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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】VAM生成時における酢酸エチルの除去
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/54 20060101AFI20230303BHJP
   C07C 69/15 20060101ALI20230303BHJP
   B01D 3/36 20060101ALI20230303BHJP
   B01D 3/14 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
C07C67/54
C07C69/15
B01D3/36
B01D3/14 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022503967
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 US2020044893
(87)【国際公開番号】W WO2021026159
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】62/882,911
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518192194
【氏名又は名称】ライオンデルバーゼル・アセチルズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ファン、リン
(72)【発明者】
【氏名】グエン、チュック、ティー.
【審査官】大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-012646(JP,A)
【文献】特表2008-520564(JP,A)
【文献】特開2000-119219(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0046557(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0066649(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンの気相アセトキシル化の後に得られる粗液体酢酸ビニルフィードストリームを精製する方法であって、
a) 粗液体酢酸ビニルフィードストリームを酢酸ビニルモノマー反応器から第1の蒸留塔中へフィードすることであって、前記粗液体酢酸ビニルフィードストリームは、酢酸ビニルモノマー、酢酸、水および酢酸エチルを含み、前記第1の蒸留塔は、前記第1の蒸留塔の上部および前記第1の蒸留塔の下部を含む、ことと、
b) 前記粗液体酢酸ビニルフィードストリームを蒸留することと、
c) 前記第1の蒸留の上部塔から第1の蒸気生成物を除去することであって、前記第1の蒸気生成物は、主に水および酢酸ビニルモノマーの共沸混合物である、ことと、
d) 前記第1の蒸留塔の下部から第1の液体生成物を除去することであって、前記第1の液体生成物は、水および酢酸を含む、ことと、
e) 前記第1の蒸留塔から第1の蒸気サイドストリームを除去することであって、前記第1の蒸気サイドストリームは、酢酸、水、酢酸ビニルモノマーおよび酢酸エチルを含む、ことと、
f) 前記第1の蒸気サイドストリームを前記第1の蒸留塔から第2の蒸留塔内へフィードすることと、
g) 前記第1の蒸気サイドストリームを前記第2の蒸留塔内において蒸留することであって、前記第2の蒸留塔は、前記第2の蒸留塔の上部および前記第2の蒸留塔の下部を含む、ことと、
h) 酢酸および水を含む第2の液体生成物を前記第2の蒸留塔の下部から除去することと、
i) 酢酸ビニルモノマー、酢酸エチル及び残りの水を含む第2の蒸気生成物を前記第2の蒸留塔の上部から除去することと、
j) 前記第2の蒸気生成物を凝縮することと、
k) 前記凝縮された第2の蒸気生成物を第3の蒸気流、第1の水流および任意選択の有機ストリームに分離させ、前記第1の水流の第1の部位を、還流として前記第2の蒸留塔へ返送し、前記第1の水流の第2の部位を、水処理プラントまたは前記酢酸ビニルモノマー反応器の反応領域へ送る、ことと、を含み、
前記第2の蒸気生成物ストリームの凝縮は、3~105℃の温度範囲内である、方法。
【請求項2】
l) 前記第1の蒸気生成物の凝縮および分離を行って、第2の水流および第1の気相を形成するステップと、
m) 前記第1の気相をパージングするステップと、
n) 前記第2の水流を水処理プラントまたは前記酢酸ビニルモノマー反応器の反応領域へフィードするステップと、をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記第1の蒸留塔の下部から除去された前記液体生成物は、4~15重量%の一定の水濃度を有する、請求項1の方法。
【請求項4】
前記第1の蒸留塔は、50~90個のトレイを含み、1~5バールの絶対圧力下において動作される、請求項1の方法。
【請求項5】
前記第1の蒸留塔の前記フィード入口トレイは、前記第1の蒸留塔の中間部分と前記第1の蒸留塔の上部との間に配置される、請求項1の方法。
【請求項6】
前記第2の蒸気生成物ストリームの凝縮は、78℃超~105℃の温度範囲内である、請求項1の方法。
【請求項7】
前記凝縮された第2の蒸気生成物の前記任意選択の有機ストリームは、前記凝縮が3~78℃の温度範囲内において行われたときに存在する、請求項1の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行関連出願
本出願は、特許協力条約に基づいて2019年8月5日に出願された米国仮出願第62/882,911号に対する優先権の利益を主張し、その全文は参考として本明細書に組み込まれる。
連邦政府資金による研究の記載
【0002】
該当なし。
マイクロフィッシュ付属書への参照
【0003】
該当なし。
本開示の分野
【0004】
