IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧 ▶ 三菱電機ビルテクノサービス株式会社の特許一覧

特許7237266接触情報取得装置、接触情報取得システム、接触情報取得方法、及び、接触情報取得プログラム
<>
  • 特許-接触情報取得装置、接触情報取得システム、接触情報取得方法、及び、接触情報取得プログラム 図1
  • 特許-接触情報取得装置、接触情報取得システム、接触情報取得方法、及び、接触情報取得プログラム 図2
  • 特許-接触情報取得装置、接触情報取得システム、接触情報取得方法、及び、接触情報取得プログラム 図3
  • 特許-接触情報取得装置、接触情報取得システム、接触情報取得方法、及び、接触情報取得プログラム 図4
  • 特許-接触情報取得装置、接触情報取得システム、接触情報取得方法、及び、接触情報取得プログラム 図5
  • 特許-接触情報取得装置、接触情報取得システム、接触情報取得方法、及び、接触情報取得プログラム 図6
  • 特許-接触情報取得装置、接触情報取得システム、接触情報取得方法、及び、接触情報取得プログラム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】接触情報取得装置、接触情報取得システム、接触情報取得方法、及び、接触情報取得プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/16 20200101AFI20230303BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
G01L5/16
A61B5/11 230
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022581696
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2021015283
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝太郎
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特許第6822715(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0201433(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110262664(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00- 5/28
A61B 5/06- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が前記作業者の手により対象物に加えている圧力を計測する圧力センサが計測した圧力データと、前記手についての方向を計測する方向センサが計測した方向データと、前記手の特性を示す特性データとを用いて、前記手が前記対象物に加えている圧力の方向であって前記対象物に対する方向である加圧方向を推定する加圧方向推定部と、
前記圧力データと、推定された加圧方向とを用いて、前記手が前記対象物に力を加えていることに対する前記対象物の反応である加圧反応を算出する反応算出部と、
前記加圧反応が基準範囲内であるか否かを判定する判定部と
を備える接触情報取得装置であって、
前記加圧方向推定部は、前記対象物の3次元形状と剛性とを示す対象物データを用いて前記加圧方向を推定し、
前記反応算出部は、前記対象物データを用いて前記加圧反応を算出する接触情報取得装置
【請求項2】
前記圧力センサと前記方向センサとは、前記作業者が装着するグローブに取り付けられている請求項1に記載の接触情報取得装置。
【請求項3】
前記圧力センサは、前記手の少なくとも1つの指の各指が前記対象物に加えている圧力を計測し、
前記方向センサは、前記手の少なくとも1つの指の各指の方向を計測し、
前記特性データは、前記手の少なくとも1つの指の各指の形状と弾性値とを示すデータを含む請求項1又は2に記載の接触情報取得装置。
【請求項4】
前記方向センサは、加速度センサと方位センサとから成る請求項1から3のいずれか1項に記載の接触情報取得装置。
【請求項5】
前記加圧反応は、前記対象物に対する加振力と、前記対象物の応答との少なくともいずれかである請求項1から4のいずれか1項に記載の接触情報取得装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の反応算出部が算出した加圧反応を再現するデバイスを備える接触情報取得システム。
【請求項7】
コンピュータが、作業者が前記作業者の手により対象物に加えている圧力を計測する圧力センサが計測した圧力データと、前記手についての方向を計測する方向センサが計測した方向データと、前記手の特性を示す特性データとを用いて、前記手が前記対象物に加えている圧力の方向であって前記対象物に対する方向である加圧方向を推定し、
前記コンピュータが、前記圧力データと、推定された加圧方向とを用いて、前記手が前記対象物に力を加えていることに対する前記対象物の反応である加圧反応を算出し、
