的な機械可読記憶媒体(1002)と、
を含む、システム。
【請求項10】
生物学的製剤の製造中にウイルスを連続的に不活化するための実反応器を設計するためのシステムであって、前記システムが、
入口と、出口と、入口と出口との間に蛇行パターンを形成する1組の交互ターンを含む管状流路とを有する実験用反応器(100)であって、蛇行パターンが所定の曲率半径及び所定の直径を含み、前記実験用反応器(100)がプロセス流を受け取るように設計されている、実験用反応器(100)と、
前記実験用反応器(100)と通信する第1の検出器(30)及び第2の検出器(40)の少なくとも一方であって、前記第1の検出器(30)及び前記第2の検出器(40)の前記少なくとも一方が、前記プロセス流の流体相パラメータを検出し、前記第2の検出器(40)が前記実験用反応器(100)を出る検出可能な粒子を検出する、第1の検出器(30)及び第2の検出器(40)の少なくとも一方と、
プロセッサ(1001)と、
実験用反応器(100)パラメータ及びプロセス流の流体パラメータのうちの少なくとも1つの経験値(200)を決定し、
前記実験用反応器(100)の反応器パラメータ及びプロセス流の流体パラメータのうちの少なくとも1つの非経験値(300)を決定し、
決定された経験値及び決定された非経験値に基づいて、前記実反応器を設計し、前記実反応器は前記実験用反応器(100)の蛇行パターンと実質的に同様であるが、所定量の流体を有する実際のプロセス流を収容するように設計及び構成された蛇行パターンを含む、
ために前記プロセッサ(1001)によって実行可能な機械可読命令を格納する非一時的な機械可読記憶媒体と、
を含む、システム。
【請求項11】
前記実験用反応器(100)内の1組の交互ターンが、
270°~
280°の角度を有する少なくとも2つの交互ターン(1~9)を含む、
及び/又は、
前記実験用反応器(100)内の1組の交互ターンが、270°~280°の角度を有する2~325以上の交互ターン(1~9)を含む、
及び/又は、
前記実験用反応器(100)内の管状流路が、0.6cm~0.7cmの直径(12)を含む、
請求項
10に記載のシステム。
【請求項12】
1組の交互ターンが、少なくとも2つの積層(16)に垂直方向に分割されている、
好ましくは、
(i)少なくとも2つの積層の各々が、単一の平面(16)に12.5回の交互ターンを含み、交互ターン(1~9)の各々が、270°~280°の角度を含む、
又は、
(ii)少なくとも2つの積層(16)の各々が、0.7cm~1.2cmの厚さを含む、
又は、
(III)少なくとも2つの積層(16)の各々が、管状流路の180°ターンによって互いに接続されている、より好ましくは、このシステム(10)において、少なくとも2つの積層が、管状流路の25回の180°ターンによって互いに接続された26層である、
請求項
10~11に記載のシステム。
【請求項13】
前記実反応器が、直列に接続された前記実験用反応器(100)と実質的に同様の少なくとも2つの反応器を含む、
及び/又は、
1組の交互ターンが、187.7~375.5のレイノルズ数の層流を有するプロセス流の混合を誘導するための渦を生成するように配置されている、
及び/又は、
前記実反応器が、プロセス流が少なくとも30分間前記実反応器内にあるような寸法を有する管状流路を含む、
請求項
10~12に記載のシステム。
【請求項14】
前記実験用反応器(100)と設計された実反応器とが実質的に同様のアスペクト比を含
み、
好ましくは、
アスペクト比が、前記実験用反応器(100)の曲率半径に対する前記実験用反応器(100)の反応管の半径である、
請求項
10~13に記載のシステム。
【請求項15】
生物学的製剤の製造中にウイルスを連続的に不活化するための実反応器を設計するためのシステムであって、前記システムが、
入口と、出口と、異なる非平行平面内の複数のターンを含む少なくとも1つの織り合わされた管状流路(10Z)とを有する実験用反応器(100)と、
前記実験用反応器(100)と通信する第1の検出器(30)及び第2の検出器(40)の少なくとも一方であって、前記第1の検出器(30)及び前記第2の検出器(40)の前記少なくとも一方が、プロセス流の流体相パラメータを検出し、前記第2の検出器が前記実験用反応器(100)を出る検出可能な粒子を検出する、第1の検出器(30)及び第2の検出器(40)の少なくとも一方と、
プロセッサ(1001)と、
実験用反応器パラメータ及びプロセス流の流体パラメータのうちの少なくとも1つの経験値(200)を決定し、
前記実験用反応器(100)の反応器パラメータ及びプロセス流の流体パラメータのうちの少なくとも1つの非経験値(300)を決定し、
決定された経験値及び決定された非経験値に基づいて前記実反応器を設計し、前記実反応器は前記実験用反応器(100)の織り合わされた管状流路と実質的に同様であるが、所定量の流体を有する実際のプロセス流を収容するように設計及び構成された織り合わされた管状流路(10Z)を含む、
ために前記プロセッサ(1001)によって実行可能な機械可読命令を格納する非一時的な機械可読記憶媒体と
を含む、システム。
【請求項16】
前記実験用反応器(100)及び前記実反応器が、所定の曲率半径及び所定の直径を含み、前記実験用反応器(100)が、プロセス流を受け取るように設計されている、
及び/又は、
複数のターンが、少なくとも1つの第1のパターン及び第1のパターンと異なる第2のパターンを含み、
第1のパターンが所定数のターンを含み、
第2のパターンが所定数のターンを含み、
第1のパターンの所定数のターンが第2のパターンの所定数のターンと同じか又は異なる、
及び/又は、
複数のターンが、所定数のターンの後のターンの繰り返しパターンを含む、
及び/又は、
複数のターンの各々が125°~180°の角度を含む(50Z)、
及び/又は、
複数のターンが、ターン中心で、45°の流れ方向変化を含む三次元経路をたどる(14Z)、
及び/又は、
織り合わされた管状流路(10Z)が、1m
3
あたり6.5~93.2回のターンを含む、
及び/又は、
織り合わされた管状流路(10Z)が複数の屈曲部を含み、各屈曲部が、織り合わされた管状流路の長手方向軸を中心とする角度で、互いに対して回転されている、
好ましくは、
織り合わされた管状流路の長手方向軸を中心とする角度が、25°~60°である(60Z)、
請求項
15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月8日に出願された、米国仮出願第62/742,506号の利益を主張するものであり、その内容は参照により本明細書に明示的に組み入れられる。
【0002】
本開示は、一般的に、連続ウイルス不活化反応器の重要なプロセスパラメータを決定し、連続ウイルス不活化反応器を設計及び製造するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、プラグフロー反応器(PFR)内のウイルス粒子の滞留時間を定義することは、パイプの中心のプロセス流の流量はプロセス流の平均流量の2倍の速さであり、パイプの壁付近ではほとんど停滞し得る円形配管におけるプロセス流の流れの間に発生する流体力学現象が原因で定量化が困難である。よって、現在、ウイルス不活化のための正しいPFRパラメータを決定する唯一の方法は、実験によるものである。この試行錯誤法は、非効率的であり、時間がかかる。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、実際のプラグフロー反応器の設計、選択、作製、及び/又は製造のための方法が説明される。この方法は、既知の曲率半径及び既知の内径を有する実験用反応器に検出可能な粒子/トレーサを含むプロセス流を導入することであって、実験用反応器が第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方と通信する、ことと、第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方によって実験用反応器内のプロセス流の流量を検出することと、第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方によってプロセス流の流体相パラメータを検出することと、第2の検出器によって実験用反応器を出る検出可能な粒子/トレーサを検出することと、検出可能な粒子/トレーサを含む導入されたプロセス流に基づいて、実験用反応器パラメータ及び流体相パラメータのうちの少なくとも1つに関する経験値を決定することと、実験用反応器パラメータ及び流体相パラメータのうちの少なくとも1つに関する非経験値を決定することと、決定された経験値及び決定された非経験値に基づいて実反応器を設計、選択、作製、及び/又は製造することと、を含む。
【0005】
一態様では、実反応器サイズを決定、選択、作製、及び/又は製造するためのシステムが説明される。このシステムは、プロセッサと、第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方と通信する実験用反応器のパラメータを受け取り、第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方によって実験用反応器内の検出可能な粒子/トレーサを含むプロセス流の流量を検出し、第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方によって実験用反応器内のプロセス流の流体相パラメータを検出し、第2の検出器によって実験用反応器を出る検出可能な粒子/トレーサを検出し、実験用反応器の反応器パラメータ及びプロセス流の流体パラメータのうちの少なくとも1つの経験値を決定し、実験用反応器の反応器パラメータ及びプロセス流の流体パラメータのうちの少なくとも1つの非経験値を決定し、実験用反応器における流体パラメータと実質的に同様のパラメータを含む所定量の流体を有する実際のプロセス流のための実反応器を設計、選択、作製、及び/又は製造するためにプロセッサによって実行可能な機械可読命令を格納する非一時的な機械可読記憶媒体と、を含む。
【0006】
別の態様では、生物学的製剤の製造中にウイルスを連続的に不活化するための実反応器を設計、選択、作製、及び/又は製造するためのシステムが説明される。このシステムは、既知の曲率半径及び既知の直径を有し、プロセス流を受け取るように設計された実験用反応器と、実験用反応器と通信する第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方であって、第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方が、プロセス流の流体相パラメータを検出し、第2の検出器が実験用反応器を出る検出可能な粒子/トレーサを検出する、第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方と、プロセッサと、実験用反応器及びプロセス流の流体の少なくとも一方のパラメータに対応する経験値を決定し、実験用反応器及びプロセス流の流体のうちの少なくとも1つのパラメータに対応する非経験値を決定し、決定された経験値及び決定された非経験値に基づいて、所定量の流体を有する実際のプロセス流のための実反応器を設計、選択、作製、及び/又は製造する、ためにプロセッサによって実行可能な機械可読命令を格納する非一時的な機械可読記憶媒体と、を含む。
【0007】
さらなる態様では、生物学的製剤の製造中にウイルスを連続的に不活化するための実反応器を設計、選択、作製、及び/又は製造するためのシステムが提供される。このシステムは、入口と、出口と、入口と出口との間に蛇行パターンを形成する1組の交互ターンを含む管状流路とを有する実験用反応器であって、蛇行パターンが所定の曲率半径及び所定の直径を含み、実験用反応器がプロセス流を受け取るように設計されている、実験用反応器と、実験用反応器と通信する第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方であって、第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方が、プロセス流の流体相パラメータを検出し、第2の検出器が実験用反応器を出る検出可能な粒子/トレーサを検出する、第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方と、プロセッサと、実験用反応器パラメータ及びプロセス流の流体パラメータのうちの少なくとも1つの経験値を決定し、実験用反応器の反応器パラメータ及びプロセス流の流体パラメータのうちの少なくとも1つの非経験値を決定し、決定された経験値及び決定された非経験値に基づいて実反応器を設計、選択、作製、及び/又は製造し、実反応器は実験用反応器の蛇行パターンと実質的に同様であるが、所定量の流体を有する実際のプロセス流を収容するように構成された蛇行パターンを含む、ためにプロセッサによって実行可能な機械可読命令を格納する非一時的な機械可読記憶媒体と、を含む。