本開示は、酢酸ビニルモノマーの生成に関し、特に、粗酢酸ビニルモノマーストリームの精製のシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0005】
酢酸ビニルモノマー(VAM)は、接着剤、コーティング、塗料、フィルム、テキスタイルおよび他の最終製品のための複数のポリマーおよび樹脂の合成における中間物質である。共通誘導体としてポリビニルアセテート(PVA)があるが、これは、多孔性材料に対して高い接着特性を有するために主に接着剤として用いられ、複数の基板(例えば、紙、木材、プラスチックフィルムおよび金属)と共に用いられ得る。PVAの他の用途を挙げると、紙コーティング、塗料および工業コーティングがある。VAMの使用は、エチレンビニルアルコール(EVOH)の製造において急成長している。エチレンビニルアルコール(EVOH)は、食品包装、プラスチックボトルおよびガソリンタンクにおけるバリア樹脂として、またエンジニアリングポリマーにおいて用いられている。VAMの用途は広範囲にわたるため、酢酸ビニル誘導ポリマーは、多数の製造製品において使用されている。
【0006】
VAM生成における共通工業プロセスとして、エチレンの気相式アセトキシル化があり、固定床式管形反応器内において行われる。この気相式アセトキシル化において、アセトキシル化反応器内におけるVAM合成は、過度の酢酸、酸素、およびエチレンの反応をアルミナまたはシリカに支持されたパラジウム触媒の存在下において金およびアルカリ金属塩と共に行うことにより、行われる。アセトキシル化反応器から退出するガス気流は、エチレン、酸素、二酸化炭素、酢酸ビニルモノマー、酢酸、水、酢酸エチル、および他の不純物を含む。このガス気流は、酢酸および/または水により部分的に凝縮および/またはスクラブされ、未凝縮部の処理により、エチレンおよび酸素を回収させて、さらなるVAM生成のためのアセトキシル化ステップへリサイクルさせる。未反応の酢酸は、蒸留によって回収された後、再度アセトキシル化反応器へリサイクルされて、VAMがさらに得られる。
【0007】
凝縮ストリームは粗VAMストリームであり、VAM、酢酸、水、酢酸エチル、および他の反応生成物を含む。この粗ストリームは、共沸蒸留によって精製され得、VAMプラントの精製部内においてVAMおよび水が得られる。蒸留時において、VAM富化蒸気流が塔頂留出物として得られ、酢酸富化液体ストリームが塔底生成物として得られるが、現代のシステムにおいては、酢酸エチル富化液体ストリームがサイドストリームとして得られる。塔底生成物は、さらなるVAM生成のためにアセトキシル化反応器へリサイクルされるが、このサイドストリームは液体ストリームであり、酢酸エチルなどの不純物の除去または処分のためにさらなる分画が施される。
【0008】
共沸蒸留塔から退出する塔頂留出物は、VAM富化されているが、望ましくない成分も存在する(特に、水および酢酸エチル)。塔頂留出物は凝縮され、VAMを含む有機相と、共沸蒸留のための要求として部分的にとられた水相とにさらに分離され、水の残り部分に対してさらに処理を行って、より清浄な水流を廃棄対象として形成する。この有機相は、富化VAMストリームであり、さらに蒸留されて、望ましくない成分(例えば、水および酢酸エチル)などを除去する。しかし、酢酸ビニルおよび酢酸エチルの沸騰挙動は類似しているため、酢酸エチルを分離させるためには、高エネルギー消費およびコストが必要になる。そのため、酢酸エチルのこの部分は、有意の割合で所与の生成物品質仕様に従って最終VAM生成物中に残留する。
【0009】
所定の仕様(約250重量ppm)を満たすために、VAM生成物中に残留する酢酸エチル量の低減のための多数の向上策が、蒸留およびVAM精製プロセスにおいて作成されている。しかし、全体的なVAM生成効率を向上させつつ、最終VAM生成物中の酢酸エチル量をさらに低減するために精製プロセスを向上させる必要がある。現行のVAMプロセスの場合、受容可能な生成物の達成には成功しているものの、技術向上はこれからも進むことを考えると、コスト効果の高い精製プロセスと、エネルギー損失および生成損失の法外なコストとの間に差が生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示によれば、粗酢酸ビニルモノマー(VAM)ストリームの精製のための向上した方法およびシステムが提供される。これらの向上した方法およびシステムによれば、上記粗VAMストリームから除去される酢酸エチル(ETAC)の量の増加のために第2の蒸留塔をVAM生成部の精製部へ追加しつつ、上記共沸蒸留塔の廉価な変更が可能になる。詳細には、上記共沸蒸留塔上のサイドストリームを、4~15%の水が上記共沸蒸留塔の上記塔底生成物内に一定に集中する上記塔上の場所へ移動させると、酢酸エチル富化蒸気流が上記サイドストリームとして得られる。第2の蒸留塔は、上記蒸気副流の処理によってさらなる酢酸および水を得るために追加され、これらの酢酸および水は、上記VAM生成プロセスへリサイクルされる。
【0011】
VAM精製プロセス機器は、左記の酢酸エチルの2つの出口を有する:上記サイドストリームおよび上記共沸蒸留塔の上記塔頂留出物。一部のVAMは、双方の出口内において上記酢酸エチルと混合されるため、本明細書中に記載の向上した方法およびシステムは、上記サイドストリーム中のVAMに対する酢酸エチルの比率を増大させるが、上記オーバーヘッドストリーム中のVAMに対する酢酸エチルの比率は低下させる。これにより、上記塔頂留出物を通じて上記粗VAMストリームから最終的に回収されるVAM量が増加されつつ、下流のVAM最終プロセスへキャリーオーバーされる酢酸エチル量が低減される。
【0012】
上記VAM精製プロセスのさらなる向上を挙げると、プラントの他の領域内における燃焼対象としてのより高品質の燃料ストリームの生成と、より清浄な水流により、リサイクルまたは廃棄前における大量処理が不要となる点とがある。これにより、上記VAM生成プロセスの全体的水バランスが向上し、上記精製プロセスのエネルギーコストが低下する。
【0013】