前記コンピュータが、前記加圧反応が基準範囲内であるか否かを判定し、
前記コンピュータが、前記対象物の3次元形状と剛性とを示す対象物データを用いて前記加圧方向を推定し、
前記コンピュータが、前記対象物データを用いて前記加圧反応を算出する接触情報取得方法。
【請求項8】
作業者が前記作業者の手により対象物に加えている圧力を計測する圧力センサが計測した圧力データと、前記手についての方向を計測する方向センサが計測した方向データと、前記手の特性を示す特性データとを用いて、前記手が前記対象物に加えている圧力の方向であって前記対象物に対する方向である加圧方向を推定する加圧方向推定処理と、
前記圧力データと、推定された加圧方向とを用いて、前記手が前記対象物に力を加えていることに対する前記対象物の反応である加圧反応を算出する反応算出処理と、
前記加圧反応が基準範囲内であるか否かを判定する判定処理と
をコンピュータである接触情報取得装置に実行させる接触情報取得プログラムであって、
前記加圧方向推定処理では、前記対象物の3次元形状と剛性とを示す対象物データを用いて前記加圧方向を推定し、
前記反応算出処理では、前記対象物データを用いて前記加圧反応を算出する接触情報取得プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接触情報取得装置、接触情報取得システム、接触情報取得方法、及び、接触情報取得プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械装置の検査において触診が用いられることもあり、触診を遠隔化する技術が求められている。触診の主な目的は、対象機器の固定状況と、対象機器が円滑に動作することを確認することである。触診の対象機器は多岐に渡り、また、触診を実施する現場の作業空間が限定されていることが多いため、触診を遠隔化する際に大規模な装置を用いずに作業者の触覚情報を取得するシステムが必要である。
特許文献1は、指の側面を覆う門形の部材にかかる力を測定し、測定した結果を指についての推定モデルに適用することにより、指が対象物に加えている圧力を推定する技術を開示している。なお、本技術において、指先の移動の有無によって推定モデルを切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-032239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する技術によれば、指が対象物に加える圧力を計測する圧力センサの向きと、作業者の手の特性とを考慮せずに対象物に加わる力を推定するため、触診における対象物の反応を推定する精度が低いという課題がある。
【0005】
本開示は、指が対象物に加える圧力を計測する圧力センサの向きと、作業者の手の特性とを考慮して対象物に加わる力を推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る接触情報取得装置は、
作業者が前記作業者の手により対象物に加えている圧力を計測する圧力センサが計測した圧力データと、前記手についての方向を計測する方向センサが計測した方向データと、前記手の特性を示す特性データとを用いて、前記手が前記対象物に加えている圧力の方向であって前記対象物に対する方向である加圧方向を推定する加圧方向推定部と、
前記圧力データと、推定された加圧方向とを用いて、前記手が前記対象物に力を加えていることに対する前記対象物の反応である加圧反応を算出する反応算出部と、
前記加圧反応が基準範囲内であるか否かを判定する判定部と
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、方向データと特性データとを用いて加圧方向を推定する。そのため、本開示によれば、指が対象物に加える圧力を計測する圧力センサの向きと、作業者の手の特性とを考慮して対象物に加わる力を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る接触情報取得システム90の構成例を示す図。
図2】実施の形態1に係る接触情報取得装置100のハードウェア構成例を示す図。
図3】実施の形態1に係る接触情報取得システム90の動作を示すフローチャート。
図4】実施の形態1に係る接触情報取得システム90を用いた触診の様子を示す図であり、(a)は作業現場を示す図、(b)は遠隔において触診の状況を確認する様子を示す図。
図5】対象物300に対して加圧することによる指の変形を説明する図であり、(a)は加圧方向を説明する図、(b)は対象物300に対して指で加圧している様子を示す図、(c)は指が変形する様子を示す図。
図6】実施の形態1の変形例に係る接触情報取得システム90の構成例を示す図。
図7】実施の形態1の変形例に係る接触情報取得装置100のハードウェア構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態の説明及び図面において、同じ要素及び対応する要素には同じ符号を付している。同じ符号が付された要素の説明は、適宜に省略又は簡略化する。図中の矢印はデータの流れ又は処理の流れを主に示している。また、「部」を、「回路」、「工程」、「手順」、「処理」又は「サーキットリー」に適宜読み替えてもよい。
【0010】
実施の形態1.