【0008】
さらに別の態様では、生物学的製剤の製造中にウイルスを連続的に不活化するための実反応器を設計、選択、作製、及び/又は製造するためのシステムが提供される。このシステムは、入口と、出口と、異なる非平行平面内の複数のターンを含む少なくとも1つの織り合わされた管状流路とを有する実験用反応器と、実験用反応器と通信する第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方であって、第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方が、プロセス流の流体相パラメータを検出し、第2の検出器が実験用反応器を出る検出可能な粒子/トレーサを検出する、第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方と、プロセッサと、実験用反応器パラメータ及びプロセス流の流体パラメータのうちの少なくとも1つの経験値を決定し、実験用反応器の反応器パラメータ及びプロセス流の流体パラメータのうちの少なくとも1つの非経験値を決定し、決定された経験値及び決定された非経験値に基づいて、実験用反応器の織り合わされた管状流路と実質的に同様であるが、所定量の流体を有する実際のプロセス流を収容するように設計及び構成された織り合わされた管状流路を含む、実反応器を設計、選択、作製、及び/又は製造するためにプロセッサによって実行可能な機械可読命令を格納する非一時的な機械可読記憶媒体と、を含む。
【0009】
様々な実施態様のその他の特徴及び利点は、一部は以下の説明に示され、一部は、説明から明らかになり、又は様々な実施態様を実施することによって分かるであろう。様々な実施態様の目的及びその他の利点は、本明細書の説明において特に指示される要素及び組み合わせによって実現及び達成されるであろう。
【0010】
本開示を、そのいくつかの態様及び実施態様において、詳細な説明及び添付の図面からより十分に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本開示の一例による、連続管状反応器の管状流路の上面図である。
【
図1B】本開示の一例による、連続管状反応器の部分斜視図である。
【
図1C】本開示の一例による、連続管状反応器の側面図及び等角図である。
【
図1D】本開示の一例による、互いに接続された複数の連続管状反応器を示す図である。
【
図1E】本開示の一例による、単一の流れを有する例示的な連続フロー反応管の等角図である。
【
図1F】本開示の一例による、単一の長手方向軸上の、ただし異なる非平行平面内のターンを有する
図1Eの連続フロー反応管を示す図である。
【
図1G】本開示の一例による、
図1Eの管の長手方向アクセスに沿った断面図である。
【
図1H】本開示の一例による、
図1Eの例示的な連続フロー管の側面図である。
【
図1I】本開示の一例による、
図1Hの例示的な連続フロー管の側面図の領域Aの詳細図である。
【
図1J】本開示の一例による、本開示の一例による、4本の流れを有する例示的な連続フロー管の等角図である。
【
図1K】本開示の一例による、システムの概要を示す図である。
【
図2A】本開示の一例による、例示的なシステムを示す図である。
【
図2B】本開示の一例による、第2の検出器によって検出された実験生データを示すグラフである。
【
図2C】本開示の一例による、検出可能な粒子又は検出可能なトレーサの体積及び時間の出入りを示すグラフである。
【
図2D】本開示の一例による、近似曲線対生データを示すグラフである。
【
図2E】本開示の一例による、実験データ及び近似データにおけるディーン数とHETPとの間の関係を示す図である。
【
図3】本開示の一例による、別の例示的なシステムを示す図である。
【
図4】本開示の一例による、比較器と非経験的変数との間の関係の概要を示す図である。
【
図5A】本開示の一例による、システムが反応管の経路長及び流量をどのように導出するかの概要を示す図である。
【
図5B】本開示の一例による、システムが反応管の経路長及び流量をどのように導出するかの詳細を示す図である。
【
図5C】本開示の一例による、実反応器の反応器容積と流量との間の関係を示すグラフである。
【
図6A】本開示の一例による、システムがT
min及びT
maxをどのように導出するかの概要を示す図である。
【
図6B】本開示の一例による、システムがT
min及びT
maxをどのように導出するかの詳細を示す図である。
【
図6C】本開示の一例による、実反応器のT
min及びT
maxを示すグラフである。
【
図7A】本開示の一例による、システムが実反応器の経路長をどのように導出するかの概要を示す図である。
【
図7B】本開示の一例による、システムが実反応器の経路長をどのように導出するかの詳細を示す図である。
【
図7C】本開示の一例による、実反応器を設計、選択、作製、及び/又は製造するための流量と反応器容積との関係を示すグラフである。
【
図8A】本開示の一例による、システムが実反応器の経路長及び反応管の内径をどのように導出するかの概要を示す図である。
【
図8B】本開示の一例による、システムが実反応器の経路長及び反応管の内径をどのように導出するかの詳細を示す図である。
【
図8C】本開示の一例による、HETP対線流速のグラフである。
【
図8D】本開示の一例による、予測対実際のHETPのグラフである。
【
図8E】本開示の一例による、所定の流量及びT
minを満たす反応器容積及び内径を示すグラフである。
【
図9】本開示の一例による、別の例示的なシステムを示す図である。
【
図10A】本開示の一例による、システムが実反応器の経路長及び反応管の内径をどのように導出するかの詳細を示す図である。
【
図10B】本開示の一例による、小型のJIB、中型のJIB、及び大型のJIBを使用したHETPとディーン数との間の関係を示すグラフである。
【
図10C】本開示の一例による、HETPが内径によって正規化された場合の
図10Bのグラフである。
【
図10D】本開示の一例による、60のTmin及び75のTmaxを有する500mL/minの流量での経路長と内径との間の関係を示すグラフである。
【
図11A】本開示の一例による、JIB動作の可変流量及び経路長からの出パルス注入の体積拡散反応を示すグラフである。
【
図11B】本開示の一例による、HETPによる経路長の正規化を示すグラフである。
【
図12】本開示の一例による、テイラー・クエット流における遷移を生成するのに必要なディーン数と、JIBのRTDプロファイルの広がりにおいて生じる2つの変曲点及び漸近線との相関を示すグラフである。
【
図13A】本開示の一例による、JIB動作の可変流量及び粘度からの出パルス注入の反応を示すグラフである。
【
図13B】本開示の一例による、ディーン数による様々な粘度の実験HETPの正規化を示すグラフである。
【
図13C】本開示の一例による、すべての試験された流量及び粘度にわたる集中データセットに対する3次多項式近似を示すグラフである。
【
図13D】本開示の一例による、標準偏差の集中データセットの結果として得られるパリティプロットである。
【
図13E】本開示の一例による、T
min(5σ)の集中データセットの結果として得られるパリティプロットである。
【
図14A】本開示の一例による、De<100のデータ点を除くJIB動作の可変流量及び粘度からの出パルス注入の反応を示すグラフである。
【
図14B】本開示の一例による、De<100のデータ点を除くすべての試験された流量及び粘度にわたる集中データセットに対する3次多項式近似を示すグラフである。
【
図14C】本開示の一例による、標準偏差の、De<100のデータ点が除外された、集中データセットの結果として得られるパリティプロットである。
【
図14D】本開示の一例による、T
min(5σ)の、De<100のデータ点が除外された、集中データセットの結果として得られるパリティプロットである。
【
図15A】本開示の一例による、RTDプロファイル上の表2Aから選択された標準偏差の選択肢を示す図である。
【
図15B】本開示の一例による、RTDプロファイル上の表2Bから選択された標準偏差の選択肢を示す図である。
【
図16】本開示の一例による、60分を上回るTmin(5σ)及び79分を下回るTmax(3σ)という任意であるが厳しい要件を満たす経路長及び流量の様々な組み合わせの2つのRTDプロファイルを示す図である。
【
図17A】本開示の一例による、ブドウ糖の添加前に発生する模擬タンパク質溶出ピーク、2つのピーク中間高さ及びピーク最大値にパルス注入を適用した結果を示す図である。
【
図17B】本開示の一例による、アイソクラティックデータ対動的ピーク結果からの結果に基づく予測されるTmin(5σ)の比較グラフである。
【
図18】本開示の一例による、パルス注入から生成されたピークと修正されたピークとの比較グラフである。
【
図19】本開示の一例による、生トレース及び修正トレースからの時間(5σ)の計算の比較グラフである。
【
図20】(+)ウイルスがウイルスの検査で陽性と出る最初の時点を表し、(-)ウイルスがウイルスの検査で陰性と出る最後の時点を表す、低粘度バクテリオファージパルス注入実験の比較グラフである。
【
図21】(+)ウイルスがウイルスの検査で陽性と出る最初の時点を表し、(-)ウイルスがウイルスの検査で陰性と出る最後の時点を表す、高粘度バクテリオファージパルス注入実験の比較グラフである。
【
図22】本開示の一例による、実反応器の反応器容積と流量との間の関係を示すグラフである。
【
図23】スケールアップの内径の解を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び図を通して、同様の参照番号は同様の要素を識別する。
【0013】
前述の概要及び以下の詳細な説明はどちらも、例示及び説明にすぎず、本教示の様々な実施態様の説明を提供するためのものであることを理解されたい。
【0014】
以下の説明において、「実験用反応器」という表現は、少量運転、疑似運転、初期データ収集などの非商用目的で使用される反応器を指す。加えて、「実反応器」という表現は、実験用反応器が使用されない任意の他の目的で使用される反応器を指す。そのような目的には、例えば、商用目的が含まれる。さらに、「仮想反応器」という表現は、そのデータが以前に収集された、よって、実験を再度行う理由がない実験用反応器を指す。「第1の検出器」及び「第2の検出器」という表現は、プロセス流及びその内容物の異なる特性を検出することができる1つ以上の検出器を指す。
【0015】
概要
一例では、生物学的製剤を製造するためのプロセスは、PFRを使用して、供給流(プロセス流)を含有する産物にウイルス不活化剤を連続的に添加し均質化することによる連続ウイルス不活化を含むことができる。そこから、プロセス流をPFRに圧送及び/又は導入し、このウイルス不活化条件で所定時間維持することができる。PFR内のウイルス粒子の滞留時間を定義することは、パイプの中心のプロセス流の流れがプロセス流の平均流量の2倍の速さであり、パイプの壁付近ではほとんど停滞するために定量化が困難である。ウイルス粒子の最適な滞留時間を決定するために、新しい設計又は製造されたPFRは、入口と出口との間に蛇行パターンを形成する1組の交互ターンを含むことができ、よって、蛇行状流路、織り合わされた経路、及び/又は半径方向の混合を促進するためのディーン渦を生成するJig-in-a-Box(JIB)設計を作り出すことを利用することができ、これらは、その明細書が参照により本明細書に組み入れられる、「A Novel Continuous Flow Reactor For Low pH Viral Inactivation」及び「Continuous Flow Reactor for Viral Inactivation」という名称の同一出願人が所有する同時係属中の米国特許出願に記載されている。この新しい設計又は製造されたPFRでは、最初のウイルス粒子が反応器を出るのはいつかを予測できる能力が不可欠である。一般的に、3つの代替的手法が、バッチウイルス不活化のためのインキュベーション時間と同等の個々の検出可能な粒子又は検出可能なトレーサに要する最小滞留時間(Tmin)を決定又は推定するために使用され得る。1つの手法は、流路内の理想的な均一性(すなわち、プラグフロー)を仮定し、反応器容積を流量で単純に除算する。しかしながら、この理想論的な手法は、蛇行状流路又は織り合わされた流路を有する反応器の効率が増加しても、必要な滞留時間を過小評価する結果となる可能性がある。別の手法は、流路の中心がプロセス流の平均速度の2倍の速さのままであると仮定するものである。しかしながら、この手法は、蛇行状又は織り合わされた反応器の効率の増加から生じるプロセス流の必要滞留時間を過大評価する結果となる可能性がある。別の手法は、プロセス開発を使用して、非理想性を説明するように理想論的な手法を修正するための効率係数を決定する。しかしながら、この手法は、大規模なJIBの試験を必要とし、粘度及び流量の潜在的な異常を説明することができない。よって、本発明のシステム及び方法は、発明的な技術的解決策を使用して、経路長、流量、反応器設計、内径、及び粘度にわたってJIB性能を正確に推定する。
