(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】充填針モジュール及び充填装置
(51)【国際特許分類】
B67C 3/02 20060101AFI20230303BHJP
【FI】
B67C3/02 Z
(21)【出願番号】P 2022099365
(22)【出願日】2022-06-21
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2021176877
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315001682
【氏名又は名称】岩井ファルマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】金城 潤
(72)【発明者】
【氏名】中川 明郎
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-161347(JP,A)
【文献】特開2011-173648(JP,A)
【文献】特開2005-247325(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04219082(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が供給される液体通路を有し先端部の開口から液体を容器に充填する充填針を含む充填針モジュールであって、
前記充填針の周囲に設けられて、所定の気体を前記充填針に対向して配置された前記容器側に向かって流出させるための気体通路
と、
前記充填針が内部に保持される筒状の通路形成部材と、を備え、
前記充填針の先端部の先端面は、前記通路形成部材の先端面よりも下方に位置し、
前記充填針の先端部には、前記開口に向けて外径及び内径が狭くなった小径部が形成され、
前記気体通路は、前記通路形成部材と前記充填針とによって形成され、
前記通路形成部材と前記小径部とによって形成された前記気体通路の一部である幅広部の流路面積は、前記通路形成部材と前記充填針のうち前記小径部以外の部分とによって形成された前記気体通路の一部の流路面積よりも広い
ことを特徴とする充填針モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の充填針モジュールであって、
前記気体通路の前記
幅広部には、前記気体を整流するための整流部材が設けられていることを特徴とする充填針モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の充填針モジュールであって、
前記液体通路に繋がる供給通路と、
前記供給通路を開閉するための開閉バルブと、を有し、
前記供給通路の前記開閉バルブよりも前記液体通路側は、前記液体通路の流路面積よりも狭くなっていることを特徴とする充填針モジュール。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか一項に記載の充填針モジュールと、
前記気体通路に接続されて当該気体通路に所定の
前記気体を供給する気体供給手段と、を備えることを特徴とする充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を容器に充填する充填針を含む充填針モジュール及びそれを備える充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、薬液等の液体を容器に充填する充填装置として、液体が貯留される貯留タンクから供給される液体を充填針(充填ノズル)によって各容器に充填するものが知られている。具体例としては、アンプル等の容器に液体を充填する際、充填機構のノズル(充填針)を容器内に挿入した状態で、ノズルから容器内に液体を供給するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、薬液等の液体を容器に充填する際には、液体への異物混入や汚染、いわゆるコンタミネーション(以下、「コンタミ」という)を抑制する必要がある。コンタミの要因は様々であるが、その一つとして、容器内に液体を供給する際に、充填針から流出する液体が、周囲の気体(以下、環境気体という)と接触することが挙げられる。
【0005】
特許文献1に記載のように、充填針(ノズル)を容器内に挿入した状態で容器内に液体を供給することで液体と環境気体との接触を少なくして、容器に充填された液体におけるコンタミを抑えることはできる。
【0006】
しかしながら、液体のコンタミを完全に防止することは難しく、充填針や充填装置のさらなる改良が望まれている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、容器に充填された液体におけるコンタミの抑制を図ることができる充填針モジュール及び充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、液体が供給される液体通路を有し先端部の開口から液体を容器に充填する充填針を含む充填針モジュールであって、前記充填針の周囲に設けられて、所定の気体を前記充填針に対向して配置された前記容器側に向かって流出させるための気体通路と、前記充填針が内部に保持される筒状の通路形成部材と、を備え、前記充填針の先端部の先端面は、前記通路形成部材の先端面よりも下方に位置し、前記充填針の先端部には、前記開口に向けて外径及び内径が狭くなった小径部が形成され、前記気体通路は、前記通路形成部材と前記充填針とによって形成され、前記通路形成部材と前記小径部とによって形成された前記気体通路の一部である幅広部の流路面積は、前記通路形成部材と前記充填針のうち前記小径部以外の部分とによって形成された前記気体通路の一部の流路面積よりも広いことを特徴とする充填針モジュールにある。