本システムは、以下の実施形態のいずれかの1つ以上の任意の組み合わせ(単数または複数)を含む:
【0014】
粗液体酢酸ビニルフィードを精製する方法であって、上記方法は、粗液体酢酸ビニルストリームを酢酸ビニルモノマー反応器から蒸留塔内へフィードすることと、上記粗液体酢酸ビニルストリームを蒸留することとを含む。上記粗液体酢酸ビニルストリームは、酢酸ビニルモノマー、酢酸、水および酢酸エチルを有する。主に水および酢酸ビニルモノマーの共沸混合物である蒸気生成物が、上記蒸留塔の上部から除去され;水および酢酸を含む液体生成物が、上記蒸留塔の下部から除去され;酢酸、水、酢酸ビニルモノマーおよび酢酸エチルを含む蒸気サイドストリームが、上記蒸留塔の側部から除去される。蒸気サイドストリームは、第2の蒸留塔内へフィードされ、蒸留され得る。上記第2の蒸留塔内における蒸留の後、酢酸および水の一部が、上記第2の蒸留塔の下部から液体生成物として除去される一方、上記酢酸ビニルモノマー、上記酢酸エチルおよび水の残り部分が、上記第2の蒸留塔の上部から蒸気生成物として除去される。凝縮後、上記第2の蒸留塔からの上記上部生成物は、蒸気流、水流および任意選択の有機ストリームに分離される。上記水流の一部は、還流として上記第2の蒸留塔へ返送され、上記水流の第2の部位は、水処理プラントまたは上記酢酸ビニルモノマー反応器の反応領域へ送られる。
【0015】
上記の方法のうちいずれかは、上記第2の蒸留塔へ接続された上記分離器から退出する上記蒸気流を凝縮およびデカントして水流および有機ストリームを形成することをさらに含み、上記有機ストリームは灰化され、上記水流は、水処理プラントまたは上記酢酸ビニルモノマー反応器の反応領域へ送られる。
【0016】
上記の方法のうちいずれかにおいて、上記第1の蒸留塔からの上記液体生成物は、約4~15重量%の一定の水濃度を有する。あるいは、この液体生成物は、約9~11重量%の一定の水濃度を有する。
【0017】
上記の方法のうちいずれかは、上記蒸気流と、上記第2の蒸留塔上の上記分離器から退出する上記任意選択の有機相とを灰化させることをさらに含む。
【0018】
さらに、上記の方法のうちいずれかにおいて、上記第1の蒸留塔は、50~90個のトレイを含み、1~5バールの絶対圧力下において動作される。
【0019】
さらに、上記の方法のうちいずれかにおいて、上記第1の蒸留塔の上記フィード入口トレイは、上記塔の中間部分と上記塔の上部との間に配置される。
【0020】
上記の方法のうちいずれかにおいて、上記第2の蒸留塔の上記蒸気生成物の凝縮は、約35~約105℃の温度範囲内において発生する。
【0021】
上記の方法のうちいずれかにおいて、上記第2の蒸留塔からの上部生成物の凝縮ステップの温度範囲が約35~約78℃である場合、任意選択の有機ストリームは、上記第2の蒸留の上記蒸気生成物から生成される。
【0022】
第1および第2の蒸留塔を含む粗液体酢酸ビニルフィードの精製のためのシステム。第1の蒸留塔は、酢酸ビニルモノマー反応器からの上記生成物の導入のための粗液体酢酸ビニルフィード入口を有し、この入口は、上記中間部分と上記蒸留塔の上部との間に配置される。上記第1の蒸留の上部において、主に水および酢酸ビニル共沸混合物である第1の蒸気生成物を放出させる出口が設けられる。この蒸気生成物は凝縮され、第1の水流、第1の有機ストリームおよび第1の気流に分離される。上記第1の蒸留の下部において、水および酢酸を含む液体生成物を放出させる出口が設けられ、液体生成物は、酢酸ビニルモノマー反応器の酢酸ビニルモノマー反応器または反応領域へリサイクルされる。第1の蒸留塔において、酢酸、水、酢酸ビニルおよび酢酸エチルを含む蒸気副産物の除去のために側面出口も設けられる。この蒸気副産物は、第2の蒸留塔上の入口中へフィードされ得、蒸留され得る。上記第2の蒸留塔の下部において、酢酸および水を含む液体生成物の除去のための出口が設けられ、この液体生成物は、酢酸ビニルモノマー反応器または酢酸ビニルモノマー反応器の反応領域へリサイクルされる。上記第2の蒸留塔の上部において、酢酸ビニルモノマー、酢酸エチルおよび水を含む第2の蒸気生成物の除去のための出口が設けられる。第2の蒸気生成物は凝縮され、第2の水流、第2の気流および任意選択の第2の有機ストリームに分離される。上記第2の蒸気生成物用の上記凝縮器の動作温度により、上記水流の純度および/または上記任意選択の第2の有機ストリームの存在が影響を受ける。
【0023】
上記システムのうちいずれかにおいて、上記粗液体酢酸ビニルフィードは、酢酸ビニル、酢酸、水および酢酸エチルを含む。
【0024】
上記システムのうちいずれかにおいて、上記第1の水流は、酢酸ビニルモノマー、水および少量の酢酸エチルを含み;上記有機ストリームは、酢酸ビニルモノマーおよび水を含み;上記第1の気流は、酢酸ビニルモノマーおよび水を含む。
【0025】
上記システムのうちいずれかにおいて、上記第1の蒸留塔の液体生成物は、約4~15重量%の一定の水濃度を有する。
【0026】
上記システムのうちいずれかにおいて、上記第1の有機ストリームの部分的量は、還流として上記第1の蒸留塔へリサイクルされる。
【0027】
上記システムのうちいずれかにおいて、上記還流において、リサイクルされる酢酸ビニルモノマーと、除去される酢酸ビニルモノマーとの間の比率は2.0~4.5である。
【0028】
上記システムのうちいずれかにおいて、上記第2の水流は、酢酸ビニルモノマー、水および少量の酢酸エチルを含み;上記任意選択の第2の有機ストリームは、酢酸ビニルモノマー、酢酸エチルおよび少量の水を含み;上記第2の気流は、酢酸ビニルモノマー、酢酸エチルおよび水を含む。
【0029】
上記システムのうちいずれかにおいて、上記第1の蒸留塔は、50~90個のトレイを含み、1~5バールの絶対圧力下において動作される。
【0030】
上記システムのうちいずれかにおいて、上記第2の蒸留塔の動作圧力は、上記第1の蒸留塔内の側面出口の圧力を若干下回る。
【0031】
上記システムのうちいずれかにおいて、上記第2の水流は、水純度が高く、上記第2の凝縮器および相分離器が約79~約120℃の温度で動作する場合に上記酢酸ビニル反応器へリサイクルされる。