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
***構成の説明***
図1は、本実施の形態に係る接触情報取得システム90の構成例を示している。接触情報取得システム90は、本図に示すように、グローブ20と、接触情報取得装置100と、反応DB(Database)200とを備える。接触情報取得装置100と、反応DB200とは一体的に構成されていてもよい。
【0012】
グローブ20は、作業者が触診を実施する際に装着するグローブである。グローブ20には、圧力センサ21と方向センサ22とが取り付けられている。圧力センサ21と方向センサ22との各々は、グローブ20に何個取り付けられていてもよい。作業者は、グローブ20を片手だけに装着してもよく、グローブ20を両手に装着してもよい。
触診は、具体例として、対象物300を揺らすこと、対象物300である滑車を回すこと、対象物300であるロープにかかっている力を測ること、対象物300であるロープを押したり引いたりすること、対象物300であるコネクタが適切に挿さっているか否かを確認すること、対象物300がスムーズに動くか否かを確認すること、対象物300の位置を動かして対象物300に対する圧力のかかりかたを時系列で確認し、対象物300引っ掛かり等を検出すること、又は、対象物300であるスイッチを押してスイッチをスムーズに押すことができるか否かを確認することである。ここで、対象物300は触診の対象であり、ある種類の対象物300が複数あってもよく、複数種類の対象物300があってもよい。
圧力センサ21は、作業者が作業者の手を用いて対象物300に加えている圧力を計測するセンサである。作業者は複数人存在してもよい。圧力センサ21は、作業者が触診を実施する際に用いる手の部位に触れる部分に適宜取り付けられている。圧力センサ21は、具体例として、グローブ20の、作業者の手の各指の腹に触れる部分と、作業者の手のひらに触れる部分とに取り付けられている。指は、特に断りがない限り手の指を指す。圧力センサ21は、作業者の手の少なくとも1つの指の各指が対象物300に加えている圧力を計測してもよい。
方向センサ22は、手についての方向を計測するセンサであり、圧力センサ21の方向を計測するためのセンサであり、典型的には方位センサと加速度センサとから成る。手についての方向は、具体例として、指の方向又は手のひらの方向である。方向は、具体例として方位と水平面からの傾きとから成る。方向を定める座標系はどのように定義されていてもよい。方向センサ22は、具体例として、手の各指の背面に触れる部分であって圧力センサ21が取り付けられている部分に対向する部分と、作業者の手のひらの背面に触れる部分とに取り付けられている。方向センサ22は、作業者の手の少なくとも1つの指の各指の方向を計測してもよい。
【0013】
接触情報取得装置100は、加圧方向推定部110と、反応算出部120と、判定部130とを備え、特性DB140とを備える。
加圧方向推定部110は、圧力センサ21が計測した圧力データと、方向センサ22が計測した方向データと、手の特性を示す特性データとを用いて加圧方向を推定する。加圧方向は、作業者の手が対象物300に加えている圧力の方向であって、対象物300に対する方向である。加圧方向推定部110は、作業者が複数の指を用いて対象物300に加圧している場合に、複数の加圧方向を推定してもよい。
反応算出部120は、圧力データと、推定された加圧方向とを用いて、作業者が対象物300に加圧したことによる対象物300の反応である加圧反応を算出する。加圧反応は、具体例として、対象物300に対する加振力と、対象物300の応答との少なくともいずれかである。
判定部130は、加圧反応が基準範囲内であるか否かを判定する。基準範囲は、対象物300に対する触診において満たされるべき加圧反応であって、数値化した加圧反応の範囲である。
特性DB140は、特性データとして、各作業者の手の少なくとも1つの指の各指の形状と弾性値とを示すデータを記憶する。各指の形状は、具体例として各指の長さと太さである。なお、各作業者の各指の弾性値が一定とは限らないこと、具体例として、季節ごとに弾性値が異なることを考慮して、各作業者の各指について複数種類の弾性値を記憶してもよい。また、特性DB140は、各作業者の手の他の部位の形状及び弾性値を記憶してもよい。
【0014】
反応DB200は、各対象物300に対する触診における加圧反応を示すデータを記録する。力覚情報又は振動等を物理的な動作として再現可能な情報提示デバイスが、反応DB200が記録しているデータを用いて各対象物300に対する触診を再現してもよい。当該情報提示デバイスは、反応算出部120が算出した加圧反応を再現するデバイスであり、具体例として、ハプティクスデバイスである。
【0015】