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様の充填針モジュールであって、前記気体通路の前記幅広部には、前記気体を整流するための整流部材が設けられていることを特徴とする充填針モジュールにある。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1の態様の充填針モジュールであって、前記液体通路に繋がる供給通路と、前記供給通路を開閉するための開閉バルブと、を有し、前記供給通路の前記開閉バルブよりも前記液体通路側は、前記液体通路の流路面積よりも狭くなっていることを特徴とする充填針モジュールにある。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1~3の何れか一つの態様の充填針モジュールと、前記気体通路に接続されて当該気体通路に所定の前記気体を供給する気体供給手段と、を備えることを特徴とする充填装置にある。
【発明の効果】
【0015】
かかる本発明によれば、充填針の先端部の周囲を気体通路を介して流出する不活性気体等によってシールしながら容器に液体を充填することで、環境気体等に起因する液体のコンタミを抑制することができる。
【0016】
またこのように不活性気体等によってシールすることで、充填装置を設置するクリーンルームのクラス(清浄度)を比較的低くすることができ、コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態1に係る充填装置を含む液体処理システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る充填装置の概略構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る充填針モジュールの概略構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る充填針モジュールの横断面図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係る充填針モジュールの拡大断面図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係る充填方法の一例を説明する図である。
【
図7】本発明の実施形態1に係る充填方法の一例を説明する図である。
【
図8】充填針モジュールで形成されるエアカーテンを説明する図である。
【
図9】本発明の実施形態1に係る充填針モジュールの拡大断面図である。
【
図10】本発明の実施形態1に係る充填針モジュールの変形例の概略構成を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態1に係る充填針モジュールの変形例を示す横断面図である。
【
図12】本発明の実施形態1に係る充填針モジュールの変形例を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態2に係る充填針モジュールの概略構成を示す図である。
【
図14】本発明の実施形態2に係る充填針モジュールの横断面図である。
【
図15】本発明の実施形態3に係る充填針モジュールの概略構成を示す図である。
【
図16】本発明の実施形態3に係る充填針モジュールの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る充填装置を含む液体処理システムの概略構成を示す図である。液体処理システムIは、液体の一例として液状の医薬品(以下、薬液)を製造するプラントの一部であり、充填装置1を含んで構成されている。
【0019】
具体的には、液体処理システムIは、調合タンク2と、殺菌器3と、貯留タンク4、フィルター装置5及び充填ユニット(充填機)6を含む充填装置1と、これらの機器類を接続する配管からなる製造ラインLと、を備えて構成されている。
【0020】
調合タンク2は、薬液の原料や水などの溶媒を調合して薬液を得るためのタンクである。殺菌器3は、熱処理やフィルターによるろ過処理などによって薬液を殺菌するための装置である。
【0021】
貯留タンク4、フィルター装置5及び充填ユニット6を含む充填装置1は、調合した薬液を容器に充填する装置であるが、詳細な構成は後述する。
【0022】
製造ラインLは、薬液や洗浄用の流体が流通する配管であり、調合タンク2と、殺菌器3と、充填装置1の貯留タンク4と、フィルター装置5と、充填ユニット6とを順次接続する。つまり調合タンク2内の薬液は、製造ラインLによって、殺菌器3、貯留タンク4及びフィルター装置5を介して充填ユニット6に流通するようになっている。
【0023】
また液体処理システムIは、第1洗浄ユニット71及び第2洗浄ユニット72を備えている。なおこれら第1洗浄ユニット71及び第2洗浄ユニット72とをまとめて洗浄ユニット7と称する。
【0024】
この洗浄ユニット7(71,72)は、液体処理システムIを定置洗浄(CIP)する洗浄装置及び定置滅菌(SIP)をするための滅菌装置である。図示は省略するが、洗浄ユニット7は、定置洗浄に用いる洗浄用液体の供給源、定置滅菌に用いる滅菌用流体の供給源、これらの洗浄用液体及び滅菌用流体を圧送するための装置(ポンプやガスによる圧送を行う装置)、定置洗浄及び定置滅菌を終えたあとの洗浄用液体及び滅菌用流体を廃棄又は再利用するための処理装置、洗浄用液体及び滅菌用流体の流れを制御するためのバルブ、送液を開始・停止させるために上記の各種装置を制御する制御装置等から構成されている。