【0032】
上記システムのうちいずれかにおいて、上記第2の水流は、水純度が低く、上記第2の凝縮器および相分離器が約30~約78℃の温度で動作する場合に上記第2の蒸留塔への還流流れとしてリサイクルされる。
【0033】
上記の方法またはシステムのうちいずれかは、上記第2の凝縮器および相分離器へ流体接続された第3の凝縮器および相分離器をさらに含み、上記第3の凝縮器および相分離器は、上記第2の気流をさらに凝縮および精製する。
【0034】
上記システムのうちいずれかにおいて、上記任意選択の第2の有機ストリームは、上記凝縮が約35~約78℃の温度範囲において発生する場合に存在する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】酢酸エチル富化蒸気サイドストリームの処理のために第2の蒸留塔を用いた開示の向上した粗VAM精製プロセスの一実施形態の模式図である。
図2】第2の蒸留塔から退出したストリームのさらなる処理を可能にする開示の向上した粗VAM精製プロセスの第2の実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
本明細書中用いられるように、「粗酢酸ビニルモノマーストリーム」または「粗酢酸ビニルストリーム」または「粗VAMストリーム」という用語は、未反応のエチレンおよび未反応の酸素の除去後にVAM反応器から退出するストリームを指すものとして同義に用いられる。この粗ストリームは、VAM、酢酸、水、酢酸エチルおよび他の不純物を含む。一例として、粗酢酸ビニルストリームは、約10~20重量%のVAM、約3~15重量%の水、約0.01~0.2重量%の酢酸エチル、0.5重量%未満の不純物(例えば、ジアセテート、ポリマー、アセトアルデヒドなど)を含み得、酢酸は、残りの量を100重量%に到達するまで含む。
【0037】
「蒸留塔」という用語は、混合物を(選択的な沸騰および凝縮により)構成部分または分画物へ分離させることが可能な塔を指す。単純な蒸留機構において、混合物は、塔の下部に設けられた熱と共に塔内へフィードされ、その結果得られた蒸気は、塔を通じて上昇して、トレイ上の液体と接触した後、塔の上部から退出する。この退出した蒸気は、蒸留塔の上部へ取り付けられた凝縮器内において部分的にまたは全体的に凝縮され得る。液体凝縮物の一部または全体は、還流として塔へ逆流し、トレイを通じて上昇する蒸気に対する反流として下方移動し、トレイ上に保持されている状態で、上昇する蒸気と接触する。この還流は、最終的には塔の下部に到達する。還流および/またはトレイが多いほど、塔における沸点の低い材料の沸点の高い材料からの分離が向上する。いくつかの塔において、トレイの代わりにパッキング材料が用いられ得る。簡潔さのため、本明細書中に記載の蒸留塔は、トレイ数を指すが、相応の量のパッキングをトレイの代わりに用いてもよいことが理解されるべきである。これらのトレイは、上側から下側にラベル付けされる。
【0038】
「共沸塔」または「共沸蒸留塔」という用語は、1次蒸留塔を指し、この塔において、大部分のVAMが単離され、粗酢酸ビニルストリームから主に水/VAMの共沸混合物として回収される。
【0039】
「ETAC塔」および「酢酸エチル塔」という用語は、1次蒸留塔から退出した蒸気サイドストリーム中の成分を分離させる2次蒸留塔を指す
【0040】
「サイドドロー流」、「蒸気副産物」および「蒸気副流」という用語は、共沸蒸留塔(または「第1の」蒸留塔)から退出してETAC塔(または「第2の」蒸留塔)内に導入される流れを同義に指す。
【0041】
本明細書中用いられるように、「望ましくない成分(単数または複数)」は、富化VAMストリーム中の成分(単数または複数)のうち最終VAM生成物中において所望されないものまたは(所定の仕様を満たすためには)最終VAM生成物中における濃度を低減させる必要があるもの指す。これらの成分を非限定的に挙げると、未反応の出発材料および気相式アセトキシル化プロセスの反応生成物双方がある。「富化VAMストリーム」とは、共沸蒸留塔の上部から除去された蒸留生成物ストリームである。
【0042】
「極微量」という用語は、多様な分離ストリーム中の濃度に関連して用いられる場合、0.0005重量%を超えかつ0.02重量%未満の範囲の量を指す。「少量」という用語は、多様な分離ストリーム中の濃度に関連して用いられる場合、0.02重量%~1.0重量%未満の範囲の量を指す。
【0043】
「高純度」という用語は、水に関連して用いられる場合、約99重量%以上の水を有するストリームを指す。「低純度」という用語は、水に関連して用いられる場合、99重量%未満の水を有するストリームを指す。
【0044】
本明細書中用いられるように、「反応領域」とは、VAM生成プラント内の物理的領域を指し、この領域において、気相式アセトキシル化が反応器(単数または複数)内において発生し、反応器流出物中のVAM、水および(他の成分のうち)未変換のAAが凝縮されて、粗VAMストリームが形成される。例えばエチレン、酸素および二酸化炭素を含む未凝縮のガスは、望ましくない成分の除去のために処理された後、反応器(単数または複数)の入口へリサイクルされる。本システムのいくつかの実施形態において、非VAMストリームは、反応領域へリサイクルされ得、例えば反応器から退出するストリームのスクラブのために用いられる。本システムのいくつかの実施形態において、非VAMストリームの一部を(例えば、スクラブのために)反応領域へリサイクルすることができ、バランスが反応器へ戻る。
【0045】
本明細書中用いられるように、「燃焼」という用語は、材料を化学的または物理的に変化させて光および/または熱を生成するプロセスとして広範に定義される。「燃焼」という用語は、灰化、フレアまたは材料を蒸気生成のための液体燃料として使用することを指し得る。材料を液体燃料として燃焼させると、現場でのコストが低下し得るが、灰化またはフレアの価値が無くなり得る。しかし、材料ストリームの品質により、選択された燃焼形態が決定される(例えば、燃料目的のためのエネルギー効率が良くない材料ストリームは、灰化またはフレアされる可能性が高い).