【0016】
Tminを予測できることにより、プロセスに適合させるのに必要な所望の流量及び反応器サイズの推定及び/又は構成が可能になる。
【0017】
これは、適用される規制の遵守にデータ検証が必要な、食品医薬品局(FDA)などの規制機関にデータを提出するときに特に有用である。以下のシステムにより、ユーザは、スケールアップ中にプロセス流又はプロセス流の最終結果を損なうことなく、データ検証目的で小規模のプロセス流を実行し、次いで大量生産のために反応器をスケール変更することができる。ウイルス不活化条件が滞留時間の関数として標的産物も分解する可能性があることを考えると、反応器で費やされる最大滞留時間(T
max)(すなわち、反応器を離れる最後の有意な量の標的産物に要する最大滞留時間)も決定されるべきである。本発明は、標的産物の安定性を解決できるようにする初めての公知の手法である。システム及び方法の第1の用途は、T
min及びT
maxを使用してJIBの動作流量及び経路長を解くことを可能にする。第2の用途は、動作流量及び経路長がT
min及びT
maxを予測するために使用されるという点で、反対の手法をとる。第3の用途は、反応器のサイズをスケール変更するときに、特定のT
minに必要な内径及び経路長を近似する方法である。これらの用途の各々において、滞留時間分布に与える粘度、ディーン数、及び反応器容積の影響が決定及び定量化されるべきである。これらの用途の各々において、ユーザは、ユーザが実質的に同じ直径を有する反応器を使用したいか、それとも異なる直径を有する反応器を使用したい(すなわち、反応器をスケール変更する)かを選択することができる。代替的又は追加的に、システムは、実験用反応器と同じサイズの反応管の反応器が実際のプロセスで使用されるべきかどうか、又は実験用反応器がスケールアップ若しくはスケールダウンされるべきかどうかを推奨することもできる。この代替的又は追加的な例では、反応器がスケールアップ又はスケールダウンされているとき、システム又はユーザは、実験用反応器と実反応器とが、
図2Aに示されるように、同じアスペクト比を有すること、又は実験用反応器と実反応器とが、
図3に示されるように、異なるアスペクト比を有することを選択することができる。
【0018】
蛇行パターンを形成する1組の交互ターンを有する管状流路を有する連続フロー反応器
上記のように、システムは、蛇行パターンを有する反応管を有する実反応器を設計、選択、作製、及び/又は製造することができる。蛇行パターンの詳細は、
図1A~
図1Dに記載されている。
図1Aを参照すると、管状流路12の各湾曲部10は、約1.5cm、例えば約1.479cmのターン間の垂直(L1)中心間距離を含むことができる。加えて、各湾曲部10は、約1.375cmのターン間の水平(L2)中心間距離を含むことができる。さらに、管状流路12内の各湾曲部10の半径を、実質的に一定とすることができる。一例では、ROCが約0.85cm~約0.99cmである場合には、各湾曲部10の湾曲の角度を約270°とすることができる。別の例では、ROCは約0.99cm以上であり、その場合各湾曲部の湾曲の角度を同じとすることができるか、又は第1の湾曲部10の湾曲の角度を約270°とすることができ、第1の湾曲部に隣接する第2の湾曲部10の湾曲の角度を270°以上とすることができる。上記の各例示的なシナリオでは、交互ターン間のディーン数の実質的な差を防ぐために、R1とR2とを互いから0.05cm以内とすることができる。
【0019】
一例では、管状流路12の各湾曲部10は、1cmの半径などの同じ半径を含むことができる。別の例では、管状流路12の各湾曲部10は、異なる半径を含むことができる。例えば、第1の湾曲部10は半径R1を含むことができ、これを1cmとすることができ、第2の湾曲部10は半径R2を含むことができ、これを1.02cmとすることができる。この例では、半径R1に対応する湾曲の角度を約270°とすることができ、半径R2に対応する湾曲の角度を約278.27°とすることができる。別の例では、各管状流路12の湾曲部10の前半は第1の半径R1を含むことができ、これを1cmとすることができ、各管状流路12の湾曲部10の後半は第2の半径R2を含むことができ、これを1.02cmとすることができる。
【0020】
図1B及び
図1Cを参照すると、約325回の交互270°ターンをコンパクトな設計に収容するために、インライン管状CVI反応器10内の管状流路12を、
図1Cに示されるように、2層14から26層14以上、例えば26層14などの複数の積層14に垂直方向に分割することができる。複数の積層14内の各層は、約0.5cm以下~約2cm以上、例えば、約0.7cm~約1.2cmの厚さを含み得る。一例では、積層14内の各層14(a)~14(z)は、単一の平面内に約10.5ターン以下~約15.5ターン以上を含むことができる。例えば、積層14内の各層14(a)~14(z)は、12.5ターンを含むことができる。一例では、各層14を、180°の垂直ターン16によってその隣接する下層14に接続することができる。あるいは、各層14の流路12の最後のターン10の後半を垂直方向に180°回転させて、第1の層の管状流路12を(例えば層14(a)を第2の層14(b)の管状流路12に)接続することもできる。一例では、インライン管状CVI反応器10が26層14を含む場合、26層14を、25の180°垂直ターン16によって互いに接続することができる。
【0021】
図1Bを参照すると、一例では、インライン管状CVI反応器100内の各層14は深さL3を含むことができる。深さL3は、第1の層14の管状流路12の中心から、第1の層14の直下の第2の層14の管状流路12の中心までの距離とすることができる。深さL3は、約0.7cm以下~約1.2cm以上、例えば、約0.8cm~約0.9cm、例えば、約0.835cmの深さとすることができる。一例では、第1の層の管状流路12の底部から第1の層の真下の第2の層の管状流路12の上部までの距離を、約0.15cm(1.5mm)~約0.4cm(4mm)とすることができ、例えば、約0.17cm(1.7mm)~約0.255cm(2.55mm)、例えば、約0.2cm(2mm)とすることができる。
【0022】
一例では、
図1Dに示されるように、経路長及びインキュベーション時間の変更を可能にするために、複数の層14を有するインライン管状CVI反応器10に加えて、複数のインライン管状CVI反応器10を互いに直列に接続することができる。これは、1つ以上のフランジ付きコネクタ18によって達成することができる。一例では、少なくとも6つ以上のインライン管状CVI反応器10など、少なくとも2つのインライン管状CVI反応器10を互いに接続することができる。この特定の例では、インライン管状CVI反応器10の各端部の管状流路12は、インライン管状CVI反応器100から部分的に延出(延長部分15)することができる。延長部分15はまた、
図1Bに示されるように、フランジ20を含むこともできる。コネクタ18は、水平180°ターンを含むことができ、及び/又は「U」字形状とすることができる。コネクタ18の一端を、第1のインライン管状CVI反応器10の管状流路12又はフランジ20に接続することができ、コネクタ18のもう1つの端を、隣接するインライン管状CVI反応器10の管状流路12又はフランジ20に接続することができる。
【0023】
コネクタ18は、
図1Dに示されるように、クランプ22によって、又はねじ、接着剤などといった他の締結装置によって、各管状流路12又はフランジ20に接続することができる。一例では、管状流路12又はフランジ20の端部とコネクタ18の各端部との間にガスケットを配置することができる。
【0024】
一例では、インライン管状CVI反応器10は、20×4.9×23cmの本体又は実装面積を含むことができ、約16.43mの流路12長さを含むことができ、約520mLの流量をもたらす。インライン管状CVI反応器10の本体は、
図1Cに示されるように、第1の側面24及び第2の側面26を含むことができる。一例では、第1の側面24は少なくとも1つの溝又はくぼみ24Aを含むことができ、第2の側面26は少なくとも1つの突起26Aを含むことができる。少なくとも1つのくぼみ24A及び少なくとも1つの突起26Aを、2つのインライン管状CVI反応器10が互いに向かい合っているときにそれらが整列し、1つのインライン管状CVI反応器10を隣接するインライン管状CVI反応器10に固定することができるように配置することができる。
【0025】
織り合わされた管状流路を有する連続フロー反応器
上記のように、システムは、織り合わされた反応管を有する実反応器を設計、選択、作製、及び/又は製造することができる。織り合わされた反応管の詳細は、
図1E~
図1Jに記載されている。
図1E~
図1Jに、低Reで動作することができる例示的な連続フロー反応管10Zを示す。連続フロー反応管10Zは、ターン又は湾曲部14Z及び屈曲部16Zを含む管状流路12Zを含むことができる。ターン又は湾曲部14Zのうちの少なくとも2つは、単一の長手方向軸LX上に、ただし異なる非平行平面に、例えば、平面A及び平面Bに配置され、それによりターン又は湾曲部は、長手方向軸LXの周りに約25°~約60°の角度を形成することができる。連続フロー反応管10Zを作製するために使用される経路の数に応じて、ターンを、2つ以上の異なる非平行平面内に、例えば、約6~約13の異なる平面内、例えば、8つの異なる平面内に含めることができる。さらに、ターンのうちの少なくとも2つは、例えば
図1Fに示されるように、少なくとも2つのターンに対応する平面が互いに交差し得るように配置される。ターンはまた、所定数のターンの後に繰り返すことも繰り返さないこともできるパターンを作り出すことができる。例えば、単一の経路のその長手方向軸に沿った断面を示す
図1Gに示されるように、単一の経路は、少なくとも2回繰り返されるパターン50Zを含むことができる(
図1Eも参照)。各流路は、約4ターン~約128ターン以上の交互ターン、例えば、約16~約32ターン、例えば、12.5の交互ターンを含むことができる。各ターン14Zは、約110°~約280°、例えば、約135°~約140°の角度を含むことができる。一例では、第1のターンは、第2のターンの角度(例えば約140°の角度)よりも小さい角度(例えば約135°の角度)を含むことができる。加えて、
図1E、
図1F、及び
図1Jに示されるように、各流路は、約8~約64以上の屈曲部16Z、例えば、約8~約16の屈曲部16Zも含むことができる。各屈曲部16Zは、約15°~約135°未満の角度、例えば、約30°~約90°の角度、例えば、約45°の角度を含むことができる。一例では、各パターン50Zを、約4回以上の屈曲後に、例えば、約8回の屈曲後に繰り返すことができる。
【0026】
追加的又は代替的に、連続フロー反応器が織り合わされた管状流路を含む場合、織り合わされた管状流路は、1m3当たり約6~約100、例えば約6.5~約93.2のターンを含むことができる。
【0027】
図には示されていない別の例では、連続フロー反応管10Zの経路は2つ以上の異なるパターンを含むことができ、それらは繰り返される場合も繰り返されない場合もある。連続フロー反応管10Zが複数の織り合わされた流路を含む場合、連続フロー反応管10Zの各経路は、実質的に同様のパターンを含むことができる。代替的又は追加的に、連続フロー反応管10Zの各経路は、異なるパターンを含むこともできる。さらに、連続フロー反応管10Zの各経路は、同様の数の繰り返しパターン(例えば、2つの同様の繰り返しパターン)を含むこともでき、又は2つより多いか若しくは少ない繰り返しパターンを含むこともできる。例えば、第2の経路は、2つの同様の繰り返しパターンを含むことができ、又は3つの同様の繰り返しパターンを含むことができる。
【0028】
図1H及び