【0025】
本実施形態では、第1洗浄ユニット71は、調合タンク2、殺菌器3及び充填装置1を構成する貯留タンク4を、定置洗浄及び定置滅菌するために用いられる。具体的には、第1洗浄ユニット71は、洗浄用液体を、第1洗浄ラインAを介して調合タンク2、殺菌器3及び貯留タンク4に送液する。そして、第1洗浄ユニット71は、貯留タンク4から排出される洗浄用液体を第1洗浄ラインBを介して回収する。第1洗浄ユニット71は、このような定置洗浄後に、洗浄用液体と同様にして滅菌用流体を供給及び回収することで定置滅菌を行う。
【0026】
第2洗浄ユニット72は、フィルター装置5及び充填ユニット6を定置洗浄及び定置滅菌するために用いられる。具体的には、第2洗浄ユニット72は、洗浄用液体を、第2洗浄ラインCを介してフィルター装置5、充填ユニット6に送液する。そして、第2洗浄ユニット72は、充填ユニット6から排出される洗浄用液体を第2洗浄ラインDを介して回収する。第2洗浄ユニット72は、そのような定置洗浄後に、洗浄用液体と同様にして滅菌用流体を供給及び回収することで定置滅菌を行う。
【0027】
なお、洗浄用液体は、水に苛性ソーダ等のアルカリ性薬剤を添加したもの、水に酸性薬剤を添加したもの、界面活性剤を含む水、またはそれらの薬剤を含まない水などである。もちろん、これらは併用してもよい。滅菌用流体は、精製水などを加熱して得られた温水又は蒸気である。
【0028】
上述した液体処理システムIの構成は一例であり、液体処理システムIはこの構成に限定されない。例えば、第1洗浄ユニット71、第2洗浄ユニット72は、定置洗浄、定置滅菌を行う対象ごとに設ける必要はない。また液体処理システムIは、上記以外の機器類を含んで構成されていてもよい。また、薬液を製造する製造ラインLの構成についても上述した構成に限定されない。
【0029】
次に液体処理システムIが備える本実施形態に係る充填装置1の構成について説明する。
図2は、本発明の実施形態1に係る充填装置の概略構成図である。なお
図2では、洗浄ユニット及び洗浄ラインの図示は省略する。
【0030】
図2に示すように、本実施形態に係る充填装置1は、例えば、バイヤル等の容器100に薬液を充填するための装置であり、上述のように貯留タンク4と、フィルター装置5と、充填ユニット6と、を備えている。貯留タンク4と、充填ユニット6とは、製造ラインLを構成する導入管(導入流路)8によって接続されている。フィルター装置5は、薬液の除菌等を行うための装置であり、導入管8の充填ユニット6近傍に設けられている。
【0031】
そして本実施形態に係る充填装置1において、充填ユニット6及びフィルター装置5はクリーンルーム(防塵室)CR内に設置され、貯留タンク4はクリーンルームCRの外部に設置されている。充填装置1をこのような構成とすることで、クリーンルームCR内に設置する機器類を少なく抑えることができる。それに伴い、クリーンルームCRを小型化することができるため、維持管理費等のコストの削減を図ることができる。さらには充填装置1の保守性を高めることができる。
【0032】
より詳しくは、クリーンルームCRには、無菌エアが一方向(例えば、水平方向)に流れるラミナーフローが形成されたラミナーフローブース(無菌エリア)が設けられ、充填ユニット6等の機器類は、このラミナーフローブースに設置されている。クリーンルームCR内に設置される機器類が少なく抑えられていることで、ラミナーフローブースの小型化を図ることができる。これにより、コストの削減を図ることができる。
【0033】
またクリーンルームCR内に設置される機器類が少なく抑えられていることで、無菌管理を行うにあたり、埃や微粒子を排除してクリーンルームCR内、特にラミナーフローブース内の清掃度を高め易くなる。さらに機器類が少ないことで、配管の継ぎ目も少なくなるため、液漏れリスクが低下する。これにより、クリーンルームCR内の汚染リスク、つまり容器100に充填される薬液の汚染リスク、が低下する。
【0034】
また機器類が少ないことで、クリーンルームCR内でのメンテナンス作業、特にラミナーフローブースにおけるメンテナンス作業が少なくなる。クリーンルームCR内で作業を行う場合、作業者はその都度、更衣が必要となるが、クリーンルームCR内でのメンテナンス作業が少なくなることで、更衣回数も少なくて済む。したがって、メンテナンス作業者の負担の軽減を図ることもできる。
【0035】
また充填装置1は、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)等を含んで構成される制御装置(制御部)10を備えている。この制御装置10によって、充填装置1を構成する各種機器が制御されている。
【0036】
貯留タンク4は、上述のように調合タンク2によって調合され、殺菌器3によって殺菌された薬液が貯留される比較的大型のタンクであり、例えば、10~6000リットル程度のものが用いられる。勿論、貯留タンク4の容量は、特に限定されるものではなく、例えば、6000リットルよりも大きい容量であってもよい。なお各容器100に充填する薬液の量は、適宜調整することができるが、例えば、10~500ミリリットル程度である。つまり、本願発明に係る充填装置1は、上記容量の容器100に対して薬液を充填するのに適したものであり、特に、数十ミリリットル程度の小容量の容器100に薬液を充填するのに好適なものである。