図2は、本実施の形態に係る接触情報取得装置100のハードウェア構成例を示している。接触情報取得装置100は、コンピュータから成る。接触情報取得装置100は、複数のコンピュータから成ってもよい。
【0016】
接触情報取得装置100は、本図に示すように、プロセッサ11と、メモリ12と、補助記憶装置13と、入出力IF(Interface)14と、通信装置15等のハードウェアを備えるコンピュータである。これらのハードウェアは、信号線19を介して適宜接続されている。
【0017】
プロセッサ11は、演算処理を行うIC(Integrated Circuit)であり、かつ、コンピュータが備えるハードウェアを制御する。プロセッサ11は、具体例として、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又はGPU(Graphics Processing Unit)である。
接触情報取得装置100は、プロセッサ11を代替する複数のプロセッサを備えてもよい。複数のプロセッサは、プロセッサ11の役割を分担する。
【0018】
メモリ12は、典型的には、揮発性の記憶装置である。メモリ12は、主記憶装置又はメインメモリとも呼ばれる。メモリ12は、具体例として、RAM(Random Access Memory)である。メモリ12に記憶されたデータは、必要に応じて補助記憶装置13に保存される。
【0019】
補助記憶装置13は、典型的には、不揮発性の記憶装置である。補助記憶装置13は、具体例として、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、又はフラッシュメモリである。補助記憶装置13に記憶されたデータは、必要に応じてメモリ12にロードされる。
メモリ12及び補助記憶装置13は一体的に構成されていてもよい。
【0020】
入出力IF14は、入力装置及び出力装置が接続されるポートである。入出力IF14は、具体例として、USB(Universal Serial Bus)端子である。入力装置は、具体例として、キーボード及びマウスである。出力装置は、具体例として、ディスプレイである。
【0021】
通信装置15は、レシーバ及びトランスミッタである。通信装置15は、具体例として、通信チップ又はNIC(Network Interface Card)である。
【0022】
接触情報取得装置100の各部は、他の装置等と通信する際に、入出力IF14及び通信装置15を適宜用いてもよい。
【0023】
補助記憶装置13は、接触情報取得プログラムを記憶している。接触情報取得プログラムは、接触情報取得装置100が備える各部の機能をコンピュータに実現させるプログラムである。接触情報取得プログラムは、メモリ12にロードされて、プロセッサ11によって実行される。接触情報取得装置100が備える各部の機能は、ソフトウェアにより実現される。
【0024】
接触情報取得プログラムを実行する際に用いられるデータと、接触情報取得プログラムを実行することによって得られるデータ等は、記憶装置に適宜記憶される。接触情報取得装置100の各部は、適宜記憶装置を利用する。記憶装置は、具体例として、メモリ12と、補助記憶装置13と、プロセッサ11内のレジスタと、プロセッサ11内のキャッシュメモリとの少なくとも1つから成る。なお、データと情報とは、同等の意味を有することもある。記憶装置は、コンピュータと独立したものであってもよい。
メモリ12及び補助記憶装置13の機能は、他の記憶装置によって実現されてもよい。
【0025】
接触情報取得プログラムは、コンピュータが読み取り可能な不揮発性の記録媒体に記録されていてもよい。不揮発性の記録媒体は、具体例として、光ディスク又はフラッシュメモリである。接触情報取得プログラムは、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0026】
***動作の説明***
接触情報取得装置100の動作手順は、接触情報取得方法に相当する。また、接触情報取得装置100の動作を実現するプログラムは、接触情報取得プログラムに相当する。
【0027】
図3は、接触情報取得システム90の動作を示すフローチャートである。本図を参照して接触情報取得システム90の動作を説明する。
【0028】
(ステップS101)
グローブ20を装着した作業者が作業現場で対象物300に対して触診を実施し、圧力センサ21と方向センサ22とはデータを収集する。圧力センサ21と方向センサ22とが収集したデータは、接触情報取得装置100に適宜送信される。
図4は、接触情報取得装置100に圧力センサ21と方向センサ22とが収集したデータが送信される様子を示している。図4の(a)は触診が実施される作業現場を示している。図4の(b)は、グローブ20を装着した作業者が対象物300を上下に揺らし、この際に圧力センサ21と方向センサ22とが収集したデータが遠隔に設置された接触情報取得装置100に送信され、遠隔において検査員が触診の状況を確認する様子を示している。