図1Iを参照すると、連続フロー反応管10Z内のターン14Zの各々は、約1cm~約2cm、例えば、約1.5cmのターン間の垂直L1中心間距離を含むことができる。加えて、ターン14Zの各々は、約1cm~約2cm、例えば、約1.63cmのターン間の水平L2中心間距離を含むことができる。さらに、ターン14Zの各々は、約3cm~約4cm、例えば、約3.85cmの端部間距離L3を含むことができる。連続フロー反応管10Z内の各ターン14Zの半径は、実質的に一定とすることができる。例えば、
図1Iを参照すると、交互ターン間のディーン数の実質的な差を防止するために、半径R1及びR2を互いから0.05cm以内、例えば、互いから約0.02cm以内とすることができる。例えば、R1を約1.10cmとすることができ、R2を約1.12cmとすることができる。一例では、ターン14Zを、約187.7~約375.5のレイノルズ数の層流を有するプロセス流の混合を誘導するための渦を生成するように配置することができる。
【0029】
一例では、複数のターン14Zは、ターン中心で約45°の流れ方向変化を含み得る三次元経路をたどることができる。加えて、複数のターン14Zの各々は、約125°~約180°の角度を含むことができる。
【0030】
蛇行する織り合わされた反応管を使用するシステム
図1Kを参照すると、システム1000が実験用反応器100と同じ結果で商用目的の実際のプロセス流を管理することができる実反応器400を設計、選択、作製、及び/又は製造するために、システム1000は、プロセッサ1001と、実反応器400の必要なパラメータを推定及び/又は決定するためにプロセッサ1001によって実行可能な機械可読命令を格納する非一時的な機械可読記憶媒体1002とを含むことができる。一例では、プロセッサ1001は、実験用反応器100の反応器パラメータ及び/又は実験用反応器100に入るプロセス流の流体パラメータの既知の経験値を受け取ることができる。反応器パラメータ及び/又は流体パラメータの受け取った既知の経験値を使用して実験用反応器100の反応器パラメータ及び/又は実験用反応器100に入るか若しくは導入されるプロセス流の流体パラメータの非経験値を決定するためにプロセッサ1001によって実行可能な機械可読命令を格納する非一時的な機械可読記憶媒体1002上に保存された命令。経験値及び非経験値を転送し、プロセッサ1001に、実際のプロセス流のための実反応器400を決定、設計、選択、作製、製造、及び/又は推奨するよう求めるためにプロセッサ1001によって実行可能な機械可読命令を格納する非一時的な機械可読記憶媒体1002上に保存された命令。
【0031】
一例では、実験用反応器100を、特定の既知のパラメータを有する仮想反応器とすることができる。一般的に、実験用反応器100は、反応管の一定の内径i.d.及び曲率半径Rc(cm)を含む固定式反応器とすることができる。既知の経験値及び非経験値はタスク依存である。すなわち、ユーザが何を達成したいかに応じて、反応器パラメータ及び/又は流体パラメータの少なくとも一部の値は、経験的又は非経験的であり得る。一例では、反応器パラメータ及び/又は流体パラメータに関する経験値及び非経験値と関連付けられる主要変数を、Tmin、Tmax、内径i.d.、プロセス流の体積流量Q(mL/min)、流路の経路長L(cm)、反応管の曲率半径Rc(cm)、プロセス流中の流体の密度(ρ)、及びプロセス流中の流体の動粘度μ(mPa*s)、並びに分散σ2
time(min2)とすることができる。
【0032】
実験用反応器を使用した経験値の決定
一例では、経験値を、実験データセットに対して線形である実験用反応器パラメータ及び/又は流体相パラメータに対応する値とすることができる。一例では、
図2A及び
図2Bに示されるように、10で、パルス注入を使用して、プロセス流を実験用反応器100に導入することによって、実験用反応器100と通信することができる第1の検出器30は、密度(ρ)、動粘度(μ)、ディーン数(De)などのプロセス流の流体相パラメータを決定する及び/又は受け取ることができる。さらに、
図2Cに示されるように、第1の検出器30は、プロセス流に注入される検出可能な粒子若しくは検出可能なトレーサの体積/量、及び検出可能な粒子若しくは検出可能なトレーサをプロセス流に注入するのにかかる時間/又は検出可能な粒子若しくは検出可能なトレーサを実験用反応器100に導入するのにかかる時間を検出することができる。加えて、第1の検出器30は、実験用反応器のタイプ(例えばJIB)、実験用反応器100へのプロセス流の流量Q、実験用反応器100の経路長L、及び実験用反応器100の容積を決定するか、又は受け取ることができる。一例では、上記の値のいくつかがユーザに知られている場合もあり、よって、検出器がそれらの値を検出する必要はない。一例では、検出可能な粒子又は検出可能なトレーサは、ウイルス/バクテリオファージ粒子、リボフラビン、塩、色素、タンパク質、及び/又は糖であり得るが、これらに限定されない。例えば、
図2Bに示されるように、第1の検出器30は、プロセス流体が水であり、実験用反応器タイプがJIBであり、プロセス流の流量Qが50mL/minであり、実験用反応器の経路長Lが1644cmであり、反応器容積が520mLであり、ディーン数が118.94であると決定することができる。
【0033】
図2Bを参照すると、第2の検出器40も実験用反応器100と通信することができ、最初の検出可能な粒子又は検出可能なトレーサが実験用反応器100を出るか又は離れる時間、及び最後の有意な量の検出可能な粒子又は検出可能なトレーサが実験用反応器100を出るか又は離れる時間を検出及び測定することができる。一例では、第2の検出器40も、第1の検出器30が検出又は測定できるパラメータを検出することができる。
図2Bに示される実験生データに基づいて、第2の検出器40は、
図2Dに示されるように、近似曲線を生成することができる。この近似曲線に基づいて、分散σ
2
time及び標準偏差σ
timeが決定される。例えば、1644cmの経路長を有する実験用反応器100における50mL/minの流量の場合、近似曲線に基づいて、分散σ
2
timeは0.5115min
2であり、標準偏差σ
timeは0.7152分である。
【0034】
図2Eに示されるように、分散σ
2
timeが0.5115min
2であり、実験用反応器の経路長Lが1644cmであり、ディーン数Deが118.94であり、平均滞留時間T
Aveが10.4分であるとすると、比較器50は、理論段相当高さHETP値7.87cmを導出することができる。比較器50は次いで、広範囲の流量及びプロセス流粘度(例えば、ブドウ糖 0g/L、ブドウ糖 50g/L、ブドウ糖 100g/L及びブドウ糖 200g/L)にわたる実験データのHETP及びディーン数に対応するグラフを作成することができる。一例では、実験データのグラフに基づいて、比較器50は、
図2Eに示されるように、実験データ適合グラフを作成することもできる。
図2Aに示されるように、200で、関心対象の実反応器400を決定及び/又は作製するために、システム1000に経験値/変数を転送するか又はシステム1000が経験値/変数を受け取ることができる。別の例では、経験値が以前に導出又は決定されている場合もあり、よって、
図3に示されるように、第1の検出器30若しくは比較器50が又は、さらに言えば、実験用反応器100、第1の検出器30若しくは第2の検出器40(図示されていない)が不要な場合もある。
【0035】
実反応器400を設計、選択、作製、製造、及び/又は決定するための制限要因は、産物の安定性、必要なウイルスインキュベーション、プロセスパラメータ、及び/又は運転上若しくは動態上の考慮がないことであり得る。
【0036】
制限要因が産物の安定性である場合、ウイルス不活化化学物質に対して感受性が高い標的タンパク質が提供される。この例では、システム1000を、ウイルス不活化動態に必要な最小滞留時間及び産物の安定性のための最大滞留時間制限に基づいて、許容できる反応器の長さ及び流量を決定するように作製することができる。制限要因がプロセスパラメータである場合、下流プロセスは体積流量Q及び経路長Lによって制限される。この例では、システム1000を、ウイルス不活化に必要なプロセス流の最小滞留時間及び産物の安定性のための最大滞留時間を決定するように作製することができる。運転上又は動態上の考慮事項がない場合、標的タンパク質は安定性の考慮事項を含まない場合もある。この例では、システムを、結果として生じるTminの適切なQ及びLを決定するように作製することができる。
【0037】
制限要因産物の安定性-T
min及びT
maxを使用して実反応器の動作流量及び経路長を決定するためのシステム及び方法
一例では、ユーザは、システム1000を使用して、所望の所定のT
min及びT
maxに基づいて実反応器を開発又は作製することができる。例えば、ユーザは、T
minが60分であり、T
maxが75分であることを必要とする。加えて、ユーザは、実験用反応器100の反応管の所望の内径及び実験用反応器100の曲率半径を入力することができる。この特定の例では、実験用反応器100及び実反応器400は、同一の内径i.d.及び曲率半径Rcを含むことができる。さらに、
図2Aを参照すると、プロセス流中の流体の密度ρ及び動粘度μは既知であるか、又は第1の検出器30によって検出され、200でシステムに提供され得る。したがって、システム1000は、上記で入力されたパラメータに基づいて実反応器400の設計及び製造仕様を提供することができる。実反応器400の新しい設計及び製造仕様(すなわち、実反応器400の反応管の経路長)は、動作体積流量Qに基づいて変動し得る。これは、σ
2
time<σ
2
maxの条件下(すなわち、反応器経路長Lと流量Qとが、T
min及びT
maxの要件を満たす複数の組み合わせを有する)で動作するシステムに特に当てはまる。しかしながら、システムがσ
2
time=σ
2
maxの条件下で動作する場合、ただ1つの反応器経路長Lと流量Qの組み合わせがT
min及びT
maxの要件を満たす。
【0038】
図4、
図5A、及び
図5Bを参照すると、50で、既知の値210/210A、250/250A、並びに経験値及び/又は変数260/260Aをシステム1000が決定するか、又はユーザが入力することができる。これらの経験値及び/又は変数260/260Aを、実験用反応器100の反応器パラメータ及び/又は流体相パラメータに分けることができる。例えば、
図5A及び
図5Bに示されるように、212で、実験用反応器100の所望の所定のT
minを比較器50に入力することができる。214で、実験用反応器100の所望の所定のT
maxを比較器50に入力することができる。さらに、216で、実験用反応器100の内径i.d.を比較器50に入力することができる。218で、実験用反応器100の曲率半径Rcを比較器50に入力することができる。よって、この特定の例では、反応器パラメータに対応する入力される既知の値を、
図5Bに210Aとして示される、T
min、T
max、内径i.d.及び曲率半径Rcとすることができる。
【0039】
加えて、
図5Bを参照すると、252で、第1の検出器30からのプロセス流中の流体の密度(ρ)を比較器50に入力することができる。254で、動粘度(μ)を比較器50に入力することができる。よって、この特定の例では、流体相パラメータに対応する入力される既知の値は、250/250Aとして示される、密度ρ及び動粘度μであり得る。
【0040】
次いで経験値を、上記のように、実験用反応器100へのプロセス流のパルス注入を使用して決定することができる。例えば、
図5A及び
図5Bを参照すると、260Aで、比較器50は、所望の所定の値のT
min(例えば60分)及びT
max(例えば75分)を使用して、経験値を予測及び/又は決定することができる。この特定の例では、T
min及びT
maxが与えられると、比較器50は、以下に示されるように、最大分散σ
2
time(すなわち、σ
2
max)及び対応する平均滞留時間T
Aveを決定することができる。
(1)T
Ave=T
min+(n*σ
max)、式中、nは5とすることができる
(2)T
Ave=T
max-(m*σ
max)、式中、mは3とすることができる
(3)ΔT=8σ
max
(4)15=8σ
max
σ
time=1.875分、σ
2
time=3.52min
2、T
Ave-69.375分
【0041】
決定された分散σ2
time、TAve、及び標準偏差σtimeが与えられると、比較器50は、上記のように、第1の検出器30及び第2の検出器40からのデータをそれぞれ利用して、cm2単位の理論段(HETP)及び/又はディーン数Deを決定するための経験値を導出することができる。例えば、HETPを以下のように定義することができる。
(5)HETP=(aDe3+bDe2+cDe+d)