【0037】
また貯留タンク4には、内部の圧力を調整するための圧力調整手段が設けられている。本実施形態では、圧力調整手段としてのガス供給装置9が貯留タンク4に接続されている。このガス供給装置9によって所定のガス(例えば、圧縮空気等)が、貯留タンク4内に適宜供給されることで、貯留タンク4の内圧が略一定の値となるように調整される。
【0038】
充填ユニット6は、貯留タンク4からフィルター装置5を介して供給された薬液を容器100に充填するためのものであり、充填針モジュール61を含む複数のノズル部62を備えている。詳しくは後述するが、充填針モジュール61は、薬液が供給される充填針611を含んで構成されている。すなわち充填ユニット6は、複数個(n個)の充填針611を備えており、これらの充填針611から同時に複数個(n個)の容器100に薬液を充填できるように構成されている。本実施形態では、複数個の充填針モジュール61が一列に配置されている。勿論、複数個の充填針モジュール61の配置は特に限定されるものではない。
【0039】
また充填装置1は、図示しない搬送装置(搬送手段)を備えており、液体が充填される容器100は、この搬送装置によって連続的に搬送され、充填ユニット6の各充填針モジュール61に対応する位置に搬入される。また薬液が充填された各容器100は、搬送装置によって充填針モジュール61に対応する位置から充填ユニット6の外部に搬出される。搬送装置の構成は特に限定されず、既存の構成を採用すればよいため、詳細な説明は省略する。
【0040】
各ノズル部62は、充填針モジュール61を備えると共に、一端側が充填針モジュール61の充填針611に接続される供給管(供給流路)63と、供給管63を開閉するための開閉バルブ64と、供給管63の開閉バルブ64よりも上流側に設けられて供給管63を通過する薬液の流量に応じてパルス信号を出力する質量流量計65と、を備える。
【0041】
また各ノズル部62を構成する供給管63の他端側は、所定間隔で分配管(分配通路)66に接続されている。つまり各充填針モジュール61の充填針611は、供給管63を介して分配管66に接続されている。この分配管66は、導入管8よりも広い流路面積(断面積)で形成され、導入管8を介して貯留タンク4に接続され、貯留タンク4から供給された薬液を各ノズル部62に分配する役割を果たす。つまり分配管66には、各ノズル部62に供給される量の薬液が一時的に貯留される。
【0042】
ここで、分配管66内の圧力は、各充填針611から容器100に薬液を充填する際に多少の変動が生じるものの、貯留タンク4の薬液が導入管8を介して分配管66に適宜供給されることで、常に略一定の値となる。すなわち分配管66内の圧力が常に略一定となるように、貯留タンク4の内圧が、ガス供給装置9によって適宜調整されている。
【0043】
本実施形態では、分配管66に、その内圧を検出するための圧力センサ(圧力検出手段)67が設けられている。上述したガス供給装置9は、この圧力センサ67の検出結果に基づいて作動する。すなわち圧力センサ67の検出結果は制御装置10に送られ、制御装置10がこの検出結果に基づいてガス供給装置9を適宜作動させる。これにより、分配管66内の圧力が略一定の値となるように、貯留タンク4内の圧力が調整される。
【0044】
なお分配管66の大きさ(容積)は、各ノズル部62に供給される薬液を一時的に貯留できる大きさ以上であればよいが、分配管66に接続される全てのノズル部62の容積の合計よりも十分に大きいことが望ましい。これにより分配管66内の圧力を略一定の値に維持し易くなる。
【0045】
また本実施形態では、ノズル部62において質量流量計65が開閉バルブ64よりも上流側に配置されているが、ノズル部62における開閉バルブ64と質量流量計65との配置は、特に限定されるものではない。
【0046】
次に充填針モジュール61の構成について、より詳細に説明する。
図3は、本発明の実施形態1に係る充填針モジュールの概略構成図である。
図4は、
図3のA-A線に対応する充填針モジュールの横断面図であり、
図5は充填針モジュールの先端部の拡大図である。
【0047】
図3に示すように、充填針モジュール61は、充填針611を備えると共に、この充填針611の周囲に、所定の気体、本実施形態では窒素、アルゴン等の不活性気体が供給される気体通路612を備えている。気体通路612は、充填針611の先端部側が開口しており、気体通路612に供給された不活性気体は、この開口から外部に流出する。
【0048】
そして充填針モジュール61は、薬液を容器100に充填する際、充填針611の先端部の周囲を気体通路612から流出する不活性気体によって実質的にシールできるように構成されている。
【0049】
具体的には、充填針モジュール61は、液体通路613が形成された充填針611と、この充填針611の先端側(下端側)の一部が内部に収容される中空の通路形成部材614と、を備えている。
【0050】
通路形成部材614は、略筒状の第1部材615と、この第1部材615の上端部に固定される第2部材616と、を備えている。第1部材615は、充填針611の外径よりも大きい内径を有している。充填針611は、第1部材615の内面との間に気体通路612となる隙間を確保した状態で、第1部材615内に保持されている。気体通路612は、充填針611と第1部材615とで形成されており、気体通路612の上端側は第2部材616によって塞がれている。
【0051】