【0046】
本明細書中の濃度は全て、他に明記無き限り、重量パーセント(「重量%」)によって表される。
【0047】
第2の蒸留塔の動作圧力に関連して「若干下回る」という用語が用いられる場合、共沸蒸留塔の側面出口の圧力からのマイナスが10%までであることを示す。
【0048】
特許請求の範囲または本明細書において用語「含む(comprising)」とともに使用される場合、単語「1つ(a)」または「1つ(an)」の使用は、文脈において別段示さない限り、1つまたは1つより多い(one or more than one)を意味する。
【0049】
用語「約」は、記載される値+もしくは-測定誤差のマージン、または測定の方法が示されない場合は+もしくは-10%を意味する。
【0050】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、代替物のみを指すことが明確に示されていない限り、または代替物が相互排他的である場合を除き、「および/または」を意味するように使用される。
【0051】
用語「含む(comprise)」、「有する(have)」、「含む(include)」および「含む(contain)」(およびこれらの変形)はオープンエンドの連結動詞であり、特許請求の範囲で使用される場合、他の要素の追加を許可する。
【0052】
フレーズ「からなる」は閉じられており、すべての追加的な要素を排除する。
【0053】
「consisting essentially of(から本質的になる)」という語句は、さらなる材料要素を排除するが、本発明の内容を実質的に変化させない非材料要素の包含を許容する。
【0054】
以下の省略形が本明細書で使用される。
【表1】
本開示の実施形態の説明
【0055】
本開示によれば、粗酢酸ビニルモノマー(VAM)ストリームから酢酸エチル(ETAC)を除去するための向上したシステムが提供される。詳細には、1次共沸蒸留塔上のサイドドローは、共沸蒸留塔の塔底生成物において一定に4~15重量%の間の量の水が得られる場所へ移動される。塔底生成物中の一定量の水に基づいてサイドドローを配置することにより、サイドドロー流は蒸気となり、蒸留プロセス時において塔から退出するETAC富化蒸気流中のETACが増加し、その結果、蒸気副流中のVAMに対するETACの比率も増加する。次に、このETAC富化蒸気流に対して新規追加された第2の蒸留塔中においてさらなる蒸留プロセスを行って、ETACを廃棄対象としてさらに分離させ、さらなる水および酢酸をVAM生成プロセスにおけるリサイクル対象として回収する。共沸蒸留塔から退出した塔頂留出物においては、より少量のETACが含まれる(例えば、VAMに対するETACの比率がより低くなる)ため、塔頂留出物の精製時において失われるVAM量が低下し、最終VAM生成物の品質が向上する。
【0056】
本開示のシステムを用いたETACの除去によれば、エネルギーおよび水の消費の低減および/またはETAC富化サイドストリーム中のVAMの損失の低減を得つつ、より経済的に有利なVAM精製プロセスが得られる。向上したシステムの使用方法についても記載される。
【0057】
開示の向上した精製システムを、図1図2について例示する。しかし、これらの図面は、ひとえに例示的なものであり、添付の特許請求の範囲を過度に制限するものではない。以下の説明は、添付の特許請求の範囲の実施形態を示すために記載される。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなしに、開示される特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、同様または類似の結果を依然として得ることができることを当業者なら認識すべきである。
【0058】
アセトキシル化反応器から退出した生成物ストリームは、未反応の原材料を含む(例えば、エチレン、酸素、および酢酸(AA)、アセトキシル化反応生成物および不純物)。未反応のエチレン、酸素および酢酸(AA)原材料のうちほとんどは、生成物ストリームから除去され、さらなるVAM合成の対象としてアセトキシル化反応器へ再度リサイクルされる。残材は、粗VAMストリームを含み、粗VAMストリームは、VAM、AA、水、ETACおよび他の不純物を含む。次に、この粗VAMストリームは、VAMプラントの精製部によって精製される。本開示のシステムは、VAMプラントの精製部の向上に関連する。しかし、精製部から回収されたストリームのうち一部を、VAMプラントの他の領域(例えば、アセトキシル化反応器および反応器の反応領域)へリサイクルすることができ、これにより、アセトキシル化の出発材料のコスト低減と、VAMプラントの水バランスの向上とが得られる。
【0059】
図1は、粗VAMストリームの組成のための本開示の向上したシステムの一実施形態1000を示す。この実施形態は、共沸蒸留塔1001と、凝縮器1002と、塔1001から退出した塔頂留出物ストリーム3のための相分離器1003と、共沸蒸留塔1001から退出したサイドドロー流21を処理する第2の蒸留塔1005と、第2の蒸留塔1005から退出した塔頂留出物ストリーム23のための凝縮器1006および相分離器1007とを含む。
【0060】
公知の精製システムと同様に、酢酸ビニルモノマー反応器(図示せず)からの粗VAMストリーム1は、共沸蒸留塔1001内へ導入される。粗VAMストリーム1は、共沸蒸留塔1001の中間領域内の点においてフィードされ得る。あるいは、粗VAMストリーム1は、塔の上半分の中間においてフィードされ得る。
【0061】
共沸蒸留塔1001の設計仕様は、プラントによって異なり、共沸蒸留塔1001内のトレイ数は、機器コストと当該場所における動作コストとのバランスをとるように選択される。ほとんどの共沸塔は、約50~90個のトレイまたは相応するプレートカウントを有する。あるいは、共沸蒸留塔1001は、約60~75個のトレイまたは相応するプレートカウントを有してもよい。よって、(上から下方向にラベル付けされた)合計69個のトレイを有する共沸蒸留塔1001は、粗VAMストリーム入口を13番目のトレイ周囲に有し得る。あるいは、入口は、10番目と18番目のトレイとの間に配置してもよい。
【0062】