式中、Deは、ディーン数であり、a、b、c、及びdは、100以上のディーン数についてのみ有効な経験的データ適合に基づくものである。
【0042】
【数1】
100以上のディーン数(De)のパネルを適用することにより、各Deは流量Qを固定し、以下に示されるようにHETPを返す。
【数2】
【0043】
一例では、
図4に示されるように、反応器パラメータと関連付けられる非経験値を302で導出することができ、又は流体相パラメータと関連付けられる非経験値を304で導出することができる。例えば、
図5A及び
図5Bを参照すると、上記の経験値の式並びに決定されたσ
2
time、σ
time、及びT
aveを、200でシステムに転送して、システムが、実反応器400の経路長(L)及び流量(Q)を決定するために、302Aで、以下に示されるように経験値に関連する式を同時に解くことができるようにすることができる。
【数3】
【0044】
定数T
Aveについて、Q値を固定すると、対応するL
TAve値が固定される。各Q値とL
TAve値の組み合わせは、以下に示されるように、結果として得られるσ
2
time値を返す。
【数4】
【0045】
σ
2
timeを解くと、T
Ave=T
min+(5*σ
max)及びT
Ave=T
max-(3*σ
max)によって制約される最小反応器容積が得られる。
図5Cに、所望の所定のT
min及びT
maxを有するための異なる流量及びそれらそれぞれの対応する反応管長さ経路Lのグラフ表現を示す。追加的又は代替的に、
図5Bのステップ312及びステップ314に示されるように、出力は、それぞれ、反応管の経路長L及び流量Qを含むことができる。
【0046】
この例では、実験用反応器と実反応器とが同じであるとすると、選択された流量Q及び対応する反応管の経路長に基づいて、一連の反応器を互いに接続して対応する反応管の経路長を達成することができる。
【0047】
制限要因がプロセスパラメータである-反応器容積RV及び流量Qを使用してT
min及びT
maxを決定するためのシステム及び方法
一例では、ユーザは、システム1000を使用して、既知の反応器パラメータ及び流体相パラメータを有する反応器のT
min及びT
maxを決定することができる。例えば、
図6Aに示されるように、210Bで、既知の反応器パラメータは、反応器容積RV(例えば3120mL)、流量Q(例えば、50mL)、内径i.d.、及び曲率半径Rcを含むことができる。加えて、やはり
図6Aに示されるように、250Bで、既知の流体相パラメータは、プロセス流中の流体の密度(ρ)及び動粘度(μ)を含むことができる。この例では、反応器容積RV、流量Q、内径i.d.及び曲率半径Rcを比較器50に入力することができる。比較器50は、次いで、分散σ
2
time、平均滞留時間T
Ave、HETPなどの経験値を決定することができる。
【0048】
図6Bを参照すると、この例では、222でシステムに反応器の反応器容積RVを入力することができ、224でシステムにプロセス流の流量Qを入力することができ、216でシステムに反応器の反応管の内径i.d.を入力することができ、218でシステムに反応器の反応管の曲率半径Rcを入力することができる。よって、この特定の例では、210Bでの反応器パラメータに対応する入力値は、反応器容積RV、プロセス流の流量Q、実反応器の反応管の内径i.d.、及び実反応器の反応管の曲率半径Rcであり得る。
【0049】
加えて、252で、システム1000にプロセス流中の流体の密度(ρ)を入力することもできる。254で、システム1000に動粘度(μ)を入力することができる。よって、この特定の例では、250Bでの流体相パラメータに対応する入力される既知の値は、密度ρ及び動粘度μであり得る。
【0050】
既知のプロセス流の流量Q(例えば50mL/min)、既知の反応器容積RV(例えば3120mL)、反応管の既知の内径i.d.、及び既知の曲率半径Rcに基づいて、システム1000のプロセッサ1001は、Tmin及びTmaxを予測及び決定することができる。
【0051】
T
min及びT
maxを予測及び/又は決定するために、既知の値を比較器50に入力することができる。比較器50は、260Bで、上記のように実験用反応器を使用して、プロセス流の流量Q及び反応器容積RVを利用して、以下の式に示されるように平均滞留時間(T
Ave)を予測及び/又は決定することができる。
【数5】
(15)T
Ave=62.4分
【0052】
比較器50がTAve値を導出すると、比較器50は、次いで、TAve、Q、De、Rv、及びLを利用して、実験用反応器100及び以下の式を使用して分散σ2
timeを予測及び/又は決定することができる。
HETP=(aDe3+bDe2+cDe+d)、式中、Deは、ディーン数であり、a、b、c、及びdは、100以上のディーン数についてのみ有効な経験的データ適合に基づくものである。
【0053】
Qが50mL/min及びDeが118.94では、HETPは7.464cmに等しくなり得る。この導出されたHETP値に基づいて、分散σ
2
timeを、以下の式を使用して比較器50によって予測又は決定することができる。
【数6】
【0054】
次いで、上記の経験値及び既知の値を200でシステムに転送することができる。分散σ2
timeを導出したプロセッサ1001は、この分散σ2
time、標準偏差σtime、反応管長さL、曲率半径Rc、ディーン数De、流量Q、及びTAveを利用して、以下の式に示されるように実反応器のTmin及びTmaxを推定及び/又は決定することができる。
(20)TAve=Tmin+(n*σmax)、式中、nは5とすることができる
(21)TAve=Tmax-(m*σmax)、式中、mは3とすることができる
(22)Tmin=53.81分
(23)max=67.55分
【0055】
一例では、
図6Bに示されるように、316で、ディスプレイはT
min値を示すことができ、318で、ディスプレイはT
max値を示すことができる。追加的又は代替的に、ディスプレイは、
図6Cに示されるように、T
min及びT
maxのグラフ表現を示すこともできる。
【0056】
運転上又は動態上の考慮事項なし-Tmin及び動作流量(Q)を使用して実反応器の経路長を決定するためのシステム及び方法
一例では、ユーザは、システム1000を使用して、所望の所定のT
min(60分)、プロセス流の流量Q(50mL/min)、反応管の内径i.d.(0.635cm)、曲率半径Rc、密度ρ、及び動粘度μに基づいて実反応器を開発又は作製することができる。例えば、
図7Aに示されるように、210Cで、既知の反応器パラメータは、T
min、プロセス流の流量Q、反応管の内径i.d.、曲率半径Rcを含むことができる。加えて、やはり
図7Aに示されるように、250Cで、既知の流体相パラメータは、プロセス流中の流体の密度ρ及び動粘度μを含むことができる。この例では、これらの既知の値を比較器50に入力することができ、これにより比較器は、分散σ
2
timeや平均滞留時間T
Aveなどの経験値を決定することができる。
【0057】
図7Bを参照すると、この例では、212でシステムにT
minを入力することができ、224でシステムにプロセス流の流量Qを入力することができ、216でシステムに反応器の反応管の内径i.d.を入力することができ、218でシステムに反応器の反応管の曲率半径Rcを入力することができる。よって、この特定の例では、210Cでの反応器パラメータに対応する入力値は、T
min、プロセス流の流量Q、実反応器の反応管の内径i.d.、及び実反応器の反応管の曲率半径Rcであり得る。
【0058】
加えて、252で、システム1000にプロセス流中の流体の密度(ρ)を入力することもできる。254で、システム1000に動粘度(μ)を入力することができる。よって、この特定の例では、250Cでの流体相パラメータに対応する入力される既知の値は、密度(ρ)及び動粘度(μ)であり得る。
【0059】
既知のTmin、プロセス流の流量Q(例えば50mL/min)、反応管の既知の内径i.d.、及び既知の曲率半径Rcに基づいて、システム1000のプロセッサ1001は、実反応器400の反応管流路長Lを予測及び決定することができる。
【0060】
実反応器400の反応管流路長Lを予測及び/又は決定するために、既知の値を比較器50に入力することができる。比較器50は、260Cで、上記のような実験用反応器を使用して、以下の式に示されるように、T
min、プロセス流の流量Q、及びディーン数Deを利用して、T
Ave及び分散σ
2
timeを予測及び/又は決定することができる。
【数7】
式中、a、b、c、及びdは、100以上のディーン数についてのみ有効な経験的データ適合に基づくものである。
【数8】
式を並べ替えることによって、
【数9】
【0061】
図7A及び
図7Bを参照すると、上記の経験値の式及び既知の値を200でシステムに転送することができ、これによりシステムは、302Cで、60minのT
min、50mL/minの流量Q、及び0.635mのi.d.が与えられた場合、以下の式によって経路長(L)を決定することができる。
【数10】
【0062】
上記の式を解くと、Lは、108.99m又は3.46Lの反応器容積と等しくなる。
図7Cを参照すると、300で、60分のT
minをもたらす流量Qと反応器容積RVの組み合わせに対応するすべてのデータ点を示すグラフ表現を示すこともできる。
【0063】
上記の例のすべてにおいて、実験用反応器100と実反応器400の内径i.d.及び曲率半径は同じままである。しかしながら、一例では、以下で説明されるように、システムは、実験用反応器の内径i.d.とは異なる反応管の内径i.d.を含む反応器を設計、選択、作製、製造、及び推奨することもできる。これは、適用される規制が遵守を証明するためにデータを必要とする、FDAなどの規制機関にデータを提出するときに特に有用である。以下のシステムにより、ユーザは、スケールアップ生産中にプロセス流又はプロセス流の最終結果に大きな変更を加えることなく、データ目的で小規模のプロセス流を実行し、次いで大量生産のためにプロセス流をスケールアップすることができる。
【0064】
アスペクト比を使用したスケールアップ又はスケールダウン
一例では、ユーザは、システム1000を使用して、所望の所定のT
min(60分)、プロセス流の流量Q
Exit(100mL/min)、密度ρ、及び動粘度μ、並びに既知のアスペクト比に基づいて実反応器400を開発又は作製することができる。例えば、
図8Aに示されるように、210Dで、既知の反応器パラメータは、T
min、プロセス流の流量Q、及びアスペクト比を含むことができる。アスペクト比は、実験用反応器の曲率半径Rcに対する実験用反応器の反応管の半径として定義することができる。さらに、アスペクト比は、約0.01~約10、例えば、約0.05~約5、例えば、約0.1~約0.5とすることができる。加えて、やはり
図8Aに示されるように、250Dで、既知の流体相パラメータは、プロセス流中の流体の密度ρ及び動粘度μを含むことができる。この例では、これらの既知の値を比較器50に入力することができ、これにより比較器は、分散σ
2
timeや平均滞留時間T
Aveなどの経験値を決定することができる。
【0065】
図8Bを参照すると、この例では、212でシステムにT
min(例えば60分)を入力することができ、224でシステムにプロセス流の流量Q(例えば100mL/min)を入力することができる。よって、この特定の例では、210Dでの反応器パラメータに対応する入力値は、T
min、及びプロセス流の流量Qであり得る。
【0066】
加えて、252で、システム1000にプロセス流中の流体の密度(ρ)を入力することもできる。254で、システム1000に動粘度μを入力することができる。よって、この特定の例では、250Dでの流体相パラメータに対応する入力される既知の値は、密度ρ及び動粘度μであり得る。
【0067】
実反応器400の反応管流路長L及び内径i.d.を予測及び/又は決定するために、既知の値を比較器50に入力することができる。比較器50は、260Dで、上記のような実験用反応器100を使用して、以下の式に示されるように、T
min及びプロセス流の流量Qを利用して、T
Ave及び分散σ
2
timeを予測及び/又は決定することができる。
【数11】
式を並べ替えることによって
【0068】
図8A及び
図8Bを参照すると、上記の経験値の式及び既知の値を200でシステムに転送することができる。この特定の例では、システムは500で、ユーザが実験用反応器と実質的に同様の直径を有する実反応器を使用したいかどうかをユーザに尋ねることができる。ユーザがはいと応答した場合には、システムは上記の例並びに