第2部材616には、充填針611が挿通される挿通孔616aが形成されている。充填針611は、第2部材616の挿通孔616aを介して通路形成部材614(第1部材615)の外側まで延在しており、挿通孔616aの内面に密着した状態で通路形成部材614(第2部材616)に固定されている。
【0052】
このように気体通路612は、充填針611と通路形成部材614(第1部材615,第2部材616)とで形成されており、
図4に示すように、充填針611の周囲に全周に亘って連続して設けられている。
【0053】
充填装置1は、各充填針モジュール61の気体通路612に接続されて、気体通路612に不活性気体を供給する送気装置(送気手段)20を備えている(
図2参照)。送気装置20の構成は、特に限定されないが、不活性気体が貯留される貯留タンク(例えば、ガスボンベ)や、不活性気体を送出するための動力源(例えば、電動ポンプ)等を備えて構成されている。
【0054】
本実施形態では、通路形成部材614を構成する第1部材615の上部には、その径方向に延びる延設部617が設けられている。延設部617には、略円筒形状を有し、気体通路612に繋がる導入通路618が形成されている。送気装置20は、図示しないチューブ等によって第1部材615の延設部617に接続されている。すなわち送気装置20は、導入通路618を介して気体通路612に接続されている。
【0055】
なお送気装置20と各充填針モジュール61との間に、開閉弁を設け、制御装置10によってこれら開閉弁を制御することで、各充填針モジュール61への不活性気体の供給量を個別に調整できるようにしてもよい。
【0056】
ここで、
図5に示すように、液体通路613の先端部は、気体通路612の先端部よりも下方側に位置している。本実施形態では、充填針611の先端面(下端面)611aは、通路形成部材614(第1部材615)の先端面614aよりも下方側に位置している。言い換えれば、通路形成部材614の先端面614aは、充填針611の先端面611aよりも上方側に位置している。つまり充填針611が通路形成部材614よりも下方に突出して設けられている。これにより、充填針モジュール61は、気体通路612を通過した不活性気体が充填針611の先端面よりも上方側から外部に流出するように構成されている。
【0057】
また気体通路612は、充填針611の先端部側の開口部分の流路面積が、気体通路612の他の部分よりも広くなっている。すなわち気体通路612の先端部には、気体通路612の他の部分よりも流路幅が広い幅広部612aが形成されている。ここでいう気体通路612の流路幅とは、充填針611と通路形成部材614(第1部材615)との隙間の長さである。
【0058】
本実施形態では、充填針611の先端部が、充填針611の他の部分よりも細く形成されていることで、気体通路612の幅広部612aが形成されている。より詳しくは、筒状の第1部材615は、全体に亘って略同一の内径で形成されている。一方、充填針611の先端部には、充填針611の他の部分よりも外径が小さい小径部611bが形成されている。結果として、気体通路612の先端部は、気体通路612の他の部分よりも流路幅が広い幅広部612aとなっている。
【0059】
また、充填針611の小径部611bにおいては、その内径も充填針611の他の部分よりも小さくなっている。つまり充填針611の小径部611bにおいては、液体通路613の流路面積が充填針611の他の部分よりも狭くなっている。
【0060】
そして本実施形態に係る充填装置1では、このような構成の充填ユニット6を含む各機器類が制御装置10によって適宜制御され、各容器100に所定量の薬液が充填される。具体的には、制御装置10は、容器100に所定量の薬液が充填されるように、質量流量計65から出力されるパルス信号に基づいて各開閉バルブ64の開閉動作を制御するバルブ制御手段11を備えている。
【0061】
また充填装置1では、各容器100に所定量の薬液を充填する際、送気装置20を制御して気体通路612を介して外部に流出する不活性気体の流量を適宜調整する。具体的には、制御装置10が、各容器100に薬液を充填する際に、送気装置20を制御して気体通路612に供給する不活性気体の流量を調整する流量制御手段12を備えている(
図2参照)。
【0062】
なお各ノズル部62の供給管63は、例えば、ゴム等の可撓性を有する材料からなるチューブで形成されている。開閉バルブ64は、例えば、供給管63の径方向に移動可能な押圧部材を備え、押圧部材で供給管63が押圧されていない状態では供給管63が開放されており、開閉バルブ64を閉動作させて供給管63を押圧部材で押圧することで供給管63が閉鎖されるように構成されている。勿論、開閉バルブ64の構成は、上記のものに限定されない。また質量流量計65の構成は特に限定されず、既存のものを採用すればよいため、詳細な説明は省略する。
【0063】
このような構成の複数のノズル部62を含む充填ユニット6を備える充填装置1では、バルブ制御手段11が、次のように開閉バルブ64を開閉動作させることで、各容器100に薬液を充填し、その際、流量制御手段12が、気体通路612を介して外部に流出する不活性気体の流量を調整する。これにより、各容器100に対して薬液を適切に充填することができる。
【0064】
図6及び
図7は、本実施形態に係る容器への薬液の充填方法を説明する図であり、図中、薬液及び不活性気体の流れを矢印で示している。
【0065】
まず