蒸留時において、蒸留生成物の以下の3本のストリームが共沸蒸留塔1001から除去される:主にAAおよび水である塔底生成物ストリーム2;オーバーヘッドまたは主にVAM/水共沸混合物である上部生成物ストリーム3;ならびにETAC富化されかつVAM、AAおよび水も含む副生成物ストリーム21。共沸蒸留塔1001の動作圧力および温度は、蒸留生成物の所望の分割を塔頂留出物中の最小のETACと共に達成するように、設定される。
【0063】
主にVAM/水の塔頂留出物の場合、共沸蒸留塔1001の動作圧力は、相分離器1003の圧力によって制御される。相分離器1003の圧力は、共沸蒸留塔1001内の大気圧に近い圧力と相関する大気圧に近い圧力に設定される。あるいは、相分離器1003の設定圧力は、約1~7psig(約1~1.5バールの絶対圧力)に維持される。別の代替例として、新規追加されたETAC塔凝縮器1007が約5psig(約1.4バール)で動作することができるように設定圧力を維持することがある。
【0064】
共沸蒸留塔1001の上部における動作温度は、塔頂留出物ストリーム3の内容物である主に水およびVAMに対応する選択された圧力(または圧力範囲)と、0.005~0.02重量%未満の範囲または0.005~0.012重量%の範囲または0.01~0.02重量%未満の範囲または0.008~0.015重量%の範囲の極微量のETACとによって設定される。この動作温度は、約50~80℃であるかまたは約64~72℃であるかまたは約68℃である。
【0065】
塔1001中の共沸蒸留が成功した場合、選択された動作圧力範囲内において塔頂留出物ストリームのVAM対水の共沸比が(水の重量に基づいて)約7.5~8.5重量%VAMとなる。このような共沸比は、水流を粗VAMストリームと共にコフィードすることにより、従来から達成されている(例えば、US4934519およびUS6228226)。本システムにおいて、任意選択の別個の水流(図1中図示せず)を粗VAMストリーム1と共にコフィードすることにより、この比への到達を支援することができる。水はエチレンアセトキシル化ステップにおける主要な生成物のうちの1つであるため、VAM/水の比は、余分な水流を必要とすること無く維持することが可能であり、水の付加は、反応器蒸気流出物からのVAMおよびAAの回収に用いられる。よって、共沸蒸留塔1001への水流のための余分な入口は、本システムにおいて任意選択とみなされる。
【0066】
共沸蒸留塔1001上のサイドドロー20は、ETAC富化サイドストリーム21の出口である。サイドドロー20の位置は、共沸蒸留塔1001からの塔底生成物ストリーム2において約4~15重量%の範囲の一定量の水が含まれるように、選択される。あるいは、サイドドロー20の位置は、共沸蒸留塔1001からの塔底生成物ストリーム2において4~7重量%または9および11重量%または12~15%の範囲の一定量の水が含まれるように、選択される。このような配置にすると、サイドドロー流21が気相式になるだけでなく、サイドドロー流21中のETACのVAMに対する比率も増加するため、共沸蒸留塔1001からオーバーヘッドストリーム3中の不純物として退出するETACが低下する。
【0067】
共沸蒸留塔1001からの塔底生成物ストリーム2は、4~15重量%およびおおよそ85%AA以上の一定量の水を有し、下部ストリーム2の残り部分は、少量の不純物であり、AAよりも高い温度において沸騰する。この塔底生成物ストリーム2は、VAM反応器へ返送され得、さらなるVAMの生成に用いられる。あるいは、塔底生成物ストリーム2は、アセトキシル化反応器流出物蒸気のスクラブおよび凝縮において用いられ得る。塔底生成物ストリーム2がVAM生成プロセスの多様な領域内において再利用可能となることにより、VAMプラントの全体的な水バランスの制御が可能になる。
【0068】
共沸蒸留塔1001の上部から除去されるオーバーヘッド蒸気生成物ストリーム3は主に水およびVAMであり、極微量のETACを含む(0.005~0.02重量%未満または0.005~0.012重量%または0.01~0.02重量%未満または0.008~0.015重量%)。この塔頂留出物ストリームは、凝縮器1002においてさらに凝縮され、相分離器(例えば、デカンタ)1003内において相分離される。
【0069】
凝縮器1002は、熱交換器型の凝縮器であり得る。これらの種類の凝縮器の場合、動作温度の維持のために、冷却水またはファンを用いた空冷が用いられる。そのため、凝縮器は、オーバーヘッドストリーム3および任意選択のリサイクルストリームの凝縮のために、35~60℃の温度を維持する。凝縮器が冷却された場合(例えば、冷媒が用いられた場合)、凝縮器温度をより低温にすることが可能になる。
【0070】
相分離器1003は、塔頂留出物ストリーム3からの凝縮ストリーム(単数または複数)を、気相4、液体有機相5および液体水相6へ分離させる。任意の相分離器が利用可能であるが、デカンタは、VAM精製システムにおいて慣習的に使用される相分離器である。これら3つの異なるストリームを得るために、相分離器を凝縮器1002の出口と同じ温度および共沸蒸留塔1001と同じ圧力において動作させる。
【0071】
気相4は、VAM、水、および不凝縮ガス(例えば、エチレンおよび窒素)を含む。この気相に対し、冷却ステップ、チルリングステップまたはスクラブステップが行われ得、未凝縮ガスは、上流反応領域へ部分的にリサイクルされ、(例えば、蒸気生成のための)廃棄対象として燃料ストリームまたはフレアストリームとして部分的にパージされる。
【0072】
相分離器1003から退出した液体水相6は、水およびVAMを含む。この水流をさらに処理して水流およびVAM富化ストリームを生成し、この水流は、水処理施設へ送られ、VAM富化ストリームは、生成物の最終下流のために他のVAMストリームと組み合わされる。
【0073】
液体有機相5は、VAMおよび水を含む。図1に示すように、液体有機相5の一部は、還流流れ5aとして共沸蒸留塔1001中へリサイクルされ、残り部分は、VAM富化ストリーム5bとなる。このプロセスにおいて、還流流れ5a中においてリサイクルされるVAMの比率は、共沸塔1001の下部において所望の水内容物が約4~約15重量%の範囲内に一定に維持されるように、調節される。還流比(ストリーム5aのストリーム5bに対する比)は、2.0~4.5の範囲内であり得る。あるいは、還流比は、約2.5~約3.5であってもよい。