【0029】
(ステップS102)
接触情報取得装置100は、圧力センサ21と方向センサ22とからデータを受信する。接触情報取得装置100が受信するデータは圧力センサ21と方向センサ22との各々が取得した生データであってもよい。
以下、圧力センサ21が測定した圧力を示すデータを圧力データと表現し、方向センサ22が測定した方向を示すデータを方向データと表現する。
【0030】
(ステップS103)
加圧方向推定部110は、方向センサ22から受信したデータに基づいて、圧力センサ21の対象物300に対する接触角度を算出する。
【0031】
(ステップS104)
加圧方向推定部110は、作業者が触診において用いている作業者の手の各部位を圧力データから作業部位として特定し、特定された各作業部位の形状と弾性値とを示すデータを特性DB140から取得する。作業部位は、具体例として、作業者の少なくともいずれかの指と、作業者の手のひらとの少なくともいずれかである。
【0032】
(ステップS105)
加圧方向推定部110は、圧力データと、特性DB140から取得した各作業部位についてのデータとを用いて各作業部位の変形量を算出し、算出した各変形量に基づいてステップS103において算出した接触角度を修正する。
ここで、圧力センサ21の向きは、作業部位の変形によって変化する。さらに、圧力センサ21の向きと加圧方向との間にもずれが発生することがあり、加圧方向推定部110は、指の変形と、指の変形による力の向きの変化とを推定する推定アルゴリズムを用いて、加圧方向を推定する。なお、作業部位が指である場合において、指の変形を推定するために指の腹側に圧力センサ21以外のセンサを設けると、触診における作業性が失われる。そこで、本実施の形態においては、指の腹側に圧力センサ21以外のセンサを設けず、圧力センサ21が計測したデータと、特性DB140が記憶しているデータとを推定アルゴリズムに適用することにより、指の変形を推定する。
図5は指の変形を説明する図である。図5の(a)は、作業者が指で対象物300に圧力を加えている様子を示している。図5の(a)において、指が変形しない場合、圧力センサ21の向きと方向センサ22の向きとは一致し、加圧方向は方向センサ22が示す向きである。しかしながら、加圧によって指が変形し、指の変形によって圧力センサ21の向きが変わり、その結果、加圧方向は図5の(a)に示すようになる。ここで、方向センサ22のみでは加圧方向を正確に推定することができない。
図5の(b)は、作業者が指を用いて対象物300に対して加圧している様子を示している。
図5の(c)は、作業者が指を用いて対象物300に対して加圧することにより当該指が変形する様子を示している。対象物300に対して加圧することにより指の一部が右側に示すように変形する。
【0033】
(ステップS106)
ステップS105における接触角度の修正量が一定以上である場合、接触情報取得装置100はステップS103に戻る。それ以外の場合、接触情報取得装置100はステップS107に進む。
【0034】
(ステップS107)
反応算出部120は、各圧力センサ21に対応する圧力データと推定された加圧方向とを用いて、各圧力データに対応する対象物300の各接触点における加圧反応の大きさ及び方向を算出する。接触点は、対象物300と圧力センサ21とが、直接的に又は間接的に接触している地点である。
【0035】
(ステップS108)
反応算出部120は、ステップS107において算出した対象物300の各接触点における加圧反応の大きさ及び方向を用いて、対象物300全体の加圧反応を算出する。
判定部130は、算出した加圧反応が基準範囲内であるか否かを判定し、判定した結果を適宜出力する。
【0036】
(ステップS109)
反応算出部120は、ステップS107及びステップS108において算出した加圧反応を反応DB200に登録する。
【0037】
***実施の形態1の効果の説明***
以上のように、本実施の形態によれば、作業者の触診における作業性を比較的高く維持したまま、対象物300の加圧反応を比較的高い精度で推定することができる。
【0038】
***他の構成***
<変形例1>
図6は、本変形例に係る接触情報取得システム90の構成例を示している。本図に示すように、接触情報取得装置100は対象物DB150を備える。
対象物DB150は、各対象物300の3次元形状と剛性とを示す対象物データを記憶する。対象物DB150は、各対象物300の把持部の3次元形状と剛性とのみを記憶してもよい。
本変形例に係る加圧方向推定部110は、対象物データを用いて加圧方向を推定する。
本変形例に係る反応算出部120は、対象物データを用いて加圧反応を算出する。
【0039】
以下、本変形例に係る接触情報取得システム90の動作と、実施の形態1に係る接触情報取得システム90の動作との差分を主に説明する。
【0040】
(ステップS104)