図6(a)に示すように、容器100を所定位置に配置する。具体的には、開閉バルブ64が閉鎖された状態で、搬送装置によって容器100を充填針モジュール61に対応する位置まで搬入し、容器100を上昇或いは充填針611を下降させ、充填針611と容器100の開口とを近づける。ただし、充填針611は、容器100よりも上方となるようにする。つまり充填針611と容器100とを、充填針611が容器100内に挿入されない程度に近づける。
【0066】
この状態で、送気装置20を作動させ、
図6(b)に示すように、窒素等の不活性気体を気体通路612を介して外部に流出させる。これにより、充填針611の先端部の周囲、つまり容器100の開口の周囲が、この不活性気体によって実質的にシール(封止)される。
【0067】
その後、開閉バルブ64を開動作させることで、分配管66からノズル部62の供給管63に薬液が供給されて、
図7(a)に示すように、各充填針611の液体通路613から容器100内に薬液が充填される。
【0068】
このように充填針モジュール61の気体通路612を介して窒素等の不活性気体が流出している状態で、充填針611によって薬液を容器100に充填することで、充填針611の周囲の環境気体と薬液との接触を抑制することができる。すなわち本実施形態の充填装置では、気体通路612から不活性気体を流出させて、充填針611の周囲に不活性気体の仕切り(いわゆるエアカーテン)を形成することで、容器100に充填する薬液が環境気体と接触することを抑制することができる。したがって、薬液のコンタミを抑制しつつ、薬液を容器100に適切に充填することができる。
【0069】
特に、本発明では、気体通路612の先端部が幅広部612aとなっていることで、不活性気体の仕切り(エアカーテン)をより良好に形成することができる。具体的には、幅広部612aが形成されていることで、
図8に模式的に示すように、気体通路612から流出する不活性気体で形成されるエアカーテンCuの幅W1は比較的厚くなる。また、幅広部612aの流路幅が他の部分よりも広くなっているため、気体通路612を流通する不活性気体の流速は、幅広部612aにおいて低下する。つまり気体通路612から流出する不活性気体の流速は比較的遅くなる。その結果、気体通路612から流出した不活性気体の乱流等が抑制され、所定幅のエアカーテンCuがより良好に形成される。
【0070】
一方、充填針611の小径部611bにおいては、上述のように液体通路613の流路面積が充填針611の他の部分よりも狭くなっている。したがって、小径部611bが設けられていることで、充填針611から流出する薬液の直径が比較的小さくなる。また充填針611内の薬液の流速が小径部611bにおいて増加することにより、充填針611から流出する薬液の直進性等が向上する。
【0071】
これらの相乗効果により、充填針611から流出する薬液のコンタミをさらに抑制することができ、薬液をより適切に容器100に充填することができる。
【0072】
例えば、本実施形態のように、容器100に充填針611を挿入しない状態で薬液を容器100に充填する場合、薬液の流れによって周囲の環境気体が容器100内に引き込まれ易い。しかしながら、気体通路612を介して不活性気体が流出していることで、容器100内にはこの不活性気体が引き込まれることになり、環境気体の容器100内への流入は抑制される。なお気体通路612を介して外部に流出される気体は、窒素等の不活性気体であることが好ましいが、薬液のコンタミを抑制できる気体であれば、特に限定されない。
【0073】
さらには、気体通路612の開口部分が幅広部612aとなっていることで、上述のように薬液を容器100に適切に充填できると共に、気体通路612の洗浄作業や滅菌作業を行い易くなるという効果もある。
【0074】
充填針モジュール61は、所定タイミングで、洗浄用液体を用いた洗浄作業や滅菌用流体を用いた滅菌作業を行う必要がある。このような洗浄作業や滅菌作業は、充填針611に形成された液体通路613はもちろん、気体通路612についても適宜行う必要がある。そして、これらの作業を行う際、気体通路612の先端部が幅広部612aとなっていることで、つまり気体通路612の幅広部612aを除く大部分が幅広部612aよりも狭い流路幅で形成されていることで、比較的少量の洗浄用液体や滅菌用流体で各作業を実施することができる。
【0075】
ここで、幅広部612aの形状は、特に限定されず適宜設定されればよいが、次のような形状となっていることが好ましい。
図9に示すように、幅広部612aの流路幅W2は、気体通路612の他の部分の流路幅W3と同程度またはそれよりも広くなっていることが好ましい。これにより、気体通路612から流出する不活性気体の流速を十分に低下させることができる。
【0076】
また幅広部612aの長さL1は、充填針611の先端面611aから通路形成部材614(第1部材615)の先端面614aまでの長さL2と同程度またはそれよりも長いことが好ましい。これにより、不活性気体が気体通路612から充填針611の外周面に沿って流出され易くなり、エアカーテンCuがより良好に形成される(
図8参照)。
【0077】
また気体通路612の幅広部612aとその他の部分との境界部612bは、流路幅が徐々に増加するように形成されていることが好ましい。これにより、気体通路612内の不活性気体の流れがよりスムーズになり、気体通路612から不活性気体をより良好に流出させることができる。
【0078】
また、気体通路612を介して不活性気体を流出させることで、充填装置1が設置されているクリーンルームCRのクラス(清浄度)を比較的低くしても、液体のコンタミを十分に抑制することができ、コストの削減を図ることができる。
【0079】