【0074】
精製プロセスにおけるこの点において、VAM富化ストリーム5bは、極微量の酢酸エチルを未だ含む。沸騰挙動が類似していることに起因して、酢酸エチルをこのVAMストリームから除去するには、(特にこの除去が別個の蒸留ステップにおいて行われる場合に)コストおよび集中的作動の両方が必要になる。そのため、VAMストリーム5b中のETAC量を低減させる方法が用いられる。これらの方法は、塔の下部の近隣の酢酸エチル富化液体サイドストリームを粗VAMフィードトレイの下側において収集してETACを凝縮させることを含む。その結果、オーバーヘッドストリーム内において退出するETAC量がETACの約100~500重量ppmへ低減する。ETAC富化液体サイドストリームは、異なる量の水、VAMおよびAAに対して、ETACの15重量%までを含み得る。例示として、液体ストリームは、約3.2重量%のETAC、11.5%のVAM、13.5%の水および71%のAAを有し得る。水およびAAの分離を試行する代わりに、液体サイドドロー流は、例えば燃焼によって直接処理されるが、その場合、水およびAAの存在に起因してコスト高になり得る。
【0075】
本開示のシステムは、塔底生成物ストリーム2の一定の水濃度を約4~約15重量%に維持する共沸蒸留塔1001上の場所へサイドドロー点20を移動させることにより、粗VAMストリームの公知の精製システムを向上させる。この場所において、サイドストリームは蒸気であり、本開示のシステムにおいては、このサイドドロー蒸気流の処理のために第2の蒸留塔1005が追加される。これらの変更により、サイドストリームからのVAMプラントの反応段階および精製段階双方へのリサイクルが可能な有用な成分をより多く分離させることが維持され、VAM生成プロセス内へ最小量のETACの再度のリサイクルを維持しつつ、バランス全体的なプラント水使用量のバランスをとる働きが得られる。
【0076】
上記したように、塔底生成物ストリーム2が4~15重量%の一定量の水を有する共沸蒸留塔1001上の場所へ、サイドドロー20を移動させる。このようにサイドドローを配置することにより、蒸気ベースのサイドストリーム21において、ETACのVAMに対する比を従来使用された液体サイドドローよりも高くすることが可能になる。より多くのETAC富化蒸気流により、所望の量のETACを粗VAM蒸留から除去するために必要なドローレートが最小になる。これにより、サイドドロー蒸気流21中において経済的に回収することが不可能な共存するVAMの量が低減する。
【0077】
第2の蒸留塔1005(ETAC塔とも呼ばれる)は、共沸蒸留塔1001から退出した蒸気サイドストリーム21を受容するための入り口を下側から約1/3の付近において有する。ETAC塔1005は、共沸蒸留塔1001よりも直径が小さく、約25~60個のトレイまたは(パッキングが用いられる場合に)相応の高さを有し得る。あるいは、ETAC塔は、約30または50個のトレイまたは相応のパッキングを有し得る。さらに別の代替例において、約45個のトレイまたは相応のパッキングが、より経済的に実行可能な塔であり得る。
【0078】
共沸蒸留塔1001と同様に、ETAC塔1005中の圧力は、その相分離器1007によって制御される。蒸気サイドストリーム21は、共沸蒸留塔1001内のサイドドロー場所20における圧力と同じ圧力下においてETAC塔1005中へフィードされる。そのため、ETAC塔1005のフィードトレイ圧力は、共沸塔1001内のサイドドロートレイの圧力を下回る。このより低い圧力をフィードトレイにおいて維持するために、ETAC塔相分離器1007は、雰囲気に近い圧力において動作される。あるいは、ETAC塔相分離器1007は、約2~約5psigまたは約2~約3psigまたは約4~約5psigの圧力において動作される。
【0079】
ETAC塔凝縮器1006中のオーバーヘッド凝縮温度は、ETAC塔相分離器1007からの十分な水富化流れの要求を満たす最高温度またはETAC塔凝縮器1006中の凝縮用冷却剤が合理的に許容する最低温度であり得る。凝縮器1002と同様に、ETAC塔凝縮器1006内において用いられる冷却剤は、冷却水、雰囲気空気または低温ストリーム(単数または複数)であり得、その結果、動作温度は約35~約60℃になる。約35℃よりも低温が所望される場合、ETAC塔凝縮器1006の動作温度を低下させる冷媒が用いられ得る。
【0080】
共沸蒸留塔1001のセットアップと同様に、ETAC塔1005から退出したオーバーヘッド蒸気生成物ストリーム23は、ETAC塔凝縮器1006中において凝縮された後、ETAC塔相分離器1007へフィードされる。凝縮器1006の出口における温度は、相分離器1007から退出する多様なストリームの内容物および流量に影響を与える。そのため、この温度の最適化をエンドユースまたは相分離器1007および据え付けられた下流デバイス(例えば、弁、パイプ、さらなる機器)から退出するストリームの処理に基づいてオペレータが行うことができる。温度が78℃を超えると、相分離器1007から退出するストリームは、:凝縮可能な気流26および水流24の2本のみになる。温度が約35℃~約78℃になると、相分離器1007から退出するストリームは、凝縮可能な気流26、水流24および有機ストリーム25の3本になる。凝縮器温度に関係無く、水流24は、常に還流流れ24aおよび水生成物ストリーム24bへさらに分割される。
【0081】
表1および表2は、凝縮器1006の動作温度の最適化により、相分離器1007から退出するストリーム数と(ストリームのエンドユースに影響を与える)その相対的組成とを制御することによる利点を示す。本例において、図1に示すVAM精製プロセスが用いられ、共沸蒸留塔1001のサイドドロー21の圧力は、9.5psig(1.6バール)である。
【0082】