図7A及び
図7Bに基づいて長さを決定することができる。しかしながら、ユーザがいいえと応答するか、又は反応器のスケール変更を選択した場合には、システムはアスペクト比を取得することができ、システム1000のプロセッサ1001は、以下の式で反応器の長さLについて解くことができる。
【数12】
【0069】
一例では、反応器のスケール変更は、(i)実験用反応器の寸法を、実験用反応器と同じアスペクト比を有するが、異なる内径を有する実反応器にスケール変更すること、(ii)実験用反応器の寸法を、実験用反応器と同じアスペクト比及び同じ内径を有する実反応器にスケール変更すること、(iii)実験用反応器の寸法を、実験用反応器とは異なるアスペクト比及び実験用反応器とは異なる直径を有する実反応器にスケール変更すること、(iv)実験用反応器の寸法を、実験用反応器とは異なるアスペクト比を有するが、実験用反応器と同じ直径を有する実反応器にスケール変更すること、のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0070】
Lが決定されると、システム1000は、反応器の長さL、標準偏差σ
time、及び平均線流速(cm/min)の導出された値に基づいて、以下の式を使用して内部を決定することができる。
【数13】
【0071】
この特定の例では、固定アスペクト比を有する実反応器を設計、選択、作製、及び/又は製造するために、HETPと線流速との間のプロットを導出することができる。例えば、
図8Cを、水で試験された、約0.1cm~約0.2cm、例えば、0.156cmの内径を有する固定アスペクト比を有する実験用小型反応器と、水及びブドウ糖で試験された、約0.6cm~約0.7cm、例えば、0.635cmの内径を有する同じ固定アスペクト比を有する実験用中型反応器とから導出することができる。
【0072】
図8Dは、
図8Cに基づく予測HETPと実験HETPとの間のパリティを示す、実験HETPと予測HETPとの間のプロットである。
【0073】
図8Bの312及び320に示されるように、実反応器の反応器経路長及び内径を導出及び/又は決定することができる。
図8Eに示されるように、導出された反応器経路長、導出された内径、及び予測HETP値に基づいて、Q=100mL/min及びT
min=60を満たす反応器容積及び内径のすべての解を示すプロットを作成することができる。
【0074】
図9に、システム1000が、流体及び反応器容積が与えられた場合に理想的な反応器を決定することができる例示的な実施態様を示す。この例では、上記の先例と同様に、ユーザは、既知のパラメータを比較器50に入力することができる。比較器50は、既知の値に基づいて、経験値を決定することができ、これらを200でシステム1000に入力することができる。次いで、反応管の長さLなどの非経験値を、上記のように300で決定することができる。反応器の長さが与えられると、システムは700で反応器容積を決定することができる。システムは、750で、既知の流体特性、検出可能な粒子/トレーサ、及び反応器の決定された容積に基づいて、データベース770と通信することができる。データベース770は、反応器の容積並びに既知の流体パラメータ及び検出可能な粒子/トレーサパラメータに基づいて、以前に設計又は製造された反応器を含むことができる。次いで、データベース770は、システム1000に、同じ所望の最終結果を達成する同様の流体及び検出可能な粒子/トレーサと共に使用された実質的に同様の容積を各々有する様々な実反応器のリストを提供することができる。次いで、システム1000のプロセッサ1001は、提供された実反応器のリストを検討して、意図される目的に最良の実反応器400を選択することができる。
【0075】
図10Aを参照すると、別の例では、212でシステムにT
min(例えば60分)を入力することができ、213でシステムにT
max(例えば75分)を入力することができ、224でシステムにプロセス流の流量Q(例えば500mL/min)を入力することができる。よって、この特定の例では、210Dでの反応器パラメータに対応する入力値は、2つのT
min、及びプロセス流の流量Qであり得る。加えて、以下で論じられるように、600のアスペクト比を、この時点又は後の時点で入力することもできる。
【0076】
加えて、252で、システム1000にプロセス流中の流体の密度(ρ)を入力することもできる。254で、システム1000に動粘度μを入力することができる。よって、この特定の例では、250Dでの流体相パラメータに対応する入力される既知の値は、密度ρ及び動粘度μであり得る。
【0077】
実反応器400の反応管流路長L及び内径i.d.を予測及び/又は決定するために、既知の値を比較器50に入力することができる。比較器50は、260Dで、上記のような実験用反応器100を使用して、以下の式に示されるように、T
min、T
max、及びプロセス流の流量Qを利用して、T
Ave及び分散σ
2
timeを予測及び/又は決定することができる。
【数14】
【0078】
図10Aを参照すると、上記の経験値の式及び/又はそれらの対応する値及び既知の値を200でシステムに転送することができる。この特定の例では、システムは500で、ユーザが実験用反応器と実質的に同様の直径を有する実反応器を使用したいかどうかをユーザに尋ねることができる。ユーザがはいと応答した場合には、システムは上記の例並びに
図7A及び
図7Bに基づいて長さを決定することができる。しかしながら、ユーザがいいえと応答するか、又は反応器のスケール変更を選択した場合には、システムはアスペクト比を取得することができ、システム1000のプロセッサ1001は、
図10Bに示されるように、実験HETPの実験データ点を小型、中型、及び大型の反応器のJIB内径で除算することができる。次いで、システムは、
図10Cに示されるように、データセットに曲線を当てはめることができる。次いでシステムは、以下の式を使用して、60のT
min及び75のT
maxで500mL/minの流量について経路長対内径をグラフ化することができる。
【数15】
a、b、c、及びdは、すべてのディーン数の経験的データ適合に基づくものである。
【数16】
【0079】
i.d.を固定することにより、
図10Dに示されるように経路長項が返される。
【0080】
実施例1
滞留時間分布の生成。
【0081】
JIBを、Boehringer Ingelheimにおける以前の開発プロジェクトから設計し、3D Systems(米国サウスカロライナ州ロックヒル)によるSLA Technologyを利用して3D印刷した。移動相及びパルストレーサの作製に使用されるリボフラビン及びブドウ糖を、Thermo Fisher Scientific(米国ジョージア州スワニー)を通じて購入した。溶液の粘度を、A05 Chipを利用したmicroVISC S Viscometer(米国カリフォルニア州サン・ラモン)によって測定した。溶液の密度を、Mettler-Toledo Densito Densometer(米国オハイオ州コロンバス)によって決定した。
【0082】
中規模の3D印刷されたJIBを、Akta Avant 150を使用して試験し、大規模のJIBを、GE Healthcare(スウェーデン、ウプサラ)製のAkta Pilot 600を使用して試験した。JIBを最初に1反応器容積の移動相で洗い流した。次に、移動相に溶解した一定体積のリボフラビンをパルス注入し、移動相と共に追い出した。これにより、リボフラビンの吸光度最大値(すなわち、267、372及び445nm)での紫外可視吸光度によって検出及び定量化された反応器を出る際の滞留時間分布(RTD)プロファイルを生成した。次いで、ガウス分布を当てはめることによってRTDピークを分析した。この適合から、RTDの広がりの測定値であるピークの分散
【数17】
を決定した。この方法を、様々な濃度のブドウ糖によって変化させた一連の流量及び粘度にわたって試験した。
【数18】
の値をHETPに変換した。HETP対ディーン数のグラフを作成し、3次多項式を適合させた。次いで、以下の一連の式を利用した。
1.支配方程式を開始する
【数19】
i.a、b、c、及びdは、100以上のディーン数についてのみ有効な経験的データ適合に基づくものである。
【数20】
2.式を並べ替える
【数21】
3.Lについて解く:
【数22】
4.変数を埋める
【表1】
【0083】
以下の表に、中規模反応器及び大規模反応器の15分、30分、及び60分でのTminを示す。
【表2】
【表3】
【0084】
連続ウイルス不活化反応器における重要なプロセスパラメータに及ぼす流動力学の影響の評価
【0085】
JIBを、以前の開発プロジェクトから設計し、3D Systems(米国サウスカロライナ州ロックヒル)によるSLA Technologyを利用して3D印刷した。移動相及びパルストレーサの作製に使用されるリボフラビン及びブドウ糖を、Thermo Fisher Scientific(米国ジョージア州スワニー)を通じて購入した。溶液の粘度を、A05 Chipを利用したmicroVISC S Viscometer(米国カリフォルニア州サン・ラモン)によって測定した。溶液の密度を、Mettler-Toledo Densito Densometer(米国オハイオ州コロンバス)によって決定した。
【0086】
小規模及び中規模の3D印刷されたJIBを、Akta Avant 150を使用して試験し、大規模のJIBを、GE Healthcare(スウェーデン、ウプサラ)によるAkta Pilot 600を使用して試験した。JIBを最初に1反応器容積の移動相で洗い流した。次に、移動相に溶解した一定体積のリボフラビンをパルス注入し、移動相と共に排出した。これにより、リボフラビンの吸光度最大値(すなわち、267、372及び445nm)での紫外可視吸光度によって検出及び定量化された反応器を出る際のRTDプロファイルを生成した。この研究で試験した内径、流量、移動相、及び直列に接続されたJIBの数の概要を以下の表1に示す。
【表4】
【0087】
次いで、ガウス分布を当てはめることによってピークを分析した。この適合から、RTDの広がりの測定値であるピークの分散
【数23】
を決定した。分散の定量値の影響をよりよく理解するために、Qが体積流量である式1を計算した。加えて、式2及び3を使用してデータセットを変換し、式中、HETPは理論段相当高さであり、T
Aveは平均滞留時間であり、RVは反応器容積であり、LはJIBの流路の長さである。
【数24】
【0088】
流量及び経路長
図11Aに示されるように、最も遅い流量が3つすべての反応器サイズについて最も広いピークを生成する。これは、ピークの中心(すなわちT
Ave)から左右に総質量の34%までの体積距離を記述する比較的高い標準偏差(例えば、5mL/minでのJIB(1)データセットについて約82mL)を有するものとしてグラフに示されている。流量が増加するにつれてピークは狭くなり、標準偏差は指数関数的な速度で減少する。しかしながら、流量が20mL/minを上回って増加すると変曲点が得られる。ピークは、30mL/minの設定点で別の変曲点に達するまで広くなる。流量が増加するにつれて、ピークは55mL/minの設定点まで実質的に狭くなる。全体として、より遅い流量からより速い流量への進行は、初期漸近線、2つの変曲点、及び最後に第2の漸近線を表示する。
図11AのJIB(1)、JIB(2)及びJIB(6)のデータを見ると、2つの漸近線及び2つの変曲点の現象は、すべての経路長にわたって同一の流量で維持される。
【0089】
経路長を比較すると、ピークはより長い経路長で広がる。これは、PFRの再現可能な現象である明確な特徴のある観察結果である。
図11Aからのデータ点を式3を使用して変換し、HETPに相当する高さに変換すると、
図11Bが作成され、3つの経路長のデータセットが重ね合わされる。
【0090】
このシフトの推進力(すなわち、2つの変曲点)を理解するために、ディーン渦に関する以前に発表された研究のさらなる調査を行った。流れパターンを、2つの回転ドラムの間にあるときの水中懸濁液を使用して可視化した(すなわち、テイラー・クエット流)。Aiderは、フローセル内の流れの速度が増加する際に、流れパターンが層流からカオス的にシフトする特定のディーン数で観察を行った。水中に懸濁した雲母を使用してJIBで同様の実験を行い、同じ層流からカオス的流れへの遷移を見出した。Aiderらにおいて概説されているこれらの特定のディーン数及び対応する観察結果は、
図12にコプロットされている。ディーン数は式4によって定義されており、式中、ρは流体密度であり、uは平均線流速であり、Dは流路内径であり、μは動粘度であり、R
cは、蛇行パターンの曲率半径である。