さらに本実施形態では、充填針611の先端面611aが、通路形成部材614の先端面614aよりも下方側に位置しているため、気体通路612から流出する不活性気体によって、充填針611の先端部の周囲をより良好にシールすることができる。
【0080】
そして、所定期間だけ開閉バルブ64の開放状態を維持し、所定量の薬液がノズル部62に供給されると、開閉バルブ64を閉動作させる。これにより供給管63が閉鎖され、
図7(b)に示すように、所定量の薬液が容器100に充填された時点で充填針611への薬液の供給が停止される。つまり所定量の薬液が容器100に充填されるよりも若干前の時点で開閉バルブ64を閉動作させ、その後、充填針611内の薬液が容器100内に充填されることで、容器100内の薬液が所定量となるようにしている。
【0081】
ここで、開閉バルブ64が設けられている供給管63は、充填針611の液体通路613の内径よりも小さくなっている(
図3参照)。つまり供給管63の開閉バルブ64よりも液体通路613側は、液体通路613の流路面積よりも狭くなっている。これにより、開閉バルブ64を閉動作させた際、供給管63と充填針611との接続部において、薬液の流れを適切に停止させることができ、いわゆる液だれを抑制することができる。したがって、容器100に充填される薬液の量をより高精度に調整することができる。
【0082】
また本実施形態では開閉バルブ64を閉動作させた時点では、気体通路612からの不活性気体の流出は停止されておらず、
図7(b)に示すように容器100への薬液の供給が停止された後に、送気装置20を停止して気体通路612からの不活性気体の流出を停止させる。
【0083】
その後は、図示は省略するが、薬液が充填された容器100を下降又は充填針611を上昇させて充填針611を容器100から引き離した後、搬送装置によって容器100を充填ユニット6から搬出する。
【0084】
以上、本発明の実施形態1に係る充填装置1による容器100への薬液の充填手順の一例について説明したが、充填装置1による充填手順は、これに限定されるものではない。
【0085】
本実施形態では、気体通路612を介して不活性気体を流出させた後に、容器100への薬液の充填が開始されるようにしたが、例えば、気体通路612を介して不活性気体が流出するのと同時或いは若干前の時点で容器100への薬液の充填が開始されるようにしてもよい。
【0086】
また本実施形態では、容器100への薬液の充填が終了した後に、気体通路612からの不活性気体の流出が停止するようにしたが、例えば、容器100への薬液の充填が終了するのと同時或いは若干前の時点で、気体通路612からの不活性気体の流出を停止させるようにしてもよい。
【0087】
ところで、本実施形態に係る充填ユニット6は、上述のように気体通路612の先端部に形成された幅広部612aから不活性気体を流出させて、充填針611の周囲にエアカーテンCuを形成している。このため、気体通路612から流出する不活性気体の流れは層流であることが好ましい。しかしながら、気体通路612から流出する不活性気体の流れに乱流が生じることが考えられる。不活性気体に乱流が生じると、つまりエアカーテンCuの乱れが生じると、その影響を受けて充填針611から流出する薬液の流れにも乱れ(直進性が低下する等)が生じ、結果として、容器100に対して薬液を適切に充填できない虞がある。
【0088】
このため、気体通路612の開口部分を構成する幅広部612a内には、
図10及び
図11に示すように、不活性気体を整流するための整流部材80が設けられていることが好ましい。本実施形態に係る整流部材80は、いわゆる整流格子であり、任意の第1方向に沿って設けられる複数枚の第1仕切板81と、第1方向とは直交する第2方向に沿って設けられる複数枚の第2仕切板82とを有し、100メッシュ(#100)程度の網目状に形成されている。
【0089】
また幅広部612aにおける整流部材80の配置は、特に限定されないが、整流部材80は、第1部材615の先端面614a側に配置されていることが好ましい。さらに整流部材80の長さL3は、特に限定されず、比較的長く形成されていることが好ましい。本実施形態では、整流部材80の長さL3を幅広部612aの長さの半分程度としているが、整流部材80は、幅広部612aの全体に亘って設けられていてもよい。
【0090】
このような整流部材80が幅広部612aに設けられていることで、不活性気体の流れに乱流が生じるのを抑えることができる。すなわち、気体通路612から流出する不活性気体の流れを安定させて、不活性気体の流れの層流化を図ることができる。その結果、充填針611から流出する薬液の流れも安定するため、容器100に対して薬液を適切に充填できる。
【0091】
なお整流部材80の上記構造は、あくまで一例であり、不活性気体を整流することができる構造であれば特に限定されるものではない。
【0092】
また本実施形態では、充填針611の先端部に小径部611bが設けられていることで、気体通路612の先端部が幅広部612aとなっている構成を例示したが、幅広部612aの構成は、これに限定されるものではない。例えば、
図12に示すように、充填針611の先端部は充填針611の他の部分と略同一の外径とし、通路形成部材614(第1部材615)の先端部の外径を第1部材615の他の部分よりも大きくすることで、幅広部612aを形成するようにしてもよい。このような構成としても、充填針611から流出する薬液のコンタミをさらに抑制することができ、薬液を適切に容器100に充填することができる。
【0093】
(実施形態2)