表1は、凝縮温度が35℃であるときにETAC蒸留に必要な多様なストリームの組成を示す。約35~約78℃の温度範囲において、凝縮不可能な気流26の含水量が低下(104℃において50.6%であるのに対して2%)するため、例えば蒸気生成またはフレアのために容易に燃焼可能な燃料としての用途に適したものとなる。「任意選択の」有機ストリーム25は、VAMプロセスにおけるリサイクルストリームとしての用途は無いものの、有機物量が高いため、燃焼用の燃料としても適している。ETAC塔1005へリサイクルされる還流流れ24aの質量フローは、蒸気副産物ストリーム21中に存在した99%を超えるAAがETAC塔1005の塔底生成物ストリーム22と共に退出することが可能となるように、選択される。水流の残り部分により、水生成物ストリーム24bが形成される。
【0083】
水生成物ストリーム24bは、より低い凝縮器温度範囲においてより大量に生成され、質量フローは約536kgとなる。表2中の質量フロー24bと比較した場合により高いこの質量フローを表1中に示す。凝縮温度がより低温であるため、水生成物ストリーム24b中に3~4重量%のETACが含まれることになり、その結果、VAM生成プロセスへのリサイクルストリームとしての水生成物ストリーム24bの望ましさが低下する。そのため、水生成物ストリーム24bは、(プラントの水バランスの維持のためにリサイクルされる代わりに)バッテリーリミット時に排水処理施設において処理される可能性が高くなる。
【0084】
凝縮温度が上昇すると、有機ストリーム25は、低減して消滅し、その間、ストリーム24および26の組成が変化して、有機ストリーム25中の成分を含むようになる。表2は、凝縮温度が104℃である場合のストリームおよびその組成を示す。このように凝縮温度が高温である場合、ETAC塔相分離器1007から退出するストリームは、凝縮不可能な気流26および水流24の2本のみである。有機ストリーム25は、0~104℃の質量フローを有するため、管理すべきストリームが1本低減し、必要機器数も低減する。
【0085】
このように凝縮温度が上昇すると、凝縮不可能な気流26において含水量が増加し、ETACも増加する(35℃において16.8%に対して28.2%)。このような含水量の増加により、ストリーム26の燃焼用の燃料ガス用途としてのエネルギー効率の良い選択肢の望ましさが低下する。そのため、ストリーム26は、灰化される可能性が高くなる。
【0086】
ストリーム26中の水分およびETACが増加すると、表2中のストリーム24bの質量フローの低下から分かるように、ストリーム24の質量フローも低下する。その結果、水生成物ストリーム24bの純水が99%を超え、ETACはわずか約0.3%となる。ストリーム24bの流れが低下すると、VAM生成プロセスの水バランスが影響を受けるため、104℃の凝縮温度において生成された高純度のストリーム24bは、(バッテリーリミットにおいて排水処理施設へ廃棄される代わりに)VAM生成プロセスへリサイクルされる可能性が高くなる。
【表2】
【表3】

【0087】
図2は、ETAC蒸留塔から退出したオーバーヘッドストリームのためのさらなる精製ステップを含む別の向上した粗VAM精製システムを示す。これらのさらなるステップにより、向上した純度(すなわち、ETACがより少量の)水を回収して、過度の水処理無しに再利用または廃棄のために得ることが可能になる。
【0088】
上記において図1に示したように、ETAC蒸留塔から退出したオーバーヘッドストリームは、凝縮され、蒸気流26と、(約78℃未満の低温の凝縮温度において)有機液体ストリーム25と、および正味の水流24bとに分離される。図2中の向上したシステムにより、相分離器1007から退出した水流24bの精製のためにフラッシュヒーター2006および第2の相分離器2007が得られる。これは、凝縮器1006内において用いられる凝縮温度がより高温になることに類似する。ここで、フラッシュヒーター2006から熱がストリーム24bへ付加されると、ストリーム24bは相分離器2007によって分離されて、水のみを含むストリーム34および蒸気流36が形成される。第3のストリームは生成されないため、図2中のストリーム35は、ひとえに比較目的のためのものである。
【0089】
表3は、(1007の凝縮温度が35℃である)表1からの(さらなる精製ステップによって処理された後の)ストリーム24bと、各ストリームの相対的濃度とを示す。相分離器1007が35℃で動作され、退出する水流24bがフラッシュヒーター2006によって104℃まで加熱されると、分離器2007から退出したストリーム34のETACは、(ストリーム24b中に含まれるETACが3.7重量%であるのに対し)約0.3重量%となる。水量も94.3%から99.4%へ増加するため、ストリーム34の水流純度も24bより高くなる。ストリーム34の質量フローは、24bの質量フローの約90%である。
【表4】
【0090】
表3に示すように、ストリーム34は、主に表2中のストリーム24bと水の純度とほぼ同じ水であるが、流量はずっと高い。さらに、表1と比較して、水流34は、流量が水流24bのほぼ90%であるが、水の純度がずっと高いかまたはETAC含量がずっと低い。このように付加すると、より清浄なより高純度の水流の生成において有用である(99.4%対94.3%)。
【0091】
上記例は、粗VAMストリームからのETAC除去をよりコスト効果の高い様態で行えるようにVAM精製システムを変更することが可能であることを示す。さらなる蒸留塔およびサイドストリームをドローする場所の移動のためには一定の初期投資が必要となるが、VAMプラント上の精製部におけるエネルギー消費および水使用は、精製部からのETACおよびVAM下流を分離させるプロセスと比較して顕著に低下する。このさらなる蒸留により、VAM生成物ストリーム(ストリーム5bおよび6)中に残留するであろうETAC量が低下するだけでなく、リサイクルおよび/または廃棄対象となる水回収がより低コストで増加する。いくつかの実施形態において、ETAC蒸留塔用の凝縮器および相分離器上の設定によっても、プラントの他の部分内の水流の純度が向上し得る(99%超過)。本明細書中に記載の向上したシステムによれば、有機ストリームを含むETACの回収の目的において、選択肢(例えば、フレア、燃料およびオフサイト廃棄)による柔軟性がさらに得られる。その結果、VAM生成コストが全体的に低下する。
【0092】
以下は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
US4934519
US6228226

図1
図2