【数25】
【0091】
2つの変曲点及びより速い流量の漸近線は、それぞれ、不安定な流れ、うねった波、及び完全な乱流の開始から遷移する流れの視覚的に観察可能な現れに対応する。円形の直管の流れの場合、乱流の開始は通常、レイノルズ数約2000で観察される。JIBは、レイノルズ数約174で乱流挙動をシミュレートすることができた。この大きな不一致のために、「弱い乱流」という用語を使用した。
【0092】
2つの漸近線及び2つの変曲点のシフトの妥当性を提供するために、上記のセクションで見出した挙動をディーン数によって制御し、移動相の粘度を3つの濃度のブドウ糖で高めた。
図13Aに、ブドウ糖の添加の反応を示す。4つすべての移動相について、標準偏差は最も遅い流量でのその最大値から始まり、流量の増加と共に狭くなった。しかしながら、ブドウ糖濃度が増加し粘度が高くなるにつれて、変曲点1に達するのに必要な流量が増加した。変曲点2及び第2の漸近線に達するのに必要な流量についても同じことが当てはまる。
【0093】
変曲点及び漸近線のこの明らかなシフトを説明するために、式4に記載され、
図13Bに示されるディーン数に流量を変換することによってx軸を正規化した。ディーン数に正規化されると、漸近線及び変曲点が整列する。データセットのシフトは補正によって正常に戻るが、拡散の大きさは、より高いディーン数(すなわち、De>100)の動作についてのみ補正されるように見える。これは、ディーン渦がDe=70を上回る半径方向の質量移動を引き継ぐためである。他の分散機構が支配するより低いディーン数(De<70)の場合、最も広いものから最も狭いものまでの移動相のランクは、ブドウ糖 200、0、50、及び100g/Lであり、濃度ベースの傾向に従わない。
【0094】
JIBの動作を知らせるために、2つの予測モデル手法を生成することができる。第1の手法は、様々なブドウ糖移動相実験からのすべての実験データを利用し、データをHETP及びディーン数に正規化する集中データプールの手法を使用する(
図13B)。このデータセットから、3次多項式をこのデータプールに当てはめて
図13C及び式5を得ることができ、式中、a、b、c、及びdは、多項式近似に基づくものである。式5により、ピークがどれだけの幅になるかをディーン数の関数として予測することが可能になる。このモデルについて、モデルがJIBにおけるパルス注入の体積拡散をどの程度予測するかを説明するパリティプロット(
図13D)を生成することができる。適合は、0.8405の比較的低いR
2値を有し、これはDe<100データセットの大量の変動性のために予想されたものである。式2及び式6を使用して、
図13Eに示されるT
min(5σ)(すなわち、ウイルス粒子や代用トレーサなどの第1の検出可能な粒子が反応器を出る時間推定値)がいつ発生すると予想されるかの近似を行うことができる。T
min(5σ)の重大性については後述する。適合はR
2値0.9175で改善されるが、y=xの線より下のすべてのデータ点は、モデルが実際に発生したものよりも長いインキュベーションを予測したシナリオを表す。誤差の大部分は、より低いディーン数の実験に対応するより大きなT
min時点で発生する。キーとなるユニット動作仕様が滞留時間であるため、これは重大な問題である。
【数26】
【0095】
第2の手法は、JIBユニット動作の基準が100を上回るディーン数を維持することである場合に適用可能である。この条件が真である場合、De>100設定点で収集されたデータ点のみを許容する除外基準がモデルに実装される(
図14A)。この手法は、可変性の高い下位ディーン数データセットを除去することによってモデルのノイズを低減することを目指す。この変更が適用されると、変動性が減少し、これによりJIBのピークの拡散が、異なる流量で動作する可変の粘度及び密度の流体について予測可能になる(
図14B)。
図14Cに、パルスの体積拡散のパリティプロットを示し、この第2のモデル手法は、集中データセットの手法と比較して増加したR
2値0.9201を有する。T
min(5σ)を計算し、プロットすると(
図14D)、R
2値0.9812のより良い予測モデルが生成される。
【0096】
このモデルは、JIBベースのCVIユニット動作の設計及び条件を決定するときに使用されるべき以下の2つの主な用途を有する。
1.産物流の要件(すなわち、Tmin及びTmax)が与えられた場合、反応器の長さ及び動作流量を決定する
2.反応器のサイズ及び動作流量が与えられた場合、産物流の出力を予測する
【0097】
必要なウイルス不活化に必要な最小滞留時間及び標的分子が産物品質に影響を及ぼす前に酸性条件にあり得る最大時間の理解から始めて、式6及び7を適用して、それらの仕様を満たすために必要な流量及び経路長の決定を助けることができる。
【数27】
【0098】
以下に示す表2Aに、σ
timeの「n」及び「m」値の選択の定量的態様の概要を示す。
【表5】
【0099】
図15Aに、RTDプロファイルに関する結果として得られる決定を示す。ウイルス及び標的産物の破過の理論的開始は、式8によって定義されるT
min(2v)から始まる。この値は、円形パイプ内の流れについて、流れの最も速い部分が流路の断面積の幾何学的中心で発生し、平均流速の2倍で作用することを示すハーゲン・ポアズイユから導出される。これは、本発明にとっての「光速」であると考えられる。質量移動現象(すなわち、対流、拡散、及びディーン渦)に影響を及ぼすために現実世界の実践で到達することが不可能に近く、JIBでの動作を達成するために非常に特異的で極端な条件セットを必要とする条件。
【0100】
出パルス注入はガウスピークであると考えられ、したがってその広がりはσを単位として考えられる。例えば、n=5(すなわち、T
min(5σ))は、産物の0.00003%がT
min(2v)とT
min(5σ)との間に反応器から出たことを表すと理解される。T
min(2v)とT
min(5σ)との間のこの差を、
図15Aにおいて可視化することができる。これは、インキュベートされていない集団を過大評価する保守的な観念であると見なされる。T
min(2v)とT
min(5σ)との交点は両方とも、現実世界の可能性を無視した導出された推定の観念である。ここで、T
min(2v)は上記の「光速」であり、σ
timeの「n」値に制限はない。十分に大きい選択された「n」値は、負の時間に発生するT
minを計算することができる。
【0101】
同様に、表2B及び
図15Bは、m=3(すなわち、T
max(3σ))が、産物プールの約99.865%がT
max以下で反応器から出ると予測するT
maxの決定に対応する。
【表6】
【0102】
この決定は、酸性又は任意の他のウイルス不活化条件の存在下での産物の安定性データ又は許容される収率損失に依拠することになる。式6と式7を組み合わせると、式9が得られる。
(9)Tmax-Tmin=ΔT=(n+m)*σtime
【0103】
定義されたT
min及びT
maxを用いて、T
Ave及びσ
timeを計算することができる。式2、式3、及び式5を使用して、
図5Cをもたらす仕様を満たす複数の経路長と流量の組み合わせ(すなわち、De>100を生じる流量から開始する)を見出すことができる。計算されたT
Ave及びσ
time制約条件を用いて、最小流量及び最小反応器容積を計算することができる。流量の増加又は減少はT
min又はT
maxによって制限されない滞留時間をもたらすので、これは賢明な動作位置ではない。反応器容積が増加するにつれて、目標T
maxを維持するために体積流量も増加する。流量が増加すると、JIBの効率も高まる。これにより、
図5Cにエラーバーとして表示されているJIB動作の自由度が高まる。有効性の増加に加えて、式6及び式7のn、m、T
min、又はT
maxの値を変更することによって動作ウィンドウの変更を調節することができる。
【0104】
この観念及び現象を可視化するために、T
min(5σ)とT
max(3σ)とが、それぞれ、60分より大と79分より小とで厳密に定義されたプロセスを考えて、
図16を生成した。より遅い流量で動作するより小さい反応器サイズでは、σ
time値は、2つのピークの幅の差によって可視化される、より大きい反応器サイズでのより高い流量と比較してより大きい。目標流量で動作すると、両方の設計がT
min及びT
maxの制約条件に従う。大きなサイズの反応器及び対応するより速い流量では、σ
timeが減少し、動作中の偏差の柔軟性が許容される。
【0105】
CVIがGMP設定で現実世界の作業に実装される場合、可変の流量及び粘度は不可避である。この一連の実験で行われた研究では、プロセスの動作極値及び対応する最悪条件を理解し、それらがプロセス出力にどのように伝播するかを予測するによって、この変動性に対処することができる。これらのアイソクラティック粘度実験に基づけば、ウイルスインキュベーション時間の最悪の場合は高粘度溶液であると思われる。クロマトグラフィー溶出ピークの粘度に1つのピーク最大値が生じることを考えると、したがって、これは最悪の場合と見なされるべきである。ピークの他のすべての部分(すなわち、前部及び後部)は、ピーク最大値に対してより低い粘度、より大きいディーン数、したがってより良好な混合を有する。
【0106】
この主張を検証するために、ブドウ糖を使用して粘度を増加させ、NaClを使用して導電性トレースを生成して擬似タンパク質ピークを生成した。タンパク質Aカラムの理論的事例では、mAbは、若干のテーリングを伴うガウス様の形状でカラムから溶出する。この一般的なピーク形状を、Akta Avant 150の勾配機能を使用して生成し、A1ラインは脱イオン水を含有し、A2は水に溶解したリボフラビンを含有し、B1は約150mMのNaClと共にブドウ糖 200g/Lを含有した。異なる粘度勾配位置を評価するために、ブドウ糖(ブドウ糖 0g/L)の添加前に発生する最初の位置、2つのピーク中間高さ(ブドウ糖 50g/L)、及びピーク最大値(ブドウ糖 100g/L)を有する、4つのパルス注入位置を選択した。
図17Aに、4つの注入すべてを示す。密度勾配を乱さずにピークを挿入するために、勾配の傾斜を維持しながらAポンプをA1からA2に切り替えた。これにより、パルス注入がブドウ糖曲線の下で異なる高さにある理由が説明される。注入が重なり合ったため、パルス注入位置をそれら自体の実験で評価した。
【0107】
粘度の関数としてのピーク拡散の現象は、動的組成設定で発生した。
図17Bに、予測モデルがT
min(5σ)をどの程度うまく予測したかを示す。アイソクラティック予測と動的実験結果との差は1分未満であったが、最初の水パルス注入とピーク最大値のパルスとの差は約4分であり、ウイルスインキュベーションの最悪の場合になった。
【0108】
実施例2
移動相及びフローチャンバ:
【0109】
JIBを、係属中の米国特許出願第62/742534号(参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)に記載されている、以前の開発プロジェクトから設計し、3D Systems(米国サウスカロライナ州ロックヒル)製のSLA Technologyを利用して3D印刷した。移動相を作製する際に使用されるリボフラビン、トリス緩衝生理食塩水(TSB)、及びブドウ糖は、Thermo Fisher Scientific(米国ジョージア州スワニー)を通じて購入した。溶液の粘度を、A05 Chipを利用したmicroVISC S Viscometer(米国カリフォルニア州サン・ラモン)によって測定した。溶液の密度を、目盛り付きピペット及びスケールによって測定した。
【0110】
バクテリオファージの選択:
【0111】
ΦX174及び対応する宿主細菌大腸菌C株(E.Coli C)を、ATCCから購入した(それぞれ、ATCCカタログ番号:13706-B1及び13706)。ΦX174の濃度を、問題の流体及び宿主細菌大腸菌C株をトリプシン大豆寒天プレート上にプレーティング寒天(すなわち、0.7%のアガロースを含むトリプシン大豆ブロス)で共培養することを伴う、標準的なプラーク形成アッセイ法を利用して定量化した。バクテリオファージΦX174を、その生得的特性のいくつかによりこの実験の適切なトレーサとして選択した。ΦX174は、適切な移動相条件で懸濁している間に感染力が失われる可能性が低い比較的復元力のあるバクテリオファージであるが、0.1MのNaOH及び妥当な接触時間で容易に消毒することもできる。このバクテリオファージの表面特性は、他のウイルスと比較して比較的不活性である。このバクテリオファージでの以前の経験は、正電気を帯びた疎水性クロマトグラフィー樹脂とマルチモーダルクロマトグラフィー樹脂の両方に対して、他のウイルスモデルと比較して著しく少ない表面吸着を示していた。したがって、ウイルスが、低イオン強度のわずかに塩基性(すなわち、150mMのNaClを含むpH7.5)の溶液中で、3D印刷されたプラスチックに非特異的に吸着する確率は低かった。ΦX174のプラーク形態も有利であった。ΦX174のプラーク形成単位(pfu)は、識別が容易な非常に大きなブルズアイ型プラークを生成する。