図13は、実施形態2に係る充填針モジュールの概略構成を示す図であり、
図14は、
図13のC-C線に対応する充填針モジュールの横断面図である。なお図中同一部材には同一符号を付し、実施形態1と重複する説明は省略する。
【0094】
本実施形態は、気体通路612の変形例である。実施形態1では、気体通路612が、充填針611と通路形成部材614とで形成されていたが、本実施形態では、
図13及び
図14に示すように、気体通路612Aが、通路形成部材614Aに形成されている。すなわち本実施形態では、通路形成部材614Aは、充填針611が収容される空間である収容部619を有し、この収容部619の周囲に、収容部619とは独立する空間である気体通路612Aが設けられている。
【0095】
また気体通路612Aの先端部には、他の部分よりも流路幅が広い幅広部612aが形成されている。なお本実施形態において、流路幅とは
図13の断面における気体通路612Aの幅であり、幅広部612aは所定の流路幅W4で形成されている。さらに充填針611の先端部には、他の部分よりも外径が小さい小径部611bが設けられている。
【0096】
このような構成としても、実施形態1と同様の作用効果が得られる。例えば、気体通路612Aの先端部に広い幅広部612aが形成され、充填針611の先端部に小径部611bが設けられていることで、充填針611から流出する薬液のコンタミをさらに抑制することができ、薬液を適切に容器100に充填することができる。
【0097】
(実施形態3)
図15は、実施形態3に係る充填針モジュールの概略構成を示す図であり、
図16は、
図15のD-D線に対応する充填針モジュールの横断面図である。なお図中同一部材には同一符号を付し、上述の実施形態と重複する説明は省略する。
【0098】
本実施形態は、気体通路612の変形例である。上述の実施形態では、気体通路612,612Aが、充填針611の周囲に亘って連続して設けられていたが、本実施形態では、
図15及び
図16に示すように、充填針611の周囲に、それぞれ独立する複数の気体通路612Bが設けられている。
【0099】
具体的には、通路形成部材614Bは、充填針611が収容される空間である収容部619を形成し、この収容部619の周囲に、収容部619とは分離された空間である気体通路612Bを有している。この気体通路612Bは、導入通路618が接続される部分では充填針611の周囲に亘って連続的に設けられているが、その下流側で複数本に分岐されている。
【0100】
また気体通路612Bの先端部も、上述の実施形態と同様に、気体通路612Bの他の部分よりも流路面積が広くなっている。すなわち気体通路612Bの先端部には、他の部分よりも流路幅が広い幅広部612aが形成されている。なお本実施形態において、流路幅とは
図15の断面における気体通路612Bの幅であり、幅広部612aは所定の流路幅W5で形成されている。さらに充填針611の先端部には、他の部分よりも外径が小さい小径部611bが設けられている。
【0101】
このような構成としても、実施形態1と同様の作用効果が得られる。例えば、気体通路612Bの先端部に広い幅広部612aが形成され、充填針611の先端部に小径部611bが設けられていることで、充填針611から流出する薬液のコンタミをさらに抑制することができ、薬液を適切に容器100に充填することができる。
【0102】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0103】
例えば、上述の実施形態では、充填針611の先端面611aが、通路形成部材614の先端面614aよりも下方側に位置している構成を例示したが、充填針モジュール61の構成はこれに限定されるものではない。充填針611の先端面611aは、通路形成部材614の先端面614aよりも上方に位置していてもよいし、両先端面の位置は一致していてもよい。
【0104】
また例えば、上述の実施形態では、薬液を容器に充填する充填装置を一例として本発明を説明したが、本発明は、薬液以外の液体、例えば、化粧品、飲料、インク等を充填するための装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
I…液体処理システム、 1…充填装置、 2…調合タンク、 3…殺菌器、 4…貯留タンク、 5…フィルター装置、 6…充填ユニット、 7…洗浄ユニット、 8…導入管、 9…ガス供給装置、 10…制御装置、 11…バルブ制御手段、 12…流量制御手段、 20…送気装置、 61…充填針モジュール、 611…充填針、 611b…小径部、 612…気体通路、 612a…幅広部、 613…液体通路、 614…通路形成部材、 615…第1部材、 616…第2部材、 616a…挿通孔、 617…延設部、 618…導入通路、 619…収容部、62…ノズル部、 63…供給管、 64…開閉バルブ、 65…質量流量計、 66…分配管、 67…圧力センサ、 71…第1洗浄ユニット、 72…第2洗浄ユニット、 80…整流部材、 81…第1仕切板、 82…第2仕切板、 100…容器
【要約】
【課題】容器に充填された液体におけるコンタミの抑制を図ることができる充填針モジュール及び充填装置を提供する。
【解決手段】
充填針611の周囲に設けられて、所定の気体を充填針611に対向して配置された容器100側に向かって流出させるための気体通路612を備え、気体通路612は、充填針611の先端部側の開口部分の流路面積が気体通路612の他の部分の流路面積よりも広くなっている構成とする。
【選択図】
図5