加圧方向推定部110は、対象物DB150が記憶しているデータも併せて取得する。
【0041】
(ステップS105)
加圧方向推定部110は、対象物DB150から取得したデータも用いてステップS103において算出した接触角度を修正する。具体例として、加圧方向推定部110は、対象物DB150から取得した対象物データを用いて作業者の把持姿勢を推定し、推定した把持姿勢に基づいて、圧力データと、特性DB140から取得したデータとに基づいて求められた加圧方向を補正する。
【0042】
また、ステップS107とステップS108とにおいて、反応算出部120は、対象物DB150から取得した対象物データを用いて加圧反応を算出する。具体例として、反応算出部120は、対象物300の3次元形状と剛性とに基づいて加圧反応が現実的に実現する度合いを算出し、現実的に実現する度合いが高い加圧反応を求める。
【0043】
本変形例によれば、対象物300の3次元形状と剛性とを考慮して加圧方向を推定するため、加圧方向の推定精度が高くなる。
【0044】
<変形例2>
図7は、本変形例に係る接触情報取得装置100のハードウェア構成例を示している。
接触情報取得装置100は、プロセッサ11、プロセッサ11とメモリ12、プロセッサ11と補助記憶装置13、あるいはプロセッサ11とメモリ12と補助記憶装置13とに代えて、処理回路18を備える。
処理回路18は、接触情報取得装置100が備える各部の少なくとも一部を実現するハードウェアである。
処理回路18は、専用のハードウェアであってもよく、また、メモリ12に格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。
【0045】
処理回路18が専用のハードウェアである場合、処理回路18は、具体例として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(ASICはApplication Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はこれらの組み合わせである。
接触情報取得装置100は、処理回路18を代替する複数の処理回路を備えてもよい。複数の処理回路は、処理回路18の役割を分担する。
【0046】
接触情報取得装置100において、一部の機能が専用のハードウェアによって実現されて、残りの機能がソフトウェア又はファームウェアによって実現されてもよい。
【0047】
処理回路18は、具体例として、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせにより実現される。
プロセッサ11とメモリ12と補助記憶装置13と処理回路18とを、総称して「プロセッシングサーキットリー」という。つまり、接触情報取得装置100の各機能構成要素の機能は、プロセッシングサーキットリーにより実現される。
【0048】
***他の実施の形態***
実施の形態1について説明したが、本実施の形態のうち、複数の部分を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、本実施の形態を部分的に実施しても構わない。その他、本実施の形態は、必要に応じて種々の変更がなされても構わず、全体としてあるいは部分的に、どのように組み合わせて実施されても構わない。
なお、前述した実施の形態は、本質的に好ましい例示であって、本開示と、その適用物と、用途の範囲とを制限することを意図するものではない。フローチャート等を用いて説明した手順は、適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
11 プロセッサ、12 メモリ、13 補助記憶装置、14 入出力IF、15 通信装置、18 処理回路、19 信号線、20 グローブ、21 圧力センサ、22 方向センサ、90 接触情報取得システム、100 接触情報取得装置、110 加圧方向推定部、120 反応算出部、130 判定部、140 特性DB、150 対象物DB、200 反応DB、300 対象物。
【要約】
接触情報取得装置(100)は、加圧方向推定部(110)と、反応算出部(120)と、判定部(130)とを備える。加圧方向推定部(110)は、作業者が作業者の手により対象物に加えている圧力を計測する圧力センサが計測した圧力データと、手についての方向を計測する方向センサが計測した方向データと、手の特性を示す特性データとを用いて、手が対象物に加えている圧力の方向であって対象物に対する方向である加圧方向を推定する。反応算出部(120)は、圧力データと、推定された加圧方向とを用いて、手が対象物に力を加えていることに対する対象物の反応である加圧反応を算出する。判定部(130)は、加圧反応が基準範囲内であるか否かを判定する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7