【0112】
予備作業
【0113】
実験プロトコルの有効性を決定するために、いくつかの予備実験を行った。最初に、ΦX174のパルス注入を最高のディーン数(すなわち、高流量及び低粘度)でJIBに導入し、これはディーン渦に起因する最もカオス的な流れに対応する。次いで、JIBの排出物を収集及び滴定し、これにより注入のマスバランスを決定することができた。結果は、回収されたバクテリオファージ力価が、滴定アッセイと関連付けられる典型的な誤差の範囲内(すなわち、(+/-)0.5log)であることを示した。出口弁に残っているデッドボリュームをサンプリングすると、約300pfu/mLが存続した。次いで、0.1MのNaOH、15分以上の接触時間で注入バルブ、JIB、及び出口弁を完全に消毒するための消毒プログラムを作成した。消毒サイクル後、出口ラインに感染性粒子は残っていなかった。
【0114】
最小滞留時間(ΦX174)の決定:
【0115】
0.32cm及び0.64cmのi.d.の3D印刷されたJIBを、GE Healthcare(スウェーデン、ウプサラ)製のAkta Explorer 100を使用して試験した。実験の準備のために、移動相の30mLアリコートを取り、添加のために確保した。次いで、アリコートを、106.5pfu/mLの移動相濃度を目標として0.06%(v/v)で添加した。実験的注入の流体特性がΦX174添加によって変更されないようにするために、添加をかなり低いレベルで意図的に添加した。次いで、シリンジを使用して、添加サンプル 25mLをGE Healthcare(スウェーデン、ウプサラ)製の容量50mLのSuperloopに充填し、残りのサンプルを、有意なΦX174の死滅が、JIBを流れることとは無関係に移動相条件の関数として発生したかどうかを判定するための保持サンプルとしてベンチに保持した。ΦX174は、滴定アッセイの典型的な誤差内(すなわち、(+/-)0.5log)でオフターゲットの移動相濃度に遭遇したことはなかった。最後に、空のフラクション収集容器を計量して風袋重量を決定した。
【0116】
実験を開始するために、Aktaは、「注入」位置にある注入バルブを通して移動相をSuperloopに押し込み始め、ΦX174添加緩衝液を全反応器容積の3%にわたってJIBに導入し、流れの排出を大容量容器に向けた。次いで、注入バルブを「充填」位置に切り替えて、Superloopを通る移動相の流れを停止し、JIBに直接向かうように向きを変更して注入を洗い流し、排出物は同じ大容量容器に残した。所定時間の後、出口弁を切り替えて流れを大容量容器から小容量容器に導いた。その後、出口弁をさらに2回切り替えて、さらに2つのフラクションを生成した。3つの小さいフラクション及び1つの大きいフラクションの時間及び体積を、修正されたピーク分析を使用してTmin3、4、及び5σによって決定した。3つの小体積分率の出口流路は、GE Healthcare(スウェーデン、ウプサラ)製の1mm毛細PEEK管であった。実験を完了すると、次に3つの小型容器及び1つの大型容器を秤量した。ウイルスを採取するために、次いで、毛細管のデッドボリュームを滅菌管内で約100uLの試料体積になるように排出した。毛細管に残った試料は、そのフラクションの最後の液滴であり、瞬間的グラブサンプルであると考えることができる。次いで、このグラブサンプルの全体積を希釈せずに滴定した。したがって、ICH Q5Aに概説されている「低濃度でのウイルスの検出の確率」の問題は該当しない。
【0117】
すべてのAkta実験後の活動が完了した後、残りの添加移動相をSuperloopから排出し、Superloopをオフラインにした。次いで、注入ループ位置をPEEK毛細管と交換し、上記の消毒ステップを完了し、その後TSBでクエンチした。
【0118】
結果:
【0119】
バクテリオファージを用いた予備的結果により、上記の計算モデルが最小滞留時間(Tmin)の非常に控えめな推定値を与えることが分かった。これを説明するために、生のピークを修正した。
図18に、色素パルス注入(すなわち、生トレース、破線)がJIBを出るときにAktaの検出器から生成されたピークと修正されたピーク(すなわち、修正トレース、実線)との比較を示す。修正トレースは、ピークの最大吸光度を決定し、左側のトレースをピーク最大値の右側にミラーリングすることによって作成した。
図19に、元の生トレース対修正バージョンの関数として計算されたTmin(5σ)を示す。
【0120】
図20に、TSBを移動相として利用した低粘度バクテリオファージ実験の結果を示す。これらの実験のためのサンプリング戦略では、Tmin3、4、及び5σでのJIBの排出時に瞬間的グラブサンプルを収集しようとした。試験した3つの流量について、4σ及び5σはウイルスの検査で陰性と出、3σはウイルスの検査で陽性と出た。式から、粘度を増加させるとJIB効率が低下することが分かる。4σ及び5σは低粘度のウイルスに対して陰性であったので、これが低下した有効性を捕捉するのに十分な体積測定空間であろうと仮定して、同じ体積測定サンプリング戦略を利用した。ブドウ糖の添加により粘度が増加すると、ウイルスの破過がより高粘度でより早く発生した。しかしながら、
図21に示されるように、75mL/minのデータ点は(-)ウイルス結果を欠いている。これは、反応器又は計算の有効性ではなく、サンプリング戦略によるものである。
【0121】
実施例3
反応器を5倍にスケール変更するためのパラメータの決定
【0122】
一例では、ユーザは、
図1Cの反応器を使用して、プロセスの目標滞留時間分布を与えるために(例えば、
図1Dに示されるように)直列に接続された装置の数を計算することができる。加えて、ユーザは、完了した作業を活用して、より大規模な反応器の寸法を計算することもできる。この実験では、
図2Aに示されるシステムにおける
図1Cに示される反応器の流路の内径(i.d.)及び曲率半径を決定した。
図2Aに示されるシステムにおける
図1Cの反応器の流路のi.d.を0.635cmと決定し、曲率半径を0.6825cmと決定した。これらのパラメータを得るために、
図1Cに示される反応器にトレーサをパルス注入し、様々な流量で洗い流した。これらの実験の各々の結果は、
図2B~
図2Cに示されている。パルス注入実験を完了すると、得られたピークを、
図2Dに示されるようにガウス曲線を排出ピークに当てはめることによって分析し、続いてこの適合によって
【数28】
を計算した。次いで、
図2Eに示されるように(以下の式1を使用して)値
【数29】
をHETPに変換し、(以下の式2を使用して)ディーン数に対してプロットした。
【0123】
【0124】
図2Eに示されるデータセットに最適線を適用し、以下の式3で表した。
【数31】
、
式中、a、b、c、及びdは、すべてのディーン数の経験的データ適合に基づくものである。
次いで、式1及び式3を組み合わせ、並べ替えて以下の式4を作成した。
【数32】
【0125】
産物の99.99997%が60分間(すなわち、T
min)以上の間反応器内に留まる必要があり、これにより、(以下の式5において)n=5になる。加えて、産物の99.865%が90分(すなわち、T
max)以下で反応器から出る必要であり、これにより、(以下の式6において)m=3になる。反応器内で許容される最大動粘度は1.5*10
-6m
2/sであった。この粘度及び前述の反応器寸法に基づいて、100以上のディーン数の要件を満たすためには、反応器内の流量は65mL/min以上でなければならず、任意のプロセス制約条件により、流量は95mL/min以下でなければならない。
【数33】
【0126】
以上の制約条件から、制約条件を満たす解の軌跡を生成することができる。以下の表に示されるように、4つの流量を解いた。目標流量、反応器設計(すなわち、流路の内径及び曲率半径)、並びに最大動粘度により、最悪の場合のディーン数を計算する。次いで、出力されたディーン数を式3に代入し、その値を式4に代入した。推測及び確認の方法により、異なる反応器容積を段階的な式のカスケードによって明らかにした。次いで、提案された反応器容積を流量で除算して平均滞留時間(以下の式7を参照)を計算し、流路の内径の断面積で除算して経路長を得た。経路長及び平均滞留時間も式4に代入して
【数34】
の値を得た。次いで、式5及び6を使用して、T
min及びT
maxを求めた。
【数35】
【0127】
表1に、60分のT
min又は90分のT
maxの関数としての流量ごとの最大及び最小反応器容積の解を示す。これらの反応器仕様は
図22に示されており、
図5Cと同様である。これらの2つのラインの間で選択された任意の流量及び反応器容積が、選択された目標滞留時間分布(すなわち、T
min及びT
max)を満たすことになる。
図22と
図5Cとの違いは、2つの図で使用されている粘度項である。
図22のより高い粘度は、反応器の有効性を低下させ、より速い流量及びより大きい容積の反応器に適する。表2に、反応器動作仕様の決定を示す。流量を低く保ちたいと望んで選択の流量を比較的任意に選択した。流量の選択により、反応器容積を、最大反応器容積と最小反応器容積との中間点であるように選択した。
【表7】
【表8】
【0128】
加えて、内径、曲率半径、流量、及び経路長に関する反応器設計仕様を、大規模運転を満足するように決定した。この例では、ユーザは、プロセス体積流量(すなわち、350mL/min)の5倍で動作する寸法を必要とし、内径と曲率半径との間の比を一定に保つことも求めた。
図2Eに示されるデータセットを、データセットを生成するために使用された反応器の内径(すなわち、0.635cm)で除算して、
図10Cと同様の図を得た。次いで、データセットに最適線を適用した。表3に、新しい反応器の詳細についての既知数及び未知数を示す。表2から目標流量及びのT
Aveを用いて、反応器容積を式7から計算することができる。上記の制約条件から、制約条件を満たす解の軌跡を生成した。以下の表4に示され、
図23にプロットされているように、3つの内径について解かれる。このプロット線に沿って選択された任意の内径は、適切な滞留時間分布を供給することができる。内径の最終的な選択は、内径が小さくなり、経路長が長くなると圧力が上昇する反応器内の滞留時間分布と圧力降下の妥協点に基づいて決定される。固定流量及び平均滞留時間により反応器容積が固定された(式7)。可変内径を反応器容積で除算すると、反応器の経路長が返された。次いで、出力されたディーン数を以下の式8に代入し、内径と乗算してHETPが返った。経路長及び平均滞留時間も式4に代入して
【数36】
の値を得た。次いで、式5及び6を使用して、T
min及びT
maxを求めた。内径が増加するにつれて、ディーン数は減少し、これによりその後反応器効率が低下する。1.5~1.7cmの間で選択される任意の内径が、適切な滞留時間分布を提供する。
【数37】
【表9】
【表10】
【0129】
以上の説明を読めば、当業者は、本教示を様々な形態で実施できることを理解できよう。したがって、これらの教示は、特定の実施態様及びその実施例に関連して説明されているが、本教示の真の範囲は、それらに限定されるべきではない。本明細書の教示の範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正が行われ得る。
【0130】
本開示の範囲は広く解釈されるべきである。本開示は、本明細書に開示された装置、活動、及び機械的動作を達成するための均等物、手段、システム、及び方法を開示することを意図されている。開示の各装置、物品、方法、手段、機械的要素又は機構について、本開示はその開示においても包含し、本明細書に開示された多くの態様、機構及び装置を実施するための均等物、手段、システム及び方法を教示することが意図されている。加えて、本開示は、コーティング並びにその多くの態様、特徴、及び要素を考察する。そのような装置は、その使用及び動作において動的であり得、本開示は、装置及び/又は製造品の使用の均等物、手段、システム、及び方法、並びに本明細書に開示される動作及び機能の説明及び趣旨と一致するその多くの態様を包含することが意図されている。本出願の特許請求の範囲も同様に広く解釈されるべきである。
【0131】
本発明の多くの実施態様の本明細書における説明は、本質的に単なる例示であり、よって、本発明の主旨から逸脱しない変形は、本発明の範囲内であることが意図されている。そのような変形は、本発明の趣旨及び範囲からの逸脱と見なされるべきではない。